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ダンゲロス流血少女MM:生徒会応援スレ

1流血少女GK:2015/08/01(土) 23:45:07
生徒会用

54一十:2015/08/11(火) 22:33:31
一 二十四(にのまえ・いぶ)(SD)。
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51918341
二十四「情報料? じゃあカ・ラ・ダ・で♪」

55一十:2015/08/11(火) 23:26:04
一 十(にのまえ・くろす)(SD)。妃芽薗学園が誇るピンクの百合魔王に餌食にされた純真可憐な乙女は数知れず……?
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51919943
十「餌食になんてしてませんっ! っていうか、誰が百合魔王ですか!?」

56口舌院五六八:2015/08/11(火) 23:31:58
「おい、通訳、飯でも喰わねーか」

苦虫を噛み潰した顔が見たければ、その時の雪月通訳の顔を見るのが適切。
そう思わしめるほどの、苦虫を噛み潰した顔を通訳はしていた。

「わざわざ中等部まで何しに来たんですか?」
「さっきも言ったろ、飯食わねえかって」

雪月のクラスメートが少しざわついている。
傍から見れば優等生に不良がいちゃもん付けているようにしか見えないのだ。
知り合いだから大丈夫だと説明しながら、通訳は五六八の顔を見る

……笑ってますね

確信犯だ、いつものイタズラ好きの血が騒いだのだろうとひとりごちた。

「なぁ、いいじゃねぇか、同じくぜ「分かりました、行きましょう」

何を言わんとするか察した通訳が、五六八のセリフを遮って答える。
より、一層にやつく五六八。

絶対に、ぜぇぇったいに確信犯ですね。
ちょっとむくれる通訳、カワイイものである。

***************************
口舌院、その傾向と対策
***************************

「五六八さん、どうしたんですか?顔色が悪いですよ?」

苦虫を噛み潰した顔が見たければ、その時の口舌院ご六八の顔を見るのが適切。
そう思わしめるほどの、苦虫を噛み潰した顔を五六八はしていた。

「……おい、てめぇ、あたしがカレー嫌いなの知ってるよな?」
「ええ、幼少の頃からの付き合いですから、もちろん存じています」
「ほう、それでもカレーを頼むと……」

犬歯をむき出しにして威嚇する五六八だが、通訳はどこ吹く風とばかりに受け流す。

「せっかく、五六八さんにお食事に誘っていただいたので、好きなモノをいただこうと」
「喧嘩売ってるなら買うぞ?」
「いえいえ、そんな気は毛頭ありませんよ」

混み合った学生食堂の一角で火花が舞い上がっていた。
様子を見た一般の学生たちはわざわざ近寄るまいと距離を取る。
その結果、彼女たちの周りだけ空席が出来ていた。

「見ただけで頭が破裂しそうだ……」

五六八は、げんなりとした顔できつねうどんを啜る。
頭が破裂「しそう」ではなくて頭が破裂「したから」嫌いなくせに……と
通訳は考えたがさすがに口にはしない。
わざわざ地雷を踏みに行く必要はなかろう、意趣返しはここまでだ。

「ところで、何の用ですか。」
カレーをゆっくりと口に運びながら通訳が本題を切り出す。
五六八が通訳の所に顔を出すのは、そう珍しくは無い。
だが食事に誘うなんてことは、なかなか無かった。

「あ、別に特に用事なんかねーよ。同じ口舌院のはみ出し者同士仲良くしようぜ。」
「私は今『雪月』通訳です」
「あん、本家筋の人間が何いってんだよ」

ぐびりぐびりとうどんの汁をすすりながら唐揚げにかぶり付く。

「宗家の人間が言っても、何の説得力ありませんよ……」
「どっちにせよ、おめーもあたしも爪弾きもんだろうが」
「そこは……まぁ、否定しませんが」

弁舌や詐術を基本とする口舌院家には、肉体派の魔人は少ない。
その点、五六八と通訳は珍しいタイプであった。

通訳はどちらかと言えば口舌院の素養に溢れている
ただ、その上で肉体能力が逸脱しているだけだ。
ただ、それであっても口舌院の家風として
「暴力に頼るのはみっともない」という風潮があるのは確かだった。

五六八に至っては「暴力の化身」という表現がなされるほどであった。
口舌院宗家出身ではあったが殆ど忌み子のような扱いを受けてきた。
その性質が明らかにされた当初は軟禁されていたほどである。

57口舌院五六八:2015/08/11(火) 23:33:03
「しかし、『口舌院』の性を捨てるなんてよっぽどだぞ。
 口舌院すら名乗れない分家の連中が聞いたらヒス起こすぞー」
「関係ありません、口舌院であろうと無かろうと、私は私です」
「ほおー、言うねぇ……」

きつねうどんとかしわおにぎりと唐揚げと春巻きとを平らげた五六八は
ニンマリと笑った。新しいオモチャを見つけた子供の笑みである。

「『ぬぉぃりゅべきょぁっせょな』」

大きな声が食堂に響き渡った
多くの人間がきょとんとした顔で通訳たちの方を振り向く。
殆どの人間、いや、この場では二人を除いて
その意味がわかった人間はいないだろう。

もちろん一人は五六八である。そしてもう一人は……

「な、な、なんて事言うんですか。ここは公共の場所ですよ」

大声で抗議の声を荒げる通訳であった。

「おいおい、落ち着きなって、誰も『きゃー、あの子卑猥なこと言ってるわー』ってなってないだろ」
「え、あ……」

周りの人間は意味不明な大声が聞こえたためこちらを注視しただけである。

「口舌院の圧縮言語なんて分かる奴いるわけないだろ、けっけっけ」
「……嵌めましたね」
「ちげーよ、勉強熱心かどうか確認しただけだよ、『口舌院』さん」

圧縮言語、口舌院家の一部で使われる話法。
20以上の母音、50を超える声調などを使って一音に
ありったけの情報を詰め込む話法である。
盗聴を危険視したり、時間がない時の緊急連絡用として重宝するが
習得難易度は高く、口舌院家でも習熟したものはそこまで多くない。

圧縮言語に切り替える旨の宣言もなく、繰り出された五六八の発言に
即座に対応出来るのは圧縮言語を習熟している証であった。

「咄嗟に圧縮言語の解凍できる辺りは、さすがに優等生だな」
「いい加減、怒りますよ。それに誰にも分からないからってあんな卑猥なことを大声でなんて……」
「いやあ、清純でいいねぇ、お姉さん感激」

恨めしい顔の通訳と涼し気な顔の五六八
度々の攻守交替の末、今度は五六八が主導権を握ったようだ。

58口舌院五六八:2015/08/11(火) 23:33:15
「まぁ、あれだ、どうせおまえさんのことだから『お兄様』絡みだろ」

ぴくりとも体は動かさずに、通訳の雰囲気が変わる。
静かに、それでいて深く大きく存在のみが膨れ上がる。

「お兄様がどうかしましたか?」
「おお、そんな怖い顔しなさんな、あたしは通訳の敵じゃねぇし……」
片手に持ったコップで口を潤し
「言語の敵でもねぇ」

五六八が嘘を付いている様子はないと思ったのか、緊張のレベルを引き下げる通訳。
口舌院同士で腹の探り合いをしてもしょうがないことはお互い十二分に知っていた。

「いきなりお兄様の話を振って来る意図が見えませんが……」
「んー、あたしから言ってもいいものかどうか分からんが」

卯月言語がこの学園の様子を伺っている……そう五六八は語った。

「結界広げてたら気づいたんだよ、最近ちょくちょく様子を探ってるっぽいぞ」
「……本当ですか?」

五六八の結界には、名前をある程度特定できる能力があることは通訳も知っていた。
だが、なぜお兄様が……私への連絡もよこさずに?

「言語の野郎は、なんだかんだ察しがいいからな……何か起きるかもしれねぇ」
「何かって……この学園でですか?」
「多分なー、でかい喧嘩になりゃ面白いんだが」
「冗談でも、そういう事は言わないでください……」

口舌院五六八にトラウマがあるように通訳にもトラウマはある。
真剣味を嗅ぎとった五六八は、それ以上茶化さなかった。

「ま、なんだ、何かあったら声かけろよ」
「……?」
「素直に受け取れよ、何かあったら味方してやるっていってんだよ」
「五六八さんが?」
「おう」

通訳はまず何かの罠かと疑った……口舌院五六八が味方になる
通訳と五六八は二つ違いである、幼稚園も小学校も同じである。
何の因果か中高すら同じ学校という悪夢。

確かに、味方についた五六八は心強い。
いじめを受けている人間を見かけると颯爽と間に入って
いじめの原因を物理的に取り除く。
だが、最終的に始まるのは五六八の暴力よる絶対的恐怖政治だ。
そして本人はそのことに気がついていない。
天然の問題児であった。

「今までお前さんを殴ってきた回数ぐらいは、お前さんの敵を殴ってやるぜ」
「それだと、この学校の全員を殴っても殴りたりませんよ」

二人の口舌院が席を立つ。
一人は、これから吹き荒れるであろう嵐に期待しながら
もう一人は、その嵐から皆を守る決意を秘めて。

嵐は刻々と近づいていた。        了

59衣紗早包:2015/08/11(火) 23:50:38
tp://www1.axfc.net/u/3515934
生徒会の面々

左から
砂漠谷レマさん、白瀬ウルフレット桜子さん、ひつじ執事ツツジさん、一二四さん、大鶴ぺたんさん、後藤さん、ミス・ブラックメテオライトさん、三国屋碧沙さん

フルカラーですが、これは着せ替えツールで作成したものでめちゃ楽です
こちらがそのツールになります。18禁です。
tp://pochi.x.fc2.com/k_kisekae2.html

