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ダンゲロス流血少女MM:生徒会応援スレ

1流血少女GK:2015/08/01(土) 23:45:07
生徒会用

70彩妃言葉:2015/08/12(水) 12:22:18
『烏頭白くして馬角を生ず、胸に秘めるは銀狼の牙』


(どうしてこんなことに……)

部屋の外から聞こえた誰かの悲鳴、直後に襲われた不思議な感覚。
気がつけば見たことのない場所におよそ1クラス分の生徒たちとフードを被った人物だけがいた。
混乱する私たちに向かい謎の人物は一方的に要件を伝えて目の前から消えてしまった。
まともに顔を合わせることもなかった人、一言二言の短い会話を交わした人、少し仲良くなれたかなと自分では思っている人。
サマーキャンプの最終日、昨日まで一緒に食事をしていた人たちと今では殺し合いをすることになっている。

何人かの生徒はこんな状況にも関わらず落ち着いて的確に作戦を指揮していた。
戸惑うだけの私はそれに従い植物の鎧を身に纏い先頭に歩み出る、歴史の本で見かけた西洋甲冑を真似た物だ。
嗜む程度には武術の心得もあるが誰かを傷つける為に使いたくはない。
穏便に終わってくれれば……そう祈りながら限界まで密度を高めたブラックオルダーの大楯を構える。

だが祈りは届かなかったようだ、通路を塞ぐように前に出ると同時に背後から悲鳴が聞こえる。
誰のものかも何人が発したのかも分からない、だがそれを気にしている余裕などなかった。
知識があるが故に分かる只者ではない身のこなし、視線の先にいる着物姿の女性、千本桜から目を離すわけにはいかないからだ。

(耐えれて一太刀、二の太刀が振り下ろされれば恐らく……)

大粒の冷汗が頬を伝う、一度生死の境を経験した身とはいえ死への恐怖が無くなった訳ではない。

71彩妃言葉:2015/08/12(水) 12:22:55
「シンフォニーオブディストラクション!」

突如、相手側の生徒のひとり、百道が声を上げる。
指揮棒をかざしそれを大きく振るうと交響曲とは名ばかりのメロディック・パンクな大音量が響き渡る。
それが合図だったかのように一斉に突撃してくる相手の陣営。

「!!」

突然の出来事に気を取られた隙に目の前まで距離を詰められてしまった。
すぐ手の届く範囲に赤牛崎、その後ろに四万十川・陸道のふたり。
そしてもっとも注意していたはずの千本桜がすでに間合いに入っている。
相手の侵入を塞ぐという与えられた役割を果たせなかった自分を責めるがもう遅い、このままでは突破されるのも時間の問題だった。

「angreifen!(攻撃せよ!)」

そう叫んだのは味方の雪月さんだ。

「臆してはいけません!今、ここで攻めなければ地に伏すのは私たちになります!」

そう言って味方を鼓舞すると自らも前線に飛び出していく。
その言葉に素早く対応し行動に移したツツジさんが私の目前にいた赤牛崎を頭の角で大きく薙ぎ払う。
続くように四万十川に照準を合わせたハイレッグ・プリンセスさんの援護射撃を受け、雪月さんが奥にいた陸道を一撃で仕留めた。
あっという間に3人、ほんの一瞬の出来事。今や通路は血の川へと化していた。
しかしもうひとり肝心な相手が残っている。いま彼女の元に辿り着けるのはおそらく私だけ、でも……
この光景を目の当りにした私の身体からふっと力が抜け、膝から崩れ落ちるように座り込んでしまう。

「私には……無理です」

72彩妃言葉:2015/08/12(水) 12:23:30
やらなければやられる、頭では理解していても身体がそれを拒んだ。
手足が震える、汗が止まらない、今にも声を上げて泣きだしそうになる。
そんな私にひとりの生徒が歩み寄り震える私の手を握り優しく微笑んだ、砂漠谷さんだ。

「彩妃さん。大丈夫です、あなたならきっと出来ます」

(出来る? 何を? 誰かを殺めること? それは嫌だ)
(私がやらなければどうなる? 誰かが殺される? 私の目の前で? それも嫌だ)

