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艦娘がいない鎮守府のようです

96 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:04:40 ID:62pQqJ3.0
鎮守府周辺海域の海図を引っ張り出し、机の上に広げる


(;'A`)「……よし、ここだ!!」


浅瀬のポイントを指で叩く
ここまで深海棲艦を誘い出し、座礁させ
動きが鈍った所に、燃料を積んだクルーザーで突っ込み爆発させる


(;'A`)「ブーン!!今すぐ船のチェックだ!!オッサン、ありったけの燃料弾薬を運び出すぞ!!」


( ^ω^)「了解!!」

(´・ω・`)「合点だ!!」


二人は毅然とした態度で立ち上がる
どちらも、気合と根性を漲らせていた


(#'A`)「やるぞォ!!」


俺も例外じゃない。生き残る為に戦ってやる
そして絶対、上官の鼻を潰して前歯全部折ってケツに93式酸素魚雷をぶt(ry

97 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:05:29 ID:62pQqJ3.0
―――――
―――



( ^ω^)「エンジンは着く、スクリューは回る。両方ともまだまだ走れるお」

(´・ω・`)「その内の一つは今日吹っ飛ぶんだけどな」

('A`)「寂しいこと言うなよ」


間も無く、深海棲艦の有効射程範囲に入る
なんとか時間内に間に合った。いやほんともう人生で一番俊敏に動いた。こうシュッ!!シュッ!!って感じで


('A`)「もう一度、作戦の確認をするぞ」


囮役である俺が、深海棲艦を浅瀬のポイントまで誘い込む
座礁し動きが鈍った所に、ショボンのオッサンが燃料弾薬を満載したボートで突っ込み、途中で離脱
見張り台にいるブーンが、タイミングを見計らい遠隔操作で起爆させる

ガバガバの作戦だし、運に任せる要素も多々あるが
これが今、俺達と鎮守府にある物資で出来る限界だ


('A`)「……」


一つ、憂いがあるとすれば


('A`)「言い出すタイミングが無かったから今言っちゃうけど、無理して俺の無謀に付き合う必要は……」

(´・ω・`)「いや本当に今言う事かよ。準備全部終わっちまってんぜ?」

(;'A`)「そう……だけどォ!!」


非戦闘員二人を巻き込んでしまうことだ

98名無しさん:2016/04/03(日) 18:05:32 ID:dV76bn4E0
ドクオ頑張れ

99 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:07:19 ID:62pQqJ3.0
( ^ω^)「アホなこと言ってないで、サッサと始めるお」

(´・ω・`)「そうだな、ドクオのアホに付き合ってる暇は無い」


さも当然かの如く、行動を再開する
それを見て、俺の憂いは消え去った

別に言葉を交わさなくても、二人は俺と戦ってくれる
海軍の上官ですら見放した戦場で、俺と共に絶望に立ち向かってくれる


('A`)「……」


胸の奥が、熱くなった
俺達なら、世界を敵に回しても戦える。そんな気持ちになった


('A`)「アホは……お前らだ!!このアホ!!」

( ^ω^)「お前が一番アホだお!!」

(´・ω・`)「いやお前ら二人が最高にアホ!!」


アホアホ言いながら、水上バイクに乗り込む
ショボンのオッサンも、クルーザーのエンジンを点火させた


('A`)「サッサと済ませて打ち上げだ!!」

(´・ω・`)「おうよ!!腕によりを掛けて料理こしらえてやるぜ!!」

( ^ω^)「お夕飯までには帰ってくるのよ!!」


それぞれのエンジン音を轟かせ、配置へと向う。艦娘のいない海上戦

『艦娘いないけど俺達の気合と根性、男気で深海のビッチをファックしてやろうぜオーベイベー真夏の日差しサマータイム』

作戦が開始された。因みに、考えたのはショボンのオッサンだ

100 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:09:15 ID:62pQqJ3.0
(;'A`)「おっとと……」


水しぶきを弾きながら、水上バイクは軽快に海の上を走る
俺くらいのスポーツ万能マンになると、別に免許を持って無くても運転できるのだ。実際スゴイ
時折、波に煽られバランスを崩しそうになるのはご愛嬌だ。シコっても、いいのよ……?


(;'A`)「ッ!!」


咄嗟にアクセルを戻し、減速、停止する

見えた、見えてしまった
残っていた、民間船や艦娘の可能性は、たった今消えた

深海棲艦の、どす黒い姿が俺の視界に入ったのだ



     _ ィ: '':  ̄: : 二ニ= . _
   /: : /:; : : >――ニ=─- ミヽ,、
  /: : : /:.:.:./:;:;:; _-ニニニ _: : : ` l: :> ._
 〈:.:.ィ// ,/≦ >ミ: : : : : : : : ― l:;:;:;: : : : : > _
 .ヽ\:.i  /: : : : : i\ッ'): : : : : : : : : /: : : : : : :.:.:.:.:.:.: >. _
   \\三≧ーzzzzzz≦三三三>x、: : : : : : : :.:.:.:.:.:.:.:.: ≧., _
     ヽニニ彡"二二\三三ニ三三三>--‐'''⌒ゝ- _: : : : :;:.:.:.:.`ヽ
        | ヘ | l ヽ\>、 `   ー、   〈   _ ヽ:.\: : : :.:.:`ー- , ,_
        l_ゝィzzト,,、メ-彡/‐ヽー‐ミY´    \   \l:_:_:;ミ、\:\:.: : : : : : : |
          ̄   ̄ r-ミ‐lヽ_l: : : lー 二ァ_,_,_,,,,≧、  `i__ `iハ`i: : : \:、:,:-''
               〈 ` トー': : /  \ー‐ " ̄ヽヘ  l:.:.:.:.:.l ̄ヽ___ \
                 ̄ヽニゝ/\   ヽ‐ 、   ̄∨うーテ      ̄`ーニ=
                       `ヽ _  \    ヽ/
                            ` ー'

101 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:10:30 ID:62pQqJ3.0
(;'A`)「フッ、フー……」


鼓動が高鳴る。呼吸も荒くなる
ここは遮蔽物もない海の上だ。砲弾を打たれたらひとたまりも無い
これが戦場のプレッシャー、これがあいつらの放つ恐ろしさ

身体が、震えた


:(;'A`):「ハァー、ハァー……」


落ち着け、落ち着け
勝算はある、あるんだ。テメーがしっかりしないでどうする


:(;'A`):「し、深海棲艦は、知能のある生き物で……イルカなどの哺乳類のように……獲物を玩ぶ習性が確認された……」


自分自身に言い聞かせるように、訓練生時代の座学で学んだ知識を呟く
明らかな脅威では無い限り、奴らは俺達を『舐めてかかる』。すぐには殺さず、右往左往する姿を楽しむ
人間が、アリの巣で遊ぶようなもんだ。そこには大きな『油断と隙』が生じる

102 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:11:08 ID:62pQqJ3.0
:(;'A`):「大丈夫、倒せる、大丈夫……」


奴の姿はドンドン近づく。にも関わらず、俺は動けずにいた
これが、『蛇に睨まれた蛙』って奴か。なるほど、昔の人は上手い事言う


:(; A ):「クソッ……恐ぇ、恐ぇ!!」


後悔がこみ上げる。こんなことなら、提督にならなきゃ良かったと
こんなことなら、下手なやる気なんて出さず、逃げ出せばよかったと


だけど……


:(;'A`):「だけど……!!」


俺一人の問題じゃない。後ろには、俺を信じて待つ二人の友がいる
腹の内を明かし、信頼してくれた親友で、家族だ。裏切るわけにはいかない

それに、やっぱり悔しいじゃねえか

上官に舐められて、よくわからん別世界の為に戦争させられて、意味も無く死ぬってのは
だから、ここで臆病風に吹かれて逃げ出すわけにはいかない。そんなの、『男』じゃねえ


(#'A`)「おおおおおおおおおお……」


奮い立たせろ、勇気を。搾り出せ、叫びを。そして立ててやれ
クソッタレな『世界』に向けて、中指を

103 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:11:42 ID:62pQqJ3.0




(#'A゚)「かかって、来いやぁぁぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!!」




♪Zebrahead - Broadcast to the world
https://www.youtube.com/watch?v=4HFoeUgULGo

104 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:13:10 ID:62pQqJ3.0
アクセルを吹かし、反転する
背後から、深海棲艦のきったねえ鳴き声が聞こえた。奴も俺に気付いたか


(#'A`)「あああああああああああああああああああ!!!!!!!」


出来る限りジグザグに動きながら、奴を誘う
命中しても失敗、外れた砲弾が立てる水柱でひっくり返っても失敗
ここからは、俺の運転技術と多大なる運に掛かっている


(#'A`)「テメッコラーーーーーーーーー!!!!!!ザッケンナオラーーーーーーーー!!!!!!」


喚きながら後ろを確認。着いてきている
まるで大きな鉄の鯨だ。奴の艦種は『駆逐艦イ級』
最も脆弱な深海棲艦と言われてはいるものの、それは艦娘が相手をする場合に限る
アレ一隻で、護衛艦数隻に匹敵する力があるのだ。人間にとっては厄介な存在に変わりない
その姿を映像や写真で目にしたことはあるが、やはり本物の迫力は違う


(#'A`)「ッ!!」


マズい、口を開けた。喉の奥に潜んだ砲塔からの、砲撃が来る
ハンドルを右に傾け、回避行動を取る


(#'A`)「っつああああああああああああああ!!!!!」


腹にまで響く砲撃音、その後間も無く、大きく左にそれた場所に着弾
爆発が海面を吹き飛ばし、白い水柱が立った


(;'A`)「クッソ……!!」


波に煽られ、バイクがひっくり返りそうになる
野郎、間違いなく遊んでやがる


(#'A`)「ボケオラァ!!」


体勢を気合と根性で立て直す。口が汚いのはご愛嬌だ。存分にシコれ
後ろからゲラゲラと笑うような鳴き声がする。笑ってられるのも今のうちだ

105名無しさん:2016/04/03(日) 18:13:23 ID:n8JINXzI0
かっけえ

106 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:15:09 ID:62pQqJ3.0
この作戦のキモは、出来る限り『近づかなければならない』所にある
引きつけて、俺と言う『おもちゃ』に夢中にさせるのだ
近づけば近づくだけ、砲弾の命中、横転の可能性が高くなる


(#'A`)「頼むぜ神様〜〜〜〜〜……」


深海棲艦及び艦娘は、砲撃後に次弾装填に時間が掛かる
ポイント到達まで、後二・三回は撃ってくるだろう
命中精度は、良くは無いと思う。思いたい
加えて、俺という『的』は小さい上にすばしっこい。昔の人は言っていた


(#'A`)「『当たらなければ、どうと言うことは無い』ってなぁ!!」


二度目の砲撃音、今度は俺の頭上を通り越し、前方へ着水


(#'A`)そ「うおッ!!」


視界を多い尽くす水しぶきと、せり上がる波が俺を襲う
頭から派手に海水を被る。水上バイクが持ち上げれられ、宙に浮いた


(;'A゚)「おっ……」


高さも、浮いている時間も大したことは無かったと思う
それでも、突然の軌道に俺の頭は一瞬真っ白になった


(;'A゚)「おおおおおおおおおおお!?」


そして、着水。グラリと傾く水上バイクから、投げ出されないように踏ん張る

107 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:16:14 ID:62pQqJ3.0
(#'A`)「ッし、よォし!!」


二発目も乗り越えた。思わず雄叫びが上がる
座礁ポイントまで、あと僅かだ。一発、残り一発さえ耐えられれば、こいつにぶちかませる

今度は、イラつくような金きり声が聞こえた
俺が横転しなかったのを怒っているのだろうか?いいぞ、もっと怒れ


(#'A`)「どうしたノーコン野郎!!俺はまだ生きてんぜェ!!」


聞こえているかどうか、俺の言葉を理解出来るのかどうかもわからないが、挑発をする
流れはこちらにある。大丈夫、きっと上手くいく


(#'A`)「ッ!!」


横目で、オッサンが乗り込んでいる船を確認した
出来るだけエンジン音を抑えながら、ゆっくりと助走を始めている


(#'A`)「オラァ!!こっちだ!!こっち来いよ!!」


ここで標的を変えられるわけにはいかない。奴の執着を、俺に向け続けなければならない
より一層喚き散らし、注意を向けることに尽力する


(#'A`)「来る……ッ!!」


奴が口を開けた。三発目が間も無く発射される
俺は思いきって、アクセルを緩め減速した

砲撃音が、より近くから轟く
『ごう』と風が唸り、バイクと俺の身体を煽る

108 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:17:24 ID:62pQqJ3.0
(#'A゚)「ッ……!!」