60流血少女GK:2015/08/12(水) 00:01:37
>>45-48
15点+10点=25点

>>49
10点+10点=20点

>>50-51
12点+8点=20点
雨竜院愛雨10点 雨月星座10点へ

>>52
8点+10点=18点

>>53
10点+10点=20点

>>54
9点+10点=19点

>>55
12点+15点=27点

>>56-58
15点+15点=30点

61流血少女GK:2015/08/12(水) 00:36:05
>>59
0.5点+4点=4.5点

62口舌院五六八:2015/08/12(水) 03:31:52
いろはのにっきちょう

きょうはごびゅうとつうやくをなぐった
つうやくはにかいなぐった

きょうはつうやくをむかえにきたげんごをなぐろうとしたけど
なぐれなかったのでくやしいです

きょうはごびゅうをいじめてるやつがいたので
ごびゅうといっしょになぐりました
たのしかったです

**************************
いろはちゃんとおねえさん
**************************

「うんうん、良く書けてるね」
「えへへー、そうでしょう、いろはえらい?」
「うん、偉い偉い」

あたし、くぜついんいろは5さい。
くぜついんの「そうけ」なんだって、よくわかんない。
おねえちゃんも「そうけ」なの、えへへ、いっしょでうれしい。

おとうさんとおかあさんはやさしいけど、ほかのくぜついんのひとはつめたい
でも、おねえちゃんはやさしい。
くらいへやからだしてくれたのもおねえちゃんとおとうさんだったし。

「でもね、いろはちゃん、あんまり人を殴っちゃ駄目だよ」
「なんで?、なぐるとたのしいよ?」
「んー、殴られると痛いし、楽しくないからかな」

よくわかんない。
いたいって、みんなよくいうけど、いろはにはわかんない

「んー、そうね。その事は後ではなそっか、まずはお勉強」
「いろは、おべんきょうすきくない」
「もー、いろはちゃんが『おねえちゃんと一緒ならやる』って言ったんでしょう」
「うーー」
「我侭言っても駄目よ」

くぜついんはかいたり、しゃべったりがとくいだっていってた
でも、あたしはなぐるほうがたのしかった、よくおこられた

「んーー」
「もう、駄々こねちゃって」

おねえちゃんがあたまぽんぽんしてくれる、えへへ

「終わったら遊んであげるから」
「わーい」

いやだけど、おべんきょうする。

63口舌院五六八:2015/08/12(水) 03:32:44
「ぼんまめぼんごめぼんごぼう、つみたでつみまめつみざんしょ、
 しゅしゃざんのしゃしょうじょう」
「惜しい、書写山の社僧正」
「しょしゃざんのしゃそうじょう」
「はい、良く出来ました。続けてー」
「こごめのなまがみ、こごめのなまがみ・・・・・・」

「はい、そうよ、もっと口開いて舌だして」
「えーーーーー」
「はい、そこでラタラタラタラタラタ」
「らたらたらたらたらたらた」

「しいわく、まなんで……ときに……」
「いろはちゃん、レのマークは何だったかなぁ?」
「えっとね、えっとね、ひとつもどる!」
「正解、じゃあ、これはどう読むのかな」
「えーと、ときに、これを……ならう?」
「良く出来ましたー、いいこいいこ」
「えへへ」

おべんきょうはたのしくないけど、おねえちゃんといられるのはたのしい

「はい、おしまい。頑張ったね」
「うん、おねえちゃん、あそぼあそぼ」

おねえちゃんのてをにぎる

「うん、遊ぼうか。でも、その前に……」
「?」

おねえちゃんはちょっとこまったかおをした
あたしがおやつぜんぶたべたときのおかあさんみたいなかお

「人をあんまり殴っちゃダメってお話しようか」
「えー」

なぐるのはたのしいけどなんでだめなんだろう
あそぶのもたのしいけど、あそぶなっていわれる

「あのね、いろはちゃんにはまだ分からないかもしれないけど……
 殴られると痛かったり辛かったり泣いちゃったりするの……」
「うん……ごびゅうはなぐられるとよくなく」
「でしょ」
「でも、いろははなぐられてもへーきだよ」

おねえちゃんはまたこまったかおをしてる

「あのね、誤謬ちゃんや通訳ちゃんは好きでしょう」
「うん、すきだよ。ごびゅうはいじめられるからまもってあげないといけないし
 つうやくもげんきがいいからあいてしてあげるの。
 あたしは、ふたりのおねえちゃんだよ」
「でも、殴るのよね」
「うん!!」
「じゃあ、お姉ちゃんの事、好き?」
「だいすき!!」
「お姉ちゃんの事、殴りたくなる?」
「え?」

おねえちゃんはなぐりたくない、あれ、なんで?

「……なぐりたくならない」
「なんでかな?」

なんでだろ

「わかんない」
「そっかー、わかんないよね」
「……うん」

なんでかよくわかんないけど、もやもやする

64口舌院五六八:2015/08/12(水) 03:33:43
「おーい、お邪魔するぞ……っと、親戚の子供か」

だれか、きた。ながいぼうもってるおにいちゃん。

「あらら、グッドタイミングね」

おねえちゃんはわらってる、なんかわらったかおがきれい

「ちょっとね、この子に暴力はダメよって教えてて……」
「おいおい、物騒だな、まだ幼稚園児くらいだろう」
「この子はちょっと特別なの」
「特別って……一体どこが?」
「あのね、」

むー、おねえちゃん、こっちむいてくれない

「ねえ、おねえちゃん!!」
「あら、なぁに、いろはちゃん?」
「このひと、なぐっていい?」

なんか、このおにいちゃんをなぐりたいきぶん

「んー、……いいわよ。後、どうせなら青いの使っちゃいなさい」

ちょっとかんがえておねえちゃんはいった

「は?」

あたしはうでにあおいのをつけてなぐる
あおいのはおねえちゃんがつけていいっていわないかぎり
つけないってやくそくした

「ふふっ、『使わないと』死ぬわよ」
「おい、ちょ……ま……」

あたしはとびあがって、あおいのでおにいちゃんをなぐる
おにいちゃんはぼうをもってこっちに向けるやいなや刀が
鏡のように煌くあたしは瞬間的に拳を引っ込めようとする
が間に合わず拳が鏡面を直撃するも手応えがないと思った
瞬間にあたしの拳があたしの顔面目がけて襲ってくる反射
系の能力だと認識する前にあたしの唇は言葉をひねり出す
笑い真似に咽て仏の眼も見えない阿鼻へ立ち尽くす五十音
を揃えぬ限り余は破れざると言った途端にあたしの体は青
い皮膜に覆われあたしに返ってきた拳が無力化される時あ
たしは殴りかかった勢いの反動を利用して元の場所に戻る




……んー、いまのなに?


 
「おい、これはどういう事だ」
「言ったでしょ、この子特別なの。」

おにいちゃんがおねえちゃんにおこってる

「だからって、今のはあんまりじゃなっ、んぐっ、む、ん、」

ちゅぷちゅぱ……ぷちゅっ……ちゅぶっ、ちゅっ、ちゅっ、んう゛う゛〜っ


あ、おにいちゃんとおねえちゃんがチューしてる

「ぷはぁ……、はい、お詫びおしまい」
「お詫びってあのなぁ、子供の前で……」
「いいじゃない、減るもんじゃなし」

ふだんとちがうわらいかたしたおねえちゃんは
なんかもやもやした

65口舌院五六八:2015/08/12(水) 03:34:13
「ねえ、いろはちゃん、今度はお姉ちゃんを殴ってみようか」
「えー」
「殴りたくない人を殴ってみたら、殴りたくない気持ちがわかるかも」

あおいのはつけないで、おねえちゃんをなぐることになった

いやだけどなぐる、おねえちゃのいうこときかないできらわれたくない

なぐるのいやなのはなんでだろうとかかんがえながらなぐると
おねえちゃんは懐から何かを取り出しながらこちらをむいて殴
る方向が違うわよとつぶやいたと同時にまたしてもあたしの腕
がネジ曲がりこちらを狙ってくるまたかと思いながらも口ずさ
むが結界が出ないどうしてだと思う暇もなくあたしの目の前に
拳が迫る結界が解除されている何故だと思いながらお姉ちゃん
の名前がくぜついんあいうえおかきくけこさしすせそたちつて
となにぬねのはひふへほまみむめもやゆよわをんで形成されて
いることを知るあの一瞬で改名手続きを行ったということかと
思った瞬間についにあたしの拳はあたしの鼻先ににぶち込まれ
て鈍痛と共に後ろへ吹っ飛ばされていくも柱に当たって止まる



あたししらない、なにこれ、なに、え?
はなのところがじんじんする、あつい、なに
なに、ねえ、おねえちゃん、これ

なんで

「うわぁぁぁぁーーん」
「よしよし、いろはちゃん、これが『痛い』って事よ」
「うえっ、うえぇぇぇーーーーーん」
「よしよし、痛かったでしょ。でもね、本当はこれが普通なの
 殴られたら皆痛いのよ、誤謬ちゃんも通訳ちゃんも」
「いだい゛い゛い゛い゛ーーーーーーーー」
「うん、痛いの嫌でしょう」
「う゛んっ」
「だったら、むやみに殴っちゃ駄目よ。殴りたいからって殴っちゃ駄目
 殴らないといけないときにだけ殴りなさい。」
「う゛んっ、う゛んっ」

いたい、はじめて、いたい、かなしい
ごびゅうもつうやくもいたかったのかな
おねえちゃんのむねのなかでなきながら
あたしは……

*エピローグ、あるいはプロローグ*


「疲れて眠っちゃったみたいね……」
「おい、どうなってるんだこれは?」
「この子はね、生まれ付きの魔人でね、オートで防御結界貼っちゃうから
 今の今まで『痛い』って事すら知らずに生きてきたの」
「それは、難儀だな」

男が肩をすくめる

「結界を解除する方法もあるんだけどね、ちょっと戸籍が汚れちゃうから」
「戸籍って、一体何をしたんだ」
「本名変えたのよ、私が連絡したら即変更できる準備を整えてね」

