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ダンゲロス流血少女MM:生徒会応援スレ

100雨竜院愛雨:2015/11/27(金) 19:10:25
墓、墓、墓、墓、無数の墓標。
浜辺に一瞬だけ現れた、異世界の光景。
地の果てを越えて奈落の底まで敷き詰められているような、広大無辺な禁忌の墓所。
それらが全て山ノ端一人の墓であると、なぜだかはっきりと解った。

墓所のヴィジョンは白い朝日の光にかき消されるように消え失せ、再び浜辺の光景が戻ってきた。
そして――消えた生徒達が戻ってきた!
臨海学校から姿を消した何十名もの生徒達。
そのうちの、およそ半数が突然浜辺に姿を現したのだ。
怪我をしている子もいる。
正気を失ってるらしき子もいる。
でも、彼女達は帰ってきたのだ!

「柿内! 二兆!」
進藤部長が迅速に部員の姿を捕捉し、素早く接近して二人を強く抱き締めた。
「部長……。柿内萌華、無事に帰投しました!」
目の端に涙を滲ませながら、柿内さんが小さく敬礼する。
「いたたっ、ちょっと部長、強く締め付けすぎにゃー」
二兆さんが、おどけた口調で部長のハグからするりと抜ける。
二人とも、元気そうだ。よかった!

「……ウルメちゃんは?」
辺りを見回してもウルメの姿がみあたらないので、私は二人に聞いてみた。
「ウルメ先輩は……ハルマゲドンの戦いで……」
「華々しく戦って死んだにゃ……どうしてハルマゲドンを起こしたのか、何も語らないままに……」
夢の中で見た男の姿を思い出す。
彼はあの時、笑っていたのではなかったか?
私の膝から力が抜ける。砂浜にへたりこむように腰を落とす。
そこから先のことは、あまりよく覚えていない。


(Ω)


「妃芽薗サバイバルゲーム部、全員生還!」

あの時、進藤部長はそう宣言したように記憶している。
振り絞るような、悲痛な声だった。
ハルマゲドンの首謀者は、もはや部員ではないという宣言である。
私だけでなく、サバゲ部の誰もが、明るく前向きなウルメのことは好きだった。部長だって同じだ。
しかし、部員からハルマゲドンの首謀者を輩出したとあっては、部活存亡に関わる大問題である。
だから、サバゲ部と雨竜院愛雨は無関係。それを公式発表とするしかない。
部長が苦渋の決断をしたことは理解できたので、誰もそれに異を挟むことはなかった。

「もうすぐね、私、金雨ちゃんにまた逢えるんだよ」

ウルメが姿を消す数日前。
どこかで腕を骨折して帰ってきたウルメは嬉しそうにそう言っていた。

「何言ってるの? 毎日会ってるじゃない?」
「うん。金雨ちゃんとは会ってるんだけどね。本当の金雨ちゃんには長いこと逢えてないって言うか……」
「変なの。それより、安静にしてなきゃ駄目だよ」
「ありがと。でも、やらなきゃいけないこと沢山あってね」

それが、ハルマゲドンを引き起こしてまでやりたいことだったのだろうか。
戦いの果てに命を落としたウルメは、「本当の雨竜院金雨」に逢うことができたのだろうか。
わからない。

たった一人の逢いたい人のために、多くの人の命を奪うハルマゲドンを引き起こすなんて馬鹿げたことだと思う。
だけど――私は、手にしたぬいぐるみの顔をじっと見つめた。
私にも、再び逢いたい相手がいる。
もし、世界の全てを生け贄に捧げることで願いが叶うなら。もう一度、逢えるなら。
私だって、悪魔の囁きに耳を貸さない自信はない。

出発の時間だ。
バスが、ゆっくりと走り出す。
車内には、行きにはなかった空席が幾つか。
入院が必要だった人たちの席と、二度と還ってこないであろう人たちの席だ。
さようなら、メロウズ。
さようなら、臨海学校。
そして永遠にさようなら、ウルメちゃん。
後頭部の手術跡が、じくじくと痛む。
もう一度、ウルメちゃんとサバゲーしたかったな。


(雨竜院愛雨エピローグ『ワールドゴージャー・デザイア』おわり)


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