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投稿するまでもないSSスレ 7/7
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創想話に投稿するまでもないSS用スレ。
理屈なんていらない、東方に熱い想いがあるというなら
とにかくそれをぶちまけろ! 長編・短編どちらもOKだ!
前スレ
投稿するまでもないSSスレ 6/6
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/6306/1201010640/
関連サイト
プチ東方創想話ミニ
ttp://cgi.www5d.biglobe.ne.jp/~coolier2/sss/anthologys.cgi
SSを書いている人へ
なぜ自分が書いたSSが評価されないのか
どうしてイタイヤシと叩かれなければならないのか
U-1ってなに?って思ってる人
こうすれば、貴方のSSは生まれ変わる
『 メアリ・スー 』 テストで自己診断。これで皆は貴方のSSにメロメロだ!!
ttp://www.imasy.or.jp/~hir/hir/marysue/marysuefaq_j.html
ttp://iwatam-server.dyndns.org/column/marysue/
関連スレ
【夢夢嫁嫁】東方キャラとイチャつくスレ14【夢嫁嫁】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/6306/1205947173/l100
【こんなSS】 貴方に合うSSを探すスレ 第3話 【どうですか】
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/6306/1205951152/l100
幻想郷のキャラをいぢめるスレ 8.1
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/computer/6306/1205947364/l100
SSの実力向上を目指すスレ スレ立て待ち
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とりあえず関連スレは立っている分だけ新スレに書き換えてます
スレ立てついでに
アリスのところに妹様が尋ねていって人形劇を見たりあーんなことやこーんなことを
というSSを書こうと思ったら「そこまでよ!!」と止められたのでやめておきます
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とりあえず>>1乙
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大まかな流れは思いつくんだが、それを文で表そうとすると
文才がないせいか餓鬼のような文に・・・
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このスレ活気が皆無だな・・・
SS書いたとしても誰も見なそうだな。
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落ちてる時期も長かったですから。
でも、せっかくあるのですから、何か思いついたら書いてみます。
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早苗がやってくるなり、
「遊園地行きませんかっ?」
と、笑顔で聞いてきた。
……ゆーえんちって、何?
「なぁなぁ、ユーエンチって、何だ?」
私に聞かないで欲しい。
「えーっと……。御二人とも、知らないんですか?」
「初耳」
「知らないぜ」
吃驚している早苗。何かよく分からないけど、失礼な気がする。
よく知らないけれど、いやらしい所ならお断りよ。
わざと、少し不機嫌な感じで答えてみた。
こうすると、早苗は露骨に狼狽するので、そこが可愛いのだ。
「ちっ、違いますっ! 変な所じゃありませんー!」
案の定、わたわたする早苗。可愛い。
「なるほど、優・艶・地……。確かに、そこはかとない色気を感じるぜ」
魔理沙ナイス。
「そりゃあ、巫女って、元を辿れば色売り娘だけど……。私はそんなつもりは……」
「早苗は積極的なんだなぁ……。外の人は進んでるぜ」
二人して、にやにや。
「あーうー! 字が違いますー! 遊ぶ園の地と書いて、遊園地ですー!」
早苗の顔はトマトのように真っ赤になりました
うーん。
「……正しい字を聞いても、背徳感が消えないのは何故かしら……」
「そりゃあ、早苗の口から出てきたからじゃないか?」
ねー♪×2
「なっ、なんでっ、御二人はそんなにっ、息がぴったりなんですかっ」
いけない。遊びすぎた。
「ごめんごめん。さっき気の毒そうな顔したから、ちょっとからかいたくなったのよ」
「まぁ、お茶でも飲んで落ち着いてくれ」
「魔理沙。それ、私の湯呑み」
「もういいです……夫婦漫才は、もうご馳走様です」
「で、遊園地って、何?」
三人で縁側に腰掛けながら、あらためて聞いてみた。
「遊園地というのはですね……」
早苗が言うには、なんでも遊ぶために特化した乗り物や設備を集めた場所らしい。
例えば観覧車というのは、とても高くまで上がり、周りを見渡すことが出来、
ジェットコースターというのは、高速で線路の上を走るらしい。
「それって、私達は楽しめるのか?」
ホウキを持ちながら、(自称)幻想人最速の魔理沙が、首を傾げた。
確かに、私もそう思う。
「ええと、確かに私達は観覧車より高いところまで行けますし、
ジェットコースターも、早さでは霊夢さんにも敵わないと思います」
「じゃあ何で」
「でも、自分が好きな人と一緒に回れる。一緒の乗り物に乗る。
これは、とっても楽しいことなんです」
む。
「恥ずかしいぜ……」
「早苗は、直球だから……」
「い、いえっ、変な意味じゃありませんよっ」
そこで真っ赤な顔になるから、いらぬ誤解を招くのよ。と、言おうとしたけど、
治ってしまうのも、それはそれで勿体ないと思った私は、黙ってお茶を飲んだ。のだった。
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「でも、そんな遊び場が、何時、どこに出来たんだ?」
至極もっともな質問。
「あ、はい。何でも先日、幻想郷の外れに突然」
……はい?
「紫の仕業かしら……?」
「ありそうな話だぜ」
「竹林なら、あぁ、また姫さんが馬鹿なことを始めたのね。で、済む話だったんだけど」
魔理沙にそう振ると、
「激しく同意だな」
首をぶんぶんと振っていた。何かやらかしたのだろうか。
「姫さん?」
「ああ。今度紹介するから、今は置いといて」
あの、すちゃらかとんでも御姫について語ると、日が暮れちゃう。
「はい」
「罠か?」
「ううん。もし罠だったら、作成と同時に『霊夢〜。今度私と〜』とか言いながら、
ここに乗り込んでくるわよ。含み笑いを噛み殺したような顔して」
吹き出す二人。
「あるある」「わかりますわかります」
「第一、黙って罠にかかるのを待つ作戦だとしても、私達はそもそも『遊園地』を知らなかった」
「うんうん」
「つまりこれは……」
「そうよ、早苗。これはただ、偶然幻想郷入りしただけ」
名探偵よろしく、私は笑顔で返した。
「そうとわかれば、即、行動だぜ」
見れば、すでにホウキに跨ってる魔理沙。
「お相伴あずかります」
後ろにちょこん、と座る早苗。
「私も座れるかしら?」
「余裕だぜ」
そうして私達は、遊園地に向けて出発した。
「……で。着いたは良いんだが……」
「早苗? ねぇ、早苗? どうしたの?」
「コンナノハチガイマスコンナノハミトメマセンコレハユメデスユメデスネレバサメマス……」
「ジャンピングタイガーだ! 俺を撮影するなら、金払え!」
「わーたしは、大きい耳のー、ね・こ・で・すー♪」
「シマウマの登場だよっ! たてがみまで白黒だよっ!」
「何か、楽しそうだな♪」
「早苗は、何が不満なのかしら……」
どっとはらい。
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新スレ記念ということで、手なりではありますが、一つ書いてみました。
馬鹿話スマソw
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あああ。ユーラシア大陸の方にあった、あの遊園地!wwww
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ジャンピングタイガーググって噴いたwwwww
中国の遊園地かw
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ああごめん。こういうネタSSなんだから、誘導貼っとくべきだった。
つ 石景山遊楽園
ttp://www.google.co.jp/search?hl=ja&q=%E7%9F%B3%E6%99%AF%E5%B1%B1%E9%81%8A%E6%A5%BD%E5%9C%92+&lr=lang_ja
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今書いてるSSがあるんだが、まだ途中なんだ。
完成するまで投稿はやめたほうがいいかな。
推敲もしてないから完成時には多少内容変わるかもだけど
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早苗x魔理沙xアリスネタが最近好きかも。
聖ZUN学園の影響か・・
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何その面白そうな学園。
よし、自分も調子に乗って投下しよう。
↓ここから最後の行まで。
『ナニな事を思い出した、チルノの一人遊び』
昔から寒さに包まれていた気がする。
世界がずっとずっと、春も夏も秋も無い時、寒さに抱かれていた。
そのうち世界はあったかくなった。寒さは、暖かさによって消されていった。
暖かくなるものを寒くするには凍らせたらいい。
全てを凍らせていくうちに、一人の変な妖怪に捕まった。
いつものように凍らせてみたら、凍ったまま動いてきた。
「年中涼しいままの場所まで連れてってあげるから、そこに住みなさいな」
そっと抱きしめられて、真っ暗な闇に包まれた。
それが目を閉じた時の闇だとわかって、そのままにしておいたら、湖にいた。
それから紫色を見るたびに、時々そのことを思い出す。
春。これから冬がどこかに行って、暫く雨が降ったら大嫌いな夏がやってくる。
一年中涼しいっていうのは嘘だった。
花を凍らして砕くのは楽しいけど先のことを考えると嫌になる。
そういえばカエルはまだ見ない。まだどこかで寝てるんだろう。
今日は誰も来ない。何となく水を凍らせる。
薄く広く。なるべく広げたら一気に割る。
小枝を細かく折る楽しさに似てて、とても楽しい。
だけど、しばらくしたら飽きた。
今度は大きな氷を作ってみる。
ほとりより少し進んだところの方が作りやすいから、そこからゆっくりと。
少し、また少し、大きくなるように頑張ってみる。
両手よりも、もっと沢山。凍らせて凍らせて。どこまでも凍らせて。
そのうち、端っこの方から砕けてくる。そこを凍らせると別のところから砕けてくる。
どこも砕けないようにすると、息を止めてるような感じでいっぱいっぱいだ。
「やーめたっ!」
力を抜く。すると、一斉にいままで凍らせてた氷が砕けて、湖にゆっくりと波が広がった。
あたいの力が起こした氷と波が、湖に広がって消えていった。氷もだんだんと溶けていった。
ついに跡形もなく氷も波も湖へと溶け込んでいった。
難しいことはよくわからないけど、これが世界なんだと思う。
ゆらゆらゆれる水面と、それに映る空を見ながら、そう思う。
だけど考えたところでどうしたらいいのかわからない。
あたいは凍らせることしか出来ない。飛んで凍らせる。冷たい温度の中に私はいる。
あたいが冷たい温度だ。凍らせれば動けなくなる。動けなければ攻撃は出来ない。
考えるだけ考えたら、やっぱり凍らせることの出来るあたいは最強だった。
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聖ZUN女学院 鴨さんが作ったオリジナルssなのだが
これのアリスが壊れすぎて大好きw
早苗が主人公
変態アリスと普通の魔理沙のマリアリがたまらん
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とりあえず今執筆中のSS投下してみる
東方の細かい設定は知らないので間違っていたらすまん
文才もないので読みにくいし餓鬼くさいかも。推敲もまだしてない
誰が喋っているかわかるようにと気をつけてはいるが・・・
あくまで執筆中なので・・・と先に言い訳と謝罪を言っておく。
内容はネタではなく鬱系です・・・
甘いモノにはスパイスを
ここ人形が大量に休む館の中、テーブルを挟んで空色服の魔女にニコニコと微笑ましい顔をしながら
身振り手振りも交えつつ語りかけてくる白黒魔女。なんとも平和を象徴するかのようなこの風景。
ゆっくりと甘い流れの至福の時間。微笑む白黒。なんとも無邪気な笑顔。なんとも無防備な仕草。
こんな所を後ろから妖怪に襲われたら簡単に潰されちゃいそうな、それぐらい私の事を信頼してくれている。
白黒の語る冗談に対して、相槌を打ちつつ、時には突っ込み、追加で頭を叩いてやったりもする。
「痛いぜ痛いぜ、痛くて死ぬぜ」
「それで馬鹿が治るのならもっと叩いてあげるわよ」
このように触れ合ってのコミュニケーションは、私の時間をとても満たしてくれるものだった。
弾幕合戦の時は全く触れることすらできないのに、この時間だけは特別だった。
私よりも小柄な体躯に、さりげなく触れることが出来るのだから。届かないはずのものに。
でも時々ふと思う事がある。もし急にこの関係が崩れてしまったら、私はどのような反応をするのだろうか、と。
今は笑顔で絶えないこの私が、急に笑わなくなるのだろうか。泣き出すのだろうか。壊れてしまうのか。
それとも何も感じないのか。私は人形ではないし、自制心はあるつもりだ。
だから、もし、の場合だがきっと前者の2つだろう。
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ある程度雑談を交えた後、今、白黒の魔女──魔理沙は私部屋の中心のソファーを勝手に陣取って、
肘掛に背中を預けてやや仰向けの体勢で、足を伸ばしてリラックスしている。
その状態で勝手に引っ張り出してきた私の魔導書を、黙々と読みふけっている。
会話の途中に手に入れたばかりの珍しい魔本の話をしたのがまずかった。
その行為を無理やり止めない私も、お互いの信頼があるからこそ許してしまう。
私は魔理沙がどんな箇所を読んでいるのか、何に興味を持っているのか、それとも構ってもらいたいのか
「どう?何か発見できた?」と、魔理沙の後ろにさりげなく回りこんで本を覗き込む。
帽子は被っていないので、魔理沙の金色の頭部の横に自分の顔を並べると、とても良い香りが鼻をくすぐる。
・・・・・・実は魔理沙がどこを読んでいるかなんてどうでもよかった。甘美で芳醇なこの香り。とても幸福な香り。
魔理沙に少しでも近寄れるなら。この香りを好きなだけ満喫できるなら・・・
その為ならばこの本アゲチャウ☆なんて思ったり思わなかったり。あぁ・・・・・・幸せ・・・幸せが身体に満ちていく。
この香りさえあれば、ご飯何合でもいけちゃう。可愛いなぁ、魔理沙。私にも可愛いって言って欲し──
「なぁ、アリス」
「へっ、あっ、なあに魔理沙」
急に振り向かれ声を掛けられる。視線が交わる。魔理沙可愛いよ魔理沙。
「アリスってさ・・・・・・・・・・・・」
(ドキッ、可愛いクリンとキリッとした目で見つめないで〜〜〜〜あああぁ・・・もうだめかm)
「・・・鼻息荒いよな」
ガッ。
情けない。途中までドキドキしていた私が情けない。可愛いとか言われるかと思・・・・・・って
「鼻息荒いって何よ!!殴るわよ!!」
「殴ってから言うなよ・・・痛いぜ・・・」
「いつもは荒くないわ!普通よ!ただちょっと・・・今だけは・・・その・・・・・・・・・・・・
・・・・・・魔理沙の髪が・・・とても・・・・・・いい香りだったから・・・つい・・・」
前半荒く、後半呟くようになってしまう。魔理沙はそのギャップと台詞に混乱しながらも
「ん・・・・・・そうか・・・・・・・・・嬉しいぜ・・・」
と照れ隠しのつもりなのか、魔理沙はまた本に視線を戻す。耳が軽く紅潮しているのがわかる。
この反応が可愛い。この可愛い頭をワシワシとナデナデしたくなる。この無防備な頭。無防備な後頭部。
ただの少女の頭。撫でたい。帽子に抑えられていた事によってできた微妙な癖ッ毛がまた哀愁をそそる。
この蜜のような甘い時間。肺の中に溜め込んだ魔理沙臭。幸せ。この時間がいつまでも続いたらいいのに。
この関係がもっともっと深くなれば、もっと甘くなるのかな。
繊細で、綺麗な髪を纏い、触れるのさえ躊躇われるような、ガラス細工のような。
そんな魔理沙の後頭部が目の前にある。無防備である。
そっと頭を撫でてやることも、急に抱きつく事も可能である。何でも可能だ。
ウホッと変な顔をしていても後ろ向きだからバレない。逆にどつくこともできる。
冗談で叩いても簡単に壊れそうな脆い頭────もし、とても強い衝撃を与えたら?思いっきり殴ったら?
