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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

43 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/02(火) 01:51:05
マリアの放つ強烈なスイングは、帝国剣士の中でも上位の破壊力を誇っていた。
これをひとたび受ければ、大の大人だろうと場外まで吹っ飛ばされてしまうだろう。
ましてや相手は小柄なモモコだ。
例え帝国剣士であろうと、ホームラン王であるマリアの打力ならば圧倒することが出来る。
もっとも、それは「ヒットすれば」の話だが。

「えっ!?……消えた……」

マリアは馬上のモモコを殴り落とすつもりで両手剣を振り切っていた。
ところが、そこにはもうモモコは居なかったのだ。
それだけではない。モモコの乗っていた「馬」ごと消滅していたのである。
ではどこに消えたのか? その答えは同期のアカネチンがすぐに教えてくれる。

「マリアちゃん後ろ!」
「!?」

アカネチンの言葉通り、馬とその上に跨るモモコはマリアの背後に突っ立っていた。
まるで瞬間移動だ。マリアは馬の移動する軌道すら認識することが出来ていない。
先ほどまで激昂していたマリアも、この奇妙な現象を前に困惑したようだった。

「え?え?いったいどうして?」

馬の走るスピードが速いというのはまだ理解できる。
競走馬ともなれば70キロもの時速で走るというのだから、速いのは当然だ。
だが、それほどまでの速度を出しながらも、且つ急に止まることの出来る馬なんて聞いたことがない。
だというのにこの馬は確かにマリアの前方から後方まで超スピードで走り抜け、
そしてその場にピタリと止まって見せたのである。
信じられないキレの良さだ。

「あ……あ……でも、倒さなきゃ……」

戸惑いで頭の中がひどくグチャグチャになってはいたが、サユを守りたいという熱意までは押しつぶされていなかった。
敵に背後を取られたのであれば、すぐに振り向いてから斬りかかれば良いだけの話。
むしろその回転力をパワーに変えて剣をぶつけてやろうとも思っていた。
ところが、その行動を同期のアカネチンに制されてしまう。

「だめ!!動いちゃだめ!!」
「えっ?……」

アカネチンの制止は少しだけ遅かった。
いつの間にかマリアの周囲に張り巡らされていた「謎の糸」は、マリアの動きに連動して肉に食い込んでいく。
紐で縛られたハムのようになったマリアの二の腕はすぐに変色し、そして血液が噴出しだす。
一本一本が鉄のように固いその糸は、腕の薄皮など簡単に裂いてしまったのである。

「いやあああああああああああ!!」

バットを振り切る前に止められたため人体切断とまではいかなかったが、
それでもマリアは意気消沈するには十分すぎるほどのショックを受けてしまった。
これではもうモモコに立ち向かうことなど出来やしない。

「いや〜助かった助かった。あなた、"アカネチン"って言うんだったっけ?」
「……なんですか。何が言いたいんですか。」
「何って?私は礼が言いたいの。あなたがその子を止めてくれたおかげで、モモは人殺しにならずに済んだんだから。」
「……」
「信じてたよ。あなたが私の技を見切るくらいのことは、ね。」

44名無し募集中。。。:2016/02/02(火) 22:36:39
そうか、屋内で目的が誘拐だからモモコなのか

45名無し募集中。。。:2016/02/03(水) 00:17:03
本来の持ち主だと大きすぎて地下に入れないだろうしねw

46 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/03(水) 08:38:23
ハルナンは全く戦う気が無いのかその場でただ俯いているだけだったし、
アカネチンも視線だけはモモコの一挙手一投足を捉えてはいるものの、何も出来なかった。
この場にいる戦力ではモモコに太刀打ちできないことは明らかだったのだ。

「あら、やる気なし? じゃあ遠慮なく……」

モモコはハルナンらに背を向けて、馬を前方へと走らせた。
目的地は城の敷地内に入る際にくぐってきた城門だ。
サユを攫って国外へと逃亡しようとしているのである。
駿馬のスピードはなかなかのもの。この分ならあっという間に門へと到達してしまうだろう。

「させない!!」

この後に及んでもまだ食い下がったのは、腕からひどい出血を見せていたマリアだった。
自身のもう一つの武器である投げナイフ「有」を取り出して、
高速で移動するモモコ目掛けて投げつける。

「えいっ!!」

マリアは打撃だけでなく、肩も優れている。
彼女の放つ投げナイフは時速160キロをオーバーするため、馬の速さをも上回っていた。
コントロールがバッチリならば強敵モモコの身体に突き刺すことが出来ただろう。
しかし、今のマリアには真っ直ぐ投げることが何よりも難しかった。
新人お披露目会の時と同様にナイフは手からすっぽ抜けて、遥か上空へと吹っ飛んでしまう。

「ああっ!」
「マリア……スランプはまだ治って無かったの……」

研修生時代のマリアは確かに投打ともに優秀な戦士だった。
ところが、モーニング剣士になった途端に投げナイフの精度が目に見えて落ちてしまったのである。
緊張やストレスによる影響など理由は色々考えられるが、
とにかく今のマリアの投球術は戦力としては到底カウント出来ないレベルに有るのだ。
自身の不甲斐なさで憧れのサユを救えないと思うと、非常に泣けてくる。

「うっ……うっ……サユ様ぁ……」
「マリア、もう一回だけ投げてもらえる?」
「ハルナンさん?……でもマリアのコントロールじゃ敵には当たりません……」
「狙うのは敵じゃなくて味方よ。それならあなたの肩は活かすことが出来る。」
「えっ?」

マリアがキョトンとしているうちに、ハルナンはアカネチンに今の状況をメモすることを指示した。
そうして完成した読みやすいメモをナイフに突き刺しては、マリアに手渡す。

「これを城門の方角に思いっきりぶん投げて。 正確さは何もいらない。
 おおよその位置に投げれば向こうの方からキャッチしてくれるはず。」
「あっ!……城門には!……」
「そう。エリポン帝国剣士団長を筆頭に計9名の帝国剣士が見張りの番についている。
 私たちには何も出来なかったけど、彼女たちならきっとやってくれるはずよ。
 そのための報せを投げることが出来るのは、マリア、あなただけ。
 あなたのピッチングの速度は馬をも超えるのだから!」
「はい!!」

マリアは残った力を全て振り絞り、指示された方角目掛けてレーザービームの如き投球を放つ。
精度こそ酷いものだがスピードは目を見張るものがあった。
モモコの乗る馬よりももっと速く、目的地へと突き進んでいく。

47 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/03(水) 08:40:30
描写が分かりにくかったかもしれませんが、サユの部屋へと続く近道は屋外にあります。
敷地内ではありますが、城とは異なる建物と言うわけですね。
地下室にクマイチャンが入れないというのはその通りですw

48 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/04(木) 08:37:42
飛んでくるナイフの存在にいち早く気づいたのはノナカだった。
持ち前の耳の良さで風切る音を感じ取ったのである。

「何か来てます!あれはマリアちゃんの……?」
「エリが台になる。キャッチ出来そう?」
「はい!」

ノナカはエリポンの肩を踏み台とし、高く跳び上がった。
非公式ながらアクロバット部を自称する彼女らにとって
このようなコンビネーションを瞬時に見せることは朝飯前なのだ。

「こ、これは……!」

ナイフに括り付けられた手紙を読んだノナカはひどく驚愕する。
他の帝国剣士らも回し読み、事の重大さを理解していく。

「サユ様がさらわれた……!?」
「しかも犯人はベリーズのモモコ様で、こっちに向かってきている!?」

アカネチンの記述したセンセーショナルな内容は、すぐに皆の頭の中に入っていった。
マイミからマーサー王国で起きた事件をさっき聞いたばかりだというのに、
更にモーニング帝国にまでベリーズが攻めてきているなんて、異常事態にも程がある。
こうなると、帝国剣士らはマイミの後からやってきた「客人たち」にも疑いの目を向けざるを得なかった。

「あんた達は何者なんじゃ……ひょっとしてベリーズ戦士団と関連が?」

サヤシが声をかけた客人は、馬にまたがる4人の少女だった。
さっきから何をするでもなく、城門の前でずっと立ち続けているのだ。
その中の一人である栗毛の長髪がサヤシの問いに答えていく。
しかしそれは回答と言うにはあまりに曖昧だった。

「さぁ?どうでしょう……分かりませんね。」
「だったらどうしてここに居るの? 城に攻めに来たんじゃないの?」
「攻めるんですかね、どうなんですかね。 ちょっとそれも分からないですね。」

カノンが質問をしても明確な返事は返ってこない。
4人はクスクスと笑いながら、高いところから帝国剣士らを見下ろすだけだ。

「ふざけないで!馬鹿にしてるの?」
「いやいや本当に分からないんですよ。 私たちだって先輩の指示待ちなんですから。」
「先輩……?」

49名無し募集中。。。:2016/02/04(木) 12:31:49
おお!もしやついに彼女達の登場か?!
「4人」と言うことはやはり"もう"あの子はいなくて"まだ"あの子達はいないのかな?

50 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/05(金) 08:40:47
エリポンら帝国剣士をなんとも言えぬ寒気が襲いだしたため、馬上の不審者らへの追求を一旦中止することにした。
この凍てつく冷気はモモコが発しているものに違いない。
速い速度でこちらにやって来ているのは明らかなので、その対処に力を入れることにする。
帝国剣士団長であるエリポンがメンバーに指示を出していく。

「相手は伝説と呼ばれる存在やけん、勝てると思って挑むのは止めよう。
 最も優先すべきは勝利じゃなくてサユ様の救出なはず。
 何人かがオトリになって、そのスキにサユ様を取り戻すっちゃん。
 1人や2人……いや、7人や8人の犠牲は仕方ない。」
「私がオトリになろう。それなら犠牲は少なくて済むはずだ。」
「ま、マイミ様!?」

全身ボロボロで、しかも両脚を失っているマイミが自ら危険な役割を買って出たので、一同は驚いた。
だが考えてみればその案は妥当だ。
食卓の騎士の怖さを知っているサヤシもマイミに同調していく。

「確かにウチらじゃオトリにもならんけぇ……マイミ様が適任かもしれん。」
「あぁ任せてくれ。 長い付き合いだからモモコの殺気のことはよく分かっている。
 この感じだと……あと40秒、いや、30秒ほどで門に到達するな。
 そのタイミングで私がモモコに飛びかかる。そこからは帝国剣士の力でサユを救ってやってくれ。」
「「「はい!!」」」

モモコと同格のマイミが手伝ってくれるのだから、とても心強かった。
敵も帝国剣士を複数相手どる策を準備しているのかもしれないが、
突発的に現れたマイミを勘定に入れることまでは出来ていないだろう。
自分たちならやれる。帝国剣士らとマイミはそう固く信じていた。
ただ、懸念事項があるとすれば謎の騎馬少女たちの存在だろう。
アユミンが警戒しながら声をかけていく。

「あなた達、邪魔しようとしてるんじゃないでしょうね?
 でも無駄だよ!武器も持ってない素手のあなた達に妨害されるほど帝国剣士はヤワじゃないんだから。」
「邪魔なんてしませんよ。私たちはここで見てるだけです。
 あ、でも武器ならちゃんと持ってますけどね。」
「はっ?手ぶらで何を言ってるの? 馬の手綱しか持ってないじゃん。」
「そう思うならそれでもいいですよ。」
「???」

51 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/05(金) 08:41:45
>>49
はい、その認識で合ってますw

52名無し募集中。。。:2016/02/06(土) 03:26:13
まさかこの子たちの武器は先輩と…

53名無し募集中。。。:2016/02/06(土) 06:02:19
なるほどその可能性はあるねw
武器もだけどなんて名前かも気になる

54名無し募集中。。。:2016/02/07(日) 16:09:05
また戦士の離脱が…

55 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/08(月) 12:45:33
更新は夜遅くになりそうです。
新キャラの武器も早ければそこで出せそうですね。

鞘師が辞めてすぐに香音も卒業とは思いませんでした。
ひょっとしたら他のメンバーも……

56 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/09(火) 03:06:48
「3、2、1、今だ!」

モモコが門を突破するのと同じタイミングで、マイミが飛び掛かった。
外へ出ようとするモモコは前方向しか見ていないはずなので、横からの攻撃は完全な不意打ちとなるだろう。
この強打さえしっかりと当てることが出来れば戦況は大きく有利になると思われていた。
だが、その程度でモモコを出し抜こうだなんて甘かったのだ。
モモコの乗る馬は、門を出ると同時にマイミの方へと急転回する。

「やっほ〜マイミ元気〜?」
「なっ?……次の角を曲がっただと!?」

マイミの行動は見ての通りモモコに読まれていたのだ。
城門にマイミがいるという事実はこの場にいる者しか知らないはずなのだが、それでは何故バレたのか。
その理由はマイミの放つ嵐のような殺気にあった。
マーサー王だけでなくサユまでも連れ去られるという事実に、マイミは激怒している。
その怒りがオーラと連動して激化し、皮肉にもモモコに場所を知らせる発信源となってしまったのだ。
こうなるといくらマイミがキュートの団長であろうと非常に分が悪くなる。
両義足を失い機動力の落ちるマイミに対して、モモコはマーサー王国一の名馬という足を所持している。
この馬、名をサトタと言うのだが、蹴り技を非常に得意としていた。
その強靭な脚力から繰り出されるキックはマイミの胸の骨をメキメキと破壊する。

「……!!」
「そんな怪我でモモに挑んじゃなダメでしょ〜?……ってもう喋れないか。死にそうなくらい苦しいはずだしね。」

たった一蹴りでマイミをノックアウトするモモコを見て、帝国剣士らは凍り付いてしまった。
だがモモコの脇には情報通りサユが抱えられている。
便りの綱であるマイミが居なくなったからといって逃げる訳にはいかない。
この場で、食卓の騎士モモコを止めなくてはならないのだ。

