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音楽スレ(2021~ )

1korou:2021/01/01(金) 16:34:02
2020年までで938書き込み。
「名曲300選」の途中とはいえ
それは1000書き込みで完結しない見込み。
となれば、年の途中でスレが変わるのもどうかと思うので
新スレをスタート。

116korou:2021/10/20(水) 14:22:24
ベートーヴェン「第9」再チェック、続き。

カラヤン&フィルハーモニア管は
あまりにもカラヤンすぎる演奏で、冒頭の不穏感が皆無、これはベートーヴェンではない。

クリュイタンス&BPOの演奏は
これといって欠点の見当たらないオーソドックスなもので
じゃあ何度も聴きたい演奏かと言われれば、決してそうはならないという類の演奏である。
ベートーヴェンを表現するには、あまりにも上品なスタイルと言えるのだが
そう思えば、冒頭の不穏感の出し方など、自らの個性のなかでよりベターな響きを出している点は
さすがと評価できる。でも全体としてはどうでもいい演奏。

シューリヒト&パリ音楽院管については
何とも不思議というべきか、冒頭の響きが不穏感とは程遠いながら、それでいて全然違和感がないという奇跡。
でも、全体にベートーヴェンらしくない響きであることは確かで、さらにオケの音色が明るすぎて「第9」らしくない。
シューリヒトの棒なら、ドイツもしくはオランダのオケで聴きたかったところだ。

ワルター&NYPの演奏は、まさにワルターらしい細やかな表現が聴きどころなのだが
その豊かな感性を邪魔しているかのようなNYPの弦の音色の鋼鉄のような響きが恨めしい。
しかも、これはワルターがアメリカの聴衆向けに磨いた音色のように思えて二重に恨めしい。
ミュンシュ&ボストン響も、音色といい、表現の基本スタイルといい
ワルターの小技がない分だけもっと徹底して50年代のアメリカのオケの音色を代表するかのような演奏だ。
ところが、その分爽快さは際立っていて、さらにトスカニーニのときには無茶苦茶に聴こえた部分、速いパッセージにおいても
この超特急スピードのスタイルながら不自然に聴こえないのが不思議である。
これはこれで”極めた演奏”なのではないかと思えた。
ある意味素晴らしい!

117korou:2021/10/20(水) 15:22:43
ベートーヴェン「第9」再チェック、続き。

ミュンシュ&ボストン響の演奏について補足。
素晴らしいのだが、このスピードで演奏するとリズムに粘り、ニュアンスが出ないのは当然なので
その意味で決して推薦盤のレベルではない。
ただ、数多くある速いテンポの演奏の中では最高のレベルと言える。

クレンペラー&フィルハーモニア管は
あまりにも霊感に乏し過ぎるというか、これはクレンペラーにしてはあまりにも不出来な演奏である。
どこをとっても魅力に乏しい表現になっている。

コンヴィチュニー&ライプチヒ・ゲヴァントハウス管については
とかく明るい音色になりがちなオケの個性をよく修正してベートーヴェンらしい重厚な響きにもっていった
コンヴィチュニーの指揮ぶりが注目の演奏だが
それ以上の聴きどころはない(録音は秀逸)。

アンセルメ&スイス・ロマンド管の演奏は、もはやアンセルメ独自の響きが耳について、どうにも批評できない。

ワルター&コロンビア響については、冒頭の不穏感が皆無ながら、フルトヴェングラーのそれと違って
なんとかそこは聴き続けることが可能で、そこから先に進むと、いろいろな箴言を聴くことができる演奏になっている。
ただ、あまりにもベートーヴェン臭が無さ過ぎて物足りないことも事実。
なかなか「第9」というのは難しい曲だ。

118korou:2021/10/20(水) 15:52:50
ベートーヴェン「第9」再チェック、続き。

フリッチャイ&BPO。
シリアスな響きはいかにもベートーヴェンらしいのだが
どういうわけか健康的な響きにも聴こえ、その点で堂々としていながら妙に残念なオイストラフのヴァイオリンと
よく似ている。
もう少し晩年に近いフリッチャイなら、もっとできたはず。

カラヤン&BPO。
以前のフィルハーモニア管との演奏と比べると雲泥の差で、冒頭から見事な不穏感を醸し出す。
その直後のフォルテの響きは感心しないのだが、それを除けば、何という見事なベートーヴェンらしい響きの連続。
カラヤン独特のレガート、フォルテの響きの軽さに目をつぶれば、断然「第9」らしさにあふれた演奏。
何といっても、この60年代前半のカラヤンのベートーヴェンでしばしば聴かれる圧倒的な気迫が素晴らしく
徐々にレガートも響きの軽さも気にならなくなり、聴き入ってしまう。

マルケヴィッチ&ラムルー管の演奏については
以前は推薦盤にしたものの、こうして多く聴いてみると
数多くあるテンポの速いスタイリッシュな演奏のなかで特に目立って出来が良いというわけでもなく
聴き直してみるとかなり平凡に聴こえた。
マルケヴィッチとカラヤンを入れ替えて、今回の「第9」の再チェックは終了としたい。

推薦、ヨッフム、カラヤン。

119korou:2021/11/05(金) 14:53:15
ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」を比較試聴。

このところこの曲ばかり2週間以上聴いているのだが
決定盤が出てこない。
以前推薦盤にしたケンプ&ケンペンの演奏は
やはりオケの音の出し方にデリカシーが乏しく
モノラルの音質ということもあって広がりもないので却下。
広がりという点では、
ルービンシュタインとクリップス&シンフォニー・オブ・ジ・エアの演奏が
録音も優秀、ニュアンスも豊かで広がりがあり
これを推薦盤とするほかない。
曲自体が形式的なリズムに陥っていて、ベートーヴェンにしては不出来な曲なのかもしれない。
その点で、ルービンシュタインは極めて主観的な弾き方をしていて
宇野功芳氏の指摘のとおりなのだが
こういう曲の場合、こうした個性的な弾き方でないと
最後まで飽きずに聴くことは難しいように思う。
今ずっと聴いているのだが
第2楽章は、ピアノ、オケとも素晴らしい出来で
これに関しては文句なしの名演だと思った。
両端楽章も、曲の出来栄えからみてこれ以上のものがあるようには思えない。

(推薦)ルービンシュタイン(P)、クリップス&シンフォニー・オブ・ジ・エア

120korou:2021/11/08(月) 17:13:42
ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番」の再チェック。

結論から言えば、前回推薦のアラウ&C.デイヴィスで決まり。
他の演奏はほぼすべて音色が明るすぎて、この曲のモーツァルト風な側面だけが浮き彫りになっているが
アラウはさすがで、この淡泊な曲からベートーヴェンなるもののエキスを磨き出している。
デイヴィスの指揮も信じられないほどアラウの演奏に沿った見事なもので
協奏曲のバックの指揮の理想ともいうべき、音色を遠景にとどめて
ともすればベートーヴェンの楽譜から導き出されがちなオケの出しゃばり具合が完璧にセーブされて
ベストのポジションでオケが鳴っている。
ドレスデン・シュターツカペレの音色もいかにもベートーヴェンにふさわしく
録音も超優秀でその音色を100%再現できている。

アラウの精神性あふれる高貴な演奏は他の演奏とは隔絶して素晴らしいが
それに匹敵する深い精神性を、こんな明るい淡泊な曲から導き出しているのが
コンラート・ハンゼンのピアノ、フルトヴェングラー&BPOによる戦時中のライブ録音である。
アラウの悠然迫らぬ境地、すべてを見通したかのような演奏とは対照的に、
当時40代のハンゼンは緊迫した雰囲気、凄まじい集中力でもって
この曲の精神性を表現している。
フルトヴェングラーの指揮も、得意ではないはずの協奏曲におけるサポートという立場のなかではベストに近い出来で
ハンゼンのピアノがこの巨匠の音楽と渾然一体となって聴く者の心に迫ってくるのである。
録音もこの時期のものにしては驚くほどクリアだ(ただし、ナクソスで検索して最上位に出てくる録音は冴えないので、
Russian Compact Discというレーベルのもので再生する必要アリ。なお、ユンク君には音源ナシ)

その他に、グルダ、ルービンシュタインを聴いてみたが
悪くはないのだが一長一短があり、上記2点と比べると聴いていてもどかしい。

(推薦盤)アラウ(p)、C.デイヴィス&ドレスデン・シュターツカペレ

121korou:2021/11/12(金) 15:00:50
ベートーヴェン「皇帝」の再チェック。

第3番に続いて苦戦。やはり曲自体の出来が良くないので、名演を探すのが難しい。
今のところ、前回推薦のグルダ、シュタイン&VPOがやはり一番なのだが
それでももっと良いものがあってもおかしくない直感にとらわれるのは何故か。

グルダの音は若々しく、軽快でいて、全然軽い音色の欠点を感じさせない唯一の音である。
「皇帝」は重々しい音色がふさわしいはずなのだが
グルダの演奏で聴くと、この曲がベートーヴェンの若い頃に書かれた曲であることを改めて再認識させられ、
こうした若々しさを感じさせる軽やかな音で弾かれるべき曲なのかもしれないと思わせるのである。
これは他のピアニストの演奏では決してたどり着かない感想なのである。
シュタインの棒は的確で、すでにピークではないVPOの演奏力から最大限のものを引き出していて好感が持てる。

同じVPOでも、ベームの棒にかかると、さすがに見事な音を奏でだす。
ここでは若き日のポリーニが弾いているのだが、残念ながらニュアンスに乏しく、ただ弾いているだけの感じなのが残念。
VPOの音は最高なのだが。
VPOがもっとハイレベルな時代に録音されたイッセルシュテットの指揮はオーソドックスで良いのだが
肝心の録音にクセがあって、弦の音などにふくらみが乏しく感じられる。
バックハウスのピアノはさすがで、この音色と落ち着きは、ちょっと聴いただけでもベートーヴェンそのものだ、
ニュアンスがどうのこうのなどこの演奏には無用なのだが、それにしてもオケの音質が残念すぎて決定盤とはし難い。
ニュアンス関係なしといえば、ホロヴィッツの演奏も凄いものだが、バックハウスと対照的に
このピアノの音色はどこまで聴いてもベートーヴェンではないように思えてしまう。
ライナーの指揮は秀逸なのだが。

他にもいろいろ聴いているのだが、書き切れないので略。
次回で最後にして、当面グルダを暫定推薦盤としようか。
「皇帝」だから名盤を期待するほうがムリなのかも。

122korou:2021/11/18(木) 10:57:53
ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」を再チェック。

「皇帝」がまだ済んでいないのだが、ついつい次の曲へ。
とはいえ、どれを聴いてもしっくりこない。
そもそも自分の嗜好として
協奏曲というジャンルに何も見いだせないような感じさえしてきて唖然とする。

そのなかでもまあ聴き易い、安心して聴けるというのは
やはり前回推薦盤のパールマン、バレンボイム&BPO盤となるだろう。
緊張を持続させて聴き続けることができるというレベルではないのだが
耳元でずっとなり続ける音として、ベートーヴェンの「Vn協」ならこんな感じかなという
いい意味での既視感がある。

シェリング、イッセルシュテット&ロンドン響の演奏も
パールマン盤に似た印象で安定感があるが
シェリングの音色が透明すぎ、パールマンの幸福感あふれる音色と比べると
自分の嗜好としてはやはりパールマンを採りたい。

クライスラー、クーレンカンプ、ヘンデル、五島みどり、クレーメルなどを聴いてみたが
いずれにせよ、メロディの起伏が霊感に乏しく、名曲とは思われない。
ベートーヴェンにとって、ヴァイオリンソロの名曲を書くことは
かなり苦痛だったのではないだろうかとさえ思える。

というわけで、この曲の再チェックはまたの機会として
今回は前回推薦盤の通りとしたい。

123korou:2021/11/18(木) 11:15:32
ベートーヴェン「皇帝」再チェック(最終)

やはりグルダ盤を推薦盤とするが
今回、ゼルキン、バーンスタイン&NYP盤を聴いて
その前進するエネルギーの熱さと、ゼルキンの心のこもった弾きっぷりに
感銘するところがあり
両者併記ということで。

