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もしも加賀楓と横山玲奈がふたり旅をしたらありがちなこと

59名無し募集中。。。:2017/10/09(月) 21:07:48
玲奈は父親が所有する大規模な屋敷兼要塞に連れ戻された。
その居住区画の周囲は有刺鉄線とガラス瓶の破片を冠した塀に囲まれている。
門はふたつあり、いずれも大きく、鉄で補強された門扉が備わっている。
敷地の四隅に投光装置のついた塔があり、武装した警備員が配置されていた。

玲奈は楓に初めて会ったときのことを思い出す。
警護役として雇われた楓は絶対に持ち場を離れなかった。
散弾銃を膝に載せて、忠犬のように玲奈の部屋の前の壁に寄りかかっている。
たまに立ち上がり壁沿いに行き来するくらいだ。

年齢はほぼ同じだが、父親の配下の私兵だと聞かされた。
ほどなく言葉を交わすようになり、退屈していた玲奈は楓から銃器の用途と扱い方を教わったりした。

自分をここから連れ出してくれ、と玲奈は楓に頼んだ。
玲奈は父親が現在の地位をどうやって手に入れたか知っていた。
趣旨を要約すれば、有力候補者たち全員が出馬宣言をすることなく頭に弾丸を食らったのだ。

新しい世界を理解する力のない敵やライバル、時代遅れの大物たちを効率よく排除していった。
古い勢力はどうせ生き残れないのだし、居座られても邪魔になるだけだ。

新しい政府組織を創り、じっくりと体制を固めていく。
人々が気がついたときには、もう誰も手出しできないような強大なものに仕立て上げられている。
それこそが父親の天賦の才、非の打ち所がない計画だった。

楓も玲奈もただただ逃げ出したかった。凶暴で、非道で、邪悪な世界から。
連れ戻されてから、楓には会えていない。
玲奈は念を押した。加賀楓に痣ひとつ、傷ひとつでもつけたら自分は命を絶つと。

玲奈は物思いに沈んだ。すっかり気力を失ってしまい、食べもせず、鬱状態に陥った。
楓に会いたい。
玲奈は窓辺に座る。両手に顔を埋めて。

やがて部屋の中をふらふらと歩き回り、家具を投げ飛ばし、ガラスを割り、すすり泣いた。
胸が引き裂かれそうだ。
玲奈の髪が割れた窓からの風を無力な翼さながらにはらむ。

玲奈の身体はまっすぐに落ちていった。


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