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とある英雄譚のようです
1
:
名無しさん
:2018/04/22(日) 20:46:23 ID:G.gIoQVo0
荒野なのか、それとも峡谷なのか。吹き抜ける風に舞う砂塵に覆われた世界。
隆起と沈降の地形を適当に割り振ったかのような褐色の大地。
見渡す限り生命の痕跡が存在しないその地の、中心部。
まるで何者かによって線を引かれたかのように存在している半球の領域。
そこは周囲の澱みをものともせずに、緑豊かな環境が存在していた。
荒んだ太陽が照らすのは、小高い丘の上に伸びる、大きさも形も違う五つの影。
四種類の塊と、それらに囲まれている一つの屍。
骨だけになった腕が掴んでいるのは、身の丈ほどもある杖。
主を失ってなお溢れ続ける魔力は、丘を清浄な空間で包むために漂う。
命を司る蒼の魔力は屍から離れるごとに薄くなっていき、荒野の空気へと溶けていく。
魔力球の中に存在する最も大きな影は、腐り落ちた大樹の幹。
その両隣に突き刺さっているのは、錆びた剣と、その数倍はあろうかという巨大な牙。
向かいにはくすんだ色の十字架があり、それらは綺麗に四方向に配置されている。
人為的な痕跡を残すその場にはしかし、生命の存在は何一つ感じ得ない。
風の呼吸すら止まっているかのような、静かで荒れ果てた大地。
ジオラマのような世界で、突如として錆びた剣が音を立てて傾いた。
その音に引き寄せられるかのように、漂う魔力に流れが生まれ、
魔力によって遮られた空間を濃い霧で覆い隠す。
262
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 14:56:42 ID:7X8WUdNc0
( ФωФ) 「確かに、気になっていたことだな」
クールは我関せず、二つの棒きれで天剣をイメージしながら体を動かしていた。
助け舟を出すつもりは無いと気付いたドクオは溜息を一つ。
('A`) 「気づいていたのか」
【+ 】ゞ゚) 「気づいてないと思っていましたか」
('A`) 「いや、魔力の痕跡でいずれバレるとは思ってたよ。
まさか今日聞かれるとは思ってなかったけど」
( ФωФ) 「全く、前代未聞であるな。
これから最終決戦に赴く二人が色恋沙汰の関係にあるなど」
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「へぇー、そういう事ですか」
事情が呑み込めたフロストも茶化すように話に乗る。
( ФωФ) 「どちらが決めたんだ」
('A`) 「クールだ」
【+ 】ゞ゚) 「それで、何という名前なのですか」
263
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 14:57:06 ID:7X8WUdNc0
川 ゚ -゚) 「キュート」
それまで沈黙を保ってきたクールが口を開いた。
消え入りそうなほど小さいが、芯のはっきりとした声で。
264
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 14:57:45 ID:7X8WUdNc0
【+ 】ゞ゚) 「いい名前じゃないですか」
川 ゚ -゚) 「当たり前だ」
('A`) 「俺もそう思う。きっと君に似て可愛くなる」
川 ゚ -゚) 「お前に似て賢くなればいいがな」
( ・∀・) 「っち……緊張感のない」
【+ 】ゞ゚) 「御二人とも、もう親バカ全力ですか」
( ФωФ) 「この戦いを生き残ることができてこそだ。
激しい戦闘になると思うが、そこらへんは大丈夫なのだろう?」
('A`) 「時間停止の魔術と、空間防護の魔術の二重掛けだ。
子供を危険に曝すわけにはいかないからな」
川 ゚ -゚) 「……最悪、私が死んだとしてもこの子は生まれることができる様にしている。
二人で決めたことだ。万全を期しておこうとな」
( ・∀・) 「……そんなことには……させない。
親がいない苦しみは……わかってるつもりだ」
265
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 14:58:31 ID:7X8WUdNc0
('A`) 「ああ。……明日、か」
川 ゚ -゚) 「今更、怖気ついたわけでもないだろ」
('A`) 「これで世界が変わる。そう思えば、少しな」
( ФωФ) 「そう大きなことではない。失敗したところで、今まで通り戦う者が現れる」
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「五百年に一度……。
少なくとも今の私は生きてはいないでしょうから、想像すらできません」
川 ゚ -゚) 「だが、今よりも確実に良くなる。そう信じているからこそこの命を懸ける」
( ・∀・) 「そうだね」
('A`) 「遂に明日だ。みんな、覚悟を決めてくれ」
ドクオの発破にそれぞれが応え、会話は途切れた。
翌日に起こり得る全ての最悪を想定し、あらゆる対策を講じる六人の英雄。
陽が落ちて少したってから、彼らは眠りについた。
266
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 14:59:23 ID:7X8WUdNc0
早朝、世代最強の英雄たちは空にあいた大穴を見上げていた。
それは、何の前触れもなく現れた異空間への扉。
強大で邪な魔力の氾濫に、正面から立ち向かう。
各々は互いに確認をせずに戦闘態勢をとった。
モララーが龍化を行い、龍技を発動した。
全身強化の支援術式を許容範囲の上限に設定し、敵を待つ。
クールは九つの天剣を全て展開し、魔力を纏わせた。
全てを貫く矛であり、あらゆるものを遮る盾となる剣の切っ先を天に向ける。
ドクオが腕を持ち上げただけで、あらゆる場所に魔術が現れた。
ただの一つですら世界を揺るがすほどに強力無比な攻撃魔術を、幾つも仕掛ける。
オサムの呪術は彼の全身を覆い、刺々しい黒色の鎧を作り出す。
二回りも大きくなった彼が構えたのは、赤黒い刃を持つ呪術の鎌。
ロマネスクは両手を広げ、周囲の精霊たちに呼び掛ける。
精霊術師である彼に応えるために、空気の、そして大地の精霊たちが集う。
フロストの一族だけが保有する魔術、アマザイに生み出された氷の彫像。
巨大な槍を構え、馬に跨った二体の騎士は彼女の両脇を護る。
267
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 14:59:43 ID:7X8WUdNc0
遂に異空間より、禍を為す獣が産み落とされた。
.
268
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:00:18 ID:7X8WUdNc0
>2
(メ'A`) 「……みんな、生きてるか」
川 ゚ -゚) 「何ら問題はない」
最初に応えたのは、ドクオの隣に立っていた女性。
長かった黒髪は首元で不揃いに切られており、両腕には大きな傷跡が消えずに残っている。
それでも、背にしたナインツ・ヘイブンは未だ強く光り輝く。
( ФωФ) 「久しぶりに死にかけたな」
ロマネスクは左腕の根元を抑えながら立ち上がった。
肩から先を失った傷口は、ゆっくりと再生している
( ・∀・) 「っててて……自爆かよ。勘弁してほしいよ、ほんと」
瓦礫の中から起き上がった巨大な龍。
周囲の大地が消滅するほどの衝撃の中心部に居たにもかかわらず、
ほぼ無傷のその身体は、龍属の特性を遺憾なく発揮していた。
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「驚かされましたね」
【+ 】ゞ゚) 「助かりました」
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「いえいえ。不死のあなたには余計なお世話だったのかもしれませんが」
269
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:01:08 ID:7X8WUdNc0
【+ 】ゞ゚) 「死なないのにも限度がありますから」
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「それはよかったです」
表面が波打つ半透明の球体の中に無傷で立っているオサムとフロスト。
防御行動のために消費した精神力が疲労となり、二人は肩で息をする。
('A`) 「これで、作戦の第一段階は終了だ」
( ФωФ) 「ここまでは今までと同じだ。そして、概ね予定通りでもある」
【+ 】ゞ゚) 「さて、では……」
宝石の砕けてしまった指輪を替えながら、オサムは二つの呪術を発動させた。
一つは消費してしまった命を補充する不死の呪術。
オサムにとっては生命線となる最も重要なものである。
二つ目は呪術の発動に必要な呪力痕の作成。
彼が胸元から取り出した宝石を一つ砕くごとに、身体中の肌に余すところなく刻まれていく黒い斑紋。
魔力と異なり、発動の為に必要な呪力はすぐに引き出すことが難しい。
故にオサムはその身にあらかじめ呪力そのものを封じることで、
本来呪術師が苦手とする激しい戦闘にすら介入することができる。
270
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:01:48 ID:7X8WUdNc0
【+ 】ゞ゚) 「いつでもいいですよ」
川 ゚ -゚) 「ドクオ」
('A`) 「わかってるさ。まずはこの世界を護る魔法だ。
これから起こる激しい戦いに耐えられるようにな。
ゴッドブレス!」
杖から放出された透明な魔術は、遥か上空まで立ち昇ってドーム状に拡がっていく。
半径数百キロを覆う無色の防護膜。
威力という概念を減衰させる、ドクオの考え出した最高級の防御魔術。
同じ魔術で生み出した灰色ローブを自身も纏い、
懐から四つの供物を取り出した。
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「何が出て来るでしょうね」
( ・∀・) 「フロストは何も準備しなくていいの?」
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「ええ、私のアマザイはいつでもどこでもどんなことでも対応できますから」
フロストの周囲で弾ける冷気。
人間の掌よりも小さな塊が、龍属であるモララーにすら寒気を感じさせた。
( ・∀・) 「確かに、怖いね」
271
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:02:36 ID:7X8WUdNc0
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「そういうあなたこそ龍技は利用しないので?」
( ・∀・) 「戦いが始まってからで十分間に合う」
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「……そうですね」
('A`) 「お喋りは終わりだ」
ドクオの掲げた杖が、空に四つの魔術陣を描く。
少し遅れて噴き出した魔力が四つそれぞれに注がれて、空間転送魔術を起動する。
その穴から引き出されてきたのは、いずれも最高位の魔術素材。
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「これは……凄い力ですね」
('A`) 「レタリアを発動させるまで遊んでいたわけじゃないんだ。
どうやったら効率よく、かつ長いこと虚ろへとこの世界を繋げておくか。
俺が考えていたのはそれだ」
川 ゚ -゚) 「全く、恐ろしいほどに勉強熱心な奴だ。
自身のスキルアップだけに飽き足らず、そんなことまで考えていたのだからな。
だが、それでこそ私が愛したドクオだ」
( ФωФ) 「最終決戦。それも、この世界の行く末を決めるものだ。
よくもまぁ、それ程平常心でいられる。人間の図太さには感心すらするな。
そこの龍も少しは見習えばいい」
272
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:04:13 ID:7X8WUdNc0
(; ・∀・) 「っ! 余計なお世話だ」
鼻息荒く反論するモララー。
そんな彼の意思に反して、大地を掴んでいた四つ足は少しばかり震えていた。
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「怖気づいたのですか?」
( ・∀・) 「何が出て来るのか全く予想できないんだ。みんな平然としている方がどうかしてる」
( ФωФ) 「五回も乗り越えれば心が鈍ってしまったというのもあるが……。
災厄は五度も私を殺すことは叶わなんだ。
今更、どんな敵がいたところで殺される気はしない。
お前とてそうだろう。龍王」
( ・∀・) 「……そうだ、そうだ。……わかっている。
龍属の歴史の中で最も強い龍王。誰も僕を殺せるはずがない」
少年はいつの間にか震えが止まっていることに気付いた。
老樹の言葉と、全身を巡るの魔力の力強さを感じながら、ドクオの魔術を見守る。
('A`) 「地獄の焔、黄泉の風、冥府の海、深淵の泥……」
言霊によって四つの魔術が発現した。
それぞれがお互いを喰らうかのように暴れる。
そのどれもが術者を殺してしまいかねない程の魔術でありながら、
ドクオは容易く完全なコントロール下に置く。
273
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:04:55 ID:7X8WUdNc0
('A`) 「っ……」
ゆっくりと回転を始めた四つの魔術。
ロマネスクの前で実演してみせたものよりも数百倍は巨大な黒球。
四大元素は均等に混じり合い、反発を繰り返す。
高速回転することで押し潰され、円盤状へとその姿を変えた。
('A`) 「準備はいいな。もう引き戻せないぞ」
( ・∀・) 「任せてくれ。どんな巨大な敵が現れたって僕が立ち向かう」
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「アマザイはどのような相手に対しても必殺の攻撃手段がございます。
安心して任せてください」
川 ゚ -゚) 「天剣に切り裂けないものは無く、防げないものは無い。
神の尖兵が有する地上最強の魔術だ」
【+ 】ゞ゚) 「呪術の極致は戦わずに殺すことです。
もしも大群が現れるようでしたら私が対応しましょう」
( ФωФ) 「万事問題無し。神と呼ばれた精霊使いの力、存分に振るおう」
('A`) 「開け、虚ろの扉。ミスティルティン!」
.