呼吸が詰まる。心臓まで止まるかと思った
だが、俺の行動は功を奏し、三発目の砲弾はさっきよりも前方へと飛んでいき、着水した


(;'A゚)「ッッッ……ハァッ!!」


息を無理やり吐き出して、再びアクセルを回す
もう少し、もう少しだ。止まるな、進め


(#'A゚)「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


ポイント上を通り過ぎる。ボディが軽い水上バイクなら、浅瀬の通行も問題なかった
だが、巨体である奴らは違う。『ガリリ』と硬い物が擦れ合う音が聞こえた


(#'A゚)「今だあああああああああああああああ!!!!!オッサアアアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!」


狙い通り、イ級は『座礁』した。作戦の第一段階がクリアされた
次、第二段階。『爆弾』を積んだ船の吶喊

助走をしていた船は、猛烈にエンジンを鳴り響かせスピードを上げる
バイクを旋回させ、その成り行きを見守ることにした。海に飛び込む予定のオッサンも拾わなきゃいけないしな


(;'A`)「なっ……!!」


しかし、予定外の出来事が起こる
座礁したイ級は、突っ込んでくる船の存在に気付き、方向転換を始めたのだ

下顎と、鉄の身体を浅瀬の上で跳ねさせる、なんとも稚拙な方法だったが
着実に、確実に、砲塔の向きはオッサンの方向へと動いていた

109 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:18:36 ID:62pQqJ3.0
(;'A゚)「……さっ……」


ここで船を撃ち落とされたら、作戦は失敗に終わる
それだけじゃない。オッサンの命も失われてしまう
避けなければ、助けなければ――――


(#'A゚)「っっっせるかってんだよォォォオオオオオオ!!!!!!」


アクセルをフルスロットルさせ、猛スピードでイ級に突進を仕掛ける
ダメージを与える必要は無い。ただ、注意を引ければそれでいい

その大きく、黒い身体が近づく。目は人工的な蛍光色の青に染まっている
醜い姿は、いやがおうにも『人類の敵』という認識をさせた

こんな連中に、俺の家族を殺されて-―――――


(#'A゚)「た ま る か ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ア ! ! ! ! ! !」


淡く光るその瞳が、俺の存在に気付く。しかし、もう遅い


(#'A゚)「オアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」


アクセルを吹かせたまま、海へと飛び落ちる
無人の水上バイクは、海上を疾走し、イ級の鼻っ面に衝突した

110 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:19:25 ID:62pQqJ3.0
イ級は、よろめきもしなかった
そりゃそうだ。護衛艦の砲撃にも耐える装甲持ってんだ。水上バイクなんて鼻くそ飛ばされたようなモンだろう
だが、『注意』は向けた。まんまと引っかかりやがった


船はもう間近に迫る。オッサンが海へ飛び込み、深く潜った


この一撃は

俺達と、テメーらに殺された人達からの


(#'A`)「悪魔のギフトだ!!受け取りやがれぇぇぇえええええええええ!!!!!!」


船が突っ込むのを確認した俺も、爆風を避けるために海中に潜る
後は、ブーンの仕事だ。一発ぶちかましてやれ


(;'A`)「ッ!!」


音を遮る水の中でも響く爆発音。熱と光
鉄の破片や、爆風によって吹っ飛んだ弾丸が、水を切りながら俺の傍を横切った

俺はその場所から少しでも離れるべく、水を掻いた
『ゴボゴボ』という空気を巻き込む音や、爆破音の名残に混じって
イ級の断末魔が聞こえた気がした。しかし、実際に目の当たりにするまで安心は出来ない

111 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:21:11 ID:62pQqJ3.0
(;'A`)「ブホハァッ!!」


海面へ浮上し、振り返ってポイントを確認する
黒煙が立ち昇っていた。燃料を満載していた船は炎々と燃えている
近くにあった水上バイクもまた然りだ
そして、肝心の『イ級』だが―――


(;'A`)「……」


どうやら、思っていた以上の破壊力があったらしく
艦首と艦尾が真っ二つに分かれ、沈み始めていた

最後に、息を引き取るかのように弱々しい声で鳴いた深海棲艦
僅かに残っていた青白い目の光が消え、絶命を伝えた


(;'A`)「か……勝っ……!!」


俺は我に返り、辺りを見回す
オッサンの姿が見えない。まさか……


(;'A`)「オッ……オッサン!!ショボンのオッサン!!」

(´・ω・`)「何?」ザババァ

(;'A゚)そ「うおおおおおおおああああああ!!!!びっくりしたあああああああ!!!!」


急に背後から浮かび上がってきやがった。性質悪いよこのオッサン

112 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:22:16 ID:62pQqJ3.0
(´・ω・`)「やったな、提督」


グイと肩を組まれる。お前らみたいな貧弱ボーイなら立ち泳ぎ中にこんなことされたら溺れ死ぬのがオチだろうが
生憎俺はスポーツ万能マンだった為、特に問題なかった。丈夫な体に産んでくれた親に感謝マジリスペクト


('A`)「ああ……ああ!!」


ようやく、勝利の実感が湧いてきた
勝ったのだ。艦娘がいない状況下で、人間だけの手で、深海棲艦を倒した


(*'A`)「よっっっ……しゃああああああああああああ!!!!!」

(´゚ω゚`)「フォオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」


俺達は拳を振り上げ、勝ち鬨を上げた
陸まで泳いで帰らなければいけないが、今はそんな事より、勝利の余韻を味わおう
俺達は全員生き残り、敵を倒した。これ以上無いハッピーエンド。めでたしめでたしだ
これがモンスター・パニック映画なら、この後にENDの文字が浮かび、エンドロールが流れるだろう






しかし、現実は




俺達の大団円を、許しはしなかった

113 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:23:13 ID:62pQqJ3.0
鎮守府から、再び大きな音が鳴り響く



(;'A゚)「ばっ……?」

(;´・ω・`)「嘘……だろ……」



二度目の、深海棲艦侵入を知らせる、『アラート』だった

114 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:24:12 ID:62pQqJ3.0
―――――
―――



鎮守府まで泳ぎきった俺達は、疲労を訴える身体など構わず、真っ直ぐ指令室へと戻った
ぶっ倒れそうだが、休んでる場合じゃない。確かめなければいけない


(;'A`)「ハァッ、ブーン!!!!」


びしょ濡れのまま部屋に飛び込む。ブーンは、レーダーの前でジッと座っていた


(;'A`)「ブーン、今度は一体……!!」


レーダーには、横一列に並んだ『三つの点』が光っていた


(; ω )「……」


ブーンの顔は青ざめ、冷や汗を流している
『一難さってまた一難』、なんてもんじゃねえ。その三倍の戦力が、押し寄せているのだ
しかも、駆逐イ級を倒すのに船を二隻、大量の燃料弾薬を費やした。残っているのは……


(;´・ω・`)「クソッ!!さっきのはただの斥候だったってのかよ!!」


忌々しげに机を叩く。その乱暴を咎める者は居なかった
俺だって、神に向って『何故このような仕打ちを!!』と嘆きたい気分だった
だけど、その行為に意味は無い。縋りついたって、神は人間を助けてなどくれない

結局は、自分自身で解決しなければならないのだから

115 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:25:06 ID:62pQqJ3.0
('A`)「……」


ブーンの肩に手を置くと、ビクリと跳ねた
次に吐く俺の言葉を、聞きたくないのだろう。でも、言わなければいけない


('A`)「ブーン」

(; ω )「ダ……ダメだお……さっきも言ったとおり、テストも済んでいない、代物だお」


『ブーン』。俺は宥めるようにもう一度、名前を呼ぶ


(; ω )「ダメなんだお!!!!僕の、僕のエゴで造った『おもちゃ』で、お前を殺すわけにはいかないんだお!!」


艦娘の艤装を、人間が使うことによる『リスク』。艦の記憶に焼かれて死ぬ『艤装の試練』
『アンカーシステム』は、艤装とのリンク方法を変えているとは言え、リスクが減ったワケではない
なんせ、人体テストを行っていない。どう転ぶか分からない


('A`)「死なねえよ」


だが、今はこの方法しか残っていない
船を失い、燃料も弾薬も心許ない、今の状況下で
使えるかどうか定かではない『鎧』だけが、頼りだった


('A`)「お前が……人間の誇りの為に造った鎧だろ?深海棲艦の脅威を、人間の力で退ける為の装備だろ?」

('A`)「だったら……艤装も、俺達に、お前に応えてくれる筈だ。理不尽に抗う力を、与えてくれるはずだ」

116 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:26:05 ID:62pQqJ3.0
ブーンの両肩を掴み、顔を向かい合わせる。ブーンは咄嗟に視線を落とした
今にも泣き出しそうな顔をしていた。だけど、ここで言葉を止めるわけにはいかない


('A`)「お前、こう言ったよな。『艦娘は人の命を救う存在、犠牲を無くす奇跡』だと」

('A`)「だったら……俺達と艦娘の利害は一致している。そこに拒否を突きつける理由は無い。だろう!!」

(;'A`)「頼むよ、ブーン……!!アンカーシステムは、俺達の家に残された、最後の希望だ!!」

(;'A`)「艦娘を率いることも出来ず、戦争の現実も知らなかった俺に……」


(;'A`)「『戦わせてくれ』……っ!!」


(; ω )「……」

(´-ω-`)「……」


(´・ω・`)「男が、覚悟決めたんだ。叶えてやれよ、ブーン」


(; ω )「……」


ブーンが、顔を上げた
目が据わり、瞳の中に覚悟が見えた


( ^ω^)「わかったお。ただし、一つ約束しろお」

('A`)「あっ、ああ!!なんだ!!」

117 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:26:43 ID:62pQqJ3.0
( ^ω^)「これが終わったら、豪勢な夕飯を奢れお」

(;'A`)「っ……」


俺は一瞬面くらい、そして


(*'∀`)「アハハハハ!!ハハッ!!ああ、イギーにもな!!」


腹を抱えて笑った


(´・ω・`)「犬ポジかよ俺」


三人の決意は固まった。時間は刻一刻と迫っている
急ぎ、工廠へ向った。目当ては、男性用艤装『アンカーシステム』
俺の人生最大の、大博打を打つ為に―――――

118 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:27:44 ID:62pQqJ3.0
―――――
―――



まぁー、なんだ。緊迫した場面ではあるんだが


(*'A`)「めっちゃカッコ良いなこれ……」


電の艤装を改造して造られた『アンカーシステム』を装着した俺は、異様な高揚感に満たされていた
いやだってお前!!こんなん男の子のロマンの塊だよ!?テンション上がんない方が可笑しいって!!


