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【妄想爆発】チラシの裏【大上等】

1名無しさん:2012/07/23(月) 20:55:39 ID:FfmC0Dnw
勝手にスレを立てさせて頂きました。

薄汚い妄想だろうが職人のSSにも満たない話など、何でも良いから書きたい事は此処に書け!

Q、何か書きたいけど投下する勇気が持てない…
A、恐れるな! 勇気と誇りを持って書きこもう! 我々はアブノーマル! どんな話(餌)にも食いつくのだからぁッ!

812適当:2013/10/26(土) 19:30:30 ID:mSQNyt2g
『えぇ!?』
「死ねやごらぁぁぁぁ!!」

渾身の力を込めてシャドーボールを放ち、二匹に怒りをぶつけた。二匹は、俺のシャドーボールをとっさにかわし、代わりにシャドーボールを受けた場所へ振り返る。

『うわ…。』

二匹が振り返った目線の先には、円形にくっきりと穴が空いている。二匹の後ろには、木があった。数メートル離れていたが、俺の技に打ち抜かれた。ったりめぇだ。怒り心頭の俺のシャドーボールを受けて無事なヤツなんかいるかよ。二匹は、口をあんぐりと開け、唖然としている。よし、チャンスだ。今度こそ…死ねやごらぁぁぁぁ!!俺は、二回目のシャドーボールを作り始める。けど、ターニャが俺に気づき…

「ちょ、ちょっと待ってよ!!冗談だよ!!」

って言い訳してきた。冗談?ウソ臭ぇな…。

「ラック僕達が悪かった!!だから、許しておくれぇぇ!!」

ちっ…しゃあねぇ。マタイも謝ってることだし、勘弁してやるか。流石(すが)に、進化前のポニータとツタージャなんて殺すのもあんまりだからな。

「ラック、本当にごめん!!」

はぁ…、わーったよやめてやんよ。ターニャの一言で俺は溜めていた力を抑え、黒い光を消した。その後、俺はため息をつき、聞く前の二匹の態度を徐々に理解する。

813適当:2013/10/26(土) 19:36:14 ID:snoZnHgc
「はぁ〜あ。ま、わからなくもねぇよお前達(ら)の事。ポケモンが人間に負けるなんざ…なぁ?」
「うう…。」

二匹を許しはしたが、二匹を睨みつけた。俺に睨みつけられたターニャはひるんでいる。別に“おどろかす”を使ったわけじゃねぇんだけど…。そんなターニャを救うように、マタイが俺に人間と闘う理由を訊ねる。

「でもさ、なんで人間と闘っているんだい?」
「どうしよっかなぁ〜、お前(ら)俺の事バカにするんだもん…なぁ〜。」

完全に許したワケじゃねぇよ。勘違いすんな。

「もったいぶらないで教えておくれよぉ〜。」
「ふん…。」

マタイのダメ押しを俺は軽く払いのけた。言ったって、さっきの二の舞、三の舞だ。絶対ぇ、言わねぇ!!と思っていた所に、ターニャが普段とは違う甘えるような上目づかいをする。

「教えて?」
「しつけぇ。どっか行け。」
「私達友達でしょ?さっきの事はホント悪いと思ってるから…お願い!!」

ターニャは、俺が納得するような一言を言い終え、片目をつむって両手を合わせポーズをとる。人間や、俺以外のポケモンが、“おぉ!!可愛いぃ!!教える!!教える!!”ってなるかもしれねぇが…。気持ち悪りぃ。いつまでもこうされているとウゼェから、教えてやるか。俺は二匹に理由を話す。

「ウワサ好きのミィ、知ってんだろ?」
『うん。』

二匹してうなずく。俺は、話を続ける。

「アイツがな、あの人間のオッサンが守っているのは財宝なんだと。」
『財宝ぉ!?』
「ああ。って信じねぇよな。」

814適当:2013/10/26(土) 19:55:22 ID:LqaligAw
信じられるワケねぇよ。いきなりこの森のどこかに宝があるって言われた。もしかしたら、信じてる俺がバカなのかもしれねぇからな。二匹は、俺の質問な答えず黙り込む。俺は、二匹を追い払う。

「わかったら、さっさとどっかいけ。しばらく一匹に…」
「信じるよ。」 
「は?」

ターニャの一言に俺は耳を疑い、ターニャの顔を見た。ターニャの顔は、さっきとは違う真剣なものだった。でも、未だに信じられねぇ…。ふざけてんのか、真面目なのかは。俺は、首を傾げターニャに訊き返す。

「何でだよ?急に信じるって言ったって、俺は信じらんねぇ。また、からかってんのか?信じたフリか?」
「違うよ!!」
「あ〜あ。お前は、森で一番ウソをつくのがうま…」
「ラックが意味も無く闘わない事ぐらい知ってるよ。」

あ…まぁ、そりゃ…そうだが。ターニャの言い訳が意外と正論だったので、俺はほんの少し驚いた。……。あっ、マタイとなら、あのオッサンを倒せるか?新しい可能性を導き出した俺の意図を汲み取るようにマタイが、俺に提案する。

「あのさ、なら三匹でまとめてかかれば倒せるんじゃないかい?」

三匹…、ターニャは役に立つか?頭を使って倒せる相手じゃねぇと思うけどな。

「そうだよ!!マタイ、頭いいね!!」
「えっへん!!いつもより、冴えてるねぇ〜僕。」

815適当:2013/10/26(土) 19:59:11 ID:H935kV02
その程度で冴えてるとか言うんじゃねぇ!!バカ!!馬鹿!!うましか、ウマシカウマシカ!!けど、一理あるな。ターニャは要らねぇから、とりあえず…

「ターニャは来んな。」
「ええー!!なんで、なんでぇ!?」
「邪魔だから。」
「邪魔じゃないよ!!」
「邪魔。」
「邪魔じゃない〜!!」

うるせぇな…。マタイ、黙らせろ。これ以上口出したら、焼くとか、焼くとか、焼くとか…。ターニャは頬を膨らまし、怒った顔を作る。俺は、ターニャを無視して、マタイを見てうつろな目で“なんとかしろ”とサインを送った。けど、マタイは俺の指示を無視し、邪魔者の意見を受け入れる。

「う〜ん、いや勝てないよ。ターニャ抜きでは絶対にね。」
は?なんで?
「考えてごらんよお。バカ二匹が、ウワサなる程の強い人間に勝てると思うかい?」
「バカって…お前と一緒にすんなぁぁぁ!!お前だけが、バカだ!!バカ!!バカ!!うましかぁぁぁ!!」
「僕は馬だよ。う〜ま。」

腹立つ…マジでうぜぇ!!ターニャはマタイの意見をいいことに俺を説得する。

「まかせて!!大きい人間だったら、私がおとりになる。」
「そして、僕達がひたすら攻撃。完璧ぃ〜!!いやぁ〜これで勝てるねえ。」
「チャンスがあれば、私も攻撃ぃ〜♪」
勝てねぇよ!!それで勝てたら苦労しねぇよ!!
「じゃ、ラック。そうゆうわけで、案内してくれないかい?」
意見収拾!?ウゼェのも連れて!?
「ほら、ラック。Let'sゴ〜♪」

ターニャは、マタイに続き、右拳を握り、空高く挙げ、出発のサインを出す。ああ…ウゼェ…。もういいや、負けてもまたターニャ抜きで闘えばいいことだしな。俺は、ターニャの合図を、見て割り切り二匹を連れて財宝な番人の元へ走りだした。

816適当:2013/10/26(土) 20:02:32 ID:H935kV02
財宝の番人の前…

今、俺は二匹を連れて財宝の番人が目に入る所にいる。財宝の番人…あのジジィは、森の奥へと続く小道に立ちはだかるかように、あぐらをかき目を閉じている。神経を研ぎ澄ますってヤツか?誰が来ても余裕って事か?ふざけてやがる…ムカつくぜ。

「ラック、あれがもしかして財宝の番人かい…?」

俺はマタイの質問にうなずき答える。

「ああ。ったく、見ろよ。あのジジィは、俺達の存在にとっくに気づいているハズなのに、律儀に銅像のフリなんかしてやがる…。」
「銅像…ねえ。」

マタイは、一言つぶやき財宝の番人へ目を向ける。マタイの口元が緩み、何か悪だくみを企む顔へ変化させた。は、おい…、まさか、お前…

「奇襲のチャンスだよお!!」

やっぱりか!!アホか!!そんなので勝てたら、とっくに奇襲してんだよ!!…って、おい!!待てって!!俺は、マタイの前に急いで立ちはだかる。

「待て!!落ち着け!!それで勝てるなら、俺だって…」
「ラックは機を逃してる!!この時点で負けだよお!!」
「え?おっ…おい!!バカ!!」

マタイは、軽く飛び上がり俺の上を通り、財宝の番人へと突進していった。あ〜あ…、バカ…。知らねぇぞ?らせん…何だっけ?何とかかんとかっていう変ちくりんな技をモロにくらっても。

817適当:2013/10/26(土) 20:06:04 ID:3Ci7IPGo
「ラック、これで勝ったね。イエーイ♪お宝頂き〜♪」

マタイの猛突進に、財宝の番人が倒れると見てターニャが笑い俺にハイタッチを要求して来た。勝てるワケねぇじゃねえかぁぁぁぁ!!勝てねぇっつてんだろ!!俺、50(Lv)マタイ38 お前16!!一番上の俺が奇襲しかけないのに、何でわからないの?バカなの?うましかなのか!!うましかなのかぁぁぁぁ!!俺は、ハイタッチを求めるターニャに冷たい目を向け、ため息をつく。