音楽的な充実感ということだとグルダ盤(ナクソス)、
ベートーベンを感じたい演奏とすればゼルキン盤(ユンク氏)
という感じになる。

124korou:2021/11/21(日) 15:40:24
ベートーヴェン「悲愴」再チェック。

宇野氏推薦のホロヴィッツは、ナクソスにもユンク氏にも音源ナシ。
ギレリスについて、前回のチェックでは主部のテンポが急すぎて違和感アリと評したが
今回聴いてみて、そういう印象は受けなかった。
堂々とした立派な演奏だったのだが
その直後にケンプを聴いて
やはりケンプの素晴らしさというか、自然に音楽がこぼれ出るような見事さに
圧倒されてしまった。
ベートーヴェンの初期のピアノソナタは
再チェックの必要がないかもしれない。
あまりにもケンプと他のピアニストとの差があり過ぎる。

ということで
「テンペスト」までは、ケンプ中心にさらっと復習するだけにしたい。
「ワルトシュタイン」からいろいろ聴いていこうと思う。

次回は「月光」

125korou:2021/11/22(月) 17:54:59
ベートーヴェン「月光」再チェック。

しばらくケンプで再確認、と書いたものの
この「月光」だけは曲調が合わないのでケンプはパス(一応聴いてみたが、やはりダメ。厳格な曲調にこの流暢すぎる自由すぎる
ケンプのスタイルは合わない)。
なぜか、推薦盤のエクセル表だと、ホロヴィッツの1946年盤が推薦盤になっているのだが
その選考過程を書いた文章が出てこないので詳細が分からない。
ホロヴィッツの演奏は、1946年は音が古すぎて迫力が出てこず、表現自体ももっと”ホロヴィッツの月光”なら出来たはず。
1956年盤も聴いてみたが、出だしから平凡で聴くに値しない。
その点、最初の選考で文章に残してあるギレリスは
今回聴いても素晴らしかった。
何よりも、特殊な表現を聴かせるといった余分なものが全くなく
ほぼ聴こえる音の100%がベートーヴェンそのものであるのが心地よい。
第3楽章を久々に真剣に聴くことができて、ベートーヴェンの骨太で真摯な精神に触れ得た気がして
思わず感涙した。

ギレリスを推薦盤とするが
あとほんの少しだけいろいろ聴いてみることにする。

126korou:2021/11/25(木) 15:09:14
ベートーヴェン「田園」「テンペスト」を再チェック。

「田園」はケンプで決まり。
その結論を出してから数日経ってしまい、他に何を聴いたのか具体的に思い出せないが
最初のチェックの際に感じたことと同じだったことは覚えている。

「テンペスト」のケンプは、「月光」と同じ緩さが出ていて、ベートーヴェンらしさが感じられない。
リヒテルとギレリスは同じようなタイプの演奏で
ゆったりとしたテンポで緊張感を醸し出しながら、大振りな演奏で圧倒的な響きを出しているのだが
曲調がそうだとはいえ、やや劇的演出に走り過ぎているようにも聴こえ、次第に辟易してくる。
特にギレリスの場合、「月光」で素晴らしかったはずのその個性が
同じように弾いた「テンペスト」ではさほど感銘を生まないのは不思議という他ない。
その直後に聴いたナットの演奏は、演奏効果など皆無で真摯に弾いていて、いつもながらスタンダードで好ましい。
さらにバックハウスも、同様に真摯に弾き切り、さらにベートーヴェンらしさがナット以上に出ていて、素晴らしい。
ここはバックハウスを推したい。

(推薦)「田園」ケンプ、「テンペスト」バックハウス

127korou:2021/12/03(金) 15:12:53
べートーヴェン「ワルトシュタイン」を再チェック。

この曲に関しては、ギレリス、バックハウス、ホロヴィッツが抜きん出ているように思え
この3名の偉大なピアニストの演奏を聴いた直後では、他の演奏を聴く気にはなれず
以上全部を推薦盤としたいところだが、やはりその中でもバックハウスを推したいと思うのである。

ギレリスの演奏は、80年代の音楽評論家が一致して推している演奏で
自分も良い録音で余韻も楽しみたいというのであれば、断然ギレリスだと思っている。
どこにも欠点が見当たらず、よくぞここまで緊張を持続して集中力抜群な演奏で弾き切ったものだと感銘さえ受ける。
ただし、ベートーヴェンとしての根源的な力強さ、胸が震えるほどの感動という面では
何か物足らず、せっかくベートーヴェンを聴いているのに、という思いも残る。
ホロヴィッツの演奏もベートーヴェンよりも演奏者を意識させている点では、ギレリスと同様である。
しかし、この演奏は超絶的でホロヴィッツ以外に誰もこんな演奏はできないと言ってよいだろう。
物凄いテクニックなのに、単なる速弾きに終わらず、音楽の急所がすべて押さえられているのは奇跡に近い。
豪胆かつ繊細というのはこういう演奏のことを指すのだと実感する。

バックハウスの演奏は、この二者の演奏と比べれば圧倒される要素はかなり低いものがあるのだが
そうした表面的なものを乗り越えた真のベートーヴェン弾きとしてのクオリティに満ちている。
どこをとりあげても、演奏者自身ではなくベートーヴェンの音楽だけが伝わってくる至高の音楽。
これこそベートーヴェンを聴く、その手になるピアノソナタを聴く醍醐味ではないだろうか。

それにしても、本来なら表面を磨き抜いたギレリスもホロヴィッツも格段下の演奏となるはずなのだが
そうではなくバックハウスに匹敵するものを表面から引き出しているのだから
それも凄いと言わざるを得ない。
他の人の演奏が聴けなくなる最高峰の演奏、三者三様ということ。

(推薦)「ワルトシュタイン」 ⇒ バックハウス

128korou:2021/12/08(水) 12:18:09
ベートーヴェン「熱情」を再チェック。

まず、ギレリスから。
「ワルトシュタイン」同様、見事な集中力、緊張の高さを感じさせる演奏だが
この「熱情」に関しては、さすがに曲のもっと深部にベートーヴェンの爆発的な精神を表わす部分があるだけに
この冷静さはどうなのかと思わせる。
リヒテルも聴いてみたが
ギレリスとそっくりなスタイルで、リヒテルらしさが感じられない。

アラウも同じように冷静なタッチなのだが
旧ソ連勢のようなよそよそしさがない分、違和感は少ない。
ただし、アラウとしてみたら際立って優れた出来でもなく
これならバックハウスで十分ということにもなる。

ケンプが予想以上に素晴らしい。
「ワルトシュタイン」あたりではタッチが軽く感じられたのだが
この「熱情」は速いパッセージでもきちんと音の深みが伝わってきて
ゆっくりとした部分はさすがはケンプという感がある。
ケンプを聴くまでは断然バックハウスとするつもりだったが
これは「熱情」演奏の双璧とすべき名演に思えた。
第1楽章のテンポが遅すぎないのも良い(他のピアニストもいくつか聴いたが、皆テンポが遅い)。

バックハウスは不滅である。
相変わらずどこを切ってもベートーヴェンらしい雰囲気を醸し出していて素晴らしいのだが
特に第3楽章の最後の部分でテンポが一層上がる箇所は、いつ聴いても興奮する。
ベートーヴェンはこうでなくてはならない(その点、ケンプはここだけはあまりに美し過ぎる。それも悪くはないのだが・・・)

(推薦)「熱情」 ⇒ バックハウス

129korou:2021/12/13(月) 17:52:59
ベートーヴェン「告別」(Pソナタ・No.26)を再チェック。

まずバックハウスから。
不覚にも睡魔が訪れてしまった。曲調が独特で、いつものようにしっくりとはこない。
ケンプも同様。しっくりこない上に音質も軽い。

そこでナクソスに移り、曲調から考えてアシュケナージが良さそうに思い(300選では推薦盤の一つ)
聴いてみる。
これは正解で、たっぷりと抑揚をとって情感たっぷりに弾く感じが
うまくハマっている。
とはいえ、部分部分で納得できないテンポの動きもあるので
同じようにじっくりと弾きこなすギレリスを聴いてみた
(本当は推薦盤1位のアラウを聴きたかったが、音源がなかった)。
すると、ギレリスはアシュケナージよりも重厚に弾きこなしていて
それでいて曲調にも合っていて、これこそベストと思われた。

他の後期ソナタとは曲調が異なるので
あまり耳に馴染みがなく、ある意味聴き辛い曲。
このへんで聴き比べは止めておくことにした。

(推薦盤)「告別(No.26)」 ⇒ ギレリス

130korou:2021/12/15(水) 16:32:00
ベートーヴェン「ハンマークラヴィーア」を再チェック。

まずナクソスでレコ芸推薦の演奏からチェック。
ポリーニはさすがで、音の粒がこれ以上ないくらい精密で、強弱のメリハリも抜群、
ポリーニのベートーヴェンとしては最上の出来だろうけれど
この演奏は、曲中のデモーニッシュな部分の表現を拒否しているので
どこまで聴いても、こんなに立派な演奏なのに、ベートーヴェンの魂は感じられない。
ギレリスの演奏はいつも通りで、本来ならこういうタイプの演奏としてベストのはずだが
今回だけはポリーニの集中力がさらにそれを上回っていると思う。
それにしても、本当ならポリーニとギレリスで双璧と評したいところなのに
この曲自体が何か聴く者の心に故意に届かないように創られているかのようで
全然馴染めない感じが強く、どうにも心に響いてこない。
なお宇野氏推薦のゼルキンは、あまりにも音質が悪すぎて聴くに堪えないので除外。

ということで、ベートーヴェン弾き三大巨匠ともいうべきケンプ、バックハウス、シュナーベルを
ユンク君で聴いてみる。
ケンプは、確かに宇野氏のいうとおりで、かなりの熱演なのだが
どういうわけか、いつものエオリアンハープの親しみやすさが出てこず、熱演の割には心に響かない。
バックハウスは、この曲に関しては録音の音質がイマイチで(他の曲だとそうは思わないのだが)
立派な演奏ではあるが推薦するまでには至らない。
シュナーベルは、物凄い速いテンポの演奏でホロヴィッツを連想させる異例の演奏だが
そのテンポが功を奏しているとは言えないのが不思議。曰く言い難い説得力はあるのだけれど。

こうしてみると、曲自体が自分の好みに合わないということで
「告別」とセットで”聴き馴染みアリ&好みと合う”リストから”超名曲だが保留”リストに移動させることにした。
その上でポリーニがベストということで。

(推薦盤)「ハンマークラヴィーア(No.29)」 ⇒ ポリーニ

131korou:2021/12/30(木) 15:41:17
(ベートーヴェンの最後の3つのピアノソナタは
 あまりにマニアックなベートーヴェンの音楽なので
 「好みの音楽」ではなく「たまに聴く音楽」に分類替え。
 今回どの演奏で聴いてもピンと来なかったので、オススメの
 演奏者はバックハウスのまま)

ベルリオーズ「幻想交響曲」を再チェック。
カラヤン&フィルハーモニア管を就寝時に聴いて
意外と聴き易く破綻も少ないように思われたので
まずこれから試聴することに。
やはり細部の魅力に乏しいのが残念なところで
となれば、50年代当初のカラヤンよりもステレオで聴くカラヤンかなと思い
BPOとの組み合わせのものをナクソスで試聴。
70年代カラヤンのレガート誇張の演奏で
これなら旧盤のほうが好ましく思えた。
ミュンシュ&パリ管なら迫力と優美を備えた演奏かもと思えたのだが
実際に試聴してみると、案外迫力ばかりが聴こえてくる。
これも、案外、ボストン響との旧盤のほうが良いのかもしれない(世間の評価とは逆だが)。
そこでユンク君で、クリュイタンス&フィルハーモニア管という懐かしい演奏を試聴。
先に同じオケでカラヤンの演奏を聴いた直後なので
両指揮者の個性がここまで浮彫になるとは、さすがのフィルハーモニア管!
えもいわれぬ「軽み」、重みに対比されるべき「軽み」の極めの演奏で
全くしつこくなく音が絡みあって美しい演奏だ。
ステレオならこれが一番かもしれない。
もう少し聴き続けてみよう。

132korou:2022/01/05(水) 21:09:01
ベルリオーズ「幻想」を再チェック(続き)

ナクソスで、マルティノン&ORTFフィル(フランス放送フィル)の演奏をチェック。
じっくりと溜めた落ち着いた演奏で、熟成感があり、録音も優秀。
クリュイタンスの演奏をもっとモダンにした感じで
この演奏は入門編として最適かもしれない。
ベストは、やはりモントゥー&サンフランシスコ響になるが
ここへ併記ということで。

(推薦)ベルリオーズ「幻想交響曲」・・モントゥー&サンフランシスコ響、(入門編)マルティノン&ORTFフィル

133korou:2022/01/17(月) 20:06:46
ブラームス「第1」で再チェックをしようとしたが
重たい曲調なので比較試聴を積極的にする気になれず、ひとまず中断。

