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俺は小説家を目指している。
58
:
某経大生
:2004/08/19(木) 10:17 ID:F0xZwcIM
眠らない不定冠詞
君はこだわらないことにこだわっている
それはこだわることへの嫉妬、あるいは矜持
無関心の堆積が混沌のイニシアティヴ
破壊への宣誓が名声のインセンティヴ
大気の胎動の予感のためにモチベーティヴ
そして不安を思案する懸案のパースペクティヴ
命の声はわずかにうわずって、切望するものか
いつかの哀愁、ときに郷愁、それらが強襲する因習
無駄の時間が万感のユリイカ
倦怠への進退が解体のエチカ
生命の絶命の声明のためのセネカ
そして快楽に堕落する磊落のエセー
草臥れた旅人にも平等に闇夜の安らぎを
また明日が祝福に満たされた光に満ちますように
揺らぎの懐疑が信義のイリアス
探求への感泣が汲々としたアウグストス
義足の安息の補足のためのメルクリウス
そしてやがて瞳に神の微笑み見んとするオデュッセウス
地獄を巡る旅に癒され、発見し、帰郷する旅
落ちたルシファの哀れな姿はやがて朽ちんとする肉体のメタファー
天使に誘われ、神に抱かれ、大地に堕ちた赤子の錯誤
いま一度、私をみつけだすシュピーレンガイスト
59
:
某経大生
:2004/08/20(金) 21:35 ID:W35Bto9U
君が思い出になる前に
「ホワッツ、マイケル!?」
道行く老人たちに気軽に声をかけると同時に、
得意技の蟹挟みで次々倒し、
気分は姿三四郎!!
・・・仰向けの老人たちが、
ピクピク、ピクピク痙攣して、
まるで、
理科の実験で電極に繋がれたカエルみたい!!
あ!!
危ない!
「円熟味を増した寺尾聰のような目で私を見つめる小学生どもよ!!
私のもとにひれ伏すが良い!ひれ伏すが良い!
ひれ伏すが良い!!」
そう叫んでチャックを上げ下げしながらベルクで半額惣菜を買い漁るお方が現れたわ!!
パッツンパッツンのスパッツで身を固めたあたしは、
しゃべる自動販売機になりすますことで一命を取り留めたのもつかの間、
見切り発車の上州バスに、
今日も今日とて追突される日々であります・・・
飛び出たアバラを戻しながら心の傷を癒す私に、
もう一度笑って見せて。
君が思い出になる前に。
60
:
公房
:2004/08/21(土) 22:50 ID:HdNLY2qk
>>57
>>59
天才 貴方はマジ天才
創作活動頑張ってください!
61
:
某経大生
:2004/08/22(日) 15:02 ID:.XPhfmt.
>>59
僕は不甲斐ない
>>1
さんにかわってここに作品を投稿している者です
穴たの作品って・・・・・・
禿しくイイ(・∀・)!!
かなり笑えた。こしょうを一瓶鼻穴から飲み込んだ気分です。
こんど上州もしもツアーにいっしょに逝きましょう。
次の作品期待してます。
62
:
1
:2004/08/26(木) 07:27 ID:WHi.0nWE
あれ?まだあったんだ。このスレ。
63
:
某経大生
:2004/08/26(木) 21:11 ID:AAqFJWd2
夜を駆ける
「マンチェスター・ユナイテッドゥ!!」
それが近所の子供の名前!!
ビビン麺の海で溺れ死ぬ北島康介を見たのさ、トゥナイト!!
・・・もしも、
もしもアーチェリーが、
股間に矢が刺さる事でしか快感を得られなくなった男たちが、
半裸で股間を射撃し合う競技だったとしたら、
山本博はここまで取り上げられたのだろうか・・・?
そんなアテネを横目にあたしは今夜もプライドかけて、
近所のドブに身を潜め、
通行人が通るたびにゴジラ登場シーンを披露する!!
「デドゥドゥン、
デドゥドゥン、
デドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥドゥン!!」
通行人の悲鳴と同時に、
あたしは泥まみれのカラダを振り乱し、
「シャッコー!! シャッコー!! シャッコー!!」
声にならない雄叫びあげて、
ただひたすらに、市庁を目指す・・・
ああ、我が人生に憂い無し!
64
:
公房
:2004/08/28(土) 01:30 ID:a3WNanOw
(酔ってる今なら俺にも書ける気がする!)
太陽が昇り始めたのは僕のせいだ
いつもそんな表情を浮かべる貴方は魚肉ソーセージの虜!
富岡製糸で働くのは梨を買うため
ムックがそういいながら鏡に火をつける横で私はいつもの銀時計をしてる
時を刻み、人生を刻む
そういえばIZAMは何をしているんだろう…
9月の到来を前に、鈴虫に敵意をむき出しにするアイバーソンを横目にやり
私は言葉に出来ない焦燥感に駆られた
(…才能無いな、俺)
65
:
某経大生
:2004/08/28(土) 16:33 ID:cduHOnZM
>>64
自覚してるだけマシだ
66
:
@
:2004/08/29(日) 03:27 ID:peFTcbbI
「乾電池」
必要になる乾電池
常用される乾電池
使えなくなったら捨てられる乾電池
あまりにも酷すぎる乾電池の一生に哀れみを感じてから
乾電池を捨てずにとっておくようにした。
月日がたつにすれれ溜っていく彼ら…
まるで埋葬されずに残ったかぶと虫のようだった。
かわいそうだったから捨てた。
67
:
@
:2004/08/29(日) 03:46 ID:RHAzMESw
煙草をふかし、夜空を眺めてみる、
そこには無数の虚無という空間が広がっていた。
夜空を見るとき、いつも心の苦しみがある、
過去の過ちを後悔する時間
無数の闇が僕を責める
その中に弱く輝く小さな光があるのに気付く、
闇の中にいながらも頑張る光
それには嫌なことがあっても「負けない!」という意思を感じた。
光があれば闇もある
その二つで世界が両立していると思えば納得ができた。
小さな光は闇が明けるまで我慢して至福の光を得ようと頑張ってるのだと思うと
どこまでも歩いていけるような気がした。
68
:
@
:2004/08/29(日) 04:35 ID:t5v1CglU
ものすごく渋いお茶を彼女に出してみた。
彼女がそれを飲んだあと、僕は震駭した。
色白だった彼女の容姿ががプルプル震えていき、身体中無数にひび割れしていったのである。
彼女はパラパラ落ちていく特殊メイクの中から僕を睨む
僕は思わず叫び声をあげてしまった。それがまずかった
彼女は口器を全開にし、舌を伸ばしてよつんばいになりながら僕を威嚇してきた。
僕はどうすればいいのかわからず、自分の飲んでいた「伊右衛門」を差し出した。
すると彼女は舌でそれを取り上げ、天井に張り付いた。
天井に指跡があったので、僕は彼女の怒りがそれほどのものだと反省した。
「伊右衛門」を彼女は上から撒き散らした。
僕は「あははは、掃除が大変だよ」と笑ってみせた。
彼女は奇声をあげて僕の部屋の網戸を壊して出ていった。
(靴履いて行かなかったけど、いいのかなぁ)
69
:
@
:2004/08/29(日) 05:34 ID:Ts9JPZok
鳥
今日僕は鳥になった。
あのときは空を味方にしたいだけだった。
僕は毎日空の言葉を待っていた。
でもふと気が付いたんだ、受け身だけじゃ恋は実らないってことを…
僕はそれから毎日空をみたら、挨拶をするようにした。
酒を独りで飲むのではなく空と一緒に飲むように空に向かって酒を振り撒くこともした。(ご飯も)
そして毎日空に語りかける事もした。
ある日、「sora@」を宛先にして、メールを送ってみた。
結果はmail-demonからの通達…
「ああ、僕は空に着拒否されてるんだ…」
なぜ嫌われたのか自分でゆっくり考えた。
何も悪い事はしてないと自分でも確信していた。
今度は猛烈なアタックで空を落とすぞ!と決心した。
何をすればいいかはすぐに思いついた。
そして僕は鳥のようにしたが、空にフラれた…
久保塚洋介
70
:
某経大生
:2004/08/29(日) 09:45 ID:v.gFdngs
マイケルは自分のビッグマグナムを軽く擦りながら、アンナの蜜壺にあてがった。
2サイクルエンジンのようにピストンしている。そこから奏でるアンナのエンジン音は凄まじい。2サイクル特有の素
敵な高音域が部屋中に響き渡り、また2サイクル独特な香りが部屋中に漂っ
ている。
今レースが火蓋を切って幕を下ろそうとしている。壁を隔ててレースが
始まった。誰が金メダルを取るのだろうか。そういえばあの人は金メダ
ルが決まったときにこう言ったっけ、「超気持ちイイ」って。
71
:
@
:2004/08/30(月) 03:52 ID:KWC6XG0Y
ザリガニ
今日外を散歩していたら、道端の水路にザリガニが群がっていた。
覗きこむと、みんな一斉に姿を消した。
逃げ遅れがいないかと周りを見てみると
そこには一匹のザリガニが臨戦体勢で構えていた
小さいのに立ち向かう決死の勇気
そんな彼の頑張りに僕の心は最後まであきらめないという感動をかけられた。
唯一の武器「はさみ」で応戦する彼…
僕はその誠意に応えて最後まで付き合うことにした。
そして持ち帰った。
その後海老フライがキライになった…
72
:
あぼーん
:あぼーん
あぼーん
73
:
某経大生
:2004/09/01(水) 22:48 ID:w4a5gtFw
夏が終わる
「右手のドリルアームがうなりを上げて、岩盤を粉微塵に砕いてゆく・・・
それが俺の理想の嫁!!
あなたに出会ったあの日から、頭から離れないんです。フェイスハガーが。」
そんなラブレターを夜な夜な切り刻んだ夏・・・。
あなたのおねだりワイフになろうと心に決めた夏・・・。
天を仰げば、そこには七色に輝くUFO。
私は廃ビルの屋上に駆け上がり、ただぼんやりと光を見つめていた。
「あなたにも、見えるかな・・・?」
右手のドリルアームが、少しさびしそうな光を放っていた。
夏休みの最後の日。
レンタカーにまたがって、
あたしは一路、熱海を目指すの。
潮の香りが血の臭いを洗い流してくれるから。
・・・目が覚めると、いつもそこはサナトリウム。
74
:
5m
:2004/09/04(土) 23:40 ID:OeSRwncY
愛のしるし
母国の人々が、能面みたいな顔をして、
一列になって海に次々と落ちてゆく姿を見たんだ!!
さながらレミングの集団自殺のように!!
・・・それが郵政民営化のあるべき形だなんて、
どこの誰が考えるのだろうか?
あたしは頭の片隅に、
福沢朗がズームイン朝で「お前ら、税金払ってるか!」と、
カメラ目線で発言する様子を思い浮かべながら、
残り少ないひとりの時間を噛みしめていた。
背後に潜む室伏浩二の気配を感じながら・・・
はぁ・・・
この森に迷い込んで、はや3日が過ぎようというのに、
一向に出口が見つからないわ!!
にじり寄る金メダリストたちを血祭りに上げながら、
私はひとり、途方に暮れてばかり。
谷亮子の死に際に、
「プシュルルーン!プシュルルーン!プシュルルーン!!」
って言わせてやったのに!!
もう、何の声なのっ!!
この森を抜ければ、
北島康介が眠るゴミ屋敷まで、
あと数キロだっていうのにっ!!
スカッドミサイルみたいな顔で空からあたしに襲い掛かる柴崎コウをかわしつつ、
右手に捕らえた徳光和夫の顔面に、
「絶望」の二文字を刻み込んでやるのさ、トゥナイト!!
「シャネルズ 黒塗り」で検索しましょう、フェルマーの最終定理を。
探しましょう、わざと遠回りしながら。
それがふたりの愛のしるし。
75
:
某経大生
:2004/09/06(月) 02:38 ID:ODOuWrO2
ここは痛いスレですね
76
:
@
:2004/09/08(水) 17:34 ID:N4VZ89kw
激痛ですね
77
:
某経大生
:2004/09/10(金) 01:02 ID:RuHl0dWo
好きですね
78
:
@
:2004/09/10(金) 09:44 ID:/tRq7CKw
大好きです��
79
:
某経大生
:2004/09/10(金) 09:57 ID:AzFOs.0c
さて、群像の締め切り真間近だし、そろそろ気合いれるかな。
みんなも書けよ!!
