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虐待・虐殺小説スレッドPART.4
1
:
管理団
:2007/04/12(木) 23:32:19 ID:???
AA ではない活字の並ぶ 虐待・虐殺系 の 新 し い ス タ イ ル 。
━━━━─────────────────────────────────━━━━
皮を剥がされたしぃが、首筋に大きなフックを刺されて吊され、みぞおちから股間までを
切り裂かれている。裂かれた腹からは、勝手にニュルニュルと腸が飛び出て、こぼれた。
吊された中には、ベビしぃも混じっている。
「ウゥゥゥ イタ イヨ、、、 モウ シナ セテ」
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 「イチャ ヨ ナコ チテ マチャ リ チタ」
|ミ| |ミ| ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
-、. |ミ|、 |ミ| |ミ| :
/;l |ミ|;l |ミ| ,,、 ,.,,.,.,,.,,.,..,, ,.,,. ,,.,,,.,, |ミ|i | ̄ ̄| ̄
/:;,.;ヽ,.,|ミ| | |ミ| /;,:l ミ,,,,,(★)ミ ミ(★),,,,,ミ |ミ| :| |
,:;´ ;::; ;: ; ;|ミ|.;`,、 、ー-- 、__、、ミ|_,,//,、| <ヽ`∀´> <`∀´* >、 i|ミ| :| |
l.,;:.ー、 ;;,:..;|ミ|;:..:.,;l ヽ;.:;r :;;.,;: ;:、_:;:;ヽ;l ⊂ミ 北 ) m 北 ミmヽ |ミ|i | |
 ̄ ̄|;:.;゚-,.ilヽ|/:|ミ|,; :; ;|  ̄ ̄`l>:;,. ;:( ゚,0.`o ;l: ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ i |ミ| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽっ ;i|;/lヽ|ミ|;;:; ;/ |;,.: ;(´ ̄`)" ゚。;:l | 労働党 万歳 | . |ミ|, ー--、
>;:;: :;,. ;(O);:く ヽ;;.:` - ´:;: ;: ;;/ | ____ | . |ミ| ;: ;: ;:、´
/:: :; :,. ;:;l|iノ,.:;:.;;ヽ /;":;:);)(;:(;(;:;`;:, | || ★ || | i |ミ|:;: .:.,ー--、
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ー、,:.;;i | __ ̄ ̄__ | ,(O) ;;: ;:;: ;;:,´
::::::::::::::::::::::::::::::::::|/::::::::::::::::::::::::: \|:::::: /:;ヽi|l;;;: ;;: (゚ノ
「フォルフォルフォル、これが全自動畜産場ニカ?」 ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
突如、重く冷たい鉄の扉が開き、人が二人、中へ入ってきた。毛皮のコートに、これまた
毛皮の大きな帽子。その帽子に付けられた、大きな赤い星は、彼等が共産国家の兵士で
ある事を、何よりも雄弁に語っていた。
「はい、そのとおりでスミダ」
先に入ってきた男――物腰の低さや、言葉遣いからして、後から入ってきた男の案内役
であろう――は、上機嫌な上官に、この工場の概要を説明し始める。
「ちびギコを使った種付けから、しぃのニクコプンでの飼育、屠殺、解体、全て奴らの手で行われまスミダ」
鳴りやまない笑い声、絶えない悲鳴と怨嗟の声、、、
ここは彼女らの故郷より西に在る、
地 上 の 楽 園 。
2
:
管理団
:2007/04/12(木) 23:32:37 ID:???
過去ログ
虐殺小説総合スレ
ttp://jbbs.livedoor.jp/computer/1523/storage/1043305597.html
虐待・虐殺小説スレッド
ttp://jbbs.livedoor.jp/computer/5580/storage/1048169233.html
虐待・虐殺小説スレッドPART.2
ttp://jbbs.livedoor.jp/computer/5580/storage/1067790306.html
虐待・虐殺小説スレッドPART.3
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/5580/1092139155/
― ローカルルール ―
◆ 感想・批評は下記の専用スレへ。本スレへの感想は禁止。
小説スレ 感想・議論スレ Part 3
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/5580/1099659155/
◆ 話の展開を急ぐ感想は嫌われます。気長にマターリと待ちませう。
◆ 小説が面白かったとて他スレのAA職人さんに
『小説をAA化して!』と言うような事はやめましょう。
◆ セリフのみが延々と続く台本形式の小説は削除対象になります。
- 例 -
(*゚ー゚) ハニャーン。ベビチャン カワイイネ♪
(*゚ヮ゚) チィチィ!マンマナッコ!
(・∀・ ) やあ今日は。
(#゚ -゚) ナニヨ クソモララー!ベビチャンヲ ナッコシナサイ!
(・∀・#) 殺す!
(*T0゚) シィィィーッ!
3
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 00:36:41 ID:???
新スレ乙です。僭越ながらも1番乗りで申し訳ありませんが、早速新作投下させて頂きます。
【流石兄妹の華麗なる休日〜百ベビ組手〜 前編】
「父者〜。どこか遊びに連れてって欲しいのじゃぁ〜」
先日11歳の誕生日を迎えたばかりの妹者が甘えるような声を出して、父者の背中に抱きついた。
それはまるで木にしがみ付く蝉を連想させ、何だか暑苦しい。
「い、妹者・・・降りてくれないかな?私は腰を痛めてるんだ・・・」
妹者にしがみ付かれた父者が声を絞り出した。
それを聞いた妹者は慌てて、
「あ・・・ごめんなのじゃ」
父者の背中から離れたが、すぐに標的を変え、
「兄者〜。退屈で爆死しそうなのじゃ〜」
そばであぐらをかいてゲーム雑誌を読みふけっていた兄者の背中に飛びつく。
兄者は突如として飛びついてきた妹者の衝撃に少々驚きながらも、横に居た弟者に声を掛けた。
「弟者よ。何故妹者は退屈だと爆死してしまうのだ・・・?」
「さあ・・・それほど暇だという事だろうな」
弟者が冷静に返した。
時は6月。初夏だ。場所は流石家の居間。
状況は見ていただければ分かる通り。
妹者が退屈のあまり、父者にどこか連れてって貰うようにねだっていた所だ。
しかし父者は腰痛で療養中。久々の休みなのでゆっくり休んでいたいらしい。
そこで今度は兄者に矛先を変えたという事だ。
「兄者は何か用事でもあるのじゃ?」
妹者に訊かれ、兄者は答える。
「い、いや・・・別に無いが」
すかさず妹者は、兄者の体を背中から揺さぶり始める。
「じゃあどこかに連れてって欲しいのじゃ!お願いなのじゃ、ね〜ね〜ね〜ね〜ねぇ〜・・・」
ゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさゆさ・・・・・・・・・・。
妹者の必殺ヴァイブレーションに、兄者はたまらずギブアップ宣言。
「わ、わかった、妹者よ・・・わかったから止めてくれ・・・うぷ」
「わ〜い!兄者に勝ったのじゃ〜!」
どさりと倒れた兄者の横で妹者が勝利宣言。
そして即座に弟者にも声を掛ける。目をキラキラと輝かせて。
「ちっちゃい兄者も一緒に行くのじゃ!」
弟者は少し困った顔をしたが、目を輝かせる愛妹の前では断る事も出来ず、承諾。
「わかった。俺も行こう。妹者、支度して来なさい」
「やった〜!着替えてくるのじゃ♪」
妹者はピョン、と一つ跳ねてから、『ブーン』のポーズで部屋を出て行った。
まあ、俺も暇だったしな・・・とひとりごちてから、弟者は未だに床に伏す兄者に声を掛ける。
「兄者・・・大丈夫か?」
「あ、ああ・・・何とかな」
兄者が起き上がりながら答える。
「ところで、どこへ連れて行くんだ?金もあまり無いぞ・・・」
「そうだな・・・弟者よ、今日は何日だ?」
「今日か?」
弟者はちら、とカレンダーを見てから答える。
「今日は6月17日、日曜日だが」
そう告げると、兄者はポン、と手を叩いた。
「それなら丁度いい。今日はあれだ、町内広場で『百ベビ組手』の大会があるじゃないか」
「それだ!あれなら俺達も妹者も楽しめる、まさに打ってつけだな。金も掛からんし・・・」
その時、早くも可愛らしい服に身を包んだ妹者がバン!とドアを開けた。
「支度できたのじゃ!」
「早いな・・・妹者よ」
弟者は思わず苦笑するのだった。
4
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 00:37:21 ID:???
家を出た兄妹3人組は、早速町内広場へ向かって歩き出した。
「〜♪」
鼻歌を歌いながら上機嫌な妹者がどんどん歩いてゆくので、続く兄者と弟者は付いて行くだけで精一杯だった。
「い、妹者よ・・・随分とご機嫌だな」
弟者が尋ねると、妹者は笑顔を崩さずに答えた。
「だって、久しぶりのお出掛けなのじゃ!」
言いながらもどんどん歩調が速くなる妹者。
兄2人はついに小走り状態で付いていく事となった。
道中、兄者が思わず弟者に漏らした。
「まったく、我が妹ながらなんてパワフルなんだ・・・」
それを聞いた弟者も、肩を軽く竦めながら言う。
「禿同だ、兄者。伊達に母者の血は引いてないな・・・」
「ああ、その元気を1割でいいから俺に・・・」
「兄者〜!早くするのじゃ〜!」
妹者の大声で会話を遮られた兄者と弟者は、互いに苦笑一つしてから、妹者の待つ方向へ駆け出した。
町内広場は、もうすぐそこだ。
5
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 00:37:56 ID:???
パン!パン!パン!
雲が1つ2つ浮かぶ青空に、花火の音が響く。
抜けるようなスカッとした快晴の空の下、大勢の人だかり。
広場のあちこちに特設ステージや臨時のプレハブ小屋、大きな柵で囲まれた古代ギリシャのコロッセウムを思わせる闘技場らしきエリアなんかが作られている。
また、様々な食べ物や飲み物、射的に金魚すくい等のアトラクションの出店まで出展しており、文字通り『お祭り騒ぎ』状態だった。
さて、大人から子供まで入り混じっての人の波に、早速飲み込まれた流石兄妹達。
「妹者、はぐれるなよ〜!」
弟者の声に、
「大丈夫なのじゃ〜!」
割とそばから妹者の声が返ってきた。この分なら大丈夫か、と弟者はほっと一息―――ついてもいられなかった。
とにかく押し寄せる人の波、波、波。まさにタイダルウェイヴ。
「あ、兄者よ・・・とりあえず落ち着ける場所に行かないか?」
最早どこにいるかもわからない兄者に弟者が提案すると、
「う、うむ・・・そうしよう」
弟者から見て5時の方向から兄者の返答が返って来た。
「このままでは・・・あっという間に・・・ばらば、あ、いや、ちょ・・・弟者、助け・・・」
弟者に向かって話しかけていた筈の兄者の声がどんどん離れていく。
見れば兄者は、人の波に流されてどんどん弟者から離れて行ってしまっていた。
十代後半の健全男子ならこれくらいどうという事も無さそうだが、兄者の場合は日頃の運動不足が祟っているのだろう。
はぁ、とため息一つついてから、弟者は人の波を掻き分け掻き分け、ようやく兄者の左手首を掴んだ。
「まったく、しっかりしてくれよ。妹者より先に兄者がはぐれてどうする・・・」
「うむ・・・スマンかった」
兄者は弟者に陳謝。
そのまま弟者は兄者の手首を引きながら、これまた流されそうな妹者の手を握る。
そして2人の手を離さないように、弟者は人ごみからの脱出を図って歩き出した。
その姿はまるで、雪山で遭難者のソリを引っ張って走るセント・バーナード犬のようだった。
「それ・・・褒めてないだろ」
弟者は誰にとも無く呟いてから、弟者はまた歩き出した。
彼方に見えた、レストハウスを目指して。
6
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 00:38:28 ID:???
「もうクタクタなのじゃ〜・・・」
折り畳み式テーブルに突っ伏した妹者が、力無く呟きながら、メロンソーダのストローを銜えた。
「まだ来たばかりなんだがな・・・まあ、この人込みでは無理も無いか」
弟者が同調しつつ、手に持ったアイスコーヒーをストローでかき混ぜる。
カランカラン、とグラス内の氷が涼しい音を奏でた。
「賑わっているとは思ったがな・・・まさか、ここまでとは」
兄者は一息でグラスの烏龍茶を半分ほど空け、一息ついてから言った。
弟者はどうにか人込みを脱出し、近くにあったこのレストハウスに辿り着いていた。
兄者達が囲むテーブルは折り畳み式の物で、中央にはビーチパラソル。それぞれの手には注文した飲み物のグラス。
おかげで中々に涼しい空間が出来上がっていた。
そんな中で、弟者は入り口で貰った地図付きパンフレットを広げた。
「・・・さて。この後はどうするんだ?いつまでものんびりしている訳にもいくまい」
弟者の言葉に、兄者が顎の先を摘みながら返答した。
「そうだな・・・やはりここはメインイベントの百ベビ組手本戦を見に行かないか。
時間的にも丁度良いしな」
言いながら兄者は自らの左腕の腕時計を示した。
時計の針は9時32分を指していた。
パンフレットを見れば、本戦は10時からとなっている。
「では、そろそろ行ったほうがいいな。余裕があるに越した事は無いさ」
弟者が立ち上がろうとしたが、兄者がそれを引き止めた。
「まあ待て。少しくらい休んでからの方が良かろう。時間も無い訳ではないしな・・・」
弟者はそれを聞いて、再び椅子に腰を下ろした。
「・・・まあ、それもそうか」
―――10分後。
グラスを空にした3人は、そのまま本戦会場となっている特設ステージへと向かった。
(ちなみに飲み物代は壮絶なジャンケン対決の末、兄者が支払った)
レストハウスからも見える位置にあったので、今度は大して労せずに会場へと辿り着く事が出来た。
それは最初に来たときにも目に留まった、闘技場のようなステージだった。
入り口のゲートの前で、唐突に兄者が言った。
「弟者。せっかくだから、お前も出てみないか」
え、と軽く驚いた表情で弟者が振り向く。
「い、いや・・・急に言われてもだな・・・」
「見ろ。『飛び入り参加大歓迎!お気軽に受付にお申し付け下さい』と書かれているではないか。
お前も最近家の周りにアフォしぃなんかが出なくて退屈していただろう?丁度良いじゃないか」
「ちっちゃい兄者、頑張るのじゃ!」
妹者にも後押しされた弟者は少しの間思案していたが、
「・・・まあ、俺も最近運動不足だったからな・・・。
――わかった、せっかくだから出よう。兄者と妹者は、観客席に先に行っててくれ。
俺は自分の番が終わってから行くよ」
それから弟者は兄者と妹者を見送ると、受付へと向かった。
7
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 00:39:11 ID:???
―――『百ベビ組手』。
名前から察した方も多いだろうが、この競技は、簡単に言えば空手なんかの『百人組み手』のベビしぃverだ。
無論、空手とは違い相手を虐殺する事が前提だ。
要するに、ベビしぃ100匹をいかに迅速に、かつ華麗に虐殺するかを競うのだ。
武器や方法などは基本的に自由。始めからフィールドに100匹放たれている場合もあれば、その都度追加される場合もある。これは、大会によって異なる。
この辺は後に説明があるのでこのくらいに。
本戦会場は、言うなれば野球場をそのまま小さくしたような感じだ。
観客席に囲まれて、直径25m程度の円形のフィールドが広がっている。
フィールドの隅には入退場口とベビ入場用の金網付きゲートがある。(無論、ベビの退場口は無いww
フェンスの一部にはガラス張りの所があるが、これは恐らく招待客や来賓が観戦するための席なのだろう。
また、他にも似たようなガラス張りの部分があるが、その向こうには席ではなく妙にガランとした、人が普通に立って歩き回れる程の広い空間が広がっていた。一体何の為なのか・・・?