「勝てねぇよ。あんなので勝てるか。」
「仲間を信じようよ!!マタイの奇襲で終わっ…」
「甘い!!」

ターニャの言葉をかき消すように財宝の番人の声が周辺へ響く。ターニャは、予想外の事態に驚く。

「え…!?」

え!?じゃねぇって…。だからいったろ。ジジィが起きたみたいだな。しかも、マタイの攻撃を二本の刀でしっかりと防いだってとこか。

「僕の奇襲で倒れない。なかなか強い人間だねえ。」

マタイは、突進を二本の刀で防がれたままの状態で、財宝の番人へ言った。財宝の番人は、笑わずマタイを睨みつけ、押し返す。

「奇襲をするなど、言語道断!!」
「うぐぁ!!」

マタイは、財宝の番人に軽く飛ばされ、後ろへ追いやられ。マタイが見事に着地した所で、俺はターニャの額に自分の額をつけ、睨みつけて忠告する。

「いいか?邪魔すんなよ?」
「私に、考えが…」
「来んな。」

ターニャの提案を受けず、俺は一言だけ返しマタイの元へ合流した。今のマタイは、いつもの余裕のある顔じゃねぇ…。本気で勝つ事を考えている顔だ。

818適当:2013/10/26(土) 20:15:06 ID:OT1oaroo
「ラック、倒せなかった。すまないねえ。」
「はぁ…。いいって事よ。わかりきってた結果だしな。」

俺は、小さく笑いマタイを励ました。財宝の番人は、二本の刀を構え質問する。

「今日は、三匹で私を倒すつもりか?」

は?三匹?俺は、首を傾げ後ろへ振り返った。すると、そこに息を切らしたターニャの姿がある。来んなつったのに…。ターニャは、息を整え俺の背中に立ち、財宝の番人へ言い放つ。

「はぁ…はぁ…、そうだよ!!今日でアンタは負けるからね?」

おい!!背中に乗んな!!しかも、口を慎めよ!!っていうか、お前も参加する気かぁ!?

「ラック、私は邪魔しないよ。自分の強さ(レベル)をわかっているし、ラックが勝てなかった相手に歯が立たないのはわかってる。だから、私はラックとマタイを援護する。」

援護ねぇ…。俺は、ため息をつき、ターニャの提案を受け入れる。

「わーったよ。まず、降りろ。」
「降りない。」
「はっ?結局闘う気ねぇじゃねぇか!!邪魔だ降りろよ!!」
「降りないってば!!考えがあるから。」

考え?一応聞いてやるか。期待出来ねぇけど。俺は、右耳を後ろへ倒した。俺が耳を倒すと、ターニャは俺に小さな声で伝えた。

819適当:2013/10/26(土) 20:18:04 ID:lFXD3dtc
「とにかく走って。」
「はぁ?」
「あのオジさんの周りをぐるぐる回るようにして。」

意味あるかぁぁ!!俺は、お前の遊び道具じゃねぇぞ!!馬代わりか!!本物ならそこにいるだろ!!こんな意味ねぇ事してぇなら、マタイの背中に乗れ!!馬シカぁぁぁ!!俺は、すぐにターニャの作戦を断る。

「いやだ。バカかお前は。やっぱり降りろ。」
「そうしないと勝てないの!!」
「お前が決めるな。」
「いいから!!騙されたと思って言うとおりにして!!」

チッ、面倒臭ぇ…。一回で気が済むなら仕方ねぇな。ガキを遊ばせてるという気持ちでやるか。俺は、ターニャへ“わーった。一回だけな?”と返した。ターニャは、“うん。”と返事を返し、マタイを手招きする。

「マタイ、ちょっといい?」
「なんだい?」

マタイは、ターニャへ耳を近づける。アツイ…アツイ!!てめぇら、早く話せよな。

「私とラックがオジサンの隙を作る。そしたら、“ひのこ”で攻撃して?」
「うん。わかったよ。ターニャは頭が冴えてるねえ。」
「ふふふっ、ほめたって何も出さないよ?」

イチャイチャすんなお前ら!!背中が熱っちぃんだよ!!俺は、二匹を援護する為に口を開く。

「もういいだろ。さっそくやるぜ?」
「うん。頼んだよ。ラックが失敗したら、終わりだからねえ。」
…。本当にターニャの作戦で勝てると思ってんだな…。
『もうよいか?』

財宝の番人は、俺達三匹に勝負開始の確認を取る。だな、喋りに来たんじゃねぇ。てめぇを倒し、宝を手に入れに来たんだよ。マタイは、財宝の番人へ頷いて返す。

820適当:2013/10/26(土) 20:21:36 ID:smW3b0u6
「いいよ。打ち合わせの時間を与えるなんて、案外いい人間なんだねえ。」
「ふっ、奇襲をかける卑怯者に誉められても…」

財宝の番人の両手に力がこもる。来るな…。

「嬉しくなんかないわ!!」

財宝の番人は、俺達めがけて突進して来た。ターニャは、財宝の番人が動いた所で俺の頭をたたき、合図を出す。

「今だよ!!走って!!」

ってぇ!!たたかなくたっていいだろ!!言われなくてもやってやんよ!!俺は、即座に駆け出し、財宝の番人の周りを走り始める。

「む?こしゃくな。私の目を惑わせてまたあの黒い玉か!!」

シャドーボールって言いたいワケか。ちと、違うんだよな。ただつき合わされてるだけ。ターニャが、何かするらしいが…、まだその時じゃねぇか?
「ラック!!もっと、もっとスピードを上げて!!」

チッ…、面倒臭ぇな…。俺は、ターニャの指示に従い更に速くかける。こ…こんだけ走らせて、意味のねぇ事すんなよな?ターニャの指示を受けた、十秒後程に、ターニャが、財宝の番人に目掛けて叫ぶ。

「目くらまし!!」

ターニャが叫んだ後、俺の後ろから、ものすごい数の草、葉が飛び出した。なる程ね、グラスミキサーか。けど、“ひのこ”つかったら、台無しにならねぇか?

「ターニャ!!ナイスグラスミキサー!!あとは、僕にまかせて!!」

マタイが、どのタイミングで火を吹くかだな。財宝の番人は、突然現れた複数の、葉の嵐に巻き込まれ、左手で目を覆っう。

「うぐ!!こしゃくな…。」
おっ?効いてる効いてる。足止め効果は抜群だな。ただ、命中率を下げられたかどうかはわかんねぇけど…。
「だが…」


私には効かぬ!!

財宝の番人は、草、葉の嵐に慣れマタイ目掛けて猛突進を放つ。マタイは、草、葉の嵐に向かって火を吹く。

「残念だねえ。これが狙いだよお!!」

マタイの口から出た火は、散り舞う草、葉を燃やし、草、葉の嵐を炎の渦へと変化させた。炎の渦へと切り替わった瞬間、財宝の番人は再び顔をおおった。

「うぉぉお!?火計であったか!!」

821適当:2013/10/26(土) 20:26:45 ID:smW3b0u6
勝負あったな。あれだけの火に焼かれて生きてる人間なんかいねぇよ。ターニャにしては、役にたったな。俺は、炎の渦から離れて足を止め、財宝の番人が苦しむ声へ耳を傾ける。ターニャは、興奮しながらも俺に不満をぶつける。

「やったぁー!!大成功♪って、なんで止まってるの?」
「うっせぇ。これで、終わりだろ?財宝の場所までは、自分で歩け。」
「やだ。降りな…」
「降りろぉ!!」
「うわぁ!!」

俺は、体を激しく揺らし、ターニャを無理矢理降ろす。ターニャは、地面に軽く体をぶつけ、うつぶせになった。地面に体をつけた後、“いたぁ!!”と声を上げ、立ち上がり、俺を睨みつける。

「もう少し、優しく降ろせないの?」
「てめぇがさっさと降りねぇからだ。」
「私のおかげで勝ったんだよ?」
「てめぇじゃねぇよ。マタイだ。」

ターニャが再び、俺へ意見を唱えようとした時、財宝の番人の声が周囲に響き渡る。

「竜巻返しぃぃぃ!!」

財宝の番人が叫ぶと、炎の渦があっさり消し飛んだ。は…?待てよ…。そんな技…アリかよ?

「はぁ…はぁ…。油断した。力を感じぬ者に苦しめられるとはな。」

くっ!!こうなりゃあ、三匹で闘るしかねぇ!!俺は、ターニャとマタイに指示を出す。

「てめぇら!!あのジジィを囲め!!三匹で叩くぞ!!」

二匹は、俺に意見せずすぐに俺の指示に従い、財宝の番人を囲む。三匹なら勝てンだろ…。財宝の番人を囲んだものの、俺の中では必ず勝つという確信は無い。俺は、再び二匹に指示を出す。

822適当:2013/10/26(土) 20:30:12 ID:smW3b0u6
「一番強い技を使え!!ここで叩かなきゃ勝ち目はねぇ!!」
『うん…。』

俺の興奮、必死さを二匹は飲み込むように、うなずく。俺はシャドーボール、ターニャは葉っぱカッター、マタイは電光石火。マタイは、炎タイプだが、炎系の技は最近完成したばかりだ。燃えるモンも無けりゃ、まともに威力なんて発揮できねぇ。俺達三匹は、技を発動する構えに入る。ターニャは、ほんの少し体をひねり、マタイは、後ろ足で地面を数回はじいている。俺は、両前足に力を込め、黒い光を出現させた。

これで…倒れンだろ…。

けど、ヤツは違った。俺達三匹の位置をそれぞれ確認した後、二つの刀を構え、静かに宣言する。

止めて見せよう…。

お主らの攻撃を。

すべて…

受け止める!!