80
:
マイケル・J・太郎
:2004/09/11(土) 11:04 ID:WyhSiv6c
1/8 意思と言葉と疎通の精度
男と女の仲が体の関係なくして語られなくなったのは、昨今のテレビドラマ
や漫画雑誌の類の影響なのだろう。それでも、私とモモの関係が純粋に「人
間的なもの」であったのは、私が彼女といっしょにいて単純に楽しいという
か、そんなものは偽善者の戯言といわれるけれど、そういう人間としての魅
力のようなものが感じられたからかもしれない。私たちは友達だった。
大学も学部も学科も違うけれど、なにがきっかけで出会うものかは誰にも分
からないものだ。神様でも知らないかもしれない。私たちはふとしたことで
出会い、そして仲良くなった。忙しい合間にも私たちはときどき、お互いの
位置を確認しあい、その距離を測り、必要なエネルギーを算出し、無駄なコ
ストを費やして出会っていた。そしていつも取り留めのないことばかり話し
ていた。大学のこと、友達のこと、映画のこと、音楽のこと、テレビで見た
こと、気がつけば二、三時間はゆうに過ぎている。飾らない彼女と何の気兼
ねもなく話をしている時間がなにより楽しいと感じた。
私たちはなにか大きなものに愛されているような気がしていた。そういう意
味で共通した何かを持っていたのだと思う。お互い、会えない時間に、お互
いにとって関係のないことをしているときでも、不思議な繋がりのようなも
のを感じ取っていた。母体と繋がれていたときもこんな感じなのだろうかと
感じる。不思議と懐かしい感じがした。
81
:
マイケル・J・太郎
:2004/09/11(土) 11:05 ID:WyhSiv6c
2/8
初恋が遅かったせいかもしれない。私は女性関係に無頓着になっていた。そ
んなだからモモに対しても積極的になれないのさ、友人は言う。でもそれは
違う。信じる必要はないけれど、そんな単純な関係ではなかったはずだと思
えるのだ。
繋がっている感覚、それが夜空に空を見上げるような感覚。私と宇宙の間の
距離のように、果てしなく遠いけれどすぐそばにある。それが存在。いつも
身近にあるのになかなか気づかない不甲斐なさ。
人間はたくさんいるけれど、モモは一人しかいない。そんなモモとこうして
席を並べて、烏河公園の芝生の上にお弁当を広げて話をしていると、とても
幸せだった。
「そうか、これが幸せなんだ。」私はこのとき初めて知った。
生きていることが最近楽しいと感じ始めたのは、モモと出会ってからかもし
れない。無味乾燥とした砂漠のような心、よく友人がそう揶揄していた。
「君らは余計なことに煩わされすぎるのさ。無駄に時間を浪費して、人類的、
いや宇宙的な発見が遅れたらどうする?俺は君らとは違う、君らのいう恋人
なんて性欲の捌け口だろ、そんなもの娼婦と変わらない。俺は生きて真理に
到達してみせる。人間の生が限られているなんて負け犬の戯言だ、俺は神の
定めたタイムリミットを越えて見せる。」いつかの私がいった言葉だった。
82
:
マイケル・J・太郎
:2004/09/11(土) 11:06 ID:WyhSiv6c
3/8
「最近、みんなが俺のことを丸くなったって言うんだ。」
「へぇ、ああ、そぉかもしんないね。」
「そう思うか?」
「満場一致で思うね。」
「満場?だったら五分五分だと思うぞ。」
「あのさ、初めて君に会ったときね、マジでむかついた。」
「突然なにさ?」
「そういうこと、最近いい奴になってきたと思うよ。私から言わせてもらえ
ればまだまだだけどね。君の友達の苦労を考えればさもありなんってとこ?」
「わけがわかんない。」
「わたしも。」
お互い乾いた声で笑いあった。腹の底から笑うなんて、いつの頃からだった
だろうと考える。鬱屈とした少年時代だったのだなと思い出される過去は、
私にとって全ての始まりを象徴するもので、どんなに否定しても、嫌悪して
みても逃れ得ない現実だった。
私は忍辱を噛み殺して、全ての感情を殺して生きていた。それが強さだと教
えたのは、そうした環境に適応しようとする自分だった。何度も自殺しよう
とし、それに失敗し、屈辱を受け、耐えようとし、それに耐えられなくなり、
また自殺を・・・・・・この少年から大人への時間はあまりにも長く感じられた。
83
:
マイケル・J・太郎
:2004/09/11(土) 11:06 ID:WyhSiv6c
4/8
現実逃避だろうか?「君は弱かったんだ。しかたないさ。でも今は違う。君
は強くなった。そしてまだまだ強くなれる。」「誰だって愛情は必要だ。君
に笑いかけてくれる人が、不幸にも君にはいなかったってだけのことさ。シャ
ットダウンするものじゃないよ。それは弱さじゃない。人間に必要なものだ。
誰しも一人では生きて行けない。」「生きていけるさ。絶対になれ。お前な
らなれる。お前はそれを叶える力が欲しいのだろ?限界を超えて見せろ。超
えなければ見えないものがあるんだろ?」「努力と自己欺瞞を一緒くたにし
てはいけない。君はこの世界を通して全ての人と繋がっているんだ。」「科
学が全てを解決するんだ。人は神を目指した。そしてなろうとしている。い
や、なれるんだ。なのに何を恐れる?何を求める?神が欲したのは創造だ。
あとは人間にまかせたのだ。それこそ君に与えられた試練だ。」「一般化し
なければ理解できないのが科学崇拝屋の悪いところだ。神は人間を愛した。
いや、愛するからこそ、人間を創った。美しい世界を、美しい心を。」私は
人を愛することを知らなかった。いや、うすうすは気づいていたかもしれな
い、でも、受けた屈辱のために、私は人を愛することに臆病になっていたの
かもしれない。自然と人を拒絶し、避けて通り、関係を喪失しようとする。
人の心にずかずか入り込んでこようとする者を叩きのめし、二度とそんな考
えを起こさないようにする。私が本能的に生きるのに必要だと峻別した機能
だった。そして、生きるとはなんと無意味なのだろうと悟ったのだ。寂寥の
荒野に一人ただ取り残された世界。人の理解の及ばぬ暗黒の宇宙、そうした
84
:
マイケル・J・太郎
:2004/09/11(土) 11:07 ID:WyhSiv6c
5/8
中にただ一人、死を望むだけの人生。そんなものに、どんな価値があるのだ
ろうか?そもそもありはしなかったのだ。そんなものは、はなっからありは
しなかった。
「君はなぜ生きてるんだ?そんな低脳大学に行っていてむなしくならないか?」
「私はね、好きでこんな低脳大学に通ってるわけじゃないのよ。」
「はっ?なんだそれ?いいわけか?」
「訊いてきたのはそっちでしょうが!?聞きたくないなら言わないよ。」
「わかったよ、短気起こすなって。で、どんな理由?」
「限界・・・・・・みたいな?ほら、勉強なんてどこでもできるっていうでしょ?
こんな大学でもほんとうに勉強できるかデータとりたくてさ。」
「ふん、ばっかじゃねぇの?」
「馬鹿になりきれないようで天才が務まると思ってる?それに、生きるのに
理由なんて探してたら、タイムマシンが完成したとき自分の親を殺しに行く
やつけっこうでてくるかもね。」
「親が自衛策をとって、先に未来に行って、子供を生むかどうか判断するよ
うになるんじゃないか?そっちだと自殺が増えそうな気がするけど。」
「どっちみち、私には縁のない話ね、だってね、愛に満たされてるのよ。み
んなを愛してるの。」
85
:
マイケル・J・太郎
:2004/09/11(土) 11:07 ID:WyhSiv6c
6/8
神を信じているかどうかが問題ではなくて、そういう言葉を自然と口にして
しまう傍若無人ぶりがある種のカルト的要素を連想させた。
愛だのなんだのと、そんな使い古されたキャッチコピーに大枚をはたく人間
がいるのかと訝しくさえ思う。でも、彼女は人間を愛していた。それは父で
あり、母であり、友人であり、いろいろな関係で繋がれた人たちだった。
用意されたフレーズだったのだろうか?私の心を逆撫でする言葉だった。
「愛なんて軽々しく口にするな、無神論者め!」
「私にも神はいるのよ、ただ、まだ現れないだけ。」
「いつ来るんだ?」
「戦争や貧困や、馬鹿みたいなイジメがなくなる頃かな。それまで生きてら
んないと思うけどさ。」
「人間という種は食料のために戦争をするんだ。そして、人口が多くなれば、
人口を調整するために戦争をする。戦争と貧困がなくなることはない。」
「私は一人しかいないのよ。君が日本人と呼ぼうと、三流大学生と呼ぼうと、
そんなの関係ないのよ。私は私、どんなことがあっても私はこの世に一人だ
けしかいないのよ。そして君も。」
「じゃ訊くが、どうやって人口問題を解決する。食料自給率が低下する一方
で、アメリカの穀倉地帯は地下水脈が枯渇しつつある。世界中で土壌流出や
塩害、異常気象の影響で、今後の産出量も低下していくはずだ。なおかつこ
うしている瞬間にも何百人という人間が飢餓で死んでいくんだぞ。君の言っ
86
:
マイケル・J・太郎
:2004/09/11(土) 11:08 ID:WyhSiv6c
7/8
てることははっきりいって偽善者のそれだ。」
「だからしなくてはならないんじゃない。そういう連鎖が、愛があるから、
壊す側がいる一方で、救いの手を差し伸べる人たちがいるんじゃない。デー
タを眺めて手に負えないなんて言ってる君の方がよっぽど偽善者よ。」
モモの手を握って川辺のベンチに座った二人を、煌々と月明かりが照らして
いた。
「誰だって愛されたいのよ。」
頬をつたう涙をぬぐい、彼女は夜の湿った空気を大きく吸い込んだ。さっき
まで嗚咽していた彼女も、今は落ち着いたようだった。
「気分はまだ悪い?」
「だいぶよくなった。ありがとう。」
「疲れてたんだよ。最近忙しかったろ?」
彼女はかすかに俯いた。無言で虚空を見つめる僕の瞳には、何も映し出すも
のはなかったけれど、彼女の姿がはっきりと見て取れた。
「愛してるのよ。言葉じゃ足りないのよ。私はね、みんなを愛してるよ、な
のにどうして・・・・・・。」
「て・・・・・・天使のような君が憎いのさ。次、“さ”ね。」
彼女は顔を上げた。キョトンとして私の顔を覗き込んでから、すぐに笑顔を
取り戻して視線を戻した。彼女は空を見上げた。
87
:
マイケル・J・太郎
:2004/09/11(土) 11:08 ID:WyhSiv6c
8/8
「さ・・・・・・サボタージュ!」
「勇気を持って言いたいことがある。」
「る!?・・・・・・う〜ん、ルール無用だね。」
「寝ても覚めても君のことばかり。」
「リミッター外れた?」
「たくさんの言葉は好きじゃない。」
「異様な雰囲気。」
彼女がクツクツと笑う。
「君に言いたいことはたった一言。」
「ときどきそんなこと言ってるわけ?」
「結婚しよう。・・・・・・次、“う”だよ。」
一瞬沈黙が訪れた。それは不安とか、焦燥みたいなものとはまるで違っていた。
「・・・・・・うん。」
「やった、俺の勝ちだ。」
手と手を取り合った。こういう星空の下にこそ、人間と人間を結ぶ大きな力
の存在を感じる。私たちが生きている理由なんて、私の存在といっしょでち
っぽけだけど、私には、モモという、帰る場所を与えてくれる存在がある。
たったそれだけで、私はこの世界に大きな意味を与えるようになるんだ。
88
:
マイケル・J・太郎
:2004/09/11(土) 11:20 ID:WyhSiv6c
↑人物は架空ですので探しても無駄ですよ〜
89
:
某経大生
:2004/09/12(日) 00:53 ID:U3d9U8uY
つまんない。心理描写がごつい。てか自分に酔ってない?
漢字並べて心吐き出してるだけで。なにも伝わらないし。てか日記ですか?
心の動きを表現する方法は思った言葉を並べるだけじゃなく、情景の色でも
表現出来ると思う。…まあ、俺は書けないけど。
とにかく激痛です。
90
:
あぼーん
:あぼーん
あぼーん
91
:
@
:2004/09/12(日) 14:51 ID:rJiCfxkQ
激板であり激痛でもあるすれですが
自分の感じた事を文章にするのは楽しいです
92
:
ε=\_○ノ<ヒャッホー!
:2004/09/12(日) 15:14 ID:OtA8jGNw
マイケル・J・太郎のコテがあまりにもサブイ(´・ω:;.:... とおもたので
コテがえします。
コテ募集したんですけどだれも相手にしてくれないんで滑りまくリスティー
。・゜゜ '゜(*/□\*) '゜゜゜・。 ウワァーン!!
>>89
本スレの最初の作品についても書きましたが、漏れは自分に酔ってます.。゚+.(・∀・)゚+.゚カコイイ!!
むしろそういう痛いスレだという認識のもとで書いてますがなにか?
あなたも漏れなみに酔ってみろってんだべらんぼうめぇ
>>90
まだいたの?
>>91
うん、楽しいアッヒャッヒャ!ヽ(゚∀゚)ノ ㌧㌦! ㌧㌦!