女は防御結界の構造を男に話す、なるほど確かに通常の手段では破りづらい

「それにしても、なんで最初に俺にけしかけた」
「あら、やっぱり分かってたのね」
「当然だろう」
「あの子が殴るタイミングが掴みたかったのよ」
「それだけか」
「それだけよ」
「お陰で死にかけたんだろう、俺は」
「お詫びしたじゃない」
「そんな事ではごまかされ……」

女がセーラー服の上着を脱ぎ捨てる

「じゃあ、お詫びの続きしてあげる」
「お、おい、子供が起きるかもしれないだろう」
「何よ、かえって燃えるくせに、ふふっ」

女が男にしなだれかかり、やがて二人の影は一つになる。
「生徒会は…・・・」「……王さんも」「お楽しみ会」
享楽の声に混じり、ときおり深刻な話を交えつつ二人は睦みあった  了

66エるだぁ・マじかる・後藤さん:2015/08/12(水) 08:34:21
【世界の外の墓地にて】

『山ノ端一人』と名前が彫られた石の墓標。
墓標はひとつではない。
無数の墓標が、いくつもいくつも並んでいる。
墓地を包むひんやりとした靄に隠れて見えない遥か彼方まで、永遠に続くかの如く並んでいる。
墓碑銘はすべて『山ノ端一人』。
ここは『閉鎖された墓地』。
ハルマゲドンの舞台にして、贄となった少女達が眠る地。
リゾート施設『メロウズ』とは位相のずれた、世界の外の墓地。

紫陽花色のレインコートを羽織った少女がひとり、墓地の中を歩く。
その手には邪神の名を持つ暗紫色の武傘。
コートの下は、迷彩柄のミリタリー調ウェア。
彼女は、まるで自分の家の庭を歩くように迷いのない足取りで墓地の中を歩んでいる。
それも当然のことだ。
この空間は、彼女が作り出したものなのだから。

レインコートの少女、雨竜院愛雨は、鮫氷しゃちと共謀して『山ノ端一人』を死に追いやり、ハルマゲドンの引き金を引いたのだ。
鴉取するめは良く働いてくれたと、愛雨は思う。
しゃちさんも、もう少しするめさんに優しくしてあげてもいいのに、と。
実際に手を汚したのは学園管理者側の操った傀儡。
だが、裏で暗躍したのは、するめであり、しゃちであり、愛雨なのだ。
ゆえに、愛雨は既に罪人である。
もっとも、愛雨の魂が地獄に落ちることはないだろう。
愛雨の魂を受け取る者は、ずっと前から決まっているのだ。

愛雨は、ひとつの墓標の前で足を止めて屈みこむ。
そして黒い皮手袋を外して、『山ノ端一人』と彫られた文字の上をそっと撫でた。
文字が幽霊のように薄れて消え、別の文字が現れた。
現れた文字は、『矢達メア』。
愛雨が、かつて名乗っていた名前だ。
これは、愛雨の墓である。

墓石の上に手を添え、眼鏡の奥の瞳を閉じる。
ぽつり。ぽつり。
雨が降り出す音が聞こえてくる。
そして、微かに鼻をくすぐるあのにおい。
今でも愛雨は、こうしてはっきりと思い出せる。
金雨ちゃんの雨。
『矢達メア』が死んだ時に、降っていた雨の記憶。
優しい、優しい、雨の記憶。

いつまでも、懐かしい記憶に浸っていたかったが、そうもいかなかった。
愛雨は大きく眼を見開いた。
武傘の止め紐を外し、傘を開いて掲げる。
べたり。
どこからともなく飛来した緑色の粘液を、傘が受け止めた。

「はじめまして、後藤老師。あなたの御名前は、どりみ先輩から何度かお聞きしています。お会いできて光栄です」

愛雨は武傘を回転させて粘液を振り払いながら、狙撃手に声を掛けた。
粘液弾を放ったのは、エるだぁ・マじかる、後藤うさ。
節足の甲冑を纏いし、古き魔法少女。

「解せぬ。何故おぬしがハルマゲドンを画策したのか……。じゃが、理由の如何にかかわらず、そのような目論見は潰させて貰う!」

うさは、胸の前で両手をロクロの型。油断のない海ソーサリーを構えた。
省エネモードを解除した後藤うさは数分しか戦闘を行うことはできないが、その粘液格闘術は侮れない!

67エるだぁ・マじかる・後藤さん:2015/08/12(水) 08:35:43

「ふふっ、もう遅いですよ。こうして『閉鎖された墓地』が構築された以上、ハルマゲドンはもう避けられません」

タタン!
愛雨は懐からマカロフPMを抜いてニ連射。
紫のネガ雨乞い波動を帯びた二つの弾丸がうさを襲う。
うさは甲冑から分泌した粘液で盾を生成、弾丸を難なく受け止める。

その時、愛雨の能力『リフメア』が発動!
うさの粘液盾から水分が奪われ、逆向きの雨となって天に登る。
粘液盾の成分はほぼ100%水分だ! 盾が消滅!

「ぬうっ! やはり能力の相性は最悪のようじゃな! ツツジを置いてきたのは失敗だったかのう!」
うさが歯がみしながら次の粘液を分泌しつつサイドステップで距離をはかる。

「というわけで、観念してハルマゲドンにご参加願えますかっ!?」
愛雨のステップの方が速い!
粘液の水分が変化した癒しの雨を身に受けながら、武傘の突剣による突き!
雨竜院流『雨月(あめつき)』!

「もうハルマゲドンは懲り懲りじゃよ!」
粘液を纏った節足の手甲で紫の武傘を受け止める。
粘液が武傘にまとわり付き、動きを封じようとするが、武傘に纏っていた『リフメア』の波動が粘液を触れる端から逆さまの雨に変えて行く。
うさは『海ソーサリー』による絡め取りを断念、甲の固さのみで武傘を上に弾いて反らす。
ここまでの動きは愛雨も折り込み済みで、武傘を引いて次の攻撃に移ろうとするが……

がしゃん!
愛雨の想定していなかった衝撃が武傘に加わった。
それは、ぷてりんの鋏脚!
うさの頭部甲冑からウサミミめいて延びている、ぷてりんの鋏が強靭な一撃で武傘を更に弾いたのだ。

体勢を崩した愛雨に、うさの追い打ち!
両腕から少量の粘液を分泌して愛雨の顔の前でぱしんと手を打ち合わせて、粘液を飛び散らせる!
「ぐっ、猫騙し……!」
愛雨の眼鏡に粘液が張り付き視界を奪った一瞬の隙に、うさはミゅーかす・ドらいぶ跳躍!
そして逆向きの肩車めいた体勢で、愛雨の顔面に全身で組み付く!

「おぬしの脱水と、儂の粘液分泌。どっちが速いか勝負じゃ!」
うさが全力で粘液を分泌!
愛雨の頭部が分泌した粘液で球状に覆われる。
このままでは窒息死してしまう。
『リフメア』による脱水は?
既にやっている! 粘液の塊からはゲリラ豪雨めいた勢いの逆向きの雨! だが、追い付かない!!

「ご……ゴボォ……」
粘液の中でくぐもった声を出す愛雨の上体がよろめき、後方に傾く。
逆向きの雨は止んだ。うさは粘液分泌の手を緩めない。
勝負あったか!?

68エるだぁ・マじかる・後藤さん:2015/08/12(水) 08:35:54

その時!
「ゴッボィ!(ドスコイ!)」
不明瞭な、しかし力強いスモウ・シャウトと共に、愛雨は急激に上体を起こした!
そして、そのまま前のめりに倒れこみながら、尻餅をつくように腰を落とす!
「なんじゃと!?」
突然の愛雨の動きに、うさは対応できずそのまま後方にバランスを崩す。
これは……っ! 恐るべき禁じ手の相撲技、パワーボムである!
「グワーッ!?」「ギシャーッ!?」
甲冑後頭部を石畳の墓地の地面に叩き付けられ、うさとぷてりんが呻いた。
石畳に亀裂が入り、周囲の墓標が微かに揺れた。
ばしゃり。うさの精神集中が途切れ、魔法少女能力の粘度操作によって形状を保っていた粘液玉が崩壊する。

「デストロイ……」
愛雨は酸素不足で朦朧としかけた脳をチャントで奮い立て、再びうさを持ち上げる。
「ゼムオール!」
そして、パワーボム2発目!
「アバーッ!」「ギャバーッ!」
後頭部を墓地の石畳に叩き付けられ、うさとぷてりんが呻く!
石畳の亀裂が広がり、周囲の墓標が振動する!
ダメージによって、うさの変身が解除された。
ぷてりんは本来のウミサソリの姿に、うさは本来の老人男性の姿に戻り、墓地に倒れ横たわった。

「ふう、結構手強かったな。私も、もう少し『ホリラン』で鍛えなきゃ」

既に皆様もお気付きのことだろうが、『ホリラン』を開催したのも雨竜院愛雨である。
その目的は……PL転校生のステータス合計値が何点成長したかを比較してみれば明らかだろう。
あと、臨海学校ご始まる前にホリラン開催を知ってて蟹ちゃんと模擬戦してたり、愛雨が閉鎖空間に囚われず普通に宿に帰ってたこととかも黒幕である伏線だったことにしようそうしよう。

「まどかさん、まどかさん、いらっしゃいますか?」

愛雨は『案内人』の名を呼ぶ。
すると、誰もいなかった空間に、白いパーカーを着た少女が幽霊のごとく現れた。
『案内人』蓮柄円である。

「まどかさん。こちらは、エるだぁ・マじかる・後藤さんです。丁重に生徒会へ御案内差し上げてください」

「かしこまりました」

円は愛雨に一礼すると、後藤佑佐とマスコットのぷてりんを抱き抱え、靄の中に消えた。
その後ろ姿を見送りながら、愛雨は考えた。
後藤老師ならば、ハルマゲドンの中で、依紗早包ちゃんを守ってくれるのではないか、と。
そして、それ以上に……

「『最初のハルマゲドン』を生き延びた最も古き魔法少女……きっと、このハルマゲドンを盛り上げてくれることでしょう!」

雨竜院愛雨は、これから始まるハルマゲドンへの期待に、眼鏡の中の大きく可愛らしい瞳を潤ませた。
さあ、楽しい楽しいハルマゲドンの始まり!
やりたい事は全部やる!
会いたい人には全員会う!
だから、待っててね金雨ちゃん。
私、絶対やり遂げて生き延びるからね!

