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念を使わせてみよう小説スレッド

1名無しさん:2004/11/07(日) 00:20
ストーリーは思いついたんだけど、AAが苦手。
ここはそんな人たちでも作品を発表するためのスレッドです。
もちろんAAが出来て小説も書けるという人でも可。
素人玄人問わずに気楽にどうぞ

2371:2005/01/14(金) 00:50

「う、うーん…」
 と、話題の当事者の一人であるギコがようやく目を覚ました。
「おはよっす、坊主」
 狐さんが目覚めたギコに声を掛ける。
「!!
 あの男は…!」
 ギコが勢い良く立ち上がり、刀を構えた。
 てか、ギコもオカマって気づいてたのか。
「あの兄ちゃんなら俺が追い払っといたぜ」
 狐さんがギコに告げる。
「そうか…
 …って、どうして姉御がここに居るんだよ!?
 しかも八頭身まで!」
 ギコが驚く。
 まあそりゃそうか。
 本来ここに居る筈のない人達が、ここに来ているのだから。
「色々あって、そこの少年を助けに来たんだよ。
 お前はおまけだ」
「そこの少年って… こいつか?」
 ギコが僕を指差す。
「そう」
 狐さんが答える。
 ギコはしばらくの間何やら考え込み、そしておずおずと僕に訊ねてきた。
「…ひょっとして、お前の恋人っつー貧乳和服俺女って姉御の事?」
「あー… まあ、そう」
 何という偶然だったのだ。
 まさか、ギコの言ってた姉御と、僕の言っていた貧柔和服俺女が同一人物だったとは。
 まあ、ギコが『外法』の一員だと聞いた時から予想はついていたけど。
「え?
 おいおい、マジかよ?
 えええ!?」
「何をそんなに驚いてんだよ」
 僕はギコに言った。
「いや、おい、だってよ、
 お前、だったらどうしてまだ生きてんの?」
 はあ?
 名に言ってんだこいつは。
「姉御と恋人どうしなら、お前はとっくに死んでなきゃおかしいだろうが」
 …ああ、そうか。
 こいつも狐さんも『外法』だったのだ。
 殺す事しか考えられない、そういう人種だったんだ。
「あ、そういや思い出した」
 ギコがポンと手を叩く。
 どうせろくな事ではあるまい。
「姉御、口には出して言えないようなプレイって、どういう事やってんの?」
 ―――!
 この馬鹿、よりによって何て事聞きやがる!
「わーーー! わーーー!
 違う!
 違います、狐さん!
 これはただの言葉のあやというやつで…!」
 慌てて否定するも、時既に遅し。
 ギコの言葉はばっちり狐さんには聞こえてしまった筈だ。
「ふーん…
 少年の中では、俺ってそういうふうになってんだ。
 ふーーん……」
 極低温の眼差しを僕に向ける狐さん。
 好感度10減少。
 バッドエンドルートへのフラグが立ったかもしれない。
 殺してやる…
 ギコの野郎、いつか殺してやる…!

2381:2005/01/14(金) 00:51
「ま、いいけどね。
 さて、坊主、動けるか?」
 狐さんがギコに訊ねる。
「…まあ、何とか」
 やや力の無い声で答えるギコ。
 まだ本調子には戻ってはいないらしい。
「5分やる。
 その間に呼吸を整えろ。
 それでも動けないようなら、引きずってでも連れて行く」
「…了解」
 5分というのは決して厳しい仕打ちなどではなく、
 寧ろ慈愛に満ちた時間設定なのだろう。
 本当は、狐さんはすぐにでも出発したい筈だ。
「でも、どこに行くってんだ?」
 ギコは僕と同じ質問をした。
「樹海を抜ける。
 すぐにここから逃げるぞ。
 『妖滅』がすぐ近くまで来てる」
「『妖滅』…!」
 ギコが顔を強張らせる。
 先程手も足も出なかっただけあって、ギコも『妖滅』の危険さは実感しているようだ。
「いいか。
 戦おうなんて考えるな。
 勿論いざって時には応戦しなきゃならないが…
 可能なら状況の許す限り逃げろ。
 俺も、今回ばかりは確実にお前らを守れるとは保証出来ない。
 『D』も含めて、遭遇したら逃亡が第一優先だ」
 念を押すように狐さんが告げる。
 頷くギコと僕。
 黙ったままの八頭身。
「そういや少年、何か武器持ってるか?」
 狐さんが僕に視線を移す。
「いえ、何も…」
 家には以前狐さんに買って貰った拳銃があるのだが、
 いかんせんそれを取りに戻る暇など無いだろう。
「そうか。
 ならこれ使え」
 狐さんが僕に手の平台の長方形の機械を差し出す。
 見たところ、携帯ゲーム機のようではあるが…
「…狐さん、何すかこれ?」
「PSP」
「いや、そうでなくてですね。
 こんなのをどうやって武器にしろっていうんですか」
「これにはディスク射出機能が備え付けられている。
 敵が来たらディスクを飛ばして攻撃するんだ、こんな風に」

                   _,,---――-,,,
半自動UMD射出機能搭載  /' _,.-―--,,  ゙i
                 / r'′     ゙〉 ,i'
                i' i'  (l W∩ / /    ポン!
                ヽヽ,,___,,-' ,;'
      _,,,,,--―――   `―--―''''′,,
    ./゛   .|::::::::::::::::::::/ / / / / / / /  ヽ,
  ,i' ̄ ̄ ̄ ̄|:::::::::::::/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/ ̄ ̄ヽ
  l゙        |:::::::::::/   ,r――--,,    /     ゙|
 |       |:::::::::/  // ̄ ̄ヽヽ  /       |
 ゙l         |::::::/  / / P S P / /  /      ,,i'
  ヽ____|:::/   ヽヽ__//. /____,-'
    ゙ヽ,,,---|/     `―-―'''  /--_,,-'´ 
        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 

「なに風刺ネタ使ってんすか!」
 こんな話題出したら、荒れるかもしれないじゃないか。

2391:2005/01/14(金) 00:52

「…てか、ここ何か寒いな」
 僕の怒りなど一切無視して、狐さんが腕を擦り合わせた。
 確かに、もう7月の終盤だというのに、ここは少し肌寒い。
 上着の一枚でも持ってくればよかった。
「まあ、ここは自殺の名所だからな。
 死者の霊気が漂ってんじゃねえの?
 お化けが出たっておかしくなさそうだし」
 ギコが口を開く。
「何言ってんだか。
 幽霊なんて非現実的なものがいる訳無いだろ?
 ね、狐さん」
 僕は笑止とばかりにギコの発言を否定しつつ、狐さんに話を振った。
 というか、幽霊なんかより人間の方が恐いっつーの。
「…あ、ああ!
 当ったり前だろ!
 幽霊なんて居るわきゃねーって!!」
 何故かわざとらしい大声で答える狐さん。
 あの、まさか、ひょっとして…
「…姉御、まさかお化けが恐いのか?」
 信じられないといった顔つきで、ギコが狐さんに訊ねる。
 僕も、多分ギコと同じような顔をしていた事だろう。
「ん、んな訳ねえだろうが!
 俺を誰だと思ってやがる!
 お化けだの幽霊だのなんざ、俺の念で地ょちょいのちょいっと…」
「あ!
 後ろにお化けが!!」
 ギコが狐さんの後ろを指差して叫んだ。
「きゃあああああああああああああああ!!」
 絶叫しながら、近くに居た僕に抱きついてくる狐さん。
 おい。
 今、何つった。
 きゃあ?
 あの狐さんが、「きゃあ」っつったのか!?
「おいおいおい、マジかよ…」
 ギコが呟く。
 驚愕する僕を含む一同。
 信じられない。
 あの狐さんにも、弱点があったなんて…!
「う、嘘ついたな!?
 ギコ、てめえどうなるか分かって…」
「あ!
 今度こそ本当にお化けがいる!」
「きゃあああ!!」
 狐さんが更に強く僕にしがみついた。
 狐さんの僅かばかりの胸の膨らみが、僕の体に押し付けられる。
 ギコ、グッジョブ。
 さっきの失言はこれでチャラにしてや―――

「!!!!!」
 いきなり、狐さんがもんどりうって倒れた。
 遅れて、遠くから銃声が聞こえてくる。
 銃弾が音速を超えている証拠だ。
 狙撃!?
 しまった、長居し過ぎたのか!

2401:2005/01/14(金) 00:52

「狐さん!」
 急いで狐さんを抱え起こそうとする。
 狐さん、どうか無事で―――
「心配すんな」
 むくりと、何事も無かったかのように狐さんが起き上がった。
 その手には、馬鹿でかい銃弾のようなものが握られている。
「20ミリ徹甲弾…
 はん、対物ライフルかよ。
 こんなもので俺を殺せると思ってるなんてね」
 狐さんが銃弾を握り潰して地面に捨てる。
 あの、対物ライフルって、確か戦車とかを撃ち抜く為の銃ですよね。
 そんなものを素手で受け止めたというのか!?
「しっかし、くっそ、こりゃ結構痛えな。
 まだ受け止めた腕がジンジンするぜ」
 対物ライフルを喰らって、結構痛いという感想を述べる狐さん。
 そこまでの力がありながらお化けが恐いなんて、本気で理解に苦しむ。
「狐!
 大丈夫か!?」
 八頭身が駆け寄る。
「ああ、何とかね」
 けろりとした顔で答える狐さん。
「ならすぐに身を隠すぞ!
 すぐにまた次の攻撃が―――」
「いや、その必要はねえ」
 狐さんが八頭身の言葉を遮る。
「後ろを見せて逃げれば、それこそ奴らの思う壺さ。
 ここから、反撃を仕掛ける…!」
 そう言いながら、狐さんが足元の石ころを拾い上げた。
「さっきの銃撃の角度と、銃声との時間差で大体の位置は掴んだ。
 今度はこっちの番だぜ…!」