受付で手続きを終えた弟者は、早速控え室へと向かった。
ちょっとしたホール並みの広さの部屋に、男女合わせて20人近くのAAが居た。
部屋には備え付けのロッカーや革張りの長椅子、自動販売機などと設備は充実している。部屋の上方には、大きなモニター。
さて、どうしたものかとキョロキョロ部屋を見渡していた弟者に、肩をチョンチョンとつつくと同時に不意に声がかかった。
「オイ、弟者!コンナ所デ何シテンダヨ?」
ややソプラノ気味な声に弟者が振り向くと、そこには弟者の高校のクラスメイトのつーが立っていた。その手には持ち込んだらしいナイフが握られている。
「ん?ああ、つーじゃないか。何してると訊かれてもな・・・百ベビ組手出場以外の目的で、ここにいるとは思えないだろう」
弟者が答えると、やや小柄で勝気なこの少女は腰に手を当てて笑った。
「アヒャヒャ!ソウジャネェッテ。オマエガコウイウ大会ニ出場スルナンテ珍シイナ、ッテ思ッテサ」
それを聞いた弟者は、頬をポリポリとかきながら言う。
「むう。俺も最初は観戦目的だったんだがな・・・兄者や妹者に薦められて、出る事にしたんだよ。俺自身、虐殺はご無沙汰だったしな。
つーはこういうの好きそうだとは思ったが・・・まさか出ているとは思わなかったな。いつから出ているんだ?」
弟者の質問に、つーは少し声のトーンを落として言った。
「3,4年前クライカラカナ。ソレニ、出テイルモナニモ・・・ホレ」
囁きながらつーが取り出した物―――それは、首から下げる為のストラップが付いた、金色に輝くメダルだった。
それこそまさに、この『百ベビ組手』の覇者の証だった。そこには『第39回大会優勝者 つー』と刻まれている。
文字の上にはでかでかと、ベビしぃの死骸を踏み台にしてポージングするモナーが描かれていた。
「おいおい・・・優勝までしてるのか。凄いじゃないか。第39回って事は・・・丁度去年か」
弟者からの賞賛に、つーは顔を真っ赤にしながら、腕をパタパタと振った。
「オ、オイ・・・アンマリ大キナ声デ言ウナヨ。恥ズカシイジャネーカ・・・」
と、その時。
ブン、という低い音と共に、部屋の上部に取り付けられたモニターの電源が入った。
そこにはこれから自らがベビを屠殺して周るであろうフィールドが映し出されている。
少しではあるが、観客席の様子も見て取れた。
まじまじとモニターを見上げていた弟者に、つーが声を掛けた。
「ソロソロ開会式ガ始マルナ・・・オイ、チャント見テオケヨ?ルールノ説明ナンカモアルカラナ」
「ああ、わかった」
弟者が答えながら、そばにある2人用の椅子に腰掛ける。つーが寄ってきて、その隣に座った。
それから2人は、ほぼ同時のタイミングでモニターを見上げる。
モニターの中では丁度、1組の男女がフィールドの中心へ向かって歩いてきていた。
8
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 00:39:41 ID:???
野球場のスタンドそのものとも言えるような観客席。
その中段のやや前寄り、位置にして選手入場門の上にあたる席に、兄者と妹者が陣取っていた。
「うむ。ここなら見やすいな」
兄者が呟く。
「バッチリなのじゃ!兄者、まだ始まらないのじゃ?」
妹者が待ちきれないといった体で腕を振る。
そんな妹者を微笑ましく思いつつ、兄者は腕時計を見た。
「そろそろ始まるはずだぞ。・・・ほれ、見てみろ」
兄者が指差した先に妹者が視線を移す。
2人のAAが、フィールドの中央に向かって歩いてきたのである。片やモララー、もう1人はガナー。
2人が丁度フィールドの中央に辿り着き、歩みを止めた瞬間―――ざわついていた観客席が、ぴたりと静かになった。
それを確認すると、2人はハンドマイクを取り出した。
そして、モララーが大きく息を吸い込んだ。
「レディース エーン ジェントルメーーーン!!!」
英語の発音にはあまり聞こえない英語で、モララーが叫んだ。何だか矛盾している気もするが気にしない。気にしちゃいけない。
その声はマイクによって拡張され、スタンド中に響いた。
「ベビ虐殺が大好きな諸君!『百ベビ組手』本戦へようこそ!!」
モララーがさらに叫んだ。それを聞き届けたガナーも、マイクを口元へ持っていく。
「本日は是非、華麗な虐殺と・・・ベビしぃ達の阿鼻の叫びを、心行くまでお楽しみ下さい!」
その言葉が終わると、モララーが一歩前へ出た。
「本日の、司会進行はこの私、モララーと・・・」
続いてガナーも前へ出る。
「私、ガナーが務めさせて頂きます!」
そして2人は優雅に一礼。
『不慣れではございますが、どうぞ宜しくお願い致します!』
その瞬間、観客席から『わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!』とかなりの大歓声。
その大歓声に照れ笑いを浮かべながら、モララーが再びマイクを構える。
「ではここで、本日ご招待致しました、来賓・ゲストのご紹介をさせて頂きます!」
そこで2人は、今日のゲストや来賓を一人ずつ紹介していった。
この町出身の国会議員、売れっ子アイドル、ブレイク中のお笑い芸人達etc・・・。
「さいたまかっ!」
ツッコミに合わせて、アヒャがヒッキーの頭をパチン!と叩いた。
「いや、何が・・・!?」
「どーも、ありがとうございました〜!」
ゲストのお笑い芸人『アヒャ&ヒッキー』の即興漫才を締めとして、紹介は終わった。
最後のネタによって笑いの絶えない観客席に向かって、モララーが叫ぶ。
「いやぁ、アヒャヒキはやはり面白いですねぇ!ではここで、今回の競技のルール説明をさせて頂きましょう!
ギコ君、カマン!」
モララーのコールと共に、入場口から1人のギコが歩いて来た。
そこでガナーが苦笑しながら付け足す。
「こちらは面白くも何ともありませんが、我慢して聞いて下さいね〜」
観客席から微笑。
そこでギコは、モララーのマイクを奪い取って叫んだ。
「おいおいガナーちゃん、そいつはキツい言い方だな、ゴルァ」
「だって、本当の事じゃ無いですか〜」
ガナーの返しに、ギコは頭を掻いた。
「いや、そうだけどさ・・・もうちょっと、オブラートに包むっていうかさ、もっと、こう・・・」
身振り手振りを交えてうろたえるギコ。観客席から再び爆笑が聞こえてくる。
モララーがそこで助け舟。
「まあまあ。それについてはまた後でって事で・・・ほら、説明説明」
「おっと、忘れる所だった・・・じゃ、改めて」
ギコはマイクを構えなおし、説明を始めた。
9
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 00:41:31 ID:???
「え〜、基本的なルール説明をさせて頂きますよ、と。
ルールは簡単!そこいらに転がっているベビ100匹をひたすらヌッ殺す!それだけ!
武器は基本的に何でもアリだが、重火器なんかは簡単過ぎるのでタブー。ハンドガン、手榴弾くらいまでだな。
武器は持ち込みでもいいし、レンタルでもオッケーだ!もちろん、素手でもよし!
ちなみに、使用するベビしぃは全てノーマルなベビしぃだ。フサやワッチィなんかは混じってないぜ。
方式はタイムアタック方式。100匹目が絶命した瞬間までのタイムを計測。
一番早かった奴が優勝だ!3位までが表彰台、5位までが入賞。
なお、それとは別に1人、審査員特別賞ってのも用意されてるから、希望を捨てちゃあ駄目だぜ?
こっちを狙うなら、そうだな、速さだけじゃなくて方法や見た目なんかにも気を配ってみたらどうだ?以上っ!」
ろくに呼吸もせずに言い切り、ギコはマイクをモララーへ返した。
そして全方位の観客席へとお辞儀をしてから、再び入退場口へと引き返してゆく。
「ご苦労様!ギコ君ありがと〜!」
モララーが叫ぶ。
ガナーがギコに向かって手を振りながら言った。
「面白くは無かったけど、とても重要なお話でした!では、次は・・・」
「・・・おやおや。もう待ちきれないってご様子ですねぇ、皆さん・・・」
途中で遮り、モララーが後を引き取るように言った。
そして2人は顔を見合わせる。
その顔を戻してから、2人は観客席へ言葉を放った。
「しょうがないので、残りの開会式の予定はパス!」
「早速、本戦へ突入しちゃいましょう!」
その瞬間の観客席からの歓声の大きさと言ったらもう。文字通りスタンドを揺るがすほどだった。
もっとも、本当に飛ばしてしまったのか、はたまた最初からそのつもりだったのかはわからないが。
「うへ〜、すごい大歓声なのじゃ」
妹者が肩を竦めながら、兄者に向かって呟く。
「まあ、それくらい皆、楽しみにしていたという事だろうな。ほら妹者、いきなり始まるみたいだぞ・・・」
兄者が答えながら、フィールドを指差した。
見れば司会の2人はいつの間にか特設された実況席へと下がり、どうやら最初の挑戦者らしいフサギコが入場口からフィールドへと姿を現していた。
スタッフらしいジエンが駆け寄り、フサにマイクを手渡した。
「では、挑戦者NO.01!フサギコ選手の登場だァ〜〜っ!!」
モララーの紹介が終わらない内に、観客席から再び大歓声。
フサはやや驚きながらも、渡されたマイクをポンポンと叩き、テストしている。
ガナーがマイクを通し、フサに声をかける。
「フサギコ選手、自己紹介をよろしくお願いしま〜す!」
フサは軽く司会の2人へ向かって会釈をし、マイクを口元へ運んだ。
「え〜と・・・市立第2モララ高等学校2年、フサギコです。
同校ラグビー部、主将をやっています。
虐殺はあまり慣れていませんが、精一杯殺らせて頂きます!」
ワァァァァァァァァァ!!
やっぱり大歓声。
ラグビー部だからなのか、彼の腕にはラグビーボールが抱えられていた。
そこでモララーが実況席からフサに尋ねた。
「第2モララ高のラグビー部は強いってもっぱら評判だよ!
ひょっとしてそのボール、虐殺と関係あるのかい?」
フサは「ありがとうございます」と一礼してから、
「はい。せっかくなので、ラグビーを虐殺に応用してみました」
その答えに実況席の2人は『おお〜っ・・・』と同時に呟く。
興奮を抑えようともしないモララーがマイクへ向かって叫びまくる。
「そいつぁ楽しみだ!頑張ってちょーだい!
それでは、本日のある意味での主役!『殺られ役』の、ベビしぃちゃんの登場だぁ!カマン!」
彼のコールと共に、『ベビ入場口』のゲートが開いた。
ガーッ!
すると、ゲートが開いた瞬間・・・
チィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィチィ・・・・・・・・・・・・
ナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコナッコ・・・・・・・・・・・・・
聞こえてくる鳴き声。まるで洪水の如く溢れてくる。
やがてぞろぞろぞろと現れる、ベビしぃの群れ。
這うように歩いてきながら口々に、やれナッコだの、やれハナーンだの、やれコウピだの言っている。
100匹全てのベビしぃが入場したのを確認すると、ゲートは元通り閉まった。
このゲートが次に開くのは、次の挑戦者が入場する時だ。
つまり、ここにいるベビしぃ達が1匹残らず死んだ時。それまでは決して開かない。
―――そう。ベビしぃ達が生きてこのゲートをくぐる事は、もう無いのである―――。
10
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 00:43:53 ID:???
入場したベビ達は、フィールド上のあちこちに勝手に思い思いに散っていく。
その場で眠りこける者、追いかけっこをはじめる者、互いに抱き合って(ダッコし合って)マターリする者・・・。
一部のベビは、選手であるフサを目ざとく見つけ、さっきから足元に集まって「ナッコナッコ!チィヲ ナッコチナイト ギャクサツチュー デチュヨォ!」などと喚いてみたり、
尻を向けながら「チィト ハヤク コウピシナチャイ!コウピ!」などと言っている。五月蝿い事この上なく、観客の嗜虐心をいい感じに煽ってくれている。
一部のヒートアップした観客が、「早く殺っちまえ〜!」と叫んだ。
するとモララーが、
「まあまあお客さん、マターリしましょうよ。慌てなくてもベビは逃げない、っつーより逃げられませんから、ね?
それではフサギコ選手、準備をお願いします!」
と観客を宥めつつ、フサに準備を促した。
フサは司会の2人にぺこりと一礼してから、『準備』を始めた。
彼は自らの両膝と両肘に、ラグビーやインラインスケートなんかで使用するプロテクターを装着した。
その頃、彼以外の部分でも変化は起こっていた。
「ん?あれは・・・?」
「兄者、どうしたのじゃ?」
怪訝そうな声を出した兄者に向かい、妹者が問う。
兄者はフィールドの一角を指差し、答えた。
「いや、あそこを見てくれ。あんな所にしぃがいるんだが・・・」
「あ、本当なのじゃ。でも、そんな偉い人には見えないのじゃ」
「うむ。俺もそれが気になってな・・・」
妹者も怪訝そうな顔。
2人が以前から気にしていた、フェンスの向こうのガラス窓の部屋。
あの部屋に次々と、しぃ達が現れたのだ。
兄者が周りを見回すと、観客達も次第に気が付いたらしく、しきりに指さしながら首を捻っている。
それに気付いたらしく、ガナーがモララーに問い掛けた。
「モララーさん。あの部屋にいるしぃ達は、一体何なんでしょうか?
ゲストには見えませんが・・・」
するとモララーは、よくぞ聞いてくれたと言わんばかりに含み笑いをしながらマイクに向かって囁くように言った。
「んふふふふ・・・あれですか。あれはですね・・・。
実は、今回殺されてくれるベビちゃんを提供して下さったお母様方なんですよ〜。
せっかくだから、特別席で我が子の死に様をバッチリ見物して頂こうと思いましてね。
今はこちらの音声は伝わってません。競技の際には、お互いに音声が伝わるようにしますよ。
では、先にあちら側の音声をお聞き願いましょうか・・・」
するとモララーは、手元のボタンをポチッと押した。
やがて、スタンド中に特別席内の音声が聞こえてきた。
「ハニャーン!ベビチャーン、オカアサンダヨ!」
「ベビチャンヲ ナッコシテクレルナンテ、ギャクサツチュウニシテハ イイキカクヲ カンガエルジャナイ」
「マ、シィチャント ベビチャンハ カワイインダカラ トウゼンヨネ!」
「ムシロ、イママデ コウイウノガ ナカッタコトガ オカシインダカラ!」
「ツイデニ シィチャンモ ダッコシテヨー!ハニャーン!」
どよめく場内。
再びガナーがモララーに問い掛けた。
「ところで、あのしぃ達には何て説明してあるんですか?」
「ああ。百匹のベビを、いかに素早くダッコやら何やらでマターリさせるかを競う競技、って言ってあるよ。
完全に自分の子供がナッコしてもらえると信じてるみたいだね。
というわけで皆様。ベビの虐殺だけではなく、あちらのしぃちゃん達が絶望に打ちひしがれる様子も、合わせてお楽しみ下さいね〜!」
そして観客からの拍手喝采。
その時、フサが準備を終えたらしく、近くに設置されたボタンを押し込む。
実況席のテーブルに設置されたランプが点灯したのを見て、モララーが言った。
「おやぁ?丁度準備が整ったようですね」
「では、皆様大変長らくお待たせ致しました!
いよいよ、競技開始の時間です!」
大歓声に包まれるスタンド。
「兄者、いよいよなのじゃ!」
「ああ。お楽しみの始まりだな・・・妹者よ、しっかり見ておくんだぞ」
観客席の兄者と妹者も、フィールドへと視線を固定する。
「ヤット始マルナ・・・弟者、緊張シテルノカ?」
「ん・・・まあ、少しな。つーはもう慣れっこだろう?」
「マアナ。全クシナイカッテ言エバ微妙ダケド、他ノ人ノ競技ヲ見テレバ落チ着クモンサ」
「なるほど、流石だな」
控え室の弟者とつーも、モニターを見上げた。
楽しい楽しい、血と肉と悲鳴の舞踏会が始まろうとしていた―――。
11
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:05:20 ID:???
