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念を使わせてみよう小説スレッド

2591:2005/01/20(木) 00:45

 しかし…
 それにしても厳重なトラップだ。
 辟易した顔で糸を掻い潜り続ける八頭身。
 ここまで執拗に張り巡らされては、10メートル進むだけでも一苦労だ。
 こんな場所で敵に襲われてはたまったものではない。
 ちょっと攻撃を避けようとしただけで、糸でズタズタに―――
「……!?」
 そこで、八頭身は一つの疑問を感じた。
 そう、こんなに糸を張り巡らしてはまともに戦う事など不可能だ。
 しかしそれは敵にしたって同じ事だろう。
 ここまで緻密に張り巡らした糸の場所を性格に全て把握するなど、
 例えその罠を仕掛けた奴が仲間にいたとしても無理である。
 だから恐らく、狐が傷をおった罠は殺傷よりも寧ろ、
 こちらの居場所を探るためのものだった筈だ。
 では、今はどうか。
 崖崩れでバラバラになってしまった自分達を探す為のものだろうか。
 いや、それは違う。
 先程わざわざ発見しておきながら、崖崩れで再び見失ってしまうなど、
 馬鹿馬鹿しい話である。
 ではこれは。
 これはまさか―――
「戦闘舞台を作っているのか!」
 そこまで推理した時には、もう遅かった。
 辺りには縦横無尽に糸が張り巡らされている。
 敵は自分を探してなんかいない。
 正確な時間は分からないが、とっくの昔に発見されていたのだ。
 だからこうして、罠に見せかけて自分に有利な戦場を整えていたのだ。
 これだけそこらに木々が生い茂っていれば、糸を引っ掛ける為の凹凸など幾らでもある。
 つまりは、ここは糸使いにとっての独壇場という事か。
 そしてこの一見敵味方双方にとって危険な糸の結界を張ってまで、
 戦いを挑んでくる可能性があるのはただ一人。
 それは他ならぬ、糸使い自身…!

 キュアッ

 風を切るような音が闇の中から響いてくる。
 死―――
 直感的に危険を察知し、八頭身が体を屈める。
「!!」
 しかし、それは攻撃を完全に回避するには至らなかった。
 音から一拍の間を置き、八頭身の右耳が切断されて地面に落ちる。
「がッ…!」
 狼狽する八頭身。
 見えなかった。
 どこからどう攻撃が来たのか、全然見えなかった…!
「流石『外法』。
 今のをよくかわしたものだ」
 パチ パチという乾いた拍手の音と共に、暗がりの中から男の声が発せられる。
 目を凝らす八頭身。
 すると闇の中からは、徐々にその声の主の輪郭が明らかになっていった。
 フーン顔の、八頭身と同じくらいの慎重の男。
「俺の名前は妖滅刺菅(あやめ さすが)。
 兄者とでも呼んで貰おうか」
 そっけない笑みを浮かべたまま、兄者は名乗った。
「お前がこの糸使いか…!」
 身構える八頭身。
 アドレナリンが大量に分泌されている所為で、右耳を切断された事による痛みは無い。
 あったとしても、それを意に介していられるような状況ではないが。
「Exactry(その通り)。
 最早ここら一体の空間は俺の『殺人技術(ジェノサイダー)』の支配下。
 言うなればお前は、標本にされる前の虫かごの中の虫も同然だ」
 兄者がツイと指を動かす。
 それに合わせて八頭身の頬がざっくりと裂けた。
 その様子を薄ら笑いで見つめ、
 兄者が勝利を確信した顔つきで兄者に告げる。
「予告してやろう。
 俺はこの場から一歩も動かないまま、指一本でお前を殺すとな…!」


                 〜続く〜


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