93
:
5m
:2004/09/19(日) 22:46 ID:Ipvsa4fQ
夢じゃない
「ストップ・ザ・ミュージック!!」
しゃがれた声で初老の男性が、
満員電車で叫ぶ声で目が覚めた朝。
「全てが夢だったらいいのに・・・」
虚ろな目で天井に張り付いた香取慎吾を見つめながら、
私は呟いた。
ここは紀州の白浜の湯。
廃業に追い込まれた大相撲の力士たちが最後に行き着く先と言われる名湯である。
白い湯に浸かりつつ、
往年の名力士たちに思いを馳せる私。
腎臓がマジンガーZのような機械音を上げて
だめになっていくのを感じながら、
私は残り少ない寿命を世界平和に捧げようと神に誓った。
「還暦まであと38年。されど寿命はあと2年。
還暦まであと38年。されど寿命はあと2年。
還暦まであと38年。されど・・・」
アテネ五輪100メートル平泳ぎにて、
金メダルを勝ち取った直後のインタビューでの北島康介の言葉を反芻しつつ、
エンストしそうな車に乗って、やってきました黄泉の国!!
アメリカ人のご都合主義に辟易しながら、
ヘドロの海でキャットファイトを繰り返す私とあなたのフィアンセは、
生まれてすぐの赤子のような声を上げ、
東尋坊へとロケット・ダイブ!
ソクラテスのケツ毛をむしって煎じて飲めば、あたしもあんたも哲学者。
そんな世界はもうこりごりなんだよ!!
94
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:11 ID:Hi49gK4U
合格発表の日(作者不明/2chより)
('A`) カーチャン、県立高校落ちた。
J( 'ー`)し カーチャン、お金がなくて私立は通わせられないよ。定時制でいい?
4年後
('A`) 採用試験、また落ちた。定時制じゃだめなのかな?
J( 'ー`)し タケシはイイ子だから、そのうちイイ仕事が見つかるよ。のんびり探してごらん。
95
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:11 ID:Hi49gK4U
J( 'ー`)し 今の時代、パソコンぐらいできないとダメなのかも・・・
タケシ、パソコンを買おうか?
('A`) パソコンかー、欲しいいけど貧乏でお金ないからいいよ。
J( 'ー`)し カーチャン、パートの仕事増やすから大丈夫だよ。
<店員> インタネットセッティングサービスを含めまして25万円です。
J( 'ー`)し こんなに高い買い物をしたのはオトーチャンが死んでから始めてだよ。
タケシ、いい仕事が見つかるとイイネ。
96
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:12 ID:Hi49gK4U
(`Д) インターネット、オモシレーなー。ネットゲーム最高だぜぃ。お!レア物ゲトだぁ!
J( 'ー`)し タケシ、パソコンのベンキョウ頑張ってるなー。いい仕事が見つかるといいねー。
カーチャンも頑張らなきゃ。
(`Д) ・・・・(パソコンの勉強か、そのうちやるよ。今、ギルドの幹部になっちまって忙しい)
J( 'ー`)し タケシ、カーチャン、ちょっと疲れた。肩を揉んでほしい
(`Д) 今、ベンキョウで忙しいんだよ
J( 'ー`)し タケシ、ガンバッテルナー。カーチャン、嬉しい。いい仕事が見つかって、優しい彼女も
できるよ。
97
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:15 ID:Hi49gK4U
・・・カーチャンの入院
J( 'ー`)し 病院まで10kmもあるのに自転車で見舞いに来るなんて、タケシは親孝行だね。
パソコン頑張ってるから、自動車も買えるようになるよ。
('A`) ・・・・(カーチャン、俺ホントはゲームしかしてないんだよ。)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<医師> おかーさんは、急性白血病で、緊急の事態を要します。
('A`)・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
98
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:15 ID:Hi49gK4U
('A`) RMTの掲示板に書き込んだ
「リ○ージュのアカウント、レアアイテム、ギル売ります。格安です。」
('A`) 売ったお金でカーチャンが好きなチーズケーキとヨーグルトを高いお店で買った。
J( 'ー`)し タケシ、チーズケーキおいしいよ。でも高いんだろ?お金はどうしたの?
('A`) パソコンのバイトで稼いだんだよ
J( 'ー`)し パソコン買ってヨカッタね。もう、いい仕事が見つかったんだね。
99
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:18 ID:Hi49gK4U
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
カーチャンが死んでガランとした病室
<看護婦> タケシ君、パソコン得意なんですってね。オカーサンが毎日自慢してたわ。
パソコンが得意だからいいお仕事がたくさんあるんですってね。
('A`) ウワァァァァーン
―完―
100
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:28 ID:Hi49gK4U
|
|
|
| ∧∧:::
\ (゚Д゚,,)::::: 100は俺が
(| |):::: もらったぜ!!
(γ /:::::::
し \:::
\
\
101
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:36 ID:Hi49gK4U
カーチャンシリーズ第2弾(作者不明/2chより)
幼い頃に父が亡くなり、母は再婚もせずに俺を育ててくれた。
J('ー`)し
( )\('∀`)
|| (_ _)ヾ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
102
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:38 ID:Hi49gK4U
学もなく、技術もなかった母は、個人商店の手伝いみたいな
仕事で生計を立てていた。
┌─────────┐
│ 個 人. 商 店 │
└─────────┘
│ J('ー`)し |
│ ( ) ┌─|
│ || │ i|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
103
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:38 ID:Hi49gK4U
それでも当時住んでいた土地は、まだ人情が残っていたので
何とか母子二人で質素に暮らしていけた。
│
│
│
│ J('ー`)し_____________
/ ̄ ̄ ( ) ('∀`)
/ || (_ _)ヾ
104
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:40 ID:Hi49gK4U
娯楽をする余裕なんてなく、日曜日は母の手作りの弁当を
持って、近所の河原とかに遊びに行っていた。
///////ww w ww
//////w ww J('ー`)し
/////w w ww. ('∀`) □ノ( )
////w w w ( ヘヘ ||
///w ww ww w
105
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:41 ID:Hi49gK4U
給料をもらった次の日曜日にはクリームパンとコーラを
買ってくれた
J('ー`)し ワーイ コーラ ダ
( )ヽ□ ヽ('∀`)ノ クリームパン ダ
|| (_ _)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
106
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:42 ID:Hi49gK4U
ある日、母が勤め先からプロ野球のチケットを2枚もらってきた
J('∀`)し
(ヽロロ ヽ('∀`)/
|| (_ _)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
107
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:43 ID:Hi49gK4U
俺は生れて初めてのプロ野球観戦に興奮し、母はいつも
より少しだけ豪華な弁当を作ってくれた。
J('∀`)し
t─┐ノ( ノ) ヾ('∀`)ノロロ
│■| | . (_ _)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
108
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:45 ID:Hi49gK4U
野球場に着き、チケットを見せて入ろうとすると、係員に
止められた
──┐
│ _[係]
│ J(;'Д`)し (`Д´ )
│ ( )\('д`) ロロヾ( )
│ || (_ _)ヾ / └
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
109
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:45 ID:Hi49gK4U
母がもらったのは招待券ではなく優待券だった。
チケット売り場で1人1000円ずつ払ってチケットを
買わなければいけないと言われた。
──┐
│ _[係]
│ J( ;'A`)し (`Д´ )
│ ( )\( 'A`) ロロヾ( )
│ || (_ _)ヾ ||
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
110
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:47 ID:Hi49gK4U
帰りの電車賃くらいしか持っていなかった俺たちは
外のベンチで弁当を食べて帰った。
電車の中で無言の母に「楽しかったよ」と言ったら
( '∀`) J('A` )し
.(_ _) ( ) .┌─
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄くく ̄ ̄ ̄|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
111
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:48 ID:Hi49gK4U
母は 「母ちゃんバカでごめんね」 と言って涙を少しこぼした
( 'A`) J('A` )し
.(_ _) ( ) .┌─
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄くく ̄ ̄ ̄|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
112
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:49 ID:Hi49gK4U
俺は母につらい思いをさせた貧乏と無学がとことん嫌になって
一生懸命に勉強した。
||||\ ('Д`;) ベンキョウ ベンキョウ
──┐ヽ( )
│くく□
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
113
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:50 ID:Hi49gK4U
新聞奨学生として大学まで進み、いっぱしの社会人になった。
母も喜んでくれた
[大]_
('∀`) J('ー`)し
( ) (人)
|| ||
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
114
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:51 ID:Hi49gK4U
そんな母が去年の暮れに亡くなった。
死ぬ前に1度だけ目を覚まし思い出したように
「野球、ごめんね」 と言った。
('A` )
J('A`)し ( )
/⌒⌒⌒⌒⌒ヽ ||
// ̄ ̄ ̄フ /
/ (___/ /
(______ノ
115
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:51 ID:Hi49gK4U
俺は 「楽しかったよ」 と言おうとしたが、
最後まで声にならなかった
('ー`;;)
J('A`)し ( )
/⌒⌒⌒⌒⌒ヽ ||
// ̄ ̄ ̄フ /
/ (___/ /
(______ノ
116
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:56 ID:Hi49gK4U
_、ーー、、
ii'ミ、ミミノ゙ッ
リミ γ゙ _,`,7 5分ブレイク
,へ ` ,_J、ζ
γ ゙~~|_\ 【 ̄】`E~)ヽ
>>1
GJ
/ く`i'(~) . ̄ r `t `i
/ _イ i |~i| i i l
/ /` i l ll |\ l, i
(_ ⌒\i l | i| | `ヽ_ ノ
~~\ ヽ i | li i ~~~~~~~~~~~
/\ ,,ヽ i ヽ/l |
i )~~j ノ |゚| l
/ い_ノ/===Θヽ i
ヽ / | ヽ_ノ
ヽ_ノ ノ )
117
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:59 ID:Hi49gK4U
カーチャンシリーズ第3弾(作者不明/2CHより)
J( 'ー`)し たけしへげんきですか。いまめーるしてます
(`Д) うるさい死ね メールすんな殺すぞ
J( 'ー`)し ごめんね。おかあさんはじめてめーるしたから、ごめんね
(`Д) うるさいくたばれ、メールすんな
J( 'ー`)し お金ふりこんでおきました。たいせつにつかってね 食事はしていますか?
(`Д) 死ねくそ女
118
:
コピペ
:2004/09/29(水) 15:59 ID:Hi49gK4U
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
o
__ ゚
母 |
の |
墓 | ∴ ('A`)カーチャン..........
──┐ ∀ << )
119
:
コピペ
:2004/09/29(水) 16:04 ID:Hi49gK4U
これが最後だ、 Let's go! …ン?
;;⌒))⌒`) ( ∧∧ ◎
≡≡≡;;;⌒`)≡≡≡⊂´⌒⊃,,゚Д)⊃ハ
;;⌒`)`)
120
:
コピペ
:2004/09/29(水) 16:07 ID:Hi49gK4U
カーチャンシリーズ第4弾(作者不明/2CHより)
なんか機械音痴の母がデジカメを買った。
ホラ。デジカメカッタノ
カタカタ__,
J( 'ー`)し ウルセーナ | |
( っ[l◎] ( `Д)_| |
|| ( つ | ̄ ̄ ̄|
どうやら嬉しいらしく、はしゃぎながらいろいろと写してた。
121
:
コピペ
:2004/09/29(水) 16:10 ID:Hi49gK4U
何日かしてメモリがいっぱいで写せないらしく
「どうすればいいの?」って聞いてきたが
ドウスレバイイノ・・・?
カタカタ__,
J( 'д`)し | |
( っ[l◎] ( `Д) _| |
|| ( つ | ̄ ̄ ̄|
「忙しいから説明書読め!」とつい怒鳴ってしまった。
122
:
コピペ
:2004/09/29(水) 16:11 ID:Hi49gK4U
・・・・。 忙しいから説明書読め!!!!
つまらないものばかり__,
J( 'д`)し 写してるからだろ!!! | |
( っ[l◎] (Д´#) _| |
|| ( つ | ̄ ̄ ̄|
さらに「つまらないものばかり写してるからだろ!」とも言ってしまった。
123
:
コピペ
:2004/09/29(水) 16:12 ID:Hi49gK4U
そしたら「・・・ごめんね」と一言。
… ゴメンネ。
カタカタ__,
J( '-`)し ケッ | |
( っ[l◎] (#`Д) _| |
|| ( つ | ̄ ̄ ̄|
124
:
コピペ
:2004/09/29(水) 16:13 ID:Hi49gK4U
そんな母が先日亡くなった。
________
| ___ |
| [|J( '-`)し|] .| ('A`) カアチャン・・・
| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | ( )
| | .|| ||
| | .||
| | .||
| | .||
| | .||
| |______||
|________.|
125
:
コピペ
:2004/09/29(水) 16:14 ID:Hi49gK4U
遺品整理してたらデジカメが出てきて、何撮ってたのかなあと中身を見たら
.__________,,,,,,,,,,,,,,___
| [(◎)]________ |
| ◎◎ || / \ || |
| || | / ヽ___/ ヽ | || |
|----- .||| ヽ/ .|| |
|[] || ヽ、 ./ || |
|[] || /=-------ノ_|| |
|[]  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ |
ヽ______________/
126
:
コピペ
:2004/09/29(水) 16:24 ID:Hi49gK4U
俺の寝顔が写ってた・・・涙が止まらなかった。
(;';A`;),,__ カアチャン・・・・
( っ[l◎] ウッウッ・・・
|| カアチャン・・・・
―完―
127
:
某経大生
:2004/09/29(水) 22:13 ID:fmAe/S8o
昔からすごく有名なコピペなんだが。
128
:
某経大生
:2004/10/12(火) 16:39 ID:CMKddcwE
2ちゃんねる」が生んだ文学、「電車男」今月22日新潮社から刊行
匿名の人々がウブなオタク青年をネットの会話で励まし恋愛成就に導く斬新な物語に対しては、「小説を超えた新しい恋愛文学」との評価も出ている。(読売)
お前ら、ガンガレ
129
:
某経大生
:2004/11/15(月) 02:46 ID:sd91Shrw
新作品ギボンヌ。
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ ,、 ,、 今日は ここまで 読みました ┃
┃ ,.(*゚ー゚)ッ、♪ ┃
┃ イ~U U~|>' 2 c h の しおり ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
130
:
某経大生
:2004/12/01(水) 19:50 ID:qe5WiTKw
89 : シンケイ:04/11/23 23:46
「まとも」って何?
