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ダンゲロス流血少女MM:生徒会応援スレ

89雨竜院愛雨:2015/08/24(月) 20:23:27
『濁流』


●矢達愛雨、12歳。

まるで滝の中にいるような、激しい雨が降り続いていた。
友達と遊んだ小川は、茶色く濁った荒々しい竜に姿を変え、生まれ育った山あいの町も、川の傍に建てられた学校も、仲の良かった友達も、みんなみんな呑み尽くしていった。
山の上に逃れた私は、雨でずぶ濡れになり、震えながら、私の世界が壊れていく様をじっと見つめていた。

……ああ、いまなら解る。
世界は美しく、そして、美しい世界が壊れて行くさまも、また美しい。
私は、驚きと悲しみの中、荒れ狂う竜の力強さと美しさに心を奪われていたのだ。

私の家、矢達家は、モンゴルに出自を持つ降雨術を代々修めてきた。
あの日、私の世界を壊した竜は、私のお父さんが喚んだ竜なのだ。
お父さんは、何処かへ姿を消した。
私は雨が嫌いになり、水の因果を遡らせるネガ雨乞い能力に目覚めて妃芽薗学園に入ることになった。
私の家族も、町と同じようにバラバラに壊れてしまった。


●矢達メア、15歳。

ぽつり。ぽつり。
雨が降り出す音がした。
そして、微かに鼻をくすぐるあのにおい。
金雨ちゃんの雨だ。

私は金雨ちゃんの姿を探そうとしたが、喉が割かれて血が溢れ、体が動かなかった。
だから、耳を澄まし、雨音の中に金雨ちゃんを感じることにした。
静かに降る雨が、呪われた旧校舎を優しく包み込んでいる。
あんなに嫌いだった雨の音なのに、死の間際に聞いた雨音は、とても心地良かった。

私という存在は、金雨ちゃんと友達になるために、生まれてきたのだ。
私の短い人生は、決してつまらないものではなかった。
たった数日だけど、金雨ちゃんの友達として過ごすことができたのだから。


―□□―


『あいつ』が何者なのか、正確なところは解らない。
黒い服。黒い髪。黒い肌。
便宜上『悪魔』と読んだりもしているが、その表現は半分ぐらい外れだろう、と思う。

「お前の魂を、貰い受けに来た」
黒い男は、そう言った。
代償として、あらゆる望みを叶えよう、と。

「それなら……私は金雨ちゃんと、一緒に生きたい。今までしっかり見てなかった美しい世界を、はっきりとこの目で見たい!」
私はそう答えた。
金雨ちゃんを守って死んだのは、とても満足のいく死にかただと思ったのだけど、どうやら私は意外に欲が深いらしい。
黒い男は、深く頷いてパチリと指を鳴らした。
黒い光が溢れ出し……ふと気が付くと妃芽薗学生寮の自分の部屋のベッドの中にいた。

そして私は、ハルマゲドンの起きなかった世界にやってきた。
枕元には、新品の可愛らしい眼鏡が置いてあった。
そっと眼鏡を手にして、かけてみる。
度もぴったり。
窓から射し込む柔らかい月明かりに照らされた部屋は、胸を締め付けるように美しく、涙が自然と溢れ出した。


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