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【代理スレ】ウイングマン連載中 ドリムノート2冊目

1626/8:2009/12/23(水) 18:44:46 ID:???
そして――――場面は再び日本、とある街中へ戻る。
なぜか、日本… いや、地球全体の時間が巻き戻っていた。
物語の第1話と同じ内容の雑談をする福本と健太の姿がそこにあった。
「ギャハハハ! お前もとうとう女の子に興味を持つ様にになったか
 しっかし、クラスの中で名前も知らない奴がいるってのは異常だぜ
 保健委員だろ、確か小川美紅だ」
「おがわみく…」
「ホレたな」
「ち、ちがうよ!」
「そーだよなー ヒーローには女の子を好きになってるヒマなどないからな」
…もちろん冗談だ。健太の肩をバンバン叩く福本。
福本からも正義の味方のマネをするのは潮時だと言われる。授業が潰れなくなるのは残念だが。
「中学生にもなって、正義の味方なんてやってたら 美紅ちゃんに嫌われちゃうぞ」
    ドキッ
そう言って2人は別れる。

「…そーだよな 将来を厳しく見つめたら、正義の味方なんかになれる訳ないし……
 いや、でも もしかしたらなれるかもしれないし… う――む」
半ば現実を直視しながらも、やはり夢は諦めきれない健太は、ふと、道端の電柱を見上げる。

「な なんだろ、この電柱が妙に気になる…」

しばらくその電柱を眺め、気のせいだと思いつつ再び歩き始める健太。
――その直後、女生徒とすれ違う。
.。oO(あれ…… どっかで… この顔…… 誰かに似てるような… 似てないような…)
その顔は、健太は記憶に無いようだが髪が黒い以外はアオイそっくりだった。
気になる健太はつい女生徒の顔をじーーーっと見てしまい、女生徒に怒られてしまう。
「なんだよ、人の顔をジロジロ見やがって!」
「き きみ 正義の味方に向かって、なんて口のきき方だ!
 それに女の子がそんな言い方しちゃダメだ!」
…ジロジロ見ていた健太の方が悪いのだが、つい反論してしまった。

1637/8:2009/12/23(水) 18:45:05 ID:???
「なんだと、てめ〜…」
食って掛かる女生徒だが、女に弱い健太は誰かに似ていた、と説明しつつ尻込みしてしまう。
健太を睨んでいた女生徒は突然、寂しそうな顔をする。
「?」 戸惑う健太だったが、女生徒はいきなり健太の襟首をつかむ!

思わず怯える健太だったが、女生徒は―――― そっと健太の頬にキスをした。
真っ赤になって固まる健太の隙をつき、女生徒は自分のカバンと健太のカバンをすりかえる!
「うわあぁっ!キスされた! 知らない女の子にキスだれたぁ!
 み いや 小川さんに嫌われちゃう〜〜〜〜!  ひぇ――――っ!!」
パニックになった健太は一目散に逃げ帰ってしまった。


。oO(わたしってダメね… ちょっとケン坊の顔を見に来ただけなのに、気持ちが揺れちゃって…)

――そう呟きつつ変装を解く女生徒。その正体は、やはり生きていたアオイだった。
カバンを持ったアオイは電柱へと歩み寄りながら、いつもの姿に戻る――


――でも、もうさみしくないんだ… ちゃんとケン坊にお別れできる…
  だって… わたしの中には、いつでもケン坊がいるんだもの…
  わたしの命は ウイングマンの全てなんだから…
  すりかえたケン坊のカバン、ここに置いとくね
  あらすじでは、後で美紅ちゃんが拾ってケン坊に届けてって……なるのよね…… よっ、色男
  …じゃあ、ケン坊 おしあわせにね……

アオイはすりかえたカバンを電柱の下へ置くと、ゆっくりと浮かび上がる・・・

「さようならケン坊! あなたはきっと正義の味方になれるよ♥ ホントに……」

サ ヨ ウ ナ ラ ・・・・

走り去る健太のはるか後方で、アオイは異次元空間へと消えていった――

1648/8:2009/12/23(水) 18:45:36 ID:???




       ケ ン 太 が 夢 を 持 ち 続 け る 限 り 、
                ウ イ ン グ マ ン は 現 れ ま す 

「正義は必ず勝つ!」
今日も平和に、手作りの衣装を着て美紅を抱き、笑顔の健太。後ろに松岡先生がいるのも知らずに…。


            そして 健太が『正義の味方』である限り、

           大きく羽ばたく日が いつか また… きっと




              ウイングマン ―WING-MAN―

                      完

165名無しさん:2009/12/23(水) 23:15:27 ID:???
ついに… ついに終わったのか、ウイングマン。桂先生3年間お疲れ様でした!

まさかドリムイレイサーで全記録消すとは思わなかったよ、
そして地球全体の時間が巻き戻ることも…(それもタイムボールとは比較にならない能力)
アオイは結局本当に不死身だったし、本当に万能すぎだろ、ディメンションパワー&ポドリムス人!
健太もキータクラーも本当に成長した。キータクラーはダークヒーローとして輝いた。

ただ、最終回にしてはページ不足だったのか少々物足りない感じがするな。
単行本で書き足しある事を願う。

166名無しさん:2009/12/23(水) 23:19:55 ID:???
>>402
そういえば北村先生、麗一戦以降出なくなったね。
キータクラーだったのかも不明だし、何の為に出てきたのか…
それ以外に回収されなかった謎(伏線)てある?

167名無しさん:2009/12/24(木) 20:39:20 ID:???
どうしても分からない。
あおいさんが生き返ったのは
ドリムノート全消しして願いを書き込んだからなのか、
時間が巻き戻ったからなのか、
それともそもそも死んでなかったからなのか… どれなんだろう?

168名無しさん:2009/12/24(木) 22:00:43 ID:???
>>417
敵が死んだまま時間が巻き戻るってのが腑に落ちない。

>>418
健太は忘れないように心がけていても、結果的にあおいさんのせいで
キータクラーどころかこれまでの戦いを忘れてしまっているよね…
キータクラー哀れ(´・ω・`)

169超機動員アウトライン:2010/01/01(金) 22:05:16 ID:???
連続投稿規制になったのでどなたか以下お願いします。

170超機動員アウトライン:2010/01/01(金) 22:05:29 ID:???
《左前に45cm!右横に22.45cm! 》
ついにみなほの正解率は99.999%、コンピューターと同じになった!本領発揮だ!
――その瞬間、パワーウェアが輝きだし、ビームサーベル(剣の仮称)のビームの刃が勢いを増す!
「な なんだ! パワーウェアが変だ!」
《右下に52.36cm!左に2.653cm!》
「うわ、細かい! とにかく右の次に左だな!」
ヴァンダーの素早さに沢田とホモ課長は一瞬消えたように見えた。
その瞬間、ダミーが2機撃墜される!政夫は自分がやった事に我ながら驚いていた。
もちろん、驚いていたのは政夫だけじゃない、沢田とホモ課長も驚いていた!
「いつの間にやったんだ!」
「あまりにもものすごいスピードで動いたので見えなかったんだ!
 みなほくんの必死さと、彼を思う気持ちが高まってヴァンダーの機動性が高まったんだ!
 茶頭くんの反射神経もなかなかいい! これはいけるぞ!」


――しかし、茶頭の体はヴァンダーの機動性についてきていなかった。
次々と人間離れしてくる動きに政夫の体中の筋肉が痛み出し、Pウェアに体が引っ張られ始める!
《左後ろに12.3cm!左上に50.4cm!前に26.32cm! キミにパートナーになってほしいの!
 右上に6.26cm!がんばって!》
体中が痛み出し、息切れしもはや体力の限界に来ていた政夫だった。

『うるせぇこのやろう!ゴチャゴチャぬかすな! だまってろ!女なんかに援護されてたまるか!!』

――ついにブチ切れみなほに怒鳴る政夫!
《ムッ 女なんか!? あ、そー だったら一人でガンバってね》
みなほは機嫌をそこね、モニターから姿を消した…
すると急激にパワーダウンし、ビームサーベルのビームの刃も消えパワーウェアが重くなりだした!
疲労とパワーウェアの重さにより動けないヴァンダー目掛け、ダミーの攻撃が降り注ぐ!

「あっ!武装変が解ける! いかん、テスト中止だ!」
危険を感じた沢田はテストを中止させる ――と同時に、2人の姿が元に戻り空中に放り出される!
政夫の顔面に尻もちをついてしまうみなほ。それが政夫にトドメを刺した。

171超機動員アウトライン:2010/01/01(金) 22:05:45 ID:???
「ぴ ぴ ぴ ぴんくのぱんちぃ〜〜」
「サイテー こんな男キライ!」 慌てて立ち上がり、おしりを押さえ気絶した政夫を睨むみなほ。


途中までは上手くいってたのに失敗し、残念がる沢田。
「ザーンネン 恋人ができると思ったのに わたし、ちょっと遊んでくるねー」
沢田が止めるのも聞かずに、みなほは訓練室を出ていってしまった。
ホラ見たことかと怒鳴るホモ課長をなだめつつ、沢田はみなほを捕まえにゆく。


――外に出たみなほはタクシーを止め、後楽園… もとい、後薬園遊園地へと向かった。
「見回りです」 入口の係員に警察手帳を見せ、あっさり通るみなほ。職権乱用だーーー!
そしてみなほはトイレで制服から私服に着替えると、まずゲームコーナーへ向かった。
そこにはゲームに熱中する男性がいた。何気なく覗き込むと、350万5千点のハイスコア!

「最初の1機でずーっとやってんだぜ、天才だよ 敵を一つ残らず潰してるんだ、ほとんど神ワザ」

驚くみなほにゲーム中の男性の友人が説明する。
…ふと、ゲームに熱中する男性は異様な気配を察知する。見上げると――みなほと目が合った。
。oO(え 何? この感じ、わたし…)
胸の高鳴りを感じるみなほ。

『  う  わ  ー  !  や  っ  ぱ  り  女  が  い  た  !  』

みなほに滅茶苦茶驚く男性!    ――直後、ゲームの自機がやられてしまう。
「ねぇ、いっしょにあそぼ」
みなほは男性の手を握り、嫌がる男性を強引に連れ去ってしまった!
「お おい!  …大丈夫かな、あいつ 女性恐怖症なのに…」

172超機動員アウトライン:2010/01/01(金) 22:06:01 ID:???
…ややあって。顔を真っ赤にして手を離せと叫ぶ男性。
「ははーん キミ、女の子に弱いのね」
意地悪そうに笑いながら冷やかすみなほに、相変わらず真っ赤になりながら否定する男性。
「ちっ しょうがない、つきあってやるか!」
一緒にジェットローラー(絶叫マシン)に乗ろうするみなほだが、係員に一人乗りだと止められる。
「わたし、こーゆー者なんだけど ね、いいでしょ」 つ【警察手帳】 職権乱用だーー!(その2)
…いや、職権乱用どころじゃない。安全面も無視し、強引に男性の上に乗るみなほ!

ジェットローラーが動き出し、互いに自己紹介する二人。
「わたし、森村みなほ 19歳でーす キミは? お仕事何してるの?」
「ふ 藤枝弘紫(ひろし) 20歳だ! そこのステージでやってる、怪獣ショーのアトラクション」
後楽 …もとい、後薬園遊園地といえばヒーローショー。向こうでセイギマンショーをやっている。
「あ このカッコウ 悪者の下っぱ役ね」
「う うるさい たまには主役だってやるんだぜ!」

――そんな事を話していると、突如ジェットローラーの下から地面を割って惑星人が現れた!
「鉄の匂いがする オレの大好物、オイル付き鋼鉄だ」
惑星人の出現に辺りは大騒ぎになってしまう!


――同時刻、パトカーでみなほを探していた沢田とホモ課長。
「大変です、後薬園遊園地にバル惑星人が現れた模様です!」
署からの連絡を受け、ホモ課長は運転していた警官に急行するよう指示する!


再び遊園地。みなほ達が乗っていた絶叫ジェットローラーは止まってしまった。
「ん?  そ 外を見てみろよ!惑星人だ!」
弘紫の叫びで下を見ると、バル惑星人はジェットローラーの柱をむさぼり喰い始めた!
みなほは悲鳴を上げて弘紫に抱きつく!
「おい!抱きつくな! ギャ―――― ムネが!ムネが!」
「ちょっとー 何おびえてんのよ!」
女性恐怖症の弘紫はみなほにおっぱいを押し付けられ、別の意味でこっちも悲鳴を上げていた…。

173超機動員アウトライン:2010/01/01(金) 22:06:14 ID:???
駆けつけた沢田は隣の警官の双眼鏡を奪い、ジェットローラの上にみなほがいるのを確認する!
「バル惑星人! 鉄ならいくらでもくれてやる! だからそれは喰うな!」
「――ん  いやだ!オレはハラペコなんだよ!」
惑星人が警察の説得に耳を貸す訳が無い。当然、拒否された。
課長は部下に念の為に救急車を呼ばせ、刑事に取り押さえるよう命令する。
「近づくな!」 バル惑星人は頭の角から無数の光線弾を放ち、刑事達を足止めする!
「超機動員ジャイロンを呼べ!」
バル惑星人の放った光線の流れ弾がジェットローラーに当たり、被害が拡大してしまう。
「奴はすでに一つの街を喰い潰している!このままほっといたら大変な事になるぞ!」
「ジャイロンはまだか!!」

ジェットローラーのあちこちでは客の悲鳴が起こっていた。
乗っている子供の母親が課長に助けてくださいとすがりつくが、人間には手が出せない!
そんな事もお構いなしに、まるでシロアリが家を食い荒らすように鉄柱を食い荒らすバル惑星人。
鉄柱を喰われ、ジェットローラーはどんどん傾いてゆく!

再びみなほはひめいを上げ、弘紫に抱きつく!
「キャー もうダメー!」「オレもダメ〜〜〜!」
――ふと、みなほはある事を閃いた! 「ねえ!わたしの事好き!?」
「な なんだ、やぶから棒に! 今会ったばかりなのに、好きとか嫌いとかって!!」
そんな事を言っている間に、ジェットローラーはどんどん傾き、逆さまになる弘紫とみなほ!
「でも何か感じない!? 『かわいいなぁ』とか『おちゃめだなぁ』とか!」
「感じないよ!」
「ねぇ、何とか好きになって! じゃないと、わたし達死ぬのよ!」
「そんな事言ったってー わっ、それ以上近づくな!」
「じゃあいいわ、今から形だけでもわたし達は恋人同士よ!」
『 え ! ? 』
             ――そして、みなほは弘紫にキスをした――

――その直後、ついにジェットローラーは倒壊してしまった!
それと同時にジェットローラーからまばゆい光が発せられた!
その輝きは、みなほの太ももと同じマークを空中に浮かび上がらせていた。    <続く>

174超機動員アウトライン:2010/01/01(金) 22:19:58 ID:???
代理投稿してくれた方、ありがとう!
いつの間にか連投数10から半分になってたのな…
ウイングマン最終回じゃこんな事なかったのに。
ともあれありがとうございました。

1756/7:2010/01/11(月) 21:57:36 ID:???
「ぶ 武装変だ!」
「いいけどペンダント持ってるの!?」
「大丈夫だ!服の下に下げてる!」
「OK! 武装変!」
承諾したみなほは上にいる弘紫に向け、アーマメントガンを撃つ!

