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【妄想爆発】チラシの裏【大上等】

1名無しさん:2012/07/23(月) 20:55:39 ID:FfmC0Dnw
勝手にスレを立てさせて頂きました。

薄汚い妄想だろうが職人のSSにも満たない話など、何でも良いから書きたい事は此処に書け!

Q、何か書きたいけど投下する勇気が持てない…
A、恐れるな! 勇気と誇りを持って書きこもう! 我々はアブノーマル! どんな話(餌)にも食いつくのだからぁッ!

761適当:2013/05/18(土) 02:55:59 ID:Mu.M8Qpo
最終試練 【幻想】


Day19 【16:00】

俺は、【伝説】の番人である年老いた彼と狙撃対決を行った森から、真っ白に染め上げられた監禁部屋へ姿を現した。姿を戻した後、年老いた彼との死闘(たたかい)の疲れを癒やす為に、姿を現した場所へそのまま腰を下ろした。“ふぅ…。無事に勝てたな…。彼の体に銃弾を当て勝利した時は、喜びが大きかったが、今となっては、喜びよりも、彼との闘いで無事勝利を収める事が出来た事への安心感が、俺の心の中で大きく広がりつつあった。俺は、自力で勝利したワケじゃない。恥ずかしい話だが、先程の勝利は俺自身の実力によるものでは無い。軍獣(軍隊員を目指すポケモン)養成大学へ通い、戦闘、潜入の知識や技術は会得した…。と言っても、経験が結果(もの)を言うという事であろうか。やはり、経験豊富な彼に、自力では勝利する事は実現出来なかった。いや、更に恥ずかしい事に、俺は、【闇】の番人へも自力で勝利したワケでは無かった。自分の中の隠された力が無ければ、俺は年老いた彼へ勝利はおろか、年老いた彼の顔を見る事さえ不可能であったのである。不可能の理由を述べる必要は無いのかもしれない。ここまで言えば、俺が、もし隠された力を備えていなかったのなら、今頃どんな運命をたどっていたかは、容易に想像がつくと思う。だが、一応述べておこう。早い話、俺は、【闇】の間の番人から、自前の小さな刃物を胸に受けて死亡…。である。すなわち、隠された力、スサノオと呼ばれる者の力が無ければ、俺は今頃、現実世界ではなく、あの世と呼ばれる死者が集まる世界へ身を置いていたという事である。俺は、年老いた彼との闘いで“勝利”という名の“未来”を創造した者へ感謝の言葉を述べた。

「ありがとう、スサノオ。お前のお陰で、あのじいさんに勝てた。ふふ。いや、お前がいなければ、とっくに俺は殺されていたな。」

俺は、感謝を理由付けにした独り言をつぶやいた。すると、理由付けした独り言を受け取る、もう一匹の自分返答して来た。

“感謝(れい)などいらぬ。感謝(れい)をする位なら、我に頼らずとも勝てる位の力を身につけよ。”

“確かに。”俺は、もう一匹の自分の返答を受けて笑い、彼へ同意した。

「あっはっは。はぁ…。全く、その通りだ。わかっている。わかっているが…」
“どんなに力を尽くしても、力は及ばずか。”
「ふっ。全く、俺の言いたい事は、全部お見通しか。」
“当然であろう?我は宿主(ぬし)であり、宿主(ぬし)は…。では無いな。とにかく、我が言いたいのはそれよ。”

もう一匹の自分が告げた事は、俺に憑依(ひょうい)しているから俺の心情を容易に読み取る事が出来ると言いたいのだろう。“そこまで言われたら、もう何も言い返せないな。”俺は、もう一匹の自分の言い分を理解し、静かに笑みを浮かべて、年老いた彼との闘いで用いた装備を外し、次々と床へ置いた。最後に、森の地図が描かれた、折り畳まれた一枚の紙を床へ置こうとした時、もう一匹の自分が、俺を焦らせるような一言を言い放った。

“フッフッフ。宿主(ぬし)よ。まさかと思うが、最後の争いでも我を当てにしているのではないか?”
「な、な!?ち、違うぞ!!当てになんか…」
“フン…。かわいげなる(可愛らしい)雄よ。宿主(ぬし)のその姿は、雄と思えぬ程、かわいげなるぞ(可愛いらしい)。”

“か、可愛いだとぉ!?ちっ、調子に乗りやがって。”もう一匹の自分は、俺に先程、“ここまで、無事にたどり着く事が出来たのは、お前のお陰だ。”と言われた事をいい事に、仮説を用いて、俺の本心を試す質問。という名の偽りの言葉を放った。俺がもう一匹の自分のからの質問を、偽りの言葉と判断した理由は、俺の答えに対する返答からである。雄を焦らせて、雄が隠している普段は見せない弱い部分を引き出して楽しむという事は、俺へ“自分を頼るな。”と指導しているのでは無く、からかって楽しんでいるだけだと考えられる。俺は、もう一匹の自分の言葉に対して、“自分が何も出来ない“悔しさ”を噛みしめつつも、地図を床に置き、自分が今、優先すべき行動を起こすために、【幻想】の扉の右隣の、9つのくぼみ(今は、既に7つはまっているので、本来は2つのくぼみである。)がある装置へ目を向けた。

762適当:2013/05/18(土) 03:02:42 ID:FyaQoDAw
9つのくぼみには、左から順に、それぞれ異なる色が、天井から降り注ぐ真っ白い光を反射して光っていた。【業火】と示されたプレートの下には、赤色の光を放つ“α(アルファー)”のバッチが。【氾濫】と示されたプレートの下には、青色の光を放つ“β(ベータ)”のバッチが。【雷神】と示されたプレートの下には、黄と白の光を放つ“γ(ガンマ)”のバッチが。【光】と示されたプレートの下には、紫色の光を放つ“θ(シータ)”のバッチが。【闇】と示されたプレートの下には、藍色の光を放つ“λ(ラムダ)”のバッチが。【若葉】と示されたプレートの下には、あの少女と同じ、リーフィアの目を表すような、琥珀色(こはくいろ)の光を放つ“π(パイ)”のバッチが。【零下】と示されたプレートの下には、水色の光を放つ“μ(ミュー)”のバッチが。【伝説】と示されたプレートと【幻想】と示されたプレートの下には、それぞれ“χ(カイ)”の文字型と“ω(オメガ)”の文字型のくぼみがあり、当然、光を反射する物は存在しない。だが、今から俺が、手に握っている“χ(カイ)”と描かれた銀色のバッチをはめ込むので、実質は、それぞれ異なった色を持つ8つの光が、もうじき俺の目の中へ入り込む事になる。“ようやく…ここまで来たな。”俺は、赤、青、黄と白、紫、藍の光を9つのくぼみから反射される光を7色(なないろ)から8色(やいろ)へと変化させた。8色(やいろ)へ変化させたと同時に、部屋のどこかからかブザー音が鳴り響き、ブザー音が止むと同時に、“カッシャン”と、左から鍵をかける音が聞こえた。“後一回…。いや、もうこの音を聞く事は無いかもしれないな。”なぜ、この、鍵をかける音をもう耳に入れる事は無いだろうと、俺が考えたのか。その理由の1つに、年老いた彼が別れ際に伝えて来た台詞にある。彼が言うには、“最後の番人は、本来の番人では無く、自分の最上級上官(ボス)である。”との事。あと1つのくぼみは、“ω(オメガ)”の文字を型取ったくぼみである。だが、“ω(オメガ)”のバッチを所持しているのは、本来の番人である。本来の番人では無い者と最後の闘いを行うので、勝利しても“ω(オメガ)”のバッチは俺へ手渡す事は出来ないだろう。…。いや、手渡す事が出来ても手渡すつもりなんか無いと考えを改める。なぜなら、年老いた彼は、“俺を探し、闘う為にこの実験を行い続けている。”とも語っていたからである。闘う為といっても、結局の所は殺すつもりなんだろう。この、真っ白い監禁部屋から、俺を脱出させる気など、連中をまとめる真の黒幕には到底無かったのである。鍵をかける音を【伝説】の間を封印し終えたともいえる音を聞き終えた後、年老いた彼との戦闘の疲れかつ汚れを落とす為、俺はシャワールームへ歩を進めようと、9つのくぼみへ背を向け、踏み出す為に足へ力を入れた。だが、俺が1歩前へ踏み出そうとした時、後ろから開錠(かいじょう)を合図する音が鳴り響いた。

カッ…シャン…。

“なる程。来いという事か。”開錠(かいじょう)の合図が意味するもの。それは、おそらく“かかって来い。”という事だけであろう。ルール上、8つのバッチをはめれば確かに【幻想】と示された、残す所1つの番人の間は開く仕掛けとなっている。待ち受ける番人は、かかって来いなんて思ってないのかもしれないが、思っていないかもしれないと別の推測が出来るのは、あくまで本来の番人の時だけである。だが、今は違う。今は、俺を殺そうとしている、俺を監禁した連中をまとめる長(おさ)であり、逆らう者を皆、処刑にする恐ろしい者。真の黒幕が、【幻想】の間の番人を務めているのである。いや、やはり最初に述べた通り、務めているのでは無く、自身の目的を達する為に、“今か今か”と俺を待ち受けているといった方が正しいだろう。俺は、開錠の音を聞き入れて、シャワーを浴びる事を頭の中から瞬時に消し去り、【幻想】と示された扉へ歩を進め始めた。歩を進めている途中、俺の頭の中にある記憶が次々と蘇(よみがえ)って来た。

763適当:2013/05/18(土) 03:07:54 ID:wKQR3IVc
『生きていたら…ぐっす…。また会おうね!!』

初めは、【若葉】の間の番人が、俺と別れる際に涙を流しながらも、無理矢理笑顔を作って俺へ伝えた台詞(セリフ)である。生きていたら…。この言葉を意味するのは、俺に向かって“無事に脱出出来るように願っている。”という事では無い。彼女は、裏切りを働いてしまった。故に、彼女の台詞(セリフ)は、“自分がもしも生きていたら、また会えるといいね。”という事である。彼女は俺に情報を与えた。彼女は、裏切り者となり処刑され、もう現世(このよ)にはいないのかもしれない。だからこそ、俺は彼女を処刑にした真の黒幕を絶対に倒さなければならない。俺は、自分へ強く言い聞かせつつも、【幻想】と示された扉へゆっくり近づいていく。近づく際に、記憶の中にしまい込んだ台詞(セリフ)が蘇(よみがえ)って来た。

『あはは。ピカチュウ君なら、必ず脱出(で)られるよ。』

次の台詞(セリフ)は、【雷神】の間の番人であり、【若葉】の間の番人であるあの少女の親友である彼女が告げた台詞(セリフ)である。思い出せば、彼女は天才であった。特殊攻撃を得意とするサンダースに属するにもかかわらず、特殊技は使わず、全て接近戦で俺の力を超えて見せた。いや、もしかしたら単に特殊技を発動(だ)す事が苦手だったから、接近技ばかり使って来たと言えるかもしれない。そんな天才肌を持つ彼女が、応援メッセージなのか何なのかは知らないが、俺に“必ず脱出出来る”と告げたのである。彼女を超えた力を脱出する為の糧(かて)とした。だが、最後で殺され結局脱出は叶わなかった。では、話にならないし、俺が殺された事を知ると、“あ〜あ。”と愕然(がくぜん)とするか、もしくは“期待外れだなぁ…。”と呆れた顔をされるかもしれない。俺は、死んだ後、あの世から地上の様子を見た時に、彼女が俺に対しての失望を告げる態度を取る所を、見たくは無いし、そういう言葉も聞きたくは無い。だからこそ、真の黒幕を倒し、彼女(彼女だけでは無いが…。)を恐怖統制から救い出し、彼女と無事再会した際には、“君は、雄の強さを見抜けるのだな。さすがだ。”と彼女をほめてあげたいと思っている。………。俺は、一体何を考えているのだろうか…。深刻とはいえ思えない程の、呑気(のんき)な気構えを行ってしまっていた俺であったが、次の記憶で呑気(のんき)な気構えは打ち破られた。

764適当:2013/05/18(土) 03:12:10 ID:pFdutbek
『無理よ!!元帥様は、伝説種族(伝説ポケモン)のビクティニよ!!坊やに勝てるハズが無いわ!!』

次に蘇(よみがえ)った記憶の中の台詞(セリフ)は、【氾濫】の間の番人である彼女であった。彼女は、俺が22年間生きた中で会って来たどの雌よりも恐ろしい雌であった。そんな彼女に勝利し、彼女に尋問(無理矢理行わせたワケでは無い。彼女との勝負での取り決めである。)を行った際に、彼女が涙を流しながら、俺の“お前達のボスを倒す。”という台詞(セリフ)に対して、返した台詞(セリフ)である。彼女は、この台詞(セリフ)を言い放った際には、恐怖で震えていたと思う。彼女は恐らく、今述べた通りの台詞(セリフ)を口にした後、そんな態度を取っていた事であろう。彼女に勝利したとは言え、尋問を行い、情報を吐かせ、あげくの果てには、危険な情報まで吐かせ、彼女も裏切り者に仕立て上げてしまったのは俺自身である。彼女も、あの少女と同様、処刑されてしまったのかもしれない。そして、俺は彼女に“絶対にお前達のボスを倒す”と豪語という名の約束を結んでしまった。だからこそ、俺は、彼女を処刑にした真の黒幕を倒さなければならない。彼女を裏切り者に仕立て上げてしまったのだから、当然、俺には真の黒幕を倒す義務がある。“まかせろ。シャーズ、君の敵は必ず取るからな。”自分の心へ響かせた後、俺は【幻想】と示された扉へとたどり着いた。“これが…、最後の闘い。”俺は、【幻想】と示された扉のノブを手で握った。握ると同時に、年老いた彼の台詞(セリフ)が頭の中に蘇(よみがえ)って来た。