(おわり)

69エるだぁ・マじかる・後藤さん:2015/08/12(水) 08:44:30
>>68
× 臨海学校ご始まる前に
○ 臨海学校が始まる前に

投稿前チェックでは何度見ても気付かなかった誤字に、投稿した瞬間に気付く現象は不思議だなぁ。

70彩妃言葉:2015/08/12(水) 12:22:18
『烏頭白くして馬角を生ず、胸に秘めるは銀狼の牙』


(どうしてこんなことに……)

部屋の外から聞こえた誰かの悲鳴、直後に襲われた不思議な感覚。
気がつけば見たことのない場所におよそ1クラス分の生徒たちとフードを被った人物だけがいた。
混乱する私たちに向かい謎の人物は一方的に要件を伝えて目の前から消えてしまった。
まともに顔を合わせることもなかった人、一言二言の短い会話を交わした人、少し仲良くなれたかなと自分では思っている人。
サマーキャンプの最終日、昨日まで一緒に食事をしていた人たちと今では殺し合いをすることになっている。

何人かの生徒はこんな状況にも関わらず落ち着いて的確に作戦を指揮していた。
戸惑うだけの私はそれに従い植物の鎧を身に纏い先頭に歩み出る、歴史の本で見かけた西洋甲冑を真似た物だ。
嗜む程度には武術の心得もあるが誰かを傷つける為に使いたくはない。
穏便に終わってくれれば……そう祈りながら限界まで密度を高めたブラックオルダーの大楯を構える。

だが祈りは届かなかったようだ、通路を塞ぐように前に出ると同時に背後から悲鳴が聞こえる。
誰のものかも何人が発したのかも分からない、だがそれを気にしている余裕などなかった。
知識があるが故に分かる只者ではない身のこなし、視線の先にいる着物姿の女性、千本桜から目を離すわけにはいかないからだ。

(耐えれて一太刀、二の太刀が振り下ろされれば恐らく……)

大粒の冷汗が頬を伝う、一度生死の境を経験した身とはいえ死への恐怖が無くなった訳ではない。

71彩妃言葉:2015/08/12(水) 12:22:55
「シンフォニーオブディストラクション!」

突如、相手側の生徒のひとり、百道が声を上げる。
指揮棒をかざしそれを大きく振るうと交響曲とは名ばかりのメロディック・パンクな大音量が響き渡る。
それが合図だったかのように一斉に突撃してくる相手の陣営。

「!!」

突然の出来事に気を取られた隙に目の前まで距離を詰められてしまった。
すぐ手の届く範囲に赤牛崎、その後ろに四万十川・陸道のふたり。
そしてもっとも注意していたはずの千本桜がすでに間合いに入っている。
相手の侵入を塞ぐという与えられた役割を果たせなかった自分を責めるがもう遅い、このままでは突破されるのも時間の問題だった。

「angreifen!(攻撃せよ!)」

そう叫んだのは味方の雪月さんだ。

「臆してはいけません!今、ここで攻めなければ地に伏すのは私たちになります!」

そう言って味方を鼓舞すると自らも前線に飛び出していく。
その言葉に素早く対応し行動に移したツツジさんが私の目前にいた赤牛崎を頭の角で大きく薙ぎ払う。
続くように四万十川に照準を合わせたハイレッグ・プリンセスさんの援護射撃を受け、雪月さんが奥にいた陸道を一撃で仕留めた。
あっという間に3人、ほんの一瞬の出来事。今や通路は血の川へと化していた。
しかしもうひとり肝心な相手が残っている。いま彼女の元に辿り着けるのはおそらく私だけ、でも……
この光景を目の当りにした私の身体からふっと力が抜け、膝から崩れ落ちるように座り込んでしまう。

「私には……無理です」

72彩妃言葉:2015/08/12(水) 12:23:30
やらなければやられる、頭では理解していても身体がそれを拒んだ。
手足が震える、汗が止まらない、今にも声を上げて泣きだしそうになる。
そんな私にひとりの生徒が歩み寄り震える私の手を握り優しく微笑んだ、砂漠谷さんだ。

「彩妃さん。大丈夫です、あなたならきっと出来ます」

(出来る? 何を? 誰かを殺めること? それは嫌だ)
(私がやらなければどうなる? 誰かが殺される? 私の目の前で? それも嫌だ)

涙が溢れてくる。否定でもなく肯定でもなく、ただただ俯いたまま顔を横に振る。

「彩妃さん。……いえ、コトハお嬢様」

その様子を見ていたツツジさんが声を発した。
聞きなれたいつもの呼ばれ方、その言葉に反応するように顔を上げる。

「桜子お嬢様とお話になられていたことを覚えていらっしゃいますか?」

白瀬さん、騎士道に興味があると話したら毎日いろいろと教えてくれた人。
騎士道部の練習に混ぜてもらい西洋の剣術や騎乗での槍の扱いも教えてもらった。
そんな彼女が最後に教えてくれたこと、それは騎士の美徳と言われているものだった。

「『PROWESS』『COURAGE』『HONESTY』『LOYALTY』『GENEROSITY』『FAITH』『COURTESY』『FRANCHISE』、意味は解りますか?」

淡々と単語を並べた白瀬さんに私は頷いた。

「あなたに足りないのは『COURAGE』、つまり勇気です。」

そう言うと白瀬さんは鞘から純白の剣を引き抜き頭上に掲げた。
窓から差し込む光に照らされた剣とそれを掲げる白瀬さんはいつもより凛々しく、美しく見えた。

「勇気を持って行動できれば自分の気持ち、己の信念を貫き通すことができる」
「彩妃さん、あなたはそれ以外のものを十分持ち合わせています。あとはもう一歩前に踏み出すことが出来れば」

掲げた剣の刃を横に向けゆっくりと私の頭の上へ降ろす。

「Adversity makes a man wise.(艱難汝を玉にす)汝が真の騎士とならんことを」

73彩妃言葉:2015/08/12(水) 12:24:39
(白瀬さん……私の気持ち、私の信念)

(今までずっと誰かに守られてきた、だから今度は私が誰かを守りたい)

(例え罪を背負うことになっても、仲間の命を守るために!)

砂漠谷さんの手を力強く握り返す、砂漠谷さんはそれに先ほどと同じ言葉で応えてくれた。
正直に言えばまだ怖い、震える足でなんとか立ち上がるのがやっとだ。
それでもみんなの声に、眼差しに励まされ全身に力を込める。握られていた手はまだほんのりと温かさを感じる。
大楯を左腕に持ち替え空いた右腕に白く干乾びた植物の根を巻き付かせる。
そして勇気を出して力強く一歩を踏み出す、体を前傾姿勢にして恐怖で脚が止まらぬように。

二歩、三歩……楯を突き出し右手を引いたまま徐々にスピードを上げていく。
涙でぼやけた視界に相手を捉えて仲間が開いてくれた道を、血に濡れた通路を全速力で真っ直ぐに突き進む。

(あなたに教えてもらったこと、私の気持ち、全部この一突きに込めます!)

右腕に巻き付いていた根が螺旋を描くように伸び、真っ白なランスを造りだす。
まるで一角獣の角のように長く鋭く尖ったそれを掛け声とともに力いっぱい突き出す。

「やあぁぁぁあああ!!」

渾身の一突きは突進を避けようと身を逸らした千本桜の胸に突き刺さりそのまま背中へと貫いた。

74彩妃言葉:2015/08/12(水) 12:26:04

・・・

・・・・・・

あれからどれくらい時間が経っただろうか、あれほど阿鼻叫喚な光景だった場所が今は嘘のような静寂が包んでいる。
私は自身の前に立つ満開の枝垂桜に先の戦いで散っていった者たちへの祈りを捧げる。
この季節はずれの桜の木は彼女の、千本桜さんの死の間際の願い。それに対しての私の精一杯の償いでもある。

『解語の花 - シダレザクラ』

胸を貫いた右手のランスはそのまま彼女の全身を包み込むようにその姿を変えていった。
ここまで鮮やかに咲き誇っているのは彼女の最後まで美しくありたいという気持ちの表れだろうか。

(でも……もしあの時、一瞬でも躊躇っていたらどうなっていたのだろう)

もしかしたらここに眠っているのは私になっていたかもしれない。
嫌な想像が頭をよぎるが今はもう戸惑うようなことはしない。

他人から愛でられるだけの鑑賞花ではなく、害をなす者が現われたときは私の信じる人の為に猛毒にもなろう。
……その代償にこの身が朽ち果てることになったとしても。

長い祈りを終えると向きを変え仲間の下へと足を進める。
一陣の風がコトハの長い髪を大きく揺らすと色とりどりのゼラニウムの花びらが舞い上がった。
舞い散る桜と踊るように風に流されたふたつの花はどこまでも続く深い闇へと吸い込まれていった。


彩妃言葉からみたハルマゲドン 応援SS『烏頭白くして馬角を生ず、胸に秘めるは銀狼の牙』終

75後藤さんぐるみ:2015/08/13(木) 00:45:32
コキンちゃんと後藤さんぐるみ(原材料:死体)
tp://t.co/DOGAJcjAjM

76衣紗早包:2015/08/13(木) 19:58:36
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=51955810
雨竜院愛雨さん水着version

