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文章鍛練企画【三語即興文in鍛練場】3/24〜

1ごはん武者修行有志s:2004/04/07(水) 05:44
■執筆の狙い
だれでも書きこめます。感想レスを使った遣り取りです。
初めてのみなさんも歓迎します。
興味のあるひとは参加してください。

【形式】
 前の方の作品を簡単に批評しつつ(1〜数行)、
 出されたお題で文を作り(5〜15行程度)(題は順不同で使用可)、
 次の方のお題を出す(三語―名詞が基本、各語の関係が遠いほど望ましい)。
※繰り返し

【批評の規準】
 ・三語の、漢字(平仮名、片仮名)と音を変えず、そのまま使用する。
  ↑とりあえずこれだけはクリアしてください。
 ・お題の消化の仕方。意味の持たせ方。
 ・ストーリー性。
 ・独創性。面白さ。

【ルール】
 ・第一目的は文章の・発想の瞬発力・ショートショートの構成鍛練です。
 ・同じ方の書き込みは一日一回に制限です。言いかえれば毎日でもどうぞ。
 ・同じお題の投稿が重なった場合、最初の投稿のお題が次に継続されます。
 ・上記の場合、後の方の作品は残します。事故と見なしますので謝罪などは不要です(執筆の遅い初心者保護)。
 ・感想のみのレス(ひやかし)は原則的に禁止の方向で。
 ・批評の義務は自分の使うお題の作品のみですが、上記の「事故作品」全てに批評を付けても結構です。感謝されるでしょう。
 ・何事も故意の場合は釈明必須ですが、多少の遊び心は至極結構です。ただし、基礎の未熟な方の遊びはお断わりいたします。
 今回も、「お題の他に注文をひとつ」を導入したいです。
 お題を出す人が合わせて決めてください。強制ではありません。お互い無理のないようお願いします。
 例)「主人公の性別は○○で」「ハードボイルドっぽくお願いします」「恋愛ものにしないでください」
 
 ご意見はラウンジにてお願いします。
2004/03/24(水) 15:52 公開

※こちらは<作家でごはん>鍛錬場より転載したものです。日付で作品を覚えておられる方は、投稿者名の横ではなく、コメントの末尾の日付でご確認ください。
 前のスレッドはhttp://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/movie/4262/1081271183/-100です。

2ヤママサ:2004/04/07(水) 05:52
「黄色いレバー」と「装置」に違和感を感じました。ちょっとコテコテ過ぎるかなって。
今時、機械的な接点は使わないと思いますよ。マグネットスイッチとかの電気的な接点が主流でしょう。レバーを動かして電源オンっていうのは古すぎます。
「トロイの木馬というウイルス」も一般的じゃないと思います。「○○というトロイの木馬」が普通じゃないでしょうか。ストーリーについては、よく分かりませんでした。

お題は「弓矢」「振り袖」「いかりや長介」、追加ルール「現代もの」で書きました。

「最初はグーだよ」
 いつになく真剣な面持ちで、彼女は言った。それもそのはずだった。
 初詣に訪れた神社で、偶然行われていたバラエティ番組のじゃんけん大会で、あろう事か僕の彼女が決勝まで残ってしまったのだった。赤い振り袖に、白いショールをまとい、ステージ場へと上がっていった彼女は、相手の男性に向かってそう言ったのだ。
「決勝戦ですからね、『最初はグー』だけじゃだめですよ。フルコーラスで行きましょう」
 すっとぼけた漫才師崩れの見たこともない司会者が言った。久しぶりの仕事なのか、やけにテンションが高いのが目障りだった。
 彼女は左足を前に出し、胸の前で右の拳を左の手のひらで覆っている。準備万端。相手の男性も同じような構えを取っていた。
「行きますよ……、せーの、いかりや長介、頭はパー、最初はグー、またまたグー、正義は勝つ、あジャンケンポン!」
 静まりかえった境内に、司会者の声が響き渡った。ハンディカメラを持ったスタッフが、彼女の表情を下から狙い撮る。
 最初の一回で勝負は決した。男は長介、彼女はパー。
 彼女は見た目にもはっきりと分かるほどに落胆し、大袈裟に肩を落として見せた。名前だけを簡単に聞かれ、はいどうも、と弓矢――正確には破魔矢というのか――を一個もらい、背中を突っつかれるようにしてステージを後にした。優勝は賞金二十万円だったから、その差は天と地ほども開きがある。そして喜びと悲しみも天と地ほどの差があった。
 彼女は僕を捜そうともせず、茫然自失のままでふらふらと大鳥居の方向へと歩いていった。直ぐさま彼女を追いかける。
 僕が、残念だったな、と声を掛けると、彼女は僕の腕の中で声を出して泣き出した。偶然舞い込んだ予定外の出来事に、声を出して泣けるなんて彼女も可愛いところがある。そう思った瞬間、彼女が僕の顔を見上げていった。
「オメーがパー出せっつったんだろうがよ。ざけんなよ、まったく」
 そう言うと、持っていた矢で僕の頭をひっぱたき、その反動で二つに折れてしまった矢を、参道横の砂利へと叩き付けた。
「一人で帰るから、十メートル以内に近づくなよ」
 正月なのに、般若のような顔をして、彼女は僕の元を去って行き、そこには折れた矢と僕だけが取り残された。

 まあ、年下の彼女とは概ねこんなものだろう。

――了――

次のお題は「ラーメン」「スピーカ」「電気ポット」
追加ルールとして「お題は比喩に用いてください」でお願いします。
++2004/03/24(水) 20:51

3文也:2004/04/07(水) 05:53
文也と申します。ここには初めて参加させていただきます。

>ヤママサさん
読ませていただきました。
お題の消化の仕方がうまいと思いました。オチも面白かったです。ただ年下の彼女が概ねああだとちょっと困りますね(^^;


お題「ラーメン」「スピーカ」「電気ポット」
追加ルール「お題は比喩に用いてください」

「いい風……」
 思ったとおり、屋上には涼しい風が吹いていた。
 まだ七月の始めだっていうのに、お天気お姉さんの話では、今日は『真夏並みの暑さ』らしい。教室の窓から見る遠い景色は、電気ポットから立ち上る熱気のように揺らめき、クラスメイトは皆、茹ですぎたラーメンみたいに伸びていた。
 で、なぜ私が屋上なんかにいるかというと、このクソ暑いのに蒸し風呂みたいな教室で数学なんか受けてられるかと、授業をボイコット……まあ要するにサボったからだ。
「なにしてんだ、沙織」
「きゃ!」
 突然名前を呼ばれ、思わず声を上げてしまった。声がした方を向くと、十数年来の幼馴染がそこにいた。
「驚かさないでよ、遼平。それに、そう言うあんたこそなにしてんのよ」
 日陰に座った遼平の横に自分も腰掛けながら質問をそのまま返すと、遼平は遠くの山のあたりを指差した。
「すげえよな、入道雲。昔っから好きなんだ」
 こいつ、意外な一面を持ってるんだなと思いながらも目をやると、山の合間から真っ白な入道雲が雄々しく立ち上っていた。真っ青な空に、純白の雲がぐんぐん伸びていく。その姿に少し見とれた後、素直な感想を口にした。
「うん、すごいね。それに綺麗……」
 私がそう言うと、遼平は微笑んだ。見慣れているはずの笑顔が、ほんの少し違ったものに見えた。涼しい風が、髪をかき上げ通り過ぎていく。
 壊れたスピーカーみたいな蝉の鳴き声を遠くに聞きながら、お互いなにも喋らず、入道雲を見ながらゆったりと時が過ぎていった。

――終わり――

次のお題は「チケット」「満月」「電車」
追加ルールは「ほのぼのした話」でお願いします。
++2004/03/25(木) 05:00

4和音:2004/04/07(水) 05:55
二回目で御座います。

>ヤママサさん
なんか身勝手すぎる気がしました。まぁ、猟奇的な女の子の映画もありますし、それはそれでいいんじゃないでしょうか。
しかし、いかりや長介をあそこで持ってくるとは……。懐かしいです。

>文也さん
比喩は素晴らしいですね。よく思いついたと思います。
この二人は幼なじみなんですよね。じゃあ遼平君が雲が好きなの、知らないなんてことあるんでしょうか? 本人、昔からって言ってますし。


お題は「チケット」「満月」「電車」
追加ルールは「ほのぼのした話」

 ガタンゴトン、と電車は揺れる。私は揺れに身を任せながら、座席に座っていた。
 この車両には私以外に乗客は見あたらない。時計を見ればもう九時だ。いつもなら六時の電車には乗っている私が、九時の電車に乗っているのには訳がある。
 一つは部活。
 もう一つは……。
 私はポケットからチケットを取り出した。
 私の好きなバンドのライブチケット。いつだったか地元のテレビ局で抽選していたペア券だ。
 これは私が当てたんじゃない。
 ずっと好きだった彼が部活終了すぐに渡してくれた。
『余ったから一緒に行こうぜ』、と照れくさそうに言う彼の顔が思い出される。
 恥ずかしくなって窓の向こうを見た。
 山の上に満月が昇っている。
 彼もこの月を見ているんだろうか。
 二人は違う場所で一つのものを共有している。
 そう考えると、何故だか月が愛おしく思えた。
 ライブは来週。どんな服を着ていこうか……。

 fin

あ〜、案外難しいです。ほのぼのしたのかな?

次のお題は「抹茶味」「漫才」「アメリカ」
追加ルール「登場人物は三人」
でお願いします。

++2004/03/25(木) 18:38

5おづね・れお:2004/04/07(水) 05:57
おづねです。書いてみました〜。

≫和音さん
二人が同じ月を見ているのだろうか……とても好きなシチュエーションです。(阿倍仲麻呂を思い出すワタクシ)
お題が感動につながっていていいですね。十分にほのぼのさせていただきました。

≫文也さん
夏の比喩で三語を統一されていて、お見事! と感心してしまいました。
壊れたスピーカーという蝉の比喩がいい感じですね。シチュエーションとしてはアブラゼミかなあ。個人的にはツクツクホーシなんかもいいかな、なんて思います。

≫ヤママサさん
「折れた矢と僕だけが取り残された」というがっくり感と、空行を置いての「まあ、年下の彼女とは概ねこんなものだろう」という悟りがとてもおもしろかったです。空行の配置がうまいなあ、と。余談ですが、『最初はグー』のフルコーラスをはじめて知りました(^^;>

≫セドナさん
不思議なお話でした。もう少し長く読んでみたいお話です。この雰囲気は好きですね〜。
たぶん、他者に月をコントロールされて地球に落下させるなどの攻撃から「自衛」するために「装置」が奪われる……というお話なのかな?
ただちょっと気になったのは、三日月は日の入りのときには西の空に浮かんでいて、すぐに沈んでしまうように思うのですが。


お題は和音さん出題の
【「抹茶味」「漫才」「アメリカ」、追加ルール「登場人物は三人」】です。


「デザートは抹茶味のアイスにしようかな〜」
 焼き肉が大方片づいてぼくが独り言を言ったとき、エリカはこんな言葉を投げかけてきた。
「はっはっ、抹茶味のアイスとは、トモユキも堕落したもんだよな」
 デートのいい雰囲気を台無しにするようなエリカの言葉に、思わずむきになって反論してしまった。
「だ、堕落ぅ〜? 食べ物を好きに選んで何が悪いんだよ」
「味覚を装うようになったら堕落にほかならないね。アメリカを生活習慣病大国に陥れた罠がそれだよ。そもそも味覚が生き物に備わっている理由は、体に必要な栄養分を判別するためと、危険なものを体に取り込まないようにするためだ。それを添加物でごまかすなんて、味覚の意義に真っ向から挑む行為にほかならないのさ」
 うう、手厳しい……今日の彼女は『理屈屋モード』だったのを忘れていた。
「トモユキ、ごめんね、今モード換えるから」
 コトミは彼女のPDA(個人用の携帯情報端末のこと)のダイアルを回して、人工会話プログラムのスイッチを切った。
 と思ったら、コトミはモードを切り替えただけだったみたいだった。今度は漫才モードのエリカのおしゃべりが始まってしまい、ぼくはデザートを頼むタイミングを完全に失ってしまった……。

(了)


デートというシチュエーションで、追加ルールの「登場人物は三人」を書いてみました。
わかるように書けたでしょうか(^^;>
次のお題は「ライダー」「スープ」「笹」です。追加ルール「登場人物が叫ぶシーンを入れてください」
次の方、よろしくお願いいたします。

++2004/03/28(日) 01:40

6:2004/04/07(水) 05:59
初めての参加です。

≫おづねさん
 三人のうち一人が人工知能、というのはヒネリがあっていいですねー。しかし
 いつもデートについて来られるのはたまらないかも。w

ではでは
>お題は「ライダー」「スープ」「笹」 追加ルール「登場人物が叫ぶシーンを入れてください」


 俺はさすらいのライダーだ。 今日も愛車のスピードに身を委ね、凍てつく風を切る。
 このスピード、死と隣り合わせの緊張感の中でだけ、俺は人生を感じられる。
 「普通」なんてものには興味がない。へこへこと周りに同調して生きて何になるというのだ。
 しかし、さすがに冷え切った身体がいう事を聞かなくなってきた。 俺は道のかたわらの自動販売機の横にバイクを止め、百二十円を入れた。

 だが金を入れてから気付いたが、そこにあったボタンは

「スープ」
「笹」

 の二つだけだった。
 なんのことはない。俺は今、ただ、暖かいスープを押せばいいのだ。腹を満たし、冷えた身体を温めて再び走り出せばいいのだ。
 しかし、なぜ「笹」……? これを押したら一体何が起こるんだ?
 どうしても「笹」のボタンの存在が俺を誘惑する。
押してしまいたい……もしかすると、俺はこのボタンによって「普通」を外れた世界を垣間見ることができるのではないか……?!

 「てめえ早くしろよ!」
 後ろからの叫び声にはっと振り返ると、そこには百二十円を握り締めたジャイアントパンダがいた。
 俺は深く納得してスープを押したが、「普通」が一番だと思った。
(終)


次のお題は「四コマ漫画」「駄菓子」「先生」で。
追加ルールは「舞台は学校」でお願いします。

++2004/03/28(日) 02:37

7海猫:2004/04/07(水) 06:02
 久々に参加です。いや、というより、回転早すぎ。

>ボさん
 ツッコミ所が多いのがまた面白いですね。笹が出てくる自販機って……中で引っ掛かりそう。日常から少し外れたもので読者に興味を抱かせ、ラストで納得させるネタは巧いと思いました。

>おづね・れおさん
 ごっちゃになってて、人物がよく分からなかったようにも思えます。登場人物は「トモユキ」(人間)、「コトミ」(人間)、「エリカ」(プログラム)で正しいでしょうか? コトミの登場が唐突な気がして混乱しました。理屈モードの理屈がそれっぽくて、何か好きです。にしても、デート中に人工会話プログラムを起動してるコトミって一体……。

>和音さん
 ほのぼのさせようとしているのがよく分かり、好感の持てる文章です。しかし文章中、「九時の電車に乗っている」理由が語られていないような気がするんですが。一つは部活。ところでもう一つは?