「ベリーズだかなんだか知らんっちゃけど、サユ様は返してもらう!」
「んっ?ひょっとして戦うつもり?」
「当たり前っちゃん!」
「許してにゃん、いや、ごめんなさいね。 私たちに戦うメリットなんて無いんだ。」

モモコがそう言い放つと、周囲に「馬上の4人」を呼び寄せた。
やはりこの4人はモモコの仲間。部下にあたる存在だったのである。
そして、臨戦態勢に入ろうとする帝国剣士らを嘲笑うかのような行動をとり始める。
要するに、逃亡を始めたのだ。

「じゃあねバイバイ〜」
「ま、待て!!」
「ん〜、私たちに追いついたら相手してあげてもいいけど、足はあるの?」

モモコ一派と帝国剣士の決定的な差。それは馬の有無だった。
いくら帝国剣士がせいいっぱい走ろうとも馬の速度には追いつけない。
しかもマリアのように飛び道具を扱う剣士もいないために、攻撃を当てることすら叶わないのである。
これではサユが攫われるのを指をくわえて見てることしか出来ない。
ところが、そうはならないための予防策を事前にうっていたのだ。
モモコならびに部下ら4名が次々と落馬していくのを見て、帝国剣士らは防衛の成功を確信する。

57 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/09(火) 03:12:26
「きゃ!」「痛〜い!」「うわ〜最悪!」
「ちょっとちょっと!何なのこれ!めちゃくちゃ地面滑りやすくなってるじゃない!」
「あの〜モモち先輩。」
「なに!?リサちゃん。」
「これきっとあのアユミンって人のせいですよ。さっきからずっとスライディングして地均ししてましたし。」
「そういうのは早く言ってよ!」
「だってその程度でこんなに地面がツルツルになるなんて思わないじゃないですか!」

敵が困惑しているのを見て、アユミンはにっこり笑顔で微笑んだ。
確かに帝国剣士側には馬は無いが、スベリの帝王であるアユミンの前では機動力など無意味なのだ。
依然状況が悪いことに変わりはないが、戦わずして逃げられることは防ぐことが出来た。

「も〜!責任とってリサちゃんがなんとか食い止なさい。私たちは速度を落として逃げるから。」
「えっ?私一人でやるんですか?」
「そう。これはPM命令。」
「モモち先輩が一人でやる方が早くないですか?」
「それはそうだけど、じゃあサユは誰が運ぶっていうの?」
「はいはい!私が運びますよ!モモち先輩よりずっと丁重に扱いますって。」
「リサちゃんはなんかダメ。さっさと帝国剣士の子たちと戦いなさい。」
「本気ですか〜?……」
「リサちゃん。これはムチャブリなんかじゃないの。 あなたの戦法ならそれが出来るから言ってるの。」
「分かりましたよ。じゃあ帝国剣士全員倒したらサユ様を運ばせてくださいね。」
「出来高次第かな。」

リサと呼ばれた栗毛の少女だけで対抗できるかのような口ぶりだったので、帝国剣士からしてみたら全く面白くなかった。
中でもサヤシ、カノン、ハルの3名が特にカチンときたようだ。

「本気で言うちょるんか? リサって子は食卓の騎士の脅威には程遠いようじゃけぇのぉ……」
「私たちは国を代表する帝国剣士だよ。 サユ様に限らず帝国に仇なす者は無事には返さないから。」
「だいたいこっちは9人もいるんだぞ! 1人で何が出来るっていうんだ!!」

リサは、ハルの喋りを聞いてクスッと吹き出してしまった。
相手が自分のことを何も分かっていないことが面白かったのだ。
もう!あなたってなんにもわかってない!ってやつだ。

「ふふっ……9人ですよね。そんなの見れば分かりますよ。」
「なんだよ!なにがおかしいんだよ!」
「ごめんなさい、こっちの戦力は"1万"なんです。」
「えっ?……」

1万といった突拍子も無い数を聞いてキョトンとしている帝国剣士を横目に、リサは指で作った笛を吹き始めた。
リサは形としての武器なんてものは身に着けていない。
あるのは武器と言っても差し支えのないほどの強力な「味方たち」だけ。
その「味方たち」はいつでも、どんなところでも近くに潜んでいる。
リサの呼びかけさえあればすぐにでも駆けつけてくれる。

「ね、ねぇサヤシ……あっちから来てるのってもしかして……」
「嘘じゃろ……こんな戦い方をされたら……」

"勝てない"、ほとんどの帝国剣士はそう思ってしまった。

58名無し募集中。。。:2016/02/09(火) 08:16:07
ガマおやびん!

59 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/10(水) 08:28:16
リサの武器はあらゆるところから跳んでくる。
それは自ら動く生命体であり、本日のような雨模様の日には非常に活発になっていた。

「元気で可愛いでしょ?私のカエルたち。」

リサ・ロードリソースは両生類を武器とする戦士。つまりはカエルを操るのだ。
総数1万のカエル軍団が集まる姿はとても異様だが、リサはそれらを愛おしいと思っている。
食べたいくらいに可愛いことから「カエルまんじゅう」と名付けているほどだ。
しかし、いくらリサがカエルを可愛いと思っていても、大半の女子はそうとは思えていない。
むしろ恐怖の対象だ。
ゆえに少し触れさせてやるだけで簡単に戦意を喪失させることが出来る。

「ちょっと触ってみませんか?まずは2000匹。」

リサの指笛による合図と同時に、カエルらはサヤシ、カノン、ハルへと飛びかかる。
足に、腕に、そして顔にと、露出している部分をあっという間に埋めて尽くしてしまうのだ。
呼吸出来ないほどの密着と言うわけではないが、
カエルの腹や指先の感触を直に味わうのはなんとも気色悪い。
よって3人は悲鳴をあげて腰を抜かしてしまう。

「ひぃぃぃぃ!!」
「いやぁぁぁぁ!」
「そんなに怖いですか? すっごく可愛いじゃないですか。
 この可愛さを分からないのはもはや罪ですよ。罪。
 罪人には罰を与えないといけませんね〜」

気づけばリサは全身に小さなカエルを数百匹単位で纏わせていた。
彼女に言わせればこの感触さえも愛おしい。
リサ・ロードリソースはこの状況下で平常心でいられる数少ない人間なのである。

「まずい……サヤシさんカノンさんハルさんが一気にやられちゃった……」
「オ、オダさんが行ったらいいんじゃないですか? 蛇とかカエルとか平気そうじゃないですか」
「さすがに全身で浴びるのは無理……ハーチンは?」
「私だって無理ですよぉ!」

立派な戦士とは言え、それ以前に年頃の少女である帝国剣士たちにとってリサの戦法は恐ろしいものだった。
カエルは戦闘力こそ剣や銃に劣るが、与えることのできる精神的ダメージはそれらの比ではない。
こうして帝国剣士らが二の足を踏んでいる隙に、モモコ一派らはツルツル面をゆっくりと進んでいく。

60名無し募集中。。。:2016/02/10(水) 08:52:30
リソース?

61名無し募集中。。。:2016/02/10(水) 08:52:59
ああ、資源かw

62名無し募集中。。。:2016/02/10(水) 13:41:55
さすがにこれは…想像すると結構キツいw梅雨時期の農道連想してしまう

63名無し募集中。。。:2016/02/10(水) 23:03:25
スゲー去年前半のハローの曲がいっぱい

64 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/12(金) 08:36:43
「リサちゃん本当に一人で大丈夫かな?……」

リサ・ロードリソースを心配する発言をしたのは、同じくモモコ一派の一人であるチサキ・ココロコ・レッドミミーだ。
いくら1万のカエル軍を従えたとは言え、相手が帝国剣士では無事には済まないと思ったのである。
モモコや、仲間たちもチサキの不安げな表情に気づいたようだった。

「あら?じゃあチサキちゃんが助けに行く?」
「えっ?えっ?いや、私は……」
「ダメですよモモち先輩。 チーたんは陸上ではポンコツなんですから。」
「うわ出た!ブラックマナカん!」
「ブラック?ホワイトですよ、私は。」
「自分でいうか?……まぁそれはさておき、リサちゃんは一人でも平気だからチサキちゃんは安心して。
 あの子はカエルをただの精神攻撃のための道具とは思っていないからね。」

一派らがこんなやり取りをしているうちに、城門から悲鳴が聞こえてきた。
その声の主は、急いで駆けつけてきたマリアとアカネチンだ。
カエルで溢れかえっている惨状を見て衝撃を受けたのである。

「あわわわわ……これはいったい……」
「どうなってるの!?これ!」

援軍が来たとは言え、そのマリアとアカネチンも15歳そこいらの女の子。
万のカエルを見てすぐ対応できるほどの度胸は無かった。
だが、この2人の登場は全くの無意味という訳では無かったようだ。

「年下にカッコ悪いところは見せられないよな……」

カエルにまみれながらも、ハル・チェ・ドゥーが立ち上がっていく。
自分を尊敬してくれているマリアとアカネチンが応援に来たのだから、
このままビビって何もしないわけにはいかないと思ったのだ。
全身鳥肌が立つほど恐怖しているが、ハルは涙目でリサに飛びかかっていく。

「ちくしょう!お前さえ倒せば……喰らえ!」
「……ウシガエルさん。やっちゃって。」

リサが指示を出すと同時に、手のひらよりも大きいウシガエルが登場し、
ハルのお腹にキックを入れる。
このカエルはただのカエルではなく、戦闘用の訓練を受けた戦士であるため
ハルは鉄球を受けたような苦しみと共に崩れ落ちてしまう。

「くはっ……な、なんだ?……」
「私のボディーガードのウシガエルさん。そんじょそこらの人間じゃ太刀打ちできないと思いますよ。」

恐怖を与えるだけでなく、純粋な戦闘力も高いという事実を前に帝国剣士はショックを隠せなかった。
もちろん相手はカエルなので剣士が剣をとれば勝てぬ訳が無いのだが、
精神攻撃を受けて本領発揮できぬ今、ウシガエルがよほどの強敵に見えるのである。
この状況で全力を出せる剣士はごく一部しかいなかった。

「ドゥー大丈夫?お腹痛いの?」
「マーチャン!マーチャンは普通に動けるのか?……」
「うん。カエルさんは地元にたくさんいたから。」
「頼むマーチャン!あいつを倒してくれ……そしてサユ様を助けてほしい……」
「うん。マーもミチョシゲさんを絶対助けたい。 でも、マーチャンが戦わなくても大丈夫みたいだよ。」
「えっ?……あ!?」

リサの前にはすでに二人の剣士が立ち向かっていた。
エリポン・ノーリーダー
ハルナン・シスター・ドラムホールド
この2名の帝国剣士団長にはカエルによる精神攻撃は通用しない。

「そろそろ調子乗りすぎやない?」
「私たちの力、見せてあげましょう。」

65 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/12(金) 08:39:46
>>61
元ネタは御察しの通り「道資源」ですね。検索したらすぐ出ると思いますw

>>62
画力があればこのシーンを絵に描きたいくらいです

>>63
この辺りは昨年構想してましたからね。
本当はもっと早く書き上げたかった……

66名無し募集中。。。:2016/02/12(金) 12:38:36
サブリーダーズきた!精神攻撃効かないってなんとなく納得w

絵に描かないで・・・想像だけでおなかいっぱいですw

67 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/13(土) 22:58:37
全身にカエルがひっついているというのに、エリポンもハルナンも全く動揺しなかった。
カエルの可愛さを共有出来るかもしれない人物が現れたのはリサ・ロードリソースにとって喜ばしいことなのだが
友達になる余裕など今はない。

「たまにいるんですよね、対応できちゃう人……でもこれならどうですか?」

リサがカエル達に出した指令は、エリポンとハルナンに4000匹ずつ纏わりつかせるというもの。
一匹一匹はとても小さく軽い生物ではあるが、こうもくっつかれたら重くて仕方がない。
単体あたりの重さが20グラム程度だとしても合計すれば80キロもの重石になるのだから、動きは大きく制限されるだろう。
そしてリサはそれに加えてさらなる精神攻撃をも与えることにした。

「カエルちゃん達、その人の口の中に入っちゃいなさい。」

身体が重くて動けぬハルナンを指さしながら、リサはなんとも恐ろしい支持を出していった。
リサの言うことならなんでも聞くカエル達は迷わずハルナンに口の中へと侵入していく。
いくらカエルが平気な女子だろうと、いや、例え男性であろうと口内に入られたらパニックを起こさずにはいられないだろう。
リサはこの手段を用いることで今まで何人もの相手を失神させてきたのだ。
今回も同様の手を使って簡単に仕留めるつもりだった。
ところがハルナンの眼を見た瞬間、リサは逆に恐怖してしまう。

(えっ!?……どうしてそんな目が出来るの……)

口の中はもう喋れないくらいにカエルで溢れ返っているというのに、ハルナンの目は死んでいなかった。
それどころか非常に鋭い視線でリサを睨み続けている。
これほどの仕打ちを受けてまだ意識を保っていられるだけでも規格外だと言うのに、
闘争心まで失っていないという事実を、リサは受け入れることが出来なかった。
リサは知らなかったかもしれないが、この世には好んでセミの抜け殻を全身で浴びたり口の中に入れたりする女性が存在する。
ぶっちゃけて言うと、その人物はハルナンの友人だ。
ハルナンはその女性と友であり続けるためには自分もそれくらい出来て当然と考え、そして実践したのである。
そんなハルナンに対してカエル程度で精神的ダメージを与えようなど甘かったのだ。
むしろ逆に精神攻撃をし返すために、瞳でメッセージを送っている。

(口の中がカエルでいっぱいなんだけど、これ食べちゃってもいいの?)
(!?)
(ねぇ、いいの?)

