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【妄想爆発】チラシの裏【大上等】

846リザードンとトロピウス:2014/09/15(月) 11:33:42 ID:OP/snhmM
 どこもかしこも痛い。
 体が動かないからどうなってるか分からないが、ひょっとしたら足首から先は無くなってるかもしれない。
 ああ、もう痛みも感じなくなってきた。目の前のものも見えない。
 死ぬのか、俺は。




 口の中に甘い味が広がって、夢中で飲み込んだ。もう一度それが来る気配がして口を開けてみたら、今度は驚くほどの辛みが入ってきて、一気に目が覚めた。
「あれ、もう気付いたの?」
 耳元に届いた穏やかな声に目を向けると、緑色の帽子のような額の下から、大きな目が俺を覗き込んで笑っていた。
「すごい怪我だったのに、回復早いなぁ。びっくりだよ」
 ゆったりとした口調。こんな話し方をする奴は今まで見たことない。
 誰だ? そして此処は何処だろう。
「お前が……助けてくれたのか?」
 だんだんと体に感覚が戻ってくる。と同時にあちこちの傷が疼き出した。
「助けたことになるのかなぁ。僕不器用だから何もしてないんだけどね。なんかボロボロだったから、とりあえず止血だけはしてみたけど……まだ痛いかな?」
「……いや、大した事はない」
 言われてみて気付いた。疼きはするが体が壊れるような痛みはもうほとんど残っていない。止血と……多分、口に入れてもらった木の実の効果だろう。
「君ってリザードン、だよね。僕初めて見たな」
「そうか。……お前は」
「トロピウス」
 目を細めて告げられたその名に覚えは無かった。互いに初対面なのは住む場所に全く共通点が無いせいだ。
 周囲をぐるりと見回してみる。普通の状態だったら、俺がこんな森の奥深くに入る筈はないだろうな。
「君、随分な目に遭ってたみたいだけど、理由は後で聞くことにするよ。まずは傷を治さなくちゃね」
「え……」
 見上げると、トロピウスは口に木の実をくわえていた。喰わせてくれるのかと思ったら、トロピウスはそれを自分で噛み始めた。
 なんだ、くれる訳じゃないのか───ぱりぽりと咀嚼する音を、ぼんやりと聞いていたら、ふっとトロピウスが顔を近づけてきた。
 何をするんだろう、と思う暇も無かった。
「う!?」
 トロピウスの顔が目の前にあった。口と口とが触れ合う感触。
「んー」
 ぐいぐいと口を押しつけてくる。訳が分からなくて口を開けば、細切れになった木の実が押し込まれた。ほんの少し甘みのある、でもあまり旨くもない木の実の味。
「おまっ……」
「ちゃんと食べてよ」
 口の中に木の実を入れたまま文句を言おうとしたが、ピシャリと遮られた。
 じっと見つめてくる真剣な目に気圧されて、反論も出来ないまま仕方なくそれを飲み込む。
「……お前な」
「もう一個」
「口移しはやめてくれ」
 何を考えているのか、当たり前のように木の実を口の中で噛み始めたので、前もってそう言った。
「今更恥ずかしがらなくていいよ。さっきから何度もやってるし」
「いや、自分で噛めるから」
「……あ、そっか」
 ようやく気付いたようにトロピウスが呟いた。天然か、こいつ。
「そういえばそうだよね、さっきは君が意識朦朧だったからそうしたんだ。ごめんごめん」
 はい、と言って、今度は丸ごと木の実を寄越してくれた。もちろん『手』なんて使えないから口でくわえて受け渡すのだが、噛み砕いたものをがっつり流し込まれるよりは余程マシだ。
 ああ、よく考えたらこれが俺のファーストキスなのか。
「念のため聞くが、お前雄だな」
「そうだよ?」
「そうか」
 ……一瞬でも『僕っ娘』を期待した俺が馬鹿だった。

────────

つづきません
2年前の日付で書きかけのまま放置されてた小話
プロット無しなので当時どんなストーリーを想定していたのか不明ですが自分の発想からして間違いなくホモネタと思われます


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