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虐待・虐殺小説スレッドPART.4

1管理団:2007/04/12(木) 23:32:19 ID:???

      AA ではない活字の並ぶ 虐待・虐殺系 の 新 し い ス タ イ ル 。
━━━━─────────────────────────────────━━━━
 皮を剥がされたしぃが、首筋に大きなフックを刺されて吊され、みぞおちから股間までを
切り裂かれている。裂かれた腹からは、勝手にニュルニュルと腸が飛び出て、こぼれた。
 吊された中には、ベビしぃも混じっている。

「ウゥゥゥ イタ イヨ、、、 モウ シナ セテ」  
;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; 「イチャ ヨ ナコ チテ マチャ リ チタ」
         |ミ|           |ミ|     ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;
      -、.   |ミ|、          |ミ|                       |ミ| :
        /;l   |ミ|;l           |ミ|    ,,、  ,.,,.,.,,.,,.,..,,     ,.,,. ,,.,,,.,,      |ミ|i | ̄ ̄| ̄
     /:;,.;ヽ,.,|ミ| |              |ミ|   /;,:l  ミ,,,,,(★)ミ     ミ(★),,,,,ミ     |ミ| :|    |
    ,:;´ ;::; ;: ; ;|ミ|.;`,、   、ー-- 、__、、ミ|_,,//,、|  <ヽ`∀´>   <`∀´* >、    i|ミ| :|    |
   l.,;:.ー、 ;;,:..;|ミ|;:..:.,;l   ヽ;.:;r :;;.,;: ;:、_:;:;ヽ;l ⊂ミ  北 )  m 北  ミmヽ  |ミ|i |    |
 ̄ ̄|;:.;゚-,.ilヽ|/:|ミ|,; :; ;|  ̄ ̄`l>:;,. ;:( ゚,0.`o ;l: ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄ ̄ i |ミ| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   ヽっ ;i|;/lヽ|ミ|;;:; ;/    |;,.: ;(´ ̄`)" ゚。;:l   | 労働党 万歳  | .       |ミ|, ー--、
     >;:;: :;,. ;(O);:く       ヽ;;.:` - ´:;: ;: ;;/     |    ____    | .       |ミ| ;: ;: ;:、´
    /:: :; :,. ;:;l|iノ,.:;:.;;ヽ    /;":;:);)(;:(;(;:;`;:,   |    || ★ ||    |       i |ミ|:;: .:.,ー--、
::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::`ー、,:.;;i   | __ ̄ ̄__ |       ,(O) ;;: ;:;: ;;:,´
                    ::::::::::::::::::::::::::::::::::|/::::::::::::::::::::::::: \|::::::   /:;ヽi|l;;;: ;;: (゚ノ
「フォルフォルフォル、これが全自動畜産場ニカ?」     ::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
 突如、重く冷たい鉄の扉が開き、人が二人、中へ入ってきた。毛皮のコートに、これまた
毛皮の大きな帽子。その帽子に付けられた、大きな赤い星は、彼等が共産国家の兵士で
ある事を、何よりも雄弁に語っていた。
「はい、そのとおりでスミダ」
 先に入ってきた男――物腰の低さや、言葉遣いからして、後から入ってきた男の案内役
であろう――は、上機嫌な上官に、この工場の概要を説明し始める。
「ちびギコを使った種付けから、しぃのニクコプンでの飼育、屠殺、解体、全て奴らの手で行われまスミダ」
 鳴りやまない笑い声、絶えない悲鳴と怨嗟の声、、、
                                    ここは彼女らの故郷より西に在る、

          地       上       の       楽       園       。

384淡麗:2007/09/06(木) 14:39:43 ID:???
本スレデビュー作、いきます

【マッチ売りのベビ】


「マッチ… マッチ カッテクダチャイヨォ… 」
「マッチハ イカガデチュカァ… ヨクモエル マッチデチュヨゥ」

アブ板シティの目抜き通りに、ベビしぃのマッチ売り姉妹がいた。
人々は家路を急ぐもの、これから繁華街へくりだすのか うほっな表情のもの
すでに一杯ひっかけたのか、顔を赤らめているもの・・・
決して人通りがまばらというわけではなかった。
しかし、ベビたちの前で足を止めるものはいない。
ライターだって100円で買えるいまどき、マッチを買うものはいない。
それにしぃが売るものだなんて誰も買いたいとは思わない。
むしろ
「往来の邪魔だ!」
と蹴飛ばされないだけ幸運でもあるのだ。

それでも夕闇はどんどん迫ってくるし、街並みを通り抜ける風も大分冷たい。
冷たい、というより「木枯らし」と表現するほうが正しいかもしれない。
季節は秋深まっているのだから。


「アニャァ… ダレモ カッテクレナイネ…」
「チィ、モウ ヤデチュヨゥ! ハヤク カエリタイデチュヨゥ!」

とうとう耐えかねて、ベビの一匹がぐずりだした。
もう一匹のベビも、ぐっと涙をこらえてそっと寄り添う。

「ミィモ カエリタイデチュ… オナカ チュキマチタ…」
「オテテモ アンヨモ チュメタイ デチュ… コンナノ マターリ ジャナイデチュ…」

木枯らしのなか、大分長いことマッチを売り続けていたのであろう。
ピンク色のお鼻も、淡い桜色のお耳も、今では真っ赤になっている。
マッチの入った籠を持つ小さなオテテは、すっかりかじかんでしまい、手を開くのもやっとの状態だ。
ちっちゃなアンヨもすっかり冷え切ってしまい、痛みすら感じている。

うちに帰りたい。
そう思うのだが、帰るわけには行かなかった。

「 コノママ カエッタラ ママニ チカラレマチュ…」

そう、この幼い姉妹に『マッチ売り』を命じているのは、他でもない姉妹の母なのだ。

「……マンマ、ダッコ チテクレナイ デチュネ…
アンナノ マンマジャナイ デチュ! ギャクサツチュウ ト イッショデチュ!」
「デモ マエハ トッテモ ヤサチイ ママ デチタヨォ…」

姉妹の母親は、いわゆる「アフォしぃ」だった。
姉妹が生まれた当初は、確かに可愛がり世話もしてくれた。
しかし姉妹がベビしぃになった頃、母しぃには男が出来た。
以来母しぃは、この姉妹がすっかり疎ましくなったのだ。
今まで養育費としていたお金は全て男との交際に消え、
それでも足りない分は、姉妹を使い金を稼がせている。
母しぃにとって姉妹はお荷物でしかないが、こうやって寒い街路に立たせ、大して売れもしないものを売らせ
売り上げがあれば全て取れば良いし、寒さで野たれ死ねばそれに越したことは無い。
そのくせ二人がすっかり冷え切った体でうちに帰ってきても、売り上げが無ければ激しく叱りつけた。

それでも姉妹はこんなどうしようもない母親を、未だに母として慕おうとする。
それは時々みせる昔のように優しい母の一面があったから。
だがその「優しいお母さん」は、単にその日男と愛し合い非常に気分が良いだけのことで、
姉妹のことを愛しているからではない。
たまに与える甘いお菓子も、男からの貰いもので自分の口に合わなかっただけ。

そんなことを知る由も無い姉妹は、自分たちが良い子にすれば、母の言いつけをちゃんと守れば
また昔のように優しい母でいてくれる・・・そう信じている。
完全に「虐待」の泥沼の中にいるのだった。

385淡麗:2007/09/06(木) 14:40:40 ID:???

「チィタン、モウスコシ ガンバルデチュ。 キット シンセツナ ヒトガ カッテクレルデチュ。」
「…ウン デモ モウ オテテモ アンヨモ チュメタイデチュ…」

ハァッとかじかんだ手に息を吹きかけ、少しでもぬくもりを得ようと試みる。
ほんの一瞬だけ暖かさを感じるが、すぐに冷たい木枯らしによって温もりは奪われてしまう。
再びかじかみ始める手を見つめ、ベビたちはより悲しみにくれる…

ふと、ミィと呼ばれているベビがかごの中のマッチを見つめ、何かを考え始めた。
自分たちが持っているのは、マッチの入った籠。
そして自分たちが今求めているのは、ぬくもり…

「ハニャッ! コノ マッチデ アタタマリナガラ ウレバ イインデチュ!
ソウスレバ マターリシナガラ マッチ ウルコト デキルデチュヨゥ!」
「ハニャァァ! スゴイデチュヨ! ミィタンハ カシコイ デチュゥ!」

本来売り物であるはずのマッチを消費してしまったら、それこそ問題なのだが
ミニマム脳なベビたちにしては十分考えて導き出された結果なのだろう。
ミィはさっそく籠からマッチ箱をひとつ取り出し、シュッとマッチをする。

シュワッと音を立ててマッチの炎は二人をやさしく照らす。

「ハニャァァ… アッタカイ…」
「ハニャーン… マターリ デチュヨゥ…」

二人はマッチの灯に手をかざし、そのぬくもりを感じていた。
しかしそれも束の間のこと。
マッチ一本の炎はたちまち風に吹き消されてしまう。

「ア アニァャ・・・」
「キエチャイ マチュタ…」

やや呆然と見つめる姉妹。
ベビたちにとってマッチの炎はもっと強く燃え続けるだろうはずのものだったのだ。

「モウイッカイ ヤルデチュ!」
「ウン! 」

いともたやすく消えてしまったマッチの残りくずを捨て、新たなマッチをする。

シュバァ… 

リンの燃える香りを立てながら、再びマッチに灯がともる。
二人は小さな炎に小さなオテテをかざしてぬくもりを得る。

「ハニャ…オテテモ アッタカーイ デチュ」
「チィノ オテテモ!」

小さな炎でも、二人の冷え切った小さなオテテを暖めるには十分な炎なのかもしれない。
小さな炎を、今度は大切に大切に、消えないように注意しながら燃やして暖を取る。
しかし、ぴゅうと吹いた風が、いとも簡単に吹き消してしまった。

「ア、アァ…」
「マタ キエチャッタ… モウイッカイ ヤリマチュヨゥ!」
「デモ、ミィタチガ ツカッチャッタラ マタ ママニ チカラレマチュ」
「ウゥゥ… チィタチハ マターリ デキナイ デチュカ…」

温もりを得たい。
たったそれだけの願いも自分たちには適わないのだろうか
そんな悲しみに二人が支配されかけたときだった。

386淡麗:2007/09/06(木) 14:42:04 ID:???


「話は聞いたんだからな! ぐすっ」 
「グスッ もう心配いらないモナ。」

勢いよく登場したのはモナーとモララーだった。
しかもなぜか、わざとらしくむせび泣いている。


「?? オニィタンタチ ダレデチュカ?」

突然現れた二人に姉妹は驚き、後ずさりする。
そりゃそうだ。
優しく微笑みながら、ではなくむせび泣き…見ようによっては「漢泣き」している
二人組みが登場したのだから。
しかし、そんな心配をよそにモララーは涙を拭きながら、姉妹に声をかける。

「さっきから君たちの事を見ていたモナよ。
こんなに寒いのに、大変だったモナね。辛かったモナね。
でも、もう心配いらないモナ!」
「あぁ!ベビちゃんたちはマッチで温まりたいんだろう?
だったら俺たちがそのマッチを買ってやるんだからな!」

「マッチ カッテ クレルンデチュカ??」
「ああ!」
「そうモナ。それにそんな小さなマッチじゃ十分温まらないモナよ。
お兄さんたちが、そのカゴのマッチを全部…じゃ厳しいから、
半分買い占めてあげるモナ!」
「ハニャ?! ハンブン カッテ クレルンデチュカ?!」
「ハニャーン! オニイタン タチ マターリノ ツカイ デチュネ! チィ ウレチイ デチュヨゥ!」

「よ〜し!そうと決まればまずは場所を移動しよう!
こんな風の通り道じゃ、すぐに消えちゃうんだからな!
裏の空き地ならば風も通らないし人目にもつかないから
安心して火をつけて温まることが出来るよ!」
「じゃあさっそく移動モナ!ベビちゃん達、おいで。ダッコで移動モナ♪」
「ハニャ! ダッコ?! ダッコ チテ クダチャイ!」
「アニャ! ミィモ! ミィモ ダッコ チテクダチャイ!!」

ダッコにすぐに反応した姉妹は、モナーの腕に飛び込んでいく。
小さなベビをひょいっとダッコするモナー。
その顔は優しさにあふれている。

「アニャァァン… マターリ デチュヨゥ…」
「オニィタンタチ ヤチャチクテ テンチチャマ デチュ…」
「はははッ 天使だなんて大げさモナ。」
「そうだよ。今幸せを感じているのは俺たちのおかげなんかじゃなくて、
今まで辛いことを我慢して耐えたベビちゃん達の頑張りがあるからだよ。」
「アニャァァ…チィタチ ガンバッタカラ マターリデキルンデチュネ!」
「ミィタン、ヨカッタネ! ウレチィネ! イッパイマターリナンダヨ!! 」


「ハニャー… ホントニ カゼガ フイテコナイデチュ」
「サムクナイネ 」
「そうだろう、ここなら風も吹き込んでこないから、ゆっくりと火に当たることが出来るよ。」

モナーとモララーが連れてきたのは、ちょうどビルの間にぽっかりと開いた空き地。
なるほど、確かにここならば吹き込む風はなく、マッチのような小さな炎で暖を取るには最適だ。

「ネェネェ、オニィタン アレッテ ナンテカイテルノ? 」

ふと、ミィが壁に書かれた文字を指差して尋ねた。

そこには、スプレーで綺麗に落書きされた文字がでかでかと書かれていた。



「 虐 殺 愛 」と。

387淡麗:2007/09/06(木) 14:43:10 ID:???


