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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

69名無し募集中。。。:2016/02/14(日) 12:13:23
しょこたんwww

70 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/14(日) 17:54:33
ウシガエルを仕留めたエリポンは、ヘッドバンキングの要領で上半身を激しく揺らしカエルを振り落とす。
そして鞘から打刀「一瞬」を抜いてはリサへと突きつけるのだった。

「勝てんよ。キミ。」

もう一人の帝国剣士団長であるハルナンだってフランベルジュ「ウェーブヘアー」を構えている。
二人はもはやカエルなど相手にしてはいない。
リサに照準を合わせているのは誰が見ても明らかだ。
それを理解したリサは、止むを得ず戦法を変えることにした。

「分かりました。諦めます。」
「お、降参?」
「違いますよ!帝国剣士を全員倒すのを諦めるってだけです。
 ここからは足止めに専念しますから。」

そう言うとリサは指笛を使って数十匹のカエルを自身の元へと集めだした。
そして鎧を装着するかのように赤、青、黄のド派手な色をしたカエルを纏っていったのだ。
これがリサ・ロードリソースの防御形態。
自ら動くことは出来ないが、鉄壁をも超える防御力を発揮することが出来る。

「なん?そんなので足止めできると思っとーと?
 こんなのカエルごと斬ればいいだけやん。」

エリポンの言う通り、リサの装甲はとても頼りないものだった。
カエルが鋼の硬度を誇るのであれば話は別だが、生物である以上それはありえない。
構わずぶった斬ればそれで終わりなのである。
しかし、ハルナンはこの形態に異質さを感じざるをえなかった。

「待ってくださいエリポンさん!斬るのは……まずいです。」
「えっ?それはどういう……」
「カエルのドギツい色……あれは警戒色ですよ。攻撃するなと訴えているんです。」
「警戒色!……ってことは」
「はい、あのカエルは間違いなく猛毒を持っています。
 もしも体液が飛び散ったりでもしたら……その時はどうなっても知りませんよ。」

ハルナンの推察通り、リサの纏うカエルは猛毒カエルだった。
前にも述べたがカエルごと斬ればリサを倒すこと自体はとても容易い。
もっとも、それがキッカケで飛散した毒を浴びた場合は生命を保障出来ないだろう。
ゆえにエリポンとハルナンは攻撃を躊躇するしかなかった。

「じ、自分も死ぬかもしれんのに毒カエルを盾にする!?普通!」
「毒に対する免疫が有るのか……あるいは死を覚悟しての行動、ってことですかね……」
「うぅ……」

71 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/14(日) 17:57:18
しょこたんがプラナリアまで育てているとは初耳でしたw
セミの抜け殻の件はニュースにもなってたので丁度良いと思って今回ネタにしました。

ちなみに現在、カントリーガールズのイベント会場にいます。
新曲楽しみ。

72名無し募集中。。。:2016/02/15(月) 02:33:08
楽しめましたかー?

73 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/15(月) 08:13:19
はい、近くだったので迫力が凄かったです。
今のカントリーの愛おしくってごめんねを見れたのも良かったですね

74名無し募集中。。。:2016/02/15(月) 09:10:22
面白くて前作と第一部を一気読みしてしまいました
更新を楽しみにしています

75 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/16(火) 08:39:29
リサも出来ればこの手は使いたくなかった。
毒によって相手に与えるダメージは非常に強大ではあるが、
それは同時にカエルが死ぬことを意味している。
カエル好きなリサにとってはとても心苦しい戦法なのである。
とは言え、この状況では甘いことを言ってられない。
戦士としての誇りを持っているため、任務遂行に命をかけているのだ。
だがそれは帝国剣士だって同じ。
自分たちの使命を考え、最も優先すべきことは何なのかを判断している。

「ハルナン、この子に攻撃すると危険なのはよく分かった。じゃあこのまま放っておこう。」
「!……なるほど、律儀に相手する必要はないですもんね。」
「エリ達のやるべきことはサユ様を助けることやけん。ここで立ち止まっとる暇はない。」

さっきまではリサがカエルで邪魔してきたので早急に黙らせる必要があったが
防御形態をとるリサはその場に留まるのみ。
ならばエリポンが言うように放っておけばいいのだ。
最優先事項であるサユ救出のため、エリポンは一歩踏み出そうとした。

「待ってエリポンさん!歩いちゃダメ!」
「!?」

エリポンがあとちょっとで地面を踏むといったところで、ハルナンのストップが入った。
なんと足元にはリサが纏っているようなドギツい色のカエルがビッシリと敷き詰められていたのである。
ちょっとでも歩みを進めればカエルを踏まずにはいられない。
その時は毒が飛び散って、脚をダメにしていたことだろう。

「うおっ!危なかった……」
「それにしてもこの状況は不味すぎますよ……」

警戒色を示すカエルが足の踏み場も無いくらいに集まって密集している。
この状況でカエルを踏みつけずにモモコのところに到達するなんて不可能に近いだろう。
このカエル絨毯をなんとかしたいのであればリサを倒すほかに方法は無いのだろうが
そのリサに攻撃することも先述の理由で非常に難しくなっている。
要するに、帝国剣士はほぼ詰みかけていたのだ。

「言ったでしょう?足止めに専念するって。」

76 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/16(火) 08:40:40
ログ置き場が不完全な状態なのに前作まで見てくださったなんて、とても嬉しいです。
期待に応えられるように頑張りますね。

77 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/17(水) 00:07:58
「ねぇ、マーチャンが全部燃やしちゃっていい?」

突然の声にリサはビクリとした。
カエル平気組に属するマーチャン・エコーチームの言葉が、リサにはひどく恐ろしいものに思えたのだ。
真っ赤な炎の灯った木刀を両手に握っていることからも、その本気度が伺える。

「マーチャンならね、触らなくても焼けるんだよ……」

小悪魔のような顔をしながら、マーチャンは木刀をブンと振り回す。
そうすることによって木刀を焼いていた火の粉が飛び散り、
遠距離にいるカエルを容赦なく燃やしに行く。
すんでのところでリサが退避命令を出したために焼きガエルと化すのは免れたが、
その代償としてカエルの存在しない地帯を作り上げることとなってしまった。

「やったー!こうすればミチョシゲさんのところまで歩けるよ!」
「うぅ……」

ついさっきまで二択を迫る側だったリサ・ロードリソースは、
一転して二択を迫られる側に追いやられてしまった。
炎を避けなければカエルは焼かれてしまう。
炎を避ければ敵に道を与えてしまう。
リサにとってはどちらも等しく苦しい選択肢だったのだ。
ところが、苦渋を舐めたような顔をしているリサに対して
ここにきて朗報が舞い降りてくる。

「リサちゃーん!もう足止めなんかしなくていいよー!」

その大声はリサらのPM(プレイングマネージャー)・モモコによるものだった。
モモコ一派らはアユミンの均したツルツル地面を丁度越えたところだったのである。
それを見たリサの表情はみるみるうちに明るくなり、
この状況を打破するための指示をカエル達に出していく。

「みんな、逃げるよ!」

指令とともにほとんどのカエルが方々へ散っていったが、数十匹だけはそうしなかった。
逃げた警戒色カエルと入れ替わりに、大型のカエルがリサの脚部に纏わり付いたのである。

「これが私の跳躍形態。帝国剣士の皆さん、それではばいちゅん!」

リサの合図とともに、脚部のカエルらは主人であるリサごと大ジャンプする。
その訓練された跳躍力は並のカエルの水準を遥かに超えており、
ひとっとびでツルツル地面の先まで到達してしまった。
これでモモコ一派らは全員が滑りやすい難所を乗り越えたことになる。

「そんな……」

嘘みたいな結末に帝国剣士は呆気にとられることしか出来なかった。
そう、彼女らは負けたのだ。
サユを奪われることが敗北でなければ、何が敗北だと言えるのだろうか。

78名無し募集中。。。:2016/02/17(水) 09:56:41
リサちゃんは作者さんのキャラによくありがちな一見強いが粗を突かれると一気に崩れるタイプだなw

79 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/18(木) 08:21:14
アヤチョみたいなキャラのことですかねw
確かに仮面ライダーイクタ時代も含めて弱点持ちは多いかもしれません。

80 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/19(金) 07:15:11
「リサちゃんおかえり〜」
「はぁ〜乗り切った〜」

リサは「アジト」へと戻る馬の上でグッタリとしていた。
これまで何度もヒヤリとさせられたので精神的にかなり疲労しているのである。
そんな大役を成し遂げたリサを仲間たちは賞賛しており、
一派の仲では最年少であるマイ・セロリサラサ・オゼキングもその例外ではなかった。

「リサちゃん本当に凄かったよね!おかげでみんな無事に逃げることが出来たよ。
 まぁ、マイとリサちゃんは跳べるし、マナカちゃんも飛べるから
 ツルツルの地面なんてなんとも思ってなかったんだけどね。
 モモち先輩に合わせてあげたんですよ。みんな。」

彼女らはみなモモコの弟子にあたるワケだが、盲目的に従うという関係性ではなかった。
特にこのマイは、教育とは言え法外なルールを課すモモコを敵視さえしている。
そのためリサを持ち上げつつモモコを非難したのだ。
もっとも、モモコだって10歳年下の後輩に負けてはいない。

「あら〜そんなこと言っちゃっていいのかな〜?」
「なんですか?またお菓子禁止したら怒りますよ。」
「ううん、さっきのマイちゃんの発言を聞いてチサキちゃんはどう思うかなーって。」
「?」

モモコが指し示したチサキ・ココロコ・レッドミミーの様子が何やらおかしい。
いつものように耳を真っ赤にしながらも、頬をぷくっと膨らませているようだった。
口数が少ないのもいつものことだが、怒っているようにもみえる。

「え?ごめん……怒ってる?」
「もう!あなたって、なんにもわかってない!」

みんなと違って、陸や空はチサキのフィールドではない。
そのような環境では自身の力を発揮できない(要するにポンコツ)であることを気にしていたのである。

81名無し募集中。。。:2016/02/19(金) 07:50:54
ここでもポンコツちぃちゃんw

82名無し募集中。。。:2016/02/19(金) 13:53:30
かわいいw

83 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/22(月) 08:48:32
帝国剣士には今回の件を王に報告する義務があった。
足取りはとても重いが、サユが連れ去られた事実を伝えない訳にもいかない。
重体のマイミを医療室へと連れていくハーチンとノナカ以外は、王の間へと足を踏み入れる。

「……そう、そんなことがあったの。」

エリポンとハルナンから事の顛末を聞いたフク・アパトゥーマ王は静かにそう答えた。
さすが王の風格とでも言うべきか、少しも狼狽える素振りを見せてはいない。
そして誰を責めるでもなく、次のように言葉を続けていく。

「それで、次はどうすれば良いと思う?」

フクはこの国のリーダーではあるが、アレをしれコレをしろと命令をするようなタイプではない。
教えを請われた時はそれに答えるが、基本的には相手に委ねる方針を採っているのだ。
Q期、天気組の責任者であるエリポンとハルナンがそれぞれ自身の考えを述べていく。

「エリたちは不甲斐ない結果を出した以上、もっと強くなる必要があると思う。
 日の訓練量を倍にしつつ、且つ防衛も疎かにせんためには……
 遊ぶ時間、そして寝る時間を大幅に削るしかないけんね。」
「私はサユ様が攫われた事実、そして帝国剣士が敗北した事実は隠すべきだと思います。
 国民に不安を与えないためにも、一部の者だけ知るのが良いかと……
 聞けばマーサー王国もベリーズの件は隠すようですし、それに倣いましょう。」

エリポンとハルナンの発言は納得できるものだったので、Q期や天気組らは何も言わなかった。
そもそも、対リサ・ロードリソース戦で何も出来なかった自分達には発言する資格はないと考えていたのだ。
ところがそうは思っていない人物が一人だけ存在していた。
新メンバーであるマリアが空気も読まずに大声をあげていく。