274
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:07:19 ID:7X8WUdNc0
四大属性の最高魔術から生み出した扉の魔術は、
この世ならざる世界と繋がれた。
モララーがゆうに通れるほど拡がった暗き穴の底から溢れ出す混沌の魔力。
先程屠ったはずの神と同質でありながら、さらに濃く澱んでいる。
('A`) 「っ!」
穴の底にゆっくりと露わになった光。
それはあまりにも大きすぎる瞳。
(; ・∀・) 「でか……い……」
(<●>) 「「私の名前はオルフェウス。原初の純術師にしてこの世界の神である」」
問いかけは声ではなく魔力の波長として放たれた。
意識を揺さぶるかのような重たい言葉は、六人の胸の奥にまで届く。
(<●>) 「「一体、何用かね」」
( ФωФ) 「貴様がこの終焉の戦いを起こしていた原因だな?」
(<●>) 「「ほう、また生き残ったのか……。素晴らしい。
だが、ただの宴程度でそう騒ぎ立てる事でも無かろう」」
川#゚ -゚) 「ふざけ
275
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:07:40 ID:rt1Nb5fY0
ドクオとクーの子供だったか
276
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:08:19 ID:7X8WUdNc0
川#゚ -゚) 「ふざけるな! あれが宴だと!」
(<●>) 「「無論」」
【+ 】ゞ゚) 「あなたが何者かはわかりませんが、
終焉を引き起こしているのなら対処させていただきます」
(<●>) 「「対処。対処とは。全く愚かなことだ」」
( ФωФ) 「ふむ、随分と上から目線だな」
(<●>) 「「憐れな。自らの小さな世界の中に閉じこもっていればいいものを」」
('A`) 「偉ぶっているところ悪いが、同じ足場に降りてきてもらおうか」
(<●>) 「「なに?」」
('A`) 「拡大しろ、虚ろの扉。神の座から奴を引きずり落とせ!」
ドクオの杖から複雑な魔術がミスティルティンに注ぎ込まれた。
暗黒の空間が夜空と見紛うほどに拡がる。
その中から地上に落ちてきたのは、この世界には存在し得ない化け物。
277
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:09:05 ID:7X8WUdNc0
巨大な一つ目が縦に埋め込まれた濃紺の身体。
ブヨブヨとした表面から幾条もの触手が揺らめき、
殊更に太い四本を足として立っていた。
(<●>) 「「……この私を引き寄せるとは、余程世界と共に滅びたいようだな。
神の姿を一目見たいという、
矮小なる生物としての願いだけであれば赦してやったものを」」
('A`) 「生憎、遊び感覚で世界に干渉するような奴を神だと崇める趣味は無い」
(<●>) 「「それでこの私に負けるべくして戦いを挑むと。理解できんな。
五百年後には貴様らもその周囲もほとんど生きてはいまい」」
( ・∀・) 「この世界の安寧の為に、不必要な神を殺しに来たんだ」
(<●>) 「「確かに、大口を叩くだけの実力はある。
過去の戦いでも全員がほぼ無傷なのは見たことがない」」
( ФωФ) 「お前を殺す為だけに集められたんだ。当然だろう」
(<●>) 「「当然? おかしなことを言う」」
ただ無機質な音であった声に、初めて感情が込められた。
押し殺したかのような嘲笑が漏れる。
278
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:10:09 ID:7X8WUdNc0
川 ゚ -゚) 「何がおかしい」
(<●>) 「「どうせ死ぬのだからな。おまえたちの過ちを教えてやろう。
終焉を戦い抜くことが出来れば、世界は救われると」」
('A`) 「何も間違ってはいないだろう。少なくとも七回、三千五百年はこの世界が存続している」
(<●>) 「「では、その前は」」
('A`) 「俺の知る資料にある限りは……」
(<●>) 「「過去どれだけの戦いが行われてきたのか、知らぬのか。
では教えてやろう。千と三十一回。終焉はこの世界に訪れている。
果たしてそれだけの資料とやらがあるのか」」
(;'A`) 「まさか…………」
(<●>) 「「そうだ魔術師。この世界はすでに何度も滅びているのだよ」」
(#ФωФ) 「馬鹿な! 私が生まれる千年前がこの世界の始まりだったと? ありえない!」
(<●>) 「「いいやあり得る。この私が世界を再生させるときは、
決まってある一定の文明水準にするからだ。
でなければ、強者が育つのを待たねばならいだろう」」
279
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:10:51 ID:7X8WUdNc0
【+ 】ゞ゚) 「壊すために創っているということですか……」
(<●>) 「「壊す為ではない。たまたま英雄が不作だったときに壊れてしまうだけだ。
そうやって進んでは戻る世界をただ観測をしているだけに過ぎない。
私自身が干渉するときはいつも、世界を再生させるときだけだ。
むしろ感謝してほしいものだな」」
川 ゚ -゚) 「お前の話はわかった。だから今すぐ死ね」
(<●>) 「「血気盛んなお嬢さんだ。だが激しい運動は胎内の子供に良くないのではないか」」
川;゚ -゚) 「ッ!?」
(<●>) 「「なぜ知っているという顔をしたな。当然だろう。私は神なのだから。
お前たちが土足で踏み込んできた神の座から世界を見守ってきたのだ」」
( ・∀・) 「災厄をけしかけて見守って来ただと? そんな保護ならお断りだ」
(<●>) 「「話が逸れてしまったな。お前たちの過ちは一つ。
その卑屈なる身にて、神に挑むという大罪を犯した。罪は贖われなければならない。
この世界の命と共に」」
【+ 】ゞ゚) 「神、神とうるさいですね。神というほどの力は持っていないでしょうに。
少なくとも、今この場にいる私たちを一瞬で消滅させてしまうようなことは出来ないようですし」
280
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:11:19 ID:7X8WUdNc0
(<●>) 「「そうか、言い忘れていたな」」
【+ 】ゞ゚) 「なんでしょう?」
(<●>) 「「五百年に一度の終焉のシステムは当然私が作った」」
( ФωФ) 「だからなんだというのだ」
(<●>) 「「都合よく強者だけに呼びかける魔術が出来たのは、最初の一回目だ。
それから世界が滅んでも、永遠と受け継がれている。なぜだかわかるか?」」
(;'A`) 「まさか……」
(<●>) 「「レタリアという魔術を生み出したのも当然、私だからだ」」
【+ 】ゞ゚) 「な……っ……か……」
(<●>) 「「全く愚かな。不死とは神にのみ許された現象だ」」
オサムの胸を貫いた氷の槍。
傷口から広がった凍結魔術はその全身を覆いつくし、
彼の命であった呪術の宝玉は全て一瞬で砕かれた。
その瞳から力は失われ、だらしなく下がった両腕はピクリとも動かない。
281
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:11:55 ID:7X8WUdNc0
(; ・∀・) 「なっ! 何を……っ」
それ以上言葉を続けることは叶わなかった。
大地に落ちた巨大な塊の持つ二つの光は、数秒と経たずに失われ、、
鋭利な刃で分断されたもう一つの塊は、
滝のように零れ出てきた血みどろの中に沈む。
(; ФωФ) 「オサム! モララー! っ貴様!! 穿て!」
命じられた大気の精霊が撃ちだした超高圧の空気弾。
一直線に女の身体を貫いた・
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「ふふっ……」
数十メートルも吹き飛ばされた女性は、何事もなかったかのように立ち上がった。
傷口から溢れ出てきたのは血液ではなく、透き通った水。
(<●>) 「「さて、どうする。これで残るは三人だ」」
(;'A`) 「くそっ……。問題は……無い。お前らを殺せばいいだけだ」
(<●>) 「「この期に及んでまだ諦めないのか。
いいだろう。たまには直接遊んでやるのも悪くはない。
我が名はオルフェウス。この世界の神なり」」
282
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:14:32 ID:7X8WUdNc0
>2
(<●>) 「「よく戦った」」
(;メA`) 「はっ……はっ……」
魔力で補強した身体で辛うじて立っているだけのドクオ。
未だ無傷の怪物がその一つ目で見下ろしていた。
(メA`) 「ロマネスク……クール……」
背後に仰向けに倒れたまま動かないロマネスク。
精霊術による加護を解かれ、人間としての姿を失っていた。
川;゚ -゚) 「ドクオ……私はまだ……戦える」
フロストの胸に突き立てたままの天剣を杖に寄りかかるクール。
全身の至る所に凍傷と裂傷が刻まれながらも、気丈に振る舞う。
彼女が誇っていたはずの比類なき魔力も、大半が失われていた。
戦場となった大地に過去の面影はない。
空すらも舞い上がった砂塵に埋め尽くされ、生きるものも存在しない世界。
283
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:15:49 ID:7X8WUdNc0
(<●>) 「「守るもののない世界で、よくぞ戦った」」
ドクオが入念に用意していた世界を護るための魔術は、ものの十数分で完全に崩壊した。
彼自身が戦闘に専念しなければならず、
想定を上回るオルフェウスの力があったために維持が出来なかったのだ。。
(<●>) 「「我が称賛を受けたことを誇りに、眠れ」」
(メA`) 「いや、これで……二対一だろ」
ドクオの横に並び立つクール。
満身創痍でありながら、どちらの瞳からも希望は消えていなかった。
(<●>) 「「諦めずに戦う心は美徳ではない。
お前たちを殺して、私は世界を作り変える」」
川 ゚ -゚) 「今この場でできないってことは、
お前を殺して私たちのどちらか神の座にたどり着けばいいと解釈できるが?」
(<●>) 「「……少し話しすぎたか。冥途の土産にしろ。最も天国も地獄も存在しないがな」」
(メA`) 「クール、少し時間を稼いでくれ」
川 ゚ -゚) 「あぁ」
単身で化け物の足元に飛び込むクール。
九つの天剣が光り輝き、彼女を撃退しようと迫った触手を一蹴した。
284
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:16:50 ID:7X8WUdNc0
(;メA`) 「頼む……急げ……」
掲げた長い杖に保存していた魔術を解き放つ。
最終決戦においてドクオが考えていた魔術は、ほとんどがオルフェウスには通用しなかった。
最後の一つは保険であり、この期に及んでも使うことを躊躇うほどの破格の性質を持つ。
オルフェウスの身体から生える触手は、それぞれが全く異なる属性の魔術を扱う。
天剣で臨機応変に対応するクールではあったが、その手数に押され始めていた。
川;゚ -゚) 「……っ! リバーサル! ローテイシオン!」
二つの光剣が反転の魔術によって触手を弾き、
二つが回転して光輪となり、オルフェウスの身体を削った。
(<●>) 「「天剣、捉えたり。さて、残るは七本」」
川;゚ -゚) 「なっ……!」
液体のようなその身体の中で、天剣は徐々にその魔力を吸い取られて動かなくなった。
川 ゚ -゚) 「くそっ……! だったら……! ホライズン!」
魔力の斬撃は、クールの目前にある全てを横一直線に切り裂いた。
285
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:17:24 ID:7X8WUdNc0
(<●>) 「「見事だ……だが……足りぬな。今のおまえの魔力では私には届かない」」
重ねた触手は硬化し、盾となって阻む。
その八割ほどの質量を消滅させたところで、斬撃は露と消えた。
川;゚ -゚) 「ぐっ……っ……」
(<●>) 「「……なんだそれは?」」
瞳が驚きで見開く。
魔術師としては過去最少量の魔力で戦っていたはずのドクオの元に、
クールの全力すらも凌ぐほどの魔力が集積していた。
その奔流は、今もなお秒単位で増加していく。
(メA`) 「こいつは一度発動すれば俺でもコントロールできない。
クール、後は任せたぞ」
川;゚ -゚) 「ドクオ!」
(メA`) 「キュートと世界を頼んだ」
(<●>) 「「貴様ぁぁ!!」」
巨大な眼球へと収束した魔力が、ドクオの胸に迫った。
音速を超える光線は、クールの天剣によって遮られた。
286
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:18:21 ID:7X8WUdNc0
(メA`) 「消えろ。クィンタ・エッセンチア」
射線上に存在するすべての法則を飲み込みながら、オルフェウスに直撃した。
表面の防護障壁を蒸発させ、魔力で形成された触手を焼き切っていく。
魔力の束は拡大を続け、その巨体すらも完全に飲み込んだ。
それでも尚、ドクオは手を緩めることなく魔術を編み続ける。
消費されるよりも速く増加する魔力は、もはやドクオには制御しきれなかった。
魔力は彼の周囲で、大地や大気を刻むかのように荒々しく吹き荒れた。
(メA`) 「まだだ……まだ……!」
終わることの無い魔術砲は空間ごと削り取り、
その中心に存在していたオルフェウスの魔力は既に見えない。
川 ゚ -゚) 「ドクオ! もう充分だ!」
(メA`) 「クール……頼みがある」
川 ゚ -゚) 「っ!」
('A`) 「俺を……殺せ……」
川;゚ -゚) 「なんでっ!?」
287
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:18:55 ID:7X8WUdNc0
(メA`) 「この魔術の核は俺だ。俺が死なない限り、終わることはない。
止めなければ……お前を巻き込んでしまう」
川 ゚ -゚) 「っでも……!」
(メA`) 「お前まで死んだら本当に終わりだ。
俺を殺した後は、神の座に向かえ。きっとそこには全てがある」
川 ゚ -゚) 「っ……! どうしようもないのか……」
(メA`) 「頼む」
さらに膨れ上がった魔力は、空に向かって伸び始めた。
目的の無い力の流れは、ドクオの開いた虚空の扉を端から侵食していく。
川 ゚ -゚) 「……わかった。必ずすべてを元に戻す。待っててくれ」
天剣の切っ先をドクオに向ける。
荒れ狂う魔力の渦の中心にいる魔術師に狙いを定め、剣を振り上げた瞬間。
(<●>) 「「これで終わりか」」
.