リサの背筋は一瞬で凍り付く。
音としての声などまったく聞こえないはずなのに、確かにハルナンがそう思っていることが伝わったのである。
ハルナンならやりかねない。恐怖心に苛まれたリサは不本意ながらカエルに新たな支持を出す。

「カエルちゃん達!今すぐその人から離れて!!た、食べられちゃう!!」

支持を出すや否やカエルが解散していったため、ハルナンの身体はすぐに軽くなる。
本来の戦闘力を取り戻されたのはリサにとって残念だったが、精神攻撃が全くと言っていいほど通用しないので仕方ない。
それに、リサにはまだ他にも戦い方が残されていた。

「ウシガエルさん!その人を蹴り倒して!!」
「あの〜ちょっといいですか?」
「ヒッ……な、なに?」
「"ウシガエルさん"って、ひょっとしてあそこにいるカエルのことですかね?」
「はっ!?……ええええっ!?」

ハルナンが指さした先では、ウシガエルがカエルの集合体にボコボコにされる光景が繰り広げられていた。
このカエルの集合体とはエリポンのことだ。4000匹のカエルがくっついたままウシガエルを殴り倒しているのである。
先ほど合計重量を80キロと書いたが、この程度で動きを制限されるほどエリポンの筋力はヤワではなかったのだ。

「さすがエリポンさん!相変わらずの馬鹿力で素敵ですわ〜」
(は、話と違う!帝国剣士団長がこんな化け物揃いだなんて聞いてない!)

68名無し募集中。。。:2016/02/14(日) 00:42:19
それブッ込んできましたかw
あの人はプラナリアとかも飼ってるらしいからカエルもいけちゃうかもねw

69名無し募集中。。。:2016/02/14(日) 12:13:23
しょこたんwww

70 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/14(日) 17:54:33
ウシガエルを仕留めたエリポンは、ヘッドバンキングの要領で上半身を激しく揺らしカエルを振り落とす。
そして鞘から打刀「一瞬」を抜いてはリサへと突きつけるのだった。

「勝てんよ。キミ。」

もう一人の帝国剣士団長であるハルナンだってフランベルジュ「ウェーブヘアー」を構えている。
二人はもはやカエルなど相手にしてはいない。
リサに照準を合わせているのは誰が見ても明らかだ。
それを理解したリサは、止むを得ず戦法を変えることにした。

「分かりました。諦めます。」
「お、降参?」
「違いますよ!帝国剣士を全員倒すのを諦めるってだけです。
 ここからは足止めに専念しますから。」

そう言うとリサは指笛を使って数十匹のカエルを自身の元へと集めだした。
そして鎧を装着するかのように赤、青、黄のド派手な色をしたカエルを纏っていったのだ。
これがリサ・ロードリソースの防御形態。
自ら動くことは出来ないが、鉄壁をも超える防御力を発揮することが出来る。

「なん?そんなので足止めできると思っとーと?
 こんなのカエルごと斬ればいいだけやん。」

エリポンの言う通り、リサの装甲はとても頼りないものだった。
カエルが鋼の硬度を誇るのであれば話は別だが、生物である以上それはありえない。
構わずぶった斬ればそれで終わりなのである。
しかし、ハルナンはこの形態に異質さを感じざるをえなかった。

「待ってくださいエリポンさん!斬るのは……まずいです。」
「えっ?それはどういう……」
「カエルのドギツい色……あれは警戒色ですよ。攻撃するなと訴えているんです。」
「警戒色!……ってことは」
「はい、あのカエルは間違いなく猛毒を持っています。
 もしも体液が飛び散ったりでもしたら……その時はどうなっても知りませんよ。」

ハルナンの推察通り、リサの纏うカエルは猛毒カエルだった。
前にも述べたがカエルごと斬ればリサを倒すこと自体はとても容易い。
もっとも、それがキッカケで飛散した毒を浴びた場合は生命を保障出来ないだろう。
ゆえにエリポンとハルナンは攻撃を躊躇するしかなかった。

「じ、自分も死ぬかもしれんのに毒カエルを盾にする!?普通!」
「毒に対する免疫が有るのか……あるいは死を覚悟しての行動、ってことですかね……」
「うぅ……」

71 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/14(日) 17:57:18
しょこたんがプラナリアまで育てているとは初耳でしたw
セミの抜け殻の件はニュースにもなってたので丁度良いと思って今回ネタにしました。

ちなみに現在、カントリーガールズのイベント会場にいます。
新曲楽しみ。

72名無し募集中。。。:2016/02/15(月) 02:33:08
楽しめましたかー?

73 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/15(月) 08:13:19
はい、近くだったので迫力が凄かったです。
今のカントリーの愛おしくってごめんねを見れたのも良かったですね

74名無し募集中。。。:2016/02/15(月) 09:10:22
面白くて前作と第一部を一気読みしてしまいました
更新を楽しみにしています

75 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/16(火) 08:39:29
リサも出来ればこの手は使いたくなかった。
毒によって相手に与えるダメージは非常に強大ではあるが、
それは同時にカエルが死ぬことを意味している。
カエル好きなリサにとってはとても心苦しい戦法なのである。
とは言え、この状況では甘いことを言ってられない。
戦士としての誇りを持っているため、任務遂行に命をかけているのだ。
だがそれは帝国剣士だって同じ。
自分たちの使命を考え、最も優先すべきことは何なのかを判断している。

「ハルナン、この子に攻撃すると危険なのはよく分かった。じゃあこのまま放っておこう。」
「!……なるほど、律儀に相手する必要はないですもんね。」
「エリ達のやるべきことはサユ様を助けることやけん。ここで立ち止まっとる暇はない。」

さっきまではリサがカエルで邪魔してきたので早急に黙らせる必要があったが
防御形態をとるリサはその場に留まるのみ。
ならばエリポンが言うように放っておけばいいのだ。
最優先事項であるサユ救出のため、エリポンは一歩踏み出そうとした。

「待ってエリポンさん!歩いちゃダメ!」
「!?」

エリポンがあとちょっとで地面を踏むといったところで、ハルナンのストップが入った。
なんと足元にはリサが纏っているようなドギツい色のカエルがビッシリと敷き詰められていたのである。
ちょっとでも歩みを進めればカエルを踏まずにはいられない。
その時は毒が飛び散って、脚をダメにしていたことだろう。

「うおっ!危なかった……」
「それにしてもこの状況は不味すぎますよ……」

警戒色を示すカエルが足の踏み場も無いくらいに集まって密集している。
この状況でカエルを踏みつけずにモモコのところに到達するなんて不可能に近いだろう。
このカエル絨毯をなんとかしたいのであればリサを倒すほかに方法は無いのだろうが
そのリサに攻撃することも先述の理由で非常に難しくなっている。
要するに、帝国剣士はほぼ詰みかけていたのだ。

「言ったでしょう?足止めに専念するって。」

76 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/16(火) 08:40:40
ログ置き場が不完全な状態なのに前作まで見てくださったなんて、とても嬉しいです。
期待に応えられるように頑張りますね。

77 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/17(水) 00:07:58
「ねぇ、マーチャンが全部燃やしちゃっていい?」

突然の声にリサはビクリとした。
カエル平気組に属するマーチャン・エコーチームの言葉が、リサにはひどく恐ろしいものに思えたのだ。
真っ赤な炎の灯った木刀を両手に握っていることからも、その本気度が伺える。

「マーチャンならね、触らなくても焼けるんだよ……」

小悪魔のような顔をしながら、マーチャンは木刀をブンと振り回す。
そうすることによって木刀を焼いていた火の粉が飛び散り、
遠距離にいるカエルを容赦なく燃やしに行く。
すんでのところでリサが退避命令を出したために焼きガエルと化すのは免れたが、
その代償としてカエルの存在しない地帯を作り上げることとなってしまった。

「やったー!こうすればミチョシゲさんのところまで歩けるよ!」
「うぅ……」

ついさっきまで二択を迫る側だったリサ・ロードリソースは、
一転して二択を迫られる側に追いやられてしまった。
炎を避けなければカエルは焼かれてしまう。
炎を避ければ敵に道を与えてしまう。
リサにとってはどちらも等しく苦しい選択肢だったのだ。
ところが、苦渋を舐めたような顔をしているリサに対して
ここにきて朗報が舞い降りてくる。

「リサちゃーん!もう足止めなんかしなくていいよー!」

その大声はリサらのPM(プレイングマネージャー)・モモコによるものだった。
モモコ一派らはアユミンの均したツルツル地面を丁度越えたところだったのである。
それを見たリサの表情はみるみるうちに明るくなり、
この状況を打破するための指示をカエル達に出していく。

「みんな、逃げるよ!」

指令とともにほとんどのカエルが方々へ散っていったが、数十匹だけはそうしなかった。
逃げた警戒色カエルと入れ替わりに、大型のカエルがリサの脚部に纏わり付いたのである。

「これが私の跳躍形態。帝国剣士の皆さん、それではばいちゅん!」

リサの合図とともに、脚部のカエルらは主人であるリサごと大ジャンプする。
その訓練された跳躍力は並のカエルの水準を遥かに超えており、
ひとっとびでツルツル地面の先まで到達してしまった。
これでモモコ一派らは全員が滑りやすい難所を乗り越えたことになる。

「そんな……」

嘘みたいな結末に帝国剣士は呆気にとられることしか出来なかった。
そう、彼女らは負けたのだ。
サユを奪われることが敗北でなければ、何が敗北だと言えるのだろうか。

78名無し募集中。。。:2016/02/17(水) 09:56:41
リサちゃんは作者さんのキャラによくありがちな一見強いが粗を突かれると一気に崩れるタイプだなw

79 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/18(木) 08:21:14
アヤチョみたいなキャラのことですかねw
確かに仮面ライダーイクタ時代も含めて弱点持ちは多いかもしれません。

80 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/19(金) 07:15:11
「リサちゃんおかえり〜」
「はぁ〜乗り切った〜」

リサは「アジト」へと戻る馬の上でグッタリとしていた。
これまで何度もヒヤリとさせられたので精神的にかなり疲労しているのである。
そんな大役を成し遂げたリサを仲間たちは賞賛しており、
一派の仲では最年少であるマイ・セロリサラサ・オゼキングもその例外ではなかった。

「リサちゃん本当に凄かったよね!おかげでみんな無事に逃げることが出来たよ。
 まぁ、マイとリサちゃんは跳べるし、マナカちゃんも飛べるから
 ツルツルの地面なんてなんとも思ってなかったんだけどね。
 モモち先輩に合わせてあげたんですよ。みんな。」

彼女らはみなモモコの弟子にあたるワケだが、盲目的に従うという関係性ではなかった。
特にこのマイは、教育とは言え法外なルールを課すモモコを敵視さえしている。
そのためリサを持ち上げつつモモコを非難したのだ。
もっとも、モモコだって10歳年下の後輩に負けてはいない。

「あら〜そんなこと言っちゃっていいのかな〜?」
「なんですか?またお菓子禁止したら怒りますよ。」
「ううん、さっきのマイちゃんの発言を聞いてチサキちゃんはどう思うかなーって。」
「?」

モモコが指し示したチサキ・ココロコ・レッドミミーの様子が何やらおかしい。
いつものように耳を真っ赤にしながらも、頬をぷくっと膨らませているようだった。
口数が少ないのもいつものことだが、怒っているようにもみえる。

「え?ごめん……怒ってる?」
「もう!あなたって、なんにもわかってない!」

みんなと違って、陸や空はチサキのフィールドではない。
そのような環境では自身の力を発揮できない(要するにポンコツ)であることを気にしていたのである。

81名無し募集中。。。:2016/02/19(金) 07:50:54
ここでもポンコツちぃちゃんw

82名無し募集中。。。:2016/02/19(金) 13:53:30
かわいいw

83 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/22(月) 08:48:32
帝国剣士には今回の件を王に報告する義務があった。
足取りはとても重いが、サユが連れ去られた事実を伝えない訳にもいかない。
重体のマイミを医療室へと連れていくハーチンとノナカ以外は、王の間へと足を踏み入れる。

「……そう、そんなことがあったの。」

エリポンとハルナンから事の顛末を聞いたフク・アパトゥーマ王は静かにそう答えた。
さすが王の風格とでも言うべきか、少しも狼狽える素振りを見せてはいない。
そして誰を責めるでもなく、次のように言葉を続けていく。

「それで、次はどうすれば良いと思う?」

フクはこの国のリーダーではあるが、アレをしれコレをしろと命令をするようなタイプではない。
教えを請われた時はそれに答えるが、基本的には相手に委ねる方針を採っているのだ。
Q期、天気組の責任者であるエリポンとハルナンがそれぞれ自身の考えを述べていく。

「エリたちは不甲斐ない結果を出した以上、もっと強くなる必要があると思う。
 日の訓練量を倍にしつつ、且つ防衛も疎かにせんためには……
 遊ぶ時間、そして寝る時間を大幅に削るしかないけんね。」
「私はサユ様が攫われた事実、そして帝国剣士が敗北した事実は隠すべきだと思います。
 国民に不安を与えないためにも、一部の者だけ知るのが良いかと……
 聞けばマーサー王国もベリーズの件は隠すようですし、それに倣いましょう。」

エリポンとハルナンの発言は納得できるものだったので、Q期や天気組らは何も言わなかった。
そもそも、対リサ・ロードリソース戦で何も出来なかった自分達には発言する資格はないと考えていたのだ。
ところがそうは思っていない人物が一人だけ存在していた。
新メンバーであるマリアが空気も読まずに大声をあげていく。