クラシック音楽のレビューサイトを探していたら
モノラル録音の巨匠時代の演奏には目もくれず
ひたすら新録音の演奏で大体1970年〜2010年代発売のCDでの演奏を
レビューしているサイトを見つけた。
ナクソスで聴ける演奏について、参考になるかもしれない。

まず、昨日は
そのサイトの文章を参考に
ビシュコフ&チェコ・フィルの演奏で
チャイコフスキー「第5」を聴いた。
微温的な演奏で、悪くはないが、すでに今日現在、語るべき言葉が出てこない。

今日は
マイケル・ティルソン・トーマス&サンフランシスコ響の演奏で
マーラー「巨人」を聴いた。
指揮者として20年以上も同交響楽団を率いているだけあって
オケとの息はピッタリ。
特に緩徐部分の表現は、うっとりするくらい美しく
これは聴いて良かったと思えた。

まあ、しばらくはこんな感じで聴き続けてみようか。

134korou:2022/01/18(火) 17:25:35
(ほぼ全文書き終えたのに・・・一瞬の操作ミスで文章が全部消えた・・・負けんぞ・・・もう1回書く・・・ふぅ。。。)
今回は、マーラー「復活」を
ブロムシュテット&サンフランシスコ響ほかの演奏で全部聴き通した。

「ききくらべ」氏の評価通り
ブロムシュテットは
楽譜に示されたあらゆるニュアンスを的確に示して
テンポの揺れ、音の強弱、楽器の音の重なり具合、全体の造型すべてにおいて
楽譜以下でも楽譜以上でもない音楽を
見事なまでに再現している。
サンフランシスコ響も
これほど上手いオケだったとは
(昨日のT・トーマスとの演奏といい)予期していた以上のクオリティだった。

ブロムシュテットは、94才の今も現役のはず。
こういうタイプの指揮者は
かつては敬遠していたのだが
今はじっくりと聴けるようになってきた。
またライブ放映があれば
ぜひ聴いてみたいと思わせる「復活」の名演だった。

135korou:2022/02/09(水) 15:22:38
今日から新しい試み「レコ芸推薦盤全記録(上巻)を年代順に聴いていく」
(HPにしたかったがHP作成ツールがないので断念)

(1952年の新譜から)
チャイコフスキー「悲愴」(トスカニーニ&MBC響、1947年録音)
★★★★★★★☆☆☆
この頃は実際の録音年から約5年で、日本での新譜としての発売となっていたようで
この演奏も1947年の録音ながら、この年の新譜としてレコ芸で評価されているようだ。
録音年代の割には音は鮮明で、随所で当時のNBC響の音響の凄みが聴こえてくるのは嬉しいところ。
かつてLPで、貧しい痩せた音質で聴いていた頃が嘘のようである。
演奏は、いかにもトスカニーニそのものの個性が出ていて
がっちりとした構成で筋肉質にまとめているのだが
やはり、この種の音楽を聴く愉しみである「頽廃感」「饒舌感」には乏しい。
ないものねだりになってしまうのだが仕方がない。
録音の意外な良さでオケの地力が聴こえてくるところを評価して、7点とした。

136korou:2022/02/09(水) 15:32:49
(1952年の新譜から)
ドボルザーク「スラブ舞曲第10番、第12番」(ターリッヒ&チェコ・フィル、1950年録音)
★★★★★☆☆☆☆☆
スラブ舞曲の第2集の第2番が
第1集の計8曲から通算して数えて第10番という扱いになっていて
同様に第12番というのは第2集第4番ということになる。
演奏そのものは、今となってはどうということもなく
感じ取れる人には懐かしきチェコ・フィルの音色がたまらないだろうし
そうでない人には単に記念碑的演奏ということに止まることになる。
管弦楽曲の場合、シンフォニーとは違って
楽想の形而上学的な深まりという要素は乏しいことになるので
どうしてもオケの音色で勝負ということになると
最新の鮮明な録音のほうを採らざるを得ないのだが
この演奏も当時の録音技術からすれば平均的な出来とは言え
どうしても音の古さにもどかしさを感じざるを得ないのである。
この小品に関しては、その後に優れた録音で出された演奏が数多くあり
決してターリッヒの実力を示したものにはなっていないはずである。
今評価するとしたら、5点程度かなということになる。

137korou:2022/02/09(水) 15:55:50
(1952年の新譜から)
ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第1番」(ギーゼキング、ロスバウト&ベルリン・シュターツカペレ、1937年録音)
★★★★★★★★☆☆
これは優れた演奏。録音はこの年代にしてはまずまず良好。
ギーゼキングのピアノは、余計な解釈を一切排して、ストレートに楽想を伝えてくる。
その明晰な演奏を支えるオケのほうも、堅実そのものだ。
あまり聴き馴染みのない曲だが、この演奏ならずっと聴ける。
両端の速い楽章も、中間の緩徐楽章も
どちらもキリっとして明快で気持ちよい。
1937年という年代を考えると、超モダンと言えよう。
とりあえず8点をつける価値ありと判定。

138korou:2022/02/10(木) 10:11:30
(1952年の新譜から)
ベートーヴェン「ピアノ、ヴァイオリンとチェロと管弦楽のための三重協奏曲」
(ワルター指揮 ニューヨークフィル (P)ワルター・ヘンドル (Vc)レナード・ローズ (Vn)ジョン・コリリアーノ 1949年3月21日録音)
★★★★★★★☆☆☆

初めて聴いた曲で、ベートーヴェン中期の作品としては珍しく駄作と言われている曲らしい。
確かに、全般に貴族のサロンで上品に演奏されそうな無難な曲で
劇的な盛り上がりとか、人間賛歌が胸にこみ上げてくるといった感動は皆無だ。
とても「英雄」と「熱情」の間に作られた曲とは思えない。
そんな凡庸な曲を、明確な表情づけで立派に聴かせているワルターはさすがだ。
ピアノのヘンドルはハイフエッツの伴奏指揮者としてのみ著名だが
ここでのピアノは堅実そのもの、悪く言えば個性に乏しいが、かといって特に問題もない。
チェロのコリリアーノも、いくらか表情づけが見られるが
もともと米国の著名オケでのリーダー格ということで
いかにも全体に合わせている感じはヘンドルと同様。
ヴァイオリンのローズは、NYPのコンマスということで
この三重協奏曲という珍しい企画を立てるにあたって
オケがNYPということで自然と選ばれることになったのだろうが
独奏者3名のなかでは一番雄弁に弾いている(勝手知ったるオケでの演奏だから当然か)
全体として、ワルターとローズの明確なラインに沿って、
他の演奏者もよくそれに合わせているといった感じ。
曖昧なところが何一つないので、初めて聴いたが、飽きは感じなかった。
評価しようにも他の演奏を知らないので難しいが
平均で7点というところか。

139korou:2022/02/10(木) 11:49:42
(1952年の新譜から)
ドボルザーク「チェロ協奏曲」(カザルス、セル&チェコ・フィル、1937年録音)
★★★★★★★☆☆☆

驚くほどクリアな音質で、とても1937年録音とは思えないほどである。
大芸術家であるカザルスの演奏が、それも壮年期の力強い弾きっぷりが
こうして見事な音質で残されているのには、関係者に本当に感謝したい気持ちになる。
カザルスは偉大なのだが、今までその名声にふさわしい演奏を聴いたことがなく、
今回これを聴いて大いに納得。
好みという点からいえば、もう少しゆったりとした情感あふれる弾きっぷりのほうがいいのだが
何というか、このカザルスの演奏には
そんな小さい「好み」などを超越した人間性を感じてしまう。
オケも、若き日のセルも、まるでそんなカザルスの”引力”にひきずられて
平常以上の水準の演奏を引き出してもらったかのように聴こえる。
セルは、この頃からオケの底力を引き出す力はあったに違いないが
カザルスのオーラがそれをさらに底上げしている。

とはいえ
(ベートーヴェンにこのクオリティのチェロ協があれば文句なしなのだが)
さすがに民族音楽としてチェコ、アメリカの音楽を駆使した特殊な曲だけに
カザルスの人間性だけで全てOKというわけにもいかない。
これはドボルザークの音楽の真髄を極めた演奏というより
カザルスという超絶なチェリストを知るための録音というほうがふさわしい。
その意味では、カザルスには申し訳ないが、標準の7点ということになる。

140korou:2022/02/10(木) 17:13:28
(1953年の新譜から)
ベートーヴェン「第2」(ワルター&NYP、1952.3.17録音)
★★★★★★★★☆☆

他の演奏家はともかく、ワルター盤に関しては
この時代にあっても迅速に輸入されていたようで
この演奏などは録音の翌年には新譜として日本でも発売されている。
ワルターほどのビッグネームがベートーヴェンの名曲を振るとなると
何回も演奏機会があるので、簡単には特定できないという
新しい問題が生じてきたのだが
この演奏に関しては、詳細なワルターのディスコグラフィーがネット上にあったので
1952年録音分をレコ芸で推薦していることが特定でき
その演奏はユンク君で聴くことができたので
安心して確認することができる。
それにしても、単純に4、5年経って日本で新譜として発売と見做していたので
1952年のワルターの推薦盤についても見直して確認の必要が出てきた。

それはともかく、演奏そのものは定評のあるもので、さすがである。
ただし、最近の自分の嗜好がこういう曲調に馴染まないので
本当なら☆9つでもいいのだが、今の気分としては☆8つが妥当のように思える。
さらに言えば
NYPの音色が、セル&クリーヴランド管のようなモノトーンな感じなのが物足りない。
(とはいえ、その音色のままでブラームス「第2」のような名演もあるのだが)

141korou:2022/02/12(土) 18:00:21
(1967年の新譜から)
ベートーヴェン「英雄」(オーマンディ&フィラデルフィア管、1961.4.9録音)
★★★★★★★☆☆☆

ずっとモノーラル録音の演奏を聴いていると
それはそれで以前より遥かに聴き易い音質のものを
ユンク氏が保証してくれているとはいえ
さすがにステレオ音質のものを聴きたくなってくる。
そこで、今回から
今参照中の小冊子の末尾から逆に辿るルートも開始することにした。
今日はその第1回で、1967年の新譜のオーマンディのベートーヴェンである。
1961年録音であれば、もうこの時期であれば、2年以内には新譜になるはずなのだが
データを見ると”C→CS”とあるので
これは1960年代前半にコロンビアから出た新譜を
1967年のCBSSONYレーベル開始において、改めて新譜として再発売したものとも考えられ(違うかもしれないが・・・)
その過程で、当時見逃されてきたこの演奏が再評価されたのではないかと解釈してみた。

オーマンディのベート―ヴェンなんか始めて聴いたのだが
予想よりも遥かに良かった。
鳴っている音が実に堂々としていて、揺るぎがない。
ベートーヴェンらしい内部から発せられる緊迫感、攻撃性という要素が皆無なのが
いかにもオーマンディらしく、その意味では予想通りなのだが
それに代わる要素はこれほど耳に心地よく響くとは思ってもみなかった。
本質的なところが抜けているので高評価にはならないが
かといって問題外の演奏ということでもなく
よって☆7つの標準点とした。

142korou:2022/02/13(日) 15:03:58
(1953年の新譜から)
ベートーヴェン「第4」(ワルター&NYP、1952.3.24録音)
★★★★★★★☆☆☆

「第2」よりはいろいろな箇所でやり足りない感じが目立ち
☆7つとした。
曲そのものも、今となっては名演が難しい類になっている気がする。
この曲想を煮詰めていくと「第7」になるのではないかと思えるが
「第7」の完成度を思えば、かなり不出来な曲に感じられる。
「第4」の名演を探さなければ。

143korou:2022/02/13(日) 15:55:48
(1953年の新譜から)
ベートーヴェン「英雄」(ワルター&NYP、1941.1.20録音)
★★★★★★★☆☆☆

1941年の録音によるものが1953年の新譜というのも妙だが
データを確認すると、どうもSPからの復刻版のようだし
ワルター&NYPによる一連の新録音シリーズを発売するにあたって
「エロイカ」の新譜も入れなければということから
戦争の関係で新譜の入荷が途絶えていた時期のものを復活させたのではないか
と推測されるのである。
録音状態も1952年新録音と比べて決して遜色ないので
当時としても違和感はなかったと思われる。

