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もしも加賀楓と横山玲奈がふたり旅をしたらありがちなこと
13
:
名無し募集中。。。
:2017/08/27(日) 15:26:22
眠気を誘う夏の空には綿のような雲が浮かんでいる。
洗濯した服が乾くのを待ちながら、楓はバイクのエンジンのボルトを点検した。
ふと視線を上げると、バックミラーに映った自分の顔にある傷痕が目に入った。
顔の左頬にある突っ張って半透明になった皮膚。
逃亡者になったときに負った不快な爪痕だ。
傷は――玲奈には正直に打ち明けていないが――まだ痛み、楓を絶えず責めた。
大勢が死んだのに、おまえだけは生き残った、と。
数時間の睡眠をむさぼっていた玲奈がもぞもぞと現に戻った。
そよ風が松葉を揺らしている。
玲奈は楓に歩み寄った。
「これからどこに行くの?」
本気で訊きたいわけではなく、ただの好奇心で玲奈は訊いた。
本気でなくて幸い。
楓は「さあ」と答える。
楓にもあてはないのだ。ただバイクを走らせること以外、何も心づもりはない。
口には出さなかったが、玲奈と一緒にいることを楽しんでいるだけだ。
眠りから覚めたばかりの玲奈は機嫌が悪い。
見たくもない映像がまぶたに焼きついている。
それは楓にも理解できる。この世界で生きている人間はみんな、似たような映像がまぶたにたくさん焼きついているからだ。
ふたりで湖のほとりを散策した。
窪地に立つ古い農家が見つかった。壊れ果てた鶏舎らしき小屋の跡もある。
「食糧はまだあるから、しばらくここにいようか」
楓が提案する。妥当な策だろう。玲奈は承諾してうなずいた。
何日か過ぎたある晩、楓と玲奈は小屋の中に横たわって、コオロギの鳴き声と、お互いの息づかいに耳を澄ましていた。
細長い銀色の月が出ている。
ふたりの生活は心地よい日課の枠に収まってきた。
自分たちがどれほど疲れ、すり減っていたか、まったく自覚がなかったが、
気の向くままに食べ、眠り、散歩する暮らしは楽しかった。
遠くに野犬の群れが長短さまざまに咆哮していた。
同時に何かが咳きこむようなエンジン音が近づいてくる。
まっすぐ坂道を下ってくるジープに、楓も玲奈も気がつかなかった。
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