「違います!私たちが次にするのはそんなことじゃありません!」

帝国剣士団長の意思を新人が「そんなこと」と切り捨てるのは前代未聞だが、
その言葉には確かなパワーが有るとフク、エリポン、ハルナンは感じていた。

「マリア、じゃあ何をすれば良いと思うの?」
「今すぐサユ様を助けに行くんです!」
「モモコ様……いや、モモ、コはどこに居るのか知ってるの?」
「知りません!でも探すんです!」
「さっきハルナンが言ったように今回の件は大勢に伝えることが出来ないの。
 少ない人数でどうやって探すというの?」
「マリアがやります!マリアが世界中を歩き回って探します!」
「モモコ様、じゃなくて、モ、モ…コをマリアが倒せるとでも……」
「倒します!!この命に代えてでも、倒すんです!」

マリアの言うことには説得力が無かった。
だが、サユを救いたいという思いは本物だ。
いつしか周りの帝国剣士らもそれに同調していく。

「私も探します!」「私も!」「私だって!」

ここでフク王はやっと微笑んだ。
帝国剣士が有るべき姿へと近づいたことを喜んでいるのだ。

「分かった。みんなに任せるよ……サユ様を絶対に助け出してね。」

84名無し募集中。。。:2016/02/22(月) 16:47:30
ドゥー「じ、じゃあ私も」
全員「どうぞどうぞ」
ドゥー「なんでだよ!」

85名無し募集中。。。:2016/02/23(火) 00:34:13
何かの歌詞であったよなってずっと考えてた
「私よ!」「私だって!」←
今、思い出した!かしまし…しかもドリ娘。の!
あースカッとしたぁ〜

86 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/23(火) 09:23:30
(マリアちゃん凄い……先輩たちを動かしちゃった。
 私に同じことが出来たかな?……)

アカネチンはマリアに感心しつつも、歯をギリッと食いしばっていた。
サユを心配する気持ちなら負けていないのに、
実際に行動に移せなかったことを悔しく思っているのだ。
アカネチンの心の嵐が乱れるのと同じタイミングで、嵐のような人物が発言しだす。

「さすが帝国剣士は頼もしいな。それでこそ訪ねてきた甲斐が有るってものだ。」

嵐のような人物、それはマイミだ。
本来ベッドで寝ているはずなのだが、ハーチンとノナカの制止を振り切って王の間までやって来たのである。
数刻前まで満身創痍だったというのに今はもう殆どの傷が癒えているように見える。
まったくもって不思議な身体だ。

「マイミ様!」
「"様"は止めてくれ。貴女は王で、私は一介の戦士なのだからな。」
「あっ、はい……」
「その一介の戦士の頼みになるが、どうか聞いてほしい。
 私たちキュート戦士団はなんとしてでもマーサー王を取り戻さねばならない。
 しかしいかんせんベリーズに対抗するには戦力が不足しているのだ。
 そこで、モーニング帝国剣士にも力を貸してほしいと思っている。
 帝国剣士とキュートの連合軍ならベリーズを打ち破れるはずなんだ!」

相手が王とは言え、マイミほどの重鎮が頭を下げるのは珍しい。
それだけ自国の王を救いたい思いが強いのだろう。
となればサユを救出したいモーニング帝国と利害は一致する。
承諾しないはずがない。
例えフク王がベリーズのことを心から尊敬していたとしても、だ。

「はい。共に戦いましょう。 帝国剣士のみんなは見ての通りやる気で溢れてますよ。」
「とても有難い! では早速だが、帝国剣士の何人かには作戦会議のためマーサー王国に来てほしい。
 共闘するキュート戦士団とも顔合わせをしてほしいしな!」

願いが叶ったマイミのテンションは最高潮だ。
このまま何も問題が無ければ連合軍はすぐに結成されることだろう。
ところが、ここで異議を唱える者が現れる。

「キュート戦士団とモーニング帝国剣士の連合軍?……私は反対です。」
「ハルナン!?」

ここで反対意見を出すハルナンの考えが帝国剣士のほとんどには理解できなかった。
マイミも思考回路がショートしたような顔をしている。
そんな中、いち早く意図に気づいたアユミンが言葉を返していく。

「足りない、って言いたいのかな?」
「そう。相手がベリーズだけとは限らない以上、戦力の増強は必要よ。
 幸いにも、信頼できる国なら2国ほど心当たりがあるの。」

87 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/23(火) 09:24:48
ダチョウ倶楽部やかしましの事は頭になかったですw

88名無し募集中。。。:2016/02/23(火) 13:10:44
ドリームチーム構想か

89 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/24(水) 08:55:10
趣味と文化の国、アンジュ王国。
ここではスポーツや演劇などの興行が非常に盛んであり、人々は心身ともに豊かに暮らしていた。
この国が趣味国家として発展してきたのは、やはり番長らの活躍が大きいだろう。
国を護る戦士である7番長は、戦い以外にも興行を盛り上げる役割を担っていて
一人一人がそれぞれの分野でトッププレーヤーとしても活躍していたのだ。
例えば運動番長タケ・ガキダナーはろくに野球のルールを知らないくせにホームランを量産しまくるし、
文化番長メイ・オールウェイズ・コーダーが座長を務める舞台は連日ソールドアウトの大盛況だ。
勉強番長カナナン・サイタチープの講演会も(たまに話がとんでもない方向へ脱線するが)聞きたがる人が多いし、
帰宅番長リナプー・コワオールドがブリーダー兼トリマーとして育てた犬は本人以上に人気がある。
そして、特に活躍が目覚ましいのは先日に舎弟から番長へと昇格した3名の担当する分野だろう。
音楽番長が主催するロックフェスは元来盛り上がるのが好きなアンジュの国民たちを満足させ、
給食番長の作り上げる見たこともないような世界の料理は多くの人々の舌を肥やした。
理科番長は本来の目的である石鹸の普及自体はなかなか上手くいっていないようだが
「決して口を開かぬ美女」として、彼女をモデルにした絵画が爆売れしているらしい。
何故に理科番長が一言も喋らないのか、その理由は番長たちしか知らない。

番長らは忙しい日々を過ごしているため、チームとして集まる機会は少なかった。
この日のようにタケ・ガキダナーと、音楽番長ムロタン・クロコ・コロコが鉢合わせるのも非常に珍しいことなのだ。

「お、ムロタン!」
「タケさん。こんばんワニ。」
「わに?まぁいいや、ムロタンの担当する音楽界、結構盛り上がってるみたいじゃん!
 私も結構好きだよ!ロックっていうの?ベンベンベンベン。」

タケはノリノリでエアギターを奏で始めた。
他の国民と同様に、彼女のDNAにも音楽の記憶が刻まれているのだろう。
そんな楽しげなタケに対して、ムロタンは浮かない表情をしていた。

「ありがとうございます。でもな〜やっぱり戦士なんだからもっと戦いたいんですよね〜」
「え?国防とか頑張ってるでしょ。3人だけで国を守るって凄いよ。」
「そういうのじゃないんですよ。」
「???」
「例えば、"モーニング帝国剣士の権力争いに巻き込まれる"ような……そんな戦いがしたいんですよ。」
「……ムロタン、その考えは捨てな。」
「!?」
「ははは、平和が一番ってこと。 今を楽しもうよ!今度ライブに誘ってね!」
「……考えておきます。」

90名無し募集中。。。:2016/02/24(水) 12:39:55
怪獣番長ではなかったか…

91名無し募集中。。。:2016/02/24(水) 13:39:24
しゃべるとバレちゃうんだなw

226 名無し募集中。。。@転載は禁止 2016/02/22(月) 17:02:43.11 0
http://i.imgur.com/BRKXCAY.gif

     ∧ ∧
    |≡V≡|  
  (V)( ^ヮ^)(V) <フォフォフォフォ
   ヽ三i三ソ
    (/ \)
    ∪"∪

92名無し募集中。。。:2016/02/24(水) 18:46:33
理科番長は莉佳子でしょ

93名無し募集中。。。:2016/02/24(水) 22:01:18
あれ?まろは?

94名無し募集中。。。:2016/02/24(水) 23:23:41
裏番長だから宰相みたいなポジションでは?

95 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/25(木) 08:40:42
アンジュ王国からそう離れていないところに「果実の国」がある。
ここの人々は自分たちをファミリーのように思っており、平穏無事に暮らしていた。
病を治療する医療施設が数多く建設されていることも平和を維持するのに一役買っていると言えるだろう。
そんな医療国家の中でも最先端の研究をしているのはユカニャ王その人だ。
彼女は王であり、元戦士であり、且つ理系女子としての一面も持っている。
宿敵"ファクトリー"を撲滅することを目指して、今日も実験に精が出ているようだった。

「うーん難しい……この"NEXT YOU"さえ完成すればあの子達はもっと強くなれるのに……」

ユカニャが今作ろうとしているのは、世にも恐ろしい薬だった。
まだ研究段階ではあるが、その薬をひとたび飲めば生まれ変わったかのような強さになるとされている。
まさに「次の君」になるのである。
だが体の組織を作り替えるほどの劇薬であるために、効能が切れたとして元に戻れる保証は全くない。
それどころか非常に苦しい副作用に苛まれる可能性だって十分にある。
ユカニャは現在、その副作用を取り除くために相当苦労しているが、なかなか上手くいっていないようだ。
国を護るためにファクトリー打倒を目標に掲げるユカニャ王ではあるが、
それ以前に彼女は医療に携わる者としてのプライドがあるため
危険な薬を危険なまま兵士に渡すことなんて決して出来ないのである。

「この分だと完成はまだまだずっと先かな……
 まぁ、あの子達も強くなっていっているからひとまずは安心なんだけど……」

ユカニャの指す「あの子達」、それは果実の国の戦士「KAST」のことだった。
カリン・ダンソラブ・シャーミン、アーリー・ザマシラン、サユキ・サルベ、トモ・フェアリークォーツ。
この四人の戦士はモーニング帝国での一件以降、訓練の水準を何段階にもあげていっていた。
ジュースを飲まなくてもモーニング帝国剣士やアンジュの番長らに対抗できるように、
ありのままの自分を鍛え上げたのである。
その結果として、彼女らは最高級のパフォーマンスを魅せる戦闘集団へと成長することが出来た。
仲でも一番変わったのは、以前まではサポートのみに徹しようとしていたカリンだろう。
カリンはカリン本来の強さを取り戻している。

「やるじゃん。まるでゴールデンチャイルズの頃のカリンみたい。
 あの時のような活躍を期待してるよ!」
「いやいやいやいや、ちょっと待ってサユキ、
 あれはタケちゃんとかフクちゃんとか他のメンバーが凄かっただけで……」
「おいカリン!また卑屈になってるよ!」
「ひぃ!トモ!ごめんなさい〜」
「あはは、性格だけは今までのリンカのままやな。」

96 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/25(木) 08:47:07
>>90
残念ながら怪獣番長でも宇宙番長でもありませんw
それらの要素は別の形で出てくるかもしれませんけどね。

>>91-92
給食番長が相川茉穂モチーフのキャラ、
理科番長が

97 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/25(木) 08:50:40
途中で送信しちゃいました。

>>91-92
給食番長が相川茉穂モチーフのキャラ、
理科番長が佐々木莉佳子モチーフのキャラとなります。
「口を開かない」「美術」あたりのキーワードで混乱させたのかもしれませんね。

>>93-94
マロがどうなったのかはまた後日にw

98 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/26(金) 08:25:54
打倒ベリーズのための作戦会議は3日後、マーサー王国の城にて行われる。
国際的な会議であることを考えれば開催までの期日が極端に短いが
マーサー王とサユの救出という目的を早期に果たすにはこれが適当なのかもしれない。
そして今、ハルナンは馬を走らせ、アンジュの王に謁見している。
ベリーズとモモコ一派、そして他にもいるかもしれない敵に対抗するためには
アンジュ王国の番長と果実の国のKASTの力が必要不可欠だと考えたのだろう。
外交担当として、確実に二国から協力してもらうためにハルナンはここまで来たのだ。

「かくかくしかじかという訳なの。 アヤチョ、出来る限りで良いから助けてほしい。」
「いいよ!アヤがいく!ハルナンを困らせる悪い奴をとっちめてあげるよ!」

アンジュ王国の王、アヤチョは簡単だった。
親友ハルナンのためならどんな犠牲を払っても良いという考え方をしているのがその理由だ。
それに対して裏番長マロ・テスクはハルナンに厳しい。
車椅子生活となり、戦士として以前のように戦うことは難しくなったが
口の達者さは据え置きのようだった。

「ちょっと、アヤチョには王の仕事がたくさん残ってるでしょ?
 そんな簡単に居なくならないでくれる?」
「え〜……じゃあ番長たちをハルナンに貸すのはどう?」
「番長たちって、7人全員?」
「そう!あの子たちが揃ったらきっとハルナンの助けになるよね!」
「それはダメ、全員は貸せない。」
「なんで!?カノンちゃんケチだね!」
「考えてもみてよ。全員いなくなったら国防の指揮は誰がとるの?
 興行の舵取りは誰がやるの?いないでしょ?」
「カノンちゃんとか。」
「私はアヤチョに押し付けられた面倒な仕事をいーっぱいこなさないといけないんだけど?」
「う〜……」
「それにね、困ると思わない?」
「何が?」
「番長7人がそこのハルナンに唆されて裏切られたりでもしたら、アンジュは終わっちゃうよ?」
「「!!」」

マロの言葉に、ハルナンはギクリとした。
もちろんそんなことをする気など微塵も無いのだが、
過去を顧みるに、ここで否定しても説得力がなさ過ぎるのだ。
そんな感じで小さくなるハルナンとは対照的に、アヤチョは激しい怒りを露わにする。

「酷いよカノンちゃん!ハルナンがそんなことする訳ないでしょ!!
 分かった!ベリーズが敵って言われて拗ねてるんだ!
 ひょっとしてそのこともハルナンの嘘とか言うんじゃないの!?」
「いや、それは信じるよ。」
「「えっ?……」」
「ベリーズ戦士団様を己のために利用することがどれだけ罪深いか、
 ハルナンはよーく知ってるだろうしね。」

