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文章鍛練企画【三語即興文in鍛練場】3/24〜

40風杜みこと★:2004/04/07(水) 07:08
――お題:「一期一会、一言一句、一朝一夕」/追加:「主人公は人外の者」――

「ねぇねぇ、ちょっと寄っておくれよ兄さん。五文でどうだい? 安くしとくよ」
 男が柳の影から伸びた手に袖を引かれたのは辰巳の刻も過ぎた頃であった。厚く塗られた白粉に、安物の襦袢の赤も寒々しい。夜鷹である。
「へへっ、他あたっておくんな姉さん」男はつれなく手を払った。
「なんだい、なんだい、この吝嗇野郎。あんたみたいな朴念仁、きっと一期一会も気づかずに素通りしちまうだろうさ」
「おうっ、難しい言葉知ってやがるじゃねぇか、白お化け。どうせ坊主に寝物語で仕込まれた口だろう。お前となんざ一文だって御免だ。おいらが誰と寝ようがおいらの勝手だ。おめぇの知ったこっちゃねぇ!」
「なにをー、このスットコドッコイ。ひょっとこみたいな顔しやがって。このお銀を怒らせたからにゃ、金輪際この辺で遊べないと覚悟するがいいさ。あんたが吐いた言葉、一語一句忘れず言いふらしてやるっ」夜鷹はそう言うと、男を睨みつけ、さっさと歩いて行ってしまった。
 さて一人残された男はというと、ケッとその場に唾を吐き反対へ歩き出した。もとより目指した方角なのか、夜風に肩をすくめながら足早に歩く。本所の橋を渡ってすぐ右手に男の目指した灯があった。
「おやじ、一本くれ」
 暖簾を潜った男がそういうと、頬被りをした親父は「遅かったじゃねぇか」と台の上に熱燗とお猪口、家紋のついた印籠を出した。「今夜が肝心要の大取よ。おめぇが来なかったらしくじるところだった」
「で、今夜の鴨は誰だい」男は上手そうに温酒を啜りながら親父をみた。
「旗本よぉ。流石に一朝一夕とはいかねぇ。一月前から探りを入れて、やっと奴が俳句の会とやらで遅くなる日を引き当てたってわけさ」と自慢げに語る親父に、「ふん。どんな恨みを買ったんだ、そいつは」と返す表情は渋い。
 親父は顔を顰めた。「真夫きどりで身請け約束した女を斬りやがった」
「ひでぇ……」男は酒代を置いた。仕掛けとは別のそれは、長く仕事を共にする為のけじめのようなものだ。「じゃ、体も温もったことだし、そろそろ持ち場につくか。……おやじ、後でな」
 男は屋台を出ると、細い路地の口に立ち、とある屋敷の木戸を見張った。月が中天から流れ夜の底に消える頃、木戸がゆっくりと開き一人の角頭巾を被った旗本が姿を表した。供の姿はない。男はしめしめとほくそ笑み、細い路地から出ると黙って旗本の後をつけ始めた。頃合いをみて「もうし、お武家様。お腰のものを落とされませんでしたか?」と声を掛け、振り向いた旗本に印籠を渡した。旗本は「かたじけない」と懐に入れた。踵をかえし歩き出す旗本に、今度は並んで歩を進める男はなんやかんやと話しかけ、先ほどの屋台の方へと誘った。袖摺り合うも多少の縁とはよく言ったもの。言葉巧みな男の言葉に旗本はつい酔いを過ごす。そして頃合い――
「ひぃぃぃっ、の、のっぺらぼう!」

 翌日、河岸に心の臓の破れた旗本の土左衛門が上がった。

 ――了――

 ははは……ちゃんとお題消化できてるんでしょうか?
 次のお題は「銀シャリ」「航空便」「活じめ」
 追加ルールは「美女が主役」でお願いします。

 それと、提案なんですが、休止中こちらの文章鍛錬企画を続けたい同士の方がおられたら、一時的に余所に掲示板などを借りて同じような形で続けませんか? 
 まだ借り先も決めておりませんが、もし賛同される方がいらしたらラウンジの方へご意見お願いします。
++2004/04/04(日) 02:59


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