開始の合図の前に、モララーが手元のボタンを押した。
恐らくこれで、親しぃの特別席にもこちらの音声が伝わるのだろう。
それは司会や観客の声だけじゃない。愛する我が子の断末魔も、である。
「ベビチャン、ナッコハ モウスグヨ!」
「セッカク ダカラ コウピモ シテラッシャイ!」
「ソレニシテモ アノフサハ シアワセモノネ!コンナニ カワイイ ベビチャンタチヲ ナッコシテ コウピシテ マターリデキルンダモン!」
「デモ、ヘンナカッコウネ。ナンデ アンナカッコウヲ・・・?」
「キット、スコシデモ タクサンノ ベビチャンヲ マターリサセタイカラ カラダガ タエラレルヨウニ シテルノヨ!」
「ハニャ、ナルホドネ!ベビチャーン、タクサン ナッコシテ モライナサイ!アイテノ コトナンカ シンパイシナクテ イイワヨ!」
何も知らない親しぃの声。それを聞いたスタンドにいた観客、司会、スタッフ、選手、ゲスト等の人々は、内心ほくそ笑んだ。
「それじゃあ、競技開始だゴルァ!よーい・・・」
先刻、説明係として登場したギコが、いつのまにか入場口の脇に立ってピストルを空へ向けていた。
それを聞いたフサが、いかにもこれから全力で走りますよ、といった感じで姿勢を少し低くし、片足を前へ出した。
その腕にはラグビーボールが抱えられたままだ。
「チィチィ!イヨイヨ チィヲ ナッコチテ クレルンデチュネ!」
「マズハ チィガ ナッコチテ モラウノ!アンタハ アトヨ!」
「チィィィィ!マズハ セカイイチ カワイイ コノチィガ ナッコナノ!」
「コウピ!コウピー!」
「Zzz・・・マァマ・・・ナッコォ・・・」
「ハナーン・・・マチャーリ デチュヨゥ・・・」
ベビ達の反応も様々だ。
まずは自分がナッコしてもらうと周りのベビを押しのけようとするベビ、ずっとフサへ向けて尻を振り続けるベビ、
まだ眠りこけてるベビ、相も変わらず互いにナッコし合って終始マターリ状態のベビ・・・etc、etc。
共通しているのは、どのベビもこの後自らを襲う災厄に欠片ほども気付いていないという事か。
ギコが、トリガーにかけた指に力を込めた。そして―――
―――パァン!
ピストルが咆哮を放つ。それは、競技という名目の殺戮ショー開始の合図。
瞬間、フサは前方へ向かって猛ダッシュ。それを後押しするかの様な観客の大歓声。
「ハナーン、ナッコ♪」
「マズハ チィヲ ナッコ チナサイ!」
「コノ セカイイチカワイイ チィヲ ナッコ デキルコトヲ カンシャ・・・チィィィィ!ドコニ イクンデチュカ!」
「ハヤク コウピー!」
早速ナッコにコウピをねだって来るベビ達。
しかし、フサはそんなベビ達に目もくれず、脇をすり抜けて行った。
口々に文句を言うベビ。中には追いかけて捕まえようとする者もいたが、ラグビーによって鍛え抜かれた健脚に叶う筈も無く。
というか、ベビしぃが全速力で走った所で、幼稚園児にだって叶う筈は無い。
フサが走るその先には、互いにナッコし合ってマターリ空間を生み出すベビ2匹。
左側にいるベビは既に眠っている。右側のベビも目を閉じて恍惚状態。あちら側に言わせれば、マターリしているのだろう。
ナッコし合うベビ2匹まで後3mくらいの所で、フサが地を蹴った。
フサは空中で体を伸ばし、両手でラグビーボールを持ち直して、それを振り上げた。
流石に殺気のようなものを感じ取ったらしい右側のベビが、目を開けた。
目の前に迫るフサ。もう1m程度。だがベビは状況を理解してないらしく、とろりとした表情を崩さない。
そして、フサの体が地面へ着く直前、彼は腕を思いっきり振り下ろしつつ、叫んだ。
「―――トライッ!!」
寸前、ベビが口を開いた。
「・・・ナッコ?」
―――そして。
―――グチャァッ!!
「ヂピギュゥッ!?」
尖った形状をしたラグビーボールの先端を脳天に叩きつけられ、ベビは異常な断末魔と共に、下半身を残して肉塊へと化した。
頭部が割れ、あちこちから脳味噌がはみ出し、血は止め処無く噴き出す。目玉が飛び出してごろり、と地に転がった。
その刹那。
12
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:07:52 ID:???
『シィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!????』
『チィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!????』
『ドワァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!』
3種類の大絶叫が、同時にスタンドに轟いた。
たった今までベビ達がナッコして貰えると信じきっていた親しぃ達の叫びと、
自分達をナッコしてくれると信じていたフサの突然の殺戮行為に驚愕したベビ達の叫びと、
見事にベビが肉塊へと変貌したのを見て大興奮の観客の声援。
しかし、その大絶叫の間にも、フィールド上のフサは動いていた。
素早く起き上がると、今度はたった今潰したベビのすぐ横で眠るベビに狙いを定めた。
今度はキックで飛ばすらしく、足を振り上げる。
すると、ターゲットのベビがナッコし合っていた相手のベビの血液や脳漿の付着によって目を覚ました。
そして顔を上げ、フサと目を合わせる。
「・・・ハナ?」
しかし、フサの足は止まらない。
ドゴッ!!
「ヂュィィィィィィィィィ!!?」
鍛え抜かれた足から放たれたキックの威力は相当なものだった。
ベビしぃは蹴られた部分―――側頭部から脇腹にかけて―――が潰れてへこみ、鼻や口から血が溢れていた。
そのままベビはあれよあれよと空の旅。そして数秒後の後に、
ガッシャーン!!
という音と共に観客席とフィールド上空を仕切る金網に激突、その衝撃でさらに潰れてから、ドサリと地面に落下した。
落下の衝撃でますます潰れたベビ。内臓にも被害が出たらしく、体中の穴からどす黒い血液を垂れ流した。当然、もう動かない。
「チィィィィィィ!?ギャクサツチュー デチュヨォォ!」
「チィノ ナッコハ ドウナルンデチュカ!?」
「タチュケテェェェェェ!チニタク ナイデチュー!」
「ハナーン!マンマー!タチュケテー!」
「コウピコウピー!」
次の瞬間、ベビ達はパニックに陥った。
突如として目の前に現れた殺戮者に、ベビ達は混乱を隠せない。
生き延びようとして我先に逃げようとするが、ここは高いフェンスで仕切られたバトルフィールド。逃げ出せる筈が無い。
ベビ達の顔に、絶望の色がありありと浮かび始めた。
―――もっとも、一部のベビは全く動じていない様子。
それは、単に目の前の惨状が受け入れられないか、未だ気付いていないか、眠っているかのどれかなのだが。
また、パニックに陥ったのはベビ達だけではない。
「シィィィィィィィ!?ベビチャンガー!!」
「ドウナッテルノヨ!ナッコト コウピデ ハニャハニャンジャ ナカッタノ!!?」
「シィノ ベビチャンガ シンジャッタヨォォォォォ!!ビエェェェェェェェェェン!!!」
「ベビチャァァァァァン!ニゲテェェェェェェ!!!」
「シィィィィ!カベサンガ ジャマデ ベビチャンヲ タスケニ イケナイヨゥ!!ココヲ アケテヨゥ!!」
そう。ベビ達の親であるしぃ達もまた、突如目の前で繰り広げられた殺戮に、完全に混乱した模様。
バタバタと暴れだす者、大声で泣き叫ぶ者、ガラス窓をドンドンと叩く者、我が子に必死に呼びかける者―――。
それら全ての行為が、全くの無駄であるという事にも気付かず、しぃ達は必死だ。
13
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:09:15 ID:???
やがて、フサが再び動き出した。
彼はふぅ、と一つ息をついてから、再び猛烈な勢いで走り出した。
前方にベビの群れ。
「チィィィィィ!コナイデ クダチャイヨゥ!」
「コロスナラ コッチノ クチョベビカラニ チテヨゥ!」
「チィィィィィィ!?コノ セカイイチ カワイイ チィニ ナンテコトヲ イウノ!?」
「マァマァァァァァァァァ!!!タチュケテェェェェェェェェ!!!」
「ナッコーーー!!」
口々に叫びながら逃げるベビ。
本人は必死のつもりなのだろうが、あっという間に差が詰まってゆく。
そりゃそうだ。ベビしぃが全速力で走っても、その速度は時速1km程度か、それ以下だ。まさに牛歩。―――それは牛に失礼か。
フサはベビの群れに突っ込む寸前にもスピードを一切緩めず、足元のベビを次々とスパイクシューズを履いた足で踏み潰さんと駆け抜けた。
グシャッ!
フサの足が群れの最後方をチィチィ言いながら這っていたベビしぃを踏み潰した。
「ギュビィィィィィィィ!!!!」
奇声を発してベビしぃが潰れた。胴体をまるまる踏み潰されたベビ。心臓まで潰れたらしく、口から血を流してすぐに事切れた。
フサは一切スピードを緩めず、そのままの勢いでベビを次々と踏み潰していった。
グシャッ!
「ミヂィィィィィ!!??」
グチョッ!
「ナッゴー!ナッブギョォォォォ!?」
メシャッ!
「ゴヴェェェェェェェェェ!!!!」
「ヂィィィィィィィ!!!モウ ヤァァァァァァァ!!!!マァマァァァァァァ!!!」
次々と潰されていく同族の姿を見て、ベビが泣き叫ぶ。
「ベビチャァァァァン!コノ ギャクサツチュウ!ヤメナサイ!」
「シィノ ベビチャンガァァァァァ!!!ベビチャァァァァァン!」
「イヤァァァァァァ!!!ベビチャンガ シンジャウヨゥ!」
「オナガイ、ハヤク ココヲ アケテェェェェ!ハヤクシナイト シィノ ベビチャンガ、ベビチャンガァァァァァァァ!!!」
「シィィィィィ・・・シィノ、シィノ、ベビチャァァァァン・・・」
親しぃ達も叫ぶ叫ぶ。目の前で我が子が殺されようとしているのに、手も足も出ないという絶望感。
中には既に、ベビを殺されたショックで意識がお花畑に飛ばされてしまったしぃもいる模様。
一方フサは、ある程度走った所で足を急に止めた。
ベビ達や観客たちも、フサの次の行動に注目する。
すると、フサは持っていたラグビーボールを、少し離れた所に思いっきり投げつけた。
近くにベビが居たが、この様子ではまず当たらないだろう。
「チィチィ!ヤッパリ ギャクサツチューハ バカデチュ!ハズシテルデチュ!」
「ヨウヤク コノチィノ イダイサニ キヅイタノネ!」
「ハナーン ヤット マチャーリ デキマチュ・・・」
ベビ達は安堵しきった様子。
「ハニャッ!アノ ギャクサツチュウ ボールサンヲ ハズシテルヨ!」
「ホントホント!アンナトコロニ ナゲルナンテ ヴァカミタイ!」
「マ、ショセン ギャクサツチュウナンテ コンナモンネ!」
「サア、ハヤク ベビチャンヲ ナッコシナサイ!」
親しぃ達も好き勝手言っている。
しかし、観客の殆どは『ラグビーボールの特性』を知っており、内心でほくそ笑んだ。
14
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:09:51 ID:???
ラグビーボールが着弾。フサが投げた方向にベビはいない。余裕の表情のベビ&親。
しかし、その表情は一瞬で凍りついた。
着弾したラグビーボールは、フサが投げた方向を12時(フサがいる方向が6時)とすると、なんと突如として7時の方向へバウンドした。
その先にはベビが1匹、余裕の表情で寝転んでいた。
ベビは突如として向かってきたボールに驚き、
「チィィィ!?ナンデ ボールサンガ・・・」
ゴシャッ!
「ヂュィィィィィッ!」
そして、ボールの直撃を食らって倒れた。
フサが全力で放ったボールの勢いはこれまたかなりの物。ベビは顔面を潰され、頭部の体積が1/3程度になってしまった。生きている筈が無い。
さらに、ベビを1匹昇天させたにも関わらずボールの勢いは全く衰えず、着弾してから今度は真横、3時の方向へ飛んだ。
その先にもまたもやベビが。
「チィィィィ!?コナイデェェェェ!!」
ベビが叫ぶが、ボールに何を言っても無駄な訳で。
グシャッ!
「ヂュピィィッ!?!?」
―――当然、潰される訳で。飛び散る血液と脳のコラボレーションが、観客達を魅了する。
それからというもの、ラグビーボールはフルパワー状態を維持しながら、ベビ達が全く予想できない方向へと跳ねまくった。
何故、このような現象が起こるのだろう。それは、ラグビーボールの形状に理由がある。
通常のサッカーボール等の球形のボールは、どの部分で着弾しても力の掛かり方はほぼ同じ、従って決まった方向にしか跳ねない。
しかし、ラグビーボールは楕円形をしているため、着弾する箇所が異なると、力の掛かり方も全く異なってくる。もちろん、跳ね方だって全く異なる。
従って、次にどの部分で着弾し、どの方向に跳ねるかなんて全く予測が出来ないのである。
15
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:10:22 ID:???
「チィィィィィ!!マァマァァァァァ!!タチュk」
グチャッ!!
「ナッゴォォォォ!!!ナ」
ブチュッ!
「アニ゙ャァァァァァァァァァァ!!!コンナノ マチャーリジャ ナ」
ビシャッ!!
叫ぶベビ、そして叫んだそばから潰されていくベビ。
完全に次の動向が予測できないラグビーボールは、まるで意思があるかのように次々とベビを潰していった。
何しろ、次はどの方向に、どれくらいの速度で、どこまで跳ぶのか。それらが全く予測できないのだ。
現実にそんな兵器があったとしたら、手練の兵士でも避ける事は困難を極めるだろう。
ましてや相手は単なるアフォしぃのベビ。運動神経は皆無に等しい。
それが最新鋭の兵器では無くてラグビーボールだったとしても、かわす事なんて出来やしなかった。
『ラグビーボールなんかで殺せるのか?』なんて疑問を抱いた方もいらっしゃるだろう。
だが、ラグビーボールの空気をしっかりと入れ、それなりの力で投げつけたなら、革張りのボールはかなりの威力を持つ。
前述したが、相手は単なるベビなのだ。体の脆いアフォしぃのベビの強度なんてたかが知れている。
ベビ達にとってそのラグビーボールは、まさに軽快に跳ね回る鋼鉄の塊のような物だった。
また、ボールが次々とベビを仕留める間も、フサは休んでいた訳では無かった。
彼はおもむろに駆け出すと、近くで恐怖に慄いて体が硬直していたベビを1匹、掴み上げた。
そしてそのベビを、片腕でしっかりと抱くようにして持つ。
「アニャ?ナッコデチュカ!?アニャーン・・・ヤット チィノ カワイサニ キヅイタンデチュネ・・・ナッコ・・・」
腕に抱かれたベビはナッコと勘違い。瞬時にマターリモード。
(ちなみに、片腕で抱くようにしてボールを持つのはラグビーの基本)
フサはそんなベビも意に介さず、猛烈なダッシュをかける。
そして、これだけの惨劇が起こっているにも関わらず眠りこけている(ある意味大物な)1匹のベビを補足。
この時点で観客の半数はフサの目論見に気付いたらしく、wktkが止まらないご様子。
中にはまるでジョルジュ長岡の如く腕を振りまくって『うおぉぉぉぉ!!』なんて叫んでヒートする観客も居た。
縮まっていくフサと眠りベビの距離。
それが5m程度に達したとき、フサは抱えていたベビを片手持ちに持ち替えた。
「ハナーン・・・?」
マターリのあまりとろけそうになっているベビは、さして気にしていない様子だ。
そしてフサとベビの距離が3m程度になった時―――
―――跳躍。
空中でフサは、ベビを両手で持ち直して、その手を高々と振り上げた。
その様子は、つい先刻、ボールをベビに叩き付ける直前の瞬間と酷似していた。
「チィチィ!タカイタカイ デチュネ・・・。タカナッコ デチュ・・・」
―――いくらなんでも気付いても良さそうなのだが。
第一、今貴方は逆さまに掴まれているのですよ、ベビちゃん?
一瞬の静寂の時。そして。
ドグチャァッ!!
『ヂュビギョォォォォォォ!!!??』
この世の生き物が発したとは到底思えない奇声の二重奏(デュエット)。
互いに叩きつけられたベビの頭部は最早原型を留めない程に崩壊した。
特に叩き付けた方のベビ(掴まれてた方)は、頭部がグシャグシャに千切れて、さらに首から上が吹き飛んだ。
吹き飛んだ頭部は既に千切れていた事もあって見事に空中分解。
傍で目をひん剥いて事の顛末を見届けていた1匹のベビに、血肉のスコールが降り注いだ。
「チィィィィィィィィィ!!!!??イヤァァァァァァァァァァァ!!!!キモチワルイ デチュヨォォォォォォ!!!」
突如として文字通り降り掛かった災厄に、ベビは悲鳴を上げた。
全身を血液、肉片、脳漿で染め上げ、さらに耳の辺りを飛んで来た目玉でデコレーションしたベビ。
周りのベビも、遠巻きにしてそれを観察している。
次は自分が、あんな目に遭うのだろうか―――。
そんな言葉を脳裏に過ぎらせながら。
16
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:10:49 ID:???