平均値、世間並み、そういう恥ずかしくない暮らし・・・
「正しい人間」とか「正しい人生」とか、おかしな言葉
ちょっと深く考えると何言ってんだか分からない
気持ち悪いじゃないか「正しい人間」「正しい人生」なんて
そんなもの元々ありはしない
私達はその幻想をどうしても振り切れない
一種の集団催眠みたいなもの
まやかしさ そんなもの捨てていい
そんなものと勝負しなくていい
そんなものに合わせなくていい
そういう意味じゃダメ人間になっていい
もう漕ぎ出そう、いわゆる「まとも」から放たれた人生に・・・
131
:
ε=\_○ノ<ヒャッホー!
:2004/12/08(水) 12:04 ID:JE7KGh0.
プラトンの最後
なぜ自分がこんなところに閉じ込められなくてはならないのだろうと
プラトンは憤っていた。
裁判は明らかに彼を裁くにはその根拠が薄弱であったし、そのような
もののために民衆がデマゴーグに靡いたことに、彼の理性や知性は幻
滅し、その神の存在を疑わずにいられなかった。
それでも、彼はそれにも何か合理的な意味が、法の理性の理が内在す
るのではないかと自問いしていた。
「先生!先生、大丈夫ですか。助けに参りました」
現れたのは弟子たちだった。
彼を慕い、その教えに追従する、謙虚で、賢い者たち。
正義と勇気、叡智と中庸を備えた、彼の理想とする人間に育った
若者たちだった。
「なんということを。お前たちまで捕まってしまうぞ」
「あんな裁判はインチキです。奴らは先生に嫉妬しているだけなのです。
そんなもののために先生が死ぬだなんて無意味です」
「その通りです。先生はこの国の至宝ですよ」
彼らの言うのはもうプラトンも考えたことだった。しかし、それではなぜ
自分が裁かれねばならなかったのか、解決してはいなかった。
「まだだめだ、私は裁かれたのだ。それには理由があるはずだ」
「あるとすれば、それは傲慢と嫉妬です」
「正義のために法が行使されなかったのかな?」
「そうです」
「では法とは価値のないものであろうか?私は法に正義がないとすれ
ば、その叡智、勇気、それを行使する中庸も存在しないと考えるだろう」
「しかし、先生に罪はありませんでした」
「そうだ。罪がないのに裁かれる。もしかすると、罪の概念が変化したの
かもしれない」
「それでは末世です」
「法を行使するものが間違っていたとする。しかし、民主制とは我々が
選択したものだ、もとい、私を裁いた彼を選んだのは私といっても過言
ではない」
「人は過ちを犯します」
「過ちから学ぶのだよ。・・・・・・私が裁かれたのは、その学ぶべきことを
知らしめるためなのかもしれない」
「命をかける価値はありません」
「私は、やはりこの国を愛している。この国の制度や、法や、人間を愛
している。今、ここで逃げてしまえば、初めから何もしなかったのと同
じことではないだろうか?教え、育て、築き上げたものを、私は否定し
はしないだろう」
「生きていれば、理想の国家を作ることなど・・・・・・」
「人はいづれ死ぬ。その価値はどれだけ生きたかでは計れない。何をし
たかで評価される。私はこの国に生きた者として、何をしたかを知られ
たいと願うだろう。それに、国を作るのは君たちのような若者の仕事だ」
「正義が行われません」
「慣行の問題だ。行動規範が異なるからと正義ではないのではないだろう?」
「正義にも多元的な意義があると?」
「君たちが示すべきだ。そして認められるのならば、それは正義といって
差し支えないといえるものかもしれない」
「曖昧ですね?」
「明快なものなどどこにある?三人称は不在の実在だよ」
弟子たちは黙り込んでしまった。
もう何も言うことはなかった。プラトンの決意は固く、それを止める
よりは、彼の意思をどう紡いでいくのかが問題のように思われた。
「もういいのかな。なに、私が死んでも、私の思想は行き続けるだろう。
傲慢なことをいっているのではない。これら私のいってきたことは、
誰もが自然とそうであると気づくことができるものであるからだ」
「みなが先生のようであるわけではありません」
「まったくだ、しかし、そうでないわけでもない。いや、そうであるから
人間らしいといえる。さぁ、もう行きなさい」
弟子たちは最後に師の手に口付けをし、去っていった。
プラトンは彼らの優しさに胸打たれ、清清しい気持ちだった。
「人がいるかぎり、正義と悪はその所在を明らかにせず内在するだろう。
誰も人と関わるかぎりにおいて影響をうけるからだ。そのような状態に
あって、我々は孤独を望むか、それとも行動で示すか?
自然がそうであるように、我々もまた、孤独ではいられないだろう。
とすれば、私は私の信ずるところにより法を遵守して毒杯を仰ぐのだ」
132
:
某経大生
:2005/02/01(火) 15:06:29 ID:isaGw4w2
高経キューブ
気がつくと私たちはこの部屋にいた。
一片が約5mから6mほどのバラックのようなつくりで、壁のどの面も
同じデザインで統一されていた。
私のほかに二人の男がいた。明らかに体型からB系ファッションに走った
と思しき大学デビューのドキュソと、いかにも秋葉を地でいっている秋葉系
ファッションのデカメガネ。
こんな奴らとこんなところに閉じ込められる理由はなんなのだろうか?
そもそも私は大学に向かっていたはずだった。
試験前にも関わらずサークルの集まりで、時間は午後の8時だったと思う。
烏川緑地公園を自転車で走っていると、目の前に突然オレンジ色の発光体が
現れて・・・・・・ま、まさか、ここはUFOの中か!?
「つうかなんなんだよ、マジわけわかんねんだけど!つうかありえねくね?
ありえねくね?つうかマジふざけんな!マジでわらえねぇんだけど。つうか
何これ?あほかっつうの!」
B系ドキュソが喚き始めた。「オマエカモナー!」とツッコミたくなったが、こんなとこ
ろでネラーであることをカミングアウトする必要もないだろう。
「つうかお前ら誰?お前らなんなの?なんか俺っちのこと馬鹿にしてるべ!?
つうかマジで、俺っちのこと怒らすとあぶねぇから」
その発現だけで充分アブナイ奴であることは判断できた。
プギャー!っと噴出したくなるのをこらえて私はもう一方のキモオタに話しかけた。
「ねぇ、ここどこか分かる?」
キモオタはきょどってもぞもぞと話し始めた。
「僕わかんないっすよ〜。ほんとわかんないっすってば〜。ゲームの途中だったのに。
まだセーブもしてなかったのにな〜。ようやく鋼鉄のガールフ・・・・・・」
『うおぉぉぉぉ!やめてくれぇぇぇぇ!』と心の中で叫んで聞こえないフリをした。
精神的にこたえるものがある。
そのとき、床の中心にある扉が開いた。
133
:
某経大生
:2005/02/01(火) 15:07:49 ID:isaGw4w2
下から出てきたのは
ま た お と こ か !!!???
「ははは、こんなところにもいたよありえねぇ!てめらクソだな!」
そういって現れたのは明らかに基地外だった。
「あの、あなたは?」
私が恐る恐るきくと、彼は床から這い上がり、一息ついていった。
「てめぇらようく聞け!ここはな、高経生が目的もなく集められるという
噂の高経キューブだ!高経のあるとあらゆる人種が集められてくるんだ。
ていうかてめーら一遍氏ね!」
やっぱりこいつは基地外だと確信する。
しかし、高経キューブとはなんだろうか?
そもそも、いったいどんな目的でこんなものがあるというのだろう?
その前にこんなもん造る金あったら学生に還元しろ!!
「おっとそこの池面ビッチ!今『ここから出るにはどうしたらいいのかな?』
って思っただろザノバビッチ!」
「誰がザノバビッチだ!ていうか出れるなら案内しろよ。」
「つうかおめぇ誰だよ。調子こいてると俺のヒップホップでアップハイにして
やるぜチェケラ!」
「じゃ僕は月ひ・・・・・・」
「どうやって出るか教えてくれ!」
基地外はタバコを取り出すとぷかぷかふかしはじめた。つうかここって空調
あんのかよ!?やっぱり基地外だ!
「ここにはさまざまなトラップが仕掛けられている。それに出口がどこに
あるのかも分からない。しかし、ひとつだけ確かなことがある。今、俺が
でてきた扉、ここを見てくれ。ここに数字が書かれているだろう?」
「ああ、確かに。」
そこには9桁の数字が刻印されていた。
“199914131”
「何かの暗号か?」
「ああ、これは高経のシンボルを現している。」
「シンボル?」
134
:
某経大生
:2005/02/01(火) 15:08:50 ID:isaGw4w2
「頭のわりぃ奴だな〜!オマエモナー!とかいうの無しな」
お前にいわれたかない!と本気で叫びたくなる!!
「この数字を19 9 9 14 13 1で区切るだろう。そしてアルファベットに変換
するとどうなる?」
「え〜と・・・S・・・I・・・I・・・N・・・M・・・A・・・!?しいんま!」
「そう、またの名をイシマン。そうさ、これは偶然なんかじゃない。そして
俺たちはある目的のためにここに連れてこられたんだ。」
「いったいどんな?」
そのとき、突然部屋が暗くなった。部屋が揺れだし、まるでDQのデス●サロ
の登場シーンのようだ。
「きたぞ!」
「何がきたんだ?」
「山羊助教授だ!」
「なんだってー!!!」
そこにはお決まりのAAがあった。なんて二次元臭さなんだと思いつつも、恐怖
が私を支配していた。これから何が起こるのか検討もつかなかった。
「攻撃を仕掛けてくるぞ!用心するんだ!」
基地外が言う。しかし、こんなひょろいAAに何ができるのだろう?
すると、意外なことの山羊が口を開いた。
「女帝はんた〜い!!」
「うほっ!世論は賛成に傾いているのに極右より発言!香ばしすぎて精神的
ダメージがはかりしれねぇぜ」
基地外は精神的にダメージを受けているようだ。
今度は基地外の攻撃。
「先生!先生がテレビでイタイ人みたいな編集されてました!」
AAが汗をかき始めた。向こうも相当こたえてるようだ。
もう正直なにがどんなふうに勝負なのかわからないけれど、今は基地外の勝利
を祈るしかない。ていうか緊張感がない。
「女帝なんぞ中継ぎだ〜!」
「うほほっ!さすが先生、オラもう駄目かもしんねぇ。でも・・・まだまだ逝ける!!」
135
:
某経大生
:2005/02/01(火) 15:09:17 ID:isaGw4w2
「どっちだよ!!」
思わず突っ込んでしまった。恥ずかしい。
「先生!高経以外に行く場所がないって本当ですか?」
AAは大ダメージを受けたようだった。形が崩れ始めた。これは勝ったという
ことでいいのか?
「おのれ〜、この落とし前はきっちり正論でつけ・・・・・・アベシ!!」
「ふん、もはや読んでる学生はみんなネタくらいにしか思ってませんよ」
AAが消滅した。
「ふ〜、勝った。」
「何に勝ったんだ?ていうか今のは?もしや・・・まずくね?」
「いいんだよ、ネタなんだから。」
「ああいうのがたくさんいるのか?この高経キューブには?」
「そうだ、それらを全部ネタオチするのが“しいんま”の最終的な狙いだろう。
つまり、今のような戦いに全て勝利すれば、きっと並榎のキャンパスに帰れる。」
「おいおい、面倒だな。」
「つうかさ、研究棟って増築されたっぽくね?されたべ?」
「はっ、しまった!!」
基地外が大声を上げた。
「そうだったのか!学科の増設も、地域ゼミ協創設も、定員増加も、教員の増加
も、全てはこのための前フリだったのか!!」
「前フリって、ずいぶん長い前フリだなww」
「ここは高経キューブじゃない。ハイパー高経キューブだったんだ!」
「だからなんのためのフリだよ!!」
136
:
某経大生
:2005/02/01(火) 15:13:03 ID:isaGw4w2
↑
この話はフィクションです。
実際の人物と関係ありそうですけど空気嫁!
