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ダンゲロス流血少女MM:生徒会応援スレ

90雨竜院愛雨:2015/08/24(月) 20:23:53
●雨竜院愛雨、17歳。

世界は美しく、生きることは、楽しみに満ち溢れている。
私は眼鏡をかけて、この素晴らしい世界を存分に堪能している。
ときどき悪魔がちょっかいかけてくるけど、それもまたエキサイティング!
だけど……

降雨術を本格的に学んで、お父さんの失敗は何だったのか考えるために雨竜院家に入門した。
金雨ちゃんとも親友になれた。
元の世界では過ごせなかった時間を、金雨ちゃんと一緒にたっぷり楽しむことができた。
金雨ちゃんの家族もみんないい人!
畢(あめふり)姉さんはとってもポジティブで、その前向きな考え方には大きく影響を受けた。
雨弓(あゆみ)兄さんはとっても体が大きくて、めちゃくちゃ強く、それでいて意外と優しいとこもある。
雨竜院家に入門して、本当に良かったと思う。
でも……

金雨ちゃんは良い子。
とっても良い子。
大好き。
大親友。
合えて良かった。
友達になれて良かった。

それなのに、私は物足りない。
どうやら私は意外に欲が深いらしい。

こっちの世界の金雨ちゃんとは、まだ殺しあったりしていない。
こっちの世界の金雨ちゃんと、一緒にパンツを洗ったりしていない。
こっちの世界の金雨ちゃんは、私が金雨ちゃんを護って死んだことを知らない。
それは、私にとって真実の金雨ちゃんではない。

深夜零時。
しっとりとした気持ちのよい雨に打たれながら、私は真っ暗な妃芽薗の森を歩く。
ああ、闇に包まれた世界もまた美しい。
でも、この世界には大切なものが足りない。

「やあ、お嬢さん。こんな夜中に独り歩きは危ないですよ」
いつの間にか、私のすぐ隣の闇が人の形を取って話しかけてきた。
「こんばんは、悪魔さん。今夜も世界はとっても綺麗。貴方には感謝してますよ」
「そいつは重畳。だが、それにしては浮かない顔をしてるね?」
悪魔のくせに勘のいいやつ!
「うふふ、残念なお知らせ。この世界はとっても素敵。でも、私は物足りないの。きっと私は『満足な死』を迎えられない。だから、私の魂を貴方は手に入れられない」

その時、人の形をした黒い闇が、ひときわ闇を深めたような感覚がした。
雨にずぶ濡れの全身が、ぞくりと凍りついた。

「うむ。それは困る。だから、少し調べものをしてたんだ。君と向こうの金雨ちゃんが逢える方法をね」
「……向こうの世界の金雨ちゃんに逢えるの!?」
「然り。ハルマゲドンによって世界は結びつけられ、君と胡蝶は再びひとつになるのだ!」

ハルマゲドン……凄惨な記憶が呼び起こされ、私の体が竦み上がる。
喉にファントムじみた痛みを感じ、反射的に手で押さえる。
雨を感じる。冷たく、優しい雨を。

……簡単なことだった。
マスコットの材料とするため、無垢な魂を欲していた八部会。
厄介な邪魔者を消すため、完璧な抹消手段を求めていた鮫氷しゃち。
鮫氷さんの歓心をかうためなら、どんなことでもしたいと考えている鴉取するめ。
それぞれの背を、軽く後押ししてやるだけで、ハルマゲドンは起きたのだ。

濁流がゴウゴウと流れ、臨海学校を飲み込んだ。
後藤老師が、死んだ。
照本音隠さんが死んだ。呉石佐衣子さんが死んだ。
四万十川アリスさんが、百道桃さんが、綾崎楓さんが、家乃ステラさんが、陸道舞靡さんが、草野珠さんが、千本桜明菜さんが、赤牛崎黄毬さんが死んだ。
十星迦南さんが死んだ。瓶ヶ森瓶花さんが死んだ。
死にゆく皆の姿は、儚く、気高く、美しかった。

さあ、次は私の番だ。
私はこの濁流を渡りきって、金雨ちゃんに逢えるだろうか。
ああ、ワクワクする。
なんて世界は美しく、楽しいのだろうか。

私は眼鏡をかける。
美しい世界の瞬間瞬間を心の中にくっきりと焼き付けるために。
そして、やりたい事は全部やるし、会いたい人には全員会う。
そう決めたんだ。

(『濁流』おわり。最終第三戦につづく)


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