この雰囲気に合わない、ぶち壊すような衝撃をこの頭に────
ふと思っていることと逆の考えが頭を通過していった。
いけない、何を考えてしまったのだろう、そんな事をしたらいけないとわかっている。
殺意だの恨みだのなんて恐ろしい考えは沸く理由がない。
信頼してくれているのだから。そんな事するわけないし、何故私が魔理沙に危害を与えなくちゃいけないのか。
憎いわけではない。むしろその逆である。心の底から大好きなのだ。対する魔理沙は私の事を単なる友達
だと思っているかもしれない。私はそれ以上の関係を望んでいるのだが、進展させる勇気がない。
この関係が壊れてしまうことが怖い。
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・・・・・・それにしても無防備すぎる。あれだけ口喧嘩も交えたこともある私が
無言で後ろに立っていても、まったく怖気ないとは。それほど私の事を信頼しているのか。
例えばの話だが、この頭に思いっきり後ろから力を加え、全てをぶち壊してしまったらどうなるのだろう。
痛いぞアリス、とか言うの?痛いを通り越しているのに?それとも当たる直前に危ないぜ、とか言って避ける?
こんな雰囲気で後ろから強い衝撃を不意に加えるなんて常識ではありえない。避けれない。
でももし・・・──────ぐっまただ、なぜこのような考えをしてしまうのだろう・・・
この幸せな時間を自らぶち壊すだなんてどうかしてる。いや、実際はぶち壊さない。
壊してしまった自分と今の自分を比べて、今がどれだけ幸せなのか計ってみただけ。それだけである。
そう、今は幸せを存分に味わうべきである。
魔理沙の香りが芳醇すぎて脳が犯されたに違いない。考えを切り替えなくては───
「あ、魔理沙?そういえば紫さんからスイーツ(笑)、簡単に言えば果物だけど、
さっき分けてもらったの。多分あっちの世界からくすねてきたものだと思うけど、
すぐ痛んじゃいそうだし、一人では多いから一緒に食べる?」
「おっ、ケチなアリスにしては気前がい──ゴフッ
アリスの水平チョップ。それをこめかみにモロにうけ、魔理沙はソファから転げ落ちる。
「誰がケチよ、誰かと一緒に食べたほうが美味しく感じるでしょ?まぁ、仕度してくるから
おとなしくまってなさい」
汁が服につくのを防ぐため、軽くエプロンをかける。さて取り出しましたのは緑色の球体。
所々ひび割れているのかスジが大量に浮いている。あっちの世界ではこれが普通らしい。
紫はメロンだと言っていた。西瓜と同じように切り分け食べるのだ。とりあえず8等分ぐらいに切り分ける。
タネは西瓜より取り除くのが非常に楽だった。黄緑色をした果肉が剥き出しになる。
このままかぶりつくのもいいが、年頃の乙女のする行為ではない。
なので食べやすいよう、皮と果肉の境を見極めながらそれにそって切り込みをいれ、さらに直角に包丁をいれ
一口サイズの四角い緑の欠片にとアレンジを加えた。
他にはブドウと呼ばれるものもある。これは知っているので軽く水洗いをしておく。
ただ、紫が言うにはこのブドウには『タネが無い』らしい。
タネが無い植物や果物なんてあるわけない。いろいろな意味でありえないだろう。
♀と♀で子供が作れちゃうぐらいおかしな話だ。まぁ私と魔理沙だったら不可能じゃないけど・・・
何を考えているんだ私。
えっともうひとつ、確かパインとかいう果物・・・・・・・・・・・・・・・なんぞこれ。
円柱の形をした銀光する塊。銀色・・・・・・パインは黄色と聞いたのだが。
果物とは思えないぐらい硬い。つつくとカツンカツンと音がする。
食べれるのかしら、これ。自然の産物とは思えないほど綺麗な円柱である。まるで人工的に作られた容器・・・・・
・・・・・・・・あ、あらいやだ私ったらそうよこれは確か缶詰と呼ばれるものよ忘れてたわオホホホh
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・・・・・・それにしてもこんなものどうやってあけるのだろうか。どこからでも切れます。なんて表示はなかった。
とりあえず包丁を手にする。しかしこの硬さから想像するに、包丁のほうが刃こぼれする可能性が高い。
切れぬものなどほとんどない。その切れぬものが目の前に。柔らかいものなら簡単に切り裂けるのに。
柔らかいもの・・・野菜、肉とか。人間の皮膚だって簡単に貫ける。これでグサァッとやっちゃえば簡単にコロリと
いっちゃうだろう。丈夫でいて脆い人間。でも実際に包丁で人を切ったことなんて無い。当然だが。
────もし、これで人を刺したらどんな感触なんだろう。死んだ肉と違って生きている肉。
刺された刺激に筋肉が強張って刃の通りが悪くなるのだろうか。それとも逆に綺麗に押し込まれていくのだろうか
そんな事をした自分はどんな反応を、どんな表情をするのだろう。
私ならすぐ冷静になれるはず、でもそれは想像の中。
実際に目にしたら・・・・・・どうなる?反応を見てみたい。自分の反応を。自分を知りたい。どうなるのか。
生きているけど抵抗する暇もない無防備な生き物を・・・・・・無防備・・・・・・さっきの少女。
甘い世界にいたはずなのにいきなり後ろから刃を突きたてられたら?理解をする前に死んじゃうのかな。
なぜ刺されたのかも、何が起こったのかもわからないのかな。そもそも殺される理由なんて無いんだし。
自分はここでは死の可能性が全く無い、そんな所で死んだらどんな表情を?死んだことさえ気づかないのかも。
それにはどのくらいの力を出せば。どこに刺せば───
「おーい、アリス〜まだか〜〜?」
ハッ、壁を隔てた部屋の向こうから聞こてきた声で我に戻る。
「あ、あと少しだからもうちょっと待っててね」
まただ、例え妄想だとしても、これは危ない。最近になってよくこのような妄想が頭をよぎるようになった。
人里ですれ違った、全く知らない赤の他人。この人を殺しても自分とは面識が無いわけだから
まず私は疑われないだろう。野次馬として現場に戻り、死んだ人の表情を・・・どんな表情?
安らかな死に顔?それとも殺される直前の表情?恐怖に歪んだ表情?何が起こったのか理解できない表情?
ああああぁあ駄目よ駄目よダメダメ
なぜこんな考えをしてしまうのか。考えるだけで実行する気は全く無い。が力強く包丁を握っていたことに気づく。
包丁の刃身に自分の顔が反射して映る。普通の表情、落ち着いた表情。そう、ただ考えていただけ。実行はしない
壊しては駄目だ。この甘い日常をなぜ壊す必要がある。考えるのはやめよう。日常に戻そう。
「うおぉおおお甘くてうんめぇええええ、なんぞこれーーーー」
さっきまで緑の欠片を睨んでいた魔理沙であったが、一口かじっただけでこれである。
「ん、あらほんと、西瓜やリンゴとは全く違うのね。これはほんとに美味しいわ。」
「見た目からは想像できないこの汁に溢れた禁断の果肉。優しく、甘く、柔らかく・・・・・・
口に馴染む!馴染むぞぉおフハハハハお口の中がマスタースパークや〜〜」
優しく甘く柔らかい表現とマスタースパークは噛み合ってない気がするが、そこはスルーしておく。
「これはメロンっていう果物よ。それとこれが種がないブドウ。・・・・・・でもう一つあるんだけど、
開け方がわからないのよ・・・・・・」
「なに、それは本当かね・・・・・・それは・・・気の毒に・・・」
私も2きれめのメロンを・・・・・・ってあれ?無い。見えない?違う。何も違う。
あ、なんだ、魔理沙の口のなかか。そうかそうか、消えたわけじゃなかったんd・・・
「って!!!!くぅおら魔理沙〜〜〜!!!!私の分は!!!なんでほとんど食べるのよ!!!」
「なに、それは本当かね・・・・・・それは・・・気の毒に・・・」
「私はまだ一切れしか食べてないのよ?」
「なに、それは本当かね・・・・・・それは・・・気の毒に・・・」
駄目だこいつ。あまりの美味しさに意識がとんでる。
恍惚な顔しやがって・・・その無防備な顔に正拳突くらわしてやろうか?
くっ・・・可愛い。只でさえかわいいのに、ほむほむと口をゆっくり動かして・・・・・・・
あぁぁぁあぁんらめぇぇえその表情可愛すぎる!!怒りを忘れちゃうぐらい可愛い!!反則よ反則!