          @        @        @



「…どうだ、やったか?」
 兄者が対物ライフルを構えたレモナに訊ねる。
「…失敗よ。
 信じられないわ。
 あの化物、対物ライフルの銃弾を素手で受け止めるなんて…」
 笑うしかないといった表情で、レモナが返す。
「お化けか何かか、あいつは…」
 弟者が呆れたように呟く。
「核ミサイルでも持ってくるべきだったわね」
 レモナは冗談のつもりで言ったが、しかしそれは凡そ冗談には取れなかっただろう。
 少なくとも、ここにいる4人にとっては。
「仕方無いな。
 標的を変えるとしよう」
 ウララーがレモナに告げた。
「ええ、分かってるわ。
 外法狐は無理でも、他の奴らなら―――」
 次の瞬間、レモナのすぐ横の地面が爆ぜた。
「え―――?」
 驚愕に目を見開くレモナ。
 その直後には、今度は隣の木の幹が弾け飛ぶ。
「!?」
 何だ、これは!?
 狙撃!?
 四人の間を混乱が駆け巡る。
 馬鹿な。
 奴らは銃火器など持っていなかった筈だ。
 なのにどうやって―――
「!!
 これは…!」
 兄者が抉れた地面の中から一つの塊のような物を発見した。
 これは、石!?
 まさかこんなもので攻撃してきたというのか!?
 念能力で肉体を強化して、石を放り投げて!?
 理屈はそれで説明がつくが、そんな事が実際にあり得るのか!?
 ここは、奴らからはゆうに1・5キロは離れているんだぞ!?
「逃げろおおおおおおお!!」
 ウララーが叫ぶ。
 その間にも、4人の周囲にある地面や木が次々と石の銃弾で粉砕されていく。
 旗色が悪いと察知し、すぐにその場から逃げる『兇人絶技団』。
 対物ライフルは、構えて狙って撃つという3つの動作が必要だが、
 向こうは意思を狙った場所に投げるだけという一挙動。
 しかも弾丸代わりとなる石はそこら中に落ちている。
 だが、普通はそんなハンデは無いも同然なのだ。
 それはそうだろう?
 対物ライフルが石ころに劣るなどと誰が考える?
「……!」
 兄者は息を飲んだ。
 これが、これが外法狐か。
 その圧倒的な戦力を持ってして、
 あらゆる戦術や戦略と対抗し得る、絶対的最強者。
 そいつが戦う事自体が、既に戦術行為であり戦略行為である戦いの女神。
 そんな化物が、今現実に自分達の前に存在している…!
「藪を突いて大蛇が出たか…!」
 兄者は、遥か前方に位置する羅刹に戦慄するのだった。


                    〜続く〜

2411:2005/01/16(日) 03:13
 〜番外〜
 【この話は『冥界の支配者編』と『ハンター試験編』の間の時間設定です】

 現代社会で人が生きていくには何が必要か?
 と問われたところで明確な答えは返ってこないだろう。
 例えば力。
 例えば健康。
 例えば安全。
 例えば食料。
 例えば水。
 例えば娯楽。
 例えば目標。
 どれも正解で、そしてそれだけでは回答にはならない。
 全てがバランスよく合わさって始めて、模範的な回答となるのだろう。
 そして、お金というのはその中でもかなり重要な要素と言える。
 お金こそ人間の生み出した賢者の石と言っても過言では無いかもしれない。
 何しろ唯の金属や紙が、ありあらゆる物品と交換されるのだから。
 …などと、今は柄にも無い哲学に耽っている場合じゃないか。
「あの、外法狐様、よろしいでしょうか?」
「え、ええ」
 高級ホテルの内部にあるレストランの個室の中、
 俺はテーブルの向かいに座る目の前の黒服男に言葉に生返事で返した。
「用は、この私に護衛を依頼したいと」
 『私』という一人称はむずがゆいが、
 公の交渉の場で『俺』などと名乗る程常識が無い訳でもない。
 で、ここで何をやっているかというのだが、
 仕事の口があると八頭身から連絡があったので、
 生活資金もそろそろ底を突きかけてきた事もあって話に乗る事にしたのだ。
 実際問題、お金が無ければ少なくともこの東京においては生活出来ない。
 先程の似非哲学も、それつながりの戯言だ。
 やれやれ、やっぱ馬鹿力だけじゃあおまんまは食っていけないか。
「そうです。
 今日から1週間後に、とある場所でさる高名な方々の会合兼親睦会があるのです。
 秘密保持ゆえ今はまだ具体的な場所は明かせませんが…
 貴女には、そこの護衛をして頂きたいのです」
 丁寧な口調で黒服が喋る。
「それは構いませんが…
 パーティー警備員程度なら相応の使い手がその高名な方々とやらの私兵隊にもいるでしょう。
 わざわざ私にまで声を掛ける程の仕事とも思えませんが」
 事実目の前の黒服だって、『禍つ名』程ではないだろうが、
 そこらの筋者など及びもつかない程の使い手だろう。
 いくら要人の集まるパーティーとはいえ、
 さんざん曰く付きな上に金までかかる『禍つ名』のハンターである俺に依頼する程とは思えない。
「…実はここ最近、我々の雇い主である方々が何度か襲撃されています。
 しかも的確に警備が薄くなるタイミングなどを狙って」
「ああ… 成る程」
 つまりは情報が漏れているという事か。
 身中の蟲か、凄腕の情報屋を使ったかは分からないが、
 重要なのはそこではなくて、情報が筒抜けになっているという点だ。
 そしてその情報を駆使して、敵対行動を取る奴が存在している。
 ならばそのパーティー会場とやらは要人を一網打尽にする絶好の機会であり、
 当然敵も万全の準備をして何らかの行動に出てくる可能性が高い。
 もしかしたら、『禍つ名』あたりまでが出てくるかもしれない。
 だからこそ、こうして俺にまで声が掛かったという事か。
「事情は大体分かりました。
 この仕事、お受けしましょう」
「本当ですか!
 それはありがとうございます!」
 黒服が感無量といった表情を見せる。
 それがお世辞かどうかまでは、俺には分からない。

2421:2005/01/16(日) 03:13

「それで報酬の方は?」
 俺はここで本題を切り出した。
 そもそも金を得る為に仕事をするのだから、この問題は重要だ。
「これぐらいで如何でしょう…」
 黒服が電卓を叩いて、表示された数字を俺に見せてきたが、
 俺は無言でその数字を3倍にしてやった。
「!!
 流石にそこまでは…!」
 黒服が表情を曇らせる。
「残念ですが、この話は無かった事に」
 俺はそう言って席を立った。
「ま、待って下さい!
 ですがいくら何でもこの値段は…」
「それだけの値段で絶対の安全が保証されるのなら、安いものだと思いますが?
 それがお気に召さないなら、どうぞ他の方を雇って下さい」
 伊達に体を張って仕事をする訳ではないのだ。
 命の安売りは、したくない。
「…2倍、それが限界です」
 黒服が指を二本立てて俺に見せる。
「…まあ、仕方ありませんね」
 少し不満はあるが、この辺りが妥当な所だろう。
 余り欲を出し過ぎて本当に他の人を雇っても困る。
 ああ、しかし。
 やっぱり丁寧語ってのは肩がこるな。
 後でゲーセンかどっかで息抜きでもしよう。
 そんな事を考えながら、俺は契約書にサインをした。





 1週間後、俺は豪邸の中のパーティー会場の隅で突っ立っていた。
 街から程遠い、閑静とした豪邸の立ち並ぶ住宅街。
 しかし何だ、金というのはある所には集中してあるらしい。
 そこに集うは見るからに悪そうな顔をしたおっさんどもと、
 けばけばしい衣装に身を包んだおばさん方。
 こうして実際にどんな奴を警護するのか来てみれば、
 成る程いかにもあちこちに敵が多そうだ。
 これなら誰かから刺客が送られるのも納得出来るというものである。
 こいつらも心当たりが多過ぎて、誰が自分達を狙っているのか分かりはしまい。
 こいつらがどんな仕事をしているのかは聞いていないし興味も無いが、
 どうせろくな事ではあるまい。
 まあ、その点については俺も人の事は言えないのだが。
 しかし襲われるかもしれないと思いながらも、こうしてパーティーを開催する神経にはある種尊敬する。
 脅しに屈したと思われるのが嫌なのかもしれないが、
 それにしたって無用心に過ぎるというものだろう。
 まあこの会場を囲む警備員の数を見れば、恐怖感の無い狂人という訳でも無さそうではあるが。
「…おい、あの女見てみろよ」
「あれが外法狐か…」
「ベッドの上の仕事の方が儲かってるんじゃないのか…?」
 遠くから、俺と同じように用心棒として雇われたらしきハンターの下卑た視線が向けられてくる。
 あいつら、聞こえていないとでも思っているのか?
 まあいい。
 今の所は、見逃しておいてやる。