「キモイ デチュヨォォォォォ!タチュケテェェェェェ!!ナッコォォォォ!!」
全身血肉塗れとなったベビが、半ば転げまわるような形で暴走を開始する。
他のベビに向かって突進する血塗れベビ。―――だが。
「チィィィィ!?コナイデェェェェェェ!!!」
「クチャーヨゥ!キモチワルイヨゥ!!マチャーリジャ ナイデチュヨゥ!!」
「アンタミタイナ キモイノハ ホコリアル カワイイ ベビシィトハ ミトメナイデチュ!!コノ キケイ!!」
口々に言いながら一目散に逃げてゆく。
血塗れベビを気遣う者は、誰一人としていない。『大丈夫か』の一言も無い。
それどころか、そのベビを罵倒し、蔑み、挙句『奇形』とまで言ってのけた。
運が悪ければ、自分がその『奇形』とやらになっていたかも知れないのに、そんな事は頭に無い。
奴らの頭は都合の悪い事は全て忘れるような構造をしているらしい。まさにアフォしぃの思想そのものだった。
蛙の子は蛙。アフォしぃの子はアフォしぃ。という事か。
「チィハ キケイナンカジャ ナイデチュヨゥ・・・ナッコ・・・ナコ、ナコ・・・」
周りのベビ全員から非難され、行き場を無くした血塗れベビが、その場に立ち止まって呟く。
だが次の瞬間、背後に誰かの気配を感じた。ベビの顔が明るくなる。
こんな自分でも、傍にいてくれる仲間がまだ居たのかと、ベビはゆっくり振り向く。
振り向きざま、ベビは両手を突き出しながら言った。
「ナッコ♪」
―――そこに居たのは、自らと同じベビしぃでは無かった。
目の前で数多のベビを屠ってきた、フサの姿があった。
「ヂ・・・」
ベビの顔が凍り付きかけた。―――何故、未完形なのかって?
凍り付く暇も無く、その頭は蹴り飛ばされてしまったから。
蹴られた頭部は、首から離れてかなりの速度で飛んでいく。鮮血の尾を引きながら。
そのまま、遠くにいたベビの、これまた頭部に直撃した。
ゴシャッ!
「ギヂュゥゥッ!!?」
命中の瞬間、生首の直撃を食らったベビの頭部は爆散した。
そしてさらに、その頭部の破片が近くに居た数匹のベビを襲った!
グシャシャッ!!ブチュッ!バキッ!
「ブギュッ!!」
頭蓋骨の大きな破片が側頭部に突き刺さり、脳を露出させたベビ。
「アギギギギィィィィ・・・」
顔面に大量の歯が突き刺さり、まるで蓮コラ画像のようになったベビ。
「ミ゙ギュゥゥゥゥゥ!!ウヴィィィィ!!」
顎の太くて丈夫な骨の直撃を受け、顔面を砕かれたベビ。
蹴り飛ばした首がベビを直撃し、さらにそのベビの砕けた頭部が周りのベビに命中する。それはまるでビリヤードのようだった。
「チィィィィィ!!ナッコスルカラ タチュケ」
グチョッ!
唯一フィールドで生き残っていたベビを、フサが踏み潰した。
と、その瞬間。
パァン!
再びピストルの音が、高らかに鳴り響いた。
それは、競技終了を知らせる合図だった。
「競技終了ォォォォォォォォ!!100匹屠殺完了っ!!」
「フサギコ選手、お疲れ様でした〜!」
すっかり興奮したモララーが叫び、ガナーはフサに労いの言葉をかける。
「タイムはぁっ・・・6分7秒!!これはいきなり好記録っっ!!」
モララーのコールに合わせて、スタンドの金網を吹き飛ばさんばかりの大歓声が轟いた。
17
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:17:20 ID:???
「ラグビーの動きを応用しての虐殺!いやぁ、お見事だったよ〜!」
モララーがすっかり上気しながらフサを褒め称える。
フサは「ありがとうございます!」と一礼。
「それではフサギコ選手、控え室、或いは観客席の方へお戻り下さい!ありがとうございました〜!」
ガナーのアナウンスを聞き届けてから、フサは司会、スタッフ、観客の順に礼をしてから、退場口へと消えていった。
―――一方、親しぃは。
「イヤァァァァァァァァァァァ!!ベビチャンガァァァァァァァ!!」
「ビェェェェェェェェェェェン!!ベビチャンガ シンジャッタヨォォォォォォォ!!」
「ハニャーン!ハニャーン!!ハニャァァァァァン!!!」
「アニャニャニャ・・・ベービチャァーン・・・」
愛する我が子とその仲間達が目の前で惨殺された親しぃ達は、完全に狂乱状態だった。
中にはショックから完全に思考回路が消し飛び、抜け殻のようになったしぃもいた。
やがて親しぃ達は、スタッフの手によって強制的に退場(泣き喚く奴・狂った奴は蹴り出して)させられた。
「う〜ん、すごいのじゃぁ・・・」
妹者が感心しきった様子で呟いた。
兄者がそれに同意する。
「うむ、まったくだ。だが妹者よ。感心するのはまだまだ早いぞ。これからまだ何人も競技を行うのだからな・・・」
「楽しみなのじゃ!」
兄者の言葉に、妹者は待ちきれないといった表情で笑った。
それから、何人もの挑戦者がバトルフィールドに現れ、ベビ達を虐殺していった。
(ちなみに、競技終了後のフィールドはスタッフが死骸を片した後、機械で土をまるまる入れ替える為、ほぼ元通りになる)
無難に虐殺した者もいたし、中にはかなり特異な方法をとった者もいた。
挑戦者NO.09である、有名料理店『モナ場料理店』の料理人モナーは、何とベビ達を100匹全員ベビフライにしてしまった。
油を高温に熱したり、ベビを捕まえて巨大鍋に放り込むのに時間が掛かった為に優勝は望めそうに無かったが、本人はとても満足した様子。
そのベビフライは司会の2人やスタッフ、抽選で決定した観客に配られた。
誰もが皆、百人百様の虐殺に魅了されていた。
―――控え室。
弟者と共にずっとモニターを見上げていたつーが、不意に立ち上がった。
モニターの中では、挑戦者NO.10の大工ギコが、ベビを鉋(かんな)でガリガリ削っている。『ギヂィィィィィィ!!!』という悲鳴が響いていた。
「ジャ、ソロソロ行ッテクルゼ」
「ん、もう出番なのか?」
つーの言葉に、弟者が反応する。
つーが答えた。
「アア、アタシハNO.12ナンデナ。1ツ前ノ挑戦者ノ競技中ニ、準備室ヘト移動スル事ニナッテルンダヨ」
なるほど、と弟者が頷いた。
「まあ、頑張って来い。前回優勝者だからって、気負う必要は無いさ。リラックスして、な」
「言ワレルマデモネェッテ。・・・アリガトヨ」
弟者の激励につーは微笑んでから、『出場者準備室』のプレートが掛かったドアを開け、その先に続く階段を下りていった。
その背中に確かな自信を感じ、弟者は少しだけ安堵してから、もう一度モニターを見上げ直す。
今度は別のベビが、エアーネイラー(電動釘打ち込み機)で釘を打ち込まれまくっていた。『アニ゙ャア゙ァァァァァァ!!!』というベビの悲鳴が聞こえて来た。
「さあさあ!いよいよ真打ちの登場です!」
モララーの一層大きな声が、スタンド中のAA達の耳を打った。
続いてガナーが、これまた普段より大きな声で告げた。
「挑戦者NO.12!!前回大会優勝者・・・つー選手の登場ですっ!!」
ドワァァァァァァァァ!!!!
その瞬間、爆弾が爆発したとも聞きまがう、凄まじい歓声が轟いた。
恐らくスタンド中どころでは無い。町内広場中に響き渡った事だろう。
歓声と共に登場した、小柄な少女。
「あ、つーちゃんなのじゃ」
妹者がつーに向かって手を振る。兄者も、少し驚きながら唸った。
「う〜む・・・前回優勝者はつー族の女の子とは聞いていたが・・・まさか弟者の友達だったとはな」
当の本人は、モララーからのインタビューに答えていた。
「今回も華麗なナイフ捌きを見せてくれると期待してるよ〜!ところで今回の目標は?」
その問いに、つーは即座に答えた。
「勿論、V2達成ニ決マッテルサ!アーッヒャッヒャッヒャッヒャ!!!!」
「頼もしいお言葉!!是非頑張ってちょーだい!!」
「ではつー選手、準備をお願い致します!」
司会2人の声に押されて、つーは準備を始めた。
18
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:19:16 ID:???
『準備』とは言っても、つーは何やら硬い物がぎっしり詰まっている麻袋を2つ、腰にそれぞれ左右に括り付けただけだった。袋の口は背中の方を向いている。
そして、壁際のボタンを押し込む。ランプの点灯を確認してから、モララーがマイクを手に取る。
「おっと、準備が出来たようですね。ガナーちゃん、ベビの方はスタンバイ・オーケィ?」
「こっちも準備完了ですよ〜。それでは、間も無く競技開始です!」
ガナーの言葉通り、フィールドには既にベビしぃが100匹入場完了していた。
前述したが、フィールドは競技が終わる毎に綺麗に掃除される。ベビ達は100匹ずつ完全に隔離されて待機する為、誰一人として『ここで虐殺があった』という事実には気付かない。
それは親しぃも同じだった。
「ベビチャン、イイナァ。ナッコシテ モラエルナンテ・・・」
「デモ、ナンデ ギコクンジャ ナイノヨ!アンナ アヒャッタヤシニ ナッコサセタラ ベビチャンノ キョウイクニ ワルイジャナイノ!」
「マア、シィチャンハ ヤサシイカラ、ダッコサセテアゲテモ イインジャナイ?」
「カワイイシィチャンノ、カワイイベビチャンヲ ナッコデキルコトヲ ナイテ カンシャシナサイヨ!」
そんな喚きが聞こえてくる。バレる気配は全く無い。もっとも、バレた所で防ぎようも無い訳だが。
つーはというと、親しぃの言葉に軽くカチンと来たのか、親しぃの方を睨み付けながら、腰の袋に手を伸ばしたり、引っ込めたりしている。
どうやらあの中には武器が入っているようだ。
しかし間も無く競技が始まるというので、つーは視線を前に戻す。
視線の先には、ベビが100匹。ナッコを要求したり、つーが男に見えるのかコウピを要求するものもいたり、眠っていたり―――。
「では、よ〜い・・・」
ギコが空砲のピストルを構える。つーは軽く深呼吸しながら、体を少し屈める。
兄者、妹者を始めとする観客も息を飲む。スタンド中が静寂に包まれた。
―――否。ベビと親しぃだけは騒いでいたが。
そして―――。
パァン!
ピストルの咆哮と共に、流星の如き勢いでつーが飛び出した。
あちこちから聞こえてくる「ナッコーー!!」やら「チィヲ ナッコチナサイヨー!」とか言う声を完全に無視して。
その瞬発力は、確実に本日の出場者の中でも最速だろう。
フィールドの中央付近まで走り込んだつーは、右手を腰に回し、袋の中に突っ込む。
一瞬、風を切るような音がした。はた、と見た次の瞬間、つーの腕は顔の前を通り、右手は彼女の左側頭部の所にあった。
何が起こったのか、観客には全くわからない。
しかし、すぐに分かる事となる。
19
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:19:56 ID:???
「ヂィィィィィィ!!」
「ヂギャァァァァァァァァ!!!」
「ア゙ア゙ァァァァァァァァ!!」
という、3つの悲鳴が聞こえて来たからだ。
見やれば、つーの前方5、6m先に居る3匹のベビの顔面に、細めのナイフが突き刺さっていたのだ。
それぞれ眉間、こめかみ、右目。どれもベビの頭部を貫き、後頭部から切っ先が飛び出している。
「な、なにが起こったのじゃ・・・?」
目をくるくると回す妹者に、兄者が解説を開始する。
「妹者よ、説明しよう。袋の中にはあのナイフがぎっしり入ってたようだな。
で、袋に手を突っ込んだ時にナイフを3本掴んで、投げた」
「でも、投げたようには見えなかったのじゃ・・・」
「―――恐らく、目にも留まらない速さで腕を振って、投げたんだろうな。俺にも見えなかったよ。
俺達が見た時には既に顔の横に手をまわしていたが、あれはフォロースルーだろうな・・・」
「つーちゃん、凄いのじゃ・・・」
「ああ、全く・・・流石だな」
兄者が説明した通り、つーは目にも留まらぬ速さでナイフを投げた。
そしてそれは、正確にベビの顔を捉えたのだった。
その華奢な腕からは想像も出来ない程の剛速球、もとい剛速刃だ。
顔面に刃を受けた3匹が倒れ伏す間も無く、つーは走り出していた。
そして左手でナイフを1本取り出すと、体制を低くする。
怯えた表情のベビがすぐ傍に迫る。つーは軽く左手を振った、つもりだった。
ザシュッ!!
ベビの両耳、両手、両足が吹き飛んだ。噴出した鮮血の雫が、太陽の光を浴びてきらきらと輝く。
ベビがすかさず叫ぶ。
「チィィィィ!?チィノ オミミー!オテテー!アン」
「ウッサイ!」
聞き飽きたその叫びを皆まで言わせず、つーは達磨になったベビを蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされたベビ一直線に飛んで行き、親しぃの観戦席の窓ガラスの上方の壁に激突、そのままグチャリとトマトのように潰れた。
「シィィィィィィィィ!!?」という叫び声が聞こえたが、つーは全く気に留めない。
「チィィィィィィィィ!!ギャクサツチュー デチュヨォォォ!ナッコォォォォ!!」
そんな叫びが聞こえてきた。つーは視線を移す事もせず、その叫びの聞こえてきた方向へナイフを放る。
ザクッ、という音に一拍遅れて
「ギュヂィィィッ!!!?」
ベビの悲鳴が被さる。仕留めたかどうかを確認しようともせず、つーは再びナイフを1本抜く。
20
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:20:27 ID:???
その時、真正面からベビの声。
「カワイイ チィタチニ コンナンコトシテ ユルサレルト オモッテルンデチュカ!?イマナラ コウピデ カンベンチテヤルデチュ!コウピ コウピー!」
見ればそのベビは、尻をこっちに突き出しながら少しずつ接近して来る。常人なら確実に眼を背ける光景だろう。
つーは、ぎりっ、と歯軋り一つしてから、言葉と共にナイフを振りかぶる。
「アタシハ・・・」
そして、絶叫と共に腕を振りぬいた。
「―――女ダァァァァァァァ!!」
ブチュンッ!
「ギュッ・・・!?」
短い悲鳴。見れば、ナイフはなんとベビの体をぶち抜いて、貫通していた。
ナイフは肛門から突き刺さり、皮膚を破り、血管を絶ち、あばら骨を折り、心臓を貫いて、最後に口腔内を切り裂いてから口から体外へ出、失速して地面に突き刺さった。
その小さな体からは想像もつかないようなパワーだったが、つー自身はその力に酔う暇も無く、ナイフをまた取り出す。
今度は両手にそれぞれ5本ずつ。すると、つーはそのまま跳躍。高く高く上昇する。
彼女は空中で体制を直すと、ベビ7,8匹が身を寄せ合って固まっている箇所に狙いを定めた。
そして腕をクロスさせると、その両腕を広げるような形でナイフを投げつけた。
ベビの集まりに向けて、上空から風を切り裂いて10本のナイフが襲い掛かる!
ズドドドドドドドドドドッ!!!
「ハギュッ・・・!」
「ヂュィィィィィィ!!?」
「ナ゙ゴォォォォォ!!!」
「アギャァァァァ!」
雨霰(あめあられ)と降り注いだナイフは、余す事無くベビ達に突き刺さった。
顔面、後頭部、胸部、腹部、背中、首・・・被弾箇所は違えど、1匹残らずナイフの餌食。
つーがスタッ!と地面に着地した時には、既に8匹中5匹が絶命していた。
生き残っていたのはそれぞれ背中、腹部、脇腹にナイフを受けていた。致命傷にはなっていなかったが、出血はかなり激しい。溢れるなんてもんじゃない。噴出している。
放って置けば確実に死ぬ―――誰もがそう判断した。それはつーとて例外ではなく、未だにしぶとく「ナ・・・ナゴ・・・」と呟くベビをスルーし、ナイフを新しく抜きながら辺りを見渡した。
今度は両手に1本ずつ。それを構え、つーは突進した。
フィールドを縦横無尽に駆け回り、ベビの横を通り抜ける度に、つーは腕を動かす。
そしてその度に、ベビの体から鮮血が噴き出すのだった。体の一部も一緒に吹き飛ばし、時にはまるまる首や上半身を無くす者もいた。
ウオォォォォォォォォ!!