>文也さん
 夏。授業ボイコット。屋上。幼馴染。その他、いわゆる「お約束」の題材なので情景が想像しやすいですね。何だかくすぐったくなる作品です。もう少しインパクトがあっても良かったと思いました。

>ヤママサさん
 いやもう、絶対元ヤンキーですって。けれど、「現実はこうだろうな」とも思い、妙に納得しました。ところで「弓矢」って文字通り「弓」と「矢」のセットを指すので、「破魔矢」の事を言うには少し適していないのではないかと。それと、
 >「行きますよ……、せーの、いかりや長介、頭はパー、最初はグー、またまたグー、正義は勝つ、あジャンケンポン!」
 なんですけど、本来は、
 >「最初はグー、またまたグー、いかりや長介、頭はパー、正義は勝つ、〜」
 じゃなかったでしたっけ? 僕の記憶違いかもしれませんが。

 余談ですが、いかりや長介さん。ご冥福をお祈りします。

(本文が長すぎるため分割掲載しました)

8海猫:2004/04/07(水) 06:03
(上の続きです)

お題:「ライダー」「スープ」「笹」+「四コマ漫画」「駄菓子」「先生」
追加:「登場人物が叫ぶシーンを入れる」+「舞台は学校」


「おーし、皆席着けぇ」
 それはある日の昼休みの事だった。担任の笹原が教室に入ってくるなり、皆に向かってそう言い放った。駄菓子を食いつつ四コマ漫画を読み耽っていたオレは、少し慌ててそれらを机の中に押し込んだ。
「ありゃ、全員残っとけ、つったのに、いねえ奴いるな」
 教室の中を見回しながら、笹原は誰にともなく呟いた。その後の密かな「後でボコだな」という呟きは、最前列のオレにしか聞こえなかったに違いない。見た目とは違い内面に嫌な鋭さを秘めた、その名の通り笹の葉みたいな男だ。
「あのさ先生、何だっての? 折角の昼休なのに」
 宮島のぼやきに、笹原はやる気無い視線を向けた。
「ん? ああ、笠野が盗難に遭ったっつうから、緊急会議」
 笹原がそう言うと、真っ先に眼鏡の高田が立ち上がった。
「先生、酷いです! 犯人がこの中にいるって言うんですか?」
 ブーブーと皆も口々に文句を言う。普段はクラスの纏まりも何も無いくせに、こういう事になると纏まりが生まれる。それにまた、先生はやる気無い視線を向け、やる気無さげに手で制した。
「あーまー、疑うのは悪いけどさ、ひょっとしたら、ってあるだろ? この中に犯人がいて、そいつだって後悔してるかもしれない。でもキッカケがなくて言い出せない。そんな事がさ」
 笹原は高田を座らせると、皆に目を閉じるように指示した。
「よし、皆目を閉じたか? おい上坂、薄目してんじゃねえ。潰すぞ」
 何を?
「えー……石のスープって話を知ってるか? あれはな、皆で一丸となれば、無から何だって生み出せるって話だ、多分。詳細は自分で調べろ。つまり大切なのは『和』なんだよ」
 おいおい、端折るな。説得力無いっての。
「さて、んな訳だから、この中で笠野の仮面ライダーの人形盗んだ奴、神妙に手を挙げろ」
「先生、人形じゃなくてフィギュアです」
 どっちだって良いよ。ってか笠野、んなモン学校持って来んな。
 妙に長い沈黙の中、微かに誰かが身動ぎする音が聞こえた。犯人か? そう思い、知らず音の出所を探ってしまう。まあ、誰だって良いさ。こんな馬鹿げた騒動はさっさと終わらせてしまいたい。いちいちツッコめないのもストレス溜まるし。
「……よし、分かった。皆目を開けろ」
 教室の中に「やれやれ」といったざわめきが流れる。しかし笹原が口を開く気配に、皆は咄嗟に口を閉じた。最後くらい、教師らしい事を言って終わらせてくれるはずだ。そんな期待を込めて。
「えー……。犯人は武野でした」
「言うのかよッ!!」
 クラス一丸、総ツッコミと相成った。



 クラスを纏める偽悪者教師のお話です。長すぎたかも。反省します。
 次回は、
お題:「バンダナ、みぞれ、梅」
追加:「お題を順番通りに使う(二回以上使うのであれば、二回目以降は順不同)」
++2004/03/28(日) 10:59

9セドナ:2004/04/07(水) 06:05
またまた参加させて頂きます。(……何回目だろう?)

>海猫さん
 理不尽な先生が最後に総ツッコミされるところがとても面白かったです。お題のダブル消化は力業ですね。
「石のスープ」の話ってなんなんですか? そこだけがよくわかりませんでした。
「いかりや長介」を使ったジャンケンの仕方は私も海猫さんのに一票。地方によって違うのかな。

>ボさん
 ジャイアントパンダの後ろで私は「『笹』押せよっ!」って叫びました。(笑)……押して欲しかった。 自販機は「スープ」と「笹」だけじゃなく、「コーヒー」とか「コーラ」とか普通の自販機のメニューがズラッと並ぶ横にひそかに「笹」ボタンがあったという設定でも良かったかな、と思いました。でも面白かったです。
 
>おづね・れおさん
「人工会話プログラム」って興味深いアイデアですね。「あゆモード」とか「あややモード」みたいな有名人にちなんだモードも見てみたい気がします。近い将来、本当に実用化されてそうでちょっと怖いですが……。
 あと、前作を解釈して頂いてありがとうございます。だいたいその通りであってます。
 実はこの「月」の話はもっと大きな設定があって、だいたいのあらすじは、事故で家族と声を失い、閉じこもりがちになった少女が、ある日突然、月の管理人を任され、いろんな人の為に月を操っていくうちに自分の居場所を取り戻していく、というようなものなのですが、ここに投稿したのはその中からほんの一部を試験的に切り取ったものだったんです。作品の中に設定に当たる部分をほとんど書いていないので、どのように読んでもらえるかわかりませんでした。そんな未完成の文章を、ちゃんと背景まで読み取っていただけたのは本当にありがたいことです。ありがとうございました。三日月の位置の指摘も感謝します。私事ですが、おづねさんの作品はけっこう私のお気に入りです。

>和音さん
 青春の一ページを切り取ったような作品ですね。電車の窓から見える風景が主人公の気持ちとシンクロしていてとてもきれいだなぁと思いました。
 和音さんのお題「抹茶味」「漫才」「アメリカ」で「ポーキー・マッチャージー」(ポッキー抹茶味)というアメリカ人が主人公のお話を書いていたんですが、途中で断念しました。……無念。

(本文が長すぎるため分割掲載しました)

10セドナ:2004/04/07(水) 06:06
(上の続きです)

では作品に。

お題「バンダナ、みぞれ、梅」追加ルール「お題を順番通りに使う」
 

 夏の暑い日差しのなか「かき氷」の幟がわずかな風になびいている。美希はたいくつな昼下がりの店番をファッション雑誌を読みながら過ごしていた。といっても読んでいるのはいちばん後ろにある占いのページ。「え〜っと、今週の運勢は……おお、☆5つ。ナニナニ、『今週中に運命の出会いがあなたを待ち受けています』ってか、ヨッシァ!」
「かき氷、ひとつください」美希が今週の運勢に浮かれていると、頭にバンダナを巻いた青年がこちらをのぞき込むようにして言った。美希は「あ、はい、ちょっとお待ちくださいね」と立ちあがり、注文を訊いた。「何にしますか?」「あ、じゃあみぞれで」「ミルクはどうしますか?」「いや、けっこうです」青年は迷いもなくとても爽やかな声でそう注文した。美希もいつになくすんなり受け答えをした。「少々お待ちくださいね」
 氷をかき氷機にセットしてスイッチを入れると、氷は見る見るうちに削られて、下の受け皿にたまっていく。
「あの〜」氷が今にも受け皿を満たそうかというときに、青年は口を開いた。「梅干しってありますか?」
 突然の訴えに、美希はいささか唖然として対応が遅れた。へっ? 梅干し? この人は梅干しをいったいどうするんだろう?
「あ、いや、べつになかったらいいんですけど、もしあったらかき氷の上にそれをのせてもらえますか?」
「……ちょ、ちょっとお待ちください」美希はあわてて冷蔵庫を開き、梅干しを探した。たしか奥の方に家の梅干しがあったと思うんだけど……あった。美希は梅干しの瓶を取り出した。「わっ!」そんなことをしているうちに、氷がこんもりと受け皿にたまっていた。美希はすぐに受け皿を取り出して余分な氷をはらい、形を整えて上からみぞれのシロップをかけた。そして忘れずに梅干しをのせた。
「遅くなってすいません」美希が丁寧に謝ってかき氷を差しだすと、青年は「いいですよ、ありがとう」と言って受け取り、お代を払った。そしてそのまま店先のベンチにすわり「梅干し入りかき氷」を美味しそうに食べていった。美希は、そんな青年を見つめながら、私も今度やってみようかな、とひそかに想った。


お題:「四コマ漫画」「駄菓子」「先生」追加ルールは「舞台は学校」

 今年から僕の担任になった高島先生は「駄菓子好き」なので有名だ。学校でも何かにつけてはカバンから水あめやら麩菓子を取り出して食べているので、よく他の先生から注意されている。高島先生は、もうすぐ還暦を向かえようかという年なのに、駄菓子ばかり食べているせいか身体は割りばしみたいに細く、おまけにいつも学校から支給される上下茶色のジャージを着ているので、遠くから見るとまるで棒チョコが歩いているみたいにみえる。
 まあ、ここまではべつに許せるのだけど、問題はここから。高島先生は自分の「駄菓子好き」を無理矢理僕たちに押しつけようとするのだ。たとえば。
 給食係がみんなのお皿に給食を盛っていると、後ろから近づいてきて「給食? そんなもの食べるな。子供は駄菓子で充分だ!」と注意する。休み時間に友達が先生に隠れて四コマ漫画を読んでいるのを見つけたときも「漫画を買って読むぐらいなら、駄菓子を買え!」といって漫画を持っていってしまう。僕らが学校帰りにコンビニによって、お菓子を買っていることが見つかったときも、先生は「お前ら、寄り道するならコンビニじゃなくて駄菓子屋に寄れ!」と怒る。こんな調子だから、クラスのみんなはとうに困り果ててしまっている。でもまあ、ほとんどはもうあきらめているみたいだけど。
 そんな高島先生が、唯一みんなの人気者になれるのは、ほかでもない遠足の時。
 先生は、まるで旅行にでも行くかのような大きなリュックに、詰め込めるだけ駄菓子を持ってきて、それをみんなの前でおしげもなく披露する。そして「さあ、みんな好きなだけ食べなさい。駄菓子がいちばんうまいんだ!」と大声でみんなを呼び寄せる。すると生徒たちは一目散に集まってきて、次々と先生の駄菓子を口にしていく。先生は駄菓子を食べる生徒たちを見ているとき、いちばん幸せそうな顔をする。まったくしょうがない先生だなあ、と思いつつ、僕も先生が持ってきた駄菓子をほおばる。こう言うときに食べる駄菓子って、すごくおいしいよね。


2作品の投稿をお許しください。

次のお題は、「バナナの皮」「厚切りステーキ」「ヒップホップ」 追加ルール「誰かを転ばしてください」

++2004/03/28(日) 16:29

11おづね・れお:2004/04/07(水) 06:09
おづねです。なんだかおもしろくなってきてしまいました(^^;

≫セドナさん
ひっそりこっそりと天体ネタを期待していました〜。って、勝手にすみません(^^;>
(「セドナ」さんなので、そんなことを思ってしまったり……)
お題、『運命の出会い』ってもしかして、梅干しかき氷との出会いのことだったのかな? もしもやみつきになってしまったら、まさに運命の出会いだったのかも。雑誌の占いコーナーを担当していた友人もおりますが、「良く当たります」と読者の評判はよかったとか。あなどれませんね、占い(^^;
もうひとつのお題、棒チョコという先生の描写がおもしろくて笑ってしまいました。こんなおかしな先生、授業のほうは大丈夫かなあ……。短い中ですごいインパクトでした。


≫海猫さん
なんとか短い中で叙述トリックみたいなことができないかな、と思ったのですが、厳しかったです(^^;
作品、すごい密度でした。先生ひどいや〜(笑)。
セドナさんの作品にも劣らないほど強烈な先生です。考え方によっては生徒の攻撃の矛先を自分に向けるためにわざと……ってのは考えすぎなんでしょうね〜(^^;

≫ボさん
人工知能との自由な会話は、はじめてコンピュータに手を触れたときからの夢なんですよね(^^;> 未だに叶わず。残念〜。

>「てめえ早くしろよ!」
>後ろからの叫び声にはっと振り返ると、そこには百二十
>円を握り締めたジャイアントパンダがいた。
ジャイアントパンダの凶悪な面相まで目に浮かびました。ものすごくツボにはまりました。
そしてボさんの『カナコ』より怖かった……というのは言い過ぎですね、あはは(^^;
このオチがあまりにすごかったのに刺激されて、また書きたくなった私です〜。

では、お題はセドナさんの

【「バナナの皮」「厚切りステーキ」「ヒップホップ」】
【追加ルール「誰かを転ばしてください」】です。


 まぶたを閉じ、そして開く。こんな行為を何度繰り返しても目の前のバナナの皮は厚切りステーキに変わったりはしなかった。
「貧乏が、うらめしいぞ〜」
 雪の降る深夜の研究室で、俺は誰にも聞こえない恨み言をつぶやいた。
 卒業研究の締め切りまであと二週間だというのに、俺のはまだいいところ道半分来たかどうかというところだった。教授の定期チェックを適当なでっち上げでのらりくらりと逃れてきたツケが、ここに来てぐろぐろと効いてきた。
「バイトもできないし、とにかく金がない。ひもじい」
 ラジオをつけるとヒップホップの有名な曲が流れた。そういえばこの歌手は麻薬容疑で逮捕されたことがあったっけ……。
「バナナの皮って、ドラッグになるんじゃなかったかな?」
 ひもじさを忘れたいあまり、俺はそんなことを口走っていた。
「バナナの皮なんて毒性もほとんどあるはずないし、ちょっとくらいなら構いやしないだろうし、それに俺はもうバナナの皮でもいいから食べてしまいたいほど腹が減っているのだ、いるのだったら!」
 そうだ、バナナの皮でトリップしてバナナの皮を厚切りステーキだと思って食ってしまおう……俺の妄想がそんな危険水域に達したとき。
 ドッスーン。
 屋上で音がした。俺の目は一気に覚めた。悪友がどこかの漫画で読んだという知識を持ち出して、屋上に水をまいて氷を張り、スケートリンクを作ったのだった。さっき何かを叫んで屋上に飛び出していったと思ったら、本当に滑ったのか。そして転んだのか。
 あいつも相当追いつめられているよなあ、と思いながら、俺はバナナの皮にちらっと視線を走らせる。

 黄色い夢は、スローモーションのように回転しながら宙を舞い、ゴミ箱へと吸い込まれて消えていった。


−了−

次のお題は「サンダー」「通話」「泡立て器」です。追加ルール「戦いのシーンを入れてください」
では次の方、よろしくお願いいたします。

++2004/03/29(月) 00:48

12藺 (先日はすいません:2004/04/07(水) 06:11
>おづね・れおさん
非常に幻想的…というか雰囲気が独特で面白かったです。
どこの文庫だか忘れましたが、NHKという作品に似てるなと思いました。