(;´・ω・`)「さっきまでの必死なお前どこいったんだよ……」

('A`)「え?何の話?ブーンは快諾してくれたじゃない」

( ^ω^)「やっぱやめるお」

(;'A`)「ウソウソゴメン外さないで恥ずかったんですごめんなさい」


アンカーシステムは、ピッチピチのアンダーウェアを着て、その体型に合わせ鎧のサイズが変化する
黒インナーは武器だ。俺のガッチガチの筋肉がセクシーに浮き出てるし、股間もモッコリちゃんだ


( ^ω^)「窮屈じゃないかお?」

('A`)「いいや、万全だ。ちょいと重いがな」


試しに正拳突きをし、そこから流れるように上段蹴りを放ってみる
関節も問題なく動く。良い腕してるぜブーン


(;^ω^)「ええ〜……今の状態でそんなアクティブに動けるような重さじゃないんだけど……」

(;´・ω・`)「何お前……キモ……」

('A`)「えっ嘘?ここで引く普通?」


こんないつものやり取りが、心の重圧を軽くさせた
これが最後になるかもだなんて、思いたくは無い

119 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:30:24 ID:62pQqJ3.0
( ^ω^)「艦娘にも言えることだけど、艤装とのリンクが始まったら、装備は『身体の一部』として機能するお」

( ^ω^)「その重さも、自分の体重のように感じられるはずだお」


つまりは、『何かを持ち上げる重さ』ではなく、『自分自身に掛かる重力』となるワケか
自分でも何言ってるのかわかんねーから、その辺は察してくれ頼む


( ^ω^)「じゃあ……最後にこれを」


ブーンの手から、ヘッドギアが装着された


|::━◎┥「暗い」

( ^ω^)「ちょっと待ておせっかちだなお前ホモかよ」

|::━◎┥「そこまで言われる謂れはねえんだけど」


実際真っ暗だから何しているかわかんねーが、ブーンの私物であるノートパソコンのキーボードを叩く音は聞こえた
最後に、エンターキーを押したであろう音が聞こえると、ギア内のスクリーンに目の前の光景が映し出される
左上には緑色のバーと、その横に『耐久値』と記されている。言わば艤装の『HP』か
右下には現在の装備、『12.7センチ連装砲』と、残弾数。そして、燃料ケージ
後、南京錠のマークが付いている。何これ


『アンカーシステム 起動』


そして、中央に電子文字が浮かび、うっすらと消えていった


|::━◎┥「おお〜……」

120 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:31:35 ID:62pQqJ3.0
感心していると、耳元で機械音声のアナウンスが流れる


『使用者情報を登録します』


|::━◎┥「アッハイ、どうぞ」

(´・ω・`)「お前今何聞こえてんの?」


いや関係ないんだから茶々入れんなオッサン


『網膜、皮膚組織、細胞、血液、DNA……』


俺の個人情報が赤裸々に明かされ登録されていく
細胞レベルで俺が解き明かされてる……やだ、恥ずかしい……


『音声認識を行います。発声してください』


|::━◎┥「えっ、何?」


『完了しました』


コントかよ


『艤装とのリンクを開始します。キーを挿入してください』


|::━◎┥「キー……『鍵』か」

( ^ω^)「ドクオ、これ……」


ブーンから、『錨』のエンブレムが手渡される
これをベルト部分にある『凹み』に入れたら、いよいよ


|::━◎┥「『艤装の試練』が、始まるのか」

121 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:32:37 ID:62pQqJ3.0
( ^ω^)「アンカーシステムは、他者の使用を制限する為に二つの『ロック』が掛かってるお」

( ^ω^)「一つは『音声ロック』。もう一つは、エンブレムをはめ込む物理的なロックだお」

( ^ω^)「その錨に、『抜錨』と話しかけて装着すれば、リンクが始まるお」


なんだなんだ、かっこいいなオイ。仮面ライダーみてーじゃねーか
いやまぁ、俺はもうアーマー着ちゃってるから、言わば『変身済み』なんだけど


|::━◎┥「よし、そんじゃあ……」

( ^ω^)「待つお」


『抜錨』と言い掛けた俺を、ブーンが呼び止める


( ^ω^)「これは……本当に機能するかどうかわからないお。もしかしたら、ドクオの『棺』にもなりかねないお」

(;´・ω・`)「おいブーン……」


嗜めようとしたオッサンを、俺は手で制した


( ^ω^)「だから……これが引き返す最後のチャンスだお。もし、考えが変わったなら……」

|::━◎┥「変わらねえよ」


ブーンの提案を、キッパリと断った
元より、引き返すつもりなんてねえ。当然、死ぬ気なんて持っての他だ

122 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:33:34 ID:62pQqJ3.0
|::━◎┥「ここで引いちまったら、俺は死ぬまで一生後悔する。最初に言っただろ?」

|::━◎┥「俺は、立ち直りの早さと前向きさだけが取り柄だってよ」


後悔のまま生き長らえるくらいなら、精一杯抵抗した末に早死にする方がマシだ


|::━◎┥「俺が死んでしまっても、気にする必要はねえ。馬鹿な男が一人いなくなるだけだ」

|::━◎┥「その失敗を糧にして、もっと性能を上げた『アンカーシステム』を……」


俺の言葉は、胸元に走る衝撃によって遮られた


(# ω )「気にする必要は、無い……?」


ブーンが、俺の胸板をぶん殴ったのだ


(#^ω^)「ふざけんなお!!お前は、僕にとってお前は……初めての理解者だったんだお!!」

(#^ω^)「それを失うことが、どれだけ大きな損失かわかってんのかお!!」


|::━◎┥「……」


そうだ……俺が逆の立場だとしても、きっと怒っただろう
『気にしない』なんて、出来るはずねえだろ

123 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:35:03 ID:62pQqJ3.0
|::━◎┥「悪、かった……そんなつもりじゃ、無かった……」


(#^ω^)「……」


ブーンは拳を引くと、今度は俺の目の前に差し出した


(#^ω^)「わかったら、絶対に生きろお。死んだら、あの世までぶん殴りにいってやる」


それは勘弁願いてえな


|::━◎┥「ああ……」


俺は顔をショボンのオッサンへと向ける
言いたいことがあるなら、今の内に話して欲しかったが


(´・ω・`)「どうした?早くやれよ」


オッサンは肩を竦めて、こう言っただけだった
投げやりというよりは、『成功して当然』といった態度に見える。オッサンらしいや


|::━◎┥「よっし!!」


エンブレムを口元に近づける


|::━◎┥「『抜錨』」


錨が中央から薄く割れ、割れ目からは赤い光が漏れる
深海棲艦の冷たい目の色とは違う、熱い色だ

124 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:36:10 ID:62pQqJ3.0
|::━◎┥「……」


|::━◎┥「フンッ!!」


気合と共に、錨をベルトへと叩き込む
瞬間、俺の視界は暗転した


|::━◎┥「ぐおっ……!!」


意識はある。だが脳内へと強引に『情報』がねじ込まれていく

モノクロの映像に浮かぶ、一隻の艦
これが、『別世界の電』か


|::━◎┥「ああああああああああああああ!!!!!」


自分が、書き換えられていく感覚
『電』の記憶が、次から次へと俺の中へと送り込まれていく

第六駆逐隊の姉妹艦達、演習で沈めてしまった『深雪』への後悔と自責
スラバヤ沖海戦で救った、多くの命。沈んだ仲間が乗せていた乗員の救助
第三次ソロモン海戦で沈んだ、一番艦『暁』。『比叡』『夕立』
サイパン島に向う道すがら、沈没した『雷』

そして、記憶は『電』の最後へと移っていく


|::━◎┥「おあああああああああああああああああ!!!!!!


身体に響く魚雷の衝撃。上半身と下半身が真っ二つにヘシ曲がるような激痛
そして全身へ広がる、燃えるような『熱さ』

俺は今、『轟沈』を体感している

125 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:36:43 ID:62pQqJ3.0
「ドクオ!!」

「やべえぞブーン!!止めろ!!」


|::━◎┥「止めるんじゃねええええええええええええええ!!!!!!」


待ってくれ、もう少し、もう少しなんだ
俺が電の記憶を引き継ぎ、受け入れなければ、戦いのスタートラインにすら立てない


|::━◎┥「あああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


艦上で死んで行く乗組員一人一人の『痛み』が、『恐怖』が
俺の中へと刻み込まれていく


|::━◎┥「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」


わかっている。俺は、死んでいった『彼ら』の想いも背負わなければいけない
それは別世界の人間だけの問題じゃない。今、俺達の世界で苦しんでいる人々の想いも


|::━◎┥「                        !!!!!!!!」



もう、自分の叫び声さえ聞こえない。喉の奥、腹の底から火を吹いちまいそうなほど『熱い』
電、頼む。お前の痛みは背負ってやる。だから、俺に力を貸せ


誇り高き駆逐艦であった、お前の力を!!

126 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:37:18 ID:62pQqJ3.0
































.

127 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:38:21 ID:62pQqJ3.0










「ようこそ、『艦隊これくしょん〜艦これ〜』の世界へ」









.

128 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:39:07 ID:62pQqJ3.0
|::━◎┥「ッハァ!!」


(;^ω^)「ドクオ!!」

(;´・ω・`)「ドクオォ!!」


い、今のは、何だ?
『艦隊これくしょん』?『艦これ』?
それに、さっきの声は……


|::━◎┥「エ……エラーさん?」


あの、正体不明の女の子の声だった


(;^ω^)「ドクオ……ドクオ!!」


|::━◎┥「ハッ!!」


ブーンの声で我に返り、俺は自分の身体を確かめた
アンカーシステムは熱を帯びているものの、火傷の痛みは無い
意識はハッキリとしている。それに、身に乗っかっていた『艤装』の重さがスッと引いていた

と言うより、自分の『手足』のように感じる。この感覚

129 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:40:06 ID:62pQqJ3.0
『Weigh Anchor!!』


機械音声が、抜錨を告げる


『Go!! Destroyer Inaduma!!』


間違いない。これは……


(:^ω゚ )「せ……成功、したお……」

(;´・ω・`)「す、すげえ……」


|::━◎┥「……東郷ドクオ。改め、駆逐艦『電』」

|::━◎┥「同期……完了だ」


俺が意識を向けるだけで、動力エンジンが唸りを上げた
12.7センチ連装砲は、自在に砲塔の仰角を上下出来る
そして何より、人間を遥かに上回る『馬力』が、身体中に漲っていた


|::━◎┥「ブーン、オッサン……俺」


その時、工廠が大きく揺れた


(;^ω゚ )そ「うおお!?」

(;´・ω・`)「くっそ、そうこうしている内に近づかれちまったか!!」


深海棲艦の砲撃を受けているらしい
テーブルの上に置いてあった工具は床へ落ち、天井からは埃と、割れた蛍光灯が降り注ぐ

130 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:41:09 ID:62pQqJ3.0
|::━◎┥「二人は鎮守府内に批難しろ!!作戦指令室ならまだ割と頑丈だ!!そこに立てこもれ!!」

(;´・ω・`)「お前は!?」

|::━◎┥「決まってんだろ……!!」


戦力は、ここに成し得た
なら後は、戦うのみだ


|::━◎┥「サクッと……ぶっ殺してくらぁ!!!!!!」


短槍を手に取り、海に向って駆け出す
体が軽い……こんな気持ちで戦うの初めて!!もう何も恐くない!!


( ^ω^)「ドクオ!!」

(´・ω・`)「ドクオ!!」


二人同時に名前を呼ばれ、足が止まった
今は一秒でも惜しいってのに、こいつらは


|::━◎┥「何だよ早く批難しろ!!」


( ^ω^)「ぜってー帰って来いお!!」

(´・ω・`)「三人で打ち上げだ!!」


( ^ω^)(´・ω・`)「「提督!!」」

131 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:41:54 ID:62pQqJ3.0
『提督』。そう呼ばれて、そして今の状況を鑑みて、思わず笑った
提督は指揮官だ、前線で戦う立場じゃない。それが今じゃどうだ?変身ヒーローめいて、深海棲艦との戦いに赴く


|::━◎┥「ブーン!!お前、俺に尋ねたよな!!『どんな提督になるのか』ってよ!!」


( ^ω^)「えっ……あっ、うん!!」


あっこれ忘れてたパターンだわ。まぁいいや続けよ


|::━◎┥「これが俺の提督像だ!!悪かねえだろ!!」


最前線で戦う指揮官が、一人くらいいたって良い
艦娘のいない鎮守府なら尚更だ。上官が自ら身体を張り、海を守る
大衆から見れば、荒唐無稽だと笑われるだろう。でも


( ^ω^)「おっお!!かっこいいお!!」

(´・ω・`)「馬鹿丸出しだが、嫌いじゃあねーぜ!!」


一握りでも、それを認めてくれる人がいるなら、自分の道は間違っていないと思える


|::━◎┥「行ってくる!!」


鋼鉄の足音を響かせながら、戦いの海へと出撃する
背中に、二人分の『鋭、鋭、応!!』という、士気を鼓舞する雄叫びを受けながら

132 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:43:45 ID:62pQqJ3.0
工廠の外へ飛び出し、脇目も振らず海へと走る
そういや出撃用レールとかあったけど、もう知らんこのまま突っ込む