世界のどんな果物よりも、その魔理沙の表情のほうが素敵過ぎる!!可愛EEEE
あぁ・・・もう私はそれでお腹いっぱい・・・・・・
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「いや〜〜美味かったぜ。やっぱ二人で食べるとさらに美味いな」
「私はほとんど食べてないけどね」
でも嬉しかった。過程はどうあれ二人で食べたという結果が残ったのだから。
「食べやすいサイズに切ってくれてあったし、気が利いてるよな〜〜だからアリスは好きだぜ!!」
「ぬぁっあああぁ・・・そ、そそう。それは・・・気の毒でよかったわね」
あぁああぁあああああ落ち着け〜〜落ち着け私。落ち着くのよ。
魔理沙は『友達として好き』だと言ったのだ。また勘違いしてしまう所だったわ。
ここで妄想にふけったらまた変態と指をさされてしまうわ。
周囲には変態アリスとかなんとか思われてるけど根は純粋なのよ。乙女よ。
ただ周囲の影響が強すぎるだけ。特に、幻想郷一恋に鈍感な癖に『恋符』なんて
つけちゃってる魔理沙が悪いのよ。そのギャップが可愛いじゃないの。男勝りの癖に乙女ボイスとかもうね。
言っておくけど私は変態じゃないからね!!・・・・・・・・・・・・誰に向かって言ってるんだろう私・・・・・・
あ、そうよ、目の前の魔り・・・あれ?いないわ。ん、キッチンのほうから音がするわ。そこかしら。
「ぉ、こんなに美味いもん食べさせてもらったからな。礼として食器は洗って片付けておいたぜ」
「え・・・・・・魔、魔理沙・・・・・・どうしたの?変なもの食べた?」
「いや変なものも何も今極上スィーツを食べただろうが。まぁこれで借りは無し。と」
食器を洗っただけで借りは無しとか・・・まぁ私も餌与えただけで借りを作ろうなんて疚しい考えは無いからいいけど
そして魔理沙はまたソファーの肘掛に背を預け足を伸ばすと、さっきの魔導書の続きを読み出した。
(もうちょっと会話したりと構ってくれてもいいのに・・・)
以前、アリスは弄りがいがある とかなんとか言ってたからちょっと期待してた。
あ、別にMとかじゃないわ、いたって普通、普通よ。
丁度位置的には魔理沙の背後にいるわけだ。
(ん〜なら私が襲っちゃおうかしら・・・・・・そしたら・・・
魔理沙好きよなんだアリスもか実は私も好きだったんだあらそうなのじゃあ今からいい事しましょ
大丈夫よ私も初めてなんだから え そうよ魔理沙の為にとっといておいたのよあんだめよいきなryふじこlp;@)
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無理よ無理よこんな都合よくいくわけがない。失敗したら関係が壊れるってレベルじゃない。
急に抱きつくのもやめたほうがいいし・・・・・・折角無防備な魔理沙が目の前に・・・・・・
───自分を裏切ってこの少女を壊してみたら?怒りも、怨みも、理由なんて無い
ないから逆に。もしかしたらいいほうに転ぶかもしれない。そんなわけないわ
どうせ人間いつかは死ぬ、なら最愛の人をこの手で。何を馬鹿な、嫌よ
そこに人形を作っていた工具が出たままだろう、それで思いっきり壊すとどうなる。そんな事しないわ
自分の目の前で最愛の人が亡くなる恐怖に耐えれるか、試してみないか?知りたくないわ
知るのが怖いのか、いずれ愛する人は離れていく、そうなる前に。ずっと私の物よ、失うことなんてさせない
失うとやはり狂ってしまうのを認めたくないのか。そんなわけない、私は・・・平気
本当に平気か、知りたくないか、恐怖を克服できる心の持ち主か。・・・・・・・・・
自律人形を作るに当たっても恐怖を克服できないと無理だ。・・・・・・・・・
ここには2人以外誰もいない、誰も見てない、だからいつ死んだかなんて誰にもわからない。・・・・・・
自分のものにしたいのだろう、自律人形と彼女を、でもいまのままじゃ両方無理だ。・・・・・・どうして
恐怖から逃げているからさ、知りたくないか、自分の弱さ、それを知りたいなら嘘をつけ。
自分を裏切れ。新しいものが欲しいなら、既存のものを壊さなければならない。
自律人形にも恐怖の表情が必要だ、怯えた顔、後悔する顔、表情とは別の意志を巧みに操る事だって必要だ
自分に嘘をつく人形、自律人形。そうだ、作るには足りなかった。陰に属する表情が───
自律人形、人形でありながら人と同じよう自分で考え自分で動く。それには陽の属性だけではだめだ。
人と同じなら、人と同じ反応をせねばならない。泣くところで笑ったりしたらそれこそ奇態だ。人ではない。
恐れ、憎しみ、恨み、偽り・・・その他の表情も作らなくては。他人が死んだ時の表情も、最愛の人が・・・・・・
え、それって殺せって事?無理よ嫌よするわけないわ。・・・・・・もし魔理沙が死んだら・・・・・・嫌よ
考えたくも無い。嫌よ嫌よ、想像しただけで涙が溢れてしまう・・・・・・想像で・・・・・・こんなにも
もしそれが真実になったなら・・・・・・どんな表情?それとも私は壊れてしまうのかしら・・・・・知りたい?
知りたくない、知る機会にも出会いたくない。でも自律人形の表情に・・・嫌よ知りたくない。いらない。
知りたい?知りたくない。どんな表情?知りたくない。知りたくない。どんな表情?知りたくない。
知りたくない知りたくないいらない知りたくない知りたくない表情は知りたくない知りたくない
知りたくない知りたい知りたくない知りたくないどうなるの知りたくない知りたい私は知りたくない
知りたくない知りたくないゴッ知りたくない知りたくないドサッ知りたくない知りたくない知りたくない
知りたくない知りたくない知りたくない知りたくない知りたくない知りたくない知りたくない知りたくない
「じゃあそろそろ帰るぜ、また続き読みたいからまた近いうちにくるけどな」
「あら、わかったわ。結構外は暗いから気をつけてね」
「なんだ、アリス、気持ち悪いぞ」
「何よ人が折角心配してあげてるのに」
「いやいや、そういう優しさがアリスのいい所だ」
「褒めたって何もでないわよ」
そんなこんな会話を交わした後、日がほとんど落ちてしまった夕闇の中、白黒魔女は闇に溶けていく
あんな服の色だからすぐ見えなくなっちゃうわね。無事に家に帰れるかしら・・・・・・
まぁ大丈夫でしょう『魔理沙』なら。・・・・・・さてと、あの容器・・・あら?
次『魔理沙』が来てくれた時の為、また一緒に食べた、という結論にするため
なんとしてでもあの容器を開けなくちゃ、とキッチンに足を向けたのだが・・・無い。
パインの缶詰の事だ。さっきまでここに・・・・・・
・・・・・・あぁ『魔理沙』がちゃっかり盗ってったのか。
フフッ────やっぱり『魔理沙』は魔理沙ね。
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朝早く、それもまだ目が覚めて数分も経っていないのに玄関から私を呼ぶ声がする
誰よこんな朝早くから・・・・・・常識が無い人だわ と愚痴をこぼしつつも
軽く身だしなみを整え玄関に向かう
呪文の鍵を解いて、ドアを開けると
「・・・霊夢?こんな早くから何しに来たのよ」
と不機嫌を露にして喋る。
霊夢はしばらく私を睨んだ後、
「あなた、何か隠してない?」
と少し怒気が篭ったような口調で言うと、勝手に私を押しのけ家の中に上がりこむ
「ちょ、ちょっと霊夢?何勝手に上がってるのよ!!非常識ね!」
上海、蓬莱もアリスの怒声を聞きつけたのか、部屋の置くからふわふわと飛んできた。
妖怪か!ゴシュジンがアブナイ!!!と、
しかし目の前にあるのは霊夢の顔。知っている顔が目の前にあり、敵ではないのか?と人形達は混乱する
困ったような表情をする人形達を霊夢はしばらく睨んでいたが、
「ねぇ、あなたの人形で一番優秀なのはこの子達?」
「え?、えぇそうよ?」
「ふぅん・・・・・・・・・・・・なんとなく嫌な勘がしたんだけれど・・・・・・」
「勘?まさか勘がするってだけで人の家に朝早くから上がりこんだの?」
人形を注視していた霊夢が、その場でクルリと玄関にいるアリスに身体を向ける
「ええ、でもなんか違うみたい」
なんという人騒がせな・・・
「悪かったわね、邪魔したわ・・・」
ズブッ
あぁ・・・こういう表情もするんだ・・・・・・
『霊夢』は玄関から外へ出て、森の隙間からこぼれてくる日を浴びる。眩しい、という表情をする。
「悪かったわね、邪魔したわ」
「当たり前よ、こんな時間にいきなり来るなんて非常識にも程があるわ」
「だから謝っているじゃないの。それにしてもよくできた人形達ね」
「優秀でしょ?私のお人形は。貴女の勘も中々のものだけどね」
それはどうも、と霊夢はふわりと浮き上がると、来た道を戻っていった。
やっぱり霊夢は自分の勘に忠実なのね。人形には勘、なんて概念存在するのだろうか
朝は少し騒ぎがあったけど、それ以外は何も起こらない平穏な日であった。
今頃『魔理沙』は『霊夢』と神社の境内でお茶を飲んでいるのかしらね。
お茶も食事も、いつもと変わらない日常。そうでないと意味が無い。
自分も人形を弄る。独りで。独りなのだが周りには上海蓬莱がいる。だから独りではない。
寂しくはない。そのまま窓の外が薄暗くなるまで、工房に篭る。
そしていつもどおり夕食の準備をする。本来食べなくても平気なのだけれど
これが私の日常なのだから───
-
─────────やっぱりいつもの日常になるのはまだ早いのね
私は家を覆うように頑丈な障壁を張らす、張り終わると同時にとてつもない振動、轟音が家を襲う
5秒ほどで振動や音が鳴り止む。家具や食器などが落ちる音が聞こえる。あーあ。
障壁はいまだ破られてはいない。片付けるの大変だわ、そんな事を考える、が
再び凄まじい振動や轟音が唸り始める。さっきより激しく、長い。15秒くらいだろうか。
障壁は未だ余裕で持ちこたえている。
・・・が折角用意したテーブルの上の食事は、床にぶちまけられたりと酷い惨状だった。
着席する前だったからよかったものの・・・・・・
「出てきなさい!アリス!!!」
外から怒声が聞こえる。やれやれ、今日は訪問者が多い日だわ。
玄関から外に出ると、丁度正面45度の高さに障壁を挟んで、黒い影──
永遠に幼く紅い月 吸血鬼レミリア・スカーレットである。
私はいつもと変わらない表情を保ちつつ、障壁の向こう側にいる吸血鬼に問いかける
「あら、城主様が直々に何しに来たのかしら?」
「あなたを殺しに来たの」
「さて、どうしてかしら?私はいつもの日常を満喫していただけよ?」
「とぼけても無駄よ、幻想郷を塗り替えるなんてさせないわ」
「塗り替える?私が?とんだ誤解だわ。人違いよ、帰りなさい」
「私に気づいて障壁を張ったって事はすこし遅かったかしら・・・・・・
・・・・・・まぁいいわ、今日貴女は死ぬという運命なのだから」
成る程、ある程度の運命は把握できているという事か。
だから私が日常生活を送ろうとしている事が大雑把にわかるのね。
そして運命をある程度操れる。ある程度、だが。
「ふぅん・・・・・・それで、今日私が死ぬの?」
「そうよ、運命だから抗うことはできないわ」
「ふふっ、"今日"ね。"今"じゃないのね、安心したわ」
「あまりかわらないわ。さぁ、殺してあげるからこの障壁を消しなさい。
そうすれば最低限の損傷で終わらせてあげる」
「言われなくてもそのつもりよ、ただ少し待ってくれる?」
そういうとアリスは障壁を解除し、数歩前へ足を踏み出す。
そこでくるりと向きを180度変える。つまり家と向き合う形となる。
家に向かって手を翳し何か呟くと、今度はアリスと家の間に障壁が現れる。
その行為が終わると、アリスはまた向きを変え、レミリアの目を見る。
「家の中には大切なものがあるから、失いたくないの。」
そういってさらに家からかなりの距離をとり離れる。
そして軽く地を蹴り、宙に浮かび、高さ的にはレミリアと同等ぐらいまで上昇する。
互いの距離はそれでもかなり離れている。
アリスの腕には魔本GofAを抱きかかえている。
アリスの動きが止まるのを見計らってか、レミリアは口を開く。
「中々殊勝な心がけね。もうすぐ主がいなくなると言うのに。
でも素直な子は好きよ?苦しまないよう殺してあげる」
-
アリスが不気味な微笑を掲げながら問いてくる
「ねぇ、どうして私がここに住んでいるかわかる?」
「・・・・・・・・・・・・ふん、どうせ死ぬのに知る必要なんてないわ」
「ここにはね、魔力が溢れかえっているの。魔法の森って呼ばれるのも不思議じゃないくらいにね」
「だからなんなの?今更命乞い?」
「どんなに破壊しても再生する不思議な森。ここなら本気をだしても構わない。
貴女は運命を操れるらしいけど、私だって操師、一級品のね。あなたを操れば運命だって操れるわ」
