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もしも加賀楓と横山玲奈がふたり旅をしたらありがちなこと

5名無し募集中。。。:2017/08/20(日) 13:18:22
古い道路には、バイクのエンジン音の他には何の音もしなかった。
爆撃を受けて崩れた建物と、錆びついた車の残骸の上に伸びる並木。
道路脇にまっすぐ並んで伸びる幹のシルエットが空にくっきり浮かんでいる。

楓はいったんスピードをゆるめてから、後ろの玲奈をびびらせて起こすためだけに急にスピードを上げた。
「ななな!!」玲奈の悲鳴はぶるぶると振動した。

ガソリンスタンドが視界に入ってきた。
あれが蜃気楼だとしたら、ずいぶん頑丈な蜃気楼だ。
かなりの荒廃ぶりはまるで竜巻にやられたようだった。

速度を落としてガソリンスタンドへと入る道に近づきながら、楓は玲奈を振り向いた。
「誰もいないみたいだけど、どう思う?」

目を細めて建物を見ていた玲奈が言った。
「うん。誰もいないみたい。あそこに残っている物を回収するぐらいの“時間の余裕”はあるよ」

狭苦しい壁のくぼみには尿と腐ったレモンのような臭いが漂っている。
オレンジよりも小さいネズミが暗がりをちょろちょろと横切った。

楓は馴染みのある感覚――暴力が目前に迫っているぞくぞくする感覚――にうなじを刺激された。
自分はこれを楽しみ過ぎているのだろうかと考えた。
世界にいきなり平和が出現したらどうすればいいのか、楓にはまったく分からない。
どのみち、そんなことは起こりそうにもないのだが。

予想は裏切られた。ひとりの男が拳銃を手にして立っていた。
額には玉の汗が浮かんでいる。「動くな。武器を捨てて出ていけ」
反射的に楓も玲奈も拳銃を抜いて構えた。

「あんたが捨てなさい。2対1。勝ち目はない」楓が落ち着いた声で告げた。
その年配の男は、銃口を向けながら拳銃を握り直した。
掌の汗をジーンズで拭う。やがて諦めたように拳銃を手放した。

「“強盗”じゃないの。ガソリンがあればもらいたい。食糧と交換でいいわ」玲奈が言った。
年配の男は目を丸くした。
「…分別を働かせる若者を見るのは久しぶりのことだ」

6名無し募集中。。。:2017/08/20(日) 20:31:10
年配の男はバイクを満タンにしてくれただけでなく、楓と玲奈にリンゴをくれた。
この時代、リンゴを食べられることは滅多にない。
食糧や衣服、医療品やその他の必需品はどうにかこうにか供給されている。
だが、新鮮な果物のような贅沢品はまったく流通しない。

そのリンゴは近くの果樹園で収穫されたと男は説明した。
半分野生に戻り、大きくなり過ぎてはいるが、そこの果樹はまだ季節が来ると果実をもたらしてくれるという。
少数の市民がそれを注意深く収穫するのだ。

リンゴを味わいながら楓は男に礼を言った。
玲奈は実をきれいにかじり終えて、芯をしゃぶっている。
楓はまた一口リンゴをかじり、残りを玲奈に渡してやった。

楓は頭に浮かぶままを口にした。
「どうしてこんな親切を?」楓は男の薄くなった頭髪と白くなった髭を見ながら尋ねた。

「人生はな、そのときそのときを生きるんだ。そして次々に選択する。それが人間ってもんだ」
男の答えは楓を戸惑わせた。
信頼と親切、ごく当たり前の人間性かもしれないが、楓の記憶からは長らく消えてしまっていた。

男は自分の上唇を持ち上げ、出血している歯茎を楓と玲奈に見せた。
「癌に冒されている…。もう長くは生きられん。放射能の影響だろうな」
男は乾いた苦い声で笑った。

「あんたらはあの野蛮人どもとは違うな?もちろんどこの誰で、ここで何をしてるのか、どうやってまだ走れるバイクを調達したのか分からんが」
男はふたりを見て、うなずき、ぱちんと指を鳴らした。

「どうしてこの店がまだ建ってると思う?」男が荒らされた店の中を示した。
楓と玲奈は顔を見合わせてから首を振った。
「おとなしくしてるからだ。できるだけ目立たないよう静かにしてる」男が静かに答えた。

「必要な物があれば持っていけ」男が励ますように笑った。
「どこへ行くのか知らんが長旅なんだろう?」

楓も玲奈も驚いた。この絶望的な世界でも親切な人はいる。
この人なら地獄で炎にあぶられていても、温かくて気持ちがいいと笑うのではないか。

楓と玲奈はふたたびポンコツバイクにまたがって走りはじめた。
トランスミッションが炎を噴き上げそうな不快な音を発している。
ふたりはガタガタと揺れながら宵闇が迫りはじめた夕暮れの空を見上げた。

7名無し募集中。。。:2017/08/21(月) 21:44:35
隻眼の女がリンゴをかじっている。
高い位置でポニーテールにまとめられた長い髪が小さく風に揺れていた。

すらりと背が高く、余分な肉のない風貌は飢えかけたジャッカルを思わせた。
牧野真莉愛は考え深い顔でリンゴの芯を見つめた。
放棄されたガソリンスタンドは蒸し暑さのせいか汚物が溢れた便所のように臭い。

そんな好ましくない場所でリンゴを食べられるとは。
片手の小皿程度の小食で1日をしのぐ日々を過ごす身としては久しぶりの贅沢だ。

おこぼれを欲しがっているのかカラスが飛んできた。
癪に障る騒々しい鳴き声で騒ぎ、糞を落としてきた。

真莉愛が芯を放り投げると、それをくわえて飛び去った。
見える方の目でカラスを追い、太陽を見上げた。
網膜が日射しに焼かれる感覚が生じる。
真莉愛は額に片手をかざしてカラスを撃ち落とした。

荒れ果てたガソリンスタンドに背を向けて、真莉愛は道路の土とたわむれる。
バイクのタイヤ痕からいくつかのことが推測できた。
バイクにふたりの人間が乗っていたことは間違いない。
そして後部座席の人間が運転者にしっかりとしがみついていたことだろう。
なぜなら相当な速度でミサイルさながらに飛び出しているからだ。

日光浴をするようにガソリンスタンドの正面に椅子を置いて座っている年配の男が真莉愛を見ていた。
あんぐり口を開け、自分が聞いている言葉を信じまいとしている顔だ。

年配の男の禿げた額にひとつ、弾丸の射入口ができていた。
壁に大脳皮質を飛び散らせ、癌ではなく鉛玉によってあの世へ送られた男がだらりと椅子から崩れ落ちた。

真莉愛はもうもうと砂塵を舞い上げて走るバイクを頭に思い浮かべた。
それほど遠くにいるとは思えない。
ジープのギアをバックに入れ、駐車場の坂道を離れる。
ギアをドライブに入れた真莉愛はアクセルペダルを踏みながらつぶやいた。
「必ず見つけるよ…かえでぃー」

8名無し募集中。。。:2017/08/21(月) 22:24:37
まーちゃんとまりあの小説の人かな?

くっころくっころ

9名無し募集中。。。:2017/08/23(水) 07:50:11
また楽しみが増えた

10名無し募集中。。。:2017/08/23(水) 13:37:09
更新お待ちしています

11名無し募集中。。。:2017/08/27(日) 13:36:36
ふたりを乗せたバイクは山の斜面を登る急勾配のつづら折りを突き進んでいた。
鬱蒼とした松林を見ながら尾根に沿ってひた走る。

平原が見えてきた。昇りはじめた曙光に目を奪われる。
赤く、やがてオレンジ色に照らされ、茶系の色調の目録のように染め分けられていく。
荘厳な風景に楓はバイクを停めて、玲奈を振り返った。

「きれいだね」「うん」
玲奈は疲れた顔で、髪は乱れていたが背中に感じるその身体は柔らかく温かかった。
楓はまたアクセルグリップをまわしてもっと先を目指す。

やがて路傍の林が藪に変わり、次いで草地に変わって湖のほとりに出た。
あまり湖らしい湖ではない。
大きな楕円形の水溜まりがもっと大きな平原の真ん中にどんと置かれたような感じだ。

それでもやはり湖ではある。
身体も服も臭いはじめている。ふたりは洗濯と水浴びのために湖畔から汀にバイクを走らせた。

ふたりとも素っ裸になるのは危険なので先に玲奈が服を脱ぎ捨てた。
じゃばじゃばと水を浴びる玲奈を見ながら、楓は服を洗ってやった。

服を干した楓が顔を上げて、玲奈の視線に気づく。
「かえでーも脱いでよ。一緒に水遊びしようよ、ね?」
「危ないから」楓が言う。
「誰もいないし、来ないよ。ほらあ」
「危ないから」楓が繰り返す。

「じゃあ、ご自由に」玲奈がけらけらと笑いながら楓を引っ張って水に引き入れた。
「わあ」服を着たまま水に転げた楓は浮かんでこない。

「…かえでー?…」
近寄った玲奈が楓に足をすくわれて尻餅をついた。
「…やったなあ!」「そっちこそ!」
手と足を使って、ばしゃばしゃと飛沫を相手に浴びせる。
楓は服を脱ぎながら、湖面に小さな白波を立て、玲奈を抱き寄せた。