日は落ちかけ、夜の時間が始まろうとしている
真っ暗闇になったら、勝ち目は無くなるだろう。短期決戦で終わらせないと


|::━◎┥「あれか!!」


海上から砲撃をする深海棲艦。スクリーンに三つの赤丸がマークされる
艦影から種類を読み取り、名前が映し出された

左から、先ほど沈めた駆逐艦イ級二隻。それを率いる『旗艦』は


|::━◎┥「『軽巡ホ級』……!!」

133 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:44:19 ID:62pQqJ3.0
          r-、        /''、ヽ
          ヽー"ヽ       ∨77l
             \'" \   _∨/,| _ ;‐-;、
        _    \ニ\´  |≧/、l  il,|  i `ヽ
    ,.. _  (;ノ> _  l l、ニl /ミ、 二 ─l、l ' i : : ヘ
  _  〈/ニ> _`<ニ>l、 ≦三l、ヽ'ノヽニr=、ミl  ,i  : ヘ
/´ィミ> _`<ニ> `_<ニ>l  \ ニ .ヽl ヽl / ` ヽ, l
∨シ二二> _` <ニl-ヘ>゙l    i\,,ソ   l i   ` l
  ` <二二二> ー二ニ-" _ -―ニ_   | i    " l
      ` <二二 >∠二 /  ̄`ー=ミ` / `、  ' l
          ヽ,<二二>N   __  `l   l l    li
           〈/二>―‐ヽ、 ̄___ミl   l l    li
            l/    、   \=≠il    l   li
           / ,´   `ヽ    /_ l      l   li
             / /     ィ  //∠三ミil   '  i  li
        /ヽ       ,へヘ\7ァハil     ,:  il
       /   ) ,ィ⌒ v⌒l  |/l  ヽ/ ヘil    ,, '、  l    ,, -、、
     , イ    ´ヽ_ヽ_|_///l    ∨ 'il     /  〉_、 /l//,ヽヽ
    / ヽヽ>―、 l/ト、    |//,l     ∨li    /// ,, // ヽニ'/ノ
  /    ヽヽ\ ハl lハ  l///|ィ     l l   ///  l//    /
 〈  、  / ヽヽ\,l l/l   l //l ':,    l il   /l l  l   ,,ィ
  ヽ ` `ヽ、 xヽヾl l,l     l'//l, ヘ    l il il  l l  l 、-=  ̄,l _
   \    iヘ ヽヽ ∧ハ  ,メヘ/   ヽ   Y ,ハ  l l  l//>イ'//ヽヽ
  〈j>_\  il l ̄`l´ `ー〈    l   l   ,∨ミ、、,,l l  l/   :.ヽ/// ,'
    <二> lヽヽ.  l    l    l  /l    ハ//ミ/l l  l/≧ー―--'"
,r、- ,._  l ‐-ト、Xl  l     l   ハ/ l     ハ/ /ハl  ヽ>‐  ̄/
ヽ<二二ニ‐-ヽl\ヽソ\ _∧_ィ// ィ l     li / /≧、 _ <,ィ
     ̄‐==lヽ  `ー‐テ'__ ィ/// l     l,, ィ∧、≦>、_/
       ヽーlミ、 ̄`ヽ//////ヽ   /    ////∧l ヽ| `´
         lニ ヽ_ヽ/ `ー7   `'    /三<//ニ ‐/
          \≧三三三 メ   __ /一 ̄=ニ 7
            `ヽニ ̄  ` ´ニ´     _,,:; _/
               ̄`ー=ニニニニ====‐'''"

134名無しさん:2016/04/03(日) 18:44:49 ID:n8JINXzI0
ちょいちょいギャグ挟むのやめろwwwwwwwwwww

135 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:45:14 ID:62pQqJ3.0
鋼鉄のモアイ像のような形をした艤装に、真っ白な上半身を乗せた深海棲艦
耐久、火力共に、駆逐イ級を上回る。なるほど、『本隊』がやってきたってワケか

三倍、いやそれよりも大きな戦力差。しかもこっちは、テストも済んでいない処女艦

いや、『童貞艦』と来た。ハハッ、自分で言ってて泣きそう


|::━◎┥「初体験ってか」


4Pたぁ贅沢だ。クソ漏らしちまいそうなほどにな


|::━◎┥「行くぞオラアアアアアアアアアアアア!!!!!!」


港湾を蹴って、海へと飛び出す。機関部を唸らせ、踵のスクリューを回した

136 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:46:38 ID:62pQqJ3.0
|::━◎┥「オアアアアアアアアアアアこええええええええええええええ!!!!!」


ドボンと水しぶきを弾ませ着水。重みによって腰まで海に沈む
スクリューを更に回転させる。すると


|::━◎┥「進めえええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」


前進しながら身体が浮き上がり、海面に『立ち上がった』
水上スキーのように推進力によるものもあるが、人体では再現できない『艤装の浮力』も手伝っているように思える
普通の人間なら、この段階で横転してしまいそうなほど不安定ではあるが
俺並の運動スペックの持ち主なら難なく奔らせることが出来る
母さんありがとう丈夫な身体と運動神経をくれて


|::━◎┥「ッ!!」


前方から砲火が立て続けに吹く
奴らの狙いは俺では無く、後ろの鎮守府だった
背後で派手な倒壊音が聞こえ、首だけで振り返り確認する


|::━◎┥「野郎……!!」


毎日のように登っていた見張り台が、斜めに倒れていき
工廠の入り口は、今まさに崩れ落ちていく


|::━◎┥「野郎オオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」


鎮守府に被害は無かったが、それも時間の問題だ
奴らの標的を、『俺』に差し変えなければならない

137 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:47:42 ID:62pQqJ3.0
|::━◎┥「オラァッ!!!!」


右手の『主砲』を向け、発砲する
響き渡る衝撃と、目が眩む閃光。腕が引きちぎれそうだ

砲弾は見当違いの場所に着弾。水柱を立てる
イ級の青白い目が、俺を捉えた。そうだ、それでいい


|::━◎┥「いい気になってんじゃあねえッ!!深海魚共がァッ!!」


左手に握る短槍を、奴らへと向ける


|::━◎┥「日本海軍所属ッ!!東郷ドクオ!!又の名を、駆逐艦『電』ァッ!!」


|::━◎┥「人間を代表してッ!!テメェらをぶっ沈めに馳せ参じたァッ!!!!!」


深海棲艦の威嚇の叫声が、大気を震わせた
腰が引き抜けそうな、ゾッとする鳴き声だ。重なり合って不協和音を奏でている
なんの、負けてたまるか。こちとら気迫だけは人一倍ある。さぁ――――

138 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:48:13 ID:62pQqJ3.0
叫べ



|::━◎┥「海のッ!!」




叫べ!!




|::━◎┥「底にィッ!!」




叫べッ!!




|::━◎┥「消えろォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」

139 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:48:53 ID:62pQqJ3.0





♪Pacific Rim
https://www.youtube.com/watch?v=tMTr2rbqSBM




.

140 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:49:58 ID:62pQqJ3.0
此方は単騎、向こうは横一列の『単横陣』
右舷へと緩やかに航行しながら、砲撃を放ってきた


|::━◎┥「チィッ!!」


回避行動、『之字運動』を行いながら、出来る限り接近する
一発は右前方に、残り二発は後方へと通り過ぎる

連中の命中精度はそれほど高くない。航行しながらだと尚更だ
しかしそれは、たった今海に出たばかりの俺にも言える
立ち止まって撃ったとしても、知れているだろう
だから、『必中』の距離まで近づく必要がある。短期短距離で仕留めたい

そして、この『短槍』。艦娘を構成する資材の一つである『鋼材』で作られたこの武器なら、俺の力でも装甲を貫ける筈だ
艦隊決戦に白兵戦などちゃんちゃら可笑しいと、誰もが言うだろう
だが、意外にもこれは効果的な戦略なのだ。何故なら、奴らは接近戦を『想定していない』
そもそもが艦である奴らの基本攻撃は、『砲雷撃』。主砲と魚雷だ
つまり、その攻撃を『行い易い』姿形をしている。バケモノに近い形状の駆逐、軽巡級は尚更だ
これが重巡級、戦艦級、正規空母級になっていくと、より人の形に近づいていく

これに対し、艦娘はその全てが『人間』ベース
砲雷撃に加え、人類が戦争の歴史で培ってきた、肉体による『殺す技術』が使える
格闘、剣術など、様々な近接戦闘を行えるのだ
事実、軽巡洋艦の天龍型や、戦艦の伊勢型など一部の艦娘は、艤装に刀や槍が搭載されている


|::━◎┥「オオッ!!」


スピードを上げ、更に近づいていく。反対に、敵艦隊は遠ざかろうとする
航路を妨害する為に、進行方向に砲塔を向け、放つ

大型ライフル弾ほどの砲弾が、質量的にありえない威力で
ホ級の間近で水柱を立て、巨体を煽る。偶然近くに着弾したのだが、効果はあった
慌てた旗艦が急激な方向転換を行い、駆逐イ級がそれに着いていけてない。あいつら、練度はそれほど高くないようだ

141 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:51:41 ID:62pQqJ3.0
ヘッドギアのスクリーンに、『装填中』の文字が浮かぶ
12.7センチ連装砲が連続して発射できる砲弾は二発。再び撃つまでにリロードの時間が必要だ


|::━◎┥「じれってぇな!!」


陣形が崩れかけている今こそ畳み掛けるチャンスだが、そう容易くいかない
人間には人間の、艦娘には艦娘の戦い方がある。それを良く理解しなければならない

目標までの距離は、まだ大きく開いている
敵にも、まだ砲撃のチャンスは残っている

最後尾のイ級が、今度は俺の邪魔をするかのように発砲


|::━◎┥「っぶねッ!!」


立ち上がった海水をおっ被るほど、近くに着弾
直撃は免れたが、嫌な汗が吹き出る
航行は出来た、砲撃も出来た。しかし、耐久性までは自分で確かめることは出来ない
下手すると一発で死ぬ可能性もある。両肩の盾があるとはいえ、それがどこまで役に立つのだろうか


|::━◎┥「お返しだオラァッ!!」


『装填完了』を知らされるや否や、二発連続で発射する
狙いは旗艦、軽巡ホ級だ。指揮系統を執っている奴を先に潰すのは、戦闘の常套手段だ
今度は上手くいかなかったようで、二つとも遥か後方へと飛んでいってしまう

それを見たホ級は、喘ぐ様に吼える
すると、駆逐艦二隻が隊列を離れこちらへ向ってくる
自分が標的だと気付き、手下に始末を命令したか。それとも、二隻を囮にして自分だけ逃げるか
どちらにせよ、好都合だ。俺の目的は至近距離戦闘。近づいてくれるに越したことは無い

142 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:52:35 ID:62pQqJ3.0
だが、諸刃の剣でもある
こちらから当てやすいという事は、向こうからも当てやすいという事

それを、身を持って味わうことになる

距離、凡そ五百。急速に縮まっていく
両イ級の口が開かれた。砲撃が来る


|::━◎┥「来いやァ!!」


時間差で、二発の砲弾が放たれる
砲火がはじけた瞬間


|::━◎┥「ぎっ……ッ!!」


右肩に、激痛が走る。被弾してしまった
スクリーンに損壊箇所が映し出される。右肩の盾が吹き飛んでいた
耐久値が六分の一ほど減っている。機関部の損傷では無い為、航行に問題は無い
もし盾が無かったら、吹き飛んでいたのは右腕そのものかもしれない


|::━◎┥「ファック!!」


しかし、痛いものは痛い。艤装で強化されたとはいえ、元は人間だ
艦娘は戦場に出る度に、こんな痛みを背負い込みながら戦っているのか。全く恐れ入る
もう一発の砲弾はどこへ飛んでいったのかわからないが、連続で食らっちまったらやばかったかもしれねえ


|::━◎┥「おおおおおおおおおおおお!!!!!」


だが、これでイ級のターンは終わった
雄叫びを上げて痛みを誤魔化しつつ、槍を構える

次は、俺の番だ

143 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 18:54:01 ID:62pQqJ3.0
砲撃を終えたイ級も、黙って待ってはくれない
大口を開き、俺を噛み砕こうと突っ込んでくる

俺の狙いは、向って右側のイ級


|::━◎┥「ッッッオラァ!!」


鼻先を狙い、槍を突き出した
貫通こそしなかったが、『ぎゃりり』と音と火花を立て装甲を削り取り、胴体にまで続く溝を刻んでやった
飛び散った黒鉄が、アンカーシステムにコツコツと当たる。ざまあみやがれクソッタレ

傷を付けられたイ級は、痛みの悲鳴か怒りの咆哮か、大声を上げた


|::━◎┥「まだまだァッ!!」


スキーのキックターンの如く海面を蹴り、急旋回。これも、『足』がある人間にこそ出来る芸当だ
『鯨』の姿に酷似しているイ級は、大きく孤を描きながら旋回しなければならない


|::━◎┥「ッッラァ!!」


背後に回った俺は、先ほど傷を付けたイ級の背に飛び乗り、槍を突き立てる
今度はしっかり装甲を貫通。槍の先端に、柔らかな肉の感触が伝わった


|::━◎┥「暴ッ!!れんじゃッ!!ねえッ!!」


悲鳴を上げながらもがくイ級に振り落とされないように、両手でしっかりと槍を握り、踏ん張る
幸いにも右腕は、まだ使える。痛いことには変わりねえが


|::━◎┥「おおおおおおおお……!!!!!」


そのまま、渾身の力を込めて槍をねじ込んでいく
突き刺した部位からは、目の色と同じ青白い蛍光色の血が溢れ出てきた

144 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:35:24 ID:62pQqJ3.0
|::━◎┥「おわッ!!」