会場のボルテージは最高潮だった。
阿修羅の如き勢いでナイフを駆るつー。彼女が傍にいたベビの首を切断した瞬間、彼女は大きな声で笑った。
「アーーーーーーヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!!!」
その笑い声は、観客達に最大の興奮を、ベビ達に絶大な恐怖をもたらした。
21
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:21:48 ID:???
まるで真っ赤な絨毯を敷き詰めたかのようなフィールド。むせ返るような血の匂い。
その中央で、銀の刃を煌かせながら舞う少女。
彼女が動くたび、フィールドに真っ赤な花が咲く。
「チィィィィィ!モウ ヤァヨォォォォォォォ!!!」
ベビしぃの悲鳴。
しかし、耐え切れぬ恐怖から発したその叫びが、皮肉にもその『恐怖』の根源を呼び寄せる結果となる。
つーが、叫びを発したベビの方を向いた。思わずビクリと竦むベビ。
そして、右腕を軽く振る。放たれたナイフが、太陽光を反射して眩しく光った。
グシャッ!
「ジギュゥッ!!?」
哀れ、叫びを発したベビは、鋭いナイフにその小さな心臓を貫かれて逝ってしまった。
噴水のように噴き出す鮮血にも目もくれず、つーは足元に居たベビを蹴り上げた。
「アニャァァァァ!」
まるでサッカーボールのように高く舞い上がったベビ。
それと同時に、つーはベビと同じ高さまで跳躍する。
空中でくるりと体を捻って1回転してから、つーがナイフを水平に構えた。
「ナッコチュルカラ タチュケ・・・」
「ヤダネ!アッヒャッヒャ!」
短すぎる会話。
そして―――
ザンッ!
「アギュッ・・・」
横薙ぎに振るわれたナイフは、正確にベビを腹部の辺りで真っ二つに切り裂いた。
腸をぶら下げながら飛んでいく上半身と、糞尿になりかけの物体を撒き散らしながら落ちていく下半身。
つーは着地と同時に、少し離れた場所に居るベビ―――最後の一匹目掛けて走り出した。
爆風の如き勢いで迫る、小さな小さな『災厄』。
ベビは、つーに背を向けて逃げながら絶叫した。
「ナッコォォォォォォォォ!!ナコスルカラ ユルチテェェェェェェェェェェ!!」
だが、ベビしぃの渾身の叫びは、つーの心を1nmmですら動かす事は出来なかった。
「ソレシカ言エネェノカ・・・ヨッ!」
ドガッ!
「ヂィィィィィィィィィィ!!!」
あっという間にベビに追いついたつーは言い切ると同時に、ベビを思いっきり前方へ蹴飛ばした。
ベビは悲鳴を発しながら一直線に飛んで行き、そして。
ゴシャッ!!
「ビュギィッ!!??」
何と、親しぃ達の特別観戦席の窓ガラスに激突して張り付いた。
「イヤァァァァァァ!!」
「シィィィィィィ!!?」
親しぃ達の悲鳴が聞こえてくる。と、その時。
「ベビチャン!オカアサンハ ココヨ!!」
最前列に居た1匹のしぃが、ベビに向けて叫んだ。
何と皮肉な事か。顔面を骨折し、鼻血を垂れ流してガラスに張り付く何とも醜い有様のベビを、その母親が眼前で見る羽目になろうとは。
ベビも母親に気付いたのか、声を絞り出す。
「マ・・・マ、マ・・・」
「ベビチャン!ベビチャン!!シッカリシテェ!」
親しぃが、ガラスの向こうの我が子に向かって必死に手を伸ばす。
たった数cmのガラス窓に隔てられた親子。このガラスさえ無ければ、ベビちゃんを助けられるのに。
親しぃは無駄と頭では分かっていながらも、手を伸ばす。
ベビが今生の頼み、といった感じで、言葉を紡ぎだした。
「マ、マ・・・ナ、ナ、ナ゙」
ブシャッ!!!
22
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:22:13 ID:???
「ギュピィィィッ!!?」
刹那、窓ガラスが真っ赤に染まった。
たった今まで張り付いていた筈のベビは、頭部をざっくりと割られて一瞬で命の灯火を掻き消された。
噴き出した血が窓ガラスを紅く染め上げ、まるでステンドグラスのよう。
ベビの頭部は真っ二つに分かれて頭の中身をぶち撒けながら落下、窓ガラスには張り付いた首から下が残された。
血飛沫の向こう側に見えたつーの姿を、親しぃ達はきっと生涯忘れる事が出来ないだろう。
「ベビチャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!!!!!!!」
親しぃの大絶叫。
数cmのガラスを隔てた先で、その若すぎる命を散らした我が子。
「マァマ、ナッコチテ」その最後のお願いを言う事も許されなかった。
叫び終わった親しぃはただ呆然と、我が子の命の残光―――ガラスの血と、残された体を見つめていたが、
パァン!
突如として鳴り響いた、競技の終了を告げるピストルの音と共に、どやどやと入ってきたスタッフ達に押し出されるようにして、強制退場させられる羽目となった。
スタッフに腕を掴まれた瞬間、我に返ったように親しぃが叫んだ。
「ベビチャン!シィノ、シィノ、ベビチャンガァァァァァァァァァァァァァ!!!!」
だが、スタッフの丸耳モナーが、軽い肘鉄と共に放った、
「五月蝿いモナ!あんな生ゴミ以下の命が無くなったくらいで、ガタガタ騒がないで欲しいモナ」
という、しぃ達にとってあまり冷徹過ぎる言葉によって、黙らざるを得なかった。
「終了ォォォォォォォ!!ブラボォォォォォォォ!!」
鳴り止まない拍手の中、モララーが叫んだ。
彼の顔はすっかり真っ赤、かなり興奮していた。
「つー選手、お疲れ様でした〜!いやぁ、本当に素晴らしかったですよ!」
ガナーも彼女を褒め称えた。
その言葉を聞いて、つーは血が飛び散って所々赤い顔でニッコリと笑った。虐殺の疲れを微塵も感じさせないその顔は、充実感と爽快感に満ち溢れていた。
「タイムは・・・おおぉぉぉぉぉぉぉ!!!5分27秒!!早いっ!早すぎるぅ!!」
「アッヒャァァァァァァァァァァ!!!」
モララーが告げた自らのタイムを聞いたつーは、喜びを隠そうともせずに叫んだのだった。
両手を天に突き出し、全身で喜びを表すつー。
「これは凄い!大会史上、第2位のタイムです!!史上最速のタイム、5分21秒と僅か6秒差!!」
「これはもうV2ケテーイかぁっ!?素晴らしすぎる虐殺をありがとうっ!つー選手、戻ってチョーダイッ!!」
興奮の坩堝(るつぼ)と化したスタンドに、司会2人の声が響き渡る。
つーは司会、スタッフ、そして大観衆にまとめて手をぶんぶんと振ると、ガッツポーズをしながら退場口へと消えていった。
23
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:23:24 ID:???
つーが意気揚々とフィールドを去った後も、歓声が絶える事は無かった。
その後に出てきた挑戦者達が、これまた見事な虐殺を披露していったからである。
例えば、硫酸プールに次々とベビを放り込んで溶解させたNO.15の科学者じぃ。
プールがスケルトンになっていた為、観客達はベビが溶けゆく様子をじっくり観察する事が出来た。
他にはNO.18、食品工場勤務のニダー。
彼は特製超激辛キムチ用唐辛子ペーストなる物を次々とベビの肛門にぶち込み、まるでジェットの如く糞を爆裂させた。彼は100匹全員脱肛という、ある意味凄まじい記録を打ち立てた。
『我が国の誇り、思い知ったかニダ!ウェーハッハッハッハ!!』と、彼は笑っていた。
そして―――。
「さあいよいよ、最後の挑戦者です!」
マイクを通したガナーの声。
手元の資料を読みながら、モララーが言った。
「ん・・・おやぁ?どうやらこの選手は、飛び入り参加のようですね!これは期待!
では、ご登場願いましょう!挑戦者NO.20―――流石 弟者選手です!!」
コールを聞き届けた弟者が、入場口からフィールド内へと姿を現した―――その時。
『あーーーにーーーじゃぁーーーーーーーー!!!!頑張るのじゃーーーーーーーーーーー!!!』
スタンドに何百人と集まった観衆の大歓声にも劣らない大声が、スタンド中に響き渡った。
その何百という観衆、そしてスタッフに司会者の視線が、一斉に声の主―――妹者に注がれる。
「お、おい、妹者・・・恥ずかしいからやめてくれって・・・」
隣に座った兄者にとっては、殆ど晒し上げ状態だった。顔を真っ赤にして妹者に囁くと、彼女は
「ふぇ?」
とすっとぼけたような声を上げたが、スタンドに集まった全てのAAの視線が自分に注がれている事に気付くと、
「あ・・・は、恥ずかしいのじゃ・・・」
これまた顔を真っ赤にして、兄者の膝元に隠れてしまった。その様子を見て、スタンド中からどっと大爆笑。
笑いを必死にかみ殺しながら、モララーがマイクを構える。
「く、くく・・・失礼。どうやら、ご家族がいらっしゃるようですね・・・あれは妹さんですか?」
弟者は「・・・え、は、はい・・・」と呟いた。やはり顔が赤い。
それを聞いたモララーは、ニコリと笑って、
「可愛いお嬢さんですね。それに、あんなに大きな声で応援してくれるなんて・・・いい妹さんじゃないですか。羨ましいなぁ」
そう言った。
今度はスタンド中から拍手喝采。妹者はまだ頬を赤らめながらも、立ち上がってぺこぺことお辞儀を繰り返す。
拍手が止んだ辺りで、ガナーが苦笑する弟者に問いかける。
「今回は飛び入りでご参加のようですが、何故参加を?」
その質問に弟者は、
「いやあ、最初は観戦目的だったんですがね・・・兄と妹に薦められたんで、やってみようかなと」
つーに答えたのと同じように答える。
今度はモララーから質問が飛んできた。
「そういえば、弟者選手はあのつー選手と同級生だとか」
弟者が「ええ、結構つるんでます(w」と答えると、モララーは興味津々な顔つきになって、
「つー選手は、学校ではどのような感じなんですか?やっぱり虐殺を?」
と訊く。弟者はニヤリと笑って答えた。
24
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:23:49 ID:???
「ええ、そりゃあもう。以前校庭にアフォしぃが侵入した時なんかですね、授業中なのに真っ先に飛び出していって駆除してましたよ。
で、案の定先生からお説教。『アフォヲ駆除シタンダカラ、ソコマデ怒ル事ナイダロ!』って口答えしたら、デコピン喰らったらしいですよ。
それだけなら良かったんですが、つーの奴、その先生の授業だけ成績をガクンと下げられましてね。親に怒られるって、涙目になってましたww
武装したアフォしぃにも臆することなく立ち向かっていくのに、親には勝てないんですね・・・。
そういえば競技の時も何やら叫んでましたけど、やっぱりよく男に間違えられるそうですよ。そのくせ、男に間違うと怒る。
だったらもう少し女らしくしたらどうなんだと小一時間・・・」
つーの赤裸々な学校生活を次々と暴露する弟者。実に楽しそうだ。スタンドからは笑いが絶えない。
しかしその時、再び大声が。
「弟者・・・テメェェェェェ!!!ナニ勝手ニ喋ッテンダヨォ!ブッ殺スゾ!!」
見れば、兄者の横にいつの間にかつーが。恥ずかしさと怒りで顔が赤い。
「おおっとぉ、ご本人登場だ!弟者選手、明日の学校が怖いですねぇ・・・情報料として、治療費は半額くらいならお支払いしますよ?」
モララーのこの言葉に、会場がさらにどっと沸く。笑いすぎて椅子から転げ落ちる観客も居た。
弟者は肩を竦め、「おお怖・・・」と呟く。
つーは最後に、
「コレダケ言ッテオイテ、肝心ノ競技ガ全然ダメナラ、本気デ怒ルカラナ!
モシ全然ダメダッタラ・・・トリアエズ明日ノ学校デ、上履キニゴキブリ仕込ンデヤルカラナ!!シッカリヤレヨ!」
それだけ叫んで、頬を膨らませながら椅子にすとんと着席した。
モララーはニヤニヤと笑う。
「何だかんだ言って、応援してくれてますね・・・これは頑張らないとマズーですよ?」
今度はガナーがぽそりと呟いた。
「いやぁ、仲が良さそうで何よりですね」
思わず弟者は苦笑。
「まあ、せめて文句を言われない程度には頑張ります・・・」
「それでは弟者選手、準備をお願いしま〜す!」
ガナーのコールを聞いた弟者は、とりあえずレンタル武器が並べられたテーブルに向かって歩いていった。
25
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:25:06 ID:???
(さて・・・どうするべきか)
弟者は思案していた。飛び入り参加の為、武器は持参していない。となればレンタルするのが吉だろう。素手にはそこまで自信が無い。
テーブルの上には剣、ナイフ等の刃物類や槍なんかの長柄武器、ハンドガン、手榴弾、棍棒にハンマーetc―――様々な武器が並んでいる。
他にも絞殺用のピアノ線に、ロケット花火、爆竹、画鋲等の言わば『虐待用』の道具もある。
弟者は暫く武器を眺めていたが、ぽん、と手を打つ。
(この方法で逝くか・・・ならば、まずは相手の数を減らさないとな―――よし!)
弟者はポケットにピアノ線と手榴弾を2,3個ねじ込み、小剣とハンドガンを手に取ると、すぐ傍の壁に設置されたボタンを押し込んだ。
ランプが灯り、司会2人がマイクを構える。
「おおぅ!準備が完了したようです!どうやらスタンダードな方法を採るようですね」
「では、本日最後の挑戦、間も無くスタートです!」
弟者は前を見据えた。フィールド中にベビが散らばっている。
あちこちから、「ナッコ」「コウピ」「ハナーン」「チィチィ」の声。
武器を握る手に思わず力が篭った。
「それでは、よ〜い・・・」
ギコの声が聞こえた。
「ちっちゃい兄者・・・」
ぎゅ、と祈るように両手を組んだ妹者が呟く。
兄者は腕を組んで、弟者に視線を注ぐ。
その隣で、つーも同様に彼を見つめている。
そして、
パァン!
ピストルが短い爆音を発した。
弟者は素早く飛び出すと、辺りを見渡す。
ベビが周りから、次々と這い寄ってくる。
「チィヲ ハヤク ナッコ シナチャイ!」
すぐ傍にいたベビが喚く。
よし、と弟者は心の中で呟くと、何の躊躇いも無く手にした剣を足元へ突き出した。
すかさず、
「アギュゥゥゥッ!!?」
ベビの悲鳴が聞こえ、足に何やら生暖かい感触が伝わる。
そして「チィィィィィィ!?」「ギャクサツチュー デチュカ!?」「チィノ ナッコハ ドウナルンデチュカー!」等の五月蝿い喚き声が聞こえてきた。
弟者は血に塗れた剣を振り上げ、そばでナッコナッコと騒いでいるベビの頭上に振り下ろす。
赤い液体がぱっと散り、「ウヂュゥッ!!?」という断末魔。止め処無く噴き出す血と共に、ベビの命も流れ出ていった。
「ハニャァァァァン!!ベビチャンガ シンジャウヨゥ!!」
「ギャクサツチュウ、ヤメナサイ!!」
親しぃの声が聞こえた。弟者は少し眉を顰め、足を振り上げた。
そのまま足元のベビに向かって足を振り下ろす。柔らかい物を潰す、気味の悪い感触が
グチュッ!
という音と共に伝わる。
「グブヂュゥ!?」
異様なベビの声を聞いた弟者は、その無残に潰れ、見るのも嫌気がする死骸を摘み上げる。
そして、そのベビだった肉塊を、未だギャーギャー喚く親しぃの席へ向かって投げ付けた。
ビチャッ!!
元から潰れていたベビ風肉塊はガラス窓にぶつかり、気持ち悪いSEと共にさらに醜く潰れて拡がった。
「シィィィィィィィィィィ!!!?」
という悲鳴が場内に響き渡る。その声は、まさに観客達にとっては興奮剤のようなもの。歓声が一層大きくなった。
26
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:25:30 ID:???
ビビらせるには十分だろう、と思った弟者は、今度はハンドガンを構える。
そして、少し離れた所で必死に
「タチュケテェェェェェェェ!!」
「ナッコモ コウピモ ナンデモチュルカラ ユルチテヨゥ!!」
「チィヲ コロチタラ マァマガ ダマッテナイデチュヨ!」
とか何とか言いながら這いずるベビ数匹を捉えた。
本人はかなり必死なんだろうが、動くペースはあまりにスロウ。弟者にとっては殆ど的。当ててくださいと言っているようにしか聞こえない。
「ベビしぃ、必死だな」
弟者はひとりごちると、トリガーを連続で引いた。
パン!パン!パァン!!