2431:2005/01/16(日) 03:14

「ふえええええええええええええん!」
 と、近くから赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
 何事かと声のした方向に向いてみると、まだ若い女性が必死に赤ん坊をあやしている。
「どうされましたか?」
 する事も無かったので、気紛れにその女性に話しかけた。
 職務怠慢と言われそうだが、それでもそこらのハンターよりかは働く自信があるので気にしない事にする。
「あ、いえ…
 この子が急に泣き出してしまって…」
 泣いている赤ん坊は、まだ10ヶ月かそこらといった所か。
 男の子か女の子かまでは、俺の目では判別出来ないが。
「少しよろしいですか?」
 身を少し屈め、赤ん坊の顔の位置に俺の顔の高さを合わせる。
「いないいないいない… ばぁ〜〜〜」
 赤ん坊に精一杯のおどけた顔をしてみせた。
 こんな顔をギコや八頭身にでも見られたら、いい笑い種になってしまう事だろう。
 しかし、赤ん坊はまだ泣くのをやめない。
「いないいないいない… ばぁ〜〜〜」
 ならばもう一度。
「ふえええええええええええええええええええん!!」
 しかし赤ん坊は余計に泣き喚くばかりで、俺のあやしは効果が無いどころか逆効果みたいだった。
「いないいないいない… ばぁ〜〜〜」
「ふえええええええええええええええええええええん!!」
 三度目の駄目出し。
「お前いい加減こっちが泣くぞ!?」
 人間性を否定された気分になって、思わず涙目で叫ぶ。
 いかん。
 25歳にもなって何やってんだ俺。
「きゃはは、きゃっきゃ」
 途端に、赤ん坊は泣くのをやめて笑い出した。
 もしかして俺に対する嫌がらせか何かか?とも思ったが、
 その無垢な笑顔の前ではどうでもよくなってしまう。
「あの…
 ありがとうございました」
 女性が俺にペコリと頭を下げてくる。
「いえ、別に大した事じゃありませんよ」
 俺もお辞儀を返す。
 一応依頼主の妻か何かだろうから、失礼があってはいけない。
「かわいいお子様ですね。
 男の子ですか、女の子ですか?」
 俺は訊ねた。
「…女の子です」
 しかし返事をする女性の表情は、とても暗いものだった。
 何だ?
 何か俺気に障る事でも言ったか?
「…子供、お好きなのですか?」
 今度は女性から訊ねてきた。
「ええ、まあ」
 個人的な意見かもしれないが、
 やっぱり自分の子供を産んで育てるというのは、
 女にとっての憧れの一つではないかと思うのだ。
 そんな感じの事を以前ギコに話した所、
 事もあろうに「お前が言うか」と大爆笑しやがったので半殺しにしておいた。

2441:2005/01/16(日) 03:14

「何をやっている!」
 後ろから、叱責の声が俺にかけられた。
 声をかけてきたのは、いかにも偏屈っぽい壮年の男だ。
「お前のような薄汚いハンター風情が、軽々しく私の子供に近寄るな!
 その下品な匂いが移ったらどうする!?」
 ああ、この赤ん坊はこの男の子供か。
 しかし若い奥さんだな。
 大方、金に物を言わせての結婚か何かなのだろうけど。
 それにしても、お子さんの顔があなたに似なくて良かったですね。
「わざわざ高い金を払って雇っているんだ!
 喋っている暇があるなら見張りにつかんか!」
「申し訳ありません」
 これについては全面的に俺が悪いので素直に謝る。
 しかし、もし刺客か何かが襲ってきたらお前だけわざと見殺しにしてやろうか。
 流石にそれはプロのプライドが許さないから、しないけど。

「!!!」
 次の瞬間、窓ガラスをぶち破って何者かが侵入して来る。
 敵襲!?
 外にも警備は居た筈だが、どうやら突破されてしまったらしい。
「きゃあああああああああああ!」
「うわあああああああああああ!」
 悲鳴。
 混乱。
 すぐさま回りに視線を巡らせ、襲撃者の数と位置を探る。
 1、2、3、4、5、6…
 今この室内にいるのはざっと12人か。
 凝を使って襲撃者を見ると、体を覆うオーラが見える。
 という事は、全員が念能力者。
 ふん、どこの誰かは知らないが、大金はたいてご苦労な事だ。
「させるかよ!!」
 要人の一人に襲いかかろうとしていた襲撃者を、右腕のラリアットで止める。
 首が完全に真後ろに折れ曲がって、そいつはそれきり動かない。
 同情はしない。
 人を殺す任務を受けた時点で、自分も死かもしれない事ぐらいは覚悟していた筈だ。
 もしそんな覚悟が無いのだとするならば、そいつはあまりに愚か過ぎる。
「おらああッ!」
 続けざまに、俺の隣を掻い潜ろうとした襲撃者に蹴りを叩き込む。
 胸骨が粉砕し、内臓が破裂する感触。
 そいつはそのまま吹き飛んで、口から泡のような血を吐いて絶命した。
「……!!」
 襲撃者達の視線が俺に集まる。
 どうやら、まずは俺を倒さない事には暗殺も糞も無いと判断したみたいだ。
 それでいい。
 要人達を逃がすくらいなら、他のボンクラ警備員でも何とかなるだろう。
「…おーおー、物々しいこって。
 で、それでお前らは本気で俺に勝つつもりでいるのかい?」
 俺は襲撃者達全員を見据えてゆっくりと告げた。
「10秒やる。
 回れ右して帰りな。
 俺の依頼はあくまで警護で、お前らを殺す為じゃない。
 逃げるんなら、追わないぜ?」
 恐らくこの問いかけは無駄だろう。
 任務を果たさず帰れば、こいつらには厳しい制裁が待ち受けている。
 往くも死。
 退くも死。
 どこにも、逃げ場などありはしない。
「……!」
 10秒後襲撃者達が取った行動は、矢張り逃走などではなく闘争だった。
 各人がナイフや剣などそれぞれの得物を構え、一直線に俺に向かって突っ駆ける。
 音が外に漏れるのを嫌ったのか、必要無いと思ったのか、銃火器は所持していないようだ。
 それは好都合。
 少なくとも、流れ弾が当たって死人が出るといった事態は起こり得ない。
 ならば、こちらも何の気兼ねも無く全力が出せるというものだ…!
「!!!」
 最初に俺に向かって来た3人が、腕の一振りでまとめて肉塊に変わる。
 一切手加減はしない。
 殺す意思を持って俺に立ち向かう以上、こちらも最速最大の力を持って迎え討つ。
 それが、俺が殺す者に対するせめてもの敬意だ。

2451:2005/01/16(日) 03:14

「おおおおおおおお!!」
 殴る。
 蹴る。
 千切る。
 引き裂く。
 他には何も考えられない。
 殺す。
 殺す。
 殺す。
 殺す。
 殺す。
 殺す。
 殺す。
 殺す。
 何もかも死んでしまえ。
 何もかも壊れてしまえ。
 そうすれば、何も壊したり殺したりしなくて済むようになるから―――

「―――」
 1分後、俺の周りには12個の死体が転がっていた。
 やり過ぎたか。
 一人生け捕りにすれば、こいつらを雇った奴について尋問出来たかもしれないのに。
 まあ、向こうもそんな事でバレるようなヘマはしないだろうし、
 こいつらも本当の依頼主の顔など知ってはいないだろうけれど。
「…ああ、これはお見苦しいところをお見せいたしました。
 折角の会場を血で汚してしまい、誠に申し訳ありません」
 床下に散らばる無残な死体と、血塗れになった俺の姿に戦慄する連中に俺は一礼する。
 しかし、また着物が一着お釈迦にしてしまった。
 報酬が入ったら新しいのを買わないと。
「やれやれ…
 どうやら一安心のようだな…」
 先程俺にいちゃもんをつけてきた男がほっと胸を撫で下ろ―――

2461:2005/01/16(日) 03:15

「!?」
 その時、銃声と共に男の胸に真っ赤な血の花が咲いた。
 驚愕に包まれる会場。
 馬鹿な!?
 襲撃者は全て排除した筈なのに!
「―――――!」
 その場の全員が目を見開いた。
 男を撃ったのは、さっき俺が話していた男の妻である女性だったのだ。
「!!!」
 続けて、女性は自分の胸に抱える我が子の頭を拳銃で撃ち抜いた。
 西瓜のように飛び散る頭部。
 その余りの凄惨さに、その場の誰もが目の前の現実に思考が追いつかない。
「な―――」
 俺でさえ、女性の行動に絶句してしまっていた。
 何故だ!?
 どうして、母親が自分の子供を殺す!?
「あんた、何やってるんだ!!」
 やっと俺の口から出せたのは、そんな陳腐な台詞だった。
「ふ… うふ…」
 女性が俺の言葉などお構い無しに、わなわなと肩を震わせる。
「うふふふふ。
 あはははは。
 あはははははははははははははははははははははははははは!!」
 女性は笑った。
 狂ったように。
 否、既に狂っていた。
 でなければ、自分の子供など殺せるものか。
「やっと… やっと復讐が果たせたわ!
 いい気分だわ。
 とてもとてもいい気分だわ!
 あはははははははは!」
 女性は笑い続ける。
 狂いながら、笑い続ける。
「復讐だと…?」
 俺は呟くように訊ねた。
「ええ、そうよぉ。
 ずうっと前から考えていた復讐。
 知ってた?
 この男はねえ、私を自分のものにする為に、私の両親の会社を破産に追い込んだのよ?」
 くすくすと笑いながらも、女性は俺の質問に答える。
「両親に莫大な借金を負わせて、その肩代わりを条件に私との結婚を迫る。
 当然、拒否権なんて無い。
 あはははは、凄い下種野郎でしょう?
 私のお母さんなんて、心労で自殺までしたんだから!」
 男を殺したばかりの女性の目には、まだ怒りの炎が渦巻いている。
 復讐を成し終えても未だ冷めやらぬ怒り。
 それだけが女性を支えているようでもあった。
「…だったら、どうして今殺した。
 今じゃなくても、いくらでも殺す機会はあった筈だ」
「普通に殺すだけで、私の気が治まると思う?
 そんな訳ないわよね。
 もっと、もおっと絶望を味わってから死んでもらわなくちゃ、割に合わないわ。
 だから、わざとこの人の敵に身内の情報を漏らして、
 殺し屋とかが送ってくるように仕向けたんだから」
 …そうか。
 情報の漏洩の元は、この女だったのか。

