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文章鍛練企画【三語即興文in鍛練場】3/24〜

30風杜みこと★:2004/04/07(水) 06:44
>おづね・れおサン
 ――うーん。おづねサンはどんなジャンルでも書けてしまう方なんですね〜。ラスト、「何かを捧げてくれる」が「祈りを捧げてくれる」と言い切ってしまった方がすんなり読めたかもしれません。青いタトゥーのイメージが綺麗でした。

お題は【 フール 四月 召喚 】で、【追加ルール:現代物はNG 】

 四月に入り、王弟ヘンリーは人が変わったように使われていない塔に引きこもるようになった。宮廷人らは、とんと姿を見せなくなったヘンリーに勝手な噂をしていた。魔に魅入られたとか、狼に憑かれたとか、毎晩のように塔に上り魔術にふけっているのだと。
 実際、楽師ルイスの目には、ヘンリーは何かに憑かれているように見受けられた。時おり見かける容貌は様変わりし、眼窩は深く窪み、肌は青ざめ生気がなかった。黒衣ばかり着ているヘンリーを道化が嘲笑い、戯れ歌を口にした時ルイスは思わず「フールがフールを笑っても、ちっともふるわない」と歌で切り返した。一時的にその場は紛れたものの、ヘンリーを真に救ったわけではない。ルイスは王に申し出て、様子見に塔を訪ねる許可をいただいた。先頃正妃が懐妊され、王位継承権が生まれてくる御子に遷ろうかというこの時期、王弟ヘンリーの振る舞いは目に余る常軌を逸したものがあった。
 その晩は満月だった。
 塔の階段を一歩一歩昇るルイスの手には、片時も離さぬリュートがあった。小さな窓から差し込む月明かりの照らす石段は、埃がつもり、足跡をくっきり記している。渦巻く風が塔を包み波のような音を立てていた。螺旋を描きながら上っていくルイスの耳は敏感に、風の音に紛れて消えてしまいそうな声を拾った。
(――なんだ?)
 ルイスは足を速めた。声はどんどん大きくなり、やがて破鐘のような男の大音声となった。獣の吠え声にも似た叫びが混ざったその声はまさしく王弟ヘンリーのもの。ルイスは戦き震える膝に力を込め、最後の段を上りきると扉に近寄った。鍵穴から覗いた光景にルイスは凍りついた。
 床に描かれた五茫星。その上に、水晶玉を左手に持ち、血のついた剣を宙に振り上げている黒衣の人物。部屋には雷光が走り、白い煙が漂い始めている。
(――召喚魔法? まさか……マーリン以来技は失われたはず)
 いずれにせよ王弟ヘンリーが魔に染まり、生まれてくる御子に禍を為さんとしていることは疑いようのない事実に思われた。
(――王へ……いや司教様へご相談申し上げる方が先か)
 ルイスが鍵穴から目を離し踵を返そうとしたその時、部屋に漂っていた白い煙が一箇所に凝縮し人型となった。
(なにっ!?)
「ハーイ、今夜もご指名ありがと〜。ん〜もぅ、サービスしちゃうから覚悟してネン」紫色の尻尾を生やした豊満な美女が、黒衣と手を差し伸べる。
「ハニー、遭いたかった。嗚呼、僕の命、僕の女神……愛しているよ」言うや、黒いフードを払い、王弟ヘンリーは美女を腕のなかにおさめ唇を奪った。
 よろよろと扉から離れたルイスは、ふらつく足で階段を降りると、大扉の前で立ち止まり、上を振り仰いだ。ここからは風の音しか聞こえない筈だったが、今にも交歓の声が降ってきそうだった。そのまま最下段に腰掛け、溜息をついては弦を爪弾き、ルイスは夜が白々と明けるまで王への報告に頭を悩ませた。

 ――了――

※フール(fool)=道化師、愚か者など。
私もファンタジーは好きなんですが……うっうっ(涙)上手く書けません。
投稿しようと思ったら、先を越されていました。回転早いですね。
お題は上珠さんのものでお願いします。
++2004/04/01(木) 04:11


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