『勝て!!勝つのじゃ!!勝って、元帥様を倒し、あの娘達とブラッド君と…カオス小佐を、恐怖統制から解放してやってくれ…。』

あの娘達とは、“λ(ラムダ)”除く、“α〜μ(アルファーからミュー)”のバッチの守護者である、イーブイ進化系に当たる雌の兵士の事であろう。カオスとは、【幻想】の間の本来の番人の事と思われる。俺は、彼にこの台詞(セリフ)を託された後、初めは、彼の最上級の上官を倒せる自信が無かったので断りを入れようとした。だが、彼は、“頼む!!これが、ワシの…ワシの一生の頼みじゃ!!”と必死に懇願(こんがん)して来た。ここに“断る”とか“出来るか、わからないがやってみる。”のような曖昧(あいまい)な返事を返す程、俺は彼が託した生涯の願いを軽く見てはいない。俺は、【幻想】と示された扉のノブを掴(つか)んでいない、右手の拳を強く握りしめて、自分に、そして年老いた彼へ言い聞かせるように、決意を込めた言葉を言い放った。

「まかせろ。アンタの望みは、俺の望みでもある。俺は、ブイズを恐怖統制で従わせたアンタのボスを許すワケにはいかない。必ず、倒してやる。」

俺の中にもう迷いは無い。“勝てなかったら…。”なんて、もう一切俺の頭の中には思い浮かんで来はしない。“殺されたくない。”なんて、逃げの感情も一切抱かない。救う。各番人達を恐怖統制から解放してやる為、そして脱出する為に、真の黒幕を倒す事だけしか、俺の頭の中には存在しない。俺は、現実世界へ決意を表明した後、【幻想】と示された扉のノブを捻(ひね)り、【幻想】のステージへと歩を進めた。

765適当:2013/05/18(土) 03:19:47 ID:pa7rLjqs
俺は、【幻想】のステージに姿を現した。【幻想】のステージに移動し終えた後、いつもより、呼吸に用いている空気が薄い事を感じ、最後の相手と闘う場所に、違和感を覚え周りへと目を向けた。

「あっ…。ここは、まさか…。」

俺は、周りを見渡して、驚きを隠せなかった。遠くを見つめると、雲が浮いており、背後へ目を向けると、雪で覆われた所と、覆われていない所に分かれている様を確認出来た。“この場所は、見覚えのある場所なのかもしれない…。”自分の周囲を取り巻く、薄い空気や所々に見える雲などの環境から、頭の中で1つの推測を立てて、俺は崖(がけ)と思われる場所へ駆け出した。ある程度の距離まで駆け出した所で、目の前に砂利石で造られた自然の道路が姿を消し、下を見下ろす事が出来る事を予測し、歩を進め続けた。砂利石で造られた自然の道路が、丁度途切れる位の直前の位置まで歩を進め、下を見下ろすと、大きな湖があり、辺りに立ち込める少々の霧によって、見えにくいものの、湖には1つの大きな山の絵が描かれていた。山の絵は、俺が推測した場所通りの、山全体に青と黒を混ぜたような色が降りかかっており、山の上方が白みかかっていた。“間違いない…。ここは、富士山だ。”湖に映し出された、自分の出身国を主張する山を見終え、最後の相手と闘う国、闘う場所がどこであるかを目の前の光景によって知り、驚きを隠せずにいた。“富士山。という事は、じいさんのボスは、日本出身か!!”俺は、真の黒幕の出身国を推測し、“自分の出身国の者が、隊員達を恐怖で従わせ、裏切った番人達を処刑したのかもしれない。”と仮定しつつ、自分の敵は、生まれた時からある意味、身近に存在していた事を痛感した。俺が痛感した直後、背後から強烈な熱気が存在している事に気付き、後ろへ振り返り、熱を放つ方向へと目を向けた。俺が目を向けた先には、体の色が赤と薄い黄色で構成されており、額からアルファベットの“V字”の形で、表面は橙色、内側は黒で染められた耳を持ち、大きな青色の瞳(いや、日本出身だからか、少し黒も混ざっている。)を持ち、小さな犬歯が下唇に乗っている、腰の後ろに羽を生やした者が立っていた。俺の背後に現れた者の手、足も橙色に染まっており、背は俺よりも低いが、およそ15cm〜20cm位しか離れていない。見た目は、とても地上にいる者とは思えず、大きな瞳と腰辺りに生える羽は、幻想的かつ可憐(かれん)であると思われるが、表情は悪そのもので、更に着ている軍服が、こちらを決して味方とは思わせない金色であった。俺の背後に現れた者が、素直さを見せるような丸い瞳を持っていたのなら、俺は“どうして、こんな雄(ヤツ)が黒幕なんだ!?”とその者が犯した悪事に驚きを隠せずにいただろう。だが、彼は違った。彼の瞳は、鋭さを持つ丸みのかかった大きな瞳であり、俺には邪悪な笑みを向けている。彼の胸には、本来の番人が守護している文字、“ω(オメガ)”では無く、白と橙ベースのφ(空集合記号)が、光輝いていた。彼は、山中に邪悪な笑い声を響かせ、俺へ言い放った。

「ハハハハハ!!よく、ここまで来れたな。」

“コイツが、ボスか。”俺は、彼の言葉を受けても口を閉ざしつつ、彼をにらみつけていた。彼は、俺の目線など気にせず、自分の正体を明かした。

「俺は、上杉 燎(りょう)。この“GOD TEXT”のリーダーだ。そして…、誇り高き武神 上杉謙信の末裔(まつえい)でもある。」

上杉謙信。古の武将。確かに、武神と呼ばれる程の戦の強い武将であったかもしれない。だが、これだけは言える。上杉謙信は僧(そう)であり、神の力を持とうが、史上最強の力を持とうが、無理矢理従わせ、逆らえば処刑するなどの非道な行いなど、決してないはずである。俺は、彼の台詞(セリフ)に怒りを覚え、彼へ反論を行った。

766名無しさん:2013/05/18(土) 07:45:22 ID:p90GImX2
適当氏。
いちおう注意されたのだからちゃんと理解したことを文字にして表すべきかと。

767適当:2013/05/18(土) 08:14:14 ID:FYuYzEiA
申し訳ありませんでした_(._.)_
管理人さんへ、了解です。以後気をつけます。
では、中断して申し訳ありません_(._.)_続き投下します。

768適当:2013/05/18(土) 08:20:18 ID:XjaelStQ
「ふざけるな。お前はただの大量殺獣者(多くのポケモンを殺した者)だ。神の文字を受ける権利も、神の文字を与える権利も、神の文字を従わせる権利も無い。」
「フン。ククク…ハハハハハ!!」
「何がおかしい?」

彼は、俺の質問を受けると、右手に炎を灯し、手の平に炎を乗せたまま、俺の周りを歩き始め呪文のような言葉を言い放って来た。

「知恵を灯し、α(アルファ)。富と力を潤し、β(ベータ)。天の裁きを下し、γ(ガンマ)。真実を見通し、神々に告げし、θ(シータ)。人の裏の誤りを正し、λ(ラムダ)争いを収め、争者の輪を造りし、π(パイ)。全事象の創造源を監(み)し、μ(ミュー)。古き教えで神々の思考を改めさせし、χ(カイ)。過去、現在、未来。3空間を守りし、ω(オメガ)。」

“くっ…。コイツ、何が言いたい?”俺は、彼の発する言葉が理解出来なかったワケでは無い。彼は、今から“自分の行いは正しい”と必ず宣言すると推測し、腹を立てたのである。俺は、自分の周囲を歩く彼をずっとにらみつけていた。彼は、やがて動きを止め、右手に灯していた炎を消し、右手の拳を握って、俺に体を向け言い放った。

「そして俺が、腐敗した世界を破壊し、新世界を創造する神!!“φ(ファイ)”の称号を持つ、“神の文字”の統率者!!上杉 燎(りょう)だ!!」

“腐敗しているのは、お前の方だ。”勢いよく、誇らしげに言い放つ彼に、更なる怒りを覚え、俺は静かに拳を握った。拳を握るも、彼に怒りはぶつけず、彼に過去の行いを問いかけた。

「なぜ、フィアとシャーズを殺した?」
「憎き信玄の子孫の仁。貴様、何か勘違いしているな。」
「………。どういう意味だ?」

俺が訪ねると、彼は再び邪悪な笑みを光らせ、俺へ衝撃の一言を放った。

「貴様が、フィアを助けようと、シャーズを裏切らせようと、俺は初めからブイズを処刑にするつもりだった。」
「何だと!?」
「目的を達した時、神の子は神に力を保持させる為、贄(にえ)にならなければならない。ククク…。」

“コイツ…。”俺は、彼の理由を間に受けず、彼へ再び問いだした。

「ふざけるな!!その為じゃないだろう!!」
「ほう。当たりだ。そんな理由など存在しない。使えない子兎、子狐、敵に媚(こ)びを売るような雌猫、子兎など神の下には置けん。ハハハハハ!!言い間違えたな。雑魚は、神の子などでは無い。神の側に存在する権利など、何一つ無い!!ククク…ハハハハハ!!ハーハッハッハッハ!!」

“ふざけやがって…。このクソ雄(やろう)がぁ!!”俺は、彼の一言と、彼の、何の悪びれる様子も無く、自分が強いた戦闘を行わせた者を嘲け笑っている様を見て、ついに堪忍袋(かんにんぶくろ)の緒が切れ、彼へ怒号を飛ばした。

「貴様…貴様ぁぁぁぁ!!」
「ハハハハハ!!さて、暴神 素戔嗚尊(スサノオ)、そして暴将 信玄の子孫よ…」

彼は、俺の怒号を笑い飛ばし、笑いを止めて俺をにらみつけて、橙色に染められた指を差し、俺へ言い放った。

「統治神 天照大神(アマテラス)が成敗してやる。天界の悪事を働いた者よ。悪事をかばいし暴将の子孫よ、俺の裁きの炎に焼かれろ。そして、この世に一片の肉片も残すな。」
「どっちが悪だ…。貴様の行いが悪そのものだ!!貴様は、絶対に許さん!!神の資格を二度と語れないようにしてやる!!」
「ハハハハハ!!自分が正しき神と信じる者は、勘違いをする。勝った方が正しいのさ!!」
「この腐れ野郎ぉぉぉ!!」

相手の力がいか程か計り知れない時だからこそ慎重にならなければならない。だが、俺は彼の言動を受けて、余裕を持って身構える事など不可能であった。彼の言葉を受けた後、俺は自分の奥底に眠る力を全て放ち、体に黒い雷をまとわせた。彼は、三度目の笑い声を響かせ、体中から純白の炎を放ち、目の色を金色と黄色が混合した色に染め、両手に炎を灯し言い放った。

769適当:2013/05/18(土) 08:27:27 ID:Y2u7a/VA
「ハーハッハッハ!!来たな、暴神 素戔嗚尊(スサノオ)。俺の裁きの炎、神炎で灰になれ!!プロミネンスブレス!!」
「くらうかぁ!!ミラーコートぉぉぉ!!」

彼は、5方向に分かれた火炎放射の炎に俺を襲わせた。彼に対して俺は、彼の攻撃が迫ってくる前に、体中から強い電流を放出し、体の表面を黒い雷で包み込んだ。表面にまとわせた黒い雷が、白い炎をはじき返してくれたので、俺は彼の攻撃を完全に防ぎ、彼の両手から炎が消えたのを見計らって、足にまとわせた黒い雷を強力なバネ代わりにし、これまでに無い速さの低空飛行での直進を行い、彼へ突撃した。だが、彼は後ろに大きく飛んでかわし、俺の勢いが弱まった所へ逆に急接近し、右手に炎をまとわせ、俺へ炎の拳を放って来た。

「貴様のロケット頭突きなどで神炎を崩せるかぁ!!」
「当たるかぁ!!はぁ!!」

彼の炎をまとわせた拳を受けるも、俺は素速く自分の両手に黒い雷をまとわせ、彼の拳を打ち砕かんと、彼の拳へ合わせた。だが、彼は一度ではひるまず、右手が俺の拳と相打ちになった事を判断すると、すぐさま左手にも白い炎をまとわせ、俺の顔面へ攻撃して来た。“くそっ!!”俺も彼と同様に、打ち合わせていない拳を使って、彼の新しい拳を防いだ。これを機に、彼は二度目とは異なる拳を、俺は二度目とは異なる拳で彼の攻撃を受ける、激しい拳のぶつけ合いの火蓋(ひぶた)が切られた。

「ハーハッハ!!天照大神(アマテラス)の拳(パンチ)を受け過ぎると、簡単に身が滅ぶぞ?」
「くっ…。黙れ!!貴様の炎は、神の力なんか宿っていない!!貴様は、神なんかじゃない!!」
「拳(パンチ)だけだと思うなよ?足が隙だらけだぁ!!」

彼は、右手に俺の拳がぶつかった瞬間を見計らって、俺の脚部(きゃくぶ)へ狙いを定め、左足を放って来た。“当たるかぁ!!”俺は、彼の左足を両手でつかみ、彼を前方へ投げ飛ばした。だが、彼は2、3m飛ばされた所で、後ろの羽を用い、一瞬だけ宙に浮いて態勢を立て直し、満足そうな笑みを零(こぼ)し、俺へ言い放った。

「少しは出来るようだな?俺と闘うだけはある。」
「闘いじゃない。俺は貴様をこの世から消し去る。」
「消えるのは、貴様の方だぁぁぁ!!」

彼は、俺へ言い返した後、腰元の羽に白い炎を灯し、凄まじい速度で俺へ急接近して来た。“よし、ここからカウンターブレードテイルだ!!”彼が俺の元にたどりつくまで後数cmという所で、俺は素速く体を回転させ、硬質化した尻尾を彼へ放った。だが、彼は自分のすぐ後ろの空間から、円状に十本の刃がついた、自前と思われる特殊な薙刀(なぎなた)を抜き取り、俺の硬質化した尻尾を受け止めた。受け止めるとすぐに、彼は俺の尻尾を払い、背中を斬りつけて来た。