288
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:19:31 ID:7X8WUdNc0
(メA`) 「がっ……!」
魔術砲を断ち切ったのは、クールの斬撃ではなかった。
ドクオの胸に深々と突き刺さった黒い棘。
魔術が途切れた瞬間から次々と飛来する攻撃を、クールは天剣で必死にさばく。
川;゚ -゚) 「なっ……」
ドクオにだけ放たれていた槍は、突如目標を分散させた。
胸と腕、そして足に攻撃を受けたクールは、ゆっくりと倒れこむ。
天剣は彼女からの魔力供給を断たれ、彼女の中へと還った。
(メA`) 「クール!!」
(<●>) 「「真に見事だ。私をここまで追い詰めるとは……」」
(メA`) 「てめぇ……」
半身を失ったオルフェウスであったが、その揺らぎ無い魔力は健在。
(<●>) 「「とどめを刺すまでも無い。おまえたちが死んだ後にゆっくりと世界を書き換えよう」」
(メA`) 「クール! しっかりしろ!」
289
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:19:59 ID:7X8WUdNc0
自身も腹部を深紅に染めながら、倒れた女性を抱き起す。
殆ど開かない瞼を震わせながら、クールは血に汚れた腕でドクオの頬に触れた。
川 ゚ -゚) 「……あぁ……」
(メA`) 「くそっ……」
(<●>) 「「最期に一つだけ教えてやろう。
神の座のシステム起動条件は、この世界の知的生命体の全滅だ。
私は還り、おまえたちが死んだ瞬間に、再構成を始めるとしよう」」
(メA`) 「待て!」
(<●>) 「「もう二度と会うこともあるまい、弱き者どもよ」」
オルフェウスはドクオが開けたままにしていた虚ろの扉に消えた。
致命傷を受けたクールには、癒すための魔力も残っておらず、
彼女の深い傷を治すだけの知識はドクオには無かった。
(メA`) 「くそ……」
ドクオの手元で増幅し続けて暴走状態に陥った魔力は、もはや暴発寸前。
一刻の猶予も無い。
川 - ) 「ドクオ……キュートを……キュートだけでも……」
(メA`) 「っ!」
290
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:20:28 ID:rt1Nb5fY0
バッグベアードみたいな見た目と解釈していいのかな
291
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:21:19 ID:7X8WUdNc0
手の中で失われゆく命の重み。
彼女の最期の願いを叶えるためにだけに、ドクオが即座に考え出したのは禁断の魔術。
極限の集中状態から娘の最大限の幸せを願うために発動した術を、
膨大な魔力と共に杖に閉じ込めた。
(メA`) 「クール……」
苦しみに満ちた表情の亡骸を横たえ、幾つかの術を唱える。
周囲に漂っていた微かな魔力を利用して、小さな世界を作り出した。
荒涼とした大地の乾燥した空気と強い日差しを遮る薄い被膜と、
穏やかな緑が生い茂った大地を。
共に戦った仲間たちに墓標を捧げ、箱庭を完成させた。
ロマネスクには精霊の宿る樹を。
オサムには十字架を。
クールには剣を。
モララーには牙を。
四方へと配置し、墓標となる剣の横に愛した女性を埋めた。
何十年先に生まれるはずの娘に残した贈り物が込められた長杖を掴み、
渾身の力で暴走しつつある魔力を上空へと打ち出した。
292
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:21:54 ID:7X8WUdNc0
大地を映したかのような赤黒い空の中心に魔力の塊が届いた時、
ドクオは自らの命を絶った。
支配から解放された魔力は音も無く爆発し、
無数の流星となって世界中に降り注いだ。
誰も見ることの無かった流星群は、数十年もの間夜通し輝き続けた。
293
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:22:26 ID:7X8WUdNc0
・・・・・・
294
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:23:46 ID:7X8WUdNc0
今日はここまでです。読んでくださった方は有難うございました。
GW中に、残りを投下させていただこうと思いますので、よろしくお願いします。
295
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:25:24 ID:rt1Nb5fY0
おつおつ
296
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 15:36:28 ID:BN6QjXKw0
おもしろいなあ
乙
297
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 20:10:54 ID:Xs/JBnW60
キュートは一体どうなるだろう…
298
:
名無しさん
:2018/04/30(月) 22:02:44 ID:NUKsZKYI0
アマザイはなんだったんだ
299
:
名無しさん
:2018/05/01(火) 10:40:12 ID:XrLy0sLg0
オサムとモララーに害を成したり体液が水だったりしてるからフロストはオルフェウスの人形だったんだろうな
ドクオもアマザイには会えてないから偽物が紛れ込んでも気付けないし
下手するとアマザイ族自体が元々神側の傀儡みたいなもので、終焉を盛り上げるサクラ+不測の事態への保険だった可能性すらある
元凶の討伐にすんなり同意したのも保険としての役割を果たすために残る必要があったから、と考えると納得しやすい
まあ全部推測だけども
300
:
名無しさん
:2018/05/01(火) 13:45:50 ID:KCNiHLpM0
英雄たん
301
:
名無しさん
:2018/05/01(火) 22:32:05 ID:PjmzASkA0
アマザイは謎だな
過去にロマと共闘してる以外に情報が無い
302
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:07:15 ID:f6Jc0GS60
o川*゚ー゚)o 「っ!!!」
崩れゆく大地に飲み込まれて宙を浮かぶ身体。
咄嗟に振るった長杖を伝わって発動した魔術は、
少女の身体を空中に固定した。
崩壊し続ける大地に対して、もう一度杖を振るう。
明確な意志と目的をもって。
少女の放った魔術によって空間は安定を取り戻し、再び静かな世界が訪れた。
o川*゚ー゚)o 「これが……私の力……」
ほぼ元通りになった閉ざされた箱庭。彼女は知っていた。
荒涼とした世界から遮られたその場所は、自身の為だけに作られた空間であることを。
o川*゚ー゚)o 「ロマネスクさん、オサムさん、モララーさん……パパ、ママ……」
枯れた樹も、煤けた十字架も、折れた剣も、砕けた牙も、力尽きた屍も。
彼女は知った。知ってしまった。墓の持つ意味と、墓が無い者の存在を。
o川* ー )o 「星霜フロスト……!」
忌むべきその名を口にして、心に刻む。
303
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:08:48 ID:f6Jc0GS60
べきその名を口にして、心に刻む。
青色の長い髪から常に滴り落ちる水。
晴れの日でも乾くことの無い濡れた姿の女性。
記憶に刻み込まれた彼女は、いつも笑みを浮かべていた。
その裏切り者の姿形を、脳裏に焼き付けておく。
魔力を込め、長杖の底を地面に打ち付ける。
放射状の魔力が静謐な世界を震わす。
o川*゚ー゚)o 「パパ……ママ……」
全てを知った彼女は、杖を一際強く握った。
o川*゚ー゚)o 「私は……」
形見と呼ぶべき杖に込められた魔術。
それは、彼女に選択肢を与える。
未来と過去。
相反する二つの時間を一つにするために蓄積された膨大な魔力は、
不用意に放てば世界を破壊しかねない程。
304
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:09:33 ID:f6Jc0GS60
o川*゚ー゚)o 「ごめんなさい……」
杖を伝わって届いた温かな願い。
彼女のために残されていたのは、誰も為しえたことが無いとされる時間魔術。
過去に戻るための魔術。
それは、少女を一人きりにさせてしまわぬようにと願った父親の心。
数百年を容易に遡ることができるだけの魔力と、
どのような時代でも生きていくことのできる知識の束。
杖を掴んだ瞬間に、少女は全てを手に入れた。
o川*゚ー゚)o 「分かってるよ。パパ、ママ。この魔術を使って、平和な時代に生きろってことだよね」
唇を真一文字に結び、力強く杖を握り締める。
ちかちかと零れだした魔力光は大きな流れとなって、あらかじめ設定された魔術を構成していく。
o川*゚ー゚)o 「でもね……私は……」
世界に一人だと知って、途方もない孤独感を味わった少女。
少女が求めたものは、多くの人間に囲まれた安穏とした生活ではなかった。
305
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:10:39 ID:f6Jc0GS60
たった二人。
誰よりも自分を思ってくれていたはずの二人に、
会って、話をして、精一杯甘える事。
たとえ苦痛や危険にあふれていたとしても。
たとえごく限られた時間のみ許されるのだとしても。
少女にとっての最優先は、ドクオとクールの願いとは全く逆方向を向いていた。
少女の決心が揺るがぬものとなった時、煌めきを放つ魔術が少女の前に現れた。
それは道標。
少女が願う旅の目的地へと至るための唯一の手掛かり。
その光を手に取って、少女は魔力を込める。
時を超えるため、彼女に残された膨大な量の魔力を。
o川*゚ー゚)o 「お願い……私を……連れて行って!」
少女は目指す。
過去と現在の分岐点の中で自らが存在することのできる時間を。
父親からの贈り物である杖に込められた魔術は、少女の祈りに応じて時を歪めた。
306
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:12:32 ID:f6Jc0GS60
>
( ФωФ) 「……誰だ」
約束の丘に集まった六人の英雄。
訪れた終末の敵を打ち倒し、息を整えていた時であった。
空間を引き裂いて現れたのは、ボロ布を被っただけの少女。
o川*゚ー゚)o 「……パパっ!」
('A`) 「っ!?」
突然に現れた来訪者に警戒するドクオ。
それを全く気にもせずに少女は胸元に飛び込んだ。
川 ゚ -゚) 「……」
その様子を無言で睨むクール。
ドクオの額を終末の獣と相対した時よりも嫌な汗が滴り落ちた。
(;'A`) 「いや、ちょっと待て、訳が分からない」
( ФωФ) 「敵か……殺すか?」
('A`) 「違うと……思う。この娘が現れた時空の歪みの魔術は覚えがる」
307
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:13:07 ID:f6Jc0GS60
【+ 】ゞ゚) 「となると……隠し子ですか」
( ・∀・) 「意外だな」
o川*゚ー゚)o 「パパ……」
('A`) (冷たい……クールの視線がこれまでにない位に……。
誤解を解かなければ……)
o川*゚ー゚)o 「ママ……!」
少女はドクオの元を離れ、クールに駆け寄った。
混乱して動けない彼女の胸元に、その顔を埋める。
川 ゚ -゚) 「ん?」
o川*;ー;)o 「会いたかった……」
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「ええっと……娘さん?」
川 ゚ -゚) 「いや……」
困惑するクール。
彼女の動揺を見たのは、ドクオですら初めてであった。
308
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:13:47 ID:f6Jc0GS60
( ФωФ) 「……誰か説明できるか」