2471:2005/01/16(日) 03:16

「いつ殺し屋が襲ってくるか分からない時のこの人の怯えようといったら無かったわ。
 『死にたくない、死にたくない』って泣きながら私にすりついてきた事だってあるのよ?
 その時の痛快さっていったら!
 馬鹿よねぇ。
 私はこの人だけは殺さないって条件で、情報をリークしてたってのに?」
「何で、そんな条件を!?」
「決まってるでしょう?
 私が直接この人を殺す為よ。
 他の誰かに殺させるなんてたまったもんじゃないわ」
 憎いからこそ、自分の手で。
 それはある意味、『外法』の考えに通じるものかもしれなかった。
「それで最大のピンチから助かったと思った瞬間に、こうやって私が殺す。
 希望から一転して絶望のどん底。
 これが私の復讐。
 ま、あなたがあっさりと殺し屋を片付けたのは予想外だったけど。
 いいわ、それでも少しは演出の効果があっただろうから」
 まるで掃除を終わらせたかのようなすっきりとした顔で、女性は言った。
 何ら後悔する事など無いといったふうに。
「…だったら、だったらどうしてその赤ん坊まで殺す必要があった!
 その子は、お前の復讐には何の関係も無いだろうが!?」
 俺は叫んだ。
 どうして殺す。
 俺とは違って、殺さなくても生きていける人間の筈なのに、どうして殺す必要があるんだ。
「何をそんな簡単な事を。
 あの子には、あの男の血が半分流れていた。
 これ以上の理由があるかしら?」
「ふざけるな!!
 もう半分は、お前の血が流れているんだろうが!
 お前は、自分の子供がかわいくなかったのか!?」
「もう半分が私の血、だからこそよ。
 私の血にあんな男の血が混じっているなんて、
 考えただけでも怖気が走るわ…!」
 あの時の、「かわいいお子さんですね」と言った時の表情の原因はそれか。
 そんな事で、
 そんな理由であんなまだ小さい赤ん坊を…!
「質問は以上かしら?
 じゃあ、そろそろ疲れたんで終わりにするわね」
 女性が自分のこめかみに銃口を当てる。
「待―――!」
 一発の銃声が、辺りに響いた。





 俺は何をするでもなく、ただお湯の入ったホテルの湯船の中に浸かっていた。
 ハニーミルクの入浴剤の甘い香り。
 仕事が終わった後は大抵長風呂になるのだが、
 今日はもう1時間以上も風呂に入ってしまっている。
「……」
 タオルで軽く、自分の体を擦る。
 何をやっているんだか。
 こんな事をしたって、血で汚れきったこの体が綺麗になるなんて事は無いのに。
 俺が、殺人鬼でなくなる訳なんかじゃないのに。
「…畜生」
 誰に言うでもなく、独り呟く。
 何も出来なかった。
 俺も襲撃者も、あの女の復讐の片棒を担がされただけだった。
 銃弾を弾き、鉄すら砕く俺の『不死身の肉体(ナインライヴス)』も、
 たった一人の弱い人間の執念と憤怒と邪悪さの前には何の意味すら為さなかった。
 あの時、俺に何が出来たというのか。
 あの女の自殺を止めた所で、後に情報をリークした罪として処刑されるのは明白だ。
 だからといってあの女だけを責める訳にもいかない。
 あの女が言っていた事が真実ならば、女がああなった原因はあの男にあるのだから。
 だけど、これだけは断言出来る。
 あの赤ん坊には、何の罪も無かった。
 しかしそんな事が一体何になるのだろう。
 あの赤ん坊の潔白さを証明したとして、赤ん坊が生き返りはしないのに。

2481:2005/01/16(日) 03:16

「―――――!」
 唇を強く噛む。
 口の中に広がる鉄の味。
 ここまで気分が悪くなる仕事は久し振りだった。
 苛々する。
 むかむかする。
 やり場の無い怒りが込み上げる。
 だけど、それでも俺にはもう何も出来る事は残されていない。
 残ったのは、報酬の札束だけ。
 そんな物の為に、そんな物の為に俺は―――



「こんにちわー、狐さん」
 次の日、少年が俺の泊まっている部屋を訪ねて来た。
 先日の事件で知り合った、タカラギコというこの少年。
 さっき、俺が電話で呼んだのだ。
「何か用ですか?
 急に呼び出したりして」
 少年は何か嬉しそうに俺に訪ねた。
「いや、仕事が終わってまとまった金が入ったからさ。
 一緒に遊ぶのもいいかと思ってね。
 今日は何でも好きな物買ってやるぜ?」
「いや、そんな。
 悪いですよ」
「いいっていいって、遠慮すんなって」
 こんな薄汚れた金で、少年に何かしてやろうというのか。
 いいや、違う。
 金を少年と共有して使う事で、少年まで共犯者にしようとしているんだ。
 はは。
 笑える位、
 笑ってしまう位―――
 最低だな、俺は。
 本当に、最低だな。

2491:2005/01/16(日) 03:16

「…あの」
 少年がおずおずと俺に訊ねてくる。
「何だい、少年」
 出来るだけ普段通りに答える。
「狐さん、何か嫌な事あったんですか?」

 ―――――!

「どうして、そんな事…」
「狐さん、さっきから僕の目を見て話してません」
 …全てお見通し、か。
 この少年が鋭いのか、俺が隠し事をするのが下手なのか。
 どっちかは分からないけれど。
「…あれだな、少年」
「?」
「鈍い男よりは察しのいい男の方がマシだけど、
 一々口に出して言っているようじゃあ減点だな」
「??」
「本当にいい男ってのは、
 気づいたらそれとなく優しく接するものさ」
「…よく分かりませんが、難しそうですね」
「だな。
 俺が男だったとしても、そんな芸当は出来ねえ」
「そっすか」
「…まあでも、君にしては上出来な方かな。 褒美を遣わす」
「え―――?」
 戸惑う少年を他所に、俺は少年の体をそっと抱きしめた。
「あ、あの、狐さ―――」
「…ごめん」
 多分俺は、とてつもなく卑劣な奴なのだろう。
 少年の気持ちを知りつつ、それに答える覚悟も無いのに都合のいい時にだけ少年を求める。
 そして、俺はいつかこの少年を殺すのだろう。
「……」
 自己嫌悪に吐き気を催しそうになる。
 何が『九尾』だ。
 何が『最強の体現者』だ。
 本当の俺は、こんなにも脆弱で矮小な存在だというのに。
 それなのに、俺は、何かを殺す事しか考えられない。
 このままほんの少し力を込めれば、少年の背骨を折って殺す事が出来る。
 でも、そんな事はしない。
 殺したくはないから。
 まだ、殺すには早過ぎるから。
 もっと、もっともっと、もっともっともっと、
 少年の存在が俺の心の中で大きくなってからでないと、殺すのは勿体無い。
 違う。
 そんなんじゃない。
 俺は、そんな事など望んでなんかいない…!
「…少年」
「…はい?」
 その時俺は、本当は何が言いたかったのか。
 多分一生かけても、その答えは出てきはしないだろう。
「…死ぬなよ」
 だからこれが、今俺に言える精一杯の言葉だった。


                  〜番外編・了〜

2501:2005/01/18(火) 01:16
 〜四十四話〜

 ウララー、レモナ、兄者、弟者達『兇人絶技団(サーカス)』の面々が夜の樹海を疾走する。
 後ろからはもう弾丸の如き石飛礫は飛んでこない。
 どうやら、射程外までは逃げ切れたようだ。
「…くッ。 まさかこれ程とはね、外法狐…!」
 レモナが忌々しそうに舌打ちする。
「…正面からまともに戦っては勝ち目は薄いかもしれんな」
 兄者が呟く。
「なあに、恐れる事は無いさ。
 相手が奴一人なら、俺の『一騎当千(コープスダンス)』で1どうとでもなるからね。
 それに、弟者の『殺人奇術(マントラップ)』にだって勝機は充分にあるだろ」
「そうかもしれんが、用心に越した事は無い。
 『殺戮機械』の直弟子、伊達ではないぞ」
 事も無げに言うウララーを、兄者がたしなめる。
 その顔には、一切の油断も見つけられない。
「心配性だねえ、兄者は。
 数では、“こっちが圧倒的に上回っている”んだぜ?」
 ウララーはつまらなそうに口を開いた。
「…そういえば兄者。
 『殺人技術(ジェノサイダー)』の結界には何か引っかかったか?」
 弟者が思い出したように兄者に訊ねる。
「いや。 雑魚が引っかかった感触はあるが、本命はまだのようだ」
「そうか。
 まあ、そのうち網にはかかるだろう。
 期待してるよ、兄者」
 弟者が軽く兄者の肩を叩く。
「はん、美しい兄弟愛だね。
 うらやましい事で」
「やめなさい、ウララー」
 茶化すウララーにレモナが小言を入れた。
「これも一種の親しみの現れってやつさ。
 …さて、そこのお前。
 いつまで隠れているつもりだい?」
 ウララーが横に目を向ける。
 返事は、返って来ない。
「おいおい。
 隠れたり逃げたりしても無駄だってのは、分かってるんだろう?」
 ウララーがおどけた風に言うと、ようやく茂みの中から一つの人影が現れた。
 出てきたのは全身を包帯で巻いた男。
 包帯の巻かれていない右腕前腕部には『12』との青い刺青が入れられている。
「『D』の生き残りだね?
 今まで独りぼっちで逃げ隠れを続けて寂しかったろう。
 もうすぐ、仲間の所に送ってやるよ」
 ウララーがにやけた顔をD−12に向ける。
「キサマラナンゾニ、カンタンニヤラレルトデモ…!」
 血走った目でウララー達を睨みつけるD−12。
 次の瞬間、その体から無数の針が包帯を突き破って姿を見せる。
「やれやれ。
 まだ僕達に勝てるつもりでいるなんて、頭悪いねえ…」
 ウララーがうんざりとしたように肩を竦める。
 まるで、D−12の事など歯牙にもかけていないように。
「ウララー、『殺人技術』の結界に反応があった。
 感触からして、外法狐だ」
 兄者が低い声でウララーに告げる。
「そうか、分かった。
 君達は先にそっちに行ってろ。
 こいつは、僕が受け持っておく」
「了解した」
 ウララーの言を受けて、即座に兄者達がその場を後にする。
 二人っきりで取り残されるは、D−12とウララー。