「くっ…くそぉ!!」

間一髪、俺は背中の刀を瞬時に抜き取り、彼の攻撃を刀で防いだ。だが、彼は俺に息つく暇を与えまいと、合わさった相手の刃を払い、俺の胴部分に狙いを定めて斬りつけて来た。俺もまた、彼の刃を防ぎ彼の攻撃が自分の体に直撃する事を阻止した。すると、彼は三度目も、四度目も、俺に刀で受けられては流し、隙を付いて、首、腹、胸、胴など、俺の体の各部分を斬りつけにかかって来た。俺も彼の攻撃を防ぎ続けているので、辺りにはお互いの刃が激しくぶつかり合う金属音が鳴り響いていた。彼は、俺と刃を打ち合わせあいながら高笑いし、降参を促して来た。

「ハハハハハ!!どうした?動きが鈍くなってるぞ?いい加減俺に斬られろ!!」
「黙れ!!斬られてたまるかぁ!!貴様の思い通りにはさせん!!」
「暴神がこの世に存在する事は許されない。十紋薙刀(ともんなぎなた)、アマテラスの餌食(えじき)となるがいい!!」

“よし、今だ!!”彼も俺と何度も刃をぶつけ合っているので、彼の動きは初めに打ち合った時よりも僅かに速度が落ちていた。彼が初めよりも、2秒程遅れて、自前の武器を俺の胴目掛けて振りかぶった瞬間、俺は刀を片手に持ち替えて彼の攻撃を刀で受け止め、空いた方の掌(てのひら)に黒い電流を出現(あらわ)し、彼の腹部めがけて黒い電気の玉を放った。

770適当:2013/05/18(土) 08:32:46 ID:wvO8MW0g
「雷撃波ぁぁぁ!!」
「電撃波!?しまった!!ぐわぁぁぁ!!」

彼は、腹部に俺の黒い電気の玉を受けて、4、5m吹き飛ばされた。吹き飛ばされるも、再度腰元にある羽を用いて体勢を立て直し、宙へ浮かんだまま俺を強くにらみつけた。

「くっ…。電撃波をくらうとは、油断し過ぎたな。」
「はぁ…はぁ…。」
「とっておきを見せてやる。」
「とっておきだと?」

彼は、俺の言葉を耳に入れ終えると、“神炎テレポート”と言い放ち、自らの体に白い炎をまとわせ、俺の目の前から瞬時に姿を消した。“くっ!!テレポートだと!?どこへいった!?”俺は、彼の攻撃を受けまいと、右、左、後ろを確認した。だが、彼の姿は無かった。“どこへいったんだ…。”と姿の見えない彼を警戒し始めようとした時、自分の前方であり上方から白い光が降り注いで来た。俺は、光へ急いで目を向けた。すると、先程まで自分と同じ高さに足をついていた彼が、宙に浮いており、右手、左手には、彼の顔と同じ大きさの巨大な白い炎の玉が出現していた。彼は、空から地上に高笑いを降り注ぎ、2つの巨大な白い炎の玉を俺へ放って来た。

「ハハハ!!ハーハッハッハ!!統治神であり、伝説種族(伝説ポケモン)だけが許された秘技!!“聖なる炎”をくらうがいい!!くたばれぇぇぇ!!」

“こ、こんな大きな炎防げない!!どうすればいいんだ!!”彼の放った炎があまりにも巨大な炎であったので、俺はたじろぎどうする事も出来ずにいた。俺が対処法を取る事が出来ずにいると、もう一匹の自分が語りかけて来た。

“宿主(ぬし)よ!!神雷域(じんらいいき)を使えい!!”
「それで防げるのか!?」
“黙れい!!口答えするで無いわ!!天照大神(アマテラス)如きの白炎など、我の黒雷の敵では無いわ!!”
「わかった!!素戔嗚尊(スサノオ)信じるぞ!?神雷域(じんらいいき)ぃぃぃぃ!!」

後、2、3mの所でもう一匹の自分から強い指示が出されたので、俺はもう一匹の自分を信じ、体の中心から莫大な電気を解放し、自分を中心にして半径2m程の巨大な黒い雷の柱を立てた。“くっ…。頼む!!防いでくれぇぇぇぇ!!”黒い雷の柱の中心に位置しつつも、俺は目を激しくつむって、懇願(こんがん)した。黒い雷の柱と白い巨大な炎がぶつかったのか、俺が願って2、3秒後、爆発音に近い大きな音が耳に入り、また自分の周囲に取り巻いていた黒い雷が消えるのを感じ取り、俺は目を開けた。すると、上空から放たれた巨大な白い炎の玉は、目の前から姿を消していた。“ほっ…。”と無事に、彼の一撃必殺技とも思われる巨大な炎の玉を防ぎきって、俺は胸をなでおろし、乱れた呼吸を整え始めた。彼は、膨大な力を一度に消費してしまった事で、宙に浮く力が無くなり、地上へ足を着いて、俺と同様に呼吸を整えていた。呼吸を整えつつ彼は、歯をくいしばり、今まで俺に披露して来た余裕のある邪悪な笑みを浮かべず、憤怒の表情を浮かべ叫んで来た。

「はぁ…はぁ…。チッ…こしゃくなぁぁぁ!!俺の聖なる炎を防いだだとぉぉぉぉ!!」
「はぁ…はぁ…。」
「ならばぁ!!これならどうだぁ!!」

“こ、今度は何をする気だ!?”彼は、再び両手に白い炎の玉を出現させ、俺のはるかかなた後方へ、飛ばした。“後ろに!?何が目的なんだ!?疲れてミスをしたのか!?”俺は、彼がなぜ自分の後方へ炎を飛ばしたかが理解出来ず、“どこかから来るかもしれない!!”と右、左、そして彼へ目を向け、警戒を行った。警戒を行っている途中、もう一匹の自分が警告を発令(だ)して来た。

771適当:2013/05/18(土) 08:46:23 ID:tOkjc3po
“宿主(ぬし)よ!!そこではあらぬ!!”
「え?」
“後ろよ!!急ぎ、その場を離れい!!”

“後ろだと!?”俺は、もう一匹の自分の言葉を耳に入れて驚き、急いで背後の確認を行った。“こ…これは!!炎タイプの波乗りか!!”自分の背後へ目を向けると、巨大な白い炎の津波が、今にも自分を飲み込もうとしていた。俺は、電光石火を用いて、瞬時に前進し、背後から迫る彼の陰謀を回避した。間一髪、回避し終えた所で、再び彼へ目を向けると、彼は既に両手に次の炎をたくわえ終えており、両手を合わせて炎を大きくし、俺に目掛けて放って来た。

「フレアウェーブは、おとりだ!!くたばれぇぇ!!ブラストバーン!!」
「な!?しま…雷磁誘…導、ごほぁ!!」

俺は、目の前に迫って来ていた彼の第二の陰謀に対して、体の表面に強烈な黒い電流をまとわせた。だが、とっさに行った防御で、俺の回避時間を計算に入れ、既に仕留める炎を手の中に出現させていた彼の攻撃は、完全に防ぐ事が出来ず、絶大なダメージを受けてしまった。“ご…ごほぉ!!し…死ななかったのが、唯一の救いだな。”彼の炎を受けて、4、5m飛ばされるが、地面に足をつけ、なんとか体勢を立て直す事に成功しつつも、体が悲鳴を上げた為か、吐血してしまっていた。吐血したが、まだ自分の意識が保てている事を幸運に感じるも、体から徐々に電気が無くなりつつある事を実感し、“どうすれば…いいんだ…。”と、死闘相手に苦しいと訴える表情を向けていた。徐々に体から消え去っていく、彼に唯一対抗出来る力。そして、彼のあの強大なダメージと同じ、もしくはそれ以上のダメージを与える方法も思いつかない。そんな状況に陥る中、もう一匹の自分が、俺を勝利に導いた。

772適当:2013/05/18(土) 08:51:07 ID:jJB1/ZYA
“宿主(ぬし)よ。豪雷死滅斬を使え。”
「ご…豪雷…死滅…斬?」
“一か八かの賭けよ!!あの童(わっぱ)は、天照大神(アマテラス)だけの力と思うたが、そうでは無い。あの童(わっぱ)は、初めから宿主(ぬし)の力を大きく上回っておる。我の力と、天照大神(アマテラス)では我の方が上。だが、その差はさほど変わらぬ!!”
「す…スサノオ!!」
“さぁ、やれい!!我は、主の体で滅す事も、天照大神(アマテラス)に滅せられたくも無いわ!!豪雷死滅斬は、我の秘技よ!!主は、一時我に意識を借せば良い!!さすれば、我が宿主(ぬし)に力を与えん!!”

“わかった。信じる。お前を信じるぞ、スサノオ…。”俺は、もう一匹の自分の強い訴え、唯一の打開策を聞き入れ、目を閉じて力を抜き、もう一匹の自分に操られるのを待った。ものの2秒後、自分の体の奥底から今までに感じた事の無いかつ、あんなに絶大なダメージをうけて、どこにそんな力が残っていたのかと疑いたくなる程の凄まじい量の電流が湧き出た。“スサノオ…ありがとう。俺は、死ぬかもしれない。だが、コイツは倒せる!!”もう一匹の自分が口にした豪雷死滅斬。恐らく、自分の身を犠牲にする電気タイプの技…いや、雷使いであり、神である彼の最後であり最期の技なのだろう。俺は、神であり、もう一匹の自分である者に感謝し、悪意に満ちた、神の力を誤って用いようとしている彼へ目を向け、刀を横に構え、刀にも黒い電流を流し込み言い放った。

「豪雷死滅斬!!」
「バカな!?どこにそんな力が!?」
「朽ち果てろぉぉぉぉ!!」

足にもまとわせた黒い雷の力を用いて、今まで発動(だ)して来た低空飛行を行う技の数百倍の速度で悪意に満ちた彼に向かい、彼の腹部を斬りつけた。彼は、俺に斬られた後、“ぐわぁぁぁ!!”と悲痛の声を響かせ、腹部を抑えて大量に吐血し、技を放ち終えた俺に弱々しい瞳を向け、うろたえた。

「ごふぅ!!これは…ワイルド…ボルト?」
「………。」
「ぐふぅ!!上杉家は…武田家に負けるの…か…。この俺…がはぁ。負…け…るの…か。」

この言葉を最期に、彼は倒れた。彼が倒れる音を耳にして、俺は振り返った。彼は、悪意に満ちたオーラも、体の芯から解き放っていた神の炎も消え去り、意識を失っていた。いや、もしかしたら俺ともう一匹の俺の渾身の一撃で彼は死んだのかもしれない。俺は近寄って、倒れ込んだ彼の生死を確認しようとした時、突然体から莫大(ばくだい)な電気が消え、力を無くして彼と同様に倒れ込んだ。うつ伏せ状態になってしまった途端に、自分の愛する雌である“綾”が笑顔を見せた記憶が、走馬灯のように、自分の目の前を駆け抜けていった。“ああ…。俺は、死ぬんだな…。”体から生のエネルギーが徐々に薄れていく中で俺が弱気になり始め、死を悟り始めた時、もう一匹の自分が懇願(こんがん)して来た。

“勝手に死ぬで無い!!我をもう一度、あのつまらぬ神界へ戻すつもりか!?”
「生きれるなら…それで、いいじゃな…いか。」
“ならぬ!!我は、争いの運命に置かれた宿主(ぬし)の争いを、今生感じていたい!!”
「はは…うるさい…。争いの…闘いの運命になんか…置かれて…たまるか。」
『去ぬる(死ぬ)なぁぁぁ!!宿主(ぬし)よぉぉぉ!!』

俺の死は、神である彼の消失に直結している。神である彼は、最古の言葉文句を最後…いや、最期と言うべきか。古(いにしえ)の言葉文句を最期に、俺の中から完全に意識を取り除かれてしまった。神である彼の意識が自分の体の中から消え去る事が感じ取った時、自分の意識も弱まり、今にも生から死へと移りゆく様に陥ってしまう事を感じた。“もう、ダメだ…。俺は助からない…。”俺は、自分の魂が生から死後の世界へ切り離される事を実感しつつ、小さく微笑み、愛する雌(もの)へ、自分の生還を第一に待っている雌(もの)へ心の底から謝罪した。

『綾…すまない。俺は…生きて…君の元に…戻れなか…』

最期の台詞(セリフ)を口にした後、俺は手に握っていた刀を離し、その場に倒れた。

773適当:2013/05/18(土) 08:56:40 ID:pFdutbek
………。俺は、死後の世界に行ってしまったのだろうか…。だが、意識が無いわけでも、生を完全に感じられなくなった訳でも無い。俺は、目を開けた。俺の目に最初に飛び込んで来たのは、真っ白に染め上げられた天井であった。“ああ…、結局、夢を見ていたんだな。”真っ白に染め上げられた天井を見て半ば安心しつつも、なぜだか“あんなに激しく、しかも真の黒幕を倒したのに、夢でしかなかったのか…。”と落胆を感じていると、自分の周囲からいつも(ここで言ういつもとは、監禁されている身での話である。)とは違う状況の中に居る事に気づいた。頬(ほほ)には真っ白い監禁部屋で感じる事が出来無い、自分を優しくなでてくれるような心地の良い風。耳を澄ませば、遠くの方から鳥達がじゃれあっているような声が響き渡って来ている。自分のすぐ近くからは、“ピッ…ピッ…。”と何かが波打つような機械音が、耳に入ってくる。この機械音は、なぜだか聞き覚えのある音であった。“もしかして…。”俺は、自分の記憶の中にしまい込んである音と、何かが波打つような機械音が一致するかどうかを確認すべく、音のする方へ目を向けた。目を向けると、緑色の波形、波形の下方には心拍数が表示された画面を取り付けた機械が存在していた。“心電図?やっぱりここは病院か?”俺は、周りの状況を再度確かめるべく、体を起こし、左、右と目を向けた。左には、暖かな肌色の扉が存在し、右には、自分と同じような生き物(ポケモン)と思われる者が、俺を見て、安心したような嬉しいと訴えているような、優しい小さな笑みを零(こぼ)していた。右に存在する者は、俺へ声を掛けて来た。