ハルナンは背筋がゾクッとするのを感じた。
過去にベリーズの一人であるクマイチャンを利用して、
その結果マロに痛い目を見せられたのを思い出したのだ。
ハルナンは決意する。
ここでマロ・テスクを説得するには全てを洗いざらい説明するしか無いと悟ったのである。

「すいませんマロさん、どこかで2人で話せませんか?」
「2人で?怖〜い。私なにされちゃうの?」
「アヤチョにも聞かれたくない、大事な話がしたいんです。」
「「!!」」

99名無し募集中。。。:2016/02/26(金) 09:54:49
あれだけのことしといて
いけしゃあしゃあと外交にくるハルナンもすごいなw

100 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/27(土) 10:19:54
個別ブースに入ってから数分後、ようやくハルナンとマロが中から出てきた。
どうやら説得は上手くいったようで、マロはアヤチョも驚く程の変貌ぶりを見せている。

「そういうことだったのね。分かったわ、番長4人を合流させてあげる。」
「有難う御座います。 本当はもっと早くお伝えするべきだったのですが……」
「いいよ、気にしないで」

あのマロがいやに素直なので、アヤチョは不思議に思った。
いったいどんな魔法を使って納得させたのだろうか。

「ねぇハルナン、2人でなに話してたの?」
「うふふ、アヤチョにはまだ秘密。」
「えー!?」
「ごめんね。でももう果実の国に急がなきゃならないの。今度一緒にお話ししましょ。」
「うん!」

こうしてハルナンは慌ただしく去っていってしまった。
ここから番長を手配するのはアヤチョとマロの仕事。
興行に忙しい番長4名をさっそく王の間に呼びつける。

「カナナン、タケちゃん、メイ、リナプー、3日後にマーサー王国に行ってハルナンを助けてあげて。」
「え?」「なんでですか?」
「マーサー王とサユが攫われたらしいの……それもベリーズ様、に。」
「「「「!?」」」」

はじめは気怠い雰囲気を見せていた番長達だったが、マロの言葉を聞いて一気にピリッとする。
事態は深刻であることを理解したのだ。

「キュート様やモーニング帝国剣士と合流して事件を解決するのがあなた達の使命。
 正直言って相当厳しい戦いになるけど……やる?」

相手がベリーズほどの存在ともなれば、恐れて逃げることは恥にはならない。
だから念のためマロは本人達の意思を確かめたのだが
どうやらその心配は無用だったようだ。

「やります!フクちゃんが困っているなら、力になってやりたいんです。」

タケの言葉に仲間達も頷いていく。
モーニング帝国での選挙戦を経験して以来、
彼女らは戦士として一段階成長したのと同時に、モーニングに対して親近感を覚えるようになったのだ。
ライバルたちとまた共に戦いたい。 そう思うのは当然のことだった。
こうして話は上手くまとまるかのように思えたが、
王の間に新人番長であるムロタンが乱入することで、少々ややこしくなる。

「待ってください!なんで4人だけなんですか!」
「ムロタン!?」
「人数をどうしても増やせないって言うなら……タケさん、メイさん、その座を譲ってください。」
「は!?」「ちょっと、何言ってるの!?」

101名無し募集中。。。:2016/02/27(土) 11:11:46
ムロタン乱入!3期が参加するのかな?

102 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/27(土) 23:54:17
ムロタンが今の戦いを物足りないと感じていることはことは知っていたが
まさかこの状況でぶっ込んでくるなんて思いもしなかったのでタケは驚いた。
しかもタケとメイと言う名指しでだ。

「なんでタケちゃんとメイメイなん? ウチやリナプーでもええやろ。
 いや、良くはないんやけどな。」
「それはですね、カナナンさんとリナプーさんは尊敬できるからなんです。」

ムロタンの言葉を聞いたタケとメイは今にも卒倒しそうになる。
カナナンとリナプーを尊敬できるということは、裏を返せば自分たちを敬っていないとい薄着でこと。
クラクラする頭を押さえながら、メイが反論し始める。

「ちょっとあなた?先輩風吹かすわけじゃないけどね、一応上下関係というものが……」
「え?同じ番長なんだから同格ですよね?」
「そうなんだけどね?そうなんだけどね?えっとなんて言えばいいのかな……
 よし、具体的に聞こう。どういうところが尊敬できない?」
「えっと、例えば、メイさんの服ってオバさんみたいですよね。」
「オバさんじゃない!!これはエイティーズファッションって言うの!
 ファッションなの!分かる!?あえてよあえて!!」
「エイティーンエモーションですか?」
「違う!」

数十年前に流行した服を着る、言わばリバイバルファッションを好んでいたメイにとって
それを貶されるのはとても悔しいことだった。

「だいたいね、ファッションと言えば前からムロタンに言いたいことがあったの。
 なにその露出度の高い衣装!恥ずかしくないの?心配するわ!」

メイが指摘したのは、ムロタンのヘソ出しノースリーブ衣装だ。
戦士とは思えないほどの薄着で、防御力など度外視しているように見える。

「え?可愛くないですか?男の人にすごく好評ですよ?」
「いやらしい目で見られてるの!あーいやらしい!」
「見られても減るもんじゃないですからねー」
「最近の若い子の貞操観念ってどうなってるのかしらね!」
「え?メイさんと私って同い年じゃないですか。」
「……そうだったね。」

103 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/27(土) 23:56:50
おまけ更新

ムロタン「え?同じ番長だから同格じゃないですか?」
メイ「一応私たちだってマロを敬ってたのよ。ねぇタケちゃん!」
タケ「う、うん!マロめっちゃ尊敬してる。」
カナナン「ほらほらマロ、早く2人の喧嘩を止めなあかんで」
リナプー「マロお茶入れて〜」
マロ「おい」

104 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/27(土) 23:58:35
あ、急いで書いたからか結構誤字ってますね……
遂行気をつけます。

105名無し募集中。。。:2016/02/28(日) 02:10:02
りなぷー平気で言いそうw

106 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/28(日) 12:27:13
「ムロタン、尊敬できない本当の理由って、服がダサいとかそういうのじゃないんでしょ?」

興奮するメイを制して、タケが口を挟みだす。
声のトーンから真剣さが伝わったのか、ムロタンも真面目な顔をする。

「はい。メイさんの服がダサいとか、タケさんの足が短いとかはこの際どうでもいいんです。」
「ん……(脚が短いって言ってたっけ?)」
「ただ、タケさんやメイさんの役割なら私にも出来るなって思ったんですよ。」
「本心っぽいね。 どうしてそう思ったの?」
「例えばですけど、カナナンさんの真似は私には無理です。
 私、っていうか同期はみんな、ちょっとお馬鹿さんなんで……」
「状況を見て指示を出すのは難しいってことか。」
「そうです!タケさんもそうですよね?」
「失礼だな!……まぁいいや、続けて。」
「リナプーさんみたいに姿を消して場をかき乱すのも苦手なんですよね。」
「自分から目立ちに行くもんね、ムロタン。」
「そうなんですよ……それに、リナプーさんには一対一で勝てる気がしません。」
「えっ?ということは……」

ここでムロタンがまた聞き捨てならないセリフを言い放つ。
要するに、タケやメイには勝てるとアピールしたいのだろう。
褒められてニヤニヤしてるカナナンやリナプーとは対照的に、
タケとメイの顔がどんどん怖くなっていく。

「タケさんとメイさんってただの戦闘員ですよね?
 だったら私と同じじゃないですか。 代わっても問題ないと思いません?」
「ムロタン、そこまで言うってことはタイマンで私に勝てる気でいるのかな?」
「いや、一対一じゃなくていいですよ。」
「……どういうこと?」
「2人がかりで来てくださいよ。それでやっとフェアです。そう思いません?」
「「!!」」

タケとメイがただの戦闘員だというのは確かに正しい。
とは言え、二人は帝国剣士ともやり合うことのできるレベルにいるのだ。
そんな二人に同時にかかってこいだなんて、無謀にもほどがある。
普通に考えればこんなのただの挑発にしか思えないのだが、
マロ・テスクはムロタンに確かな自信があるのを感じていた。

「面白いじゃない。先輩として勝負を受けてやれば?
 もちろん勝った方が遠征に行けるっていう条件でね。
 いいでしょ?アヤチョ。」
「もちろん!ハルナンを助けるなら強い子の方がいいからね。」

アヤチョとマロが承認したので、いよいよこの戦いを避けることは出来なくなってしまった。
だがその点においてはなんら問題ない。タケもメイも十分やる気なのだ。
そんな二人をさらに興奮させたいのか、ムロタンが新たな条件を提示する。

「戦う時間と場所なんですけど……私が決めていいですか?」
「いいよ、好きにしな。」
「じゃあ昼過ぎに野外の大広間でやりましょうよ!!
 それまでにギャラリーをたっくさん集めてくるから期待しててくださいね。
 大勢の兵隊さん達の前で白黒ハッキリ決めましょうよ。」
「……いいけど。」

ここでカナナンは気づいてしまった。
ムロタンがしきりに挑発することで起こりうる最悪の事態を想像したのだ。

「タケちゃん!メイ!」
「カナナン、口出しは無用だよ。」
「……はい。」

マロがクギを刺すのでカナナンは何も助言できなくなった。
こうなったらもう、2人が罠にかからないように祈るしかない。

(タケちゃん!メイ!お願い気づいて!!)

107 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/29(月) 02:04:14
昼の休憩を少し挟んで、ムロタンの指定した時刻がやってきた。
それほど時間が有ったという訳では無いのに、広場には2000を越える数の兵士達が集まっている。
番長同士の戦いという好カードを誰もが見たがっているのだろう。

「どうですか?観客の数としては申し分無いですよね。」
「……ところでさ。」
「タケさん、どうかしました?」
「ムロタンの同期には声をかけなかったの?応援に来てないようだけど。」

新人番長が姿を見せていないことにタケは違和感を覚えていた。
ムロタンが一世一代の大勝負をするというのに見に来ない程の薄情者では無いはずだからだ。

「あー、それがですね。リカコは仕事が忙しくて来れないみたいなんですよ。」
「例のモデルのやつ?」
「はい。色んなところから引っ張りダコらしくて呼べませんでした!
 本当はリカコにも見てもらいたかったんですけどね。」
「そっか」
「はい!」
「……で?」
「ん?なんですか?」
「え、いや。なんでもない。」

タケは物言いたげな顔をしていたが、言葉にするのを取りやめた。
観客が待ちくたびれているのを感じ取ったため、早々に決闘の準備を進めねばと思ったのだ。

「それにしてもタケちゃん。」
「どした?メイ。」
「改めて思うけどムロタンって度胸あるよね。この大人数の前でも全然緊張してない。」
「"ロックスター"だからね。慣れっこなんでしょ。でもそれを言うなら私たちだって。」
「"プロスポーツ選手"と"舞台女優"か。確かに慣れてるや。
 緊張して本領発揮できなかった、なんて言い訳出来ないね。」
「そもそも言い訳する気ないけど。勝つし。」
「あはは、そりゃそうだ。」
「……ところで、メイ。」
「?」

タケが神妙な面持ちになったのでメイは不思議に思った。
だが次の言葉でメイは困惑することとなる。

「やっぱりメイは下がっててよ。ムロタンの相手は私1人でやる。」
「は!?」

もう少しで開戦だというのに、突然1人で戦うとか言い出したので
メイは何が何だか分からなくなってしまった。

「ちょっと今更なに言ってるの!?」
「ムロタン相手に2人がかりは違うなって思って……」
「卑怯だとか言いたいの?ムロタンが後輩だから大人気ないって?
 それは違うよ!これはそういうルールなんだよ!?
 分かってるの?タケちゃん。これは遊びじゃないんだよ!」

メイが激しく興奮しながら怒鳴るので、その声はムロタンだけでなく観客にも届いてしまった。
兵士達には、タケとメイが仲間割れするというみっともない姿が見えているのだろう。

「いいから退けっての。ムロタンの相手は1人で務まるから。」
「分かった!!もう分かった!!タケちゃんがそう言うならメイはもうムロタンとは戦わない!!」
「あぁ、その辺で応援してろよ。」
「応援なんてするわけ無いでしょ!ここに居るだけで嫌な気分になってくるの!
 あー気持ち悪い!さようなら!!!せいぜい
頑張ってね!!」
「……チッ」

顔を真っ赤にしたメイが本当にどこかに行ってしまったので、ギャラリーはひどくどよめいている。
そして、タケやメイの同期であるカナナンも不安に思っていた。

「あぁ〜なんてことを……このままじゃ負けてしまう……」

最悪の展開が近づいていることにカナナンは絶望しかけていた。
後輩に勝つにはタケとメイの協力が必要不可欠だと分析していたのに、
それがもう叶わなくなってしまったのでガックシきているのだ。
そんなカナナンの肩をポンポンと叩きながら、もう1人の同期であるリナプーが声をかける。

「カナナンって頭いいけどたまに馬鹿だよね。」
「えぇ!?ひどい!」
「だってさ、私たちの同期が負けるわけないじゃん。」
「だったらええけど……根拠ないやろ」
「大丈夫だよ。あの子はやる時にはやる子だから。」

108 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/29(月) 13:13:51
「ふふっ、いいんですか?メイさん抜きで」

自分の有利な方向にコトが進むのが愉快すぎて、ムロタンはついつい吹き出してしまう。
ピリピリとした顔をするタケとは全くもって正反対だ。

「いいよ。もう始めよう。」

そう言うとタケは腰につけたホルダーから鉄球を一つ取り出した。
この鉄球「ブイナイン」こそが彼女の武器。
現モーニング帝国帝王であるフク・アパトゥーマをも苦戦させた実績を持って、ムロタンに挑もうとしている。
対するムロタンは、なんと手ぶらだった。
これから決闘を行うというのに装備を持ち合わせていないように見えるのである。
とは言え、ムロタンの戦い方を知っているタケはそれで油断などしない。
先手必勝。全力投球の精神で鉄球をぶん投げる。