その血に足を滑らせ、側面から海へ投げ出されそうになるが
まだ無事な左手で槍を掴み、なんとか踏みとどまる

しかし、怪我の功名はあるもので、そこそこの重量が槍に掛かったお陰で
テコの原理でイ級体内に傷を付け、装甲を引っぺがした


|::━◎┥「っぶね……ん?」


視線を横にやると、無傷のイ級の砲塔が俺を狙い済ましている


|::━◎┥「やっべ!!」


逃げなければ、こっちのイ級もろとも海の藻屑だ
だが、槍を手放してしまうのも惜しい。そこで


|::━◎┥「ゼロ距離だ」


12.7センチ連装砲を、ぶら下がっているイ級に向ける
この距離じゃ外しようがねえ。喰らいな


|::━◎┥「オラァッ!!」


発射とほぼ同時に爆発。スクリーンが一瞬真っ白に染まり、ノイズが走った
爆風が俺の身体と槍を押し出し、後方へと落ちるように吹き飛ぶ


|::━◎┥「ゴアっ……!!」


海面を、水を切る小石のように跳ねる
立て続けに聞こえる砲撃音に気を向ける余裕は無く、体勢を立て直すのに必死だった

145 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:36:33 ID:62pQqJ3.0
|::━◎┥「ぐおおおおおお……!!!!!」


なんとか四つん這いになり、海面を掴んでブレーキをかける
耳元からアラートが聞こえる。耐久値が一定を切ったらしい
緑から黄色へと変わったバーの隣に、『小破』の文字が浮かんだ

更にマズい知らせが入る。近距離で主砲を撃った所為で、二本ある砲塔の内、一つがお釈迦になった
無茶に撃とうとすると、暴発するだろう


|::━◎┥「ご丁寧にどうも……ッ!!」


だがこうも言える。『もう一本の砲等は無事』だと
それに、無茶をしたお陰で槍も手放さずに済んだ。詰んだワケではない

先ほどまで乗っかっていたイ級だが、黒煙を吹き上げて傾いている
損壊が派手な所を見ると、味方の砲弾も浴びてしまったらしい。ざまぁねえな


|::━◎┥「ん!?」


と、ここであることに気づく
遠くに軽巡ホ級の姿が見える。それは良いとして


|::━◎┥「何処行った……?」


もう一体のイ級の姿が見当たらない。逃げ出した?そんな馬鹿な
そう考えた瞬間、手前の海面が『盛り上がった』

146 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:39:19 ID:62pQqJ3.0
|::━◎┥「うおおおおおおおおおお!?」


海水の膜を打ち破り、大口上げてイ級が飛び出してくる
野郎、潜行して不意打ちを仕掛けやがったか。駆逐艦が潜ってんじゃねえよクソが

頭上から覆いかぶさるように落ちてくる、巨大な口。大きな歯
俺の上半身を丸ごと食い千切ってしまいそうなそれが、文字通り眼前まで迫る
回避は間に合わない。主砲は装填中。防御?どうやって?


|::━◎┥「ッッツァ!!」


考えるより先に、体が動いた
槍を強く握り、イ級の上顎に突き刺し、柄を下顎に引っ掛けた
所謂、『つっかえ棒』だ。モンスターパニック物ならお馴染みの手法だろう


|::━◎┥「重ッ……!!」


だが、咬みつきは防いでもその重さまでは防げない
圧し掛かってくるイ級の重みに、片足を着いてしまう

思わぬダメージを受けたイ級は、血の混じった唾液を飛ばしながら叫ぶ
騒ぐんじゃねえ耳がうるせーだろうが


|::━◎┥「ボケがアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」


艤装の馬力を最高まで上げる
背中が焼けるように熱くなり、アラートは継続して鳴り響く
構ってられるか。それより先に済ませておくことがあるだろうが


|::━◎┥「装填急げえええええええええええええええええッ!!!!!」


イ級の砲塔は『口の中』だ。俺の目と鼻の先にあるそれが、いつ火を噴いても可笑しくない
やられる前に、殺るしかない。この均衡から逃れる方法も、それしかないのだ

147 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:40:02 ID:62pQqJ3.0
イ級の口内から、『ゴトン』と重たい物が送られる音が聞こえた


|::━◎┥「クソッタレがァァァァ!!!!!」


右腕を突っ込み、いつでも撃てるようにする
さながら、西部劇のファスト・ドロウだ。遅い奴は無様に死ぬ、刹那の緊張感

一日千秋の『一瞬』の後、装填が完了する


|::━◎┥「ッラァ!!」


狙いをやや斜めに定め、発射
頬の部分に砲弾を受けたイ級は、左方向へと仰け反る
その瞬間の隙を突き、槍をそのままに鍔迫り合いから離脱する

横転したイ級は、目の光を弱々しくしてゆっくりと沈んでいった


|::━◎┥「どうだオラァ!!競り勝ったぞ!!」


ガワの固い連中でも、やはり粘膜部分は弱いようだ
槍が無くなったのは痛いが、これで『二隻』。残りは


|::━◎┥「これで一対一だ……」


旗艦、『軽巡ホ級』

148 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:41:37 ID:62pQqJ3.0
数で言えば対等。しかし、ダメージは俺の方が上だ
先ほどの無茶な力比べで、燃料が著しく減っていることに加え、アンカーシステム自体にもガタが来ている
現在の状態は『中破』。黄色だったバーもオレンジ色に変わっている

艦娘にも言えることだが、中破判定から艤装の調子が格段に落ちる
攻撃力は万全時と比べ三割減り、回避力や命中率にも影響が出る
この不利な状態で、イ級よりも耐久、攻撃力が上の軽巡洋艦を相手にしなければならない


|::━◎┥「……」


ゆっくりと、周るよう航行しながら出方を窺う
ホ級は攻めて来ない。先ほどの戦いを見て、近距離で戦うのは得策ではないと悟ったのだろう

太陽は完全に水平線に沈み、月の時間が始まる
ここからは『夜戦』だ。艦娘、深海棲艦ともに戦いが苛烈となる


|::━◎┥「……」


艤装を背負っている俺も、例外では無い
気持ちが、更に昂ぶる。電の艤装が俺に、『奴を殺せ』と囁きかけているようだ
落ち着け、勝負を急ぐな。奴も様子見に入っている。策を練る時間はある

しかし、どう攻めれば良い?ここは海上、水平線。身を隠す遮蔽物は無く、味方もいない
燃料、弾薬は残り少なく、耐久値は半分以下。これで、どう奴を殺す?

考えあぐねていると、耳元で通信音が聞こえた


『ドクオ、無事かお!?』


続けて、ブーンの声。ほんの十数分前に会話したばかりだろと言うのに、酷く懐かしく思える

149 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:42:29 ID:62pQqJ3.0
|::━◎┥「なんとかな……残りは軽巡ホ級だけだ」


『ホ級か……せめて、魚雷があれば……』


今度はオッサンの声。恐らく、作戦指令室から通信しているのだろう
主砲の口径が大きくない駆逐艦にとって、魚雷は大型艦を喰える一撃必殺の武器だが
当てるには相当の計算と技術が必要だ。それに、そもそも電の初期装備には搭載されていない


|::━◎┥「無いものねだりをしてもしょうがねえ。あるものでなんとかしねえと……ん?」


『どうしたんだお?』


あるもの……そうだ、それは別に、『この場』だけに限った話じゃねえ
視野を広げりゃ、もっともっと使えるものはある。ここは、『鎮守府近海』だ
俺の後ろには、『家』も『味方』もいるじゃねえか!!


|::━◎┥「ブーン、オッサン。頼みがある」


『なんだお?』

『遺言ならお断りだぜ?』


糸口は、見つかった。後は、俺の気合と根性次第
作戦を手短に伝える。ブーンは不安そうな声で聞き返した


『本当に、有効なのかお?』


|::━◎┥「多分な」


『多分ておま』


|::━◎┥「やる価値はあるさ。とにかく、頼むぜ」

150 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:43:41 ID:62pQqJ3.0
『了解』を言い残し、通信は切れる


|::━◎┥「さって……」


お釈迦になった方の砲塔を、無理やりもぎ取った
ナイフほどの大きさのそれは、先端が鋭利になっており、無いよりマシレベルの近距離武器となる


|::━◎┥「そんじゃ……もうちょっとだけ、付き合ってくれや」


『電』の艤装に、そう話しかける。俺の言葉に応えるかのように、半壊した機関部が唸りを上げた
方向転換を行い、ホ級と対峙する。変化を感じたであろう奴も、砲塔を上下に動かした


|::━◎┥「殺せるもんなら……」


|::━◎┥「殺してみろオラァァァーーーーーーー!!!!!」


急発進。全身が海風を切り、耳元に『ヒュオオ』と音を残す
回避行動は最低限にした。燃料は限られている。余計な動きは出来ない


ホ級の単装高角砲が火を噴く


|::━◎┥「ッ!!??」


咄嗟に、頭を左に傾ける。瞬間、視界が暗転した


(メ A゚)「」


時間にして、一秒も満たなかったが


(メ'A゚)そ「……オオッ!!???」


俺は意識を失っていた

151 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:44:51 ID:62pQqJ3.0
視界が開け、顔面に風が直接吹き込んでいる
右手でヘッドギアに触れ、確認してみると、右側に一本の筋が刻まれていた
頬に生暖かい液体が流れ、米神に激痛が走る。頭部裂傷だ。流れ出る血の量は少なくない
直撃では無いが、砲弾が掠めたのだろう。面のパーツは衝撃で吹き飛んだらしい
人の身なら、掠っただけでも吹き飛んでいたはずだ。改めて、艤装の性能に感心する

だが、ステータスが確認できなくなったのは大きな損失だった
機関部はまだ動く。今の砲撃で艤装自体の損傷は無い


(メ#'A゚)「ぐ……!!」


『脳震盪』、身体のダメージが深刻であった
視界はぐらりと揺れる。腹からこみ上げた吐瀉物を、喉奥でむりやり押し戻した


(メ#'A゚)「ッッッ……!!!!!」


不安が残る距離だが、ここで決めるしかない
重たい右腕を左手で支え、狙いを定める


(メ#'A゚)「オオオオオオアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」


咆哮と共に、砲撃を放つ
向かい風に煽られた砲火が、顔面を撫でたが、瞬きすらも許されない

命運を懸けた砲弾の行く末を、見届けなければならないからだ

152 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:45:20 ID:62pQqJ3.0






(メ#'A゚)「ッッッけええええええええええええええええ!!!!」





.

153 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:46:15 ID:62pQqJ3.0
結果から言うと、砲弾は『届かなかった』
ホ級を穿つ筈の弾は、足下に着水し、空気を巻き込み白く染まった海水を大量に巻き上げただけだ

もしもホ級に『表情』があるならば、きっとほくそ笑んでいるだろう
最後のチャンスをモノに出来なかった俺を、嘲笑っていることだろう


だが


(メ#'A゚)「狙い……通りッ!!」


俺の目的は、本体への直撃ではなかった
この一発は、ただの時間稼ぎ、目くらまし、そして

油断を誘う為のものだ


(メ#'A゚)「ラァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


速力最大。艤装が黒煙を吹き上げ、大きな軋み音を立てる
海水が巻き上がっている『今』だけ、俺の無茶に付き合ってくれ

吶喊する俺に対して、ホ級はゆっくりと砲の標準を合わせた
奴からは、成す術無くした俺がヤケクソ起こして突っ込んできたように見えるのだろうか
だとしたら、まんまと策に嵌っている事に気付いていないマヌケだ

そうさ。今の俺はたった一人、戦場に立っている
お前のように命令に忠実な手下はいねえ。背中を預け、肩を支えてくれる戦友もいねえ
だがな、俺の背中には、誰よりも心強い『家族』が着いている

戦場にいなくても、戦う武装が無くとも、戦況を覆す『知恵』が、人間にはあるという事を――――――




(メ#'A゚)「今だァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」




思い知れ、バケモノ

154 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:47:45 ID:62pQqJ3.0
『どぉん!!』と、遠くから響く砲撃音
陸地から聞こえてきたその音に、ホ級は気を取られ、襲来するであろう砲弾に備えた

