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念を使わせてみよう小説スレッド
247
:
1
:2005/01/16(日) 03:16
「いつ殺し屋が襲ってくるか分からない時のこの人の怯えようといったら無かったわ。
『死にたくない、死にたくない』って泣きながら私にすりついてきた事だってあるのよ?
その時の痛快さっていったら!
馬鹿よねぇ。
私はこの人だけは殺さないって条件で、情報をリークしてたってのに?」
「何で、そんな条件を!?」
「決まってるでしょう?
私が直接この人を殺す為よ。
他の誰かに殺させるなんてたまったもんじゃないわ」
憎いからこそ、自分の手で。
それはある意味、『外法』の考えに通じるものかもしれなかった。
「それで最大のピンチから助かったと思った瞬間に、こうやって私が殺す。
希望から一転して絶望のどん底。
これが私の復讐。
ま、あなたがあっさりと殺し屋を片付けたのは予想外だったけど。
いいわ、それでも少しは演出の効果があっただろうから」
まるで掃除を終わらせたかのようなすっきりとした顔で、女性は言った。
何ら後悔する事など無いといったふうに。
「…だったら、だったらどうしてその赤ん坊まで殺す必要があった!
その子は、お前の復讐には何の関係も無いだろうが!?」
俺は叫んだ。
どうして殺す。
俺とは違って、殺さなくても生きていける人間の筈なのに、どうして殺す必要があるんだ。
「何をそんな簡単な事を。
あの子には、あの男の血が半分流れていた。
これ以上の理由があるかしら?」
「ふざけるな!!
もう半分は、お前の血が流れているんだろうが!
お前は、自分の子供がかわいくなかったのか!?」
「もう半分が私の血、だからこそよ。
私の血にあんな男の血が混じっているなんて、
考えただけでも怖気が走るわ…!」
あの時の、「かわいいお子さんですね」と言った時の表情の原因はそれか。
そんな事で、
そんな理由であんなまだ小さい赤ん坊を…!
「質問は以上かしら?
じゃあ、そろそろ疲れたんで終わりにするわね」
女性が自分のこめかみに銃口を当てる。
「待―――!」
一発の銃声が、辺りに響いた。
俺は何をするでもなく、ただお湯の入ったホテルの湯船の中に浸かっていた。
ハニーミルクの入浴剤の甘い香り。
仕事が終わった後は大抵長風呂になるのだが、
今日はもう1時間以上も風呂に入ってしまっている。
「……」
タオルで軽く、自分の体を擦る。
何をやっているんだか。
こんな事をしたって、血で汚れきったこの体が綺麗になるなんて事は無いのに。
俺が、殺人鬼でなくなる訳なんかじゃないのに。
「…畜生」
誰に言うでもなく、独り呟く。
何も出来なかった。
俺も襲撃者も、あの女の復讐の片棒を担がされただけだった。
銃弾を弾き、鉄すら砕く俺の『不死身の肉体(ナインライヴス)』も、
たった一人の弱い人間の執念と憤怒と邪悪さの前には何の意味すら為さなかった。
あの時、俺に何が出来たというのか。
あの女の自殺を止めた所で、後に情報をリークした罪として処刑されるのは明白だ。
だからといってあの女だけを責める訳にもいかない。
あの女が言っていた事が真実ならば、女がああなった原因はあの男にあるのだから。
だけど、これだけは断言出来る。
あの赤ん坊には、何の罪も無かった。
しかしそんな事が一体何になるのだろう。
あの赤ん坊の潔白さを証明したとして、赤ん坊が生き返りはしないのに。
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