「あぁ、あれね。あれは『抱擁愛』って書いているんだよ(笑)。」
「そう、ホウヨウ。ダッコって言う意味だよ(笑)」

にたにたと笑いながら、全く逆の意味を伝える二人。
当然ベビたちに文字が読めるわけが無い。

「ハニャァァ! ダッコ?! チィ ダッコダイチュキ! 」
「ミィモ ダッコ ダイチュキデチュヨゥ! ヤッパリ オニィタンタチ ダッコノ テンチチャマデチュヨゥ! 」

自分たちの運命がしっかりと決まってしまったわけだが、無知というのは悲しいかな。
未だにこの二人がマターリのつかいだと信じてやまない。
文字が読めなかっただけではない。
「虐殺愛」と書かれた文字の後には、真っ白い、大きな十字架が描かれていたのだから、二人が天使と
勘違いしたのも無理はなかった。


すっかり自分たちを信用しきっているベビたちを優しく地面に置き、モララーは空き地の隅から何かを持ってきた。
それは一斗缶のようなもの。
重そうに抱える様子から、中身は液体であろうことが予想される。

「さ、さっそくベビちゃん達をあったかくしてあげなきゃな!
…そのまえに、まずはこれを…!」

というなり、手にした一斗缶のようなものからミィにバシャバシャ〜と中の水をかけた。

「ウミャァァァァ!! チュ、チュメチャイデチュヨゥ!! チャムイデチュヨゥ!! 」

すっかりずぶぬれになってしまい、一気に寒がり始めるミィ。
中の水は腐っていたのだろうか。
なにやら刺激臭もあたりに立ち込める。

「イヤァァ…ン ミィタンヲ イジメチャダメェ! 」

チィは慌ててモララーの足元に駆け寄り、ポカポカとその足を叩き始める。
もっともベビのネコパンチなんて痛くもなんとも無いので意味が無いのだが。
涙と鼻水をたらしながら必死に抵抗しようとするチィちゃんをひょいっと持ち上げ、モララーは優しい微笑を見せる。

「寒そうで可哀想かい?でも今感じるこの寒さが、ミィrちゃんをもっと、も〜〜っと暖かくして、
最高のマターリをあげることができるんだよ!」

「そうモナ!さっきも言ったモナ。
『苦しいことを我慢した人に、幸せが来る』んだよってね♪」

「ソ ソウナンデチュカ… ジャァ ミィタン ガンバッテクダチャイ! マターリノタメデチュヨゥ! 」

よく分からないが、この後に最高のマターリがある、そのことだけを理解したチィは、泣くのをやめてミィに声援を送る。

「チャ…ヂャ…ヂャム゙イ゙デヂュヨ゙ゥゥ マ゙ッヂ… マ゙ッヂグダヂャイヨゥ…」

声援を送られているミィはそれどころではない。
寒くてたまらないのだろう。ガタガタ震え続けている。
いくら寒い中で行水をさせられたにしては若干異常な寒がり方だが…

「マ゙ッヂ…マ゙ッヂ…グダヂャイ゙…」

「ははは、ミィ゙ちゃんはせっかちさんだなぁ!それじゃ、ハイ、マッチ。
一本二本じゃなくて、盛大にいっぱい使うモナ♪なんせマッチはまだまだあるモナよ。」

ずぶぬれになり、ガタガタと震えながらヨタヨタとモナーとモララーの元へ歩み寄ってくるミィ。
その様子をおかしくてたまらない、というように必死に笑うのを押し殺しながらモナーはマッチを一箱、ぽいっと放り投げる。

「マッ゙ヂ… マ゙ッヂ…」
ガタガタと震えながら、ちいさなオテテでマッチを拾い、さっそく火をつけようとする。
しかし震えているせいでマッチをうまく取り出すことは出来ないし、擦ることも出来ない。

「ウニャ… ヒヲ…マチャーリ…」

パラパラとマッチをこぼしながらやっと3本ほど掴み、何度か失敗しながらもようやくマッチをこすることに成功する。

388淡麗:2007/09/06(木) 14:44:38 ID:???

しゅばぁぁぁ……


小気味良い音を立てながら、マッチに灯がともる。
先ほどのように1本ではないので火も大きめだ。
これならさっきよりも十分温まることが出来る…

「アニャァ…」

うっとりとその火に手をかざし、マッチの炎で温もりを得て、まさしくマターリが始まった

と、言いたいトコロだが!!!


しゅぼぼっ!!!

「ハ、ハニャニャ?!!??!?!?」
突如、マッチにかざした手が炎に包まれる。
慌ててマッチを投げ捨て、火のついたてをブンブン!とふり火を消そうとするが火はあっという間に燃え広がる。

「ハ…ハニャァァァ!!」

ものの数秒で火達磨となってしまった。

「タチュケテ!! タチュケテェェ!!! チィタァァァン!!!」
「ア… ア… 」
「ダデュゲデ!! ヂィダァァァン!! ナッゴォ ナッゴォォォォ!!! 」
「ア… アニャァ…」

ミィが火達磨になって言う久様子を成す術も無く見つめるだけのチィ。
モナーとモララーを助けてほしいとばかりに見つめる。
しかし、炎に照らされている二人の顔は、焦った様子など無くニコニコとしているだけ。

「やぁ〜さすがにガソリンは引火性が早いモナ。」
「ただのガソリンじゃないからな!北極でも使用されちゃう寒冷地仕様だからな!」

二人の話からすると、どうやらミィが行水させられたのはタダの水ではなかったようだ。
寒冷地仕様のガソリン・・・
ガソリンは気化する際に熱を奪う。
それが寒冷地でもしっかり気化できるようになっている寒冷地仕様のガソリンを浴びせられたのだから、
ミィのあの異常な寒がり方は理解できる。

「オ、オナガイチマチュ! オニィタンタチ ミィタンヲ タチュケテクダチャイ! ナッコチマチュカラァァ!!」

必死にミィの救出を懇願するチィだが、当然その願いは受け入れてもらえない。

「え〜?何を言ってるモナ?せっかくミィちゃんは火に包まれて暖かくなっているのに??」
「そうだ、チィちゃんも暖まりたいんだよね?だったら一緒にダッコしたりしなよ(笑)」

そう言ってモララーは、自分の胸にひしっとしがみついているチィを引き剥がし、
燃え盛るミィのもとへぽ〜〜んと投げた。

「ギャンッ!! イチャイ… ヒィッ !!」

投げ下ろされたチィには痛みを訴え泣いている暇などなかった。
目の前に、火達磨になって焼け爛れながらもなお生きている自分の姉妹が近づいてきているから。

「ヂィダン… ダズゲデ… ダズゲゲ…」
「ヒッ… イ…イヤァァァ… コッチクルナデチュヨゥ!! 」

ずるっずるっと這いながら焼け爛れた体から炎を上げながらミィは近づいてくる。
その姿にミィの面影などなく、立派な化け物と化している。
その姿にすっかり腰を抜かしてしまったチィはうまく逃げることが出来ない。
そうこうしているうちにミィに追いつかれてしまった。

「ダズベゲ… ナ゙ッゴォァ… ヂィダン… 」
「ヤ… ヤァァヨォォウ!! ハナチテェェェ!! 」

がっしと右足を掴まれてしまったチィは、必死に抵抗する。
足をブンブン振りなんとか振りほどこうとするが、ミィの手は離れない。

「ハナセェェェ!!」

とうとうガスッガスッと自分の姉妹を足蹴にしてその手を振りほどいた。
しかし、その足にはミィの炎が引火してしまっている。

「アニャァァァ!! イヤァ!! イヤァァァ!!!」

半ばパニックになりながら、チィは必死に炎を消そうと自分の足を振り回す。
しかしどんどん炎は自分の毛を伝って燃え広がろうとしている。
このままではミィの二の舞だ。

「オミジュ! オミジュゥゥ!!! 」
この火を消すには水が必要。
何とか水はないか…というその時。
水の入った大きな缶が目には飛び込んできた。

「オミジュゥゥ… ケサナキャ… 」
一目散に駆け出し、チィは水の入った缶に飛び込む。

「あ、馬鹿!」

389淡麗:2007/09/06(木) 14:50:52 ID:???



ボォォォォォォン!!!!

チィが水缶に飛び込むのとモララーが叫ぶのが重なった瞬間
轟音とともに水缶から火柱が上がり、チィの体は炎に包まれた。

「ハギャァァァァァ?!?!」

何が起こったのかわからず火達磨になり、大暴れのチィ。
がたーんと水缶は倒れ、火達磨のちぃと炎が流れでる。
もうお分かりと思うが、チィが飛び込んだのはモララーが持ってきたガソリン缶だったのだ。

ガソリンを水と間違え飛び込んでしまうとは。
あきれながらも爆笑するモナーとモララーだが、炎にくるまれているチィの様子がミィとは違う。
げぇげぇと炎を吐き出している??

「ブャ゙ォ゙ゲェギャアァァァァァ!!!!」
二人が聞いたこともないような悲鳴を上げながら燃え続けるチィ。
急におなかが膨らみ始め、ジタバタもがいたと思うと

ボンッ!!

臓物を炎の中に撒き散らし破裂してしまったのだ。
その様はまるで花火のよう。

「うおぉぉ… ひどい有様モナ。」
「ガソリンを飲み込んだんだろう。こんなになるなんてな…」

さすがの二人も、爆発の様子に驚いているようだ。
すっかり動かなくなったベビたちを一瞥しながら、モナーがミュージカル役者よろしく手を振り上げ叫ぶ。

「ほんと、可哀想なベビちゃん達モナ!」

それを見てモララーは、ベビたちの遺品となったマッチを一つ取り上げシュッと擦ると、タバコに火をつける。
一仕事の後の一服か。
ふう〜っと紫煙を吐き出し、モナーは語りだす。

「そうでもないさ。
辛い労働から解放されて、ダッコでマターリできたんだから本望だろ。
それに、バイオリズムどおりの人生じゃないか。」
「…? あぁ、あれね。苦しみの次には幸せが来る…
裏を返せば、幸せの後には悲しみが来るってことモナね♪」

はははと笑いながら、モナーとモララーは立ち去る。
未だに燃え続けるベビたちを残して。

390:2007/09/09(日) 15:52:13 ID:???
>>143〜より続き

天と地の差の裏話
『まとめ』






『今月○日午前○時頃、××商店街で中学生の少年一人が、何者かに殺害される事件がありました。
 遺体は、額に鋭利な刃物で刺された痕があり、右腕が現場から消失していました。
 警察は目撃者からの証言などを頼りに、捜査をすすめていく方針・・・』

うっすらとノイズが掛かったテレビから、そんなニュースが報道されていた。

「・・・チッ」

自分の部屋でそれを観ていた男、ギコはその事件の最初の被害者だった。
青い身体と濃い緑色をした瞳は、種族特有の雄々しさを放つ。



メイと名乗った被虐者に予想だにしない攻撃を喰らってから一ヶ月。
その間、暴君を司る男は、この一ヶ月で更におかしく、イカレていった。

『オブジェにしたモララーの腹の中に、メイを虐殺してぶち込む』のを目標にした時の事だ。
どんなに熱くなっても、自分を見失うことなんて全くないのがギコであり、
また、どんなに冷静でも頭のネジがはずれているような思考を持っているのも、ギコなのだ。

(いつ捕まえられるかわかんねェから、剥製にでもするか)

虐殺した後のモララーを見て、ギコはそう思ったのだ。
ここでは、あえて虐殺対象が一般AAだったというのは無視しておく。
普通ならば、『剥製にする過程の内で虐殺をする』という流れになるだろう。
だが、ギコは殆どの行動を自分の感情を優先として行っている。
メイをモララーの腹にぶち込む予定も、モララーをオブジェにした結果も、何のプランもない感情だけの行動で生まれた事。

メイの事がニュースで初めて報道された時は部屋を真っ赤にリフォームしたこともある。
逆に、その時のやり方が不覚にも自分好みの結果となり、それにハマッて他のことは考えなくなったりと極端だ。

タガが外れ、虐殺厨と化したギコは『暴力で繋がった仲間』を中心に、殺人を犯していた。
骨の髄まで恐怖に染め、メイを殺す為の実験台として扱ったつもりが、一般AAの殺害が齎す快感に、溺れていたのだ。




ニュースが違う内容に切り替わった所で、ギコは足元に目線を落とす。
そこには一人の男が手足を縛られ、さるぐつわを噛まされ横になっていた。
その目からはとめどなく涙が溢れ、身体は冷房をかけていないのに酷く震えている。
その男はタカラという名前を持ち、かつてギコと対立していた者だ。



タカラは他とは違っていた。
ギコと関わった奴らの中で唯一、力強くギコに反発した男。
その腕っ節も、ギコには及ばないがかなりのものだ。

逆鱗に触れるどころか、しょっちゅう殴りかかってもいた。
だから、ギコに関わったAAの中では病院送りになった回数がずば抜けている。
いつもすぐ退院してきたが、その回数が増える度にタカラの仲間は減っていった。
その理由は、タカラについていけなくなったり、ギコに引き抜かれたりと様々。
しかし、仲間が一人もいなくなっても、タカラは己の正義を信じてギコとぶつかり合った。

だが、今回は違った。
虐殺厨になったギコに捕まり、『虐殺』を宣言されたのだ。
暴力が襲ってくるのではなく、死が自分を穿つ。
タカラの心は恐怖でいっぱいになり、もはやギコの傀儡と全く変わりなくなっていた。



「最近は物騒だよなァ・・・虐殺厨の他にも殺人鬼がうろついててよ」

「・・・」

目線を落とし、涙目のタカラに話し掛ける。
案の定といったところか、タカラはこちらを見る事すらなかった。
唯ひたすら、糞虫のように震え、怯えていた。

391:2007/09/09(日) 15:52:46 ID:???