キューブ2地上波初登場記念マキコ
137
:
某経大生
:2005/02/01(火) 23:27:25 ID:d6bVj4w2
続くんですか?
138
:
公房
:2005/02/01(火) 23:53:27 ID:r4W8t/Vg
未だにCUBEの謎が解けないし特に2なんてファック
ブレアウィッチ2はホラーとして作られてるけど
ああいうの続編出すべきじゃねえ
139
:
某経大生
:2005/02/02(水) 10:35:24 ID:NMh2sAoc
>>137
もうネタないので、あったら続けてください。
140
:
イチゴ大福
:2005/02/05(土) 18:14:09 ID:ibe7HSJ2
1.烏川にたゆたう憎悪 またはそれを知覚した慧眼
手を見る。青白い月夜の光線を浴びて、深海の鉱石のように静かに、時間の止まった花崗岩の輝きを発した青白い手を見る。
白い右手。皺の少なく、スラリとしたピアニストの指。端正な木工造形品のような、ニスの光沢にも似た気品。手のひらを返す。新雪の降り積もった、まだ誰も足を踏み入れていない、白銀の平原のような光沢。銀の光線を反射して、うっすらと白に染め上げ、空中に霧散する。その連鎖は途切れず、また疎かにせず、ゆらゆらと、ゆらゆらと、物質の力を当てにして明らかにしようとする。
薄く切れ上がった唇がより広く切れ上がり、僅かに見せた隙間から白い象牙の純白がのぞいた。
彼女は笑っていた。
そして、ゆっくりと腰を浮かすとベンチを後にした。
まだ寒い、二月の冬空の下のこと。空には煌々と輝りはえる満月が浮かび、地上をやわらかな光に包んでいた。生きているものも死んでいるものも、それは静寂という掛け替えのない宝石の中に見ることができる奇蹟のように、その瞬間はひとつの完成されたモチーフだったといえるかもしれない。まさに、現世に降誕したヴァルハラのようであった。・・・・・・それが発見されるまでは・・・・・・。
141
:
イチゴ大福
:2005/02/05(土) 18:16:24 ID:ibe7HSJ2
↑
少しずつ書き足していきますんでよろしく
とりあえず推理ものです。実在の地名や名称は関係ありませ。
142
:
イチゴ大福
:2005/02/09(水) 18:11:13 ID:HAx7rIvs
2.コンサートマスターは不在のまま・・・・・・。
「どうしてこう殺人事件が絶えないんだ?」
群馬県警捜査一課に赴任して五年、もと天才ヴァイオリニストといわれ、出自がドイツ系の二世という特異な境遇をもつ大洗ケルトナー警部はこれから目にするだろう遺体のことを考えて少々うんざりしていた。
二月のまだ上旬だというのに、今月にはいってすでに同一犯と思われる手口で三人もの人間が殺されていた。関東地方とはいえ、まだ風光明媚な自然環境を残すここ高崎にあって実に危惧すべき事件であることはいうまでもない。
被害者のいずれもが、北関東が誇る名門校、T経済大学の学生であったことなどから、大学の関係者あるいは大学関係者に怨恨のあるものの犯行という見方が大方を占めていた。
しかし、捜査員の懸命な捜索にもかかわらず、犯人のものとおぼしき痕跡は何一つ発見できず、そのため捜査員の間では最近、犯人を「ゴースト」と呼ぶようになっていた。
「今回で三件目ですけど、まだまだ続きそうですね。今度は烏川河川公園です。今度もゴーストの遺留品の類は発見できないかもしれないですね。」
運転席でハンドルを握るのは、大洗警部の相棒、前田巡査長だった。
T経済大学出身のラガーマンで、体格は大洗の一回りは大きいが、法定速度は破らないしスーツのアイロンも自分でかけるという几帳面極まりない男だ。十八号線では「魔の渋滞誘発男」として、何が何でも時速八十キロ以上出さない彼の助手席に積極的に座りたがる相棒はいない。唯一大洗警部を除いての話だが・・・・・・。
「俺はそのゴーストという呼び方が嫌いだ。今までの二件の殺人現場で明らかだが、あれは殺人そのものもが目的化した犯行だ。つまり意志があるということだ。幽霊なんて、正体をはぐらかしたような呼称は犯人像を歪めるどころか、かえって余計な先入観をあたえることになると思わないか?」
「さぁ、どうでしょうね。しかし被害者がみなT経済大学の学生ですから、その線で間違いはないと思いますが。」
「だからお前は馬鹿だってんだよ!いいか、人を殺すのが目的の人間なんだ。相手なんて誰でもいいんだよ。他にすべきことがあるんだ。犯人はいずれ見つかるんだから。」
もとヴァイオリニストのためだろうか?相変わらずの我がままぶりに前田も少しむっとしていた。
「ずいぶん自信があるんですね?根拠はあるんですか?」
「ああ、あるとも。どうせまた殺す。そうすれば市民が警戒するようになる。そうすればいずれ、殺したところを誰かに目撃されるだろう。たとえ現場に証拠が残らなくても、“殺した”いという犯人の欲求と“殺した”という事実が存在するなら事件は未解決にはならない。」
「それじゃ警察がいる意味がないじゃないですか?」
「あのな、警察っていうのはいつも後手後手なんだよ。事件が起こってから初めて捜査が開始される。もしも、コンビニで挙動不審な学生がいたとする。だが、いくら不審だからってそれだけで補導はできない。物を手にとって、会計を済ませずに店外に出て初めて犯罪が成立する。これが司法であり法治国家の姿なんだ。」
「それくらい分かってますよ。」
「いいや、わかっていない。警察はな、正義の味方であってはいけないんだ。あくまで法の番人でなくてはならない。法に照らすのは検事の仕事だし、正しいかどうかは裁判所が判断する。」
「分かりましたよ。私はただの一介の捜査員にすぎませんよ。しかし、よくそんな犯人像なんて分かりますね?プロファイリングでも勉強したんですか?」
「そんなもん、雰囲気だよ。お前、高校の数学苦手だったろ?」
「ええ、自慢じゃありませんが。」
「数学っていうのはな、記憶力とフィーリングの問題なんだよ。定理や公式は覚えればいい。肝心なのは解法への筋道に気づくかどうかが問題だんだ。こういうフィーリングは、もってる奴はなんなくこなせる、しかし持ってない奴はいくらやっても無理だ。ぱっと数字をみて素数かどうかわかるか、この感覚なんだよ。」
「根拠があるわけじゃなかったんですね?」
「俺は鼻が利くんだ。」
「なるほど、耳もいいようですから。」
「そういうことだ。」
もと天才ヴァイオリニストがなぜ音楽の世界から足を洗ったのか、前田はなんとなく想像ができた。「彼は『天才』というよりはむしろ『天災』だ。」と心の中で呟く前田巡査長だった。
143
:
5m
:2005/02/11(金) 14:38:42 ID:.u52gE.g
オーバードライブ
何度も言うけど、ローカルなんすよ!
天皇みたいに報道陣に手を振って
「空気ブレード!!」
そんな稲山君と過ごした甘い甘い新婚生活が、
未だに脳裏に焼き付いてるあたいって・・・・
うん・・・
5年も前の男のことなんか、
さっさと忘れちゃいたいんだけど、
あのことが未だに尾を引いていて、
オトコの人を好きになるのが怖いっていうか・・・
恋に臆病になってるあたし・・・
そんなときに、あの人が現れたんです。
最初の出会いは、
あたしがサッカーボールを用いて
股間からバックパスの要領で敵に攻撃する、
「出産アタック!!」
を編み出し、
いざ実践で試さんと
前商サッカー部に殴り込みをかけんとしたまさにその時!!
あの人は颯爽と
カミさんの葬式にマーマレードを全身に塗りたくって登場、
「妻の葬式はそれぐらいにしてマーマレード祭りじゃあ!!」
とうそぶいたけど、
あたしは知ってるの。
あの人の目は泣いてた・・・
144
:
イチゴ大福
:2005/02/12(土) 13:56:29 ID:4itZSlYc
3.出口のない迷宮。ワーグナーは大嫌い。
烏川河川公園の駐車場に入ると、警察車輌に押し出される形で報道陣の姿がみられた。”KEEP OUT”のテープで芝のマウンドの周辺が仕切られ、警官が仁王立ちで立っている。警察手帳を見せると一言「どうぞ」とだけいった。ブルーシートで覆われた一角がおそらく現場なのだろう。まだ遺体は搬送されていないはずだ。
所轄の刑事がなにやら話し込んでいた。
「どうも、県警の大洗警部と、こちらは前田巡査部長です。」
大洗警部が自己紹介する。前田巡査部長の分も紹介するのは相棒の務めだと思い込んでいるらしく、彼は「よろしく」とだけいい頭を下げた。
「お早いところどうも、ごくろうさまです。松山です。」
松山と名乗った、脂ぎった中年男は深々と頭を下げた。クタクタのネクタイにシャツがその苦労がいかなるものか、年季を感じさせる。
「どうです?また例の関係っぽいですか?」
「ええ、いちおう司法解剖に回してみないと詳しいことはわかりませんがね。該者は前の二件と同じようにナイフのようなものでメッタ刺し。悲惨なんてものじゃない。鑑識の話じゃ、心臓の一突きが致命傷になってる。腕や足、顔は生きながら時間をかけて刺したんじゃないかってね。」
「あら、ほんとに?それじゃ前の二件同様、胴体は心臓の一突きだけ?」
「ええ。とりあえず、仏拝みますか?」
「そうしましょ。宗派は法華ですか?」
「今の若いのなんざ、木魚叩くより携帯電話ピコピコ叩くほうが上手い。」
「はは、そりゃそうだ。」
なんだこの落語家のような会話は・・・・・・と訝しがりながら、前田巡査長が手袋を取り出した。ブルーシートで囲まれた中には数人の鑑識がせわしなく動いていた。遺体は自分の血だろう、赤黒い血で衣類が汚れていた。まだ幼さの残る風貌は高校生のようだ。血糊のない、青ざめた顔がやけに白かった。
「男ですか?」
「ええ、男です。学生証をどうぞ。」
大洗が受け取る。
「ほう、一年生ですね。かわいそうに・・・・・・あれ、若いんですね?」
「え?」
前田と松山は同時に声を出していた。
最初に口を開いたのは前田だった?