だが、そんなモノいつまで待っても来るはずがねえ
あの音は、俺が二人に指示したものだ

『鎮守府の屋外スピーカーから、最大音量で砲撃音を流せ』と

海上は、建設物などの障害物が無い場所だ。音は良く通る
それに加え、今は暗闇の時間帯だ。海を遠くまでは見渡せない

その二つの条件で、『援軍艦隊が現れた』と錯覚を起こさせたのだ
ただ『音』を鳴らす。それだけで、有効な援護となる
奴らは野生動物のように、『威嚇』の手段として鳴き声を使った
声を使えば、大抵の相手は恐怖で萎縮すると、理解しているのだ

逆に言い返せば、『深海棲艦』であろうとも、音だけで危機感を刺激することは可能
考え、行動する生物なら、身の危険や天敵から逃げる為に、突然の物音にはとても敏感になる
予期せぬ方角から、その音が聞こえてきたなら尚更だ


(メ#'A゚)「ッッッッッ……!!」


反対に俺は、叫びを押し殺した
ここで大声出して意識をこっちに向けられると、それで作戦はパーになる

ふわふわと舞う海水の粒子を掻い潜り、近距離戦闘の間合いに突入
ここまで近づくと、流石に感づかれてしまう
意識を俺へと戻したホ級は、焦燥に駆られながら砲を撃った

しかし、いつ襲来するか分からない偽りの砲弾と、迫ってくる俺との板ばさみだ
狙いは正確ではない。砲塔の向きからややズレるように航行すれば


(メ#'A゚)「ッッたるかァ!!」


回避は可能だった

155 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:49:48 ID:62pQqJ3.0
攻撃順は俺に移る。もう、奴には絶対に渡さない
右腕を差し伸ばし、ざっくりと狙いを定める。この距離、大きさなら外さねえ。巨体が仇となったな


(メ#'A゚)「オラァッ!!!!!」


今度は正真正銘の、砲撃音。同時に、ホ級の胸部へと着弾、爆発
人間がそうであるように、痛みと苦しみで胸元を抑え、頭を垂れる

ホ級の『顔』は、人の頭蓋と前歯を組み合わせたような、のっぺらとした装甲に覆われているが
下から覗き込めば、生身の『顎』が見えてくる。俺の攻撃はまだ終わっていなかった


(メ#'A゚)「喰らえェェェエエエエエエエエエエエ!!!!!!」


折った砲塔を、下顎から上へ向けて思いっきり突き刺す
柔らかな肉と、骨らしき物がぶちぶちと千切れていく感触
そして、空気が血を吐き出す『ゴポリ』といった重たい水の音


(メ#'A゚)「まだまだァァァァァアアアアアアアアアア!!!!!!」


両手いっぱいの大きさの頭を抱え、顎に膝蹴りをぶちかます
握り締めていた砲塔の余剰部分も、完全に頭部へと刺し込む
頭の装甲に、僅かにヒビが広がった。先端が頭蓋を貫いたのだろう


(メ#'A゚)「もッッッッ……」


頭部を手放し、やや間合いを取って砲塔を向ける
ホ級は力無く傾いていくが、これで死んだとは思えない


(メ#'A゚)「いっぱあああああああああああああああああああつ!!!!!!!」


トドメの一撃を放つ。一発目のすぐ隣へ着弾
最後のため息を吐くかのように、弱々しい鳴き声を上げ――――

156 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:51:10 ID:62pQqJ3.0






俺の視界は、爆炎に包まれた





.

157名無しさん:2016/04/03(日) 20:51:52 ID:62pQqJ3.0























.

158 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:53:03 ID:62pQqJ3.0
―――――
―――



死後の世界は、『黒』で包まれているもんだと、勝手に想像していたが
どうも、それは間違いだったらしい。実際は、『青』だ
それも、空や海のような自然の青さではなく、PCがクラッシュした時の『ブルースクリーン』のような
人工的で、どこまで行っても一色の世界が広がっていた

ここは地獄だろうか。いやこんな無機質な世界が天国の筈ねーけど、それにしてもちょっと殺風景過ぎるだろ
せめてもうちょっとさぁ……血の池地獄とか肥溜め地獄とか、色んなアトラクション的何かがあって欲しいだろ普通
あ、禁断の石臼とかない?あれ回せば俺も生き返れる超人パワーを手にすることが


「残念ながら、ここは天国でも地獄でも超人墓場でもありません」


無音の世界に、聞き覚えのある声一つ
その後に、『りん』と鈴の音が響いた


「」


俺も声を出そうとしたが、擦れた息すらも漏れなかった
喉……いや、身体全体の感覚が無く、思考だけがこの場に留まっているような、そんな感じ


「ああ、ご安心ください。貴方の思考はちゃんと読み取れます。その調子で会話してくだされば」


安心出来ねえよぶっちゃけ不安しかねえよなにここ恐いお家帰らせて


「まぁまぁ、貴方もいくつか訊きたいことがございますでしょう」

「どうでしょう、少しお話をしませんか?この『世界の狭間』で」

159 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:54:59 ID:62pQqJ3.0
お話、お話ねえ。訊きたいことなんざ山ほどある
先ずは……ブーンとオッサンの無事を確かめたい


「お二方ともご無事です」


ああ……良かった。生きて帰れなかったのは心苦しいが、戦った甲斐があった


「ふふ、貴方は『彼』に良く似ている。自己犠牲など理解できなかった私を、納得させる行動力がある」


『彼』……そうだ、思い出した。アンタ、確か夢にも俺に現れたよな?
そこで言ってた、『艦娘でありながら、人間であり、そして深海棲艦でもあった、奇妙な男性』って、どういうことだ?


「先ほどまでの貴方と、似たようなモノ。と言っておきましょうか」


俺と?


「『前任提督』は、貴方が現れるまで唯一無二の『艤装適合者』だったのですよ」

「方法は違いましたがね。人間は時に想像を絶する行いをする。アレには驚かされました」


その方法って?


「体内で、資材と開発資材を混合させたのです」


ハッ!?そんなことが可能なのか!?


「さぁ、私は実験にまで関わっていないのでなんとも」

「まぁ、成功したとは言いがたいでしょう。艤装の記憶にその身を焼かれながら、それでも適応『してしまった』彼は」

「施設内で暴走を起こし、その場にいた研究員と関連者を皆殺しにしてしまいました」

160 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:56:52 ID:62pQqJ3.0
適応、『してしまった』……やっぱ、しちゃマズいモンなのか?


「ええ、勿論。『サービス運用』に影響をきたす『バグ』ですからね」


サービス運用?ああっ!!そういやお前!!この世界に深海棲艦持ち込んだのは別世界の人間を楽しませるだけだって!!


「まぁまぁ、その辺りの言い分はまた後で」

「暴走を終えた後、彼は実験に関する記憶を全て失いました。そこで海軍は、彼を辺境の鎮守府に軟禁させ」

「『提督』としての執務に当たるよう、指示したのです。貴重な成功体を逃がさない為に」


逃げ出そうとはしなかったのか?


「あのメモリーの文章をお読みになったのなら、既に理由はお解りでしょう」


メモリー……ああ、そうだ。『彼』は、例え自ら望んで提督になったワケじゃないにしても
艦娘と一緒に過ごしていく中で、親愛の感情が芽生えたのだ


「戦場を経験しているだけあって、彼は目覚しい戦果を上げました」

「作戦が失敗に終わっても、それを決して艦娘の所為にして叱責することなく、お互いに次はどうすれば勝てるかをじっくりと話し合い、活かす戦い」

「勝てば良くやったと褒め、長所を更に伸ばす育成。やる気を出させるのが上手な、教育者でした」


……良い人、だったんだな


「ええ。それだけに、周囲の嫉妬や反感を買い易い人でして、根も葉もない噂を広められていたりもしましたが」

161 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:57:59 ID:62pQqJ3.0
しかし、詳しいな。日記にも書いてあったが、アンタと彼は接点があったのか?


「彼は先ほど話したとおり、特殊な存在でしたから。興味を持った私が話しかけたのです」

「……最初はお互いに、良い印象を持っていなかった。私は私で、何故そこまで『兵器』如きを親身に扱うのかと、疑問に思っていましたし」

「その疑問を解き明かす為に、度々彼の前に現れ、言葉を交わしました。そしていつしか、芽生えたのです」


何がだ?


「彼が、『艦これ』を終わらせる瞬間を目の当たりにしたいという、『欲』が」


その、艦これってのは?


「あちらでは、この戦争をそう呼んでいます。娯楽の一つとしてね」


『娯楽』と言ったか。気に喰わねえな


「彼らの中では、この世界での出来事は全て電子媒体の出来事ですからね」

「貴方だって、テレビゲームで一般人を撃ち殺しても、なんとも思わないでしょう?それと一緒です」


テレビゲームと一緒にするんじゃねえよ!!


「……ま、この話を続けても平行線ですので、戻しましょう」

162 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 20:59:17 ID:62pQqJ3.0
「彼も、私の中に芽生えた『欲』を知り、徐々に態度を和らげました」

「晩年には、私を友人とまで呼んでくれて……『嬉しい』という感情が芽生えたのも、これが最初でしたね」


晩年……何故、彼は死んだんだ?


「艦娘と深海棲艦は表裏一体の存在。貴方の世界でも提唱されている一つの説です」

「それは正しい。彼女達はコインを裏返すかのように、味方にも悪にも成り得ます」

「私はさっき、『実験は成功したとは言いがたい』と言いましたよね?これが、どういう意味を持つか」


深海棲艦に、なったってのか……?


「ええ、彼の中にある『艦娘』は、言わば生ものでして。歳月がゆっくりとそれを腐らせ……」

「私が気付いたときには、既に手遅れの状態にまでなっていました」


深海棲艦になると、どうなる?


「人への憎しみ、悪意に取り付かれ、同族以外を殺戮するだけのバケモノへと成り下がります」

「それは、彼が愛した艦娘でさえも、手にかけてしまうほどの憎悪。勿論、そんな事をしでかしてしまうのは、本意では無い」

「『艦娘の力が宿っている』。自分の現状を知った彼は、その憤りの向き先を、私でも艦娘でも、ましてや、原因を作った海軍本部でもなく」

「『深海棲艦』、ただ一辺に向け、自分自身の処理を行いました」


処理?


「鎮守府近海、全ての深海棲艦との『心中』です」

163 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:00:13 ID:62pQqJ3.0
な……か、彼は、たった一人で、海域を解放したってのか……?


「解放……まぁ、語弊はありますが、概ねそう言うことです」

「彼は軽巡洋艦『龍田』の力を宿していました。知っての通り、矛を持つ艦娘です」


だから、彼のことを『龍田』と呼んでいたのか……


「軽巡洋艦一隻の力とは思えない、暴れ振りでした。恐らくですが、男性と艤装は相性が良いのでしょう」

「適合成功率こそ低確率ではありますが、軍艦とは本来、男性が乗り操る物です。一因があるとは思えませんか?」


さぁな……死んじまったから、なんとも言えねえよ


「それはどうでしょうねえ」


は?どういうこと?


「おっと、そろそろお時間です。あまり話せなかったのは残念ですが、ここでお別れです」


ちょ、待って待って!!最後にもう一つ訊きたい事がある!!


「なんでしょう。手短にお願いします」

164 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:01:03 ID:62pQqJ3.0
アンタ、どうして『俺』を選んだんだ?


「……アハッ、大した理由などございません」

「ただ久しぶりに、あの呪われた鎮守府に提督が着任したのと……」

「艦娘にすら拒絶されるほど、ブサイクな貴方が面白かっただけです」


よし分かったちょっとこっちこいぶん殴ってやる


「アハハっ、またお会いしましょう。駆逐艦『電』殿」


『りん』と、鈴の音がまた鳴り響くと
青一色だった世界に、光が差し込む

身体が重力と、暖かさを取り戻していく

俺は一体、どこへ向かっているんだ


死んだ俺の魂を、どこへ運んでいくと言うんだ―――――

165 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:01:42 ID:62pQqJ3.0




























.