「・・・フン」

腰を上げ、机に立て掛けてあった棒に手を伸ばす。
赤錆に塗れたその棒は、どこかで拾った鉄パイプ。
虐殺に使われる一般的な道具だが、吸った血が他とは違っていた。

ゴリ、と床を鈍器が擦る音が響くと、タカラの身体がわずかに跳ねる。
水色の身体から溢れる脂汗は、見ていて不快でしかない。

「お前らしくねェな。いつも俺を違う意味で楽しませてくれたのによ」

パイプの先をタカラの身体に宛がい、何かを探すように這わせる。
頬から首、胸と腹を通って右腿に来た所で、手を止めた。

「・・・」

すう、と肺に酸素を集め、鉄パイプを振り上げる。
綺麗な曲線を描く、水色の腿が今から自分の手によって形を失う。
骨折の事を『新しい関節が出来た』なんて冗談、誰が言い始めたのか。
ギコはそんなことを考えながら鈍器を握りしめ、一気に振り下ろした。

「ぐぅぅッッ!!!」

許容しがたい鈍い音がして、タカラの上半身が大きく跳ねる。
直後、恐怖で震えていた水色の身体は、痛みに悶えるように暴れ始めた。

タカラの腿は鉄パイプに沿って陥没したかのようになり、そこだけが赤黒く染まっている。
切断、とまではいかなかったが、手応えからして骨は綺麗に砕いたようだ。
上半身が暴れる度、少し遅れて脚がぶらぶらと動くのがまた面白い。

「は。糞虫みてーな反応しやがって」

さるぐつわの奥でもごもごと喚くタカラを眺めながら、立ち上がる。
涙と涎をばらまく顔、脂汗だらけの身体、そして脚へと視線を流す。
皮や肉の潰れ具合から、もうそのまま引っ張ってもちぎれそうだ。
しかし、その赤黒い傷をまじまじと見詰めていると、何か引っ掛かるものが。

(・・・ああ、そうか)

あまり深く考えずとも、靄はあっさりと晴れた。
ギコはおもむろに陥没した腿を、鉄パイプの先端で押し潰す。

「んがぁぁぁぁ!! あああぁぁぁぁ!!」

ぐりぐりと捏ねるのに併せ、タカラが布に噛み付きながら叫ぶ。
もし歯と歯の間にあるものが舌だったら、既にかみちぎっているかもしれない。

ギコが連想したのは、『挽き肉』だった。
鈍器と砕けた骨が全てを破壊し、それに近いものと化していたのだ。

肉をいじるというのは、虐殺で必ずする行為だし、それを好きになれないと虐殺は行えない。
ギコは何度も鉄パイプを持ち上げ、狙いをずらしては押し潰し、捏ねるを繰り返す。
その都度聞こえるねばっこい音、骨がすり潰されていく音。
そしてなにより、その感触とタカラの悶絶ぶりが愉快でしょうがなかった。

「ううぁ、があああぁぁぁァ!!」

「ハハッ、きったねェ声・・・」

何回目かの押し潰しで、手に伝わる感触が緩くなってきた。
肉片もかなりの量が散乱し、血だまりが床を汚している。
どうやら完全にちぎれてしまったようで、 脚を触ってもタカラ側に反応はない。

当の本人は寝そべりながら天を仰ぎ、自分の脚がどうなったかを見たくないようだ。
というよりも、縛られて自由のきかない身体で、必死に痛みから逃げているような。
どちらでも構わないが、確実に疲弊はしているようだし、扱いやすくはなった。

粗い呼吸と激しい上下動をする腹部を舐めるように見詰め、余韻を楽しむ。
暫く堪能した後、邪魔になった脚を取り除く為、足を縛っていた紐を解く。
タカラから紐がするりと離れた途端、急にもう片方の脚がこちらに向かった。

「っ!?」

392:2007/09/09(日) 15:53:46 ID:???

ギコは身体を引く事で、それを間一髪で回避。
と同時に、その脚を軽快な音をたてて掴んだ。
タカラを一睨みすれば、そこには少しの怒りが混じった、絶望に染まった表情があった。

「・・・っ」

「悪ィ、やっぱりお前はお前だったな」

歯を見せるように笑い、足首を掴んだ手に力を込める。
骨が軋む不快な音がすると、タカラの身体がまた暴れ始めた。
鉄パイプを一度床に投げ、踵をわしづかみにする。
抵抗が酷くなる前に、ギコは一気にそれを捻ってあらぬ方向へと曲げた。

「ぐっ!!!」

皮と繊維と筋がちぎれていくのが、耳と手を通して全身に伝わるのがわかった。
対するタカラはそれが理解できないのかしたくないのか、顔面蒼白で目をひん剥いてそれを見ていた。
既に片脚を潰しているのに、その反応はかえって新鮮で、かつ滑稽だ。

「どうした? そんな驚いたカオしてよ」

ぐりぐりと取れかかった足を弄りながら、喉を鳴らして嘲笑う。
そして、そのままもぎ取り自身の腹に投げてみる。
水色の足は腹の上をそのまま跳ね、床に転がり落ちた。

「ふ・・・っく・・・」

と、唐突にタカラが涙を流し始めた。
それは恐怖に苛まれて、耐え兼ねた所に泣きわめくそれに近い。
先程より更に酷く、極寒の地に放り出されたかのように震える水色の身体。
タカラの精神は今、更に崩壊し始めようとしていた。




「そう泣くなよ。AAの身体ってのは元々壊れやすいモンだ」

タカラの左脚を持ち上げたまま、ギコは自分の感性で物を言う。
そして、床に倒していた鉄パイプを拾いあげ、それを水色の膝に宛がった。

「特に関節はな」

コンコン、と鉄パイプの先端で膝を叩き、逆手に振りかぶる。
後は居合の如く、一気にタカラの膝を打ち抜いた。

「っっあ!! がああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

凄まじい轟音がして、文字通りそれは爆発した。
まるで至近距離から銃火器で撃ち抜かれたかのように、肉と骨の破片が飛び散っている。

何も知らない他人が見れば、タカラはトラックに轢かれ、両足を巻き込まれた哀れなAAである。
だが、この惨たらしい傷は紛れも無く『ギコが鉄パイプでつけた』もの。
しかも拷問のように何度も打ち付けたのではなく、ほぼ一振りでその脚を粉々にしたのだ。

「はははっ! だから脆いって言ったろうが」

切断された脚、タカラの臑を投げ捨て腹を抱えて笑うギコ。
怯えては叫び、再度怯えてまた叫びと、スイッチを交互に切り替えているようなタカラが非常に愉快で堪らない。
もし対象が糞虫だったら、その切り替えの合間にダッコだのコウビだのと命乞いを挟むだろう。
だが、今目の前にいる芋虫は一般AAであるし、自分と対立をしていた者だ。
さるぐつわを噛ませていなければ、不快さを纏わり付かさせた罵倒しかその口からは出ないかもしれない。

(・・・さて、吉と出るか凶と出るか)

ギコは、タカラの暴れっぷりを眺めながら、小さな葛藤をしていた。
『被虐対象者の慟哭』が最も好きなギコは、虐殺厨になってからそれについて悩まされていた。
糞虫の罵倒ならば、耳にタコができるほど聞いたし、回避方法は腐るほどある。
しかし、見ず知らず、或いは自分に不満がある一般AAを虐殺する時には、少々問題ができていた。
もし対象が憎悪の目でこちらを見ていれば、心を折るのは非常に難しい。
心身共に感服させてからの叫びでなければ、本当の爽快感は得られない。

393:2007/09/09(日) 15:54:50 ID:???

タカラの慟哭を聞きたい。
だが、罵倒は絶対に耳に入れたくない。
『変態』とも『狂人』とも取れるギコの思考。
自分にしか理解できない賭けに挑むか、そのまま身体を破壊していくか。

(・・・でもなぁ、あの反応を見たらなあ)

聞かずにはいられない。
ギコの奇妙なこだわりは、もはや性癖と化していた。
妄想が膨らみ居ても立ってもいられなくなり、鉄パイプを投げ捨てる。
そして、さるぐつわに手をかけた。

「あ! っが・・・」

乱暴にそれを解いてタカラの顎を掴み、眼前に持ってくる。
今の自分の顔は、どんな風に相手に映っているだろうか。
血走った目で見詰めてくる、鼻息の荒い変態だろうか。
それとも、AAの皮を被った悪魔か何かだろうか。

「今、お前の眼に、何が映っているか言ってみな」

はち切れんばかりの気持ちを、必死で抑えながら質問をする。
それでも腕の震えは止まらず、いっそこのまま握り潰したいと思ってしまう。
早く答えが欲しい。一秒が十秒にも感じる。
焦らされるのは好きじゃない。興奮が憤怒に変わる前に、早―――。

「・・・ぃ」

と、タカラの口元がかすかに動いた。
ほぼ同時に聴覚に全神経を集中させていく。
対象の喉から湧き出る空気の振動をかき集める。

『こんなやつに、ころされたくない』

虚ろな目をしつつ、タカラは確かにそう言った。




「・・・ッハ」

最初に洩れたのは、渇いた笑いだった。
一瞬にして興奮は冷め、心臓も落ち着きを取り戻す。
すると、急に発情していた自分が馬鹿らしくなり、額に手を宛てて更に笑う。
狂気に満ちたものではなく、一泡吹かされた時に出るような笑いだ。

「はははっ」

やがて笑う事すらも馬鹿らしく思い、大きく息を吐いて芋虫を見詰め直す。
その顔は形を歪め、もはや表情は読み取れなくなっていた。
それは何故か、答えは至極簡単で、自分がタカラの顎を握り潰そうとしているからだ。

「あーあ、また、ハズレかよ」

吐き捨て、タカラの顎を掴んでいた手に力を込める。
骨が軋むより先に、ぐしゃ、と湿った音をたててそれは弾けた。

「〜〜〜!!!」

もう言葉でもない叫びなんて、聞いてもつまらない。
また暴れるスイッチが入る前に、そのモーターサイクル顔を拳で爆ぜさせた。




「・・・クソが」

死体を蹴り飛ばし、あいた空間に腰を落とす。
虐殺で散乱した肉片は部屋を汚し、ブラウン管の光を虫食いのように遮断していた。
ふう、と溜め息をつき、血と肉に塗れた右手を眺める。

「あの糞虫・・・」

指の欠けた手が、心の中の何かを駆り立てる。
宛もないのに、やるだけ無駄かもしれないのに、また身体が勝手に動く。
これで何度目の『我慢ならない』なのだろうか。

ギコは立ち上がり、血を拭って玄関に足を運ぶ。
そして今、失敗した虐殺の余韻を持って『メイを捜しに』出掛けた。






物語は止まらない。
歯車は噛み合わないと回らない。
ひかれあうのは必然的なものであり、それは運命なのかもしれない。

ギコの願い、念いは、もうすぐ叶おうとしていた。

394:2007/09/09(日) 15:55:48 ID:???


『今月○日午前○時頃、××商店街で中学生の少年一人が、何者かに殺害される事件がありました。
遺体は、額に鋭利な刃物で刺された痕があり、右腕が現場から消失していました。
警察は目撃者からの証言などを頼りに、捜査をすすめていく方針・・・』

同じ時間に違う場所で、同じ報道を見ていたAAが居た。

「・・・またか」

呟くように嘆き、眉を寄せて溜め息をつく男。
本人は自覚していないが、事件の犯人を最初に追った者であり、名前はウララーという。
ウララーは治安の悪いこの街で擬似警官を勤め、銃を握る事が許されている。

今回の件に関しては、やり方も含め被害が甚大なので、本部の方のみで捜査をしていた。
つまり、引き金を引くだけの警官、ウララーはこの事件に介入できないのだ。
しかし、今のウララーの興味と怒りは、そちらに向けたものではなかった。
ブラウン管の光が、その険しい表情を嫌らしく照らす。



フーに出会い、一ヶ月が経った。
その間、ウララーはこれ以上被害者を出さないようにと、化け物を追う事を決意。
しかし、この一ヶ月もの間、情報は全く手に入らなかった。

『片腕が黒い少年』の話は、ノイローゼになりそうな程あちこちで聞いた。
が、ウララーが追い求めている『化け物』の話は全く耳にしない。
まるで街全体が、化け物の事をまるまる隠蔽しているのかと疑心暗鬼になった程だ。

当の本人達なら知っているその理由も、至る所から蚊帳の外のウララーには難解な謎である。
真逆、夢でも見たんじゃないかと頬をつねっても、肩には傷、家には保護した被害者がいる。
まるで雲を掴むような捜索に、ウララーは頭を抱えていた。

と、後方から不意に自室の扉が開く音がした。
振り向くと、そこには扉にもたれ掛かったフーがいた。

「おはよ・・・」

まだ眠気が身体に残っているようで、声に力が入っていない。

「お早う」

そう言って、ウララーは座っているソファーを二回叩く。
フーはそれに反応すると、覚束ない足取りだが、確実にそこに向かう。
ソファーの前に来た所で後ろを向き、ウララーが手を握りそのまま倒れ込むように座った。

「まだ寝足りないんじゃないのか? 無理して起きなくてもいいんだぞ」

赤ん坊のように首がすわってないフーを見て、心配し声を掛けてみる。

「・・・ん」

と、生返事の直後、フーはウララーの肩に頭を置き、そのまま寝息をたてて寝てしまった。
可愛い奴だなと思いつつ、そのフサフサした肩に腕をまわす。



フーの眼は治らない、と医師に告げられた。
文字通り『目が潰れている』状態だったので、摘出だけしておいたとのこと。
病気や老衰以外での死が多いこの街で、しかも浮浪者を診てくれたのは本当に感謝している。
だが、本人に取ってそれは喜ばしい事だったのだろうか。
光の無い世界で生かされ、生き地獄を味わうことになってしまうというのに。

そんな悩みは、本人と会話を交える事で解消された。
最初は良くない意味で大人しかった性格も、恐らく本来のフーと思われる明るさが段々と前に出てきていった。

『光が無くなっても、まだ音と匂いが自分にはある』

助けた事への感謝の言葉の前に、フーはそう言った。
街から迫害されている者達なのに、力強く生きることを想い、願う。
ウララーは力無き被虐者に感動し、力を持った自分達を恥じた。
そして、慈悲の心は虐殺の世界では決して無駄ではない事を、再度確認した。

395:2007/09/09(日) 15:56:17 ID:???