「抗うつもり?たかが妖怪ごときがこの私に?・・・・・・はぁ、冷めちゃったわ。
もういいわ、運命どおり早速殺してあげる、それも残酷に!!」
言い切ると同時に手から物凄い波動を飛ばす。スペルではない。殺すのが目的だけのそれ。
スペルカードルールではない。ただの殺し合い、スペル宣言等不要。
逃げ場も与える必要なんてない。ただ殺せばいい。本気の一撃。
アリスに向かって轟音とともに殺意の塊が飛んでくる。避けきれない。避けさせない。
いや、轟音が耳に届く前に、既に塊が彼女に被弾していた。物凄い波動が、そこを中心に飛び散り、
足元にある木々をなぎ倒していく。その一瞬の光景に置いていかれた轟音が、木々が倒れていく絵と同調する。
「・・・しまったわ。もっといたぶるつもりだった・・・・・・の・・・・・・に??」
噴煙が風に流され、塵となったアリスを確認しようとした。が、
アリスは微笑を保ちながら、浮いているのだ。傷一つ見当たらない、服のほつれなども無い。
本気の一撃だったはず。あんなものを喰らって耐えていた生き物なんていまだかつて見た事が無い。
狼狽するレミリアを見てアリスは鼻で笑う
「フフ、これが貴女の本気?久し振りに本気をだせると思ったのに、がっかりだわ」
レミリアの頬を冷たい水が滑り落ちる
(この私が、たかが妖怪ごときに恐怖を???ありえないわ、運命は絶対よ)
震えているレミリア。生き物に対する恐怖など今までかつて味わったことが無い。
生き物の頂点なのだから当然である。声が出ない。震えが止まらない、歯を食いしばっても、体が言う事を聞かない
「いい表情ね。一生で初めての恐怖を味わった顔かしら。参考になるわ。とても、ね。」
レミリアは歯茎から血がだらだらと溢れている。歯を食いしばることで恐怖に打ち勝とうとしているのだ
「───っぐぁあああ、妖怪の分際でえええええああああああああああ」
怒り。その力を借り恐怖を乗り越え、アリスに対し、さらに激しい死の塊を放出する
強大な力を、吸血鬼のプライドを、怒りを、運命に抗う哀れな虫ケラに対し全てをのせてぶち込む。
瞬間、目の前が紅き閃光で真っ赤に染まる。一瞬遅れて、脳を揺さぶるかのような轟音、もう音と呼べないくらいの
衝撃が身体を駆け巡る。追い討ちをかけるかのように凄まじい風圧、それだけで白黒のスペカの数倍はある。
その力に耐え切れず、術者本人も吹き飛ばされる。光と音と圧力と、もう自分がどこにいるか、どっちが天か地か
なにもわからない。別世界に放り込まれたような、そんな感覚。
-
やがて光は収まり、視界が開けてくる。
空が見える。姿勢は丁度地面と平行に、仰向けになっていたらしい。
ゆっくりと姿勢を戻し、周囲を見渡す、丁度右手側に巨大なクレーターが開いている。
これは本当に自分がやったのかと思うぐらいに大きく深く抉れている。いくら魔法の森と言えど
修復はできるのk───
「やればできるじゃない。でも私の本気には全然足りなかったわ」
後ろから声
わかってる
でも理解できない
「それに力の扱いが下手ね。幻想郷の全域にこの事が気づかれちゃったじゃない」
無事であるはずがない
きっと瀕死だ
いや死んでるのかも
幻聴だ────息をするのも忘れ、ゆっくりと声のするほうに振り返る──
いや、息ができなかった、振り返ることも出来なかった、身体が自分を忘れてしまった
「あら?震えているわよ?恐怖や絶望しているのかしら?どんな表情か、見せて?」
視界にゆっくりと空色の服を着た少女───アリスが映る。
「ふぅん、素敵ね」
にっこりと微笑を浮かべる傷一つ無い彼女の顔を見て、私は意識を失った。
「あ、レ、レミリアお嬢様お帰りなさいませ!!」
紅い館に戻った時出迎えてくれたのは、緑の服を着た中華風の門番、紅美鈴である
「あ、それにそちらはアリスさんでしたか」
と、レミリアと一緒に飛んで来たアリスにも頭を下げる
──と、顔を上げるや否や、美鈴が切羽詰った表情で質問を投げてくる
「お嬢様、つかぬことをおききしますが、さっきの──
「あぁ、気にしなくていいのよ、力の遣い方を間違えただけだから」
とレミリアが払うように手を振りつつ言葉を遮る。横にいるアリスもそれにつづいて口を開く
「そうだ『レミリア』、力の遣い方、教えてあげるわ」
そう言うとアリスは美鈴に向かって右手の手のひらを突き出す
お嬢様の事を呼び捨てだなんていつのまにそんなに仲良くなったのか
それとこの手のひらは?さっきの爆音も気になるし・・・
「ふふ、素敵だわ美鈴、それが今から何が起こるかわからないって表情ね」
「ア、アリスさん?貴女、い、今何を・・・」
いつのまに駆けつけてきたのか、メイド長十六夜咲夜がそこに立っていた。
「あ、『美鈴』あなたはいつもの日常に戻っていいわ」
「は、わかりました」
『美鈴』は軽く頭を下げるといつものように門の前に就く。
「えっと・・・咲夜さん?素敵ね。それが見てはいけないものを見てしまった表情ね」
「言いなさい!今美鈴に何をした!!!!」
咲夜はナイフの切っ先をこちらに向けて怒声を浴びせる
「何って、日常業務に戻ってもらっただけよ?貴女も仕事、あるんでしょう?」
しれっというアリス。よく見ればお嬢様もどこか雰囲気がおかしい。威厳、カリスマ
その類の気配が無い。仕方が無い、無理やりにでも口を割らせるしか───
「ここがフランドール様の寝室でございます」
「この館は素敵ね。あのパチュリーの苦虫を噛み潰した表情、最高だったわ。
ありがとう『咲夜』、貴女はもう仕事に戻っていいわ」
「では失礼します」
『咲夜』は軽く会釈をし、一歩後退した後綺麗にくるりと後ろを振り返り、薄暗い階段を上っていく。
巨大な扉がある。その先にこの館最後の目標がいる。
扉を隔てて声が聞こえる
「だぁれ?だれかきたの〜〜?まりさ〜〜?」
「いいえ、私よ、アリスよ」
「ふぅ〜ん、そっかぁ・・・・・・・・・ねぇ、遊んでくれる?」
「いいわよ、遊んであげる」
「ホント?やったぁ〜〜〜〜〜〜早く入って〜〜」
巨大な扉、それにもかかわらず全く音を立てずゆっくりと内側へと開いていく
闇の中、フランドールの表情は中々確認できないので、魔力を少し使い、
光を発光する球体を宙に漂わせた。この程度の光なら、日光じゃなければ問題はない。
その光に照らされ、純粋無垢、汚れを知らないフランドールの顔が闇に浮かび上がる。
「ねぇねぇありすぅう〜〜〜何して遊ぶの〜〜〜?」
「そうねぇ、─────
とりあえずここまでなんだが、長すぎてすまない・・・
しかも(言い訳以下略)
-
ガクブルジョワー
ちゃんと終わらせてくれ!
そんなところで終わったら怖すぎるだろ!!
-
は、はわわわ…こわいよう
-
なぁに、これはホラーな人形劇さ!
・・・・・・そう思い込むことで私は恐怖を超克する、超克したい、超克させて!
-
そこで切るなー!
なんという生殺し。読者的な意味で。
-
ここからの展開が・・・難しいのだ。
脳内ではストーリーが二つ以上分岐されちゃっているから・・・・・・
とりあえず長文読んでくれてthx
-
今日も博麗神社はいつもと同じ日常を送っている。
簡単に開くのに、事実上の開かずの箱を覗き込み落胆し、落ち葉をいつもの定位置にかき集めてから処分し、
境内でお茶を飲む、紅白の腋巫女がいる。
今日も紅魔館はいつもとかわらない日常を送っている。
門番が撃退され、寝巻き魔女の機嫌を損ない、銀光りのナイフに追い掛け回される白黒魔女
それを見て笑う城主に、何がそんなに楽しいのかわからなく、ずるいと駄々をこねる妹
湖では蛙を凍らせて遊ぶ氷妖、迷いの竹林では人型の兎が嘘をつき、とある所では庭師が庭の手入れをしている
人里ではいつものように賑やかだ
その他の場所でも、みんないつもと同じ日常を送っている。
いつもと違うところと言えば
腋巫女の勘が冴えなかったり、時間を止めることがなかったメイドがいたり、日傘からはみ出た日光に
触れているにも関わらず平気な顔の吸血鬼だったり
それでも今日の日常は夜が訪れ、日が閉じる。
今日も博麗神社は昨日と同じいつもの日常を送っている。
簡単に開くのに、事実上の開かずの箱を覗き込み落胆し、落ち葉をいつもの定位置にかき集めてから処分し、
境内でお茶を飲む、紅白の腋巫女がいる。
今日も紅魔館は昨日と同じいつもとかわらない日常を送っている。
門番が撃退され、寝巻き魔女の機嫌を損ない、銀光りのナイフに追い掛け回される白黒魔女
それを見て笑う城主に、何がそんなに楽しいのかわからなく、ずるいと駄々をこねる妹
湖では蛙を凍らせて遊ぶ氷妖、迷いの竹林では人型の兎が嘘をつき、とある所では庭師が庭の手入れをしている
人里ではいつものように賑やかだ
その他の場所でも、みんないつもと同じ日常を送っている。
昨日と同じ事なのだが、今日も
腋巫女の勘が冴えなかったり、時間を止めることがなかったメイドがいたり、日傘からはみ出た日光に
触れているにも関わらず平気な顔の吸血鬼だったり
それでも今日の日常は夜が訪れ、日が閉じる。
今日も博麗神社は昨日と同じいつもの日常を送っている。
簡単に開くのに、事実上の開かずの箱を覗き込み落胆し、落ち葉をいつもの定位置にかき集めてから処分し、
境内でお茶を飲む、紅白の腋巫女がいる。
今日も紅魔館は昨日と同じいつもとかわらない日常を送っている。
門番が撃退され、寝巻き魔女の機嫌を損ない、銀光りのナイフに追い掛け回される白黒魔女
それを見て笑う城主に、何がそんなに楽しいのかわからなく、ずるいと駄々をこねる妹
湖では蛙を凍らせて遊ぶ氷妖、迷いの竹林では人型の兎が嘘をつき、とある所では庭師が庭の手入れをしている
人里ではいつものように賑やかだ
その他の場所でも、みんないつもと同じ日常を送っている。
昨日と同じ事なのだが、今日も
腋巫女の勘が冴えなかったり、時間を止めることがなかったメイドがいたり、日傘からはみ出た日光に
触れているにも関わらず平気な顔の吸血鬼だったり
ただ昨日と違うことと言えば、雨が降っているにも関わらず誰も雨傘を刺していなかった。
それでも今日の日常は夜が訪れ、日が閉じる。
今日も幻想郷では日常が。永遠に。繰り返される。
-
考えることは出来ても学習することは出来ない自律人形。考えてはいるのだが、日常なので考えを変える必要が
ないのだろう。行動が制限されない限り、同じ考えを保ち続ける。
何か障害物が発生した場合のみ判断して避ける。
目が合ったら挨拶をする。台詞は昨日と同じ。なので返す言葉も同じ。
日常。なんとも甘い味なのだろうか。永遠に壊れることの無い関係。私が話しかければそれに話を合わせてくれる。
幾日たっても老いることの無い人間。異変も起きない。甘美たる世界。芳醇な時間。至福な空間。
───ただ、同じ味ばかりでは飽きてくる。いくら美味しくても毎日同じメニューでは飽きてくる。
ならちょっぴりスパイスを加えることにしよう。
今日は魔理沙を家に呼んでみた。勝手に本を読み、時には私を弄ってくれる。なんか幸せ。
家に泊まってもいいわ、と言ってみた。まだ外は明るいから帰るぜ。と言われた。
今日も博麗神社は昨日と同じいつもの日常を送っている。
簡単に開くのに、事実上の開かずの箱を覗き込み落胆し、落ち葉をいつもの定位置にかき集めてから処分し、
境内でお茶を飲む、紅白の腋巫女がいる。
今日の紅魔館は昨日とは違う日常を送っている。
門番は退屈そうに欠伸をし、寝巻き魔女は本を読みふけり、メイド長は雑務をこなす
それを見て笑う城主に、何がそんなに楽しいのかわからなく、ずるいと駄々をこねる妹
いつもの日常であるはず。でも、何かが狂った。いつもの・・・・・・日常が。
湖では蛙を凍らせて遊ぶ氷妖、迷いの竹林では人型の兎が嘘をつき、とある所では庭師が庭の手入れをしている
人里ではいつものように賑やかだ
その他の場所でも、みんないつもと同じ日常を送っている。
今日も魔理沙を家に呼んでみた。勝手に本を読み、時には私を弄ってくれる。なんか幸せ。
ある程度暗くなると家に帰ろうとする魔理沙。そこを無理やりとめる。
まだ外は明るいから帰るぜ。と言う魔理沙。それでも無理やり行く手を遮り説得する。
まだ外は明るいから帰るぜ。と言う魔理沙。それでも無理やり行く手を遮り説得する。
まだ外は明るいから帰るぜ。と言う魔理沙。それでも無理やり行く手を遮り説得する。
それを繰り返すうち、本当に外が暗くなってきた。
かなり暗くなってしまったな。と言う魔理沙。今日は家に泊まってもいいわ、と言ってみる
おっ、ケチなアリスにしては気前がいいな、お言葉に甘えるとするぜ
-
即興で適当に書いた。推敲も糞もなかった。
むしゃむしゃして書いた。
逆に⑩で切っておけばよかったかと後悔している
-
ひいぃ!?