>海猫さん
先生のとぼけた話しが思わず苦笑してしまいました。
落ちも凄くいいと思います。


「サンダー!」
男が叫んでも何も起こらない。
「サンダー!」「サンダー!」
そう何度も焦りながら叫ぶも…何も起こらない。灰色の堅い道で男は戦っていた。
男のそばには怯える群集と男の敵、影がいた。影は男をあざ笑うかのように甲高い声で笑っている。
「しまったMP切れか!」
とっさにそう判断した男は大きな剣を出して振り上げた。禍禍しい剣が姿をあらわす。
細い枝に無数に分かれ、先端で一つになっている不気味な剣だ。
その剣を軽々と振り回し、男は巨大な影に向かって振り上げた。
銀色の刃先が影に突き刺さる。しかしその影はあまりにも巨大で、そして強かった。
鈍く銀色に光る体の輪郭。そして催眠術の十円玉のように妖しくゆれる何か。
傷一つ与えられない。そう思いながらも男はその影に向かって必死で剣を振りおろした。

「ママ。 あの人なにしてるの?」
「しっ! みちゃだめよ!」
そう囁く親子。
その視線の先には…通話中のままの電話


そしてそれにむかい泡だて器を振り回す男だった。


駄作です ^^;

次のお題は…「カレー」 「朝焼け」 「ゴルフ」
追加ルールは…「登場人物は一人」
でお願いします
++2004/03/29(月) 03:50

13からす:2004/04/07(水) 06:13
>藺さん
 泡立て器を剣に見立てる発想はおもしろいですね。もう少しいじれば、かなりおもしろくなりそうです。

>おづね・れおさん
 転ぶ場面にありきたりなバナナの皮を使わないところがいいですね。ラストの一文の雰囲気も好きです。でも、おづねさんの場合、折角なのでもう少し描写のしっかりした長いものを読みたいなという気もします。


【お題:「カレー」「朝焼け」「ゴルフ」】
【追加ルールは:登場人物は一人】

 ―― ゴルフの朝 ――

 ううっ今何時だあと、起きるやいなや目覚し時計を鷲づかみにし、何だもうこんな時間かと、それを放り投げるとガシャンという嫌な音がして、それでも、くちゃくちゃになった布団から飛び出し、パジャマを脱ぎ散らかして洗面所に駆け込むと、鏡に映る自分は、髪は寝ぐせでボサボサ、ひげはボウボウ、おまけに顔は幽霊みたいに青っちろく目の下にくまができ、ああなんで昨夜はあんなに遅くまで飲んじゃったんだろうという後悔より、でも隣に座った女の子は珍しくかわいい娘だったなあ、ケータイの番号ももらったしウシシなんていう浮かれた気分が先に立ち、なんてひどい顔だと思うひまもなく、電気ひげ剃りでしゅるしゅるとひげを剃り始めると、どうもひげ剃りの馬力がなく、いつもより力を込めて剃っていると、ちょうど半分くらい剃ったところで、しゅーんといってひげ剃りが止まり、ああしまった充電し忘れたと、普通のひげ剃りを探し始めるが見つからないので、半分ひげが残ったまま、しかたがない先に飯の準備でもするか腹が減っては戦はできぬと、レトルトのボンカレーを、お湯を沸かすのがめんどくさいので、そのままチンだとばかりに電子レンジに放り込み、窓の外を見ると明るくなってきて朝焼けが見える、ってことはやばいじゃん、日が昇る前に出発せにゃならんのに、得意先の部長の接待ゴルフで遅れる訳にはいかんのにと、腹の突き出たデブ部長、略してデブ長なんてしょうもないことを考えながら、ゴルフバッグをチェックするとパターが見当たらない、ああそうだベランダで物干し竿代わりに使ってたと思い出し、取りにいこうとすると、台所の方からボンっというすごい音が聞こえ、あわててそっちへ行こうとすると、さっき脱ぎ散らかしたパジャマに足が絡まってすっ転び、そのままこけつまろびつしながら台所にたどり着くと、ぷーんとカレーのいい匂いがする、ってカレーが電子レンジの中で爆発してるじゃん、さすがはボンカレーなんてダジャレを言っている場合ではなく、足にパジャマのズボンを絡みつかせながら、雑巾はどこへ行った、それより先にひげ剃りは、っとベランダにパターも探しに行かなきゃ、とか何とかやっている内にチュンチュンチュンと太陽が昇ってくるのであった。
(了)


 長くなってしまいました。一文です。読めるでしょうか。

 次のお題は、「芥川賞」「きのこ」「鳥インフルエンザ」
 追加ルールは、主人公は中学生で。
++2004/03/29(月) 08:49

14塔子:2004/04/07(水) 06:14
ふらふらと立ち寄っては参加させていただいております。

>からすさん

お話を一文にまとめるとは、お見事でした。でも、やはりちょっと読みにくいでしょうか(^^;)。息継ぎ(頭の中での)が辛くて、途中何度か、止まったり、少し前に戻って読み直したりを繰り返しました。ドタバタな感じが面白いのでストーリーはとても楽しめました。この後、この主人公はたっぷり怒られてしまうんでしょうね。

*

お題は「芥川賞」「きのこ」「鳥インフルエンザ」追加ルール「主人公は中学生で。」(からすさんより)

 朝のワイドショーがお料理コーナーにさしかかり、いい加減たいくつになってきたころメールがきた。沢村から。お前カゼなんだって鳥インフルエンザかよ、ってこいつ話題が古いよ。ていうか、このあいだの社会のテスト用に、塾で先生が配ってくれたプリントに載ってたやつじゃん。一ヶ月も前の。しかも食べ物からはうつらないって先生言ってたじゃん。テレビで今つくってるおかずだって、「エリンギと鶏のささみ焼き」でしょうが。ばか。沢村ばか。SARSも芥川賞もなんて読むかわからなかったし、さすが内申32。あたし41だけど。微熱があるのにアタマの痛いメールを読まされ、いらいらしたから返信はなし。ほうっておいたら、携帯がピロリンと鳴った。新着メールあり。
 ごめん、まじ大丈夫? 熱ある? 見舞い要る?
 沢村再び。だけど今度は妙にしおらしいメールで、不覚にもぐっときた。ので、返信。
「んー大丈夫。ちょっとまだ熱あるけど」「まじ? もしかして今寝てた?」「ううんテレビ見てた。料理番組やってる」「なに料理?」
「エリンギとささみだって」「エリンギ? きのこ? でかいやつ?」「うん」「お前、エロい想像してただろ」
 やっぱ、こいつばかだ。来年高校に入ったら、絶対彼氏はかしこい人を探してやる。

*
次のお題は「ドールハウス」「証明」「根菜」追加ルール「擬声語を1つ以上入れる」でお願いします。
++2004/03/29(月) 12:35

15塔子:2004/04/07(水) 06:15
たびたびすみません。先の私の作品ですが、ミスがありましたので、書き込みさせていただきます。『内申』→『偏差値』の間違いです。また、『「なに料理?」「エリンギと〜」』の間が改行されてしまってますが、続いているものと思ってください。推敲不足に反省しつつ、失礼いたしました。
++2004/03/29(月) 13:19

16おづねれお:2004/04/07(水) 06:17
おづねです。短いサイクルで書けるので、今の私にはちょうどよい鍛錬になっているような気がします。

≫塔子さん
最後の二行がすごくほわっとした懐かしさを感じさせますね。馬鹿なことばかり言う友達、高校に入ったらああしようこうしよう……ところで沢村くんは授業中にメールを送ってきたのかな? 「彼氏」の範疇に入れてもらえない悲しさと彼の変な明るさがちょっぴり塩味かなあ、なんて思いました。
せっかく数値で成績が出てきたので、彼ならではの「偏差値32」の味のようなものをもう少し読みたかったな、とも。
欲張ってすみません(^^;>

≫からすさん
どもです。
ラスト一文は、最近書かせていただく感想で比喩とかなんとかという話をつい(求められていないかなあ、と思っているのに)してしまうので、自分でも挑戦してみました。誉められてうれしかった。
『ゴルフの朝』、一文でまとめるという、お題にもない課題に挑戦する姿勢に心打たれました。からすさんらしいテンポの作品でした。あわてている感じがすごく出ています。
ただ、一読者の私見に過ぎませんのでご容赦願いたいですが、ちょっとだけ。やっぱり少し読みにくい感じがしました。主人公をもう少し寝ぼけさせて、前の日の晩の出来事から今日の予定までを少しずつ思い出させるような形で書くのもいいかもしれませんね。

≫藺さん
雰囲気を評価していただいてうれしく思います。短いものなので、そういう評価をいただけるとは思ってもいませんでした(^^; 予想外の喜びです。
(NHKってなんだろう。日本放送協会……でないことは確実にわかるのですが〜(汗))
作品、公衆電話にサンダーを繰り返す(自称?)勇者の一シーンですね。剣の描写がほんとうに禍々しそうに思えてしまいました。でも気づいてはっとしました。「そういえば自分で『泡立て器』というお題を出したんだっけ」と。あはは。


お題は塔子さんの【「ドールハウス」「証明」「根菜」追加ルール「擬声語を1つ以上入れる」】です。
今回はライトノベル風を目指してみました〜。


「集団失踪した魔術同好会の残した物品が、このドールハウスねえ……」
 生徒会長の古藤は細い顎に指を添えながら眉をしかめた。
「ええ、彼女たち三人のクラス二年四組の精巧なミニチュアですわ」
 古藤の肩に薄くマニキュアを塗った指をそっとかけてしなだれかかったのは副会長の信濃だった。
「む、ちょっと見てくれ信濃くん」
 ガタッという音とともに立ち上がった古藤に、信濃はバランスを失って倒れそうになる。彼女のいつもの直接的なアプローチは、こと生徒会長の彼に関する限りまったく効力を持たないようだった。
「な、なんですの、古藤さん」
「お父さんではないよ、古藤だ」
「ちゃんとそう呼びましたわ」
 苗字について変な被害者妄想があるのが才色完備の会長の欠点だった。
「なにかの切れ端が付着している……根菜類か……?」
「あの、お弁当のたくあんか何かでは?」
「たくあんだと証明できるかい?」
「……ええーっと、古藤会長が自らお召し上がりになる、というのはいかがでしょう?」
「じょ、冗談ではないよ。ええい、こんなものは捨ててしまおう。焼却処分だ!」
 古藤が振りかぶって「燃えるゴミ」と書かれた箱を見据えたとき、『たくあんか何か』が口を利いた。
「すみませーん、捨てないでくださーい」
 のろのろとした口調で、それがいかにも根菜類という感じの声だと古藤は思った。
 一時間後、ドールハウスの人形はきれいに水洗いされ、魔術で人形と化していた魔術同好会の女子生徒三人は無事に元の人間の姿に戻ったのだった。
「魔術の秘密をしゃべったお礼を、お忘れなく〜」
 そんなわけで、生徒会室の窓辺には、このときから『自称・マンドラゴラ』と書かれた根菜の鉢植えが幸せそうに青々とした葉を茂らせることになったのだった。


−了−


次のお題は「コロナ」「盤面」「ターン」で、追加ルールは「人物名を十以上出してください」とします。
厳しいかな〜(^^;>
次の方、すみませんがよろしくお願いします。

++2004/03/30(火) 03:49

17安息仮面:2004/04/07(水) 06:19
安息仮面と申します。
ちょうど今書いている小説が煮詰まりつつあるので気分転換で書かせていただきました。三語には初参加ですので、不手際がありましたらご容赦ください。

>おづね・れおさん
ライトノベルはほとんど読んだことがないのでわからないのですが、軽妙な感じはでていますね。ドールハウスの人形=魔術に失敗した同好会員というのはおもしろい発想だと思いました.生徒会長の古藤さんが男性ですよね? 才色兼備という表現は女性についての表現なので、この場合はちょっと変だと思います。全体的にコンパクトにまとめられていて、三語即興のお手本みたいでした。さすがだと思いました。


では、おずね・れおさんからのお題「コロナ」「盤面」「ターン」で、追加ルールは「人物名を十以上出してください」で書いてみました。


 オレの愛車、トヨペット・コロナ1600デラックス。昭和45年製造、つまりはオレと同い年。スポーツカーでもエポックメイキングなテクノロジーが詰め込まれたクルマじゃない。スペックだけ見れば、どうってことのないオンボロ中古車だ。それでもオレはコイツが好きで、修理しながら乗り続けている。コイツとの付き合いは免許を取った18の夏からだから、もう16年になるのか。オヤジが念願のクラウンに買い替えるときにお下がりとして10万で手に入れたオンボロ。その時点で18年落ちなんだから、物持ちのよさはオヤジ譲りなのかもしれないな。
 たしか助手席に初めて乗せたのは高校で一緒だったナナコ、海へ泳ぎに行った帰り、クーラーが全然利かないって怒り出したっけ。バイト先スペイン料理店のウエイトレスだったシルビア、ケンカするとすぐに元カレのビーエムと比べやがったヤな女。大学のサークルで一緒だった交換留学生のメルセデス、オレの敬愛する小林旭の『自動車ショー歌』の盤面にキズをつけた張本人。コンパで知り合った短大生のジュリア、ガタピシいうのをジェットコースターみたいだって喜んだけど二度と乗らなかったっけ。会社の後輩のアスカ、スキーに出かけたら、ターンしようとして林道でスタックしたまま夜を明かしたこともあった。合コンで仲良くなったセリカ、エミナ、マチコ、3人ともオレのクルマを見て苦笑いしやがった。流行りものに目がない女ってのはこれだから。TE27レビンに乗ってたエランとは馬があったけど、2台で峠に行くと置いてかれるばかりで、オレのちっぽけなプライドが傷つけられたりもした。
 オーバーヒートしたり、シフトが入らなくなったり、パンクやバッテリーあがりは数え切れない。最近じゃ錆の広がりがボディにまんべんなく広がってきて、腐りがいよいよひどくなってきた。さすがにお役ご免にするかな……と思うが、去年結婚した2歳年下のカレンは昭和の匂いが残るこのクルマを手放さないでほしいという。オレの青春と二人三脚で走ってきたコイツに染み付いた懐かしい昭和の匂い。オヤジ、オレ、そして来年生まれてくるであろうオレたちの息子にも同じステアリングを握らせてやりたいと思う。そんな小さな夢を乗せてコロナは走る。今日も、そしてこれからも。

―おわり―

お題の消化にばかり追われた感が強いですね(笑)。

次のお題は「さくら」「ビタミン」「六本木」追加ルールは「冒頭に俳句(オリジナル)を入れてください」とさせていただきます。それでは。
++2004/03/30(火) 16:33

18上珠:2004/04/07(水) 06:21
顔を出すのは久しぶりでしょうか?
ROMってばかりいます^^;

>おづね・れおさん
いつもこっそりと作品を拝見させて頂いては、感嘆のため息を漏らしています。
もう少し長いもので読みたいなぁ、と思います。
三語即興では尻切れ感が拭いきれないのが惜しいですね(涙)
地の文、二行目(古藤の肩〜)の様子をパッと頭に浮かべることができませんでした。……が、これは私の読解力の無さが原因ですね^^;
最後の方の遣り取りがハッキリと分からなかったのが残念です……。(そしてこれも私の読解力の無さが原因……)