ふたりの顔は、唇が触れ合いそうなほど近づく。
玲奈は楓の手を取って胸の膨らみにあてがった。
楓が上体を屈めてそっと唇を重ねると、玲奈は楓の背中を、尻を、脚を撫でさすった。

12名無し募集中。。。:2017/08/27(日) 14:01:33
くっころくっころ

13名無し募集中。。。:2017/08/27(日) 15:26:22
眠気を誘う夏の空には綿のような雲が浮かんでいる。
洗濯した服が乾くのを待ちながら、楓はバイクのエンジンのボルトを点検した。

ふと視線を上げると、バックミラーに映った自分の顔にある傷痕が目に入った。
顔の左頬にある突っ張って半透明になった皮膚。

逃亡者になったときに負った不快な爪痕だ。
傷は――玲奈には正直に打ち明けていないが――まだ痛み、楓を絶えず責めた。
大勢が死んだのに、おまえだけは生き残った、と。

数時間の睡眠をむさぼっていた玲奈がもぞもぞと現に戻った。
そよ風が松葉を揺らしている。
玲奈は楓に歩み寄った。

「これからどこに行くの?」
本気で訊きたいわけではなく、ただの好奇心で玲奈は訊いた。
本気でなくて幸い。
楓は「さあ」と答える。

楓にもあてはないのだ。ただバイクを走らせること以外、何も心づもりはない。
口には出さなかったが、玲奈と一緒にいることを楽しんでいるだけだ。

眠りから覚めたばかりの玲奈は機嫌が悪い。
見たくもない映像がまぶたに焼きついている。
それは楓にも理解できる。この世界で生きている人間はみんな、似たような映像がまぶたにたくさん焼きついているからだ。

ふたりで湖のほとりを散策した。
窪地に立つ古い農家が見つかった。壊れ果てた鶏舎らしき小屋の跡もある。
「食糧はまだあるから、しばらくここにいようか」
楓が提案する。妥当な策だろう。玲奈は承諾してうなずいた。

何日か過ぎたある晩、楓と玲奈は小屋の中に横たわって、コオロギの鳴き声と、お互いの息づかいに耳を澄ましていた。
細長い銀色の月が出ている。

ふたりの生活は心地よい日課の枠に収まってきた。
自分たちがどれほど疲れ、すり減っていたか、まったく自覚がなかったが、
気の向くままに食べ、眠り、散歩する暮らしは楽しかった。

遠くに野犬の群れが長短さまざまに咆哮していた。
同時に何かが咳きこむようなエンジン音が近づいてくる。
まっすぐ坂道を下ってくるジープに、楓も玲奈も気がつかなかった。

14名無し募集中。。。:2017/08/27(日) 16:03:04
ラブシーンは長めで頼む

15名無し募集中。。。:2017/08/27(日) 16:57:09
ブラシーン?

16名無し募集中。。。:2017/08/27(日) 17:27:55
真莉愛はタオルで両手を拭い、汚い布に真っ赤な筋を残した。
男がうつ伏せに倒れて目を見開いている。
真莉愛にいきなりナイフで切りつけられた瞬間に浮かべていた表情のままだ。

ぱっくり開いた傷から流れ出た血が黒く溜まっている。
生気を失った目には脂ぎった蝿が寄ってきて、卵を産みつける場所を取り合っていた。

男たちは3人組だった。密売を生業にしている図に乗った若者たちだ。
そうした組織の底辺に属する人間の多くが陥る過ちだった。
親玉が尊敬を得ていることを理由に、手下である自分たちも尊敬されて当然と思い違いをしている。

真莉愛はその密売組織の名を耳にしたこともなかった。
だが、若者たちはそれさえ口にすれば相手を震え上がらせることができると確信しているようだった。

おとなしくしろと、真莉愛に向かって若者たちがその名をわめいたとき、
真莉愛はただ笑ってリーダーらしき男の喉を切り裂いた。
あとのふたりは1秒もかからず撃ち殺された。

ナイフの刃が鈍っている。安物はたやすく研げ、たやすく鈍った。
ジープの助手席に座りこんだ真莉愛は平らな砂岩でナイフを研ぎ直した。

地面から揺らめく熱気が血の臭気を運んでくる。
ナイフで指先を切ってしまい、血がにじんだ。
真莉愛はダッシュボードを開けてごそごそと引っかきまわした。

少し探すと絆創膏が見つかった。
白い毛に黒い鼻のご機嫌な笑みを浮かべた犬のマンガが描かれている。
このキャラクターの名前は何だったっけ?
真莉愛は子ども用の絆創膏を丁寧に指先に貼った。

真莉愛は転がっている死体を一顧だにせず、役に立ちそうな荷物をぞんざいにジープの後ろに放り投げた。
真莉愛は深く息を吸い、考えをまとめようとした。

追跡を開始してから、ろくすっぽ寝ていない。
ぐっすり眠るのは死んでからでもできちゃいまりあ。
真莉愛は自分を励ましながらジープに乗りこんだ。「どこなの…かえでぃー」

17名無し募集中。。。:2017/09/02(土) 23:17:25
更新を超待ってる

18名無し募集中。。。:2017/09/03(日) 00:45:24
くっころくっころ

19名無し募集中。。。:2017/09/06(水) 07:25:48
続きが気になるところ
引き込まれる文章がすごいね
更新待ってるよ

20名無し募集中。。。:2017/09/13(水) 14:17:58
おお!こんな素敵なスレがあったなんて!もしかしてサバゲースレの続きなのかな?

加賀楓「サバゲーがしたい」
http://matsuri.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1495541504/

続きが気になる!

21名無し募集中。。。:2017/09/14(木) 13:55:52
覚えていてくれる人がいたなんてうれしいです
そうですサバゲースレのものをちょっと練り直したSSです

22名無し募集中。。。:2017/09/14(木) 14:50:03
おお!やはり…凄く良いところでスレ落ちたから続きが気になってたんだよねぇまた読むこと出来て嬉しいです

それにしても…初めれいなに対して冷めた態度だったかえでぃーがどういった経緯でこんなデレデレになったのか?w

23名無し募集中。。。:2017/09/14(木) 23:35:00
更新お待ちしています

24名無し募集中。。。:2017/09/17(日) 15:29:16
周囲が暗くなってきたころ、楓は小屋の裏の戸口に立って尾根を見上げた。
西から嵐が近づいていて、楓は遠くで鳴り響く雷鳴が気がかりになってきた。

玲奈が裏手から出てきて、楓の傍らに立った。
「強い風が吹きそう」玲奈は言った。
ふたりが話をしている間に、風が吹きはじめ雨の気配が強まってきた。

やがて夜になり、楓と玲奈は小屋の中に入って雨に濡れることなく快適に過ごしていた。
どちらも毛布に身体を包んで横になっている。
闇の中に横たわって耳を澄ましていると、雷鳴と小屋を揺さぶる風の音が聞こえた。
ときおり稲妻が光ったが、危険なほど近いようには思えなかった。

楓は玲奈の温かなうなじに向かって低くささやく。
玲奈は自分の身体が楓の両腕に包まれ、強く引き寄せられるのを感じた。

楓が玲奈の乳首を優しく撫ではじめると、玲奈はそこが固くなり心地よさのうねりが湧き起こるのを感じた。
首筋から下りてきた楓の口が乳房を舐める。
玲奈は楓の口の中で自分の身体の芯が柔らかく開花していくのが分かった。

楓が手を伸ばし下着の布地越しに触れる。
まさぐり、指をこじ入れ、花芯に触れると玲奈の口からあえぎと小さな叫びが洩れた。

ぬかるみに指を埋めながら、楓は口をもっと下へと滑らせる。
傷を癒やすかのように優しく花弁を舐めて蜜を吸う。

玲奈の背中が弓なりに反って、楓の片手を強く握った。
撫でられた蕾が膨らんで固くなるのを感じる。
そのまま快感の頂上へと運ばれて、玲奈は熱い湿りに陶然と浸った。

玲奈の鼻の下に玉の汗が浮かび、楓はそれを舌ですくう。
玲奈の律動が伝わってきた。

楓は上になったまま、玲奈の瞳を見下ろした。
そんな楓を玲奈はじっと眺める。
身体を起こして楓の口を吸った瞬間、冷たい声が小屋の中の空気を切り裂いた。

「そこまでにしなさい。その口を吸っていいのはまりあだけなんだから」
稲妻がひらめき、ずぶ濡れになった人影が一瞬の光の中に浮かび上がる。
真莉愛は顔に垂れかかってきた濡れ髪をかき上げた。

25名無し募集中。。。:2017/09/17(日) 17:02:58
楓は置いてある拳銃に手を伸ばそうかと考えて、利き手の指を曲げた。
だが稲光で真莉愛のホルスターのフラップが外されているのが目に入る。
仕方ない。相手の出方を見るしかない。

「かえでぃーもよこやんも…動かないでね」
「…動けないよ」玲奈は答えた。
そんなことをするものか。真莉愛がいるだけで怖いのだ。
拳銃を見る必要などさらさらない。

「でもさ、いつまでくっついてるつもり?」真莉愛は理屈とは矛盾する文句を言った。
楓は思いきって拳銃に手を伸ばした。
だが、その手が届きもしないうちに真莉愛は蜘蛛のように素早く移動し、楓の頭に拳銃を押し当てた。

