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ダンゲロス流血少女MM:生徒会応援スレ

91雨月星座:2015/08/24(月) 22:07:05
1.5戦目SS『海を泳ぐ果実』


 死者は語る。生者は語らない。
 真(まこと)、正しい情報とは生きている存在からは決して生まれないものだと思う。
 枝からもぎ取る前にかぶり付こうとする獣はいないだろう。イブだってそれくらいの知恵はあったに違いない。禁断の実を蛇が揺り落したと言うのなら、やわに実らせた神の方が悪い。
 口に運ばれ、果実は死んだ。バベルの塔が崩れる前、蛇と女の間で交された言葉に興味がある。
 
 まぁ……結局のところ、創世記の話なんてローカルな神話に身を委ねる気にもなれない。
 帝國の臣民としては八百万の神に信を置いてもいいのだろうが、少し気が乗らなかった。
 星座の神はたった一人きりだ。神社にも教会にも敬意は払うが、信仰は持てない。
 たとえそれが間違った神を崇める行為であって誰かが自分を地獄に落とすなら好きにすればいいと思った。
 
 信じて、己の存在と言う掛け替えのなさを賭けられるのなら外れても悔いはない。
 死ぬとは結んだ果実が落ちて口に運ばれることを言うのだから。



 ゆらゆらと海を流れてくる果実があった。
 夕闇を過ぎて青黒い色が混じり出した波の中で、二つきりの。
 見逃すことは出来ないし、そうする気はなかった。

 「えい」
 掴み取った果実は巨大だった。
 リンゴか、それくらいはあるかもしれない。
 「やめろや、てめ!」
 ツッコミは迅速だった。と、言う言葉と全く同時に拳が飛んでくるのは流石の口舌院である。
 幸いにも転校生として修練を積んだ星座が一撃で意識を刈り取られる、などと言うことは無かったものの流石にくらくらとする。歯が何本かぐらぐらとするような気さえしてきた。
 
 「おいおい、寝ぼけてんのかい。同輩さー、ん?」
 脅しつけるような、それでも一緒に遊んだ縁か、極めてフレンドリーな笑みを向けられる。  
 それに応えないといけないと思って、にこりと返す。

 「にこにこ」
 「に、にこにこ?」
 「にこにこ……」
 ビーチバレーを一緒に遊んだ菅生燈(すごう・とう)をいつの間にか間に加え、三人はぷかぷか水面に揺れていた。この微笑ましいやり取りに釣られてきたらしい。
 ちなみに顔の無い菅生さんがどう笑っているのか、文章にすると非常に分かりづらいが対面すると意外とわかりやすい。絵面としてはなにかぱっとして暖かなオーラが見えると言えばいいだろう。 

 「ちぇっ」
 先に音を上げたのは果たして口舌院五六八さんだった。
 思えば、先の拳も地に足のついていない海中では力が入っていないようだった。
 
 口舌院家の鬼札「口舌院五六八(くぜついん・いろは)」。
 顔の無い白札「菅生燈」
 それに星の雨(柳)こと、この僕「雨月星座(うげつ・せいざ)」を加えた三人は今生まれたままの姿で海を漂っている。
 時代錯誤で親切な山賊団に襲われて、そちらはなんとか撃退できたものの用心棒の転校生に口舌院さんが翻弄され、菅生さんが百万円と言う大金を提示することで何とか引いてもらうことが出来た。
 
 しかし、ビーチバレーなる未知の競技で遊ぶことになった僕がウールの水着に着替えて来たところ。
 『おいおい、なんだよこのダッセー水着。うりゃー……ぁ』
 『……ぁ』
 まさか袖を通すことなんてないと思っていたのに、衆目で裸体を晒す羽目になるなんて……!
 百年の間にここまで水着が進化していたなんて……、不覚! 雪月さん風に言うならFuck。

 せめて三十年後ならビキニがいた。
 
 そして、ビーチバレーに興じた我々は全滅し、クリティカルにも脱衣する羽目になった。
 流石に菅生さんを屈強な男相手に立たせるには無理がありました。
 ここで口舌院さんが豪快に全裸になっていなかったらどうなっていたか、わかりません。
 何だか気まずくなったチュートリアル山賊団とその用心棒の先生は、互いに顔を合わせ自分たちの法が間違っているような顔をすると、それでも悪党らしく辺りに散らばっていた金目の物(=女子高生の衣服)を持ち去って逃げるように立ち去っていきました。

 「紳士ですねー」
 そして、何だかんだで口舌院と星座は同じようなことを考えていた。
 『何もなさげに素っ裸になっているこいつが一番大物だ(ぜ)……』




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