[
板情報
|
カテゴリランキング
]
したらばTOP
■掲示板に戻る■
全部
1-100
最新50
|
1-
101-
この機能を使うにはJavaScriptを有効にしてください
|
もしも加賀楓と横山玲奈がふたり旅をしたらありがちなこと
6
:
名無し募集中。。。
:2017/08/20(日) 20:31:10
年配の男はバイクを満タンにしてくれただけでなく、楓と玲奈にリンゴをくれた。
この時代、リンゴを食べられることは滅多にない。
食糧や衣服、医療品やその他の必需品はどうにかこうにか供給されている。
だが、新鮮な果物のような贅沢品はまったく流通しない。
そのリンゴは近くの果樹園で収穫されたと男は説明した。
半分野生に戻り、大きくなり過ぎてはいるが、そこの果樹はまだ季節が来ると果実をもたらしてくれるという。
少数の市民がそれを注意深く収穫するのだ。
リンゴを味わいながら楓は男に礼を言った。
玲奈は実をきれいにかじり終えて、芯をしゃぶっている。
楓はまた一口リンゴをかじり、残りを玲奈に渡してやった。
楓は頭に浮かぶままを口にした。
「どうしてこんな親切を?」楓は男の薄くなった頭髪と白くなった髭を見ながら尋ねた。
「人生はな、そのときそのときを生きるんだ。そして次々に選択する。それが人間ってもんだ」
男の答えは楓を戸惑わせた。
信頼と親切、ごく当たり前の人間性かもしれないが、楓の記憶からは長らく消えてしまっていた。
男は自分の上唇を持ち上げ、出血している歯茎を楓と玲奈に見せた。
「癌に冒されている…。もう長くは生きられん。放射能の影響だろうな」
男は乾いた苦い声で笑った。
「あんたらはあの野蛮人どもとは違うな?もちろんどこの誰で、ここで何をしてるのか、どうやってまだ走れるバイクを調達したのか分からんが」
男はふたりを見て、うなずき、ぱちんと指を鳴らした。
「どうしてこの店がまだ建ってると思う?」男が荒らされた店の中を示した。
楓と玲奈は顔を見合わせてから首を振った。
「おとなしくしてるからだ。できるだけ目立たないよう静かにしてる」男が静かに答えた。
「必要な物があれば持っていけ」男が励ますように笑った。
「どこへ行くのか知らんが長旅なんだろう?」
楓も玲奈も驚いた。この絶望的な世界でも親切な人はいる。
この人なら地獄で炎にあぶられていても、温かくて気持ちがいいと笑うのではないか。
楓と玲奈はふたたびポンコツバイクにまたがって走りはじめた。
トランスミッションが炎を噴き上げそうな不快な音を発している。
ふたりはガタガタと揺れながら宵闇が迫りはじめた夕暮れの空を見上げた。
新着レスの表示
名前:
E-mail
(省略可)
:
※書き込む際の注意事項は
こちら
※画像アップローダーは
こちら
(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)
スマートフォン版
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板