玲奈が悲鳴を上げる。
「バカな真似はしないでね」と真莉愛。引き金が引かれた。
ふたたび、玲奈が泣き叫んだ。乾いた金属音。

「…悪ふざけはよして…」楓の両膝から力が抜けて水のようになった。
心臓は早鐘を打ち、身体が熱い。息をするのも苦しくなる。

「次の薬室は空じゃないからね、かえでぃー」
一瞬の沈黙があり、楓がサンドペーパーのようにざらついた声で答えた。「…分かった」

脱けるときは死ぬとき、という古い掟はただの脅し文句だ。
脱けようと思えば脱けられる。ただし、それなりに面倒な手続きが要る。
背を向けてすたすた歩き去るわけにはいかない。
周到に準備を整えないと、危険な疑惑を招くことになる。

「まあまあ、ふたりとも落ち着いて」真莉愛が調子を変えて明るく告げた。
落ち着けるはずもないが、楓も玲奈も反論できない。
「まりあは味方だよ」
「そうかな…」とても信じられない気分だった。
真莉愛は拳銃をホルスターに戻し、その銃床に手の付け根をかけた。

「でもね、かえでぃー。あなた“指定居留地”を勝手に離れたんだよ。
まずはまりあに断りを入れてほしかったなあ」
「そうすれば離れるのを許可したの?」
「しかるべき心構えが必要でしょ、誰だって」真莉愛はにやっと笑って、しゃんと背筋を伸ばした。

数秒後、真莉愛は力任せに楓を抱き締める。
「ごめんちゃいまりあ、よこやん、ちょっと退いてくれる?」
濡れた服を脱ぎ、首を振って髪を整えると靴を蹴って脱いだ。
毛布の下にもぐりこんで言う。
「足が冷たいの。かえでぃー、温めて?」

26名無し募集中。。。:2017/09/17(日) 18:00:46
くっ…くっころくっころ!!!

27名無し募集中。。。:2017/09/17(日) 18:23:09
更新キタ━━━(゚∀゚)━━━ !!

28名無し募集中。。。:2017/09/17(日) 19:44:08
見ていられなかった。
玲奈は戸を蹴破ろうかとも思ったが、自制して壁にこぶしを打ちつけて外に出る。

楓は真莉愛から身体を離そうとするが、絡めた両脚に力をこめて真莉愛が引き留める。
言うべき言葉が見つからない。
玲奈は戸をばたんと閉めた。

玲奈は怒っていた。楓が逆戻りしてしまうことに憤りと恐れを感じている。
過去に巣食う悪鬼の群れをねじ伏せて、少しずつそこから遠ざかってきたのに。

どいつもこいつも好きにしろ、というのが目下の玲奈の気分だった。
それに、こぶしが痛い。
雷鳴がとどろく。冷たい雨が顔を打つのを感じながら玲奈は泣いた。

そのとき、楓が小屋から飛び出してきた。
玲奈を見つけて抱き締める。玲奈も強くしがみついた。
その抱擁が解けたとき、玲奈は訊いた。「牧野さんは?どうしたの?」

真莉愛は毛布を鼻先まで引っ張り上げてすやすやと眠りに落ちている。
玲奈がほのかな敵意を示したことで、楓は気まずさを覚えた。
玲奈は楓に目を向け、眉を上げて深く息をつく。

楓ははっとする。玲奈が拳銃を握る手に力を入れていた。
楓が首を振って玲奈の手首をつかんで言う。
「それは必要ない。そうでしょ?」

玲奈は虚を突かれたらしく、しばらくしてから厭わしげな表情を浮かべた。
「殺すつもりなんかないよ」
そしてひどく真剣な面持ちでぽつりと言った。
「信じるしかないか…」

楓は玲奈の顎を支えて自分に向け、そっと唇を重ねた。
厄介なことになった。選り好みできる立場にはない。
こちらの側につくか、敵に回るか。
敵に回るとなると真莉愛は危険すぎる。

水を裂く鮫のように無慈悲な女の寝姿を眺めながら、楓の口から出たのは陳腐で間の抜けた台詞だった。
「心配ないよ」

29名無し募集中。。。:2017/09/17(日) 21:52:14
真莉愛は夢を見ていた。
子どものころ、耳に馴染んだ声。幼い真莉愛が見上げると父親と母親が微笑んでいる。
そこへ巨大な禿鷹が舞い降りてくる。やがて悲鳴が、そして銃声が聞こえてきた。

夢の中の真莉愛は深く身をこごめ、手で耳をふさいで、おぞましい音を遮断する。
父親と母親の血が優しい雨のように手の甲に横面に背中に降り注いだ。

血を吸った土にひざまずく真莉愛を何本もの銃剣が取り囲む。
真莉愛は口を開け、叫び声を上げようとするが髪をつかまれ腹這いにさせられた。
息ができない。やがて、股の間に何かが荒々しく突っこまれる。
気の狂いそうな痛みが走った…。

「いやあああっっ!!!!」
飛び起きた真莉愛は涙を流していた。
眼帯をしていない目があからさまな憎悪に燃えたぎっている。

当惑した視線が自分に向けられているのが分かった。玲奈だった。
「だ…大丈夫…ですか?」
真莉愛の口元に歪んだ微笑みが浮かんだのを見て、玲奈は不安に襲われた。

すぐに真莉愛は愛想のいい慇懃な笑顔になる。
「まりあ、寝ちゃったんだ…。ねえ、かえでぃーは?どこ?」真莉愛は手間を省いていきなり尋ねた。

「ここにいるよ」楓は微塵も敵愾心を示さず小屋の中に入ってきた。
縁の欠けたマグカップを真莉愛の横に置く。
何度も使われたティーバッグが浸されていた。

カップを持ち上げて、一口飲む。熱くて美味しい。
そんな真莉愛を、楓も玲奈も張りつめた目で見ていた。
たったひとつの重要な質問を投げかけるために。「わたしたちを殺す気はないのよね?」

「まあ、とりあえずは」真莉愛が朗報を告げる。
カップの湯気が揺れた。「まりあに撃たせないでよ、かえでぃー」
そんなことになったら悲しすぎる。

ようやく東の空に曙光が射してきた。
真莉愛は乱れていた脳の配線が修復されるのを感じ取った。
脳裏にうっすらと残る悪夢を振り払うように歯を噛み締めた。

30名無し募集中。。。:2017/09/18(月) 01:47:00
更新キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!!
すっごいおもしろい

31名無し募集中。。。:2017/09/18(月) 11:42:37
楓と玲奈の暮らしに真莉愛が闖入してきた翌日、玲奈は朝日を顔に浴びて目を覚ました。
頭がずっしりと重いが、一瞬のうちに深い眠りから覚醒へ移行し、横になったまま顔の向きを変えた。

真莉愛がうつ伏せに寝ている。やはり夢などではなかったのだ。
小さな木造家屋は、しばらく逗留する客を泊める“ゲストハウス”になったらしい。
もちろん自分たちも勝手に寝泊まりしているだけなのだが。

真莉愛は軽薄に見えるが、実際はとても頭脳明晰だ。
そして…極めて腕のいい殺し屋でもある。
楓とは古い仲間らしい。自分が楓と知り合う以前からの。
奇妙な話だが、真莉愛がつき合う相手に忍耐力の大切さを教えてくれる存在であることは間違いない。

玲奈は足音を忍ばせて、真莉愛を起こさないよう外へ出る。
洗面器に水を注いで顔を洗い、タオルで拭いていると真後ろに真莉愛が立っていた。
思わず玲奈は表情をこわばらせて身構えた。

真莉愛は玲奈に近づき、その目をじっと見つめた。
「よこやん、真莉愛は敵じゃないよ」
真莉愛は玲奈の反応を読み取るように、さらに顔を近づけた。

玲奈は次の言葉を待った。
楓は道の東側へ見張りに出かけている。玲奈は目の前に獰猛な野獣がいるかのように落ち着かなかった。

そんな玲奈の様子がおかしかったのか、真莉愛は不意に自分自身を遠くから眺めているような愉快な気分になった。
少し考えてから言葉を継いだ。「そんなにおびえないで」

屈みこみ、玲奈の口にキスをする。
探るようなまなざしでじっと玲奈を見据えた。
玲奈の肩に手を置く。玲奈が抗わないのを確認すると覆い被さるように、またキスをした。

玲奈は完全に面食らっていた。
数秒後、やっと真莉愛の肩をつかみ、顔が見える位置まで押し戻した。
動揺を隠しきれない表情をしている。

真莉愛は小屋を示すように顎をしゃくった。
「ずっと前から、よこやんはどんな味だろうって思ってたんだ」
愛嬌のある明るい微笑がその顔に浮かぶ。

玲奈は返す言葉が見つからず、ただうなずいた。
頬を優しく撫でる真莉愛の指をそっと口に含む。
心臓が破れそうなほど激しく打った。

32名無し募集中。。。:2017/09/18(月) 12:08:36
くっころくっころ

33名無し募集中。。。:2017/09/18(月) 12:44:37
またきたああああ
おもしれええええ

34名無し募集中。。。:2017/09/18(月) 16:47:32
楓は首を伸ばして周囲を見ていた。
短い山道を歩きながら、身に迫る危険がないか警戒を怠らない。