受け止めるだと?やれるもならやってみろ!!俺は、二匹に合図を出し、財宝の番人に向かって、挑戦状をたたきつける。

「ほざけ、ジジィがぁぁぁ!!」

俺のシャドーボール、ターニャの葉っぱカッターが、財宝の番人を目掛けて勢い良く飛び出す。マタイは、先に攻撃を仕掛けた俺達より、2、3秒遅れて相手を惑わすようにジグザグに素速く動き出す。財宝の番人は、何も動じずじっとしている。

823適当:2013/10/26(土) 20:35:31 ID:smW3b0u6
結局強がっただけじゃねぇか。勝ったな。

俺が、勝利を確信し始め、ほくそ笑もうとした時、財宝の番人が静かにつぶやく。

「秘技 狼影流し。」
は…?
『ぬぉぉぉぉぉ!!』

財宝の番人は、俺が目を疑うような光景を作り出した。俺のシャドーボールの中心を両方の刀で刺すように突いて消し、ターニャの葉っぱカッターを刀で遠くにはじき飛ばした。

ウソだろ…?こ…こんなんじゃ…なかった。このジジィが、こんなに強いなんて思ってなかった…。

俺は、目の前で起きた事にあいた口がふさがらない。シャドーボールと葉っぱカッターの来る向き、タイミング、速さを瞬時に計算する。さらには、シャドーボールをかき消す程の力…。悪の力が弱くなる中心を突いたとはいえ、普通の人間が俺のシャドーボールを消す事なんて出来るハズがない。

ターニャの方を見ても、俺と同じ状況を体感している。開いた口は塞がらず、目の前の光景に、ただただ驚いてばかりだ。

…は!!ヤベェ…。何か、ヤベェ!!
ターニャの顔を見た数秒後、俺は重大な事に気づき、我に返ってマタイに大声で伝える。

『マタイダメだ!!てめぇが事足りる相手じゃねぇ!!』

けど、俺の声もむなしく、得意の電光石火を当てようと、ジグザグに動き、相手の目くらましをしつつ、財宝の番人へと近づく。

「ヘイ!!ヘイ!!僕のスピードについてこられるかな?」

マタイは、財宝の番人の目前まで来る。

824適当:2013/10/26(土) 20:39:27 ID:snoZnHgc
バカ!!やめろ…!!
「こっちだよお!!電光石火ぁぁぁ!!」

マタイは、財宝の番人の左ナナメから電光石火を当てた。けど、俺の悪い予感が的中した。財宝の番人は、二つの刀でマタイの体を受け止める。マタイは、自分が思っていた感触とは違う事に目を見開く。

「え…?」

マタイが口を開いた直後、右手の刀がマタイの腹部をとらえる。

「が…!?」
「おとなしく眠ってもらおう。いい勝負だった…。」

財宝の番人はそう告げ、残った左手の刀でマタイを狙い打つ。

「がっはぁぁ!!」

マタイは、財宝の番人の攻撃で、5m飛ばされ、そのまま起き上がる事は無かった。

『マタイ!!』

ターニャと俺は、同時に叫びマタイへ駆け寄る。マタイの首からは、血が出ている。つまり、刀の刃の部分を打ちつけられたって事だ。

「ひどい……。」

ターニャは、目の前の光景に衝撃を受け、こらえていた涙が溢れ出し、マタイにすがりついて泣き出した。

「う…うわぁーん!!あん!!あん!!ひどいよぉ!!殺すなんて…ひどいよぉぉ!!」
ああ、腐ってやがるな…。これが勝負なのかよ…。俺達は…このジジィを殺すつもりなんて無かった…。

俺は、泣き出すターニャに何も言葉をかける事が出来ず、心の中で目の前の光景を否定しようとしていた。けど、財宝の番人は謝りもせず、俺達に冷徹な一言を浴びせる。

「これが、“真剣”というものよ。」
………あ?
「主達が奪おうとしていた物と命(それ)は、同等。然るべき、受けるべき運命(さだめ)よ。」

俺は、静かに怒り財宝の番人に殺意に満ちた視線を送る。

「てめ…。今何って言った?」

財宝の番人は、怖じ気づに返す。

「これが“真剣”と言ったのだ。聞こえなかったか…」


愚か者よ。

財宝の番人が浴びせた一言に、ついに俺の堪忍袋の緒が切れる。

825適当:2013/10/26(土) 20:42:58 ID:snoZnHgc
『このジジィがああああ!!』

俺は、財宝の番人へ駆け出し、怒りまかせに、電光石火を放つ。

『あああああああ!!』
「ふん!!甘いわぁ!!」

財宝の番人は、二つの刀で俺の攻撃を受け止め、マタイを仕留めた攻撃を繰り出す。俺は、怒りを維持しつつ、大きく後ろに飛んで下がり両前足に力を溜める。

『くたばれジジィがああああ!!』

俺は、両前足を合わせてシャドーボールを放つ。財宝の番人は、普段の二倍の大きさのシャドーボールに驚かず、先程俺達が目を疑ったあの竜巻を起こす。

「効かぬわぁぁ!!」

財宝の番人によって、俺のシャドーボールはかき消された。

これで終わりじゃねぇよ…。

俺は、高く飛び上がり、財宝の番人目掛けて非道の技 “あやしいひかり”を放つ。

『はぁぁぁ!!これでもくらってろぉぉぉ!!』
「ふふふ…。」
「…!?」

財宝の番人は、俺の技を瞬時に見切って上に飛び上がり、俺の真上へと移動する。

「終わりだ…。」
『な!?』

財宝の番人が、二つの刃の部分を俺の頭へ振り下ろして来た。


や…やられる…。俺も…マタイみたいに…。

826適当:2013/10/26(土) 20:45:47 ID:O1tO0jhQ
自分の頭へ向かってくる一瞬に俺の頭には、走馬灯が浮かんでくるように思えた。けど、俺の頭の中には違うものが流れていた。

不思議…じゃねぇ。ジジィの攻撃を…返せる気がする…。

そう思いこんだ瞬間、俺は自分の意志とは違う別の意志に乗っ取られ、両前足を交差させ、刀が振り下ろされる方にかざす。普段の俺なら絶対にやらねぇ防御策。自分の前足を信用してしか出来ねぇ防御。俺の右前足には、財宝の番人の両方の刃が刺さる。

「愚かな…。腕を犠牲にする…」
「バカはてめぇだ。」
「何?」
「倍返ししてやるよ。」

俺は、後ろ足が地面についた直後、財宝の番人に自分では感じた事無い力の頭突きを腹部に放つ。

「ぐっ…はぁ…。」

俺は、高く飛び上がり財宝の番人の頭の高さに自分の体を持ち上げ、両前足を合わせ振りかぶる。

「…?」
「くたばれ…」
「な!?」




ジジィが。


俺は、財宝の番人の頭へ両前足を振り下ろし、“たたきつける”を放った。財宝の番人はあっけにとられて何も出来ず、俺の攻撃を受け悲痛の叫び声を上げる。

『ぐはぁぁぁぁ!!』

悲痛の声を上げた後、財宝の番人はよろめき出す。よろめく様子を、俺は怒りを維持したまま見ている。

「ぐふっ…。」

財宝の番人は、血を吐いた所でよろめく事を止め、眉間にシワを寄せ俺へ視線を送る。

「見事…。」
何か見事だ…。それで、俺の怒りが収まると思ってんのかよ。
「主の仲間を殺めた事。わびよう。」
てめぇが謝ったって…マタイは返って来ね…
「これを授けよう。」


財宝の番人は、俺へ謝った後、鎧の隙間から手を入れ赤く光る石を取り出した。俺は、感情を保ったまま財宝の番人へ質問をする。

「何だよこれは?」
「主の…仲間を救う…最後の…」

財宝の番人は、俺に答えを明かす前に力尽き、その場にうつぶせになって倒れた。

827適当:2013/10/26(土) 20:50:00 ID:XyikfVgo
財宝の番人の左手からは、赤く光る石が転げ落ち、俺の前足へ静かにぶつかった。

何だ?この石は?

俺は、その場にしゃがみこみ赤く光る石へ目を落とす。赤く光る石の中をよく見ると、炎が勢いよく燃えている事がわかった。その炎が俺の考えを決定する。

これなら…マタイを救えるかもしれない。

俺は、赤く光る石を口にくわえ、二匹の元へと駆け出す。俺が向かって来る事を知ったターニャは、涙目のまま俺の方へ目を向けた。やがて、二匹の元にたどり着き、俺はターニャの前に赤く光る石を落とし、告げる。

「ターニャ。」
「ぐっす…。え?」
「助かるかもしれない。」
「助…かる?」

俺は、うなずき言葉を続ける。

「ああ。この石、さっきのジジィが持っていた石だ。」
「どうして…助かるなんて言い切れるの?」
「よく見ろ。」

俺が、ターニャへ指示すると、ターニャは赤く光る石を拾い上げ観察する。赤く光る石がよほどすごかったのか、ターニャは泣く事も忘れ石に見入る。

「すごぉぉい。燃える石なんて初めて見た。」
「だろ?これなら…」
「マタイは助かるかもしれないね!!」
「ああ。」

俺は、ターニャがほんの少しだけ希望を抱けたと知り、小さく微笑む。その直後俺の中にある疑問が浮かび上がる。

……。けど、どうやって使うんだ?