演奏は、後年のもっと優れた名演を知っている我々にとっては
ワルターの「エロイカ」はこんなものではないと言えるのだが
個性あふれる解釈が流布していた当時としては
このすっきりしたストレートな響きは歓迎されたはずである。
今聴くと、第1楽章ではもっとテンポを揺らして曲調を高めることはできたはずだし
第2楽章ももっと劇的に盛り上げることができたはずである。
それに比べて後半2楽章は、さすがの解釈で個性が出ている。
第3楽章の短さにはちょっと驚かされたが、ソロ楽器の響かせ方にワルターらしい魅力が聴けるし
終楽章に至っては、他の指揮者ではなかなか味わえない絶妙のテンポルパートが見られる。
渡米して間もない時期だけに、楽団員に細かい指示を出すには
「エロイカ」の前半部分は、あまりに巨大すぎたのではないか。
そんなことを思わせる前後半の出来不出来の差がある演奏だ。
☆は標準で7つということで。

144korou:2022/02/14(月) 16:33:08
(1953年の新譜から)
ベートーヴェン「運命」(ワルター&NYP、1950.2.13録音)
★★★★★★★★☆☆

一連のワルター&NYPのモノーラルのベートーヴェン推薦盤の最後は「運命」。
これは、今までの演奏とは違って、ワルターの細かい配慮が行き届いた名演に聴こえた。
欲を言えば、第1楽章の展開部でもう少し劇的な感じが欲しいのと
第4楽章に突入するときの髪の毛が逆立つような興奮がもっと欲しかったのだが
それ以外は、スタイリッシュなワルターとしては最上の出来のように思われた。
今書いたように曲の急所に物足りないところがあるので
(それとモノーラル録音なのでワルターの細かい指示が聴き取れないのがもどかしい・・・)
★は8つに止めておくのだけれども
第2楽章の冒頭の気持ちを込めた表現など
他の指揮者では聴くことのできない箇所が幾つもあって素晴らしかった。
第1楽章であれほど苦悩しておいて、第2楽章はなんと能天気な音楽なのだろうと
聴くたびに思っていたのだが
今日ワルターのこの演奏を聴いて、このように第2楽章も苦悩に満ちた音楽になれば
連続性が出てきて、曲としての統一感も増すのだと実感した。
全体で32分にも満たない速いテンポの演奏でもあり
これは「運命」のスタンダードではないのだが
いろいろな意味で、曲の細部の真実を抉り出している演奏だと思う。

145korou:2022/02/16(水) 11:04:03
(1953年の新譜から)
ベートーヴェン「第九」(トスカニーニ&NBC響ほか、1952.3.31〜4.1録音)
★★★★★★★☆☆☆

実に見事な「第九」で、この演奏に決定的な不満を述べることは
誰にも許されないと言ってもよいくらい。
しかし、それでいて「第九」の真髄をこれほど素通りすることは
いかにトスカニーニの流儀とはいえ
指揮者の権限でそこまで許されていいのだろうかという疑いは
残ってしまうのも否定できない。
とはいえ、圧倒されるというか
この偉大な曲にも、まだこんな演奏の仕方が残っていたのかという驚きが強く
それらの思いが聴くにつれて錯綜として絡まっていき
結局、★7つの普通の評価で終わってしまうのである。
どこにもドイツ風の思い入れ十分な曲想のふくらみなど無い演奏であるから
絶対に★9つ以上の絶賛はできない。
しかし、★6つなど否定的な見解はあり得ないのも間違いない。
第1楽章は秀逸で、まさにユンク氏の言うとおり、この偉大な建造物を
こんな風に登ることもでき、こんな風景があったのかと
新しい発見に満ちた体験が堪能できるのだが・・・
第2楽章の意外なほどのテンポの落とし方で、スケルツォの立体感というのも絶妙なのだが・・・
第3楽章は高尚な響きで凡人の鑑賞力を超越しているのだが、高尚なのはわかるとして・・・
終楽章がこんなにあっさりとしていいのかという根本的な疑問、しかしベートーヴェンの意図は?
結局わからずじまいで★7つとなるのである。
トスカニーニはよく分からないというのが正直なところだが
かといって全然理解できない・・・どころか、どの音も明晰で分かり過ぎるくらい分かるのだから
始末に負えない。

146korou:2022/02/17(木) 10:31:00
(1953年の新譜から)
ブラームス「交響曲第2番」(オーマンディ&フィラデルフィア管、1953.2.15録音)
★★★★★★☆☆☆☆

またまたオーマンディの指揮に出会う羽目に。
今まで半世紀以上クラシック音楽を聴いてきて
1週間のあいだにオーマンディが振った独墺系音楽を2回も聴くという体験は
絶対になかったはずで
これはこれで貴重な経験と言える。
前回のステレオ盤の「エロイカ」は、さすがにオケの響きが流麗で感心させられたものだが
今回はモノーラルということもあり、その点でオーマンディが苦心したはずのサウンド作りを
堪能するまでには至らなかったというのが正直なところ。
ただし、ブラームスのなかでも超古典的な構成であるこの「第2番」において
オーマンディの手堅い音楽作りの一端は窺えたように思う。
とにかく余計なことは一切せず、淡々と楽譜に向き合い、忠実にその通りに音を鳴らしていく
こういう指揮者は他に存在しないのではないか。
唯一、響きを華麗に流麗に、という個性のみが感じられて
しかし、その響きを何か意味深いものに持ち込む意図は全くないという不思議さ。
1953年の日本において、響きそのものだけでも感動を覚えたかもしれないが
これほど情報が増えて多彩な表現を簡単に知ることができる2022年の現代では
このオーマンディのような演奏を高評価することは難しいはずである。
(ただし、もはや死語文化のようなベートーヴェンの音楽に関しては
 混迷のイメージを払拭する見事な響きこそ意味を持つという逆説も成り立つ、ということか・・・?)
このブラームスに関しては、残念ながら★6つの低評価とした。

147korou:2022/02/19(土) 13:22:44
(1967年の新譜から)
ブルックナー「交響曲第3番」(シューリヒト&VPO、1965.12.2〜4録音)
★★★★★★★☆☆☆

再びステレオ録音が聴きたくなり、次の該当曲はとリストをたぐってみると
またまたオーマンディのベートーヴェン「第7」「第8」!
ワルター&NYPの硬質な音色のモノーラル、またはオーマンディのモノorステレオの連続!
これはちょっとイレギュラーで敬遠したくなり
その次のステレオはと覗いてみるとシューリヒトのブルックナー。
へぇー、まだこの年代でも録音していたんだと思い
少々長い曲だがチャレンジしてみることに(大げさか)。

シューリヒトの最後の録音のようで
体調はボロボロ、オケをろくにリードできなかった風に
ユンク君は書いている。
確かに第1楽章はあまりシューリヒトらしい鋭さがなく、音が平板に鳴っているように聴こえる。
しかし(ユンク君も指摘のとおり)第2楽章の寂寥感には胸を打たれるものがあり
一度この透明感を体験すると、続く第3楽章、第4楽章も
いくらか無力感は感じるものの、それほど平板な感じはしなくなってきたのも事実。
むしろ、VPOの美しい音色がステレオで響き渡り
いつになく豊かな音質で録音されていることに気付いたりする。
シューリヒトの第2楽章、VPOの第3、4楽章を堪能する演奏だ。
深い何かを感じさせてくれるのが第2楽章だけというのが惜しいので
★は7つ(普通の出来)に止めるが、いわゆる不出来でも愛聴盤という類。
また聴く機会はきっとあると思う。

148korou:2022/02/20(日) 12:28:59
(1953年の新譜から)
ブラームス「交響曲第4番」(ワルター&NYP、1951年録音)
★★★★★★☆☆☆☆

ワルターの個性とブラームスの音楽には親和性が高いのだが
多分、これほどその期待を裏切った例はないのではないか。
これはワルターとしては最悪の演奏である。
第1楽章のどこを切り取っても繊細なフレージングが見られないのには驚かされ
それは第2楽章になっても変わりない。
あまりに酷いので、第3楽章途中からイヤホンで聴くのをやめて
スピーカー出力にしたのだが
たしかにこのくらい大雑把に音を把握したほうが聴きやすい。
考えてみれば、ステレオ録音による優れたブラームスの演奏を聴き続けた結果
かつて聴いたモントゥーやワルター&NYPによるブラームス「第2」などの名演なども
今聴くと案外感動の度合いが低くなっているのではないだろうか。
ブラームスは本当に繊細で
かつその繊細の度合いが高まっていった結果の高揚感なのであり
それは各楽器の音の絡まりが明晰に聴こえてこないと味わえないはずである。
このワルターにしても、演奏そのものはもっと繊細だったのかもしれないが
この録音では(モノラルとしては決して悪くはないレベルだが)伝わってこないのである。
そして、この時期特有の表面的な磨きだけが如実に伝わってきて
晩年のワルターとはあまりにも違い過ぎて、受け入れ難い演奏に聴こえるのである。
ユンク君はある意味高評価を与えているが、残念ながら同意できないので★6つ。

149korou:2022/02/21(月) 12:34:48
昨夜からUSB接続部分の高頻度の脱着による摩耗を恐れることなく
ウォークマンによるクラシック音楽鑑賞を開始することにした。
ユンク君サイトのMP3データベースにログインして「Symphony」ジャンルで検索、最上位結果から順番に視聴。

(ナイトミュージック第1弾)
ドラティ&ロンドン響 チャイコフスキー「交響曲第5番」

どの楽章の冒頭も十分に意味深く、ドラティは凄いなと思わせるのだが
いざ曲の本題に入ると、その意味深さがどこかへ消えてしまうという惜しい演奏。
録音の精度は素晴らしく(これはユンク君の解説を後から読んで納得)
特に第2楽章のホルンの音色など、チャイコ「第5」でこれ以上のものはあるのかと思えるほどの美しさ。
あくまでもロンドン響の実力を堪能する演奏で、
その一方で指揮のドラティには
職人に徹し過ぎていて不満が残る。

151korou:2022/02/21(月) 12:39:47
↑ 訂正

”「Symphony」ジャンル”じゃなくて
”「Symphonic」ジャンル”だった。

152korou:2022/02/21(月) 13:37:03
(1953年の新譜から)
モーツァルト「アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク」(カラヤン&VPO、1949年録音)
★★★★★★★☆☆☆

カラヤンが帝王になる前の時期の演奏で
この時期どのような評価がされていたのか興味深いが
「レコ芸」の当時の文章からはなかなか読みづらいものがある。
注目すべき指揮者なのに、どう高評価すべきか分からないといったような
戸惑いもあるようだ。
しかし、この演奏に関していえば
当時はプロの評論家にとっても神のような存在だったはずのVPOが
実に綺麗なアンサンブルを聴かせてくれているので
文句なしの最上の演奏と書かれている。
カラヤンの棒は未だ没個性的で
これなら他の指揮者でもいいのではないかと思えるほどだ。
VPOが非凡なのでカラヤンの平凡を補って★7つの出来かな。

153korou:2022/02/21(月) 13:56:15
(1953年の新譜から)
レスピーギ「ローマの祭り」(トスカニーニ&NBC響、1949年12月12日録音)
★★★★★★★★☆☆

言わずと知れた歴史的名演奏で
今回も、馴染の無い曲とはいえ、これほど聴き映えする演奏だったのかと
再認識させられた。
トスカニーニの素晴らしいしNBC響のアンサンブルも驚異的で
これが鮮明なステレオ録音だったらどれほど凄かっただろうかと
叶わぬ思いにとらわれる。
本来なら★9つ、または満点でもいいくらいなのだが
さすがにこれほど演奏効果のある曲については
最新の録音で聴きたいので
仕方なく★8つとした。
まあ、内容は軽い曲なんで、いつも聴きたいかと言われれば
首を振るしかないのだけれど。

154korou:2022/02/22(火) 14:41:49
(1953年の新譜から)
グリーグ「ピアノ協奏曲」(リパッティ、ガリエラ&フィルハーモニア管、1948年録音)
★★★★★★★★★★

リパッティ、夭折したピアニスト、だが天才、それも超がつく大天才なのに
誰からも愛され、尊敬され、敬われた人。
この演奏からは、そんな彼の高貴で純粋な魂があふれ出てくるようで
聴いていて絶えず胸を打たれ、もう批評の余地などないほど感動してしまう。
何がどうなっているのかもはや分からないのだが
リパッティが鍵盤を叩いただけで何かが違って聴こえ
世界は美しく輝き出すのだ。
これ以上何が言えよう。
★満点以外はない。