「おりゃあっ!!」

160キロオーバーの豪速球なので当たれば骨折は必至。
特にムロタンはメイが呆れたほどの薄着なので、ちょっと当たっただけで戦闘不能に陥るかもしれない。
ところが当のムロタンは全く恐れるようなそぶりを見せなかった。
手のひらを前に突き出し、魔法の言葉を叫び出す。

「バリアー!!」

この世界は魔法やファンタジーの世界ではないのでバリアーなんて出ないはずなのだが
なんと、ムロタンを狙う豪速球は手のひらに当たる直前まで「見えない壁」に跳ね返されてしまう。
このムロタンお得意の防衛術に、観客たちは湧き上がる。

「おお!あれがムロタン様の魔法か!」
「タケ様の鉄球まで防ぐとは、なんと凄まじい防御力!」

ムロタンはロックスターであると共に、エンタメ興行を取り仕切るエンターテイナーでもある。
彼女にとってはパントマイムと呼ばれるパフォーマンスを戦闘に取り入れるくらい朝飯前なのだ。
しかし、パントマイムと言えば自らの身体を用いることで無いものを有るように見せる技術。
本当に自身の身体を使っているのであれば今頃ムロタンの腕はグシャグシャになっているはずだ。
ところがそのムロタンは平気な顔をしているし、腕だってなんともないように見える。
この秘密はアヤチョ王と番長たちしか知らない。

「流石だなムロタン。この程度じゃ効かないってか。」
「もっと速い球を投げてもいいんですよ?私のバリアーで全部跳ね返してあげますから。」
「でも護るだけじゃ勝てないでしょ?攻めてきなよ、そっちもさ。」

ムロタンはこのパントマイムによって番長屈指の防御力を手に入れていたが
その反面、攻撃の手段には乏しかった。
特にタケほどの身体能力を誇る戦士を倒し切るのは骨が折れるだろう。
だが、今のムロタンはそれを克服している。

「分かりました。じゃあ攻撃しますね。」
「どうやって?パンチか?キックか?」
「狙撃です!ファイヤー!!」

ムロタンがタケをビシッと指差したのと同じタイミングで、タケの肩をから血が噴き出していく。
まるで弾丸で撃ち抜かれた時のような損傷を負っているのだ。
しかしムロタンは相変わらずの手ぶら。銃なんて持っているようには見えない。
ではこの弾丸はどこから来たというのだろうか?

「これは……なるほどね。」
「あ、タケさんも分かっちゃいました?」

この仕掛けのタネは番長ならばすぐに分かるとムロタンも自覚していた。
だが分かったところでもう遅い。
絶対防御からの一斉射撃はもう開始されたのだから。

109 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/01(火) 02:17:00
歴代の番長の中で、銃を武器にする者は2人しか存在しなかった。
そのうちの1人は現在一線を退いているマロ・テスクことカノンだ。
小型銃「ベビーカノン」による銃撃によって相手の行動の幅を狭めるのが得意な戦士だった。
しかし、タケの肩にブチ込まれたのは「ベビーカノン」の弾丸ではない。
小型銃にしては弾が大きすぎるのである。
となればおのずと答えが見えてくる。
タケを撃ったのは、もう1人のガンナーだ。
いや、どちらかと言えばスナイパーと呼ぶのが相応しい。

「タケさん。ごち」

タケとムロタンの戦う広場から500m程離れたところに時計台が建っている。
そこの最上階付近では、大きなスナイパーライフルを構えた少女が陣取っていた。
その少女の名はマホ・タタン。 アンジュ王国の給食番長だ。
そんな彼女には料理以外にも天体観測という趣味があった。
スナイパーライフルのスコープを覗き込みながら、
まんまるい月を見る時のような集中力でタケを狙っていく。

「……もう一発。」

マホがトリガーを引くことで、タケの左脇腹に激痛が走る。
あまりの苦しさにひっくり返りそうになるが、それだけはしてはならない。
少しでも動きを止めれば集中砲火を受けることになるからだ。

「あはは、タケさん!私の魔法が効いてるみたいですね!なんちゃって。」
「くそっ!ムロタンじゃなくてマホの仕業だろ!これ!」
「当たりです〜。でも、だったらどうだって言うんですか?」
「……別に、何も言わないよ。」
「あー良かった。タケさん本当にカッコいいですね。
 それじゃあ思う存分やらせてもらいますよ。」

この戦い、タケとムロタンの一騎打ちかと思いきや
その実はタケ対ムロタン&マホの1対2の勝負だったのだ。
一見して卑怯に思えるが、そんなことはない。
その理由をカナナンがリナプーに解説し始める。

「ムロタンはな、自分一人だけで戦うとは一言も言ってなかったんや。」
「そーだったっけ?忘れちゃった。」
「リナプーに一対一で勝つ自信が無いって言ってたことは?」
「覚えてる!」
「そう、ムロタンが言ったのはたったそれだけ。
  後は周りが勝手に勘違いしたんやな。 タケちゃんやメイには勝てると思っとるって。」
「ふーん。そういうこと。」
「で、ここからはウチの推測になるんやけど、多分ムロタンはウチらのことも尊敬してないと思う。」
「え!?どういうこと!?」
「対戦相手をタケちゃんとメイに絞るために口からデマカセ言うとったんやで。」
「?」
「ほら、ウチは賢いからムロタンとマホの策に気づいてまうやろ?」
「なんか感じ悪いね。」
「こら。あんまり後輩を悪く言ったらあかんで。」
「そうじゃなくて。」
「でな、リナプーは透明になるからマホの狙撃が当たらないはずやろ?」
「あーそうかも。」
「つまり、アホで且つ地味でもないタケちゃんとメイを対戦相手にするのがムロタンとマホの狙いだったんや!!」
「うわー、なんかイラっとくる。」

110名無し募集中。。。:2016/03/01(火) 06:18:09
新番長はくせ者揃いだわ…流石二期がひくぐらいグイグイくるってあやちょが言うだけあるなw

111 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/02(水) 12:57:07
アンジュの番長は、先輩4人と後輩3人でそれぞれ分かれて戦うことが多かった。
このようになった原因は上下関係によるのではない。
同期間での役割が非常にハッキリしているため自然と分かれていったのである。
例えば先輩番長の役割は以下のようになる。
司令塔のカナナンが仲間に指示を出し、
身体能力の高いタケと、演技によってどんな状況も対応できるメイが前線に出て、
透明化を得意とするリナプーが場を掻き乱す……といった具合だ。
対する後輩番長には司令塔らしき人物は存在しないが、
ムロタンの防御で味方を護り、リカコが相手の視界を奪ったところで
マホが狙撃するといった必勝パターンを確立させていた。
今回、新人はリカコの一枚落とし程度で済んでいるのに対して、先輩であるタケはたった1人で臨まなくてはならない。
誰がどう見ても不利な状況にあるのである。

「せめてメイがおったらな……今のタケちゃんは弾丸から身を護りつつムロタンの護りまで崩さなあかん。」
「あはは、このままだとタケ負けるね。ばくわら」
「リナプー!笑い事やないやろ!」
「……だからさっきも言ったじゃん。カナナンはたまに馬鹿なところあるって。」
「!?」
「この勝負は同期の勝ちだよ。 タケだってそれを分かってるみたいだし。」

リナプーはそう言うが、当のタケは未だにこの状況を打破できずにいた。
身体で貰った銃弾の数は太ももをやられたことで3発に達しているし、
マホを倒しに行こうにもムロタンに回り込まれて妨害されてしまう。
ならばムロタンをぶっ倒せば良いと考えたが、スナイパーに狙われたままでは本気の投球を見せることも不可能だ。
そして、仮に超豪速球を投げたとしてもムロタンの「見えない壁」を破れるかどうかは分からない。
まさに絶体絶命なのである。
タケが苦しい顔をするのを見たムロタンは有頂天になる。

「そろそろキツいんじゃないですか?顔が死んでますよ!」
「まだ負けてない……」
「いえ、もう終わりです。 その撃たれた脚じゃもう避けられないでしょ?
 だからこれが最後なんですよ!マホ!やっちゃって!!」

ムロタンはタケを指差し、大声でマホに指示を出した。
動けぬ的のど真ん中に弾丸を当てればそれで終了だと考えたのだ。
ところが、何か様子がおかしい。
ムロタンが発射のお願いをしたというのに、いつまで経っても銃声は鳴り響かない。

「え?……マホ?……なんで撃たないの?」

112 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/02(水) 12:58:51
>>110
未登場ですが、リカコはムロタンやマホ以上に個性的な戦い方になる予定です。
番長の武器は基本的にモチーフになったメンバーの趣味や特技から採用しているので
予想してみてください。

113名無し募集中。。。:2016/03/02(水) 14:14:57
シャボンカッターかな

114名無し募集中。。。:2016/03/02(水) 18:38:10
「相手の視界を奪う」から泡の壁を作るとか・・・もしくは無駄な動きで相手の気を散らすとか?w

115 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/03(木) 02:34:21
「ムロタンは凄いと思うよ。実際。」
「え?え?」

マホの動向が不明なところに、更にタケが自分を褒め始めたので
ムロタンは完全に混乱してしまった。
そんなムロタンを見ながら、タケは言葉を続けていく。

「これだけのギャラリーを集めたのも凄いし、そんな大勢の前で先輩を倒そうとする度胸も凄い。
 しかもちゃんと策が練られてるから無謀な挑戦なんかじゃない。」
「何が言いたいんですか!」
「いや、なかなか魅せてくれるなって思ったんだよ。」

タケの言葉は全て本心によるものだ。
遠征への切符を奪い取る計画を企てただけじゃなく、
それすらも観客総立ちのショーに変えてしまっている。
なんて優秀なエンターテイナーなのだろうか。

「でも、もっと魅せてくれる奴のことを知ってるんだよなぁ。」
「!?」
「流石だよね、迫真の演技ってのはああいうのを言うんだ。」
「え?え?……うそ、まさか……」
「儲け物だとは思わない?トップ女優の仕事っぷりを間近で観れたんだからさ。」
「!!!」

同時刻、マホのいる時計台。
そこではマホ・タタンが突然の来訪者にひどく怯えていた。
決して来るはずのない人物が目の前に立っているのだから無理もない。
その来訪者はたった1人の観客の前で口上をあげていく。

「世の中は劇場、人生のミザンセーヌ。
 せわしないプロット、今日も演るのだ。
 きっといつしかは大団円。
 愛と義理と人情、心惜しまずに尽くすの。
 誰に見られようと
 なんと言われようと
 ここでは、私が、主役だ!!」

彼女は部屋中に響き渡るほどの声量で見得を切った。
大根役者がこんなことを言ったらお笑いだが、そうはならない。
メイ・オールウェーズ・コーダーには2000人を騙した実績があるのだから。

「め、メイさんなんでここに……」
「今宵の客は貴女かな?」
「へっ?まだお昼ですけど……」
「それでは貴女のためにスッペシャルな演目をご披露いたしましょう。
 これは数ヶ月前にあった本当のお話ーー」

マホはスナイパー。狙撃の威力と精度は高いが、近接戦闘だけは非常に苦手としている。
普通にメイとやり合えばマホはあっという間に負けてしまうだろう。
だが幸いにも、メイは現在、自分の世界に入っている。
今ならスナイパーライフルで撃ち抜くチャンスだとマホは考えたのだ。

「えい!」
「ーーその時、巨人が現れたのです!!」
「!?」

あとちょっとで引き金を引けるといったところで、マホの身体は静止してしまった。
急に全身が重くなったのだ。
まるで天空から伸びてきた巨人の手に押さえつけられたかのように、
たった「1秒」だけ動きを止められたのである。
これはメイが死に物狂いの稽古の果てに習得した「1秒演技」によるもの。
超短期ではあるが、己の実力を遥かに超える人物をも演じることが出来るようになったのだ。
たかが「1秒」、されど「1秒」
これだけ止められれば応用はいくらでも効く。

「ーーそこで勇敢な王は仕掛けました。"フク・ダッシュ"!!」

マホが動きを取り戻すよりも早く、メイは爆発的な加速力で体当たりをぶつけていく。
防御姿勢を全くとれていない相手に喰らわす突進は非常に強烈。
マホは耐えきれずに気を失ってしまった。

「か〜てぃんこ〜るるるんるるるん
 それでは最後にみんなで一緒に三三七拍子。
 さ〜あ、皆様お手を拝借。
 『本日は、本当にありがとう!』」

これにてアクトレスによる劇は終幕。
次に輝くのはアスリートか、アーティストか。

116名無し募集中。。。:2016/03/03(木) 05:02:50
まさにメイの独り舞台!w

117 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/03(木) 12:53:56
「今までのが全部演技……!?
 じゃあ、私たちの考えが分かってたってことですか!?
 隠してたつもりなのに、どうして!」

同期みんなで意見を出し合って作り上げた作戦が崩壊しかけたので、
ムロタンの焦りは相当のものだった。
負傷自体は相手の方が上だというのに、敗北者のような顔をしている。

「ムロタンの行動が不自然だったからかな。すぐに何か有ると気づいたよ。」
「不自然???私、何か変でした!?」
「番長の凄さは舎弟から昇格したムロタンが一番よく知ってるはずだろ。
 マホやリカコよりも長い間努力し続けたムロタンが、
 先輩の番長を2人同時に倒せるなんて口が裂けても言えないんじゃない?」
「あ……」
「それでもムロタンは言い切った。じゃあ何か策がある。
 しかもこんな開けた場所で決闘するなんて言い出したもんだからさ
 ここらで一番高い時計台を怪しいと思うのは当然じゃない?」
「……タケさん、意外と頭良かったんですね。」
「良くなんかないよ、ただ、モーニングの方に姑息な手ばっかり使う奴がいてさ。
 そいつに会ってからは、ちょっとは頭使うようになったかな〜」

