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俺は小説家を目指している。
157
:
イチゴ大福
:2005/02/17(木) 12:23:27 ID:hIJaz5AI
前田の父の言った言葉だった。彼の父は工学博士でM工科大学工学部の工学博士だ。分子工学の分野では名の知られた博士で、最近も他大学の遺伝子工学の研究室と共同で、逆転写酵素RNAの組成実験でなにか画期的な発見をしたらしいと風の便りに聞いてはいたが、文系でスポーツ大好きの彼にはよく分からない分野だった。
彼は父親似ではなかった。それは彼の父も了解していたことだろう。彼は父を尊敬していたし、博士も彼を愛していたはずだった。それは自然な親と子の姿だった。ただ、まるで性質の異なる二人の関係は、どこかで何かしら擦れ違うものがあったのかもしれない。
彼は父の前ではどこかよそよそしく、なるべく父の気に入るように振舞った。しかし、父の話は数学や器材、コンピュータや分子配列の予測など、おおよそ彼の興味を引くものではなかった。第一、日が暮れてもボールを追いかけている前田少年には、旋盤がどういうものか想像すらできなかったことだろう。きっと今でも分からないはずだ。
だから、父のいうようなことを当たり前にいってしまう大洗が、彼には父といっしょにいるような気分にさせるのかもしれない。心が通じ合っているとでもいうのだろうか?少なくと、彼には大洗の相棒でいることを楽しんでいたといえよう。ある意味、前田は大洗に彼の求める父の背中を見出したのかもしれなかった。
事件の関連調査書類はすぐに見つけることができた。分厚い書類の束が一つだけ残っていた。五人もの女性が強姦され殺された連続殺人事件は、公式には被疑者は証拠不十分のまま不起訴となり、現在も犯人は見つかっていない。遺族は事件を風化させまいと活動しているが、次から次に起きる凶悪事件にマスコミの反応も鈍い。
問題となったのは、被疑者が当時の警視、梧桐彦一の甥にあたる梧桐冬樹であったことだ。当時の捜査員たちは懸命の捜索のうえに、なんとか梧桐冬樹に辿りついた。捜査員は非合法にDNAサンプルを採取し、それが被害者の遺体から検出されたものと一致したことから、捜査を指揮していた梧桐警視を説得し、正式な手続きを経て逮捕させた。しかし、警視は検察側を懐柔し、また警察内部の梧桐に取り入る不心得者が、検死結果と、遺体から出てきた体液のサンプル、また現場に残された毛髪や指紋といった証拠を書類と共に隠匿してしまった。焦ったのは捜査員たちである。なにせ、一致した梧桐冬樹のDNAサンプルは非合法に採取したもので、法的にはなんら証拠としての効果はなかったのだ。それに第一、警察がこんなことをしていいはずがない。しかし、証拠も法的に存在せず、検察側も完全に梧桐に味方したことから不起訴処分となった。また、少年法改正以前であったため、梧桐冬樹の実名は社会に晒されることもなく、事件は今に到るまで結局解決していない。そんな犯人が、今度は悪知恵をつけて犯行を繰り返しているのかと思うと、虚しささえ覚えた。
当時、一部の週刊誌ではこのことが報じられた。噂では、不満に思った捜査員が情報をリークしたということだが、公安が介入して真相はうやむやになっている。わずかに残った証拠書類。封印を解き、中を検める。被害者の調書が一人一枚にまとめられている。たった紙一枚で書きつくせる人生ではなかったはずだ。中にはこれから人生を書き綴ろうという方もいただろう。彼女らの無念を思いつつ項を繰っていった。
四人目に目を通して五人目に移ろうと項を繰ったとき、彼は自分の目を疑った。五人目がいなかったのだ。
「ゲストが一人足りない?」
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