「一年生なら一浪していても二十歳くらいでしょう?若いのは当然ですよ。」
「いやいや、番号がね、若いんだよ。」
「番号?」
大洗から学生証を受け取ると前田は名前の上に印字された学生番号をみた。
“×××−008”
「学生番号は苗字の頭文字から昇順で割り当ててますから、彼の苗字ならそれくらいですよ。」
「前の二件、俺の記憶が正しかったら番号は“002”と“004”だった気がするが。」
「あっ、2の乗数になりますね。」
「ただの偶然か、それとも意図的なものか。前の二件の該者の間になんら関連性がなかったことからいっても、この数字にはなにか猟奇的な、殺人に対する目的的意図が感じられる。ようやく幽霊が人間らしくなってきたな、え?前田。そう思わないか?」
「全然人間らしさなんて感じませんよ。それに、こんな数字じゃ、なんの手がかりにもなりませんよ?」
「確かT経済大学は単科大だったな?」
「ええ、でも地域政策学部ができたから、学部は経済学部と二つですけど。」
「2の4乗は?」
「16ですけど。」
「は・・・・・・はやいな?」
「昔そろばんやってましてん。」
「余計なことはいい。八人だ。両学部の学生番号が“016”の学生を全員マークする。所轄に応援を要請して至急全員の身元確認をとれ。令状が取れ次第二十四時間体制で張り込みを開始する。マスコミには一部報道管制を敷く。俺はうるさいのが嫌いなんだ。」
145
:
イチゴ大福
:2005/02/13(日) 10:35:22 ID:Mo5eFkiY
4.現実は虚構に抱かれた非対称空間の視覚的死角
令状が取れるとすぐ、彼ら二人はT経済大学四年の喜多川の張り込みを始めた。比較的大学に近いアパートメントだが、大学が近いだけあって、どれが喜多川のアパートか見分けるのに時間がかかった。
喜多川の部屋は二階の角部屋で、ようやく明かりがついたのが深夜の二時だった。一人で帰宅したところも二人は目撃している。
「ずいぶん遅いやっちゃな〜。なにしとんねん学生無勢が!」
大洗がなぜ急に関西弁になったのか釈然としないながらも、前田はそのことに触れない。どうせ「だからお前は馬鹿なんだよ!」といわれることを学習しているからだ。
「学生なんてみんなそんなもんですよ。四年生のこの時期はもう卒論も終わってますから、友達と飲んでたんじゃないんですか?」
「飲むって、まだ二時じゃねぇか。俺が大学に行ってたときは朝まで飲んでたけどな。」
「音楽家ってそんなに飲むんですか?なんだか清廉なイメージが壊れますね。」
「アルコールが入るとピッチが上がるんだよ。だから深夜まで練習しながらみんなで飲むんだ。そして酔いが回ってきたところでラフマニノフをジャンジャカやるんだよ。あれは気分がいい。」
笑いながら言う。飲み屋で誰それかまわず絡んでいる酔っ払ったおっさんみたいだと思う。
「そんなもんなんですか?」
前田は赤ら顔のピアニストやドレスをはだけたチェリストを想像して困惑した。決して古典音楽の嫌いな前田ではなかったが、その迫力や芸術性がアルコールの勢いに負っていると思うとなんだか萎えた。
「で、アパートメントに帰った学生はなにをするんだ?」
「さぁ、寝るんじゃないですか?」
146
:
イチゴ大福
:2005/02/13(日) 10:35:48 ID:Mo5eFkiY
「まったく、いい気なもんだよ。」
「いいじゃないですか。四月からは社会人ですからね。ああそうそう、学生課に問い合わせたんですけどね、もう就職先も決まってるみたいですよ。なかなかいい所ですよ。」
調書を渡す。大洗はそれを手に取る。
「まぁ、こんなもんどうでもいいけどな。だいたい、なんだってこう、大学を卒業すると同時に就職なんだ?第一こいつ、経済学部の癖に土建屋じゃねぇか。」
「ゼネコンっていってくださいよ。鳶や大工じゃないんですから。」
「大学っていうのは専門的な人材を養成するんだろ?それがなんだ。お前の後輩は社会からそれなりにしか必要とされてないようだな。」
「そういう言い方やめてください。第一、卒業しても就職しなかったり、フリーターになったり、中退してそのまま引き篭もってしまう人だっているんですよ。それに比べたら手天地の差だよ。社会と向き合っていて頑張っているじゃないですか。」
「ばかだな、それじゃ人間の存在意義なんか、単純化された労働力の集合ぐらいにしか認識できないじゃないか。経済に人間が組み込まれてどうする?」
「しかし、やはり働くことは大切ですよ。引き篭もっていたってなんの問題の解決にはなりません。」
「原因と結果の因果を見誤ってはいけない。引篭もりというのが最近問題になってるようだが、それは原因ではないだろ?そうする人間はなにかしらの問題があるから、その結果として引篭もるんだ。解決しなくてはならない問題は、引篭もらないということではない、引篭もりを誘発する因子を解明することだ。」
「しかし、辛くても頑張っている人はたくさんいるんですよ。ちょっとくらい大変だからって現実から逃げるのはどうかと思いますけどね。」
「お前は幸せや奴だ。経済が人間性を否定するなら、人間にとってこの経済システムなくしてありえない世界は現実だろうか?そもそも経済という名の現実はどこにある?空の青さは経済か?星の輝きは完全雇用を実現するか?山々の霞はインフレ不安を解消できるか?目先の豊かさと有限性に対する現実世界における肉体の脆弱性がもたらす一種の幻想的快楽を希求しようとする合目的的意志の、いわばエゴイズムともいうべき営利主義の慣例化は、人間差別化における階層意識の柔軟な視覚的教唆、思考の緩慢な歪なる作用の結果として生み出された仮想空間の数学的虚構だ。そういえば昔、こんなことをいった人物がいた、『アダムが耕し、イヴが紡いだとき、誰が領主だったか?』」
「ウィリアム・ペンですね。」
「そしてマルクスはこういう。『すべて人類の歴史は階級闘争の歴史だ』と。しかし、敵とは誰だ?味方はどこにいる?持つものと持たざるもの。階級というものが不明確な現実社会にあって、持たざるものはただ経済というシステム、評価軸によって『持たなかった』ことによってのみ、楽観的かつ一方的に無謀な評価をもたらす。これは暴力だ。
人間の命が尊いとは誰でもいうことだ。しかし、誰にとっても尊いわけではない。人には値段がある。顔形や学歴、就職先や年収といった、経済的評価がまとわりつく。何ができるか。どんな技能があるのか。そのような訓練ができないのであれば歯牙にもかけられない。それでも人間の命は尊いという。人間の命には死角があることを、知っていて知らないふりをしている。それが動物というものだ。」
147
:
イチゴ大福
:2005/02/14(月) 21:28:00 ID:ea34pD9A
5.間隙のプロローグ。Message in an affair. ①
ドアの閉まる音が聞こえ、前田はビクッと体を震わせると目を開けた。いつの間にか寝てしまっていたのだろう。助手席を見ると買い物袋を手にした大洗が菓子パンを手にしていた。
「おお、起きたか?缶コーヒーだ、飲むか?」
「コンビニに行ってたんですか?一言声かけてくださいよ。全然気づきませんでした。」
前田は恐縮そうに缶コーヒーを受け取った。
「寝言が面白くて起こせなかったよ、ふふふ。悪いな。」
ニヤニヤしている。咄嗟に焦りだす前田。
「なんか言ってました?」
「気にするな。これ喰ったら俺も寝るから、見張ってろよ。」
そういって缶コーヒーを飲み干すと、コートを被って眠り込んでしまった。人に間を置かせないのは彼の得意技だ。
温かい缶コーヒー。甘ったるいのを我慢すれば充分満足だ。
今日の日付を確かめる。二月五日。時計を見るとまだ早朝の六時だった。喜多川が帰宅してまだ四時間ほど、大学も冬休みのはずだ。おそらく午前中はアパートにいるのではないかと思う。
背もたれを倒し、ちびちびとコーヒーを飲みながら美味い朝食でも食べたいと思う。ぼんやりアパートの窓を眺める。犬の散歩をしている老夫婦の姿がちらほら見受けられた。
その時、喜多川のアパートに入っていく人影が見えた。帽子を被っていて顔は良く見えないが、着ているものは昨夜の喜多川のものである。手にはコンビニの袋を提げていた。
大洗がコンビニに行っている間に行っていたのだろう。前田は寝ていたのだから空白時間はある。喜多川は昨夜と同じようにドアを開けて中に入っていった。
その時、警察無線に入電があった。
「県警より各車へ、殺人事件発生。現場は上榎江×××の×××。至急現場に急行されたし。」
前田はイグニッションを回してエンジンをかけた。すぐに大洗が目を覚ます。
「なんだ?なにかあったか?」
声はローだ。
「殺人事件ですよ。早く行きましょう。」
「喜多川の張り込みはどうするんだ?」
「大丈夫です。さっき無事を確認しましたから。」
「は?さっき?」
「ええ、コンビニから帰ってきたところみたいでしたよ。たぶん警部とすれ違いになったんじゃないですか?」
「ううん、見なかったけどな。」
「見過ごしたんですよ。さ、早く行きましょう。」
148
:
イチゴ大福
:2005/02/14(月) 21:30:53 ID:ea34pD9A
6.電卓の騎士団。Message in an affair. ②
遺体が発見されたのはT経済大学のグラウンドだった。
大洗、前田の二人が追っている事件との関連性が気になるところだが、二人は緊張を抑えつつ現場に足を運んだ。二人が現場に最初に到着していた。
幸い、大学が冬季休暇中であったこともあり、部活にきた学生くらいしか野次馬はおらず、大きな混乱はなかった。
まだ所轄の警察官も到着していなかった。
地肌がむき出しのグラウンドに血に染まった死体が転がっているというのは何か違和感を感じた。大洗は手袋をはめ、遺体に脈がないことを確かめると、遺体の前で手を合わせた。
「警部、第一発見者を連れてきました。」
大洗が振り向くと、いかついむさそうな男が前田の隣に小さくなって立っていた。死体を見るのが初めてなのだろう、気丈を装いながらも不安が顔全体に表れていた。こういう奴に限ってあとでマスコミに死体のことをべらべらしゃべるんだ、と心の中で悪態をつくと、表情だけは余所行きを装った。
「おはようございます。私は群馬県警の大洗警部です。こちらは前田巡査長。あなたが通報したんですよね?」
「はい、そうですけど。」
「被害者とは面識は?」
「いいえ、知りもしません。」
「そうですか。なにか、不審な人影をみたりとかありませんでしたか?」
「いいえ、朝練できたらたまたま見つけただけでなにも・・・・・・。」
「わかりました。もうじき応援の警官がきますんでね、それまでどこか、すぐ連絡の取れる場所でお待ちください。今日は部活は休んでもらいますがご理解くださいますね?」
「ええ、じゃすぐそこにいますから、なにかあったら呼んでください。」
彼それだけいい、駐車場のほうへ歩いていった。
前田は遺体のジャケットから財布を取り出し、学生証を見ていた。
「どうだ?例の16番か?」
「いいえ、6番です。どうぞ。」
大洗は学生証を受け取る。確かに“006”番だ。
「遺体の損傷具合からしてゴーストの犯行に酷似するものはありますが、どうやら模倣犯のようですね。」
「模倣犯だと?」
「事件を新聞なんかで読んだ愉快犯か倒錯者の犯行ですよ。」
大洗は遺体を改めて間近で眺めた。大学の建物が影になってよく見えないので、懐中電灯で照らした。衣服は真っ赤に染まっているが、よく見ると胴体の損傷は胸部の一箇所だけで、あとは手足に集中していた。胸部の出血はひどいが、これは心臓を直撃したためだろう。それも生きているうちに刺されたのだと大洗は考えた。
「マスコミには報道管制を敷いている。お前らのいうゴーストが、こんな特徴的な殺し方をすることは警察関係者以外は知らないんだよ。」
前田も気づいたようだ。慌てて学生証を確認する。
「あれ?じゃ数字の関連はなかったってことですか?」
「いや、少し修正する必要性はあるがその線が間違いない。今日は何日だ?」
「二月五日ですが・・・・・それがなにか?」
「16の2乗は?」
「ええと・・・・・・256です。・・・・・・あっ、2、5、6ですね?」
「もし、犯人がまだこの法則に則って犯行を続けているとすれば、まだ事件はカーテンコールではないぞ。殺されたか、あるいはこれから殺すかだ。」
「ということは、“016”、“032”、“064”、“128”ですか?」
「他にもいろいろなパターンが考えられるだろう。想像力の限界に挑戦するのは作家の仕事だが、俺たちはそんな悠長なことは言ってられない。すぐに配備するぞ。安否確認を要請しよう。」
149
:
イチゴ大福
:2005/02/15(火) 17:04:21 ID:oRBse.Hg
7.人間と死人と疑問、あるいは幽霊? Message in an affair. ③
大洗、前田の到着から十五分ほどで応援の警官らが到着した。
すぐにグラウンドは封鎖され、遺体の周りにブルーシートが覆われた。
二人は所轄の刑事に現場を任せると、二人が張り込みをしていた喜多川のアパートメントにむかった。助手席では大洗が彼の携帯電話にコールを試みていた。しかし、なにかあったのか、電話にでる気配はなかった。
「留守電ですか?」
「いや、出ないだけだ。まだ寝てるのか?」
「マナーモードにしてないなら、着信音がうるさくてさすがに出るとは思いますけど。」
「まさかな・・・・・・合鍵が必要になるかもしれんな。調書に大家の住所もあったな?」
「ええ、でも管理してる不動産屋は別ですよ。」
「こんな時間だぞ、まだ開いてないだろ?」
前田はチラッと腕時計を見た。午前七時だ。
「待つわけにも行きませんしね。困ったな。」
大洗は携帯電話を右手に持ちながら思い出したように言う。
「しかし、お前、今朝方、喜多川の姿を確認したと言っていたな?」