「違います!私たちが次にするのはそんなことじゃありません!」

帝国剣士団長の意思を新人が「そんなこと」と切り捨てるのは前代未聞だが、
その言葉には確かなパワーが有るとフク、エリポン、ハルナンは感じていた。

「マリア、じゃあ何をすれば良いと思うの?」
「今すぐサユ様を助けに行くんです!」
「モモコ様……いや、モモ、コはどこに居るのか知ってるの?」
「知りません!でも探すんです!」
「さっきハルナンが言ったように今回の件は大勢に伝えることが出来ないの。
 少ない人数でどうやって探すというの?」
「マリアがやります!マリアが世界中を歩き回って探します!」
「モモコ様、じゃなくて、モ、モ…コをマリアが倒せるとでも……」
「倒します!!この命に代えてでも、倒すんです!」

マリアの言うことには説得力が無かった。
だが、サユを救いたいという思いは本物だ。
いつしか周りの帝国剣士らもそれに同調していく。

「私も探します!」「私も!」「私だって!」

ここでフク王はやっと微笑んだ。
帝国剣士が有るべき姿へと近づいたことを喜んでいるのだ。

「分かった。みんなに任せるよ……サユ様を絶対に助け出してね。」

84名無し募集中。。。:2016/02/22(月) 16:47:30
ドゥー「じ、じゃあ私も」
全員「どうぞどうぞ」
ドゥー「なんでだよ!」

85名無し募集中。。。:2016/02/23(火) 00:34:13
何かの歌詞であったよなってずっと考えてた
「私よ!」「私だって!」←
今、思い出した!かしまし…しかもドリ娘。の!
あースカッとしたぁ〜

86 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/23(火) 09:23:30
(マリアちゃん凄い……先輩たちを動かしちゃった。
 私に同じことが出来たかな?……)

アカネチンはマリアに感心しつつも、歯をギリッと食いしばっていた。
サユを心配する気持ちなら負けていないのに、
実際に行動に移せなかったことを悔しく思っているのだ。
アカネチンの心の嵐が乱れるのと同じタイミングで、嵐のような人物が発言しだす。

「さすが帝国剣士は頼もしいな。それでこそ訪ねてきた甲斐が有るってものだ。」

嵐のような人物、それはマイミだ。
本来ベッドで寝ているはずなのだが、ハーチンとノナカの制止を振り切って王の間までやって来たのである。
数刻前まで満身創痍だったというのに今はもう殆どの傷が癒えているように見える。
まったくもって不思議な身体だ。

「マイミ様!」
「"様"は止めてくれ。貴女は王で、私は一介の戦士なのだからな。」
「あっ、はい……」
「その一介の戦士の頼みになるが、どうか聞いてほしい。
 私たちキュート戦士団はなんとしてでもマーサー王を取り戻さねばならない。
 しかしいかんせんベリーズに対抗するには戦力が不足しているのだ。
 そこで、モーニング帝国剣士にも力を貸してほしいと思っている。
 帝国剣士とキュートの連合軍ならベリーズを打ち破れるはずなんだ!」

相手が王とは言え、マイミほどの重鎮が頭を下げるのは珍しい。
それだけ自国の王を救いたい思いが強いのだろう。
となればサユを救出したいモーニング帝国と利害は一致する。
承諾しないはずがない。
例えフク王がベリーズのことを心から尊敬していたとしても、だ。

「はい。共に戦いましょう。 帝国剣士のみんなは見ての通りやる気で溢れてますよ。」
「とても有難い! では早速だが、帝国剣士の何人かには作戦会議のためマーサー王国に来てほしい。
 共闘するキュート戦士団とも顔合わせをしてほしいしな!」

願いが叶ったマイミのテンションは最高潮だ。
このまま何も問題が無ければ連合軍はすぐに結成されることだろう。
ところが、ここで異議を唱える者が現れる。

「キュート戦士団とモーニング帝国剣士の連合軍?……私は反対です。」
「ハルナン!?」

ここで反対意見を出すハルナンの考えが帝国剣士のほとんどには理解できなかった。
マイミも思考回路がショートしたような顔をしている。
そんな中、いち早く意図に気づいたアユミンが言葉を返していく。

「足りない、って言いたいのかな?」
「そう。相手がベリーズだけとは限らない以上、戦力の増強は必要よ。
 幸いにも、信頼できる国なら2国ほど心当たりがあるの。」

87 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/23(火) 09:24:48
ダチョウ倶楽部やかしましの事は頭になかったですw

88名無し募集中。。。:2016/02/23(火) 13:10:44
ドリームチーム構想か

89 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/24(水) 08:55:10
趣味と文化の国、アンジュ王国。
ここではスポーツや演劇などの興行が非常に盛んであり、人々は心身ともに豊かに暮らしていた。
この国が趣味国家として発展してきたのは、やはり番長らの活躍が大きいだろう。
国を護る戦士である7番長は、戦い以外にも興行を盛り上げる役割を担っていて
一人一人がそれぞれの分野でトッププレーヤーとしても活躍していたのだ。
例えば運動番長タケ・ガキダナーはろくに野球のルールを知らないくせにホームランを量産しまくるし、
文化番長メイ・オールウェイズ・コーダーが座長を務める舞台は連日ソールドアウトの大盛況だ。
勉強番長カナナン・サイタチープの講演会も(たまに話がとんでもない方向へ脱線するが)聞きたがる人が多いし、
帰宅番長リナプー・コワオールドがブリーダー兼トリマーとして育てた犬は本人以上に人気がある。
そして、特に活躍が目覚ましいのは先日に舎弟から番長へと昇格した3名の担当する分野だろう。
音楽番長が主催するロックフェスは元来盛り上がるのが好きなアンジュの国民たちを満足させ、
給食番長の作り上げる見たこともないような世界の料理は多くの人々の舌を肥やした。
理科番長は本来の目的である石鹸の普及自体はなかなか上手くいっていないようだが
「決して口を開かぬ美女」として、彼女をモデルにした絵画が爆売れしているらしい。
何故に理科番長が一言も喋らないのか、その理由は番長たちしか知らない。

番長らは忙しい日々を過ごしているため、チームとして集まる機会は少なかった。
この日のようにタケ・ガキダナーと、音楽番長ムロタン・クロコ・コロコが鉢合わせるのも非常に珍しいことなのだ。

「お、ムロタン!」
「タケさん。こんばんワニ。」
「わに?まぁいいや、ムロタンの担当する音楽界、結構盛り上がってるみたいじゃん!
 私も結構好きだよ!ロックっていうの?ベンベンベンベン。」

タケはノリノリでエアギターを奏で始めた。
他の国民と同様に、彼女のDNAにも音楽の記憶が刻まれているのだろう。
そんな楽しげなタケに対して、ムロタンは浮かない表情をしていた。

「ありがとうございます。でもな〜やっぱり戦士なんだからもっと戦いたいんですよね〜」
「え?国防とか頑張ってるでしょ。3人だけで国を守るって凄いよ。」
「そういうのじゃないんですよ。」
「???」
「例えば、"モーニング帝国剣士の権力争いに巻き込まれる"ような……そんな戦いがしたいんですよ。」
「……ムロタン、その考えは捨てな。」
「!?」
「ははは、平和が一番ってこと。 今を楽しもうよ!今度ライブに誘ってね!」
「……考えておきます。」

90名無し募集中。。。:2016/02/24(水) 12:39:55
怪獣番長ではなかったか…

91名無し募集中。。。:2016/02/24(水) 13:39:24
しゃべるとバレちゃうんだなw

226 名無し募集中。。。@転載は禁止 2016/02/22(月) 17:02:43.11 0
http://i.imgur.com/BRKXCAY.gif

     ∧ ∧
    |≡V≡|  
  (V)( ^ヮ^)(V) <フォフォフォフォ
   ヽ三i三ソ
    (/ \)
    ∪"∪

92名無し募集中。。。:2016/02/24(水) 18:46:33
理科番長は莉佳子でしょ

93名無し募集中。。。:2016/02/24(水) 22:01:18
あれ?まろは?

94名無し募集中。。。:2016/02/24(水) 23:23:41
裏番長だから宰相みたいなポジションでは?

95 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/25(木) 08:40:42
アンジュ王国からそう離れていないところに「果実の国」がある。
ここの人々は自分たちをファミリーのように思っており、平穏無事に暮らしていた。
病を治療する医療施設が数多く建設されていることも平和を維持するのに一役買っていると言えるだろう。
そんな医療国家の中でも最先端の研究をしているのはユカニャ王その人だ。
彼女は王であり、元戦士であり、且つ理系女子としての一面も持っている。
宿敵"ファクトリー"を撲滅することを目指して、今日も実験に精が出ているようだった。

「うーん難しい……この"NEXT YOU"さえ完成すればあの子達はもっと強くなれるのに……」

ユカニャが今作ろうとしているのは、世にも恐ろしい薬だった。
まだ研究段階ではあるが、その薬をひとたび飲めば生まれ変わったかのような強さになるとされている。
まさに「次の君」になるのである。
だが体の組織を作り替えるほどの劇薬であるために、効能が切れたとして元に戻れる保証は全くない。
それどころか非常に苦しい副作用に苛まれる可能性だって十分にある。
ユカニャは現在、その副作用を取り除くために相当苦労しているが、なかなか上手くいっていないようだ。
国を護るためにファクトリー打倒を目標に掲げるユカニャ王ではあるが、
それ以前に彼女は医療に携わる者としてのプライドがあるため
危険な薬を危険なまま兵士に渡すことなんて決して出来ないのである。

「この分だと完成はまだまだずっと先かな……
 まぁ、あの子達も強くなっていっているからひとまずは安心なんだけど……」

ユカニャの指す「あの子達」、それは果実の国の戦士「KAST」のことだった。
カリン・ダンソラブ・シャーミン、アーリー・ザマシラン、サユキ・サルベ、トモ・フェアリークォーツ。
この四人の戦士はモーニング帝国での一件以降、訓練の水準を何段階にもあげていっていた。
ジュースを飲まなくてもモーニング帝国剣士やアンジュの番長らに対抗できるように、
ありのままの自分を鍛え上げたのである。
その結果として、彼女らは最高級のパフォーマンスを魅せる戦闘集団へと成長することが出来た。
仲でも一番変わったのは、以前まではサポートのみに徹しようとしていたカリンだろう。
カリンはカリン本来の強さを取り戻している。

「やるじゃん。まるでゴールデンチャイルズの頃のカリンみたい。
 あの時のような活躍を期待してるよ!」
「いやいやいやいや、ちょっと待ってサユキ、
 あれはタケちゃんとかフクちゃんとか他のメンバーが凄かっただけで……」
「おいカリン!また卑屈になってるよ!」
「ひぃ!トモ!ごめんなさい〜」
「あはは、性格だけは今までのリンカのままやな。」

96 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/25(木) 08:47:07
>>90
残念ながら怪獣番長でも宇宙番長でもありませんw
それらの要素は別の形で出てくるかもしれませんけどね。

>>91-92
給食番長が相川茉穂モチーフのキャラ、
理科番長が

97 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/25(木) 08:50:40
途中で送信しちゃいました。

>>91-92
給食番長が相川茉穂モチーフのキャラ、
理科番長が佐々木莉佳子モチーフのキャラとなります。
「口を開かない」「美術」あたりのキーワードで混乱させたのかもしれませんね。

>>93-94
マロがどうなったのかはまた後日にw

98 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/26(金) 08:25:54
打倒ベリーズのための作戦会議は3日後、マーサー王国の城にて行われる。
国際的な会議であることを考えれば開催までの期日が極端に短いが
マーサー王とサユの救出という目的を早期に果たすにはこれが適当なのかもしれない。
そして今、ハルナンは馬を走らせ、アンジュの王に謁見している。
ベリーズとモモコ一派、そして他にもいるかもしれない敵に対抗するためには
アンジュ王国の番長と果実の国のKASTの力が必要不可欠だと考えたのだろう。
外交担当として、確実に二国から協力してもらうためにハルナンはここまで来たのだ。