(1953年の新譜から)
シューマン「ピアノ協奏曲」(リパッティ、カラヤン&フィルハーモニア管、1948年4月9,10日録音)
★★★★★★★★★★

これも詩情溢れる名演。カラヤンのきびきびした伴奏ぶりも見事。
シューマンは見かけの穏やかさ、ロマンティックな装いとは裏腹に
どこからともなくしのびよる孤独の影が否定し難く
リパッティはそんな暗い影を巧まずして表現し得ているようで
これも奇跡の演奏というほかなし、★満点というほかなし。

156korou:2022/02/22(火) 21:03:54
(ナイトミュージック第2弾)
ドラティ&ロンドン響 チャイコフスキー「交響曲第3番」

書き忘れていた。
というより、昨日は聴いているうちに寝込んでしまっていた。
非常にシンプルな曲で、交響詩のような感じ。
ドラティの演奏は、そんな浅い感じの曲を上手く演奏していた。
もう1回聴かないとダメかも。

157korou:2022/02/23(水) 16:30:18
(1953年の新譜から)
モーツァルト「フルート協奏曲」(モイーズ、ビゴー&パリ音楽院管、1936年録音)
★★★★★★☆☆☆☆

演奏は大層立派で、近代フルート奏法の祖の名に恥じないと思うが
さすがに1936年録音ともなると、音のヌケがイマイチで
その雰囲気ほどには感銘を受けないのも事実だ。
曲そのものは予想以上に各所がまとまっていて
聴き応えのある佳曲だと思った。
第3楽章は聴いたことのあるメロディで
このメロディがこの曲だったのかという感じ。

(1953年の新譜から)
モーツァルト「ピアノ協奏曲第21番」(カサドシュ、ミュンシュ&NYP、1948年12月20日録音)
★★★★★★★★☆☆

聴き慣れていないフルート協奏曲の直後に聴いたので
この曲、というかモーツァルトの中でピアノ協奏曲というジャンルが占める大きさといったものを
如実に感じてしまった。
カサドシュのピアノは明晰そのもので曖昧な部分は一切なく
まるでベートーヴェンの曲のように力強いタッチで弾き上げている。
ミュンシュの指揮も、そんなカサドシュのピアノに寄り添った感じ。
なんといっても、曲の良さを伝えている点で最上の演奏の一つだと言えよう。

158korou:2022/02/23(水) 16:31:32
(ナイトミュージック第3弾)
セル&クリーヴランド管 マーラー「交響曲第4番」

またしても途中で寝てしまった。まあよくある話だが。
ドラティともども、聴き直しかな?

159korou:2022/02/24(木) 13:30:45
(ナイトミュージック第2弾)を聴き直し。
ドラティ&ロンドン響 チャイコフスキー「交響曲第3番」(1965.7.30〜31録音)

やはり未知の曲は昼間Wikiでも見ながら鑑賞しないと
訳が分からないまま終わってしまう。
たった今聴き終わり、意外と長いこの初期最後の交響曲が
しっかりとした構成と曲想を持っていたことが判明した。
ドラティの指揮はすっきりとしていて、実に聴き易い。
ただし「第5番」の時と同様、全体として”当たり前”の指揮で終わっていて
そのあたりはセルとかショルティなどと同じ部類で
そこからいろいろなニュアンスを聴き出すクラシック音楽ファンとは
自分は同じでないので、これを聴き続けることは難しい。
特にこのような未知の曲では
最初に構成をつかむのには最適だが
以降は、曲自体の深さにも聴き及んでくるので
そうなると、もはやお役御免ということになる。

セルのマーラー「第4」は
それなりに面白いし、演奏自体は立派だし
データとして保存したので、これ以上聴くことは止めにする。
ナイトミュージックは、以降既知の曲に限定したい(すぐ評価したいので。途中で寝ても、知っている曲なら評価可能だから)

160korou:2022/02/24(木) 22:59:20
(ナイトミュージック)
☆未知の曲(スルー)
マゼール&VPO「チャイコフスキー 交響曲第3番」
モントゥー&ロンドン響「シベリウス 交響曲第2番」

161korou:2022/02/25(金) 18:17:11
(ナイトミュージック)
ドボルザーク「交響曲第8番」(ジュリーニ&ロンドン響)

これは予想通りの名演。たっぷりと歌って、構成もしっかりとしていて
ジュリーニの指揮の美点がよく出ている。
PCの”ミュージックークラシック”フォルダ内に保存した。

(気まぐれなデイ・ミュージック)
時として、何の脈略もなく特定の曲、演奏を聴きたくなることがあり
今日はコロナワクチン直後の体調不良で、無性に豪快なオケの音を聴きたくなり
結局、ホルスト「惑星」(カラヤン&VPO9を鑑賞。
1961年当時としては録音が抜群で、同じく最新録音のレヴァインよりも音楽的に精緻なので
この曲の推薦盤としてボールトから変更した。

162korou:2022/02/26(土) 11:32:20
(1953年の新譜から)
サン=サーンス「ヴァイオリン協奏曲第3番」(フランチェスカッティ、ミトロプーロス&NYP、1950年1月23日録音)
★★★★★★★☆☆☆

ロマン派のヴァイオリン協奏曲としては著名な曲らしいが
今回初めて聴いた。
確かに予定調和の調性のなかで、ヴァイオリンがヴィルトゥオーゾ的弾き方で堂々と弾きこなす
典型的な19世紀音楽のように思われた。
フランチェスカッティのヴァイオリンは情熱的で特徴のある弾きっぷりで
それでいて確信にも満ちているので、聴いていて飽きることはない。
ただし、曲がいかにもという感じなので
これだけの名演であっても感銘度は薄いのは仕方ないところ。
★7つとした。

今回などの感じから
これからは協奏曲のジャンルは飛ばすことにした。
交響曲と管弦楽曲に絞って聴き続けたい。

163korou:2022/02/27(日) 16:02:07
(ナイトミュージック)
ブラームス「交響曲第1番」(カラヤン&VPO)

全体にレガートがきつすぎて
部分的にブラームスの音の作り方に合致している部分もあるが
クライマックスでの音響の弱さを感じる面もある。
この曲の場合、どうしても力感が必要になるので
カラヤンの場合、録音だと実演のときのような演奏意志が発揮されず
かなり損をしているように思われる。
なかなか評価が難しいのだが
ベストの演奏としては選べないのは確か。
ベストとしては他にもっと良い演奏があるので。
とはいうものの、レガートがブラームスが作り出す音形に合っている部分とか
60年代前半のカラヤンに共通して感じられる演奏意志が
それはブラームスの音楽が要求しているレベルのものではないにせよ
感じられる点で
他の無難なだけの演奏とは一線を画していることだけは確かだ。

164korou:2022/02/27(日) 16:29:04
(ナイトミュージック)は、自分の好きで聴いているわけで
しかも安眠用という目的もあり
最初に決めた原則をコロコロ都合よく変更して
何ら差し支えない類のものである。

今回、次のような原則に変更することにした。
(原則3)モノーラルの年代は原則飛ばす(あくまでも原則)
(原則4)同じ指揮者のものを連続してチョイスしない(参照するリストが同じ指揮者が並ぶようになっているので念のため)

今までの原則は次のとおり。
(原則1)知らない曲はチョイスしない。
(原則2)すでに聴いた演奏は原則飛ばす(あくまでも原則。聴いていてもよく覚えていないものは除く)

165korou:2022/02/27(日) 16:37:46
(1954年の新譜から)
ベート―ヴェン「交響曲第1番」(トスカニーニ&NBC響、1939年10月28日録音)
★★★★★★★★☆☆

1939年の演奏が、15年かかってLPとして?新譜扱いになるとは
さすがに戦争の影響なのか。
録音状態は悪く、これは年代を考えると仕方ないのだが
1939年でも抜群の音質のものも現に存在するので
トスカニーニの指揮となれば
もっとどうにかならなかったものかと残念になる。
それこそ録音状態さえ良ければ
これは文句なしの★満点の演奏で
★8は、録音の悪さゆえの減点2であり
演奏そのものは神がかりというか
これ以上、ベートーヴェンのシンフォニーとしてふさわしい響きは
考えられない。
やはり世紀の大指揮者だ。

166korou:2022/02/27(日) 17:11:13
(1954年の新譜から)
ベート―ヴェン「交響曲第5番」(ベーム&BPO、1953年3月23日〜25日録音)
★★★★★★★☆☆☆

立派な演奏であることは間違いない。
しかし、聴いていて眠くなるのも事実。
立派過ぎてついていけないという感じもあるし
もう少し何とかやりようはあるだろうという不満も残る。
でも、どういうのがいいのかとなると
この演奏にさらにプラスするものが存在するのかといえば
すぐには思いつけない。
基本、立派な演奏なのだから
下手に批評すると無意味な見解になってしまう。
この時期のBPOには
どことなくフルトヴェングラー時代の凄みを連想させる音色があり
それが壮年期のベームの堂々たる指揮ぶりと相俟って
実に堅固な音楽となっているのだが
あまりに曲の本質をとらえすぎていて
かえって細部の美しさとか
ベートーヴェンの音楽の別の本質かもしれないユーモア、軽妙さなどが
全部消されているかのような演奏に聴こえるのである。
ここにないものがワルター&コロンビア響の演奏にはあるわけだ。
というわけで、★7つの標準的な評価となった次第。

167korou:2022/02/28(月) 13:35:34
(1954年の新譜から)
ベート―ヴェン「交響曲第6番」(エーリッヒ・クライバー&AC管、1953年9月録音)
★★★★★★★★☆☆

録音状態は、弦の響き具合などはまずまずながら
いかにモノーラルとはいえ、これほど真ん中に音が集まり過ぎて
広がりがない音質というのも珍しいくらい。
アムステルダム・コンセルトヘボウ管なので
それでも細部の美しさなどは伝わってくるものの
名演だけにこの音質は惜しい。
第1楽章、第2楽章は信じられないというか、奇跡的な超名演だ、
第1楽章の溌溂としたリズム、第2楽章のゆったりとしたテンポが醸し出す雰囲気などは
E・クライバーが20世紀最高の指揮者であることを証明している。
誰にも真似できない至高の音楽である。
それに比べると、第3楽章以下は平凡で
そこのギャップが大きくて★8つに止めたのだが
「田園」の前半だけを堪能するのであれば
断然この演奏だろうと思われる。

168korou:2022/02/28(月) 13:38:32
(ナイトミュージック)
ベートーヴェン「交響曲第9番」(クリップス&ロンドン響)

クリップスの指揮は揺るぎない。
音楽の勘所を心得ていて
変わったことは一切しないのだが
印象に残る演奏となっている。
ロンドン響も相変わらず上手い。

169korou:2022/03/01(火) 12:15:42
(1954年の新譜から)
ベルリオーズ「幻想交響曲」(モントゥー&サンフランシスコ管、1950年2月27日録音)
★★★★★★★★★☆

もう35年以上この曲のベストと思っている演奏を
あらためて最初から最後までしっかりと聴いてみた。

そうして聴いたおかげで今回分かったことは
このモントゥーの指揮でこの曲を聴くと
曲の構造が手に取るように分かるということだった。
このフレーズから次の展開になりますよと
丁寧に教えるかのように
そこの部分を強調して聴かせてくれるので
今までぼんやりとしか把握できていなかった曲の流れが
明確に分かってくるのだ。
特に第1楽章のフレージングなど
他の指揮者では聴くことのできない名人の芸術だろう。
その一方で、そうしたフレージングに不向きに第3楽章などは
それほどの感銘は受けず
また第4、第5楽章などは
むしろオケの積極的な音出し(音力?)のほうが目立ってくるのも事実。
”通俗的になるきらいがある”という当時の評価も
その点を指しているのだろうが
自分などには、むしろ安心して聴けて良い面ばかりに聴こえた。
全体として★9つが妥当だろう。

170korou:2022/03/02(水) 09:58:38
(ナイトミュージック)
チャイコフスキー「交響曲第6番」(フリッチャイ&BPO)

フリッチャイの1959年の指揮ということで
結構期待するところがあったのだが
この曲に関しては、録音がすっきりしないこと、BPOが意外と冴えないこと等もあって
それほど感銘を受けなかった。
ユンク氏の文章を読んで、1953年の演奏もあることを知り(サイトでは逆にその1953年盤のみがアップされている)
それも聴いてみたが
オケがRIAS響というBPOよりランクが下のオケであるにもかかわらず
むしろそっちの方がスムーズに曲想が展開しているように思われた。
何事も思い込みは禁物で
フリッチャイなら何でも晩年のほうが傑作というわけでもないようである。