「気が付きましたか?」
「あ、ああ。ここは?」
「ここは、病院です。意識が回復したようなので、安心しました。」

俺の右に存在する者は、顔の構成が赤と黒でなされており、赤色は頭の中央から、人間でいう長髪のように後ろへ流れていた。そして、見た目は犬獣(犬型のポケモン)で、赤と少し青みがかった色で、彼の目は構成されていた。また、彼から漂って来る匂いは、狐であった。“黒い狐…。シャーズから聞いた話からすると、コイツがもしかしたら…。”俺がこう推測した事には、理由がある。彼が着ていた軍服が黒と赤で構成されたものであり、赤色は両肩にそれぞれ位置していた。更に、彼の軍服の胸部分には“ω(オメガ)”と描かれた金色のバッチが光輝いていたからである。“本当は、彼が最後の番人だったのかもしれない。”俺は、彼へ正体を訊ねた。

「お前が、カオスか?」
「はい。私が、本当はアナタの最後の対戦相手でした。」

彼は、俺に告げ終えると、自己紹介を行い、俺へ握手を求めて来た。

「初めまして。【幻想】の番人を務めておりました、カオスと申します。種族は、ご存知でしょうか?」
「ゾロ…アークか?」
「はい。よく、ご存知で。では、改めましてよろしくお願いします。」
「あ、ああ…。よろしく。」

彼の腕は、思っていたよりも長かった。でも、彼の身長には丁度良かったのだろう。俺は、彼が差し出して来た手を、右手で取り、彼と握手を交わした。彼は握手をし終えると、何かを感じ取ったのか、腹部へと目を向け、微笑みを向けた。

774適当:2013/05/18(土) 09:02:00 ID:JhhDha.2
「あはは。起きてしまいましたね。」

“え?”彼は、腹部を見つめたまま、腹部へ左手を伸ばした。俺は、彼の腹部に何がいるのかを確かめる為に、彼の腹部へ目を落とした。すると、彼の礼儀正しく折り曲げられた膝(といっても、正座をしているのではなく、礼儀正しくイスに座っている。)の上には、小さくて茶色の毛皮をまとい、マフラーを巻いている者。彼の膝(ひざ)には、一匹の小さなイーブイが存在していた。赤ん坊だからか、小さなイーブイは、おしめをはいている。小さなイーブイからは、雌特有の匂いがほのかに香って来た。“女の子か…。”小さな彼女が、彼に頭をなでられて嬉しそうに笑っており、頭をなでる彼の指を小さな口でくわえたり、離したりという事を繰り返していた。彼は片手間で、膝(ひざ)におく彼女を遊ばせつつ、俺へ彼女を紹介した。

「私達の軍に所属しる、α〜μ(アルファーからミュー)の隊員達の遺伝子を取り入れた、私達の軍が作成したT-イーブイです。」
「T…イーブイ?」
「Transform-イーブイの事です。この子は、7つのタイプを持ち合わせています。」
「ええ!?7タイプ!?」
「はい。あっ、言い忘れました。T-イーブイは女の子です。7つのタイプを持ち合わせているので、成長すれば、炎、水、雷、念、悪、草、氷タイプそれぞれの技が使えます。ですが、遺伝子が初めから複合し過ぎているので、進化は出来ません。」
「すごいな…。」

“T…イーブイ…か。”俺は、彼の説明を受けて驚きを隠せずにいた。驚きの感情を軽減する為に、一言つぶやき、感情を外へ発散させるが、未だに驚きの感情を消す事は出来無い。それ程、彼から耳にした情報が聞き慣れる情報(もの)でも、ましてや耳に入れる機会が全く無いと考えていたからであろう。彼は、俺の驚きの表情を見ても遠慮せずに、感謝し、衝撃の頼み事を持ちかけて来た。

「私達を救っていただき、本当にありがとうございます。」
「お前達のボスを倒した事か?」
「はい。ですが、アナタにもう一つだけ頼み事が。アナタが、この娘を引き取って欲しいのです。」

“は…はぁ!?”俺は、急過ぎる彼の頼み事に更に驚き、目を見開き耳を疑った。“じょ、冗談だろう?意味がわからん…。”俺は、彼へ理由を訊ねた。

「カオス、何を考えている?君が育てればいいじゃないか。君達の軍で生み出した、イーブイだろう?」
「いえ、それは出来ません。」
「は?なぜだ?」

俺に訊ねられた彼は、理由を述べた。

「私達の悪事の元は、アナタが絶ったとはいえ、私も元帥様と同じ誘拐の共犯者です。私と共にいても、この娘は幸せになんかなれません。」
「そ、そうか…。」
「はい。ですから、私達の英雄、武田 仁さん。申し訳ありませんが、この娘をよろしくお願いします。」

俺は、彼に理由を聞かされ、再度懇願(こんがん)までされた事により、“ああ、わかった。”と肯定の意思の返事しか返す事が出来なくなっていた。子供を授かるのは、今の彼女の綾では到底出来無い。彼女と俺では、遺伝子の構成が異なるからである。俺は、彼の理由を真っ直ぐに受け取ったつもりで、彼の膝(ひざ)に乗る、小さな彼女を育てる事を承諾したつもりであるが、もしかしたら、将来的に子供が受胎(つく)れないからという心配もあり、また、小さな彼女があまりにも可愛過ぎた為、自分の所有物(モノ)にしたいと思っていたからかもしれない。いや、それでは彼女に失礼だ。彼女は所有物(モノ)では無い。彼女は、初対面の俺をすぐに親であるとは認めないだろう。それ程、彼女は優しく微笑む彼へなついていると、自分にも判断出来たから、俺は“俺はいいが、彼女は認めてくれないかもしれない…。”と懸念を抱き始めた。俺の懸念は的中した。彼が、小さな彼女を抱き上げ、俺の手(広げた両手の間)の中へ渡らせようとした時、彼女は驚いて声を上げ、“いやだ!!いやだ!!離れたくない!!”と訴えるように、彼女自身の言語(俗に言う、イーブイの鳴き声。赤ん坊の頃は、言葉が形にならず、鳴き声でしか喋る事は出来無い。)を用いて彼へ訴えかけて来た。彼は、彼女が嫌がり、また悲しみの為か今にも泣き出しそうな彼女を抱き上げて、自分の顔の高さまで上げ、彼女に優しい微笑みを送って、彼女を安心させた。

775適当:2013/05/18(土) 09:11:49 ID:Mu.M8Qpo
「大丈夫です。仁さんは、とっても優しくて、いい雄(かた)です。」
「ぐっす…。ブィ…。ブィ…イーブイぃ…。(離れたくないないよぉ。)」
「私を信じて下さい。大丈夫ですから。」

彼が、今にも泣き出しそうな(微かにないてはいる)彼女を説得すると、彼女は、彼の告げた事を確認するように、俺へ目を向けた。俺は、彼女に優しく微笑み、両手を広げて彼女を迎えた。

「おいで。」

すると、彼女はもう一度彼の顔を見た。彼は、彼女にもう一度優しく微笑み“さぁ、仁さんの元へ行って来なさい。”と彼女へ行動を促しつつも、彼女の意見を尊重するように、俺と彼の中央の位置へ彼女を下ろして、彼女へ選択肢を与えた。“来てくれるだろうか…。”と、俺は彼女が下す未来へ心配していると、彼女は再度俺の表情を確認し、俺へ“心配はいらない。”と語りかけるように、俺の元へ向かい、小さな歩を進めた。“やったぁ!!”と、彼女が俺の間近まで歩いて来た様を見て、俺は心の中で叫び、彼女を両手で持ち上げて、自分の頬と彼女の頬をくっつけて、目を閉じて彼女へ感謝の意を伝えた。

「来てくれて、ありがとう。俺は、君の親になれてとても嬉しいぞ。」
「ブィ?(本当?)」

小さな彼女は、俺に確認を行って来たのだろうか。俺は、彼女が“きっと本当かどうかを訊いているんだろう。”と推測し、彼女へ“ああ。たっぷり可愛がってやるぞ。”と自分の意志も込めた、肯定の意思を伝えた。すると、彼女は“嬉しい!!”と表現するように、俺の頬を小さな舌でなで始めた。俺は、彼女の舌のくすぐったさに耐えられず、思わず声を上げてしまうのだった。

「あっはっはっは。や、やめてくれ。くすぐったいじゃないか。」
「チロ。チロ…。ブィ!!ブィ、ブィ!!(もっと、もっとぉ!!)」
「あは…こいつめ!!」

俺は、彼女を顔から離し、彼女を、自分がかぶっている布団の上であり、膝(ひざ)の上でもある位置に仰向けにし、彼女の腹をくすぐった。すると、驚愕の真実が明らかになった。

「あは…あはははは!!く…くしゅぎゅったぃぃ!!」
「は…はぁ!?もう喋れるのか!?」

俺が驚くのも無理は無かった。俺が引き取った小さな彼女の身長は、俺の約4分の1程度。雌は、あまり成長しないが、この時点で、雄であろうが、雌であろうが言える事がある。彼女の身長から、年齢を推測するなら、まだ0歳児である。更に、鳴き声を駆使してしか会話が出来ないので、0歳児以外は当てはまるハズは無いのである。彼女は、驚きの表情を浮かべている俺を、純粋なきょとんした表情で、可愛気な視線を送りつつ、見つめていたが、彼は左手を口元に添えて、上品な笑いを見せ、小さな彼女が“なぜ、言葉を話したか”の理由を告げて来た。

「あはは。驚きましたか?なぜかはわかりませんが、10回程繰り返して言葉を言うと、その言葉を覚えてしまうのです。」
「えぇ!?」
「他にも、喋る事が出来ます。この娘は、お腹をくすぐるのが好きなので、“くすぐったい!!”って言葉と、ほんの少しですが、需要性の高い言葉を話す事が出来ます。」
「お前が、覚えさせたんだろう?」
「ふふ、バレてしまいましたか。まぁ、当たり前ですか。」

“他にも、話せるか…。う〜ん、やっぱり言わせたい言葉は、アレしか無いな。”俺は、彼へ自分が望む言葉を小さな彼女が話す事が可能かを訊ねた。

776適当:2013/05/18(土) 09:17:53 ID:i4g0Mkog
「じゃあ、例えば“お父さん。”って呼んでくれたりもするのか?」
「お安いご用です。」
「本当か?」

「疑うなら、今ここでやってみせます。」

“言ってくれたら、嬉しいが…。無理だろう。第一、カオスは親にならないんだ。覚えさせているワケが無い。”彼の返答を受けても、俺は未だに信じる事が出来ず、怪訝(けげん)そうな表情で彼を見つめていた。怪訝(けげん)そうな表情を浮かべる俺に対し、彼は微笑みを消して、無表情かつ自信に満ち溢れた表情を作り出し、彼女へ呼びかけ、優しい笑顔を向け指示を出した。

「イーブイさん、こっちを見て下さい。」
「ブィ?(え?)」
「仁さんの事を、“パパ”って呼んでみて下さい。」

彼は指示を与えた後、俺を指差して彼女に俺の名前が“仁”である事を認識させた。すると、彼女は俺の方を振り向き、彼の指示を実行した。

「ブィ…ぱ…パ?」

“あっ…。”俺は、嬉しさを通り越した驚きにより、彼女に対して微笑みかける事も、頭をなでてあげる事も出来ず、ただ呆気(あっけ)にとられていた。俺が呆気(あっけ)にとられていたので、彼は俺の名前を二、三度呼びかけた。

「仁さ〜ん。仁さぁ〜ん。」
「……。え?な、何だ?」
「名前は、もう決めたんですか?」

“な、名前か…。”彼は、やはり優しい雄である。彼は、呆気(あっけ)にとられた俺に対して、“ほら、見ろ!!”と言い返さず、俺の示した態度を流してくれていたからだ。俺は、彼から小さな彼女に一生に寄り添う、命名を訊ねられ、顎に手を添えて、しばらく思考を行った。思考し終えた後、俺の頭の中に1つの文字が浮かんで来た。俺は、小さく笑い彼の質問に答えた。

「ふっ。零だ。」
「れい…。No.0ですか?」
「ああ。」
「なぜ、そう名付けたんですか?」

“答えは、1つしか無い。”俺は、自信あり気に彼の質問へ答えた。

「決まっているじゃないか。」
「決まっている?」
「壱の上が零だろう?つまり、本当の一番最初だ。」
「はぁ。」
「この娘が一番可愛いからだ。だから、壱の上の零なんだ。それ以外に、どんな理由がある?」

俺が自信に満ちた笑顔で彼へ理由を告げると、彼は口元に右手を添えて吹き出すように笑い始めた。

「ぷっ…あはははは。仁さん、意外と親バカなんですね。」

“お、俺が親バカだとぉ!?”彼に指摘された俺は、急激に恥じらいを感じた。彼に、予想もしなかった新たな感情を抱かされるが、恥じらいを隠すように反論し、彼を羨(うらや)ましがせる一言を言い放った。

「う、うるさいな。あっ、カオス“零をやっぱり返してくれ”なんて言ったって、俺はもう返さないからな?」
「ふふ、喜んで頂けて光栄です。是非、この娘を立派に育てて下さるようお願いします。」