赤く光る石の使い方についてはターニャも同じだった。ターニャは、俺に訊ねる。

「どうやって使うの?」

ターニャの質問に答えることは出来ない。俺は、即答する。

828適当:2013/10/26(土) 20:53:15 ID:XyikfVgo
「知るかぁぁぁ!!こっちが聞きてぇよ!!」
「えええええ!!」

ターニャは、目を見開いて驚く。どうやら、俺が使い方を、わかっている上で“マタイは助かる”と言ったと思ったらしい。ちっ、ジジィめ。肝心な“使い方”を言わずにくたばりやがって!!こんなワケのわからない石の使い方なんか知ってるわきゃねぇだろ!!俺は、ターニャには思っている事を伝えず、自分の予想を言う。

「体に…くっつければいいんじゃねぇか?」
「体にくっつけるの?」
「たぶんな…。」

さすがに石を口の中に入れるとかは無いだろうからな。俺は、赤く光る石をマタイの額に当てた。額に当てると、効果が出るような気がしたからだ。現に、宝石を額につけているヤツ(ポケモン)だっている。ま、極端な予想だけどな。俺がマタイの額に赤く光る石をつけている横で、ターニャは首を傾げている。傾げてはいるが、俺の行動を止めようとはしていない。ターニャの中でも“もしかしたら、こうゆう使い方なのかも…。”というのがあるんだろうな。お互い何も言わず、俺はマタイの額に赤く光る石を当て続け、ターニャはそれを見守っていた。そして、俺がマタイの額に10秒程赤く光る石を当て続けた瞬間…。赤く光る石の中の炎がマタイの額に吸い込まれていった。

「何だ…!?今のは…。」

俺は、目の前で起きた事に驚き、思わず声を出す。声を出して、間もない内に、マタイの体が突然光り始める。

829適当:2013/10/26(土) 20:56:38 ID:XyikfVgo
「うわっ!!」
「ま…まぶしい…!!」

俺とターニャは、眩しさのあまり目を覆った。さっきの炎が中に入った事と何か関係しているのか?そう思った矢先、ターニャがマタイへ指差し俺を呼びかける。

「見て、ラック!!」

ターニャの指差す方向を見ると、首にあった傷、腹にあった傷が徐々に塞がり始め、やがて完全に傷痕は塞がった。

「す…すげぇ…。」
「傷が…無くなってる。」

俺とターニャは、目の前の光景に驚かずにはいられなかった。マタイを見て二匹してつぶやいた後、マタイは目をほんの少し激しくつむり声を出す。

「うう…。」
「気がついたか?」
「う…うん?」

マタイは、ゆっくりと目を開き俺の顔へ目を向ける。“やった!!生き返ったぁぁぁ!!”と俺がはしゃぐより先に、ターニャ大声で泣きながらマタイの顔へ顔を埋める。

「ぐすっ…。う…うわぁーん!!あん!!あん!!よがっだぁ〜!!戻って来てくれたぁー!!」
「え?え?」

マタイは、突然ターニャに抱きつかれ、胸を涙で濡らされてきょとんとしている。そりゃそうだ。起き上がってすぐ抱きつかれ、しかも泣かれるんだからな。俺はターニャが泣いている理由をマタイに話す。

「マタイ、お前は一度死んだんだ。」
「ええ!?僕がかい!?」
「ああ。信じられねぇかもしれねぇが、あのジジィに殺されたんだよ。」
「うん…?じゃあ、ターニャが泣いているのは…。」

830適当:2013/10/26(土) 21:01:11 ID:Id6mW7tg
マタイは、俺から理由を聞くとすぐに理解し、ターニャへ“心配かけてすまないねえ。”といつもの口調で詫びた。マタイの言葉からは、陽気な態度は感じられず“本当にゴメン…。”と言っているように感じた。まぁ、仲間を泣かせたんだから当然だよな。ふざける場面でも無ぇし、ここは陽気は無しってとこだ。ターニャは、マタイの声を聞くと一度胸から離れ、ほんの少し笑っているマタイの表情を確認し、その表情に応えるかのように笑いもう一度マタイへ抱きつく。

何度も抱きつくのはわかるんだけど、相手は炎タイプだぜ!?時分の体が火傷するとか…そうゆう恐怖心は無ぇのかよ!!と、まぁ今はそんな空気の読めねぇ雄じゃねぇ。俺も、ターニャが笑ったのを機に、少し安心を覚えつられて笑ってしまう。今は、仕方無ぇが普段なら気持ち悪くて想像もしたくねぇな。俺の笑顔なんざ想像もしたくねぇ。だから、時々マタイの笑っている顔を見ると、ちょっとうらやましくなる。それ程、俺は笑顔が似合わねぇ雄だ。今もマタイがうらやましいって感じている。十秒位、マタイに抱きついたターニャはマタイから離れ、マタイへ質問する。

「ふふふ。マタイ、どうして戻って来れたと思う?」
「さ…さぁ?」

マタイは、当たり前のように首を傾げる。まず、死んだヤツが生き返る方法なんて思いつくわけねぇだろ。答えてやるか。

「ジジィをな、倒した時にある石を手に入れたんだ。」
「石?」
「ああ。今は、お前の足元の前に落ちてる石だ。」

俺の言葉を聞くと、マタイは自分の足元にあるそこらじゅうにあるような小さな石へ目を向ける。体勢を低くして、その石を眺めながらマタイは俺の発言を聞き入れる。

「へぇ…。この石が僕をねえ〜。」
「ああ。ったく感謝しろよ?ジジィを倒した俺達を…」
「あはは!!ラック、だっさ〜い。こうゆうのは、“敵討ち”って言うんだよ?」

ターニャの訂正にすぐに反発せず、俺はターニャの言葉を考える。敵討ちか…、いや、俺がやったのは敵討ちなのか?前々から、ジジィにはむかついていたし、単に腹いせで本気出してぶっ飛ばしただけのような…。

「めずらしく素直だねえ。」
「本当だぁ〜!!ラックが私に対して何も言ってこなぁ〜い!!」

マタイとターニャは、何も言わず考え込んでいる最中の俺に驚いた。素直なんじゃなくて、混乱してるだけだ。俺は、二匹に向かって“うるせぇ”と口を開こうとした。けど、その時マタイが突然苦しみ出す。

831適当:2013/10/26(土) 21:04:37 ID:XyikfVgo
「ううう…!!」

突然苦しみを訴えるマタイに俺とターニャは驚き、声をかける。

「お…おい!!お前!!」
「マタイどうしたの!?」
「胸が…胸が苦しい!!」
石のせいか!?やっぱり、ジジィにやられた傷がまだ癒えてねぇって事か!?けど、石のせいだったらどうする?どうしようも無ぇ!!何とか出来ねぇよ!!
「ラック!!ミィなら治せるかも!!」
「ミィ…。確かに、いろんな事を知ってはいるけど、アイツは別に…」
「治すのがメインじゃなくても、他に望みなんか無いよ!!」

くっ…。万事休すか。四の五の言ってる場合じゃねぇな。俺はターニャに賛同し、すぐにミィの元へ向かおうとした。けど、マタイは俺達が考えられねぇ事を言い出す。

「いい…。対した事…じゃないよ。」
「んなワケねぇだろ!!待ってろ!!すぐにミィを…」
「う…。うわぁぁぁぁぁぁ!!」

俺がマタイの制止を振り切ろうとした時、マタイが更に苦しみだした。苦しむと同時に、マタイの体をマタイを生き返した時と同じように光が包む。

「ラック!!また光ってる!!」
「あああああ!!」

マタイが、苦しそうに叫んでいるけど、まさかバケモノになったりしねぇよな?と俺が、苦しそうに大声をあげているマタイを、“何が起こるんだ?”とワクワクする傍ら、“バケモノになるなよ!!”と必死に願おうとしたその時、マタイを包む光の色が、辺り一面を燃やし尽くすような真っ赤へ変化する。

「あ…あ…。マタイ!!一体どうなっちゃうの!?」

ターニャは、恐ろしい未来(こと)を拒むように、マタイを見守る。ターニャも俺と同じ事を考えてるに違いねぇ。絶対バケモノになんかなるなよ!!

832適当:2013/10/26(土) 21:08:24 ID:XyikfVgo
「う…ああ!!力が…みなぎる…ようだ。」

は?今…コイツ何って言ったんだ?マタイが叫びの途中で放った言葉に俺は、耳を疑う。力がみなぎる?パワーアップって事か?と、マタイの言葉の意味を、驚きながら考えていると、マタイが俺とターニャに“離れて!!”と指示を出した。俺とターニャは、マタイに、操られているかのようにすぐさまマタイの指示に従い、駆け足で距離を取った。中距離攻撃なら当たるという所まで移動した所で、ターニャがあせって、俺に訊ねる。

「まままさか、バケモノになんかならないよね!?」
「俺もそう思いてぇ!!けど、たぶんバケモノだ!!構えろ!!」
「ええ!?意識まで失っちゃうの!?」
「知らねぇよ!!でも、姿が変わっても味方って過信すんな!!」

あのジジィ…。とんでも無ぇ石(モン)を渡しやがった!!俺とターニャは、赤い光に包まれるマタイの動きに、備え闘う姿勢を作る。バケモノになったら…、俺はターニャを守りきれるか…?ジジィを倒した時みたいな力がまた、出せるか!?と、突然現れた、自分では到底かなわない敵に対し、逃げる事も考えて始めた時、マタイの体は光と共にだんだんと大きくなり出す。

「ラック!!大きくなってるよ!!」
「仕方無ぇ!!ターニャ、乗れ!!ミィの所まで逃げんぞ!!」

マタイは、俺よりレベルは下だが、あのジジィが持ってたんだ。今のバケモノ化したマタイは到底倒せねぇ。俺の指示でターニャは、すばやく俺の背中へまたがった。またがった途端、俺は全速力でミィの隠れ家に向けて駆け出そうと後ろへ振り返る。いざ逃げ出そうと、前足に、力を込めた時、聞き覚えのある声が俺の耳へ入る。

833適当:2013/10/26(土) 21:13:17 ID:XyikfVgo
「ちょっと待ってよ。どこへ行くんだい?」

どどど…どんなバケモノになっているんだ…?俺は、恐怖のあまり後ろへ振り返らず、マタイへ返事する。

「ににに逃がさねぇってか?」
「う〜ん。逃げられるかねえ。」

くそっ…、闘うしか無ぇのかよ!!俺は、覚悟を決めてマタイへと振り返ったが、マタイが想像を覆す姿になっていた事に驚く。

「うわぁぁぁ!!」
「きゃあああ!!」

ターニャも、想像とは違っていた安心感のある驚きを見せた。俺達の目の前にいたのは、バケモノなんかじゃなくポニータの次の形態のギャロップへ姿を変えたマタイだった。マタイは、安心しつつも驚いている俺達に満足気に笑みを向ける。