('A`) 「……憶測でいいのなら可能だが、彼女の口から語ってもらうのがいい」
泣き腫らした目を擦りながら、少女はようやくクールから離れた。
川 ゚ -゚) 「……その服もあれだな、ドクオ」
('A`) 「わかった」
空間魔術を用いて接続した先から適当なローブを見繕い、少女へと手渡した。
それを何も言わずに受け取り、袖を通す。
クールにそっくりな黒く長い髪が揺れる。
('A`) 「……君は、一体」
o川*゚ー゚)o 「驚かせてごめんなさい。いろいろ我慢するつもりだったんだけどな……。
信じてもらうしかないんだけど、私は未来から来たの」
( ・∀・) 「未来……」
【+ 】ゞ゚) 「俄かには信じられませんが」
o川*゚ー゚)o 「そうだよね……。証拠は何もないから」
309
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:14:23 ID:f6Jc0GS60
( ФωФ) 「嘘を言っているようには見えないが、ドクオ。
未来から過去を訪れることが果たして可能なのか」
('A`) 「……いろいろと難関はある。
魔力は世界をひっくり返すほど必要だろうし、複雑な魔術式を発動しなきゃいけない。
だが、不可能ではないと考えてる」
【+ 】ゞ゚) 「ドクオさんがそうおっしゃるのなら、出来るとして話をしましょう。
疑問は二つ。なぜ彼女が、今この時代に、です」
( ・∀・) 「ドクオとクールの娘だと言ってたけど……」
o川*゚ー゚)o 「そうですね、少しお話をしたほうが良いですか。
ねぇ、フロストさん?」
貼りつけた様な笑みを浮かべる少女と、それに応える引きつった笑みのフロスト。
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「……そ、そうでございますね」
o川*゚ー゚)o 「私が未来から来た方法はもうパパが気づいていると思う」
('A`) 「さっきまでキュート……が持っていた杖は、俺の杖と全くの同一のものだ。
過去に移動するための魔術も恐らくは俺が組んだものだろうな。
問題は移動に必要な魔力だが……」
310
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:15:30 ID:f6Jc0GS60
彼女が現れた時、その手に持っていた杖は消滅した。
完全に跡形も無く。
ドクオは即座にそれが時間の歪みによる矛盾消滅だと理解した。
過去の時代に存在したものは未来から持ってくることは出来ないという厳然たる世界の理。
o川*゚ー゚)o 「それもパパが用意してくれてたんだよね」
('A`) 「キュートの魔力は使ってないのか?」
o川*゚ー゚)o 「うん」
('A`) 「……恐らく、未来の俺は増幅魔術を使ったんだろうな」
川 ゚ -゚) 「増幅魔術?」
('A`) 「今持っている魔力を糧に、さらに多くの魔力を生み出す魔術だ」
( ・∀・) 「そんなの無茶だ。だってそれが可能なら、世界の法則だって覆る」
( ФωФ) 「相応のリスクがある、ということだろう?」
('A`) 「俺が死ななければ魔力の増幅は止まることがない。
皆も想像していただろうが……未来の世界では俺たちは全員死んだのだろう?」
311
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:15:59 ID:f6Jc0GS60
o川* ー )o 「……うん。私が生まれたのは、世界が完全に滅んだ後。
パパとママの魔術のおかげで、生まれてくることができた」
( ・∀・) 「正直信じられないな。でも、それなら君は知ってるんだよね。
これから僕らが戦うべき相手を」
【+ 】ゞ゚) 「弱点などが分かればいいのですが……」
o川*゚ー゚)o 「ごめんなさい。私の与えられた知識の中に、あいつを倒す方法は無かった。
でも、彼女なら知ってるんじゃないかな?」
キュートに指差されたフロストはわずかに身動ぎをした。
全員からの視線を気まずそうに受ける。
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「……予想外の出来事でしたね。これに対応しろという方が無理でしょう」
('A`) 「何を知っている」
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「隠したところで無意味でしょうね。私が裏切り者だという事実も」
(; ・∀・) 「なっ!?」
(#ФωФ) 「どういうことだ」
312
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:16:31 ID:f6Jc0GS60
【+ 】ゞ゚) 「冗談を言っているようには見えませんが」
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「私の一族は、抑止力でした。
いつかあなたたちのような英雄が現れることを予期していた主様が用意し、
レタリアの戦士として紛れ込ませてきました」
フロストは両手を振るい、氷の壁を立ち上げた。
英雄達と自分自身とを物理的に分断するために。
('A`) 「逃げる気か」
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「どのみち、逃がしてはくれないでしょう。ただの時間稼ぎですよ」
( ・∀・) 「無駄な抵抗はやめろ」
龍化したモララーは、一撃で氷壁の半分ほどを破壊した。
分厚い塊が飛び散り、その先にフロストの姿が露になる。
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「あなた方を相手取って生き残れるとは思っていません。ですから……」
('A`) 「っ!」
(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「一旦退かせていただきます」
313
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:17:02 ID:f6Jc0GS60
ドクオの正面に立っていたフロストは、何の前触れもなく闇に飲み込まれた。
集められた英雄たちの誰もが反応できないほどの速度で。
( ・∀・) 「消えた……」
( ФωФ) 「放っておけ。どうせこれから向かう先にいる」
('A`) 「ロマネスクの言う通りだ。
何が起きたのかは分からなかったが、何処に向かったのかは分かった。
向こうへ一瞬で移動する手段を持っていることもな」
【+ 】ゞ゚) 「それは、敵が少なくとも二人に増えたことと釣り合いの取れる事でしょうか」
('A`) 「向こう側にどれだけの敵がいるのかそもそもわかっていなかったんだ。
今更一人増えたことで何も変わらない」
川 ゚ -゚) 「しかし、敵の間者が紛れ込んでいたとはな。
正直予想だにしていなかった。キュート……のおかげだな」
( ФωФ) 「どうなっている。レタリアに呼び出された英雄ではなかったのか」
老齢の精霊術師はキュートを睨む。
静かな言葉はわずかに怒りを滲ませていた。
自分よりも遥か高齢の男に相対して、まったく怖気づかずにキュートは首を振るう。
314
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:17:52 ID:f6Jc0GS60
o川*゚ー゚)o 「レタリアとは、そもそもそういうものだったみたい。
終末を乗り越えるだけの英雄を集め、
余計なことを行わない様に見張りを一人紛れ込ませる」
【+ 】ゞ゚) 「ちょっと待ってください。
となると、レタリアは私たちがこれから戦おうとする敵の魔術だということですか」
o川*゚ー゚)o 「そう」
川 ゚ -゚) 「……だったら、レタリアに集められた私たちが勝てる道理があるのか?」
数秒間の無言の後、キュートはようやく言葉をひねり出した。
先程までの強い視線から一転し、伏し目がちになりながら。
o川*゚ー゚)o 「ある……と思う」
( ・∀・) 「やけに自信なさげだね」
o川*゚ー゚)o 「正直に言うとわからないの。
未来ではモララーさんとオサムさんはフロストの裏切りで殺された。
ママが一騎打ちで倒すまでの間に、パパとロマネスクさんが敵と戦ってたの。
でも、強すぎて……」
('A`) 「それで、どうなった」
315
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:18:16 ID:f6Jc0GS60
o川*゚ー゚)o 「……」
('A`) 「キュート。未来の俺達……お前にとっては過去の俺達がどう戦い、どう負けたか。
それを詳しく知ることが出来れば、その未来はきっと変えることができる」
o川*゚ー゚)o 「ロマネスクさんが先に殺されて、パパは魔術を使ったの。
少しの魔力からより多くの魔力を生み出す魔術」
('A`) 「使うだろうな……俺は……」
o川*゚ー゚)o 「パパが発動した魔術砲が敵に直撃した。
それでも倒せなくて、ママが殺された。それで敵は元の場所に帰って行った。
パパは残された魔力で私が生まれて育つことができるための環境を作って……。
それで……」
【+ 】ゞ゚) 「しかし、赤子がひとりでに大人になるなどありえないことです。
何をしたのですか?」
川 ゚ -゚) 「それは……」
('A`) 「いい、クール。俺が話す。クールの胎内にいるキュートには複雑な魔術を幾つもかけてある。
そのうちの一つは、彼女の存在そのものを不確定にし、
この世界に存在していないことにする魔術。
これによって、クールがどのような攻撃を受けたところで、彼女は傷一つ負うことは無い」
( ФωФ) 「まさか、そのような魔術は聞いたことがない」
316
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:18:42 ID:f6Jc0GS60
('A`) 「当然だ。最も優秀な魔術師である俺が考案し、
誰よりも多くの魔力を持つクールだからこそ実行できた。
そしてもう一つ。万が一クールが死んだとしても、
数十年後に一人で生活できる年まで成長した姿で生まれさせる魔術」
( ・∀・) 「……信じられない」
【+ 】ゞ゚) 「魔術というよりは、もはや奇跡ですね」
o川*゚ー゚)o 「奇跡……うん。きっとそうだと思う。
私がここに来れたおかげで、未来はきっと変えられる」
('A`) 「……みんなに聞きたい。今のキュートの話を聞いて、まだそれでも戦うのか?」
ドクオの問いかけに即座に答えた者はいなかった。
少女が告げた敗北の未来は、英雄達の心を揺さぶるには十分すぎた。
最悪の結果はキュートのおかげで回避され、何も失うことの無い未来は彼らの手中にある。
あえて危険を冒すことによって得ることができる権利の価値。
五百年の平穏か、万年の繁栄か。
('A`) 「すぐには決められないだろう。明日の日の出までに決めてくれ。
俺はテントで待つ」
317
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:19:05 ID:f6Jc0GS60
( ・∀・) 「いや、その必要はない」
( ФωФ) 「成程、未来の我らが敗北を喫したことはわかった。
だが、その事実を知る我らとは異なる」
【+ 】ゞ゚) 「でしたら、ここで諦めて解散する意味は無いかと思います」
川 ゚ -゚) 「そういうことだ。ドクオ。私たちは決して負けない」
('A`) 「……どうしてこうも自意識過剰なんだか。心配をした俺が馬鹿みたいだ。
いいだろう。明日の朝まで各自休んでくれ」
o川*゚ー゚)o 「えっと……私は……」
川 ゚ -゚) 「私のところに来ればいい。ドクオのすぐ隣になるが」
ドクオの言葉で解散した彼らは、それぞれの寝床へと戻っていった。
318
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:20:03 ID:f6Jc0GS60
>
太陽が丘を照らし始めた頃、テントから出てきたドクオを迎えた五つの影。
白地に金色の刺繍が編み込まれた精霊術師のローブで頭まで覆い隠したロマネスク。