“ちっ、つまらない雄(ヤツ)だ。”愛くるしい愛娘(まなむすめ)の父親になる良さを、彼に垣間見せても、彼の考えは変わらないようである。彼は、俺の望む台詞(セリフ)とは異なる感謝の言葉を言い放ち、言い終えた後、丁寧で上品なお辞儀を行って来た。俺は、自分の願いが叶わなかった事で彼には納得がいかないと訴えるような、不満気な表情を見せ、心の中では舌打ちを行い、彼をにらみつけていた。“コイツに何か、言ってやりたいが…。”彼が、今後“父親になる俺が羨(うらや)ましい!!”と放ってしまうような言葉を誘う方法はないかと、彼に気付かれないように頭を働かせていると、彼が左方へ目を向け、小さくつぶやいた。

777適当:2013/05/18(土) 09:23:27 ID:i4g0Mkog
「おや?3時ですか…。」

彼の見つめている方向へ目をやると、そこは俺の正面に位置し、黒縁の丸い壁時計が掛けられていた。 時計の針は、彼の言葉通り、3時を示しており、彼は急用を思い出したかのように席を立ち上がった。俺は、彼にこれから起こそうとしている行動について訊ねた。

「カオス、どこへ行く?」
「すみません。私は、もう行かなくてなりません。」
「どうして?」

俺の質問を受け、彼は微笑み俺の元を離れなければならない理由を告げた。

「アナタを一番待っている雌(かた)がこの時間にここへ来るのです。」
「一番待って…いる?」
「アナタが、目覚めるのを私と同じく、ずっと待っていたのだと思います。もしかすると…アナタも一番会いたい雌(かた)なのではないでしょうか。」
「誰なんだ?」
「それは、会ってみてからのお楽しみです。」
「は?お、おい!!待て!!」

質問の答えを笑顔ではぐらかす彼を、俺はとっさに引き止めたが、彼はその場を立ち上がって病室の出入り口まで歩を進め、“アディオス、Our's HERO,Mr.JIN.”と言い残し、そのまま俺の病室を立ち去って行ってしまった。俺は、彼が立ち去った後、彼の言葉から推測する事ができる者が誰なのかを検討し始めた。“俺に…一番会いたい…ヤツ?俺が、一番会いたい…ヤツ?………。はっ!!まさか!!”彼の言葉を思い出し、俺が1つの答えへたどり着いた時、病室の入り口付近から駆け寄って来る音が聞こえた。“あっ…、綾!!”駆け寄って来た者が、俺の病室までたどり着き、ベッドの手前へ目線を向けて呼吸を整えている様を見て、俺は驚きを隠せなかった。“そうか!!カオスの言ってた事は…。”目の前で呼吸を落ち着けている者を見て、彼の言葉の意味を全て理解し始めた時、目の前に存在する者が、俺を見つめ、涙を流しつつ、俺の元へ駆け寄ってきた。

778適当:2013/05/18(土) 09:30:24 ID:q5/3bl26
「仁くん?」
「綾…。」
「仁くん…。仁く〜ん!!」

彼女は、悲願を成し遂げたと訴えるように、俺の名前を叫び、俺の胸へ自分の顔を飛び込ませた。彼女は、俺の胸へ涙を染み込ませつつ、衝撃の事実を口走って来た。

「ぐすっ…。もうダメかと思ったんだよ?だって、仁君、3ヶ月もずっと意識が戻らなくて…。私…ずっと心配していたんだよ?」
“さ…3ヶ月…だと!?”
「でも、無事に目を覚ましてくれて良かった…。えぐっ…、本当に良かったぁ…。」

“何て事だ…。俺は、愛する雌の綾に3ヶ月も心配をかけていたのか!!”彼女は“長い間ずっと俺を待ち続けていた”と告げた。そんな彼女に、俺が罪滅ぼしの為にしてやれる事は、たった1つであった。俺は、小さく“すまない。俺は、何て馬鹿雄(やろう)なんだ…。”と伝え、彼女の背中に両手を回し、彼女を抱き締めた。しばらく、彼女を慰めようと、彼女を長らく心配させた罪滅ぼしの為の、自分が唯一行う事が出来る行為をし、彼女を自分の胸から解放し、両手で彼女の涙を拭った。すると、彼女は嬉しそうに微笑み、もう一度、俺の体温を全身で感じるように抱きついた。俺は、抱きつく彼女へ再度両手を背中に回し、彼女を優しく包み込んだ。彼女が、俺の体温を感じる中、何の関係も無い、俺の膝(ひざ)の上へ乗る小さな彼女は、“ブィ?”と“何をしているかわからないよ。”と告げるように首を傾げ、俺と彼女の行為を不思議そうに眺めていた。小さな彼女の声に気づき、彼女は“え?”と声を上げ、声がした方を見やった。すると彼女は、涙ぐんでいた表情を一瞬で忘れ去り、満面の笑みを浮かべて、小さな彼女を抱きかかえた。

「わぁ〜!!可愛い〜!!」
「ぶ、ブィ!?ブィ、ブィぃぃ!!(え、ええ!?何するの!!)」

いきなり、相手の都合だけで持ち上げられ、目線の位置を胸へ持ってこさせられた小さな彼女は、驚いて声を上げ、小さな両前足と首を激しく動かし、もがき始めた。だが、彼女が“ビックリさせてごめんね。よ〜しよし。”と言葉を掛け、小さな彼女を落ち着かせるように背中を優しくなでたので、小さな彼女は安心し、動きを止めてそのまま彼女の愛情行為を受け取っていた。彼女は、小さな彼女へ行為を続けつつ、俺へなぜ小さな彼女が俺の元に身を置いているのかを訊ねた。

「くふふ。仁君、この娘って、もしかしてカオスさんが抱っこしてたイーブイ?」
「ああ。なぜ、知っている?」
「ずっと、仁君の病室まで通ってた時に、カオスさんと会って話をしたりしていたの。その時に、カオスさんは、いつもこの娘を抱っこしてたから。」
「そうか。カオスは、君の事を既に知っていたワケだな。」
「うん。仁君、それにしてもこの娘どうしたの?何で、カオスさんが仁君に預けているの?」

彼女は、更に推測を混じえて、俺へ質問を行って来た。俺は、彼女に笑顔を向け、彼女が知らないと思われる理由を告げた。

779適当:2013/05/18(土) 09:34:42 ID:GJ1dAPZc
「頼まれたんだ。」
「え?」
「この娘を育てて欲しいってな。命の恩獣(恩の借りがあるポケモンの事)のカオスの頼みなんて断れない。それに、こんな可愛い娘を貰ったんだ。断る理由なんか無いじゃないか。」
「ふ〜ん。くふふ、そうだね。」

彼女も小さな彼女を得られて嬉しいのだろう。俺が話す度に、笑顔を振りまいている。俺は、小さな彼女を見つめ、幸せそうな表情を浮かべている彼女を、自然な笑みで見守っていた。彼女が小さな彼女の首元を、猫をなでるようになでると、小さな彼女は笑いつつも、彼女の行為を阻止せんと、彼女の指を口へ運んだ。彼女は、小さな彼女がとっさに行った、回避行動に“可愛い。”と感想をつけ、小さな彼女の口から指を抜いては、首元をなでてまたくわえさせ、口から指を抜いては首元をなでてくわえさせ…。という行為を繰り返し、小さな彼女へ回避行動を何度も行わせた。小さな彼女は、彼女の行動を“からかっている”とは捉えずに、彼女に遊んで貰って嬉しいと表現しているかのように、彼女へ回避行動を積極的に行っていた。彼女も同様に、小さな彼女が積極的に行う回避行動を楽しんでいる。彼女は、小さな彼女を遊ばせつつ、俺へ名前を訊ねて来た。

「この娘の名前は決めたの?」
「ああ。」
「何って名前?」
「零だ。漢数字のゼロだ。」
「零?どうして?」

俺は、彼女へ命の恩獣(恩の借りがあるポケモン)である彼に笑われた理由を、自信に満ちた表情で告げた。

「本当の一番最初は、数字のゼロだ。この娘が、俺にとって誰よりも一番可愛い。そんな理由から、この娘に“零”と名付けた。」
「へぇ〜!!仁君、センスいい!!やるじゃん。」
「おお!!綾、やっぱり君はわかってくれるな!!」
「くふふ。当たり前だよ。仁君、頭良いもん。変で単純な理由で名前なんて付けない事位わかるよ。」

俺が小さな彼女へ与えた命名は、知的なものなのであろうか。いや、それについては今は考えない事にしよう。俺は、彼女のほめ言葉を素直に喜び、彼女が言った言葉については特に何も考えなかった。“ふっ、俺と綾はやはり気が合うな。”彼女にほめ言葉を受けた後、俺は“ありがとう。”と彼女に伝えようとした時、小さな彼女が突如、奇妙な行動を取った。

「ブィ…ブィ ブィぃぃ…。(お腹空いたよぉ。)」
「え?」

彼女は、小さな彼女が自分が唯一話す事が出来る言葉を口にしながら、起こした行動に気付き、小さな彼女の顔へ目を向けた。小さな彼女は、鼻先で彼女の胸を、一定の回数つついては、言葉を放ち、再度一定の回数つついては…。という行動を行っている。胸を何度も突かれた彼女は、一定の間隔で襲われる快感に、あわてふためき、小さな彼女の行動の抑止を図った。

780適当:2013/05/18(土) 09:47:03 ID:4dLi8bqo
「ちょ…。あん、やめて。零ちゃん。そんな所…、ツンツンしちゃダメぇ…。」
「ブィぃぃ。ブィ、ブィぃぃ。(お腹空いたぁ〜。おっぱいちょうだいよぉ。)」
「こ…こら!!零ちゃあん…いい子だから…。お願…い。」

“綾は、胸が感じやすかったが、まさか赤ん坊にまで感じられさせられるとはな…。”彼女が、小さな彼女の行動を止めさせる事に、苦労している様はなかなか面白味のあるものであった。面白いと感じつつも、小さな彼女の行動に抑止をかけたい彼女を気づかい、彼女へ自分の推測を話し、救済を出した。

「綾。」
「あっ…やめ…。え?何?」
「もしかして、零は君の“おっぱい”が欲しいんじゃないのか?」
「あっ…ああ〜!!そうだったんだぁ!!」

一般的に考えると、赤ん坊が胸を突きながら、何かを喋る事から、“空腹を満たしたい!!”と言っている事は想像がつくだろう。だが、突然小さな彼女から“空腹を満たしたい!!”と訴える行動を受けてしまった彼女は、それすらも考える余裕が無くなってしまう程、焦っていたようである。俺から、小さな彼女が取った奇妙な行動の正体を聞いた彼女は、小さな彼女から自分の胸を遠ざけ、笑顔半面、申し訳無さそうな表情を浮かべて、小さな彼女へ告げた。

「零ちゃん、ごめんね。私は、おっぱいが出ないんだ。」
「ぐっす…。ふぇ…ふぇ〜ん!!えん!!えん!!」

彼女の言葉と言動から全てを理解してしまったのか、小さな彼女は泣き出してしまった。小さな彼女が行った“泣きじゃくって、無理矢理相手に願いを聞き入れさせる”という第2の行動は、再び彼女をあわてふためかせるのは十分であった。彼女は、泣きじゃくる小さな彼女を、胸元に寄せて、頭をなでながら必死にあやしつつ、俺へ救済を求めて来た。

781適当:2013/05/18(土) 09:52:42 ID:pFdutbek
「よ〜しよし。零ちゃん、泣かないで。仁君…、どうしよう。」
「う〜ん…仕方無いな。ダメ元で使ってみるか。」

俺は、困惑した彼女を救う為、ベッドと心電図に挟まれた中央に位置する、橙色のナースコールと呼ばれる装置へ手を伸ばした。ナースコールを押してものの一分弱、看護婦の服を着た一匹のハピナスが、俺の病室へ入り、“どうなさいましたか?”と丁寧に、用件を訊ねて来た。俺は、看護婦に用件を伝えようとしたが、看護婦と似たような体色を持つ彼女が、俺より先に“ミルクが欲しい。”と伝えた。看護婦は、彼女から要求された後、誰が必要としているのかを把握する為に、彼女に抱かれている、先程泣きじゃくり、今、涙で顔を濡(ぬ)らしている彼女へ目を向けた。状況を瞬時に把握し終えた看護婦は、“わかりました。すぐに、持って来ます。お待ち下さい。”と丁寧かつ迅速(じんそく)に返答し、俺の病室から素速く廊下を駆け出して行った。看護婦が走り去った後、彼女は今にも再び泣き出しそうな、小さな彼女を泣かせまいと“大丈夫だよ。もうすぐ、ミルクが飲めるからね。”と笑顔で語りかけ、懸命にあやしていた。だが、小さな彼女はまだ0歳児。誕生(うまれ)たての赤ん坊である。当然、彼女の言う事に耳を貸し、我慢するという事が出来るハズが無い。小さな彼女は、看護婦が去ってものの一分で再び大きな声を上げて泣き出してしまった。彼女は、言葉を掛けても効果が無いと判断し、何も言わず、申し訳なさそうな表情を浮かべ、小さな彼女の背中をさすり、小さな彼女が背中をなでられる事で安心感を覚え、泣き止むという事に期待をかけ、小さな彼女へ行為を繰り返し始めた。二、三度さすっても、欲求が満たされない小さな彼女が泣き止む事は無かった。彼女は、既に困惑していたが、彼女の困惑が移ってしまったのか、俺自身も次第に不安を抱かされ、“どうすればいい…。”と、彼女が小さな彼女を懸命にあやしている姿を見て、真剣に悩んだ。“綾がダメなら…。”と、彼女の代わりに、小さな彼女をあやす事を、自分から打って出ようとした時、看護婦が勢いよく俺の病室へ駆け込み、右手に持つ白く希望された液体が入っているほ乳瓶を“遅れて、大変申し訳ありません!!”と謝罪し、彼女へ手渡した。彼女は、“ありがとう。”と返し、看護婦からほ乳瓶を受け取り、“ほら、ミルクだよ。”と泣きじゃくる小さな彼女の口元へと運んだ。小さな彼女は、目の前に現れた自分が唯一欲求を満たす事が出来る物を見ると、すぐに泣き止み小さな前足を両方使ってほ乳瓶をささえ、欲求を満たす事が出来る液体を飲み始めた。小さな彼女がようやく泣き止んだ事で、彼女は“ほっ…。”と胸をなで下ろし、小さな彼女が懸命に飲んでいる様を楽しんで眺めていた。彼女は、小さな彼女に夢中になっているので、彼女の代わりに“ありがとう、助かった。”と看護婦に感謝の言葉を述べた。看護婦は、俺の返事を受け取った後、もう一度“遅れて申し訳ありませんでした。用があれば、いつでもナースコールで呼んで下さいね?”と告げ、俺の病室を後にした。“ふぅ、一件落着だな。”小さな彼女がようやく泣き止み、静かに自分の欲求を満たす事に集中している隙を見て、俺は安心し、ため息をついた。ため息をつき終えた後、小さな彼女が作り出す表情を彼女と楽しみながら眺め始めた。彼女は、小さな彼女に微笑みかけ、感想を訊ねた。