茶の毛並みを覆う白い包帯を見て、ウララーはそんなことを思い出していた。

(音と匂いが自分にはある。・・・か)

実際、フーはその力強さを、言葉はおろか身体でも見せてくれた。
訓練せずとも一人で立ち、障害物を探らずとも避けて歩くことができたのだ。
それはフーが盲目ということを忘れさせ、大道芸のように魅入ってしまう程のもの。
『眼で見なくても、気で場所がわかる』といったマンガのような出来事だった。

流石に、指を使う細かい事や、箸やスプーンを使った食事はできなかった。
というより、箸やスプーンを扱った事がないと言った方が正しいか。

「・・・っと」

気がつけば、ニュースは既に別の内容に変わっていた。
政治やら外国との問題やら、この街にはあまり関係ないものだ。
どうせなら警察の怠慢っぷりを報道し、それに対する意識改革を狙ってほしい。
国のお偉方の粗を探るよりも、ずっと簡単だと思うのに。

「虐殺厨よりも、警察の方がまともじゃねーのにな」

ウララーは、テレビの中の政治家に向かって愚痴を零した。

「・・・んあ」

番組が終わり、時計の短針が新しい数字を指した所で、フーが起きた。
無い筈の目を、包帯の奥にある瞼をこすり、大きな欠伸を一つ。
一連の動作が終わってから、声を掛ける。

「目は覚めたか?」

「うん」

先程より返事はよくなり、勢いよく寝癖を掻いている。

「もう少ししたら、飯にするか」



『片腕が黒い少年』の捜査ができなくても、虐殺厨を裁く仕事に休みはない。
フーと共に朝食を摂った後、ハンドガンを片手に外へと出掛ける。

「さ、いくぞ」

「おー!」

勢いよく飛び出したフーを眺めながら、玄関を逆手で静かに閉めた。
気が重くなる仕事をやっていく中、フーの元気さには助けられる。

フーと一緒に外出するようになったのは、ほんの数日前のこと。
本来なら、盲目な者にとっては付き添いがいても外は危険だらけだ。
なるべく家の中に居させてやりたいのだが、本人が希望してきたことだ。
最初は心配だったが、手を繋いでのんびり歩くのが大半だし、万が一には銃がある。
今ではもう、ウララーが率先して誘うようにまでなっていた。

しかし、擬似警官と浮浪者という立ち位置の違いから、ちょっとした悩みが一つできていた。

「・・・なあ」

「何?」

「今日も、虐殺するのか?」

「あー、できれば・・・したい。かな」

先程の明るさより一転、沈黙が二人を包む。
会話は途絶え、歩数が増える度に気まずい空気が濃くなっていった。

だいぶ間をあけてから、ウララーは口を開く。

「いや、俺は割り切れるから別に構わないんだが」

「でも、遊びで殺すのはウララーは嫌なんでしょ?」

「・・・ああ。どっちが『悪』か、わからなくなるしな」

「警官だもんね。ウララーは」



被虐者を殺し、喰らって生きてきたフー。
反対に、被虐者を殺さず、裁いてきたウララー。
その価値観の違いから、このような衝突があった。

街のルールなのだから、ウララーの主張は間違いでもある。
しかし、フーは居候の身であり、あまり我が儘を言える立場でもない。
一緒にいる事が楽しくなってきた所で、別の場所で不自由さが新しく生まれてしまったのだ。

396:2007/09/09(日) 15:57:25 ID:???


「うーん・・・」

何かいい案はないかと、顎を摘んで考えるフー。
本気で問題を解決したいという気持ちが、ひしひしと伝わってくる。
その気持ちに応えようと、自分も自分なりに考えてみた。
そして、視界にちびギコが飛び込んできた所で、閃いた。

「・・・こういうのは、どうだ」

「え?」

「『悪さをしている被虐者を俺が捕まえ、お前が虐殺する』」

「それは・・・理に適ってるかもしれないけど、都合よくそんなのいるかなぁ」

「目の前に居たから言ったまでだ」

ここで待ってろ、とフーに告げ、握っていた手を街路樹に触れさせる。
そして、足早にちびギコの所に向かった。




彼等から見て天敵である自分達は、昼夜問わず至る所にいる。
だから、普通は身を守る為に物陰に隠れて生きていた。
しかしながら今、目の前にはちびギコが我が物顔でゴミ漁りをしている。
独り言を交ぜてのそれは、どんなに思いやりのあるAAでも『馬鹿』と称してしまいそうな程だ。

「何やってる」

ウララーは近付き、重く刺のある声で質問をする。
するとちびギコは渋々と振り向き、見下した表情でこう返してきた。

「何って、ゴハンを探してるデチ」

「だからって、道路にまで散らかさなくてもいいだろうが」

「そんなの知るかデチ。第一、このチビタンにゴハンをくれないヤツが悪いんデ
チ」

「・・・」

さっそく極論、いや、屁理屈で返してきた。
被虐側が怯えて生きるこの街でこんな切り返しをするなんて、珍しいにも程がある。
恐らく、隣の街か山から降りてきた、比較的運の良い生き方をしてきたのだろう。

「それに、見てたんならなんか恵んでくれるのがお前らの・・・ヒャッ!?」

自分本位な演説が始まる前に、ホルスターから音をたてて銃を抜いてみた。
ちびギコは一瞬青ざめ、驚きの声をあげるもすぐに立ち直る。

「な、なんデチか? そんなオモチャでチビタンを脅すつもりデチか?」

「ハズレだ」

ちびギコが構えるより先に、後方にまわり込む。
そして、首筋より少し上に狙いを定め、グリップの底部で軽く殴る。

「ヒギャッ!?・・・」

と、出来の悪いドラマのようにちびギコはあっさりと気を失い、その場に倒れる。
念のため頬を二、三度叩き、意識が途切れたのを確認した。
ふと、辺りに散乱したゴミを見る。

(・・・やっぱり、片付けないと駄目だろうな)

ウララーは溜め息を零し、フーを呼んでちびギコを持たせた。
そして、ゴミ捨て場にあった箒とちり取りを使ってゴミを集める。
通り掛かったAAに『偉いねぇ』と言われたが、気にしないようにした。






「あぁー、なんだかワクワクしてきた!」

集め終えた時には、フーの鼻息はかなり荒くなっていた。
執拗に撫でて部位を確認し、手の中でぐるぐると回したり、逆さ吊りにもしている。
そこまでされても、まだ伸びたままのちびギコには驚かされる。

(俺、そんなに強く殴ったかなあ・・・)

そんなことを考えていたら、フーは我慢できない、といった表情でこちらに顔を
向けていた。
鼻の穴がぷくりと膨らみ、既に興奮しているのがはっきりとわかり、つい苦笑し
てしまった。

「ここじゃ目立つから、近場の公園でな」

「うん!」

やはり、裁くだの虐殺だのと悩むより、フーの笑顔を眺めるのが一番良い。
元気よく返事をしたフーを見て、ウララーはそう思った。

397:2007/09/09(日) 15:58:00 ID:???


それほど時間をかけずに、公園に来た。
虫の鳴く声しか聞こえないところから、他のAAは居ないようだ。

「もしもの事があっても、俺がいるからな」

「ありがと!」


フーはもう、ちびギコを虐殺することしか頭にない。
ウララーには、威勢の良い生返事だけをしておいた。
先ずは覚醒させる為と、開始の合図としてちびギコの耳をもいだ。

「ヒギャアアアァァァ!!?」

皮と肉が裂ける音に重なり、ちびギコの悲鳴が辺りに響く。
手の中でちぎった耳を握ってみると、少しのぬめり気と弾力があった。
久しぶりの感触と音、そして被虐者特有の獣臭さはやはり心地よい。

「チ、チビタンの耳がぁ!? お、お前何するんデチ!!」

意識が戻ったと思えば、もう喚き散らし始めた。
フーはその声と、支えている左腕に掛かる動きから、ちびギコのかたちを妄想する。
が、それなりに暴れてくるので、しっかりとイメージできない。

「おっと・・・もう! 動くなってば!」

イメージするのが面倒になり、そのまま地面に押し付け、同時にしゃがむ。
持っていた耳は投げ捨て、手探りでちびギコの暴れている部分を探す。
と、手に何かがぶつかったので、反射的にそれを掴んでもぎ取ってみる。

「ギャアアアァァァぁぁ!! ぁ、足がああぁぁぁ!!」

どこをもいだのかは、本人が丁寧に教えてくれた。
掴んだ時の手応えからして、足だと予想はしていたが。
しかし、それでもなお暴れ続けるちびギコ。
先程の耳もぎで得た恍惚感も失せ、欝陶しく思える。

「あんまり煩いと、もう片方の足もなくなるよ?」

苛立ちを乗せ、面倒ながら釘を刺してみる。
すると、ちびギコの身体がびくんと跳ねた手応えの後、小刻みに震え出した。

「ひ、酷いデチ・・・ぇぐ・・・」

涙声にもなり、やっと自分の立場を理解したようだ。
恐らく、その小ぶりな顔は涙でくしゃくしゃになっている。
見る事はできなくても、今までの虐殺の記憶と重ねてイメージすれば十分だ。

「道端で悪さをしていたヤツに言われなくないなあ」

「だっ、だって・・・お前らがチビタンに、ゴハン、くれない・・・」

「でも、ゴミ捨て場で探すのは間違いだよ?」

「じゃ・・・じゃあ、どこにあるんデチ・・・」

怯えの中に、自分の言葉に対する興味の色が見えた。
取り敢えず笑顔を見せ、心では『してやったり』と笑い、こう答えた。

「目の前にあるじゃん。ほら」

先程もいだ足を、ちびギコの眼前に持っていく。

「・・・ぉ、お前は鬼、デチか? それ、それとも、悪、悪魔デチか?」

と、ちびギコの涙声に拍車が掛かり、手に伝わる震えが酷くなる。
どうやらかなりの精神的ダメージを喰らったようで、ほんのちょっぴり罪悪感を覚えた。
だが、事実は事実である。

「大真面目だよ。俺もコレ食べて生きてきたもん」

「ふ、ふざけるなデチ・・・この、虐殺厨がぁ・・・」

お決まりの『虐殺厨』発言にも、力が全く入っていない。
まだ始めて少ししか経っておらず、しかも片耳と片足をもいだだけ。
あまりにも脆過ぎる精神に、呆れ返ってしまいそうだ。
だが、死への恐怖をしっかりと把握しているようなので、見方を変えればまだ楽しめる。

(痛め付けるより、も少しイジめてみようかな・・・)

ウララーの前でねちっこい虐殺をするのは、少し気が引けるものだ。
しかし、久しぶりに行う事ができたのだから、心から楽しまなくては意味がない


398:2007/09/09(日) 15:59:03 ID:???

「まあまあ、騙されたと思って食べてみなよ」

ちびギコを押さえ付けていた手を、小さな顎の方にまわす。
窒息しない程度に緩く掴むと、その華奢な手で力無く抵抗しているのがわかった。

「い、いやデチ・・・ヤめ、やめて・・・許して、ぇ」

ぎゃあぎゃあ喚くでもなく、虐殺に身を委ねるわけでもない。
ちょうどその間の反応は期待通りでもあり、面白くて仕方がない。

「うりゃ」

半ば強引に、もぎ取った足を顔に押し付ける。
べちゃ、と湿ったものを当てた音はしたが、手応えからして口に入ってはいない。
頬にあててしまったか、本人が口を固く閉じているかの二択だ。

「む、むぐー!! むぅぅぅ!!」

ちびギコの抵抗が酷くなる。
片方しかない足はばたばたと上下に動き、爪先が自分の身体を掠める。
これも予想していた反応だし、欝陶しさなんてものはない。
寧ろ、本気で嫌がっているという事自体が、滑稽で堪らないのだ。

(・・・できれば、そのカオも見たかったかな)

細かな表情は、流石に妄想することはできない。
脂汗をだらだらと垂らしながら、力強く目をつむっているのだろうか。
はたまた、顔面蒼白で白目を剥きかけながらの抵抗だろうか。




不意に、あの時の情景が脳裏に浮かぶ。
散乱したノーネの肉体。視界の中で揺れ動く化け物。
自分の眼が潰される直前の、光を奪った化け物の鋭い爪。

「・・・っ!」

『視覚』の事を気にしたから、あの悪夢が甦ったのかもしれないが、そんなことはどうでもいい。
掘り起こしてしまったトラウマを消そうと、顔を左右に強く振る。
しかし、絶対に癒えることのない心の傷は、その真っ暗な世界にしつこくこびりつき始めた。

なるだけ早くに気を紛らわす為、フーは持っていた足を投げ捨てる。
そして、ちびギコの二の腕をひっ掴み、それぞれの方向におもいっきり引っ張った。

「ぎゃあっっあああアアアぁぁぁぁァァ!!!」

筋のちぎれる音と被虐者の絶叫が、悪夢を洗い流していく。
両腕を奪われたちびギコは、水から上げられた魚を彷彿とさせる程暴れ狂う。
時折生暖かいものが腕に触れるが、それが何なのかは考えるまでもない。

「・・・ふう、っ」

心は落ち着きを取り戻し、肉の感触と血の生臭さを再確認する。

「どうした?」

と、気にかけてくれたのか、すぐ後ろでウララーの声がした。
ちびギコの絶叫をBGMにしていても、その独特の雰囲気でしっかりと聞こえた。

「えっ!? い、いや、なんでもないよ。ただコーフンし過ぎただけだから」

振り向き、咄嗟にごまかしてみたものの、動揺が完全に露になっている。

「そうか、それならならいいんだが・・・無理はするなよ」

「う、うん」

ウララーの冷徹さからくる鈍さに助けられた。
ざ、と砂を蹴る音がして、ウララーが離れたのを確認すると、虐殺を再開する。

「あっ、ああぁ!! あぎゃあァァ!!」

まだちびギコはのたうちまわっているようで、それらしき気配と声がする。
持ちっぱなしだった腕は、足と同じように近くに投げ捨てておく。
どうせ芋虫状態だし、逃げられる心配もないので、試しに放置プレイを行ってみた。




「ああ、うあぁ〜・・・痛い、痛いデチィィ」

絶叫も段々おさまり、痛みを言葉で訴えるようになってきた。
大分疲弊もしているようだし、遊べても後少しだけだろう。
試しにその芋虫の身体を触ってみると、ぬめりとざらつきが同時に掌に伝わってきた。

399:2007/09/09(日) 16:00:06 ID:???