長い戦争に侵されて荒廃したこの国は、そうなる前は先進国だったらしい。
スイッチを入れるだけで明るくなり、熱い湯が出るシャワーがあり、
旅をする1週間分の食料より量があるくらいたっぷり出される食事。
もちろん楓が生まれる以前の話で、昔話としてしか知らない。

戦争を生き延びた人々はそれなりに勤勉に働いたが、これまでのところあまり報われていない。
楓は田園地帯だったところを見下ろす。
こうして見ると実に平和で、のどかな風景だ。
しかし、そこが殺戮の野でもあることを楓は知っている。

戦後に組織された民兵隊が激しい殺し合いを開始した。
農民が、労働者が、学生が、聖職者が次々と姿を消し、しばらくすると道端に死体で投げ捨てられた。

対抗するゲリラも天使のように戦ったわけではない。
悪逆非道ぶりはどちらも同じだ。
国土は大きな共同墓地に変わってしまった。

というようなわけで、楓は秘密警察に勤めることになる。
秘密警察。なんとまあ笑える形容矛盾だろうか。
この国の秘密警察が抱えているのは、どうしたらこんなに目立つのかという秘密だけだ。

こういう社会での秘密警察の役割は、紛れこむことではなく目立つことだった。
この時代は頻繁に人が姿を消す。ぷっつりと行方を絶つ。
そのことを質問すると、その人間も姿を消すことになる。

その無数の暴力沙汰が嫌になって飛び出してきた。
辞表を出してさよなら、という稼業ではない。
死ぬまで追われるだろう。現実に真莉愛に見つかった。

そうだ、真莉愛だ。
何が目的なのか、ちゃんと向き合う必要がある。
楓は両脇の拳銃を降り動かしながら、敏速かつしなやかな足取りで小屋へと走っていった。

35名無し募集中。。。:2017/09/19(火) 00:40:27
おつおつ
すっごい楽しみだぜ

36名無し募集中。。。:2017/09/19(火) 11:01:11
「びっくりさせた?」真莉愛は脱ぎ散らかした服を身につけながら玲奈に訊いた。
玲奈は肩をすくめた。非常識なことをしてしまったという気持ちはあったが急に興奮が高まったのは事実だった。
真莉愛にキスをされた瞬間、後頭部の毛が逆立つような感覚があった。

「…ごめんちゃいまりあ」真莉愛は視線を落とした。
「さっきのことは忘れてね」よく考えないで衝動に身を任せたことをお互いに理解している。
真莉愛と玲奈は顔を見合わせた。楓が気にするとも思えないが、秘密にしておこう。
滑稽な状況に狼狽えながら玲奈は急いで服を着た。

真莉愛が戸を開けて外へ出ていき、玲奈はぽつんと取り残された。
真莉愛にとってはただの気晴らしだろう。
そう考えると不思議と胸がちくりと痛んだが、実は真莉愛に噛まれた乳首が痛いだけだった。

楓の優しい愛撫とはまるで違った。
真莉愛の股間に顔を押しつけていた間も、真莉愛が玲奈の首の後ろをしっかり押さえていた。
真莉愛が腰を浮かせて動いている最中などはほとんど息ができないくらいだった。

乱暴ではあったが快感はあった。
玲奈自身も経験がないほど我を忘れる瞬間もあった。

真莉愛が冷酷な殺し屋だということはよく分かっている。
目を背けたくなるほど残酷なことを眉ひとつ動かさず実行する場面を何度も見た。

そんな恐ろしい存在だったはずだが、なぜか惹かれている。
悪魔に魅せられているようなものかもしれない。
口に残る真莉愛の肌の感触に玲奈は身震いした。

戸を開けて楓が入ってきた。「まりあは?」
気詰まりな空気にならないよう、玲奈は大きな声で言った。
「知らない。起きてからふらふら出ていったよ」

37名無し募集中。。。:2017/09/19(火) 12:24:32
もっとやれ

38名無し募集中。。。:2017/09/19(火) 13:09:11
くっころ!くっころ!!!

39名無し募集中。。。:2017/09/19(火) 22:21:45
真莉愛はすぐに見つかった。
ジープのボンネットをテーブル代わりにしてお茶を飲んでいる。
何か考えこんでいる様子で下唇を噛んでいた。

不用意に近づくと蜂の巣にされてもおかしくない。
大声で呼びかけてから、楓は両手を上げた。
“攻撃するつもりはありません”。世界中で通じるジェスチャーだ。

真莉愛は晴れやかとすら言えそうな視線を楓に向けた。
「まだ信じてないのね。殺さないって言ったでしょ」
真莉愛は笑った。楓は面白がっていなかった。

真莉愛が親指を立てて指さす。
楓たちのバイクを怪訝そうに眺め、そのおもちゃみたいなバイクで旅をするのは考えものだとつけ加えた。

楓は注意深く見守りながらも、少し気持ちが和らいだ。
「これからどうするの?」と楓は尋ねた。
優秀な“ハンター”が振り返って楓を見た。

事態の深刻さを分からせようと、真莉愛は楓をまっすぐ見据える。
「連れ戻す」真莉愛の声は冷たかった。

「拒んだら?」楓も身を硬くして怒った表情で訊いた。
「嫌なら膝を撃ち抜いて置き去りにするだけよ」
穏やかな、親しみすら帯びた声で真莉愛が答える。

真莉愛は突然、軽い咳のような短い笑い声を洩らした。
「かえでぃーはそんな脅しで思いとどまる人じゃないよね」

真莉愛はため息をつき、話を続けた。
「“大臣”の娘を誘拐するなんて狂ったことをやってのけたんだから」
楓は平静を装って答えた。「誘拐だなんて失礼な」

「手助けを頼めるほど心を許していた相手はかえでぃーだけだった…」真莉愛は言葉を切った。
「命がけよね、本気の恋は」

40名無し募集中。。。:2017/09/20(水) 07:45:44
まさかのトライアングルラブアフェアーなのかしら…

41名無し募集中。。。:2017/09/21(木) 18:08:55
映画化希望

42名無し募集中。。。:2017/09/23(土) 00:47:22
このスレが生きる楽しみ

43名無し募集中。。。:2017/09/24(日) 15:30:39
真莉愛も楓も戦争孤児だった。
秘密警察の人材発掘チームは役に立ちそうな子どもを見初め、低いところに実をつけた果物をもぐようにスカウトする。

幼い頃から慎重に自衛の垣根を張り巡らしてきた楓にとって、天性の仕事だった。
つても後ろ楯もなく、喧嘩っぷりだけは磨かれている。
ある種の“職業訓練”を経て、楓は機知と膂力を身につけていった。

真莉愛と出会ったのは、そんな苛烈な実地試験を繰り返していたときのこと。

楓は何人ものスパーリング・パートナーをノックアウトして練習相手がいなくなってしまっていた。
誰かリングに上がって相手をしてくれという目で見回す。
訓練生の多くが、自分の靴の爪先にとても興味深いものを発見したみたいに視線を下げた。

痩せぎすの少女と目が合った。
華奢な身体だがなよやかというよりは鋭利な容貌をしている。
楓と同じように、その目は補食獣の光をたたえていた。

「おまえ、ちょうどいい。手合わせしないか?」楓が話しかける。
「いいけど」真莉愛は笑った。

両手にテープを巻き、あまり痛めつけるな、と楓は自分の胸に言い聞かせた。
打ち負かしてはいけない。これは練習だ。誰も相手にしてくれないんでは練習にならない。

10秒後、楓は自分の思い上がりを笑ってしまった。
いや、実際は攻撃を受けるのに忙しくてそんな余裕はない。
勝つ心配をしていたのはどこのどいつだ?

真莉愛のスピードは凄まじかった。
パンチが見えないのだから、止めるのは困難で、反撃するのはもっと困難だ。
困難でもやるしかない。相手に対する敬意の問題だ。

ジャブに続いてストレートを出すが、お返しにコンビネーションのパンチとキックを浴びる。
楓はたまらず後ずさった。
真莉愛が詰め寄ってきて電光石火のフックを放つ。
鼻骨が曲がったような気がしたが、楓は鼻血を拭ってガードを上げた。
すると真莉愛は戦法を変え、楓の肋骨を左右から打ちまくる。

1時間も経ったかと思える3分だった。
ゴングが鳴り楓はコーナーに戻る。
「降参してもいいよ」真莉愛が声をかけた。
楓は無理やり笑って気さくに答えを返した。「やっと身体がほぐれてきたところだよ」

ほぐれた身体がまともに動いたのは5秒ほどだった。
血と汗が鼻からしたたり落ちる。
それでも楓は前方に進み出た。返礼を浴びながら、それでも突き進む。

ただ叩きのめされるだけではいけない。勝負の形くらいは作らないと…。
楓のワンツーがどうにか真莉愛の側頭部に叩きこまれる。
真莉愛が後退する。虚を突かれたような顔をしたので、楓は同じ攻撃を繰り返した。

44名無し募集中。。。:2017/09/24(日) 16:49:00
あちこちで賭けの小銭が行き来した。
楓は戦術を立て直し、ガードを高くしたまま上体を預けて真莉愛の動きを封じる。