.。oO(いよいよヴァンダーの登場やね、お手並み拝見と行きますか )

――例のマークの輝きを放ちつつ、武装変したヴァンダーはそのパワーでツタを引きちぎる!
異変はこれだけでは済まなかった!
周辺の木の根が地中から起き上がると、木の根が冒頭の木の怪物へと変化し囲まれてしまった!
『なんだ、こいつらは!?』
ヴァンダーはクリスタルロッドを抜くと、襲い掛かる木の怪物を次々となぎ払う!
背後からなつきの悲鳴が聞こえ、振り向くと怪物にさらわれそうになるなつきがいた。
ヴァンダーはなつきをさらおうとする怪物を倒しなつきを救出する。
「大丈夫か!?」
「ええ、ちょっと油断しただけです」

…しかし、この様子を面白く思っていない人物がいた。それはもちろん、みなほだ。
《こら弘紫!そんな娘に優しくする事ないわ!》
「そんな事行ってる場合じゃないだろ!」
《なにさ!この浮気者!》
ヴァンダー1人で痴話げんかが始まり、そのせいでクリスタルロッドが短くなってしまう!
《いつまでも肩に手なんかまわしてないでよ!》
「怒るな! ケンカするとヴァンダーの力が無くなっていくだろ!」
《ふ〜ん! 弘紫のバカ!》
みなほの機嫌を損ねたせいで、クリスタルロッドは完全に消えてしまった!
この様子を見たなつきはいともあっさりチームワークが乱れた事を内心、ほくそ笑んでいた。

ヴァンダーは後頭部を怪物に殴られつつも、仕方なく素手で戦う事にする。
近寄る怪物をちぎっては投げ、ちぎっては投げ…ツタに捕まり怪物をなぎ払う!
『アーアアーッ! ターザン気分だぜ!』

1767/7:2010/01/11(月) 21:57:58 ID:???
    ベシッ
…調子に乗ったヴァンダーは対面の木に激突した!  「…っとありふれたギャグをやっちまった」

――そんな事をしている内に、ガイドの連中が木に喰われてしまった!
『助けてくれ! ヴァンダー!!』
手を伸ばして救いを求める石田さん、それが彼の最後の姿だった…
恐怖に怯え、しがみつくなつきを励ますヴァンダー!  …これがますますみなほの機嫌を損ねた。

《この―― 抱き寄せるな! 弘紫 もう許せない!》

――愛情をエネルギーとするヴァンダーにとって、これが決定打となってしまう!
完全に怒ったみなほのせいで、エネルギーが無くなり武装変が解けてしまった!

『どうすんだアホ――――!! これじゃやられるのを待つだけじゃねーか!! ヽ(`Д´)ノ 』
『そんな事言ったって、弘紫がいけないんだよー! エ〜〜〜ン!。・゚・(ノД`)・゚・。 』

…怪物に取り囲まれる3人。さらに弘紫は女2人に抱きつかれ硬直状態。
トドメに武装変も不可能と大ピンチ!! この窮地を弘紫をどう脱出するのかッ!!  <続く>

177名無しさん:2010/01/27(水) 21:44:45 ID:???
SCENE-14:【B(ブラック)ヴァンダーの脅威】


「さぁヴァンダー!足を出せ!パワーソルをいただく!!」
偽ヴァンダーはバイクを爆発炎上させると、その体色をギラング人の象徴である黒に染め上げた!
ダメージを受け、うずくまるヴァンダーを見下すブラックヴァンダー!(以下BV)
…ヴァンダーの背後では、バイクの大爆発に巻き込まれた一般人が無数に横たわっていた…。
『誰か! 誰か119番に電話を!』

――当然、弘紫はやれるかと拒否する!
《弘紫 あいつらは樹海の時の戦いを参考にして作られた偽者なんだわ!
 奴らの知らない武器で攻めれば…》
「知らないのっていうと…Vパルザーか!! よし!」
みなほのアドバイスを聞いた弘紫は、パワーウェアの両腰にセットされているパーツを引き抜く。
左右のパーツを組み合わせ、展開するとビームガン『Vパルザー』となる!
そしてVパルザーのエネルギーチューブを手首に接続し、安全装置解除!

『エネルギーチューブ接続! Vパルザー!!』

Vパルザーを連射し、BVに命中させる!
「どうだ!」
BVはよろめき、ヴァンダーを飛び越えると近くの階段の手すりの上に着地する!
「逃げてもムダだ!!」
さらにヴァンダーはVパルザーを撃つが、今度はわずかの動きで回避するBV!

「あまいな! Bヴァンダーはきさまに劣るところは無い!」

――なんとBVまでVパルザーを装備していた!
BVのVパルザーはヴァンダーに命中し、本物のVパルザーとは比べ物にならない爆発をあげる!
弘紫は奴らが知らないはずの武器を装備している事に驚きの色を隠せない!

1782/4:2010/01/27(水) 21:45:07 ID:???
「このBヴァンダーがヴァンダーをまねて造ったと思ったら大間違いさ、機能は全て同じだ
 警視庁に保管してあるヴァンダーの設計図を見て造ったのだからな」

――その直後、ヘルメット内左モニターに陽子が映し出され、現在のダメージ状況を教えてくれた。
《弘紫くん! 胸部OV回路破損 もう一度そこに攻撃を受けたら、ヴァンダーは動けなくなるわ!》
「あ 陽子さん! 沢田さんを出して下さい!」
弘紫に頼まれ、陽子は沢田と変わり、モニターに沢田が映し出された。
《どうした! 偽者相手に苦戦してるのか!?》
「あいつ偽者じゃないんです! ヴァンダーの設計図を見て造ったとか…!」
《なんだって! どうして設計図なんか… まぁいい、気をつけろ!
 こっちでもどうしたらいいか、考えてるから》


――バイクが爆発炎上した際に発生した火災を鎮火する為、次第に消防車と救急車が集まってきた。
放水開始する消防士を見たBVはある事に気づいた!
「フッ 水か… 姉さん、力を貸してくれ」
《いいわよ》
BVはすばやく消防士の元へとジャンプすると、消防士から強引に消化ホースを強奪する!
「まずい! あの姉貴は水を自由自在に操る事ができるんだ!」

『バルカンウォーター!!』

そしてBVはホースの水を物質変化し、大量のショットガンのような水圧弾へと変える!
『ウオオオ 水が鉛玉のようだ!!』
反撃も回避もできず、ヴァンダーは文字通り手も足も出せないでいた。
《弘紫くん、体中が破損しているわ! これ以上やられたら、生命もあぶないわ!》
チェック担当の陽子からも警告が出されるが、今のヴァンダーにはどうする事もできない!

「くそっ! まるでVαみたいだ… ん!? Vα!!」
思わず呟いた自分の言葉に弘紫はVαでトドメを刺そうと考え付く!
すばやくVパルザーで消化ホースを切断し、ヴァンダーは自らの胸にロッドを突き立てようとする!
『行くぞ!』

1793/4:2010/01/27(水) 21:45:28 ID:???
…しかし、その時みなほから警告が入る。
《待って! あいつもVα使えるはずよ! 同士討ちになったら勝ち目無いわ!》
《それだ!Vαだ!Vαで倒せるぞ! Vαは設計図の中に入ってないんだ、やつらは知らない!》
みなほの警告の直後、間髪いれず沢田からアドバイスが入る!
沢田からのアドバイスを聞き安心した弘紫はVαを実行しようと決めた矢先――――
「ほぅ、Vαか 待ってたぜ!」
「何!? 待ってただと!?」
――ヴァンダーとBVのやり取りを聞いた沢田はすぐさま待ったをかける!
《待ったぁ!! Vαをするな! あの自信はおかしい!》
弘紫は沢田がコロコロ意見を変えるのを愚痴ってしまう。
《Vαを知る為に、わざとやらせようとしてるのかもしれない… ここは用心をして!
 …ひとまず戻って来い!》
《ダメよ、逃げるなんて! このままあいつをほっとけないわ!
 大丈夫… だと思うわ、女のカンがそう言ってるもの》
沢田やみなほのやりとりは外部に聞こえない。ヴァンダーに早くVαをやれと急かすBV!

《戻って来い!》
《Vαをやるべきだわ!!》

――みなほと沢田の意見に文字通り左右から板ばさみされ、迷う弘紫!
「ええい、じれったい! Vαをやらないのなら!!」
しびれを切らしたBVがクリスタルロッドを抜き、こちらに飛び掛ってきた!
思わずヴァンダーは自分のクリスタルロッドを投げつけるが、あっさりと弾かれてしまった!
《バカ弘紫! あのクリスタルロッドを投げちゃったらVαできないよ!
 もう1本はすでに失くしてるんだから!》
「そっか、しまった! ――いや、よかったんだよ!これで帰るしかないだろ!」
弘紫が一安心したのも束の間――――

『クリスタルロッドが無いなら、オレのを貸してやるぜ!!』

1804/4:2010/01/27(水) 21:46:05 ID:???
――なんとBVはヴァンダーの胸にクリスタルロッドを突き立てた!!
「じ 自分から敵に技をやらせるなんて、どう考えてもおかしいぞ!!」
《今更そんな事言ったって! こうなったらVαの威力を信じるしかないわ!》
弘紫達の意思に反し、パワーウェアはVα発動準備に入ってしまう!!

――そして、ついにVαが発射された!

『これがVαか!! ――パワーソルバリア!!』
Vα発動を確認したBVは、右手のパワーソルを突き出しバリアを張った!
光の散弾は完全に防がれ、実体化したヴァンダーはバリアのエネルギーで大ダメージを受けてしまう!
『うわぁぁぁっ!!』 苦痛の悲鳴を上げ、地に倒れるヴァンダー!
「Vαがやぶれた」

「なるほど… 今のが Vαか!!」
――地に伏したヴァンダーを見下ろし、BVは消防車に近寄ると軽々と抱え上げる!!

「Vαの一部始終、見せてもらったぞ! 今のデータを元にVαを分析すれば!!
 このBヴァンダーもVαを使う事が出来る!! 」

BVはそう言い放つと、持ち上げた消防車をヴァンダー目掛け投げつけ、下敷きにしてしまった!
『ぐあああ!』
『これでBヴァンダーは無敵だ! ハハハハハ!!』
《弘紫、しっかりして! 弘紫!!》

――消防車に押しつぶされた弘紫は、みなほの呼びかけにも応えず、完全に気を失っていた――
                                    <続く>

181超機動員アウトライン:2010/01/27(水) 22:18:05 ID:???
代理投稿ありがとうございます

182名無しさん:2010/01/29(金) 21:19:14 ID:???
SCENE-15:【涙のみなほ】


ブラックヴァンダーが投げつけた消防車に押しつぶされ気絶した弘紫――

「数時間後にはVα使用可能となる、これでBヴァンダーは完璧だ
 ヴァンダーよ、あとはオレにまかせてお前はそこで眠ってな、永遠にな! ハハハハハ!!」

圧勝したBVは高笑いを上げながら空中へと飛び去っていった…。
《弘紫!弘紫!! 返事して、死んじゃいや!》
みなほが呼びかけるも、弘紫は応えないでいた…。

「早く消防車をどけないと、下敷きの奴が死ぬぞ! …だめだ、びくともしない!!」
消防士がヴァンダーの上の消防車を押すが、人間の力ではどうにもならなかった。

――その時、上空から再び黒い人影が舞い降りてきた!BVが戻ってきたのか!?
黒い人影は消防車の側に降り立つと、消防車を押してヴァンダーの上からどかした。
『弘紫くん、しっかりして!』
ヴァンダーを抱え起こし声をかけたのは―― 超機動員ジャイロンだった! 一安心するみなほ。



―夕木署・医務室―
手当てを受け、ベッドでひたすら眠る弘紫。その側にはみなほが座っている。
ふと、ドアが開いて沢田が入ってきた。
「あ、沢田さん  …いまだに信じられないわ、あんなのの下敷きになったのに、
 頭にちょっとケガした位で済んだなんて…」
「パワーウェアが守ってくれたんだよ、その代わりパワーウェアの方はガタガタだけどね
 今、大急ぎで修理してるけど
 それより… みなほくん、ちょっと話があるんだ、来てくれないか?」
「話… ですか」

183名無しさん:2010/01/29(金) 21:19:29 ID:???
 ―超機動課―
『やっほー! お話ってなんですかぁー♪』
部屋に入るなり、思い切り明るくふるまうみなほ。…だが課長以外、みんな沈んだ顔をしている。
「どうしたの…? みんな、おっかない顔して」

「率直に言うぞ ――――みなほ、お前に超機動課から抜けてもらう」

開口一番、課長の口から出たのは…『クビ』の宣言だった。みなほは無表情でしばし固まり――
「つまんないジョーダン☆」
思いっきり気の抜けた顔で真に受けないみなほ。
「もっと課長さん、自分のキャラクターを生かしてジョーダンを言えばいいのに
 例えば『みなほ、お前さんにはこの仕事から足をもらってもらうぜ』とかね、
 でも、まぁ どっちにしてもネタがつまんないからダメね
 ヤングを笑わせたかったら、もっとギャグをみがいてね、応援するわ」
――鼻をこすりながら、江戸っ子っぽく言うみなほ。
「ジョーダンじゃないよ」
…しかし、課長は本気だった。
「ジョウダンじゃないよ ・・・・・・・・・・・ジョウダンじゃない?」
(↑ドロボウヒゲをつけて、ビートたけしのモノマネで)
ttp://sakuratan.ddo.jp/imgboard/img-box/img20100129211742.jpg
『 み な ほ !! 』 みなほのくだらないジョークについにキレる課長!!
――そして、しばしの沈黙が流れ…… 

「いやです」

…真顔に戻ったみなほはきっぱりと言い放つ。
「いやじゃねぇ、これは命令でぇ! おめぇは もうヴァンダーに…!」
「分かってます! もうパワーソルが無いから、頭の回転も鈍くなったし、
 今回の事件だってわたしの判断がいいかげんだから、弘紫をあんな目に合わせちゃったし!
 でも! でも!! わたし、弘紫から離れたくない!」

184名無しさん:2010/01/29(金) 21:19:42 ID:???
「アホ! そんな都合で…! 何言ってやんでぇ!!」
「わたし! 訓練してヴァンダーの頭脳になれるようにガンバりますから!」
「そんな余裕ねぇんだ! おめぇは頭の回転の良さを見込んで連れてきたんで、元は民間人!
 使いもんにならねぇのは、即クビでぇ!!
 それにおめえはやっとできた男だから、離れたくねぇんだ!! 即席の恋人はしょせん即席でぇ!!」
「課長、それは言いすぎだわ」 みなほと課長は口論し、ヒートアップする課長を陽子がなだめる。

『違います! わたし、弘紫のこと、ホントに好きです!
 即席だろうが、なんだろうが! 今は本気で好きです!
 それに… それに、この仕事だって! ホンキです! みんなが笑って暮らせる為なら、
 わたし! わたし・・・・・・・!!』

――大声で反論するみなほの目から、後から後から涙がこぼれ落ちてくる。
「……泣いたってダメだ、もう変わりも決まってるし
 必要ねぇもんは必要ねぇんだ! 家に帰ぇんな、就職口はオレが手配しといてやっから!」
『 い や ―――― !  や め た く な ―――― い !! 』
嫌がるみなほの肩を掴み、部屋の外へ強引に押し出す課長。

『課長のバカー! 死んじまえー!!』
…部屋を追い出されたみなほは悔しさのあまり、暴言を吐きつつドアを蹴り飛ばす。
――ふと、背後に人の気配を感じ、振り返ると――

「今までご苦労やったわね、みなほ 今日からうちがあんたの分までガンバるから」

『なつき!』
――そこには、樹海事件で一緒になったなつきがいた!
「パワーソルなくて、普通の娘に戻ったんやから、普通の生活しなはれ」
反論できないみなほは涙ぐみ、顔を真っ赤にして黙り込んでしまう…。

『もう こんなとこ、大爆発して消えてなくなっちゃえばいいのよ!!』

悔しさのあまり、物騒な事を言い残しつつその場を駆け出し――泣きながら夕木署を飛び出した。

185名無しさん:2010/01/29(金) 21:20:53 ID:???
 ―超機動課―
敬礼しながら入室してきたなつきの目に最初に飛び込んできたのは――女性陣に叩かれ中の課長。
「課長、ひどい! あんな言い方ないわ!」
女性陣ほどではないが、沢田も課長に反論する。
「そうですよ、もうちょっとなんとか、言い方が… かわいそうですよ いい娘なのになぁ…」
「――だから、ムリにでもやめさせたんだ、死なせたくなかろう
 この仕事は意気込みだけでやれるほど、やわじゃねぇんだ
 能力のねぇ奴がやっても、死ぬのがオチだからな
 弘紫には会いたきゃ、いつでも会えるだろう… 別に、もう会うなと言った訳じゃねぇしな」
――真っ赤になって課のみんなに説明する課長。これはみなほの身を案じてのせめてもの情けだった。



 ―医務室―
「ん んん・・・・・ みなほ……」
気がつき始めた弘紫。その目に入ってきたのはボンヤリとした女性。
「いややね、うち みなほやないわよ」
なつきに驚き飛び起きる弘紫。――急に飛び起きるものだから頭痛がし、うめいてしまう。
「いけまへん、じっとしてないと」
なつきは弘紫の安否を気遣い、そっとみなほが超機動課を辞めた事を伝える。

『え! みなほは超機動課を辞めたのか! どうして! どうしてだよ!!』

――弘紫のうろたえように、なつきは弘紫にみなほが好きだったのか尋ねる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・ べ、別に そんな事ないよ」
「ホンマ? でも今、すっごいうろたえとったよ」
「や、それは あまり急な話だから…」
「よかった… 今日からうちがパートナーやから、よろしくね」
「なつきちゃんが?
 …そうか、オレ、なんとなく なつきちゃんの方が話しやすかったんだ うまくやれそうだね」
。oO(――オレがみなほの事、好きな訳じゃないんだ キャピキャピしたのは大の苦手なんだから…)

186名無しさん:2010/01/29(金) 22:26:59 ID:???
投下ありがとうございます、そして分散ごめんなさい

187名無しさん:2010/01/31(日) 20:20:56 ID:???
SCENE-16:【スパイだ!】


超機動課に現れた警視監の突然の命令により、黒スーツの男達に課を占領されてしまった!