「かくかくしかじかという訳なの。 アヤチョ、出来る限りで良いから助けてほしい。」
「いいよ!アヤがいく!ハルナンを困らせる悪い奴をとっちめてあげるよ!」

アンジュ王国の王、アヤチョは簡単だった。
親友ハルナンのためならどんな犠牲を払っても良いという考え方をしているのがその理由だ。
それに対して裏番長マロ・テスクはハルナンに厳しい。
車椅子生活となり、戦士として以前のように戦うことは難しくなったが
口の達者さは据え置きのようだった。

「ちょっと、アヤチョには王の仕事がたくさん残ってるでしょ?
 そんな簡単に居なくならないでくれる?」
「え〜……じゃあ番長たちをハルナンに貸すのはどう?」
「番長たちって、7人全員?」
「そう!あの子たちが揃ったらきっとハルナンの助けになるよね!」
「それはダメ、全員は貸せない。」
「なんで!?カノンちゃんケチだね!」
「考えてもみてよ。全員いなくなったら国防の指揮は誰がとるの?
 興行の舵取りは誰がやるの?いないでしょ?」
「カノンちゃんとか。」
「私はアヤチョに押し付けられた面倒な仕事をいーっぱいこなさないといけないんだけど?」
「う〜……」
「それにね、困ると思わない?」
「何が?」
「番長7人がそこのハルナンに唆されて裏切られたりでもしたら、アンジュは終わっちゃうよ?」
「「!!」」

マロの言葉に、ハルナンはギクリとした。
もちろんそんなことをする気など微塵も無いのだが、
過去を顧みるに、ここで否定しても説得力がなさ過ぎるのだ。
そんな感じで小さくなるハルナンとは対照的に、アヤチョは激しい怒りを露わにする。

「酷いよカノンちゃん!ハルナンがそんなことする訳ないでしょ!!
 分かった!ベリーズが敵って言われて拗ねてるんだ!
 ひょっとしてそのこともハルナンの嘘とか言うんじゃないの!?」
「いや、それは信じるよ。」
「「えっ?……」」
「ベリーズ戦士団様を己のために利用することがどれだけ罪深いか、
 ハルナンはよーく知ってるだろうしね。」

ハルナンは背筋がゾクッとするのを感じた。
過去にベリーズの一人であるクマイチャンを利用して、
その結果マロに痛い目を見せられたのを思い出したのだ。
ハルナンは決意する。
ここでマロ・テスクを説得するには全てを洗いざらい説明するしか無いと悟ったのである。

「すいませんマロさん、どこかで2人で話せませんか?」
「2人で?怖〜い。私なにされちゃうの?」
「アヤチョにも聞かれたくない、大事な話がしたいんです。」
「「!!」」

99名無し募集中。。。:2016/02/26(金) 09:54:49
あれだけのことしといて
いけしゃあしゃあと外交にくるハルナンもすごいなw

100 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/27(土) 10:19:54
個別ブースに入ってから数分後、ようやくハルナンとマロが中から出てきた。
どうやら説得は上手くいったようで、マロはアヤチョも驚く程の変貌ぶりを見せている。

「そういうことだったのね。分かったわ、番長4人を合流させてあげる。」
「有難う御座います。 本当はもっと早くお伝えするべきだったのですが……」
「いいよ、気にしないで」

あのマロがいやに素直なので、アヤチョは不思議に思った。
いったいどんな魔法を使って納得させたのだろうか。

「ねぇハルナン、2人でなに話してたの?」
「うふふ、アヤチョにはまだ秘密。」
「えー!?」
「ごめんね。でももう果実の国に急がなきゃならないの。今度一緒にお話ししましょ。」
「うん!」

こうしてハルナンは慌ただしく去っていってしまった。
ここから番長を手配するのはアヤチョとマロの仕事。
興行に忙しい番長4名をさっそく王の間に呼びつける。

「カナナン、タケちゃん、メイ、リナプー、3日後にマーサー王国に行ってハルナンを助けてあげて。」
「え?」「なんでですか?」
「マーサー王とサユが攫われたらしいの……それもベリーズ様、に。」
「「「「!?」」」」

はじめは気怠い雰囲気を見せていた番長達だったが、マロの言葉を聞いて一気にピリッとする。
事態は深刻であることを理解したのだ。

「キュート様やモーニング帝国剣士と合流して事件を解決するのがあなた達の使命。
 正直言って相当厳しい戦いになるけど……やる?」

相手がベリーズほどの存在ともなれば、恐れて逃げることは恥にはならない。
だから念のためマロは本人達の意思を確かめたのだが
どうやらその心配は無用だったようだ。

「やります!フクちゃんが困っているなら、力になってやりたいんです。」

タケの言葉に仲間達も頷いていく。
モーニング帝国での選挙戦を経験して以来、
彼女らは戦士として一段階成長したのと同時に、モーニングに対して親近感を覚えるようになったのだ。
ライバルたちとまた共に戦いたい。 そう思うのは当然のことだった。
こうして話は上手くまとまるかのように思えたが、
王の間に新人番長であるムロタンが乱入することで、少々ややこしくなる。

「待ってください!なんで4人だけなんですか!」
「ムロタン!?」
「人数をどうしても増やせないって言うなら……タケさん、メイさん、その座を譲ってください。」
「は!?」「ちょっと、何言ってるの!?」

101名無し募集中。。。:2016/02/27(土) 11:11:46
ムロタン乱入!3期が参加するのかな?

102 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/27(土) 23:54:17
ムロタンが今の戦いを物足りないと感じていることはことは知っていたが
まさかこの状況でぶっ込んでくるなんて思いもしなかったのでタケは驚いた。
しかもタケとメイと言う名指しでだ。

「なんでタケちゃんとメイメイなん? ウチやリナプーでもええやろ。
 いや、良くはないんやけどな。」
「それはですね、カナナンさんとリナプーさんは尊敬できるからなんです。」

ムロタンの言葉を聞いたタケとメイは今にも卒倒しそうになる。
カナナンとリナプーを尊敬できるということは、裏を返せば自分たちを敬っていないとい薄着でこと。
クラクラする頭を押さえながら、メイが反論し始める。

「ちょっとあなた?先輩風吹かすわけじゃないけどね、一応上下関係というものが……」
「え?同じ番長なんだから同格ですよね?」
「そうなんだけどね?そうなんだけどね?えっとなんて言えばいいのかな……
 よし、具体的に聞こう。どういうところが尊敬できない?」
「えっと、例えば、メイさんの服ってオバさんみたいですよね。」
「オバさんじゃない!!これはエイティーズファッションって言うの!
 ファッションなの!分かる!?あえてよあえて!!」
「エイティーンエモーションですか?」
「違う!」

数十年前に流行した服を着る、言わばリバイバルファッションを好んでいたメイにとって
それを貶されるのはとても悔しいことだった。

「だいたいね、ファッションと言えば前からムロタンに言いたいことがあったの。
 なにその露出度の高い衣装!恥ずかしくないの?心配するわ!」

メイが指摘したのは、ムロタンのヘソ出しノースリーブ衣装だ。
戦士とは思えないほどの薄着で、防御力など度外視しているように見える。

「え?可愛くないですか?男の人にすごく好評ですよ?」
「いやらしい目で見られてるの!あーいやらしい!」
「見られても減るもんじゃないですからねー」
「最近の若い子の貞操観念ってどうなってるのかしらね!」
「え?メイさんと私って同い年じゃないですか。」
「……そうだったね。」

103 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/27(土) 23:56:50
おまけ更新

ムロタン「え?同じ番長だから同格じゃないですか?」
メイ「一応私たちだってマロを敬ってたのよ。ねぇタケちゃん!」
タケ「う、うん!マロめっちゃ尊敬してる。」
カナナン「ほらほらマロ、早く2人の喧嘩を止めなあかんで」
リナプー「マロお茶入れて〜」
マロ「おい」

104 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/27(土) 23:58:35
あ、急いで書いたからか結構誤字ってますね……
遂行気をつけます。

105名無し募集中。。。:2016/02/28(日) 02:10:02
りなぷー平気で言いそうw

106 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/28(日) 12:27:13
「ムロタン、尊敬できない本当の理由って、服がダサいとかそういうのじゃないんでしょ?」

興奮するメイを制して、タケが口を挟みだす。
声のトーンから真剣さが伝わったのか、ムロタンも真面目な顔をする。

「はい。メイさんの服がダサいとか、タケさんの足が短いとかはこの際どうでもいいんです。」
「ん……(脚が短いって言ってたっけ?)」
「ただ、タケさんやメイさんの役割なら私にも出来るなって思ったんですよ。」
「本心っぽいね。 どうしてそう思ったの?」
「例えばですけど、カナナンさんの真似は私には無理です。
 私、っていうか同期はみんな、ちょっとお馬鹿さんなんで……」
「状況を見て指示を出すのは難しいってことか。」
「そうです!タケさんもそうですよね?」
「失礼だな!……まぁいいや、続けて。」
「リナプーさんみたいに姿を消して場をかき乱すのも苦手なんですよね。」
「自分から目立ちに行くもんね、ムロタン。」
「そうなんですよ……それに、リナプーさんには一対一で勝てる気がしません。」
「えっ?ということは……」

ここでムロタンがまた聞き捨てならないセリフを言い放つ。
要するに、タケやメイには勝てるとアピールしたいのだろう。
褒められてニヤニヤしてるカナナンやリナプーとは対照的に、
タケとメイの顔がどんどん怖くなっていく。

「タケさんとメイさんってただの戦闘員ですよね?
 だったら私と同じじゃないですか。 代わっても問題ないと思いません?」
「ムロタン、そこまで言うってことはタイマンで私に勝てる気でいるのかな?」
「いや、一対一じゃなくていいですよ。」
「……どういうこと?」
「2人がかりで来てくださいよ。それでやっとフェアです。そう思いません?」
「「!!」」

タケとメイがただの戦闘員だというのは確かに正しい。
とは言え、二人は帝国剣士ともやり合うことのできるレベルにいるのだ。
そんな二人に同時にかかってこいだなんて、無謀にもほどがある。
普通に考えればこんなのただの挑発にしか思えないのだが、
マロ・テスクはムロタンに確かな自信があるのを感じていた。

「面白いじゃない。先輩として勝負を受けてやれば?
 もちろん勝った方が遠征に行けるっていう条件でね。
 いいでしょ?アヤチョ。」
「もちろん!ハルナンを助けるなら強い子の方がいいからね。」

アヤチョとマロが承認したので、いよいよこの戦いを避けることは出来なくなってしまった。
だがその点においてはなんら問題ない。タケもメイも十分やる気なのだ。
そんな二人をさらに興奮させたいのか、ムロタンが新たな条件を提示する。

「戦う時間と場所なんですけど……私が決めていいですか?」
「いいよ、好きにしな。」
「じゃあ昼過ぎに野外の大広間でやりましょうよ!!
 それまでにギャラリーをたっくさん集めてくるから期待しててくださいね。
 大勢の兵隊さん達の前で白黒ハッキリ決めましょうよ。」
「……いいけど。」

ここでカナナンは気づいてしまった。
ムロタンがしきりに挑発することで起こりうる最悪の事態を想像したのだ。

「タケちゃん!メイ!」
「カナナン、口出しは無用だよ。」
「……はい。」

マロがクギを刺すのでカナナンは何も助言できなくなった。
こうなったらもう、2人が罠にかからないように祈るしかない。

(タケちゃん!メイ!お願い気づいて!!)