166 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:03:49 ID:62pQqJ3.0
―――――
―――



(//A-)


(//A`)


(//A`)「ア……」


「お、起きた?」



   〃∩ ∧_∧
   ⊂⌒(  ・ω・) 「おはよー」
     `ヽ_っ⌒/⌒c



(//A`)「……」


いや、誰だよ
ツッコもうとしたが、喉が擦れて声は出なかった

167 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:04:45 ID:62pQqJ3.0
(  ・ω・)「そのままでいいって。ちょっと待ちな」


ソファーで寝転んでジャンプ読んでいた、三十後半ほどの男は、ストロー付きのコップを口元まで運ぶ
『自分で飲める』と、無言で右腕を伸ばして受け取ろうとするが、動かなかった

いや、動かないんじゃない

右腕が、根元から丸々無くなっていた
それと、左脚の感覚が無い。下半身を覆う布団の隆起が、それを失くしたことを物語っていた


(//A`)「……」

(  ・ω・)「話す、話すよワケは。とりあえずホレ。水」


口の中はカラカラだった。ストローを咥え、ゆっくりと水を啜る
『何か食べるかい?』と、男は傍らの果物篭を指差すが、首を振って断った
左腕は繋がっているが、ギプスがはめ込まれている。どこの誰かも知らない野郎に食べさせて貰うのも何かキモい


(//A`)「あ、あ」


しゃがれてはいるものの、一応声は出るようになった


(//A`)「アンタ、誰だ」

(  ・ω・)「どうも初めまして。トム・クルーズです」

(//A`)「トム・クルーズさん。そんで……」

(  ・ω・)「いや、ちょ、真に受けないでよツッコんでよ恥ずかしくなるじゃない」


じゃあボケんなよ

168名無しさん:2016/04/03(日) 21:05:30 ID:dV76bn4E0
oh……

169 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:05:49 ID:62pQqJ3.0
(  ・ω・)「私はこういう……ああ、名刺とか無いんだわうっかりうっかり。うっかりサンバ」


いちいち鬱陶しい野郎だな帰れよほんともう


(  ・ω・)「大淀カラマロス大佐だ。気軽に大佐と呼んでくれ」

(;//A`)「アンタ、海軍ッ……!!」


起き上がろうとすると、身体に激痛が走った


(  ・ω・)「あーあーあーあー、ダーメだって。傷は塞がってるけど、内部のダメージはまだ治ってないんだから」

(;//A`)「んなもんどうでもいい……何の用だ?」


喉が万全なら、怒鳴りつけていた所だ


(  ・ω・)「先ずは誤解を解こう。私は海軍では無い。いや、元々はそうだったんだけど」

(  ・ω・)「今は海上護衛会社『アカツキ』に勤めるサラリーマンさ」


海上護衛会社、『アカツキ』。聞き覚えが無い
当然、関わった覚えも無い


(;//A`)「聞いたことねえ、そんな会社……それに、俺は……」

(;//A`)「生きてるのか……?」


男は窓辺まで歩き、引き窓を開けた
初夏の爽やかな風が俺の顔を撫でる。潮の匂いが混ざっていた

170 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:07:33 ID:62pQqJ3.0
(  ・ω・)「三つ、幸運があった」


窓縁に寄りかかった大佐は、指を一つ立てる


(  ・ω・)「一つ、電の艤装には『補強増設』が施されていてね。そこに入っていた『ダメコン』が、君の轟沈を防いだのさ」


聞き覚えの無い単語に、俺は眉を顰めた


(  ・ω・)「ほら、あの『南京錠』さ。あの中にこう……ねじ込まれてたんだよ。どういう原理かは私もよくわかんないんだけど」

(;//A`)「いや……うん、確かに全然伝わらない……」


説明下手だなこいつ


(  ・ω・)「二つ目、吹き飛ばされた位置がちょうど鎮守府への方面だった。上手く流れ着いた君を、我々の艦隊が保護したのさ」

(;//A`)そ「は!?え!?艦隊!?」

(  ・ω・)「そして最後に三つ目だが」

(;//A`)「いいよもう!!それより艦隊って何……いつつつつ!!」

(  ・ω・)「ほらそんな興奮するから〜」

(;//A`)「誰の所為だ誰のォ…・・・」

(  ・ω・)「その辺もちゃんと説明するから。三つ目が重要なんだよ。君にとっても我々にとっても」

171 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:08:50 ID:62pQqJ3.0
(  ・ω・)「三つ目、それは、君の致命傷を『バケツ』で治せたことだ」


『バケツ』とは、『高速修復材』の通称だ
艦娘はダメージを修復する為に、『入渠』しなければならない
修理には結構な時間が必要で、長くて丸一日拘束される場合もある

その修理時間を一瞬で済ませてしまうのが、ワンショット・グラス大の容器に入った緑色の液体だ
口から摂取することで、艦娘と艤装のダメージを即時回復させる、なんか若干恐い薬っぽい何かだ
しかし、それで『人間の傷』が治っただなんて、聞いたことが無かった


(  ・ω・)「これが、どういうことか分かるかね?君は艦娘の『艤装』に、初めて適応した人間なんだよ!!」

(  ・ω・)「まぁただ、戦闘時に吹き飛んでしまった右腕や左脚は戻らなかったけどね。お悔やみ申し上げるよ」


大佐が言うには、失くした箇所を再生させることは出来なかったが
爆破による皮膚の裂傷、骨折、内臓の破裂、脳への損傷がすべて元通りになったらしい
ただ、身体に掛かった負担までは治すことは出来ないらしく、しばらくはリハビリに専念する必要があると


(//A`)「ちょっと待てよ……俺が生きている理由は分かった。だが……」

(//A`)「『あの場所』には居なかったアンタが、何故俺が艤装に適応したことを知っている?」


大佐は『ふむ』と顎を擦った。胡散臭い奴だ


(  ・ω・)「ひょっとして君、ここが別の場所だと思ってる?」

(//A`)「え?」

(  ・ω・)「ここは君が配属されていた鎮守府の医務室だよ?え?見覚えない?」

(//A`)「え?」

(  ・ω・)「え?」

172 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:11:24 ID:62pQqJ3.0
(//A`)「いや、あの……海軍、じゃ、ないん……だよな?」

(  ・ω・)「え?うん。元はそうだったけど」

(//A`)「じゃあ、どうしてこの場所に『入れたんだ』?」


いくら僻地にあって、本部から見放されていた鎮守府とは言え
一応、艦娘を扱う重要基地だ。おいそれと民間人が入れる場所ではない


(  ・ω・)「もうここは海軍が保有する土地では無いからね」

(//A`)「は?」

(  ・ω・)「買い取ったのさ。我々が」

(;//A`)「え?ちょ、何それ意味わかんない……」


えっ、お金さえ払えば買い取れるモンなの鎮守府って……?え?何?買う意味って何?


(  ・ω・)「我々の仕事は深海棲艦の手から民間船を護衛することだが、割と新しめの会社でね」

(  ・ω・)「まだ設備が充実していないんだよ。そこで、無人の鎮守府をなんかこうあの手この手で買い取ろうとしたんだがね」

(  ・ω・)「海軍は、『君の着任』を理由に売ろうとしなかった。どうしても手放したく無かったらしいね」


俺がここに送られた理由の一つが判明して、また新しい疑問が浮かぶ


(;//A`)「護衛っつったよな?まさか、艦娘を保有しているのか?民間企業が!?」

(  ・ω・)「そーだよ」


いや軽いなオイ


(;//A`)「そんなおいそれと手に入るもんじゃねえだろ?どうやって?」

(  ・ω・)「だからほら、言ったじゃない。私、元海軍だって」

(  ・ω・)「『アカツキ』は、海軍のやり方に疑問を持った軍人や、艦娘の集まりでね。我々の考えに共感してくれる政治家や海軍上層部がバックにいる」

(  ・ω・)「彼らの力添えもあって、我々は民間で唯一、艦娘を保有する企業になったのさ」

173 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:13:03 ID:62pQqJ3.0
(;//A`)「……」


話が突拍子無さ過ぎて、着いていけねえ
まぁいいや深く考えるのよそう。あー、ジャンプ読みてえ


(  ・ω・)「ま、海軍も一枚岩じゃないってことさ」

(;//A`)「なる、ほどな……で、目的は?」


そこまで大掛かりな企業となると、当然裏に大きな目的もあるのだろう
大佐は表情を引き締めると、短くこう言った


(  ・ω・)「世界平和」


まるでガキの願い事だ。実現不可能で、現実味が無い
だが、大佐は真剣そのものだった


(  ・ω・)「深海棲艦との戦争が、何故ここまで長引いているのか知っているかい?」

(//A`)「いや……」

(  ・ω・)「国が、『儲かる』からだよ。言わば、『軍需』だね」

(//A`)「……日本は、唯一の艦娘保有国家だからか……」


大佐は『その通り』と頷く。深海棲艦は日本の領海だけでなく、海外にも現れる
諸国に艦娘を派遣させて、多額の謝礼金を受け取る。『傭兵派遣』
深海棲艦との戦いが終わらない限り、この国はどんどん潤うのだろう

174 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:16:53 ID:62pQqJ3.0
(  ・ω・)「この状態を続ければ、日本は世界を艦娘で支配する軍事国家と捉われてしまうだろう。その先にあるのは、国家間の戦争だ」

(  ・ω・)「じゃあ、そうなった場合、核を保有しないこの国はどんな『兵器』を使うか?」

(;//A`)「『艦娘』……」


なんてこった。人間を救う存在が、今度は日本以外の人類を殺す『敵』に変わる
それはもう、『深海棲艦』と変わりない。彼女達が国家間の戦争に関わった先にある絶望は、想像もできない


(  ・ω・)「『世界平和』を成すには、一刻も早く深海棲艦を殲滅し、脅威を取り除くこと」

(  ・ω・)「加え、役目を終えた『艦娘』の兵力を徐々に失くして行くこと」

(  ・ω・)「『アカツキ』はこの場所から、本格的に戦争へと参入する。我々の主力艦娘達が育った、この場所から!!」

(;//A`)「なっ……まさか、前任提督の艦娘達か!?」

(  ・ω・)「ご名答。あれ?なんで知ってるん君?」

(;//A`)「あ、ああ、いや……小耳に挟んでな……」


寝耳に水だ。てっきり、解散されていたものだと思っていたからだ
まさか、こんな特殊な環境に身を置いてるだなんて


(  ・ω・)「死にかけの君を拾ったのも、彼女達だよ。あの日、鎮守府へと向ってたんだ」

(  ・ω・)「到着がもう少し早かったら、君もこんな目に遭わずに済んだのかもしれない。本当に、申し訳ないと思っている」


大佐は深々と頭を下げた


(;//A`)「いやいいよ別に謝らなくて!!生きてるだけで大儲けだし結果的には助けられたんだし!!」


頭を上げろと言うが、大佐はその体勢のまま話を続けた


(  ・ω・)「もう一つ、頼みたいことがあるんだ」

175 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:17:57 ID:62pQqJ3.0
(;//A`)「頼み……?」

(  ・ω・)「ああ、『アカツキ』に加わって欲しい」


急な話だ。寝起きの怪我人にはちょいとヘビー過ぎる
考える時間が欲しいが、大佐は頭下げながら有無を言わせない無言のプレッシャー放っている。謝男かよこの人


(;//A`)「……っふー、一応聞いとくが、俺をアカツキにスカウトする理由は?」

(  ・ω・)「先ずは、ブーン君が造った『アンカーシステム』。その研究に携わってもらいたい」

(;//A`)「まぁ、そうだろうな。だが俺は別に大したことしてねえ」


少なくとも、俺自身ではそう思っている
凄いのはアンカーシステムそのものを開発したブーンだ


(  ・ω・)「謙遜をするんじゃあないよ、東郷くん。だって君は……」


大佐は顔を上げる。顔には笑みを浮かべていた


(  ・ω・)「人類史上初めて、『海上』で深海棲艦を単騎で三隻沈めた、『英雄』なのだから」

(  ・ω・)「これが、我々にとってどれだけ大いなる行為か、分からないほど愚かでは無いはずだ」


(//A`)「……」


そうか、俺は生き残ったことで
幾つかの『役割』が出来たのが


(//A`)「『象徴』になれ、と」


その言葉を聞いて、大佐は俺の肩に手を置く

176 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:18:54 ID:62pQqJ3.0
(  ・ω・)「君は希望だよ。人類にとって、艦娘にとって、長きに渡って続く戦争を終わらせる希望だ」

(  ・ω・)「そして、この鎮守府も……君達が命を掛けて守ろうとしたこの『家』も、その象徴となるだろう」


(//A`)「……」


俺は、俺は……守れたんだ。この居心地の良い居場所を
そしてこれから、始まるのか。『俺の戦争』って奴が


(//A`)「……返事をする前に、会わせて欲しい奴らがいる」

(  ・ω・)「そう言うと思ったよ」


大佐は、『また後で』と言うと、医務室を後にする
入れ替わりに入ってきたのは


( *;ω;)「うおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

(*´;ω;`)「アアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッス!!!!!!」


泣き笑いしながら飛び込んできた、俺の頼れる『家族』だった

177 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:20:00 ID:62pQqJ3.0
(*´;ω;`)「バカ野郎いつまで寝てんだコラァ!!もう料理冷めちまった通り越して腐ってんぞボケオラァ!!」


(//∀`)「オッサン」


( *;ω;)「腕とか脚とか無くなってるけど心配すんなお!!すぐに義手と義足作ってやるお!!テリーマンだって義足で戦ってんだお心配すんな!!」


(//∀`)「ブーン」


二人の顔を見て、こみ上げてきたのは『幸せ』だった
俺が提督になったのは多分、これが欲しかったからなのかもしれない
当初の思惑から大分ズレたものだったが、それでも、計り知れないモノとなった


(//∀`)「なぁ、二人とも」


(*´;ω;`)「なんだよ!!」

( *;ω;)「なんだお!!」


(//∀`)「怪我治ったらさ、一緒に……」


(//∀`)「退軍届け出すついでに、上官の鼻ツラぶん殴りにいこうぜ」


二人はきょとんと顔を見合わせた後、爆笑した。釣られて、俺も笑った
傷が痛んだが、気にするまでも無かった。今はこの三人だけの楽しさを、味わっていたかった―――――

178 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:21:13 ID:62pQqJ3.0


























.

