同省は、5カ国・地域が不公正な為替政策の可能性があるとする3つの基準のうち2つに抵触するとの判断を示した。3つの基準全てに抵触したと判断されれば、2国間協議を開始し、場合によっては制裁対象とする。
米大統領選の共和党候補の指名獲得争いでトップを走るドナルド・トランプ氏は中国を「為替操作国」に認定するとの立場をとる。下院歳入委員会のケビン・ブラディ委員長 (共和、テキサス州)は財務省の報告書について声明を発表し、「大統領が公正に為替操作の問題に対処し米国民のために立ち上がるかどうか引き続き注意深く推移を見守っていく」と語った。
3つの基準とは、対米貿易黒字が200億ドル(約2兆1300億円)超、経常黒字が自国国内総生産(GDP)の3%超、GDPの2%超規模の海外資産を購入するといった継続的な一方向の為替介入の実施。
財務省は、中国と日本、ドイツ、韓国が貿易黒字と経常黒字の基準に抵触、台湾は経常黒字と継続的な一方向の為替介入の基準に抵触していると説明した。
報告書の中で同省は、中国人民元は「中期的に真の上昇を続けるだろう」との見方を示した。昨年10月の前回報告書では、人民元は「中期的に見て適切なバリュエーションを下回っている」と指摘。それ以前は、人民元は「大きく過小評価されている」としていた。
日本については、財政政策や構造改革など成長てこ入れに向けあらゆる政策手段を講じていくことがますます重要だとしている。
また、最近のドル・円相場について市場は秩序立っているとし、主要7カ国(G7)と20カ国・地域(G20)の通貨に関するコミットメントを順守することが各国にとって重要だと指摘した。
原題:U.S. Puts China, Japan on New Watch List for FX Practices (1)(抜粋)
現在の状況は、このような協定を結ぶことで、通貨危機を未然に防ごうというものです。実際により深刻な通貨危機が生じた場合のドル不足に十分な額というわけではありません。2016年の外国為替の取引額は1日で約5.1兆ドル(BIS, Triennial Central Bank Survey, Foreign exchange turnover in April 2016)にも上ります。700億ドルという規模で韓国ウォン危機を解決できるものではありません。そのため、日韓通貨スワップには、スワップ(交換)による損失リスクが日本にもあります。
通貨スワップのメリットは?
メリットは主に韓国にあります。韓国のウォンは世界経済の影響を受けやすく不安定です。図1は韓国ウォンのドルおよび円についての為替レートの推移で、2008年からの世界金融危機の時に韓国ウォンが急激に下落(図では上方向)したことが分かります。韓国は、日本と似て製造業や輸出産業が中心の産業構造です。ただ、GDP(国内総生産)に占める輸出・輸入は日本よりも非常に高く、輸出の対GDP比率は45.9%(2015年,The Bank of Korea統計)です。日本も高まってきているものの、17.7%(2014年、国民経済計算確報)ですので、韓国経済がいかに世界経済に依存しているかがわかります。
TPP協定交渉の中で、最も問題が深刻だと言われているのがISDS条項です。Investor-State Dispute Settlementの頭文字を取ってISDS条項といったり、ISD条項と呼んだりします。従来型の協定では紛争解決の項には国対国の間に起こる紛争解決の項目があり、問題が発生したときに協定を結んだ国同士がどのように解決するかをあらかじめ取り決めておくことになっています。それに加えてInvestor(投資家)対State(国家)の紛争解決に関する条項、つまり企業や投資家が国家を訴えることができるという条項が入っているということです。
ISDS条項に関しては、これまでの協定で使われてきた国際投資紛争解決センター:International Centre for Settlement of Investment Disputes(ICSID)が世界銀行傘下であるとか、アメリカがISDS条項で訴えられても負けたことがないとか、果ては仲裁人が賄賂をもらっていて、多国籍企業の都合がいいように裁かれてしまうのだという怪しい理由まで、さまざまな批判がなされています。これに対して推進派や政府は、日本が結んだFTAやEPAにはほとんどISDS条項が含まれているので問題ないと言いますが、それはTPP協定に組み込まれるISDS条項の本当の問題をわざとはぐらかす表現です。