「すごいねえ!!ラックが小さく見えるよお〜!!」
「す…すげぇ…。進化しやがった…。」

マタイが姿を変えた事に、俺は驚きを隠せない。俺は、口を開けたままぼそりとつぶやいたがターニャは俺とは正反対の素直に喜ぶ驚きを見せる。

「きゃ〜!!ギャロップだぁ〜!!大きい〜!!」
「はははあ〜!!もう、ターニャを背中に乗せる事は出来ないねえ〜。」
「むぅぅぅ!!乗ってやるもん!!」

ターニャは、マタイ目掛けて駆け出し、背中に向かって高く跳び上がる。マタイは、聞き違えたターニャを慌てて抑止する。

「あわわわ!!違うよお!!高さ的な意味じゃなくて!!」
「え〜い、ジャ〜ンプ♪」
「ええ!?ちょっと無茶過ぎ…」

マタイが止めても無駄だったようだな。それ程ターニャは、気分がノっているらしい。………。つーか、大丈夫か?マタイの背中に乗ったら確実に焼…

「とうちゃ〜く♪」

死する…っておい!!ああ…ついに乗っちまいやがって!!ターニャがマタイの背中へ乗ると同時に、俺は“もうダメだ!!遅かった!!”とターニャから顔を背けた。マタイも俺と同じく“どうなっても知らねぇ…!!”と言いたげそうに激しく目をつむる。きっとマタイは、同時に耳から入る音も無視しようとしているかもな。そりゃそうだぜ。自分の背中の炎でターニャの体が燃える音なんて聞きたくねぇだろうし、俺だって聞きたくねぇ!!俺は目をそらす事に必死で耳を塞ぐことを忘れちまっただけだ…。俺は、ターニャが背中に乗った瞬間、“止めない俺も悪かった。けど、自業自得だ。”と考えつつも、ターニャが炎でもだえ始めた瞬間、ターニャを助ける準備も整える。

834適当:2013/10/26(土) 21:18:14 ID:XyikfVgo
「あははは!!」
え?
「マタイの背中から見る景色は最高だね!!前より、ず〜っと高ぁ〜い♪」

は?どういうこった…。俺とマタイが想像していた事故(こと)は起きず、ターニャはマタイの背中に乗るとはしゃぎだした。何で燃えねぇんだよ?あの火って飾りなのか?マタイも激しく閉じていた目をゆっくりと開き始める。

「それに、マタイの背中…すっごくあったか〜い!!」

いや、あったか〜いとかじゃなくて熱いの間違いだろ!!燃えてんだぞ!!
………。いや、実はヤセ我慢?いやいや、そんなワケねぇよな…。俺は気になりターニャへ訊ねようと口を開くより先に、マタイが、ターニャへ疑問をぶつける。

「ターニャ、熱くないのかい?」
「うん。むしろ、気持ちいいし最高だよ♪」

ターニャは、マタイの背中に頬ずりをしながら返事した。マタイは続けてターニャへ訊く。

「本当かい!?火傷は?」 
「ないよ。だいじょおぶ。」

や…火傷も無ぇのかよ…。ターニャとマタイが会話している最中俺は、目を見開き驚いた。自分が今見ている光景は幻と疑いたくなるような気分になった。ターニャを見ると、相変わらずいつもの楽しそうな笑顔を作るばかりで、苦しいと訴える様子は無い。何で?何でなんだ?マタイは、ターニャの笑い声を聞いて心配そうな表情から、楽しそうな笑顔へ切り換える。けど、俺はずっとターニャが燃えない理由を考えていた。

………。


ラチが明かねぇ…。俺は、自分の思考能力が限界を達したと感じ取り、盛り上がっているターニャとマタイを呼びかけ、財宝の番人が守っていた森の小道へと続く道へ駆け出す。

835適当:2013/10/26(土) 21:22:38 ID:JDcqScy6
洞窟の奥 (森の深部)…


「よっしゃ!!着いたぜ。」

財宝の番人が守っていた小道を進むとたどり着いたのは、木々に囲まれた小さな洞窟だった。目的地へとたどり着き、最初に喋った俺は続き、マタイとターニャの二匹は、洞窟の入口を見上げつつ口を開く。

「うわぁぁ…。全く、対した所だねえ。」
「ホント…。こんな場所に洞窟があったなんて…。」

この二匹と同じように、実は俺も落ち着いたそぶりを見せるが、驚いていた。森に住んでいるからと言って、すべてがすべて知っているワケじゃねぇって事がこの時身に染みた。案外、森にある池とか川とか洞窟とか…。その全てを知ってる気になってたんだな。俺を含む、森の連中(一匹は除くけど)は、意外と知ったかぶって生きているかもな。

「早速入ろうよ!!」
「ターニャの言うとおり!!なんか、お宝の匂いがしてきたよお〜♪」
ウソつけ!!宝の匂いなんてわかんねぇだろ!!お前は、犬型ポケモンじゃねぇんだからわかるワケねぇだろ!!つーか、犬でもわかんねぇよ!!宝の匂い嗅ぎ分けられるヤツなんていねぇ〜よ!!“かぎわける”でも無理だろ!!

「よ〜し!!マタイ、レッツごぉ〜♪」
「お宝が僕達を待っている〜♪ほら、ラック置いてっちゃうよお?」
「は?ま、待てよ!!置いていくなって!!」

俺は夜行性だから、夜も見える。けど、一匹で暗い場所は歩きたくねぇ。何ていうか、昼活動するめずらしいブラッキーだからな。マタイの呼びかけを耳に入れ、俺は二匹に続き洞窟の中へと入る。

836適当:2013/10/26(土) 21:29:34 ID:Nt9mEhLk
洞窟の中…

さて、洞窟の中へと入ったワケだが…。中は、異常に寒いな。今、
俺達は洞窟の中を探索中だ。俺は、寒さのあまりほんの少し体を震わせる。別に、怖がっているワケじゃねぇぞ?そこは、勘違…

「あはは。ラック、もしかして怖いの?」

俺の震えを見ていたらしい。ターニャが、からかうように質問し出した。俺は、体を震わせつつもすぐに否定する。

「ななな…なわきゃあるか!!怖くなんかねぇよ。」

最後に落ち着きを見せたから大丈夫だろ。けど、俺の考えは全く当たらずターニャは、更に俺をからかう。

「まるわかりじゃん。大丈夫だよぉ。私とマタイがいるから。ねぇ〜、マタイ?」
「そうだねえ。むしろ、ラックはこうゆう時ぐらいは俺達を頼って欲しいねえ。」
「頼るって泣きつくって意味かよ?」

俺は、言葉と同時にマタイを睨みつける。マタイもターニャほどではないけど、笑っている。時々、俺の事をからかっているようにも思えた。マタイは、首を振って言葉を続ける。

「まさか。ただ、怖がりのラックも見てみたいねえ。見れるなら、見ときたいねえ。」
「うんうん。」

マタイの言い分を主張するようにターニャは楽しそうにうなずいた。“うんうん”じゃねぇ!!てめぇら、俺の事をどうゆう風に思ってんだ!!お前達(ら)の遊び道具じゃねぇよ!!

「あっ、ラック後ろに…。」

ターニャが楽しそうな表情から怖がる表情へと切り換えた。ターニャは、指で俺を差しつつ何かを恐がっている。

「はぁ!?う、ウソ!?」

俺も気になって、すぐに後ろを振り返った。けど、そこには当然誰もいない。ターニャのいたずらって事だ。ターニャは、自分のいたずらを楽しそうに白状する。

「ウソだよぉ〜♪ラックってやっぱり…」
「怖がってなんかいねぇっつってんだろ!!あれはな、ちょっと背中がかゆ…」
「ふ〜ん、さっきよりブルブルしているよ?」
「違ぇ!!これは、さっきの闘いで疲れたからだ!!筋肉痛なんだよ!!後ろ足が痛てぇの!!」
「疲労痙攣(けいれん)ってやつかい?」
「あっ…ああ〜!!そうだ、マタイ!!そうだよ!!それそれ!!」

837適当:2013/10/26(土) 21:36:24 ID:5ZlUGfAM
俺は、マタイに助け舟にしがみつき、勢いのある口を閉め、ため息をつく。………。ななな…なんだよ?読者達(てめぇら)まで疑ってんのか?は、はは…あるワケねぇだろ?お、俺は悪タイプだぜ?一日中悪い事ばかり考えている悪タイプの森の猛者ラック様だぜ?ゴーストなんか、怖…怖くねぇ。ゴーストが、俺を怖が…

「あれ?もしかしてあれじゃない?」
え?
「ああ!!あれっぽいねえ。宝箱って炎に強かったよねえ?ちょっと、火でも飛ばして明るくして見ようか。」

マタイは、ターニャに訊かれ口から小さな炎を前へ吐き出した。マタイは、宝箱を燃やすような事を言っていたけど、燃やす気は無かったようで宝箱の目の前に炎を落とした。炎の明かりで前が照らされ、ターニャの予想が的中しているのがわかった。何か、いろいろ考えてた間にいつの間にか着いたみてぇだな。

「わぁぁぁ!!宝箱だぁ〜!!よし、マタイ発進ぃ〜ん♪」
「夢のようだねえ!!すぐに行くよお〜!!」

マタイは、言い終えるとすぐに宝箱へ駆け出す。

ウワサはマジだったって事か!?え?けど、中身が空って事も…

マタイが宝箱の前までたどり着くと、ターニャはテレポートをするように、一瞬で地面に下りた。それをバトルで使ぇぇぇぇ!!ってぐらい速かった。よっぽど宝を楽しみにしてたんだな。俺も二匹の元へ急いで駆け寄る。宝箱につくと、何やら二匹が俺を見ている。何かして欲しそうな目で。

838適当:2013/10/26(土) 21:42:20 ID:Id6mW7tg
「はやくぅ開けて!!私は小っさいからムリ!!」
「僕は、座って前足だけを動かすなんて出来ないからねえ。高さは満たしているけどねえ。」


二匹に頼まれて俺は宝箱へ目を向ける。なる程な。ターニャよりは2倍位の高さで、閉められている感じはしねぇ宝箱か。うっしし…さっそく開けるぜ!!何か気持ち悪かったけど気にすんな!!俺は宝箱へ前足(て)をかける。

「お…おお!!ついに、開くよお!!」
「ワクワクするぅ〜!!あけて!!あけてぇ!!」

俺は、じらすようにゆっくりと宝箱を開ける。何かこうゆうのって一気に開けたくねぇ〜んだよな。開けるのもまた一つの楽しみってヤツだ!!