「キミ達のやり方では成果が上がらない、第三支部を降りてもらう
 ――まず、パワーウェアを渡してもらおうか」

…さすがの課長も、相手が警視監では逆らう事はできない。
沢田に指示すると、沢田は吉田にパワーウェアの修理が出来たかどうか内線で尋ねる。
「至急、超機動課へ送ってくれ」

――警視監はまた不敵に笑う。
「それから… 京本なつき… お前はスパイだな…ちゃんと調べはついているんだ、白状したまえ」
『 な ! ? 』
警視監の言葉に弘紫達は驚愕する!
「な なんの事……? うちにはさっぱり……」
「とぼけてもダメだ、スパイにはこの場で死んでもらう 大事にならないうちにな」
。oO(こ このオッサン…裏切る気? いや… もう、うちには用なしって事やね…)

事態を把握したなつきに尋ねる弘紫。
「なつきちゃん… 本当なのか…?」
「う うそや! うちがヴァンダーの中に入ったら困るんで大ウソついてんのやわ!!
 こいつこそゾルド将軍の手下やないやろか!」

『 ゾ ル ド 将 軍 !? 』

なつきの激白に再び声を合わせて驚く弘紫達!
「フッ 何を訳の分からぬ事を…… お前のような小娘のたわ言を誰が信じるか」
「いや、オレは信じるぜ どっちかというとあんたの言ってる事の方が妙だしな」
『何を言うか!』

188名無しさん:2010/01/31(日) 20:21:12 ID:???
警視監に反論する弘紫だが、課長から待ったがかかる。
「まぁ待て ――警視監、あなたの話もとっぴで… もう少し、納得いくように…」
「わたしの言っている事がうそだとでも? 退去命令の通告書でも見せれば納得するのか!」
「…え… ええ… 少なくとも、今よりは納得できるかと…」

――その時、電子音が鳴り響き、コンピューターにアーマメントガンとペンダントが転送されてきた。
それに目をつけた弘紫は、課長の静止の声も聞かずにそちらに向かって駆け出した!
コンピューターの前に座っていた男はアーマメントガンとペンダントを手に取るが、
弘紫は咄嗟に男の腕を蹴り上げてアーマメントガンとペンダントを弾き飛ばした!!
2つは空中に放り出され――弘紫はペンダントを奪い取る!
床に落ちたアーマメントガンはかおり達の近くへ落ち、かおり達は拾おうと一斉に飛び掛る!
『そうはいくか!』
――だが、あとわずかの所で黒スーツの男にアーマメントガンを奪われてしまった!
男は警視監へアーマメントガンを投げ渡そうとするが――
『そうはいかんわ!』
なつきは男の顔面へ飛び蹴りを喰らわせ、その弾みで男はアーマメントガンを落としてしまう!

『よし、なつきちゃん 武装変だ!!』

しかし、警視監は2人を武装変させまいと男達に取り押さえるように命じる!
「いかん、二人を取り押さえろ!!」

――だが……黒スーツの男は弘紫を警視監に任せ、全員なつきの方へ行ってしまいましたw
「チッ!みんな女の方へ行きおって!」 「こら、離れなさい!」
沢田他の課のみんながなつきから男達を引き離そうとするが、恐るべきスケベ根性で離れない!!
「ええい、ペンダントをこうしてやる!」
もがく内に警視監は弘紫からペンダントを奪い取ってしまう!
男共にもみくちゃにされるなつきはなんとかアーマメントガンを撃つ!

189名無しさん:2010/01/31(日) 20:21:27 ID:???
――突如弘紫は警視監の拘束から逃れるが… 武装変していない??
後ろを振り向くと…… そこにはヴァンダーが立っていた!

――ヴァンダーの中身は…当然、ペンダントを奪い取った警視監。
《キャッ! こんなオッサンと一つになるのいややわ! 早く武装変解きたいわ!》
…ものすごく嫌がったなつきのおかげで、武装変はあっと言う間に解けてしまう!
「おー あせった、一時はどうなるかと思ったぜ」
一安心した弘紫はすばやく警視監からペンダントを奪い返し、距離を取るとなつきに武装変を促す!

なつきは弘紫の合図と共にアーマメントガンを発射し―――― 武装変、完了!!

ヴァンダーは黒スーツの男達の襟首をつかむと、次々と文字通り窓から投げ捨てる!
「そりゃ! そりゃ! ――あんたの番だ」
歯噛みする警視監まで遠慮なく外へ投げ捨てるヴァンダー!
…ヴァンダーを中心に、みんな仲良く揃って窓の下を見下ろすと―― 突然現れた黒い影!

『 ブ ラ ッ ク ヴ ァ ン ダ ー !! 』

「こいつらは口で言ってもわからないんだ、力づくで追い出すしかないのさ」
ヴァンダーは咄嗟に仲間に逃げるように叫ぶ!
――と同時に、BVはヴァンダーの首を掴むと外へと投げ飛ばした!
向かいのビルの壁にめり込むヴァンダーに殴りかかるBV!
しかしかろうじてヴァンダーはその場を離れ攻撃を回避する。
「ふぅ、危ない 今度はこっちから行くぞ!
 まさか、まだVαを使えはしまい! 今のうちにこっちがVαでやっつけてやる!!」
「Vαを使えないとでも思っているのか?」
「まさか! さっきまで使えなかったのに! そんな訳が!」

『そんな訳が!  ――――あるのさ!!』

『なに!?』
BVはロッドを胸に突き刺すと、黒い光の散弾となりヴァンダーへと襲い掛かった!!  <続く>

190プレゼント・フロム・あらすじ:2010/04/01(木) 21:34:56 ID:???
STAGE1:男の道
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―とある満員御礼のコンサート会場―

「もうすぐでしょ? もうすぐここで歌うんでしょ? とうちゃんも」

ステージ上の舞台袖から今歌っているアイドル歌手を見ながら、幼い男の子が後ろを振り返る。
…しかし、父親の姿が見当たらない。
父親を探す男の子。何気なくカーテンをめくりあげると、男の子の目に飛び込んできたのは…
ミニスカートをはいたアイドルのローアングルから見たパンティ!
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驚いてスカートをおさえるアイドル、どこの子供だとマネージャーらしき男。
「こーら、こんなとこ入ってきちゃダメよ  キミ、名前はH(エッチ)くん?」
アイドルに注意され、男の子はちょっと恥しそうな、困ったような顔で自分の名前を言う。

『レモン 沢口麗紋(れもん)!  Hじゃないもん!………』

その時、レモンを探しにきたスーツ姿の青年が現れた。
…彼は第7チャンネル(TVJ)の番組プロデューサー、大崎巌。
「この子、大崎プロデューサーのお知り合いでしたか
 いやー、すごいですねー 33歳にしてこれだけ大きなイベント番組を任されちゃうんだから」
マネージャーに感心され、謙遜する大崎。
「いやいや、すごいのはこの子のお父さんですよ
 今はまだ売れてないけど、必ず大スターになる人です わたし、確信してるんです」
「はぁーん 名も無い歌手と組んで、色々やってるって聞いたけど、その人なんですね」
大崎はレモンの肩に手を置き、優しい目でレモンを見つめる。
「ええ、この子のお父さんの歌を聞いて、ものすごい感動にうたれたんです
 涙が止まらなかった… あんなの、初めてだったんです
 それからは、その桃次郎さんにホレこみましてね、彼のためなら、例え火の中水の中」
…大崎が力説するあまり、側で話を聞いていたアイドルまでその歌を聞いてみたくなったようだ。

1912/9:2010/04/01(木) 21:37:05 ID:???
大崎はレモンだけでなく、桃次郎も探していたようだ。
レモンに桃次郎を知らないか聞いてみるものの、レモンも父を探していたので知るはずがない。
「この辺に    いる    はず…   あ… いた いた」
桃次郎は荷物の影に隠れるように、こちらに背を向けて立っていた。
「どうかしたんですか、沢口さん」
桃次郎はなんでもないと答えるが、胸に手を当てて心なしか苦しそうだ。緊張しているのだろうか?

「年甲斐もなくムネがドキドキしちゃってね、出番は明日だってのにあがったみたいだ、ガハハハ!」

――やっぱり緊張していたようだ。ナイスミドルな顔を崩して大声で笑う桃次郎おとっつあん。
「ムリもないですよ、初の本格的なステージなんですから …苦労した甲斐がありましたね」
「大崎くんにそう言ってもらえると、わたしも嬉しい…」 ・゚・(つД`)・゚・うぅ…
大崎は桃次郎の手を握り、これまでの苦労をねぎらう。桃次郎も思わず男泣きする…。

――ふと、桃次郎はそばにいた、先程のアイドル(レモンがパンティ見た娘)に気づいた。
「おおっ! この若い子は!?」
「新人の秋野このえちゃん。 今、ステージ終わったとこだよね」
大崎に紹介され、桃次郎に挨拶するこのえ。
「はじめまして、明日もここに出るんです その時、よろしくお願いします」
このえの笑顔の挨拶に対し、桃次郎の挨拶は――――

『  毎  日  パ  ン  ツ  は  き  か  え  て  る か  ―――― !』

ちょ、いい年こいたオヤジが大胆にもスカートめくりとな!? Σ( Д )    ゚ ゚
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「…これさえなけりゃ、すばらしい人なんだけど…」
顔を手で覆って嘆く大崎プロデューサーでした…。
「レモンくん、ああいう所は見習っちゃダメだよ」
「うん」
呆れつつもしゃがんでレモンの教育を忘れない大崎さんとを恥しそうに見るレモン君。和む(´ω`)
(ちなみにパンツは毎日ちゃんとはきかえてます(このえ・談))

1923/9:2010/04/01(木) 21:38:33 ID:???
このえはレモンと桃次郎にも挨拶し、そこでお別れとなる。
このえを見送った後、桃次郎は息子の頭を優しく撫でる。
「レモン! お前にも苦労かけたな とうちゃん、これからもっともっと大きくなるからよ」
「ええ――――!? 東京タワーみたくなっちゃうの?」
子供の発想はある意味すごい。レモンの言葉に思わず顔を見合わせ大笑いする大崎&桃次郎。
「でも、その位じゃなきゃ あんな(ステージの)後ろの方の人見えないもんね」

「すげー人がいっぱいいるだろ? とうちゃんが歌うと、あそこにいるみんなが喜んでくれるんだ
 ――明日はお前の誕生日だったな、
 今までプレゼントの一つもやれなかったけど、明日は最高のプレゼントやるからな」

レモンの両肩を抱き、顔の高さまで頭を下げ優しく語る桃次郎
『やったァ! 超合金ロボくれるの!?』
「・・・・・・・」
子供の発想は(以下略  思わず冷ややかな汗を浮かべ、固まる父・桃次郎でしたとさ。
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―12月24日 クリスマス・イブ ちょっとボロめの沢口家―

               (男の道)作詞・作曲 沢口桃次郎
     ♪いちィどォ きィめェたァら あとにはひィくゥなァ  それがァ〜〜〜♪

――歌っているのはレモンだった。父がステージ衣装に着替えている間、歌っているのだ。

                  ♪お・と・こ・のォ〜〜♪

ふりつけまでして歌う父と子。レモンはすでに父の歌も振り付けも覚えているようだ。
「なんだよ、朝っぱらから親子でさー」

                  ♪こッころォ いィきィ〜♪

1934/9:2010/04/01(木) 21:39:42 ID:01uryuAU
苦笑しつつ両耳を押さえて現れたのはレモンの兄、沢口武道(たけみち)、中学三年生。
「ハハハ たいしたもんだ、レモンはいつでもオレのかわりに歌えるぜ
 天国のかーちゃんも喜んでるだろーよ」
桃次郎は慢心の笑みを浮かべ、今は亡き妻の仏壇を振り返る。
「とうちゃん、聞こえるわけないって」
親不孝な武道の台詞を無視し、出かける前に位牌に手を合わせる桃次郎。
『聞こえるよ! 昨日みてきたんだ! すげーいっぱい人がいたんだぜ、
 あの人達全員に聞こえるんだ、きっと天国にまで届くよ!』
ちょっと怒りつつも、兄に反論するレモン。

…ふと、外が妙に騒がしくなった。どうやらご近所さんが桃次郎を応援しに来てくれたらしい。
「お、近所の人達も応援してくれてんだ、ガンバらねーとな」



―伊奈小学校―
教壇の上で男の道を熱唱するレモン。…しかし、その歌を聞いた男子はヘンな歌とバカにする。
「オレのとうちゃんの歌だ!」
「へッ 売れねぇ歌手の歌なんか知らねーよ」
「オレの父ちゃんは、今日・・・・・・!!」         キーン コーン カーン コーン
レモンが反論したちょうどその時、チャイムが鳴った。
「お、やべ! 終業式始まっちゃう 行こうぜ!」


――クラスメートは全員終業式に向かい、教室にポツンと残ったレモン…
「みんながよろこぶなんて、ウソじゃないか」
寂しそうに呟くレモンに誰かが優しく声をかけた。
「沢口くん プロじゃないからよ」
…ただ1人、教室にまだ残っていたのは―― かわいらしく微笑む女の子、広川舞美(まいみ)。
「プロか… よし! じゃあ、オレ プロになる!!」 「わたしも」
「そうか! よーし、いっしょになろうぜ!」「じゃ、きょうそうね、どっちが早くプロになるか」
――そしてレモンと舞美は仲良く終業式へと向かった。

1945/9:2010/04/01(木) 21:40:04 ID:01uryuAU
―コンサート会場・控え室―
「あいつか? 自分で作詞作曲した演歌歌手って」
「売れねーから作曲家どかに頼む金もおしまれてんだろ」
桃次郎の背中を眺めながらバカにする男2人。

『 く ぉ ー ら ぁ ー !  と う ち ゃ ん を バ カ に す る な !! 』

男共の耳元で怒鳴るレモン!いいぞもっとやってやれ!
「どうしたの? まだドキドキするの?」
「あ ああ、 あがってんだ」
レモンは妙にハァハァしている父を気遣う。
桃次郎はそっとカバンからマイクを取り出すと、そのマイクを丹念に磨き始めた。
「またそれなの? 今日ぐらいピカピカのマイクで歌いなよ」
「フフフ このマイクはな、レモン とうちゃんが新人の頃、歌の先生にもらったものなんだ
 …その先生に認められた者だけがもらえる、ありがたいマイクだ
 このマイクで歌った歌手は、みんなビッグになってるんだぞ
 だから、このマイクで歌って 今日、とうちゃんはビッグになるんだ わかったか?」
マイクを握り締め、笑顔を浮かべる桃次郎はレモンの手を引き、控え室を後にする。

廊下に出ると、昨日のこのえがこちらに気がついたが、声をかけるのをやめた。
『毎日パンツかえてるかーい!』
…またすれ違う女性のスカートを思い切りめくっていたからだった。



ステージ上で司会者の挨拶が始まる。
《今日は皆様にスペシャルプレゼントがあります 苦節15年、男を歌い続けた男がここにいます》
『待ってました、桃さん!』
観客席の沢口家ご近所さんがクラッカーを鳴らしたりして騒ぎ出す!
…ちなみに武道は恥しそうに、必死に他人のふりをしておりますw

1955/9:2010/04/01(木) 21:40:21 ID:01uryuAU
―舞台袖―
「とうとうやってきましたね、この日が!」
「何もかも大崎くんのおかげだから!」
運命の日が来た事を喜び合う二人。そばにいたこのえも、心なしか喜んでいる。
「さぁ、世界中に桃次郎旋風を巻き起こしましょう!」

《紹介します、沢口桃次郎さん! 歌は『男の道』!!》

司会者が叫び、会場中を揺るがす大振動の前奏が始まる!(このコマのレモン、ちょっとかわいい)
「あそこに今からとうちゃんが」
レモンが呟くと、突然背後から桃次郎がレモンの肩を力強くがしっとつかむ!
「行ってくるぞ、レモン」
レモンが父を見上げると、ついに夢がかなう桃次郎の目には涙があふれそうになっていた――

――異変は突如起こった!
桃次郎はレモンから数歩離れた途端、苦しそうに胸を押さえて倒れてしまった!
桃次郎が倒れた音に大崎達も気づきこちらを一斉に振り返り駆け寄ってくる!
『沢口さん!』

…その頃、ステージ上ではなかなか出てこない桃次郎にスタッフがあせり始めていた。
「どうしたんだ、イントロ終わるぞ! 演奏を止めろ!」
「司会を止めろ! 119番だ、誰か早く!!!」
「もうしました!!」
パニックになるスタッフ達を、ただ呆然と眺める事しか出来ないレモン…
大崎は倒れた桃次郎のそばで、青ざめながらも必死に彼の名を呼び続けていた。

――ふと、レモンは何を思ったのか、父の手からマイクを取り上げる――
観客席の人達も、そしてご近所さんや武道も桃次郎がなかなか出てこない事にざわついていた。

舞台袖ではスタッフがこっそり顔を出し、緊急事態が起きた事を司会に伝えている。

1967/9:2010/04/01(木) 21:41:32 ID:01uryuAU
――すると、レモンが司会の横をチョコチョコと通り過ぎ、ステージ中央へと向かってゆく。
「あれ? レモンくんじゃない?」
「沢口くん」
会場に来ていた舞美とその母親も、突然レモンが出てきた事に困惑する。
そして、レモンはおもむろにステージ中央に立つと、大きく息を吸い込み――――

        ♪いちィどォ きィめェたァら あとにはひィくゥなァ♪

――突如歌いだした!
…当然、観客席の人々は何が起こったのかもわからず、ただ目を丸くし呆然としている。
「レモンくん! いけないわ! よけい混乱する!」
困惑するこのえだが、レモンの歌声は桃次郎の耳に届いていた!
「レ レモン…」
無数の脂汗を流し、息子の名を呟く桃次郎。

「とめましょう!」
『バカヤロー!そんな事より救急車だ!! 観客席に医者はいないのか!桃次郎さんをどうにかしろ!!』
スタッフは歌うレモンをとめようとするが、激昂した大崎に一喝される!