107 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/29(月) 02:04:14
昼の休憩を少し挟んで、ムロタンの指定した時刻がやってきた。
それほど時間が有ったという訳では無いのに、広場には2000を越える数の兵士達が集まっている。
番長同士の戦いという好カードを誰もが見たがっているのだろう。

「どうですか?観客の数としては申し分無いですよね。」
「……ところでさ。」
「タケさん、どうかしました?」
「ムロタンの同期には声をかけなかったの?応援に来てないようだけど。」

新人番長が姿を見せていないことにタケは違和感を覚えていた。
ムロタンが一世一代の大勝負をするというのに見に来ない程の薄情者では無いはずだからだ。

「あー、それがですね。リカコは仕事が忙しくて来れないみたいなんですよ。」
「例のモデルのやつ?」
「はい。色んなところから引っ張りダコらしくて呼べませんでした!
 本当はリカコにも見てもらいたかったんですけどね。」
「そっか」
「はい!」
「……で?」
「ん?なんですか?」
「え、いや。なんでもない。」

タケは物言いたげな顔をしていたが、言葉にするのを取りやめた。
観客が待ちくたびれているのを感じ取ったため、早々に決闘の準備を進めねばと思ったのだ。

「それにしてもタケちゃん。」
「どした?メイ。」
「改めて思うけどムロタンって度胸あるよね。この大人数の前でも全然緊張してない。」
「"ロックスター"だからね。慣れっこなんでしょ。でもそれを言うなら私たちだって。」
「"プロスポーツ選手"と"舞台女優"か。確かに慣れてるや。
 緊張して本領発揮できなかった、なんて言い訳出来ないね。」
「そもそも言い訳する気ないけど。勝つし。」
「あはは、そりゃそうだ。」
「……ところで、メイ。」
「?」

タケが神妙な面持ちになったのでメイは不思議に思った。
だが次の言葉でメイは困惑することとなる。

「やっぱりメイは下がっててよ。ムロタンの相手は私1人でやる。」
「は!?」

もう少しで開戦だというのに、突然1人で戦うとか言い出したので
メイは何が何だか分からなくなってしまった。

「ちょっと今更なに言ってるの!?」
「ムロタン相手に2人がかりは違うなって思って……」
「卑怯だとか言いたいの?ムロタンが後輩だから大人気ないって?
 それは違うよ!これはそういうルールなんだよ!?
 分かってるの?タケちゃん。これは遊びじゃないんだよ!」

メイが激しく興奮しながら怒鳴るので、その声はムロタンだけでなく観客にも届いてしまった。
兵士達には、タケとメイが仲間割れするというみっともない姿が見えているのだろう。

「いいから退けっての。ムロタンの相手は1人で務まるから。」
「分かった!!もう分かった!!タケちゃんがそう言うならメイはもうムロタンとは戦わない!!」
「あぁ、その辺で応援してろよ。」
「応援なんてするわけ無いでしょ!ここに居るだけで嫌な気分になってくるの!
 あー気持ち悪い!さようなら!!!せいぜい
頑張ってね!!」
「……チッ」

顔を真っ赤にしたメイが本当にどこかに行ってしまったので、ギャラリーはひどくどよめいている。
そして、タケやメイの同期であるカナナンも不安に思っていた。

「あぁ〜なんてことを……このままじゃ負けてしまう……」

最悪の展開が近づいていることにカナナンは絶望しかけていた。
後輩に勝つにはタケとメイの協力が必要不可欠だと分析していたのに、
それがもう叶わなくなってしまったのでガックシきているのだ。
そんなカナナンの肩をポンポンと叩きながら、もう1人の同期であるリナプーが声をかける。

「カナナンって頭いいけどたまに馬鹿だよね。」
「えぇ!?ひどい!」
「だってさ、私たちの同期が負けるわけないじゃん。」
「だったらええけど……根拠ないやろ」
「大丈夫だよ。あの子はやる時にはやる子だから。」

108 ◆V9ncA8v9YI:2016/02/29(月) 13:13:51
「ふふっ、いいんですか?メイさん抜きで」

自分の有利な方向にコトが進むのが愉快すぎて、ムロタンはついつい吹き出してしまう。
ピリピリとした顔をするタケとは全くもって正反対だ。

「いいよ。もう始めよう。」

そう言うとタケは腰につけたホルダーから鉄球を一つ取り出した。
この鉄球「ブイナイン」こそが彼女の武器。
現モーニング帝国帝王であるフク・アパトゥーマをも苦戦させた実績を持って、ムロタンに挑もうとしている。
対するムロタンは、なんと手ぶらだった。
これから決闘を行うというのに装備を持ち合わせていないように見えるのである。
とは言え、ムロタンの戦い方を知っているタケはそれで油断などしない。
先手必勝。全力投球の精神で鉄球をぶん投げる。

「おりゃあっ!!」

160キロオーバーの豪速球なので当たれば骨折は必至。
特にムロタンはメイが呆れたほどの薄着なので、ちょっと当たっただけで戦闘不能に陥るかもしれない。
ところが当のムロタンは全く恐れるようなそぶりを見せなかった。
手のひらを前に突き出し、魔法の言葉を叫び出す。

「バリアー!!」

この世界は魔法やファンタジーの世界ではないのでバリアーなんて出ないはずなのだが
なんと、ムロタンを狙う豪速球は手のひらに当たる直前まで「見えない壁」に跳ね返されてしまう。
このムロタンお得意の防衛術に、観客たちは湧き上がる。

「おお!あれがムロタン様の魔法か!」
「タケ様の鉄球まで防ぐとは、なんと凄まじい防御力!」

ムロタンはロックスターであると共に、エンタメ興行を取り仕切るエンターテイナーでもある。
彼女にとってはパントマイムと呼ばれるパフォーマンスを戦闘に取り入れるくらい朝飯前なのだ。
しかし、パントマイムと言えば自らの身体を用いることで無いものを有るように見せる技術。
本当に自身の身体を使っているのであれば今頃ムロタンの腕はグシャグシャになっているはずだ。
ところがそのムロタンは平気な顔をしているし、腕だってなんともないように見える。
この秘密はアヤチョ王と番長たちしか知らない。

「流石だなムロタン。この程度じゃ効かないってか。」
「もっと速い球を投げてもいいんですよ?私のバリアーで全部跳ね返してあげますから。」
「でも護るだけじゃ勝てないでしょ?攻めてきなよ、そっちもさ。」

ムロタンはこのパントマイムによって番長屈指の防御力を手に入れていたが
その反面、攻撃の手段には乏しかった。
特にタケほどの身体能力を誇る戦士を倒し切るのは骨が折れるだろう。
だが、今のムロタンはそれを克服している。

「分かりました。じゃあ攻撃しますね。」
「どうやって?パンチか?キックか?」
「狙撃です!ファイヤー!!」

ムロタンがタケをビシッと指差したのと同じタイミングで、タケの肩をから血が噴き出していく。
まるで弾丸で撃ち抜かれた時のような損傷を負っているのだ。
しかしムロタンは相変わらずの手ぶら。銃なんて持っているようには見えない。
ではこの弾丸はどこから来たというのだろうか?

「これは……なるほどね。」
「あ、タケさんも分かっちゃいました?」

この仕掛けのタネは番長ならばすぐに分かるとムロタンも自覚していた。
だが分かったところでもう遅い。
絶対防御からの一斉射撃はもう開始されたのだから。

109 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/01(火) 02:17:00
歴代の番長の中で、銃を武器にする者は2人しか存在しなかった。
そのうちの1人は現在一線を退いているマロ・テスクことカノンだ。
小型銃「ベビーカノン」による銃撃によって相手の行動の幅を狭めるのが得意な戦士だった。
しかし、タケの肩にブチ込まれたのは「ベビーカノン」の弾丸ではない。
小型銃にしては弾が大きすぎるのである。
となればおのずと答えが見えてくる。
タケを撃ったのは、もう1人のガンナーだ。
いや、どちらかと言えばスナイパーと呼ぶのが相応しい。

「タケさん。ごち」

タケとムロタンの戦う広場から500m程離れたところに時計台が建っている。
そこの最上階付近では、大きなスナイパーライフルを構えた少女が陣取っていた。
その少女の名はマホ・タタン。 アンジュ王国の給食番長だ。
そんな彼女には料理以外にも天体観測という趣味があった。
スナイパーライフルのスコープを覗き込みながら、
まんまるい月を見る時のような集中力でタケを狙っていく。

「……もう一発。」

マホがトリガーを引くことで、タケの左脇腹に激痛が走る。
あまりの苦しさにひっくり返りそうになるが、それだけはしてはならない。
少しでも動きを止めれば集中砲火を受けることになるからだ。

「あはは、タケさん!私の魔法が効いてるみたいですね!なんちゃって。」
「くそっ!ムロタンじゃなくてマホの仕業だろ!これ!」
「当たりです〜。でも、だったらどうだって言うんですか?」
「……別に、何も言わないよ。」
「あー良かった。タケさん本当にカッコいいですね。
 それじゃあ思う存分やらせてもらいますよ。」

この戦い、タケとムロタンの一騎打ちかと思いきや
その実はタケ対ムロタン&マホの1対2の勝負だったのだ。
一見して卑怯に思えるが、そんなことはない。
その理由をカナナンがリナプーに解説し始める。

「ムロタンはな、自分一人だけで戦うとは一言も言ってなかったんや。」
「そーだったっけ?忘れちゃった。」
「リナプーに一対一で勝つ自信が無いって言ってたことは?」
「覚えてる!」
「そう、ムロタンが言ったのはたったそれだけ。
  後は周りが勝手に勘違いしたんやな。 タケちゃんやメイには勝てると思っとるって。」
「ふーん。そういうこと。」
「で、ここからはウチの推測になるんやけど、多分ムロタンはウチらのことも尊敬してないと思う。」
「え!?どういうこと!?」
「対戦相手をタケちゃんとメイに絞るために口からデマカセ言うとったんやで。」
「?」
「ほら、ウチは賢いからムロタンとマホの策に気づいてまうやろ?」
「なんか感じ悪いね。」
「こら。あんまり後輩を悪く言ったらあかんで。」
「そうじゃなくて。」
「でな、リナプーは透明になるからマホの狙撃が当たらないはずやろ?」
「あーそうかも。」
「つまり、アホで且つ地味でもないタケちゃんとメイを対戦相手にするのがムロタンとマホの狙いだったんや!!」
「うわー、なんかイラっとくる。」

110名無し募集中。。。:2016/03/01(火) 06:18:09
新番長はくせ者揃いだわ…流石二期がひくぐらいグイグイくるってあやちょが言うだけあるなw

111 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/02(水) 12:57:07
アンジュの番長は、先輩4人と後輩3人でそれぞれ分かれて戦うことが多かった。
このようになった原因は上下関係によるのではない。
同期間での役割が非常にハッキリしているため自然と分かれていったのである。
例えば先輩番長の役割は以下のようになる。
司令塔のカナナンが仲間に指示を出し、
身体能力の高いタケと、演技によってどんな状況も対応できるメイが前線に出て、
透明化を得意とするリナプーが場を掻き乱す……といった具合だ。
対する後輩番長には司令塔らしき人物は存在しないが、
ムロタンの防御で味方を護り、リカコが相手の視界を奪ったところで
マホが狙撃するといった必勝パターンを確立させていた。
今回、新人はリカコの一枚落とし程度で済んでいるのに対して、先輩であるタケはたった1人で臨まなくてはならない。
誰がどう見ても不利な状況にあるのである。

「せめてメイがおったらな……今のタケちゃんは弾丸から身を護りつつムロタンの護りまで崩さなあかん。」
「あはは、このままだとタケ負けるね。ばくわら」
「リナプー!笑い事やないやろ!」
「……だからさっきも言ったじゃん。カナナンはたまに馬鹿なところあるって。」
「!?」
「この勝負は同期の勝ちだよ。 タケだってそれを分かってるみたいだし。」

リナプーはそう言うが、当のタケは未だにこの状況を打破できずにいた。
身体で貰った銃弾の数は太ももをやられたことで3発に達しているし、
マホを倒しに行こうにもムロタンに回り込まれて妨害されてしまう。
ならばムロタンをぶっ倒せば良いと考えたが、スナイパーに狙われたままでは本気の投球を見せることも不可能だ。
そして、仮に超豪速球を投げたとしてもムロタンの「見えない壁」を破れるかどうかは分からない。
まさに絶体絶命なのである。
タケが苦しい顔をするのを見たムロタンは有頂天になる。