171korou:2022/03/02(水) 10:53:58
(1954年の新譜から)
ブラームス「交響曲第1番」(ベイヌム&AC管、1951年9月録音)
★★★★★★★☆☆☆

冒頭から貧相な音質でがっかりさせられるのだが
演奏は質素かつ堅固というべき中身の充実した
紛れもないこの時期のベイヌムの輝かしい演奏なので
音質は我慢して聴いていると
第1楽章の再現部の重厚な音、これこそソナタ形式であるべき理想の演奏の形ではないかと
思われるほどの充実した音作りに感心させられた。
その後、そのときの感心というか感動に至るまでの瞬間は訪れなかったが
それでもどこを切っても血潮に満ちているような生命感の輝きは失われず
ベイヌムが非凡な指揮者であったことを十分に窺わせる佳演であることには
間違いないと思われた。
★8つでもいいのだが
いかんせん音質が酷く、この頃のAC管の美しい音色が全く採れていない録音なので
残念ながら★7つとしたが
演奏そのものは★9つでもいいほどのハイレベルだ。
1958年にも同じ組み合わせでステレオ再録しているのだが
この演奏は冒頭から緩やかで緊張感に乏しい感じで
少なくともこの曲の演奏としては出来が落ちるように思われた(全部は聴いていないが)

172korou:2022/03/03(木) 12:12:44
(1954年の新譜から)
ドボルザーク「交響曲第9番」(トスカニーニ&NBC響、1953年2月2日録音)
★★★★★★★☆☆☆

第1楽章冒頭の響きからして、かなり粗悪な録音ということが分かるのだが
これでも、ユンク氏によればかなり改善された響きらしい。
これよりまだ粗悪なものが、トスカニーニの演奏として出回っていたのだとしたら
それは正しい評価をせよというほうがムリな話だ。
今回はその響きを最初我慢して聴いていたのだが
第1楽章の途中から耳が慣れていき
すると、響きの奥底から、純粋に美しいフレージングによるメロディが浮き上がってくるようで
新世界とはかくもリリカルな響きも持っていたのかという
発見にもつながったのである。
もっとも、本当はもっと肉付きの良い解釈と響きで聴くべき曲であるはずなので
このトスカニーニのアプローチは、トスカニーニのように徹底してこそ許されるべきものであって
あくまでも異形の美しさなのである。
そういった諸々の思いを総合して
あえて普通の評価(録音の問題が一番大きいが)★7つとした。
聴くべきものが多い★7つということで。

173korou:2022/03/03(木) 15:11:18
(1954年の新譜から)
ハイドン「交響曲第88番」(フルトヴェングラー&BPO、1951年12月5日録音)
★★★★★★★★☆☆

久々にじっくり聴くフルヴェン、しかもお初に聴くハイドン。
想像以上に豊かな音質で、
あたかもウイーン風情緒まで聴こえてくるような感じには驚かされた。
演奏はユンク氏ほか絶賛の内容で
確かにフルトヴェングラーの晩年のスタイルとして
これ以上のものは考えられないのだが
ハイドンの音楽のなかの何かごく一部の要素を
思いっきり拡大して、その良質な部分を見せてくれたという
いわゆる異形の演奏のイメージは否めない。
これは聴く前から予想できたことで
そもそもハイドンをフルヴェンで聴くこと自体
異例な音楽鑑賞なのだから。
それでも純度は高い演奏で
★8つが妥当ではないかと思う。

174korou:2022/03/04(金) 15:16:43
(1954年の新譜から)
モーツァルト「交響曲第40番」(ワルター&NYP、1953年2月23日録音)
★★★★★★☆☆☆☆

ワルター&NYPの演奏に関しては
今現在の自分の嗜好と全く正反対の位置にあるために
正しく評価することは難しい。
どうしても後年のコロンビア響との円熟の演奏と比較してしまうわけで
あの細部にまでニュアンスが神のごとく行き届いた演奏を知ってしまうと
この時期の演奏にはどうしても不満が残るのである。
NYPの音が大雑把に聴こえてしまうのは仕方ない。
本当はいろいろとニュアンスが伝わる演奏だったのだろうし
当時の批評もそういう感じで書かれているのだが。
厳しいようだが自分の感銘度からして★6つ。
(第3楽章だけは、この演奏のほうが毅然としていて良いのだが)

175korou:2022/03/04(金) 15:49:30
(ナイトミュージック)
フランク「交響曲 二短調」(バーンスタイン&NYP)

第1楽章冒頭は意味深げな音の響かせ方で期待をもたせるが
主部に入るとその緊張感は消えてなくなり
それはそれで面白い音響の展開ではあるのだが
統一性はみられない。
第2、第3楽章については
それほどの個性は見られない。
いたるところにバーンスタインの個性は発揮されているので
レニー好きの人には満足できるが
それ以外の人に何らアピールしない演奏のように思われる。
それに、この隠れた名曲には、もっと優れた演奏がいくつか存在するので
そのレベルにまで達しているようにも思えない。

176korou:2022/03/05(土) 23:14:30
(ナイトミュージック)
シューベルト「未完成」(マゼール&BPO)

特に不満な点はない演奏だが、かといって、いつも愛聴すべき演奏かと言われれば
それも違うということになるだろう。
BPOの上手さとか、すでに老成したかのような無難な指揮ぶりとかは
すぐに伝わってきたのだが
その他の点については(眠る前に聴いているせいもあって)判然としない。

177korou:2022/03/06(日) 14:50:36
(1954年の新譜から)
プロコフィエフ「交響曲第7番」(オーマンディ&フィラデルフィア管、1953年4月26日録音)
★★★★★★☆☆☆☆

始めて聴く曲で、ジダーノフ批判以後の作品ということから
あくまでも音の響きが伝統的な調和のとれたものという特徴を持っているようだ。
しかし、もともと独特の感性で音響を造形してきたプロコフィエフにとって
こうした”一見当たり前な曲”を作曲するということは
どういう意味があったのかという極めて素朴な疑問は拭えない。
ショスタコーヴィチには、辛うじて”叙情”という個性が残っていて
それが「交響曲第5番」という傑作を生んだように思うのだが
プロコフィエフには、伝統的な音楽を創る必然性は何一つなかったと言えるのでは?
もっとも、何の知識もなく、ただ実際に曲を聴いただけのことなので
これ以上の思考は深められないので、感想はここまで。
オーマンディの指揮は、スコアを音のしただけのことで
上記疑問について何も示唆するものはなかったと思われる。
よって★6つ。

178korou:2022/03/06(日) 15:08:40
(ナイトミュージック)
シューベルト「グレイト」(スクロヴァチェフスキ&ミネアポリス響)

グレイトは難しい。どこもこれといって欠点のない演奏なのだが物足りない。
今、たまたま次回聴く予定のフルトヴェングラーの演奏も冒頭だけ聴いたが
これも冒頭が上手くいっていない。
この曲を演奏して上手くいく人は選ばれた人なのだろうと思う。

179korou:2022/03/06(日) 15:17:17
ナイトミュージックのネタ元を”Symphonic”にして
前掲の原則通り聴いていたら
もう全部の指揮者を聴いてしまったので
次回からネタ元を”Symphony”に変更。
原則として、聴きたいものを聴く、できればステレオ録音、という程度に
とどめることにした。

ということで、次回は
シューリヒト&VPOでブルックナー「第3」

180korou:2022/03/07(月) 14:29:02
(1954年の新譜から)
シューベルト「交響曲第9番」(フルトヴェングラー&BPO、1951年12月録音)
★★★★★★☆☆☆☆

フルトヴェングラーの全録音のなかでも最高傑作とも言われる名演なのだが
今の自分の音楽嗜好と正反対な演奏なので
ずっと退屈し、かなりの部分を居眠り寸前で聴いていた。
全くニュアンスが感じられず、哲学的な韜晦ポーズで楽員をリードしているかのような演奏に
親しみ、優しさなどのシューベルトらしい美しさ、可憐さなど
どこへ行ったかのかというような感じだ。
勢いで演奏してもある程度は問題ない終楽章のみ
聴くに値するエネルギー、熱さのようなものが感じられるが
それにしても他の指揮者でも代替可能な演奏に思える。
かつては、部分的に聴いて十分に感動し
またユンク氏のページでもいろいろな人が「素晴らしい」と絶賛しているのだが
今の自分には全く無縁なことになってしまった。
★6つがギリギリのところ。

181korou:2022/03/07(月) 14:41:04
(ナイトミュージック)
ブルックナー「交響曲第3番」(シューリヒト&VPO)

シューリヒトにしては、やや燃焼度の低い演奏で
いつものような一気に音楽の急所をつかんで聴く者を異世界にいざなうといった爽快さは薄いものの
それを補うかのようなVPOの美しい音響を堪能できるので
これこそステレオ録音で本当に良かった。
病身をおして録音を実現してくれたシューリヒトに感謝である。
それにしても、ワルターにしてもシューリヒトにしても
晩年に至るまで、クオリティとしては万人向けではなくなっているとしても
それはそれなりに天才のゆえんをみせてくれるのには感謝するほかない。
凡人の指揮者にはできないわざである。
これは保存版の演奏。

182korou:2022/03/08(火) 17:43:52
(1954年の新譜から)
シューマン「交響曲第4番」(フルトヴェングラー&BPO、1953年5月14日録音)
★★★★★★★★★☆

これはフルトヴェングラーが超一流の指揮者であったことを証明する演奏だ。
「グレイト」ではあれほど見当違いな方向へ音楽を展開していったのに
ここでは、この曲をこれ以上見事に聴かせることはもう不可能なのではないかと思えるほど
決定的な名演を行っている。
「グレイト」同様、指揮者とオケの息はピッタリと合い
それが曲想の掘り下げにストレートに直結して
解釈がどんどん深いものに達していく。
この曲の本当の姿はこれほど深いものなのかと驚かされるほどだ。
これで録音さえ最新であったら感動で涙が出るのではないか。
演奏は★満点、録音のことだけで1点マイナスしたが
それは途中までの話で、後半などは満点でも良いくらい。

183korou:2022/03/08(火) 17:48:08
(ナイトミュージック)
モーツァルト「交響曲第41番」(シュミット=イッセルシュテット&北ドイツ放送響)

夜寝る前にモーツァルトを聴いてはいけないことが判明。
鮮やか過ぎて目が覚めてしまう。
演奏は普通。でも普通に演奏できれば上出来、モーツァルトだから。
保存するかどうか迷うレベル、まあ覚えておいて、後日考えるか。

184korou:2022/03/09(水) 13:49:19
(1954年の新譜から)
シベリウス「交響曲第5番」(カラヤン&フィルハーモニア管、1952年7月録音)
★★★★★★★★☆☆

始めて聴く曲で、全体に旋律らしい旋律がない交響詩のような感じなので
なかなか馴染めなかった(かつてだったら退屈して途中で寝ていたかも)。
カラヤンの指揮はさすがで、このまとめにくい曲想の交響曲を
手際よく緩急、強弱をつけて
聴き易い形にまとめていた。
名演ではあるが、★9つ以上にならないのは
もっぱら当方の能力のせいで
曲自体が馴染にくいことと、録音のせいで音にふくらみに乏しいことが原因。
60年代の再録音のものを何回も聴けば★9つかもしれないが
今日この音質のものを聴けば★8つが精一杯。

185korou:2022/03/09(水) 13:53:07
(ナイトミュージック)
ブルックナー「交響曲第9番」(カラヤン&BPO)

これはブルックナーの演奏としては特異な部類だが
その特異さのなかで際立っているので
どうしても外せない演奏となっている。
これほど表面だけを磨きながら
何故か内面にまで訴えてくる演奏も珍しい。
要保存。

186korou:2022/03/10(木) 10:02:34
(1955年の新譜から)
ベートーヴェン「交響曲第3番」(トスカニーニ&NBC響、1953年12月6日録音)
★★★★★★★☆☆☆

トスカニーニ最晩年の録音。
演奏は、従来のトスカニーニの流儀に沿いながら
それでも随所に中庸の美のようなものを感じさせて
なかなか微妙なニュアンスを漂わせる出来となっている。
第1楽章は彼ならばもっと出来るのでないかと思える不完全燃焼のような演奏で
さすがに年齢を思わせるが
第2楽章は最適とも思えるテンポ設定と
意外なほどのニュアンスの込め方、トスカニーニとしては最上の録音の良さで
各楽器の響きにもふくらみが感じられ
これほどスッキリとこの楽章を最後まで聴き切ることができたのは
なかなか無いのではないかと思えるほどの好演だった。
第3楽章以下はトスカニーニが天才を発揮できる音楽ではないため
普通と言えるかもしれない。
全体として、この種の音楽をこのスタイルで聴くとするならば
もっと最新の音質で聴きたいという欲求がどうしても出てくるわけで
もはやトスカニーニのせいではないが
★7つという普通の感銘度の評価をせざるを得ない。