かつてのタケは親友のフクを満足に守ることが出来たとは言えなかった。
戦術には無頓着だったタケも、その悔しさから考えを改めるようにしたのである。

「じゃあ……どうしてですか。」
「何が?」
「メイさんを信じることが出来たのはどうしてなんですか!
 本当に怒って帰っちゃったのかもしれないじゃないですか!
 いくらタケさんが策を暴いても、メイさんが気づかなかったら意味ないのに!」
「どうしてって……そりゃ分かるでしょ。」
「!」
「同期なんだぜ?言葉になんかしなくたって、大体分かると思うけどな〜。
 ムロタンはどう?マホやリカコの言いたいこと。」
「……分かります。」
「ま、あそこのカナナンだけは分かって無かったみたいだけどね。後でみんなで〆る!!」

ムロタンは、今回の作戦に無理があることにようやく気づいた。
失敗の要因は、先輩番長はカナナン抜きでは正常な判断が出来ないと思ってたこと。
そして、先輩らの絆は新人番長の絆ほど固くないとタカをくくったことが挙げられる。
要するに、舐めすぎていたのだ。
そんな姿勢で臨んだ戦いが上手くいくはずもない。

「私が馬鹿だったって分かりました……でも……」
「でも?」
「私!いや、私たちはまだ負けていません!!」

ムロタンは「見えない壁」をギュウッと掴み、自分とタケとの間に配置する。
彼女の瞳の炎はまだ消えていなかったのだ。

「私の防御は絶対なんです!!かすり傷一つ負わずに勝ってやるんですから!!」
「いいねぇ……そうこなくっちゃ。」

118名無し募集中。。。:2016/03/03(木) 13:41:48
タケやるねぇ
実際はうるう年の意味もよく分かってないのにw

119 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/04(金) 02:15:39
ムロタンの「見えない壁」の正体は、アクリルと呼ばれる最新の素材で出来た透明色の盾だ。
ただでさえ耐久力の優れた素材だというのに
それを10cmという普通の盾でも考えられないような厚さで作り上げているのだから、硬くないはずがなかった。
もちろんその分だけ重量が増して使いにくくなる訳だが
番長になるため頑張り続けたムロタンからしてみれば、この程度は軽いものだった。
ムロタンは未だ打ち破られたことのないこの透明盾、その名も「クリアファイル」に絶大な信頼を置いている。
そして、そのことは他の番長たちも重々承知していた。

「私の鉄球とムロタンの盾、どっちが強いか勝負だ!」
「望むところです!!」

ここまで来れば策も何もない。力と力のぶつかり合いだ。
タケは本気で投げるし、ムロタンはそれを全力で受け止める。
そんなやり取りが2、3分ほど繰り返された。
時たまタケが変化球を投げて打点をズラそうともするが、それさえも全て防がれてしまった。
盾が透明ということは、相手の攻撃が当たる寸前まで軌道を確認できるということ。
その特性から、ムロタンは不意打ちさえも確実にガードすることが出来るのだ。

「ハァ……ハァ……本当に硬いな」

一見して2人の勝負は拮抗しているように見えるが、実はタケの方がいくらか不利だった。
先ほどマホに撃たれた傷から出血し続けているため、もう長くはないのである。

「タケさん!そろそろキツいんじゃないですか?」
「……かもね、もう諦めようかな。」
「え!?本当ですか?」
「勘違いするなよムロタン。諦めるってのは勝負のことじゃないよ。
 9回ウラ満塁になったとしても勝利だけは信じてやるんだ。」
「じゃあなんだって言うんですか?盾を壊さないと私は倒せませんよ?」
「どうかな、まぁその目でしっかりと見てなよ。」

120 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/04(金) 02:16:52
タケちゃんうるう年分かってないんですかw
想像以上でした。

121名無し募集中。。。:2016/03/04(金) 09:24:19
想像以上ってw

122 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/04(金) 12:56:19
タケの武器は鉄球のみ。
ゆえに、相も変わらぬ豪速球を放ることしか出来ない。
ただ、ここでタケは少しの変化を加えることにした。
狙いをムロタンの顔面に定めてぶん投げたのだ。

「とりゃっ!!」
「だから無駄ですって!」

どこに投げられた球だろうとムロタンには関係ない。
ギリギリまで鉄球の行き先を見極めて、そこに透明盾を当ててやるだけだ。
結果として今回も球は跳ね返されてしまった。
たがタケはまだ勝負を諦めていない。
跳んできたボールをキャッチするや否や、インターバルなしですぐさま投球モーションに入ったのである。
狙いは同じくムロタンの顔面。

「それはさっきやったでしょ!?効きません!」

寸分の狂いもなく同じ箇所を狙ってきたので、ムロタンは盾を動かす必要すら無かった。
ただ構えているだけでいいので非常に楽にガードすることが出来る。
ところが、ここでムロタンの身体に異変が起きる。
まったく動く必要がないと言うのに、脚が勝手に後ずさりし始めたのだ。

「え!?……わわっ!!」

多少バランスを崩したが、すぐに体勢を立て直すことでなんとか鉄球を防ぐことが出来た。
そんな風にホッとしているムロタンに対して、タケはまたもすぐに球をぶん投げる。
狙いは変わらない。ムロタンの顔面だ。

(またぁ!?)

馬鹿の一つ覚えみたいに同じところばかり狙ってくるタケの攻撃は、
盾使いからしてみればこれ以上なく簡単に捌けるはずだった。
ところが気づけば腕が震えている。膝も笑っている。
軌道を見続けねばならない目も頻繁に瞬きをしている。
喉が渇く。胸が苦しくなる。血が冷たくなる。
何より、逃げ出したい思いでいっぱいになる。
ここでようやくムロタンは自覚した。

(私、怖がってる!?)

前にムロタンの盾が透明であることのメリットについて書いたが
それに対するデメリットもちゃんと存在していた。
デメリット。それは敵の攻撃がよく見えすぎてしまうところにある。
顔面に鉄球が当たることは絶対に無いと頭で理解していたとしても、
それによって生じる恐怖心は毎回毎回蓄積されていってしまうのだ。
そうして一度根付いた恐怖は思考までもネガティヴに変えてしまう。
もしも盾を離してしまったらどうしよう。
もしも転んでしまったらどうしよう。
もしも鉄球が本当に顔面に当たってしまったら……明日から私はどうすればいいのだろう。
気づけばムロタンは大粒の涙を流し、膝から崩れ落ちてしまっていた。
かすり傷を一つ負うよりも先に、気持ちの方が折れたのである。

「ううっ……悔しい……立てない……」

ムロタンが敗北を認めたのを理解したタケは、安心した顔をしながら鉄球をホルダーに戻していく。
そして、一言呟いた後にぐたっと倒れこむのだった。

「後輩に勝てたー……これでちょっとはフクちゃんに並べたかな?……」

123 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/04(金) 22:30:02
次にタケが目を覚ましたのはベッドの上だった。
隣でムロタンやマホも横になっていることから、
決闘での負傷者が病室へと運び込まれたのだと理解する。

「あ!タケさん起きた!」
「タケさんおはようございます。」
「お、おはよう。ムロタン、マホ。」

勝負に敗れたはずの後輩たちがニコニコ笑顔だったので
タケは本当に自分たちが勝ったのか不安になってしまった。
だがその心配は無用だ。確かに勝利を収めている。
枕元に置かれた手紙がその証拠だ。

『しあさってには出発なんだから早く治しなさいよ! メイより。』

メイの書置きを読んで、改めてタケは今回の趣旨を思い出す。
この決闘はベリーズを倒しにいく者を決める戦いだったのだ。
となるとタケには一つの不安があった。

「うーん……ねぇ、ムロタン、マホ。」
「はい?」「なんですか?」
「私の代わりに2人のどっちかがマーサー王国に行ってくれない?」
「「!?」」

やっとの思いで権利を死守したタケが辞退したものだから、後輩2人はビックリ仰天だ。
その言葉の真意をまず知りたくなってくる。

「どうしてですか!?タケさん、やっぱり怖くなったんですか?」
「そんなんじゃないよ! ただ、今の私じゃ戦力にならないと思ってね。」
「「?」」
「ほら、何発も銃に撃たれたから本調子じゃないんだ……」
「「あ……」」
「万全でも勝てるかどうか分からない相手に、こんな身体じゃ挑めないよ。
 番長に、帝国剣士に、KASTのみんなに迷惑はかけたくない。
 でも2人なら二、三日寝たら回復するはず。 だったら力になれると思うんだ。」
「「……」」

タケの言うことはもっともだし、新人にとってはこれ以上無いチャンスでもあった。
この機を逃したら次に大舞台に立てるのはいつになるか分からないだろう。
それでも、2人は首を縦には振らなかった。

「行けないよね、マホ。」「うん。」
「どうして!?2人は十分強いじゃないか。絶対活躍できるって!」
「ダメですよ。私たちは負けたんですから。」
「ムロタンの言う通りです。 修行をやり直します。」

ルールはルール。敗北した以上は身を引く潔さは立派だった。
でも、それではタケが困るのである。

「ちょっとちょっと!今回はアンジュから4人が出撃することになってるんだよ!?
 これだとカナナン、メイ、リナプーの3人で行かなきゃならないじゃないか!」
「もう1人、いますよ。」
「!」

マホの言葉を聞いて、タケはハッとした。
タケも認める新人番長には、あともう1人残されていたのだ。

「私とマホは負けたからマーサー王国にはいきません。約束ですからね。でも……」
「そうか!リカコは負けていない!」

124名無し募集中。。。:2016/03/04(金) 23:23:06
タケはマイミのような回復力は持っていなかったか・・・

125名無し募集中。。。:2016/03/05(土) 01:49:16
もしや…帝国剣士が出払った帝国に警備の名目で入りフク王とイチャイチャするのが目的だったりして?w

126名無し募集中。。。:2016/03/05(土) 11:45:57
ノリ#・ 。・リ

127 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/07(月) 02:29:59
各国での準備も終わり、合同作戦会議の当日。
モーニング帝国からはQ期3名と天気組5名の計8名がマーサー王国に向かうこととなっていた。
新人は緊張で何も出来なくなることが想像できるので
会議の場に連れてくる意味は薄いと考えての人選なのである。
だが、実際のところは先輩らもガチガチに固まるほど緊張していた。
マーサー城の控え室に着いたは良いものの、妙にソワソワしている。

「どうしようハルナン、緊張で吐きそう。」
「アユミンも?私だって指が震えてるよ。」
「えー?だってハルナンはキュートさんの訓練について行ったことがあるんでしょ?」
「だから尚更よ……もう二度とあの空間にはいたくない……」
「うわぁ……」

緊張の原因はレジェンドとも言える存在である、キュート戦士団だった。
もともとマーサー王国は食卓の騎士が守護していたのだが、
そこからベリーズが抜けたために現在の主要騎士はキュートの5名のみ。
少ないように見えるが、その一人一人が団長マイミと同じくらいの実力を備えているのである。
帝国剣士が緊張するのも無理はないと言えるだろう。
そんな張り詰めた空気の中、帝国剣士に遅れてアンジュ王国の番長4名が到着する。

「あ!カナナンとリナプー、それにメイもおるやん!」
「ということはもう一人は……」

知った顔が次々と現れたので帝国剣士らはホッとした。
以前、共に戦った者同士なので心強く思っているのだ。
あの事件以降、カナナン、リナプー、メイ、タケの4人とはちょくちょく会っているため
近況などを言い合って緊張を解いていくのも良いかもしれない。
ところが、タケだと思っていた4人目は実はタケではなかった。
もっと脚が長くて、もっと大人っぽい顔をしている女性だったのだ。

「背高っ!誰!?キミ!」

大きなリアクションで驚くカノンに対して、4人目は自己紹介をしようとしたが
慌ててカナナンがその子の口を塞ぎだす。

「あははは、この子はリカコって言うてな、ウチの新人やねん。」
「新しい番長ってこと?」
「そういうこと。まだ14歳の入りたてピチピチやで。」
「えー!?見えない!」

確かに理科番長リカコ・シッツレイのルックスは、実年齢を言われなければ分からない程に大人びていた。
絵画のモデルを務めるほどの美貌でもあるため、帝国剣士らは息を飲んでリカコを見つめている。
手が速いハル・チェ・ドゥーも、声をかけずにはいられないようだった。

「君みたいな子の血でも吸えたら僕の貧血も治るんだろうなぁ・・・・・・ねぇ、吸ってみてもいい?」

第一部でも言ったような台詞を恥ずかしげもなく吐いたので、帝国剣士らは呆れてしまった。
それでも初見のリカコには効果覿面。
口をカナナンに塞がれているので身振り手振りで感情を伝えようとするが、
その両手もメイとリナプーに抑えられてしまった。

「あなたはジェスチャーするの辞めておきなさい。」
「ごめんね。でもこれもリカコのためだからね。」

後輩の行動を寄ってたかって制限する先輩番長らに、ハルはキョトンとした顔をする。

「あの〜あんたら、何やってるの?」
「いや、これは気にせんといて。」

128 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/07(月) 02:33:33
>>125

ノノ∮‘ _l‘)<!