「沢口桃次郎って子供なのか」
「すげー演出」
「かわいい♥」
――事態が伝わっていない観客席ではそんな声もあちこちで起こっていた。

       ♪それェがァ お・と・こ・のォ〜 こッころォ いィきィ〜♪

。oO(オレが歌わなきゃ! とうちゃんの歌、歌えるのはオレだけだもんな!
  とうちゃん、キンチョーして 目回しちまったんだ、オレがなんとかしなきゃ!)
レモンは倒れた父の変わりに人々にこの歌を届けようと、汗だくになりつつも必至で歌っていた。

1978/9:2010/04/01(木) 21:42:12 ID:01uryuAU
         オレ プロじゃないけど… とうちゃんじゃないけど…
      かあちゃんにも聞こえるように! とうちゃんの歌が聞こえるように!!

レモンの必死の思いと情熱に、『何か』をゾクリと感じ取るこのえだった。

      ♪それェがァ 男の! それェがァ 男の! いきるゥ みィちィーっ!!♪

歌い終わったレモンはおじぎする。顔を上げると、当然、あっけに取られて静まり返っている観客。

「レモンくん…」
思わず拍手する舞美。
その拍手は次第に大きくなり―― ついにはスタッフからも、観客全体からも拍手が巻き起こった!!
無数の大拍手を受けたレモンは父の言ったとおりだと喜ぶ。『歌』で大勢の人が喜んでくれる事に。


レモンは笑顔を浮かべ、舞台袖へと走り戻っていく。
「とうちゃん! とうちゃん!! とうちゃんの言ったとおりだったよ、みんなよろこんだぜ!」
「そ そうか」
桃次郎はレモンの報告と大きな歓声を聞き、無数の脂汗を浮かべながらも満足そうに微笑む。
「さ、 今度はとうちゃんの番だよ! いつまでねっころがってんだよ、早く!」
「しゃべらないで」
「……なんでよ、大崎さん!
 ねぇ!なんで立たないの!? 今度はとうちゃんの番だろ! ねぇ、なんでさ!」
『うるさいぞ!レモン!』
報告を受け、かけつけた兄・武道にすがりつくレモン。
そんなレモンに桃次郎は苦しさをこらえつつも、微笑みながらも弱弱しい声で話す。
「とうちゃんは……  かあちゃんの所に行って…  歌ってくるわ……」
「何言ってんの! ここで歌ったって聞こえるだろ!?
 それに 今歌わねぇと、みんなとうちゃんの事、知らないままじゃないか!!」
「レ モ…ン」
桃次郎は愛する息子の肩に力なく手を伸ばす。

1989/9:2010/04/01(木) 21:45:25 ID:01uryuAU
「ゴ ゴメンな  最後まで……  プレ…ゼ…ン ト  やれな……く……………………」

今まで何もしてやれなかった事をレモンに詫びつつ、父・桃次郎はこと切れた――……
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「・・・・・・・・・とうちゃん?」
舞台袖にレモンの力のない声が響く。
……そして大崎もまた脱力し、膝から崩れ落ちてしまう。
「桃次郎さん」
大崎の顔にもすでに生気のかけらもなくなっていた――
『とうちゃん!』
武道も悲しみの声をあげると、レモンもようやく事態が分かったのか、大声で泣き始める。

『オレ とうちゃんのかわりに もう一度歌ってくる!』

「だめだ!レモン!!」
再びステージへ向かって走り出すレモンだが、兄に取り押さえられてしまう。
『なんだよ! はなせよ! これじゃ、とうちゃん かわいそーだよー!!』
レモンは兄を振りほどき再び駆け出すも、今度はこのえがレモンを抱きしめて取り押さえる。
「レモンくん!」
「どけよ!」
「ダメよ、ダメよレモンくん!」
「う〜〜〜〜〜〜  とうちゃん……」
このえは涙を流しつつも、優しくレモンを抱きしめながらなだめる。

「………………とうちゃん… オレ…
 また…ぜったいここに来て… 歌うからね  とうちゃんのかわりに、ぜったい……」

このえの腕のなかで泣くレモンは、いつかまた再びここへ戻ってくる事を決意するのだった――…
                                   <続く>

1991/6:2010/04/07(水) 21:19:57 ID:???
STAGE2:10年目の再会


           歌ってのはすげーんだぞ、とうちゃん一人が歌うだけで
          たくさんの人が元気になったり、泣いちゃったりするんだ!

                ――とうちゃんが死んでから…
         おれとアニキはおばさんの家にあずけられたり色々あったけど、
         アニキは高校卒業後、すぐ就職し 今はふたりで暮らしている

                  オレは今、高校一年生
               大スターの夢は、未だタマゴのまま……


―慕路荘―
   ぱん ぱん
亡き両親の位牌の前で手を合わせるレモン。その横顔は成長し、りりしくなっている。

。oO(やっと、とうちゃんに近づける日が来たぜ 大スターへの第一歩だ)

「この衣装と、このマイク! 使わせてもらうぜ! とうちゃん!!」
レモンはすでに父の形見の衣装を着込み、マイクを握り締めていた。



―日本性少年少女快感―
『沢口麗紋です! もーすぐ、もーすぐデビューします!! 以後、お見知りおきのほどをー
 よろしく、よろしくー!!』
衣装を着込み、道行く人々に挨拶と握手するレモン。
「沢口麗紋です、よろしくね」
…しかし、シャイなレモンは前作の主人公とまではいかないものの、
女性の前では赤くなりモジモジしまうのでした。 「女に弱いな、こいつ オレと同じだぜ」(By作者)

2002/6:2010/04/07(水) 21:22:11 ID:???
      親子の血は争えないもので、オレはこの10年、「男の道」を歌い続けてきた
       とうちゃんが「男の道」で勝負していた、オレも今日この歌で勝負する

張り切るレモンを建物の中から見ていた清掃員達は怪訝に呟く。
「おい、ありゃなんだい」
「さぁ、今日のコンテストの出場者じゃねぇのか? 早くから来てずっとああやってるぜ」
レモンは懐から広告を取り出し、またそれを読み返す。
「オレの事、おぼえててくれたんですね 大崎さん」
――今日のコンテストの審査委員長は、あの大崎巌(43)なのだった。
レモンは幼かった頃の記憶を思い出す――…

<以下回想>
「巌さん! ボクもね、とうちゃんみたいになりたいんだぁ」
「ほう! そりゃいいや  …よし! 大きくなったらオレの所に来いよ、面倒みてやる」
はしゃぐレモンを肩車する大崎。すぐそばでは桃次郎もほほえんで2人を見守っていた。
<回想終了>

「…ホントになっちゃったな…
 これまで、どれだけのコンテストに落ちた事か
 ――でも、それで正解だったね 大崎さんにまた会えるんだから
 あー とうちゃんと一緒に、オレの才能わかってくれるの、大崎さんだけだ
 大崎さんが審査委員長なら、もうコンテスト、合格したも同然だね☆」

これまでの不合格通知を出し、もう勝った気でいるレモンはニヤニヤ笑う。
「へへ、このバカなやつらを…」  ビリ
不合格通知を破ろうとしていると、ふと背後から誰かに呼ばれる。
「キミ出場者? もういいかげん中に入ったら? そろそろ打ち合わせがあるぜ」
「ほ――――い  …よし!!  行くぜ! とうちゃん!!」
自分に喝を入れスックと立ち上がると、これまでの自分を捨てるかの様に不合格通知を破り捨てる!

2013/6:2010/04/07(水) 21:22:44 ID:???
「練習バッチリ! とうちゃんのマイクと衣装がオレを守ってくれる!
 あとは大崎さんのムネに飛び込むまで! あー スター街道、まっしぐ・・・・ら」

――着物のままで走るから、衣装が絡みつき勢い余ってスッ転ぶレモンくんでした。
転んだレモンは自分の傷よりも、落としてしまった形見のマイクの心配をする。
「あ〜〜あ 傷ついちまった… ごめんよ、とうちゃん なんてこったァー」
息を吐きかけ、マイクの汚れを磨くレモンに係員が声をかける。
「キミ、出場者の人だね まっすぐステージに行って!みんな集まってんだよ
 すぐに段取りの説明があるから急いで!」
『ステージ』という単語に息を飲み、緊張するレモンだった。


―コンテスト会場―
出場者を誘導する係員。
「舞美ちゃんってサイコーだよなー」
「絶対合格して同じ事務所に入るぞ!」
ステージ上のアイドルを虎視眈々と狙う男性出場者達。そしてレモンも会場に入ってくる。
レモンは10年ぶりにあがるステージに興奮する。スタッフもたくさんいる、この中に大崎さんも?

。oO(大崎さん… オレを見てなんて言うかなァ
  「おー レモンくんか、大きくなったなぁ」って言うかな… へへ、てれちゃうな…)
妄想に浸るレモンはつい言葉と動きが出てしまう。
「ホラ、このマイク懐かしいでしょ!
 ピカピカにして、いつも大事にしてるんですよ! 見て下さい!」
目の前に大崎がいるわけでもないのに、ついマイクをズイッと突き出した為、
マイクがこちらに向かってきた女性アイドルの鼻を押しつぶす!
「なにすんのよ! ハナが…!?」
『 あ っ ! 』
思わず大声を出してしまうレモンとアイドル。思わず真っ赤になったレモンは後ろを向いてしまう。
「ひ 広川」

2024/6:2010/04/07(水) 21:24:53 ID:???
「! その着物! そのくせっ毛! レモンくんね! レモンくんでしょ!
 うわー、久しぶりィ! 小学校以来ねー!」

「や やぁ… 久しぶりって感じしないなぁ、いつもテレビで見てたからさ」
――そのアイドルはかつて同級生だった、広川舞美だった。再会を喜ぶ舞美にレモンは照れてしまう。
「デ… デビュー競争は負けちゃったね… へへへ」
舞美はレモンがいつの間にかテレ屋になっている事にきょとんとする。 思春期でござる。
「ね、見て!見て! 新曲の衣装なの、カワイイでしょ!?」
舞美は今着ているステージ衣装をレモンに見せ付けると、途端にレモンの目の色が変わる!?

「毎日パンツかえてるか――い!」
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こともあろうに、天下のアイドルのスカートをめくり上げるレモン!まさか父の癖が遺伝するとわ!
――当然、他の出場者やスタッフなど大勢いるので、この出来事は多くの目撃者を生み出す!
中には舞美のファンもいるようで、当然彼らは激怒する!
「こ こ こ これは衣装用の下着だから、毎日かえるとかかえないとか そーいう…」
真っ赤になってレモンから距離を取る舞美。

――やってしまった!あれほど大崎さんに「ああいう所を見習っちゃいけない」と言われたのに!
。oO(短いスカートを見ると、とっさに手が出ちまう… こ、これもとうちゃんの血なのか…!)
頭を抱えて後悔&苦悩するレモン。
「こんな所、大崎さんに見られたら… 麗紋のバカ 麗紋のバカ!!」
自分の頭を殴るレモンの背後に、数人の怒りの人影が忍び寄る。助けてウイングマン!ヴァンダー!
『このやろー! 舞美ちゃんになれなれしい!』
舞美のファンに襲われるレモンを、舞美は汗を流して呆れて見ていた…。


――その直後、舞美の後ろのドアから只ならぬ雰囲気を漂わせた、サングラスとヒゲの男が現れた。
舞美はその男に気がつくと深々と挨拶をする。男はゆっくりとステージに歩いてゆく。

2035/6:2010/04/07(水) 21:25:18 ID:???
…ちなみに、レモンはステージ上で今も大絶賛袋叩かれ中。
  ゴトッ
ヒゲ男の足元にレモンのマイクが転がる。
「なんだかわからねーけど、オレが悪かったよォ」
レモンにまた殴りかかろうとする出場者だったが、ヒゲ男に気がつき殴るのをやめた。
スタッフ達もヒゲ男に気がつきそちらを向く。

「やっべー マイク落としちゃった…」
レモンがマイクを拾おうとすると、ヒゲ男がマイクを拾い上げ、しげしげと眺める。
「……………………これはボーズのか」
「はい! とうちゃんのカタミなんです、ホラ この衣装も」

衣装を広げてヒゲ男に見せるレモンだが、その背後ではスタッフ達が不安の表情を浮かべていた。
「お おい 何話してんだろ」
「あのガキまずいぞー、あの人怒らせたら芸能界で生きていけねー…」

「最近のシロウトはナマイキだなぁ、自分のマイクを使おうってのか」
「そ そーいうんじゃなくって… とうちゃんといっしょにステージに立ちたくて…」
「フン とうちゃん、とうちゃんか…… ――――で、『男の道』でも歌うつもりか?」
まさか父の歌を知っている事にレモンは驚きつつも感激する!

…その時、不安になったスタッフがレモンに囁きかけた。
「おいキミ、何したんだ」
「大崎さんを怒らせると出場できなくなるぞ」

『え!? こ この人があの大崎さん!!』 変わっちゃったな〜

レモンの目の前にいる、この無愛想なヒゲ男はあの大崎巌だった!
かつてのやさしい大崎さんのあまりの変貌ぶりにレモンはすさまじく驚く!

2046/6:2010/04/07(水) 21:25:38 ID:???
しかし……
「帰んな、ボーズ 選曲変えて出直して来い」と冷たく言い放つ。
「大崎さん、ボクですよ!レモンですよ!! 『男の道』はとうちゃんの歌で…」
「だから?」
「だからって…」
「『男の道』を歌う? 聞きたくねーな」
「あ あれ… ど… どうしたんですか、大崎さん…?
 『男の道』あんなに好きだったのに… どうして! 今の言葉、とうちゃんが聞いたら…」
見た目だけでなく、興味も性格も全くの別人と言っていいほど変わってしまった大崎に
レモンは冷や汗を浮かべ戸惑う。
「ボーズの親父は死んだんだ
 そんなにとーちゃんが恋しいなら、家に帰って墓参りにでも行って来い!  ホラ」
大崎はレモンを振り向きもせず、冷たく言い放つと形見のマイクを放り投げる。
  ゴッ
ショックを受けたレモンの前にマイクが落ち、カラカラと回る――…
「いつまでも、死んだモンの物なんか大事にしてんじゃねーぞ」

「……………ごめん、とうちゃん… スターへの道が遠くなっちゃうかもしれねぇや……
 で…… で……  で も オ レ !  ゆ る せ ね ぇ !! 』

父の形見と遺志を冷たく扱われたレモンの怒りは爆発し、大崎を思い切り殴り飛ばした!!
「…もうダメだ!」
レモンの暴行にスタッフは全員青ざめてしまう!
サングラスが落ち、『鬼』の目でレモンを睨みあげる大崎だった――…    <続く>

2051/5:2010/04/08(木) 21:38:05 ID:???
STAGE3:とうちゃんの目


10年ぶりに再会した大崎さんは全くの別人と言っていいほど身も心も変わり果てていた。
父の形見と意思を無下にされたレモンの怒りは爆発し、大崎を殴り飛ばしてしまい会場は大混乱に!