2511:2005/01/18(火) 01:17

「ナメラレタモノダ。
 ヒトリデコノオレノアイテヲスルダト…!?」
「一人?
 何を言ってるんだい?」
 ウララーが微笑む。
 とびっきりの、邪悪な顔で。
「こっちは1000人がかりだぜ?」
 ウララーの体から念が発せられ―――
「―――ナ!?」
 D―12の顔が驚愕に歪んだ。
 目の前に広がる、“信じ難い光景”に。
「『一騎当千(コープスダンス)』…!」
「ウ、ウ、ウ、ウオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
 D−12が断末魔の悲鳴をあげた。



          @        @        @



 走る。
 走る。
 走る。
 樹海の出口に向かって、僕達は走り続ける。
 先頭は狐さん。
 殿は八頭身さん。
 僕のは2番目でその後ろにギコ。
「…もう狙撃は来ないみたいだな」
 ギコが呟く。
 まだダメージが残っているのか、走るだけでも大分辛そうだ。
「下手に射撃しても俺から反撃を受けるだけだって分かったろうからな。
 もう向こうも同じ手は使わないだろうよ。
 寧ろ本番はこっからだ。
 銃なんてちゃちい手段を使ってこなくなるって事だからな」
 走りながら狐さんが答える。
「……!」
 と、狐さんが急に立ち止まった。
 僕らもつられて一斉に足を止める。
「どうした、狐?」
 八頭身さんが狐さんに聞いた。
「…見ろよ、あれ」
 狐さんが地面を指差す。
 そこには、胸の辺りで胴体を両断された男の死体。
「…すげえ切り口だな。
 こんなに鋭い切断面、滅多にお目にはかかれねえぜ。
 しっかし一体どうやって…」
 狐さんが注意深く死体を観察する。
「…気をつけろ。
 死体があるって事は、敵が近くにいるかもしれねえってこったからな」
 ギコが僕に警戒をを促す。
 頷いて答える僕。
「…ま、ここで立ち止まっててもしょうがねえやな。
 さっさと先に進むぞ」
 狐さんが前に進み出ようとして―――

2521:2005/01/18(火) 01:18

「!!!」
 突然、狐さんが後ろに飛んだ。
 見ると、狐さんの着物の肩口の部分に鋭い切れ込みが走っている。
 いや、それだけじゃない。
 そこからは、うっすらと血が滲んでいた。
 馬鹿な。
 銃弾すら弾く狐さんの皮膚が、切り裂かれた?
「狐さん!」
 僕は慌てて駆け寄ろうとする。
「来るな!!」
 それを大声で制する狐さん。
「迂闊にそこらを動き回るな。
 でないと、そこの死体みたいにばっさりとやられるぜ…!」
 真剣な顔で狐さんが告げる。
「どうした。
 何があったんだ、狐」
 八頭身さんが狐さんに訊ねる。
「…これさ」
 狐さんが何も無い空間を指差す。
 …?
 何も見えないじゃないか。
 …!
 いや、あれは…
「糸…?」
 僕は思わず口を開いた。
 目を凝らすと、月明かりに反射する極細の線が見える。
 まさか、こんなもので狐さんの肌を裂いたというのか!?
「…糸にかなり強力な念が流されている。
 成る程、そこの死体の有様はこれが原因か」
 狐さんが感心したように呟いた。
 傷口は、既に修復を終えようとしている。
 何度も見るが物凄い自己再生力だ。
「こいつは困ったね。
 こんな罠があったんじゃ、無闇に走り回れねえや」
 狐さんが舌打ちする。
 確かに恐るべきトラップだ。
 目視し難い上に、殺傷力も抜群。
 僕達は徐々に追い込まれているという事か。
「よっと」
 そんな凶悪な糸を手刀で断ち切る狐さん。
 愚地独歩か、お前は。
「しゃあねえ。
 不本意だが、注意して進みつつこうして罠を無力化させながら進むしかねえな。
 お前ら、絶対に俺が通った道以外を歩くなよ?」
 言われなくとも、命が惜しいのであなたの後ろは離れませんよ。
「しかし、ふん。
 まさかこんな糸で俺に傷をつけるなんて芸当が出来るなんてね。
 『妖滅』… 流石に一筋縄じゃいかねえや」
 ゆっくりと進みながら、手探りで糸を探る狐さん。
 時間はかかるが、まあこれが現在において一番安全な進み方だろう。
 それにしても、こんな強力な念を使うなんて一体どんな化物…

2531:2005/01/18(火) 01:18

「!!!」
 狐さんが、いきなり右上の方を見上げた。
 つられて、僕達も同じ方向に視線を向ける。
 そこにあるは、高い崖の上の淵に立つ3人の人間。
 フーン顔の八頭身の男二人と―――
 もう一人は、見間違える筈も無かった。
 あれは、さっき僕とギコを襲った…
「レモナ…!」
 ギコが身構える。
 レモナさん達は、はっきりと僕達を見下ろしていた。
 待ち構えていたかのように。
 !?
 待ち構えていた!?
 どうやって僕達の位置を察知したんだ!?
「まさか…!」
 狐さんが「しまった」という顔をする。
「あの念の流れていた糸に触れた時に、
 居場所を悟られたか…!」
 吐き捨てるように言う狐さん。
 そうか。
 あの糸は攻撃としてのトラップだけでなく、
 索敵の意味も含まれていたのか。
 何という念能力。
 何という神業。
 これが、『妖滅』の実力なのか…!
「『小波(キリングパルス)』…」
 レモナさんが崖の肌に触れる。
「!!!」
 直後、鳴り響く地響き。
 地震!?
 いや、地震じゃあない。
 崖崩れ。
 レモナさんの触った崖が、こちらに向かって崩落してきているのだ!
「うわああああああああああああああ!!」
 崖崩れは凄い勢いで僕達を飲み込むかのように襲い掛かって来る。
 逃げる暇なんて無い。
 膨大な量の土砂は、今まさに僕の目の前まで迫っていた。


                     〜続く〜

2541:2005/01/19(水) 00:36
 〜四十五話〜

 僕は夢を見ていた。
 夢の中では僕はギコで、ギコは僕だった。
 僕とギコはお互い背中合わせの方向に歩き、道すがらにあらゆるものを殺して回った。
 ギコの僕は自分の手で全てを殺し、
 僕のギコは勝手に周りの奴らが殺し合った。
 そして地球を一周して、僕とギコは再び出会った。
 そして後ろに積み重ねられた死体を見て、僕達は声を揃えて言った。
「何だ。 結局どっちでも一緒だったんだ」





「起きろ」
 僕を夢の世界から引き戻したのは、狐さんの声だった。
「…お早うございます」
 目を開き、黙ったまま思考する僕。
 ええっと、何があったんだっけ。
 てか、何で体がこんなに土だらけになっているんだ。
 ああ、そうだ。
 思い出してきた。
 僕は崖崩れから逃げ切れずに、土砂の中に生き埋めになったんだ。
 いやあ、あの時は本当に死ぬかと思った。
 で、僕は今どうして生きているんだ?
 それともここは天国か地獄か?
「ったく、心配させやがって。
 君を発掘した所為で、折角の特注着物が台無しじゃないか」
 土まみれの迷彩柄の着物を手ではたく狐さん。
 て事は、わざわざ生き埋めになった僕を掘り起こしてくれたのか。
 発掘という表現は多少あれだが。
 僕は化石や土器じゃねえぞ。
「…!
 そういえば、他の皆は!?」
 僕は辺りを見回した。
 ギコや八頭身さんの姿は、どこにも無い。
「どうやら崖崩れから逃げる時にはぐれちまったみたいだな。
 …ま、こんなので死ぬような奴らじゃねえよ。
 問題は、こうして戦力が分断されちまったって事だ」
 狐さんが低い口調で言う。
 確かに、ここに着ての人員の分散は大きな痛手だ。
 糞。
 最初からこれが狙いだったのか。
「てか、どうやってあんな崖崩れなんか…
 どんな能力か知りませんが、反則過ぎですよ」
 あのオカマ、何て無茶をしやがるんだ。
 危うく死んでしまう所だったじゃないか。
「理論的には可能さ。
 あいつの『小波(キリングパルス)』ならな」
「そういやレモナさんの能力が分かったって言ってましたけど、あれ結局何なんですか?
 崖崩れと何か関係あるんですか?」
 僕は狐さんに訊ねた。
「一発喰らって確信したよ。
 あいつの念『小波』は、念を超高速振動波に変える変化形能力だ」
「超高速振動波…」
 成る程。
 触れただけでギコがノックアウトされたのはその所為か。
 手を相手に当てて『小波』を発動。
 振動で直接体内から破壊する。
 分かってしまえば単純極まりないトリック。
「でも、それとさっきの崖崩れとどういう関係が?」
「簡単さ。
 ああいう崖とかには全てを支えている点というものが存在する。
 その点を微弱な振動で探って、探知したらそこに向けて今度は強力な振動で一気に破壊。
 そうする事で、いとも容易くあそこまでの規模で崖を崩落させたんだ」
「そんな事が可能なんですか!?」
 理屈はそれで正しいのかもしれない。
 だけど、そんなの並大抵の技術じゃ不可能だ。
 神業、というより魔技の領域だ。
「だが現実には“それ”が起こった。
 それが全てさ。
 いいかい少年。 君が相手にしているのは、そういう奴らなんだぜ?」
 狐さんが諭すように言う。
 どいつもこいつも―――
 全くもってどいつもこいつも、
 頗る付きの人外揃いだ。