「そろそろキツいんじゃないですか?顔が死んでますよ!」
「まだ負けてない……」
「いえ、もう終わりです。 その撃たれた脚じゃもう避けられないでしょ?
 だからこれが最後なんですよ!マホ!やっちゃって!!」

ムロタンはタケを指差し、大声でマホに指示を出した。
動けぬ的のど真ん中に弾丸を当てればそれで終了だと考えたのだ。
ところが、何か様子がおかしい。
ムロタンが発射のお願いをしたというのに、いつまで経っても銃声は鳴り響かない。

「え?……マホ?……なんで撃たないの?」

112 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/02(水) 12:58:51
>>110
未登場ですが、リカコはムロタンやマホ以上に個性的な戦い方になる予定です。
番長の武器は基本的にモチーフになったメンバーの趣味や特技から採用しているので
予想してみてください。

113名無し募集中。。。:2016/03/02(水) 14:14:57
シャボンカッターかな

114名無し募集中。。。:2016/03/02(水) 18:38:10
「相手の視界を奪う」から泡の壁を作るとか・・・もしくは無駄な動きで相手の気を散らすとか?w

115 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/03(木) 02:34:21
「ムロタンは凄いと思うよ。実際。」
「え?え?」

マホの動向が不明なところに、更にタケが自分を褒め始めたので
ムロタンは完全に混乱してしまった。
そんなムロタンを見ながら、タケは言葉を続けていく。

「これだけのギャラリーを集めたのも凄いし、そんな大勢の前で先輩を倒そうとする度胸も凄い。
 しかもちゃんと策が練られてるから無謀な挑戦なんかじゃない。」
「何が言いたいんですか!」
「いや、なかなか魅せてくれるなって思ったんだよ。」

タケの言葉は全て本心によるものだ。
遠征への切符を奪い取る計画を企てただけじゃなく、
それすらも観客総立ちのショーに変えてしまっている。
なんて優秀なエンターテイナーなのだろうか。

「でも、もっと魅せてくれる奴のことを知ってるんだよなぁ。」
「!?」
「流石だよね、迫真の演技ってのはああいうのを言うんだ。」
「え?え?……うそ、まさか……」
「儲け物だとは思わない?トップ女優の仕事っぷりを間近で観れたんだからさ。」
「!!!」

同時刻、マホのいる時計台。
そこではマホ・タタンが突然の来訪者にひどく怯えていた。
決して来るはずのない人物が目の前に立っているのだから無理もない。
その来訪者はたった1人の観客の前で口上をあげていく。

「世の中は劇場、人生のミザンセーヌ。
 せわしないプロット、今日も演るのだ。
 きっといつしかは大団円。
 愛と義理と人情、心惜しまずに尽くすの。
 誰に見られようと
 なんと言われようと
 ここでは、私が、主役だ!!」

彼女は部屋中に響き渡るほどの声量で見得を切った。
大根役者がこんなことを言ったらお笑いだが、そうはならない。
メイ・オールウェーズ・コーダーには2000人を騙した実績があるのだから。

「め、メイさんなんでここに……」
「今宵の客は貴女かな?」
「へっ?まだお昼ですけど……」
「それでは貴女のためにスッペシャルな演目をご披露いたしましょう。
 これは数ヶ月前にあった本当のお話ーー」

マホはスナイパー。狙撃の威力と精度は高いが、近接戦闘だけは非常に苦手としている。
普通にメイとやり合えばマホはあっという間に負けてしまうだろう。
だが幸いにも、メイは現在、自分の世界に入っている。
今ならスナイパーライフルで撃ち抜くチャンスだとマホは考えたのだ。

「えい!」
「ーーその時、巨人が現れたのです!!」
「!?」

あとちょっとで引き金を引けるといったところで、マホの身体は静止してしまった。
急に全身が重くなったのだ。
まるで天空から伸びてきた巨人の手に押さえつけられたかのように、
たった「1秒」だけ動きを止められたのである。
これはメイが死に物狂いの稽古の果てに習得した「1秒演技」によるもの。
超短期ではあるが、己の実力を遥かに超える人物をも演じることが出来るようになったのだ。
たかが「1秒」、されど「1秒」
これだけ止められれば応用はいくらでも効く。

「ーーそこで勇敢な王は仕掛けました。"フク・ダッシュ"!!」

マホが動きを取り戻すよりも早く、メイは爆発的な加速力で体当たりをぶつけていく。
防御姿勢を全くとれていない相手に喰らわす突進は非常に強烈。
マホは耐えきれずに気を失ってしまった。

「か〜てぃんこ〜るるるんるるるん
 それでは最後にみんなで一緒に三三七拍子。
 さ〜あ、皆様お手を拝借。
 『本日は、本当にありがとう!』」

これにてアクトレスによる劇は終幕。
次に輝くのはアスリートか、アーティストか。

116名無し募集中。。。:2016/03/03(木) 05:02:50
まさにメイの独り舞台!w

117 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/03(木) 12:53:56
「今までのが全部演技……!?
 じゃあ、私たちの考えが分かってたってことですか!?
 隠してたつもりなのに、どうして!」

同期みんなで意見を出し合って作り上げた作戦が崩壊しかけたので、
ムロタンの焦りは相当のものだった。
負傷自体は相手の方が上だというのに、敗北者のような顔をしている。

「ムロタンの行動が不自然だったからかな。すぐに何か有ると気づいたよ。」
「不自然???私、何か変でした!?」
「番長の凄さは舎弟から昇格したムロタンが一番よく知ってるはずだろ。
 マホやリカコよりも長い間努力し続けたムロタンが、
 先輩の番長を2人同時に倒せるなんて口が裂けても言えないんじゃない?」
「あ……」
「それでもムロタンは言い切った。じゃあ何か策がある。
 しかもこんな開けた場所で決闘するなんて言い出したもんだからさ
 ここらで一番高い時計台を怪しいと思うのは当然じゃない?」
「……タケさん、意外と頭良かったんですね。」
「良くなんかないよ、ただ、モーニングの方に姑息な手ばっかり使う奴がいてさ。
 そいつに会ってからは、ちょっとは頭使うようになったかな〜」

かつてのタケは親友のフクを満足に守ることが出来たとは言えなかった。
戦術には無頓着だったタケも、その悔しさから考えを改めるようにしたのである。

「じゃあ……どうしてですか。」
「何が?」
「メイさんを信じることが出来たのはどうしてなんですか!
 本当に怒って帰っちゃったのかもしれないじゃないですか!
 いくらタケさんが策を暴いても、メイさんが気づかなかったら意味ないのに!」
「どうしてって……そりゃ分かるでしょ。」
「!」
「同期なんだぜ?言葉になんかしなくたって、大体分かると思うけどな〜。
 ムロタンはどう?マホやリカコの言いたいこと。」
「……分かります。」
「ま、あそこのカナナンだけは分かって無かったみたいだけどね。後でみんなで〆る!!」

ムロタンは、今回の作戦に無理があることにようやく気づいた。
失敗の要因は、先輩番長はカナナン抜きでは正常な判断が出来ないと思ってたこと。
そして、先輩らの絆は新人番長の絆ほど固くないとタカをくくったことが挙げられる。
要するに、舐めすぎていたのだ。
そんな姿勢で臨んだ戦いが上手くいくはずもない。

「私が馬鹿だったって分かりました……でも……」
「でも?」
「私!いや、私たちはまだ負けていません!!」

ムロタンは「見えない壁」をギュウッと掴み、自分とタケとの間に配置する。
彼女の瞳の炎はまだ消えていなかったのだ。

「私の防御は絶対なんです!!かすり傷一つ負わずに勝ってやるんですから!!」
「いいねぇ……そうこなくっちゃ。」

118名無し募集中。。。:2016/03/03(木) 13:41:48
タケやるねぇ
実際はうるう年の意味もよく分かってないのにw

119 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/04(金) 02:15:39
ムロタンの「見えない壁」の正体は、アクリルと呼ばれる最新の素材で出来た透明色の盾だ。
ただでさえ耐久力の優れた素材だというのに
それを10cmという普通の盾でも考えられないような厚さで作り上げているのだから、硬くないはずがなかった。
もちろんその分だけ重量が増して使いにくくなる訳だが
番長になるため頑張り続けたムロタンからしてみれば、この程度は軽いものだった。
ムロタンは未だ打ち破られたことのないこの透明盾、その名も「クリアファイル」に絶大な信頼を置いている。
そして、そのことは他の番長たちも重々承知していた。

「私の鉄球とムロタンの盾、どっちが強いか勝負だ!」
「望むところです!!」

ここまで来れば策も何もない。力と力のぶつかり合いだ。
タケは本気で投げるし、ムロタンはそれを全力で受け止める。
そんなやり取りが2、3分ほど繰り返された。
時たまタケが変化球を投げて打点をズラそうともするが、それさえも全て防がれてしまった。
盾が透明ということは、相手の攻撃が当たる寸前まで軌道を確認できるということ。
その特性から、ムロタンは不意打ちさえも確実にガードすることが出来るのだ。

「ハァ……ハァ……本当に硬いな」

一見して2人の勝負は拮抗しているように見えるが、実はタケの方がいくらか不利だった。
先ほどマホに撃たれた傷から出血し続けているため、もう長くはないのである。

「タケさん!そろそろキツいんじゃないですか?」
「……かもね、もう諦めようかな。」
「え!?本当ですか?」
「勘違いするなよムロタン。諦めるってのは勝負のことじゃないよ。
 9回ウラ満塁になったとしても勝利だけは信じてやるんだ。」
「じゃあなんだって言うんですか?盾を壊さないと私は倒せませんよ?」
「どうかな、まぁその目でしっかりと見てなよ。」

120 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/04(金) 02:16:52
タケちゃんうるう年分かってないんですかw
想像以上でした。

121名無し募集中。。。:2016/03/04(金) 09:24:19
想像以上ってw

122 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/04(金) 12:56:19
タケの武器は鉄球のみ。
ゆえに、相も変わらぬ豪速球を放ることしか出来ない。
ただ、ここでタケは少しの変化を加えることにした。
狙いをムロタンの顔面に定めてぶん投げたのだ。

「とりゃっ!!」
「だから無駄ですって!」

どこに投げられた球だろうとムロタンには関係ない。
ギリギリまで鉄球の行き先を見極めて、そこに透明盾を当ててやるだけだ。
結果として今回も球は跳ね返されてしまった。
たがタケはまだ勝負を諦めていない。
跳んできたボールをキャッチするや否や、インターバルなしですぐさま投球モーションに入ったのである。
狙いは同じくムロタンの顔面。

「それはさっきやったでしょ!?効きません!」

寸分の狂いもなく同じ箇所を狙ってきたので、ムロタンは盾を動かす必要すら無かった。
ただ構えているだけでいいので非常に楽にガードすることが出来る。
ところが、ここでムロタンの身体に異変が起きる。
まったく動く必要がないと言うのに、脚が勝手に後ずさりし始めたのだ。

「え!?……わわっ!!」

多少バランスを崩したが、すぐに体勢を立て直すことでなんとか鉄球を防ぐことが出来た。
そんな風にホッとしているムロタンに対して、タケはまたもすぐに球をぶん投げる。
狙いは変わらない。ムロタンの顔面だ。

(またぁ!?)

馬鹿の一つ覚えみたいに同じところばかり狙ってくるタケの攻撃は、
盾使いからしてみればこれ以上なく簡単に捌けるはずだった。
ところが気づけば腕が震えている。膝も笑っている。
軌道を見続けねばならない目も頻繁に瞬きをしている。
喉が渇く。胸が苦しくなる。血が冷たくなる。
何より、逃げ出したい思いでいっぱいになる。
ここでようやくムロタンは自覚した。

(私、怖がってる!?)

