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念を使わせてみよう小説スレッド

2571:2005/01/20(木) 00:44
 〜四十六話〜

 タカラギコと外方狐が弟者と接触したのと同時刻、
 八頭身はそこから200メートル程離れた場所をさまよっていた。
 当然だが弟者と交戦中の外方狐とタカラギコはその場に居る訳が無いし(これは八頭身には知り得ぬ事だが)、
 ギコも同様に崖崩れが起きた際にはぐれてしまったようだ。
 かといって、大声を出して探し回るわけにもいかない。
 そんな事をすれば、『妖滅』にわざわざこちらから居場所を教えるようなものだ。
 しかし… どうしてこんな悪夢のような場所に巻き込まれてしまったのか。
 八頭身は考える。
 自分から狐についていくと志願した手前あまり愚痴は言えないのだが、
 それでもある程度こういったのっぴきならない事態になるとは予想出来た筈だし、していた。
 にもかかわらず自分は今こうしてここに居るのはどういう事か。
 いや、どういう事かも何も、自分でここに来たからここに居るという以外の答えは無いのだが、
 それでも何か異様だ。
 何か、見えざる手によって導かれたような、見えざる糸に手繰り寄せられたような…
 そういう不可解で不快な違和感。
 糸―――
 そういえばあの糸の罠には気をつけなければ。
 いや、糸の罠だけじゃなくて、それを設置した奴にも、だが。
 あの狐の皮膚すら切り裂く程の鋭さを秘めた糸。
 恐らくは糸の強度を強化する、強化系の念能力者といった所か。
 あんなものを喰らっては一溜まりも無い。
 包丁人味平の白糸釣鐘崩しのように、細切れに解体されてしまうのが落ちだ。

 それにしても、狐の助けたがっていたあの少年は一体何なのだ?
 不自然なくらいギコに似ているあの少年…
 まるでギコの真似をする為に生まれてきたような、どこか逸脱した人型。
 そもそもギコのような奴がこの世に居るというだけで仰天なのに、
 それの鏡像がいるなどとはどういった性質の悪い冗談なのだ。
 いやそれよりも、何よりも一番驚くべき事実は、
 “あの”狐とあそこまで深く関わっておきながら、どうしてまだ狐に殺されていないのだ?
 ありえない話だ。
 狐が、『妖滅』を敵に回してまで守りたいような奴を自分の手で殺していないなんて。
 あの少年は、本当に一体全体どういう存在なのだ?
 もしや。
 もしやの話ではあるが。
 こうして自分や『妖滅』、そして『D』が今この場所に集結しているのは、
 あの少年が関係して―――
「……」
 八頭身は頭を振る。
 止そう。
 今はそんな事を考えている場合ではない。
 それにあのどこにでも居そうな少年が、この殺戮の元凶だと?
 笑えない冗句にも程があるというものだ。
 まさか。
 そんなまさかな。
 それは余りにも突飛な考えだ。


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