マジ怖いよ!オリエンタルホラーだよ!
-
なにげにハインラインの「人形使い」系の話になっているのが
主人公がアリスだけにナイスマッチング
表現が雑な部分の文章ちゃんとリライトして
アリスが最強すぎることの説得力をもっと持たせられたら
(霊夢のときみたいに不意を突くとか)
更にいい感じになるんじゃなまいか
-
これはかなり面白い
正に『不思議の国のアリス様』
-
まだこの話の続き執筆してはいるんですが、進まない・・・
また別の話書き出しちゃった・・・
-
なんか最初話の振りというか
本来書きたいことを書く流れに持っていくため
どうでもいいことを書くんだが
書いていくと後になって、そこと「どうでもいいこと」の部分が繋がってたりと
様々な複線がうまれたり
自分でも驚く罠・・・一種のトランス状態かな
文才とかその他のレベルは大してあがらんが。
-
誰か・・・アリマリでいいから投稿してくれ・・・
そーそーわ読みたいのに規制くらって読めたことなど全く無い。
執筆しても投稿できないし・・・
-
上海「只今よりSSを投下する!!!」
蓬莱「といってもこのスレ活気がないぜ・・・」
和蘭「東方の細かい設定は知らないので間違っていたらすまない。あと餓鬼臭い」
仏蘭「ちょっぴりオリジナル設定が入っているので、そこ違うからとの指摘は・・
露西「はぁ、なんだか眩暈がするわ」
白黒「 『SSを投下する!!!』だっておwwwww」
紅白「腋を見ろ。話はそれからだ」
乙女「文才もないので読みにくい。推敲ほとんどしてない。投稿するまでもないssだから」
倫敦「ママー何あれ〜
西蔵「しっ、駄目よ、みちゃいけません
藁「鬱な話ですが、まだ執筆中です。とりあえず前半の第一部を。
京「ちゃんと前半のフラグも後半でへし折るから安心したまえ。言い訳は大量にある」
黒白「なぁ、アリス、マスタースパーク撃っていいか? 」
-
The genius girl should sleep.
置いていかれる
努力をしても追いつけない。
なぜ・・・・・・?あのカメですら、昼寝していた兎に追いつけたと言うのに───
「ぐっ、あぁぁぁああ駄目だぜ〜〜ここから進まないぜ〜〜」
そう机の前に開いたノートに声を張り上げているのは魔法の森に住む普通の魔法使い、霧雨魔理沙である。
彼女は常に努力を重ねている。血の滲む様なそんな努力を。誰よりも。それは一人前の魔法使いになるために。
だがその努力を決して他人には見せない、気づかせない。
平然とした顔でみんなと並びたいから。手加減してほしくないから。同情して欲しくないから・・・・・・
式は合っている。でもどうしても矛盾してしまう箇所が出てきてしまう。
一向に解ける気配のないパズル。答えは見えているのに、辿り着けない。
「あぁああ、もうっ!!」握った拳で机を叩く。八つ当たりなど本来好ましい行為ではない。
だが、一向に解けないもどかしさと、収益を得られず時間だけが無駄に過ぎていくことに焦燥を感じずには
いられない。
人間の命は短い。だからこそ焦るのだ。焦ってはいい結果が出ないことは知っている。それでも焦ってしまう。
周りには怪物だらけである。力と時間の尺が人間とは遥かに違う。だからこそ努力で追いつきたい。無駄にできない。
化け物と自分を比べて悔やむほど、自分は愚かではない。根本が違うことぐらいわかっている。
それでも私は努力する。努力で追いつけないものはないのだから。
────ただ、例外が一人いる
-
所変わってここ、博麗神社の境内でお茶をすするのは紅白腋巫女こと、博麗霊夢である。
のんびりお茶を啜っていたのだが、顔を上に向け空を仰ぐと、「ん、来る頃かしら」と呟やきながら立ち上がり、
台所のほうから別の湯のみと、沸かしたお湯を下げて、また境内に戻ってくる。
お茶を啜る姿勢やら、立ち上がる時に「よっこいしょっ、とぉ」なんて言う所が特におっさん臭いのである。
また改めて座りなおすときも、「うぃっしょぉっと」なんて言う所がますます(略
『楽園の素敵な巫女』こんな寂れた神社のどこが楽園なのだろうか、
こんなおっさん臭い少女のどこが素敵な巫女なのだろ─うわなにをすrhおこlp
霊夢が鎮座し、一息ついた所であれは来た。
「いよっ、霊夢、相変わらずおっさ───
地面に足が着く前に、飛来する追跡機能付き座布団が魔理沙の腹を抉り、箒の上から叩き落とす
背中からモロに落ち、「酷いぜ酷いぜ、酷くて死ぬぜ」なんて事を抜かす。
まぁいつものことである。〜くて死ぬぜ、と言う割りに死んだところは見た事が無い。あっても困るが。
砂を払ってからいつもの指定席、霊夢の横に座り、専用の湯のみに茶を注ぐ。
いつ来てもこのお茶がいい温度なのは、やはり霊夢の勘により、魔理沙の訪れるタイミングを見計らっているのか。
相変わらず勘が鋭く、どこまでお見通しなのか複雑な気持ちになる。
ともあれ、こういうところが非常に憂い奴なのである。おっさん臭い乙女。新たなジャンルの発掘だ。
まぁこれが相変わらずの日常なのだ。
ふと魔理沙が尋ねる
「なぁ霊夢、仕事はいいのか?神事なんだろ?」
「あら、この庭をみてわからない?今日はいつもより頑張ったのよ」
───あぁ、この巫女は日本語がまともに話せない残念な子だったのか。楽園で素敵というのは頭の事うわ何をすry
・・・・・これで頑張ったと言うのだろうか、いや、本人が言うのなら間違いない。頑張ったのだろう。
「・・・・・・これで・・・か?」
「なによ、文句あるなら貴女がやりなさいよ、丁度箒も持っているんだし」
「違うぜ、何も違うぜ霊夢。この箒は掃除するための箒じゃないんだぜ!!」
掃除をするための箒ではない。本来の役割を果たしていない所が、まさにどこかの巫女と─うわだからやめrフジコ
-
箒はただのアクセサリーではない。空を飛ぶためである。
魔理沙は幻想郷で唯一、物を利用して飛ぶという不思議な魔女だ。
魔理沙が箒を使って飛ぶのには理由がある。
表向きは、いかにも魔女っぽいだろ?という理由である。
でも実は、箒を使わないと満足に飛べない。からである。
さらにおまけの理由としては 努力によって荒れた手を誤魔化すためである・・・
ペンダコ、豆、血豆、擦過傷、その他もろもろを努力によって出来たと気づかせないためである。
箒を握っているから、と。それで隠しきれるとは思えないが、ある程度はそれで誤魔化してしまう。
回復魔法を使えば、と思うのだが豆を直す魔法だのそんなピンポイントな魔法を魔理沙が使えるわけが無い。
それにいくら他人から隠すといっても、自分にとっては誇りの証。努力の結晶なのである。
魔法で消すのは躊躇われる。人間らしく自然治癒が一番なのだ。
魔理沙ほどの魔女が、なぜ箒を使って飛ぶのか、いや、使わないと飛べないのか。
それは彼女が落ちこぼれだったからである。
凄腕の魔法使いと名高い霧雨家一族。代々優秀な魔法使いばかりが溢れる一族。
それでも一族の中では一応優劣はある。
優秀たるものは名を世間に知らしめ、さりとて優秀ではない下のほうとはいえど、一般の魔法使いからみれば
かなりの魔力を持っていた。
そのなか魔理沙だけは、特別、とびぬけて落ちこぼれであった。
空も飛べず、魔法も大して撃てず、体躯は小柄で、霧雨という名を汚すだけの存在。
呼吸をする程度と同等の簡単な魔法ですら満足に撃てなかった。
ついに魔理沙は、まだ2ケタにも満たない歳にもかかわらず、一人で修行してこいと
家から追い出された。形はどうあれ、事実上の勘当である。霧雨という苗字も剥奪されていた。
力なきものがこの幻想郷で一人で生きるなんてことはまず不可能である。食事など生活面での問題ではない。
もし妖怪に襲われたら抵抗する術がないのだ。つまり・・・・・・ここから先は考えるのが嫌だった。
その落ちこぼれである私が、今や幻想郷でも頂点に君臨する吸血鬼などと対等に渡り合っているのだ。
『努力』それがあればどこまでも登っていける。超えられないものなどないと、そう信じていた。
只一つの例外を除いて───
-
「───魔理沙?どうしたの柄にもなく真剣な顔して」
「ん、あ、あぁ、ちょっと過去を思い出してな」
ふぅん
そう一言だけ返すと霊夢はまたお茶を啜りだす。
・・・・・・
・・・・・・
「『暇』ねぇ・・・」
・・・・・・
・・・・・・
しばしの沈黙が続く。いくら仲が良くても会話が途切れることぐらいある。
魔理沙も特に用事も話題もないのにこの神社へ来る。だから特に話すことなんてない。
時が、ゆっくりと、流れていく。どんなに遅くなっても時は止まらず、ゆっくりと感じていても
実は平等に、残酷に、時間は冷たく流れていく。さっきまで焦っていた自分はどこにいったのか。
あれは一人でいるときだけの私。焦る私を誰にも見せたくない。
外面の私は霊夢と同じく呑気にまったりしている、そういう役なのだ。焦るのは一人になった時でいい。
…一人の時、か。霊夢は何をしているのだろうか。私と同じように演技して、内と外と使い分けているのだろうか。
誰かの前では無気力巫女を、一人の時には───
聞いてもいいのだろうか。真実が聞けるのだろうか。聞いてどうするのか。
やっぱり自分と同じなんだと安心するのか。苦労してるのは自分だけじゃないと。みんなそうなんだと。
・・・・・・それが違ったら? ・・・・・・え? だから、違ったら? それはどういうことだ?
自分と違い、使い分けてない、つまり一人の時も今と同じ状態だとしたら・・・?
だからなんだ、私は霧雨魔理沙だ、他人が努力しようが何してようが関係ない。ひたすら努力するだけだ!
他人を見ている暇なんて無い!知っても何もかわらない!!
・・・・・・じゃあなぜここに来る、気になるのか? 何をだ! 他人が努力しているところをみて安心したいのだろう?
私は私だ!!怯えてなんかいない!!
・・・・・・じゃぁ聞いてみようか。本人に。望む答えが返ってくるといいけどね・・・
・・・・・・
・・・・・・
「───魔理沙?やっぱりどこか悪いの?家に帰って休んだら?無理しないほうがいいわよ?」
ほらみろ、霊夢も一人になりたいと、私を家に帰して一人になって、早く精進の続きがしたいのだ。
......じゃあ聞こうか?平気だろ?確信が持てたんだろ?怖くないはずだ。
「ん、いや、そうじゃないぜ、どこも、悪くなんかないぜ」
「そう?ならいいけど・・・・・・・・・・・・魔理沙、なんか言いたいことでもあるんでしょ?
喋り方がぎこちないわよ?」
「う、あ、その・・・・・・(相変わらずの的確で鋭い勘だぜ・・・)」
「魔理沙は嘘付くの下手なんだから、さっさと吐いたほうが楽よ」
「う・・・・・・・・・・・・(キクシカナイダロ、キクナライマダロ、レイムノ カン ニハサカラエナイ)
・・・・・・・・・・・・・・その・・・霊夢ってさ・・・」
「ん?なぁに?」
「その・・・・・・なんというか・・・・・・修行というか、精進というか・・・・・・なんか努力していることって・・・あるのか?」
「あぁ、なんだそんな事、まさかそんな事で思いつめていたの?」
私の真剣であった質問に対し、微笑を交え返答する
「んーそうねぇ、本当は巫女として、もっと掃除をしたりと神事をやらなければならないのだけれど・・・
参拝客がこないからねぇ、最低限の神事はするけど、それ以上は気分によるわね、アハッ」
駄目巫女である。そんなだから賽銭箱も開かずの箱と呼ばれてしまうのだ
──違う。聞きたかったこと、知りたかったことはこれじゃない。この事ではないのだ
もっと核心に寄ろう
「んっとな霊夢、仕事が無い時間や一人の時は何をしてるんだ?なんかこうーー、スペルの特訓やら修行みたいな
・・・・・・こっそりと努力みたいな事を・・・・・・・・してるのか?」
なぜここだけ口調が弱くなるのか。どんな答えでも平気なはずだ。
そもそもこっそりと努力しているのなら内緒にし、他人に教えないはず。
それでも多少の動揺や言葉によって、僅かぐらいなら伺う事も出来るかもしれない。
-
────しかし霊夢の口から出た言葉は私の期待をぶち壊すのには十分すぎる威力だった
「特訓?懐かしい言葉ね、私が巫女を受け継ぐ前の事かしら。あの時は大変だったわ、もうこりごりよ──
私は霊夢が話しているにも関わらず立ち上がると
「すまん霊夢、用事を思い出した、じゃあな」
霊夢の顔も見ずに口早に言葉を言い放ち、箒を掴むと素早く空へ溶け込んだ
わかっていた。霊夢、博麗の巫女は何にも捕われること無い存在という事が。
その存在ゆえにどんな返事が返ってくるのかも。
もしかしたらという期待、それに身を委ねることがそもそもの間違いだった。
一か八か、とか、やってみなきゃわからないよ、とかは愚劣な考えであると。もし駄目だったらどうするの?