2551:2005/01/19(水) 00:36

「―――!」
 突然、狐さんの体が硬直した。
「狐さん!?」
 驚いて声をかける。
「!!!」
 その直後、狐さんの右腕が僕の胸部目掛けて突き出される。
 ―――!?
 何で!?
 まずい、避けられ―――
「……!!」
 しかし、当たる寸前で狐さんの右腕はその動きを止めた。
 狐さんが左手の方で右腕の動きを止めたからだ。
 いや、そんな事よりも。
 今、何が起こったというのだ?
「…!
 逃げろ、少年!!」
 必死な顔で狐さんが叫ぶ。
 左腕で、右腕を無理矢理押さえ込みながら。
 まさか、体を勝手に動かされているのか!?
 だとすれば、誰が、どうやって―――
「―――!!」
 背後から視線を感じ、僕は咄嗟に振り返った。
 そこには一人のフーン顔の男が一人、こちらの様子を窺っている。
 間違い無い。
 あいつは、さっき崖から僕達を見下ろしていた奴だ。
「…流石は外法狐。
 俺の『殺人奇術(マントラップ)』にそこまで逆らうか」
 平坦な声で、フーン顔の八頭身は言った。
 あいつが、狐さんの異変の原因なのか!?
「てめえは…!」
 今にも暴走しそうな体を押さえ込みながら、狐さんが男を睨みつける。
「俺の名は妖滅狭州我(あやめ さすが)。
 仲間からは弟者と呼ばれているがね。
 ま、これから死ぬお前らには意味の無い事ではあるがね」
 冷ややかな目でこちらを見据えたまま、そいつは弟者と名乗った。
 弟という事は、兄も居るという事か!?
 そういえば、崖の上の4人の中にはこいつにそっくりな奴が居た。
 恐らく、そいつが兄なのだろう。
「てめえ、くそ、こんな手品で…!」
 狐さんが苦しそうに呻く。
 狐さんをここまで追い込むなんて、こいつ、一体どういう能力なんだ!?
「ああ、無理はしない方がいい。
 余計な苦しみを味わうだけだぞ?
 いかに貴様といえど、この『殺人奇術』には対抗出来ん」
 余裕の表情を浮かべたまま弟者が告げる。
 と、その手元が一瞬キラリと光った。
 何だ?
 あれは、糸!?
 まさかさっきの罠はこいつが…
 いや、違う。
 あれより、もっと細い糸だ。

2561:2005/01/19(水) 00:37

「がッ、くぅ…!
 そうか、てめえまさか…!
 俺の体組織に、直接電流を流してやがるな!?」
「そう、お察しの通りだよ。
 直径数ミクロンにも及ばぬ極細の金属糸。
 無論こんなものではちっともダメージなんか与えられやしないが、狙いはそれじゃない。
 こいつを生物の体内に侵入させ、電気を流した事による筋反応で自在に操る。
 これこそが『殺人奇術』。
 しかし流石は『不死身の肉体(ナインライヴス)』の超肉体だ。
 蜘蛛の巣程も無い金属糸の感触を察知して、そこまで見抜いたか」
 レガート・ブルーサマーズか何かか、お前は。
「俺の念はとても弱い。
 とてもとてもとても弱い。
 スタンガンにも及ばない電気しか生み出せない。
 だけど、人を殺すにはそれで充分過ぎる」
「があッ!!」
 今度は狐さんの左腕があらぬ方向に捻れる。
 間接や骨格すら無視して、筋肉の力で無理矢理体を捻じ曲げているのだ。
 そのまま腕に引っ張られる形で転倒する狐さん。
「諦めろ外法狐。
 お前がいくら強かろうと、いくら優れた肉体を持っていようと、
 体の構造が人間と同じである以上、俺の『殺人奇術』の前には無力だ」
「へッ…
 ふざけた事言ってんじゃ… ぐあぁッ!!」
 ゴキリ、と狐さんの腕から鈍い音が響いた。
 腕の関節が破壊されたのだ。
 馬鹿な。
 あの狐さんが、赤子のようにあしらわれているだと!?
「…しかし確かに大した肉体強度ではあるな。
 普通なら、もう既に腕を捻り切っているというのに。
 正直、ここまで俺の『殺人奇術』に抵抗したのはお前が始めてだ」
 弟者が感心したように狐さんを見据える。
 その間にも、狐さんの腕は更に捻じ曲げられていった。
「やめろぉ!!」
 僕は弟者に向かって突進した。
 もう、動けるのは僕しか居ない。
 少しでも、狐さんが反撃する為の時間を稼がなければ…!
「五月蝿い」
 弟者は僕に目も向けずにそう言い放った。
「!!!」
 刹那、僕の右足が僕の意思とは無関係に逆方向に折れ曲がる。
 迸る激痛。
 しまった。
 既に奴の奇術に取り込まれていたのか…!
「少年!!」
 狐さんが叫ぶ。
 駄目だ、狐さん。
 僕なんかに構わずに―――
「他人に気を回している暇があるのか?」
 弟者がその一瞬の隙を逃す筈は無かった。
 虚をつかれ、狐さんの左腕がそこだけ別の生き物のように跳ね上がる。
 そしてその手の指がそのまま、狐さんの胸、丁度心臓のある位置に突き立てられた。
「ぐあああぁッ!!」
 苦悶の叫びをあげる狐さん。
 やめろ。
 それだけはやめてくれ。
 狐さんを、殺さないでくれ…!
「チェックメイトだ。
 このまま自分の心臓を自分の手で抉り出して死ぬがいい」
 弟者が冷淡な表情のまま、死刑執行の合図を告げた。


                  〜続く〜

2571:2005/01/20(木) 00:44
 〜四十六話〜

 タカラギコと外方狐が弟者と接触したのと同時刻、
 八頭身はそこから200メートル程離れた場所をさまよっていた。
 当然だが弟者と交戦中の外方狐とタカラギコはその場に居る訳が無いし(これは八頭身には知り得ぬ事だが)、
 ギコも同様に崖崩れが起きた際にはぐれてしまったようだ。
 かといって、大声を出して探し回るわけにもいかない。
 そんな事をすれば、『妖滅』にわざわざこちらから居場所を教えるようなものだ。
 しかし… どうしてこんな悪夢のような場所に巻き込まれてしまったのか。
 八頭身は考える。
 自分から狐についていくと志願した手前あまり愚痴は言えないのだが、
 それでもある程度こういったのっぴきならない事態になるとは予想出来た筈だし、していた。
 にもかかわらず自分は今こうしてここに居るのはどういう事か。
 いや、どういう事かも何も、自分でここに来たからここに居るという以外の答えは無いのだが、
 それでも何か異様だ。
 何か、見えざる手によって導かれたような、見えざる糸に手繰り寄せられたような…
 そういう不可解で不快な違和感。
 糸―――
 そういえばあの糸の罠には気をつけなければ。
 いや、糸の罠だけじゃなくて、それを設置した奴にも、だが。
 あの狐の皮膚すら切り裂く程の鋭さを秘めた糸。
 恐らくは糸の強度を強化する、強化系の念能力者といった所か。
 あんなものを喰らっては一溜まりも無い。
 包丁人味平の白糸釣鐘崩しのように、細切れに解体されてしまうのが落ちだ。

 それにしても、狐の助けたがっていたあの少年は一体何なのだ?
 不自然なくらいギコに似ているあの少年…
 まるでギコの真似をする為に生まれてきたような、どこか逸脱した人型。
 そもそもギコのような奴がこの世に居るというだけで仰天なのに、
 それの鏡像がいるなどとはどういった性質の悪い冗談なのだ。
 いやそれよりも、何よりも一番驚くべき事実は、
 “あの”狐とあそこまで深く関わっておきながら、どうしてまだ狐に殺されていないのだ?
 ありえない話だ。
 狐が、『妖滅』を敵に回してまで守りたいような奴を自分の手で殺していないなんて。
 あの少年は、本当に一体全体どういう存在なのだ?
 もしや。
 もしやの話ではあるが。
 こうして自分や『妖滅』、そして『D』が今この場所に集結しているのは、
 あの少年が関係して―――
「……」
 八頭身は頭を振る。
 止そう。
 今はそんな事を考えている場合ではない。
 それにあのどこにでも居そうな少年が、この殺戮の元凶だと?
 笑えない冗句にも程があるというものだ。
 まさか。
 そんなまさかな。
 それは余りにも突飛な考えだ。

2581:2005/01/20(木) 00:45

 しかし思い返してみれば、外法狐もまた理解し難い人間ではあった。
 あいつは、外法にしてはあまりに正常に憧れ過ぎる。
 自分やギコ、そして他の『外法』の構成員は大なり小なり、
 普通であるという事を諦めているというのに。
 どう足掻いても殺してしまう、自分の呪われた性質に絶望して―――
 人間である事を、止めてしまうのが当然なのに。
 それでも狐はどこまでも一般の人間である事を求めた。
 いつかの酒の席で、狐が「将来の夢はお嫁さん」と真顔で言った時など、
 鳥肌すら立った覚えがある。
 無駄だという事は明白なのに。
 異常な人間が正常であろうとするなど、異常以外の何者でもない。
 狐にしても、それは分かっているのだろう。
 『外法』の中で最も『外法』らしいのに、
 誰よりも『外法』である事から逃れようとする二律背反。
 だからこそ。
 だからこそのあそこまでの『強さ』か。
 もしかしたら狐があの少年を殺さない理由は、そこらへんにあるのかもしれない。

「……と」
 そこまで考えた所で八頭身は立ち止まる。
 目の前に先程狐が発見したのと同じ糸のトラップを見つけたからだ。
 糸に触れないように、慎重に潜り抜ける。
 糸に触れたらその感触で居場所を察知されるのは、数分前に実証済みだ。
 しかし糸とは、中々に厄介である。
 ただでさえ細くて見え難いというのに、こうして夜に合わせて黒い糸など使われてはお手上げだ。
 その上ご丁寧に念を流した上に『隠』で覆っている。
 かなり注意して進まなければ、あっという間に糸の餌食になってしまうだろう。
「……」
 無言のまま、八頭身は狐達の安否を気遣った。
 あいつらは大丈夫だろうか?
 狐はまあ心配はいらないだろうが、問題はギコとタカラギコである。
 彼らは、まだまだ『妖滅』と戦うには時期尚早もいいところ。
 特にタカラギコに至っては素人同然である。
 『妖滅』を前にしては、10秒と持つまい。