大気の精霊たちが彼の周囲で騒ぐ。
漆黒の衣装を身に纏い、服と同様に黒く巨大な棺を背負ったオサム。
全身の皮膚に刻まれた呪力の文様は、顔にまで達している。
急所を護る銀の鎧と、白のドレスで着飾ったクール。
美しくも戦いを意識した戦乙女の姿。
強さの象徴である強靭な肉体を持つ龍の姿をしたモララー。
全身から溢れ出す自信と力は大地を震わせる。
ドクオとは異なる長杖を持ち、魔術師の装束へと着替えていたキュート。
母親譲りの強大な魔力が陽炎のように立ち昇る。
('A`) 「さて、準備は整っているか」
( ФωФ) 「無論」
319
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:20:43 ID:f6Jc0GS60
('A`) 「最後にもう一度だけ確認をしておく。
俺たちの目標は、虚ろの先にいる敵を倒すことだ」
川 ゚ -゚) 「今更なことを」
('A`) 「だが大事なことだ。全てが終わった後に全員が無事だとは思わない。
屍を踏み越えてでも達成しなければ、俺たちの世界に明日は来ない」
( ・∀・) 「未来を掴めってことか」
【+ 】ゞ゚) 「単純なようで難しいことです。が、私たちであれば必ずできるでしょう」
('A`) 「キュート」
o川*゚ー゚)o 「なに、パパ」
('A`) 「いや、何でもない。全てが終わってから話すことにする」
出かけた言葉を胸に仕舞い、ドクオは高く杖を掲げた。
その先端から迸る魔力は、複雑な術式によって変換され、四元素の魔術として顕現する。
('A`) 「開け、虚ろの扉。ミスティルティン!」
反発しあう魔術が空間に穴を開け、世界を繋ぐ扉が開いた。
暗黒の渦へと飛び込んだ六人の英雄。
飛び込んだ先は現世とは真逆で、空に多くの星が輝く夜の世界が存在していた。
320
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:21:36 ID:f6Jc0GS60
(<●>) 「「ようこそ、我が神の間に。愚かな者達よ」」
黒き汚泥を集めた塊のような巨体に張り付いた一つの瞳。
自らと向き合う英雄達を一人ずつ品定めする。
(<●>) 「「矮小なる者達よ。すぐに来た道を戻るがよい」」
('A`) 「そうはいかない。お前を殺すまでは」
(<●>) 「「たかだか未来を知った程度で随分と大きく出たものだ」」
川 ゚ -゚) 「お前はここで私たちに打ち倒される」
(<●>) 「「小娘よ。貴様が何者で、何を知っているかなど、私にはどうでもよい。
ただ厳然たる事実として教えてやろう。
たった数百年如きの時間で、
お前達と私との間にある力の差を埋めることは叶わない」」
川 ゚ -゚) 「その自信、砕いてやりたくなってきたな」
クールが展開した光刃が周囲を明るく照らし出す。
端の見えない程広い空間には、悪意の歪みが浮かぶ。
321
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:22:08 ID:f6Jc0GS60
( ・∀・) 「フロストの気配がないね」
( ФωФ) 「気をつけよ。奇襲を狙っているかもしれん」
(<●>) 「「フロスト……? それはこやつの事か?」」
【+ 】ゞ゚) 「なっ……」
暗闇の中から首をもたげた巨大な腕が掴んでいたのは、事切れて動かない女性。
それはつい昨日まで英雄として紛れ込んでいたフロストに間違いなかった。
(<●>) 「「このような使い捨ての道具、役に立たなければ壊してしまうものだろう」」
( ФωФ) 「成程、貴様を倒す理由がまた一つ増えたな」
(<▲>) 「「ほう、まさか敵討ちでもあるまい」」
嬉の感情を滲み出して歪む瞳。
その中心の黒点を睨め付けながら吐き捨てた。
( ФωФ) 「気に入らぬ」
(<●>) 「「面白い。ならば全身全霊を込めて向かって来るがいい。
容赦無く叩き潰して無に帰してやろう」」
322
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:23:53 ID:f6Jc0GS60
( ・∀・) 「龍神の鎧」
即座に龍化し唱えたのは、全身強化の龍技。
全身の鱗に魔力を浸透させた気高き盾と、
刃と見紛うほどに鋭い両前足の大爪。
誰よりも早く、大地を蹴って低空を飛翔した。
(<●>) 「「身の程を知れ」」
大気中から生成された黒き槍。
初速から音を置き去りにしてモララーの眼前に迫った。
( ・∀・) 「っ!?」
【+ 】ゞ゚) 「驚きました。まさか呪術を扱うとは」
槍は龍の瞳を貫くこと無く空中で制止し、砕けて散った。
(<●>) 「「ほう」」
【+ 】ゞ゚) 「呪術に対抗できるのもまた呪術ですね。
呪茨棘・八重」
323
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:24:24 ID:f6Jc0GS60
(<●>) 「「呪術の発動速度をよくもこれほどまでに極めたものだ。
だが、それでもまだ遅い」」
放たれた呪術の棘と、オルフェウスの間に存在した空気が突如として大きく震えた。
目に見えない壁が、オサムの術を防ぐ。
その間に距離を詰めたモララルドが叩き込んだ爪によって、硝子のように砕けた。
( ・∀・) 「光に飲まれて消滅しろ」
大きく開いた口腔から撃ち出された魔力が、真っ直ぐにオルフェウスの身体に突き刺さった。
(<●>) 「「この程度で」」
('A`) 「どの程度だって?」
その声を、オルフェウスは背後に確認した。
同時に正面にいたはずの二人の姿が揺れていることに気付く。
( ФωФ) 「精霊の現身。これは幻覚ではない。現実だ」
ロマネスクの横に立っていたドクオとクールの姿は、
空気に滲んで消えていく。
324
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:25:07 ID:f6Jc0GS60
川 ゚ -゚) 「ドクオ合わせろ」
('A`) 「言われるまでも無い」
川 ゚ -゚) 「地平の彼方まで断ち切れ! ホライゾン!」
('A`) 「光の魔術を牢獄にとざせ。インフ・スペクラム」
(<●>) 「「うつくしい……」」
クールの放った光の斬撃。
視界に映る全てのものを距離に関係なく切り離すナインツ・ヘイブン最長射程の光の斬撃。
同時にドクオが放った魔術は、かつて天剣の所有者と相対するために考え出したもの。
単純な防御力はほとんどないものの、光の魔術を反射する百枚の魔鏡。
斬撃の魔術が何往復もオルフェウスの全身を刻む。
細かくちぎられた欠片は煙となって空に消えた。
後に残ったのは、正方形の黒い箱。
そこに一つ目の化け物の姿は無い。
( ・∀・) 「潰してやる」
箱の上部に足をかけたモララーは、
前進に感じた寒気に従ってすぐに飛びずさった。
325
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:25:36 ID:f6Jc0GS60
(;・∀・) 「ぐ……っ!」
跡形も無く消え去った足首から先。
大粒の血を流しながら大地に蹲った。
('A`) 「モララー」
( ・∀・) 「大丈夫だ!」
川 ゚ -゚) 「リフドロップ」
クールの魔術は、数秒で傷口を元通りにした。
龍が暗く澱んだ上空に向かって吼える。
川 ゚ -゚) 「なんだこれは」
天剣をも弾くほどの硬度を持ちながら、
強化された龍鱗すらも溶かす魔術を、脊髄反射のように発動させる物質。
('A`) 「見たことがない」
【+ 】ゞ゚) 「どうですか、ロマネスクさん」
( ФωФ) 「……精霊よ」
326
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:26:08 ID:f6Jc0GS60
優れた精霊術師は、ありとあらゆる精霊とコンタクトをとることができる。
この世に存在する全ての物質に宿るとされる精霊と対話することで未知を暴き、
言霊によって従わせることで力に変える。
翳した手の中で幾つかの光が明滅した。
異なる色を持つ複数の精霊術は、ロマネスクの掌から黒色の立方体へと向かう。
( ФωФ) 「ふむ……精霊が呼びかけに応えない。
つまりこの立方体は、この世のものではないということだ」
【+ 】ゞ゚) 「先程の奴の触手を凝縮したものでは?」
('A`) 「いや、もっと別のものだと思う。キュート」
o川*゚ー゚)o 「私にもわからないよ……。少なくともパパは知らなかったみたい」
川 ゚ -゚) 「硬そうだが、協力すれば壊せない程ではないだろう。
恐らく、この中で最高の攻撃力を誇るのは私だ。力を貸してもらえるか」
o川*゚ー゚)o 「何が起きるかわからないから、気を付けて」
('A`) 「頼むぞ」
327
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:27:02 ID:f6Jc0GS60
('A`) 「ルークス!」
o川*゚ー゚)o 「ルークス!」
ドクオとキュートが杖を振るい、二人で一つの魔術を編む。
完全に同期した二つの魔力がクールの剣へと注ぎ込まれていく。
川 ゚ -゚) 「集え、ナインツ・ヘイブン」
クールの背後に浮かんでいた九つの剣が、重なり一つの刃となる。
魔力で形成された切っ先を正面に向けて、大きく腕を引く。
( ФωФ) 「光の精霊よ」
ロマネスクの言霊に応え、精霊は中空に陣を描く。
強化の特性を持つ光の精霊陣が、クールと立方体との間に配置された。
【+ 】ゞ゚) 「私達は見守るだけですかね」
( ・∀・) 「同時攻撃しなくていいのかな」
【+ 】ゞ゚) 「私の場合は属性が真逆ですからね。邪魔になるだけでしょう」
( ・∀・) 「僕も見ているだけにしようかな。それに、もう充分じゃないか」
眩いほどの光をその手のうちに束ね、立方体に向けて一気に距離を詰める。
精霊陣の中心を貫くように振るうのは、全てを穿つ閃光の刃。
川 ゚ -゚) 「ペネトライト!」
328
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:27:34 ID:f6Jc0GS60
空間を震わせるほどの一撃。
自慢の髪すら輝く光と化していたクールは、英雄達の視界から消えた。
甲高い金属音が虚ろの空間内に響く。
黒色立方体の真後ろにて分離した九つの剣。
その全てを翼のように拡げて振り返ったクール。
立方体の中心部には人間大の穴が開いていた。
箱は、黒い煙を立ち上げながら崩壊していく。
( ・∀・) 「貫通したみたいだけど……」
('A`) 「やけにあっさりと……いや、なんだあれは」
o川*゚ー゚)o 「パパっ!」
溶解しながら崩れ落ちる立方体。
その内側には、何一つ生命体の痕跡が存在しなかった。
即座に置かれた状況を理解したのは、僅か二人。
上空から降り注いだ脅威に対する防備は、あまりにも脆かった。
( <●><●>) 「よく防いだな」
329
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:28:17 ID:f6Jc0GS60
人型に似た二息歩行の姿。
しかし、人間よりも二回り以上大きく、両手両足はまるで獣のよう。
背中には呪術で組まれた一対の黒い翼。
【+ 】ゞ゚) 「っあ…はっ……はっ……」
('A`) 「オサムっ!?」
( ФωФ) 「人……間……?」
( <●><●>) 「正確には、半分がそうだ」
蒸発する大地は轟々と白煙を立ち上げ、英雄達の足場は陸の孤島となっていた。
半身が吹き飛んだオサムに駆け寄るキュート。
少女の回復魔術はしかし、呪われて死ぬことの無い身体を持つ呪術師には何ら影響を及ぼさない。
【+ 】ゞ゚) 「お気遣いありがとうございます。ですが、心配は不要です」
体表に刻まれた呪いの一角を解き放ち、失った肉体を再形成する。
両の足で立ち上がり、宙に浮かぶ存在を睨む。
( <●><●>) 「まずは見事、と言っておこう」
330
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:28:49 ID:f6Jc0GS60
('A`) 「クラッシカル」
砕けた大地に転がっていた人間大の岩が、ドクオの杖に導かれ一斉に飛び放たれた。