>塔子さん
いつもこっそりと拝見させていただいています。
お題の『芥川賞』の処理の仕方が上手いなぁ、と感心しました。
最後の一文の、『私』の表情が目に浮かぶようで少しニヤリとしてしまいました^^


お題:コロナ・盤面・ターン 追加:人物の名前は十以上

 次の俺の指令で俺達の、そして世界の運命が決まる。このまま滅びの一途を辿るのか、再び繁栄を得ることができるのか。椅子に深く腰かけ、唸り声を上げて次の指令を考える。
「俺の本拠地にはシャルル将軍、ボスコロフ将軍、カーリー将軍が待機している。四方を敵の大軍が取り囲んでいる。……この戦力で敵の猛攻を乗り切るのは無理だな。北側ルートで進軍中のジョン隊、ポール隊を帰還させて中と外から挟み討ちにするか? だったら空軍部隊のエリック隊、ケイ隊の空襲で敵を錯乱させてからの方が効果的だな。いや、こうして俺の戦力を一ヶ所に集めさせるのが敵の目論見の可能性もある。……どうする?」
 張り詰めた空気が、俺を除いて誰もいない部屋を支配していた。一秒、一秒が永遠の時を刻んでいるように感じられる。固く握り締めた拳は汗ばんでいた。
 窓の外を見ると空はすっかり赤く染まっていた。のんびりと飛んでいるのは……鳥の群れ、だろうか? 太陽の黒点のようなそれは、右から左へと流れるように動いていた。
 やがてその黒点は、コロナに溶けるように消えた。あの鳥の群れのように平和に一日を終えられる世界を作れるかどうかは、俺のたった一つの指令で決まる――俺は閉じていた目をゆっくりと開いた。
 その時、俺の頭に妙案が浮かんだ。
「そうだ、奇襲だ。タナカ隊とレキヌス隊で敵本部を急襲すると見せかけてザクソン隊で止めを刺す。それまで本拠地は持つか? ……いける!」
 勝利を確信し、爛々と目を輝かせながら俺はマウスを動かし、[決定]をクリックした。さあ、相手はどう出る? この戦いの盤面は読みきった!
 次のターン、相手はコンピューター、レベルは最強。この世界大戦ゲームで勝てれば俺はクラスで一番強いことになる。なぜならクラスで誰一人としてレベル最強のコンピューターに勝ったことがないからだ。
 だが、現実はそう甘くなかった。30分間、必死で考えた俺の戦略はあっさりと破られてしまった。
 (了)

人物の名前……なかなか思いつきません。
オマケに苗字と名前がごちゃ混ぜ仕様。どうでしょう?

次のお題は「結婚」「潜水艦」「セスナ」
追加ルールは「軍隊の話は出さない」でお願いします。

++2004/03/30(火) 16:55

19海猫:2004/04/07(水) 06:23
>上珠さん
 昔、戦略シミュレーションやった時の事を思い出しました。あれ苦手なんですよ。買ってから一週間で売りに出しました。僕、頭悪いんでしょうか? しかしこの長さでこのネタ、ご苦労様です。

>安息仮面さん
 車ネタ。良いですよねえ、車。あんまり詳しくないんですが、メカってデザイン的に大好きなんです。個人的にはルノーアルピーヌが好きだったり。ポルシェ911は別格ですけど。……分からない人には分からないでしょうね。作品から「青春」を感じました。ところでお名前、凄いですね。

>おづね・れおさん、感想ありがとうございました。
○「ドールハウス」「証明」「根菜」
「ドールハウス」と「魔術同好会」で大よそストーリーの流れは読めたんですが、「根菜」で「マンドラゴラ」は予想外でした。ネタにそぐわず平和な感じが良いです。
○【「バナナの皮」「厚切りステーキ」「ヒップホップ」】
 セドナさんの期待を見事に裏切りましたね。セドナさん、多分「バナナの皮」で転んで欲しかったんだろうな、って思いましたし。苦笑です。というか、何故研究室にバナナの皮が。「黄色い夢」っていう表現が素敵です。

>塔子さん
「沢村」ホントに頭悪い……。けど、悪い奴ではなさそう。にしても、勉強できないより、こういう想像をする奴の方が頭悪くみえるもんですね。勉強になりました。

>からすさん
 確かに読み辛い、かも。でも努力の滲み出ている作品です。滑稽さの匙加減もよく、面白いと思いました。人間、慌てるとこういう行動したりとかしますよね。

>藺さん、感想ありがとうございました。
 もう少し突っ込んでも良かったかもですね。端から見れば、こういう人達確かに怖い。でも、本当にいるんですよね、こういう感じの人達。春だからでしょうか。

>セドナさん、感想ありがとうございました。
 最初に言っておくと、「石のスープ」というのはポルトガルの童話です。で、投稿した後、念の為もう一度調べてみたのですが、どうも僕の聞いた話とは違う様子。数パターンあるんでしょうか? なので、意味そのものが違うみたいです。凹みました。僕的には、僕の聞いた話の方が好きなのですが……。意味は、ネットで検索すればすぐ見付かると思うので、そちらで。僕の聞いた話は、興味があればお教えしますけど。
○「バンダナ、みぞれ、梅」
 考えたんですが、梅氷って、美味しいかもしれませんね。甘酸っぱくした梅を磨り潰して、紫蘇とか蜂蜜とかワインとか混ぜれば。……ゲテモノでしょうか? 人物の動きなど、情景の描写が巧いと思います。
○「四コマ漫画」「駄菓子」「先生」
 確かに、この先生も困り者。でも最後の段落で綺麗に纏まっていて、それまでの迷惑っぷりが好意的に映るから不思議です。先生の描写が巧いです。


 どうやら上珠さんと安息仮面さんのお二方が被っちゃったようなので、二題ドッキング。ただの趣味ですので、お気になさらず。

(本文が長すぎるため分割掲載しました)

20海猫:2004/04/07(水) 06:24
お題:「結婚」「潜水艦」「セスナ」+「さくら」「ビタミン」「六本木」
追加:「軍隊の話は出さない」+「冒頭に俳句(オリジナル)を入れる」


「芳しき〜、さくら手折りて春を嗅ぎ〜、うめとつばきと、目もそぞろに〜」
 突如訳の分からない事を言い出したサツキに、オレは可能な限り冷たい眼差しを向けた。
「……何なんだよ、そりゃ?」
「何って、俳句よ俳句。風流よ。風狂の士よ。俳人なのよ」
「黙れ廃人。そりゃ俳句じゃなくて短歌だろ。第一、こんな冬真っ盛りに春の歌なんて歌ってんじゃねえっての」
「はっはっは。馬鹿だねえ。春なら来てるじゃないの。キミにさ」
 そう言われ、オレは何か言い掛けて口を閉じた。下手に何か言おうものなら、数倍の皮肉となって返ってくるに違いない。そもそも、いくら幼馴染だからって、こんな奴にうっかり相談した自分が悪いのだ。
 そう、自分が悪い。
 事の起こりは半年前。六本木のクラブで女をナンパをしたのが始まりだった。こちらは三人。向こうも三人。イーブン。交渉もすんなりといき、オレ達は無事テイクアウト出来る事となった。……までは、良かったのだが。
 ――生理が、来ないんです。
 久々に会ったその娘に、そう言われたのが三日前の事である。
「ま、年貢の納め時だと観念するべきだね。今まで散々遊んできたんだから」
「……やっぱり、責任取って結婚、しかないのか……」
「もし堕ろす、って言うなら、女の代表として私がキミをオロすけど」
 気分は潜水艦。艦名・タイタニック。それに比べてサツキの方は、春の空を行くセスナといった面持ちで、憂鬱の海に沈むオレの顔を楽しそうに見つめている。さっきの短歌(自称・俳句)も、現在オレが三股掛けてる事の皮肉に違いない。
「ああ、頭痛え。胃も痛え」
「そんなの、ビタミン摂れば治るわよ。サプリメントあげようか?」
「いらん! ってか、治るか!」
「治るわよ。リュウマチだろうが冷え性だろうが。ほら、飲んで」
「温泉かよ! もう適当に言葉を吐くな! ビタミンΩって何だコレ!?」
 そんなこんなで、今年も冬は過ぎていく。オレに春が来るかは別として。


 すみません。短歌になっちゃいました。駄目なら無かった事に。
 次回は、
○お題:「最強、盲目、他山の石」
○追加:「お題の各単語を二回以上使う」
++2004/03/30(火) 20:48

21おづね・れお:2004/04/07(水) 06:26
おづねです。ここのところ連続で失礼します(^^;

≫海猫さん
「芳しき〜、さくら手折りて春を嗅ぎ〜、うめとつばきと、目もそぞろに〜」
の短歌が気に入りました〜。これを詠んだ女の子がサツキという名前でやっぱり花なので、きっと四人目としての自分を言外に意識しているんじゃないかなあ、なんて深読みをしてしまいました。
潜水艦やビタミンという単語がかなり無理矢理入っていて不条理感がありますね(^^;
ところで「バナナの皮」というお題は、いかにそれを使わないで転ばせるか考えてください、という意味かなあと思っていました。考えすぎだったかも(^^; 
「いかにもな感じのお題」は創作力を試されているような気がしてしまいます。

≫上珠さん
うれしいお言葉、もったいのうございます(^^;>
三語即興では、考えていることの何分の一も書けないので、かえって意欲が燃え上がる側面もあったり、なかったり……。説明不足のところは、上珠さんの読解力不足ではないと思います(^^;
文字数が限られている中、書きたいことのうちどれを残して文字にするか、むずかしいですね。そのあたりの鍛錬になるかなあ、なんて思ってはいるのですけれど。
コロナと黒点の比喩が美しくて、ウォーゲームの殺伐さと対照的でした。強いて言えば、敵の戦略がどんな恐ろしいものだったのかという説明が一端なりともあると、もっと主人公と読者との距離が縮まった感じがするかな、と思わないでもありません(^^;>
人物名十以上という無理難題に応えていただいて、感謝いたします。誰も書いてくださらなかったらどうしよう、と思っていました。

≫安息仮面さん
書き手に迷惑なお題で書いていただき、ありがとうございます。
愛車との親子三代にも渡ろうかという思い出の話、これほど短い中でお見事です。それがお題の三語にも、また追加ルールにも調和しているのがすごいなあ。この物語のためにほとんど必然としか言いようがない三語と追加ルールになっているみたいです。
細かい点ですが、「お役ご免」という言葉がやさしいですね。「役」を「免」じてやろう、という言葉、モノに対してかけてやるにはこんなやさしい言葉を知りません。このようないたわりの言葉が出てくるのはきっと作者の人柄なんだろうと推察します。
オヤジさんも主人公もトヨタ自動車一筋みたいですね。現実にもきっといいメーカーなのかなあ、と思いました。作品の中で三十五年間もガタピシ言いながらも部品を調達できて乗り続けられる車を作っているメーカーとして書かれるくらいですから……。(あまり知らないので、変なことを言っていたらごめんなさい)
不用意な言葉の誤用(と、誤記……お恥ずかしい)へのご指摘を感謝いたします。

(本文が長すぎるため分割掲載しました。以下に続きます)

22おづね・れお:2004/04/07(水) 06:27
投稿が重なったようなので、せっかくなのでふたつ書いてみました(^^;
まず上珠さんのお題です。

【 結婚 潜水艦 セスナ 追加ルール:軍隊の話は出さない】


「そのときだ、パパの操縦するセスナが洋上に不審な大型の潜水艦を発見したのは」
 声を一段低くして緊張を込めると、真剣に聞いていた娘の目がくりっと動き、私の視線とがっちり組み合った。
「結婚式のその日に、パパはえらいものを見つけてしまったと思ったね。一緒に空の散歩を楽しんでいた花嫁にも、ちょっと迷ったけれど、今見たものを教えた」
 お茶を入れ直してきてくれた家内が、あら、そのお話? と言ってほほえみ、娘の隣に座った。
「米国の潜水艦ではなかった。でもいくらなんでも我が国のそれも太平洋側の沿岸近くに他の国の艦艇が入り込んできているなんて、一大事だと思ったよ。もしかしたらそれがもとで戦争を引き起こしかねないんだからね」
 娘の膝の上に結んだ両拳に、ぐっと力がこもったようだった。
「パパは花嫁に言ったよ。どうする、って。そしたら我が花嫁はこう言った。『もっと近寄って、敵の様子を探りましょう』ってね。パパは勇敢な花嫁に惚れ直したね」
「うふふ、でもおかしいのよ、パパのセスナがくるっとカーブして敵の潜水艦に近寄ったときね」
「おいおい、先にオチをばらすなよ」
「あら、勇敢な花嫁の口から言わせてくれてもいいんじゃない?」
 私は苦笑いして肩をすくめた。しまった、娘の双眸は早くも家内のほうに釘付けだ。せっかくの私の誕生日だというのに、結局娘はママがいいってことなのかい。
「その潜水艦ったらね、うふふ、セスナに気づいたのね、急に水に潜り始めたの。潮をばあーって吹いてね。あはは、そうそう、そうなの、鯨だったのね。でもあんなに大きな鯨を見たのはテレビも含めてあれっきりよ……」
 何年かに一度しかない日曜日の誕生パーティーも終わり、私は膝を浮かしかけていた。さて、明日からはまた会社から帰ったら眠っている娘の顔を見るだけの日々だ。私はこの場を去る前にわざとらしい大きなため息のひとつもつこうかと思った。
「……そして、そのとき、こんな勇敢なパイロットのお嫁さんになれてほんとうにうれしい、って思ったのよ……」
 その言葉とともにふたたびこちらに向いた娘の視線を、私はどう受け止めていいかわからなからず、ただただとまどうばかりだった

−了−

(以下に続きます)

23おづね・れお:2004/04/07(水) 06:29
続きまして海猫さんのお題です。
【 最強、盲目、他山の石 追加ルール:お題の各単語を二回以上使う】


 ゲームの話をはじめると興奮のあまりどもりが入るのが俊文の特徴だ。
「もうね、もうね、最強。最強。ペトロフォグ」
 やばい、今日は興奮しすぎて何を言っているのかほとんどわからない。でもその熱意は痛いほどに伝わってくる。だから、ぼくも俊文を「じゃけん」にはできない。
「盲目の剣士ね、盲目の。そいつが使う技なの、ペトロフォグ。石化ガス、石化」
 今やっているゲームの説明を身振り手振り混じりでしてくれているのだが、ぼくは正直よくわかっていない。新しく仲間になったキャラクターが異様に強いらしく、そのことを伝えたくてたまらないらしい。
「わけわかんねーよ、何だよペトロフォグって。どういう技?」
「あのね、カウンター。敵の攻撃を察知してひらっとかわして、攻めてきた相手に逆に石化ガス。ガスを浴びせる。ブーって。高木ブー」
 ついでに彼はお尻をつきだして片手をその後ろでグッパさせた。なんだか知らないけど、意味不明におもしろかったのでぼくは爆笑してしまった。涙を拭きながら、
「物理攻撃に対するカウンター? 名前からして魔法系だと思ったけど」
「違う違う。魔法にはカウンターしない。ニンジャの二刀流の攻撃でもかわすぜ、すごいカウンター。攻撃してきた敵のほうが石になる。他山の石ってやつ」
「他山の石の使い方間違ってるよ!」
「そ、そうだっけ? でもおもしれーよ、ペトロフォグ最強。俺たぶん半分くらいのところに来てるからさ、全クリしたら安見にも貸すよ」
「サンキュー。楽しみにしているぜ、高木ブー攻撃」
 ぼくが借りた後、このゲームは友達の間をだいぶ回ったけれど、渡すときに必ず次の人に例のポーズをしてから渡すのが「おきて」になった。