179 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:22:20 ID:62pQqJ3.0
―――――
―――



あれから、二十年くらい時は進んだ。あっという間だった
関西人風に言うとあっちゅー間やったでんがなまんがな


(-A-)「……」


執務室の神棚に、拍手を打つ
あの日、俺の命を救ってくれた『南京錠』もお供えしてある。これは俺の原点だ

そして、もう一つ


('A`)「……アンタの願い、叶えてくるよ」


メモリーに残されていた最後のファイル
そこには、たった一行だけ文章が記されていた


『貴方の手で、彼女達に幸せを与えて欲しい』


これだけ。短絡的だが、『彼』の想いがひしひしと感じられる言葉だった


<ヽ`∀´>「東郷司令官」


規則正しいノックの後に、俺の補佐官が入室してくる
手には包みを持っていた

180 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:23:56 ID:62pQqJ3.0
<ヽ`∀´>「先ほど奥様がいらっしゃいまして、差し入れと伝言を預かって参りました」

('A`)「なんだよ直接渡してくれたらいいのに」


まだ温もりの残る弁当だ。匂いから察するに、俺の大好物の竜田揚げも入っている


('A`)「伝言ってのは?」

<ヽ`∀´>「『ま、精々がんばりなさい』とのことです」

('∀`)「ハハッ、あいつらしいや」


幸せ噛み締めながら弁当掻っ込みたい所だが、残念ながら時間が無い
これから、『最終作戦』が始まるのだ。全てが終わってから食ったなら、また格別に違いない


<ヽ`∀´>「生き残る理由が、また一つ増えましたね」


爽やかな声で朗らかに笑う補佐官だが、顔が恐い
いい奴なんだけど、顔が恐すぎて駆逐艦娘が大体泣く。いい奴なのに


('A`)「全くだ。さて、そろそろ往こうか。『響』」

<ヽ`∀´>「ええ。旗艦、『電』殿」


右の『義手』で錨のエンブレムを掴み、部屋を出る
今日もまた、この場所へ帰ってくることを誓って

181 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:25:17 ID:62pQqJ3.0
(´・ω・`)「よう、お二人さん。もう出発かい?」


食堂前の廊下では、俺より歳を喰ったショボンが声を掛けてきた
一般のサラリーマンなら、定年退職間近の年齢だが、変わらずこの鎮守府で料理を振舞ってくれている
勿論、三時のおやつも忘れない。小さな駆逐艦娘に一番懐かれているのは、恐らくこの爺さんだろう


('A`)「おう。夜明け前には決着つけてやるぜ」

(´・ω・`)「張り切りすぎてドジ踏まねえようにな」

('A`)「わーってるよ」


爺さん(俺も既にオッサンなので、こう呼んでいる)は左手を差し出す
俺も、『生身』の左手で握り返した


(´・ω・`)「終わらせて来い。戦争を」

('A`)「ああ、任せとけ」


激励の言葉を貰い、手を離す
爺さんは傍らの『響』の肩を叩き『しっかりな』と励ました


(´・ω・`)「さ、ほら行け。ブーンが待ってるぞ」

('A`)「おう」


足早に、出撃場へと向う
左右で違う響きの足音も、俺にとっては最早聞きなれたものだ

182 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:27:00 ID:62pQqJ3.0
( ^ω^)「おっ、来たかお」


出撃場。今夜、『アンカーシステム』を装備し海に出る部下達と言葉を交わしていたブーンが、俺に近づく


( ^ω^)「全員、お前が来るのを待ちわびていたお。どいつもこいつも血の気が多くて困るおね」

('A`)「誰に似たんだかな」

( ^ω^)「お前だお前wwwww」


プロトタイプより、大幅に装着が簡略化された『電』の艤装を着込む
『あの時』から今まで、俺と一緒に戦ってきた『相棒』も、これで着納めかと思うと少し寂しい
武装は、改修に改修を重ねた『12.7cm連装砲B型改二』と、『61cm五連装(酸素)魚雷』


( ^ω^)「さぁ、野郎共に声を掛けて来いお」

('A`)「おう」


そして最後に、『短槍』を手渡され、準備は完了した


<ヽ`∀´>「司令、こちらへ」


補佐官に従い、壇上へと上がる
兵士達の目が、一斉に俺へと集まる

『司令官!!』『東郷のオッサン!!』『大統領!!』

そして、口々に声が掛けられる。いや大統領は可笑しいだろ

183 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:28:02 ID:62pQqJ3.0
('A`)「諸君ッ!!」


マイクは使わず、地声を張り上げる
生の声が、一番士気が上がり易い。戦いの半生で学んだことの一つだ
ざわついていた兵士が、シンと口を噤み、次の言葉を待った


('A`)「……」


長かった。長い、戦争だった
それが今夜、終わろうとしている


(;'A`)「……」


ああ、クソ。上手く言葉が出てこない
俺はこんなにあがり症だったか?いや、違う。これは重圧だ
歴史が変わる重圧に、俺が圧されているのだ


『りん』


(;'A`)そ「ッ……」


懐かしい鈴の音が聞こえた。周りを見渡しても、その音に反応した奴はいない


(;'∀`)「は、ははは……」


そうだよな。おめーも待ち望んでいるんだもんな
それも、俺よりも少しだけ長く

悪かった。らしくねえよな、こんな俺なんて

184 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:30:04 ID:62pQqJ3.0
('A`)「スーッ……」


堅苦しい挨拶は止めだ


(#'A`)「野郎共ォォッッ!!!!!」


いつも通りの俺らしく、盛り上げてあろうじゃねえか


(#'A`)「いよいよ今夜ッ!!!!深海棲艦の親玉を討つッ!!!!!」

(#'A`)「最後は艦娘との合同作戦だッ!!!!見納めだと思ってケツばっか眺めてると、一瞬で死んじまうぞ!!!!」


笑い声が上がった。奴らの緊張も、解れてきている証拠だ


(#'A`)「敵は単騎!!!!だが油断すんじゃねえぞ!!!!!!深海棲艦で唯一の『男性型』、最終戦鬼!!!!」

(#'A`)「海軍大本営を壊滅させた、最強最悪の相手だ!!!!!」

(#'A`)「だが『俺達』にはッ!!!!!!奴を越える『力』が備わっている!!!!忘れるな!!!」


短槍の柄で、壇上を叩く


(#'A`)「深海棲艦に受けた屈辱ッ!!!!!愛する者を亡くした痛みッ!!!!!犠牲となった戦友の想いッ!!!!!てめえらが全部背負って戦えッ!!!!!」


(#'A゚)「冷たい海のバケモノにはねえ、熱い『ハート』でぶち殺せッ!!!!!!」


男達の、溢れ出た燃える心が雄叫びとなって鎮守府を揺らした
上々だ。これで準備は整った




(#'A゚)「艦隊ッ!!!!『抜錨』ッ!!!!!」

185 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:31:08 ID:62pQqJ3.0






(#'A゚)「暁の水平線に、勝利を刻めェッ!!!!!!!!!!」





.

186 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:34:31 ID:62pQqJ3.0






♪ED Thema
https://www.youtube.com/watch?v=NZxUD3tBTaU





.

187 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:35:19 ID:62pQqJ3.0
CAST




('A`) 東郷ドクオ




( ^ω^) 明石ホライゾン




(´・ω・`) 間宮ショボン



   〃∩ ∧_∧
   ⊂⌒(  ・ω・) 大淀カラマロス大佐
     `ヽ_っ⌒/⌒c



<ヽ`∀´> 響



.

188 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:36:19 ID:62pQqJ3.0
原案



『艦隊これくしょん〜漢これ〜のようです』
『('A`)提督だけど艦娘がいない鎮守府に配属されたようです』
『艦隊これくしょん 〜仮面ライダー青葉〜 のようです』



.

189 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:38:08 ID:62pQqJ3.0
使用楽曲



♪母港
♪Bruno Mars - Runaway Baby
♪Zebrahead - Rescue Me
♪Zebrahead - Broadcast to the world
♪Pacific Rim


ED Thema

♪PIROPARU - Check-Mate!!



.

190 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:38:38 ID:62pQqJ3.0
原作



                   _f       il_
             .   ーヨE    =卅l
             |-、_ / T .冂  } E、
       ト--、_lロ=ー'´ ̄{__} ヒ,コ E-'~  {ー-,______|!
      └―――――― ,、_―――――――――――´
           _,     _l ! 冫_
       /{    }  `ゝ`ニ二二コ }`ヽ、  ,、
      / }  }ヽ! /ヽ,| [] [ ̄.,'  ノ_   ' ,` 、 .}ヽ,
   l ̄`V   |  |   ,rv, l  ┌┐`ソ , '--`_ ,´ー―` {  l   ___
   |      / __,!  {,ノ || └┘_,{∠,--、 { (      |  V´  /
   ヽ    ノ }      ニ [] レヽ,――' ヽ、 ー―、  |     ノ
    |  / .l_  ! |  |l__r´ ,ニニ',__     `コ f´ _ ヽ、  {
    |  i  .|  |! |  | |`ー´     `ゝ―(`ー' ,ニ´ 冫 .!   |
    l  i   } /!__ハ | i  || || ||  |  /, f´ /./_  |   !
     ,ゝ i   ノノ ヽ   j_|  || || ||  |-、-イ_ノ / レ'/  !  |
   /   く   ´   )__ノヽ――――――'     、_ノ   >  `ヽ
   \_ \___        ({艦隊これくしょん_/ _/
       ,ゝ   \  |\ iニニ .二二 /{____ノ     /
      /       ヽレ <. ヾ | |   ./ |        <
       ̄ ̄ ̄\    ゝ` 、 l ト、_,/ノ`  / ̄ ̄ ̄
            ` ー,-..\ ''、j |ゝ/ 、-ー´
              {_/ `ヽソ ' \__l

191 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:39:26 ID:62pQqJ3.0





『作:◆HS4z8y6JHc』




.

192 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:41:06 ID:62pQqJ3.0




『艦娘がいない鎮守府のようです』 END



.

193 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:41:33 ID:62pQqJ3.0

















.

194 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:41:53 ID:62pQqJ3.0
















.

195 ◆HS4z8y6JHc:2016/04/03(日) 21:42:58 ID:62pQqJ3.0















・運営鎮守府より連絡

全作戦遂行の為、『艦隊これくしょん〜艦これ〜』は本日を以って全てのサービスを終了しました
長きに渡ってプレイしていただき、誠にありがとうございました

また、どこかの『世界』でお会いしましょう




            ,. ´ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ `ヽ、     
         /   ______    \
         { ,.__艦_{Y}__これ`:ヽ、  \
         ∨: :_/   ∨: :{:_:_: `ヽ、::\  ヽ
         .'/: /{、`  乂´:_、: :.|: : :\:::..、  :
        /:|:/ ┃    ┃从|: :|: ∧\}  }
         {:∧             |: :|:/-:}: :j イ_
         「人      vァ     |: :/_ノ: ィ、:、ー'
        {:{∧>,_、__,、____,/:.イ: 〈_ノ'ハノ-
        |: 、  {=} {⌒ヾ ト、/ ´  ̄  }: :|
        |: : \={゚x゚´}=、`Y_)      /: :,
          \:_: 〉{..::.. |'介}´ |〉   /: イ
            /、::ノ/====〈   /´
          //{l7/ | | |∧
          ゞ ||'\{__{__」__ノ
            `  |-| |-|
                  |_j j_/
              ー' ー'


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