2591:2005/01/20(木) 00:45

 しかし…
 それにしても厳重なトラップだ。
 辟易した顔で糸を掻い潜り続ける八頭身。
 ここまで執拗に張り巡らされては、10メートル進むだけでも一苦労だ。
 こんな場所で敵に襲われてはたまったものではない。
 ちょっと攻撃を避けようとしただけで、糸でズタズタに―――
「……!?」
 そこで、八頭身は一つの疑問を感じた。
 そう、こんなに糸を張り巡らしてはまともに戦う事など不可能だ。
 しかしそれは敵にしたって同じ事だろう。
 ここまで緻密に張り巡らした糸の場所を性格に全て把握するなど、
 例えその罠を仕掛けた奴が仲間にいたとしても無理である。
 だから恐らく、狐が傷をおった罠は殺傷よりも寧ろ、
 こちらの居場所を探るためのものだった筈だ。
 では、今はどうか。
 崖崩れでバラバラになってしまった自分達を探す為のものだろうか。
 いや、それは違う。
 先程わざわざ発見しておきながら、崖崩れで再び見失ってしまうなど、
 馬鹿馬鹿しい話である。
 ではこれは。
 これはまさか―――
「戦闘舞台を作っているのか!」
 そこまで推理した時には、もう遅かった。
 辺りには縦横無尽に糸が張り巡らされている。
 敵は自分を探してなんかいない。
 正確な時間は分からないが、とっくの昔に発見されていたのだ。
 だからこうして、罠に見せかけて自分に有利な戦場を整えていたのだ。
 これだけそこらに木々が生い茂っていれば、糸を引っ掛ける為の凹凸など幾らでもある。
 つまりは、ここは糸使いにとっての独壇場という事か。
 そしてこの一見敵味方双方にとって危険な糸の結界を張ってまで、
 戦いを挑んでくる可能性があるのはただ一人。
 それは他ならぬ、糸使い自身…!

 キュアッ

 風を切るような音が闇の中から響いてくる。
 死―――
 直感的に危険を察知し、八頭身が体を屈める。
「!!」
 しかし、それは攻撃を完全に回避するには至らなかった。
 音から一拍の間を置き、八頭身の右耳が切断されて地面に落ちる。
「がッ…!」
 狼狽する八頭身。
 見えなかった。
 どこからどう攻撃が来たのか、全然見えなかった…!
「流石『外法』。
 今のをよくかわしたものだ」
 パチ パチという乾いた拍手の音と共に、暗がりの中から男の声が発せられる。
 目を凝らす八頭身。
 すると闇の中からは、徐々にその声の主の輪郭が明らかになっていった。
 フーン顔の、八頭身と同じくらいの慎重の男。
「俺の名前は妖滅刺菅(あやめ さすが)。
 兄者とでも呼んで貰おうか」
 そっけない笑みを浮かべたまま、兄者は名乗った。
「お前がこの糸使いか…!」
 身構える八頭身。
 アドレナリンが大量に分泌されている所為で、右耳を切断された事による痛みは無い。
 あったとしても、それを意に介していられるような状況ではないが。
「Exactry(その通り)。
 最早ここら一体の空間は俺の『殺人技術(ジェノサイダー)』の支配下。
 言うなればお前は、標本にされる前の虫かごの中の虫も同然だ」
 兄者がツイと指を動かす。
 それに合わせて八頭身の頬がざっくりと裂けた。
 その様子を薄ら笑いで見つめ、
 兄者が勝利を確信した顔つきで兄者に告げる。
「予告してやろう。
 俺はこの場から一歩も動かないまま、指一本でお前を殺すとな…!」


                 〜続く〜

2601:2005/04/12(火) 00:26:14
ぎゃー!
貼り間違い!
気を取り直して…

 〜四十六話〜

 全身のあちこちを切り裂かれ、外法八の体中は血の赤色に染まっていた。
「よくやる。ここまで俺の殺人技術から生き延びたのは、お前が始めてだよ」
「…………」
 兄者の言葉に、八頭身、外法八は何も返さない。
 と言うより、何か言うだけの気力が残っていなかった。
 しかし――兄者は心の隅に何か引っかかるものを感じていた。
 果たして、こんなに上手くいっているのは自然なのだろう?
 いくら用意周到に舞台を整えておいたとはいえ――いくら自分の殺人技術(ジェノサイダー)が無敵とはいえ――
 ここまで、一方的だとは。
 しかも奴は特有の能力すら使う素振りを見せない。
 外法といえど、所詮この程度――にしても、余りにも歯応えが無さ過ぎる。
「……ふん、まあ、どっちにしろ殺すだけだ」
 兄者はそう呟いて思考を止めた。
 これ以上考えたところで、それは、無意味なことだろう。
 危険だと思うのならば、それこそすぐにこいつを殺すべきだ。
「死ね……!」
 兄者がクンッと右手を動かす。
 ヒウンヒウンと空を切るような音が聞こえて――直後、八頭身の右腕は切り落とされた。
「…………!」
 八頭身が落とされた腕の切断面を押さえて屈みこむ。
 勘のいい奴。
 兄者は舌打ちすると同時に感心する。
 頭を真っ二つにしてやるつもりだったが――咄嗟に反応して即死を逃れたか。
 だが、それでも致命傷ということには変わりは無い。
 ならば次で頭を両断してやればいいだけの話だ。

「いや、実際お前はよく頑張った方だよ」
 兄者が賞賛の言葉を口にしながら、今度こそ八頭身の頭へと糸の狙いを定める。
「だけど、しつこい男は嫌われるぞ? 分かったら、さっさと死にな」
 もう一度、兄者が右手をクンッと動かす。
 ヒウンヒウンヒウン。
 極細の糸が八頭身の頭に巻きつく。
 そして兄者は八頭身の頭を輪切りにすべく糸を引っ張って――

2611:2005/04/12(火) 00:26:38

「――――!?」
 八頭身に巻きついていた糸が、粉々に砕け散った。
 馬鹿な。
 声にこそ出さなかったが、兄者は驚愕した。
 糸はかなりの強度を有している筈だし、何より兄者の念を流すことで強化している。
 それが、あっさりと砕け散ったのだ。
 !!
 まさか、八頭身の能力――

「……痛い」
 八頭身が小さく呟いた。
「痛い、痛い、痛い……」
 傷口を押さえ、体中を震わせ、八頭身が繰り返す。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い
 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
「な――?」
 尋常ならざる八頭身の様子に、兄者が狼狽する。
 見ると、八頭身の体からは、何か白い靄(もや)のようなものが立ち上っている。
「1さん、痛い…… 1さん痛いよおぉ……!
 どうして、どうしてこんな酷いことするんだよ1さぁん!!」
「1、さん?」
「酷い、酷い、酷い酷い酷いいィ!
 僕はこんなに1さんのことが大好きなのに、こんなことするなんてぇ!
 いくら1さんでも酷すぎるぅ!」
「お前は、何を――」
 しかし兄者の言葉は、既に八頭身の耳には入っていなかった。
 血を流し、涙を流しながら――八頭身はひたすらに1さんの名を連呼する。

2621:2005/04/12(火) 00:27:11
「は――あはは! そうか! そうだったのか!
 分かったよ1さん! 本当は僕のことを好きだけど、つい素直になれずにこんなことしてしまうんだね!
 ごめんよ1さん。 でも、僕にはちゃあんと分かってるからね!」
「おま――」
「なあんだ! そんなことだったなら、もっと早く言ってくれればよかったのに!
 だったら僕も受け入れる心の準備が出来たってものさ!
 ああ、1さんの与えてくれた痛み、何て気持ちいいんだぁ……!
 見て、僕もう三回も射精しちゃたよ!!」
 八頭身が兄者の方へと向き直る。
 股間を大きく膨らませ兄者を見詰めるが――しかし、八頭身の目には、
 最早兄者は1さんにしか写っていなかった。
「な、何なんだお前は!?」
 嫌悪感を我慢できなくなった兄者が、八頭身を抹殺すべく糸を放つ。
 無数の糸が一斉に兄者へと襲い掛かり――
「!!!!!」
 糸が、残らず粉々に砕け散った。
「ば――これは――?」
 そこで、兄者ははっと気が付いた。
 八頭身の周囲が――否、八頭身から立ち上る靄に覆われた部分が、白く凍りついている。
 まさか、これが八頭身の――
「『絶対零度の炎(コールドブラッド)』」
 超低温の、白き霧。
 八頭身の精神が理性のリミッターを振り切るまでに暴走(オーバーヒート)した時のみに顕現する、
 彼の切り札であり奥の手の、念能力。
 いくら念を流して強化しているとはいえ、兄者の使うそれは元を正せばただの糸。
 凍った薔薇が地面に落ちて粉みじんになるように――
 糸が例えどれほど強靭で鋭くとも、一度凍りついてしまえば脆くなる。

2631:2005/04/12(火) 00:28:10
「――――! なあ!?」
 そしてそれは、兄者にとって八頭身が何よりの天敵であることを示していた。
 兄者の糸は全く意味を為さない以上、兄者にはいかなる攻撃の手段も残されてはいなかった。
「くそ、こんなことが……!」
 兄者は即座に退却を選択した。
 自分や弟では、こいつに勝てない。
 他のレモナやウララーならば、こいつに勝てる可能性は十分にある。
 何より、こいつは手負いだ。
 ならばここは一旦退いて、他の奴に任せるのが得策だ。
「逃さないよ、1さ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」
 しかし――八頭身は体の怪我を一切感じさせないような速度で、兄者目掛けて突進してきた。
 周囲に張り巡らされた糸も、凍ってしまって全く罠の役目を果たさず、
 八頭身は一直線に兄者に向かってくる。
「こ、この――化物がぁ!!」
 兄者が必死に糸を放つも――それが完全に無意味であることは彼自身が一番よく分かっていた。
 糸は正確に八頭身の急所に巻きつくが、巻きついた端からはかなく砕け散る。
 何も、八頭身を止めることは出来なかった。
「来るな! 来るな!
 来るなぁ!!」
 兄者と八頭身との距離がみるみる縮まっていく。
 そして八頭身が残った方の腕を兄者に伸ばして――