前にムロタンの盾が透明であることのメリットについて書いたが
それに対するデメリットもちゃんと存在していた。
デメリット。それは敵の攻撃がよく見えすぎてしまうところにある。
顔面に鉄球が当たることは絶対に無いと頭で理解していたとしても、
それによって生じる恐怖心は毎回毎回蓄積されていってしまうのだ。
そうして一度根付いた恐怖は思考までもネガティヴに変えてしまう。
もしも盾を離してしまったらどうしよう。
もしも転んでしまったらどうしよう。
もしも鉄球が本当に顔面に当たってしまったら……明日から私はどうすればいいのだろう。
気づけばムロタンは大粒の涙を流し、膝から崩れ落ちてしまっていた。
かすり傷を一つ負うよりも先に、気持ちの方が折れたのである。

「ううっ……悔しい……立てない……」

ムロタンが敗北を認めたのを理解したタケは、安心した顔をしながら鉄球をホルダーに戻していく。
そして、一言呟いた後にぐたっと倒れこむのだった。

「後輩に勝てたー……これでちょっとはフクちゃんに並べたかな?……」

123 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/04(金) 22:30:02
次にタケが目を覚ましたのはベッドの上だった。
隣でムロタンやマホも横になっていることから、
決闘での負傷者が病室へと運び込まれたのだと理解する。

「あ!タケさん起きた!」
「タケさんおはようございます。」
「お、おはよう。ムロタン、マホ。」

勝負に敗れたはずの後輩たちがニコニコ笑顔だったので
タケは本当に自分たちが勝ったのか不安になってしまった。
だがその心配は無用だ。確かに勝利を収めている。
枕元に置かれた手紙がその証拠だ。

『しあさってには出発なんだから早く治しなさいよ! メイより。』

メイの書置きを読んで、改めてタケは今回の趣旨を思い出す。
この決闘はベリーズを倒しにいく者を決める戦いだったのだ。
となるとタケには一つの不安があった。

「うーん……ねぇ、ムロタン、マホ。」
「はい?」「なんですか?」
「私の代わりに2人のどっちかがマーサー王国に行ってくれない?」
「「!?」」

やっとの思いで権利を死守したタケが辞退したものだから、後輩2人はビックリ仰天だ。
その言葉の真意をまず知りたくなってくる。

「どうしてですか!?タケさん、やっぱり怖くなったんですか?」
「そんなんじゃないよ! ただ、今の私じゃ戦力にならないと思ってね。」
「「?」」
「ほら、何発も銃に撃たれたから本調子じゃないんだ……」
「「あ……」」
「万全でも勝てるかどうか分からない相手に、こんな身体じゃ挑めないよ。
 番長に、帝国剣士に、KASTのみんなに迷惑はかけたくない。
 でも2人なら二、三日寝たら回復するはず。 だったら力になれると思うんだ。」
「「……」」

タケの言うことはもっともだし、新人にとってはこれ以上無いチャンスでもあった。
この機を逃したら次に大舞台に立てるのはいつになるか分からないだろう。
それでも、2人は首を縦には振らなかった。

「行けないよね、マホ。」「うん。」
「どうして!?2人は十分強いじゃないか。絶対活躍できるって!」
「ダメですよ。私たちは負けたんですから。」
「ムロタンの言う通りです。 修行をやり直します。」

ルールはルール。敗北した以上は身を引く潔さは立派だった。
でも、それではタケが困るのである。

「ちょっとちょっと!今回はアンジュから4人が出撃することになってるんだよ!?
 これだとカナナン、メイ、リナプーの3人で行かなきゃならないじゃないか!」
「もう1人、いますよ。」
「!」

マホの言葉を聞いて、タケはハッとした。
タケも認める新人番長には、あともう1人残されていたのだ。

「私とマホは負けたからマーサー王国にはいきません。約束ですからね。でも……」
「そうか!リカコは負けていない!」

124名無し募集中。。。:2016/03/04(金) 23:23:06
タケはマイミのような回復力は持っていなかったか・・・

125名無し募集中。。。:2016/03/05(土) 01:49:16
もしや…帝国剣士が出払った帝国に警備の名目で入りフク王とイチャイチャするのが目的だったりして?w

126名無し募集中。。。:2016/03/05(土) 11:45:57
ノリ#・ 。・リ

127 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/07(月) 02:29:59
各国での準備も終わり、合同作戦会議の当日。
モーニング帝国からはQ期3名と天気組5名の計8名がマーサー王国に向かうこととなっていた。
新人は緊張で何も出来なくなることが想像できるので
会議の場に連れてくる意味は薄いと考えての人選なのである。
だが、実際のところは先輩らもガチガチに固まるほど緊張していた。
マーサー城の控え室に着いたは良いものの、妙にソワソワしている。

「どうしようハルナン、緊張で吐きそう。」
「アユミンも?私だって指が震えてるよ。」
「えー?だってハルナンはキュートさんの訓練について行ったことがあるんでしょ?」
「だから尚更よ……もう二度とあの空間にはいたくない……」
「うわぁ……」

緊張の原因はレジェンドとも言える存在である、キュート戦士団だった。
もともとマーサー王国は食卓の騎士が守護していたのだが、
そこからベリーズが抜けたために現在の主要騎士はキュートの5名のみ。
少ないように見えるが、その一人一人が団長マイミと同じくらいの実力を備えているのである。
帝国剣士が緊張するのも無理はないと言えるだろう。
そんな張り詰めた空気の中、帝国剣士に遅れてアンジュ王国の番長4名が到着する。

「あ!カナナンとリナプー、それにメイもおるやん!」
「ということはもう一人は……」

知った顔が次々と現れたので帝国剣士らはホッとした。
以前、共に戦った者同士なので心強く思っているのだ。
あの事件以降、カナナン、リナプー、メイ、タケの4人とはちょくちょく会っているため
近況などを言い合って緊張を解いていくのも良いかもしれない。
ところが、タケだと思っていた4人目は実はタケではなかった。
もっと脚が長くて、もっと大人っぽい顔をしている女性だったのだ。

「背高っ!誰!?キミ!」

大きなリアクションで驚くカノンに対して、4人目は自己紹介をしようとしたが
慌ててカナナンがその子の口を塞ぎだす。

「あははは、この子はリカコって言うてな、ウチの新人やねん。」
「新しい番長ってこと?」
「そういうこと。まだ14歳の入りたてピチピチやで。」
「えー!?見えない!」

確かに理科番長リカコ・シッツレイのルックスは、実年齢を言われなければ分からない程に大人びていた。
絵画のモデルを務めるほどの美貌でもあるため、帝国剣士らは息を飲んでリカコを見つめている。
手が速いハル・チェ・ドゥーも、声をかけずにはいられないようだった。

「君みたいな子の血でも吸えたら僕の貧血も治るんだろうなぁ・・・・・・ねぇ、吸ってみてもいい?」

第一部でも言ったような台詞を恥ずかしげもなく吐いたので、帝国剣士らは呆れてしまった。
それでも初見のリカコには効果覿面。
口をカナナンに塞がれているので身振り手振りで感情を伝えようとするが、
その両手もメイとリナプーに抑えられてしまった。

「あなたはジェスチャーするの辞めておきなさい。」
「ごめんね。でもこれもリカコのためだからね。」

後輩の行動を寄ってたかって制限する先輩番長らに、ハルはキョトンとした顔をする。

「あの〜あんたら、何やってるの?」
「いや、これは気にせんといて。」

128 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/07(月) 02:33:33
>>125

ノノ∮‘ _l‘)<!

ノハ*゚ ゥ ゚)<新人4人は置いていきましょう

ノノ∮‘ _l‘)シュン

129 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/07(月) 12:57:10
「みんなもう来てたのか!感心だな。」

控え室の扉をマイミが開いたものだから、帝国剣士と番長らは一気にピリッとする。
歓迎ムードゆえにマイミは嵐のような殺気を抑えてはいるのだが、
それでもやはり伝説を前にしてリラックスすることなど出来なかったのだろう。
他の人よりはほんの少しだけ耐性のあるハルナンが声をかけるのがやっとだった。

「あの、マイミ様……打ち合わせはまだ先のはずですが、何の用でいらっしゃったのですか?
 キュートの皆様はギリギリまで休んでもらっても良いんですよ?」

じゃなきゃ自分たちの身体がもたない、といった本心まではハルナンも口に出さなかった。
出来ればキュートと顔を合わせるのは会議の場だけであって欲しいと思っているのだ。
だがマイミもここに来るだけの正当な理由を持ち合わせていたようだ。

「会議の前に伝えておきたいことがあってな。」
「伝えておきたいこと?……」
「実はオカールのヤツの機嫌が相当悪いみたいで……誰彼構わず当たり散らすかもしれないんだ。」
「!?」

オカールと言えばキュートの中で最も凶暴だと言われている狂戦士。
常に飢えており、全方位に噛み付かんとするその姿勢は脅威だ。
そんなオカールの虫の居所が悪いなんて聞いたものだから、一同は震え上がってしまう。

「ま、まぁ安心してくれ!君たちが刺激しなければ何もしないはずだ。
 もしも不当に暴行を働こうとしたならば、私が身を挺して護ると約束する!」

マイミがそう言うまでもなく、帝国剣士と番長にはオカールにどうこうする度胸など無かった。
あれだけ恐ろしいクマイチャンやモモコと同格の戦士にちょっかいかけるなんて、想像しただけで恐ろしすぎる。
出来れば平穏に、波音立てずに終わらせたい。誰もがそのように思っている。
しかし、そう上手く行きそうにはなかった。

「ごめんなさい!遅れました!」
「KAST……3名、今到着しました!」

このタイミングでKASTらが部屋に入ってきた。
トモ、サユキ、カリンは全員が全員汗ダクで、急いでここまで来たというのが伝わってくる。
だが何かがおかしい。
ここに来ると聞いていたメンバーが1人見当たらないのだ。

「あぁ、会議はまだだから気にしないでくれ。 遅刻なんかじゃないぞ。」
「それが……それが……」
「そんな青い顔をしてどうしたんだ?」
「アーリー・ザマシランが遅刻するかもしれないんです!
  途中ではぐれちゃって……どれだけ急いでも開始時刻には間に合わないかも……」

報告したサユキも、その仲間であるトモとカリンもこの世の終わりのような顔をしていた。
キュートも参加する会議に遅刻するのだから、絶望するのも当然なのだろう。
そして、KASTだけでなくモーニング帝国剣士や番長らも恐れた顔をしている。
その上。マイミですらも神妙な顔をし始めてしまった。

「まずいな……このままだとオカールは確実に激怒するぞ……
 そうなったら私でもヤツを止められないかもしれない……」

130名無し募集中。。。:2016/03/07(月) 15:40:52
自分も遅刻魔なのにw

131名無し募集中。。。:2016/03/07(月) 21:49:31
オカールのキャラ的仕上りがw
ほかのメンバーもさらに気になってきたw

132名無し募集中。。。:2016/03/07(月) 22:18:43
なんかもう食卓の騎士がみなぶっ飛んだ性格になってるw月日がたつのは恐ろしい・・・

133 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/08(火) 12:58:15
アーリーが到着する前に会議の時間がきてしまった。
このまま待ち続けてもしょうがないので、一同はマイミの案内で作戦室へ向かうことにする。
正直言ってこれから出会うキュートが怖くて仕方がないが、この場面でビビったら何も始まらない。
勇気を振り絞れば乗り切れると信じて、扉を開けていく。

「遅くね?」

部屋に入った瞬間、帝国剣士と番長、そしてKASTらは獣に食い千切られるような激痛を感じだす。
瞬間的に狼が飛びかかり、腕に、脚に、腹に、そして首に噛み付くかのような「錯覚」。
これはオカールの放った殺気なのだが、
イメージやオーラと呼ぶにはあまりにもリアルすぎていた。

「こらオカール!せっかく来てくれたみんなになんてことをするんだ!」
「あ、そいつらがモーニングやアンジュの戦士なの?
 ……この程度の殺気でビビるようじゃ戦力にならなくない?
 今は恵まれてるよな。このレベルで国の代表を気取れるんだから。なぁ?」