やってみて聞いてみて駄目だったら、責任は誰が?なおかつ、この結果はわかっていたのに。
巫女は嘘をつけない。そもそも霊夢が嘘をつくような性格ではない。真実しかいえない。自分に忠実に生きる。
だから裏と表を作る必要なんてない。──気づいていたのに
博麗霊夢は天才である。どんな敵にも負けることはない。だから努力なんて必要ない。
わかっていたのに──
同じ人間であるはずなのに。なぜこうも差が開く?弾幕をやれば常に私が負け越しだ。
血の滲む努力。その結果を味わいたくて挑むのに。報われない努力。浪費した無駄な時間。
霊夢は今も境内でお茶を飲んでいるだろう。私が式に頭を悩ませているときも、境内で寝ているだろう。
それが博麗霊夢なのだから。
-
うさぎとカメの童話?努力があれば天才に勝てる?何を馬鹿な。
こっちが苦しい思いをしてるのにあっちは寝ていたんだぞ。こっちは休む暇もないというのに。
勝負の最中に寝る?どれだけ舐められた話だ。それでやっと勝てた。勝たせてもらえた。1回だけな。
もう一度やったら勝てる?無理だろ?兎は散歩程度、こっちは満身創痍。その程度で兎は勝てる。なんだこの差は。
これでも勝てないのか?兎はいつでも休める。いつでも追い越せる。いつでも勝てる。練習も必要ない。
さらに・・・・・・もし兎が本気をだしたら?・・・・・・もう・・・話にもならない。
どうすれば勝てる?努力だけで、天才を。どうすれば追いつける?
私が複雑な道を隅々まで散策し、やっと理解した森の迷路も、霊夢は 勘 の一言で迷うことなく抜けてしまう
どうすれば勝てる?どれだけの努力で、天才に。どうすれば並ぶことができる?
努力は天才に勝てない。追いつく事もままならない。差を縮めることが出来ても、天才は努力を少し用いただけで
簡単に突き放す。天才だって努力を使えるのだ。兎のようにずっと寝たままじゃない。
どうすれば勝てる?努力しかないのに、天才を。どうすれば追い抜ける?
悔しい。勝てない。ずるい。報われない。目標までまっすぐ走ることしか出来ない努力。
イレギュラーには対応できない。天才は、天才だ。何にでも対応できてしまう。
努力はその出来事に対し、また努力を重ねて対応せねばならない。
天才はずるい。苦労もせずに。なんでも手に入る。それでいて自分の欲に対する時間はたっぷりと用意されている。
『暇』と何度も口にすることが出来るくらい。
ずるい。憎い。勝てない。ずるい。卑怯。憎い。憎い・・・・・・
───これでは只の八つ当たりじゃないか、霊夢は何も悪くないのに・・・・・・
『天才』その2文字が与えられるか否かで、人生が決まるとしたら。私は永遠なる敗者だとしたら・・・
・・・・・・違う!!私は霧雨魔理沙だ!!!そんな理由で屈するものか!!!!!!
箒に魔力を込めて、スピードをあげていく。どんどん加速する。帽子は魔法で脱げなくしてあるので問題ない。
箒に抱きつくように身を屈め空気抵抗を減らす。さらに速度を増していく。
眼下に広がる森は、まるで緑の砂嵐かのように後ろに吹き飛ばされていく。
誰にも追いつかれない。私だけの世界。全てを流す彗星のごとく──
このスピードは幻想郷一だと自負している。
どうだ、これがあの飛べないマリサか?違う!!努力によって生み出された霧雨魔理沙だ!!
-
自分の家が見えてきたあたりで減速を始め、ゆっくりと下降していく。
──おや、家の前に誰かいる。あちらは既にこちらに気づいていたらしく、目線が交わる。
七色人形─(略)─アリスである。「ちょwwww」とアリスの呟きが聞こえたような聞こえないような
「ぉ、アリス、何しに来たんだ?」
「貴女に盗まれていた魔本の内容が実験に必要になってね、取りに来たのよ」
「失礼な、借りていただけだ。まぁ、必要なら返すぜ、待ってな」
私は玄関の鍵を解除しようと、扉に手を掲げ──
「ねぇ、魔理沙。貴女、いま何か悩みでもあるんじゃないの?」
不意に放たれる言葉に私の手が止まる。
「な、なんの事だ?私は悩みなんて──
「ほら、その反応でバレバレなのよ、さっきは凄い飛ばしていたみたいだし、今も視線をすぐ逸らすし、
貴女との付き合いは長いからね、すぐわかるわ」
確かにアリスとの付き合いは長い。真面目で、純粋で、誰に対しても優しく、穏やかな性格のアリス。
私は何かと話し相手になってもらったり、からかったりと弄らせてもらったり、口喧嘩をしたり、
それでいて熱を出したときには真っ先に飛んで来て、看病してもらったりと、かなりお世話になってきた。
誰よりも心配してくれるし、誰よりも話を真剣に聞いてくれる。
私は友達として、親友として、アリスとの居心地は悪くなかった。
むしろ幻想郷でも唯一甘えることができる相手なので、私に安らぎを与えてくれる、慈愛に満ちた存在だった。
幻想郷で、私の事を一番よく知っているのもアリスかもしれない。
私は少なからず、彼女に好意を抱いているのだ。
それにしてもどうして私は自然な嘘がつけないのだろう。
正直すぎる自分を褒めていいのか落ち込むべきなのか・・・
まぁここは嘘を吐いても無駄なようだし、アリスに頼るしかないか。
-
「はぁ、相変わらず散らかっているわね」
部屋に入るなりこの惨状をみたアリスが愚痴をこぼす。
足の踏み場を僅かに残して、価値があるかわからないガラクタで埋め尽くされ
壁際には本の山も積み上げられている。少しぐらい片付ければ広くなるのに。
・・・・・・といってもアリスは魔理沙がどうして片付けないか、理由は薄々気づいていた。
片付けることができないんじゃない。寂しさを紛らわすため、わざと散らかしているのだ、と。
自分と同じく、寂しいのだ。こんな大きな館、魔理沙の体躯にとっては大きすぎる館。
広ければ広いほど、そして殺風景であればあるほど孤独感を感じてしまう。
孤独がどんなに苦しいものか、辛いものか、自分もよく知っている。
私はそれを紛らわすために、人形を作った。今では大切な家族。今はもう寂しくなんか無い。
ただ・・・まだ魔理沙にはそのような関係のモノがこの家にない。魔理沙はまだ少女。
甘える相手が必要だ。だから私はこうやってたまに訪れる。理由なんて適当でいい。
会話をするだけでもいい。彼女の笑顔が見れればそれでいい。彼女が幸せならそれでいい。
私は少なからず、彼女に好意を抱いているのだから。
「───そして、ここの式がこうなっているわけ。わかった?」
「う〜ん・・・わかったようなわからないような・・・」
「まぁ、そうね、ちょっと魔理沙には苦手な魔法かしら。ここの部分を道具か何かで代用すれば
なんとか使えるぐらいにはなるわよ」
ふむ、『道具』か。何も全て自分の身体だけで生み出す必要はない。
霧雨家の教えでは道具を使わず己の肉体ひとつで・・・がモットーだっただけに、
その発想になかなか辿り着かなかったのだ。だけど勘当された身だから、霧雨家の教えに沿う必要は無い。
-
「・・・で、この式の事が悩み?違うでしょ?嘘は言ってないみたいだけど、誤魔化してもだめよ、
本当はもっと大きい悩みがあるのでしょ?」
なんでもお見通しという訳か。確かに本来の相談したい悩みとは違うことを話してしまった。
それでも私の話は真摯に受け答えてくれる。私の事を心配してくれている。
私の中の悩みを真剣に取り除こうとしてくれている。
そう、彼女をもっと、信頼してもいいんじゃないのか。
「はいおまたせ、どうぞ」
アリスは私の前にコトンと、すっかり冷めてしまった緑茶を暖かいものに淹れ直してきてくれた。
以前私とアリスは、緑茶か紅茶かどっちが美味いかと、些細な事で喧嘩をした事もあった。
その時もアリスは一歩引いて、緑茶の美味しい入れ方を私に聞いてきたのである。
その後は互いに教えあい、和解したのはいいが、緑茶と紅茶を両方同時に飲む羽目になった。
今日のこの緑茶はアリスが淹れたものである。私が淹れるお茶よりは、若干味は落ちるが、
温度とは違う、何か別の温もりがとても暖かかった。
私とアリスはテーブルを挟むように、向き合うようにして椅子に座っている。
アリスは音を一切立てずに緑茶を啜る。目を閉じて口を湯飲みから離し、
なかなか緑茶もいいものね。と独り言を呟く。
コトッと湯のみをテーブルに静かに置くと、私の目を見ながら口を開く
「それで、貴女のお悩みは?」
─私の悩み、か。黙っていては進まないし、溜め込むのもだめだ。
打ち明けるしかない、と決意を固めると、私もアリスの問いに答える
-
「時々、自分の努力は無駄なんじゃないか、って思うことがあるんだ
でも、私が生きているのは努力のおかげだし、無駄なもんかって思ってる
でも、ある存在のせいで、それが簡単に否定されてしまうんだ。私の努力を否定されるって事は
私自身の存在を否定されるのと同じ。それがたまらなく悔しいんだ」
この間もアリスは静かに聞いてくれている。私の放つ言葉を全て受け止めてくれる。
私は言葉を紡ぐ
「努力するのは結果がほしいからだ。どんなにきつくても結果のためなら努力をする。
力を、時間を、魂を注ぎ込む。努力をすればするだけそれ相応の対価ってものを得てもいいはずだ。
でもそれは無理だって事はわかってる。どんなに費やしても得るものが何もない時だってある。
逆に失うこともある。でもそんな事はどうでもいい。とある存在は、何も努力もせず、
何も失わず、それでいて時間もかけず、欲しいときにその結果を得ることができる。
その存在が・・・憎くなってしまったんだ。憎むべきではないのに。憎んではいけないのに。
ただの嫉妬。その存在は何も悪くない。でも憎んでしまう。どうしたらいい?この私は・・・
・・・・・・どうすれば・・・・・・・」
私は今まで溜め込んでいたもの、それが一度口からこぼれると止まらなかった。
最後まで搾り出してしまいたかった。この大量の言葉の濁流ですら、アリスは真摯に受け止めてくれた。
「どうすれば、か。貴女が何を結果として望むか、にもよるわね。
貴女はその子に勝ちたいのか、それとも対等になりたいのか、
それともそれ相応の"貴女が望んでいる結果"にしたいのか、ね。」
存在と言っただけなのに、その子、と言った。
(私が誰を憎んでいるのかも、お見通しって事か)
-
私が何を結果として望んでいるか・・・・か
その子──霊夢に勝ちたい。でも今までの戦績から言って叶うはずの無い望みだった。
努力を重ねる度に、破壊されていく。どんだけ高く積み上げても、簡単に。
造るのは難しく、壊すのは容易い。高ければ高いほど、積み上げるのはより難しくなっていく。
その分丈夫になるはずだった。それなのに、簡単に、あっさりと。
でも逆に、私が霊夢のを崩そうとしてもできないのだ。彼女は何も積んでいないから。
ただ、天を突き上げるような巨大な土台。それが眼前に広がっている。
霊夢は積み上げるとしたらその頂上からだ。私は遥か下からだ。
───勝つ。その望みは叶いそうになかった。
対等にするとはどういう事か。確かに力が均衡になれば嬉しいが、無理な話である。
私が努力で霊夢の実力に追いつく?それじゃ今と変わらない。・・・・・・なら逆か?
私が無気力になれば・・・・確かに負けて無駄になる努力ならば
最初から努力しないほうが何も失わず好きな事ができてマシではあるが・・・・・・
馬鹿げている。私は自分を捨てるつもりは無い。
───対等。これも理想ではあるが、結局無理なのである。
それと・・・・・・私が望んでいる結果?それ相応の"私が望んでいる結果"?・・・・・・どういうことだ?