弾道は一直線に敵の懐へ。
直撃するかと思われた瞬間、何かにぶつかったかのようにあらぬ方向へと弾かれた。
( <●><●>) 「そう焦るな。……お前もだ」
( ФωФ) 「ぐぬっ」
男の背後に音もなく迫っていたロマネスクに視線すら向けることも無く、地面に叩き落とした。
土煙の中から無傷で立ち上がったものの、精霊術師は驚愕の表情を浮かべていた。
( ФωФ) 「まさか……」
有り得ない、と続けようとした言葉を飲み込む。
むしろ大いにあり得るのだと、ロマネスクは理解した。
( <●><●>) 「ほう、流石過去四回の災禍を生き延びただけのことはある。
即座に私の正体に気付くとは」
( ・∀・) 「どういうことだ、ロマネスク」
( ФωФ) 「三術を全て扱うなんてことができるわけが……」
331
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:29:20 ID:f6Jc0GS60
( <●><●>) 「私にはその才能があっただけの事。全ての術は私が生み出したのだ。
故に讃えられた我が名は純術師オルフェウス」
('A`) 「成程、理解した。だが、得意分野の練度で負けるつもりは無い」
ドクオが構えた腕を中心にして、魔術陣が次々と現れていく。
一つが二つに別れ、それぞれがさらに精緻な魔術を編む。
('A`) 「消えろ」
全ての魔術陣が砕け、拡散した光がドクオの腕の先で舞う。
軽くふるわれた腕から放たれた魔術は、一直線にオルフェウスの胸元へと向かった。
( <●><●>) 「呪泥壁・四重」
大気中に存在するあらゆるものを消滅させた光は、
ガラスが割れる様に散り散りになった。
【+ 】ゞ゚) 「呪術で……魔術を……」
( <●><●>) 「一人ずつではなく、全員でかかってきたらどうだ、とでも言いたいのだが。
面倒事はあまり好きではないのでね」
オルフェウスが胸の前で両の手を打ち鳴らした。
拝むかのようなその姿に一瞬気を取られた英雄達は、
抵抗する間もなく暗がりの底へと飲み込まれた。
332
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:31:23 ID:f6Jc0GS60
>
( ・∀・) 「ここは……?」
自身に翼のあることを思い出したモララーは落下途中に体勢を立て直した。
上空を仰ぎ見るが、落ちてきたはずの光は無く、
足元の暗闇は何処までも続いているように見えた。
【+ 】ゞ゚) 「やれやれ、まさかあなたと一緒ですか」
(#・∀・) 「……降りろ」
モララルドの広い背中の上、オサムは胡坐をかいて座っていた。
そのトレードマークともいえる棺桶を腰の横に寝かせながら。
【+ 】ゞ゚) 「そう冷たいことを言わないでください」
( ・∀・) 「それ以上喋ったらお前を先に殺す。
背中から降りろ、でなければ殺す」
【+ 】ゞ゚) 「……何が起こるのかわからないのです。
あまり呪力を無駄にさせるものではありませんよ。ですが……。
……呪翼」
333
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:31:46 ID:f6Jc0GS60
掌の刺青の一角が消え、マントが大きな翼へと変化した。
棺桶を傍らに抱え、モララーの背から飛び立つ。
【+ 】ゞ゚) 「竪穴のようですが、上に入り口は見えませんね」
( ・∀・) 「さほど長い時間落ちていたわけじゃない。飛び続ければすぐに出られる」
そう言い残して、龍は急上昇していく。
すぐにオサムの視界から消えた。
【+ 】ゞ゚) 「そう単純な敵ではないでしょう。力を持っていてもまだまだ子供ですね」
壁面に生えた植物を千切り、すり潰してその匂いを嗅ぐ。
【+ 】ゞ゚) 「幻術の類ではなさそうですが……っと、」
浮遊するオサムの真下から高速で訪れた物体。
その正体に気付き、咄嗟に唱えてしまった呪術をすんでのところで壁に誘導した。
( ・∀・) 「なにするんだ」
【+ 】ゞ゚) 「私は龍ではないので、近づいてくるのがあなたと確認が取れなかったんですよ」
崩れ落ちていく人間大の瓦礫は、暗闇に飲み込まれてすぐに見えなくなった。
334
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:32:13 ID:f6Jc0GS60
( ・∀・) 「どうなってる」
【+ 】ゞ゚) 「どうやらここは繋がっているみたいですね。
輪っかの様に」
オサムは指先を回して円を描く。
眼前に留まった龍王は、目の前の呪術師を気にもせずに無言でその魔力を集中させる。
「やめておいたほうが良いよ」
壁から現れたのは、紫の肌をした小人。
人間の子供程度の背丈でありながら、身の丈を超える櫂を二本担いでいた。
瞳に当たる部分は暗く落ち窪み、口を持たない奇怪な姿。
【+ 】ゞ゚) 「あなたは……?」
| ^ ^ | 「僕はカーロン・ブーム。オルフェウスに囚われた英雄を相手にする者さ」
( ・∀・) 「そうか、だったらお前を殺せばいいわけだな」
前触れなく放ったモララーの魔力砲は、無防備なカーロンの正面で分散し、
一欠片も残さずに消滅した。
手心を加えたわけでもない攻撃を容易く防がれ、モララーは閉口する。
335
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:35:04 ID:f6Jc0GS60
| ^ ^ | 「せっかちだなぁ。僕は君たちを殺すつもりは無いんだ」
【+ 】ゞ゚) 「私たちの敵と言っても、本体とはずいぶんと考え方が異なるようですね」
| ^ ^ | 「まぁね。僕らは自由だから。ここで大人しく待っていれば、そのうち解放されるよ。
その頃には、お仲間は皆死んでいるだろうけどね」
( ・∀・) 「この空間を作っているのがお前だとわかれば十分だ。
すぐに殺してやる」
| ^ ^ | 「怖いなぁ……」
モララーの牙が空を切った。
予備動作なく数メートルの移動を行ったカローンは、
反撃するでもなく壁の窪みに腰かける。
小さな身体がすっぽりと収まるだけの狭い穴の中で、
片手をあげた直後に壁面に炎が溢れかえった。
| ^ ^ | 「危ないなぁ」
依然として燃え盛る火炎によって煮え立つ壁面とは逆側、
モララーとオサムの背後から声は届いた。
336
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:35:35 ID:f6Jc0GS60
【+ 】ゞ゚) 「……成程、あなたは自由にこの空間を移動できるわけですね」
| ^ ^ | 「そりゃそうさ。さて、諦める気になったかい?」
( ・∀・) 「いや、ちょこまかと逃げられない様にこの空間全てを吹き飛ばしてやるさ」
先程までとは比較にならない程、魔力を深く練り上げる。
構成された魔術は、龍王が所有していた七つの龍技が一つ。
触れるものに浸透して破壊していく毒素のような性質を持つ魔術。
( ・∀・) 「崩蝕天」
【+ 】ゞ゚) 「待て……!」
オサムの制止も間に合わず、龍王の毒素は空間を急激に侵し始めた。
壁面から崩れ落ちていき、竪穴は二倍程度にまで拡がった。
【+ 】ゞ゚) 「見境なしですか……」
呪術でコーティングされたコートの表面がモララーの龍技と反目し、
燻った煙を立ち昇らせる。
オサムは防護呪術を重ね掛けしながら、周囲の変化を観察していた。
337
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:36:08 ID:f6Jc0GS60
| ^ ^ | 「意外と頑張るね」
数十倍の広さになった暗闇の中で、
ようやく魔力の放出をやめたモララー。
その顔に浮かぶのは若干の疲労と、露骨な苛立ち。
( ・∀・) 「この空間が相当に広いことはよくわかった。
だったら、すべて破壊してしまうまでだ」
【+ 】ゞ゚) 「落ち着いてください」
高密度魔力砲の準備を始めた龍王の頭から冷や水を浴びせかけた。
呪術師があまり用いることの無い四大元素の基礎呪術。
その威力や性質は魔術のものと全く変わりはない。
(#・∀・) 「お前も一緒に屠ってほしいのか?」
巨大な瞳に一歩も引くことなく、オサムは抱えていた棺桶を穴の底へと捨てた。
【+ 】ゞ゚) 「見てください」
落下していった棺桶はオサムから少し離れた所で浮いていた。
( ・∀・) 「それがどうした」
338
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:36:32 ID:f6Jc0GS60
【+ 】ゞ゚) 「探索、調査なんて言うのは魔術の得意とするところですがね。
呪術でそれが出来ないというわけではありません。
この空間の継ぎ目……歪みを見つけるのに少し手間取ってしまいましたが」
( ・∀・) 「……俺にどうしろと」
【+ 】ゞ゚) 「全力であの場所を攻撃してください」
| ^ ^ | 「やれやれ、油断も隙もないね。別に急いで出なくていいと言ったはずなんだけどな」
以前からずっとその場所にいたかのように、棺桶の上に座っているカーロン。
静かな声のうちに微小な怒気をはらんでいた。
( ・∀・) 「ふん、小細工を弄することしかできない雑魚が」
| ^ ^ | 「僕はオルフェウスと違って争うのが好きじゃないんだ。
ただ、君たちが大人しくすることを拒むのなら僕は僕の役割を果たそう」
【+ 】ゞ゚) 「っ!?」
オサムとモララーは突然、壁面に打ち付けられた。
(; ・∀・) 「何が……」
339
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:37:05 ID:f6Jc0GS60
壁から起き上がろうとした龍王は、さらに数十メートルを転がって止まった。
さほどダメージは無かったものの、混乱が二人を襲う。
足元にいるカーロンは依然として棺桶の上に座ったまま。
魔術も、呪術も、精霊術すらも一切感じられず、
力を行使した痕跡は全くない。
| ^ ^ | 「さて、暴れられても面倒だから、もうしばらく流されていてくれ」
濁流にのみ込まれたかのような衝撃が二人を穴の情報へと押し流した。
止むことは無い渦流が龍の巨体と呪術師の身体を捉えて離さない。
【+ 】ゞ゚) 「くっ……これは……」
足元だったはずの暗闇から、頭上に向けて身体は錐揉み状に流されていた。
自身の身体に起きている現象を判断するのは簡単であったが、
理解することは到底できていなかった。
先程までの竪穴だと思っていた空間を、横穴だと感じていることに。
オサムと全く同時に、重力を壁面から受けているという事実にモララーは気づいた。
押し付けられたのではなく、落ちたのだと。
その感覚の違いに、即座に彼は状況を理解した。
( ・∀・) 「……この空間がどういう場所なのかは分かった。どうすればいいかもだ」
340
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:37:38 ID:f6Jc0GS60
変化した重力に対応し、体勢を立て直す。
拡げた翼に込めた魔力で、先程まで前方にいた敵。
今は上方にいる小さな世界の主に対し、飛翔した。
( ・∀・) 「ちっ……!」
カーロンを目前に捉える直前、その巨体が右方に崩れた。
身体を激しく打ち付けて呻く。
| ^ ^ | 「無駄無駄。この空間に対応できるわけがないでしょ」
( ・∀・) 「面倒な」
| ^ ^ | 「大人し……?」
背後から柔らかな皮膚を貫いた黒き刃。
間髪おかずにそのまま肩口まで大きく引き裂いた。
壊れた人形かのように、ぎこちなく振り返る。
| ^ ^ | 「お見事」
【+ 】ゞ゚) 「龍化したモララーならともかく、
この程度の変化で私が動けなくなるとでも思いましたか」
| ^ ^ | 「いや、何の術も行うことなく対応したことを褒めているんだよ」
341
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:38:17 ID:f6Jc0GS60
【+ 】ゞ゚) 「そう簡単にはいきませんか……」
煙と化してオサムの刃から逃れたカーロン。
彼らから数メート離れた場所で無傷の身体を再生した。