キュート戦士団の一員、オカールの発言に一同はプライドを著しく傷つけられた。
しかしだからと言ってどうすることも出来やしない。
反抗でもしようものならば、更に噛みつかれることが目に見えているからだ。
そんなオカールを止められるのは、同格の戦士しかいない。
同じくキュート戦士団の1人であるアイリが抑えようとする。

「ダメですよ〜オカール。 これでもベリーズを倒すために立ち上がってくれた戦士なんですから。
 ここで心まで折ってしまったら、本当に使い物にならなくなるじゃない。」

口調こそオカールよりは丁寧だが、ひどく冷たい目をしている。
帝国剣士その他を認めていないのは明らかだ。
だが一同はオカールとは違う意味でアイリに反論することが出来なかった。
全員が全員イナズマに打たれたかのように、彼女の魅力にシビれてしまっているのである。
一目見るだけで、少し声を聞くだけで身体に電流が走る。
アイリを目指して戦士を志したトモ・フェアリークォーツは、特に痺れているようだった。

「ううっ……この下腹部がバチバチする感じが堪らない……癖になりそう。」

話は変わるが、この部屋にはオカールとアイリ以外にもう1人のキュート戦士団員が存在している。
ただ、そのメンバーは人見知りがひどいためになかなか中心に来ようとはしない。
ずっと隅っこにいようとしているのだ。

「おいナカサキ!お前もこっちに来たらどうだ。」
「ちょっと団長!そんな簡単に名前を呼ばないでよ!大勢に見られたら緊張しちゃうでしょ……」

マイミの「嵐」、オカールの「狼」、アイリの「雷」のようにナカサキだって特有の殺気を放っていた。
ところが、彼女のオーラはあまりにも特別。
珍妙すぎるイメージに、若い戦士らは驚愕してしまう。

「え?……なにあれ?」

134 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/08(火) 12:59:14
前作からキャラ変している登場人物も多いとは思いますが、
マロほど性格が変わったキャラは居ないと思いますw

135名無し募集中。。。:2016/03/08(火) 13:39:50
ナッキーだけはnkskちゃんのままだったかw

136名無し募集中。。。:2016/03/08(火) 19:22:17
下腹部バチバチあかんやろ…

137 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/09(水) 12:57:20
ナカサキの隣に妖精なのか怪物なのか分からない奇妙な生物がいるのを、一同は見逃さなかった。
怪物とは言ってもまるで凶暴そうではなく
少し押せば倒れてしまいそうな程に貧弱に見える。
こんな動物はこれまで目にしたことがないので
おそらくはナカサキの放つオーラによって具現化されたものだと推測できるが
他の食卓の騎士のそれと比較するとあまりにも弱々しく、威厳が感じられなかった。
その怪物を見慣れているのか、マイミは一切触れずに別の話題を持ち出す。

「そういえばマイマイはどうしたんだ? もう会議が始まるというのに……」
「マイちゃんはここには来ないよ……もう戦えないんだ。」
「えっ!?」

オカールの発言に、マイミだけでなく他の戦士たちも驚いた。
マイマイと言えばキュート戦士団の中で最年少の戦士。
引退にはあまりにも早すぎる年齢だ。

「どういうことなんだ?」
「アンタは帝国とかに行ってたから分からないかもしれないけどさ、
 マイちゃんはメンタルをやられちまってるんだよ……ひどく落ち込んじゃって、もうずっと寝込んでる。
 とてもじゃないけど、当分は戦えないんじゃないかな。」
「そんな!!」

考えてみれば当然のことだった。
これまで仲間だと信じていたベリーズに裏切られ、更に王までも攫われている。
絶望するなと言う方が無理な状況なのだ。
伝説の存在とは言え、二十歳前の女の子には少々キツかったのだろう。

「あの……ちょっといいですか?」
「どうした?ハルナン。」

全員が沈んでいるところに、ハルナンが発言を投げかけ始める。
はじめはみな、空気が読めていない行動だと考えたが
次に続く言葉を聞いた何人かは意図を掴み取ったようだ。

「キュート戦士団からはマイミ様、ナカサキ様、アイリ様、オカール様が本日の会議に参加されるのですね。
 で、マイマイ様が欠席ですか。」
「あぁ、そうなるな。」
「モーニング帝国剣士は新人4名を除いた8名が参加します。 連絡が遅れて申し訳ございませんでした。」

この状況でハルナンが状況を報告することの意味をカナナンは理解した。
番長の責任者として、自分も報告を開始する。

「アンジュからは私カナナン、リナプー、メイ、リカコの4人が来ています。
 タケ、マホ、ムロタンの3名は防衛任務のため欠席させていただきます。
 同じく報告が遅れてすいませんでした。」
「お、おう……」

報告を受けたマイミだけでなく、その後ろにいるオカールも「欠席」するメンバーがいる事を受け入れているのを見て、
カナナンは心の中でガッツポーズをした。
マイマイが不参加である以上、「欠席」自体は責められることのない正当な行為なのだ。
となればKASTの責任者トモがやるべきことは見えてくる。

(そうか!アーリーも欠席ということにすればいいんだ!)

オカールは若手が欠席すると知ったら激しく怒るだろう。
先ほど見せた殺気を遥かに上回った殺意を振りかざすかもしれない。
でも、欠席だったら許してもらえるのは明らかだ。
ならばその線で押し通すしかないのである。

「あ、あの!KASTからは……」
「ダメよ〜。嘘ついたらバチが当たりますよ〜」
「!?」

話そうとした矢先にアイリが割って入ったので、トモは衝撃を受けてしまった。
しかも今回は痺れる程度では済まない、まるで電気SHOCK!に撃たれたかのように苦しい。

「え!?う、嘘って……」
「あなた、これから嘘つこうとしませんでした?」
「そんな!アイリ様の前で嘘なんて!」
「ふぅん、その割には心臓が弱ってるみたいだけどなぁ」
「え!?ええ!?」

138 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/09(水) 12:57:58
>>136
不適切でしたね……やり過ぎないように気をつけます。

139名無し募集中。。。:2016/03/10(木) 01:43:37
今回のナカサキの能力はリアル本人のネタや特徴を能力化したものなのか、それとも
妖精のような怪物の元キャラの能力の影響を受けたものなのか・・・
そしてナカサキの能力面以外でもいろいろ気になることが・・・
それらのその時が来るのをおとなしく待っときますw

140名無し募集中。。。:2016/03/10(木) 08:12:32
幻獣キュフフかな?

141 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/11(金) 12:49:43
「あなたのお仲間も心臓バクバクみたい。KASTに何かあったんですかね〜?」

まるで心の中を見抜くかのような言い振りをするアイリを前にして、トモは何も言えなくなってしまった。
いや、トモだけではない。 アイリとオカール、ナカサキを除く誰もが動揺している。
マイミですら髪が額に張り付くほどの汗をかいていることからも、
今後起こりうることのヤバさが容易に想像できるだろう。

「おいおいおい!なんだよ!嘘をつこうとしてたってのか!?」

オカールの怒声を聞いた一同は、完全に縮み上がっていた。
狼に喉元を容赦なく噛み切られる思いをしているのだから、ここで元気に居られるはずがないのだ。
アーリーの遅刻を正直に話すのはマズいが、嘘が暴かれるのはもっとマズい。
その時にはイメージではなく、本当に首を斬られかねない。

「なに黙ってるんだよ!言えよ!全然ワケわかんねぇな!!
 騙そうとしてたのか!?だったら絶対に許してやんねぇ!
 どうなんだよ!おい!どうなんだよ!!」

だが本当に真実を打ち明けるべきなのか?
そうして制裁を受けた場合、自分たちの心が完全に折れてしまうのではないか?
トモがそう葛藤しているうちに、部屋の扉が開かれる。

「ごべんなざぃ〜〜遅れちゃいましたぁ〜〜!」

扉を開いたのは、最悪にも少しの遅れで済んでしまったアーリー・ザマシランだった。
いつもの美人顔が台無しになるくらいにひどく号泣している。
ここで一同は死を覚悟した。
もはや言い訳など通用しない。後はオカールの怒りをただただ受け入れるのみ。
ただの威嚇で首を搔っ切られるのだから、こうなれば骨まで残らないのかもしれない。
イメージで何回殺されようがじっと耐えよう。そう考えたのだ。
ところが、オカールのとった行動は想像を超えたものだった。

「お……おい、大丈夫か?」
「うぇぇぇぇん!ごめんなさい!本当にごめんなさい!」
「ほらほら泣かないで、いったいどうしたの?」
「あっちの方まで行っちゃったんです〜〜」
「あっちまで行っちゃったの?怖かったね〜もう大丈夫だからね〜」
「大丈夫?……」
「うん大丈夫大丈夫。落ち着いてきた?」
「ちょっと……」
「よし、もうひと頑張りだ。」

トモは、サユキは、カリンは、そして他のメンバーらは信じられないといった顔でポカンとしていた。
てっきり激怒して暴れ回るかと思いきや、オカールは泣き叫ぶアーリーをあやし始めたのだ。
普段から小さい子供に囲まれて生活するオカールから見れば、アーリーは大きい赤ちゃんのようなもの。
ならば泣き止むように努めるのは当然のことなのである。
そんな一面を知らず呆気にとられているトモの肩をポンと叩いて、アイリがボソッと呟く。

「だから言ったでしょ〜? 嘘はダメですよ、って。」
「は、はい!……なんか、自分が恥ずかしいです。」
「うふふ。気にしないで。」

142 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/11(金) 12:52:33
ナカサキに限らず、キュートの戦闘シーンはまだずっと先かもしれません。
戦うには同格の敵が出てこないといけませんしね。

143名無し募集中。。。:2016/03/11(金) 15:51:38
なんかほっこりした♪
Dマガで見たことあるシーンだw

同格の相手というと・・・

144名無し募集中。。。:2016/03/12(土) 10:51:50
ナカサキのオーラが出した怪物はきっと快獣ブースカw

145 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/14(月) 00:35:48
更新ストップしちゃってごめんなさい。
次回更新は月曜の夜頃になります

146 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/14(月) 23:51:24
アーリーを泣き止ませたところで、オカールはドカッと椅子に座り出す。
優しい先輩でいるのはここまでだ。
卓に着いてからは敵の殲滅のみを考える戦士の顔になっていく。

「全員揃ったわけだし、そろそろ作戦会議を始めようぜ。
 ベリーズをメッタ切りにするためのなぁ!!」

かつて共に戦った仲間に対してそんなことを言うオカールを見て、
「フクちゃんがこの場に居なくてよかった」とサヤシは心から思った。
食卓の騎士の大ファンである王にはとてもじゃないが聞かせたくない言葉だ。
だが、今のベリーズは英雄である以前に王を連れ去った大犯罪者。
オカールが苛立つのも無理もないかもしれない。

「……アイリが議長を務めろよ。頭良いんだろ。」
「はいはい、じゃあ何から話しましょうかねぇ。」
「んなもんベリーズのぶっ倒し方からに決まってるだろ!馬鹿か!?」
「……」

結局、進行はオカールによって強引に行われることとなってしまった。
だがこのテーマは若手戦士たちにとって非常に興味深いものだ。
怪物のようなベリーズを倒すための糸口が見えるかもしれない、そう思うと勇気が湧いてくる。
カナナンもヤッタルチャンなようだった。

「いいですねぇ、それではアンジュの詳細な戦力から紹介しましょうか。」
「アンジュの?あー、いい。そんなのはいい。」
「へ?でも誰がどれだけ強いか分からないと、作戦はたてられないんじゃないですか?……」
「そっか、まだ分かってないんだな。」
「?……」