−了−


単語を二回以上というのが、考えたのですが、むずかしかったなあ。
なんとか違う毛色の作品にしたいと思っているのですが、ちょっと強引すぎた感があります(^^;

次のお題は【 翼 ナマズ 天災 】 追加ルールは【 五官をすべて使って書いてください 】です。
次の方、どうぞよろしくお願いします。

++2004/03/31(水) 02:31

24おづね・れお:2004/04/07(水) 06:29
見直し不足でミスがありました。
ひとつめの作品の、
「その言葉とともにふたたびこちらに向いた娘の視線を、私はどう受け止めていいかわからなからず、ただただとまどうばかりだった」は、
     ↓
「その言葉とともにふたたびこちらに向いた娘の視線を、私はどう受け止めていいかわからず、ただただとまどうばかりだった。」
に訂正させてください。
たいへん失礼しました。

++2004/03/31(水) 02:36

25柿美:2004/04/07(水) 06:32
>おづねさん
・セスナのパパ
 どこか西洋風のご家庭ですね(^^
 パパはもうセスナに乗ってないのか(職業にしてないのか)と色々想像しました。
・ペトロフォグ
 俊文みたいな子中学くらいの時いましたねぇ(笑 ここまでのはあんまりいなかったかな(^^;
 おづねさんの書く学園物(学園?)はいつも爽やかな印象を与えますね。高木ブーなのに

>海猫さん
テンポがいいですね。
俳句とお題だされた時点で私なら見合わせてしまいますが、きちっとお話に練りこまれておられる。敬服です。
4番目の本命のサツキとはゴールインせず腹ボテの子と結婚して更に離婚してサツキとの腐れ縁はつづき……みたいなトレンディドラマのような後日談を想像してしまいました。

>塔子さん
沢村の馬鹿ぶりに笑いました。どうもこういう中学生馬鹿男子の話がすきなのようです、自分(^^;

【 翼 ナマズ 天災 】 追加ルール【 五官をすべて使って書いてください 】

「まず、目を閉じて。椅子に座ったままでいいから。体の力を抜いてリラックスするの」
 和美の指示通りに、私は目を閉じた。肩の力を抜いて椅子の背もたれに体をゆったりと預ける。
 目を閉じていると、人の気配というものがよくわかる。今はもう西日の射す夕刻。教室内には私と和美しかいない。目の前に立つ和美の気配が質感を持った黒い影のようにはっきりとわかる。
「感覚すべてを開放すると、視えてくるから。一気には無理だから順番にね」
 和美はなんでも当ててしまうことで校内では有名だ。体育館の火事、隣のクラスの女子の交通事故、彼女が軽口でも叩くように予言したことはすべて現実に起こった。
 そんな和美を気味悪く思う者も結構いて、実は私もそうだった。だから普段彼女と喋ることはなかったのだけれど、今日思いきって予言をお願いした。和美は「私は船倉の鼠や地震ナマズじゃないよ」と
笑いながら「貴方が視たいものは貴方が視ないと駄目」とよくわからないことを言った。ともかく協力はしてくれるというので、こうして二人で放課後の教室にいる。
「視たいものを念じながら、まずは鼻に意識を集中して。なにが匂う?」
 私は大野君のことを想いながら鼻に意識を凝らす。明日告白するつもりで手紙を大野君の下駄箱にさっき入れた。振られると出ればあとで回収しよう。
「なんだろ? 動物園の匂い?」
「次は、舌ね」
「なにか、鉄の味。ううん。これは……血?」
 正直、大野君のことは見込みがないとわかっている。ハンド部のマネージャーとほぼ公認の仲なんだ。でも諦められない。諦める切っ掛けが欲しい。
「耳」
「ばさばさ。羽音?」
「両手を前にかざして。掴んでみて」
 私は目を閉じたまま、動物園の匂いのする正面のなにかを掴む。羽根の感触。重さも感じる。肢らしきものが手の平のふっくらとした辺りを蹴る。
「さあ、目を開けて」
 目を見開くと、私は一羽の鴉を掴んでいた。鴉は胴体が鴉だけれど、頭は人間の頭だ。それは私の顔を持っていた。
 私の顔の鴉は、ガアと一声鳴いて私の手から飛び立ち、翼をばさばささせながら教室の窓から出て行った。
「ね、私は動物じゃないんだから天災の予知なんてしないのよ」
 鴉が飛び去ったのは大野君の家の方角だ。私の舌に、また血の味がひろがった。

長いです。前回投稿したものが省きすぎでよく伝わらなかったようでしたので
じっくり目に書いたらまたこんな有り様。要精進です。

次は「クレーター・天皇・野麦峠」 追加「ギャグあるいはコメディでお願いします」

++2004/03/31(水) 06:46

26セドナ:2004/04/07(水) 06:36
またまたまたやってきました。

>柿美さん
 なにやら意味深なお話ですね。神妙な雰囲気で語り合う二人の会話が素敵でした。
 鴉やら血の味というのは何かの象徴なのでしょうか? 最後の方の展開がちょっとわかりにくかったです。

>おづね・れおさん
【セスナの話】
 お父さんの話に物語を感じました。それもお父さんが独り語りするんじゃなくて、途中でお母さんが口を挟んで二人で物語を展開する、という構成の仕方がすごく巧いなぁ、と唸ってしまいました。空中散歩の話は、サン=テグジュペリの「人間の土地」を思い出しました。
【高木ブー攻撃の話】
「ペトロフォグ」という技を主人公が「高木ブー攻撃」とすんなり言い切ってしまうところがなんともいえずかわいいなぁと思いました。
 私のまわりにも昔、俊文みたいな友達いましたよ〜。クラスに独りぐらいこういうやついますよね。でもそれをうまく書ききったおづねさんに拍手。
【魔術同好会のお話】
「自称・マンドラゴラ」で大爆笑しました。自称、ということはやっぱり元はたくあんだったのでしょうか。いろいろ想像できて面白いです。
 信濃くんと古藤さんの掛け合いもほのぼのしてて良かったです。
【バナナの皮の話】
 私の出したお題で書いていただいてありがとうございます。「バナナの皮」はどう使っていただいてもよかったのですが、正確に言えば私は「バナナの皮で転ぶ話を書いてほしいという期待」を裏切られることを期待していました。みごと期待を裏切ってくれてありがとうございます(わかりにくい文章ですね)。卒論の締め切り前は私も水と米だけで数日部屋に閉じこもっていた記憶があるので、この主人公にすごく共感できました。でもできれば主人公をバナナの皮を口にするところまで追いつめて欲しかったかも。

「運命の出会い」は「青年との出会い」とも「梅干しかき氷との出会い」でもどちらでもとれるように書いたつもりです。
読者によって判断してもらえるとうれしいかも。天体ネタは……また考えてみます。(←逃げたっ!)


>海猫さん
 短歌うまいですね。おづねさんも仰ってましたが、これを詠むのがサツキという女の子なのがさらにニクイ構成です。
 でもこの男の子偉いなぁって思いました。最近の子はこんなふうに「責任とる」なんて言わずに逃げ出してそうですもんね。
「梅干しかき氷」は食べたことないですが、昔、シロップの代わりに「梅酒」をかけたかき氷を食べたことがあったので、そこから思いつきました。
「梅酒かき氷」は甘酸っぱくておいしかったですよ。よければやってみてください。
「石のスープ」ネットで調べました。ひとつ見つかったのですが、やはり海猫さんの話で扱われているモノとは少し違うような気がしました。もし良かったら、いつでもいいので海猫さんの聞いた「石のスープ」のお話も聞かせてください。

>上珠さん
 よくこれだけの長さでまとめたもんだと感心しました。すごく流れが自然でお題の存在を感じませんでした。
 「タナカ隊」だけ日本人なのが「なぜ?」って感じでおもしろかったです。

>安息仮面さん
 素敵な作品ですね。
 なんというか主人公の語りが生み出す雰囲気が最初から最後まで統一されていて、知らない単語が多いのにすごく読みやすい文章だなと不思議な感想を持ちました。この長さでこれだけの世界観を作り出したのには驚嘆です。

(本文が長すぎるため分割掲載しました。以下に続きます)

27セドナ:2004/04/07(水) 06:36
では作品に、
調子に乗ってお題のダブル消化にチャレンジしてみごと撃沈しました。(苦笑

「クレーター・天皇・野麦峠」 追加「ギャグあるいはコメディでお願いします」
+「翼・ナマズ・天災」 追加「五官をすべて使って書いてください」 


『←ナマズ釣り、一回500円。竿、エサ付き』
 水族館をひととおり見物し終わったあと、努がそんな看板を見つけた。努はしばらく看板を見つめたあと、何か言いたげな表情で私の方に近づいてきた。私はとても嫌な予感がした。
「沙希さん、沙希さん。ワタクシ萩原努19歳は、ナマズ釣りがしたいであります!」
 ……やっぱり。
「いやよ、ナマズなんて。さわりたくないもの」
 あの泥臭くてヌルヌルとした物体が私の手に触れるかと思うとぞっとする。
「沙希先生、ナマズを否定することは、天皇を否定することであります」
「右翼ネタはもう聞き飽きたわ、耳タコよ」
「野麦峠の少女たちは、来る日も来る日もナマズを釣り続けました」
「野麦峠はナマズじゃなくて、生糸! ……まったく、そんなことばっかり言ってるから頭にクレーターができるのよ」
「それは言わない約束なのにぃ……」
 努の頭には近くで見るとわかるぐらいに大きな凹みがある。生まれつきのものらしいが、本人はそれをとても気にしている。ひとり嘆いている努を尻目で眺めていると、「ナマズ釣り」の看板の下すみに書かれている文字が私の目に飛びこんできた。
『見事ナマズを釣り上げた方には、レストランのディナー券を差し上げます』
 レストランのディナー券を……。レストランのディナー券を……。私の頭の中でそのフレーズがこだまする。白いテーブルクロスの上に丁寧に並べられたナイフとフォーク。そして気品あふれるウェイターが運んでくる数々の料理。「こちら子羊のグリル、香草仕立てになります」次の瞬間、私の口には香ばしい子羊の味わいが……。
「あの〜、沙希さん? 沙希さ〜ん?」
「努、早く竿もらってきて!」
「へっ? あ、ハイハイ。もう、天災と沙希さんの気まぐれにはかなわないや」
「何か言った?」「いやいや何も」
 しかし結局、ナマズは釣れず、ディナー代を努の財布から支払わせたのは言うまでもないことだけど。
(了)

行数かなりオーバーですね。お許しを。
文章はわかりやすいでしょうか?

次のお題は「鳥人間」「サイコロ」「バベルの塔」 追加ルール「感動する話でおねがいします」

++2004/03/31(水) 19:04

28おづね・れお:2004/04/07(水) 06:38
 おづねです。前回の『セスナ』のお話では、「追加ルール:軍隊の話は出さない」に抵触してしまったかな、と心配になってきました。軍隊と思わせておいてじつは……という展開ですが、イエローカードものだったでしょうか。気をつけます。

≫セドナさん
 講評をありがとうございます。しかもひとつひとつ書いていただいて……恐縮です。作者自身が見えない長所を見つけていただいた部分も多く、とても励みになりました。
 高木ブー攻撃の話は、かなり崩して書いてしまったので心配でした。最後まで読んでいただけてよかったと心底ほっとしました。
 お題での「バナナ」はご期待に添えたみたいで、よかった〜。
【ナマズ釣りの話】
 頭にクレーターがあるのはインパクト大。もっとこのネタを引っ張ってほしかった気もします。短い文章で沙希さんと努くんの関係がよくわかりますね。
 野麦峠の使い方が強引に感じました。やっぱりお題の同時消化がきつかったのでしょうか。

≫柿美さん
 爽やかな印象との言葉ありがとうございます。
 魔術系のお話、私の方のライトなのとは違って不気味さが出ていますね。鴉は人間の性愛の負の側面が現れた姿なのでしょうか。
 不気味な暗示が、もう少し具体的に何を意味しているのかとか、このあとどういう方向にお話が進むのかが見えるともっとよかったかなあ、と思います。


お題はセドナさんの、「鳥人間」「サイコロ」「バベルの塔」 追加ルール「感動する話でおねがいします」です。


 最後の鳥人間に俺の投げ弾がからみつき、地面にたたき落としたのが幕引きとなった。
「この廃墟のモンスターもこれで一掃したな」
 この仕事を一緒に請け負った仲間の一人である女盗賊が死んだモンスターたちの耳を切り取りながら俺に話しかける。
「ははは、しばらくは盛り場に入り浸って俺は酒、お前はどうせサイコロと仲良くするんだろ」
「ああ、これだけモンスターを倒した証拠があれば、しばらくは遊べるな。……おい、この鳥人間を見てくれないか」
 明るい口調が突然がらりと暗く変わり、震え気味のナイフの先が鳥人間の腕にある青い文様を示した。根っからの楽天家に見えるコイツを動揺させる物でもあったのかと思ったが……どこにでもありそうなタトゥーか何かにしか見えなかった。
「この世界の原世界に存在したというバベルの塔が壊れたとき、一部の人間が言葉を失った。そのなれの果てが鳥人間をはじめとする人間型モンスターだと言うよ……」
「じゃあ、こいつももとは人間だったのか?」
「私、このタトゥーを見たことがあるんだよ……」
 女盗賊が頭を垂れたまま、つぶやいた。
「昔一緒にモンスター退治をした仲間の剣士でさ。大きなヤマを当てて、一生遊んで暮らすんだ、って言ってた……」
 彼女が昔の仲間に捧げたのは、一粒の涙と、紅い髪のひと房だった。自分がいつかこんな死に方をするとしたら、誰かが何かを捧げてくれることがあるだろうかと、俺は思わずにはいられなかった。


−了ー


 ファンタジー物はじつはとても好きなのですが、そのためにかえってこれまで書けませんでした。思い切って挑戦してみましたが、どうでしょう(^^;>

 次のお題は【 フール 四月 召喚 】で、【追加ルール:現代物はNG 】でお願いします。
 次の方、どうぞよろしくお願いします。
 
++2004/04/01(木) 00:52

29上珠:2004/04/07(水) 06:42
度々お邪魔させてもらっています^^

>おづね・れおさん
「軍隊の話は出さない」という追加ルールを作った張本人です(笑)。
張本人は大して気になりませんでした。

前回はご批評していただきありがとうございました^^
「敵の戦略がどれほど恐ろしいものだったか〜」とご指摘いただきまして、なるほど、と頷きました。
たしかに最後の方は行数に追われていましたね……。読者と作者の距離は常に気にしなきゃなぁ、と改めて思いました。書いて、推敲しているときに気付かないといけないんですよね……。

モンスター退治をするはずの男がモンスターになってしまった……皮肉な話ですね。
ですが読んだ後の印象は、感動というよりも虚無感(?)、といった感じでした。
最後の一文を、「俺もいつ、どこで死ぬか分からない。だけど、死ぬときは仲間に看取られたいと思う。そういう意味では、コイツは幸せなのかもしれないな。……安らかに眠れよ」みたいな感じにしてみては如何でしょうか?^^;
……長すぎですね(沈)


>セドナさん
ご批評ありがとうございました^^
「世界大戦ゲーム」ということで、色々な国の人名を書こうとしたのです。……そうしたら全然名前が出てこなかったのですよ(TT)。
苦肉の策ですね^^;

努と沙希のキャラが面白かったです^^
『野麦峠』をつい辞書で調べた私って一体……。
文章は分かりやすかったです。ただ、途中で縁日に来ている二人〜、といった錯覚を覚えました。金魚すくいのノリ(?)に似ていたもので^^;


>柿美さん
自分の顔と同じ顔をした鴉……驚きますね。
突然現れた奇妙な鴉に驚いている『私』の表情が眼に浮かぶようです。
ですが、最後の和美の言葉の意味がよく分かりませんでした^^;
これから起こるであろう大騒ぎの責任逃れ、でしょうか?

