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ダンゲロス流血少女MM:生徒会応援スレ

103雨竜院愛雨:2015/12/22(火) 12:20:53
『さよなら、美しい世界』

胴体に大きく穿たれた穴が二つ。
真っ赤な血が、濁流のように流れ出す。
致命傷。
雨竜院愛雨は、もはや助からない。
愛雨は、激痛にまみれながら、笑った。楽しかったから。
自分が引き起こしたハルマゲドンの中で、自分が死んでゆく運命に納得できたから。

――我、生きずして死すこと無し。

「向こうの世界」で体験できなかった、素晴らしい人生を私は生き直すことができた。
会いたい人には会えるだけ会ったし、やりたい事はできるだけやった。

――理想の器、満つらざるとも屈せず。

「向こうの世界」の雨竜院金雨と再会することは叶わなかった。
しかし、やれるだけの事はやったのだ。
大切なのは、結果だけではない。

――これ、後悔とともに死すこと無し。

だから、これは『満足な死』なのだろう。
(……悪魔よ)愛雨は宣言する。(お前の勝ちだ。私の魂は、好きにするといい)

愛雨は懐から眼鏡を取りだし、再び装着した。
己を仕留めた鬼姫災禍の顔を、よく見るために。
災禍の隻眼は、既に愛雨のことを見てはいなかった。
その視線は愛雨の後方、災禍の愛すべき妹たちに注がれている。
その表情は、微かに笑っていた。
愛雨は、災禍の表情を美しいと思った。
死の運命を覚悟し、恐れず、乗り越えようと挑む者の顔だ。

自分はこんな表情をすることができていただろうか。
多分、できていただろう、と愛雨は考える。
たとえそうでなかったとしても、大地に撒かれた己の鮮血が描き出した赤は美しく、それでいいと思った。

最期に、やりたいことがある。
震える手で、マカロフPMのソフトエアガンを構える。
「『リフメア……」
タタン。二連射。
紫色の波動を帯びたプラスチックの弾丸がふたつ、地面に広がる赤い色に飛び込む。
「……サーキュレイション』」
血溜まりから水分が奪われ、天地遡行の雨となって天に昇る。
そして、再び慈雨に姿を変えて降ってくる。
ゆとり粒子の含まれた、癒しの雨なのであろうか。
腹に穿たれた孔の痛みが、和らいでいるように愛雨は感じた。

雨竜院愛雨は誇らしげに胸を反らして空を見上げ、そのまま仰向けに地面へと倒れる。
見上げる空は、『閉鎖された墓地』の不穏な灰色の曇り空。
そして、しとしとと穏やかに身体を包むサーキュレイションの雨降り。
ああ、この世界は美しい。
愛雨は、自分がこの世界の一部であったことを心底誇らしく思った。

降り注ぐ雨が、愛雨の流した血を洗い流してゆく。
そして、愛雨の存在そのものも、洗い流されてゆく。

こうして、雨竜院愛雨の魂は……矢達メアの魂は、この世界の輪廻の輪から切り離された。
――――永遠に。

(雨竜院愛雨の物語、おわり)


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