「うへ・・・きったね」

反射的に手を引き、叩いてそれを落とす。
どうやら、両腕の付け根からの出血はかなりのもののようだ。
振り撒いた血で身体を濡らし、更に砂を泥にして付着させてしまっている。
それだけの量の血が失われてるとなると、失血死はすぐそこだ。

(・・・まあ、ある程度楽しんだし、もういいかな)

フーはお別れの意を込めて、瀕死のちびギコに話し掛けた。

「ねぇ、この街には『化け物』と『殺人鬼』が居るって、知ってた?」

「痛ぁ、ぁぅ・・・そんなの・・・知らない・・・」

言葉を返すだけの余裕は見えた。
笑みをうかべ、更に話す。

「俺はね、化け物の方に襲われて、こうなった」

顔に巻いた包帯を指差し、囁く。

「ぇ・・・? ぁ、メクラ・・・」

「ナカは空っぽだよ。だから、もう何も見えない」

「・・・へ、っ・・・ざまあ、デチ」

「そうだね。お前はオレより運がいい」

「・・・」

「化け物に襲わなくて、普通に虐殺されたから・・・」

「・・・」

暫く経っても、返事はなかった。
身体に触れると、既に冷えかかっている。
掌をずらし地面に持っていくと、生暖かい水たまりがあった。
ちびギコの頬らしき個所を撫でながら、フーは呟く。

「生まれ変わるなら、次は普通のAAになれよ」

被虐者でもなく、殺人鬼でもなく、浮浪者でもなく、化け物でもない。
血と肉を見ることのない世界に生まれ落ち、平和に生きてほしい。



(って、何言ってんだオレは)

我にも無く、被虐者を哀れんでしまった。
どんな奴に出会っても、必ず見下し、暴言を吐いてくる種族。
そんな奴らに心を許せば、不快感だけがその場に残るというのに。

化け物に襲われてから、価値観でも変わったのだろうか。
それとも、ウララーの正義感や慈しむ心に感化されたのか。

「・・・ま、いっか」

今回は違う意味でスッキリはしたし、新しい発見があったということにしておく。
天を仰いで、肺の中の空気を全て吐き出し、余韻に浸る。
どの位時間が経ったかはわからないが、恐らくそんなに長くはない。
十分に堪能した所で、タイミングよくウララーが声を掛けてきた。

「終わったか?」

「うん。ごめんね、我が儘聞いてくれて」

「それは別に構わない。フーが満足したのなら、それでいい」

「・・・へへ」

その言葉を聞いて少し恥ずかしく、くすぐったい気持ちになった。
でも、自分ばかりというのは、やはり良いものではない。
自由の利きづらい身体だけど、いつか恩返し位はしなければ。

「さて、後片付けをしないとな」

「え?」

「え、ってお前・・・こんな公園の真ん中に死体放置してたら、子供が泣くぞ?」

「ああ、成るほど。いっつもやりっぱなしだったから、つい」

「・・・そりゃあ、普通は業者がやるけどさ」

ずる、とちびギコの身体があった所で音がした。
多分、ウララーが処理の為に持ち上げた音だろう。

「水飲み場に案内するから、お前は手を洗ってこい」

「そんなに汚れてる?」

「ああ。ケチャップで悪戯したみてーに酷い」

「ケチャップって、何?」

「・・・」

400:2007/09/09(日) 16:01:23 ID:???


そんな二人のやり取りを、敷居の外から見ていたAAがいた。
彼、ギコにとって忌まわしい思い出のあるこの公園。
本人にとってはこれ程とない屈辱を受け、あまつさえ指までも奪われた場所。
景色として視界に入る度、吐き気はおろか復讐心まで燃え上がる。

しかし、今回はその公園に興味を示してしまう。
正確に言えば、公園で虐殺を行っていた二人のAAにだ。
顔に包帯を巻いた、失明していると思われるフサギコ。
それを見守る、腿に拳銃を装備している黒いモララー。

二人を使えば、自分が今追っている者に近付く事ができるかもしれない。
それが何故なのかは、本人にもわからなかった。
ただ単にその二人に惹かれ、直感で思い付いただけだった。

「・・・クク」

頭の中で、シナリオが一気に描かれていく。
その先にあるのは、メイを殺し、目の前の二人を殺した自分の姿。
『力』を使い、『全て』を支配した血塗れのギコがいた。






音もなく、黒いモララーに近付く。
獲物を狙う虎のように静かに、それでいて燃え盛る炎のように素早く。
地面の上を滑るように歩けば、目標の姿はもう目前だ。

「・・・ん?」

隠す気のなかった殺気のせいで気付かれたが、もう腕の届く範囲。
銃を構えてくる前に、顎に一発軽く当てにいく。

「っ!」

殆ど死角からの攻撃を、男はあっさりと受け止めた。
素早い反応に防御の正確さといい、何より自分の殺気に負けない凄み。
腕力も決して弱くなく、タカラのそれよりも強い。

(なかなか骨のある奴だな。いや、そうでないとな)

虐殺とは違う楽しさが芽吹き、笑みが零れた。
だが、当初の目的を忘れては意味が無いので、早く事を進めるようにした。

「・・・何しやがる」

「はじめまして。俺はギコっつーもんだ」

みし、と交わった腕が軋む。
澄んでいるようで、ドロドロに濁った目がこちらを睨んでいる。
嗚呼、こいつを利用する為に生け捕るのが勿体ない。
その力強い真っ黒な眼を、苦痛と慟哭で歪めてみたい。
嬲り殺してみたいが、そこは我慢しなければ。

「悪ィな、手荒な事しかできねーんだ。俺」

「目的は何だ」

「アンタ、擬似警官だろ?」

「・・・」

男は挨拶を交わした時の表情のまま、黙ってしまった。
イエスかノーか本人が言わなくても、腿にある銃で既に把握している。
沈黙を無視し、更に続けた。

「『片腕が黒い少年』っているだろ? ソイツ殺したいんだよ」

その言葉の直後、男の表情が険しくなる。

「・・・協力しろと言いたいのか? 脅迫混じりにか?」

軽蔑の念を込めた一言。
その手前には多少の怒りが見えたが、そんなものは関係ない。
先程の興味と今の怒りが重なり、『虐殺したい』とより強く念ってしまう。

落ち着け、と自分にそう言い聞かせたものの、軽蔑からくる怒りはおさまらない。
乱暴に腕を振りほどき、男の胸倉をひっ掴んだ。

「ッ!」

「見ろよ」

右手を男の顔の前に突き出し、話を続ける。

「俺はアイツに最初にやられたんだ。この公園でな」

「・・・っ」

男は欠けた人差し指を見て、眉をひそめる。
胸倉を掴まれた不快感からか、それとも失くなった指への哀れみか。

「憎いんだよ・・・アイツは指どころか俺のプライドまでズタズタにしやがった」

「・・・いつ、やられたんだ」

「明るみになる前だ。俺が最初の被害者なんだよ」

401:2007/09/09(日) 16:01:52 ID:???

自分の必死さ。そこに演技はない。
溜まりに溜まったフラストレーションを、腕でなく口で発散する。
激昂せず、ひたすら低く冷たく、重く這うように言い放つ。
だが、そこまでしても男は動かなかった。

「・・・悪いが、俺は今その『少年』は追ってない」

予想だにしない言葉が、男の口から放たれた。
虚をつかれ、今度は様々な憤怒が込み上げてくる。

「ふざけンなよ。銃持てる職のくせに何言ってやがる」

「持ててもホンモノとは違うんだよ。それに・・・」

「・・・それに何だ」

「『少年』よりも凶悪な『化け物』がこの街にいる。俺はそっちを追ってる」

「・・・」

嘘を言っているようには見えない。
だが、化け物なんて言葉はここ最近聞いたことがなかった。
謎のせいで怒りも冷めたし、男の話に耳を傾ける事にする。

「お前もどうせ信じないだろうな」

「何故、少年でなくそいつを追う?」

「顔に包帯巻いたフサギコがいる。フーっていうんだが、アイツの眼はその化け物に刔られたんだ」

「・・・」

「仲間もやられたらしく、現場は悲惨だったよ。新聞に載ってもおかしくない」

次第に男から覇気が消え、自嘲混じりに話をしていく。
曰く、しっかりと化け物を見たというのに、その日以来全く情報ば入らないのだとか。
更に詳しく聞けば、どこかで耳にした都市伝説の化け物と特徴が類似していた。

男の言うことに嘘はない。
だが、銃を握れる立場であるというのに、裏側の事件しか見ていない。
それが、納得いかなかった。

「お前、化け物だけしか見ないつもりか?」

「・・・?」

「フーとかいう奴と、同じような奴をつくりたくないから追うんだよな」

「ああ・・・」

「『片腕が黒い少年』も、その化け物と同じだろうが」

「・・・どういうことだ」

男が食いつく。
先程と一緒の、冷たい怒りを放ちながら。

「被害者の身になれよ。目の前に現れれば、どっちも同じだ」

「・・・」

「見えない所にいる化け物より、目の前の殺人鬼を追えよ」




その時だった。
胸倉を掴んでいた腕が、自分の意思に反して男から離れる。

「・・・お前の言うことも、尤もだ」

「!?」

違う、離れたのではなく、離されていた。
その手首には男の黒い手があり、凄まじい力で引きはがしていたのだ。

「だがな、俺は最初から化け物しか追う気はない」

男は豹変していた。
眼には更に淀みが加わり、目線に触れなくとも凄んでしまう。
力さえも別人のように、しかも自分をも凌駕している。

「理由はお前と一緒だ。フーとその仲間の為の復讐だよ」

譫言のように呟いているその様は、吐き気を催す程悍ましい。

(・・・なんて奴だ)

触れてはいけないモノに触れてしまった。
ギコはそう思い、心の中は恐怖で染まろうとしていた。

この男は、自分と似ているどころか、全く同じだ。
ただ、己を抑制する感情の方が遥かに大きく、厚い殻となっていただけ。
それを突き、割ってしまったということは、逆鱗に触れた事に等しい。
気が付いた時には、既に立場は逆転していた。

402:2007/09/09(日) 16:02:38 ID:???
身の危険を感じ、男の腕を振りほどいて一歩下がる。
が、念いの為、ここで引き下がるわけにもいかない。

「・・・っ」

こんな感覚は初めてだ。
いつもヒトの上に立っていた自分が、赤の他人に怖じ気づくなんて。
だが、今は屈辱感よりも恐怖の方がそれを勝り、身体が上手く動かない。

「・・・いや、寧ろお前の方が熱意があるな」

「?」

男が唐突に喋り始める。

「ホンモノの警察に頼めと言いたかったが・・・あいつらは無能だからな」

「・・・」

「条件だ。何か『策』があって俺に頼んだのなら、少年の事、一緒に追ってやるよ」






先程から一転、チャンスが舞い降りた。
男から覇気も失せ、心も落ち着きを取り戻した。
崩れかかったシナリオも再構築し、また新たに描かれていく。

「ウララー? そこに誰かいるの?」

と、トイレの方から子供の声がした。
見てみれば、目元に包帯をしたフサギコが両手を濡らしていた。

「ああ、さっき知り合った・・・そういえば、申し遅れたな」

俺はウララー、と男は向き直り、軽く頭を下げた。
フサギコもこちらに歩み寄り、フーと名乗る。

「・・・?」

ちょっと待て。
この子供は、フーは目が見えない筈だ。
それなのにこちらに迷う事なく歩き、しかも杖もなしにやってのけた。

「フー・・・って言ったな」

「ん?」

それほど大きくない声にも、しっかりと反応した。

「目、見えないのによく歩けるな」

「うん。耳と鼻がいつもより敏感になったからね」

「細かい物の、位置もわかるのか?」

「指を使う事以外なら、障害物があってもいくらか大丈夫」

「・・・」

また、あの時の感覚が甦る。
初めて二人を見た時の、妙な確信だ。
描いたシナリオに上書きが施され、より形を成していく。

「話、続けようか。『策』があって、俺に頼んだんだよな?」

「・・・ああ」

ここでヘマをすれば、メイを追う事どころか、手痛いしっぺ返しを喰らう事になる。
この街に自分以外にもこんな強い奴が居たのかと確認させられたし、勉強になった。

だが、いずれはお前達も殺す。
それまでは、大人しくしておいてやる。

「俺に、考えがあるんだ」






この三人が噛み合った事で、事態は更に加速する。
誰が悪で、誰が正義なのかは誰にもわからない。
『正義は勝つ』なんて言葉は、この街にはない。

―――全ては、全員が出会ってから。



続く

404淡麗:2007/09/24(月) 09:53:06 ID:???
【ペット大好き♪日記】
その1

ねぇねぇ、みんなはペットを飼っている?
私は飼っているんだよ!

真っ白くて、ふわふわで、ちっちゃなベビちゃん!

え?なんでベビを飼っているか?
そうだよね、私の周りのみんなはベビちゃんを
「キモゴミのガキ」とか「糞虫ぃ」とかひどいこというけど、ベビちゃんって可愛いんだよ?!
確かに、アフォしぃはムカつくよ?
でもね、ベビちゃんの頃からしっかり教育すれば、良しぃになるってテレビでやってたもん!
だから、私がしっかり育ててあげれば、パパもママもお兄ちゃんもビックリするよ♪
それで、みんなで仲良く暮らすのが夢なんだ♪


私がベビちゃんを拾ってきたのには訳があるの。
実はこのベビちゃん、ひっどい母親に育てられていたんだ。
うちの近くにある空き地にいたしぃの親子だったんだけど、この母親はいわゆる虐待親ってヤツね。
自分のベビにはご飯もあげないで放っておくし、あまつさえ他のギコ種と交尾ばっかり!
こんな最低な母親の元にいるなんて、不幸だよね?!

確か前にもベビちゃんが何匹かいたみたいだったけど、みんないなくなっちゃっていたし。
きっと虐待の果てに死んじゃったんだよ!
そんなかわいそうな目にあわせるわけにはいかないから、私が昨日助けに行ったんだ♪

これからベビちゃんの幸せな人生が始まるんだから、私がしっかりと育ててあげなくちゃね!

405淡麗:2007/09/24(月) 09:54:11 ID:???

でも困ったな…
パパもママも、きっとベビちゃんを飼うのは大反対だと思うんだ。
ママなんか
「なんで糞虫ぃがいるのよぉぉぉぉぉ!!!」
ってブチ切れて、大虐殺しちゃう。

明日から学校だから、昼の間に見つかったら大変だし…
ベビちゃんは隠れることが出来るかもしれないけど、トイレの臭いとかで見つかる可能性も高いわ。
うちのお兄ちゃんは気が利かないくせににおいに敏感だし。
ひょっとしたら、私がいなくなって寂しくて泣いちゃうかもしれない。
その泣き声で見つかってしまうかもしれないし…
しっかりしつけが出来れば、私が帰ってくるまで隠れていたりする事も出来るんだろうけど、
それが出来れば苦労しないし…

あ、そうか!
なにも最初からベビちゃんが完璧に出来るわけがないんだもん!
その間だけ、しっかり私が隠しておいてあげればいいんだ!