>海猫さん
ご批評どうもありがとうございました^^
……なんかこの言葉を使い回しているような気が。

何と言いましょう……まぁ、ご愁傷様、と。
短歌に込められた皮肉が『俺』をさらに追い込んでいるのがいい感じです^^


お題:『フール』『四月』『召喚』 追加:『現代物はNG』

「これは?」
 男は一本の樹の前で息を呑んだ。舞い散る無数の花弁、その色はピンク。風にその身を乗せて舞う様子には『吹雪』という言葉が相応しい。
「サクラと言うそうですよ。何でも東の果ての国のものだとか」
 隣から男の顔を見上げ、微笑みながら侍女が言った。
「……なぜこんなものが私の庭にあるのだ?」
「え? ご存知なかったのですか? 領主様の母君様が東方貿易専門の商人から買ったものなのですよ」
「そうか。まったく……母上は珍しいもの好きで困るな」
 やれやれ、と言わんばかりに男はため息をついた。侍女は手で口元を押さえながら笑いをこらえると、
「でも、この樹を植えるときはなかなか大きな工事だったんですよ?」
「……気付かなかった」
 男が最後に外に出たのはもう三ヶ月も前になる。領地の境界の問題で隣の領主と話をしに出掛けたきりだ。一月の風に吹かれて風邪をひきそうになった記憶があった。
「と、いうことは今は四月か。……私は三ヶ月間も屋敷に篭っていたのだな」
「そうですよ。領主様ったら全然外に出ようとなさらないものですから……。お仕事がお忙しいのも分かりますが、たまには外に出ないといけませんよ」
「……私はとんだ愚か者だな」
 男は苦笑を漏らした。
「では、私はこれにて。そろそろ夕食の支度をしないと……」
 侍女は男に一礼すると去っていった。

「三ヶ月か。まだ私の研究は序の口だというのに……まったく、月日が流れるのは早いな」
 それまでジッと目の前の吹雪を見ていた男だったが、踵を返すと、
「神話の神々を召喚し、その力を借りれば世界を手中に納める事も容易いだろうに。隣の領主――フール、と言ったか? まぁいい。奴もたかが領地の事で騒ぐとは……まったく、器の小さいことだ」
 男は三ヶ月前のことを思い出しながら笑っていた。だが、それは次第に野心に満ち溢れた高笑いに変わる。
「召喚の儀式の生贄は……若い娘、だったな。さて、誰にしようか」
 (了)

どこの世界に自分の子供に「フール」(愚か者)と名付ける親がいるのやら……。
15行を完全にオーバーしているのが悔やまれます。

次のお題:『世紀末』『最果て』『セラミックス』 追加:『登場人物の性別は統一する』
でお願いします。

++2004/04/01(木) 03:51

30風杜みこと★:2004/04/07(水) 06:44
>おづね・れおサン
 ――うーん。おづねサンはどんなジャンルでも書けてしまう方なんですね〜。ラスト、「何かを捧げてくれる」が「祈りを捧げてくれる」と言い切ってしまった方がすんなり読めたかもしれません。青いタトゥーのイメージが綺麗でした。

お題は【 フール 四月 召喚 】で、【追加ルール:現代物はNG 】

 四月に入り、王弟ヘンリーは人が変わったように使われていない塔に引きこもるようになった。宮廷人らは、とんと姿を見せなくなったヘンリーに勝手な噂をしていた。魔に魅入られたとか、狼に憑かれたとか、毎晩のように塔に上り魔術にふけっているのだと。
 実際、楽師ルイスの目には、ヘンリーは何かに憑かれているように見受けられた。時おり見かける容貌は様変わりし、眼窩は深く窪み、肌は青ざめ生気がなかった。黒衣ばかり着ているヘンリーを道化が嘲笑い、戯れ歌を口にした時ルイスは思わず「フールがフールを笑っても、ちっともふるわない」と歌で切り返した。一時的にその場は紛れたものの、ヘンリーを真に救ったわけではない。ルイスは王に申し出て、様子見に塔を訪ねる許可をいただいた。先頃正妃が懐妊され、王位継承権が生まれてくる御子に遷ろうかというこの時期、王弟ヘンリーの振る舞いは目に余る常軌を逸したものがあった。
 その晩は満月だった。
 塔の階段を一歩一歩昇るルイスの手には、片時も離さぬリュートがあった。小さな窓から差し込む月明かりの照らす石段は、埃がつもり、足跡をくっきり記している。渦巻く風が塔を包み波のような音を立てていた。螺旋を描きながら上っていくルイスの耳は敏感に、風の音に紛れて消えてしまいそうな声を拾った。
(――なんだ?)
 ルイスは足を速めた。声はどんどん大きくなり、やがて破鐘のような男の大音声となった。獣の吠え声にも似た叫びが混ざったその声はまさしく王弟ヘンリーのもの。ルイスは戦き震える膝に力を込め、最後の段を上りきると扉に近寄った。鍵穴から覗いた光景にルイスは凍りついた。
 床に描かれた五茫星。その上に、水晶玉を左手に持ち、血のついた剣を宙に振り上げている黒衣の人物。部屋には雷光が走り、白い煙が漂い始めている。
(――召喚魔法? まさか……マーリン以来技は失われたはず)
 いずれにせよ王弟ヘンリーが魔に染まり、生まれてくる御子に禍を為さんとしていることは疑いようのない事実に思われた。
(――王へ……いや司教様へご相談申し上げる方が先か)
 ルイスが鍵穴から目を離し踵を返そうとしたその時、部屋に漂っていた白い煙が一箇所に凝縮し人型となった。
(なにっ!?)
「ハーイ、今夜もご指名ありがと〜。ん〜もぅ、サービスしちゃうから覚悟してネン」紫色の尻尾を生やした豊満な美女が、黒衣と手を差し伸べる。
「ハニー、遭いたかった。嗚呼、僕の命、僕の女神……愛しているよ」言うや、黒いフードを払い、王弟ヘンリーは美女を腕のなかにおさめ唇を奪った。
 よろよろと扉から離れたルイスは、ふらつく足で階段を降りると、大扉の前で立ち止まり、上を振り仰いだ。ここからは風の音しか聞こえない筈だったが、今にも交歓の声が降ってきそうだった。そのまま最下段に腰掛け、溜息をついては弦を爪弾き、ルイスは夜が白々と明けるまで王への報告に頭を悩ませた。

 ――了――

※フール(fool)=道化師、愚か者など。
私もファンタジーは好きなんですが……うっうっ(涙)上手く書けません。
投稿しようと思ったら、先を越されていました。回転早いですね。
お題は上珠さんのものでお願いします。
++2004/04/01(木) 04:11

31海猫:2004/04/07(水) 06:47
 そろそろ運命の四月五日も間近になってきましたね。誰がトリを飾るんでしょう? 

>風杜みことさん
 シリアスかと思いきや――このオチとは……。苦笑いが止まりませんよ。この落差、何だかクセになりそうです。
 >ハニー、遭いたかった。
 これ、誤字なんでしょうか。確信犯なら凄いです。

>上珠さん、感想有難う御座いました。
 フールの使い方、強引では?
 >「……私はとんだ愚か者だな」
 その繋がりで、このセリフも意味深に思えました。

>おづね・れおさん、感想有難う御座いました。
 感想、鋭いですね。誰にも分からないだろうな、と思ってたのに。でも実は、もう一つの意味が隠されていたりします。何にせよ、短歌気に入って頂けたようで一安心。短歌発表するのって、何か気恥ずかしいので……。
○「鳥人間」「サイコロ」「バベルの塔」 
 人間がモンスターに変わるというアイディアが面白いです。つまり結局、人と人の争いなのですね。業深い事です。短編ならもっと活かせたかと。
○「結婚」「潜水艦」「セスナ」
 僕も一瞬、追加ルールに触れたかな、と思ったのですが、そのオチとは。ギリギリセーフ。しかしまた、えらいダンディーなパパですね。
○ 最強、盲目、他山の石 
 他の方も言ってますけど、こういう奴知り合いにいます。ここまでひょうきんじゃないですが、口調が似すぎ。ペトロフォグって言葉、何処から来たんでしょうか? 妙に気になりました。

>セドナさん、感想有難う御座いました。
「石のスープ」リクエストとの事で、簡潔に。

 ある所に旅人がいた。旅人は貧しく、金も食べ物も持ってはいなかった。その旅人はある時、とある町に辿り着いた。しかしその町は飢饉の只中にあり、それぞれの家の住人達は自分達の食べる分しか持ち合わせず、旅人に恵む分にも事欠いた。そこで旅人は一計を案じ、早速近くの家の戸をたたき、こう言った。
「食べ物は要りません。ただ一つ、大きな鍋を貸しては貰えないでしょうか?」
 住人は怪訝に思いつつも、大きな鍋を一つ貸してくれた。旅人はそれを担ぎ、鼻歌を歌いながら鍋に水を満たすと、町の一番目立つ広場で焚き火を熾し、その上に鍋を置いた。住人達はその奇行に目を引かれ、各々家から出てきて、遠巻きに旅人を眺めた。旅人は頃合を見計らい、バッグの中から大きな奇妙な形の石を取り出すと、慎重に鍋の中へと沈めてしまった。
 とうとう堪え切れず、旅人に鍋を貸した住人が問うた。
「それは一体、何をしているのだ?」
 言われ、旅人はちらりと住人を見つめ、得意げにこう言った。
「これは私の故郷の名物料理で、石のスープというものだ。この石を茹でるだけで、湯は極上のスープとなる。その美味たるや……」
 と、旅人は石のスープの味を懇々と人々に説いた。
「しかし、このスープに少しでも塩を加えれば、更に美味しくなるのだが、あいにく私は持っていないのだ。ああ、残念な事だ」
 すると住人は「それなら、私が塩をやろう。その代わり、一口スープを頂けないだろうか」と言う。旅人は快く返答した。
 そして塩の加えられた石のスープを味見しつつ、旅人は言った。
「うむ、これは美味い! しかし残念だ。これに野菜が入ればもっと美味いのだが」
 そう聞いた周囲の住人達は、口々に「それなら私はニンジンを持ってこよう。その代わりにスープを一口」、「私はキャベツだ。その代わりにスープを一口」……。
 こうして町の住人達の持ち寄った食べ物で石のスープは完成した。

 ……簡潔が聞いて呆れますが、とりあえずこんな感じの話です。教訓としては、それぞれが持っている小さなものでも、アイディアと組み合わせ次第では素晴らしいものへと変わる、みたいな。

○『←ナマズ釣り、一回500円。竿、エサ付き』
 む、ニ題ですか。ご苦労様です。
 ナマズ釣りなんてあるんですか。知らなかったです。天災とナマズを切り離しましたね。うっかり繋げちゃいそうですけど。翼を右翼で解消するとは予想外でした。このお題、野麦峠を知らないんで僕なら逃げます。
 >私はとても嫌な予感がした。
 巧いですね。まさか五官のみならず、第六感まで用いるとは。

>柿美さん、感想有難う御座いました。
 その後日談、いいですねえ。何故か容易にストーリーが想像出来ます。トレンディドラマってあまり見ないんですが。
○【 翼 ナマズ 天災 】 
 クダンを連想しました。予知というよりも、人頭の鴉が災害を齎すんですね。ホラー風味が効いており、なかなか良かったです。

(本文が長すぎるため分割掲載しました。以下に続きます)

32海猫:2004/04/07(水) 06:48
○お題:『鳥人間』『サイコロ』『バベルの塔』+『フール』『四月』『召喚』+『世紀末』『最果て』『セラミックス』 
○追加:『感動する話』+『登場人物の性別は統一する』+『現代物はNG』

 運命は変えられる。そうお思いかね、若いの。ああ、若いうちは楽観的な方が幸せだ。何故なら人は、結局自分の物語において自分以外の主役を知らんのだから。
 だが、時とは確実に流れる。その時の長さだけ、人は物事を、世界を知るものだ。如何なるフールとて、長生きすればワイズマンとなる。私? ……ふむ、そういう意味では、私もそうであろうな。
 そう――私は、長く生きてきた。かつてのあの、『暗く輝ける四月』の生き証人も、この島では私だけとなったか。お前の生まれるずっと昔、世界に西暦という時導があり、千年に一度巡ってくる、世紀末と呼ばれる節目の年の事だった。
 全ては、一瞬で消え去った。星と星の間を行き来し、生命の秘密を紐解き、天候や季節の制御すらも可能とした、神の如き業を持った人間の世が、だ。何が起こったのかは、私にも分からない。しかし、私は見た。あの一瞬にして永遠の光は、まるで地獄の底で轟々と燃え盛る、千の太陽が一斉に地上に召喚されたかのようだった。そしてその後のあれは……あれこそが神話にその名を聞く、バベルの塔だったのだろうか。天高く聳える巨大な塔を私は見た。その周りをゴミクズのように舞う人間も見えた。さしずめあれは、蝋の翼を持つ鳥人間、イカロスか。
 ほう、若きフールよ。この二つの名を知っているか。そう、どちらも神に近付きすぎたが為に身を滅ぼした、まさに人の業そのもの。そして人は、神の裁きを受けた。あの眩き光の影響か、空は闇に覆われ、地は緑を失い、水は腐り、風は澱み、……無論、人も狂った。いわゆる、人類の雄化だな。生まれてくる子の数は減り、運良く生まれても人と呼べる形をしていなかった。
 若きフールよ。この島を出て、世界を知りたい。お前はそう言ったな? だが世界とは、ここの事だ。この地上に残された、唯一にして最果てのこの島が、世界の全てなのだ。海の向こうには、絶望と失望しかない。お前のしようとしている事は、このサイコロを振り、七番目の数字を期待するようなもの。それは神の意志に反している。