競技開始時にギコが鳴らしたピストルに酷似した音が響いた。
発射音とマズルフラッシュを伴って撃ち出された弾丸は、正確にベビの急所―――眉間、左胸、顔面etc―――に風穴を穿たう。
「アギャァァァァァ!!」
「ウジィィィ!?」
「ナ゙ゴォォォッ!?」
口々に断末魔の叫びを上げて、ベビ達は朽ちた。
弟者は特にリアクションする事も無く、再びトリガーを引いた。
パァン!パァン!パァン!
新たに撃ち出された弾丸は、やはり離れた所にいたベビ達を確実に黄泉の国へと誘うのであった。
「ビュゥゥッ!?」
「ナ゙ゴ、ナ、ナ、ア゙ア゙ァァァァァァァ!!」
「ピギャァァァァ!?」」
1匹目は首、2匹目はこめかみ、3匹目は左胸から鮮血を噴き出しながら、そのまま倒れ伏す。
弟者の射撃技術はかなりのものだった。ここまで1発も撃ち漏らす事無く、ベビを仕留めている。
観客席から聞こえて来た『いいぞ〜!』という歓声に片手を挙げて応えると、弟者はまた走り出す。
そして、逃げ惑うベビしぃ達を次々と葬っていった。
27
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:25:57 ID:???
「せいっ!」
「ナッゴォォォォォォ!!」
気合の掛け声と共に剣を振り抜く弟者。悲鳴を上げるベビ。
弟者の振るった刃は、ベビの意思を一切無視。ベビの腹部を切り裂いた。
「ナギュォォォォ・・・ォ・・・」
間延びした悲鳴と共に、切り裂かれた腹から臓物がこぼれた。蚯蚓の様な腸が、ベチャリと音を立てて地面に墜ちる。
止めを刺そうとはせずに、弟者は手にしたハンドガンのリロード作業を行っている。
グリップの底部から、空になったマガジンが落下。
落ちてきたマガジンは、しぶとく命を繋ぎ止めているベビの、腹部よりこぼれ出る臓物を直撃した。
グチッ
「ア゙ヴィッ・・・?」
何とも可笑しな呟きを残して、ベビが白目を剥いた。
どうやら、落ちてきたマガジンの衝撃が予想以上に強く、直撃を受けた内蔵が裂けたらしい。
弟者はというと、弾丸を詰め終えたハンドガンを前方へ突き出し、狙いを定める。
「ナッコォォォ!ナコスルカラ チィダケデモ タチュケテヨゥ!ナコナコナコナコナコナコ」
パァン!パァン!
「ナコナコナギャァァァァァァァ!!」
ナコナコ五月蝿く騒いで観客を見事にイラつかせていたベビは、弾丸を頭部に撃ち込まれて血液&脳漿を撒き散らした。
そこで弟者は、一旦虐殺の手を休めて辺りを見回してみた。
そこここに自らが仕留めたベビの死骸が横たわり―――バラバラになってて横たわる事も出来ないベビもいたが―――、
残ったベビはあちこちで逃げ惑ったり、怯えている。恐怖のあまり竦んで動けない者もいた。
素早く数を数えてみる。10,20,30―――40匹前後か。
「そろそろだな・・・」
弟者が呟いた。
すると彼は、何と持っていたハンドガンをしまい、剣をその場に放り出してしまった。
スタンド中からどよめきが起こる。それはそうだろう。
1分1秒を争う競技の真っ最中に、武器を放り出すなんて前代未聞だからだ。
しかし、弟者の妙な行動はこれだけでは無かった。
次の瞬間、弟者は何と実況席へと走って行ったのだった。
選手がいきなり実況席に向かってくるなんてこれまた前代未聞。
面食らった表情のモララーに、弟者が早口で言った。
「紙とペン、お貸し願えますか?」
「え、あ、ああ・・・紙とペンね、はい」
突然の要求にモララーは多少慌てながらも、B4サイズの画用紙とボールペンを渡してやる。
弟者は一礼すると、素早く取って返し、まず紙を2つに裂いた。
次に、片足を上げて自らの太ももを下敷き代わりにして、2つに裂いた紙の内、片方に素早く何かを書き込む。
そして、フィールド中に聞こえるように大声を張った。
「ベビちゃん達!よ〜く聞いておくれ!」
その言葉に、ベビ達が少しだけ反応する。勿論、かなり警戒はしているが。
しかし、弟者の次の言葉を聞いた瞬間、その目の色が変わった。
「今から俺がこの紙を放るから、それを取って俺の所へ持ってきてください!
持って来たベビちゃんを、好きなだけナッコしてあげます!」
言い切ると同時に、弟者は紙片を投げた。
そよ風に煽られた紙片は、少し飛ばされてから地面に落ちる。
ベビ達はというと―――
「ナッコ!?」
「チィヲ ナッコチテクレルノ!?」
「ヤット コノチィノ カワイサニ キヅイタンデチュネ!」
「チィィィィ!アノカミサンハ モラッタデチュ!」
ついさっきまで自分の仲間達が惨たらしく殺されていた事などとうに忘れ、その小さな目をらんらんと輝かせ、一心不乱に紙片の元へ向かっていく。
フィールドに残された全てのベビが、紙を目指して這う。
ベビ達にとっては宝の地図の如き紙片には、ただ一言『ナッコ』と書かれているのみだった。
28
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:26:25 ID:???
ベビ達の内、紙片から近かった十数匹はあっという間に紙片の元へ到達した。
先頭のベビが、紙片をその小さな手に握り締めた。
「ハナーン!ナッコハ チィノモノデチュネ!」
勝ち誇った顔でベビが言った。だが―――
ドンッ!
すぐに追いついた別のベビが、紙片を握ったベビに向かって体当たりをしたのだ。
「アニャァァァ!?」
体当たりを食らったベビはバランスを崩し、地面に倒れた。その拍子にそのベビが握っていた紙片はその手を離れ、ひらひらと舞う。
「アンタミタイナ クチョベビニ ナッコハ モッタイナイデチュ!ナッコハ コノウチュウイチカワイイ チィニコソ フサワシインデチュ!」
そんな台詞を吐きながら、体当たりをしたベビが漂う紙片へ向かって手を伸ばす。
絶対自分本位という、アフォしぃ的思想はベビの頃から備わっているようだ。
しかし、それは他のベビも同じな訳で、
「マチナチャイ!アンタミタイナ ゲセンナベビハ ヒッコンデナチャイ!」
「ナッコハ チィノモノデチュヨゥ!」
「チィィィィィィ!!ナッコナッコナッコォォォォォォォ!!」
後から追いついたベビ達が、体当たりをしたベビを突き飛ばし、我先にと手を伸ばす。
そこからはあまりにも醜い争いだった。
40匹のベビしぃが、たった一切れの紙切れを求めて、押し合い、圧し合い、取っ組み合い。
口々に「ナッコ、ナッコ」と言いながら、紙をその手に掴まんと、他のベビを押しのけ押しのけ、地面を転がった。
そんな中―――
「イイカゲン アキラメナチャイ!ナッコハ チィノモノト キマッテルノ!」
ドガッ!
「ヂィィィィィ!?」
―――ついに、殴り合いの喧嘩に発展した。
ベビが放ったストレートパンチは、相手のベビの顔面に見事にクリーンヒット。
ベビしぃのパンチの威力などたかが知れているが、相手が同じベビしぃなら威力はかなりの物だ。
殴られたベビは顔中の穴から血を噴いて、地面に倒れた。
それを皮切りに、ベビ達の争いはさらにエスカレートした。
殴る、蹴る、頭突きなんて当たり前。中には、本物の虐殺者よろしく相手を『殺しに』かかっているベビまでいる始末。
「ナッコ!ナッコォォォォ!!」
ブチッ!
「ヂュィィィィィィィ!!ヤメテェェェェ!!」
傷だらけになったベビが、殴り合っていた相手のベビの耳を食い千切った。悲鳴を上げるベビ。
なんと、ついに虐殺の基本中の基本、『耳もぎ』まで登場した。
この時点で、観客の興奮度はピークに達した。
弟者自身は手を下さず、ベビ達が勝手に殺し合う。弟者の真意はそこにあったのだ。
未だかつて無かった新しい虐殺方法―――同士討ち。初めての感覚に、観客達のボルテージは上がりっぱなしだ。
その間も、ベビ達の数はどんどん減っていく。
「チィィィィ!ナッコハ チィノモノナノ!」
ブチィッ!
「チィィィィィ!イチャイヨゥゥゥゥ!!」
―――足もぎ。
「アンタニハ ナッコナンテ ヒツヨウナイノ!ナッコチナイ オテテハ イラナイデチュネ!」
ブシャァァ!
「アギィィィィィィ!!チィノ オテテガァァァァァァァ!!」
―――腕もぎ。
「ナッコナッコナッコォォォォォ!」
ドガッ!ドガッ!ドガッ!
「ナッゴォォォォ・・・ヂ、ヂィィィィ・・・ナ゙ッ・・・」
背中に馬乗りになって後頭部を連打したり、
「サッサト チニナチャイッ!」
ガブシュッ!!
「ヂュィィィィィィ!!?ナッコチュルカラ ユルチテェェェェェェ!!」
腹を食い破ったり。
ベビ達はその体を仲間だったはずの連中の血液と臓物の欠片に塗れさせ、目の前の相手を葬り去っていく。
敗北した哀れなベビは、「ナ・・・ナゴォ・・・」の呟きを残して、命の灯火を消してゆく。
因みに、『ナッコ』と書かれた紙片はすでに千切れてバラバラになり、風に吹かれてどこかへ舞い散っていってしまった。
しかし、そんな事を既に忘れたベビ達は、ただ自らの欲望の為、目の前の相手を叩き潰すだけ。
気付けば、この1分前後の間にベビの数は半分程度になっていた。
―――そこで、弟者が再び動いた。
29
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:26:56 ID:???
弟者は残ったもう1枚の紙片に再び『ナッコ』と書き込むと、ベビ達が醜く争う現場より少し離れた場所へ向かう。
そこで、ポケットからピアノ線と手榴弾を取り出すと、何やら細工。
次に弟者は、足で軽く地面を掘ると、細工の終わった2つの手榴弾をそこに置き、ぐいぐいと押し込んで固定してから土を被せた。
そして、土をかけた場所に紙片を置くと、小走りでその場所から離れ、再び大声を張った。
「ベビちゃん達!こっちにも紙があるよ〜!」
その声を聞いたベビ達が一斉に反応した。
「コンドコソ チィガ ナッコチテ モラウデチュ!」
「チィィィィ!チィコソガ ナッコデ マターリスルノ!アンタハ ドッカヘ イッテナチャイ!」
「ナッコナッコナッコナッコナッコォォォォ!!」
口々に己の欲望に染まった台詞を叫びながら、ベビ達が一斉に紙の置かれた地点へと向かっていく。
「ヂィィィ・・・ナ、ナッグォォォ・・・」
大怪我をして動けないベビをその場に置き去りにして。
弟者は何故か片手を握ったまま、離れた場所で傍観している。
やがて、動く事の出来る全てのベビが置かれた紙片を射程圏内に捉えた。
そして例の如く、紙片を求めて再び大乱闘を始めた。
骨肉の争いを繰り広げるベビ達を尻目に、弟者は先程までベビ達が争っていた場所へ行く。
体のあちこちを無くしたり、臓物を露出させたりしているベビ達の死体。同族にここまでこっぴどくやられるとは、と弟者は少しだけ戦慄した。
弟者が戻ってきたのは、数多くの死体の中にただ1匹、しぶとくも命の火を燻らせるベビがいたからだ。
「ヂュィィィ・・・ナ、ナ、ナッゴォォォォ・・・」
途切れ途切れの声で、虫の息のベビが言葉を紡ぎ出す。
死にかけのベビは、弟者の姿を捉えると、まだ残っていた左手を懸命に伸ばす。
「ナゴ・・・ナ、ゴ・・・」
まるで最後の願いだと言わんばかりに、ベビは「ナッコ」を繰り返す。
そんなベビを弟者は一瞥した後、足を振り上げて―――
グチッ!
「ナギュッ!」
何の躊躇いも無く踏み潰した。
弟者が足をどけてみると、潰れたベビの死体から、じわじわと鮮血が漏れ出して、周りの土に染み込んでいった。
弟者はその場を離れると、未だに乱闘を繰り広げるベビ達の方を向いた。
「ナッゴォォォォ!!」
グチャッ!!
「アヂュゥゥゥゥゥィィィィ!!?」」
片耳を失ったベビが、相手のベビを思いっきり地面に叩き付けた。
叩きつけられたベビは、頭部が破裂して脳みそを辺りにぶちまける。
「ナッコハ チィノモノナノヨゥ!アンタハ チニナチャイ!」
ブチュッ!
「ヂギィィィィィ!?チィノ オメメェェェェェェ!!」
こちらでは未だに無傷のベビが、両手を失って反撃の出来ないベビの目玉を抉り取っている。
それだけに留まらず、
「ハナーン!ヤッパリ カワイイチィイガイニ ナッコハ ヒツヨウナイデチュネ!サア サッサト チンデチョウダイネ!」
ブチャッ!
「チィィィィィィィィィ!?チィノオミミー!オメメー!!」
嬲るようにして、相手の目や耳を一つ一つ奪っていく。しかも、前述したが相手は反撃不可能。残虐にも程がある。
ベビ達は戦った。ただ、ナッコの為に。時に必死に、時に残虐に。アフォしぃという生き物は、ここまで自分の欲望に素直になれるのか。
しかし、ベビ達は知らない。自分達が戦っているフィールドの真下に、手榴弾が眠っている事を。
思わず顔を顰めた弟者は、一言
「―――これで締めだな・・・」
そう呟いた。
そして、不自然に握ったままの右手を、その場で思いっきりグイッ!と引っ張った。
キュポッ!
何かを引き抜くような音が微かに聞こえた。
しかし、口々に叫びを発しつつ殴り合い、蹴り合い、もぎ取り合いに興じるベビ達にはまったく聞こえなかった模様。
そして数秒の後―――
「チィ?」
「アニャッ?」
ドゴォォォォォォォォォン!!!!
30
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:28:09 ID:???
爆音を伴った衝撃波と共に、高々と舞い上がった土煙。そして、哀れなベビ達のバラバラ死体。
お分かりの事とは思うが、弟者がずっと握っていたのはピアノ線だ。そして、そのピアノ線は地中に埋めた手榴弾の安全装置に括り付けてあったのだ。
弟者はそれを引っ張って離れた所から安全装置を外し、見事な遠隔操作で手榴弾を爆発させた。
すぐ真下で2つもの爆弾が爆発したのだ。元より脆いベビしぃで無くとも、無事である筈が無い。
生き残っていた全てのベビが、手榴弾の直撃を受けていた。
両手両足は当たり前、その他首が千切れたり、腹部から四方に爆ぜていたり、中には完全にバラバラに千切れてただの肉片と化したベビも居た。
ボトボトボトッ!
ベビ達の死体が、地面に落下した。
見たところ、爆発から逃れたベビはいない。これで競技終了かと思われた―――が。
「ヂ・・・ヂィィィィ・・・」
落ちてきた死体の中から、声が微かに聞こえた。
見れば何と、下半身を失いながらも未だ生きているベビが、ただ1匹。
どんなに死に掛けであろうと、ただ1匹であろうと、生き残りが居れば競技は終了しない。その間も、時間は経過していく。
「―――なんてこった!」
弟者は素早く駆け出した。
そして、その異常な生命力を持つベビに肉薄すると、足を思いっきり後方へと振り上げ、ベビに叩き付けた。
グシャァッ!
「ニ゙ャッッ・・・」
「ナッコ」の一言も発する事が出来ないまま、ベビは顔面を蹴り潰され、再び高々と宙に舞った。
舞い上がったベビは、すぐに落下してきて、地面に叩きつけられる。そして、その瞬間―――
パァン!!
ギコの手に握られたピストルが、本日最後となる咆哮を放った。
ワァァァァァァァァ!!!