77DT:2015/08/14(金) 02:08:27
学マホログ『MM1;バンディット・チューター』
tp://0006.x0.to/oo/gif/gakumaho13.html

78DT:2015/08/14(金) 02:14:06
>>77 wikiページも作ってます。キャラクターステータスなどはこちらです。
tp://www35.atwiki.jp/gakumahoa/pages/442.html

79雨竜院愛雨:2015/08/15(土) 08:19:20
その後の後藤さん。
tp://t.co/dZCxFTtyHe

最後のコマの子は、猫岸舞(ねこぎし・まい)さんと南海螢(みなみ・ほたる)さんです。

80流血少女GK:2015/08/16(日) 11:30:54
>>62-65
13点+10点=23点


>>66-68
15点+10点=25点

>>70-74
10点+15点=25点

>>75
7点

>>76
6点

>>77-78
(10点+15点)×4人(SD含む)=100点

>>79
17点

81流血少女GK:2015/08/16(日) 12:15:56
合計:1459.5点

82彩妃言葉:2015/08/18(火) 16:57:03
『青い紅葉を夏の栞に』


「ごめん!どいてどいて!!」

ギターケースを背負った少女は大慌てで生徒が行き交う廊下を走り抜ける。
サマーキャンプの特別授業、授業と言っても中等部・高等部合同のレクリエーションのようなもので成績には影響しない。
彼女の選択した科目は調理実習……なのだが。

「調理室が反対側だったなんて聞いてないよー!」

今にも遅刻しそうな状況である。
目的地へ全速力で向かう少女の前にひとりの生徒の後ろ姿が見えた。

「そこの人、ちょっと通るよ!」

注意を促すと前にいた生徒は足を止めて振り返り、すっと横に移動する。
本人は向かってくる少女に道をあけたつもりなのだが進行方向は運悪く両者とも被ってしまった。

「え、ちょっ!?」

ぶつかるまいと必死に向きを変えて衝突は辛うじて回避できた。
だがバランスを崩しこのままでは背中から倒れてしまう、踏み込んだ足に力を込めて無理に体を捻る。

ガツンッ!

背負ったギターは守られたが勢いは止まらず廊下の壁に顔からぶつかってしまった。
最後の抵抗にと壁に着いた手をその場に残しながらずるずると崩れ落ちる。
先ほどの生徒が前のめりに倒れた少女の横にしゃがみながら心配そうに声をかける。

「……大丈夫、ですか?」
「ん、らいひょうふ」
「廊下を走ったらいけない、と思います」

鼻の頭を真っ赤にし、薄っすらと涙を浮かべながら少女は苦笑いをして見せた。

83彩妃言葉:2015/08/18(火) 16:57:42
「うぅ、まだちょっとヒリヒリする」
「あの、保健の先生に診てもらった方が……」
「これくらい我慢できるから大丈夫。それよりあなたは移動しないの?サボリ?」

ぶつかられそうになった生徒は顔を横に振る。

「じゃあ選択科目は?ここ来る前に参加希望を提出してるはずだけど」
「学校はお休みしていたから、分かりません」
「あらら、病欠かぁ」

壁にもたれかけた体を起こしながらしゃがんでいる生徒に手を差し出す。

「よかったら一緒に来ない?私、調理実習取ってるんだ」

でも、と言いかけた生徒の手を取り立ち上がらせる。

「ほら、チャイム鳴っちゃうよ。中・高ごちゃまぜなんだからひとり増えたくらい分からないって。」

すっかり人のいなくなった廊下をふたりで手を繋いで走っていく。
調理室に着いたのは丁度チャイムが鳴ると同時だった。

「セーフ!」
「アウトです。まったく、中等部の生徒のお手本になるような行動を心掛けてください」
「はーい、気をつけまーす」

ため息をつく教師とくすくすと笑う他の生徒たちに迎えられて教室の中に入るふたり。
すでに皆それぞれの調理台に班分けされているようで順番に出席を確認していく。

「あなた達はペアでの班になりますね、えっと名前は……『あやさき』さん」
「「はい」」

大きく元気な声と小さくもはっきりとした声、二つの返事が教室に響いた。
同時に返事をしたふたりは驚き、互いに顔を見合わせる。
数秒のあいだ何をするでもなくただ見つめ合い、頬を紅く染める。
再び周りの生徒たちから聞こえる笑い声、ふたりの『あやさき』もそれにつられるように笑いあった。


彩妃言葉&綾崎楓 応援SS『青い紅葉を夏の栞に』終

84衣紗早包:2015/08/19(水) 06:03:47
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52062244
衣紗早包と後藤さん

85一十:2015/08/21(金) 22:49:54
【微エロ?】一十(にのまえ・くろす)&雨竜院愛雨。
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52110254
臨海学校と言えば一緒にお風呂はお約束ですが、今回の黒幕でさえフシュらざるを得ない魅惑の百合ボディ。
十「百合ではなく」

86一十:2015/08/22(土) 00:41:56
【微エロ】一十(にのまえ・くろす)&千本桜明菜。
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52113254
ようこそ……百合の世界(全て尊き百合想郷)へ……。

十「百合ではな……ちょっと説得力ないですね……」

87雨竜院愛雨:2015/08/22(土) 06:22:17
黒幕らしい発言を心がける tp://t.co/qZqdWUWZTW

サバゲー部の岡林エリカさんは、また別のキャンペーンに参戦してもらいたいです。
tp://t.co/UlScZzJV9d

ツツジちゃーん!
tp://t.co/mxpdK0R3Af

番長G応援スレ156番の4コマを読んだ感想です。
tp://t.co/W5ONLa19fX

88流血少女GK:2015/08/22(土) 18:29:37
>>82-83
10点+5点=15点

>>84
6点+4点=10点

>>85
15点+25点=40点

>>86
18点+20点=38点

>>87
10点
3点
13点+5点=18点
7点
合計38点

89雨竜院愛雨:2015/08/24(月) 20:23:27
『濁流』


●矢達愛雨、12歳。

まるで滝の中にいるような、激しい雨が降り続いていた。
友達と遊んだ小川は、茶色く濁った荒々しい竜に姿を変え、生まれ育った山あいの町も、川の傍に建てられた学校も、仲の良かった友達も、みんなみんな呑み尽くしていった。
山の上に逃れた私は、雨でずぶ濡れになり、震えながら、私の世界が壊れていく様をじっと見つめていた。

……ああ、いまなら解る。
世界は美しく、そして、美しい世界が壊れて行くさまも、また美しい。
私は、驚きと悲しみの中、荒れ狂う竜の力強さと美しさに心を奪われていたのだ。

私の家、矢達家は、モンゴルに出自を持つ降雨術を代々修めてきた。
あの日、私の世界を壊した竜は、私のお父さんが喚んだ竜なのだ。
お父さんは、何処かへ姿を消した。
私は雨が嫌いになり、水の因果を遡らせるネガ雨乞い能力に目覚めて妃芽薗学園に入ることになった。
私の家族も、町と同じようにバラバラに壊れてしまった。


●矢達メア、15歳。

ぽつり。ぽつり。
雨が降り出す音がした。
そして、微かに鼻をくすぐるあのにおい。
金雨ちゃんの雨だ。

私は金雨ちゃんの姿を探そうとしたが、喉が割かれて血が溢れ、体が動かなかった。
だから、耳を澄まし、雨音の中に金雨ちゃんを感じることにした。
静かに降る雨が、呪われた旧校舎を優しく包み込んでいる。
あんなに嫌いだった雨の音なのに、死の間際に聞いた雨音は、とても心地良かった。

私という存在は、金雨ちゃんと友達になるために、生まれてきたのだ。
私の短い人生は、決してつまらないものではなかった。
たった数日だけど、金雨ちゃんの友達として過ごすことができたのだから。


―□□―


『あいつ』が何者なのか、正確なところは解らない。
黒い服。黒い髪。黒い肌。
便宜上『悪魔』と読んだりもしているが、その表現は半分ぐらい外れだろう、と思う。

「お前の魂を、貰い受けに来た」
黒い男は、そう言った。
代償として、あらゆる望みを叶えよう、と。

「それなら……私は金雨ちゃんと、一緒に生きたい。今までしっかり見てなかった美しい世界を、はっきりとこの目で見たい!」
私はそう答えた。
金雨ちゃんを守って死んだのは、とても満足のいく死にかただと思ったのだけど、どうやら私は意外に欲が深いらしい。
黒い男は、深く頷いてパチリと指を鳴らした。
黒い光が溢れ出し……ふと気が付くと妃芽薗学生寮の自分の部屋のベッドの中にいた。

そして私は、ハルマゲドンの起きなかった世界にやってきた。
枕元には、新品の可愛らしい眼鏡が置いてあった。
そっと眼鏡を手にして、かけてみる。
度もぴったり。
窓から射し込む柔らかい月明かりに照らされた部屋は、胸を締め付けるように美しく、涙が自然と溢れ出した。

90雨竜院愛雨:2015/08/24(月) 20:23:53
●雨竜院愛雨、17歳。

世界は美しく、生きることは、楽しみに満ち溢れている。
私は眼鏡をかけて、この素晴らしい世界を存分に堪能している。
ときどき悪魔がちょっかいかけてくるけど、それもまたエキサイティング!
だけど……

降雨術を本格的に学んで、お父さんの失敗は何だったのか考えるために雨竜院家に入門した。
金雨ちゃんとも親友になれた。
元の世界では過ごせなかった時間を、金雨ちゃんと一緒にたっぷり楽しむことができた。
金雨ちゃんの家族もみんないい人!
畢(あめふり)姉さんはとってもポジティブで、その前向きな考え方には大きく影響を受けた。
雨弓(あゆみ)兄さんはとっても体が大きくて、めちゃくちゃ強く、それでいて意外と優しいとこもある。
雨竜院家に入門して、本当に良かったと思う。
でも……