「長老、貴方がどれだけ生きようと、ワイズマンにはなれやしない」
 僕がそういうと、長老は怪訝そうに僕を見上げた。
「貴方はこの島が世界の全てだと言った。でも、どうしてそう言い切れる? 貴方は海の向こうを見てきたのか? 違う。そうじゃない。貴方は怖かったんだ。海の向こうに絶望と失望があるのが、それを確認する事が怖かったんだ。貴方はワイズマンじゃない。ただのチキンだ」
 何か言いたげに口を開きかけた長老を制し、僕は続けた。
「貴方は無知に徹する事で、可能性から目を背ける事で、希望を守り続けた。シュレディンガーの猫だよ。箱の中の希望の猫は、生きているのか死んでいるのか。貴方はその箱を開ける事を拒み、希望と絶望を一緒にそこに封じ込めて来たんだ」
 長老が、哀しげに目を細める。でも、僕は続ける。
「この島が、世界の全て? 『暗く輝ける四月』の光で焼け爛れ、大地がセラミックス化した、この死の島が? 冗談じゃない! 自分のだけじゃなく、僕の目まで閉ざすな! 僕は見付ける。こんな狭い世界じゃなく、本当の世界を見付けてやる!」
 僕は、長老が転がしたサイコロにナイフを突き立てた。セラミックス製のサイコロは、いとも容易く真っ二つに割れる。
「七が出ないのなら、サイコロそのものを疑う。これが僕の、七番目の解答だ」
 そうだ。もし猫が生きているのなら、箱は自ずと開かれる。猫とはそういう存在だ。


 久々のトリプル。いやあ、長いですね。我ながら呆れてますよ。そもそもレス自体が長い。皆様すみません。最後「感動する」かどうか……あざといのは嫌なんですが。「バベルの塔」と「鳥人間」が何を意味するのか、伝わるか不安です。
 次回は、
○お題:「青林檎、野良犬、酩酊」
○追加:「渋いキャラクターを登場させる」

++2004/04/01(木) 13:53

33風杜みこと★:2004/04/07(水) 06:50
>海猫サン
 石のスープはかつて何処かで読んでいた話だったので、感動はありませんでした。が、語りが慣れてらっしゃって上手い。流石です。

 トリプルの方もお見事でした。これは一つの作品として残しておきたい感じです。イカロスもバベルの塔も懐かしいお話でした。サイコロの使い方が素晴らしい。禁断の木の実を食べてからこの方、誰も楽園に留まれないものなのでしょうか。若者もまた原罪を生き、いずれ神の怒りを買うのかもしれません。長老の無知を嗤い、臆病者と謗った彼の末路が気になります。
 私は長老を嗤う気にはなれませんでした。長老というからには、彼には自分に属する者たちを正しく導く義務があったのでしょう。彼にシンクロしたせいか、自分の想いに正直に飛び出していける若さが少し羨ましかったです。

――お題:「青林檎、野良犬、酩酊」/追加:「渋いキャラクターを登場させる」――

 カララン――。
 ベルの音と共に男がバーに入ってきた。野良犬のような鋭い眼が店内を見回し、他に客がいないのを見てとり緩む。コートの肩が濡れ黒ずんでいた。
 無言でカウンターに近づく男に、バーテンはグラスを拭く手を止めタオルを差し出した。
「雨ですか?」
「ああ……」男はタオルを受け取ると軽く頭と肩にかかった水滴をぬぐい、スツールに腰掛けた。
「いつもの――」
 言い切らぬうちに、男の目の前に青林檎のマークが入ったコースターとワンフィンガーが置かれる。琥珀色の液体の底に日付と数字が浮かび上がった。男はあおるようにグラスを干した。
「ゼロが一つ足りないんじゃないか?」男は苦い顔で煙草に火を点けた。目を細め、紫煙をバーテンに吐きかける。
「さあ――。私はただ指示通りお酒をお出ししているだけですので」バーテンは穏やかな笑みで、グラスを換えた。
「チッ……使えねぇな……。ま、いい……お前に指示を出している奴に伝えてくれ。矢は番えてある、とな」男は二杯目をあおると腰を上げ、カウンターに札を置いた。
「お帰りですか?」
「ああ……。雨男の俺がいると客が入らないだろう。早々に退散するさ」僅かに酩酊を滲ませた瞳をバーテンに向け、男は雨足の激しい外へ飛び出していった。
 カララン――。
 バーテンはグラスを片づけ、カウンターを軽く拭いた後、シンクの中でコースターを焼いた。赤い林檎を見つめながら、バーテンは呟いた。
「グッド・ラック」

 ――了――

渋いですかねぇ……? 
オン書きしているので、また誤字が残っているかもしれませんが、とりあえず書けたのでポスト。
これがトリにならないことを願いつつ――

次のお題は「サリンジャー」「デリンジャー」「炊飯ジャー」
追加ルールは「お笑い抜き」でお願いします。

++2004/04/02(金) 02:55

34おづね・れお:2004/04/07(水) 06:53
 おづねです。
 日限も迫ってきましたが、私なりのこの場所へのお礼を込めて、続けさせていただきます。

 『高木ブー攻撃』にコメントして下さる方が多くて意外な喜びです。
(ウケのよかった俊文くんじゃなく主人公の子の名前でこっそり「お遊び」してみました。敬愛するゲームクリエイターの方のお名前に似せてあります)

≫風杜みことさん
 誉めていただいてほんとうにうれしかった。でも実体は「乾いた雑巾を絞るような」もんですよ〜(^^;> 

『楽師ルイスと王弟ヘンリーの話』
 四月一日ということで、お題に時事ネタを入れさせていただきました。それでいて現代物をNGという意地悪に、きれいに応えていただきました。
 淡々とした情景描写が風杜さんの持ち味なのでしょうね。冴えた筆致だと思います。
>(――召喚魔法? まさか……マーリン以来技は失われたはず)
 この台詞が、にくい演出。短いお話の中に借景のように織り込むのは短いお話では有効ですね。私も今後勉強させていただこうと思います。

> 実際、楽師ルイスの目には、ヘンリーは何かに憑かれ
>ているように見受けられた。
 主人公ルイスの登場シーンですが、読者の視点がヘンリーに固定されてしまい、ルイスがぼやけてしまっているような気もします。
 叙述の順を入れ替えて、ルイスに注目が移るようにしてみてはいかがでしょう?

>※フール(fool)=道化師、愚か者など。
 うまく「フール」を使っていただき、ほっとしました。道化というと漫画『風の谷のナウシカ』のトルメキアのヴ王を思い出します。彼のそばにいた道化がとてもいい味を出していましたっけ。(話がそれますが、ヴ王と土鬼皇兄はあのお話の中でいちばん好きな人物です)

『渋いキャラクターと青林檎の話』
 全体的にモノクロームな印象の話だと感じました。その中に浮かび上がる「黒ずんで」「青林檎のマーク」「琥珀色の液体」「紫煙」「僅かに酩酊を滲ませた瞳」「赤い林檎」の色彩が浮かび上がって美しい。うまいなあ。
 何かの取引を淡々と行っている中で、男の人間味のようなものがほんの少し顔を覗かせるのが、またいいですね。渋いキャラクターというよりはお話自体がとても渋い。欲を言えば何の取引かがとても気になります。
 この二編で、風杜さんの短編や長編が読みたくなりました。


≫海猫さん
 ペトロフォグと、盲目の剣士というのは実在のゲームへのオマージュのつもりです。えーと、クエストの『タクティクス・オウガ』というゲームです。(ペトロクラウドという魔法が、そちらのゲームでは存在します。カウンター攻撃ではありません)
 お題の同時消化、お見事です。でも海猫さん自身がおっしゃるようにさすがに長すぎる感もなきにしもあらず。

>千年に一度巡ってくる、世紀末
 世紀末は百年ごとのような気が……。

>このサイコロを振り、七番目の数字を期待するようなもの。
 と、
>「七が出ないのなら、サイコロそのものを疑う。これが僕の、
>七番目の解答だ」
 ここの呼応がかっこいいですね〜。サイコロを割るのもかっこいい。
 コロンブスの卵という言葉を連想しました。
 欲を言えば、「島から出る」という選択はサイコロそのものを破壊するのに匹敵するアイデアとは言えない気がします。勇気は認めますが……。その上を行く何かがあったら……と、欲が出ます(^^;

>シュレディンガーの猫
ちょっと使い方が違うような気もしないでもありません(^^; ちなみにこの言葉は私も好きです。


≫上珠さん
>張本人は大して気になりませんでした。
 安心しました。海猫さんにもセーフと言っていただけたので、お許しいただけるものと思っておきます。

>だけど、死ぬときは仲間に看取られたいと思う。そうい
>う意味では、コイツは幸せなのかもしれないな。
 ああ、うまいなあ。こういう感慨だと追加ルールに沿った感じになりますね。
 お題、四月に吹く吹雪もある……と、どこかで聞いたような言葉を言ってしまいますが(^^; そんな風流と、領主の引きこもり加減が対照的でした。領土問題は庶民の利益になりますが、世界征服はそうならないと思うので、私は「フール」さんのほうが好ましいなあ、なんて変な感想を持ちました(^^;>
 生け贄が誰になるのか具体的に匂わせるなどすると、ブラックさも増して印象が強まる気もします。

(本文が長すぎるため分割掲載しました。以下に続きます)

35おづね・れお:2004/04/07(水) 06:55
お題は風杜みことさんの「サリンジャー」「デリンジャー」「炊飯ジャー」、追加ルールは「お笑い抜き」です。


「バーネット教授の短編小説作法コースを受講してるんだって?」
 アーウィンがそんなふうに話しかけてきたのが私たちの知り合うきっかけになった。落葉の季節だったけれど、陽の光はまだ暖かく、マンハッタン島にある私たちの大学の周辺にも小道を並んで揺れる若いカップルの影がよく見かけられた。
 日本人の私にも気さくに話しかけてくれる人は、この国の最高の頭脳が集まったこの大学にもそう多くなかった。数十分間の文学談義ですっかり意気投合した私たちは、図書館のアテナイ神殿を思わせる威容と合衆国建国より古い歴史を抜け出して、今を楽しむ小道の影たちの仲間入りをした。メープルの落ち葉がさくさくと心地よい音を立てて笑っていた。
 アーウィンを私の古アパートに招待してごちそうしたときのことは忘れられない。今と違ってお手軽な炊飯ジャーはおろか日本の食材もほとんど手に入らない時代、学問のことしか知らない無知な娘の手料理に、彼は笑顔で応えてくえた。そのときだっけ、彼が小説になんかほんとうはほとんど興味がないってことがわかったのは。
「サリンジャーの『若者たち』も読んでないなんてことはないでしょう? 去年バーネット教授の主宰誌に載ったばかりよ。私、彼は絶対に大成すると思うの」
「ごめん、ジュリ、去年のはまだ読んでないんだ……」
 あきれた。図書館で話しかけてきたときの小説への並々ならぬ関心は何だったの。
 さり気なく着こなしているセーターやジーンズも、私の持っている服全部の値段より高いに違いなかったけれど、彼の人柄は私に引け目を感じさせることもなく、小説の話にも必死についてこようと頼み込むようにして私に前年の会誌を借りていく様子が私にはとても好ましかった。
「ほんとはぼく、短波通信に今は夢中だったりするんだ。物理をやってるんで、こないだの太陽フレアの増大の影響は興味深かった。国際無線通信も軒並み全滅してさ、デリンジャー現象って言うんだけど」
「サリンジャーじゃなくてね」
 私が冷たい声で皮肉を言うと彼はしまったという顔つきになった。『藪をつついて蛇を出す』っていうことわざを教えてあげようかしらと思って私は笑ったものだった。

「おばあちゃん、どうして笑ってるの?」
 孫娘のエリーに話しかけられて、私は我に返った。
 久しぶりに訪れた母校で、ついあの人との思い出にふけってしまったようだ。私ももうそれほど長くは生きないだろう。今年、二百五十周年を迎える大学は、ちょうど私たちの出会いの季節を迎えるところだった。
「なんでもないのよ。おじいちゃんもきっと、ここに帰ってこられて喜んでるわね……」
 孫娘が大事に抱えている写真と、私たちの影が、メープルの葉の上に長い体を仲良く揺らしていた。


−了ー


 お題を消化しようと悩みつつ、こんなに長くなってしまいました。反省です。ちなみにお話の中に出てきたのは実在の大学で、サリンジャーの著作も実在ですが、メープルの小道は創作です。あしからずご了承くださいませ。
 次のお題は「ジャン」「ケン」「ポン」で、追加ルールは「小さな女の子を登場させてください」です。

++2004/04/02(金) 04:39

36柿美:2004/04/07(水) 06:59
しばらくお休みということで、私も記念に(^^

>セドナさん
沙希と努の関係がいいですね。頭のクレーターも努のキャラが出ていていいなあ。
ディナー券…とリフレインする辺り漫画チックで好きです。
野麦峠ちょっと無理があるかな、と思ったんですが、よく考えたら無理なお題を出したのは当の私でした。忘れてました(^^;
面倒なお題をダブルで消化、お見事です。
私の話、やっぱりわかりにくかったですね。自分でも後で見直してそう思いました(^^;

>おづねさん
【とり人間】
おづねさんは守備範囲広いですねー。投げ弾というのが何故かツボにきました。
世界観全体がどこか諸星大二郎を彷彿とさせます。
【メープルの小道】
お得意の海外セピアカラー物ですね(勝手に名前つけるな)。雰囲気伝わってきます。
メープルの小道を歩く辺りの描写、すごくいいです。

>上珠さん
やはり生贄は侍女でしょうか。それとも美貌の母親か(いや美貌とは書いてない)。
色々想像してしまいます。封建時代(?)の異国での桜の風景、いいですね。
>最後の和美の言葉の意味がよく分かりませんでした^^;
天災でなく人災だと言わせたかったのですが、拙くてすいません(^^;

>風杜さん
【ルイス】
落としに笑いました。重厚な前半部から一転、頭の中で実写が漫画に切り替わりました(笑) なにやらルイスが階段を降りてくシーンでルイスに「汗」の漫画符号がついてるような。
【コースター】
勝手に殺し屋をイメージしました。コースターを焼くシーンがいいですね。
渋いわりには少し説教臭い爺のような男性像が浮かびました

>海猫さん
これは重厚な……、私もフールで核戦争後の話を考えたんですが断念しました。
この作品と比較されてしまうので断念して正解でした(^^;
ラストにつながるサイコロ・猫の比喩、上手いなあ。
ちなみにトレンディドラマは私も見ません。ありそうな話かな、と(笑)
クダン…そういえば人頭獣身でしたね。そうか、頭の引き出しにあった元ネタはそれか(^^