187korou:2022/03/10(木) 10:21:46
(ナイトミュージック)
モーツァルト「交響曲第40番」(ベーム&BPO)

寝る前のモーツァルトはNGのはずだが、ベームなので聴いてみた。
予想通り手堅い演奏で、寝る前なのに違和感ナシ。
要保存。

いろいろ選んでみても、やはり順番に見ていくのと
実際に聴いてみたい曲とが一致しない違和感は出てしまうので
本当に聴きたい曲最優先で選ぶことにした。
というわけで、次回はヨッフムのブルックナー「第8」

188korou:2022/03/10(木) 14:55:37
(1955年の新譜から)
ベートーヴェン「交響曲第3番」(フルトヴェングラー&VPO、1952年11月26、27日録音)
★★★★★★★★★★

一日に2度、続けて「エロイカ」を聴くなんて暴挙だが
今回に関しては最高だった。
トスカニーニも名演だった(はず)だが
残響の少ないモノーラル独特の薄い音質の録音のせいで
フラストレーションも溜ったのだが
このフルトヴェングラーは
また全然違ったアプローチでベートーヴェンの真髄に迫り
音質は遥かにトスカニーニ盤を上回るので
完璧な感動を得ることができたのだ。
解釈は申し分なく、ベートーヴェンの魂がすぐそこまで感じられる。
指揮者もオケも、もはや機械的なリハーサルなど全く必要なく
過去数十年で知り尽くした関係で
ひたすらその時点でのベストになるよう、心技体すべてを集中して
作曲者の考えた音楽を最大限に再現しようとしている。
これで最上の演奏にならないわけがない。
誰が聴いても★満点のはず。

189korou:2022/03/11(金) 17:00:29
(ナイトミュージック)
ブルックナー「交響曲第8番」(ヨッフム&BPO)

大体予想通りの常識的なラインで考えられる限りでの歴史的名演。
ただし、夜寝る間際にこの演奏を聴くと
緩徐楽章での熱っぽいフレージングが
宗教的な畏れのようなものを連想させて
なぜか「怖い」と思ってしまったのも事実。
そんな感情をヨッフムの演奏に対して、ブルックナーの曲に対して抱くこと自体
全くの予想外だった。
本当に怖かった。

190korou:2022/03/11(金) 17:07:06
(1955年の新譜から)
マーラー「交響曲第1番」(ワルター&NYP、1954年録音)
★★★★★★☆☆☆☆

やや順番を変更して、マーラーを聴いた。
ワルターの旧盤だが、ひょっとしてマーラーなら、あの旧盤全般にみられる
堅い鋼のような演奏スタイルでも大丈夫かなと思ったのだが
その期待は裏切られたようだ。
やはり、すべてにおいて素っ気ない。
晩年のワルターが示した箴言、啓示に満ちた演奏ではなかった。
まっすぐにアンサンブルの勢いを噴出させ
そうした分だけ細部のニュアンスは全く無視され
トスカニーニの劣化版のような中途半端な演奏になっている。
★6つが妥当。
(もちろん、ワルターは★6つが普通の指揮者ではないのだが・・・)

191korou:2022/03/12(土) 15:46:49
(1955年の新譜から)
ベートーヴェン「交響曲第6番」(カラヤン&フィルハーモニア管、1953年7月9,10日録音)
★★★★★★☆☆☆☆

ベートーヴェンの音楽とは全く対照的な演奏様式の持ち主であるカラヤンが
若き日に、その様式を確立させる前の段階でベートーヴェンを解釈した演奏。
あまりクセのない演奏なので、こういう演奏を嫌う人は少ないかもしれないが
逆に個性があまりに感じられない分、支持も少ないはず。
「田園」なので、個性の薄さはそれほど致命的ではないし
部分的にはおやっと思わせる箇所もあるのだが
全体としては聴くに値しない平凡な出来。
厳しい評価かもしれないが★6つ。

192korou:2022/03/12(土) 16:22:28
(1955年の新譜から)
ベートーヴェン「交響曲第5番」(フルトヴェングラー&VPO、1954年2月28日、3月1日録音)
★★★★★★★☆☆☆

「英雄」の名演と比べて、この「運命」は
曲の性格の問題もあるのだが、それはさておき
やはり迫りくる死期の影響のせいか
演奏全般に、何か徹底したものが欠けているような気がする。
もっと鬼気迫るものが表現できたはずなのだが。
録音のせいか音質がやたらゴリゴリした感じで
いかにモノラルとはいえ、もう少し安定した音質にできたはずだし。
とはいえ、随所にフルヴェンらしい個性が感じられ
それはベートーヴェンの音楽そのものと一体化しているように感じられる。
最悪のコンディションで最悪の録音でも
これだけのクオリティなのだから
やはり非凡、天才指揮者というべきか。
以上勘案して★7つとした。

193korou:2022/03/13(日) 18:04:44
(1955年の新譜から)
シベリウス「交響曲第4番」(カラヤン&フィルハーモニア管、1953年7月録音)
★★★★★★★★★☆

再びカラヤン&フィルハーモニア管によるシベリウスの交響曲を聴く。
前回の第5番と比べて、この第4番はシリアスで内省的で精緻な出来だ。
そんな難解とも言えるこの曲を
それもほぼ初めて聴く自分のようなものにとって
これほど分かりやすく聴かせてくれるカラヤンという指揮者は
本当に大したものだと思う。
カラヤンはこの曲について1953年盤以降も、BPOで再三録音を重ねていて
特に1960年代のそれはこの曲の決定盤とも言える存在らしいが
この演奏もそれに負けず劣らず素晴らしいのではないかと思う(後日、機会があれば、ナクソスにあれば聴いてみたいところ)。
第5番と違って、初めて聴く曲であるにもかかわらず
さらにモノラル録音であるにもかかわらず
★9つとしたのは
直感的にもこれは類稀な名演であると認識できたからである。
ショスタコーヴィチの「第5番」のフィンランド版というか
個人的に「死」のようなものを直感せざるを得なくなった場合
その心理状態を音楽にしたら、その最上の部分はこういう音楽ではないか
という風に思えるのである。

194korou:2022/03/14(月) 11:34:12
(1955年の新譜から)
ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番」(ケンプ、ケンペン&BPO、1953年5月21日〜23日録音)
★★★★★★★★★★

ややシンフォニー続きに飽きがきたので
ケンプのピアノを堪能することに。
期待に違わぬ超名演だった。
こんなに自然にベートーヴェンを弾くことが出来た人は
ケンプ以外には居ないはず。
実演を聴いた半世紀ほど前の記憶と照らしてみても
その実感には間違いないはず。
録音は古いが、ケンプの美しいタッチは十分に伝わってくる演奏。
ケンペンとBPOが繰り出す音も重厚で剛直で
ケンプのピアノの音色と好対照だ。
今のところ、アラウとコーリン・デービス&ドレスデン国立がベストだったが
このケンプもそれに匹敵するので
決定盤のエクセルの表に追加しておこう。
文句なし★満点。

195korou:2022/03/14(月) 15:28:39
(1956年の新譜から)
ベートーヴェン「交響曲第5番」(ミュンシュ&ボストン響、1955年5月2日録音)
★★★★★★★★☆☆

思ったとおりの豪快な持ち味に加えて
想像以上のオケの上手さと録音の鮮明さがあり
最後まで退屈せず堪能できた。
細かいニュアンスで聴かせる演奏ではないが
ミュンシュの良い面がよく出ており
★8つということにした。
それにしても
1955年の録音とは思えぬ上質な音で
ステレオ録音ではないかと思うのだが
記録はモノーラルとなっている。
またボストン響の管楽器の上手さには
またまた感心させられ
第1楽章の再現部でのソロ、第2楽章でのソロなど
これほど聴き惚れたことは
最近あまり記憶にないほどだった。

196korou:2022/03/14(月) 15:32:37
(ナイトミュージック)
ブラームス「交響曲第4番」(シューリヒト&バイエルン放送響)

良い演奏なのだが評価が難しい。
録音がイマイチスッキリしないのと、シューリヒトの個性がブラームスの曲調と微妙にすれ違う感じがあって
文句なしに保存決定というわけにはいかないのである。
この曲に関しては、ヨッフム、ジュリーニ、ワルターなどが要保存であり
さらにカラヤンほか巨匠の未聴分もあるわけで
それらを再聴、確認したい気もする。

197korou:2022/03/15(火) 15:00:37
(1956年の新譜から)
シューベルト「交響曲第8番」(ミュンシュ&ボストン響、1955年5月2日録音)
★★★★★★★☆☆☆

同日録音の「運命」と同じく
オーソドックスな解釈、力強い歩みとともに
ボストン響の美しい響き、この時代としては抜群の録音状態などが聴けて
本来なら★8つでもいいくらい。
ミュンシュの個性がシューベルトの音楽と真反対なので
★7つの普通の評価としたが
場合によっては★8つに聴けることもあるだろう。
それにしてもオケが上手い。

198korou:2022/03/15(火) 15:26:41
(1956年の新譜から)
ベートーヴェン「交響曲第1番」(フルトヴェングラー&VPO、1952年11月録音)
★★★★★★★☆☆☆

いかにもフルトヴェングラーらしい音楽が現出されている。
問題は、この溌溂とした青春の香り漂う佳曲が
これほど重々しく威厳をもって演奏されても
伝わってくるものが少ないということで
後半の2楽章はその”弊害”は少ないので愉しく聴けるが
前半2楽章は、フルトヴェングラーの個性がアダになっているようだ。
もちろんダメな演奏ではないので★7つはいける。

199korou:2022/03/16(水) 15:34:21
(1956年の新譜から)
ベートーヴェン「交響曲第5番」(カラヤン&フィルハーモニア管、1954年11月9,10日録音)
★★★★★★☆☆☆☆

勢いのある演奏だが、
その反面、他には何もニュアンスがない演奏だ。
自分の演奏個性を確立させている時期の演奏だけに
その方向性については間違いなく充実しているわけだが
ベートーヴェンの楽曲の演奏としては
不足感は否めない。
聴き易いのは事実なので★7つとも考えたが
やはり★6つの出来栄えだろう。

200korou:2022/03/16(水) 15:38:01
(ナイトミュージック)
モーツァルト「交響曲第39番」(ベーム&BPO)

どこをどうやっているのか見当もつかないが
結果的には安心して聴ける、どこにも危うい点が見当たらない演奏に聴こえる。
もちろん、もう少し感情の揺れ動きが欲しい面もあるのだが
ベームにそれを求めるのは無意味だろう。
要保存。

201korou:2022/03/17(木) 14:21:23
(1956年の新譜から)
ベートーヴェン「交響曲第4番」(フルトヴェングラー&VPO、1952年12月1,2日録音)
★★★★★★★★★☆

どっしりと落ち着いた演奏で
いつもの哲学的な深みに加えて
懐かしい情感あふれる音楽が展開されているのには
驚かされる。
VPOにとってナチズムとの関連など関係なく
フルトヴェングラーのタクトのもとで演奏できる喜びが
あふれ出てきているようだ。
モノラルなので弦の響きが痩せてしまうのは仕方ないが
その点だけがこの演奏を聴く際の減点部分で
演奏そのものは★満点だ。

202korou:2022/03/17(木) 15:01:21
(1956年の新譜から)
ベートーヴェン「交響曲第5番」(セル&クリーヴランド管、1955年11月26日録音)
★★★★★★★☆☆☆

いかにもセル&クリーヴランドらしい
テンポ速めのスッキリとした演奏。
曖昧なところが全くなく
この曲はこのように表現されるものだという割り切りが
徹底している。
ゆえに「運命」の演奏として
分かりやすいことこの上ないわけだが
やはり、そこはセルの個性が好きかどうかという問題もあるわけで
個人的には、ここまで割り切った感じはどうもという思いもあり
★7つにとどめた。
好きな人には★9つでも良いくらいかもしれないが。

203korou:2022/03/18(金) 11:43:26
(1956年の新譜から)
ベートーヴェン「交響曲第7番」(フルトヴェングラー&VPO、1950年1月18,19日録音)
★★★★★★★★★★★