金雨ちゃんは良い子。
とっても良い子。
大好き。
大親友。
合えて良かった。
友達になれて良かった。

それなのに、私は物足りない。
どうやら私は意外に欲が深いらしい。

こっちの世界の金雨ちゃんとは、まだ殺しあったりしていない。
こっちの世界の金雨ちゃんと、一緒にパンツを洗ったりしていない。
こっちの世界の金雨ちゃんは、私が金雨ちゃんを護って死んだことを知らない。
それは、私にとって真実の金雨ちゃんではない。

深夜零時。
しっとりとした気持ちのよい雨に打たれながら、私は真っ暗な妃芽薗の森を歩く。
ああ、闇に包まれた世界もまた美しい。
でも、この世界には大切なものが足りない。

「やあ、お嬢さん。こんな夜中に独り歩きは危ないですよ」
いつの間にか、私のすぐ隣の闇が人の形を取って話しかけてきた。
「こんばんは、悪魔さん。今夜も世界はとっても綺麗。貴方には感謝してますよ」
「そいつは重畳。だが、それにしては浮かない顔をしてるね?」
悪魔のくせに勘のいいやつ!
「うふふ、残念なお知らせ。この世界はとっても素敵。でも、私は物足りないの。きっと私は『満足な死』を迎えられない。だから、私の魂を貴方は手に入れられない」

その時、人の形をした黒い闇が、ひときわ闇を深めたような感覚がした。
雨にずぶ濡れの全身が、ぞくりと凍りついた。

「うむ。それは困る。だから、少し調べものをしてたんだ。君と向こうの金雨ちゃんが逢える方法をね」
「……向こうの世界の金雨ちゃんに逢えるの!?」
「然り。ハルマゲドンによって世界は結びつけられ、君と胡蝶は再びひとつになるのだ!」

ハルマゲドン……凄惨な記憶が呼び起こされ、私の体が竦み上がる。
喉にファントムじみた痛みを感じ、反射的に手で押さえる。
雨を感じる。冷たく、優しい雨を。

……簡単なことだった。
マスコットの材料とするため、無垢な魂を欲していた八部会。
厄介な邪魔者を消すため、完璧な抹消手段を求めていた鮫氷しゃち。
鮫氷さんの歓心をかうためなら、どんなことでもしたいと考えている鴉取するめ。
それぞれの背を、軽く後押ししてやるだけで、ハルマゲドンは起きたのだ。

濁流がゴウゴウと流れ、臨海学校を飲み込んだ。
後藤老師が、死んだ。
照本音隠さんが死んだ。呉石佐衣子さんが死んだ。
四万十川アリスさんが、百道桃さんが、綾崎楓さんが、家乃ステラさんが、陸道舞靡さんが、草野珠さんが、千本桜明菜さんが、赤牛崎黄毬さんが死んだ。
十星迦南さんが死んだ。瓶ヶ森瓶花さんが死んだ。
死にゆく皆の姿は、儚く、気高く、美しかった。

さあ、次は私の番だ。
私はこの濁流を渡りきって、金雨ちゃんに逢えるだろうか。
ああ、ワクワクする。
なんて世界は美しく、楽しいのだろうか。

私は眼鏡をかける。
美しい世界の瞬間瞬間を心の中にくっきりと焼き付けるために。
そして、やりたい事は全部やるし、会いたい人には全員会う。
そう決めたんだ。

(『濁流』おわり。最終第三戦につづく)

91雨月星座:2015/08/24(月) 22:07:05
1.5戦目SS『海を泳ぐ果実』


 死者は語る。生者は語らない。
 真(まこと)、正しい情報とは生きている存在からは決して生まれないものだと思う。
 枝からもぎ取る前にかぶり付こうとする獣はいないだろう。イブだってそれくらいの知恵はあったに違いない。禁断の実を蛇が揺り落したと言うのなら、やわに実らせた神の方が悪い。
 口に運ばれ、果実は死んだ。バベルの塔が崩れる前、蛇と女の間で交された言葉に興味がある。
 
 まぁ……結局のところ、創世記の話なんてローカルな神話に身を委ねる気にもなれない。
 帝國の臣民としては八百万の神に信を置いてもいいのだろうが、少し気が乗らなかった。
 星座の神はたった一人きりだ。神社にも教会にも敬意は払うが、信仰は持てない。
 たとえそれが間違った神を崇める行為であって誰かが自分を地獄に落とすなら好きにすればいいと思った。
 
 信じて、己の存在と言う掛け替えのなさを賭けられるのなら外れても悔いはない。
 死ぬとは結んだ果実が落ちて口に運ばれることを言うのだから。



 ゆらゆらと海を流れてくる果実があった。
 夕闇を過ぎて青黒い色が混じり出した波の中で、二つきりの。
 見逃すことは出来ないし、そうする気はなかった。

 「えい」
 掴み取った果実は巨大だった。
 リンゴか、それくらいはあるかもしれない。
 「やめろや、てめ!」
 ツッコミは迅速だった。と、言う言葉と全く同時に拳が飛んでくるのは流石の口舌院である。
 幸いにも転校生として修練を積んだ星座が一撃で意識を刈り取られる、などと言うことは無かったものの流石にくらくらとする。歯が何本かぐらぐらとするような気さえしてきた。
 
 「おいおい、寝ぼけてんのかい。同輩さー、ん?」
 脅しつけるような、それでも一緒に遊んだ縁か、極めてフレンドリーな笑みを向けられる。  
 それに応えないといけないと思って、にこりと返す。

 「にこにこ」
 「に、にこにこ?」
 「にこにこ……」
 ビーチバレーを一緒に遊んだ菅生燈(すごう・とう)をいつの間にか間に加え、三人はぷかぷか水面に揺れていた。この微笑ましいやり取りに釣られてきたらしい。
 ちなみに顔の無い菅生さんがどう笑っているのか、文章にすると非常に分かりづらいが対面すると意外とわかりやすい。絵面としてはなにかぱっとして暖かなオーラが見えると言えばいいだろう。 

 「ちぇっ」
 先に音を上げたのは果たして口舌院五六八さんだった。
 思えば、先の拳も地に足のついていない海中では力が入っていないようだった。
 
 口舌院家の鬼札「口舌院五六八(くぜついん・いろは)」。
 顔の無い白札「菅生燈」
 それに星の雨(柳)こと、この僕「雨月星座(うげつ・せいざ)」を加えた三人は今生まれたままの姿で海を漂っている。
 時代錯誤で親切な山賊団に襲われて、そちらはなんとか撃退できたものの用心棒の転校生に口舌院さんが翻弄され、菅生さんが百万円と言う大金を提示することで何とか引いてもらうことが出来た。
 
 しかし、ビーチバレーなる未知の競技で遊ぶことになった僕がウールの水着に着替えて来たところ。
 『おいおい、なんだよこのダッセー水着。うりゃー……ぁ』
 『……ぁ』
 まさか袖を通すことなんてないと思っていたのに、衆目で裸体を晒す羽目になるなんて……!
 百年の間にここまで水着が進化していたなんて……、不覚! 雪月さん風に言うならFuck。

 せめて三十年後ならビキニがいた。
 
 そして、ビーチバレーに興じた我々は全滅し、クリティカルにも脱衣する羽目になった。
 流石に菅生さんを屈強な男相手に立たせるには無理がありました。
 ここで口舌院さんが豪快に全裸になっていなかったらどうなっていたか、わかりません。
 何だか気まずくなったチュートリアル山賊団とその用心棒の先生は、互いに顔を合わせ自分たちの法が間違っているような顔をすると、それでも悪党らしく辺りに散らばっていた金目の物(=女子高生の衣服)を持ち去って逃げるように立ち去っていきました。

 「紳士ですねー」
 そして、何だかんだで口舌院と星座は同じようなことを考えていた。
 『何もなさげに素っ裸になっているこいつが一番大物だ(ぜ)……』



92雨月星座:2015/08/24(月) 22:07:57

 透き通った海と言っても少女の体を隠すには物足りない。
 つるりと滑った血色のいい肌を上から順番に見ていくと、途中で数えが止まるのが実に残念だ。
 期せずに海に飛び込んだ弊害と言え、ぱらりと広がった彼女の長い黒髪は愛おしい。海藻と言うのは野暮な表現だ。黒みがかかった青は、この海の色に似てけれど透明であることを許さない。
 視線が、肢体がぶつかって、垣間見えた凶相にぎょっとして離れていくとしても、髪は光を帯びた瑠璃の色である。見た者はいつしかの思い出にすることだろう。
 
 髪を梳く手はほっそりとして長く、女性らしい丸みを帯びている。
 だが、その綺麗な手が傲然とした暴力に変わることを思えばエナメル質の歯の輝きに思えてくるだろう。それは一対の鮫の顎に等しいのかもしれない。つまり口舌院五六八は人喰い鮫だと思う。
 事実、先程サメの着ぐるみを着た少女が凄まじい勢いで岸へと逃げ帰ったところだ。
 砂浜で何やらサメっぽい女の子と話し込んでいるが笑い飛ばされて終いだった。

 さて、その手から繋がった肩甲骨から見ていこう。
 仰向けになったサメ、じゃなかった五六八は浮袋を持っている。だから浮く。
 ここで口舌院五六八=鮫説は否定される。一般的に鮫は浮袋を持たないからだ。
 何を戯言とのたまう者もいよう。だが、此度の騒乱で見え隠れする魔物の影を思ってみよう。
 気付けば「鮫」が隠れている。生と死を繋ぎ、血の海からやってくるニライカナイからの使者(死者)は鮫と少なからずつながっていた。
 そして、そんな裏表ない五六八さんのことを星座は好ましく思う。ついでにそのおっぱいも。 