私が望むもの・・・・・・対等でいたい。それでいて努力で勝ちたい。結果が欲しい。
努力が結果として実感できればいい・・・・・・
霊夢のところに登るのは無理がある。じゃあどうやって対等に?自分が下がる?
違う・・・・・・じゃぁ・・・・・・・・・・・・・・・登るのも、下がるのも駄目なら。他に・・・・・・・・・?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
-
「──どうかしら。何か答えは出た?」
「うーむ、出そうででないんだ。あと少しなんだがなぁ・・・」
「・・・・・・そう・・・・・・私としては今のままの魔理沙でいてほしいわ・・・・・」
急に口調が変わり、視線をテーブルに落とし、呟くアリス。
「私としてはね、魔理沙の力になりたいの。でもその望みを叶えると魔理沙が魔理沙じゃなくなっちゃう
気がして怖いの・・・・・矛盾しているわよね・・・・・・私」
私が私でなくなる?いや、いつもキノコとか食べて頻繁に我を失ってるせいか耐性がついてきたみたいで
案外平気になってきたんだよな。うどんげの目だって平気だし・・・
「魔理沙、危なくなったらすぐ戻ってきてね。
私が貴女に出せる答えは私の経験の中からしか出せないの
だから、探せば答えはもっと沢山あると思う。だから───
「わかってるってアリス。これでも私は霧雨魔理沙だぜ?下手な事はしないさ」
「・・・・・・そう・・・・・・私、魔理沙を世界の誰よりも信じているからね」
心から心配してくれるアリスの言葉を遮ってしまう。
その後のアリスの台詞も、軽く流してしまった。
答えがすぐ手に届きそうだったから、焦ってしまったのだ。
アリスの言葉を最後まで聞けていたら、私は何も失う必要なんてなかったのに・・・・
アリスはあの台詞の後、すぐに帰っていった。
私は答えを見つけたらそれを得るまで止まらない性格、というのを知っていたのだろう。
実験に必要で取りに来た魔本とやらは、探す様子もなく、結局何も持ち帰らなかった。
-
アリスから聞いた言葉と自分の中に閃いた言葉を何度も何度も咀嚼する。
何を結果として望むか。それ相応の結果。自分が登るのにはまだまだ高すぎる。
さりとて別の柄杓を平等にしたって意味が無い。登ることも、下がることもできない。
どうすればいいのか。スタート地点を同じ高さにすればいい。でもどうやって?
相手が降りてきてくれる訳でも・・・・・・・・・・・・・・・・・・?・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そうか、そうだよ、相手を下ろせばいい。自分が駄目なら相手に動いてもらえばいい。
手加減をしてもらうわけではない。本気でいい。ただ土台を、壁を、取り除けばいい。
また一歩、考えが進む。この一歩。ゴールに一歩近づくことが、それが楽しい。
霊夢と私との壁、私と圧倒的に違うところ。それはどこか。その答えは簡単だった。
霊夢だけが持つ特別な『勘』である。相手の心を読んでいるかのような、張られた弾幕にたいし、どこが危険かの勘。
それでいてイレギュラーにも対応できる。危険を察知し対応する。
自分の力で避けていない。磁石の同極のように、勝手に避けれてしまう。
目の前に迫った弾もほぼ無意識に、最小限の動きで避けてしまう。
もし、その『勘』を取り除けたら・・・・・・
相手の全力を全力で持って叩き潰す。それが本来の魔理沙である。
いつもならこんな考えは浮かばない。浮かんでも実行しようとは思わない。
焦りが、答えが見えた喜びが、霊夢に対する憎しみが、この考えを正当化してしまった。
努力に対する結果が欲しい・・・・・・と。
「ぅーむ・・・・・・答えを見つけたのはいいが、あと一歩で辿り着けないぜ・・・」
『勘』を取り除くためにはどうすればいいのか。それさえ出来れば霊夢に勝てる。
その事を考えるだけで、身体が疼く。もうすぐ勝てる。あと少しだ・・・
・・・・・・だが方法だ。そのあと一歩を進めるための方法だ。その方法がさっぱり浮かばない。
────以前にもあった気がする。あと一歩で届くのに届かなかったもの・・・・・・
それもつい最近。えっと・・・・・・アリスとの会話に・・・・・・・・・
魔理沙は唸りながら考える。思い出す。あの時の会話。アリスが何を言っていたか。
『ちょっと魔理沙には苦手な魔法かしら。ここの部分を道具か何かで代用すれば
なんとか使えるぐらいにはなるわよ』
っ───閃く。繋がる。道が出来た。私は答えに触れることができた。触れると同時に飛びついた。
力いっぱい抱きしめる。この瞬間が気持ちいい。───そう、『道具』を使えばいいのだ。
-
道具を使うことに閃いたのはいいが、どんな道具を使えばいいか考えてはいなかった。
足元に散乱するガラクタの山を見定める。・・・・・・正直どれも役に立たないものばかりだ。
こんなので霊夢の『勘』を取り除けるのだろうか。難にせよ、ガラクタの量が多すぎる・・・
一つ一つ試していたら、日が暮れるどころか何日、何ヶ月、何年要するかわからなかった。
でも折角アリスが私に導いてくれた答え。アリスの経験のなかから私の為に用意してくれた答え。
『私が貴女に出せる答えは私の経験の中からしか出せないの』
何かひっかかる。
・・・・・・経験?アリスも以前、このような事があったのか?誰かが憎くて追いつきたいときが。
それに追いつくために道具を使ったことが。・・・・・・・・・・・・何の道具だ?
アリスなら何の道具を使うんだ?アリスはいつも人形を遣っている。でも、それだったら現在進行形だ。
私も人形遣いになれと?・・・・・・違う気がする。人形では人形でも別の・・・・・・相手に効果を及ぼす人形。
間接的に効果を与える人形。相手が目の前にいなくても術をかけることができる人形・・・・・・
──あれか?あれの事か?確かにあれなら可能だ。魔女が使っても違和感は無い。魔術なのだから。
私がこの答えを掴んだ理由。 憎いから。 ならピッタリかもしれない。
早速作業に取り掛かろう。 霊夢が負けた時の悔しそうな表情。久し振りに拝んでやるとするか!!
いつもの魔理沙の悪い癖だ。周りが見えない。目標に全力でぶつかってしまう。後先の事を考えない。
材料は家を探したら簡単に見つかった。さすが宝の宝庫。──さっきと言っている事が違う気がする
材料や裁縫道具を机に並べると、人形作りを開始する。
人形を作ることなら以前アリスに教えてもらったから大丈夫だ。アリスほど器用ではないが、
それでも一応要点は捕らえてある。
粗雑な造りだが、術を施す為の大事なところはしっかりと丁寧につくっていく。
特徴を出来るだけ捉え、反映させていく。仕上げに紅白の布を纏わせると完成した
─────藁で編みこまれた人の形が。
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少々休憩
-
設定やらそこらへんへの突っ込みは他人に任せるとして
メール欄のことな
投下している間はsageで
投下し終わると同時にageるようにすることをお勧めしておく
個人的な意見だけど
さて読むか……
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ぁ・・・見事に逆をやってしまっていた・・・
すまない。
続き少しずつ投下してくよ
-
「あら、いつのまに来ていたの?まっててね、湯のみとってくるわ」
翌日、博麗神社を不意に訪れた私をみて、多少驚いたようだ。
得意の『勘』で私の事を察知できていない。効果はあるようだ。
早速実感できた自分の努力に、身体が悶える。快感が身体を駆け巡る。
境内で、二人並んで座り、またいつものようにお茶を啜り、他愛も無い雑談も交える。
魔理沙が尋ねる
「なぁ霊夢、仕事はいいのか?神事なんだろ?」
「あら、この庭をみてわからない?今日はいつもより頑張ったのよ」
どうみてもいつもと同じである。
「ほほぉ、確かにいつもより綺麗だ」
「魔理沙、なんだか今日はご機嫌ね、やけにニヤニヤしてるじゃない」
「ん、あ、あぁ、ちょっといい事があってな」
ふぅん
そう一言だけ返すと霊夢はまたお茶を啜りだす。
・・・・・・
・・・・・・
「『暇』ねぇ・・・」
・・・・・・
・・・・・・
しばしの沈黙が続く。いくら仲が良くても会話が途切れることぐらいある。
魔理沙も特に話題もないのにこの神社へ来る。だから特に話すことなんてない。
だが用事はあった。
「『暇』か・・・・・・ならさ、霊夢、久し振りに弾幕らないか?」
そうね、やりましょうか。霊夢はそう返した。嫌な勘が全くしなかったからである。
-
魔理沙は独り、家に供えてある薄暗い実験室で不敵な笑みを浮かべていた
「うふ、うふふふ、うふふふふふふふふアハハハハハハハ」
笑いがこみ上げてきて止まらない。身体から溢れる快感が、声となって漏れ出す。
当然だった。あの霊夢を、まさか開幕レーザーで撃ち落せるとは思っていなかったからだ。
挨拶程度の最初の一発。それがモロに直撃したのだ。当たる寸前の霊夢の表情。驚愕の表情。
たまらない。
いつもはなぜこんなにも当たらないのかというぐらい、スイスイ避ける。擦れはすれど、直撃なんて滅多にない。
ただのまぐれか試すために。あまりにもあっけなさ過ぎたために、霊夢をもう一度誘い、弾幕りあった。
一方的だった。流石に開幕レーザーはよけたものの、露になる霊夢の焦りの顔。
そこにもう数発撃ち込み、6発目のレーザーを撃ったところで直撃した。
まぐれではない。
地面に墜落しかけた霊夢を助けると、
「どうしたんだ霊夢。いつもより調子がわるそうだぜ?」
と"心配した顔"を作って慰めてやる。
そうみたいね、今日はおとなしくしているわ──といつものように明るく返事が返ってきた。
やはり霊夢は霊夢だ。負けた事を全く気にした様子はない。
敗北を僅かしか味わったことの無い霊夢。勝ち続けていた霊夢にとって負けなんて些細なもの。
挫折を味わったことの無い無垢な顔。その純粋たる、汚れのない微笑を含む霊夢を見ていると、
また憎しみが込み上がってきた。なぜ負けたのに笑っていられる。なぜ落ち込まない。
今日はおとなしく──だと?現状維持でいいと思ってるのか?それで次は勝てると、そう思ってるのか。
敗者の気持ちも、努力の苦労も、何も知らないくせに!!!!!