殴り飛ばされ、サングラスを飛ばされ、さながら鬼の様な目でレモンを睨みあげる大崎。

『な 何て事を! 大崎さんを殴るなんて!
 すいません!大崎さん、あの無礼な奴は失格にしますから!! ここはどうか気を静めて!』

頭を抱え、真っ青になって叫ぶスタッフは必死で大崎をなだめようとする!
「その人は… その人は大崎さんじゃない・・ 大崎さんは そんな、そんな…」
殴り飛ばしたレモンは大崎の変わりように愕然となり、ブツブツと呟いていた。

「いいか、覚悟しろよ このコンテストで歌う事はおろか、この芸能界で生きていけるかどうか…
 これ以上大崎さんを怒らせたら、このコンテスト自体つぶされるかもしれないんだぞ…」

スタッフは青ざめつつレモンをおどしつける  …が、レモンは聞いているのかいないのか微妙だ。
「い いくら大崎さんでも 大事なとうちゃんの形見のマイクを… 命の次に大事な、オレの…」
他のスタッフはレモンがマイクを大事そうにしているので注目してしまう。
「よっぽど大事なんだろうな、あんな古そうなマイクを…」

「…でも、ボディーの模様がずいぶん豪華そうだぜ     ――――ん!? 違うぞ!!
 単なる模様じゃないぞ! メッキのハゲ方や、握りの微妙なへこみが模様に見えるのか!!
 あいつ、並な使い方してねぇぞ! あんなになるには、毎日でも握ってないと…!」

スタッフの驚きの声を聞いた大崎は一瞬、ピクリと反応した。
「――――命の次に大事な“モノ”か そんな骨董品大事にして、ガラクタ屋にでもなるのか?」
大崎の見下した態度と言葉にレモンはガバッと立ち上がり、また殴りそうになる!

2062/5:2010/04/08(木) 21:38:35 ID:???
『待って下さい! わたしがかわりにあやまりますから!』

――しかし、レモンと大崎の間に舞美が割って入り、レモンの暴行は未遂に終わった。
それだけではなく、なんと舞美は大崎に向かって土下座する!

『レモンくんを! レモンくんを許してあげて下さい!!』

…大崎は舞美を見下ろすと、何も言わずその場を後にした。
スタッフ達はあんな奴(レモン)の為になぜ舞美が土下座までしたのか理解できなかった。
「広川、おまえ… あ 大崎さん、待っ……」
レモンは大崎を呼び止めるも、大崎はサングラスをかけ無言で扉を閉めた。

我に帰ったコンテスト責任者は舞美のこんな所を見せないようにとスタッフに一喝し、
出場者達を控え室に連れて行くよう叫びだした。
レモンは舞美に呼びかけるも、舞美はこちらに顔を見せない。
「どうして殴ったりしたの? そんな事しなければ… 憧れてたんだよ レモンくん
 毎日、学校で教卓をステージにして歌ってたレモンくん
 自分のやりたい事は絶対あきらめるなって教えてくれたレモンくん
 そして、お父さんのかわりにステージに立ったレモンくん… いつも輝いてた
 必ず、本当にプロになる人だと思ってたんだよ
 …だからわたしもガンバらなきゃってここまで来たのに
 レモンくんと同じ世界で生きるのが夢だったんだから…
 ――大崎さんに甘えてるんじゃないの!?」
顔を見上げ、キッとレモンを見据える舞美。 …図星だったレモンは何も言えなかった。
そんなレモンの衣装を舞美はグッとつかむと――

「もう  待たせないでよね」

涙をボロボロこぼし、つぶやくように言うと控え室へと駆け出した。
…ちょうどその時、舞美のマネージャーが舞美とすれ違い、責任者に何があったのか聞こうとする。

2073/5:2010/04/08(木) 21:39:08 ID:???
「あの〜〜 舞美ちゃん、どうかしたんですか?」
『どうかしたのじゃないよ! キミ、マネージャーだろ!? ちゃんとついてろよ!!』
舞美のマネージャーに八つ当たりする責任者だった。
――そしてレモンは…… 舞美の言葉に決意を固めていた。



―第一控え室(大崎の控え室)―
「あやまりに来たのか? そんなつまらねー事なら帰んな」
「いえ… 残念ながら違います  あやまりません! 悪いとは思っていませんから!
 ――だけど、どうしても大崎さんにオレの歌を聞いてもらいたいんです
 子供の頃からそう思ってたし、歌手になる時は一番に大崎さんに、って」
「ボーズ、失格なんだろが」
「わかってます! でもオレ、歌手に今すぐなりたいんです! オレを待ってる人がいるんだ!!」
「だから?」
「だからって… だから、オレはおやじのような歌手に…」
ふと、今まで座っていた大崎が立ち上がった。
「ボーズ おやじのようなって、どんな風な歌手だ」
「…………………それは、ビッグな…」
話にならんと判断した大崎は控え室をあとにしようとレモンの横を通り過ぎる。
「待ってくだ………!」
「桃次郎… 確かにあいつは本物だった
 あの男を初めて見たのが、ある作曲家の家だった
 部屋の中には、いかにも売れそうにない一人の男がいた
 ただ、ガムシャラに歌っているようだった…
 ガラスの向こうで音は聞こえない、何を歌っているかも分からない ただ…
 突き刺さる視線を感じる。温かくも激しくもある、必死な目
 オレもその目を見返していた… すると!」
――若かりし頃の大崎の耳の奥で声が聞こえてきた。どんな歌かがよく分かる!

「ふるえた こいつは、『本当』の『本物』に出会えたと  桃次郎は『目』で歌っていたのだ!」

2084/5:2010/04/08(木) 21:39:34 ID:???
「目?」 意味がよくわからず、思わずオウム返しに問うレモン。
「あの男は 必ずそこにいる全ての人を見て歌った しかし、その姿勢は崩さず、正眼のまま…」
「そ そんな、ムリだ」
「ムリ? 確かにな、ボーズには到底ムリな事
 全ての人の目を見て歌える奴など、桃次郎の他にはいない! その桃次郎が歌っての『男の道』だ
 歌いたいなら勝手に歌えばいい、だが オレは聞かん」
「オレの『男の道』だって10年歌いこんでるんだ とうちゃんに少しでも近づけるように、毎日…」

「断っておくが、桃次郎が死に オレにとってこの世で最強の輝きが消えたのだ
 感動する心を失い、一滴の涙も残らず枯れ… そして、オレは光を閉ざした」

大崎の真相を聞き、今まで以上のショックを受け固まるレモン!
…そのまま大崎は控え室を出て行った。
。oO(広川が待ってる 天国でとうちゃんが待ってるのに、オレはどうすればいいんだ…)
迷うレモンはしばし考えると、拳をぎゅっと握り締める。
そして自分を励ますかのように、『男の道』の一小節をつぶやくように歌いだす――
「いちィどォ きィめたァら 後にはひィくゥなァ」


―その頃、外では…雑談する少女達がふと歌声を耳にした。
「誰か歌ってる! ねぇ、これ舞美ちゃんじゃないの?」
「え? …違う、舞美ちゃんはこんな声じゃないけど… きれいな声ねぇ、プロかな?
 それとも、今日の出場者かな?」
「鈴の音色みたいな声ね、透き通ってるみたい」
声の聞こえてくる部屋の窓にコソコソと近寄る青年少女達。
「きっと今日のスペシャルゲストだぜ!」
「さーて、どんな娘が歌ってんのか…      ひょっとしてすっげーブスだったりして」
窓をこっそり開けると―― そこには歌っているレモンの姿。
レモンは覗かれているのも気づかず、一生懸命歌っていた。

。oO(一度決めたら後には引くな! それが男の心意気
   ――そうだ、この歌のように後に引く訳にはいかない! ここまで来たんだ!!)

2095/5:2010/04/08(木) 21:40:02 ID:???
――その歌声は控え室から立ち去る大崎の耳にも届き、その声に思わず目を見開く大崎だった。
「こ この声は…」

2101/6:2010/04/09(金) 20:57:26 ID:XHK9NTEs
STAGE4:最悪のステージ


―コンテスト会場ステージ―
色んな若者が次々と歌う中…審査委員長の大崎は寝ていた。見かねた隣の男が起こそうとするが…
「ムダだよ、興味がない限り、絶対起きないよ」
男の隣の初老の男が男を止める。

――大勢の観客が集まる観客席の後ろには、失格になったレモンが出入口の前にたたずんでいた。
レモンは大崎の言葉を思い出す…『歌いたきゃ歌え、だがオレは聞かん』と――

。oO(こうなりゃ、何が何でも歌わないと…
   正式参加はすでにできない、全員のステージが終わった後で飛び入りするしかない!)

そう考えていると、ちょうど司会者から全エントリー終了の旨が知らされる。
。oO(よし、行くぞ!)
今まで考え事をしていた為、閉じていた目を開けステージに向かおうとすると――
いきなり無数の人々がこちらに向かって突進してきた!!!!
《ただいまより15分の休憩を取ります …ああ!慌てないで!!
 その間販売される舞美ちゃんグッズに十分の在庫がありますから――――》
…そう、これらは全員コンテスト観客兼広川舞美のファンだったのだ!
大勢の人々に踏み潰されるレモン! …ああ!頭が踏み潰されて平べったく!! 
「いつつつつ…    ん?」

なんとかその場を逃れたレモンだったが、目を開けると洋服を着たブタが突進してきた!!

ブタのラリアットを喰らったレモンは哀れ、トドメを刺されてしまった…。
《サイン会も全員にちゃんと回るまで行いますから、慌てずに――》

2112/6:2010/04/09(金) 20:57:54 ID:XHK9NTEs
…観客席には、もう誰もいなくなり、スタッフも舞美の人気を改めて実感する。
審査員は別室で審査するため、スタッフの誘導に従いその場を離れようとする。
「おい、大崎さんを起こして連れて来てくれ、頼んだぞ」
「そ そんな〜」
責任者は若手スタッフに大崎を押し付け、自分もその場を離れる。
…その頃、舞美はレモンがどうなったのか、少し不安になっていたのだった。
「さぁ、舞美ちゃん サイン会よ」


一方、レモンは予想外の大ダメージを受けつつも、気合で立ち上がっていた。
がんばれレモン!お前には健太や弘紫が陰ながら応援しているぞッ!
「くっそ〜〜 負けねーぞ、オレは歌うんだ…… ん?」
ステージを見ると、その前には(まだ寝ている)大崎が残っていた。

『やったぁ! 大崎さんがいてくれりゃ充分だ! 大崎さん、沢口麗紋 歌いに来ました!!』

大喜びでステージへ駆け出すレモン! その声に舞美もレモンが戻ってきた事に喜ぶ!
「……あの人、あの時の…」
外へ出る観客の最後列の少女が振り返る。その少女はさっきレモンの歌声を聴いた少女だった。

その頃、舞台袖では責任者がレモン再襲来に驚いていた!
「あのガキ! まだこんな所にいたのか!! また大崎さんを怒らせちまう!
 ――くそ! とっつかまえてやる!」
レモンを捕獲しようと駆け出す責任者だが、ふと名案が浮かび足を止める。
「ん 待てよ… あれだけ言ってもノコノコ出てきた奴だ
 外に出しても安心できんな ――だったら、徹底的に歌えなくしてやった方が…」

ステージに飛び乗るレモン。
「行くぜ、とうちゃん!」
いざレモンが歌おうとすると、突如頭上から大音量のBGMが鳴り響いた!! これはもう『騒音』だ!

2123/6:2010/04/09(金) 20:59:35 ID:XHK9NTEs
―同時刻、調整室―
「マイク切ってあるな?
 (フッ、どうだ マイクは切ったし、この大ボリュームのBGMの中歌えるか?)」
責任者の指示でレモンが歌うのを妨害中。
『これじゃあ、レモンくんがかわいそう!』
――突如、調整室に舞美がサイン会を放置し乱入してきた!
「BGMとめて下さい! レモンくんに気持ちよく歌わせてあげて!!」
…しかし、舞美が何と言おうとレモンを歌わす事はできない。もしまた大崎が怒ったら…
「広川」
「なに?」

『 毎 日 パ ン ツ か え て る か ー い 』
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何を思ったか、こんな時にスカートめくりをするレモン! BIG SERAVICE!!
作者曰く、「お好みのアングルでお楽しみ下さい」との事!皆さん、堪能しませう!( ゚ω゚)-3 フンス
「キャ――――ッ! なんなのよ!真剣に心配してんのに!!」
当然慌ててスカートを押さえて真っ赤になる舞美に対し、レモンは――
「オレさ、なんかノッてきたんだ わくわくしてとまんねーんだ!」
この最悪のステージで大ピンチの割には妙に明るかった。
。oO(レモンくん… あなたって、ピンチをエネルギーにしちゃうのね…)
レモンは舞美にサイン会実行を促し、心配いらないと安心させる。

。oO(客席はカラッポ、耳が痛くなる程のBGM 最悪のステージだろーが、オレは―― 歌うぜ!)

レモンは集中し、大きく息を吸い込むと『男の道』を力いっぱい歌い始めた!

         ♪いちィどォ きィめたァら あとにはひィくゥなァ!!♪

――その声は…さながら光線か疾風のように大崎の脳を貫いた!
。oO(声が走ってるじゃねーか)
その声にピクリと反応した大崎は片目を開けて様子をうかがった。

2134/6:2010/04/09(金) 20:59:55 ID:XHK9NTEs
―会場の外―
未だ舞美のサイン会が始まらない事に、ファン達のあちこちからブーイングが上がっていた。
『サイン会はどうしたァ!!』
『舞美ちゃんを出せ――――!!』
大騒ぎするファン達の頭上を、光線の様なレモンの声が通り過ぎると、一瞬にして静まり返った!

―会場内―
出入口そばに、たった一人残ったあの少女はレモンの歌声に感動していた。

「なんて… 高い声なの? あの時以上に
 女神の歌声って… こんな感じかしら ああ、今度は天使のささやき――――
 …でも、男の人の力強さも感じる!
 玉がころがるように、自然に 自然に 耳の中に歌声が入ってくる…」

――その声は責任者も聞こえていた。
「なんだ、このバカでかい声は!? オイ! マイクを切れって言ったろ!! 聞いてんのかよオイ!!」
マイク担当のスタッフに怒鳴り散らすも、そのスタッフまでレモンの声に陶酔していた。
責任者は舌打ちしつつ、マイクのスイッチを確認すると―――― 
『なにィ!? 全部切れてるじゃないか!!』
さらに入り口を見ると、まるで夢遊病者のような目をした観客がゾロゾロと客席に戻ってきていた!
まさかの異常事態に、責任者は驚きを隠せず困惑し始めていた…
熱唱するレモンの背後には、父・桃次郎のオーラが重なって見えていた。
。oO(毎日歌ってきたんだ、子供の頃からずっと その全てを今!!)