きゃはー!いいこと考えた〜♪

406淡麗:2007/09/24(月) 09:55:52 ID:???
③【翌日】

「ただいま〜」
「あら、おかえり。今日はずいぶん早いじゃない?」

お昼を少し過ぎたくらいで帰宅した俺を母親が迎えた。

「あぁ、今日は講義が午前で終わりなんだよ。」
「まぁ、大学生はいいわねぇ〜」
「去年まで集中して講義を取ったからね。その反動で今楽できているんだよ」

やれやれ、去年まではずいぶん帰りが遅いとか言ってたのに、今じゃコレかよ。

内心苦笑しながら2階の自室へ向かう。
突き当りが俺の部屋。向かいは妹の部屋だ。
今日は平日だから、小学生の妹はまだ学校だろう。

昼食は学食で済ませたから、夕食までなんかしていようか。
課題のレポートは7割方出来上がっているから、それの推敲でもしておくか?

そう思いながらカバンを机に置こうとしたとき、いつもの場所にあるモナテンドォDSがないのに気が付く。
…また妹の仕業か。
確か去年
「私は絶対PSPが欲しいの!」とか言っていたくせに。

まぁ、夕方にでも取りにいけばいいけど、ないと分かると暇つぶしがしたくなる。
よし、さっそく妹の部屋へDSを奪還しに行こう。


隣の妹の部屋はいつ見ても「女の子の部屋」だ。
最近は勝手に入ると怒り出す、お年頃ってヤツか。
そのくせ俺の部屋にはずかずかと入ってくるのだがな…

それと妹の部屋にはベランダに続く窓のほか、大きな出窓がある。
大きな窓が二つもあるから風通しがいいことこの上ない。
それに比べて俺の部屋は…
くそ、やはりこれは兄妹間での差別か?!

まぁ、それはさておきDSはっと…

「ん??」

そうやって部屋を物色し始めた俺の鼻腔を、妙な匂いがくすぐる。
こりゃ「妙な匂い」、というより…「臭い」だな。
俺は人より鼻が利くらしく、においに敏感だ。
ひょっとしたら普通ならば気が付かない程度の臭いなのかもしれない。

くんくん、と犬よろしく鼻に集中する。
やはりこの臭い、この部屋から出ているようだ。
こんなこぎれいな部屋には似つかわしくない臭い…

臭いの元をたどると、どうやら机の下に置かれた箱からのようだ。
木製の小箱だが、なぜかふたの上には消臭剤がくくられている。

「ム゙ゥ…」

中から妙な声もする??

俺は慎重に箱を取り出し、括られている消臭剤をはずす。
フタには複数の穴が開いており、そこからむっとする臭気が上がる。
臭いの元はここから漏れてきているようだ。

…こりゃ中に何か生き物でも入れているな?
妹は動物好きだし、以前からペットが欲しいとか言っていたが…
一体何を拾ってきて隠しているんだか。

中身を確かめるべく、フタをあける

「んげぇ?!」

407淡麗:2007/09/24(月) 09:57:02 ID:???

中身を見ておもわず箱を落としそうになった。
強烈な悪臭が立ち上がったからだけではない。
なんともすさまじいものが中にいたからだ!
中に入れられている生き物は手足を結ばれ、口には猿轡のように布を咥えさせられた状態だ。
しかも箱の中は、こいつが脱糞したのだろう、糞尿が溢れている。
口にはめられている布は、糞尿がしみこみ汚れきっている。
己の糞尿を口に咥えさせられている、ともいえる状態だ。
呼吸のたびに、糞尿に半分埋没した鼻腔から、ブクブク〜と気泡もあげている。

一体コイツはなんだ?!
臭気に耐えながら、よくよく姿を確認すると…

ベビしぃのようだ。

ベビは突然差し込む光に眩しそうにするが、俺の姿を確認すると
「タシュケテ…」とばかりの目で俺を見つめている。
可愛そうに(藁)、ボロボロと涙もこぼし始めたではないか!

己の糞尿にまみれ、必死にもがいている姿は、まさに

糞 虫 ぃ だ な (藁)


この糞虫ぃの状態から推測するに、妹はこのベビをこっそり飼うつもりらしい。
しかし隠しておくには難しいと考え、この箱を準備。
単に箱に入れておくだけでは、箱の中で暴れ物音でバレるだろうから動かないよう手足を拘束。
さらに鳴き声が漏れないように猿轡をかましたというところか。
空気穴を開けたけどそこから臭いがばれることも考え、消臭剤も準備したのだろう…

まぁ、小学生の割にはしっかりと準備できているけど、まさかここまでの事は考え付かなかったのだろう。
所詮は小学生、といったところか。

相変わらず「ム゙ゥー」と変なうめき声のベビを一瞥し、俺はフタを閉める。
ベビは必死にもがいて助けを請うていたが、この臭いは耐えられんよ。
そして元の場所に寸分たがわず戻す。

ふたを開けたせいで、部屋に糞虫ぃの臭気が充満してしまっているので、窓を開け換気をしてやる。
俺は気の利くお兄さんだからな。
出窓を開放し、風を入れながらふぅっと一服。
やれやれ、妹はこの先一体どうするつもりだろうか。
そのうちバレるのは明白だ。

タバコを吸い終え、ぼんやりしていると、ふと面白いことを思いついた。
小学生がベビなんぞを育てきれるのか。
家族の協力は得られるわけがない。
しかしベビは成長していく。
妹はてんてこ舞いになりながら育てようとするだろう。
だが無知な小学生が提供する環境は、ベビにとって地獄になるか天国になるかは目に見えている。
妹にとっては「一生懸命のお世話」だろうが、ベビにとっては「虐殺」そのものだ。
ベビが持つか、妹が根を上げて放棄するか…

俺は何も手出しはしない。
ただ黙って様子を観察するだけ。
今日はこんな事が起こった、明日はどうなるのか、こんな事を始めるようだがどうなるのか…

これってテレビドラマ以上に展開が気になり、目が離せないことだろう。
俺は一視聴者にしか過ぎないのだ。
もう第一話はスタートしている。
この後妹が帰宅して、糞まみれのベビを発見してどうするのか。
まさか家の風呂場で洗ったりは出来ないだろうし、糞まみれのベビの体を優しく手で洗うことも出来ないだろう。
かといって放置するわけにもいかない。

妹はどうこの問題をクリアするのか。
そしてベビに降りかかる厄災は一体……


これは面白い毎日になりそうだ!




…なんか大した虐殺もありませんでしたが、一応
【続く】デス。

408:2007/09/24(月) 23:36:12 ID:???
>>390より続き

天と地の差の裏話
『まとめ』






血塗れのコンクリで被われた空間。
雨水が溜まった取っ手のないバケツ。
赤錆だらけで使い物にならないロッカー。
片隅には無数の白骨化した被虐者達。

取り壊しもされないまま、十数年放置されている小さなビルがあった。
その中では、被虐者がよく連れてこられ、虐殺されている。
表では出来ないやり方を試す疚しい考えの持ち主が、ここをよく利用していた。
商店街とは違う意味での、虐殺スポット。

未だにここは使われている。
しかし、最近では利用する者がどうしてか激減していた。
その理由は、皮肉にも今、その原因となる者がそこを利用していた。




赤褐色の空間に、メイは腰をおろしていた。
その尻の下には、もぞもぞと蠢くものがあった。

「ぁ・・・っ、かひ・・・」

喉を鳴らし、必死に酸素を身体に取り込もうとする茶色の達磨。
四肢の付け根から漏れる血は鮮やかで、まだ新しい傷のよう。
彼の、ちびフサの手足は、既にメイに奪われていた。
目的は勿論虐殺であり、また、食事の為でもあった。

「・・・ん」

丁寧にちびフサの脚の皮を剥ぎ、そこから覗いたピンク色の肉にかじりつく。
水道がないため、血抜きを行わないで食べたものだから生臭さが半端じゃない。
しかし、その臭いと味には当の昔に慣れているので、特に気にならなかった。

「ふぐ、ぅ・・・も、もう許して・・・ぇ」

命の燭が消えかかったちびフサに乗っかり、それを眺めながらの食事。
悦に浸る程の快感は得られないものの、愉快といえば愉快だ。
火傷と片耳を、鬼の首をとったかのように馬鹿にしていた者が、
今ではそれ以下の達磨と化し、死に物狂いで生にしがみついている。

四肢を奪い、それの痛みに絶叫し、叫び疲れた所を狙って今こうしている。
酸欠に近い状態で肺を圧迫されてしまえば、苦しみは半端じゃない。
首を絞められながら、重しを乗っけられているのと同じだ。

「頑張って生きる事を馬鹿にしたくせに、死にたくないなんて我が儘だよ」

「そんな、醜い姿で・・・生きるのが、間違ってる、デチ・・・」

まるで全力疾走した後のように、呼吸を交ぜ途切れ途切れに話すちびフサ。
涙を目尻に沢山溜めながらの罵倒に場違いの根性を感じ、呆れてしまう。
命乞いをして、生を掴む方がよっぽどマシだというのに。
尤も、そんな達磨では一人で生きてはいけないけれど。

「そうだね。醜いよね。でも、キミみたいなダルマの方がもっと醜いと思う」

毛虫みたい。と付け加え、食事を続ける。
と、その言葉の直後、ちびフサは顔を赤くして反論してきた。

「ぉ、おお前が!! こん、こんな・・・こんな姿にしたんデチ!」

変にプライドが高いせいで、屈辱感はかなりのものらしい。
苦しみ、大粒の涙を流しながらも、暴言を吐くことだけは忘れない。
息を大きく吸っては吐き、時折咳込みながらのそれは、滑稽でしかない。

「だって、毛虫なのに手足があったら変だったから」

「そっ、そんな、程度のっ!・・・理由、で・・・っ!」

怒号を飛ばそうにも、圧迫され許容量の小さくなった肺では、満足に行えない。
必死だなあと思いつつ、骨つきチキンの食べ残しみたいにになった毛虫の脚を捨てる。
そして、まだ毛皮のついている残りの四肢に手を付けた。

409:2007/09/24(月) 23:36:44 ID:???

「・・・むう」

毛虫の中途半端な怒りを適度にあしらいながら、全ての四肢を食べ終えたメイ。
だが、いつもこの量の倍近くは食べていたので、少々物足りない。



ここ最近、細かく記せばVと出会ってから数日。
メイは、まともな狩りが出来ないでいた。
街中のAA達の警戒心がより高まり、行動を制限されていたからだ。
加虐者は勿論、アフォしぃすら仕留める事が出来ない日々。
ちびギコ達では量が足りず、だからといって一日に何回も狩りは行えない。

警戒が強くなった原因は、Vのせいでも警察の呼び掛けでもない。
真の原因はメイがやってきた事の積み重ね、『時間』だった。
残酷な事件が起こって、かなりの時間が経った今、住民は嫌が応でも怯えなければならない。
そして、その怯えを取り払おうと、事件の根元を絶つべく怒る住民もいた。

加虐者が狙えないのは『怯え』からくる『警戒心』で。
アフォしぃが狩れないのは『怒り』でメイを追う住民のせいだ。



(別の街に行こうかな・・・でもなぁ)

程よく閑散としているこの街が、ちょうどよい。
下手に人口密度が高ければ、敵が多過ぎて袋の鼠になる確率が半端じゃないし、
逆にど田舎だったりしたら、獰猛な動物や元気な高齢者が仕掛けた罠など、新しい危険が増えてしまう。

どちらの理由もこの街から抜け出そうとして、被虐者が身体をはって見せてくれたものだ。
できの悪いコントのようだったが、紛れも無い事実であり、反面教師として十分に役にたった。
選択肢が消えた事は残念だったが、自分の命とは比べるまでもない。

「ぅ・・・ぶへっ!」

毛虫の腹を一発殴り、立ち上がる。
そして、硝子のなくなった窓の方へと歩き、外を覗いた。

鉛色の空を除けば、視界の大半を被う雑木林が目に飛び込んだ。
その端に、ぽつぽつと舗装されていない黄土色の地面。
紛れも無く、ここは自分が生き延びる事を誓った公園だ。

あまり高い場所からの眺めではなかったので、妙に大きく目に映る。
できれば、戻りたくはなかった所。
AAの目を避け、なるだけ自分への意識が薄い地域を探して来た。
その逃げ道が塞がれかかった今、全く手を付けてないここに来てしまった。
あのモララーのいる、モナーのいる、ギコのいるここに。
奴らが生きていたら、血眼で自分を追って―――

「・・・?」

思考にストップを掛ける。
『生きていたら』
何故、そんな言葉が浮かんできたのだろうか。
別に死んだ瞬間を見たわけでもないというのに。
しかし、どうしてか脳裏に映るビジョンがあった。
モナーとモララーを殺し、血塗れになったギコの姿が。




『ぐぅぅぅ』

不意に、自分の腹の中の人が不満を告げる。
まだ食べ足りないのか、その声は大きかった。

毛虫の方に向き直ると、それはまだ必死に呼吸をしていた。
大袈裟に上下動する毛むくじゃらの腹部は、針でつついたら萎んでしまいそうだ。
とりあえず近付き、いろんな角度から見詰めてみる。
すると、毛虫は余裕を取り戻したのか、こう言ってきた。

「・・・フサタンの綺麗なおケケが、そんなに羨ましいデチか?」

「・・・」

こいつは本物の馬鹿なのか。
そんな言葉が頭に浮かんだが、口にはしないでおいた。

410:2007/09/24(月) 23:37:59 ID:???