前田もそうだ、と思い出す。
「ええ、ですから、順番に殺しているとすれば彼は安全ですね。」
「とりあえず行ってみるか、でなけりゃ強行突破だ。」
大学から近いアパートのため、五分とかからずに到着した。
喜多川のドアの前に立つと、大洗はインターフォンを押した。反応はない。
「喜多川さん!いますか?警察です!出ていらっしゃらないとドアをぶち破ることになりますが構いませんか?」
普通は構うだろう、と思いながらも前田は何も言わない。
「だめだな。何かあったか?」
「緊急事態ですね?どうします?ほんとにぶち破る気ですか?」
大洗は顔をしかめた。ぶち破るという表現が気に喰わなかったのだろう。
「余計なことはいい、第一映画じゃないんだ、簡単に壊せるはずないだろ。隣の部屋からベランダをつたって行くぞ。窓を割って中に入れ、俺はここで待ってる。行け。」
前田は気の乗らない様子で隣の部屋のインターフォンを押した。
「おはようございます。群馬県警の前田巡査長です。」
ドアを開けたのは若い女性だった。おそらくT経済大学の学生だろう。すっぴんでパジャマ姿で、上にコートを羽織っているだけだった。寝起きらしい不機嫌な顔だが、笑ったら可愛いだろうと前田は少しほくそえんだ。
「何ですか?」
「隣の部屋に用事があるんですが、わけあって中に入れないんです。ご迷惑はおかけしません、ベランダを通らせていただけますか?」
「え?わけわかんないんですけど。」
「隣人の生命にかかわる問題ですので、ご了承ください。」
そういうと革靴を脱ぎ、女子大生の一人暮らしのアパートメントに侵入した。こざっぱりした部屋にはパソコンと本棚、ベットと小さい丸テーブルとテレビがあった。どことなくいい匂いがするなと思いつつ、ベランダで革靴を履く。隣のベランダまでは連続ではなく、六十センチメートルほどの間があった。
「大丈夫ですか?落ちたら怪我しますよ?」
そんなことは分かってる、と心の中で叫ぶと、うまく体制を整えて目一杯膝を屈伸し、伸ばした。
150
:
イチゴ大福
:2005/02/15(火) 17:04:51 ID:oRBse.Hg
着地は失敗したが、なんとか生きていた。
ベランダから中をのぞくと、すぐに人が倒れているのが分かった。男だ。裸で、背中に包丁が突き刺さっていた。窓に手をかけ、それが閉まっていることに気づく。
上着を手に巻いて、窓を勢いよく叩いた。罅が入るがまだ壊れていない。三回連続で叩き、穴が開いた。そこから手を滑り込ませ鍵をあける。窓をあける。不思議と外気より室内のほうが冷たいように感じた。
「誰かいるか?!」
背中に包丁を突き立てられた他殺体と密室、この状況からすればまだ室内に犯人が潜んでいる可能性は高い。身構え、恐る恐る玄関に向かった。チェーンはかかっていないが、鍵はかかっていた。鍵を解除し、ドアを開ける。
「どうだ?」
「殺されてます。」
「殺されてる?」
大洗も中に入る。
「なんだこれは?ベランダの鍵は?」
「かかっていました。密室殺人ですね?」
「そんなもんは問題じゃない。いつ殺されたか、それが重要だ。」
「今朝の六時過ぎには確認されてますから、わずか三十分から四十分のあいだの犯行ですね?」
「血を見ろ。この乾き方、いくら寒いからといってもそんな短時間のものじゃない。死斑から見て四時間以上はたってるんじゃないか?」
「四時間?でも、昨夜二時には確認してますし、今朝も六時には・・・・・・。」
「なんだ、何かが違う気がする。・・・・・・違和感を感じないか?」
「違和感ですか?」
大洗は素っ裸でうつぶせになった遺体に顔を近づけたり、部屋の中を見回したりした。その間、前田はことの経過を警察へ連絡していた。
「これから応援が来るそうです。一晩で二人も、大学側も大変ですね?喜多川もゴーストの仕業でしょうか?」
「なぁ、なぜこいつは裸なんだ?」
大洗はまったく話を聞いていなかった。
「そうですね、着替えようとしているところを刺されたからですか?」
「なぜだろう?こんな狭いアパートで、彼は犯人に気づかなかったのか?」
「酔ってたんでしょう?」
「致命傷を一突きだ。ゴーストの仕業だとすれば、今回は手足を先に刺す時間はなかったようだな。」
「そうですね。抵抗されるから?」
「それなら今までだって同じことだ。今までのケースから考えて、ゴーストはまず足などに深い傷を負わせて、移動を困難にしてから、じわじわと殺している。つまり、被害者と一定の距離を置くことができたからそんな危険な真似ができた。」
「この狭さですからね、それに助けを求められたらそれまで。」
「だから、致命傷を一突きした。ではどうやって殺したか?いつ殺したか?どうやって犯人は中に侵入できたか?俺たちの監視の目をいつ擦り抜けたのか?」
そのとき、大洗がフロアにあるものを見つけた。コンドームだった。使用しようとしていたのだろうか?封は開いていて、半分出ていた。
「まさか、女ですか?」
「ありえる。喜多川となんらかの関係はあったのかもしれないな。肉体関係を持とうとして衣類を脱いだところを後ろから一突きされた。だからこんなにも無防備な死に方をしたのかもしれない。」
「それなら密室の謎も解けますね?女は合鍵を持っていたと考えれば自然です。しかし死亡時刻と今朝見た喜多川は・・・・・・。」
「きっと、初めから女はこの部屋にいたんだろう。俺たちよりも前にこの部屋に上がり込んでいたんだ。そして昨晩、午前二時に帰宅した喜多川は女とそういうことになろうとして、無様に殺された。女はこいつの衣類を身につけ、今朝がた外に出た。コンビニに行き、もしかするとT経済大学のグランドの遺体もその女が殺したのかもしれない。」
「まさか。じゃ、ゴーストは私たちが張り込んでいることは知っていた?」
「かもな。少なくとも、ゴーストはある一定の規則にのっとって殺人を繰り返していることからも考えて、犯人は殺す対象をすでに選定している可能性がある。被害者とこの数字の関連、また被害者同士の接点からは、犯人像はまだ分からないが、だいぶ絞り込めてきたし、用心もできる。幸い、今回の殺人は屋外のような証拠の風化が激しい場所ではない。この部屋を完全に封印して、犯人の痕跡を徹底的に洗おう。人間の痕跡を全て穿り返す。」
151
:
イチゴ大福
:2005/02/16(水) 14:14:39 ID:bWjHoq9g
8.三人目の幽霊。殺人鬼がやっていること。
二月五日早朝に起きた二件の同一犯によると思われる犯行は、付近の住民だけに及ばず、大学に師弟を預けている父兄や大学関係者をも震撼させた。
大学側は教授会を緊急招集し、高崎市内に住む学生に対し深夜の外出を自粛し、なるべく単独での行動を避けるように勧告し、父兄にも通知した。
大学が春期休業であったことからも特に混乱はなかったが、今後どれだけこういった犯行が続くのか、予想がつかないだけに、一層警察の活躍が期待されたが、すでに一週間もたたない間に五人の犯行を許してしまったことの、警察への失望は大きかった。
午前十時に所轄の高崎警察署に設置された連続殺人事件緊急対策室に顔を出した二人は、休む間もなく捜査会議に出席していた。コーヒーと菓子パンを頬張りながら事件の進捗状況を聞く二人に周囲は気を使って気づかないフリをしていた。今では二人が事件に一番近い存在であることを、すでに噂などで聞いていたからだ。朝方の喜多川の殺人事件に関しては、大洗、前田の働きがなければ発見がニ、三日遅れてもおかしくはなかっただろう。
しかし、そんな周囲の反応はよそに、二人の眉間には深い皺が刻まれていた。
「では、先日までの三件の事件に関する捜査の経過を報告します。
一件目の被害者はT経済大学経済学部、学籍番号×××−002、藍沢由布子さん、二十歳です。現場は十八号線と高架の交差する近くの児童公園で、着衣に乱れはなく、金品を奪われた形跡もありませんでした。手足に二十箇所以上の刺傷がありましたが、致命傷となったのは心臓の一突きです。
二件目も同大学の地域政策学部の学生で、学籍番号×××−004、青木潤さん、十八歳です。現場は経大通りに立地する雑貨店の裏の空き地で、これも金品を奪われた形跡はありません。一件目と同様手足に二十箇所以上の刺傷があり、心臓への一突きが致命傷となっています。
三件目もまた同大学経済学部の学生、学籍番号×××−008、荻野悠貴さん十八歳。現場は烏川緑地公園のマウンド。金品を奪われた形跡はありませんし、同様に手足に二十箇所以上の刺傷、心臓への一突きが致命傷になっています。
四件目と五件目はまだ司法解剖の所見がありませんので、発見順に報告します。
四件目も同経済大学経済学部の学生、学籍番号×××−006、宇佐美啓祐さん十九歳。現場はT経済大学のグラウンド。金品を奪われてはいません。手足には同様の傷があり、致命傷は心臓への一撃です。
五件目も同経済大学地域政策学部の学生で、学籍番号×××−016、喜多川敦さん二十二歳。金品を奪われた形跡はありません。背中からの一撃が致命傷で、犯人と争った形跡もなく、ショック死したものと予想されます。また、被害者は発見時遺体を身につけておらず、被害者のものと思われる未使用のコンドームも発見されており、犯人と近しい人物か、それに準ずる関係者の犯行と予想されます。以上です。」
所轄の刑事の報告が終わると、県警の梧桐警視正が声を発した。
「何か手がかりは?」
「はい、一連の事件が同一の人物による犯行であることは、事件の法則性に倣ったものであるからもいえるものと思われます。まず第一に、数字によるなんらかのメッセージ性があるということです。これは県警の大洗警部のアイデアによるものですが、いずれの被害者もその学籍番号が2の二乗であること、四件目は特異なケースですが、日付と合致させると256となり、2を8乗したものです。また、被害者がいずれもT経済大学の学生であることからも、T経済大学または大学の関係者に恨みを持つもので、大学に迷惑をかけたいと思っているものの犯行であると考えられます。
いずれの被害者も、学籍番号以外に全体としてなんら共通点がなく、学籍番号によって犯人に狙われた可能性が高く、犯行が無差別的であり、なんらかの宗教的、偏執的な傾向が現れており、今後も被害者が増加することも考えられます。また、四件目のケースからもわかるように、犯人の求める法則性は付随的要因があることも考えられ、今後も犯行がエスカレートすることは充分に考えられます。
また、六年前の未解決事件、通称「あいうえお」殺人事件との模倣性を指摘する現場鑑識の意見もあり、事件との関連性も疑う必要性はあります。」
152
:
イチゴ大福
:2005/02/16(水) 14:15:19 ID:bWjHoq9g
「「あいうえお」殺人事件との関連性は確かに疑う必要性がありそうだな。他には?」
「はい、現場となった児童公園から犯人と思しき足跡が発見されています。メーカーに問い合わせていますが、まだ回答はありません。サイズは約25センチです。
犯人は非常に用心深く、時間をかけて犯行を行っています。目撃証言もまだありませんし、血痕や毛髪、唾液、衣服の一部も残していません。ただ、今朝発見された五件目の現場では凶器が発見されていますし、張り込みにあたっていました大洗警部の話からも、今回の事件では犯人の手がかりが期待されます。以上です。」
それを聞くと梧桐警視正は溜息混じりに口を開いた。
「不謹慎な話だが、今回の犯行が室内で行われたことはある意味幸運だったな。被害者の無念を晴らすためにも、なお一層努力が必要だな。」
警視正が解散の号令を発しようとしたとき、会議室のドアが激しく開け放たれた。梧桐警視正は嫌な予感を感じ、闖入者を睨みつけた。睨みつけられた刑事はその威圧感に圧倒され、一瞬すくんだが、居直ると警視正に近づいた。
「たった今、六件目の犯行があったと通報がありました。被害者はT経済大学の学生です。」
会議室がどよめき、警視正はどよめいた。
大洗は呟いた。
「今度は“012”だな。」
前田は唖然と大洗の横顔を見つめていた。
153
:
イチゴ大福
:2005/02/16(水) 18:24:37 ID:bWjHoq9g
9.殺人事件は「あいうえお」。
現場に向かう途中、前田は、捜査会議で出た「あいうえお」事件について大洗に話そうとした。大洗警部は警察官になってまだ五年目だから、彼は詳しく知らないと思ったのだ。
しかし、意外なことに大洗は事件のことを事細かに知っていた。
「刑事になって最初に組んだ人が年季のはいった人だった。刑事ドラマのデカみたいな人だ。彼は「あいうえお」事件の担当で、必至になって追っていたからな。」
「その刑事は、今は?」
「定年退職で、自治体で学校の防犯プログラムに参加したり、警察学校で顧問のようなものをしたりしている。」
「しかし、驚きましたよ。じゃ私より事件には詳しそうですね。私はそのときはまだ所轄で、すぐ次の事件に駆り出されてしまいましたから。」
「そうだな。」
「警部はどう思います?「あいうえお」事件は今回のように猟奇的な殺人事件でしたけど、犯行は五人で終わっています。今回はもう六人ですし、たった五日で六人というのは尋常じゃありません。」
「小学校に乱入して刃物を振り回すような奴がいる世の中だぞ。正常という機軸なんかないんだよ。それに、あの事件についていえば、犯人はある程度目星はついていたんだ。それが、証拠不十分で不起訴。その後、犯行が行われなかったことと、被害者の苗字があいうえお順だったから「あいうえお殺人事件」と呼ばれるようになっただけのことだ。それに、被害者はいずれも女性で乱暴されていた。被害者の苗字があいうえお順になったのは単なる偶然だと考えるのが自然だろうな。もし、あそこで被疑者として逮捕されていなかったら犯行はエスカレートしていたはずだ。」
「例の中学生ですか?確か名前は・・・・・・。」