久々に全部をじっくりと聴いた。
前半2楽章は、最近改めて聴くことで感銘を深くした
まさにフルトヴェングラーらしい演奏で素晴らしいと思った。
ところが、第3楽章になるや否や
そんな感銘など次元が違うとばかりにさらに物凄い演奏となり
終楽章など、今まで何度も聴いてきたはずなのに
さらに新鮮に聴こえる禁断のリズムを感じ取ってしまった。
最後の最後での爆発的な熱狂の音楽、
それはベートーヴェンが楽譜に残した骨太の音楽。
さらにフルトヴェングラーが、
いろいろと工夫してテンポを意図的に早く仕掛け
主部のリズムが浮き出るように聴かせた魔法の音楽。
もはや神の領域ではないかと思えるほどだった。
クレンペラーも凄いが、フルトヴェングラーも凄い。
同じ曲なのに神が二人居る。
音楽の不可思議。
★満点、言うことなし。

204korou:2022/03/18(金) 11:46:05
(ナイトミュージック)
モーツァルト「交響曲第39番、第41番」(ワルター&コロンビア響)

ただ単に確認のみ。確認の結果、予想通りで要保存(これ以上書くことなし。理想の演奏)

205korou:2022/03/20(日) 09:27:44
(ナイトミュージック)
ブラームス「交響曲第4番」(サヴァリッシュ&ウィーン響)

出だしの響きから、これはもうサヴァリッシュとしても修業時代の演奏と分かる薄い感じ。
さすがにこれは聴き続けてはいられない(寝る前なので特に)
何が違うのかと思い、すぐにシューリヒトと比較してみた。
シューリヒトも響きは薄いのだが(オケのせいもあるがもともと響きは薄い)
そのなかで音の強弱は明確で、さらにどうやってそうしているのかわからないほど
巧みにフレージングを行っているので
聴いていて全く疲れない。
さらにヨッフムも聴いてみたが(もちろん、これも最初のほうだけの比較)
音の強弱に加えて、テンポの揺れ動きが秀逸なのである。
こちらはシューリヒトと違って、やっていることが分かりやすい。
とにかく、聴き易い演奏というものには
それなりの理由があるのだということを再認識した。

206korou:2022/03/20(日) 13:14:26
(1956年の新譜から)
ドボルザーク「交響曲第9番」(ロジンスキー&ロイヤル・フィル、1954年10月5,7,8,9日録音)
★★★★★★★★★☆☆

かつて指揮者ランク付け、名曲名演ランク付けで計2回聴いて
前者では予想以上の感銘を受け、後者では想像以下のガッカリ感を覚えたという
対照的な印象が残った演奏。
それを今回の新譜ランク付けで再度聴いたという次第だが
今回はこの演奏の真骨頂を知った感があった。
ここに流れているのは「新世界」という曲の奥底にある孤独感、寂寥感であり
それは演奏によっては豪快なだけの印象しか残らない表面的な解釈と
正反対にあるものなのだ。
とはいえ、表面的に豪快に聴ける演奏にも価値はあるのであり
つまり、表面的であろうと、深層に迫ろうと、いずれのアプローチであろうとも
優れた演奏は可能な名曲なのだろう。
そして、これは深層に迫ったアプローチでの名演だということ。
豪快な味を楽しみたいときに聴くべき演奏ではないが
深みのある「新世界」、特に第二楽章に関しては
この演奏は絶妙だと言わざるを得ない。
★8つが妥当。

207korou:2022/03/21(月) 15:16:31
(1956年の新譜から)
ベートーヴェン「交響曲第9番」(フルトヴェングラー&バイロイト祝祭管、1951年7月29日録音)
★★★★★★★☆☆☆

このところ「第9」の決定盤をどれにすればよいのか
分からなくなり迷っているところ。
ひょっとして、やっぱりフルヴェン?と思いながら
今回聴いてみたものの
退屈で何度も寝そうになった。
やはり今の自分の好みとは正反対の演奏で
音の響きは重たく、解釈も重々しく、録音も不鮮明。
かといって若き日のヨッフムの生々しい響きがベストとは言い切れない面が
この曲に関してはどうしても存在するのだから始末が悪い。
これだけ長い曲を「どうも冴えないなあ」と思いながら聴き続けるのだから
どうしても★のほうは(所々存在する感動的な表現がありながらも)
低く見積もらざるを得ない。
この演奏に★7つの平均点をつけるのは
畏れを知らない行為であることを承知で
普通の演奏と見做すことにしようか。
それにしても、早く理想の「第9」に巡り合いたい。

208korou:2022/03/22(火) 14:17:29
(1956年の新譜から)
ベルリオーズ「幻想交響曲」(ミュンシュ&ボストン響、1954年11月14・15日録音)
★★★★★★★★☆☆

1954年の録音ながら、録音そのものは最新技術だったステレオで行われ
肝心のレコード盤にステレオ録音を載せる技術がなかったために
モノーラルで発売せざるを得なかった演奏。
その後、ステレオのレコードが製作できるようになり
再度ステレオ盤として発売され
それをユンク氏がアップされたので
レコ芸の当時の目録ではモノーラル表記、ユンク氏のサイトで聴ける音源はステレオ
ということになっているようだ。
確かに、このところ聴いていたこの時期発売のレコードの音源と比べると
明らかに音に広がりがあり、かつ音質もクリアで心地よい。
しかもミュンシュが得意とする「幻想」で、オケも当時超一流だったボストン響なので
出来の悪い演奏になりようもない。
ただし、このコンビでは1962年に再度録音された盤があり
さすがにそのほうがさらに音がシャープでクリアなので
ベストの評価はしにくいのだが
前半3楽章の出来は、凡庸な指揮者では遥かに及ばないほどの
見事な演奏を見せてくれている。
後半2楽章が平凡なので、トータルでは★8つ、前半だけだと★9つはいける名演。

209korou:2022/03/23(水) 15:48:17
(1956年の新譜から)
マーラー「交響曲第4番」(ベイヌム&AC管、1951年9月録音)
★★★★★★★☆☆☆

AC管のマーラー「第4」といえば
この録音の10年ちょっと前のメンゲルベルク盤が
何とも個性的な名演を聴かせてくれたものだが
このベイヌム盤は、それと全く違うアプローチで
まさに戦後の新時代を象徴するようなマーラーを
表現していて興味深い。
全体にスッキリとした味わいのなかに
要所要所にスパイスが効いているような趣きであり
★8つは間違いない誰からも好まれる佳演と言える。
ただし、ユンク君も書いているとおり
最終楽章のソプラノは人選ミスだろう。
マーガレット・リッチーというこのソプラノ歌手は
声質がこの曲と全く合わない。
聴いていて、何か劇的なことが予感されるような声質で
少なくともこの曲に関しては、もっと穏やかな声であってほしかった。
ということで、★7つに減点。

210korou:2022/03/24(木) 12:09:27
(1956年の新譜から)
ブラームス「交響曲第3番」(トスカニーニ&NBC響、1952年11月4日録音)
★★★★★★★★★☆

トスカニーニのブラームスの演奏は
今回初めて聴いた。
多分、これは例外的な演奏ではないだろうか。
トスカニーニにしては予想以上のカンタービレ、
楽譜からはギリギリではないかと思えるほどの抑揚たっぷりの表現、
ブラ―ムスの曲を演奏するのにふさわしいテンポのゆれ、豊かな感情表現に満ちていて
これがトスカニーニだろうかと思えるほど美しい演奏になっている。
特に第3楽章の胸に迫るような哀愁の表現には心打たれるものがあった。
もうそれほど残っていないだろう現役指揮者としての歳月を思い
何か感じるものがあったのかと思わせるほどの寂寥感がにじみ出ていた。
★8つと思ったが
こうして書いてみると
いろいろと思いが高まってくるので
★9つにランクアップしておこうか。
どれほど録音がモノラルで不満足なものであっても
これは大指揮者の歴史的な名演なのだから。

211korou:2022/03/24(木) 17:48:03
(ナイトミュージック)
ワルター&コロンビア響で
ブラームス「第1」「第3」「第4」、ブルックナー「第7」

いずれもワルターの最終盤らしい落ち着いた出来で、永久保存。
ただし。ブラームス「第3」は、「第1」「第4」ほどの感銘は受けなかった。
直前に書いたトスカニーニの意外?な名演と合わせて
不思議な感じである。
ブルックナーも悪くはないのだが、部分部分に職人的な楽譜の扱いが目立ち
さすがにマタチッチの天才肌の表現と聴き比べると
ブルックナーに関してはワルターでもどうしようもない壁があるのを感じた。
ただし、職人肌の佳演としては最上級のものであるけれど。

212korou:2022/03/25(金) 10:52:24
(1956年の新譜から)
ベルリオーズ「幻想交響曲」(クリュイタンス&フランス国立管、1955年10月13,17,22〜24日録音)
★★★★★★★☆☆☆

例のフィルハーモニア管との再録の3年前にレコ―ディングされた
モノーラル盤ということになる。
ユンク君の解説を読んで、この演奏の価値について認識させられたものの
基本的にクリュイタンスのこの曲に関するアプローチが
既に自分の嗜好と真反対なものであるので
聴き始めに感じた”退屈さ”からどうしても逃れることができなかった。
さすがに全部通して聴いてみると
その”私小説としてのこの曲のストーリー”を見事に辿った佳演であることは
分かったような気がしたが
それすらもうっすらとした感想であり
本当のところは、何度も何度もこの演奏を聴いて確かめてみるしかない。
とはいえ、もはやそんなことをする熱意、根気は失せていて
それよりもミュンシュ、モントゥー型の、情熱に任せてパワー全開の演奏のほうに
心惹かれるのである、
年を取れば、こういうしみじみとした演奏、丁寧で誠実な演奏がしっくりくるのかと思っていたが
案外そうでもなかったことを知った。
実質は★8つはいけるのかもしれないが
今の自分には★7つの価値しかない(クリュイタンス!しっくり来なくても★6つはあり得ないので)

213korou:2022/03/25(金) 10:54:29
(ナイトミュージック)
ブルックナー「交響曲第9盤」(ワルター&コロンビア響)

やはり職人芸。保存はするけど、ウォークマンには入れない。
今回はジュリーニと比較してみたが
やはりジュリーニは凄い。
天才肌ではないのだが、出来た音楽は天才が為せる技のレベルになっているのは何故?

214korou:2022/03/26(土) 16:59:00
(1956年の新譜から)
ブラームス「交響曲第2番」(ベイヌム&AC管、1954年5月17〜19日録音)
★★★★★★☆☆☆☆

ブラ―ムスの交響曲のなかでも
今は一番聴かない感じになってしまったこの曲で
ベイヌムの引き締まった演奏を聴いてしまうと
もはや「退屈」しか残らなかった。
レコ芸の評価では名演とされているが
今の自分には無縁な演奏だった。
仕方ないので★6つ。

215korou:2022/03/27(日) 12:40:29
(1956年の新譜から)
メンデルスゾーン「交響曲第4番”イタリア”」(トスカニーニ&NBC響、1954年2月26〜28日録音)
★★★★★★★★☆☆

順番からいけばマーラー「大地の歌(ワルター&VPO、フェリアー他)」なのだが
この名盤チェックでは、こういう歌曲風交響曲はスルーすることにしたので
今回は、その次のトスカニーニの名盤を鑑賞ということになった。
随分前にユンク君を知ったばかりの頃に
あまり様子も分からず、トスカニーニのレコードのざらざらした残響の少ない酷い録音だけを記憶に
恐る恐る名盤という噂だけで聴いてみたところ
あまりの音質の良さに驚くと同時に
あまり聴いたことの曲のはずなのに一気に聴けたので
感動した鮮烈な記憶が残っていた。
それで、2年前に名曲チェックのときに再度聴いてみたところ
その感動はどこへやら何も心に残らなかったことに唖然としたのは
まだ記憶に新しい(結局、ナクソスでペーター・マークの演奏をベストとした)。
今回が3度目の鑑賞、さすがにトスカニーニの録音についての知識も増えたので
初回の感動、2回目の感動空振りについて
ある程度、自分で自分に説明できるくらいにはなった。
トスカニーニの晩年の録音の音質をかなり聴き込んできたので
この演奏の音質については納得できるし、かつて聴いた酷い録音との比較もできる。
その上でこの演奏の中身を聴き込んでみると
やはり名演と言わざるを得ないのだが
そこにブラームス「第3」のときにも感じたある種の諦念のようなものも付け加わってくる。
それはそれで美しいニュアンスに富んだものなのだが
この曲のベストの演奏にそれが混じると、やや評価を下げざるを得ない。
よって、今回は★8つとした次第。


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