しかし、『The National Interest』とは対極の存在とも言えるロシア紙『R.T.』が報じた情報は決して安心できないことを表している。同紙によれば、〈昨年9月にドイツの諜報機関(BND)がドイツ国内で知らせるべき人物を制限して伝えた情報〉によれば、〈エルドアン大統領(当時首相)が2010年にウラン濃縮の為の設備の建設を指示した〉ということだ。それに関連したデーターから、〈トルコはパキスタンから入手したと思われる遠心分離機を相当数保有している〉というのだ。
そして、トルコが核兵器開発を視野に入れていると懸念される要素のもう一つに、トルコがミサイルを開発していることが挙げられる。前出の『The National Interest』にて言及されているように、〈トルコは150kmの有効射程距離のミサイルを当初保有していた〉が、エルドアン大統領の開発要望をもとに、〈2012年には射程距離1500kmのミサイルの開発に成功している。そして今年中に射程距離2500kmのミサイルの開発をする予定になっている〉というのだ。
『The National Interest』誌は〈トルコはマフィアの介入でコソボ、ボスニア、ヘルツェゴビナの密売ルートから旧ソ連の濃縮ウランを保有している〉と言及している。しかも〈トルコはパキスタンの核密売業者アブドゥル・カディール・カーンの活動にこれまで関与して来た〉と指摘している。〈1987-2002年の間にイラン、北朝鮮、リビアに数千台の遠心分離機を売り〉その為の〈電子部品などはトルコ経由で運ばれた〉という。そして、当初パキスタンが公式には手に入れることの出来ない部品をトルコ経由で手に入れていたのだ。
もちろん、米国の国益を論じる『The National Interest』は、この推測記事にも何らかの思惑があるだろうし確定した事実ではない。ただ、中東におけるトルコはイランと同様に長い歴史文化をもっている国で、しかもオスマントルコは中東を支配した歴史もある。その意味ではイランと同様に発展出来るノウハウを培った組織構造を社会的に備えている国だ。米誌の懸念もあながち荒唐無稽な話ではないのかもしれない。