「捕まえた」

 八頭身の腕が、がっちりと兄者の頭を掴んだ。
「な……!
 うわあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 兄者の顔がみるみる凍っていく。
 渾身の力を込めて八頭身の手を振り払おうとするも、
 八頭身の手は万力の如く兄者の頭を掴んで放さなかった。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
 兄者の叫びが夜の森に響く。
 しかし、助けは誰一人として駆けつけることは無かった。
「…………!」
 兄者の頭部が完全に凍り――そして全身が連動して氷結する。
 まるで氷細工のように、兄者の体は死ぬ直前と同じままの姿で固まっていた。
「ああ〜〜〜〜〜1さん1さん。 何て可愛いんだ〜〜〜〜〜」
 八頭身が兄者を抱きしめようとするが、しかし、兄者の体はその圧力に耐え切れずに四散した。
 凍った兄者の体の破片が、そこらじゅうにまき散らされる。
「あれ? 1さん……1さん?
 ああ〜〜〜〜〜〜〜!
 またやっちゃったよお!
 今度こそは、優しくしようと思ったのにいいいいいいいいいい!」
 八頭身の後悔の叫びは既に兄者には聞こえていなかった。
「ごめんね1さん、ごめんねごめんねごめんね。
 僕もこんなことは嫌なのに、ついやってしまうんだ。
 でも、君なら許してくれるよね?
 ごめんね1さんごめんね……」
 誰も聞く者のいない八頭身の懺悔が繰り返される。
 余談だが――彼が言うところの1さんは、もうこの世には存在していない。
 彼が、1さんに拒絶された時に、思い余って殺してしまっているのだ。
 1さんは、もう八頭身の心の中にしか存在していない。
 しかし――八頭身はそのことを、本当に理解しているのだろうか?
「ごめんね1さんごめんね1さんごめんね1さんごめんね1さんごめんね1さん
 ごめんね1さんごめんね1さんごめんね1さんごめんね1さんごめんね1さん
 ごめんね1さんごめんね1さんごめんね1さんごめんね1さんごめんね1さん……」
 八頭身のその言葉だけが、闇の中でこだまし続けるのだった。


                        〜続く〜

264グッドーケーン:2005/10/07(金) 06:57:10
さてと、原作設定では無いが書かせてもらおう

265グッドーケーン:2005/10/07(金) 06:57:23
さてと、原作設定では無いが書かせてもらおう

266グッドーケーン:2005/10/07(金) 07:02:39
ポタ・・・ポタ・・・
血が落ちる音が今は誰も居ない古い工場に響く・・・
「いい加減でてきたらどうだい?君の仲間も皆死んじゃったんだしさ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・出てくる気は無いみたいだね・・・・まぁ、それならそれで
 いいさ、君程度の奴を見つけるなんて簡単だからね」

         <念能力・索敵殲滅(サーチ&デストロイ)!>
        
「さて・・・・ゲームの始まりだ・・・・・」

267:2005/10/07(金) 07:17:39
ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!
物が壊れる、または吹き飛ぶ音

奴・・・・・・・・『モララー・バイカル』が辺りを破壊しつくす・・・・・・・
奴の念能力・・・・索敵殲滅・・・強力な索敵能力と、自分を中心とした
衝撃破を放つ念能力―――だが俺の念は攻撃用では無い、どちらかと言えば
味方を補助する能力だ、それに自分自身この能力がどんな力を持つか
少ししか分かっていない、この能力は『自分で考えた物』では無いのだ
そもそも俺には素質が無かったのだ、だが、ある女の念能力によって
無理矢理この力を引き出されたのだ、俺が分かっているこの念能力
<時空制御(タイムセイバー)>の能力は

1:味方のスピードを上げる
2:敵のスピードを下げる
3:空間を拡大→収縮して爆発させ相手を吹き飛ばす(爆発した空間は30秒ほどで元に戻る尚、爆発の規模は小さく直接的攻撃力は無い)
この3つだけだ、3には直接的攻撃力は無いし
自分のスピードを上げて逃げたところですぐに追いつかれる
相手のスピードを下げたところで衝撃破のスピードは下がらない・・・
「はぁ・・・・・」

静かに、ため息をつく

「・・・・・・まさに八方塞がりだな・・・」

バリーン!
何かが落ちる音・・・・まさか・・・気づかれた!?

慌てて物音がした方向を見る、だがそこには誰も居ない・・・・・

「なんだ、こんなとこにいたのかぃ・・・?」

・・・・・!

ズガァン!!!

衝撃破のエネルギーが収束されて紫色の剣になっている・・・・・
その剣からはとてつもない禍々しさが感じられる・・・

268:2005/12/04(日) 21:56:09
四十八話

 そしてその手の指がそのまま、狐さんの胸、丁度心臓のある位置に突き立てられた。
「ぐあああぁッ!!」
 苦悶の叫びをあげる狐さん。
 やめろ。
 それだけはやめてくれ。
 狐さんを、殺さないでくれ…!
「チェックメイトだ。
 このまま自分の心臓を自分の手で抉り出して死ぬがいい」
 弟者が冷淡な表情のまま、死刑執行の合図を告げた。
「所がそうは問屋がおろさない」
淡々とした口調で誰かが言う、誰だ?擬古?八頭身?
「!?」
それに動揺したのか弟者の指が止まる、同時に狐さんの腕も
「シッ!」
突如銀色の閃光が周りを走ったと思ったら『プチ』と糸か何かが切れる音がする
そして狐さんの体が動きだす
「糸が・・・・切れた?」
僕が力無くそういう
「馬鹿な・・・この糸は鋼鉄製だぞ!?普通の人間に切れるはずが・・・」
弟者がかなり動揺しながら喋る、そう、この糸は狐さんでも切る事ができなかった糸、
普通の人間に壊せる者じゃない
「残念だが、俺は普通の人間じゃないんでな、俺みたいなのに理屈うんぬんを言っても無駄無駄だ」
どこかで聞いたようなジョークを言いながらそいつは喋る、
「まさか・・・嫌、そんなはずが・・・・!?」
慌てている―――――僕から見てもわかる程に  ゲホウウサギ
「貴様は外法狸と共に死んだのでは無かったのか!?外法兎!」
外法?狐さんと同じ――外法?
「あいにくだが、それくらいでくたばる程ヤワじゃないんでな、今までは諜報活動に専念していただけだ
誰にもその存在を悟られずに・・・・な」
冷淡に・・・・ゆっくりとその人物・・・外法兎は喋る
「くっ、だが俺の殺人奇術なら――――」
「ほぅ?俺に勝つ気でいるのか?・・・・面白い、唯一方的に殺しても面白く無いしな・・・・・
 少しは俺を楽しませろよ」
「っ―――!ほざくな!」
まだ糸を持っていたのか、糸の先に槍の用な物を付け外法兎に向かって投げる
「見よ!これが俺の殺人奇術の集大成!奇臨愚導縷!!!」
投げられた糸が寸分違わず外法兎に向かって飛んでいく、さながら流星のように――
だがその流星は外法兎にささる事は無かった、消えた、いや、最初から糸など存在しなかった用に
『消滅』したのだ、『物質を消滅させる能力』それがあの人の念?なら狐さんを操っていた糸も
『消滅』させたのか?答えはNO、確かにあの糸は切断されていた、鋭利な刃物によって
「こんな物が貴様の最終奥義とはな、笑わせてくれる、ワロスw」
兎が笑う

269:2005/12/04(日) 21:56:39
「くっ――ならばもう一度!」
弟者が構える――
「もう一度?その腕でか?」
兎が言う、
「何を言って――――」
「ぐがぁaAlaあぁAalaあぁaAllaあa!?」
そう、腕が無いのだ、斬られたそう判断するのが正しいだろう、
だが何時?どうやって?見た感じだけでも兎の弟者の距離は10m.以上ある、10m.の刀などない、だがナイフを投げただけで
あそこまで綺麗に切断できる訳がない
「うるさいぞ、小僧、黙っていないと次は痛がる暇もあたえんぞ」
兎が冷淡な口調で言う
「ぐがぁっ・・・・・ここは、一旦兄者達と合流して――」
そういって弟者が走ろうとする
「いかせんさ」
だがそこに兎が立ちふさがる
「お前に一つ質問をしよう」
「質問・・・だと?」
兎がふざけた事を言い出す
そんなことしてる暇あったら早くそいつ殺して僕の糸も切れよ
「苦痛をともなわない『死』と、苦痛をともわう『氏』どっちがいい?」
「そんな質問に答える義理は無い!」
弟者は兎に背を向けて走り出す
「そうか、苦痛をともわない、一瞬の死がお望みか」
外法兎がそういった瞬間―――――
弟者の右足、左足、首、体がバラバラになった
「残念だ、もっと楽しみたかったのに――――――」
弟者の死体が地面に落ちるこれで一応の危機は脱出した
「さて・・・・・・・・・・・」
だが、安心は出来ない、そう今この場所では
『敵の敵は味方』なんて理屈は役にたたない
『敵の敵は敵』なんて事もありえるのだ
「少年・・・逃げろ・・・・・・!」
狐さんが言う、どうやら動ける用になったらしい
「お前じゃ・・・無理だ・・・・!」
狐さんが言う、でも僕は――
「断ります・・・・好きな人を置いて逃げられる訳ないじゃないですか」
そう、僕は逃げない、僕は偽者、偽者の痛み、偽者の名前、偽者の体
でも、狐さんに感じるこの感情だけは偽者じゃない――――――――
だから僕は逃げない、例え殺されても――――

              〜続く〜

270:2005/12/04(日) 21:57:41
失敗しました、四十七話に脳内変換しといてください

271能力不明の念能力者:2006/04/18(火) 14:51:06
age

272能力不明の念能力者:2006/08/29(火) 12:08:18
age


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