782適当:2013/05/18(土) 09:59:31 ID:t6Ql17Og
「くふふ、おいしい?」
「ちゅう、ちゅう…んぐぅ、んぐぅ…。」

小さな彼女は、彼女に感想を訊ねられても、自分の欲求を満たす事に集中している。感想なんて返してもらわなくて構わない。なぜなら、感想を言う以上の可愛さ溢れる表情と生きようとしている懸命さが見えるからだ。俺と彼女は、それだけで満足出来た。これが、本当の親になるという事を実感した証拠なのだろう。だが、俺が見るだけで満足出来るハズは無かった。小さな彼女の可愛らしい表情を、彼女よりも遠くで見つめている内に、“俺も、零にミルクを飲ませてあげたい!!”という、新たな欲求に駆られ、じれったく感じ、彼女へ要求を行った。

「なぁ、綾。」
「うん?なぁ〜に?」
「俺も、零にミルクをあげたいんだが…。」

すると、彼女はいたずら気に微笑み、俺へ拒否の意思を示して来た。

「くふふ、だぁ〜め。」
「は?どうして?」
「だって仁君、私にずうっ〜と心配かけたんだよ?」
「くっ…。じゃあ、どうすればいい?」

彼女は、ほんの少し顔を赤く染めて、俺へ要求を行って来た。

「キス…してくれたらいいよ?」
「キス?ここは、病室だ。公衆の面前でキスなんか…」
「じゃあ、抱っこさせてあ〜げないっ。」

“くっ…。ちっ…。”彼女が愛して欲しいと欲求している事は、俺にも十分にわかる。だが、指導権を握られた俺は、心の中で舌打ちをし、悔しんでいた。悔しみの感情を抱かされつつも、小さな彼女を再び、自分の胸元まで引き寄せたかったので、仕方無く彼女の要求を呑み、“こっちへ来い。君の望み通りキスしてやる。”と言い放った。彼女は、小さな彼女を抱きながら、ほ乳瓶の中身を与えつつ、嬉しそうな表情を浮かべて、俺に近寄った。俺は、近寄った彼女の頬(ほほ)に両手を当て、彼女の唇と、自分の唇を接触させた。彼女は、満足したのか、俺の口付けを受けた後、俺へ感謝し、小さな彼女をほ乳瓶ごと手渡した。

「仁君、ありがとう。はい、どうぞ。」
「ああ、ありがとう。って、綾ぁぁ…。ミルクが無いじゃないか。」

俺は、空のほ乳瓶をくわえたままの小さな彼女を手渡され、自分だけ欲求を満たした彼女へ怒った表情を向けた。すると、彼女はいたずら気に微笑み、俺を更に腹立たせる一言を言い放った。

「くすくすくす。仁君、“こわいかお”なんて使えたっけ?」
「綾、ふざけるのもいい加減にしろよ?本気で怒るぞ?」
「ふふ、ごめんね。ほ乳瓶取ったら、可愛いい零ちゃんが見れるかもよ?」

“ふざけやがって…”心の中で、彼女へ怒りを露(あら)わにするが、彼女の提案をひとまず受け入れ、小さな彼女がくわえているほ乳瓶を抜き取った。すると、小さな彼女は俺を絶句させる声と表情を放った。

「ちゅ…ぷひやぁ」
「あ…。」
「わぁ〜!!零ちゃん、可愛い〜!!」

彼女は、感想を言い、俺から小さな彼女を取り上げる一方で、俺は小さな彼女が見せた、予想さえも出来無い言いようも無い可愛さに、心の芯を貫かれ、何も出来なくなってしまった。“か…可愛過ぎる…。俺は…零の何を見て来たんだ…。”小さな彼女へ呆然とした表情を向けて、小さな彼女と過ごした時間を1つ1つ振り返っていると、小さな彼女は、“くわぁ…。”と子犬のように欠伸をし、目をウトウトし始めた。“そうか、疲れたのか。”俺は、小さな彼女が今にも眠ってしまいそうな様子を見て、小さな彼女と過ごした時間を振り返る事を止め、彼女へ指示を出した。

「綾。君は、家に帰るんだ。零を寝かせてやってくれ。」
「うん。零ちゃんは、おねむだからね。」
「ああ。」

俺の返事を受けた後、彼女は“じゃあね。仁君、お大事に。”と優しい笑みを向けて俺を気遣う言葉をかけて、小さな彼女を連れて、病室を後にした。俺は、今幸せ者なのだろう。未知種族(未知のポケモン。特に、個体数が少ないポケモンを指す)のミュウの綾が、愛する雌であり、命の恩獣(恩を受けたポケモンを指す)である彼に救われ、彼から言葉では形容も出来無い程の可愛い雌のイーブイの赤ん坊を手に入れる事が出来たのだから。

783適当:2013/05/18(土) 10:05:18 ID:7dFcfRlE
本当の最後の番人である彼に助けてもらい、あの病院で3ヶ月の集中治療を行い、意識を戻した所で更に1ヶ月の療養期間を経て、俺は無事退院し、今はPIA(ポケモンのアメリカの諜報機関)に所属している。所属はしたものの、自分の希望する特殊工作員、エージェントにはならず、彼が立ち上げたPIAの裏特殊部隊のNo.2を務める事となった。ポケモンが住む州の大統領や政府の連中は、“あの【GOD TEXT】を壊滅させたのだから、君しかエージェントを務まる者はいない!!”と強く推して来たが、命の恩獣(恩の借りがあるポケモン)である“彼”に、恩返しがしたいという事で、エージェントを断り、彼の創設した部隊へ身を置いた。そして、今日が最初の裏特殊部隊メンバーへの顔合わせとなる。もちろん、俺が来る事は誰一匹としてわかっていない。だが、俺は彼から、誰がメンバーなのかを耳にしている為、メンバーと顔合わせをしても驚く事は無く、彼から耳にした時の驚きだけで済むハズであろう。俺は今、彼と廊下を歩いている。共に、裏特殊部隊 作戦会議室へと続く廊下を歩いている。共に、廊下を一歩、一歩進んでいる最中、彼は嬉しそうな表情で俺へ訊ねる。

「ふふ。それにしても、まさかアナタが私の元に来て下さるとは光栄です。どういう展開(かぜ)のいきさつですか?」

俺は、彼へ理由を答える。

「ふっ、恩返し…ってだけじゃダメか?」
「いえ、十分です。これが理由なら、喜ばしい限りです。」
「“雄は、二言語らない。”俺は、これ以外に理由は無い。誰がメンバーだろうと…な。」

“これ以外に理由は無い”と俺は、彼へ断言しまった。だが、果たしてそうであろうか。自分の死闘相手であり、彼の直属の部下である彼女達にもう一度、ただ会ってみたかっただけなのかもしれない。俺は、彼から誰々がメンバーである事を告げられた後に、エージェントの申し出を断ったので、自分では気付かない下心が、もしかするとあるのかもしれない。下心…。いやらしい言い方だ。下心では無く、彼女達の全員の無事を確認したいと言った方が正しい。と、俺は自分を信じているが、実際の所は、彼女達に会ってみなければわからない。彼は、俺が下らない事を気にする中、何かを企むようで、何も企んではいない、ほんの少しだけ悪タイプにふさわしい笑みを浮かべ、俺へ言う。

「“仁さんが来た!!”と知ったら、あの娘達はビックリするでしょう。」
「敵が仲間になるからな。」
「ふふふ、果たしてそれが理由でしょうか。」
「は?」

彼に返答を受けても、俺は意味がわからず首を傾げた。“自分が来ると驚く…。どうして?”と彼の言葉を考える間も無く、彼女達が味方として待ち受ける作戦会議室へいつの間にかたどり着き、彼に続いて足を踏み入れた。足を踏み入れ、誰がいるのかを把握しようと、周りを見渡した時、俺は驚いて目を見開く。

784適当:2013/05/18(土) 10:15:22 ID:vwGEorS6
「あっ…。全員…いる。」
「あはは、アナタのおかげです。あの娘達が、元帥様に処刑されずに済んだのも、あの娘達が笑っているのも。」

彼は、自分達を自由にしてくれた事へ感謝の言葉を述べて来たが、俺は未だに驚きを隠せない。彼からは、確かに“あの時闘った番人が仲間だ。”と言われたが、“全員が揃っている”とは一言も聞いてなかったのである。特に、今自分からさほど離れていない場所へ存在している、あの少女が生きている事には驚きを隠せない。奥には、【氾濫】の間の番人である彼女も存在していた。彼女が生きている事にも、驚きを隠せなかった。実は、この2匹がメンバーであるとは彼の告げた内容には含まれていなかった。俺は、彼が告げた内容が全てだと認識していたので、“やはり…間に合わなかったか。だが、他の隊員(ヤツ)を救えて良かった。”と彼の話を耳にした後に、思いこんでいた。俺自身は、本当に全員救えるとは、みじんも思っていなかったので、驚きを隠せず、つい現実に露(あら)わにしてしまうのは当然の理(ことわり)なのだろう。“信じられん…。”と驚き続けている俺に、あの少女と少女の親友が気づき、前者が目に涙を浮かべ、俺の名前を呼びつつ、駆け寄って来た。

「あっ…お兄…ちゃん?」
「フィア…。」
「お兄ちゃん。お兄いちゃあ〜ん!!」

少女が勢いよく駆けて来た所を、俺は受け止め、彼女の頭をなでて“また、君に会えて良かった。死なずにいてくれて、俺は嬉しい。”と彼女に故意ではない、素直な言葉をかけた。彼女は、嬉しさのあまり俺の胸に顔をうずめたまま、大声で泣くが、周りを気にしているのか、それとも短時間で体の涙を出し切ったのか、泣き止み“私も…。お兄ちゃんに会えて嬉しいよ。”と小さく尻尾をゆらしつつ、返答して来た。“尻尾か…、嬉しいと表現する上ではもっともわかりやすい伝え方だ。だが、尻尾を感情で振らなくなったのは、いつからだろう。中学卒業以来、嬉しさを体で表現する事が無くなったな。”俺は、少女が表情と尻尾を一致させている瞬間、瞬間に、“若いっていいな。”としみじみと感じていた。ものの、二分、三分程経った所で、少女を抱き締めるのは“もういいだろう。”と思い、彼女から離れようと考えたが、彼女がずっと抱きついているので、俺は身動きを取る事は出来無い。少女が俺の体温を感じている中、少女の親友が不満気な表情を浮かべて、彼女へ要求する。

「フィア、そろそろ離れてもいいじゃんか。僕も、ピカチュウ君とフィアと同じ事したいんだよ?」
「あっ…サン、ごめん…。」

親友に要求されて、少女は顔をほんの少し赤らめて、恥ずかしそうに俺の体から身を離した。少女が体から離れた所で、少女の親友はイスから降り、俺の元へ駆け寄り、彼女らしい軽い態度で、俺へ接して来た。

785適当:2013/05/18(土) 10:21:13 ID:FYuYzEiA
「やっほー。ピカチュウ君、また会えたね。」
「ああ。君達に会えるとは思わなかった。ここへ来て正解なのかもな。」
「僕もフィアもピカチュウ君に会えて嬉しい。だから、僕もハグして“いい子、いい子”して?」

“はぁ…。しょうが無いな。綾に見られたら、殺されそうだが、いないから問題は…無い。”少女の親友は、少女に与えた行為と同じ行為を求めて来た。ここで断る事も出来るが、それだと少女だけを贔屓(ひいき)していると指摘してくるだろう。また、彼女は本当に嬉しそうな表情を浮かべ、その中には、俺に甘えるような上目遣いを使っているので、そんな彼女を無慈悲に拒否するワケにはいかない。“ワケにはいかない”というより、“出来無い”と言った方が正しいだろう。俺は、心の中で“仕方無いなぁ”とつぶやき、少女の親友の要求を受け、彼女の首の周りに生える棘(とげ)のような鋭く、白色の毛に注意しつつ、彼女を抱き締め、頭を優しくなでた。彼女は、周りを気にしている様子は無く、自然な態度で俺の体温を感じていたが、自分の言葉に責任を持っていたのか、少女よりも短い時間だけ、俺の行為を受けて俺から身を離した。その後すぐに、嬉しいような、何かを企むような、いたずら気で彼女らしい笑みを浮かべている様を見て、“コイツ。”と彼女の額を指で小突きたかったが、遠くで落ち着いてはいるが、本当は自分にもやって欲しいと訴えるような、静かな笑みを浮かべつつ、タバコをくわえている【光】の間の番人であった彼女の目線を気にして、自分の思うままの行動は起こさなかった。少女の親友は“フィさんなら大丈夫だよ。たぶん…。”と言っているが、みじんたりとも大丈夫だとは思えない。【光】の間の番人であった彼女へ警戒を置いていたので、彼女の発言を根拠の無い発言だと感じ、少女と少女の親友の元を離れ、タバコを口へくわえている彼女の元へ駆け寄り、一言交わす。