瞬間、観客達が沸きに沸いた。
さらに、大歓声の中から、
『あーーーにーーーじゃぁーーーー!』
の声を聞き取った。見やれば、妹者が両手を思いっきり振っている。兄者は頷き、つーは笑いかけてくれた。
やがて歓声が徐々に収まってきた頃、司会者の2人がマイクを掴んだ。
「いやぁ、素晴らしいっ!お見事っ!!名前通り、流石だぁぁぁぁぁぁ!!」
「弟者選手、お疲れ様でした〜!う〜ん、これは凄かったですよ!」
今にも脳溢血で倒れるんじゃないかと危惧させる程興奮したモララーと、そんな彼に苦笑しながらも、弟者に労いの言葉を投げかけるガナー。
弟者が一礼で返すと、さらにモララーが喋りまくる。
「それにしても、ベビ同士で殺し合いをさせるなんて、史上初だよ君ィ!
さらに、手榴弾の遠隔操作!飛び入りとは思えないねマッタク!!いや本当に凄い!!」
まるでガトリング砲の如く言葉を撃ち出しまくるモララーに、弟者とガナーが同時に苦笑。だが、弟者はまんざらでも無い様子だった。褒められれば悪い気はしない。
「忘れがちですけど、その前の小剣とハンドガンによる虐殺も見事でしたよ〜」
ガナーもしっかりと弟者を賞賛してくれる。
「最後の最後に凄い奴が居たァァァァァ!!弟者選手、アリガ㌧!!」
終始興奮しっぱなしのモララーのこの言葉を締めとして、弟者へのインタビューは終了した。
直後に沸き起こった大歓声が、再び弟者を包み込んだ。
31
:
へびぃ
:2007/04/17(火) 01:28:37 ID:???
「結果ァッ!」
「発表ォォォォォォォォォォォ!!!」
司会者2人の気合篭りまくりな声が、マイクに拡張されてスタンド中のAA達の耳を打つ。
同時に湧き上がった大歓声も、司会者に負けず劣らず気合十分。
綺麗に掃除されたフィールドに、弟者やつーを含む全ての選手達が整列している。
「いよいよ、本日の競技の結果を発表します!皆様、お疲れ様でした〜!」
「ギコ君が先に説明してくれたけど、1〜3位までがメダル!4〜5位が入賞!!それから、特別賞が1人!!
さあさあ、誰になるのかな!!」
改めて説明があった後、用意された折り畳み式テーブルにトロフィーやメダル、賞状、そして景品と思われる小箱が並んだ。
どうやら目録授与役も兼任しているらしい司会者の2人が、司会席からフィールドに降り立つ。
そして、ギコからモララーが金色に輝くメダルを、ガナーがトロフィーを受け取る。
ギコが残りの賞状や小箱を持って、2人の横に立った。そこで再びモララーが口を開く。
「ではっ!ではではではっ!!いきなりですが、本日の優勝者を発表しちゃいます!!
・・・とは言っても、皆さん大体察しがついてるとは思いますが・・・」
苦笑しながらモララーが言い、今度はガナーが口を開く。
「では、発表します!
『第40回百ベビ組手大会』、優勝者は・・・」
ダラララララララララララララ・・・
スネアドラムのロール音が、静寂したスタンドに響き渡る。
誰もが、固唾を呑んで次の言葉を待つ。
選手達も、一様に緊張した様子。そして―――
ダンッ!!
最後に一発、大きな音を立てて、スネアドラムの音が止んだ。ガナーの口が、ゆっくりと開く。
「―――タイム、5分27秒。挑戦者NO.06―――つー選手ですっ!!」
オオオオォォォォォォォォォ!!!
恐らく今、飛行機がこの場で飛び立ったとしても誰も気付かないだろう―――そう思わせるくらいの凄まじい大歓声。
続いて湧き上がる万雷の拍手の嵐をバックBGMに、つーが両手を天に突き出してガッツポーズ。
司会者2人とギコが、喜びを爆発させる彼女に近づいていき、それぞれ目録を手渡す。
モララーに黄金のメダルを首にかけて貰った瞬間の彼女の、金メダルにも負けない程の輝かんばかりの笑顔。皆の目に焼きついた事だろう。
トロフィーや小箱を小脇に抱えて嬉しそうなつーが、表彰台の頂上に駆け上った。
それから、モララーが口を開く。
「なお、優勝商品はメダルやトロフィー、賞状の他に、賞金30万円!
さらに、大会特製の虐殺用ナイフ10本!!よく切れるよぉぉ!!おめでと〜!!」
「ちなみに、2位以降の方にもナイフがプレゼントされますよ〜」
ガナーが付け足した。
そのままの勢いで、2人がさらに続けた。
「ではではっ!!続きまして、第2位の発表ですよ〜!
これでも十分誇れます!!では発表!!」
「はい!では、発表します!!第2位は―――」
―――スタンド入り口ゲート。
満足した顔の観客達が、ぞろぞろと吐き出されてくる。
中には未だ興奮冷めやらずといった感じで、身振り手振りを交えて友人同士、あの虐殺が良かった、いやこっちもなかなかだ、と熱く語り合う者もいる。
そんな人込みの中で、兄者と妹者は待っていた。選手として出場した、弟を。或いは、兄を。
そして、見つけた。
両手に何かを持った弟者が、ゲートをくぐって2人の前に現れた。
「ちっちゃい兄者!おかえりなのじゃ!」
妹者が真っ先に見つけ、彼に駆け寄る。
兄者が軽く拍手しながら、弟者の肩をポン、と叩いた。
「いやまったく、流石だったぞ。俺の弟としては、申し分無い結果だったな」
「そ、そうか?ははは・・・ほら」
弟者が少し照れた様子で、2人に持っていた大きな紙を差し出した。
妹者がそれを受け取り、ニコニコと笑いながら言った。
「おめでとうなのじゃ!」
弟者が差し出した紙―――賞状。
そこには、こう書かれていた。
『第40回 百ベビ組手大会 4位入賞 タイム 6分12秒』
【続く】
32
:
栄
:2007/04/19(木) 00:17:15 ID:???
初めまして・・・、栄と申します。まだまだ未熟ですが宜しくお願いします。
深夜2時、誰もいない台所の換気扇から、7つの小さな影がもぞもぞと這い出てきた。
「…誰もいないデチ…」
影の一つが辺りを見回す。
「ハニャーン♪コレデマターリデキルネ♪」
「マンマハケーンデチュ!!」
4つの影が冷蔵庫の中から手荒に食物を引っ張り出し、汚く食い散らかし始めた。
「ミュ〜」
一番小さな影も冷蔵庫の方に這っていく。
「コレデオナカノベビチャンモダイジョウブダネ♪」
冷蔵庫の中からソーセージを引きずり出し、影…ミニしぃが言った。ミニしぃは妊娠していて、中の新たな生命はもうすぐ産まれそうである。
「ベビたんを産んだらまたセクースするデチ!!」
チビギコが耳障りな声を上げる。
「チビチャンタチハモウスグオネェチャンニナルノヨ。」
「ワーイ♪タノシミデチュヨウ!」
4匹のそれぞれ異なるベビしぃ(ノーマル、フサ、みけ、ワッチィ)が声を揃えてはしゃぐ。
「ミュ〜♪」
一番小さなベビギコがもぞもぞと這ってくる。
「ハニャーン♪マターリ♪」
今、この一家は幸せだった。が、この幸せがこの一家の最後の幸せであることを誰一人知ることはなかった。
「ミュ?」
あちらこちらを這いずり回っていたベビギコがふと足を止めた。ベビギコの視線は5センチ先のチーズに釘付けだった。
「ミュミュ〜♪」
ベビギコはさっきから特に何も食べていなかった為、一目散にチーズに飛びついた。これが地獄の扉を開ける鍵だとは知らずに…。『ガチン!』金属がぶつかる音を立て、ベビギコの左腕に鉄の鋭い牙が食らいついた。牙はいとも簡単にベビギコの肉を裂き、骨に食い込んで止まった。突然のことに対応出来なかったベビギコの脳が遅れて激痛を感じ始めた。
「ミ゛ュギィ゛ィ゛ィ゛ィ゛ッ!!?」
ベビギコの口から悲痛な叫び声が吐き出される。
「ベ、ベビチャン!?」
ミニしぃが持っていたソーセージを放り投げて、叫び声を上げるベビギコに走り寄った。その時、急に部屋の電気がついた。
「こらぁ!!どこのキモゴミだぁ!!」
ゴルフクラブを持ってモララーが部屋に入ってきた。
「アナタナノネ!!ヒドイ!ドウシテシィノベビチャンヲコンナメニアワセルノヨォ!」
ミニしぃがモララーを睨みつける。
「人ん家に勝手に上がりこんどいて、冷蔵庫を荒らす害虫が開き直ってんじゃねーYO!!」
モララーがゴルフクラブをスイングした。すると、2メートル程離れた所にいたみけベビの耳が弾け飛んだ。
「ミィィィィッ!?ミィノオミミガァァァッ!!?」
泣き声が更に増した。みけベビの耳は流し台の角の生ゴミ入れに入っていった。
「真夜中にうるさい!!」
モララーがまたスイングした。
「ミィィィィッ!!ミィィィィッ!!ミ…フブヂィッ!!」
モララーが打ったゴルフボールがみけベビの顔面にめり込む。顔面全体に広がる例えようのない痛みがみけベビの脳を直撃する。みけベビの鼻が潰れ、瞼は眼球が飛び出さんばかりに見開かれ、そこから涙と血が流れ落ちる。
「ミギャァァァァァッ!!」
みけベビは手足をばたつかせて吹き飛び、壁に頭を強く打ちつけて気絶した。
33
:
栄
:2007/04/19(木) 00:18:23 ID:???
「イ…ヤァ…」
ミニしぃは口をぱくぱくさせているが言葉にならない。モララーがミニしぃに歩み寄ってゴルフクラブを振り下ろそうとした。その時、
「ミンナヲイジメナイデヨゥ!!」
モララーが振り返るとそこには、ベビしぃが震えながら二本足で立っていた。ベビしぃはまだおぼつかない足取りでヨタヨタと歩きながら叫ぶ。
「チィタチハマターリチタイノ!ジャマシュルナラアポーンチマチュヨゥ!!」
「ベビたんが初めてたっちしたデチ!!」
チビギコが感嘆の声を上げる。ミニしぃも自分に振り下ろそうとされているゴルフクラブのことさえ忘れて、はしゃぎ回りだした。
「ハニャーン♪ベビチャンガタッタ♪ベビチャンガタッタ♪」
「………。」
モララーはしばらくポカンと口を開けていたが、我に帰り、ベビしぃに向かってゴルフクラブを引きずり、歩み寄った。
「テイコウシュルナラhttpレーザーデアポーンチマチュヨゥ!!」
「妄想癖もたいがいにしろ!!」
ゴルフクラブが唸りを上げてベビしぃの腹部に突き刺さる。
「httpレーザー!!アポ…クヒィイッ!?」
ベビしぃは呼吸困難に陥って、口をぱくぱくさせ、必死に酸素を求めている。
「ベビチャンガタッタ♪ベビチャ…イャァァァァァ!ベビチャァァァァァン!!」
「チビたんのベビたんがぁぁぁ!!」
2匹が腹を押さえてうずくまっているベビしぃに向かって走り出そうとすると、
「おっと、そうはいかんざき!!」
モララーは2匹に向かってスプレーを吹きかけた。
「シィィィィ!!?」
「アガガガガ…」
2匹は床にどうと倒れ、悶えはじめた。
「いゃぁ、やっぱりア〇スジェットはよく効くなぁ。キモゴミがあっと言う間に動けなくなる。」
「ジィィィ…ベビチャンニゲ…テ…」
ミニしぃが涎を垂らしながら呟く。が、ベビしぃは腹部を押さえて転がっている。
「ヂィィィッ!!チィノポンポンガァァァッ!!?」
「HAHAHA、所詮キモゴミなんてこの程度さ。」
モララーがベビしぃを蔑んだ目で見る。それでもまだ、ベビしぃは立ち上がってモララーに立ち向かおうとした。
「ヂィィィ…マダマダアキラメマチェンヨォ!!」
「よっぽど立つのが好きなんだね。」
そう言うとモララーはベビしぃの足を掴んだ。
「チ、チィハ2CHノアイドルデチュヨゥ!ワカッタラナッコチナチャイヨォ!!」
「さっきからマターリだのダッコだの鬱陶しいんだYO!!」
そう言うとモララーはミキサーを取り出し、スイッチを入れた。ミキサーは唸りながら中の刃を回転させている。
「足なんて飾りです。キモいゴミにはそれが判らんのです。」
そう言うとモララーはベビしぃの足をミキサーに入れた。
「チィヲハナチテヨゥ!!チィハタダマタ…ッピギィィィィッ!!?」
ベビしぃの小さな足はミキサーの中の刃で切り刻まれてあっという間に消し飛んだ。
「HAHAHA、もうたっち出来ないねぇ(笑)」
「チィノ、チィノアンヨガァァァァッ!!」
続きます・・・
34
:
hage野郎
:2007/05/04(金) 00:05:51 ID:???
初めて書きました。 「糞虫についての日記」
十月の肌寒い風の中、
「キョウモゲンキニシィシィシィ〜♪
ミンナナカヨクハニャニャニャーン♪♪」
肌寒さも吹き飛ぶような胸くそ悪い歌を歌ってしぃがこっちに来る。
俺が視界に入ったのか、こんな事を言い出してきた。
「アラ、クソモララー。セッカクアッタンダカラ
このカワイイシィチャンヲダッコシナサイ。
サモナイトギャクサツチュウトシテアボーンスルワヨ。」
俺は一瞬間を置き、あざ笑うかのように言った。
「誰がてめえみたいなノミ臭い奴をダッコするんだよ。
この糞虫。」
予想どうり、顔に怒りが満ちているようだった。
「ヤッパリアンタモギャクサツチュウネ・・・・。
コノカワイイシィチャンヲブジョクシタコトヲ
コウカイサセテヤルワヨ!コノギャクサツチュウ!!」
しぃはお馴染みの棒をどこからか取り出し、
それを掲げてやってきた。
「ハニャーン!ギャクサツチュウイッテヨシダヨ!!」
くだらない罵声が飛んできた。
「死ぬのは・・・。お前だ!!!」
「ヤレルモノナラヤッテミナサイヨ!クソモララー!!」
愚かな奴、と哀れんでやった。
ふうっと溜息をつき、コートの下に仕込んでおいた
ショットガンを取りだし、構えた。
しぃはそれを見て表情を歪めたが、向かってくる。
俺はしぃが射程距離に入るまでじっと構え続けた。
このショットガンは何百ものしぃの血を吸っているのだ。
お前もこのショットガンの餌食になるのだ。
慎重に狙いを定め、堅い引き金を絞った。
「シイイーー!!!シイノオミミー!!!!」
狙いが大きく逸れて殺せなかったが、満足した。
こいつを家に連れて帰って虐待すればいい、と思いついたからだ。
無力なしぃをロープで縛り、ついでに猿ぐつわもしておいた。
やかましいからだ。
「帰ったら、たっぷりと「お仕置き」しないとね」
俺はにんまりと笑顔で言った。
「ングー!!ンググーー!!!」
俺は遠足から帰る小学生の様な気分で家に帰る。
楽しみだ。
駄文スマソ。 後、これ以上続き書けません。だれか
続きを書いてください。
35
:
hage野郎
:2007/05/06(日) 20:40:12 ID:???
やべ・・・。変換し忘れたし・・・。逝ってこよう・・・・。
36
:
魔@お初です
:2007/05/07(月) 19:00:21 ID:???
天と地の差の裏話
※この話は被虐者の視点で書かれています
『弱き者は強き者に弄ばれる』
そんな虐殺があたりまえの世界で、僕は産まれた。
母親であるしぃがモララーに強姦され、そのまま身篭って産まれたらしい。
僕は母と見た目が全然違う。
左耳は真っ黒で、右側は頬まで茶色。
三毛猫とでも言うのだろうか
母はしぃ族だから、端から見たら僕は養子である。
僕は自分の毛並みのことを聞いてみたりはしたが、母は何も言わない。
それなのに母は僕の姿が気に入らないようだ。
この世界ではしぃ族は忌み嫌われている。
ダンボールの家で待っていると、今日も母が傷だらけで帰って来た。
「・・・・大丈夫?」
「アンタノセイナノニ ナンデワタシガ ギャクタイサレナキャイケナイノヨ!