          ♪くやァしィ なァみだァはァ こぶしでつゥぶゥしィ♪
               ♪男勝負にィ 命をかけェるゥ!♪

――レモンの気迫が拳や顔となり、大崎へと襲い掛かる!
。oO(この気迫、表現力、声量 桃次郎そのものだ ――しかし、10年前と変わらないこの声は…)

              ♪風がァ 雨がァ 体をつらぬくがァ!♪

2145/6:2010/04/09(金) 21:00:10 ID:XHK9NTEs
レモンの歌声に魅入られたのか、いつの間にか騒音BGMの音量は下がり、スポットライトが点いた!
「なんで照明がついてんだァ!」
またも予想外の出来事に、責任者はそばにいたスタッフのヘッドホンを奪い取り照明に通話する。
《照明!! 照明!!》
「(なんだ、うるさいな…)ハイ? なんですか?」
《指示も出してないのに、なぜ照明を当てる!》
困惑する責任者の声に、照明担当者は思わずバカにしたような目をすると――
「あんた、耳ついてんの? この歌に照明当てなきゃ、バチ当たりますよ」
…そう冷たく言い放ち、責任者は呆然と立ち尽くした――…

          ♪それェがァ! おとォこォのォー  生きるゥ道ィィ!!♪ 

。oO(『男の道』今のオレの立場と同じだ… 
   とうちゃん、どんな苦労してもこの歌を愛し、歌い続けた訳がぼんやりわかりかけてきたよ
   とうちゃん、いい歌だな 『男の道』って)
レモンはこれまでの自分と『男の道』を重ね、ついに熱唱を終える。
全力で歌い終えたレモンは一息つき、そっと目を開けると――

「こ、これは」

魅入られた舞美のファン達が全員観客席に戻り、自分に向かって何かを叫んでいる所だった。
騒音BGMのせいで一時的に聴力を失っていたレモンは声が聞き取れず、文句なのかと不安になる。
次第に聴力が回復し、そしてレモンは観客の声の内容を知る――

『よかったぞー!』 『最高!』 『アンコール!アンコール!』

文句を言う人は誰もいなかった。それどころか自分に向かって歓声を送ってくれている!!
。oO(喜んでる! 喜んでくれてるんだ! こんなに、こんなに! やっぱ歌ってサイコーだ!!)
喜びを噛み締めるレモン。
…そして、サイン会がお流れになったにも関わらず、舞美もまた嬉しそうだった。
。oO(やったね レモンくん…)

2156/6:2010/04/09(金) 21:00:30 ID:XHK9NTEs
――突如、大崎の右手が上がった!
大崎の右手が上がる時、それは何かが起こる前兆なのだ。これを見た責任者は嫌な予感を感じた。
。oO(お 大崎さんが起きた… ただ事じゃないぞ、得意の新人つぶしか、それとも…)

「もう一度だ、ボーズ 今度は違う歌を歌え これから特別審査を行う」

――しかし、レモンは『男の道』以外の歌を知らなかった!

「ボーズの相手は 広川舞美だ、不服あるまい!」

『ええ!?』
まさかの事態に衝撃を受けるレモンと舞美だった!            <続く>

216名無しさん:2010/04/10(土) 21:13:49 ID:fcro3KG2
STAGE5:麗紋VS舞美


レモンの気迫の熱唱を聞いた大崎は特別審査を行う事にした。対戦相手は―― 幼なじみの舞美!
大崎はレモンと舞美、責任者他スタッフを数名連れ、控え室で説明をしていた。

「勝った方はオレがプロデュースする 負けた方は徹底的につぶす 審査基準は『拍手』だ
 ボーズにはハンデをやろう、一人からでも拍手をとったらお前の勝ちだ」

「たった一人でも拍手したらオレの勝ち… いくらハンデでも、甘すぎじゃあ?」
「ボーズ、客はみんな舞美のファンだ 勝算はあるかな?」



―舞美の控え室―
大崎の提案にスタッフは愚痴っていた。
「一体何を考えてんだか、こんな勝手な事やってばかりいるから敵が多いんだ、あの人」
「他の審査員は怒って帰っちゃったし」
「大崎さんなんかに頼まなきゃよかったんだ」
「――でも、あの人の本物を見る目は確かだからな…」
ブツブツ文句を言うスタッフに対し、レモンと競う事になってしまった舞美は内心複雑だった。

。oO(――もしかしたら、レモンくんのデビューをジャマする事になっちゃう…
   わたしが放棄すれば… 放棄なんかしたら、やっぱり大崎さんが黙ってないだろうな
   レモンくんのあのきれいな歌声、他にあんな高い男の人の声は聞いた事ない
   わたしが負ける事だって十分考えられるわ)

その時、レモンが詰め所に入ってきた。
「レモンくん!」
思わず椅子から立ち上がってレモンに見つめる舞美。
。oO(勝つにしろ、負けるにしろ、憎みあう事にでもなったら……)
――――だが、舞美の不安をよそに、レモンは意外にもにっこり微笑み舞美の肩に手を置いた。

2172/6:2010/04/10(土) 21:14:16 ID:fcro3KG2
「大崎さんに世話してもらいたいけどさ、勝ち負けなんか気にしないでやろうよ!
 歌、歌えりゃいいじゃん!  ――それだけさ」

その一言で舞美の緊張は解けたようだ。舞美はレモンに今度はどんな歌を歌うのか尋ねる。
「そいつはお楽しみに オレの数えきれないレパートリーの中から、すげーの一発かますぜ!」
にこやかに答えるレモン。   …ん? レモン、お前 前回のラストで何て言った?


レモンは控え室のドアをそっと閉め退室すると―― いきなり頭を抱えてヘコみ始めた!
。oO(ああ〜 ホントはオレ『男の道』しか知らないんだよ〜
  違う局ったって、何歌ったらいいんだァ )  どーしよー…
――――案の定、舞美を困らせないようにと見栄を張っていたレモンだったw
自分でもなぜ舞美の所に言ったのか分からず、精神分裂を疑いつつ、トボトボ廊下を歩く。

…レモンが衣裳部屋の前を通りかかった時、ドアがスッと開き何者かに引きずり込まれた!!
「し〜〜…」
何者かはレモンに騒がないように指示する。…匂いからすると、どうも女性のようだ。
「だ 誰だ!?」
「わたしはね、昔っからあんたのファンなの 広川舞美なんかに負けちゃダメよ
 ――でも、その着物じゃちょっとダサいから…」
『うわ! 何すんだ!!』
「イメージってもんが大切なのよ、もっとこういう衣装で…」
『そ そこは! ヒィ〜〜〜〜!』  
…な、何が起きているのだろう… レモン、おねーさんに貞操を奪われるのか!? (*´Д`)ハァハァ 



―特別審査ステージ―
《お待たせしました、突然の都合により特別審査を行います
 まずは、広川舞美ちゃんの新曲『水色のシャポー』》
大崎の都合に振り回され、観客は怒って全員帰ってしまうと思いきや、観客席は超満員!
きっとみんな舞美の歌を聞きたいだけだろう。

2183/6:2010/04/10(土) 21:14:40 ID:fcro3KG2
ステージに舞美が登場し、ファンや親衛隊は歓声を受けつつ、歌い始める舞美。

         ♪あなたとハズんだあァの日ィ 空は ブル――スカーイ♪

…その頃、おねーさんに弄ばれていたレモンは…演歌歌手とは違うステージ衣装を着せられていた。
「一体さっきのは何者なんだ、こんなヘンな服着せやがって」   オレはピーターパンか
ステージの舞台袖で舞美の人気に改めて感心するレモン。

「負けた者は徹底的につぶす みんな舞美のファンだ、勝ち目があるかな?」

――レモンの脳裏に大崎の言葉がよみがえる。
「拍手ひとつでいいんだ …でも、『男の道』を歌わずにそれができるだろうか…?」
不安になるレモンだったが、逆に舞美はイキイキと歌っていた。
。oO(ああ レモンくんのおかげでこんなにリラックスして歌える…)

       ♪テュッテュッテュッ ラァ  みィズ イィろの シャ ポ―――♪

ちょっと失敗してしまい、ベロをちょこんと出して愛嬌を振りまく舞美。
「なんだァ? すげー音程がはずれたぞォ、これじゃファンもガッカリ」
苦笑するレモンだったが、予想に反して観客席はさらに盛り上がる!!
「う うそ 一段と客の声援が大きくなった…」

「あの娘は自分自身の事をよーく知ってるのね」
――突如レモンの背後から女性の声が聞こえた!
「あんた、さっきの!」
振り向こうとするレモンだったが、女性は振り向かせず人のステージを見るのも勉強、と諭す。
「うまく歌えないとこも、堂々と歌っちゃう 高望みはしないの
 その結果、かえってファンは音がはずれたりする所がカワイイとか思っちゃうのよ」
女性のアドバイスを受けるが、まだレモンにはその事が理解できないでいた。

そんな中、準備担当スタッフから声がかかる。
「沢口くんは何歌うの? カラオケ用意するから」

2194/6:2010/04/10(土) 21:15:11 ID:fcro3KG2
《はい、舞美ちゃんでしたァ さぁ、続いては先程飛入りで『男の道』を歌った沢口麗紋くんです》
舞美が歌い終わり、司会のアナウンスが流れる
――が、この時点ですでに観客席からもっと歌わせろだの、帰ろうだのブーイングが飛ぶ!
「ごくろーさん」
「今度はちゃんとしたマイクで歌いなね、はい」
舞美からマイクを受け取り交替するレモン。

《――曲は……  ?    水色のシャポーです》

『ええ!?』
『 な ん だ っ て !? 』
まさか今発表したばかりの舞美の新曲を選んだ事に、舞美と舞美のファンは驚く!!
。oO(『男の道』以外で知ってる曲っていったら、今聞いたこの曲しかないんだ
   歌詞がわかんないけど―― 歌うしかない!)
一か八か決意するレモンをよそに、水色のシャポーの前奏が流れ始める――――

         ♪キミとォ シロォミィの 日の丸ベントー ブースカー♪

Σ( Д )    ゚ ゚ ななななななんじゃこりゃああああああ!!!???
思いっきりメチャクチャな歌詞に、当然ファンは 大・激・怒 !!!!
。oO(ゲゲッ いきなりまずい反応! やっぱりこういう時は広川のように踊りながら歌うべきだな)
作戦を変更し、メチャクチャな歌詞に加え、メチャクチャな振り付けで踊るレモン!
――もちろん、観客席は全員、今にもレモンに襲い掛からんとするほどの大ブーイング!!

…しかし、その大ブーイングの中、たった一人… あのそばかす少女だけ真面目に聞いていた。
。oO(――さっきの演歌より、声が合ってるみたい なんで最初からポップスにしなかったのかしら)

            ♪チンチンチン ア―― 水色ォーのシャポー♪

「ひどい、ひどすぎる!音程が狂う所までマネして!」
「やめさせろ!バカにするのも程がある!!」
大激怒しているのはファンだけではなかった。あまりにひどさにスタッフまで激怒している!

2205/6:2010/04/10(土) 21:15:33 ID:fcro3KG2
観客とスタッフを敵に回してしまったレモンは、スタッフに強制的に退場されていった…
「す すごい…」
…しかし、当のマネされた舞美は―― レモンの才能に驚いていた。

「勝負あったな、ボーズ お前の負けだ」

拍手の一つももらえなかったのを確認した大崎は審査員席を後にする。
『待ってよ、大崎さん! ひどいですよ、オレ『男の道』しか知らないのに!
 どうして『男の道』で勝負させてくれないんですか!?』
「歌を一つしか知らねーでプロになろーってのがあまいんだよ」
「う… せめて『男の道』の、オレの『男の道』の感想を聞かせて下さい!」
「――確かに桃次郎にひけを取らない『男の道』だった
 …だがな、オレは同じものには二度は感動せん!
 言っておくぞ、ボーズ 芸能界に出てこれても… オレがつぶしてやるからな」

大崎とレモンのやり取りを物陰で聞いていた舞美。
「ちがう… みんな分からないの? この曲は新曲よ、レモンくんは今日初めて聞いたはずなのに
 メチャクチャなダンスだったけど、ちゃんとリズムにのってたし
 なにより メロディーを完璧にコピーしていたのよ、一度しか聞いてないのに
 あのきれいな高い声 あのリズム感 レモンくんが水色のシャポーをちゃんと覚えていたら…
 わたしは完ペキ負けていたわ」

レモンの隠れた才能に戦慄を覚える舞美はレモンに駆け寄ると泣きべそをかきながらお詫びする。
「ごめんね、わたしがレモンくんのデビュー ジャマしちゃうなんて」
うつむいていたレモンは急に舞美に振り向くと――――
  んべっ☆
アカンベーして舞美のウケを狙うが… 当然、受けない。
「泣き虫だなァ、またみんなの前でハジかく気か?
 喜ばなきゃ、大崎さんにプロデュースしてもらえるんだからさ
 ――オレはさ、また一からやりなおせばいいさ  じゃあな、また芸能界で会おうぜ」
ウインクし舞美の前から立ち去るレモン。そんなレモンを泣きながら見送る舞美だった。
「レモンくん… あなたって人は」

2216/6:2010/04/10(土) 21:15:50 ID:fcro3KG2
――レモンは何事もなかったかのように会場から出ると… やっぱり凹んだ!! 見栄っ張り!
「あー 拍手の一つくらい、取れるとおもったのになァー」 _| ̄|○lll

   パチパチパチパチ
――拍手だ!! それもすぐ目の前で!
凹んでいたレモンは突然の拍手に顔を見上げると、そこには女性が立っていた。

「おもしろかったよ、レモンくん」

レモンはこの声に聞き覚えがあった。衣装を強引に着せたり、アドバイスしていた女性だ!
開口一番、怒鳴りそうになるが、女性のスカートに気がつきレモンの手が伸びるッ!!
『毎日パンツかえてるかーい!』
   が し 
――しかし必殺のデルタ・エn …もとい、スカートめくりは腕をつかまれ未然に防がれた!!
Σ(;゚д゚) そんなバカな!誰だ、このおねーさんは!?

「何から何までお父さんにソックリなんだから…
 ある時はナゾのスタイリスト またある時はかげの声 しかしてその実体は――――」

キューティーハn …ではなく、元アイドル歌手の 秋 野 こ の え だった!
「キミをスターにしてあげる」
レモンの腕をキリキリと締め上げつつ、微笑むこのえだった。   イタイイタイ    <続く>

2221/4:2010/04/11(日) 21:00:46 ID:x5IJd6tA
STAGE6:レモンの大切なもの


10年ぶりに秋野このえと再会したレモンはこのえから説明を受けていた。
「そーか、あんた とうちゃんの初ステージの時いた、アイドルの… よくオレの事おぼえてたね」
このえは10年前、レモンが桃次郎の変わりに歌った事をきっかけに注目していたのだ。
「あんただけだ、オレの才能わかってくれるの!」
喜びのあまり、このえの手をがしっと握り、無駄足にならなかった事を喜ぶレモン。

「見てなさい、広川舞美なんか足元にも及ばないよーな 売れっ子アイドルにしてあげるわ」
――次に出たこのえの言葉に思いっきりスッ転ぶレモン! ちょ、ちょっと待て!!『アイドル』!?