「梧桐冬樹。警視正の甥だ。」
「あっ!そうだ。それで検事と取引があったと週刊誌で報道されて騒ぎになったってあれですね?」
「そちらも監察が入ったが証拠はでなかった。結局はうやむやのまま事件は闇に消えた。」
「しかし、よく立件できたものですね?」
「それだけ証拠があがっていたんだ。しかし、誰かが証拠を隠滅した。当時現場は混乱したと言っていたよ。なにせ、実際にあったものが、法的にはなくなったんだからな。」
「じゃ、再び梧桐冬樹が犯行を始めたと考えているんですか?」
「可能性はないわけではない。喜多川がゲイだった可能性もあるし、今回は犯人の目的がレイプから殺人そのものにシフトしたのかもしれない。」
「しかし・・・・・・男同士でもゴムってするもんなんですか?」
「性病が恐い奴もいるだろう。避妊だけが目的じゃないからな。」
「なるほど。・・・・・・でもそれなら、警察が喜多川を張りこんでいたことを犯人が知っていたというのもうなうずけますね。なにせ関係者の親類ですから、情報がリークしていた可能性は考えられますから。」
「「あいうえお」事件では正攻法で痛い目に遭ったが、今回はそうはいかない。それに、奴は今年で二十歳になるはずだ。少年法の適応もない、必ず塀の向こうにぶち込んでやるぞ!」
154
:
イチゴ大福
:2005/02/16(水) 18:25:45 ID:bWjHoq9g
10.間隙のエチュード。小休止を挟んでコンサートは続きます。
彼女は人の死について考えていた。
いつまでが人間であり、いつから人間でなくなるのか?重要な問題だった。
彼女は死体を目の前にし、初めて自分が血に塗れていることを知った。
比喩などではない、実際に、彼女は全身を血で濡らしていた。
煌々と照り輝く青白い月明かりの中で、血はより黒く、そして硬質な光沢を放っていた。
「綺麗・・・・・・。」
血をまとい、彼女の姿はより美しく、幻想的な静謐さを湛えていた。この風景にあっては、死体はまるで彼女の手によって殺されるためだけに生まれてきたかのようでさえあった。
人間の血の美しさ。
それこそ生きていることに証であり、人間がもつ至高の力。
彼女は微笑んだ。
血を眺め、その光沢を褒め称え、自然と彼女の口元はほっそりとして吊り上り、目元は三日月のように細くなっていく。まるでゼウスに息吹を与えられたルネッサンス彫刻のような神々しさを湛えて、彼女の存在は闇に光を灯していた。
闇は深く、そして全てを隠し続けている。
唯一、ただ彼女を照らす月だけが、ことのあらましを見守っていた。
155
:
イチゴ大福
:2005/02/17(木) 12:19:44 ID:hIJaz5AI
11.事件を憎んで人を憎まず。それでも遺族はご立腹ですよ。
六人目の被害者は市内に住むT経済大学地域政策学部の学生で、名前は葛西倫太郎、学籍番号は予想通り×××−012。これまでの四件と同様、手足に複数の刺傷があり、致命傷が心臓への一撃だった。もちろん、二月五日に殺されていることから、すぐに2の9乗、“512”を狙った犯行であることが考えられた。
これまでの事件との相違点は、彼の実家が高崎市ということだけで、他に何一つ犯人は手がかりを残してはいなかった。
犯行現場は彼の自宅の、十畳ほどの広い居間で、両親は仕事のために不在、犯人も早朝の事件のあとすぐに彼の自宅に向かったものと思われる。
第一発見者は彼の友人で、葛西と遊びにいく予定だったらしいが連絡がとれないことを不審に思い自宅に向かい、彼を発見した。玄関は開いていたという。友人とはいえ留守の他人の家に勝手に上がり込むのは関心できないが、人のことは言えないなと前田は苦笑した。それに、彼の無神経が結果として事件の早期発見に繋がったのも事実だ。それについては評価しなくてはならならいだろう。
「忙しい奴ですね?」
「そりゃ、乗数なんてどんどん大きくなっていくからな。2の10乗は1024だぞ。十月まで待つか?」
「笑いごとじゃないですよ。しかし、“32”、“64”、“128”はどうして飛ばしたんでしょう?“16”から“256”は発見される危険まで冒して順番を守ったのに。」
「16は4の根だし、256は16の根だ。何か意味があるんだろう。」
「それなら64だって8の根ですよ。8は実際、三件目の犯行で使われてます。」
「しかし、父兄には安否確認を行うよう大学側から連絡が行ってるんだろう?何かあったら警察に通報があるんじゃないか?」
「今朝ようやく対策が決まったんですよ。まぁ新聞でも大々的にやってますから、父兄も安否確認はしてると思いますが。」
「猟奇殺人としてマスコミが報道を始めたのは昨日の夕刊くらいからじゃないか?案外、危機感っていうのは切迫してこないと沸かないもんだ。」
「そりゃそうですけど・・・・・・。」
「明日は六日だからな。004番が怪しんじゃないか?」
「あっ、そうですね。64ですか。犯人は日付も絡めていますから。」
「前田、お前疲れてるだろう?頭の回転が鈍ってるな?」
「すいません、こんなこといつもならすぐに気づくんですけど。」
「明日は非番だったな。早引けしろ。少しゆっくり休め。疲れてんだ。奴も一日で三人もやったんだ。明日くらい休むだろう。」
「いいえ、落ち着いておちおち寝てられませんよ。」
前田が言うと大洗はいつもの「だからお前は馬鹿なんだよ」と言いたげな顔をした。
「は?なにか?」前田がいうと大洗は外に彼を連れ出した。
「梧桐の身辺を洗えってことだよ。いいか、奴は正攻法で落とせる敵じゃない。だが警察として得られる情報は限りなくないと言っていいだろう。それなら非合法の活動が必要だ。」
「しかしそんなことをしても立件できないんじゃ?」
「いいか、奴がやったという核心を得るんだ!それに令状は取れないだろうし、梧桐を捜査しているとばれたらそれこそ俺たちが逆にマークされることになるんだぞ!分かってるか?警視正は公安にも顔がきく、その気になれば俺たちを更迭することもいとわないだろう。警視正に気取られたら一巻の終わりだ。」
前田はぞっとした。彼にはまだ三歳になる子供いたし、住宅ローンも残っていた。それに自慢になるが奥さんは加藤ローサに似ていてとてもかわいい。服務規定違反で降格、いや、それどころか免職なんてことになったら・・・・・・彼の頭の中では加藤ローサ似の奥さんが子供を背中に負ぶって、貧乏長屋で夜なべをして手袋を編んでいる姿が走馬灯のように走っていた。
「警部、私には家族がいますし、それにまだ家のローンが・・・・・・。」
「梧桐冬樹がたまたまお前の前を歩くだけだ。服務規定違反じゃないし、ましてや公安が目をつけているわけじゃない。」
前田は唸る。相手は警視正、キャリアだ。そんなのに睨まれたら出世はもちろん、県警でも味噌っかすにされてしまうのも分かりきっている。しかし、警察官として「正義を成せ」という言葉が心の底から響いてくる。
その時、事件の報せを受けた被害者の両親が帰宅した。大声で息子の名前を叫び、遺体に駆け寄ろうとするのを警官が抑えた。警察の無能を罵倒する両親の姿は、前田には一児の親として痛切に感じていた。
彼は、奥さんと子供に心の中で謝ると、決心した。
「分かりました。やりましょう。」
156
:
イチゴ大福
:2005/02/17(木) 12:22:54 ID:hIJaz5AI
12.事実と過去と予測の誤差。 Guest in crime scene. ①
早引けしろといわれたが、シフトでは前田は午後から明日一日が非番になっていたので、誰にはばかることなどなかった。前日は徹夜で張り込みをしていたのだから当然といえば当然だが、最近は凶悪事件の増加に伴い人手不足も慢性化していたことは確かで、非番にかかわらず出勤など日常茶飯事だったことはいうまでもない。
前田は週刊誌などで「熟年離婚」や「十年目の浮気」などという見出しを見るたびに、かわいい奥さんがもしやどこかの見知らぬ男と・・・・・・などとよからぬ心配をしていた。確かに、家族のために使う時間が少ないし、たまに帰れば三歳になる娘からは「このおじちゃんだれ〜?」といわれる始末だ、家族の心が離れても文句は言えない。前田は不安というより絶望に近い心理状態だった。
しかし、刑事としての前田は書庫の前に立つと一変した。六年前に起こった通称「あいうえお連続殺人事件」の調査書類を探しに来たのだった。大洗よりも警察官としての経歴は長いが、事件の詳細は彼より明るくない。それに、当時所轄勤務の彼には事件の詳細まで情報が降りてくるはずもなく、自分で調査する暇もあるわけもなく、いつのまにか他の事件に翻弄されて歳月は過ぎていった。それが、六年という沈黙を破っていま再び犯行が行われているというのは、彼をぞっとさせた。
「できればそのまま永遠に眠っていればよかったのに。」
事件が未解決なのは確かに、遺族にとって口惜しいものだろう。新たに事件が起これば犯人が証拠を残す可能性もあるし目撃者も増えるから検挙率は上がる。しかし、新たな犠牲者が必要な事件など何一つない。矛盾した心理だとつくづく思う。
六年という歳月は膨大な記憶を蓄積するものだ。書架にずらりと並んだ書類の束に彼は思わず溜息をついた。
数年前から警察でもコンピュータの導入が進み、犯罪履歴や犯罪者のデータベース化が進んでいる。それでも、これまで全ての事件をデータベースに載せることは困難であり、導入以前のものは自分の目で探さなくてはならない。こればかりは時間の経過とデータの蓄積を待つしかないだろう。いずれ、データベース情報の共有化が進めば、犯人検挙につながる情報が今以上に早く見つかるようになるはずだ。
「従来の手法や技術に固執するあまり、技術や方法論の意義そのものを見失うことがある。技術はあくまでも人間の活動を補助し、その機能を強化し、脆弱性を補完するものだ。「新しければいいというものじゃない」という奴がいるが、その通りだ。だが、古いもので不便であったり、適応できなかったりするのであれば、やはり新しい技術は必要になる。何のためにそれが必要なのか、なぜそれでなくてはならないのか、目的とその根拠が伴わないのであれば、どんなにすぐれた技術であっても意味はなさないだろう。」
157
:
イチゴ大福
:2005/02/17(木) 12:23:27 ID:hIJaz5AI
前田の父の言った言葉だった。彼の父は工学博士でM工科大学工学部の工学博士だ。分子工学の分野では名の知られた博士で、最近も他大学の遺伝子工学の研究室と共同で、逆転写酵素RNAの組成実験でなにか画期的な発見をしたらしいと風の便りに聞いてはいたが、文系でスポーツ大好きの彼にはよく分からない分野だった。
彼は父親似ではなかった。それは彼の父も了解していたことだろう。彼は父を尊敬していたし、博士も彼を愛していたはずだった。それは自然な親と子の姿だった。ただ、まるで性質の異なる二人の関係は、どこかで何かしら擦れ違うものがあったのかもしれない。
彼は父の前ではどこかよそよそしく、なるべく父の気に入るように振舞った。しかし、父の話は数学や器材、コンピュータや分子配列の予測など、おおよそ彼の興味を引くものではなかった。第一、日が暮れてもボールを追いかけている前田少年には、旋盤がどういうものか想像すらできなかったことだろう。きっと今でも分からないはずだ。
だから、父のいうようなことを当たり前にいってしまう大洗が、彼には父といっしょにいるような気分にさせるのかもしれない。心が通じ合っているとでもいうのだろうか?少なくと、彼には大洗の相棒でいることを楽しんでいたといえよう。ある意味、前田は大洗に彼の求める父の背中を見出したのかもしれなかった。
事件の関連調査書類はすぐに見つけることができた。分厚い書類の束が一つだけ残っていた。五人もの女性が強姦され殺された連続殺人事件は、公式には被疑者は証拠不十分のまま不起訴となり、現在も犯人は見つかっていない。遺族は事件を風化させまいと活動しているが、次から次に起きる凶悪事件にマスコミの反応も鈍い。
問題となったのは、被疑者が当時の警視、梧桐彦一の甥にあたる梧桐冬樹であったことだ。当時の捜査員たちは懸命の捜索のうえに、なんとか梧桐冬樹に辿りついた。捜査員は非合法にDNAサンプルを採取し、それが被害者の遺体から検出されたものと一致したことから、捜査を指揮していた梧桐警視を説得し、正式な手続きを経て逮捕させた。しかし、警視は検察側を懐柔し、また警察内部の梧桐に取り入る不心得者が、検死結果と、遺体から出てきた体液のサンプル、また現場に残された毛髪や指紋といった証拠を書類と共に隠匿してしまった。焦ったのは捜査員たちである。なにせ、一致した梧桐冬樹のDNAサンプルは非合法に採取したもので、法的にはなんら証拠としての効果はなかったのだ。それに第一、警察がこんなことをしていいはずがない。しかし、証拠も法的に存在せず、検察側も完全に梧桐に味方したことから不起訴処分となった。また、少年法改正以前であったため、梧桐冬樹の実名は社会に晒されることもなく、事件は今に到るまで結局解決していない。そんな犯人が、今度は悪知恵をつけて犯行を繰り返しているのかと思うと、虚しささえ覚えた。
当時、一部の週刊誌ではこのことが報じられた。噂では、不満に思った捜査員が情報をリークしたということだが、公安が介入して真相はうやむやになっている。わずかに残った証拠書類。封印を解き、中を検める。被害者の調書が一人一枚にまとめられている。たった紙一枚で書きつくせる人生ではなかったはずだ。中にはこれから人生を書き綴ろうという方もいただろう。彼女らの無念を思いつつ項を繰っていった。
四人目に目を通して五人目に移ろうと項を繰ったとき、彼は自分の目を疑った。五人目がいなかったのだ。
「ゲストが一人足りない?」
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