ターニャっマタイから“そんな開け方しないで早く開けろ”みたいな言葉を受け流しても気にせず、宝箱をゆっくりと開け続けついに宝箱を開いた。

「おお!!」
「わぁ〜!!すごぉ〜い!!」
「こんなにあるんだねえ!!」

最初は、俺次にターニャ、最後にマタイとそれぞれの反応を見せる。宝箱を開けた途端、中の金、銀が大量に入っていたからか、マタイが作り出した宝箱の後ろの炎の光を反射してまぶしい程に輝いている。俺達森のポケモン達も想像出来無ぇような宝の山だった。俺達は、しばらく宝の量と金や銀に反射した光に見とれつつも、ターニャが全員の目を覚まさせるような質問をする。

「すごぉ〜い…。けど、どうやって持って帰るの?」
『あ…。』

ターニャの一言に俺とマタイは顔を見合わせる。確かに考えてなかった。こんなにたくさんどうやって持ち帰るんだ?

「むぅぅ。持って帰りたいなぁ…。」

ターニャはいつの間にか宝箱の上に乗り、丸い金を2つ手に取る。一回、人間の住む街に行った時に見た、食いもんを手に入れる何かに似ているな。っと…俺も持って帰りてぇんだけど、全部は持てねぇよ。

839適当:2013/10/26(土) 21:46:44 ID:mSQNyt2g
「ターニャ、全部は持って帰れないねえ。」
「何か、包む袋がないから?」
「違うよ。仮に、持っていたとしても僕達で持って帰るのは無理。だって、重たすぎるからねえ。」

マタイは首を振り、ターニャに諦めを促す。けど、ターニャはあきらめれきねぇのか、マタイを見て提案を出す。

「マタイなら持てそうだけど?」
「僕の背中かい?そりゃあ乗せられると思うよ?だけど、背中に乗せたまま運べると思うかい?」
「うん。」

ターニャは、マタイに期待しているのか、マタイに向けて目を輝かせ、マタイの考えを否定した。乗せられるワケねぇだろ。背中で安定させるように誰が結ぶんだよ。

「ラックが持って、マタイの背中に置けば…」
「できるかぁぁぁぁ!!」

俺はつい洞窟全体に声を行き渡らせてしまった。誰でも言いたくなるだろ、そんなありえねぇ事頼まれたら。その後も、ターニャは“やってみなくちゃわからない。”と口走ってきた、けど俺は当然のように断る。宝箱を持ってたとしても、マタイの背中にのせる事ができねぇ。人間の手のように、自分の手足をそううまくは使えねぇんだよ。ターニャは、俺とマタイで本当に持ち帰れると思ってたようで、俺が“できねぇよ!!”と返すと、残念そうにうつむく。俺だってそうしたいけど、無理なモンは無理なんだよなぁ。

840適当:2013/10/26(土) 21:51:53 ID:mSQNyt2g
「あのさ、少しずつ持って帰るっていうのはどうだい?」
「え?」

うつむいていたターニャが、マタイの声を聞くとハッとした表情に切り替わった。隠していたが、実は俺もターニャと同じだ。そうか!!その手があったな!!俺とターニャは、すぐにマタイの名案を受け入れ、持てるだけ丸い金や色の付いた光る石をくわえたり、手に持ったりして洞窟の入口へと歩き出す。名案っていうか、よく考えたら普通の事なんだけどな。

「さすが、マタイ〜!!今日は冴えてるぅ♪」
「僕もど〜うしても持って帰りたかったからねえ。人間の街にいって、これでおいしい物が食べられるかもしれないって思うと、いても立ってもいられないからねえ。」
だな。きっと価値はある。俺達でもピカピカ光る金、銀に感動するんだから、人間が感動しないワケがねぇ。何より、食べ物を手に入れる時に使ってた、似た色の小っさい丸っこいヤツに似ているしな。

「ミィのウワサって掘り出し物もあるんだね!!」
「普通お宝って、滅多に手に入らないけど、僕達はミィのおかげで贅沢できるわけだねえ。」

そうだ…宝を手に入れたのはミィのおかげだったんだ…。浮かれながら会話をしているのを聞くと、俺は大切な事を思い出した。ミィがいなかったら、俺達は宝なんて手に入れてねぇ。ミィがいなかったら、マタイは進化してねぇ。ミィがいなかったら…



ジジィに負け続けていた俺は、こんなに笑ってねぇ…。

「大事な事を忘れてだぜ。」
『え?』

俺が遠くを見つめながらつぶやくと、二匹の弾んでいた会話が止まった。俺は、遠くを見つめたままターニャとマタイに告げる。

「わりぃ…。先に帰ってろ。」
『え?』
「行かなきゃならねぇトコがあんだ。」

俺は、ターニャとマタイにそれを告げると、恩を売られた雌(
ヤツ)の元へ駆け出す。

「行かなきゃいけないトコって…って、待ってよ!!ドコに行くのぉぉぉ!?」

ターニャの声を遠く耳にしても俺は足を止めなかった。売られた恩は…売られた笑顔(おん)は、ちゃんと返すのが筋ってもんだ!!

841適当:2013/10/26(土) 21:53:28 ID:mSQNyt2g
ミィの家の前

はぁ…はぁ…。ついたぜ。宝をくわえ、首に掛けられる光る石をいくつか首に引っさげて、全速力で向かった先は、恩を売ったミィの家だ。ミィの住処の前につき、俺は立ち止まり、宝をくわえたまま、呼吸を整える。呼吸が落ち着いた所で、俺はミィの住処の扉をたたく。

「はい。」

扉を2回叩いた所でミィが扉に手をかける音が聞こえた。ミィは、扉を開けて俺を見るとすぐに驚き、俺に質問する。

「これは!?もしかして、あの財宝の守護者が守っていた宝ですか!?」
「ああ。」

俺は、自信に満ちた表情でうなづいた。ミィは、俺があのジジィに本当に勝てると思わなかったんだろ。ミィは、俺に信じられないと言いたげそうな表情をずっと向けている。俺は、ミィの心の内を訊ねる。

「ふふ。勝てると思ってなかっただろ?」
「え?そ…そういうワケでは…。」

図星だな。ミィは下をうつむき俺から目をそらし始めた。耳は下にだらんと垂れ、“ゴメン”と言っているように見えた。俺は、今のミィの態度を見ても全く怒りなんて沸いてこねぇ。それ程機嫌がいいし、何より俺を笑顔にしてくれたのはミィだからな。

「いいって、気にすんな。」

俺は笑ってミィを許し、口にくわえている宝と、首にひっさげている光る石をミィの目の前に落とした。“え?”ミィは、目の前落ちた宝を一目見て、再び俺に視線を返した。俺は、それを見計らってミィへお礼を言う。

「サンキューな。これ、やるよ。俺の気持ちだ。」
「え?ええ!?う…受け取れないですよ!!こんなに…。」

ミィは手を振って遠慮していた。けど、俺は前足で地面に落ちている宝を拾い。ミィの手に握らせた。

「あの…やっぱり。」

ミィが断る隙を与えないように、俺はミィの言葉を聞き流し、ミィの首へ光る石をかける。

「受け取れ。お前の取り分だ。」

ミィは、その後何も言わず、笑って“ありがとう”と告げてきた。その時のミィは、今まで生きてきた中で一番可愛いと思える表情だった。つっても、まだ対して生きてねぇ〜んだけどな。ミィの笑顔を見届け、ミィに別れを告げ、俺はターニャとマタイがいるだろうと想う場所へ駆け出した。ターニャとマタイは、俺を確認すると“あれ?宝は?”と訊ねてきた。その質問に俺はこう答えた。


筋を通して来ただけだ。



マタイは、俺の表情が、晴れている事を感じ取り、何も言わずに笑顔を向け、ターニャは言葉の意味がわからず首を傾げた。格好をつけ終えた後、腹が空いていると感じ、俺は二匹を誘い人間の街へ駆け出す。二匹は、俺と一緒に駆け出しながらも、“宝はどうするの?”というターニャの質問を、俺は“そんなモン後でいい。腹が空いてんだメシにしようぜ。”と返した。宝なんか、俺達とミィしか場所は知らねぇし、盗られたって構わねぇ。だって、俺はあのジジィとの闘いで宝よりも、大事な仲間(たから)と笑顔(たから)に気づいたんだからな。

終わり

842適当:2013/10/26(土) 21:59:50 ID:mSQNyt2g
後書き

誤字脱字が多いですね。あと、前半部読者が勘違いする部分がありますね。反省します。


マタイは、三國無双のは馬岱をイメージして喋らせました。なので、知ってる方は馬岱の声で脳内再生してみて下さい。あとは、お好きに。

では、また次回適当に投下します。さようなら(笑)

843適当:2013/10/26(土) 22:03:37 ID:mSQNyt2g
アンカ
803ー841

803-841

844適当:2013/10/26(土) 22:08:08 ID:mSQNyt2g
>>803-841

>>803ー841

であってますかね?