「また会ったな、フィ。」

俺から声を掛けられると、彼女は口にくわえているタバコを前足にはさみ、口から離し、白煙を吐き出した所で、俺との会話に集中したいのか、タバコを目の前の灰皿に押しつけて火を断った。その後すぐに、俺と死闘を繰り広げた時のように、見るからに妖しい笑みを浮かべ、挨拶を返しつつも、相手を試すかのような質問をぶつけて来る。

「うふふ…。そうね、子ねずみちゃん。」
「子供じゃない。子供がこんな所に来れるワケが無いじゃないか。」
「そう?でも、私はアナタの事を“可愛い雄”と思っているから、そう呼ばせてもらうわ。」
「そうか。じゃあ、そうすればいい。」
「ところで…、やっぱり私よりも“サンちゃん”や“フィアちゃん”の方がよろしくて?」

“はぁ…どう言おうか。”彼女に質問を受けてもすぐには返答出来ず、俺は頭を悩ませた。数分…といっても5分程だろうか。5分程、考えても返答する事が出来無い俺の代弁をしようとしたのか、それとも他の意図があったのか、いつの間にか俺の後ろに付いて来ていた少女の親友が、彼女へ言い放つ。

786適当:2013/05/18(土) 10:27:12 ID:iYL/YwRQ
「フィさん、さっきのを見てわからないかなぁ?」
「うん?何か言った?サンちゃん。」
「僕とフィアみたいな娘が、ピカチュウ君は好きなんだよ。」
「そうかしら?子ねずみちゃん?どうなの?」

“いや…そんな風に訊かれてもな…。”俺は、少女の親友の助け舟、彼女の“まるで自分を選んで欲しい”と言うような発言を受けて、すぐに返答する事をさせられず、困惑していた。“やっぱり、どっちがなんて言うワケにはいかない。”俺は、彼女達が誰一匹、気分を害さないように質問の答えをはぐらかす。

「ん?あ、ああ…。まず、サンもフィアもフィも、雌(女性)のタイプが違うじゃないか。しゃべりも違うし、振る舞いも違うし…。それに…」
「種族も違う…って事かしら?」
「あ、ああ!!そうだ。なんだフィ、わかっているじゃないか。俺は、別に君達をどうこうしようとしているワケじゃない。まぁ、それぞれ個性的で…いいんじゃないか?」
「うん、それもそうだね。」

“本当に納得してくれたのか?”少女の親友から、笑顔で相づちを受けるも、彼女達が自分の答えた理由に納得しているような、表情を作っているようには見えなかったので、俺の心(なか)で不安が募(つの)り始めた。“サンちゃんの言う通りね。”と彼女は、“納得した”と俺へ伝えては来たが、俺は自然に申し訳無さそうな表情を作り出してしまっていたのか、彼女は怪訝(けげん)そうな表情を浮かべて、俺を安心させるような、俺の態度を単に疑うような質問を行う。

「どうしたの?私は、別に怒ってないわよ?」
「そ、そうか。」
「サンちゃんも怒ってないわよね?それから、今さっき来たフィアちゃんも。」
「うん、怒ってないよ。ねぇ〜フィア?」
「うん。誰を好きになろうと、それはお兄ちゃんの勝手。お兄ちゃんが、答えてくれなくても別にいいよ?」

“それなら、いいのだが。”いつの間にか自分の後ろにいた少女を含む、彼女達の返答を素直に受け取る事にし、彼女達の中で一番誰に好意を寄せているのか、そもそも彼女がいるのに、好意があるのかを自分自身に問う事を止め、彼女達の顔を見渡し、“ありがとう。”とだけ返し、彼女の元を離れ、彼女に行った時と同様に、会釈をかわそうと左へ目を向けた。左を見ると、【業火】の間の番人であった彼女と、【零下】の間の番人であった彼女が、何やら楽しそうに笑っており、前者の背中には、俺の娘と同様におしめをはいており、前者の背中で楽しそうにさはしゃいでいる一匹のピチューがいた。“あれ?誰の子なんだ?”俺は、彼女に疑問を訊ねる。

787適当:2013/05/18(土) 10:33:51 ID:eA20ZRR.
「フィ、あのピチューは誰の子なんだ?」
「うふふ、シャーズの子よ。」
「シャーズ。」
「ええ。ちょうど、2ヶ月前だったかしら?無事に、卵を産んで二週間前に誕生(かえ)ったんですって。」

“生後二週間か…。生まれたばかりだな。”彼女の言葉を耳にして、俺は【業火】の間の番人であった彼女の背中に乗って楽しそうにはしゃいでいる、生まれて間もない子を眺めていた。俺が眺めている途中、少女の親友が生まれて間もない子とじゃれている彼女達を批判する。

「うわ…よく、どこの誰かもわからない雄の子供可愛がれるよね。」
「可愛いじゃないか。君達も、触って来ればいいじゃないか。」
「えぇ〜いやだよ。ねぇ〜フィア?」
「うん。私もサンと同じ。フィさんも?」
「いいえ。私は、自分の子供以外愛を注がない主義なの。まぁ、今はいないけど、いずれそうなるかしら?」

“変わってるな…。雌にも、すぐに母性本能が働くヤツと、すぐには働かないヤツがいるのか。”俺は、彼女達の意見に首を傾げ、彼女達の発言から自分の既知の情報をあらため、彼女達が“興味が無い。触りたく無い。”と主張するも、俺自身は生まれて間もない子を気になっていたので、彼女達を置いて、生まれたての子の元へと歩を進めた。

「ピチュウ!!ピチュうぅぅ!!(楽しい〜!!)」
「ははっ!!コイツ、調子に乗るんじゃねぇよ。」
「ふふっ。スター、この子に罰を与えたら?」
「そうだな。くらえ!!このやろう!!」

生まれて間もない子は、【業火】の間の番人であった彼女の背中で、馬(馬獣 馬型のポケモン)を乗り回すように、上下に動いて、楽しそうに笑っていた。【業火】の間の番人であった彼女は、【零下】の間の番人であった彼女の提案を受け入れ、背中から生まれて間もない子を下ろし、腹部をくすぐっている。“スターとシーアは、子供が好きなんだな。”生まれて間もない子と、その子とじゃれあって楽しそうにしている彼女達の元に向かいつつ、様子を眺めていると、生まれて間もない子とじゃれあっている彼女達が俺の足音に気づき、俺を見て驚き声を上げた。

「ははっ!!他獣(他人)様の背中であばれ…は?はぁ!?」
「ふふふ、スターを怒らせると恐…え?ええ!?」

俺は、驚いて目の前の光景を疑っている彼女達に微笑みかけ、彼女達へ会釈(えしゃく)する。

788適当:2013/05/18(土) 10:41:19 ID:yJJ6SiaY
「やあ、久しぶりだな。スター、シーア?」
「てめぇ…。何でここにいるんだよ!!」
「そうよ!!小僧さん、理由を簡潔に述べなさい!!」

俺の会釈(えしゃく)をうけても、彼女達は俺を忌み嫌っていると訴えかけるように、俺に鋭い眼光を浴びせた。彼女達の内の一匹は、俺に“ここへ来た理由”を問うて来た。俺は、彼女達へ理由を答えた。

「俺は、カオスに助けられた。俺は、その恩返しをする為にここへ来た。それだけだ。」
「だからって、来るんじゃねぇよ!!別に恩なんか返さなくったっていいじゃねぇか!!」
「そうよ!!あれ?そう…なの?」

【零下】の間の番人であった彼女は、【業火】の間の番人であった彼女の意見に同意するも、途中で疑問を感じてしまった為か、怒りの表情の途中で、ほんの少しだけきょとんとした表情を浮かべている。すると、疑問を抱く彼女へ、命の恩獣(恩の借りがあるポケモン)である彼が、答えを明かす。

「私は、仁さんが来てくれてとても嬉しいです。スター、もう一度言ってみなさい。彼の命を救った私へ、彼は“恩返しをする必要は無いのですか?”」

彼は、厳しい目を向けて、【業火】の間の番人であった彼女へ訊ね返した。すると、彼女は急に焦りだし、強調構文を用いて、彼へ許しを請(こ)う。

「あ…ああー!!違いますよ!!“I wrong to choice talking message!!I aporogize to displeased you!!”(言い間違えました。変な気分にさせて、すみませんカオス様!!)」
「“Yes.You should keep your mind saying your message.”(わかりました。さっきの言葉を胸に刻んでおきなさい。)」
「“Yes Sir!!”(了解しました!!)」

“スターも、カオスには頭を上げられないんだな。まぁ、身長差があり過ぎるし、悪タイプだから何を考えているかわからないからな。”【業火】の間の番人であった彼女は、彼の強調構文を用いた忠告を受けて、前足の側面を額に当てて、彼へ忠義を示す敬礼を行った。俺は、彼女が急にあわて、自分の意見を撤回し、彼へ敬意を示した事を必然であると考え、彼女へ笑わずに質問を訊ねる。

「ところで…。スター、君は意外だな。」
「そ…あ?何でだよ?」

彼女は、話し相手が俺であると一瞬で把握すると、態度と表情を変え、俺へ訊き返した。俺は、彼女へからかいの意図は無い、いたずら気な微笑みを向け、理由を言い放つ。

「ふっ、子供と楽しそうに遊んでいるじゃないか。」
「ああ?遊んでちゃ悪りぃかよ?」
「違う。シーアならまだわかる。だが、君がそんな優しい娘だとは思わなかったな。」
「は…は?あ、ああ…そうかよ。つーか、シャーズと喋れよ。お前がいると、調子狂うんだよ。」
「あっはっは。じゃ、お言葉に甘えて。」

俺は、【業火】の間の番人であった彼女の“他の隊員(ヤツ)と会話しろ”という返事をもらうと、彼女へ笑みを向けて感謝し、生まれて間もない子とじゃれあっている彼女達を温かい目で見つめていた。数十秒見終えた後、【氾濫】の間の番人であった彼女へ歩み寄り、微笑み話しかける。

789適当:2013/05/18(土) 10:49:57 ID:qMSFR66I
「シャーズ。」
「坊や、アナタのお陰よ。アナタが私を救ってくれたの。だから、今生きてここにいられるのよ。」
「そうか。」
「ま、私だけじゃないわ。他も、それからカオス様も然(しか)りね。」

【氾濫】の間の番人であった彼女は、死闘を繰り広げた時に見せた悪意ある怪しい笑みの気配は見せず、ただ、ただ、優しい笑みを向けていた。彼女は、俺に深く感謝し、“他も俺に感謝している”と告げて来た。俺は、彼女を救った事を必然であると述べる。

「当然だ。俺は君を裏切らせてしまったんだ。救える時は、救うのが当たり前だ。」
「うふふ、カッコイイ事言ってくれるわね?だから、私はアナタの事が好きなのよ?」
「やめてくれ。照れるじゃないか。」

彼女へは“照れる”と言ったが、実際には、“照れの感情”を抱いてはいない。彼女へ、深く感謝するつもりで発言した、社交辞令のようなものと言った方がわかりやすいだろう。彼女は、俺の返答を嬉しそうに受け取り、優しい微笑みを浮かべて、質問を訊ねる。

「ところで、坊や。」
「何だ?」
「この子、誰の子だと思うかしら?」
「さぁ、わからない。でも、君の子なんだから…」
「驚くでしょうけど、アナタの子よ。」

“は?コイツ…今、何て言ったんだ…。”彼女が優しく微笑みながらも放った、耳を疑いたくなるような発言に、俺は背中から一瞬冷や汗がにじみ出た。彼女が唐突に打ち明けた真実は、俺だけが聞いたワケではない。先程まで、生まれて間もない子とじゃれあっていた彼女達も、耳を疑ってしまう真実を口にした彼女の方へ振り向き、その内の一匹が彼女へ訊き返す。

「は…。おい、シャーズ。今、何って言った…」
「くすくすくす。そのピチューは、“坊やの子供”って言ったの。」
「坊やって…まさか、ガキの?」
「アナタはそう呼ぶのね?そうよ。私の目の前にいる、す・て・き・な雄のピカチュウの子よ。」

“は…はぁぁぁ!?お…俺の子供だったのか!!”彼女が上品な笑いを浮かべた後に放った言葉は、会議室の隊員達を驚愕させた。無論、俺と生まれて間もない子とじゃれあっていた彼女達は、“はぁ!?”や“えぇ!?”という驚きの感情を発散させてしまい、俺と彼女達から距離を置いて、他の雄の子を可愛がるような目を向けた俺を、おそらく不思議そうに眺めていたと思われる。少女と、少女の親友も同時に“えぇぇぇ!?”と声を揃えて驚いた。少女と少女の親友の近くにいた彼女も、余裕の態度を崩される程、俺の目の前にいる彼女の告白は衝撃の一言であった。自分自身が驚きの感情を発散させつつ、自分とほぼ同時に驚きの感情を表へだしてしまっている彼女達の声を耳にした後、彼女は、全員が驚く事が“わかっていた”と言うように、全員の顔をそれぞれ見回し、俺に笑顔を向け、感謝の言葉を述べる。

「やっぱり、みんな知らなかったようね。くすくす、ありがとう坊や。アナタのおかげでこんな可愛い、男の子のピチューを授かる事が出来たわ。“Dankesehr Sie.”(ありがとう、坊や)」