ノハ*゚ ゥ ゚)<新人4人は置いていきましょう

ノノ∮‘ _l‘)シュン

129 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/07(月) 12:57:10
「みんなもう来てたのか!感心だな。」

控え室の扉をマイミが開いたものだから、帝国剣士と番長らは一気にピリッとする。
歓迎ムードゆえにマイミは嵐のような殺気を抑えてはいるのだが、
それでもやはり伝説を前にしてリラックスすることなど出来なかったのだろう。
他の人よりはほんの少しだけ耐性のあるハルナンが声をかけるのがやっとだった。

「あの、マイミ様……打ち合わせはまだ先のはずですが、何の用でいらっしゃったのですか?
 キュートの皆様はギリギリまで休んでもらっても良いんですよ?」

じゃなきゃ自分たちの身体がもたない、といった本心まではハルナンも口に出さなかった。
出来ればキュートと顔を合わせるのは会議の場だけであって欲しいと思っているのだ。
だがマイミもここに来るだけの正当な理由を持ち合わせていたようだ。

「会議の前に伝えておきたいことがあってな。」
「伝えておきたいこと?……」
「実はオカールのヤツの機嫌が相当悪いみたいで……誰彼構わず当たり散らすかもしれないんだ。」
「!?」

オカールと言えばキュートの中で最も凶暴だと言われている狂戦士。
常に飢えており、全方位に噛み付かんとするその姿勢は脅威だ。
そんなオカールの虫の居所が悪いなんて聞いたものだから、一同は震え上がってしまう。

「ま、まぁ安心してくれ!君たちが刺激しなければ何もしないはずだ。
 もしも不当に暴行を働こうとしたならば、私が身を挺して護ると約束する!」

マイミがそう言うまでもなく、帝国剣士と番長にはオカールにどうこうする度胸など無かった。
あれだけ恐ろしいクマイチャンやモモコと同格の戦士にちょっかいかけるなんて、想像しただけで恐ろしすぎる。
出来れば平穏に、波音立てずに終わらせたい。誰もがそのように思っている。
しかし、そう上手く行きそうにはなかった。

「ごめんなさい!遅れました!」
「KAST……3名、今到着しました!」

このタイミングでKASTらが部屋に入ってきた。
トモ、サユキ、カリンは全員が全員汗ダクで、急いでここまで来たというのが伝わってくる。
だが何かがおかしい。
ここに来ると聞いていたメンバーが1人見当たらないのだ。

「あぁ、会議はまだだから気にしないでくれ。 遅刻なんかじゃないぞ。」
「それが……それが……」
「そんな青い顔をしてどうしたんだ?」
「アーリー・ザマシランが遅刻するかもしれないんです!
  途中ではぐれちゃって……どれだけ急いでも開始時刻には間に合わないかも……」

報告したサユキも、その仲間であるトモとカリンもこの世の終わりのような顔をしていた。
キュートも参加する会議に遅刻するのだから、絶望するのも当然なのだろう。
そして、KASTだけでなくモーニング帝国剣士や番長らも恐れた顔をしている。
その上。マイミですらも神妙な顔をし始めてしまった。

「まずいな……このままだとオカールは確実に激怒するぞ……
 そうなったら私でもヤツを止められないかもしれない……」

130名無し募集中。。。:2016/03/07(月) 15:40:52
自分も遅刻魔なのにw

131名無し募集中。。。:2016/03/07(月) 21:49:31
オカールのキャラ的仕上りがw
ほかのメンバーもさらに気になってきたw

132名無し募集中。。。:2016/03/07(月) 22:18:43
なんかもう食卓の騎士がみなぶっ飛んだ性格になってるw月日がたつのは恐ろしい・・・

133 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/08(火) 12:58:15
アーリーが到着する前に会議の時間がきてしまった。
このまま待ち続けてもしょうがないので、一同はマイミの案内で作戦室へ向かうことにする。
正直言ってこれから出会うキュートが怖くて仕方がないが、この場面でビビったら何も始まらない。
勇気を振り絞れば乗り切れると信じて、扉を開けていく。

「遅くね?」

部屋に入った瞬間、帝国剣士と番長、そしてKASTらは獣に食い千切られるような激痛を感じだす。
瞬間的に狼が飛びかかり、腕に、脚に、腹に、そして首に噛み付くかのような「錯覚」。
これはオカールの放った殺気なのだが、
イメージやオーラと呼ぶにはあまりにもリアルすぎていた。

「こらオカール!せっかく来てくれたみんなになんてことをするんだ!」
「あ、そいつらがモーニングやアンジュの戦士なの?
 ……この程度の殺気でビビるようじゃ戦力にならなくない?
 今は恵まれてるよな。このレベルで国の代表を気取れるんだから。なぁ?」

キュート戦士団の一員、オカールの発言に一同はプライドを著しく傷つけられた。
しかしだからと言ってどうすることも出来やしない。
反抗でもしようものならば、更に噛みつかれることが目に見えているからだ。
そんなオカールを止められるのは、同格の戦士しかいない。
同じくキュート戦士団の1人であるアイリが抑えようとする。

「ダメですよ〜オカール。 これでもベリーズを倒すために立ち上がってくれた戦士なんですから。
 ここで心まで折ってしまったら、本当に使い物にならなくなるじゃない。」

口調こそオカールよりは丁寧だが、ひどく冷たい目をしている。
帝国剣士その他を認めていないのは明らかだ。
だが一同はオカールとは違う意味でアイリに反論することが出来なかった。
全員が全員イナズマに打たれたかのように、彼女の魅力にシビれてしまっているのである。
一目見るだけで、少し声を聞くだけで身体に電流が走る。
アイリを目指して戦士を志したトモ・フェアリークォーツは、特に痺れているようだった。

「ううっ……この下腹部がバチバチする感じが堪らない……癖になりそう。」

話は変わるが、この部屋にはオカールとアイリ以外にもう1人のキュート戦士団員が存在している。
ただ、そのメンバーは人見知りがひどいためになかなか中心に来ようとはしない。
ずっと隅っこにいようとしているのだ。

「おいナカサキ!お前もこっちに来たらどうだ。」
「ちょっと団長!そんな簡単に名前を呼ばないでよ!大勢に見られたら緊張しちゃうでしょ……」

マイミの「嵐」、オカールの「狼」、アイリの「雷」のようにナカサキだって特有の殺気を放っていた。
ところが、彼女のオーラはあまりにも特別。
珍妙すぎるイメージに、若い戦士らは驚愕してしまう。

「え?……なにあれ?」

134 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/08(火) 12:59:14
前作からキャラ変している登場人物も多いとは思いますが、
マロほど性格が変わったキャラは居ないと思いますw

135名無し募集中。。。:2016/03/08(火) 13:39:50
ナッキーだけはnkskちゃんのままだったかw

136名無し募集中。。。:2016/03/08(火) 19:22:17
下腹部バチバチあかんやろ…

137 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/09(水) 12:57:20
ナカサキの隣に妖精なのか怪物なのか分からない奇妙な生物がいるのを、一同は見逃さなかった。
怪物とは言ってもまるで凶暴そうではなく
少し押せば倒れてしまいそうな程に貧弱に見える。
こんな動物はこれまで目にしたことがないので
おそらくはナカサキの放つオーラによって具現化されたものだと推測できるが
他の食卓の騎士のそれと比較するとあまりにも弱々しく、威厳が感じられなかった。
その怪物を見慣れているのか、マイミは一切触れずに別の話題を持ち出す。

「そういえばマイマイはどうしたんだ? もう会議が始まるというのに……」
「マイちゃんはここには来ないよ……もう戦えないんだ。」
「えっ!?」

オカールの発言に、マイミだけでなく他の戦士たちも驚いた。
マイマイと言えばキュート戦士団の中で最年少の戦士。
引退にはあまりにも早すぎる年齢だ。

「どういうことなんだ?」
「アンタは帝国とかに行ってたから分からないかもしれないけどさ、
 マイちゃんはメンタルをやられちまってるんだよ……ひどく落ち込んじゃって、もうずっと寝込んでる。
 とてもじゃないけど、当分は戦えないんじゃないかな。」
「そんな!!」

考えてみれば当然のことだった。
これまで仲間だと信じていたベリーズに裏切られ、更に王までも攫われている。
絶望するなと言う方が無理な状況なのだ。
伝説の存在とは言え、二十歳前の女の子には少々キツかったのだろう。

「あの……ちょっといいですか?」
「どうした?ハルナン。」

全員が沈んでいるところに、ハルナンが発言を投げかけ始める。
はじめはみな、空気が読めていない行動だと考えたが
次に続く言葉を聞いた何人かは意図を掴み取ったようだ。

「キュート戦士団からはマイミ様、ナカサキ様、アイリ様、オカール様が本日の会議に参加されるのですね。
 で、マイマイ様が欠席ですか。」
「あぁ、そうなるな。」
「モーニング帝国剣士は新人4名を除いた8名が参加します。 連絡が遅れて申し訳ございませんでした。」

この状況でハルナンが状況を報告することの意味をカナナンは理解した。
番長の責任者として、自分も報告を開始する。

「アンジュからは私カナナン、リナプー、メイ、リカコの4人が来ています。
 タケ、マホ、ムロタンの3名は防衛任務のため欠席させていただきます。
 同じく報告が遅れてすいませんでした。」
「お、おう……」

報告を受けたマイミだけでなく、その後ろにいるオカールも「欠席」するメンバーがいる事を受け入れているのを見て、
カナナンは心の中でガッツポーズをした。
マイマイが不参加である以上、「欠席」自体は責められることのない正当な行為なのだ。
となればKASTの責任者トモがやるべきことは見えてくる。

(そうか!アーリーも欠席ということにすればいいんだ!)

オカールは若手が欠席すると知ったら激しく怒るだろう。
先ほど見せた殺気を遥かに上回った殺意を振りかざすかもしれない。
でも、欠席だったら許してもらえるのは明らかだ。
ならばその線で押し通すしかないのである。

「あ、あの!KASTからは……」
「ダメよ〜。嘘ついたらバチが当たりますよ〜」
「!?」

話そうとした矢先にアイリが割って入ったので、トモは衝撃を受けてしまった。
しかも今回は痺れる程度では済まない、まるで電気SHOCK!に撃たれたかのように苦しい。

「え!?う、嘘って……」
「あなた、これから嘘つこうとしませんでした?」
「そんな!アイリ様の前で嘘なんて!」
「ふぅん、その割には心臓が弱ってるみたいだけどなぁ」
「え!?ええ!?」

138 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/09(水) 12:57:58
>>136
不適切でしたね……やり過ぎないように気をつけます。

139名無し募集中。。。:2016/03/10(木) 01:43:37
今回のナカサキの能力はリアル本人のネタや特徴を能力化したものなのか、それとも
妖精のような怪物の元キャラの能力の影響を受けたものなのか・・・
そしてナカサキの能力面以外でもいろいろ気になることが・・・
それらのその時が来るのをおとなしく待っときますw

140名無し募集中。。。:2016/03/10(木) 08:12:32
幻獣キュフフかな?

141 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/11(金) 12:49:43
「あなたのお仲間も心臓バクバクみたい。KASTに何かあったんですかね〜?」

まるで心の中を見抜くかのような言い振りをするアイリを前にして、トモは何も言えなくなってしまった。
いや、トモだけではない。 アイリとオカール、ナカサキを除く誰もが動揺している。
マイミですら髪が額に張り付くほどの汗をかいていることからも、
今後起こりうることのヤバさが容易に想像できるだろう。

「おいおいおい!なんだよ!嘘をつこうとしてたってのか!?」

オカールの怒声を聞いた一同は、完全に縮み上がっていた。
狼に喉元を容赦なく噛み切られる思いをしているのだから、ここで元気に居られるはずがないのだ。
アーリーの遅刻を正直に話すのはマズいが、嘘が暴かれるのはもっとマズい。
その時にはイメージではなく、本当に首を斬られかねない。

「なに黙ってるんだよ!言えよ!全然ワケわかんねぇな!!
 騙そうとしてたのか!?だったら絶対に許してやんねぇ!
 どうなんだよ!おい!どうなんだよ!!」

だが本当に真実を打ち明けるべきなのか?
そうして制裁を受けた場合、自分たちの心が完全に折れてしまうのではないか?
トモがそう葛藤しているうちに、部屋の扉が開かれる。

「ごべんなざぃ〜〜遅れちゃいましたぁ〜〜!」

扉を開いたのは、最悪にも少しの遅れで済んでしまったアーリー・ザマシランだった。
いつもの美人顔が台無しになるくらいにひどく号泣している。
ここで一同は死を覚悟した。
もはや言い訳など通用しない。後はオカールの怒りをただただ受け入れるのみ。
ただの威嚇で首を搔っ切られるのだから、こうなれば骨まで残らないのかもしれない。
イメージで何回殺されようがじっと耐えよう。そう考えたのだ。
ところが、オカールのとった行動は想像を超えたものだった。

「お……おい、大丈夫か?」
「うぇぇぇぇん!ごめんなさい!本当にごめんなさい!」
「ほらほら泣かないで、いったいどうしたの?」
「あっちの方まで行っちゃったんです〜〜」
「あっちまで行っちゃったの?怖かったね〜もう大丈夫だからね〜」
「大丈夫?……」
「うん大丈夫大丈夫。落ち着いてきた?」
「ちょっと……」
「よし、もうひと頑張りだ。」

トモは、サユキは、カリンは、そして他のメンバーらは信じられないといった顔でポカンとしていた。
てっきり激怒して暴れ回るかと思いきや、オカールは泣き叫ぶアーリーをあやし始めたのだ。
普段から小さい子供に囲まれて生活するオカールから見れば、アーリーは大きい赤ちゃんのようなもの。
ならば泣き止むように努めるのは当然のことなのである。
そんな一面を知らず呆気にとられているトモの肩をポンと叩いて、アイリがボソッと呟く。

「だから言ったでしょ〜? 嘘はダメですよ、って。」
「は、はい!……なんか、自分が恥ずかしいです。」
「うふふ。気にしないで。」

142 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/11(金) 12:52:33
ナカサキに限らず、キュートの戦闘シーンはまだずっと先かもしれません。
戦うには同格の敵が出てこないといけませんしね。


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