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もしも加賀楓と横山玲奈がふたり旅をしたらありがちなこと

72名無し募集中。。。:2017/10/22(日) 23:21:24
玲奈は敷地内で発見された。
病院に運びこまれてから意識を取り戻した。
窓から落下したとき、強風にあおられて木にぶつかり、地面に痛烈に叩きつけられることは免れたのだ。

奇跡的に臀部および骨盤の打撲傷、足首の捻挫という負傷だけだった。
起き上がって行動できるまでに回復すると厳重な監視下に置かれた。

“世話係”を称する小柄な女性がほとんど24時間そばから離れない。
その女性は名乗ろうとさえしなかったが、とても親切だった。
これまでの人生で大勢の人間がよこした冷たい視線とは違う。
思いやりをたたえた眼差しだった。

ひどく喉が渇いているのに、何を口にしても吐いてしまうときは氷の欠片を舐めさせてくれた。
便器の前にうずくまっている最中は髪を撫でてくれていた。
ひどい不眠に悩まされている間は何時間も起きて話し相手をしてくれた。
食欲を取り戻すようになだめ、特製のスープを作ってくれた。

玲奈は、ここを出ていきたいと100回は訴えた。
100回同じ返事をよこしてきた。「安全じゃないからダメよ」
散歩に出かけるのも、安全ではない。日常生活を再開するような行動はどんなものも安全ではないというお題目だ。

そんなふうに軟禁状態にはうんざりしながらも、玲奈はかなり快適に過ごしていた。
「必要なものがあれば言ってね」
すべての注文に女性は応じてくれるが、ある日の玲奈の頼みだけはすまなそうな顔をした。

「わたし…会いたい人がいるんです」
「それはダメだと言われてるの。まだ――」
「――安全じゃないのね」

楓との向こう見ずなツーリングは無惨な失敗に終わった。
遠い昔のことのように思える。
涙に濡れた顔を枕に押しつけ、玲奈は眠りに落ちていった。

磨り減ったように眠る玲奈を、小柄な女の目がじっと見下ろしていた。
新しい時代は、古い時代とは違うやり方で物事を進める。
「あなたはこの国を支配できるだけの力があるのよ…」

小田さくらは眠っている玲奈の肩に手を置き、頬を緩める。
もう一度、玲奈の横顔にじっと視線を注ぎ、それから部屋を出ていった。


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