「違うよ。どこ食べようか迷ってるだけ」

「・・・はっ?」

こいつは何を言っているんだ。そういった顔をする毛虫。
直後には喚きだし、手足がない代わりに首を振り回す。

「ふ、ふざけるなデチ! AAを食べるなんて、馬鹿、変態じゃないデチか!?」

「・・・」

もはや反論する事すら面倒なので、片方しかない耳を畳んで塞ぐ。
そして、少しだけ考え込んでから、行動に移った。




毛虫の胸、正中線上にナイフを宛てがう。
狙いを定め、あまり力を込めずに一気に腹へと引いた。

「ヒギャッ!!」

血がいくらか吹き出たが、あまり気にはしない。
切り口を開き、どの位の深さまで入ったのかを見定める。
指を這わせ、皮を引っ張る度に血が漏れ、同時に毛虫が悶える。

(まだまだかな)

目標の、皮の奥にあるピンク色の肉は見えない。
ナイフを握り直し、次は切り込みに沿って刃を走らせる。
ある程度繰り返せば、それはうっすらと顔を出してきた。
そこで、今度は刃を傾けて皮を削いでいく。

「うあ、ぁぁぁああ!! やめろデチィィィ!!」

痛みに耐え兼ねてというよりは、毛皮を想っての叫びに聞こえた。
この状況下でも、まだ自分の身なりを心配している毛虫には、違う意味で感動させられる。
もし自分が毛虫の立場なら、おとなしく死を待つというのに。

そんな事を考えていると、いつの間にか皮を剥ぎ終わらせていた。
小汚い毛皮の扉を開くと、お目当ての肉が血を滴らせながらこちらを待っていた。
毛虫の呼吸に合わせて動くそれに、ゆっくりと刃を入れる。

「あギゃっ!!」

喚く毛虫を見る限り、今度は気持ちより痛みが勝ったようだ。
円を描くようにナイフを動かし、乱暴に切り開く。
落とし蓋のようになった腹の肉を取り除けば、見慣れた物達がすし詰めになっていた。

「・・・さて」

悩んでいたものは、そこにあった。
極太のミミズのような、小腸と大腸。

小さい被虐者を狩った後、手足だけでは足りなかった時によく世話になった。
だが、それは近くに大量の水があった時だけの話だ。
流石に排泄物を食べる程切羽詰まってはないし、そんな特殊な性癖も持っていない。

―――悩んだ末、諦める事にした。
臭い飯より、生臭い飯の方がずっといい。

「ぁ・・・ぁぅぅ」

気が付けば、毛虫の方は段々と衰弱している。
折角開腹したのだから、何か一つくらいは食べないともったいない。
とりあえず、腸のまとまりより上にあるもの、肝臓に手を出した。

摘出し、そのくすんだ色と弾力のある手触りを堪能する。
肉という枠組みの中で、一番まともな美しさを持つ肝臓にも、当たり外れはある。
一度泥酔していたAAを殺し、それを取り出した時は泣きそうになった。
今回は良い方だったので、この喜びを伝えようと持ち主の毛虫に見せる。

「君のこれ、キレイだね」

「ぇ?・・・ぇ、ぇっ? ぇっ?」

虚ろな目で己の臓を見て、じわじわと青ざめる毛虫。
震えだしたかと思えば、急にうなだれて動かなくなった。




酷く端切れの悪い虐殺で終わってしまった。
あえて死因を添えるなら、ショック死だろうか。

(これで何回目だろう・・・)

ナイフ一本では、達磨か割腹ぐらいしか虐殺のメニューがない。
それではつまらないと思い、いくつか自分なりに考えてはいるが、なかなか上手くいかない。
メイは溜め息を一つ零し、手の中にあるつるつるの肝臓にかじりついた。

411:2007/09/24(月) 23:38:26 ID:???

食事を済ませ、虐殺も終えた。
腹の中の人も一応満足したようでなによりだ。

「さて、と」

ヒラキになった毛虫を、白骨の山に投げ込む。
無数の乾いた音が山から響き、毛虫はその中に埋もれた。
真っ白い空間に肉塊が置かれているのは、かなり違和感があった。
が、数週間もすれば、毛虫は彼らと同じ姿になるだろう。

次に身体中についた血を落とす為、バケツの方に近付く。
覗き込むと、そこそこの量の水の上に、自分の顔が映りこんだ。

「・・・」

もう、あの時のような感情は湧かなかった。
さっきの毛虫や、他の頭の悪いちびギコ達に何度も醜いと言われたこの姿。
自分で評価するとなれば、これが『本来の姿』といった所だ。

母と一緒に居た時の、両耳両目のある自分の眼は死んでいた。
だが、一人になって生きて来た今の自分は、皮肉にも生き生きとしている。

(・・・なんで今更、こんなこと)

メイはバケツの中の自分を乱暴に掻き混ぜ、身体についた血と共に思考を拭い去る。
ついでにナイフも丁寧に洗い、何度か振って水を切った。




ふと、振り返る。
顔は後ろを向いたまま、目だけを動かして辺りを見る。
特に何もなかったが、どうしてか違和感を覚えた。
その正体は、自分の呼吸が聞こえた所で理解した。

何故か、音がなかった。
クルマの走る音も、AA達が騒ぐ声も、虫や小鳥のさえずりすら聞こえない。
まるで自分だけ、異世界に飛び込んだかのような気分だ。

注意深く、窓を覗き込む。
身を乗り出しても、一般AAや被虐者の姿はみつからない。

「・・・?」

いや、見つけた。
ちょうどビルの真下で、何かを捜すようにうろうろとしている者が。
毛並みと体格からして、レッサー種ではないフサギコだろうか。
手に持った棒でごみ箱を突いたり、段ボールを殴ったりしている。
理由はわからないが、恐らく被虐者を捜しているのだろう。

両目を被うように包帯を巻いているそのAAは、紛れも無く一人だ。
身体に障害を持ちながら、のうのうとこの辺りを散策するなんて。

久しぶりに大きな肉を食べられるチャンスがやってきた。
獣に襲われるよりも、自ら命を落とすよりも先に、自分が狩ってやる。
舞い降りた幸運を、逃すわけにはいかない。

(・・・やるしかない)






フサギコの後を追うため、非常階段の方へ走りそこから外に出る。
錆まみれの階段は、隣の建物の屋根の近くに配置されていた。
そこに飛び降り、なるだけ音を立てずに獲物の方へ駆けた。

息を潜め、気配を殺す。
メクラとはいえ、狩りに気を抜く事はできない。
何事も本気で行かなければ、この街で生は掴めない。
メイは自分にそう言い聞かせ、じっくりと様子を窺った。

「・・・」

この街の路地裏に、抜け道なんて殆ど存在しない。
獲物はいずれ、袋小路へと身を寄せる筈だ。
そこで足を止めたら、後は一気に飛び込んでナイフを突き立てるだけ。

いつもやってきた事だ。
失敗なんて、するはずがない。
娯楽の為に殺すのとは、覚悟が違うんだ。

412:2007/09/24(月) 23:39:51 ID:???

時間はそんなに掛からなかった。
獲物は袋小路に入り込み、コンクリの壁を棒でつついている。

本人からすると、目の前は壁ではなく、何かが積まれているように感じたのだろうか。
だが、片目の自分が見ても、そこは紛れも無くコンクリで阻まれている。
獲物はそれに気付くことができず、丁寧に壁を調べていた。

(・・・やるなら今だ)

十数秒経ってから、メイはそう決意した。
観察のみに留めていた思考を、狩りへと移行させていく。
獲物の頭蓋へと狙いを定め、それ一点のみを見る。

視界に獲物しか映らなくなるまで集中した時、力強く地を蹴り、跳んだ。




―――その時だった。

「みぃ〜つけたっ」

跳び掛かった瞬間、獲物は振り向いてそう言ったのだ。
それは酷く小さく、虫の鳴き声にも掻き消されそうな程だった。

獲物は壁を背にするように動き、ナイフが描く軌道から離れる。
身体は引力に逆らうことなく、そのまま落ちていく。

「ッ!」

気付かれ、そして避けられた。
まるで、こちらが跳ぶタイミングに合わせたかのようだった。
思考が狩りから逃亡へ一気に切り替わる。
だが、脚が地に着かなければ逃げる事はできない。




どすん、と鈍く低い音がして、脚に衝撃が走った。
間髪入れずその場を蹴り、獲物、いやフサギコとの距離を取る。
振り向いた瞬間、そこで自分の足は動かなくなった。

「・・・っ」

フサギコが恐ろしく見える理由は、単純なものだった。
思考が狩りから逃亡に切り替わった時、同時に立場も逆転していたのだ。
『殺人鬼と被害者』から、『被虐者と加虐者』に。
更に、目を患いながら不自由なく動くというフサギコの奇抜さ。
それが感じている恐怖に拍車をかけていた。

あの包帯の巻き方からして、絶対に見えてはいない筈なのに。
奴は今、こちらにしっかりと顔を向けている。
にっこりと笑っているフサギコは、必要以上に悍ましく見えた。

「まだ、そこにいるの?」

唐突に、フサギコが口を開いた。
棒をゆらゆらと揺らしながら、じわじわと近付いてくる。

子供だと思って、油断した。
奴は最初から、自分を誘っていた。
棒で道を探しながら、耳でこちらを捜していたのだ。

(こんな、こと・・・)

Vの時とは違う恐怖が、自分を縫い付ける。
だが、奴は自ら包帯を解かないことから、本物のメクラだ。
少しだけ、ほんの少しだけ自分を奮い立たせられれば、ここから逃げ出せる。
今まで、幾重ものAAから逃げてきたんだ。

(メクラなんかに、捕ってたまるもんか!)

棒が鼻の先に触れるより先に、メイは踵を返す。
途端、更なる恐怖がメイに襲い掛かる。

「あ、待てっ!」

フサギコが棒を投げ捨て、一直線にこちらに向かって来たのだ。

「うわあああっ!!」

堪らず、叫んでしまった。
恐怖で脚が縺れて、うまく走れない。
少しでも時間を稼ごうと、辺りにあるものをナイフで倒し、進路を塞ぐ。

「わっ!?」

倒したものが上手いことフサギコの臑に当たり、よろける。
慌てようからして、流石に不意打ちには弱いようだ。
運よく隙を作らせることができ、後は猛ダッシュで走るのみだ。

413:2007/09/24(月) 23:40:25 ID:???


逃げながら、メイは考える。
狩りが失敗した、その前の出来事を。

フサギコを見つける前の、あの奇妙な感覚は何だったのだろうか。
音が消え、導かれるように窓の外を覗いてしまったアレは。
思い返してみれば、路地裏なんて窓から落ちる勢いで見ないと、視界に入らない。
それに、奇妙な感覚に陥った時の自分も、腑に落ちない。
その時の行動を反芻してみると、今まで自分が欠かさなかった警戒心が全くない。
フサギコを一目見ただけで、脳内は狩りでいっぱいだった。

全てが、自分のミスだ。
死に関係なかったからといって、無駄な行動に出た自分が、憎い。

(・・・くそっ!)

歯噛みし、路地裏をひた走る。

何度目かの曲がり角だった。
奥の方ではコンクリの壁はなくなり、道路が見えていた。
左右には木材や粗大ごみが打ち捨てられていて、見た目より狭くなっている。

「はっ・・・はあっ・・・!」

必死になりすぎて、既に息はあがっていた。
振り向いてもフサギコの姿はなく、振り切ることができたようだ。
だが、一本道であるここで休んでいる時間はない。
肺になるだけ酸素を溜め、再び駆け出す。




いや、駆け出すつもりだった。
また足が、恐怖で固まってしまった。

「残念だったな」

道路の方から差し込む光を背に、男が立っていたのだ。
影そのもののような身体の色と、特徴的な赤い線の入った耳。
そして、その手の中にはしっかりと拳銃が握られていた。

「う・・・っ」

予想はしていたし、そうであって欲しくないと願いもした。
『フサギコは囮で、他に仲間がいる』ということ。

吐き気と眩暈が同時に襲ってくるが、必死に堪える。
酸素と冷静さが欠けているが、それでもこの状況を打破する術を考える。
男との距離、周りにあるもの、後方のフサギコ、自分の脚力、ナイフ。

と、ここで男が動いた。
ゆっくりと嫌らしく、拳銃を持ち上げていく。
咄嗟に構えるものの、男はそれを無視するように口を開いた。

「何故、お前はこんなことをしてきた」

「・・・何故、って」

男の声が思ったより緩かったせいか、つい反応してしまった。
吐き気も失せ、いつの間にか思考は会話を優先していた。

「訳もなく、お前のような子供が殺人をするはずがないだろう?」

「・・・」

「復讐か? それとも唯の虐殺厨なだけか?」

「生きる・・・為だから」

自分の一言に、男は眉を寄せる。
それは怒りではなく、哀れみを含んだもののように見えた。

「食べる為に、見境なく殺してきたのか」

「うるさい!」

怒りが込み上げてきたのはこっちだった。
今更になって、同情してくるような奴が現れるなんて。
自分を捕まえて、殺すつもりでいる癖に。

「お前らみたいに、遊びで殺してる訳じゃない!!」

「食べる為に殺していい訳でもない」

「っ!・・・」

「お前はAAを『家畜』扱いしている。そうだろう?」

言葉に詰まった。
男の言う事に、間違いはない。

414:2007/09/24(月) 23:41:24 ID:???

だからといって、今までやってきた事を、生きる為にしてきた事を否定されては意味がない。
こいつの言うことを認めれば、自分は死んだ事に変わりはなくなる。
自分を保ってきたものが、じわじわと失われていくような感覚。

「虐殺の概念があるとはいえ、誰彼構わず殺していい筈がない」

「・・・黙れ」

呟くが、男には届かなかった。

「お前も、結局は『虐殺厨』なんだよ」

「黙れぇぇぇぇッ!!!」

言われたくない一言を言われ、怒りが爆発した。
その場にあった空き瓶を引っつかみ、壁の方に向かって投げる。
ぱあん、と空き瓶は弾け、破片達は跳ね返って男に降り懸かった。

「なッ!?」

男は腕で顔を庇うも、破片は容赦なくその黒い身体を切り裂く。
感情に身を任せた行動が、運よく相手に隙を作らせることができた。
息をつく間もなく、男の脇を縫うように駆け、路地裏を抜けた。



無駄な抵抗だとは、うすうす感じていた。
精神力も体力も大分削られた上、通りに出てしまった。
他に逃げ道がないのだから、仕方ない事だけれども。

広い空間では、この小さい身体じゃ不利な要素だらけだ。
追っ手の二人にも、薄皮一枚くらいのダメージしか与えられていない。
身を隠すより先に、どちらかに捕まってしまうのがオチだ。

「待てッ!」

後方で、男の声がした。
振り向かずとも、どのくらい離れているかはすぐにわかった。
それと同時に、互いの距離が早い段階で縮まっていくのも。

唯ひたすら、前を見て脚を動かす。
いくつもの柵を飛び越え、ガードレールを潜った。
それでも、男の気配は消えない。

不意に、視界にあの緑が映った。
街の中央に位置する、巨大の公園の一部。
距離が迫っていたので、身を眩ませるかどうかはわからない。
だが、今の自分に残っている選択肢は殆ど無い。

「っ!!」

ほぼ体当たりに近い動作で、植え込みに飛び込んだ。
身体にぶつかったのは枝だけだったので、運よく雑木林にすんなりと入れた。

「逃がすか!」

男も、負けじと植え込みに突っ込んでくる。
しかし、身体の大きさから引っ掛かる枝が多すぎて、遅れを取ってしまう。

距離が開いた。
辺りには自分より背の高い雑草だらけ。
上手くいけば、逃げられるかもしれない。
なるべく身を低くしながら、必死で雑草をかきわける。

(これなら・・・これならっ!)