涙が溢れてくる。否定でもなく肯定でもなく、ただただ俯いたまま顔を横に振る。

「彩妃さん。……いえ、コトハお嬢様」

その様子を見ていたツツジさんが声を発した。
聞きなれたいつもの呼ばれ方、その言葉に反応するように顔を上げる。

「桜子お嬢様とお話になられていたことを覚えていらっしゃいますか?」

白瀬さん、騎士道に興味があると話したら毎日いろいろと教えてくれた人。
騎士道部の練習に混ぜてもらい西洋の剣術や騎乗での槍の扱いも教えてもらった。
そんな彼女が最後に教えてくれたこと、それは騎士の美徳と言われているものだった。

「『PROWESS』『COURAGE』『HONESTY』『LOYALTY』『GENEROSITY』『FAITH』『COURTESY』『FRANCHISE』、意味は解りますか?」

淡々と単語を並べた白瀬さんに私は頷いた。

「あなたに足りないのは『COURAGE』、つまり勇気です。」

そう言うと白瀬さんは鞘から純白の剣を引き抜き頭上に掲げた。
窓から差し込む光に照らされた剣とそれを掲げる白瀬さんはいつもより凛々しく、美しく見えた。

「勇気を持って行動できれば自分の気持ち、己の信念を貫き通すことができる」
「彩妃さん、あなたはそれ以外のものを十分持ち合わせています。あとはもう一歩前に踏み出すことが出来れば」

掲げた剣の刃を横に向けゆっくりと私の頭の上へ降ろす。

「Adversity makes a man wise.(艱難汝を玉にす)汝が真の騎士とならんことを」

73彩妃言葉:2015/08/12(水) 12:24:39
(白瀬さん……私の気持ち、私の信念)

(今までずっと誰かに守られてきた、だから今度は私が誰かを守りたい)

(例え罪を背負うことになっても、仲間の命を守るために!)

砂漠谷さんの手を力強く握り返す、砂漠谷さんはそれに先ほどと同じ言葉で応えてくれた。
正直に言えばまだ怖い、震える足でなんとか立ち上がるのがやっとだ。
それでもみんなの声に、眼差しに励まされ全身に力を込める。握られていた手はまだほんのりと温かさを感じる。
大楯を左腕に持ち替え空いた右腕に白く干乾びた植物の根を巻き付かせる。
そして勇気を出して力強く一歩を踏み出す、体を前傾姿勢にして恐怖で脚が止まらぬように。

二歩、三歩……楯を突き出し右手を引いたまま徐々にスピードを上げていく。
涙でぼやけた視界に相手を捉えて仲間が開いてくれた道を、血に濡れた通路を全速力で真っ直ぐに突き進む。

(あなたに教えてもらったこと、私の気持ち、全部この一突きに込めます!)

右腕に巻き付いていた根が螺旋を描くように伸び、真っ白なランスを造りだす。
まるで一角獣の角のように長く鋭く尖ったそれを掛け声とともに力いっぱい突き出す。

「やあぁぁぁあああ!!」

渾身の一突きは突進を避けようと身を逸らした千本桜の胸に突き刺さりそのまま背中へと貫いた。

74彩妃言葉:2015/08/12(水) 12:26:04

・・・

・・・・・・

あれからどれくらい時間が経っただろうか、あれほど阿鼻叫喚な光景だった場所が今は嘘のような静寂が包んでいる。
私は自身の前に立つ満開の枝垂桜に先の戦いで散っていった者たちへの祈りを捧げる。
この季節はずれの桜の木は彼女の、千本桜さんの死の間際の願い。それに対しての私の精一杯の償いでもある。

『解語の花 - シダレザクラ』

胸を貫いた右手のランスはそのまま彼女の全身を包み込むようにその姿を変えていった。
ここまで鮮やかに咲き誇っているのは彼女の最後まで美しくありたいという気持ちの表れだろうか。

(でも……もしあの時、一瞬でも躊躇っていたらどうなっていたのだろう)

もしかしたらここに眠っているのは私になっていたかもしれない。
嫌な想像が頭をよぎるが今はもう戸惑うようなことはしない。

他人から愛でられるだけの鑑賞花ではなく、害をなす者が現われたときは私の信じる人の為に猛毒にもなろう。
……その代償にこの身が朽ち果てることになったとしても。

長い祈りを終えると向きを変え仲間の下へと足を進める。
一陣の風がコトハの長い髪を大きく揺らすと色とりどりのゼラニウムの花びらが舞い上がった。
舞い散る桜と踊るように風に流されたふたつの花はどこまでも続く深い闇へと吸い込まれていった。


彩妃言葉からみたハルマゲドン 応援SS『烏頭白くして馬角を生ず、胸に秘めるは銀狼の牙』終


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