真莉愛も消耗している。すり足で寄ってパンチを炸裂させた。
真莉愛のパンチも空を切りはじめる。楓が前へ前へと攻めこんでいく。

お互いに首を振り、笑い声でかかってこいと差し招いた。
ふたりともノックアウトを狙っていない。怒気も感じられない。
名目どおりのスパーリングだ。ふらふらになりながらパンチとキックを受け止めていた。

ゴングが鳴り真莉愛と楓は抱き合った。
「相手してくれて、ありがと」
「降参しないんだもん。すぐすると思ってたのに」
「まともな脳みそなら降参してたよ」楓は言った。

真莉愛は照れ笑いを浮かべた。それだけの動きでも顔面に痛みが走る。
「わたし、まりあ。よろしくね」
「楓、加賀楓。よろしく」

翌日、ふたりは無惨な面相で顔を合わせた。
目の周りは腫れ、打ち身の痕があちこちに残っている。
「可愛い顔が3ランクくらい落ちてるね」楓が真莉愛に向かって言う。
「それくらいで済んでるかな?」
「贔屓目かもしれない」
ふたりは声を合わせて笑った。

楓は真莉愛といると気持ちが和んだ。
身体のいたるところが耐えられないほど痛いことに変わりがないが。

友情の芽生える過程というのは、おもしろいものだ。
真莉愛も楓も厳しい訓練を生き延びた。
そして毎日毎日を“死刑執行”という任務に捧げた。

楓は悩んだ。
ある日、楓は真莉愛に疑問をぶつけてみたことがある。
なぜ平気で続けていられるのか。

激しい議論の応酬となり、楓は真莉愛が本気で殺人任務を“自分の天職”だと考えていることに驚いた。
自分たちは平和を守るために戦っていて、殺人を犯すことは罪どころか義務なのだ、と。

感情の隔たりが生じて、真莉愛と楓の関係は変わった。
目の前にいる真莉愛を楓は見つめる。
遅筋の線維が1本ずつ痺れてきて痙攣を起こしそうだ。

その濃密な空気を裂くように、玲奈の声が聞こえてきたので楓はびっくりする。
「おふたりさーん!楽しい朝御飯だよー!」

45名無し募集中。。。:2017/09/24(日) 23:13:44
すげー迫力のある文章だな

46名無し募集中。。。:2017/09/25(月) 17:30:07
やはりまりあはピュアゆえの狂気が似合う

47名無し募集中。。。:2017/09/26(火) 03:18:25
「ぐっすり眠るのは死んでからでもできちゃいまりあ」が怖可愛くて好き

48名無し募集中。。。:2017/09/27(水) 13:50:15
かえれなかえれな

49名無し募集中。。。:2017/10/05(木) 07:10:57
期待

50名無し募集中。。。:2017/10/06(金) 19:37:54
くっころくっころしちゃいまりあ

51名無し募集中。。。:2017/10/07(土) 22:22:56
続きを切に希望

52名無し募集中。。。:2017/10/08(日) 09:25:44
自動火器で武装した男たちが物陰から物陰を伝うように動いていた。
「いたぞ」先頭の男が素早くボルトを操作して、銃床を肩に押しつけた。
真莉愛が道中で始末してきた密輸組織の構成員たちだ。

「あの片目の女だ。撃ち殺して“荷物”を取り戻せ」
赤い発射炎が瞬く。弾丸は、足を踏み出した瞬間の真莉愛をとらえる。
腹のど真ん中。

狙撃された人間特有のよじれるような倒れ方で真莉愛が転がった。
楓は身を屈めながら両脇の拳銃を取り出す。
這い進む真莉愛をカバーしながら発砲する。「まりあ!まりあ!」

世界が周りで爆発していた。
飛び交う銃火、駆け寄ってくる足音…。
真莉愛は苦悶にのたうちながら、痛みに悲鳴を上げた。
楓と玲奈は、向かってくる男たちを撃ちはじめる。
パンパン、パンパン、と短く効率のいい射撃で射的場の鴨を落とすように。

男のひとりが手榴弾の安全ピンを抜く。楓がその男の頭に1発撃ちこむと手榴弾が地面に落ちた。
炸裂した手榴弾が花火のような閃光を発して何人かを吹き飛ばす。

「ジープへ!」楓はがなる。
ふたりは発砲しながら真莉愛を抱き上げようとした。
「動かさないで!」真莉愛が痛みに激しく身をよじり、腕を振りほどく。
「そんなわけにいかない!」楓は銃撃から遠ざかろうと真莉愛を引きずった。

目の前に飛び出してきた男が運転席に飛び乗った玲奈に銃口を向けた。
真莉愛が苦痛の声を絞り出しながらも男のふくらはぎを撃つ。
無声映画の喜劇俳優がバナナの皮を踏んだみたいに男が後方にひっくり返った。
楓が男の後頭部に弾丸を撃ちこむ。

後部座席に真莉愛を担ぎこんで、楓が怒鳴る。「行け!」
玲奈はギアをドライブに入れて歯軋りしながらアクセルを踏みこんだ。
ジープは即座に反応して前方に飛び出す。
飛ぶようにカーブを曲がって土手を突っ切り、短い斉射を繰り返す男たちをはね飛ばした。

四肢を投げ出した男たちの亡骸が岩肌に転がる。
ジープは止まらずに遠ざかっていく。
車体が揺れるたびに、激痛が真莉愛を襲った。

53名無し募集中。。。:2017/10/08(日) 11:08:09
楓がタオルを引っ張り出して真莉愛の腹に押しつける。
腹部大動脈をやられている…。
タオルは早々と血でどっぷり濡れていた。

楓は真莉愛の頭を自分の膝にそっと載せる。真莉愛が楓の手を握ってすすり泣いた。
真莉愛の握り締める力は強く、手の骨を砕かれそうなほどだが楓は気にしない。
真莉愛の髪を撫でながら、しっかりして、何も心配ない、と言い聞かせる。

「…み、水」不明瞭な声で真莉愛が言う。
楓はペットボトルのキャップを外し、真莉愛の口にあてがった。
喉を鳴らして真莉愛がこくこくと水を飲む。

戦闘で人の死をいやというほど見てきた楓には、真莉愛が間もなく失血死するだろうと分かっていた。
だが、打つ手がない。病院もなければ、救急救命士もいない。

「ごめんね…」小声で真莉愛が言った。
「…もう手を離していいよ。締めつけがきつくて死にそう」巻きつけられたタオルに目をやり微笑んだ。
楓は感情を抑えきれず、顔を歪めた。そして手を離した。

悪路を走るジープの前輪がくぼみに落ちて、真莉愛が悲鳴を上げた。
顔から血の気が失せている。
「頼みがあるの、かえでぃー」息を継いで、口の中で言う。
「なあに?」
真莉愛が楓を見上げる。「分かってるでしょ」
その視線が、楓の脇にある拳銃に向けられた。

「いや、まりあ。助かる、助かるよ」
「もう…これ以上…耐えられない」あえぎながら「お願い、かえでぃー…」

「できない」「後生だから…」
玲奈は両手でハンドルを握り締めながら嗚咽した。
あまりにも強くハンドルを握り締めているせいで指が白くなっている。

玲奈は振り向いて楓と目を合わせた。
助かる可能性はない。かぶりを振りながら玲奈はゆっくりと車を停めた。

楓はドアを開け、真莉愛の頭を膝からそっとどけて座席に戻す。
胸に受けたパンチのように陽光が楓を打った。
光に視力が追いつかない。楓は立ちすくみ、しばし目をすぼめる。
口は開いているが声は出てこない。

楓は拳銃を持ち上げて、真莉愛の頭に狙いをつける。
「ありがとう、かえでぃー」真莉愛がつぶやく。

54名無し募集中。。。:2017/10/08(日) 20:33:44
くっころくっころ

55名無し募集中。。。:2017/10/08(日) 20:46:43
まりあーーーーー!!

56名無し募集中。。。:2017/10/08(日) 23:29:23
この作品は毎回がハイライトのようだ
作者さんありがと

57名無し募集中。。。:2017/10/09(月) 11:31:41
診療室は混雑していた。
医者や看護師やその他の技師、物資供給係が潮の干満のように入っては出ていく。
快適と呼ぶにはほど遠いものの、少なくとも適切な処置を受けることはできた。

真莉愛は清潔な白いシーツにくるまって横たわっていた。
傷は消毒され、手当てもされ、抗生物質も投与されている。
静かに眠る真莉愛を見て、玲奈は部屋を抜け出して廊下を歩いていった。

目当ての医師を見つける。
「あの患者、治せる?」玲奈が訊いた。
「治せないことはないですが」医師が言う。「高くつくでしょうな」
「わたしが誰だか、知ってる?」
「存じていますよ」

その顔つきのかすかな含み、もっとかすかな口調の含みを玲奈は見逃さない。
あなたのお父さんが誰かは、存じていますよ。

「治してくれたら、あなたに新しい病院の棟を任せるわ。
あの患者を死なせでもしたら、患者より先に墓場行きよ。
それから、あなたにその褒美や罰を与えるのは父じゃなくて、このわたし。分かった?」

楓が真莉愛の頭を撃ち抜く寸前、巨大な蜻蛉が空に浮かんでいた。
瞬きをしたら、それがヘリコプターに変わる。
回転翼の起こす風が石や土くれを楓と玲奈の顔にぶつけた。
飛び降り、駆け寄ってきた兵士に、問いかけも命令もないままヘリコプターへと引き立てられた。