-
予想以上に、効果が如実に現れたことに喜びを抑えきれない。努力の力。そう、本来の姿はこうあるべきなのだ。
紅白人形を握り締めると、その感触が酷く手に馴染む。
自分が作ったからか、それとも彼女が『努力と道具の天才』だからか。
魔理沙自信その『道具』の才能に気づいていなかった。知らなかった。自分には何もない。全くとりえが無い。
無い所か、普通以下だと思っていた。何をやっても人並み以下。唯一、私が掴むことができるのは努力だった。
天才でも、貧才でも、だれでも得ることが出来る自分を高める力。
この私でも扱えるものはこの世には努力しかないと思っていたからだ。
違った。彼女はしっかり努力以外の才能を持っていた。
ただ、環境が環境だけに、その才能に気づくことは出来なかっただけであった。
最初にその才能を開花させたのは、勘当され、道なき道を歩き、行き倒れそうになった所を森近 霖之助という
男に助けられた時である。彼は魔理沙に魔力増幅装置を作ってあげた。
試作品であったそれは、大した力は持っていない。実際、彼も使ってみたが少し魔力が高まる程度。
当時の魔理沙は、そこまで魔力ももっていなく、この男と同程度であった。だが、多少の足しになればと、
無いよりはマシだと、作ってあげたのだった。
彼は驚いた。魔理沙が掴んだそれは、異常なまでに魔力を発生させていたからだ。
魔理沙はどちらかというと器用なほうではない。しかし彼女の才能がそれを目覚めさせた。
コツ、癖、使い方・・・掴んだだけで、握っただけで、それの仕組みを無意識に理解していた。
普通の魔法使い魔理沙が誕生してから、幻想郷にその名が知れ渡るのも、時間は掛からなかった。
箒を使いこなし、幻想郷最速の名を手に入れた。努力を積み上げ、地位を確立していった。
圧倒的な魔力を持つ怪物相手に、対等に、それ以上に渡り合った。
魔理沙は自分の存在を否定されるのが嫌だった。とても嫌な事だった。
だからこそ、認めてもらうために努力を積み重ねた。いずれ、霧雨家の名を継いでも恥じないように。
-
そこにあの巫女が現れた。同じ人間だし、同じ年頃だし。とても親近感を覚えていた。
私の事を気にかけてくれる。声をかけてくれる。それは嬉しかった。
でも、心から心配された事はなかった。ただ勘にもとづいて心配をしてくれるだけで、
相手の心を読み取って心から心配してくれているわけではなかった。
別にそれが不満だったわけではない。博麗の巫女なのだから、誰か一人だけに好意をもってはいけない。
誰に対しても平等に。だから彼女の周りには妖怪やらなにやらが親しみを持って寄って来る。
常に誰かに囲まれているのが、私にとってとても羨ましかった。常に誰かに必要されている事も、妬ましかった。
なにより幻想郷を護る博麗大結界の管理者だ。存在が、存在感が私と全く正反対だった。
派手な事をしたりアピールをしたり。そうでなければ誰も私を見てくれない。
霊夢は何もしなくても、みんなが振り向く存在だった。
持ち前の勘でふらりと出かけては、幻想郷でも名を馳せる強豪どもをいとも簡単に蹴散らし
たった一人で、異変を幾度と沈めていった。ここに親友がいるのに、一度も頼られたことはなかった。
誰かに頼る必要がないくらい、彼女は天才だったから。
私はいつのまにか嫉妬を覚えるようになった。私の持っていないものを全て持っている。
彼女自信は望んでいないのに、何もかもを。持たざるものである私を嘲笑うかのように・・・・・・
光が強ければ強いほど、私の影は濃く強くなっていった。
同じ人間の癖に・・・・・・
───私は力強く紅白の藁人形を握り締めていた。
-
次の日も、いつもと同じ日常を装い、霊夢の様子を見に行く。
「おっす霊夢、調子は戻ったか?」
「ん?あら、魔理沙じゃない。心配しなくても大丈夫よ」
やはり今日も私が来たことに、声をかけるまで気づいていなかった。
今日は珍しくお茶も飲まずに、境内に座っていただけだった。
いつもの雑談を交え、会話が途切れたところで今日も弾幕らないかと誘ってみた
霊夢は首を横に振って、まだ調子は完全じゃないみたいなの、だから今日はやめておくわ
と、微笑を交えて断る。
私は、なんだ、つまらないぜ、という素振りを見せる。
「あ、そうだわ、今日とてもいいお茶が手に入ったの、一緒に飲みましょう」
そう言って霊夢は立ち上がる──瞬間霊夢の身体がふらりと揺れたと思うと、
急にこちらに倒れこむ。地面に激突する寸前で私は霊夢の身体を受け止めた。
「おい、なんだ、全然調子よくないじゃないか、風邪でもひいたか?」
ハハ、ばれちゃったわねと苦笑いをすると
「昨日の夜あたりからなんか身体がだるいのよ・・・」
「ふーむなるほど、風邪薬程度なら私が作ってやるぜ?」
「あらほんと?助かるわ、頼めるかしら?」あいかわらず微笑をくずさない
「あぁ、任せろ!!数日分をまとめて精製するから少し時間はかかるけど、夕方頃にはできるだろ。
またその頃来るぜ。」
うん、ありがとう、待ってるわ。とまた微笑を返す。
私は箒にまたがり、
「じゃ早速作ってくるぜ、またな、霊夢」
と告げると大空へ溶け込んでいった。
風邪の具体的な症状を聞くのを忘れていたが、だるい、といったので
普通の風邪薬を調合する。これぐらいならお手の物。数日文を纏めて作るので量は多いが、手早く精製する。
それに少しアレンジを加え、滋養強壮等、身体に嬉しい効果もわずかに与える。
魔理沙印の特製オリジナル普通の風邪薬の完成だ。
この風邪薬の中には毒だとかは入っていない。作るなら完璧に作る。それが魔理沙のプライドだ。
それに、純粋に霊夢に元気になってほしいからだ。また霊夢と弾幕りたいからである。
元気になった霊夢が、私に負けないようにと努力する所を見たいのである。
そしてまた、友達として競い合いたいのだ。
-
薬は宣言どおり、夕方には完成した。
それを数本の小瓶に分けて入れ、しっかりと詮をしたあと風呂敷で落ちないように包む。
玄関から外に出ると、あたり一面夕焼けに染まっていた。
ん、時間もばっちりだ。と唸ると玄関に簡単な鍵の呪文をかけておく。
箒にまたがり、箒前方の先端に風呂敷を結わえると、
「さ、準備完了だぜ、待ってろよ霊夢」
帽子を被りなおし、箒の柄を握る。地を蹴って、夕焼けの空へ包まれていく。
「おーい、霊夢〜作ってきたぞ〜」
・・・・・・・・・・・・
返事が無い。
境内にはいないので、きっと中で寝てるのだろう。
勝手しったる人の家の如く、靴を脱ぎ勝手に家の中に入っていく。
「霊夢〜?どこだー?」
・・・・・・・・・・・・
いないぜ?
いつも寝てるとしたらこの部屋の筈だが、ここにもいない。
どこにもいないぜ?
他の部屋も、風呂も、厠も、境内の下も、賽銭箱の中も、どこにもいなかった。
「ったく霊夢、待ってろっていったのに・・・まぁいいか、ここに置いておけばわかるだろう」
一番よく利用する部屋のちゃぶ台のうえに風呂敷を下ろす。ついでに用法・用量を正しく守って・・
と一筆したためると、ついでに棚の一番奥にあった茶筒を拝借して、「帰るか」と、来た道に飛び立っていく
-
家についた頃には大分日が落ち、薄暗くなり始めていた。
玄関の鍵を解除し、家の中に入る。箒を玄関の脇に立てかけ、帽子も帽子掛けにかけておく。
スカートの中からさっき借りてきた茶筒を取り出す。筒は綺麗でなかなか高級な茶のようだ。
筒をくるくる回し見定める。開けられた形跡は無い。まだ未開封のようだ。えっとこの茶は・・・
おぉ!? な ん と
『玉露』ではないか!!うぉ、まじか、あの貧乏巫女が・・・・・・
しめしめ、早速いただくとするか。
湯を沸かす準備をし、茶漉し、急須、湯のみ等を用意する。
さてと、「時は満ちた!!!!」茶筒に手をかけ、蓋を────バゴタンッ!!
不意に玄関の扉が強烈に開け放たれ、その大きな音に驚いた私はとっさに茶筒を背中に隠す
玄関にいたのはアリスだった。
アリスは私と目が合うなり
「あ、あああああぁ、マ、魔理沙ぁああ、魔理沙ぁあああああああ〜〜」
声を震わせながら私に思い切り抱きついてきた。それも顔を涙でぐっしょりと濡らし、目も顔も真っ赤であった。
「れれ、れっ、レ、霊夢が、霊夢があぁぁぁぁあああああああああ〜〜」
「ま、まぁ落ち着けアリス、どうしたんだ?何言ってるかわからないぜ?」
泣きじゃくるアリス、身体を痙攣させ、嗚咽を漏らしながら、目からは大量の涙が濁流していく
(げ、まさか茶を盗んだことがばれたのか?それにしてもアリスを疑うなんて酷い奴d──
「霊夢が、霊夢がっ、ぁあ、ウッグ、し、しんじゃった、の、殺されっ、たの、うああぁぁああああああん」
アリスはそれだけ言うと、大声で泣き叫びつづけた
──へ????私は耳を疑った。
────死んだ?霊夢が? 殺された?誰に?
確かにアリスは霊夢が死んだと言った。でもあの天才が死ぬなんてありえない。
でもアリスが嘘をついてるようには到底見えない。
幻想郷で最強かと恐れられるぐらい強いのだ。あの霊夢が殺されるなんてあるわけない。
開かずの賽銭箱が、満腹になるぐらいおかしな事だ───
彼女の存在の大きさ故か、既にその事は幻想郷全土に瞬く間に広がっていた
───────博麗霊夢は死んだ───────
と。
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最初に彼女の死体を発見したのは、半妖であり─(略)─の上白沢慧音であった。
日課である人里の警護にあたっていると、里の外、森の生え際辺りの場所に、
低俗な3流妖怪が群れている事に気づく。
単に群れているだけかもしれないが、里を襲ってくる危険性もある。
だが3流妖怪程度なら、簡単に蹴散らせる。
害はないほど離れている距離とはいえ、人里を守る慧音にとっては見逃せない事だった。
下手したら用事で外に出た里のものが襲われている可能性もあるのだ。
最悪の事態だけはどうしても起こって欲しくない。
その事を願いつつ、慧音は現場へ向かった。
「────遅かった。か」
妖怪を追い払った場所には見事に"食事"された死体。
真紅の衣装を所々裂かれて、息絶えていた死体。
マナーも節度も無い、散らかった肉片。
衣装、体躯から見るに、まだ10代ぐらいの女の子であろう。
里を守り、人を守る慧音にとってその事実は、酷く自分を呪った。
私がいながら、守れなかった。自分の無力さを嘆く。
いつのまに里を出たのだろう。それを見逃してしまった自分を憎んだ。
自分に向けて込みあがる怒りを抑えつつ、死体の身元を確認する。
里のものではなかった。この顔は里にはいない。一瞬の安堵。
自分に対する罪が微かに軽くなったような気がした。
だがそれと同時に震えと恐怖が身体を支配する。
真紅に染まった衣装に見覚えがある。
特徴的な衣装。この衣装は本来紅白である。このオリジナルな体裁の衣装は彼女しか着ない。
目を疑う。
震えが強くなる。脈が速くなる。
この顔は知っている。
───博麗───霊夢?????????????
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博麗霊夢が、幻想郷のバランスを保つために提案したスペルカードルール。
これは強すぎる存在と、弱い存在の差を埋めるために提案した、弾幕ごっこである。
どんなに力を使おうが相手を死までは追いやってはいけない。そういうルールだ。
─だが、今回の件は弾幕ごっこではない。殺し合いである、それも一方的な。
3流妖怪は幻想郷でもかなり弱いほうの存在ではあるが、力をもたない人間にとっては
恐怖の対象でもある。無秩序な故か、弱すぎる存在故か、彼らにはスペカルールが適用されない。
スペルカードルールはある程度力を持った者を対象に提案されたルールなのだから。
それ故に、妖怪は人間を喰らい、人間は妖怪を退治する。
そしてその、法外の輩に、この少女は"食事"されてしまった。
誰か別のものが霊夢を殺したとしても、霊夢を殺せるような実力を持った者が
里に近づいた等、そんな気配はまったくなかった。そもそも霊夢を殺せるぐらいの実力者なんているのだろうか
ルールによっても守られている。ルールに従わなくていいのは、三流妖怪等である
つまり殺されたと言うのだから、この辺りの妖怪の仕業である。
幻想郷最強と噂される博麗霊夢が、まさかこんな低俗な妖怪に手をかけられ命を落とすなんて・・・
この事件は、偶然近くを通りかかった、鴉天狗、─(略)─文によって、すぐさま広まってしまった。
───────博麗霊夢は死んだ───────
アリスの元にも、そしてアリスの口から魔理沙のもとへ・・・・
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「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!!!!!!」
さっきまで笑っていた霊夢。さっきまで会話していた霊夢。あんなに強くて、自分の理想だった霊夢。
「何故死んだ!!!!!!!!!」
『ありがとう、まってるわ』
それが最後に聞いた、最後の台詞だった。最後に見た、霊夢の笑顔だった。
何故待っていてくれなかった!!!!何故出かけた!!!!!!!何故・・・・・・
隣では、崩れたように床に座り込み、痙攣と嗚咽交じりに泣いているアリスがいる。
かという私も、視界がとてつもなくぼやけて、アリスかどうかもわからなかった。
目から次々と溢れる涙。止まらない涙。いつ止まるかわからない濁流。
私の大切な友達である霊夢を失ってしまった。
いつも笑顔だった霊夢。常に気を使ってくれる霊夢。誰にでも優しい霊夢。
「くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」
────彼女はもう、笑わない────
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──────ここは・・・・・・?・・・・・・・・あぁ、自分の研究室か・・・・・・・・・・・・・・・・
いつのまにか、私は私の家にある研究室の中心にだらしなく座り込んでいる事に気がついた。
目の前には、割れて粉々になった大量の実験器具、何かの粉末も大量に飛び散っている
水滴が1滴ずつ落ちる音。壁際に設置された机の上から、水が滴り落ちていく。
紙切れが散乱し、壁にも所々に穴や染みを作っている。
理解を超えるこの光景に、しばらく宙を見つめ、ボーっとしていた。
─っ。手が痛む、腕全体が激痛を走らせる。片手をゆっくりと自分の前に掲げてみる。
浅く抉れた大量の傷跡。アザもその間を縫うようにして痛々しく走っている。
着ている服の白いエプロンドレスは、様々な薬液や、粉末、それに私の腕から流れ出る血によって
とても変な色合いに染まってしまっていた。
瞼も腫れているようで痛い。
・・・・・・・私は暴れてしまったのか?
いつのまにここに入ったのかは覚えていない。
軋む身体を無理やり立ち上がらせ、部屋を出ようと歩き出す
何か鋭い破片を踏んだのだが、全身の痛みに比べれば些細なものだった。
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