| ^ ^ | 「もう少し楽しませてくれるんだろ?」
【+ 】ゞ゚) 「さほど時間はかけられませんので」
オサムの全身から噴き出したのは、空間を塗りつぶすほどの密度を持った呪力。
人の身体を中心に、巨大な鎧を組み上げていく。
( ・∀・) 「なんだそれは」
【+ 】ゞ゚) 「呪装」
モララーの首すらも落としてしまいそうな程の大鎌を担いだ黒き鎧武者の姿。
関節部に纏った軟体の呪力が、巨躯がただの飾りではないということを示してしていた。
| ^ ^ | 「呪術師にしては随分と物騒な……」
カーロンが最後まで言葉を繋げることは無かった。
今は横穴となった空間を二つに分断する斬撃。
数秒して、霧散したカーロンが再生した。
342
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:39:12 ID:f6Jc0GS60
ひっきりなしに変化する重力に反応することすら許されず、
壁に張り付いたまま様子を窺う龍王モララー。
対照的に、オサムはその影響を全く受けないかのように自在に鎌を振るい、
目の前に浮かぶ敵の身体を幾度となく断つ。
| ^ ^ | 「なるほど。そういうことか」
十数度刻まれては再生し、洞窟全体が傷だらけになった頃、
ようやく得心がいったかのように呟いた。
| ^ ^ | 「呪力で足場だけ完全に固定しているわけだ。
それなら、どれだけこの空間の重力が変わっても関係ないか」
【+ 】ゞ゚) 「意外と気づくのが遅かったですね」
| ^ ^ | 「別に僕は全知でも万能でも無い。オルフェウスがそうであるようにね。
だからこんな時間稼ぎに徹しているんだから」
【+ 】ゞ゚) 「時間稼ぎはあなただけではないですよ。モララー!」
( ・∀・) 「うるさい、わかってる!!」
全身を伏せて壁に張り付きながら、ただ見ていただけの龍王ではない。
鎧武者が時間を稼いでいる間、体内に貯め込んだ魔力を龍技へと注ぎ込み続けた。
いくら殺しても再生し続ける敵を屠るために必要な魔術を。
343
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:40:10 ID:f6Jc0GS60
( ・∀・) 「霊炉の光」
| ; ^ ^ | 「っ……!?」
視界を完全に埋め尽くす大容量の光。
白一色になった穴倉で、オサムは自身の棺桶が存在している座標を明確に把握していた。
目くらましである龍技の影で、即座に鎧武者の呪術を書き換える。
【+ 】ゞ゚) 「呪黒槍!」
魔術と精霊術には不可能な技術でもって、光の中を進む黒き槍。
呪いの大槍は光の海に浮かんでいた棺桶を砕いた。
【+ 】ゞ゚) 「……ごほっ」
光が収まってモララーが見たのは、櫂によってその腹部を半分ほど抉られた呪術師の姿。
口の存在しないはずの紫の小人が、笑っているように見えた。
( ・∀・) 「何が……」
| ^ ^ | 「空間の歪みに気付いたのは見事。それを狙う手段も素晴らしい!
でも、足りない。一つは威力。呪術はそもそも直接破壊に向いていない。
役割は逆にすべきだったろうね。ま、この空間で直撃はさせられなかっただろうけど」
344
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:41:00 ID:f6Jc0GS60
【+ 】ゞ゚) 「はぁっ……はっ……」
| ^ ^ | 「苦しそうだね。楽にしてあげよう」
櫂は何ら抵抗もなくオサムの身体を二つに割った。
暗闇に落ちていく人間だった塊。
それに目を向けることなく、カーロンは語る。
| ^ ^ | 「二つに、魔術を使って僕の感覚と視覚を塞いだこと。僕の眼はオルフェウスと同じ能力を持つ。
忘れていたかい? 彼が三術を極めていることを。
僕程度でもそれぞれを視認することくらいならできるのさ。
魔術の中を進む呪術を見分けるのは、簡単なことさ」
( ・∀・) 「くそが…………っ!」
壁を蹴ったモララーの牙は、当たれば簡単に砕くことのできる敵に届かない。
カーロンが軽く腕を振るっただけで強く壁に叩き付けられた。
| ^ ^ | 「三つ。僕が攻撃をしないと甘く見積もったこと。
龍王を殺すだけの力を出すのは大変だけれど、
人間程度の強度である呪術師を殺すのは容易い。
面倒だから手を下さなかっただけだ」
345
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:41:27 ID:f6Jc0GS60
( ・∀・) 「喋りすぎたな。どうやら僕は殺せないし、僕ならこの空間を壊せるようだな。
だったら今すぐにこの空間ごと焼き尽くしてやるさ。
爆鎖陣……!」
モララーが吼えた。
空間を照らしていた魔力の残滓が膨張し、同時に破裂した。
爆発は連鎖し、数十秒間も続いた。
その威力は洞窟全体を揺るがすほど。
(; ・∀・) 「……な……にっ……?」
鳴りやまない爆熱の中、穏やかに浮かカーロン。
彼の直前で見えない壁に阻まれているかの如く、龍技は拡散して消えゆく。
| ^ ^ | 「やれやれ、これだけ空間中に残留している魔力を気にも留めないと思ったのか?
これくらいのことは予期していたさ。君たちは英雄だ。
一人一人はオルフェウスには及ばないにしても、相当の力を持っていることは知っている」
( ・∀・) 「くそっ……」
| ^ ^ | 「この空間こそが僕自身なんだ。魔力を通さないことなんて造作もない。
別に君たちの攻撃を避ける必要なんか、端から無かったのさ」
( ・∀・) 「化け物め」
346
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:41:48 ID:f6Jc0GS60
| ^ ^ | 「さして変わりないよ。さて、君はどうする?
呪術師と同じ道を辿るか、それともここで大人しくしておくか」
( ・∀・) 「……あまり龍王を舐めるな」
魔力を纏った爪撃。
洞窟の壁をバターのように削っていく。
| ^ ^ | 「借り物の力で粋がっている愚かな子供だ」
瞬きする間に十数回以上も変化する空間の重力。
(; ∀・) 「ぐっ……おおっ!」
全身を回転させ、その爪を振り回した。
斬撃となって全方位へ飛び散った魔力が、カーロンを捉えることなく空間を飛び交う。
| ^ ^ | 「その鬱陶しい動きをやめろ」
暫くは傍観していたカーロンはしびれを切らし、
担いでいた二本の櫂を龍王の翼に打ち付けた。
標本の様に壁に釘付けになるモララー。
身動きの出来ない状態でありながら、闘志は未だ衰えず。
口を開いて岩石すら溶かす高熱の火炎を放射する。
347
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:42:23 ID:f6Jc0GS60
| ^ ^ | 「だから無駄だって」
( ・∀・) 「くっそ……」
| ^ ゚ | 「おとなし……ぎっ!?」
紫の小人が苦しそうにその脇腹を抑えた。
内部から零れ出てきたのは、血液ではなく霧状の魔力。
今まで本体を攻撃した時のものとは異なり、大気中に霧散して消えていく。
| ; ^ ^ | 「生きて……いたのか……ぐっ」
( ・∀・) 「何が……」
【+ 】ゞ゚) 「簡単なことです。呪術とは呪った存在の本質に影響を与える術。
死んだと思い込ませることすら、手の内ですよ。
そしてまた、この空間があの怪物の手によるものであるなら、
その組成が分からなくとも十分に有効範囲内ということです。
少々手間取りましたがね」
( ・∀・) 「……遅いんだよ」
【+ 】ゞ゚) 「失礼。ですが、これで妨害されずに攻撃することができます」
| ^ ^ | 「貴様ら……ッ! 後悔しても遅いぞ!!」
348
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:42:43 ID:f6Jc0GS60
( ・∀・) 「そのような戯言、聞く耳は持たない!」
| ^ ^ | 「糞があああああ」
【+ 】ゞ゚) 「呪茨棘・身喰」
カーロンの体内から飛び出した無数の茨によって、その姿は見えなくなった。
オサムの呪術はそのまま空間を侵食していく。
【+ 】ゞ゚) 「あそこです。外さないようにお願いしますよ」
( ・∀・) 「ふん、わかっている」
変化し続ける重力から解放されも、未だ揺れる頭を押さえながら狙いをつける。
モララーの正面に集中する魔力。
それを飲み込み、腹の中で龍技へと注ぎ込む。
( ・∀・) 「龍神の咆哮」
大気を揺るがす一撃が壁面を抉り、その場所にあった核を打ち抜く。
主とその術の基礎を同時に失ったカーロンの空間は、すぐに崩壊を始めた。
【+ 】ゞ゚) 「脱出しましょうか」
( ・∀・) 「いちいち言わなくても解っている」
オサムとモララーは光が漏れ出していた穴に飛び込んだ。
349
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:43:15 ID:f6Jc0GS60
>
「あはははは!!」
川 ゚ -゚) 「エスキューラ!」
細かく分かれた刀身は、甲高い声をあげて走り回る小さな獣を正確に貫いていく。
動かなくなった獣は地面に溶けて消えた。
川 ゚ -゚) 「怪我はないか、キュート」
o川*゚ー゚)o 「うん……ごめんなさいママ。こんなことになるなんて……」
魔術師としての知恵と力を備えてはいても、キュートは戦ったことの無い少女であった。
実戦で行う魔力のコントロールは、普段のそれよりもはるかに難しいことをクールは知っている。
恐怖と緊張で彼女が魔術を行使できなくなったことを、責めることなどできるはずもない。
川 ゚ -゚) 「無理もない。どれだけ多くの魔力を有していようと、
戦ったことの無いお前を連れて来るべきではなかった。
私とドクオの過ちだ」
350
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:45:34 ID:f6Jc0GS60
ただの少女と変わらないキュートをその背に庇い、クールは天剣を振るう。
残っていた獣も全て地面に還り、再びの静寂が訪れた。
それを破るのは、神経を逆なでするかのような声。
幼さの残る口調は、クールを苛立たせた。
「あはっ、なかなかどうしてかわいい娘たちだ。ぼくの人形にして、死ぬまで可愛がってあげるよ」
暗がりの奥、見上げるほど大きな椅子に座っているのは、不釣り合いなほど小さな人形。
人形は慈しむかのように、自分の身体を優しく抱きしめていた。
オルフェウスによってクールとキュートが飛ばされたのは、
劇場の様な半円形のホールに、血のように真っ赤な垂れ幕で何重にも覆われた世界。
その主は、人形の姿をした魔術師であった。
クールとキュートを合わせても全く及ばない程の魔力を持ちながら、
二人をからかうかのように小さな魔術のみを使う人形。
隙を見て幾度攻撃をしたところで、
魔力という圧倒的な壁に阻まれ、クールの攻撃はその喉元にも届かない。
「あはは! どうしたのかな?」
複数の属性を無理やり混ぜ込んだ小さな爆発魔術が、音もなく二人を囲うように出現する。
すぐさま天剣の持つ反射の魔術で吹き飛ばした。
劇場の隅を消し飛ばして魔術は消失し、消えた壁もまたすぐに再生された。
351
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:45:59 ID:f6Jc0GS60
川 ゚ -゚) 「何を企んでいる」
「言ったじゃないか。君たち二人とも、ぼくの人形にしてあげるって。
今は壊すつもりは無いんだ。早く抵抗をやめてくれないかな。
綺麗な長い黒髪も! 滑らかな白い肌も! 美しい曲線を描く肉体も! 全部欲しい!」
川 ゚ -゚) 「断る。変態ナルシスト。そもそも私は人妻だ」
o川;゚ー゚)o 「ママ待って! それだと私は大丈夫みたいになっちゃうから!」
焦って訂正を求めるキュート。
拒否の言を意にも介さず、人形は自分の言いたいことだけを言葉にする。
「どうしても抵抗するの? 本当に? 勝てるはずないのに?」
川 ゚ -゚) 「勝てないと誰が決めた」
「だって、その娘戦えないじゃないか。君が抵抗するなら、ぼくはその娘を狙ってもいいんだよ?