懐かしの故郷である“軍事基地”に連れ戻された楓は、そのまま独房へ入れられた。
静けさの中に隔離され、時間の感覚がなくなりかけたとき、ドアが小さくノックされる。
黒のスーツ、白いシャツ、細い黒のネクタイという姿の男が立っていた。

玲奈の父親に直接会うのは初めてだった。
「娘が無事で何よりだった」驚くほど深みのある漆黒の闇のような目を楓に向ける。
その瞬間、楓は相手が人間ではなく、何かまったく別の存在であるような気になった。
人間の目を見るだけで、もう余興の時間は終わりだと悟ることがあるものだ。

だが楓は揺るぐことも怯むこともなく、その目を見つめ返した。
「きみの取り調べは終わった。引き続き“自分の仕事”をしてもらう」
その声には楓の衿を正させるほどの威厳が備わっている。「さあ、出なさい」

頭に渦巻く思いを顔に出さないようにして楓は大股で独房から出た。
玲奈の父親は数秒間、値踏みするように楓を見てから言った。
「今後、娘の私生活に干渉するような真似をすれば処刑は免れんことを承知しておいてくれ」

楓は何も言えない。何もできない。
「きみを無罪放免にするのは、娘との歩み寄りの結果だ」
楓は適当な言葉を探す。「よく分かっています、横山大臣」

58名無し募集中。。。:2017/10/09(月) 16:21:00
尾形春水は流しで顔を洗っていた。
春水が顔を上げ、細いひびの入った古い鏡に映る自分の顔を見つめながら手で水を拭った。
「いない所ばかり捜させられるんじゃ、隠れんぼにならんやん」

後方には5人の屍が横たわり、穿たれたいくつもの弾痕から血が流れ落ちている。
ひとりはまだ息があるようで胸板が上下に動いていた。
野中美希がホルスターから拳銃を抜き、その男の頭部に狙いを定めて引き金を引く。
男の首がぴくんと持ち上がって、また床に落ちる。

階段から4発の銃声が鳴り響いた。
血まみれの男が後ろ向きに倒れながら転げ落ちてくる。
すこぶる機嫌が悪そうな羽賀朱音が男の顔面を蹴りつけてから銃弾を撃ちこんだ。

朱音が撃ち殺した男を注意深く見て、春水はにっこり笑った。
雑魚をたくさん捕まえても、大魚1匹に及ばない。
大物級の獲物が網にかかった。メタンフェタミンの密売屋だった。

春水が美希と朱音に顎で死体を指す。「殊勲のしるしを得たで」
雨天用のポンチョで骸をくるみ、ジープまで運んで後部座席に横たえる。
戦利品を携えて、ベースキャンプへ。

春水たちは居住型宿舎で夜食用のコンバットレーションの箱を開けていた。
やかんが湯気を噴き上げる。けたたましく、耳障りだ。
春水がやかんを焜炉から下ろす。

朱音は缶詰にスプーンを突っ込んで合成食糧のローストビーフを黙々と食べた。
「これホントにビーフなのかな」文句を言いつつたいらげる。

真空パックのパンを機械的に咀嚼していた美希が口を開く。「まりあはいつ戻るか、はるなちゃん聞いてる?」
春水も任務の詳細は知らなかった。密偵として潜入するのだと真莉愛は言っていた。
内部情報は仲間にも明かせないと。

なぜ、そんなやばい役を買って出たのか春水には分からなかった。
しかし、身が危うくなれば真莉愛なら抜かりなく姿を消せるだろう。

「必ず戻ってくる…よね?」朱音の声がか細く震えて聞こえた。
真莉愛ほどの戦果を誇れる者は数少ない。
それは分かっているが、春水は不安で頭皮がちりちりしてくるのを感じた。

内心を打ち消すように春水は眉をぐいと上げ、また下げる。
「じきに会える、きっとな」

59名無し募集中。。。:2017/10/09(月) 21:07:48
玲奈は父親が所有する大規模な屋敷兼要塞に連れ戻された。
その居住区画の周囲は有刺鉄線とガラス瓶の破片を冠した塀に囲まれている。
門はふたつあり、いずれも大きく、鉄で補強された門扉が備わっている。
敷地の四隅に投光装置のついた塔があり、武装した警備員が配置されていた。

玲奈は楓に初めて会ったときのことを思い出す。
警護役として雇われた楓は絶対に持ち場を離れなかった。
散弾銃を膝に載せて、忠犬のように玲奈の部屋の前の壁に寄りかかっている。
たまに立ち上がり壁沿いに行き来するくらいだ。

年齢はほぼ同じだが、父親の配下の私兵だと聞かされた。
ほどなく言葉を交わすようになり、退屈していた玲奈は楓から銃器の用途と扱い方を教わったりした。

自分をここから連れ出してくれ、と玲奈は楓に頼んだ。
玲奈は父親が現在の地位をどうやって手に入れたか知っていた。
趣旨を要約すれば、有力候補者たち全員が出馬宣言をすることなく頭に弾丸を食らったのだ。

新しい世界を理解する力のない敵やライバル、時代遅れの大物たちを効率よく排除していった。
古い勢力はどうせ生き残れないのだし、居座られても邪魔になるだけだ。

新しい政府組織を創り、じっくりと体制を固めていく。
人々が気がついたときには、もう誰も手出しできないような強大なものに仕立て上げられている。
それこそが父親の天賦の才、非の打ち所がない計画だった。

楓も玲奈もただただ逃げ出したかった。凶暴で、非道で、邪悪な世界から。
連れ戻されてから、楓には会えていない。
玲奈は念を押した。加賀楓に痣ひとつ、傷ひとつでもつけたら自分は命を絶つと。

玲奈は物思いに沈んだ。すっかり気力を失ってしまい、食べもせず、鬱状態に陥った。
楓に会いたい。
玲奈は窓辺に座る。両手に顔を埋めて。

やがて部屋の中をふらふらと歩き回り、家具を投げ飛ばし、ガラスを割り、すすり泣いた。
胸が引き裂かれそうだ。
玲奈の髪が割れた窓からの風を無力な翼さながらにはらむ。

玲奈の身体はまっすぐに落ちていった。

60名無し募集中。。。:2017/10/09(月) 21:32:59
くっころくっころ

61名無し募集中。。。:2017/10/10(火) 19:05:53
よこやん…

62名無し募集中。。。:2017/10/12(木) 00:27:14
おもしれえええええええ

63名無し募集中。。。:2017/10/12(木) 07:32:52
12期13期が登場してるんだな
他のメンバーも出てくるのかな

64名無し募集中。。。:2017/10/13(金) 21:48:22
もうまりあ殺すのかと思ったら無事生きてたw

サバゲースレの時と出会いかたは違ってるんだね

65名無し募集中。。。:2017/10/14(土) 19:43:00
まりあのイメージ
https://youtu.be/C-YxCWW6Ffo

66名無し募集中。。。:2017/10/17(火) 13:54:18
気長に待つ

67名無し募集中。。。:2017/10/18(水) 07:42:04
横山はダークサイドに堕ちそうだな

68名無し募集中。。。:2017/10/18(水) 22:09:20
よこやん…

69名無し募集中。。。:2017/10/19(木) 07:45:06
ワクワクする

70名無し募集中。。。:2017/10/21(土) 10:57:56
真莉愛の目が忙しなく動いた。
閉じられていた身体のシステムがもがいている。神経、呼吸器、循環器。
思考と意識がゆっくり戻ってくるにつれ、弱い光がまぶたに当たっているのが分かる。
真莉愛は右目を開いた。

自分はとっくに死んでいる、と真莉愛は思う。
死と生の見分けがつけにくいときだってある。もしかしたら死んでいて、もしかしたら生きている。

夢なのか幻覚なのか。しかし、とにかくなぜ死後の世界に春水と美希と朱音がいるのだろう?
3人の顔をぼんやり見ているうちに、すべてを洗い清めるような頭上の白い光も薄れていく。

真莉愛は必死に最後の記憶を形作ろうとした。
楓がこちらに拳銃を向けている。まがまがしく輝く拳銃がきれいな光を放っていた。
そのとき、真莉愛は突然、自分がどれほど生きたがっているか気づいたのだった。

本能的に起き上がろうとして、肉体的な痛みを自覚した。
「まだ動いたらあかんで」春水が言う。「ひどいざまやな」
朱音がほっとしたような顔をして身を転じ、寝台に寝そべった。
ブーツを履いた両脚を鉄格子にかける。「さすがにしぶといわね」

春水が言う。「ひどい顔してるで」
たしかに真莉愛の顔はむくみ、髪はべたついていた。
「…ひどい気分だからよ」真莉愛はうなり声で答えた。
どうやら幻覚ではなく現実らしい。なぜ楓に撃たれなかったのか分からないが、こうして目を覚ました。
まだ頭に雲がかかった状態だが、自分が生きていることは間違いないようだ。

美希が寝ている真莉愛の隣に座り、真莉愛の身体に腕を回す。
「とにかく、生きててよかった」
寝台の上で身を起こした朱音も、端に腰を下ろして力任せに真莉愛を抱き締める。
真莉愛が痛みに小さく悲鳴を上げたので春水がくくっと笑う。