845:2014/01/26(日) 14:34:14 ID:vxwPRHc6
>>844
アンカーは不等号(>)を二つ(一つでも良かったような)置いてその後に数字、複数の時は+や-を数字の後に置いてその次の数字……って何言ってるんだ自分w

846リザードンとトロピウス:2014/09/15(月) 11:33:42 ID:OP/snhmM
 どこもかしこも痛い。
 体が動かないからどうなってるか分からないが、ひょっとしたら足首から先は無くなってるかもしれない。
 ああ、もう痛みも感じなくなってきた。目の前のものも見えない。
 死ぬのか、俺は。




 口の中に甘い味が広がって、夢中で飲み込んだ。もう一度それが来る気配がして口を開けてみたら、今度は驚くほどの辛みが入ってきて、一気に目が覚めた。
「あれ、もう気付いたの?」
 耳元に届いた穏やかな声に目を向けると、緑色の帽子のような額の下から、大きな目が俺を覗き込んで笑っていた。
「すごい怪我だったのに、回復早いなぁ。びっくりだよ」
 ゆったりとした口調。こんな話し方をする奴は今まで見たことない。
 誰だ? そして此処は何処だろう。
「お前が……助けてくれたのか?」
 だんだんと体に感覚が戻ってくる。と同時にあちこちの傷が疼き出した。
「助けたことになるのかなぁ。僕不器用だから何もしてないんだけどね。なんかボロボロだったから、とりあえず止血だけはしてみたけど……まだ痛いかな?」
「……いや、大した事はない」
 言われてみて気付いた。疼きはするが体が壊れるような痛みはもうほとんど残っていない。止血と……多分、口に入れてもらった木の実の効果だろう。
「君ってリザードン、だよね。僕初めて見たな」
「そうか。……お前は」
「トロピウス」
 目を細めて告げられたその名に覚えは無かった。互いに初対面なのは住む場所に全く共通点が無いせいだ。
 周囲をぐるりと見回してみる。普通の状態だったら、俺がこんな森の奥深くに入る筈はないだろうな。
「君、随分な目に遭ってたみたいだけど、理由は後で聞くことにするよ。まずは傷を治さなくちゃね」
「え……」
 見上げると、トロピウスは口に木の実をくわえていた。喰わせてくれるのかと思ったら、トロピウスはそれを自分で噛み始めた。
 なんだ、くれる訳じゃないのか───ぱりぽりと咀嚼する音を、ぼんやりと聞いていたら、ふっとトロピウスが顔を近づけてきた。
 何をするんだろう、と思う暇も無かった。
「う!?」
 トロピウスの顔が目の前にあった。口と口とが触れ合う感触。
「んー」
 ぐいぐいと口を押しつけてくる。訳が分からなくて口を開けば、細切れになった木の実が押し込まれた。ほんの少し甘みのある、でもあまり旨くもない木の実の味。
「おまっ……」
「ちゃんと食べてよ」
 口の中に木の実を入れたまま文句を言おうとしたが、ピシャリと遮られた。
 じっと見つめてくる真剣な目に気圧されて、反論も出来ないまま仕方なくそれを飲み込む。
「……お前な」
「もう一個」
「口移しはやめてくれ」
 何を考えているのか、当たり前のように木の実を口の中で噛み始めたので、前もってそう言った。
「今更恥ずかしがらなくていいよ。さっきから何度もやってるし」
「いや、自分で噛めるから」
「……あ、そっか」
 ようやく気付いたようにトロピウスが呟いた。天然か、こいつ。
「そういえばそうだよね、さっきは君が意識朦朧だったからそうしたんだ。ごめんごめん」
 はい、と言って、今度は丸ごと木の実を寄越してくれた。もちろん『手』なんて使えないから口でくわえて受け渡すのだが、噛み砕いたものをがっつり流し込まれるよりは余程マシだ。
 ああ、よく考えたらこれが俺のファーストキスなのか。
「念のため聞くが、お前雄だな」
「そうだよ?」
「そうか」
 ……一瞬でも『僕っ娘』を期待した俺が馬鹿だった。

────────

つづきません
2年前の日付で書きかけのまま放置されてた小話
プロット無しなので当時どんなストーリーを想定していたのか不明ですが自分の発想からして間違いなくホモネタと思われます

847某とある名無しの誰かさん:2015/01/28(水) 21:43:43 ID:hBazNR9s
とある夏の一日、二匹の仲は少し深まった。
これは、その二匹のポケモンのとある冬の一日のお話である……


「Before winter vacation」

848某とある名無しの誰かさん:2015/01/28(水) 21:54:19 ID:hBazNR9s
「ふう……快適快適〜」

 今俺は愛する自宅にて、充実した暖房器具の中ぬくぬくと暮らしている。実にいい気持ちだ。
 明日から、冬休み。その事実が、一層と上機嫌を後押しする。
 夏祭りの時、藁にもすがる思いで冷房器具よ、直れ!とお願いしてみたのだが。冷房器具どころかそれ以外の電化製品も治ってやがった。
 おいのりのちからってすげー!そう確信した俺は、元気100倍の性能へと様変わりした冷房器具で夏休みを過ごし、この冬までやってきた。
 今日はまさかの大雪である。しんしん降るかわいらしい雪とは大違い、バケツから雪を溢したような天気だ。余計わかりづらいか?
 こんな寒い日には絶対暖めるマンと化した暖房器具の中ゆっくり過ごすとするか。俺は炬燵へ入る。
 ……だがこんな真冬の季候。あいつがなにもしていないはずもなく。

「ザーングースぅぅ!!」

849某とある名無しの誰かさん:2015/01/28(水) 22:50:23 ID:hBazNR9s
「うおああっ!?」

 夏祭りの時の相棒、水色の塊……そう、グレイシアである。
 あの時は扉から飛び込んで来たが、なんと今までクローゼットの中に潜んでいたらしい。まあ、冬は寒い。玄関の扉なんぞ開けていなかった。だがどうやって、一体いつ侵入されていた?
 ところで、俺は炬燵に入る途中だったわけで。それにクローゼットには一番近いところである。そこへ中からグレイシアが飛び込んで来たわけだ。つまり、俺が仰向けで下敷きになり、グレイシアが俺の上になって覆い被さっている。
 またか……グレイシアの突然の登場にはもはや驚きを越え呆れて声もでない。……ちなみにさっきの俺の叫びは驚いたわけではない。決して。

「ザングース、ねえ話そ〜?」

「てて……ったく、お前一体いつからあん中に」
「さっきの買い物帰り」

「……ああ、なるほど」

 供述を聞くに、俺の買い出しの帰りに扉を開けた瞬間入り込んで、うまく見つからないように隠れたんだと。嫌らしい真似するね。

850某とある名無しの誰かさん:2015/01/28(水) 23:10:57 ID:hBazNR9s
「……って、寒い寒い!早く離れろぉ!」

「いーやーだー!ザングースといたいよー!」

 乱暴に引き剥がしてやった。まったくこいつは。うう寒……そそくさと炬燵イン。
 グレイシアはこたつの外で暫くむすっとしていた。仕方がないので隣に動いてやる。途端に表情が一変、歓喜の印だ。わかりやすいやつめ……
 ちなみに暖めた部屋の中にいて大丈夫なのかと訊いてみた。

「うん、なんとか大丈夫だけど炬燵は熱いよ」

 大丈夫と言っていたが少し暑そうだったのでエアコンをオフに。ちなみに炬燵から出るのが億劫にはならないんだ、俺は。



 それから数分、会話もなく俺はただぼーっとしていた。炬燵の魔力により夢に誘われることはなかったがな。

「何か冷たいもの要るか?あるもんなら出すぞ」

「……アイスココアー!」

 にぱー、という効果音がふさわし過ぎる程の満面の笑み。くっ、侮れん。まさかこんな可愛い顔を見せてくるとは。
 赤面しているように感じ、逃げるように台所へ。エアコンをオフにしたから少し寒くなってはいるが。



 俺もホットココアを淹れ、ほっと一息。……駄洒落のつもりはなかった。
 一口飲むと全身に広がる温もり。ああ、実に快い。
 そうしていると、扉から軽いノックの音。まったく、俺はココアの余韻に浸っていたいのに、誰だこの邪魔者は?
 俺はコートに袖を通し、耳に合わせたニット帽を被る。招かれざる客のお出迎えだ。まあグレイシアもだが。

851某とある名無しの誰かさん:2015/01/28(水) 23:29:16 ID:hBazNR9s
 俺は寒さと雪を覚悟し、扉を開ける。がちゃり。
 びゅうと風が吹き荒れ、家に多少の雪が入る。そしてまず目に入ったのが、その翡翠の躰。……緑?