『デェ――――!? なんでアイドル!?』

オーバーリアクションで驚くレモン!
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「ジョーダンじゃない、とうちゃんのように演歌歌手になるんだ!」
大波荒れる海をバックに意気込むレモンに、演歌を歌って楽しいか問うこのえ。
「楽しい? なんでオレが楽しくなきゃいけないのさ!
 みんなが喜んでくれれば、それでいいじゃないか!」
レモンの答えに思わずレモンのオーバーリアクションをマネしつつ驚くこのえ!
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「――ナンチャッテ そんな事だと思ったわ
 今のままじゃ、スターはムリね あんたにはとっても大切なものが欠けてるわ
 何が欠けてるか、わかったらここに来なさい 答えはこの街の至るところに転がってると思うよ」
そう言ってこのえはレモンに『オータムプロ 秋野このえ』と書かれた名刺を差し出した。



父のステージ衣装に着替え、会場をあとにしたレモン。
「大切なものが足りない」…この言葉をずっと考えながら歩くが意味が分からない。

2232/4:2010/04/11(日) 21:04:58 ID:x5IJd6tA
みんなに喜んでもらい、一生懸命歌うだけではダメなのか?
意地悪しないで教えてくれりゃいいじゃねぇか… そう心の中で愚痴りながら歩くレモン。
…とりあえず、演歌の道はは諦めないが「大切なもの」を探してみようと決意するレモンだった。



―原宿駅・歩行者天国―
――時間はあっという間に流れ、もう夕日が沈み始めていたが…「大切なもの」は見つからない。
多くの通行人が派手な着物(ステージ衣装)のまま歩くレモンを横目で見ている。
しかし、レモンは…
「…東京は さすがに 広い」 もう、バテバテだった。

――ふと、近くから何やら音楽が聞こえてきたので覗いてみると、竹の子族が踊っていた。
少々驚き、戸惑いつつも良く見ようと近寄ると… いきなり道端の変な格好の男が音楽を奏でた!
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「なにやってんの?」
「……悪いが、カツラ取って頭を掻いてくれないか」
怪訝に思いながらも言う通りにするレモン、気持ち良さそうにする男。しかもシンバル鳴らしながら。

「おまえ、変な奴だな」
『どっちがだ!』

わざわざボケに付き合ってくれたのにそう言われ、思わずツッコむレモン!
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「オレのジョーダンにつきあってくれる奴なんて、滅多にいないぜ
 あ、そーそー 何やってるかだったな  ――音楽スケッチさ
 ここには色んな人がいる、その様々なイメージを音で表現するのだ
 例えば、カワイイコが通ったりすると…(甘いムードの音を出す)
 そして、キミみたいに時代感覚メチャクチャな奴は、さっきのように(激しい音を出す)
 それを録音して、後で聞くわけだ たくさん集まったら、個展を開くつもりだ
 フッ、アクティブかつクリエイティブ………
 その上、人生の苦み・甘みを感じさせるいいシュミだろーが」

2243/4:2010/04/11(日) 21:05:21 ID:x5IJd6tA
「…暗いなぁ」
レモンの呟きに反論できなくなる男だった。――だが、一声高く大笑いすると――
「ほっといてくれ(´・ω・`) 人がどう思おうと、オレは楽しいんだ 音楽ってのはそーいうもんだ」
レモンは男の言葉を変なの、と一蹴し立ち去ろうとする。
自分が楽しくなくたって、他人が楽しんでくれればそれでいいのに…それがレモンの思念だった。

「自分が楽しくないのに、本当に人を楽しませる事は出来ないんじゃないかな」

――途端、男は今までと違った真面目な顔で意表を突いた言葉を吐いた。
その言葉を耳にしたレモンは一瞬足を止め、真顔で男の方を振り返る。
……だが、男は再びカツラを被り、パフォーマンスに戻っていた。
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ふと、背後から声をかけられ、振り返ると舞美がいた。変装の為眼鏡をかけてるが。
二人は誰もいない公園の丘に行き、夕日を見つめながら雑談にふけった。
「――でね、それが音楽スケッチなんだとさ」
「ああ、そーいえば、そーいう人いたいた おもしろーい」
「変だと思わないか?」
「楽しそーじゃない、音楽の表現方法なんてその人の好きにすれば。
 何より楽しけりゃ音楽だと思うわ」
舞美の言葉に、レモンの脳裏に先程の男の言葉がよみがえる。
『自分が楽しくないのに、本当に人を楽しませる事は出来ないんじゃないかな』

…ところで舞美はなぜここに来たのだろうか?
「わたしね、落ち込んだりするとあそこに行くんだァ
 レモンくんも見たでしょ、みんなキラキラしててすっごく楽しそーじゃない
 見てるとわたしもガンバローって元気が出てくるの」

2254/4:2010/04/11(日) 21:05:40 ID:x5IJd6tA
。oO(楽しそうか… オレはこの10年間、歌ってて楽しいなんて思った事、一度もなかったなぁ
   ただ、とうちゃんのようになりたいって…
   とうちゃんのかわりに夢をかなえるんだって、それだけでガンバってきた
   マイクをへこませ、声を壊して女みたいな声になっちゃうまで練習したのに…
   楽しくなけりゃ、音楽じゃないなら…オレの歌はなんなんだ?
   あ〜〜〜〜 くそ、こんがらがってきた!)

レモンは自問自答に陥り黙り込んでしまう。そんなレモンをどうしたのかと不安になる舞美。
よく考えたらこんな所に連れて来るなんて…ダイタンだなとドキドキする舞美。
ふと、急にレモンが立ち上がりビクッとして見上げると……笑顔で踊っている!?
「どうしたの?」
「え? なんか悩むのやめたら、体が軽くなって体が勝手に動くんだ
 広川の歌、歌った時にくせになっちゃったかな?」
「プッ、相変わらず変なダンスだけどノッてるじゃない 音もなしによくそれだけ…」

「音? あるじゃないか、聞こえないか? ――この東京が音楽だよ
 車のクラクション、人のざわめき… 色んな音が重なり合ってリズムになってるじゃないか!」

レモンの意外な感性に感心した舞美は一緒に踊る事にした。
――夕日をバックに、丘で楽しそうに踊るレモンと舞美だった――       <続く>

2261/6:2010/04/12(月) 21:32:35 ID:VfYnAu36
STAGE7:ライバル宣言


―イソベプロダクション・社長室―
そこには社長に直談判中の舞美がいた。
「だめですか ――レモンくんは絶対才能あるんです、イソベの力になると思います、だから…」
「キミもダイタンな事するねー、直接わたしに言いに来るとは しかし、なぜその男にこだわる?
 ひょっとして、その男の事が――」
口ごもる舞美に社長は言葉を続ける。
「アイドルに恋愛は禁物だよ、スキャンダルの種になる
 それに… うちに引き取る必要もないようだし、
 噂ではこのえがその男を売り込もうとやっきらしいからな」
「なんですって あの、秋野このえが…」



―大通り―
通行人をかきわけ、嬉しそうにひた走るレモン。
『キミをスターにしてあげる』
このえの言葉を思い浮かべ、レモンはひた走る!走る!走る!走れメロス…もといレモン!
『絶対してくれよ! ボクはアンタに賭けた! 今行くぜ――――!!』



―薄汚れたビルの一室、オータムプロダクション―
「――そうですか、はい わかりました
 …ダメですよ、このえさん 沢口麗紋の名前聞いただけで、どこも断ってくるんですよね
 これで全てのテレビ局から沢口麗紋は締め出されちゃいましたよ、どうします?
 ――大体、半月前にできた事務所に架空のタレント、社員はボク一人…
 これじゃ、テレビ局が相手してくれる訳ないんだよなぁ」
電話担当をしていたおかっぱ頭の青年が半ばあきらめモードで愚痴をはいていた。

2272/6:2010/04/12(月) 21:32:58 ID:VfYnAu36
『ハハハッ そうくると思ったわ! みんな大崎のしわざよ、あの人手回しが早いから』

…しかし、社長であるこのえは意外にも対策があるかのように大声で笑い飛ばした!
「笑い事じゃないですよ、もし本当に沢口麗紋ってのが来ちゃったら、どう言い訳するんですか?」
「言い訳なんかしないわよ、こっちにだって考えが…」

『 沢 口 麗 紋 、 や っ て ま い り ま し た ァ ! 』

――噂をすれば影が差す!ちょうどいいタイミングでグリコポーズでレモンが到着!!
『待ってましたァ!』
ぶりっこポーズでレモンを歓迎するこのえさん、来てしまった事に驚く青年!
『今日からよろしくお願いしまーす』
このえに挨拶しつつ、イメチェンしたこのえと軽く雑談するレモン。
だが、青年は和やかに会話する雰囲気ではなかった。
。oO(どぉすんだァ、あいつやたらハリキッちゃって… あやまるなら今のうちだァ)
青年はすばやくレモンの前に飛び出て、デビューさせられなくなった事をひたすら謝った。

『余計な事言うんじゃない!』  ボカッ

…社長に殴られますたorz
「お おれ デビューできないんですかァ スターにしてやるって言ったじゃないか…
 だからオレ、あんたの言う通り『足りない物』を探してきたし!
 ポップスを試しに歌ってみる気になったのに!! これじゃ詐欺だ、ペテンだ、大ウソツキだァ!!」
事務所に来る早々、期待を裏切られたレモンは困惑しながらも怒鳴り始めた!
「お願いです、オレ何でもします! だからデビューさせてください!
 一年でも、二年でも待ちますから!!」
「『なんでも』するのね だいじょーぶ、まかせなさい!約束は守るわ!」
やたら自信ありげなこのえの態度に不安になる青年。
「フッ 一年? チッチッチッ」(* ̄∀ ̄)"b"
親指で後ろの看板を指差すこのえ。
そこには <デビューまであと 3 0 日 > と書かれたボードがあった。

2283/6:2010/04/12(月) 21:33:18 ID:VfYnAu36
「一ヶ月か……… え え ーー 一 ヶ 月 !? 』 ( Д )    ゚ ゚

いくらなんでもこれは早すぎる!さすがのレモンも読者も驚くぞこれは!
社員の青年もさすがに一ヶ月はムリだと耳打ちするが、このえの考えは断固変わらない!

「一ヶ月、これは変えられないの! モタモタしてたら大崎に本当に潰されるわ!
 今だってすでにジャマされてるのに!」

「じゃあ、デビューできないってのは 大崎さんが…」
「そうよ、くやしいでしょ 大崎をギャフンと言わせるには、一ヶ月でデビューするしかないのよ
 その為にはレモンくん、キミ何でもするって言ったんだから、私の言う通りにしてもらうわよ」


―場面は変わって、オータムプロのビルの下―
「ここだわ」
なんとそこには舞美がいた。
。oO(秋野このえ、元イソベのタレント 歌手をやめるまでは大崎さんと組んでいたという…
   我が強くて、自分の為ならまわりの人間を踏みつけてまでも生きてゆく
   ――その為に芸能界を追われた、この噂が本当なら…
   レモンくんはいいように利用されてボロボロになっちゃう!)
不安になった舞美はひたすらビルの階段を駆け上がった。



―再び場面は事務所に戻る―
「この人、知ってるでしょ」
この絵は1枚の女性の写真をレモンに見せるが…レモンはあっさり「知らない」と即答。
「ふ 不安だわ、こんなコが芸能界にデビューしていいのかなァ
 こいつ、今や知らない人がいないくらい有名なのよ」
困惑した顔であらすじ書きや読者に問いただすこのえさん。自分もアイドルには疎いですが何か?

2294/6:2010/04/12(月) 21:33:41 ID:VfYnAu36
    バキッ☆
…とりあえず説明とあらすじを続けよう。あー痛ぇ…
「矢頭真琴 超人気の若手女優。こいつがね、今度レコードを出す事になって…」

『レモンくん!』

ちょうどその時、舞美が事務所に乱入したきた!
「あ、広川舞美だ!」
「これはめずらしいお客様」
「あれ―― 広川、おまえ何しに来たの?」
「レモンくん、行こう」
理由も言わずに強引にレモンの腕を引っ張る舞美。
「ちょ、ちょっと待ってよ 何言ってんだァ、やっとオレここでデビューできそうなのに」
「デビューする前に潰されちゃうわ、この人に」
「潰そうとしてるのはあなたでしょ、広川さん」
「ど どうしてわたしが…?」
「そうだよ、どうして広川がそんな事を…」
「いいえ、この子絶対レモンくんの妨げになるわ だってバックに大崎がいるんですもの
 ――大崎はあなたを使って、レモンくんを潰すに決まってるじゃない
 『そのために』あなたをプロデュースしてんだから」
「それじゃあ、まるで わたし――…」
「そう、大崎のレモンくんを潰すための  道  具  ね」
このえの言葉に一同、静まり返ってしまい―― しばしの沈黙が流れた。

「…そう… いかにもあなたが考えそうな推測ね
 それじゃあ、あなたは何をする為にレモンくんを利用するつもりなの?」
今度は舞美がこのえに反論を始めた。

「変な事言う娘ね、聞いたわ
 イソベのコンテスト、すでに書類審査で落ちてたレモンくんを
 あなたがムリヤリコンテストに出場できるようにしたんですってね
 こうなるのも、全てあなたの筋書きどおりなんじゃないの?」

2305/6:2010/04/12(月) 21:33:58 ID:VfYnAu36
レモンはこのえの言葉に一瞬耳を疑った。
「――どう思おうと勝手だけど、そうやって勝手に動き回って、昔のわたしみたいにならないよう、
 気をつけなさいね」
「どういう意味?」
舞美がこのえを問いただそうとした時、突如レモンが舞美を呼び止める。

「広川! お前イソベに帰れよ、オレも一ヵ月後にデビューしたら、お前とはライバルなんだぜ
 ライバルの事務所にいちゃ、まずいだろうが」

一ヵ月後にデビューする事を聞き、舞美も驚きを隠せなかった。
「一ヵ月後? 一ヵ月後って、まさか…」
「そう、あなたの新曲が出る日にレモンくんはデビューする ――この意味、分かる?」

「わたしを・・・・つぶす気ね」

「そう」
ここに来て、レモンもようやくこのえが一ヶ月にこだわった理由を悟った。
「もう…… 仲良くしてられないな」
「もう…いいわ 幼なじみのよしみで、色々なアドバイスしてあげようと思ってたけど、
 もういいわ、勝手にしなさいよ ――そう思ったら気が楽になったわ
 お互いガンバローね、それじゃあ――」
レモンの言葉に一瞬舞美はうつむいたかと思うと、プイとそっけなく答えて事務所をあとにした。

「エライ、よく言ったぞレモンくん!」
「――広川をこのえさんのようにしたくないから…
 あんた、大崎さんに潰されたんだろ? 昔のわたしのようにって、そういう意味なんだろ」
「へぇー、するどいじゃない
 …でも、あの娘が言うように、キミをただ利用しようとしてるのかもよ?」
レモンに対し、意地悪く微笑むこのえ。しかし、今のレモンはこのえを信用するしかなかった。
「あの会場にいたり、オレがここに来るのが当然のようにデビューの計画を進めてたり、
 偶然とは思えないけど… さぁ! オレはまず何したらいいのかな!」
決意を固め、意気込んで社長の指示を待つレモンに対し、秋野社長の最初の命令は――

2316/6:2010/04/12(月) 21:34:16 ID:VfYnAu36
「キミには  『  女  』  になってもらうわ」

…一瞬、あっけにとられつつも息を飲み込み――「やろうじゃない、おもしろそーだ」と返す。



―大通り―
。oO(――フン、何よ レモンのバカ! せっかく心配してやってんのに… 人の気も知らないで…
   わたしが、こんなに こんなに… 好きなのに…… レモンのバカ!!)
涙をこぼしながら自分の事務所に戻る舞美だった。             <続く>

232名無しさん:2010/04/13(火) 21:22:04 ID:ryOzyOWk
STAGE8:天使の声


――やる気になったレモンに降りた秋野社長の最初の命令はこんなものだった。
「キミには  『  女  』  になってもらうわ
 この矢頭真琴の代わりに、歌を歌ってもらうの
 発売が半月後に迫っているの、明日早速レコーディングよ、いいわね」
「・・・・・・・・・・・OK」
。oO(…てな訳で、オレが女になる事になった
   これがオレのデビューとどういう関係があるのか分からないけど、とにかくやるしかない
   ――たく、このえさんは何考えてんだか… デビューまで28日しかないってのに)



 ―レコーディングスタジオ―
「ここだけの話だけどね、  ド  ヘ  タ  !!   …もう聞けたもんじゃないんだから
 ムリしてレコードなんか出さなきゃいいのにねー」
「そーねぇ(こっちには都合いいけど)」
打ち合わせしているのは責任者とこのえだった。
「ところで替え玉の娘は?」
「フフ… 見ておどろくなよ、入ってらっしゃい」
また髪型が変わったこのえが合図すると、ゆっくりとドアが開き―― 可愛い女の子が入ってきた!

「は はじめまして」

恥しそうに挨拶する女の子。これにはあらすじ書きも見事にハートを射止められた!( ゚ω゚)-3 フンス
「か かわいいじゃないか! このえちゃん!こりゃ、替え玉なんかに使うのもったいないよ!」
責任者は大絶賛だが…このえは浮かない顔だった。
「冷たいものどうぞ」
ふと、別の女の子がドリンクを持ってきてくれた。 すると――

233名無しさん:2010/04/13(火) 21:22:34 ID:ryOzyOWk
「毎日パンツかえてますゥ?」

――いきなりスカートめくりする女の子! …って、ま、まさか!? (;゚д゚)
「あ あら わたしとした事が… ホホホ」
『こ こ こ この  ど  バ  カ  !! だれがこんな! こんな!!
 何ででっかいバッグ持って来たのかと思ったら、まったく! 脱がしてやる!!』
本当に超ものすごい形相で女の子に怒鳴り散らし押し倒し、服を脱がし始めるこのえさん!
。oO(このえちゃんにこんなシュミがあったとは…)
…鼻の下を伸ばし、よだれを垂らして傍観する責任者は――

『ん!? お、男!?』

案の定、女の子はレモンの女装だった!!!!!!!!!!!!!!!! ( Д )    ゚ ゚
『誰が女のカッコウなんかしろって言ったのよ! あーキモチわるい!!』
「女になれって言ったじゃないかァ」

                 (しばらくお待ち下さい)

…さて、レモンは普通の服に着替えて責任者に挨拶した。
「女になってもらうって言ったのはね 言葉のアヤ!
 女の子の代わりをやってもらうからそう言ったのよ、バカ!」
…いや、このえさん、どう考えてもあなたの説明不足です。本当にあり(ry
当然、責任者は男をつれてきたこのえにふざけてんのかと大激怒!! 男が女の歌歌えるもんか!
――しかしこのえは至って冷静だった。
「10分だけ時間くれる? とりあえず、彼の歌聞いてよ それでもダメだって言うなら帰ります」
「10分…? 昔のよしみだ、キミがそこまで言うなら10分だけだぞ」
責任者はしぶしぶ承諾し、レモンにヘッドホンを渡す。
「大体、曲のメロディーも知らないんだろ?『お遊び』は10分だけだぜ 本当に 一応聞いてみるか」

レモンが歌を聞いている間も責任者の愚痴は止まらなかった。
「現実的に考えて、無理に決まってるだろ、真琴ちゃんの音域(キー)って結構高いんだぜ
 裏声のきもち悪いのはカンベンしてよ」

234名無しさん:2010/04/13(火) 21:22:57 ID:ryOzyOWk
「覚えました」
「え!? だって、まだ…!」
「一度聞けば十分でしょ、こんなの」
あどけない笑顔であっさりと答えるレモンだった。

…という事で、一応音楽をかけながらレモンの歌を聞いて見る事に。
。oO(矢頭真琴さんになったつもりで歌おう、今更おろされるのいやだからな)

                ♪恋をうらなう花びらを♪

レモンの第一声を聞いた責任者は驚きのあまり持っていたペンをポトリと落とす。
『す すごい! ヤツは天使なのか!!』
その歌声は他のスタッフまで真琴のイメージにピッタリだと太鼓判を押した。
しかし責任者はそれだけなのかとスタッフの襟首を掴んで叫ぶ!