93雨月星座:2015/08/24(月) 22:08:57

 お二人さんのど付き合い、まぁまぁまぁと海水かき分け押しのけまして。
 役得役得役得と、おっぱいついでにガン見です。
 『その果実をもぎ取ってみたかった』と言うセクハラ発言は、黙ってあげましょ全く同意。
 私達美人さんは三美人。男の子なら黙っちゃいないっさ、だけどもここは女の海原、残念だ。

 そんなわけで菅生燈です、こんばんわ。
 顔を売って生活しているって自己紹介するといの一に「どうやって?」って聞かれますけれーど、それは答えぬ言わぬが花よ、企業秘密よそうしましょう。
 
 いやはや全くホントのところ。すっぱになったはその場のノリよ。
 流石にその後我に返るとて、恥じらうわけなくためらわず。
 だからと言って堂々と。まっぱでホテルに取って返すわけもなく。口舌院さんが提案したるはそーのまま、一糸まとわず気兼ねなく。遊ぶことです、そうでした。
 いーや、人目を気にするとかそな意味言えば今は切った張ったの非常事態。
 で、ついこの間私たち。生徒会と番長グループ、殺し合ったハルマゲドンの続行中。
 
 「いやー、今更ながら困りましたねー。お二方」
 「ええ、セーラー服は替えがあるとしてコートを持っていかれたのは口惜しいですね」
 「いっやー、あたしなんて替えなんて持ってきてないから参ったぜー。星座―、貸してくんない?」
 はっはっはーと爽やかに笑う口舌院さんです。あんな自然界に存在しないような色のセーラー服着て楽しいんでしょうか? それより、舎弟の五十鈴――山本五十鈴さんでしたっけ?
 彼女(しゃてい)の彼女(パシリ)なら彼女(オヤビン)に次元くらい越えて尽くして(ボコられて)くれるでしょう。
 あ、そうだ。

 「それも困ったんですけど。我々ってこの『メロウズ』から出られないんじゃなかったでしたっけ?」
 「うん、そだよ?」
 「いや、そだよって軽いですねー。頼もしいですけど」
 そして、我々は戦いを強要されている。俗に言うハルマゲドンって奴です。
 「だってさ。あんな三下連中が来れたんだぜ?」
 「あ」
 らくしょーらくしょーとうそぶく彼女を一刀両断するのは星座さんでした」
 「それは無理ですね?」
 「なんでだよー。つまりは、あいつらは元々部外者だから貸切で、閉め切られた空間(ココ)に来れるわきゃない。ハルマゲドン後に巻き込まれたってことかよ?」
 ぷーっと、頬を膨らませる仕草はなるほど魅力的です。
 この表情を拝むまでに何人が肉塊と化すのだろうかと、不謹慎なことを考えてしまうほどに。
 
 「違いますよ?」

94雨月星座:2015/08/24(月) 22:09:10

 「じゃあなんでさ?」
 「転校生」
 その答えは予想外だったのか、目をぱちくりさせます。私も見る人が見れば同じことをやっているとわかるはずです。
 「あの親切な方々についておいでの転校生の先生なら次元を越えることなど容易い筈です」
 「マジかよ、あんな名前からして出オチな連中にそんな秘密が……」
 「僕も転校生ですが、障壁に関しては口舌院さんの方が詳しい通り突破は無理ですね」
 「そうなんですか?」
 「あー、ホントだぜ。いろは順に五十種類くらい殴り方変えてみたけど無理だったわー」
 たははと手を振りながら、それが冗談なのかそうでないのかよくわからない凄味がありました。
 迂闊には突っ込めません……!
   
 「さて、ぷかぷか丸も少々飽きましたか。詳しい話はホテルに帰ってからにしましょう」
 「おいおーい、全裸で帰るのかー、痴女だぜー、いってらー」
 「それも悪くないですが、皆さんで行きましょう。ほら、こうして――」

 こうして私達はホテルへの帰路につきました。
 なるほど、髪を伸ばしていたのはかく言う時のためなのですね。
 まぁ、私の場合は顔なんてありませんから誰かわかりませんけどね!

 さて、私はいいとして。 
 こんな提案をする雨月さんは本当に大正時代の人間なのでしょうか?
 口舌院さんは文学少女らしく『潮騒』とか言っていましたがわけがわかりません。雨月さんも小首を傾げています。
 「口舌院さんはお胸が大きいですね?」
 「おいおいおい、ストレートに言うねえ。こんなん邪魔っ気しかしないんだぜ?」
 そうですね、これはいいものです。
 白磁なんてありふれた言い草じゃなくて、もっと生きているような感触が愛おしいと言うか。
 隣り合う星座さんも体つきに釣り合っていて悪くはないんですが、どうも生気に乏しいおっぱいです。こちらこそ陶磁器のような、って表現が似合います。小振りですが、芸術品のようでいて時折丹塗りの彩色が栄える、なんともいいものですね。人魚姫ならぬ人形姫、なーんて。

 口舌院さんはなるほど、人魚姫と言うか海の女神さまですね。気まぐれに船乗りを破滅させる魔性ですが、悪意はありません。嵐のような人です。
 命に満ちていて、それ自体が生き物のようにうねり、しなり、戦うようなそんな感じ。
 なるほど、ナウシカみたいですね。その者青き衣を纏い(以下略)、なーんて。
 
 「ま、切り札同士仲良くしようぜ」
 「それよりその乳、いらないなら僕にくれませんか?」
 「お前にだけはやらん」   
 「ふふっ」
 「あははははっ」

 その日、長い髪を纏わせて陸に上がった三人の女たちのことを少女たちは呆然と見送った。
 彼女達に生まれた感情についてここで語ることはしないが、ただ一人「おっぱい」とのコメントを聴取できたことをここに追記しておく。
 


95衣紗早包:2015/08/26(水) 00:34:54
tp://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=52190317
後藤うささんと他1名

96鬼姫計都/羅喉:2015/08/28(金) 21:25:47
最終戦前短編SS

【姉妹】

ここはリゾート施設『メロウズ』、既に日は陰り、宵闇に包まれた海辺を星空の照明が映し出す。
さざ波をBGMに、心地好い潮風が吹き抜ける。

日中はリゾート地と言うだけあり活気に満ちた砂浜も、今は夜と言うことで私を除けば誰も居ないし、とても静かなものだ。

そこへ――――――――――ザッ、ザッ、ザッと砂地を踏み締めこちらに向かってくる足音が一つ。

ザッ――ザッ―――ザッ――――――っと不意に足音が止まる。

「―――――義姉さん」
気配のする方を見遣ると、暗闇の中、微かな星明かりに照された鬼姫災禍が佇んでいた。

「呼ばれた様な気がしてな、散歩がてら来ちゃったよ」
「ここに来れば、義姉さんに会える気がしたんです」
「こうして顔合わせるのは何年ぶりだ?確か――――――――――」
「約3年ぶりかと――――――――――」
「そうか、そんなに経ってたか、時が過ぎるのは速いものだな(苦笑)」
「この3年、義姉さんを捜しながら剣の修行も積んで来ました、まさか、このような形で再会するとは夢にも想いませんでした」
「全くだ、まるで性質(たち)の悪い夢を見てるようだな――――――――――」
「口舌院五六八さんも仰ってましたが、『運命』なのかもしれません――――――――――」
「『運命』か――――――――――、何の因果が巡ったのやら、とんだ神様の悪戯ってやつかしら」

本当に神様と言う全知全能な存在が居るのなら、きっとそいつは性格が悪い陰険な奴なんだと思う。

「義姉さんは、何で妃芽薗に居るんですか?」
「ん、ちょっとね――――――――――絶対に殺しておきたい奴が居るんだよ」
「物騒な物言いですね、義姉さんにそこまで言わせる相手って――――――――――『転校生』、ですか?」
「そうね、転校生と言うかは解らないけど、それと同等かそれ以上の力を持った存在ね」
「なら、生徒会と番長陣営が力を合わせて立ち向かえば良いじゃないだすか!!」
「それは無理ね」
「どうして!!」
「私達は退くに引けない所まで来てしまったのよ、生徒会は私の仲間を殺した、私達番長陣営も生徒会のメンバーを殺しているわ」
「もう、手遅れなんですね――――――――――」
「――――――――――あぁ、手遅れだ」

本当に、性質(たち)の悪い神様の悪戯だ。
私はただ、義姉さんを捜しだして連れ戻す、それだけでここまで来たのに、まさか敵同士になるなんて。

「計都、戦いたくないなら逃げなさい、次に会った時は―――――――――本気で殺すから」

もう逃げられない、義姉さんには義姉さんの戦う理由が、私には私の戦う理由が有る。
ここで仲間を見棄てるのは鬼姫の名折れ、私は覚悟を決めた。

「災禍義姉さん!!」
「ん?」
「貴女を討ち取るのは私達です!!」
「おう!!」
「では、戦場で――――――――――」
「じゃあな、計都、羅喉―――――――――」

私達は別れた、次に会う時は――――――――――殺す。

「さよなら、災禍義姉さん」
「さよなら、私の大好きな妹達」

(完)

97後藤さんぐるみ:2015/08/29(土) 14:57:30
ツイッターで登場キャラをリクエストしてもらって4コマ書きました。

リクエスト「ステラちゃん」「照本」「十七夜月さん」
tp://t.co/TRUbBBHBYU

リクエスト「レマちゃん」「霜月」
tp://t.co/QzD1Fcu84m

98翻訳者:2015/10/25(日) 14:30:12
雪月通訳エピローグSS「幽霊売りの男」
口舌院家と暦のさらなる発展を祈って
tp://www.pixiv.net/novel/show.php?id=5960504

99雨竜院愛雨:2015/11/27(金) 19:09:39
『ワールドゴージャー・デザイア』


テーブルの向こうに座っているのは、夜のように真っ黒な服を着た男。
黒い手袋をはめた手で、土地を5枚タップする。
島、島、沼、沼、沼。
「3点の《Sealed Fate》。ライブラリの上から3枚、公開してください」
漆黒の男はそう言った。
照明の加減だろうか、男の表情は見えない。
いや、そもそも“彼”は男性なのか?
その存在感はどこまでも黒く暗く、作り物めいていた。