「いったい、何があったん?」
「いろいろあった」
「そりゃそうやろな」
真莉愛が質問を返す。「まりあ…ここにどれくらいいるの?…」
「運びこまれてから4日や。げえげえ吐くわ、泣き叫ぶわ、ぶつくさ寝言もぼやくし、ただの1秒も退屈せんかったで」

どんなことをわめいたのだろうか?
真莉愛の頭に浮かんだのは、楓と玲奈がどうなったかということだった。

71名無し募集中。。。:2017/10/21(土) 21:07:37
楓は本来の仕事に戻る。
この国には民主主義が必要だが、あまり民主的であっても都合が悪いということらしい。
楓のように物騒な技能を伝授されている人材は欲しがれば手に入るというものではない。
何がなくても、楓には才能がある。

そんなわけで、差配役との“個人面談”となる。
銃口やナイフが突きつけられたわけではない。その必要はないのだ。
楓は観念して執務室に入っていく。

「司直の手から守ってやるだけでは不満のようだな」と、差配役。
選り好みの余地はあるさ、と楓は心の中で言う。殺すか、死ぬか。
「お断りします」と、楓。
「何を断るんだ?」
「わたしはもう、人は殺さない」
「おい――」
「わたしはやらない。わたしを殺したいんなら、殺せばいい」突然、気持ちが軽くなった。

「警護役に戻す」差配役が切り札を切る。
「え?」玲奈と一緒にいられるなら、どんな代償だって支払う。
楓は涙に潤んだ目を見られないように立ち上がった。

「その前に最後の仕事だ」
もちろんそうだろう。楓の軽くなっていた気持ちが硬く冷たい地面に叩きつけられる。
これ以上は抵抗のしようがない。無駄なあがきというものだ。

「標的は?」楓は問う。わたしに誰を殺してほしいのか?
「…粛清しなければならない者がいるんだ」と、差配役が言う。
組織内の人間ということか。厄介なことになりそうだ。
だが、だからこそ新たな備えが得策なのだろう。

見事で、無駄のない、本職の手際。
組織内がごたついているなどと気取られてはならない。
しかし、標的となる人物の写真と資料を渡され、楓の顔にまぎれもない不安の色が浮かぶ。

楓は自分の目と耳が信じられないような気分になった。
差配役が見つめてくる。半眼になった両目から、初めて威嚇の気配がにじみ出ていた。

統合参謀本部議長…。この国の保安責任者ではないか。
その人物が隣の大国に情報をリークしているというのか?
単なる汚職ではない。汚職とは嘆かわしいことだがありきたりの枠にはまった犯罪だ。
これはその枠を大きく踏み越えている。最も簡潔に要約するなら国を売ったということだ。

この暗殺は仕事の質があまりにも違う。
世の中には知らないほうがいいこともある。知ってしまった以上、拒否すればこの場で命を落とすだろう。
何かの片棒をかついでいる。訊いても明かされることはないだろう。
楓に選択肢はない。楓はこの“分遣任務”を引き受けた。

72名無し募集中。。。:2017/10/22(日) 23:21:24
玲奈は敷地内で発見された。
病院に運びこまれてから意識を取り戻した。
窓から落下したとき、強風にあおられて木にぶつかり、地面に痛烈に叩きつけられることは免れたのだ。

奇跡的に臀部および骨盤の打撲傷、足首の捻挫という負傷だけだった。
起き上がって行動できるまでに回復すると厳重な監視下に置かれた。

“世話係”を称する小柄な女性がほとんど24時間そばから離れない。
その女性は名乗ろうとさえしなかったが、とても親切だった。
これまでの人生で大勢の人間がよこした冷たい視線とは違う。
思いやりをたたえた眼差しだった。

ひどく喉が渇いているのに、何を口にしても吐いてしまうときは氷の欠片を舐めさせてくれた。
便器の前にうずくまっている最中は髪を撫でてくれていた。
ひどい不眠に悩まされている間は何時間も起きて話し相手をしてくれた。
食欲を取り戻すようになだめ、特製のスープを作ってくれた。

玲奈は、ここを出ていきたいと100回は訴えた。
100回同じ返事をよこしてきた。「安全じゃないからダメよ」
散歩に出かけるのも、安全ではない。日常生活を再開するような行動はどんなものも安全ではないというお題目だ。

そんなふうに軟禁状態にはうんざりしながらも、玲奈はかなり快適に過ごしていた。
「必要なものがあれば言ってね」
すべての注文に女性は応じてくれるが、ある日の玲奈の頼みだけはすまなそうな顔をした。

「わたし…会いたい人がいるんです」
「それはダメだと言われてるの。まだ――」
「――安全じゃないのね」

楓との向こう見ずなツーリングは無惨な失敗に終わった。
遠い昔のことのように思える。
涙に濡れた顔を枕に押しつけ、玲奈は眠りに落ちていった。

磨り減ったように眠る玲奈を、小柄な女の目がじっと見下ろしていた。
新しい時代は、古い時代とは違うやり方で物事を進める。
「あなたはこの国を支配できるだけの力があるのよ…」

小田さくらは眠っている玲奈の肩に手を置き、頬を緩める。
もう一度、玲奈の横顔にじっと視線を注ぎ、それから部屋を出ていった。

73名無し募集中。。。:2017/10/23(月) 08:12:04
おもしろい
映像化してほしいわ

74名無し募集中。。。:2017/10/26(木) 12:52:44
ここにきてまさかの小田!?そしてこの国を支配出来る力…続きが気になります

75名無し募集中。。。:2017/10/26(木) 20:16:14
まりあのラジオのかえでぃー話がさあ…
あれはズルいwまりあ泣きそうになってるやんかw
自分的にかなりインパクトあったんでちょっと「まりでぃー」でストーリー練り直しますw

76名無し募集中。。。:2017/10/26(木) 21:17:40
確かにあのラジオは泣いた…ってまりでぃースレになるのかw

77名無し募集中。。。:2017/10/29(日) 02:43:44
れなでぃ!

78名無し募集中。。。:2017/11/09(木) 07:37:54
期待

79名無し募集中。。。:2017/12/06(水) 21:37:25
2カ月ぶりくらいに来たら更新が途絶えてて悲しい
構想中なことを願ってる

80名無し募集中。。。:2017/12/30(土) 21:52:15
かえでぃーは人知れず悪を裁くダーク・ヒロインへと変貌するんだけど
そのためには大切な人を失う必要があるんだよね
そう「ダークナイト・ライジング」みたいに
そこが書けない…情けない…

81名無し募集中。。。:2018/01/05(金) 07:40:37
気長に待ってます

82名無し募集中。。。:2018/02/23(金) 15:25:28
まりあが隻眼になった外伝が思い浮かんでいるんだけどなかなかムズイ

83名無し募集中。。。:2018/02/24(土) 12:44:05
楓は真莉愛の病室の前に立って、耳を澄ました。
声は聞こえてこない。
しばらく迷っていると、廊下の奥から声をかけられた。
「かえでぃー!」真莉愛が車椅子を自分で動かして近づいてくる。

真莉愛の病院着は脚の上部までずり上がっていたが、真莉愛は膝を閉じようともしていない。
「いつ来たの?」

「ついさっき」楓はわっと泣き出したい衝動に襲われた。
真莉愛は座っている。話をしている。
以前の真莉愛と変わらないように聞こえる。

ふたりは病室に入った。
真莉愛は窓辺まで車椅子を動かした。水差しに冷たい水を入れて楓に渡す。
「毎日、変な検査するの。変な機械にも入れられたよ。早く回復させて追い出したいみたい」

残ったほうの目で楓を見つめた。
「まりあはもっとひどい目にも遭ってるんだから。こんなこと慣れっこ」
楓の表情を見て真莉愛は大笑いした。

次第に笑いが止まらなくなり、足を蹴り上げた。
あまりに激しく笑っているので車椅子がガタガタ鳴った。
身体をふたつ折りにしないため、真莉愛は天井を見上げた。「ふう…」

人の顔を見て爆笑するなんて失礼な話だが、よほど間抜けな顔をしていたのだろう。
楓は微笑む。
おもしろかったからではなく、真莉愛が今もまだ物事を笑い飛ばせることに安堵した。

「あ…」真莉愛はいいほうの目を拭った。
「おしっこ、ちびっちゃいまりあ…」

真莉愛が下着を替えるのを手伝う。
真莉愛は楓を引っ張り上げて、唇に噛みついた。
「こしょこしょして…かえでぃー…」
楓はゆっくりと真莉愛の肌に爪を立てた。

84名無し募集中。。。:2018/02/24(土) 14:40:23
おぉっう!!