まずは両手と両足を千切って、動けなくするんだ。勿論捨てたりしないよ。
君のとってもきれいな腕も足も、大事に飾っておくから。
一応魔術師みたいだから、詠唱できないように口を縫い合わせなきゃ。
綺麗な目玉はえぐり取って保存してあげる。
たかだか数十年でその輝きが失われるなんてもったいない!
君は本当に髪がきれいだから、ずっとずっと伸ばしてあげる。
身体よりも長くなっても、痛まないように丁寧にケアするね」
352
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:46:21 ID:f6Jc0GS60
顔に埋め込まれた大きな二つの目玉が音を立ててキュートを見つめる。
何の魔力も込められていない視線ですら、彼女を恐怖させるには十分であった。
o川;゚ー゚)o 「ひっ……!」
金縛りにあったかのように動けないキュートを、背後から合われた大蛇が丸呑みしようと口を開く。
その口は光る剣によって縫い付けられ、瞬時に細切れにされた。
川 ゚ -゚) 「私がそうはさせない」
「少し、痛い目を見てもらおうかな。本当は無傷のままが良かったんだけど」
川 ゚ -゚) 「やってみろ!」
クールを囲うように展開した九つの剣。
そのうちの二本は、キュートを護る様にその上空へ待機する。
残る七つに魔力を込めて人形を睨む。
「そんな少ない魔力で可哀想。ぼくが本物の魔術を見せてあげるよ」
353
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:46:52 ID:f6Jc0GS60
立ち上がった人形は腕を振る。
何処からともなく聞こえてきた音楽に合わせて。
朱い眼をした人形が一つ、また一つ幕下から現れる。
手には玩具の包丁を持ち、ケタケタと歪んだ嗤い声をあげながら。
川 ゚ -゚) 「そんなもの……!」
飛来した天剣が頭部を砕く。
動かなくなったガラクタを超え、さらに多くの人形が押し寄せる。
「ほらほら、どんどん増えるよ! あはははは!」
川 ゚ -゚) 「鬱陶しい! エスキューラ!」
天剣の刀身が細かい破片へと分離し、人形の軍隊に降り注ぐ。
威力を犠牲に手数を増やす魔術であるが、
魔力耐久の無い生物であれば一欠片で容赦なく死に至らしめることができるはずであった。
だが、殺戮の豪雨をものともせずに、軍隊は進む。
川;゚ -゚) 「なっ!?」
「ははっ! 君は純魔術師じゃないだろう。
どうやって手に入れたかは知らないけど、剣に組み込まれた魔術に魔力を注ぎ込んでいるだけだ。
その程度だったら、一回見れば十分に対応できるんだよ」
354
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:47:13 ID:f6Jc0GS60
人形たちの包囲網はじわじわと狭まっていく。
川 ゚ -゚) 「だったら、一撃で……ッ!」
o川*゚ー゚)o 「ママ! 待って!」
キュートは魔力そのものを同心円状に放出する。
その余波を受けた人形軍の瞳からは光が失われ、動かなくなった。
「うーん、すっごい! すごいねぇ! 人形の稼働魔力を妨害するなんて!
よく気が付いたね。確かに魔術を使えなくても、魔力を打ち出すだけなら誰でも出来るから」
o川*゚ー゚)o 「私だって、戦える!」
「でも駄目だよ。君はぼくの宝物になるんだ。
傷つけたくないから、おとなしくしていてくれないかな?」
o川*゚ー゚)o 「きゃっ……」
川 ゚ -゚) 「キュートっ!」
天剣すら反応できない速度で、キュートの両腕に取りついた小鳥のぬいぐるみ。
その大きさからは想像もできない力で、少女の身体を持ち上げる。
355
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:47:50 ID:f6Jc0GS60
o川*゚ー゚)o 「はな……してっ!」
キュートが放った魔力は、小鳥に何ら影響を及ぼせない。
天井からぶら下がっている檻の中にキュートは投げ込まれる。
「残念! 今度の玩具は魔力耐性を付与してあるから、そんなただの魔力は効かないよ」
川 ゚ -゚) 「キュートを離せ! ローテイシオン!」
全てを切り裂く光の環。回転する天剣は少女を捉えた檻を砕いた。
着地したキュートのすぐ傍へ駆け寄ったクール。
護衛用の天剣をさらに二本を加えて四本とした
「二つ目だねぇ」
椅子に掛けたまま人形は手を翳す。
起き上がった巨大な人形に注がれていく魔力は、大魔術クラス数発分。
「いけっ! あの生意気な女を叩き潰せ!」
川 ゚ -゚) 「っち……! デカブツが!」
「さぁ!さぁどうするお姫様! 残りの魔術は後いくつ?
諦めてその娘を差し出せば、命は助けてあげる。
綺麗にバラして、保存したその娘の隣に飾ってあげるよ?」
356
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:48:24 ID:f6Jc0GS60
川 ゚ -゚) 「黙ってろ!」
音を立てて崩れ落ちた人形の巨体。
両手両足が切断され、頭部を真っ二つにされて動かなくなった。
「すごいねぇ」
劇場に乾いた音が響く。
ぎこちない動作で両手を打ち鳴らす。
「はい、次は十体だよ」
起き上がった巨体の動きは緩慢で、一体一体はさして強くない。
天剣の破壊力をもってすれば行動不能まで追い込むのは難しくなかった。
川;゚ -゚) 「はぁっ……くっそ……」
五つの剣を自在に操り、巨体の足元を走り回りながら切り崩していく。
魔力で全身を強化してはいても、元は人間の身体。
体力にも限界はあった。
「どうしたの? もう元気がなくなっちゃった? 」
九つある天剣のうち四つはキュートの守護に。
四つを振り回して最後の人形を破壊したクールは、
額から汗を滴らせながら肩を揺らして息をしていた。
357
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:49:06 ID:f6Jc0GS60
「ん……。一本、どこにやった?」
川 ゚ -゚) 「いい加減その口を閉じろ」
椅子にふんぞり返っていた人形の頭部を貫通し、舞台に縫い付けた。
川 ゚ -゚) 「油断するなと学ばなかったようだな」
「ああ、あああ……ああ! あはは、はは! はははは!」
壊れたかのように乾いた嗤い声をあげ続ける人形。
即座にその全身をバラバラにした。
川 ゚ -゚) 「っふー……。さて、後はここからどうやって出るか」
o川*゚ー゚)o 「自信はないけど、私とママの魔力を天剣の魔術に注げば十分に……」
「ぼくも話にまぜてよ」
o川;゚ー゚)o 「なっ!?」
358
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:49:53 ID:f6Jc0GS60
人形の破片の一つ、腕の部分からその声は聞こえた。
天剣による裂け目が、笑みを浮かべているようにも見える。
ケラケラと笑う不気味な腕を、何処からともなく現れた小型の人形がその身に取り込んだ。
身体の大きさを超える腕を一飲みにした人形を、さらに大きな人形が捕まえて口の中に放り込む。
そうやって何度も捕食を繰り返し、人形は元の大きさの二倍ほどにまで成長した。
「あはは!無駄無駄! 人形魔術師の僕を殺そうなんて!」
川 ゚ -゚) 「まったく、厄介だな。本体を狙うのがセオリーだが、そう簡単には見つからないだろう。
おまけに一度見せた魔術はすぐに対策をされて使えなくなる、と。
性格の悪い術者だという事だけはわかった」
o川*゚ー゚)o 「ママ、一番大事なこと忘れてるよ。あいつは最低の変態」
川 ゚ -゚) 「ははは、そうだったな。変態下種野郎の魔術師。いかにもって感じだ」
「言わせておけば……!」
小型の人形が数十体、二人を囲うように現れる。
その手に持つのは身体に不釣り合いな大型の銃。
次々と火を噴き、無数の銃弾が二人を蜂の穴にすべく襲い掛かった。
絶え間ない銃撃音が劇場を埋め尽くす。
359
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:50:18 ID:f6Jc0GS60
川 ゚ -゚) 「怒りやすいってのも追加だな」
天剣に埋め込まれた反射の魔術、リバーサル
全て天剣を軸に九つの魔術を同時に発動させれば、
保有者の周囲数十メートルを保護することができる鉄壁の防御。
幾つかの衝撃を受けては崩壊し、再生することを繰り返す。
川 ゚ -゚) 「それに、これなら取れる対策はそう多くは無いだろ」
攻撃の魔術と異なり、防御魔術は一度見た程度でその性能を全て理解するのは難しい。
加えて、防御魔術を破る方法など本質的には一つしかないのだ。
「ふっざけるなあああ!!」
人形たちが一カ所に集まり、重なって巨大な人形と化す。
手に持っていた銃は、人間よりも大きな口径の大砲に。
集中していく魔力は、クールの全魔力よりもさらに膨大な量。
周囲をすべて消滅させてしまいかねないような一撃は、何の警告もなく発射された。
o川*゚ー゚)o 「ママっ!」
川 ゚ -゚) 「リバーサル!」
九つの盾を重ねて強化した防御魔術。
クールの身体を通して、キュートの魔力分だけその硬度は強化される。
360
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:50:41 ID:f6Jc0GS60
光で埋め尽くされた劇場。
魔力の残滓が呼吸すらも阻む濃度で満ち溢れていた。
「な……に……?」
光が収まった時、劇場に立っていたのは二人。
相当量の魔力を引き出していたせいで疲弊していながらも、無傷の姿であった。
川 ゚ -゚) 「キュート、もうひと踏ん張りだ!」
o川*゚ー゚)o 「うん!」
その本来の力を発揮したリバーサルによって反射された魔力砲。
強大な魔力の奔流が引き起こしたのは、劇場の崩壊。
天変地異にも匹敵する威力の攻撃は、
別の世界へ繋がっている歪んだ筋状の空間をいくつも生み出していた。
川 ゚ -゚) 「全て壊れろ! ……おおおおっホライズン!」
「やめろおおおおおお!!」
二人分の魔力が込められた不可視の一撃。
地平の彼方まで全てを薙ぐ天剣最長射程の魔力斬撃。
既に崩壊しかけた空間を破壊するには充分であった。
361
:
名無しさん
:2018/05/03(木) 23:51:11 ID:f6Jc0GS60
「な──んてね」
.
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