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虐待・虐殺小説スレッドPART.4

395:2007/09/09(日) 15:56:17 ID:???


茶の毛並みを覆う白い包帯を見て、ウララーはそんなことを思い出していた。

(音と匂いが自分にはある。・・・か)

実際、フーはその力強さを、言葉はおろか身体でも見せてくれた。
訓練せずとも一人で立ち、障害物を探らずとも避けて歩くことができたのだ。
それはフーが盲目ということを忘れさせ、大道芸のように魅入ってしまう程のもの。
『眼で見なくても、気で場所がわかる』といったマンガのような出来事だった。

流石に、指を使う細かい事や、箸やスプーンを使った食事はできなかった。
というより、箸やスプーンを扱った事がないと言った方が正しいか。

「・・・っと」

気がつけば、ニュースは既に別の内容に変わっていた。
政治やら外国との問題やら、この街にはあまり関係ないものだ。
どうせなら警察の怠慢っぷりを報道し、それに対する意識改革を狙ってほしい。
国のお偉方の粗を探るよりも、ずっと簡単だと思うのに。

「虐殺厨よりも、警察の方がまともじゃねーのにな」

ウララーは、テレビの中の政治家に向かって愚痴を零した。

「・・・んあ」

番組が終わり、時計の短針が新しい数字を指した所で、フーが起きた。
無い筈の目を、包帯の奥にある瞼をこすり、大きな欠伸を一つ。
一連の動作が終わってから、声を掛ける。

「目は覚めたか?」

「うん」

先程より返事はよくなり、勢いよく寝癖を掻いている。

「もう少ししたら、飯にするか」



『片腕が黒い少年』の捜査ができなくても、虐殺厨を裁く仕事に休みはない。
フーと共に朝食を摂った後、ハンドガンを片手に外へと出掛ける。

「さ、いくぞ」

「おー!」

勢いよく飛び出したフーを眺めながら、玄関を逆手で静かに閉めた。
気が重くなる仕事をやっていく中、フーの元気さには助けられる。

フーと一緒に外出するようになったのは、ほんの数日前のこと。
本来なら、盲目な者にとっては付き添いがいても外は危険だらけだ。
なるべく家の中に居させてやりたいのだが、本人が希望してきたことだ。
最初は心配だったが、手を繋いでのんびり歩くのが大半だし、万が一には銃がある。
今ではもう、ウララーが率先して誘うようにまでなっていた。

しかし、擬似警官と浮浪者という立ち位置の違いから、ちょっとした悩みが一つできていた。

「・・・なあ」

「何?」

「今日も、虐殺するのか?」

「あー、できれば・・・したい。かな」

先程の明るさより一転、沈黙が二人を包む。
会話は途絶え、歩数が増える度に気まずい空気が濃くなっていった。

だいぶ間をあけてから、ウララーは口を開く。

「いや、俺は割り切れるから別に構わないんだが」

「でも、遊びで殺すのはウララーは嫌なんでしょ?」

「・・・ああ。どっちが『悪』か、わからなくなるしな」

「警官だもんね。ウララーは」



被虐者を殺し、喰らって生きてきたフー。
反対に、被虐者を殺さず、裁いてきたウララー。
その価値観の違いから、このような衝突があった。

街のルールなのだから、ウララーの主張は間違いでもある。
しかし、フーは居候の身であり、あまり我が儘を言える立場でもない。
一緒にいる事が楽しくなってきた所で、別の場所で不自由さが新しく生まれてしまったのだ。


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