」
僕は毎日虐待を受けた。
何か嫌なことがあれば、すぐに手を出す。
「アンタナンカ イラナイノニ ナンデウマレテクルノヨ!」
そんな事を言っては、母は僕を殴る。
でも殺すまではしなかった。
何故かわからなかった。
僕は殴られようが蹴られようが母を心配していた。
何故かわからなかった。
そして、この日から僕の住む世界はがらりと変わった。
近くの公園を散歩するとのことで、僕も行く事にした。
どうやら、母は自分が何もされなかったら、僕には何もしないようだ。
話を聞いてくれない。
手すら繋いでくれない。
そんな意味も含めて『何もしない』
母は僕の前を歩く。
変な踊りを踊りながら。
変な歌を歌いながら。
僕は母の後ろを歩く。
何もせずに。
暫くすると、見知らぬモララーが目の前にいた。
「お、いいもん連れてんじゃねぇか」
「ナニカトオモエバ ギャクサツチュウ ジャナイノ! サンポノジャマy」
母が全てを言い終わる前に、モララーは母の頬を殴る。
おもいっきり殴ったのか、母はゴミ箱のある所まで吹っ飛んでいった。
大きな音がして、ゴミがばらまかれる。
37
:
魔
:2007/05/07(月) 19:01:57 ID:???
初日
モララーは母へ追い撃ちをかける。
僕はそれを眺めていた。
いや、見ることしか出来なかった。
モララーはこれでもかという位、しぃを殴り、蹴る。
鳴咽や呻きが母の身体の中から聞こえた。
休む暇なく、モララーはどこからか出したナイフで母の耳を添ぐ
「イヤアアアアアアア!!」
叫び声が響き渡る。
この世のモノとは思えないほどの悲鳴が僕の頭の中を掻き回す。
僕はそれを受け入れまいと、必死で目をとじ耳をふさぐ。
しばらくして、声がしなくなった。
恐る恐る目を開けると、モララーがこっちへ歩いて来た。
その黄色い体には血がべっとりとついている。
その奥に、血に塗れたしぃがいた。
次は僕なのだろうか。
あまりの恐怖で身体がいうことをきかない。
一刻も早く、この場から逃げ出したいのに。
「いいもん落ちてンじゃねぇか・・・」
モララーは僕の首を掴み、そのまま持ち上げる。
「・・・っ」
自分の体重が自分の首に負担をかけているのがわかる。
苦しい。
どうにかして離してもらおうともがくが、大人の力に子供が勝てる筈がない。
僕の行動は自分を更に苦しめるだけに留まった。
「お前は持って帰って遊ぼうかな・・・っと!」
刹那、視界が回る。
世界が逆さまになる。
物凄い勢いでモララーが奥へと飛んでいく。
何が起こったのか理解する前に、僕は背中を襲った激痛のせいで思考が止まった。
「ぎゃっ!」
地面にたたき付けられる身体。
何かと思えば、モララーは僕を木に投げ付けただけだった。
僕の方に近付き、再度持ち上げるモララー。
「・・・なかなか頑丈じゃねぇか、気に入ったぜ」
恐怖に震える僕に向かってきたのは、そんな言葉と。
モララーの、拳だった。
意識が戻ったのは、また身体に激痛が走ってから。
「っ・・・げほ・・・!」
壁にたたき付けられた衝撃で肺から空気が漏れる。
骨は折れてなさそうだが、身体を動かそうとすると再び激痛が走る。
「今日からお前はここで生活するんだからな」
そう言うと、モララーはシミだらけの縄を僕の首に巻く。
抗おうとはしたが、傷めつけられた身体は動かず、成すがままだった。
よくみると、安易な首輪とリードについていたシミは血糊。
「・・・さて、早速だがお前の悲鳴を聞かせてもらうよ」
38
:
魔
:2007/05/07(月) 19:03:08 ID:???
息がかかる距離で話し掛けるモララーに僕は嫌悪した。
それをモララーは気に入らなかったようだ。
大きな手が、僕の首をまた掴む。
「まずは・・・どこがいいか言ってみな」
嫌になるほど近づけられたモララーの顔が、目が大きく写る。
その奥にあるのは、悪魔だか死に神だか。
思い付く限りの畏怖の象徴全てがその目の中にあるように感じた。
それを見て僕は喉から声が漏れそうになる。
「・・・いい目だ」
心臓を掴まれたような感覚に陥る僕を見て、モララーは笑う。
口の端を吊り上げ、細く。
しかし、その目は『睨む』ということは止めていなかった。
「その目は最後にしてやろう」
そう言うと、モララーは空いた手で僕の左耳を摘む。
そして、力を込めて引っ張る。
「っ・・・痛い!痛いっ!」
必死で抵抗しようとするも、首を掴むと同時に身体の自由を奪うモララーの手の
せいで何もできない。
じわじわと込められていく力は僕にとって万力のような感覚。
目を強く閉じ、その端からは涙がとめどなく流れてくる。
止めて欲しいと叫び必死に訴えるが、モララーは僕の声を聞く度に薄く笑う。
「嫌っ!やあああああああ!!」
ぶちりと音をたてて耳がちぎれた。
僕は痛みと耳を失ったショックで声にならない叫び声をあげた。
「ああっ!!ああああああ!!!」
耳があった所から溢れ出す血が僕の顔を濡らす。
僕は必死で傷口を押さえ、頭を裂くような痛みにもんどりうつ。
モララーはそこに追い討ちをかけるように、僕の腹を蹴り飛ばした。
「ゲふっ!」
血とよくわからない液体が部屋に飛び散り、部屋を汚す。
とめどなく流れる血と止まらない激痛。
そしてゆっくりと命を奪われていくという未来を押し付けられ、
僕の身体はこれでもかというほど震えていた。
「あ・・・う・・・」
血とは違う冷たい何かが顔をつたう。
「こんなところまで頑丈とはな」
ちぎった耳を投げ捨て、頭にまだ残っている黒い突起を掴む。
「ぎっ!」
僕は歯を食いしばり、モララーの腕にしがみついて耳にくる負担を抑えようとす
る。
が、僕の手は空を掴むばかり
身体がゆっくりと宙に浮き、モララーと同じ目線まで持ちあがる。
「根元からちぎれねぇ耳は初めてだよ」
「うあ・・・あっ!・・・ああっ!」
足をばたつかせて降ろしてもらおうと必死に願っても、
それは痛みを増幅させるだけの動作に終わった。
疲弊しきった身体はいよいよ動かない。
モララーにゴミを捨てるかのように床に落とされる。
僕は受け身を取れずに人形のようにそこに崩れる。た
もう口からは変な液体しか出なかった。
「はっ・・・はあっ」
足りなくなった酸素を取り込もうと身体全体で息をする僕を見下ろして、モララ
ーが言った。
「どうせ、だ。お前に名前をやるよ」
と、どこからか出したナイフで首輪に刻みを入れる。
「っと・・・これでいいな」
「あ・・・?」
ぐわんぐわんする頭を必死で持ち上げ、焦点のあわない目でモララーを見る。
「そうか、首につけてたんじゃあ見えないよな」
「今日からお前の名前は”メイ”だ」
39
:
魔
:2007/05/07(月) 19:04:19 ID:???
二日目
目が覚めると小さな倉庫の中にいた。
あの時、モララーに名前を貰ってからまた気絶していたらしい。
辺りを見回すと、引き戸と窓しかなかった。
窓からは光が差し込んでいる。
日の傾きからして、朝なのだろうか。
ここは物をしまう倉庫というよりも、虐待専用の倉庫のようだ。
二畳半くらいの、この小さな倉庫にはメイとリードと血糊、それと水の入った器
しかない。
床には昨日メイが撒いた血と、メイのものでない血痕だらけ。
壁にも、嫌な装飾として血痕と黒い塊。
塊がなんなのかは、考えたくもなかった。
身体の節々がまだ痛むが、なんとか動けそうだ。
殆ど身体を引きずるようにして、器の中に顔をうずめる。
そして水を飲もうとしたが、ある事に気付いた。
「あ・・・」
器の中に、自分の顔が映る。
それは涙と血でくしゃくしゃになっていた。
水面にある己の顔を覗きながら、ゆっくりと頬を触る。
かさかさした感触がして、指に小さな黒い塊がこびりつく。
ふと、水面に映った顔が弾けた。
何かと思えば自分の目から零れたモノ。
昨日の一件で枯れ果てていたと思っていたそれは、決壊したダムのように溢れ出す。
メイは水を飲むことを忘れ、静かに泣いた。
泣き疲れ、また床につこうとした瞬間扉が勢いよく開く。
「ひっ!?」
突然のことに、メイは酷く驚く。
虫の声も全く聞こえない空間で、それは爆弾と同等の大きさのように感じた。
「なんだ、起きてたのか」
扉の奥から出て来たのはモララー。
街に出れば何処にでもいそうな程普通のモララーだが、メイにとっては畏怖の象徴。
モララーを見ればどんな状態であれ怯えなければならないような気がした。
「今日はこれで遊ぼうな・・・」
モララーの手には奇妙な手袋。
その中にあるのはまた奇妙な液体とライター。
メイはそれを見て背筋が凍るような感覚に陥る。
脱兎のごとくまだあいている扉へと走るが、途端に身体が動かなくなる。
「ぎっ!」
リードを踏まれ、首が絞まり声が漏れた
。
「待てよ・・・まだお前の綺麗な声を聞いてないんだぜ?」
40
:
魔
:2007/05/07(月) 19:04:55 ID:???
身体を床に強引にに押し付け、メイの自由を奪う。
メイは必死に足をばたつかせるも、モララーは全く動じない。
そして、手袋の中に仕込んでいた釘でメイの左手を打ち付けた。
「っ!! ああああああ!!!」
声にならない声がメイの喉から噴き出て、大粒の涙が空を舞った。
肉と、床を貫通する鈍い音。
刺さった所からして、手の平の骨は折れているかもしれない。
「お楽しみはこれからだ」
モララーはメイを見て嫌らしく笑うと、奇妙な液体をメイの左手にかけた。
つんと臭うそれに不快感を覚えるより傷口にしみることにメイは気が動転しかける。
そしてモララーはライターの火打ち石をそこに近づけ、擦った。
轟、という音と共に、突然左手で炎が暴れだした。
「ギャアアアアアアアアア!!!」
左手を隙間なく針でめった刺しにされるような感覚にメイは狂うように叫ぶ。
モララーは自分に引火しないようにと、その場から少し離れた。
「アッアアアアギャアアッ!!!」
ただひたすらに手足をばたつかせるが、打たれた釘のせいで動けない。
モララーはメイの不格好なダンスを唯笑いながら見詰める。
と、
「おっ」
ぶちりと音をたてて左手が床から離れた。
必死で暴れていたから予想はできてはいたが、これほど早く外れるとは。
メイは燃え盛る腕を投げ込むようにして器に向かう。
バランスを崩しながらの動作だったので、中にあった水は全部空中に舞ってしまう。
「あーあもったいない・・・まだ飲んでないんだろ?」
「うっ・・・うあっ・・・は・・・」
火が消えたのはいいが、腕自体が熱をもっているせいか蒸気がたちこめる。
低温ながらも蒸されていく腕を、いっそ切り落としたくなるメイ。
モララーは転がる器を拾い、手の中でくるんと回す。
「また水入れてやるから、その時はちゃんと飲んでくれよ?」
「あ・・・?」
不思議だった。
自分にこんなことをしておいて水だけは用意する。
折角あげたやった水をぶちまけられたってキレてボコボコにしたり。
これ以上与える物はないなんて言って更に精神を削いでいくのかと。
そう思っていたのに。
結局は食料を与えてくれていないのだから、そう深い意味はないかもしれないが。
だが、メイはその不思議を知りたくて扉の奥へと進むモララーを途絶えそうな意
識の中必死で目で追う。
扉を閉め、鍵をかけるまでモララーはこちらを見ていた。
自分の荒い息遣いしか聞こえなくなった倉庫。
気が『おかしくなりそう』な程の痛みを受け、『おかしくならない』ように耐える。
叫ぶことが、恐怖に怯えることがこれだけ疲れることだったとは。
メイは息を整えた後、いろんな事を考えながら床についた。
41
:
魔
:2007/05/07(月) 19:06:15 ID:???
三日目
夢を見た。
それはメイが産まれ育った街が舞台の夢。
被虐者と加虐者が紡ぐ色はどこにもなく、
代わりとして炎が己を自己主張し、街を支配していた。
辺り一面に踊り狂う炎の中一人立つメイ。
所々に写る黒と灰色の粒。
掴めないことからして、それはノイズのようなものだろうか。
何故自分がそう考えるのか、何故夢だと理解するのか。
明確な答えを見出ださずとも、メイはそれに納得していく。
何故炎が踊っているのか、何故視ることが妨害されているのか。
疑問を抱いては考えることを止め、メイは街の中を歩いた。
炎に包まれていながら、なお形を残す建造物達。
街路樹も枝でなく葉が作る形で松明のように燃えていた。
そんな物達を見ていても、やはりどこか落ち着いているメイ。
身体はボロボロのままだというのに、どこも患っていないような。
爛れることより先に、カサカサに焼け焦げた左手に目線を落とす。
夢の中だからだろうか。
指が全部綺麗に動く。
その動作の中には痛みはない。
健全なヒトから見れば当たり前のことにメイは少し驚いた。
釘を打たれていた箇所には穴はない。
そこを触ってみるが、骨も元通りになっているよう。
・・・どうせ夢の中のことだ。
起きればそこはまた痛む。
一つ軽く溜め息をつくと、黒い手首をぷらぷらさせながら再度街を歩く。
公園に出た。
あの時、モララーに見つかり捕まってしまった場所。
そこでメイはあるものを見つける。
「・・・」
「ねぇ、返事してよ!ねぇ!ねぇってば!」
自分の、綺麗な頃の自分の毛並みに似た子が泣き叫ぶ。
その子の腕の中には、真っ白な身体をしたちびギコが目を閉じていた。
必死に呼び掛け、叫んでも一向に起きる気配はない。
「お願いだから、起きてよぉ!!」
声は枯れ、目は涙で赤く腫れていく。
嘲笑うように燃え盛る炎。
叫べば叫ぶ程、呼び掛けている子は腐り、醜くなっていった。
メイはそれを見て、一つの感情が心の中に芽生える。
−−−情けないね−−−
42
:
魔
:2007/05/07(月) 19:07:00 ID:???
メイがそう思った瞬間、世界が暗転する。
「・・・」
瞼が降りていたということに気付くのには時間はかからなかった。
右手で目を擦り、ゆっくりと視界を広げていくと、また朝日が差し込む倉庫の中。
メイはふと何かを思い出したかのように左腕を見遣る。
そこには痛々しいとでは全て表現できそうにない程黒く焼け焦げた腕。
動かしてみると、何故か痛みはなかった。
というのも、神経が全て麻痺するほど焼かれたからだろうか。
中途半端な奇跡にメイは少し喜ぶ。
手の平の骨も、錯乱していたせいで折れたと勘違いしたんだと解釈した。
暫くして、モララーが器を持って入ってくる。
「起きてたか」
鍵をあけ、扉を開いた後倉庫の中へと姿を見せるまでメイはモララーに気付かなかった。
何故だろうか。
昨日まで畏怖の象徴であったモララーが、今ではなんとも思わなくなっていた。
「ほらよ、水だ」
モララーは目線をメイと同じ高さまで下げ、器をメイの前に置く。
メイはそれに近づき、口をつけた直後浴びるように飲んだ。
「それとな・・・今日は飯も持ってきたんだ」
その言葉と重なるのは薄く笑うモララーの顔。
メイはモララーを見上げてその表情を見ると、今やっと背筋が凍るような感覚を覚える。
「これだよ」
倉庫に入ってからずっと背中の後ろに回していた手を前に回す。
モララーが持っていたのはビニール袋。
それを軽く放り投げるようにその場に落とす。
撒かれた中身を見て、メイは一瞬思考が停止した。
そこにあったのは、ちびギコの腕と脚。
自分の四肢より少し細いそれは、まだ新しかった。
「昨日見つけたヤツのでね・・・達磨にして遊んでやったからお前と遊ぶ時間がなくてな」
クク、と嫌らしく笑うモララー。
「さあ、食べなよ」
・・・昨日水をまた用意すると言ったのはこれの為。
自分とほぼ同じ年齢のヤツの手足を飯として出されて、絶望しないヤツはいないだろう。
小さな希望を与えた後に大きな絶望を与えるのは定石・・・
「!」
モララーは一旦考えることを止める。
気付けば、メイがちびギコの腕にがっついているではないか。
噛り付く毎に見える八重歯に野性の本能のようなものを感じる。
血に濡れていくメイの口と手を見て、モララーはここで初めて嘲笑以外の笑みを浮かべた。
「はは・・・これは一本取られたねえ」
モララーは君の為にとタオルを持ってくると伝えた後、倉庫を後にした。
結果的に、メイは今日は虐待を免れる。
が、本人はそれに対し何も思わなかった。
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