85名無し募集中。。。:2018/02/24(土) 17:04:52
けしからん

86名無し募集中。。。:2018/02/24(土) 19:00:52
玲奈は寝床に寝そべった。部屋の明かりはまだ消していない。
真夜中を過ぎているはずだが、部屋に時計はなく、正確な時刻は分からなかった。

動揺し、疲労困憊で、これまでの人生で最高に柔らかい毛布に包まれているのに、目を閉じられそうにない。
深く息を吸って、股間に右手を据えた。もう堪えられない。

左手で自分の唇をなぞった。膝がぴくりと震える。
楓にキスされた唇、楓の口に愛された乳房は敏感になっていた。
玲奈の身体を上下にさまよった楓の舌の感触がよみがえってくる。

「あ…」あの気持ちのいいことを何度もしてほしい。
玲奈は目を閉じた。
楓の指の動きはなめらかだった――ハチミツにスプーンを差しこむような優しさ。

あちこちがうずき、玲奈の身体は弓なりに反った。
こんなことは不快でたまらない――そう思いたいのに、思えなかった。
あり得ないほどの激しい快感だった。
それは唐突にやってきて、玲奈は驚く。

心臓の鼓動がおさまるのを待つ。同時にオーガズムのあとの恥辱に襲われた。
玲奈は横向きに寝そべり、その頬を涙が伝う。顔はまだ赤かった。

重いものに押し潰されるような気分だ。
冷静に人生を見つめれば、鬱々としなければならないようなことは何もない。
自分の父親はこの国の最高権力者であり、ハイクラスの暮らしをしていた。

だが、玲奈は放っておいてほしかった。
頑固な汚れも落とすと宣伝している強力な洗剤でどれほど洗っても、きれいになりようがないほど血にまみれた世界…。
果てしない疑念と悲嘆、そんな世界から。

きちんと服を整え、すべての明かりを消すと、楓のことを考えた。
助けにきてよ、かえでー…。眠気に襲われる。
次に目を覚ましたときには、隣に楓がいてくれるよう願った。

玲奈は指で唇を撫でた。自分自身の匂いを嗅ぎながら罪の意識に苛まれた。

87名無し募集中。。。:2018/02/24(土) 20:24:43
けしからん

88名無し募集中。。。:2018/02/24(土) 20:37:10
真莉愛は2度くしゃみをし、ずるずると鼻をすすった。
袖で鼻を拭う音が聞こえる。真莉愛はまたくしゃみをした。

見かねて楓がちり紙を渡してやると、真莉愛は言った。
「もう!猫でも隠してるの、かえでぃー?」またくしゃみをした。

楓は質問を無視して真莉愛にボウルを渡す。
太った太陽のような果実が中に収まっていた。
「グレープフルーツ。食べて」楓が言う。「風邪に効くらしい」

楓は説明した。仕事でしばらく“大陸”に滞在していたこと。
これはそのお土産だと。

真莉愛はその完熟した、みずみずしい果実を見ながら訊いた。
「どうやって食べるの?先に皮を剥くのこれ?」
「まったく、なんにも知らないだから。貸して」

楓がナイフを手に取り、グレープフルーツを半分に切り、皮と身を丁寧に切り分ける。
「こうやってスプーンで食べるんだよ」

“大陸”での任務の詳細は説明しなかった。真莉愛も尋ねなかった。
ただ、そのおかげで特別な“恩赦”があったことを教えた。

「じゃあ、よこやんのボディーガードに復帰するわけ?」
真莉愛は器からグレープフルーツをすくって口に入れる。
汁が胸に垂れ、包帯を巻いた腹へと流れ落ちた。

「そういうこと」楓が答えると、真莉愛は置いてあったバッグに手を入れた。
「なら、おめかししなきゃ。椅子を寄せて」

楓は真莉愛のすぐ前まで来て座った。
真莉愛はコンパクトの蓋を開ける。「もっと近づいて」
スポンジで楓の頬にファンデーションを塗った。優しい手つきだった。

楓はまぶたを閉じてファンデーションを塗りこんでもらった。
最後に人から世話をされたときのことは思い出せない。
「ほら、できちゃいまりあ」真莉愛は化粧を終えた。

「色合いは肌と合ってないけど、これで我慢して」
楓はコンパクトを受け取って鏡で自分の顔を見た。
色白の楓には少し濃い。それでも傷痕は隠せていた。
「ありがと」

89名無し募集中。。。:2018/02/26(月) 07:36:08
かえれな再会できるのか…よかった…

90名無し募集中。。。:2018/04/28(土) 07:40:43
かえれなウルトラバイオレンス

91名無し募集中。。。:2018/06/23(土) 19:05:18
よこやんのお父さんがラスボス設定でプロット作ってたんだが…
こんなことあるんだなあ…

92名無し募集中。。。:2018/11/29(木) 13:50:16
うわぁぁあ!!! 横山玲奈
https://ameblo.jp/morningm-13ki/entry-12422351618.html
https://stat.ameba.jp/user_images/20181129/12/morningm-13ki/c0/2e/j/o0720096014311921236.jpg
https://stat.ameba.jp/user_images/20181129/12/morningm-13ki/b5/ac/j/o0771108014311921249.jpg

93名無し募集中。。。:2019/01/17(木) 14:47:00
期待

94名無し募集中。。。:2019/03/10(日) 09:14:38
Chapter 2

楓は巣を作っている。
枝やら葉っぱやら糞やらを集めている。

というわけで、真莉愛はせっせと炊事に励み、静かな暮らしになじみ、皿を拭くのになじみ…。
人混みや騒音が恋しいこともあるが、それも最初のうちだけだった。

だが、静かな暮らしは、欲求不満と興奮がいたずらに蓄積されていく。
楓が真莉愛の手首をつかみ、自分の部屋に連れていく。
「お風呂に入りたい」
「だめ」
「だめって?」
これまでに聞かされたことのない言葉だ。

「服を脱いで、今すぐ」
「でも――」
楓が平手で真莉愛の頬を打つ。そして部屋の隅に置かれた椅子に座って真莉愛をじっと見つめる。

真莉愛はその視線を感じながら、上着を頭から脱ぎ、手を後ろに回して、ブラをはずす。
ズボンを下げ、白いショーツ姿でその場にたたずむ。

「脱ぐのよ」
真莉愛はショーツを脱ぎ、楓の顔をうかがう。頬を紅潮させて質問する。「次はどうするの?」
「ベッドに上がって。四つん這いで。全部見せて」

身を震わせながら真莉愛はベッドに上がり、頭を低くする。
「痛くするの?」「そうされたいなら」「されたい」「それなら痛くしてやる」

楓はベルトをはずす。真莉愛の両手をつかんで持ち上げると、ベルトを手首に巻きつけて、ベッド頭部の柵につなぐ。
背後に回り、真莉愛の股間に指をもぐりこませる。
そうして片手で真莉愛の黒く豊かな髪をつかみ、手綱よろしくぐっと引く。
すらりとした首が反り返る。

「こんなに濡れてる」楓が真莉愛の尻を叩く。
平手で打たれる鋭い音と痛みを真莉愛は堪能する。
ぴしゃっ。ぴしゃっ。ああ。ああ。

ベッドの上にひざまずき、両手首をくくられ、ベッドの頭部につながれたまま、激しく身をよじる。
楓はその歓喜の声に合わせて、調子をとりながら叩く。

クーデターから1年がすぎた。
楓も真莉愛も、内に鬼を秘めていることは変わらないが、今は身をひそめていなければならない。

殺しによる刺激的で甘美なアドレナリンの高まりを得られるのは、もう少し先になる…。

95名無し募集中。。。:2019/03/11(月) 12:48:21
えっちだ・・・

96名無し募集中。。。:2020/05/13(水) 12:03:31
モーニング娘。'20 加賀楓の「踊ってみた」 The Middle Management〜女性中間管理職〜 編
https://www.youtube.com/watch?v=sAy6vIBAFtk

97名無し募集中。。。:2020/09/23(水) 21:30:45
狼が荒れてるから新狼にきてみたけど
こんな大作名作があったとは

98名無し募集中。。。:2020/09/23(水) 21:57:48
ここの作者さん
加賀の月光聞いたかなあ

99名無し募集中。。。:2020/12/02(水) 14:35:38
https://scontent-sjc3-1.cdninstagram.com/v/t51.2885-15/e35/128392043_440729377332699_6317710536405700116_n.jpg?_nc_ht=scontent-sjc3-1.cdninstagram.com&_nc_cat=103&_nc_ohc=nWAO1JTlj8sAX8ciMSA&tp=1&oh=f4aea895fea76ca246e433dad0c188eb&oe=5FC92630

100名無し募集中。。。:2020/12/02(水) 14:36:08
https://scontent-sjc3-1.cdninstagram.com/v/t51.2885-15/e35/128723535_410924903437577_2138665331979501145_n.jpg?_nc_ht=scontent-sjc3-1.cdninstagram.com&_nc_cat=105&_nc_ohc=QZVFUrLpmpgAX_CHy0D&tp=1&oh=dc045dea3d0907df5f1ade74a4670f34&oe=5FC94F3B

101名無し募集中。。。:2020/12/02(水) 14:37:35
https://scontent-sjc3-1.cdninstagram.com/v/t50.12441-16/128718673_473063213658761_75295261640287521_n.mp4?_nc_ht=scontent-sjc3-1.cdninstagram.com&_nc_cat=105&_nc_ohc=KgSgv5B5BDkAX9EBpBB&oe=5FC94E15&oh=7ef565ca57aa59dae79f7577a2ea2bea

102名無し募集中。。。:2020/12/09(水) 06:44:32
期待

103名無し募集中。。。:2021/02/10(水) 03:04:17
【フル公開中】モーニング娘。新旧激突SP!『矢口真里の火曜The NIGHT #219』毎週火曜19時からYouTube限定で人気回フル配信中!
https://www.youtube.com/watch?v=fgxpyMq29hE

104名無し募集中。。。:2021/11/04(木) 00:36:47
横山玲奈
reina_yokoyama.official
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