ライブラリをめくる。
《柿内萌華》、《一二兆》、《雨竜院愛雨》。
私は息を飲む。
この三人は、行方不明になっているサバゲ部メンバーだ。
「《萌華》、《二兆》の順でライブラリに戻してください。《愛雨》はゲームから取り除きます」
深い奈落の底から響いてくるような冷たい口調で、“彼”はそう宣言した。


(Ω)


「ジャーッジ!」
そう叫びながら私は目を覚ました。
夜明け前。
常夜灯だけが照らす、薄暗いメロウズホテルの一室。
何がジャッジだ。
“彼”のプレイングには特に問題はなかったはずだ。
でも――四人部屋のうち、私の下の段、ウルメのベッドは数日前から空のままだ。
噂では、行方不明になった生徒たちはどこかでハルマゲドンを強いられているらしい。
そして――私にはとても信じがたいことだが、ハルマゲドンを企てたのは他ならぬウルメ……雨竜院愛雨であるという説がまことしやかに囁かれていた。

外はまだ夜の帷に覆われたままの静かなる闇。
しかし、期待と不安が入り交じった予感に突き動かされて、私はジャージの上着を羽織り外に出た。
行方不明者多発を受けて外出禁止令が出ているが、構わない。
いざとなったら“この子”が私を守ってくれる。
右手にマスケット銃型のエアライフル。
左腕には、大切なぬいぐるみ。

森を抜け、浜辺に出る。
開けた空には星々が煌めく。
先客は既に何人かいた。
私と同様に、何かを感じ取ってホテルを抜け出してきたのだろう。
よく知った人影を見つけて、声をかける。
「こんばんは、進藤部長。部長も変な夢、見たんですか?」
「こんばんは、岡林さん。夢は別に見てない。でも、なんだか胸騒ぎがしてね。これ以上、悪いことが起きなければいいんだけど」
妃芽薗学園サバイバルゲーム部の部長・進藤莉杏は、その小さく愛らしい見た目に似つかわしくない、低く落ち着いた声で答えた。
部長の手には突撃銃。肩にはガンベルト、腰には手榴弾が数個とアーミーナイフ。フル装備だ。

空の闇が徐々に色を薄めて行くのを、私たちは陶然と浜辺に立ち尽くし見上げていた。夜明けが近い。
そして、水平線から朝日の端が顔を出す瞬間。メロウズの浜辺と異界が交錯した。

100雨竜院愛雨:2015/11/27(金) 19:10:25
墓、墓、墓、墓、無数の墓標。
浜辺に一瞬だけ現れた、異世界の光景。
地の果てを越えて奈落の底まで敷き詰められているような、広大無辺な禁忌の墓所。
それらが全て山ノ端一人の墓であると、なぜだかはっきりと解った。

墓所のヴィジョンは白い朝日の光にかき消されるように消え失せ、再び浜辺の光景が戻ってきた。
そして――消えた生徒達が戻ってきた!
臨海学校から姿を消した何十名もの生徒達。
そのうちの、およそ半数が突然浜辺に姿を現したのだ。
怪我をしている子もいる。
正気を失ってるらしき子もいる。
でも、彼女達は帰ってきたのだ!

「柿内! 二兆!」
進藤部長が迅速に部員の姿を捕捉し、素早く接近して二人を強く抱き締めた。
「部長……。柿内萌華、無事に帰投しました!」
目の端に涙を滲ませながら、柿内さんが小さく敬礼する。
「いたたっ、ちょっと部長、強く締め付けすぎにゃー」
二兆さんが、おどけた口調で部長のハグからするりと抜ける。
二人とも、元気そうだ。よかった!

「……ウルメちゃんは?」
辺りを見回してもウルメの姿がみあたらないので、私は二人に聞いてみた。
「ウルメ先輩は……ハルマゲドンの戦いで……」
「華々しく戦って死んだにゃ……どうしてハルマゲドンを起こしたのか、何も語らないままに……」
夢の中で見た男の姿を思い出す。
彼はあの時、笑っていたのではなかったか?
私の膝から力が抜ける。砂浜にへたりこむように腰を落とす。
そこから先のことは、あまりよく覚えていない。


(Ω)


「妃芽薗サバイバルゲーム部、全員生還!」

あの時、進藤部長はそう宣言したように記憶している。
振り絞るような、悲痛な声だった。
ハルマゲドンの首謀者は、もはや部員ではないという宣言である。
私だけでなく、サバゲ部の誰もが、明るく前向きなウルメのことは好きだった。部長だって同じだ。
しかし、部員からハルマゲドンの首謀者を輩出したとあっては、部活存亡に関わる大問題である。
だから、サバゲ部と雨竜院愛雨は無関係。それを公式発表とするしかない。
部長が苦渋の決断をしたことは理解できたので、誰もそれに異を挟むことはなかった。

「もうすぐね、私、金雨ちゃんにまた逢えるんだよ」

ウルメが姿を消す数日前。
どこかで腕を骨折して帰ってきたウルメは嬉しそうにそう言っていた。

「何言ってるの? 毎日会ってるじゃない?」
「うん。金雨ちゃんとは会ってるんだけどね。本当の金雨ちゃんには長いこと逢えてないって言うか……」
「変なの。それより、安静にしてなきゃ駄目だよ」
「ありがと。でも、やらなきゃいけないこと沢山あってね」

それが、ハルマゲドンを引き起こしてまでやりたいことだったのだろうか。
戦いの果てに命を落としたウルメは、「本当の雨竜院金雨」に逢うことができたのだろうか。
わからない。

たった一人の逢いたい人のために、多くの人の命を奪うハルマゲドンを引き起こすなんて馬鹿げたことだと思う。
だけど――私は、手にしたぬいぐるみの顔をじっと見つめた。
私にも、再び逢いたい相手がいる。
もし、世界の全てを生け贄に捧げることで願いが叶うなら。もう一度、逢えるなら。
私だって、悪魔の囁きに耳を貸さない自信はない。

出発の時間だ。
バスが、ゆっくりと走り出す。
車内には、行きにはなかった空席が幾つか。
入院が必要だった人たちの席と、二度と還ってこないであろう人たちの席だ。
さようなら、メロウズ。
さようなら、臨海学校。
そして永遠にさようなら、ウルメちゃん。
後頭部の手術跡が、じくじくと痛む。
もう一度、ウルメちゃんとサバゲーしたかったな。


(雨竜院愛雨エピローグ『ワールドゴージャー・デザイア』おわり)

101翻訳者:2015/12/03(木) 09:49:16
雨月星座エピローグSS「十二階上の女たち」
tp://www.pixiv.net/novel/show.php?id=6000339
こちらも一応張り付けておきますね。
大正時代は本格的に書いてみたい時代であります。

102ももじ:2015/12/05(土) 17:26:37


103雨竜院愛雨:2015/12/22(火) 12:20:53
『さよなら、美しい世界』

胴体に大きく穿たれた穴が二つ。
真っ赤な血が、濁流のように流れ出す。
致命傷。
雨竜院愛雨は、もはや助からない。
愛雨は、激痛にまみれながら、笑った。楽しかったから。
自分が引き起こしたハルマゲドンの中で、自分が死んでゆく運命に納得できたから。

――我、生きずして死すこと無し。

「向こうの世界」で体験できなかった、素晴らしい人生を私は生き直すことができた。
会いたい人には会えるだけ会ったし、やりたい事はできるだけやった。

――理想の器、満つらざるとも屈せず。

「向こうの世界」の雨竜院金雨と再会することは叶わなかった。
しかし、やれるだけの事はやったのだ。
大切なのは、結果だけではない。

――これ、後悔とともに死すこと無し。

だから、これは『満足な死』なのだろう。
(……悪魔よ)愛雨は宣言する。(お前の勝ちだ。私の魂は、好きにするといい)

愛雨は懐から眼鏡を取りだし、再び装着した。
己を仕留めた鬼姫災禍の顔を、よく見るために。
災禍の隻眼は、既に愛雨のことを見てはいなかった。
その視線は愛雨の後方、災禍の愛すべき妹たちに注がれている。
その表情は、微かに笑っていた。
愛雨は、災禍の表情を美しいと思った。
死の運命を覚悟し、恐れず、乗り越えようと挑む者の顔だ。

自分はこんな表情をすることができていただろうか。
多分、できていただろう、と愛雨は考える。
たとえそうでなかったとしても、大地に撒かれた己の鮮血が描き出した赤は美しく、それでいいと思った。

最期に、やりたいことがある。
震える手で、マカロフPMのソフトエアガンを構える。
「『リフメア……」
タタン。二連射。
紫色の波動を帯びたプラスチックの弾丸がふたつ、地面に広がる赤い色に飛び込む。
「……サーキュレイション』」
血溜まりから水分が奪われ、天地遡行の雨となって天に昇る。
そして、再び慈雨に姿を変えて降ってくる。
ゆとり粒子の含まれた、癒しの雨なのであろうか。
腹に穿たれた孔の痛みが、和らいでいるように愛雨は感じた。

雨竜院愛雨は誇らしげに胸を反らして空を見上げ、そのまま仰向けに地面へと倒れる。
見上げる空は、『閉鎖された墓地』の不穏な灰色の曇り空。
そして、しとしとと穏やかに身体を包むサーキュレイションの雨降り。
ああ、この世界は美しい。
愛雨は、自分がこの世界の一部であったことを心底誇らしく思った。

降り注ぐ雨が、愛雨の流した血を洗い流してゆく。
そして、愛雨の存在そのものも、洗い流されてゆく。

こうして、雨竜院愛雨の魂は……矢達メアの魂は、この世界の輪廻の輪から切り離された。
――――永遠に。

(雨竜院愛雨の物語、おわり)


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