「いやーザン、酷い暴風雪ッスね!この寒さでオレのカラダもカッチカチ〜」

「宗教の勧誘やセールスはお断りします」

「ちょ、ちょちょ、久しぶりの再開なのにそれはないッスよー!」

 おかしいな、つい悪戯心が。特性は違うのにな。
 旧友との再開についふざけたくなってしまってつい扉を閉めてしまった。反省はしていないし後悔もしていない。
 このままやつが扉をどんどんしてよそ様に迷惑がかかるのは良くない、扉をあけてやった。

「酷いッスよザン、そこは感動の涙とかしてくれたりとか……」

「あのなカッチ、カラダもカッチカチの下りは面白かったがとりあえず落ち着け。説明も欲しいし上がってくれよ」

 このままでは俺もマラカッチも寒いだけだ。やつには上がって、何故ここにいるのか説明してもらおう。
 そう思って上着から雪を落としていると、待ちかねたのかグレイシアが玄関へやってくる。

「ザングース、どうかし……あれ、カッちゃん!?」
「ぬおっ、グレ!?何故グレがザンの家にいるっ!?」

 俺はやつに聞こえるようになるべく大きな溜息を吐いた。はあ……
 ただでさえグレイシアの相手は疲れるのに、よりによってカッチか。これはひどい。
 俺はすっかり冷えてぬるくなってしまったホットココアを飲み干した。

852某とある名無しの誰かさん:2015/01/29(木) 21:19:54 ID:gyn5832c
「……で、カッチ。なんでお前がいんだよ」

 カッチを炬燵へ招き入れて、一息つく。やつは温もりに浸り幸せそうな顔を浮かべる。畜生、お前のせいでこっちは幸せを邪魔されたんだぞい。
 グレイシアは旧友との再会の嬉しさと突然の来訪の驚きが合わさった表情だ。これがもし何処の馬の骨とも知れないやつならだいぶむすっとしてたのだろう。
 不本意だがやつにホットココアを淹れ、状況説明の聞き出しを試みる。

「いやー、久しぶりにこの辺りに寄ってみたら突然大雪が降り始めて。それで慌ててザンのとこ探してやっとこさ辿り着いたってところッス」

「本当にびっくりだよ、まさかカッちゃんが戻ってきてるなんてね〜」

「そ、そうだけどもさあ……まずなんでこの辺りに寄ってみたんだ?」

 なるほど、雪宿りというわけですかそうですか。だがしかしいきなりは驚く。
 「ちょっと旅立ってみるッス!暫く会えないけど元気でやりい!」あの日、カッチが突然告げたこと。その後いきなりどこかへ消えてしまった。 俺達からすれば唐突すぎて言葉もでないままやつを止めなかった。否、止められなかった。
 そんで月日は流れて今。やつはまたしても唐突だった。
 ふらりといなくなってはふらりとやってくる。いつもの光景ではあるが、まだ慣れない。カッチはそういうやつだ。

「なんでって、旅はもう終わりッス」

「待て、待て……待て。一旦待て」

 カッチ唐突語録その3の誕生である。
 まさかの旅終了宣言。既に終わってたんならもっと早く言え。

「ごめ、忘れてたッスー」

「はぁ……まったく、お前もいつまでも変わらないな」

 ふと横を見るとグレイシアが笑顔のままフリーズしている。恐らくカッチの唐突語録に頭がついていかないのであろう、目が死んでやがる。
 このままだと危ない絵面になりかねないので、揺さぶって脳を起こしてやる。

「あれ、ザングース?私は1体何を……」

「キミハワレワレノジッケンタイデアル。タッタイママデワレワレニキオクヲシハイサレテイタノダ」

「やめんかぁ!」

 カッチの頭に軽くブレイククロー。脳天という急所に当たった!

853パルギア〜(^-^):2015/04/08(水) 21:46:45 ID:W.2gy1wo
 微かな細波が空間を渡っていく。
 それは音のようでもあり風のようでもあった。音であるならば、それは眠りを妨げないほどの静かで穏やかな、低い響きを伴った「何かの声」。

 それに気付いたパルキアは、応じるように一声かけて、この空間のはざまに通じる道を開いてやる。
 そうして現れたのは、鋼のきらめきを纏った「時の守護神」だった。

「しばらくぶりだな、ディアルガ」
 気易く声をかけてくるパルキアに、ディアルガは蔑むような視線を投げる。
「随分お楽しみのようだったからな。遠慮してやっていた」
 いきなり痛いところを突かれて、パルキアが返答に詰まる。
 そんな相方の様子を鼻で笑って、ディアルガはパルキアの腕に抱かれたそれを無遠慮に覗き見た。

「ほう、どれだけ欲深く穢れた面をしているかと思ったが、随分可憐で美しいではないか。これがどのような姿になってお前を誘っているのやら」
「……な、なんのことだ」
「私の居るところまで鳴き声が聞こえていたぞ。さぞかし激しく責めたのであろうな」
「いや、それは……」
 もごもごと口ごもるパルキアの様子は、ディアルガには端から想定内だったようで、それ以上無益な言葉虐めをすることもなく、眠っている白い生き物に顔を寄せた。
「魂の呼吸が滞っている。お前が眠らせたのか?」

 本来はディアルガに属している、時を操る力。そのささやかな真似事で、小さな対象物の時を止めるぐらいの力なら、パルキアにも使うことが出来た。そうして無理やり「眠らされた」者は、体だけでなく魂の呼吸までも不自然な形で動きを止めてしまう。

「……ああ、まぁ、な」
 ディアルガには何でもお見通しと悟って、パルキアは諦めたように頷いた。
「己の身が保たぬと怖れたか」
「ちげーよ! ……いや、ちょっとはそれもあるが」
「ふん」

 ディアルガの面白くなさそうな声に、パルキアは居心地悪くため息をついた。
「思ったより、手強くてな」


 誰も立ち入ることが出来ない筈のパルキアの領域で、漂っていたそれを見つけたのが始まりだった。
 「ルギア」と名乗ったその白い生き物を捕らえ、何かに駆られるかのように手篭めにした。
 拒絶も抵抗も何も無かった。
 ただ、熱く爛れて蕩けそうな性の快楽だけがあった。
 辱められ、犯されながら泣くルギアは、それでもパルキアに縋り付いて「もっと」と乞うた。けれどルギアの望みのとおりに責めれば責めるほど、ルギアはさらに餓えていくようだった。
 終わりが見えないほどひたすら溺れながら、互いの魂だけははっきりと醒めたままで。
 体を重ねるごとにその違和感は大きくなって、やっとパルキアは、捕らえられたのが自分の方だったのだと悟った。

 誰かの身代わりとして、ただ、ルギアの体の乾きを慰めるためだけに。

 ───このままでは、壊れる

 そんな焦燥の末、パルキアはルギアの「時」を止めたのだった。


「今更だろう。軽々しく手を出すからだ。自業自得と思え」
「……ごもっともです」
 らしくもなく殊勝に返すパルキアに、ディアルガはふと嫌な胸騒ぎを覚えた。
 形のない、暗く乾いた何かの気配。

「深みに……はまるなよ」
 その気配を消したくて、ディアルガはやや強く言いつけたが、パルキアは惑うように言葉を返せないでいた。
「パルキア」
「わ、かってる……」
 その声はまさに、判っていても過ちを犯してしまう者の悪あがき。
 もう既に、パルキアは深みにはまってしまっている。

「私が……始末してやろうか?」
 静かに言い放ったディアルガの言葉に、パルキアがはっと顔を上げる。
 鋼の刃のような鋭さと冷たさを帯びた視線が、そこにある。
「ディアルガ……」


泥沼の予感(´∀`*) ………つづきません

854名無しさん:2015/05/21(木) 18:27:30 ID:VatZMV/o
「痛い〜……ザン、流石に酷くねい?」

「お前が変なこと言うからだろうが」

 グレイシアを正気に戻したところで、俺達は炬燵に入ってのんびりと。
 カッチは俺が淹れたココアを飲む……って、こいつ猫舌か!

「あひゃ、あふいっ!?」

「だ、大丈夫!?待っててカッちゃん!それー!」

 やつを心配して近付くグレイシア。そしてカッチの舌に凍える風を放ち冷やそうと……こうかはばつぐんだ!

「ぎゃあああーっ!?」

 舌を押さえながら悶絶するカッチ。いやあ、なんというか愉快だな。俺達を邪魔した罪の贖罪と思え。
 そして何がなんだかわからずにおろおろするグレイシア。まるで皿を割ってしまった子供だ。
 俺は静かに、新たに淹れたホットココアを口にした。この苦味、たまらん!

「たく、お前はどうしてこうかな」

「い、今のは仕方ないじゃないッスかー」

「カッちゃん、ごめんなさい……」

 騒がしく声が響き渡る我が家。こんなに賑やかな冬も、まあ悪くないな。

855名無しさん:2015/05/24(日) 14:37:38 ID:pAq8R9mQ
「それで、なんで旅なんてしてたんだよ」

「えー?もちっと広い世界を見たかっただけッスよ」

 男のロマン、というやつか?まあ、俺には理解できないが。
 炬燵で充分暖まり、幸せな気分になる。

「明日から冬休みかあ……」

「あれ、そうなのん?」

「うん。今日までだったよ」

856名無しさん:2015/12/20(日) 22:05:55 ID:6dxwPNSM
「ザン、冬休みどうする〜?」

 カッチは炬燵の中での温もりを感じ、表情がとても柔らかくなっている。
 サボテンだし、寒いのは苦手なんだろうな……って俺だって苦手だわ!
 この中でグレイシアだけが炬燵の外で平気でニコニコしてやがる。ぐっ、羨ましくなんかない!

「そうさなあ……特に決めなくていいんじゃないか?」

「遊び倒そうよー!」

 目を爛々と輝かせ、グレイシアが突然猛スピードで俺達に寄ってきた。
 ……ふむ。近くにいるだけなら冷気は感じないんだな。ポケモンは奥深いものだぜ。

「おー、いい提案ッスねえ。わかってるじゃないか小娘ー」

「えへへ、それほどでも〜」

 おどけたカッチの発言に、グレイシアは照れる。おいそこのサボテン、そんなこと言うから調子に乗るんじゃないのか?
 溜め息の代わりに、俺はホットココアを飲み一息付いた。

「あ、折角だしトランプやらないッスか?今持ってる」

「なんで今持ってるんだよ!」

「ナイスツッコミッス、ザン!」

 怒りに任せて俺はカッチにブレイククローを繰り出した。


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