長くなりました。お題の消化に続きます
お題は「ジャン」「ケン」「ポン」で、追加ルールは「小さな女の子を登場させてください」

 男が公園の池の前でポンと拍手を打つと、池の中心のあたりで波紋が生じ広がった。波紋が生じるのは何かが落下した時か現れる時であり、果たして水中からついとピアノ線に引っ張られるように少女が出現した。
「なんでスカートはいてるの」
 カエルのぬいぐるみを抱いた少女は水面に立ちながら男に聞く。男は鍔広の黒の帽子と黒のタートルと黒のロングスカートという格好だ。
「別にいいじゃないの。ジャン・ポール・ゴルチェとかだと男物のスカートあるよ。これは違うけど」
「お化粧もしてるし」
「今時は男も化粧ポーチ持ち歩くものなのさ。それより君の話が聞きたいな。なにしてるの」
「ケロがね、ケロは池に住むものでしょう? だから池にきたの。カズヒコも一緒に来たの」
「カズヒコって君の飼ってるイヌだっけ」
「うん。それでね、ケロをね、浮かんでる葉っぱに乗せたらね。ケロったらどんどん沈んでいくの。沈んでって見えなくなっちゃったから、お母さんがいつも言ってたの。いつも『モノをなくさない子がいい子です』って言ってたの。だからわたし探しに行ったの」
 男は少し溜息をつき、それから一層の笑顔で聞いた。
「冷たくなかったかい? 苦しくはなかったかい?」
「わかんない。水の中からうえを見たらね、カズヒコがこっち見ててケンケンほえているの。あとはおぼえてないの。カズヒコはげんき?」
「元気だよ。君の家の庭で元気に走り回っているのを見たよ。でもよくお母さんの言いつけを守ったね。いい子いい子」
 男は池の水面をアスファルトのように歩いて近づき、少女の頭を撫ぜてやった。少女は照れくさそうに笑って、またついとピアノ線で引っ張られるように垂直に空を昇っていく。どんどん昇っていき、雲間に消えた。
 男が水面を歩いて戻ってくると、遠巻きに様子を見ていた検分役の市の職員が近寄ってきた。
「もう大丈夫ですよ。褒めてほしかったみたいですね」
「そうですか。よかった。ところで……」
 職員は薄気味悪そうに男を見ながら、それでも何か聞きたげに男の格好を見る。
「ああ、これはね。昔からこういった役目は女が行うものですから。服装も女物のほうがいいんですよ。まあ普段は処女性をアピールするものなんですが、今回は母性をアピールしたみたいですね」
 男が空を仰ぐと、雲間が晴れてお日様が柔らかな光を射している。

お題の消化に追われた印象です(^^; 使い古されたお話だし、なんだかなあ。

次は「狛犬・弁慶・塩の道」追加は久々に「神視点」で

++2004/04/03(土) 14:26

37おづね・れお:2004/04/07(水) 07:01
 おづねです。今日も書いてみました。
 二度目のライトノベル風です。

≫柿美さん
 三語の消化、ありがとうございます。「ジャン」「ケン」「ポン」からは連想できない、きれいな作品に使っていただきました。
 漫画家の高橋葉介氏を思い出しました。少女の出現シーンで一気に作品世界に引き込まれました。文章もとても達者な方だなあと思います。一点、「男は池の水面をアスファルトのように歩いて近づき」は「ように」が連用形ですので「歩いて」にかかるように読めてしまいます。生意気言ってすみません(^^;> 
 「男は少し溜息をつき、それから一層の笑顔で聞いた。」の一行が心情を深く読めるところですね。何度も繰り返し目でなぞりました。要点を絞った描写だと感じます。


 お題は柿美さんの「狛犬・弁慶・塩の道」追加ルール「神視点」です。


「先輩、コンダラ使っていいですかぁ〜?」
 拓己の声変わり前の高い声がコートに響いた。
 その瞬間、五月のテニスコートの上を冷たい静けさが走っていった。
 拓己は自分の声が二年の道緒に届かなかったのだと思って、もう一度繰り返す。コートに残っていた全員と、心なしか風も雲も太陽も、数瞬の間、静止しているように思われた。
「コンダラって何だ、コンダラって!」
 武広にはツッコミを入れるのはおそらく自分の役割であろうことをわかっていたが、「オレは拓己の保護者じゃないのに」と不満にも思っていた。でも太陽の光も凍りかねないこの状況……選択の余地はないと思った。
「え、だからコートをならすのに、重いコンダラ……」
「チョォォォォォップ!」
「いてえ」
 武広がスーパーマリオのジャンプポーズで脳天にチョップを食らわせる。これが武広の得意技だった。
「お・ま・え・なぁぁぁ。いまどき古いギャグで空気凍らすな! 星飛雄馬が引っ張っているのはローラーで、コンダラじゃねえ。ついでに巨人の星の歌詞は『思いこんだら試練の道を』だろ」
「えっ、『重いコンダラ塩の道を』? 塩野道緒先輩?」
 離れた場所でシューズを脱いでいた道緒がコケた。「わざとじゃない、あいつは天然ボケなんだ、怒っちゃいけないんだ」わかっていても、日々重なるばかりのストレスに、自分は十四で頭にハゲができるんじゃないかと思う。
「膝蹴りチョォォォップ!」
「いてえ。膝蹴りはチョップじゃないだろー」
「うっせ! お前、今日も国語の松本先生に『庭山くんのは弁慶ぎなた式ですね』なんて言われていただろ」
「えっ、なんだっけそれ」
「オレもよく知らねえ。『ぎなた』って何だろう」
「道緒先輩に聞いてみようか?」
「そうだな、おーい、道緒先輩ー」
 すでに道緒はさっさと部室に雲隠れしたあとだった。
 テニスコートの隣にある八幡神社の狛犬だけが二人を見ていた。『弁慶はな、ぎなたを持って……』口の中でぶつぶつつぶやいてみたが、もう別の話に夢中になっている二人には届かないのだった。


−了−
 
 えーと「重いコンダラ」ってすでに古すぎるでしょうか(^^; 
 もっと短くできるといいのですが……修業します。
 
 次のお題は「ライター」「消費」「転生」で追加ルール「だじゃれを使ってください」。
 よろしくお願いします。

++2004/04/03(土) 17:35

38海猫:2004/04/07(水) 07:04
 うわ、ラストが近い。

>おづね・れおさん、感想有難うございます。
 >千年に一度巡ってくる、世紀末
 うあ、言葉が足りてない……。これはですね、ミレニアムの事を言いたかったんですよ。まあ、エイプリルフール投稿、って事で御容赦を。
 >シュレディンガーの猫
 確か、量子論でしたっけ? 観測しない限り、箱の中の猫の生死は五分五分の状態だとか何とか。でも、箱を開けずとも結果は既に確定しているのだから、箱を開けてから結果が確定するなんておかしい、っていう皮肉に使われたんですよね。とりあえずそういう意味で使ったつもりでした。うーん、確かに変かも……。

○「狛犬・弁慶・塩の道」
 登場人物、歳いくつなんですか。僕でも知らない事を知ってる変声期前って……。『思いこんだら試練の道を』と『重いコンダラ塩の道を』、強引過ぎじゃ……。『ぎなた』って何スか。
 色んな意味で面白かったです。
○「サリンジャー」「デリンジャー」「炊飯ジャー」
 もうお笑いにしかならないようなお題なのに、お笑い抜きって。鬼ですか、風杜みことさん。しかしそれを見事に消化したおづね・れおさんも凄い。
 >「おばあちゃん、どうして笑ってるの?」
 このセリフ、その上で敢えて使ったのかな、と思いました。

>柿美さん、感想有難うございます。
 ああ、良かった。核戦争、って伝わって。敢えて『核』って言葉を使わなかったので、分かりにくいかと思ってました。
○「ジャン」「ケン」「ポン」
 曰く「使い古されたお話」との事ですが、そんな事ないですよ。綺麗な情景が思い浮かび、良かったです。会話文が中心なのは、行数制限のために仕方なかったにしろ、柿美さんとしてはもっと書きたかったのでは? と思いました。

>風杜みことさん、感想有難う御座います。
「石のスープ」なんですが、風杜さんの知っているそれと同じなのでしょうか? どうやら僕の知っている「石のスープ」と本家のそれは違うらしくて。ちょっと気になります。
 感想の方ですが、そういう見方もあるのだな、と思い感心しました。自分だけだとどうしても一つの思考に囚われちゃうので、貴重な意見です。勉強になりました。

○「青林檎、野良犬、酩酊」
 僕も何か殺し屋を連想しました。いずれにせよ、アンダーグラウンドな方々ですね。最後のセリフは、個人的には要らなかったかも、と思います。或いは、もっとさりげないセリフの方が良いかも、と。


お題:「ライター」「消費」「転生」
追加ルール:「だじゃれを使う」

 俺はライター。安っぽいからって、人は俺を『百円ライター』なんて呼ぶ。最近じゃ消費税の表示が義務付けられているから、正確には『百五円ライター』だと思うが、そんな事はどうでも良い。
 だが、一寸の虫にも五分の魂、なんて言葉がある。例え人から見て安っぽかろうが、俺の中にだって燃えるものがあるのだ。だた今は、完全燃焼するに足る火種に欠けているだけ。見てろ。チャンスさえあれば、俺の燃える心は野火の如く世界を駆け巡り……――!

「オラ、新米! ちょっと来いや!」
 俺の思考は、編集長の怒鳴り声によって無慈悲に破られた。
「え、あ、はい。なんスか?」
 俺は慌てて立ち上がり、編集長のデスクへと走った。その俺の顔を、編集長は人を射殺しかねない眼差しでぎろりと睨め付ける。
「テメエ何度言ったら分かるんだ! 記事書き終わったら誤字脱字の見直ししろ、っつったろうが! 何だこりゃ? 『画龍転生を描く』ってなよぅ、ああ!? テメエが画竜点睛を欠いてどうすんだよ!」
「うえ、す、スミマセン! すぐ直します!」
「早くしろよ! 明日の朝刊に穴開けたら、テメエの頭に穴開けてやるからな!」
 ……俺はライター。文章が安っぽいから、人は俺を『百円ライター』なんて呼ぶ。――いつか絶対、『百万円ライター』になってやる!


 最近長いのばかりなので、今回は短く。
 次回は、
○お題:「一期一会、一言一句、一朝一夕」
○追加:「主人公は人外の者」
 でお願いします。
++2004/04/04(日) 00:02

39風杜みこと:2004/04/07(水) 07:08
>おづね・れおサン
 『メープルの小道』
 サラリとこういうものが書けるのは凄いですね。私の場合、サリンジャーは吉田秋生さんの漫画のおかげで知ったようなものでした。結構、私も『藪をつついて蛇を出す』人間なのでアーウィンを笑えない。ちょっとドキッとしました。
 ダジャレのようなお題を真面目に消化してくださって有り難う。

 『コンダラ』
 人間やっぱり思い込みの動物なんでしょうか? 部活中の光景なのか、三人のやり取りがとてもユーモラスでした。でも、「神視点」だったかな?

>柿美さん
 はい、ズバリ殺し屋で正解でした。でも、バーテンはむしろ肉体年齢は若い人をイメージして書いていました。まぁ、この場合どちらでもいいんです、爺でも若でも^^;
 拝み屋さんのお話、面白かったです。遠巻きに見ていた市の職員とのやり取りが楽しかった。

>海猫さん
 上手い! なるほど、その「ライター」がありましたか。私は火を点ける方しか連想出来ませんでした。こういうものは頭柔らかくしないと書けそうにないですね。
「サリンジャー」「デリンジャー」「炊飯ジャー」は、もうお題そのものが、お笑いなので其れを素のまま使ったら何にもならないだろうという老婆心での縛り(お笑い抜き)でした。
「グッドラック」は、あれが私のラストになるかな、という一抹の想いが書かせた台詞です。作品そのものには不要だったかもしれないですね。

(本文が長すぎた為に分割掲載しました。以下に続きます)

40風杜みこと★:2004/04/07(水) 07:08
――お題:「一期一会、一言一句、一朝一夕」/追加:「主人公は人外の者」――

「ねぇねぇ、ちょっと寄っておくれよ兄さん。五文でどうだい? 安くしとくよ」
 男が柳の影から伸びた手に袖を引かれたのは辰巳の刻も過ぎた頃であった。厚く塗られた白粉に、安物の襦袢の赤も寒々しい。夜鷹である。
「へへっ、他あたっておくんな姉さん」男はつれなく手を払った。
「なんだい、なんだい、この吝嗇野郎。あんたみたいな朴念仁、きっと一期一会も気づかずに素通りしちまうだろうさ」
「おうっ、難しい言葉知ってやがるじゃねぇか、白お化け。どうせ坊主に寝物語で仕込まれた口だろう。お前となんざ一文だって御免だ。おいらが誰と寝ようがおいらの勝手だ。おめぇの知ったこっちゃねぇ!」
「なにをー、このスットコドッコイ。ひょっとこみたいな顔しやがって。このお銀を怒らせたからにゃ、金輪際この辺で遊べないと覚悟するがいいさ。あんたが吐いた言葉、一語一句忘れず言いふらしてやるっ」夜鷹はそう言うと、男を睨みつけ、さっさと歩いて行ってしまった。
 さて一人残された男はというと、ケッとその場に唾を吐き反対へ歩き出した。もとより目指した方角なのか、夜風に肩をすくめながら足早に歩く。本所の橋を渡ってすぐ右手に男の目指した灯があった。
「おやじ、一本くれ」
 暖簾を潜った男がそういうと、頬被りをした親父は「遅かったじゃねぇか」と台の上に熱燗とお猪口、家紋のついた印籠を出した。「今夜が肝心要の大取よ。おめぇが来なかったらしくじるところだった」
「で、今夜の鴨は誰だい」男は上手そうに温酒を啜りながら親父をみた。
「旗本よぉ。流石に一朝一夕とはいかねぇ。一月前から探りを入れて、やっと奴が俳句の会とやらで遅くなる日を引き当てたってわけさ」と自慢げに語る親父に、「ふん。どんな恨みを買ったんだ、そいつは」と返す表情は渋い。
 親父は顔を顰めた。「真夫きどりで身請け約束した女を斬りやがった」
「ひでぇ……」男は酒代を置いた。仕掛けとは別のそれは、長く仕事を共にする為のけじめのようなものだ。「じゃ、体も温もったことだし、そろそろ持ち場につくか。……おやじ、後でな」
 男は屋台を出ると、細い路地の口に立ち、とある屋敷の木戸を見張った。月が中天から流れ夜の底に消える頃、木戸がゆっくりと開き一人の角頭巾を被った旗本が姿を表した。供の姿はない。男はしめしめとほくそ笑み、細い路地から出ると黙って旗本の後をつけ始めた。頃合いをみて「もうし、お武家様。お腰のものを落とされませんでしたか?」と声を掛け、振り向いた旗本に印籠を渡した。旗本は「かたじけない」と懐に入れた。踵をかえし歩き出す旗本に、今度は並んで歩を進める男はなんやかんやと話しかけ、先ほどの屋台の方へと誘った。袖摺り合うも多少の縁とはよく言ったもの。言葉巧みな男の言葉に旗本はつい酔いを過ごす。そして頃合い――
「ひぃぃぃっ、の、のっぺらぼう!」

 翌日、河岸に心の臓の破れた旗本の土左衛門が上がった。

 ――了――

 ははは……ちゃんとお題消化できてるんでしょうか?
 次のお題は「銀シャリ」「航空便」「活じめ」
 追加ルールは「美女が主役」でお願いします。

 それと、提案なんですが、休止中こちらの文章鍛錬企画を続けたい同士の方がおられたら、一時的に余所に掲示板などを借りて同じような形で続けませんか? 
 まだ借り先も決めておりませんが、もし賛同される方がいらしたらラウンジの方へご意見お願いします。
++2004/04/04(日) 02:59

41管理人:2004/04/07(水) 07:11
――こちらのスレッドは過去ログです。これより先の書き込みはご遠慮願います。――
 次のスレッドはhttp://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/movie/4262/1081049708/です。


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