『わからんか! この声だよ! オレが今まで捜し求め、夢にえがいていた声!!
 この世には存在しないのかと諦めていたが、この声はまさに『それ』だ!!
 友達感覚のアイドルに飽きつつあるこの時代に、
 夢の国から抜け出たような中性的な声はもろに「はまる」ぞ、売れる!!』

異常なほどまでに興奮し豪語する責任者だったが、このえは声は彼の魅力にすぎないと言う。
このえに言われるまま、責任者はレモンの方を振り返ると―― 曲に合わせ踊るレモンがいた。


 ―同時刻、スタジオ廊下―
『…ったくもう、どうして「吹き替え」なんか使うのかしら、許せない!』
「真琴より下手な奴だったらただじゃすまないからな」
自分のジャイアン並の音痴を棚に上げて怒る真琴と、ガラの悪い男…多分マネージャーがやって来た。
マネージャーはスタッフにもうレコーディングしているのかと尋ねる。
「あ、おはようございます ええ、男の人が歌ってますけど」
『男! 真琴の代わりに男だと!?』
――当然、怒ったマネージャーはどういう事だと録音室に殴りこむ!

235名無しさん:2010/04/13(火) 21:23:17 ID:ryOzyOWk
…しかし、録音室では責任者がレモンの歌にのめりこんでいた。
「ダンスを始めた途端、歌のイメージがいっそう膨らんで、情景が見えるようだ」
「シカトかよ、どこまでバカにしてるんだ」
だが、真琴は流れてきたレモンの声を耳にし、これが本当に男の声か疑問に感じていた。
どんな男が歌っているのか気になった真琴は録音室のガラスを覗き込むと――
踊っているレモンのバックに、花園で踊る女性のイメージがありありと見えていた!
女性がこちらを振り向くと、その顔は…

『わ わたしが! わたしがいる!!』

『おい!!』
突然のマネージャーの大声で我に返る真琴や責任者達。
「あ、こりゃどうも! 町田さん、いらしてたんですか」
「どうでもいいけど、出迎えも無しかよ」
そんなやり取りの中、真琴はレモンと話がしたいので呼んで欲しいと言う。
「なんだぁ、話って
 …『歌お上手ね、わたし感激しちゃった チュッ』…なぁんてされたらどうしよう
 ども、初めまして 沢口麗紋です」
録音室から出てきたレモンを見つめ、真琴はにっこり微笑むと… いきなり強烈なビンタを1発!!
その光景を呆然と見る責任者とこのえ、憎たらしい顔で見るマネージャー。

『目立ちすぎなのよね!』

プリプリ怒ってスタジオを後にする真琴を、レモンは叩かれた頬を押さえただ呆然と見ていた。
「みんながキミに気を取られたのがシャクにさわったのよ」
このえがレモンを慰めようとするが―― レモンは全然こたえていなかった!
「いやー! なんかプロの迫力って感じだなァ!! やっぱりあの位気迫がなくちゃな、うん!」
「めげないコ」
涙までうっすらと浮かべているのに前向きなレモンにちょっと呆れつつも、本番へと移行する。

236名無しさん:2010/04/13(火) 21:23:34 ID:ryOzyOWk
 ―数日後、オータムプロ―
世間では矢頭真琴の新曲『花ことば』のレコードが発売されていた。
「デビューまであと15日ですよ、あの替玉がなんかトクになってるの?」
「なってるわよ、あのディレクターなんか、キミの事気に入って今度もぜひ、って言ってるのよ」
その時、あのおかっぱ頭の社員が血相を変えて事務所に飛び込んできた!

『すっごいですよ、『花ことば』の売れ行き! 特に声がいいって、そりゃもうすごい評判!!』

「そーこなくっちゃ」
「ふーんだ、直接オレがうれしい訳じゃねーもん」
――レモンの投げやりな態度にこのえは鼻で笑って作戦の説明をする。
「そんな事ないわよ、その 評 判 の 声 が あ な た だって、皆知ったらどうなる?」
                                    <続く>

237名無しさん:2010/04/14(水) 21:14:32 ID:tQHidf1o
STAGE9:天使の声    <表紙:レオタード姿のセクシーなこのえさん>


              <『花ことば』いきなり初登場第一位!>
               <テレビ出演拒否 ナゼの声高まる>
              <新作映画のハードスケジュールの理由>
            <中学時代の友人語る、真琴の音楽X(ダメ)の事実>

『花ことば』発売後、あらゆるメディアでは↑こんな事ばかりの見出しでいっぱいだった。
そして、レモンのデビューまであと5日と迫っていた…。


 ―オータムプロ―
このえとレモンはレオタードに着替え、ダンスの練習をしていた。
そんな中、相変わらず名前の不明な社員が冒頭のスポーツ新聞を持って駆け込んでくる。

「替玉の事バレそうですよ!このラリホースポーツ! 真琴ちゃんの中学時代の友人って奴が
 『真琴は音楽はまるでダメであんなにうまい訳ないわ!あのレコードはデタラメだ!!』
 …って、ホラ!!」

「――で?」 動じることなくあっけらかんと答えるこのえ。
「で?じゃないッスよ! レモンくんが替玉してるとか、色々バレたらまずいでしょ!」
「別にいいのよ、バレちゃっても ――だって、その記事はね、わたしがでっちあげたの」
『どわー! やっぱりそうだったのか! こんな事したら真琴さんがかわいそーじゃないか!!』
いきなりレモンがこのえに向かって豪語してきた!
「わかってないなァ キミはまともにデビューできないのよ、大崎のせいで…
 この世界は喰うか喰われるかなの、カワイソーなんて言ってられないのよ
 作戦はうまくいったわ、これで真琴があの記事がデマだって事証明する為に、TVで歌う事になる
 ――その時、真琴のかわりにキミが出るのよ!」
「そんな事したら、大騒ぎになるぜ」
「大騒ぎ、大いにケッコウ それだけキミは有名になるじゃない」
…とりあえず、レモンは真琴の居場所をこのえに聞きだした。何をするつもりだ?

238名無しさん:2010/04/14(水) 21:15:00 ID:tQHidf1o
 ―某スタジオ―
『真琴さん!真琴さん! どこですかァ!!』
大声を出して真琴を探すレモン。そんなレモンをマネージャー・町田が冷ややかな目で気づいた。
スタッフの1人がレモンに話しかけるが、レモンは真琴に会わせてくれの一点張り。
そのやり取りに町田が歩み寄ってきた。
「おめーか… 真琴なら、右を奥に行った休憩室にいるぜ」
『町田さん! いいんですか!?』
レモンは町田にお礼を言い、その場をあとにする。
しかし町田の手には、冒頭のラリホースポーツが握られていた――



 ―休憩室―
真琴はシャワーを浴びていた。これは予想もしなかったサービスシーン!( ゚ω゚)-3-3 フンス フンス
ドアをドンドンと叩く音に、真琴はバスローブを着て訪問者を出迎える。
「まことさん!いないんですか! 大事な話が… あっ!」
ドアを開けた途端、湯上りの真琴のセクシーなおっぱいの谷間に一瞬釘付けになるレモン。
「大事な話があるんだけど… 服を着るまで待っています」
「何テレてんのよ、純ねェ いいわよ、入りなさいよ」
一瞬後ろを向きつつも、真琴に言われるまま休憩室に招かれるレモン。
…しかし、レモンの手は『例の必殺技』を発動させようとムズムズしていた。

。oO(た 耐えろ!「パンツかえてるかーい」をやったら、大変な事になりそーだ)

…湯上りだから当然なのだが、今真琴は明らかにノーパン状態。
理性を超機動員… もとい、総動員させてグッと耐えるレモンだったw いや、やってくれ、ぜひ!

239名無しさん:2010/04/14(水) 21:15:22 ID:tQHidf1o
撮影がすぐなので用件を手短に話してもらう真琴。
レモンの用件はもちろんラリホースポーツの件のお詫びだった。
「あー、あれどこかの誰かのインボーだわね
 わたしは逃げたりしないわ、こうなればテレビに出てやるわ
 例え日本で『口パク』は禁止されてても、ステージに立ってやる!
 ――あんたとはレコードっきりだと思ったけど、また『声』を借りる事になったわね
 歌っているようにみせるなんて、わたしにはたやすい事 全国民をだましてみせるわ」
「いつ出るつもりなんですか?」
「すぐにでも出てやりたいけど、一番早い歌番組が9月1日のベストヒット10なのよ、
 だから、それ」
――9月1日は5日後… それはこのえの計画通りの、レモンのデビュー目標の日だった!

。oO(スキャンダルを流すタイミング、真琴さんの性格、歌番組の目標、全てを計算して…
   このえさん、あんたって人は…)

今更ながらレモンはこのえの策略を改めて思い知るのだった。
「実はここに来たのはね、だまってるのってフェアじゃないと思って… その
 あの…   んー  実は! オレのデビューの為に真琴さんを利用したんだ!
 テレビ出演の時、俺が出ていっちゃう計画でね
 …あと5日ある、その間に手を打つなら打てばいい オレは人を踏み台にしてまで…」
「――バカよ… 話しちゃったら計画がパーじゃない
 …でも、その正直なところがあなたの魅力なのかもね キミに…ホレたのかな」
困惑してレモンは真琴に近寄るが、突然泣きながら抱きつかれた!

『キミの好きにしなさい! それでキミがいいんなら!』

そんな真琴にレモンは優しく肩に手をかけ、歌番組に出るのをやめようかと言おうとした時…
今度はいきなり突き放された!?
「フン、すっかりその気になっちゃって 今のがわたしの武器よ
 この演技があればわたしは生きてゆける フッ、スキャンダルなんか血とし、肉としてやるわ
 見てなさい、人気を下げるどころか上げてみせるわ
 出るなら出ればいいわ、しょせん歌手なんて そんな小細工しなけりゃ、売れないもんね」

240名無しさん:2010/04/14(水) 21:15:39 ID:tQHidf1o
――その一言にカチンと来るレモン!
「別にィ、――でも 今、わたしの演技でキミは確かにドギマギしたでしょ
 そこにリアルなドラマがあるからよ
 歌にもドラマがあると言うけど、あの時 わたしがラブソングを歌っても、キミあんな反応した?
 百の恋の歌を歌ったところで、ほんの一秒の恋の演技にはかなわないって事よ」
『そんな事ないよ! とうちゃんの歌にはしっかりとしたドラマがあった!
 聞く人によっては映画に負けないくらいのすてきなドラマが!!』
「ふーん 聞く人によっては…ねぇ」
挑発的な態度の真琴にレモンは歯を食いしばり、『花ことば』で真琴の心を動かそうと決意する。
「それは楽しみね」


――話を終え、休憩室から退室するレモン。
レモンは気づかなかったが、休憩室の前には町田がいて会話を全て聞いていた。

 ―時代劇スタジオを通るレモン―
「くっそー 歌をバカにしやがって… もうようしゃしねーぞ!」
プンプン怒りながら進むレモンの前に、セットによりかかってにこやかに呼ぶ町田がいた。
「あれ、あんた真琴さんのマネージャー さっきはどーも」
「よ レモンくんだっけ? ちょっとつきあってくれよ」



『おちょくりやがって!!』
人気の無い所にレモンを連れ込み、暴行を働く町田!
「オレらを利用しただとォ?
 真琴が何て言おうと、事務所としてはスキャンダルの種を見過ごす訳にいかねぇんだ
 てめぇみてえな奴は、二度と・・・・・・ 歌 え な く し て や る ぜ !! 」
倒れたレモンの喉に何度も拳をたたき付ける町田!

241名無しさん:2010/04/14(水) 21:15:54 ID:tQHidf1o
 ―オータムプロ―
飛び出していったっきり、なかなか戻ってこないレモンを気づかうこのえと社員。
「まったく何考えてんのかしら」
「ホント、何しに言ったんですかねェ 真琴さんのところに」
  ガチャ
「来た」
ドアが開く音に振り返る二人。 そこには――――

「ゼー ゼー ただいまガ〜」
『ど どうしたのよ、その声!!』
ボロボロになった上に、声までつぶされてしまったレモンがそこにいた!

『へへ… づぶされぢゃったァガ〜 ぞ ぞれより花ごどばの歌詞教えでよ おぼえでないんガ』
                                     <続く>

24229話6:2010/05/19(水) 21:46:23 ID:???
…それからどれ位の時間が経ったのか…
母親が帰ってきた直後、倒れていた惣一を見て助け起こす。
『お母さん!! 妖精が…妖精が僕を殺そうとしたんだ!! ほら!!あそこで死んでるのがそうだよ!!』
「まさか… これが妖精だなんて…」
母親は妖精の死体をつまみ上げ、トイレに流す。これでもう大丈夫…



翌日、惣一は美沙里を訪れ報告していた。
{…だから妖精の姿を見ちゃいけない、って言ったじゃない}
「ご… ごめんなさい…」

{別にあやまる事はないわ
 でも… 昆虫採集用の薬なんかで、その妖精が…死ぬとは思えないけどね…}

ミザリィの言葉にまたしても顔面蒼白になる惣一だった…



 ―その夜・住宅街―
マンホールのふたがゆっくりと開き、中から息も絶え絶えな妖精が這いあがってくる。
『クソォ… アノガキ 今ニ見テロ…  必 ズ 復 讐 シ テ ヤ ル !! 』
夜空に妖精の声が響く。その夜は不気味なほどに見事な満月だった…



次の日、惣一が学校から帰ってくるが、まだ母親は仕事でいない。
ゲームでもしようかと自室へ戻ると、なんと部屋がめちゃめちゃに荒らされている!
「こ… これは… 誰がこんな事…」
『俺ノ仕業ダヨ! コノ前ハヤッテクレタジャネェカ…ドウナルカ、ワカッテルダロウナ コゾウ?』
妖精が復讐しに現れた!
惣一はたまらず逃げ出すが、妖精はすぐに殺そうとせずじわじわ殺そうと後を追う…

24329話7:2010/05/19(水) 21:46:45 ID:???
――しかし、外に出た妖精の前に女性の足が立ちはだかった!ミザリィだ!!
{あらあら、面白い生き物がいるわねぇ}
姿を見られた妖精はミザリィも殺そうと飛び掛るが、ミザリィは妖精を叩き落した!
叩きつけられ弱った妖精を拾い上げると、{いい商品になりそうだわ}と観察する。
『ナ!? ドウイウ意味ダ!? ハ…離セ、苦シイ!!』
必死の抵抗も空しく、妖精はそのままミザリィに連れ去られていった――――



一方、惣一は美沙里に助けを求めにやってきた。
『お姉さん、お姉さん!! 妖精が… 妖精が生きてたんだ!!』
{あら、そんな事より新しい商品が入ったのよ 見せてあげるわ}

そう言って取り出したのは、連れ去った妖精の『 剥 製 』…もちろん本物の!!

{君のコレクションに加えてみない?}



{…皆さんも身の回りで物がなくなった時は注意して下さい…
 あなたのそばに、妖精がいるのかもしれません… 恐ろしい妖精が…}


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