右往左往することなく、ひたすら前に突き進む。
目標は雑木林の奥、男が自分を見失うまで。
気合いを入れ、地面を強く蹴っていく。

―――不意に、視界が開けた。




「・・・!!」

目の前には、信じたくない光景が広がっていた。

公園だ。
舗装されてない地面が、草木が全く生えていない地面。
奥には、突入した緑より遥かに大きな緑があった。

(そんな・・・!)

なにもない上、奥の雑木林まではかなりの距離があった。
一直線に駆け抜けても、先程取ったマージンだけでは足りない。
絶対に、追い付かれる。

走りながら振り返った。
自分が逃げ込んだ所は、紛れも無く雑木林。
だが、大きさを比べればその違いは一目瞭然。
それは公園という悪魔によって、親から引きはがされていたようだった。

415:2007/09/24(月) 23:41:53 ID:???

抜け出した所にあった植え込みが、音をたてて暴れた。
その奥には、自分を追う男の影があるのがわかった。
ばさ、と一回り大きな音がして、植え込みの中から男が出て来た。

銃口を、こちらに向けながら。

「うあっ!」

男の手元が光り炸裂音がしたのと、左足を凄まじい痛みが襲ったのは同時だった。
勢いを残したままバランスを崩したので、土の上で身体が二転三転する。
止まった時には、自分の毛は土埃に塗れ、左足はもう赤く染まっていた。




「はあっ、はっ・・・っく・・・ああっ!」

酸素が足りない上、激痛のせいで気を失いそうになる。
だが、同じ痛みにまた覚醒させられてしまい、感じる苦しみは半端じゃない。
幸い骨は砕けていなかったが、弾丸はしっかりと腿を貫通している。

気が付くと、手の中にナイフがなかった。
俯せに倒れ込んだまま、首を動かしてそれを探す。
が、視界が黒い影、男の足に阻まれたせいで見つけることができなかった。

「っあ・・・!」

「・・・観念しろ。お前はやりすぎたんだ」

冷たく、心に刺さるような声色だった。
だが、どうしてかその声の中にまた哀れみの念が込められている。
『悪い奴なんだが、殺したくはない』
そんな風な気持ちが、ごくわずかに感じ取れた。

何故なのだろうか。
こいつは、自分を捕まえて虐殺するつもりじゃないのだろうか。
いや、もしそうだとしたら、囮を使ったり撃ってきたりはしない筈だ。

「どうし、て・・・早く、殺さないの・・・っ」

自分の思考だけでは答が見出だすことができず、つい問い質してしまった。

「・・・」

返事が返ってこない。
傷口を押さえつつ、朦朧とする意識の中、顔を上げて男の顔を見た。

それは哀しみに満ち溢れていた。
銃口を向けていながら、苦虫を潰したかのような表情。
哀れみなどではなかった。
寧ろ、自分で自分を責めているかのような感じだった。

「お前とは・・・事が大きくなる前に会いたかった」

「ぇ・・・っ?」

意味深なことを告げ、男がその場から離れる。
目線を落とすと、そこには探していたナイフがあった。
自分と同じように土埃に塗れたそれは、こちらを待っているかのように見えた。

「・・・拾うか」

「・・・っ」

足の痛みを堪えながら、はいずってナイフに近付く。
男が自ら道を開けた理由なんて、この際どうでもよかった。
真意が読めないことに頭を悩ますより、抗うことを最優先としなければ。
生を諦めることなんて、絶対にしてたまるものか。

後少しで、指先に柄が触れる。
触れるはずなのに。
ナイフは自分を拒むかのように、ゆっくりと遠ざかる。
いや、拒んだわけじゃなく、ただ単に誰かが拾い上げただけだった。

人差し指が異様に短い、青い手だった。
顔を上げると、そこにまた信じられない光景が。
最も会いたくないと思っていた、AAがそこに立っていた。

416:2007/09/24(月) 23:42:54 ID:???

「あ・・・ああ、あ」

心の底から、信じたくなたかった。
こんな状態になってから、こいつに出会ってしまうなんて。

「久しぶりだな。コレ、返して貰うぜ?」

鉛色の空を背にした、無表情のギコが居た。
その感情のない仮面の奥に、鬼が居ること位、考えなくてもわかる。
囁くように問い掛けるその言葉は、酷くねっとりとしていた。



身体の傷の殆どは、モララーがつけたものだ。
実際、ギコには左眼だけしか奪われていない。
だが、虐殺されそうになった時に会った三人のAAの中で、最も恐ろしいと思ったのはギコだ。
隙を窺ってナイフを奪い、逃亡を謀った直後に唯一追って来た男。
ただ、それだけなのに。

あの時のギコの全ては、本当に恐ろしかった。

思い出し、言葉に表そうとしても、思考がストップをかける程。
トラウマを通り越し、記憶の引き出しから外されて奈落へと封印されたかのような。
しかし、それは今奈落から引き上げられ、封を解かれようとしている。

あの時の続きが、
想像したくもなかった事が、
皮肉にも、夢なんかじゃなく現実で行われようとしていた。



「ウララー、ありがとうよ・・・まさかこんなに早く出会えるなんてな」

ギコは黒い男の方を見て、そう言った。
もう、誰がどうかなんて考える気力は、なかった。

最悪のパターンで、死を迎えることになるなんて。
これなら、危険を犯してでも、毎日空腹に苛まれていた方が幸せだったかもしれない。
このギコが、自分を骨の髄まで苦しめて殺すのは目に見えている。
もしそうでなければ、自分はあの時眼でなく命を奪われていた。

「少年だからといって、甘くみてしまったがな」

「その腕・・・やられたのか?」

「ガラス瓶の破片をうまいこと浴びせられたよ。なに、唯のかすり傷だ」

「かすり傷程度なら、まだいい方じゃないか。俺なんて指だからな」

自分が絶望に打ちひしかれている中、二人は呑気に会話をしている。
まるでこちらが素早く動けない事をいいことに、嘲笑っているかのようだった。

こんな最期、認めたくない。
地獄の始まりなんて、信じたくない。
この出来事の落ちは、夢であって欲しい。

呪詛のように頭の中で繰り返すも、それは無駄でしかなかった。
だが、自分を保つそうするしか他にないわけで。

「ぐぶっ!?」

突然、腹部に鈍痛を覚え、身体はくの字になって宙に投げ出される。
撃たれた腿の痛みを忘れそうな位の激痛が腹を襲った。
蹴られた箇所からして、肋を何本かやられたかもしれない。

「さあて、おっ始めるとしますか・・・」

蹴り飛ばしたのはギコだった。
精神的にもいっぱいいっぱいだった為、全く反応できなかった。
ギコ以外、誰もする筈はないとわかってはいたけれど。

417:2007/09/24(月) 23:43:39 ID:???

青すじを顔いっぱいに立てているギコは、何者にも例えようがなかった。
それは虐殺厨という、新しい畏怖の象徴が生まれたかのようだった。

「げほっ・・・ぐ」

「ノビるのはまだ早ェぞ? コレは唯の前戯だからなァ」

そう言って、今度は左腕を掴んできた。
未だに血が止まらない火傷が刺激され、痒みに近い痛みを感じる。
しかし、既に大きなものを二回受けていたので、それ程気にならなかった。
寧ろ、虐殺の真の恐怖は、持ち上げられてからやってきた。

「ぎゃっ!?」

痂が裂けたかのように、鋭い痛みが襲い掛かる。
直後、腕の方から生暖かいものが身体へと滴り落ちてきた。

腕を切り裂いたのはナイフだった。
ギコから奪い、半身のように扱ってきたナイフ。
それが今、元の持ち主の手に戻り、こちらに牙を向けている。

「痛ぇだろ? 俺はこの痛ぇナイフで指切られたんだぜ?」

顔を近付け、ナイフを頬に宛がいながら囁いてくる。
嫌悪感など覚えている暇はなく、もはや蛇に睨まれた蛙状態だった。
身体はもう疲労と恐怖でガチガチに固まり、自分では動かすことができない。
唯一、外的刺激を与えられれば、ほんの少しだけ動いてくれる。
つまり、今の自分は『痛みに悶える』事しかできなかった。

「いっ、痛・・・っうぁ! あああっ!」

皮膚が浅く、深く、長く、短く切り刻まれていく。
そこから溢れる真っ赤な血は、身体の大部分を鮮やかに彩る。

何度目かの切り込みで、ギコの手が緩む。
身体は引力に引かれ、そのままの体制で地面にたたき付けられた。

「ぐっ!」

その衝撃で、折れたと思われる肋が体内で暴れた。
恐らく、内臓のどれか一つに刺さっただろう。
吐き気と頭痛が精神を更に苛み、気が触れそうになる。

「どうした? 逃げないのか?」

くく、と喉で笑いながら、ギコが追い打ちを掛けてくる。
先程皮膚を切り裂いた左腕に、そっと足を置いてきた。

(・・・ああ)

生きたいと強く願う中、『諦める』という想いが芽吹いた。
そのまま力強く踏み付け、潰しでもするのだろうか。
四肢を失えば、希望は費える。
ならば、もう諦めるしか他に道はなくなる。
迷う事なく死を望めば、苦しみだって―――

「おい、なんだその顔は」

途端、ギコの態度が豹変した。
悦に浸りながら、復讐を兼ねて虐待していた男に、また鬼が張り付く。
それは気を緩めた自分に対しての怒りだと、すぐわかった。

「まさかお前、死を受け入れるとか思っているんじゃねぇだろうな?」

「・・・っ」

「死にたいっていうなら無限に苦しませてやる。生きたいなら今すぐ殺してやる」

418:2007/09/24(月) 23:44:20 ID:???

「あまり調子こくんじゃねぇぞ?」

その言葉の後、左腕に位置していた足に力が入る。

「ッ!? あっ! ああぎゃああぁっ!!」

ほんの少ししか体重を掛けない代わりに、ぐりぐりと左右に動かしてきた。
傷口に砂粒が入り込み、痛覚神経が無理矢理に刺激されていく。
その痛みは炎に焼かれた時よりも凄まじく、気持ち悪さまで感じてしまう程。

全身の毛穴が開くような感覚を覚えつつ、その激痛を必死に堪える。
腕が足の下にあり、体制を変えられないことからも、苦しみが上乗せされる。

「あああぁぁぁァァァ!!!」

いくら叫んでも、苦痛は止まらない。
涙で視界が滲む中、ふとギコの顔が目に入る。
それは、『今人生で、最高の瞬間を体験している』といった表情だった。
滲んだ世界の中でも、くっきりと見えた吊り上がった口と、弓を張ったような眼。




無限とも取れた地獄の時間が終わる。
ギコの足が持ち上がり、腕から離れたのだ。
だが、その火傷していた腕は更に醜く、その姿を変えていた。
血と膿と、それらで溶けかけた痂に泥となった砂粒。
骨は折れていないし、こんな容姿になっても動くこの腕。
持ち主である自分でも、切り落としたくなる程醜くかった。

「あーあ・・・汚くなっちまったな。お前の腕」

まるで他人事のように話す当事者。
だが、怒る気力すら今の自分にはもうなかった。

「ぐ、ぅ・・・っは・・・あ」

呼吸を一つするだけでも、酷く苦しい。
『諦める』という逃げ道さえ、ギコは否定した。
だからといって、虐待に身を委ねるなんて事、絶対にできやしない。

モララーの所から逃げることを誓った時、出来るなら五体を差し出すなんて考えもした。
だが、あれは間違いだと、今更になって気が付いた。
無意識の内に、される筈がないと思ってから考えていた。

自分は馬鹿だ。
あの時、そのまま虐待に抵抗して死ねばよかった。
イチ被虐者が抗っても、結局はここに辿り着くんだ。

不意に、身体が宙に浮かぶ。
今度は右腕を掴まれての持ち上げだった。

「左腕のその皮、剥いでやろうか。どうせ要らないだろ?」

俺から見ても気持ち悪いしな、とギコは付け加える。

「・・・」

自分は無言でイエスと答えた。
もう何も考えたくないし、考えれば考える程、苦しみが増しそうだったからだ。

―――ナイフが、ゆっくりと左腕に宛がわれる。



続く

419淡麗:2007/09/26(水) 14:55:41 ID:???
【ペット大好き♪日記〜第2幕〜】


ねぇねぇ、みんなはペットを飼っている?
私は飼っているんだよ!

真っ白くて、ふわふわで、ちっちゃなベビちゃん!

え?なんでベビを飼っているか?
そうだよね、私の周りのみんなはベビちゃんを
「キモゴミのガキ」とか「糞虫ぃ」とかひどいこというけど、ベビちゃんって可愛いんだよ?!
確かに、アフォしぃはムカつくよ?
でもね、ベビちゃんの頃からしっかり教育すれば、良しぃになるってテレビでやってたもん!
だから、私がしっかり育ててあげれば、パパもママもお兄ちゃんもビックリするよ♪
それで、みんなで仲良く暮らすのが夢なんだ♪


今日はベビちゃんを飼ってから初めての学校の日。
私はベビちゃんを隠して学校にいって、授業が終わってからすぐに帰ってきたんだ
今日はベビちゃんといっぱい遊べる!
ベビちゃん、ちゃんとお留守番できてるかな?

そう楽しみにしていたのに…


今、私の目の前では酷いことが起きているの…
箱の中に隠していたベビちゃんはウンチまみれになってもがいているの…
どうして?なんでこんな事に??

慌てて箱のフタを閉めたけど、一体どうしよう?
ベビちゃんのことを洗ってあげなきゃいけないけど、お風呂場で洗うことは出来ない…
ていうかこんな状態じゃ家の中ではムリ!臭いでバレちゃう!!

どうしよう・・・
このままじゃベビちゃんが死んじゃう!
ウンチまみれで死んじゃったんじゃ、虐待と一緒だよぉ…

そうだ、近くの公園の水道で洗おう!
洗うのに必要な道具は…スーパーの100円コーナーで買えばいいか♪
そうと決まればすぐに実行!
いそがなくっちゃ。
ベビちゃん、すぐにきれいにしてあげるからね!!


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