“ありがとう”ともう一度言ったのだろうか。俺は、彼女の出身国で用いられる強調構文を耳にしつつも、一旦深呼吸をし、心を落ち着かせ、彼女へ生まれて間もない子の名前を問う。

790適当:2013/05/18(土) 10:54:47 ID:LmFxxJRg
「ふぅ…。シャーズ、この子の名前は?」
「ミッシェルよ。」
「ミッシェル…か。」
「いい名前でしょう?」

“悪くは無い。ミッシェル…何となくドイツっぽいな。”彼女の質問に対し、俺は首をうなずかせて肯定の意思を示し、生まれて間もない子が、俺がいる方へ頭を向け、床に敷かれた青い絨毯に仰向けになり、俺と俺のすぐ近くの彼女をじっと見つめている様を見た。“本当に俺の子…なのか?”生まれて間もない子が、仰向けになってまるで、俺を親と感じ取っているかのようにじっと見つめる中、俺は、彼が本当に自分の子なのかどうかを確認する為、自分の体の特徴が彼に存在するかどうかを探した。すると、彼の耳は、自分と似たような、黒で塗りつぶされる部分が雷の形を描いている耳となっていた。“あっ…この子は、本当に俺の子なんだ…。”何の感情を抱いた為かわからなかったが、俺は気がつくと、生まれて間もない子へ一歩、一歩向かっている。生まれて間もない子の元に、後、二、三歩でたどりつく時、先程まで生まれて間もない子とじゃれていた彼女達が、驚愕の真実を口にした彼女が話した真実を強く否定する。

「う…ウソだろ!!ありえねぇよ!!ガキ、ミッシェルに近寄んな!!こんな可愛いピチューがてめぇの子種から生まれるワケねぇじゃねぇか!!」
「そうよ!!シャーズさん、それから小僧さん。ふざけているの?ミッシェルは、アナタとシャーズさんの間で生まれた子なんかじゃない!!」

強く反論を飛ばす彼女達に、俺は小さく首を振って否定の意思を示し、彼女達へ“自分の子供である”と確信を持った理由を告げる。

「いや、俺も違うと思った。だが、シャーズの言う事は本当だ。俺の耳と、その子の耳が似ているんだ。君達もわかるだろう?俺のような、黒い部分が雷の形をしているピカチュウはそうそういない。ミッシェルは、その耳を持っている。それに…シャーズがウソをついているようには見えない。」
「あっ…そ、そんなぁぁ…。」

俺の理由を耳に入れすぐに、生まれて間もない子の耳を確認した、【零下】の間の番人であった彼女は、認めたくない真実が現実のものであると認識してしまい、愕然(がくぜん)とした。彼女と共に、反論していた彼女も、生まれて間もない子の耳へ目を向けた後、“ま…マジかよ…。”と目の前にある光景を疑いつつも、認めたくない真実を認めた。俺は、彼女達が自分の告げた理由を受け入れ、それぞれの反応を示している様を見て、“許可が下りた”と解釈し、再び歩を進めた。生まれて間もない子の頭上へたどり着くと、俺は無意識に、生まれて間もない子を抱き上げていた。生まれて間もない子は、いきなり抱き上げられても驚きはしなかったが、まるで俺を親と認識していたかのように、反論を飛ばした彼女達には見せなかった、安心した表情を浮かべ、甘えるような目でじっと俺を見つめる。俺は、生まれて間もない子の頭をなでて、彼が喜んだ所で、彼の母親である彼女へ体を向け、自然な笑みをこぼして感想をつぶやく。

791適当:2013/05/18(土) 11:01:40 ID:rMRHUrGs
「ふっ、可愛いな。」
「うふふ、そうでしょう?アナタに、似たのよ。耳だけじゃなくってね。」
「俺は、雄だ。可愛いなんて言うな。」
「お世辞じゃないから、しょうがないじゃない。“You are very cute him too.”(ミッシェルも坊やと同じくとても可愛い。)」
「はぁ…。いい加減しろ、なぐるぞ?」

彼女へは、暴言を吐いたが、彼女へ警告を飛ばしたワケではない。ただ単に、“調子に乗るな”と冗談を言っただけである。彼女も俺の放った暴言が冗談である理解し、“くすくす。暴力的なお父さんね。”と笑って、言い返して来た。“調子のいいヤツめ。”彼女が上品に笑う所に、額を小突いてやろうと考えたが、遠くにいた少女と少女の親友が嬉しそうに、俺へ確認を取る。

「えぇ!?本当にピカチュウ君の赤ちゃんなの?」
「ああ、そうらしい。」
「お兄いちゃん!!触ってもいい?」
「ああ。」

俺の肯定の返事を受け取ると、少女と少女の親友は我先にと、俺の元へ駆け出して来た。先にたどり着いたのは、少女であった。会議室の光が、彼女の素速さを上げる特性を引き出したのだろうか。少女は、俺の元へたどり着くと、急いで俺の前に着座し、“抱っこさせて!!”と要求して来た。俺は、もちろん断るつもりは無い。俺は、許可を出して、生まれて間もない子を少女に抱かせた。少女が、俺から生まれて間もない子を受け取った直後に、少女の親友が息を切らしてたどり着き、少女へうろたえる。

「はぁ…はぁ…。フィア、早過ぎだよ。」
「だって、お兄いちゃんの赤ちゃんなんだもん。早く抱っこしたいじゃん。」
「むぅぅ!!じゃんけんだぁ!!」
「だめだよぉ〜だ。サンは、私の次。」

彼女達は、小競り合いを繰り広げる程、俺の子でもある生まれて間もない子を一早く抱き上げ、可愛がりたいようである。少女の親友は、少女の言う事に納得出来ず、不満気な表情を貫いたまま、“だめ!!公平にじゃんけんだぁ!!”と異論を唱えるも、少女は、彼女を無視して“わぁ〜!!可愛いい!!”と一匹でにはしゃぎ、生まれて間もない子の頬(ほほ)を前足でつつき出した。生まれて間もない子は、つつかれては少し両目を激しく閉じるという動作を繰り返していたが、嫌悪を示す表情は一切浮かべず、次第に、現時点で話せる言語(俗に言う、ピチューの鳴き声)を放ちつつ、喜んでいる。“俺の子供ってわかった途端、こうなるのか。”と、少女が俺の子供とじゃれあい、少女の親友がうらめしそうな目で少女を見つめている様を見て、そう思いつつも、俺はすぐに頭を悩ませた。それは、生まれて間もない子を産んだ母親とどのような関係を築いていくかという事であった。“俺には、綾がいる。シャーズ…すまない。”俺は、生まれて間もない子の母親へ申し訳なさそうな表情を浮かべて、彼女へ謝罪する。

「シャーズ…。俺には、既に妻がいるんだ。君の夫にはなれない。本当にすまない。」
「坊や、いいのよ。私は、この子を授かっただけで幸せだから。アナタを夫に出来なくても、私がこの子をアナタのような、優しくて強い男の子に育てるわ。」
「そうか…。」

俺が心から謝罪する為に、彼女へ返答し終えた後、“本当に、すまない”と頭を下げようとすると、生まれて間もない子を可愛がっていた彼女達が、怒りの表情を浮かべ、俺へ怒号を飛ばす。

792適当:2013/05/18(土) 11:05:31 ID:qmnUb9Kw
「ガキ!!てめぇ、最低だな!!自分の子種をシャーズに植え付けといて、シャーズが生んだら、他に雌(おんな)がいるからだぁ?ふざけんのも大概にしろよ!!」
「スターの言い方は、悪いけどその通りよ!!小僧さん、アナタ本っ当に最低な雄ね!!“What you arestupid male!!Get out here!!”(この最低、雄(やろう)!!ここから出て行け!!)」
「“You are very son of a bitch male!!Fuck you!!”(クソ雄(やろう)が!!くたばれ!!)」

“うっ…ヒドい言われようだ…。”俺は、彼女達から強調構文を含む罵声を浴びても、何も言い返す事は出来無かった。彼女達へは、申し訳なさそうな表情を向け続けて、無理矢理理由を受け取ってくれるまで黙る事しか出来無かった。俺が、何も言い返せない中、少女と少女の親友が悲しげな表情で俺を説得する。

「お兄ちゃん、ミッシェルが嫌いなの?」
「嫌いじゃない。ただ…」
「シーアさんの言う通りだと思う。しょうがないって言いたいんだよね?でも、それじゃあミッシェル君が可哀想じゃんか。」
「可哀…想?」
「よく考えてピカチュウ君。この子が大きくなったら、シャーズさんは“実は、パパはいない。”って答えなくちゃならないんだよ?ピカチュウ君は、そんなヒドい雄なの?」
「お兄ちゃんは違うよね?そんな雄を、私も、サンも、好きになるハズないもん。」

“あっ…。そうか…。俺は…俺は!!”俺は、彼女達に“よく意味を考えろ”と言われ、重大な事をあまりにも無責任に扱っていた事に気づかされ、“放棄してはいけない。どんな理由があろうと、この子は俺の本当(じつ)の子。シャーズを妻にしないワケにはいかない!!”と改めて決心し、生まれて間もない子の母親に真剣な表情を向け、“責任を取る”と告げた。

「シャーズ、俺はどうかしていたようだ。」
「どうかしていた…って…」
「俺の妻になってくれないか?」
「えぇ!?坊や…何を言って…」
「冗談でも何でもない。これが、俺の答えだ。シャーズ、“Do you marry me?”(俺と結婚してくれないか?)“We create future for our child”(この子の未来を俺達で創ろう。)」

俺の決意を固めた告白を受けて、生まれて間もない子の母親である彼女は、歓喜の涙を流し、涙声ながらも、俺へ明確な肯定の意思を告げる。

「ぐっす…。“Yes of corse!!Is that things true?(もちろん!!本当に…結婚してくれるの?)」
「ああ。証拠を見せてやる。」
「証拠?えっ?うわぁ!!」

793適当:2013/05/18(土) 11:08:22 ID:qmnUb9Kw
俺は、自分が決意を告げた彼女を、強く抱き寄せた。彼女は、初めは驚くが、次第に俺の行為を素直に受け取り、俺の背中へ手を回し“ダンケシェア、ミィーア、ゲファレン、ズィー”と俺の耳元でささやいた。“ありがとう、愛している。”と言っているのだろうか。いや、そうに違いない。彼女は、俺から自分で離れようとはせず、俺が許す限り俺の体温を感じ取っている。俺が、彼女を抱き締めた俺の言葉が真実であると認識した周囲の隊員達は、それぞれの口調で“やったぁ!!”と歓声を上げた。周囲の彼女達の歓声を受けしばらく彼女を抱き締めると、俺は彼女は解放し、彼女へ言葉を紡ぐ。

「俺は、この子が成長した時に、君に“実は、お父さんはいない”なんて言わせたくない。俺も、この子に“父親はいない”と悲しませたくない。君だって、この子言えないだろう?“お父さんがいない”なんてな。」
「くすくす。その通りね。でも、坊や、ハッキリ言ってくれないかしら?私を愛しているの?愛していないの?」

決意を告げた彼女が涙で顔を濡らしつつも、上品な微笑みで、行って来た質問に対し、俺は、すぐには返答せずに、彼女の唇に自分の舌を接触させ、自然な笑みを向け、彼女へ明確な答えを告げる。

「ああ!!愛しているぞ。綾は、俺が説得する。きっと、綾も受け入れてくれるだろう。今日から、君は俺の妻だ。“I make you happy life”(俺が、君を幸せにしてやる。)“Don't you say me disagreement,follow me(黙って、俺について来い。)」

すると、彼女は自分から俺に抱きつき、俺だけに聞こえるように、小さな声で“Thank you my derin.I love you forever.(ありがとう、坊や。ずっと愛しているわ。)と告げたしばらく彼女から、行為を受けると思ったが、俺と俺の周囲に存在する彼女達が繰り広げた寸劇を見ていた、命の恩獣であり、全員をまとめる司令官である彼が、咳払いをし指示を出す。

「ゴホン…。シャーズ、良かったですね。さて、もうそろそろよろしいでしょうか?会議を始めますので、指定の席へお戻り下さい。」

彼の指示を受けて、彼女と俺は“はっ”とした表情を浮かべて、それぞれ急いで指定された席へと向かい、着席した。遠くから、俺と彼女の寸劇を見守っていた彼女以外の隊員達も、彼の指示を耳に入れた後、すぐに行動を開始した。生まれて間もない子を抱いていた少女は、俺の新しい妻である彼女に、彼を手渡し、自分の親友の後を追いかけて、急いで反対側へと回り着席した。全員席へ着席した所で、司令官である彼は、一番前方にある机に向かい、歩き出す。俺は、席へ着席した後、全員がどのような位置についているのかを確認した。俺の目の前には、【業火】の間の番人であった彼女が着座し、自分の新しい妻である彼女は、【零下】の間の番人であった彼女の左隣、ちょうど、先程俺に罵声を浴びせていた彼女達に挟まれる所に着座していた。【零下】の間の番人であった彼女の左隣には、【光】の間の番人であった彼女が着座し、俺の右隣には順に、少女と少女の親友が着座し、全隊員で楕円のテーブルを囲む形を取っていた。少女と少女の親友は、俺と目が合った所で、満面の笑みを浮かべ、少女の親友が“信じていたよ。ピカチュウ君。”と告げるが、司令官である彼から指摘させる。

「サン、フィアどこを見ているのですか?」
「え?あっ!!カオス様、すいません!!」
「ごめんなさい、カオス様ぁ!!」

少女と少女の親友は、司令官である彼から注意を受けて、彼の元に向き直ってそれぞれ、謝罪した。彼は、彼女達が指示に従った所で小さくうなずき、全員を見回して、笑顔を向け、全員へ会議開始の号令をかけた。

「全員揃いましたね?新入隊員、“χ(カイ)”の称号の武田 仁も私達のメンバーに加わった所で…。会議を始めます。」

終わり


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