オカールは立ち上がっては机をバン!と叩く。
そして一同の注目を集めたところでこう言い放ったのだ。

「作戦はこうだ。キュートの4人でベリーズ4人をぶっ潰す。
 残りのベリーズ2人をお前ら全員で死ぬ気で倒せ。
 キュートも余裕が有ったら助けてやる。以上。」

オカールの示した戦法はとてもSHOCK!なものだった。
キュートがベリーズと戦うくだりはまだ良い。
問題なのは帝国剣士、番長、KAST全員合わせてベリーズ2人分としか認めてもらえてない点である。
少なくともこの場には16人の優秀な若手が揃っている。
それらの力を総動員したとしても2人分だと言うのだろうか。

「はは……確かに言えてますね……」

ここで口を開いたのは帝国剣士のカノンだった。
とても不本意ではあるが、そう言わざる得ない理由があった。

「だって、仮にこの場でオカール様とアイリ様の2人を倒せって言われても全然イメージ湧かないもん。
 たぶん私たちのうちの何人かを犠牲にしないと戦いにすらならないと思う。
 それだけレベルの違う相手なんだよ……
 まだベリーズ2人を倒せるって言ってもらえるだけ好評価なのかもしれない。」
「お、よく分かってんじゃん。まぁちょっと違うけどな。」
「え?……」
「倒せるとは思ってない。よくて相討ちだろ。」
「!!」

一同は悔しくって悔しくってぶち壊したい夜がある程の思いだったが、
正論ゆえに何も言うことが出来なかった。
伝説同士の戦いに参加するだけでも奇跡なのかもしれない、そう思っていた。
しかし、1人だけはそう考えていない。

「違うぞオカール!」
「あぁ!?何言ってんだよ団長!」
「ここに居るみんなだって立派に戦える。やりようによっちゃキュートだって凌げるさ!」

147 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/15(火) 23:25:19
「……根拠はあんのか?」

悲しいかな、この場にいる殆どがオカールに同調していた。
キュートより活躍出来るとか言われても、所詮リップサービスにしか聞こえないのだ。
だがマイミの言葉に嘘は一つも無かった。

「我々キュートに無くて、彼女らに有るもの……それはなんだと思う?」
「は?そんなの有るワケねーだろ。 強いて言うなら若さか?」
「そう!彼女らには若さが……」
「なるほど!私たちと違ってベリーズに手の内を知られてないってことね!」
「……ん?」

答えようとした矢先にナカサキが割り込んできたので、マイミはキョトンとしてしまった。
これでは団長としての示しがつかないので、再度ビシッと言うことにする。

「違うぞ、元気ハツラツな感じが……」
「そうか、若い子たちの必殺技を波及的に当てれば流石のベリーズも倒れるはず。」
「……いや、アイリ、そうじゃないんだ。」

今度はアイリが言葉を被せてきたので、マイミもタジタジだ。
次こそは掻き消されないように、大声を出そうとする。

「若い力で!気合を!入れれば!……」
「そういうことか!!!じゃあ全員が必殺技を使えるように猛特訓しなきゃなあ!!!」
「……」

オカールまで大声で邪魔してきたのでマイミはひどく落ち込んでいく。
嵐のようなオーラもいつの間にか梅雨のようにジメジメしてしまっている。
だが、(マイミの本意ではないとは言え)敵に対抗する指針は見えてきた。
ベリーズが把握していない新世代の台頭こそが勝利の鍵となるのである。
ところが、当の帝国剣士や番長、KASTらは一抹の不安を感じていた。
キュートの作戦を実行するには明らかに不足しているものがあったのだ。

「あのっ、私たちを活用してくれるのは嬉しいのですが……
 必殺技なんて、使えない戦士の方が多いですよ?」

ハルナンの言葉に、若手らは頷いた。
ハル・チェ・ドゥーや、一部の実力を隠している者は既に必殺技を習得しているが、
全体で見たらまだまだ使えないメンバーの方が圧倒的に多いのだ。
そんな自分たちを必勝作戦の勘定に入れられては困るのである。
そんな一同を見ながら、オカールがまたぶっきらぼうに言い放つ。

「なんだよ、まだ分かってないんだな。」
「……何が、ですか?」
「やれって言えばやれ!必殺技が使えないんなら死ぬ気で覚えろ!」
「で、でも一刻一秒が惜しい状況ですし、特訓する時間なんて……」
「時間なら有るだろ。」
「えっ?」
「ベリーズの奴らを探しながら覚えるんだよ!
 アチコチ走り回りながら身体を鍛えろ!心を磨け!
 そしてベリーズを見つけたらすぐに必殺技をぶちかませ!
 分かったか!!」

148名無し募集中。。。:2016/03/16(水) 05:59:40
オカール超スパルタwでも前大戦を勝ち抜いただけ説得力あるわ…

149名無し募集中。。。:2016/03/17(木) 03:07:01
精神と時の部屋でキューティーサーキットが出来れば
たった1日でもかなりの成長ができるんだけどな

150名無し募集中。。。:2016/03/17(木) 06:20:31
時間があるなら帝国の地下を探索するって手もあるけど…まず生きて帰って来れないなw

151 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/17(木) 08:29:05
無茶だが無理ではない。
何よりも王を救うという目的を果たすにはそれしかないと理解していた。
全員が覚悟を決めたのを理解したナカサキは、一枚の地図を出す。

「探すと言ってもアテが全くない訳じゃないわ。
 目撃情報によると、ベリーズはアリアケに向けて馬を走らせている。」

アリアケ、そこは海に面した町であり、
コロシアムと言われる大型の闘技場があることでも知られている。

「船にでも乗って逃げられたら厄介なのよね……一気に捜索範囲が広がっちゃう。
 だから私たちはそれよりも早くベリーズを捕まえる必要があるの。
 会議が終わったらすぐに追いかけるけど、準備は出来てる?」

このナカサキの問いに対して頷かない者はいなかった。
大急ぎでアリアケに向かいながら、必殺技を覚える。
やる事はたくさんあるが、やるしかない。

「あ、でも待ってください。ナカサキ様。」
「なに?ハルナン。」
「モーニング帝国には4人のやる気ある新人が残されています。
 その子たちも必ず役に立つと思いますので、迎えに行っても宜しいでしょうか?」
「えっと、新人でしょ? 言っちゃ悪いけど戦力になるの?」
「ベリーズ相手は厳しいかもしれませんが、活躍の場は有るはずです。
 例えば、モモコの部下と思われる少女たちを抑えるとか……」
「なるほど、団長が言ってた例のカエル使い達ね。」

連合軍の敵はベリーズだけではない。 リサ・ロードリソースら「モモコ一派」もその対象なのだ。
もしも彼女らに妨害されたらベリーズと戦うことすらままならない。
そこで新人の力が活かされるのである。

「でも大丈夫? カエルを見て腰を抜かしてたんじゃなかったっけ。」
「そこは頑張って克服してもらいますよ。」
「そんな時間どこにあるの?」
「決まってるじゃないですか。"ベリーズを探すまでの時間"です。
 多少厳しくはなりますが、ショック療法で動物大好きっ娘。に育て上げて見せますよ。」

152 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/17(木) 08:30:24
密度濃い特訓をするのは重要ですが、地下は濃すぎますねw

153名無し募集中。。。:2016/03/17(木) 18:09:29
地下は色んな意味で濃そうだw
ウィザードリィで言えばB1でいきなりグレーターデーモンの群れに遭遇するようなもんだしなぁw

154名無し募集中。。。:2016/03/17(木) 22:14:16
むしろ死神に遭遇するレベルじゃね?
殺すなと先に言っておかないと即死確実

155名無し募集中。。。:2016/03/19(土) 23:16:28
ガキダナーの中の人が新曲で「子供だね」ってw

156 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/20(日) 10:46:37
そうなんですか!これからひなフェスなので意識して聞いてみますw
今日の更新もチャンスが有れば会場から……

157名無し募集中。。。:2016/03/20(日) 13:24:58
外伝を書きたいがネタを作者さんが伏線や隠し玉にしてる可能性を考えると迂闊に書けないw
あと半年くらいは様子みないとだな

158 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/20(日) 18:49:30
すいません、諸事情で更新はまだ先になります。
今夜中には書きます。

>>155
このシーン見ましたw
結果的に名前の由来が増えましたね。

>>157
被りとか気にせず是非書いてください!
たとえ被ったとしても、本編を変更することは無いと思いますしね。

159 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/20(日) 22:57:28
その後も会議は続き、必要な情報が出揃ったところでマイミが立ち上がった。
もうさっきのようには凹んでいない。 総大将らしき凛々しい顔をしている。
最後の仕上げとして全員を鼓舞する役割が彼女には残されているのだ。

「各国からこれだけの精鋭が揃ったんだ。私達なら絶対にやれる!
 踊るように、歌うように、熱狂しながら戦おうじゃないか!」
『Dancing! Singing! Exciting! オー!!』

鬨の声をあげた結果、戦士たちのテンションは最高潮に達した。
まだまだ課題は多いが、この分ならやり遂げることが出来るだろう。
熱が冷めないうちにアンジュの番長やKASTらはアリアケへと向かう準備を始める。
マイミだってそのつもりだ。

「頼もしいな!よし、私もすぐに馬を手配して……」
「あのー」
「なんだ?君は確か……」
「マーチャンです。」

このタイミングでマーチャン・エコーチームが声をかけてきたのでマイミは驚いた。

「どうしたんだ? 早く行かないと置いてかれるぞ?」
「えっと、キュートさんの武器、ボロボロじゃないですか?」
「!」

マーちゃんの指摘にマイミだけでなく、ナカサキやアイリ、オカールもピクッとする。
これは武器を悪く言われて怒っているわけでは決して無い。
職人でもなければ気づけない痛みに着眼したことについて関心しているのだ。

「よく分かったな。確かに我々の武器は手入れが行き届いていない。
 メンテナンスがまったく出来ない状況にあるんだ。」
「どーしてですか?やればいいのに。」
「ははは、そうだな。やればいいだけだな。だがそういう訳にもいかないんだ……
 この武器は特別製でね、『彼女』以外が調整するのは難しいようになってるんだよ。」
「?」
「『DIYの申し子』のことを知ってるかな?」
「あ!……でもその人って!」
「そう、申し子とはベリーズ戦士団の『チナミ』のこと……悔しいが、我々の敵だよ。」

160名無し募集中。。。:2016/03/20(日) 23:09:55
チナミwwたしかによく里山出てたな
はるなんもけっこう出てたよね

161名無し募集中。。。:2016/03/20(日) 23:25:30
そっかチナミも敵なんだな…武器が修理出来ないのは辛いな
てかマイハは今回の件に絡んでないのか?薬師も向こう側だとマイミ以外の怪我も治すの大変なんだな

162名無し募集中。。。:2016/03/21(月) 01:33:05
DIY♡のメンバーかつプライベートで少しだけDIYやってたことがあるらしいナカサキもさすがに職人チナミの武器には歯が立たなかったか
まぁSATOYAMAではDIY方面の活躍は全くなかったもんな
そして千奈美はDIY人員として大活躍してたな
配役の妙恐るべしw

163名無し募集中。。。:2016/03/21(月) 01:47:21
ピザ窯を作ったのにピザを食わせてもらえず未だに恨んでいる人がいるらしい…

164名無し募集中。。。:2016/03/21(月) 03:34:59
マロ・・・

165 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/22(火) 07:42:48
ベリーズ戦士団のチナミは本人の技術力もさることながら、
数多くの職人たちを取りまとめる「棟梁」としての面も評価されていた。
持ち前のコミュニケーション能力によってどんな気難しい職人とも心を通じあわせることが出来るため、
自国で製造される武器の品質を加速的に向上させることに成功していたのだ。
だが今のマーサー王国にはチナミはもういない。
食卓の騎士の武器の整備についてはチナミに一任されていたので、
たとえ故障したとしても簡単に修繕することが出来ないのである。

「こんなボロでも私たちにとっては使いやすいんだ。
 新品の既製品を使うよりずっとね。」

そう言うとマイミは自身の愛用するナックルダスターをじっくりと見せてくれた。
確かに優れた造りではあるが、食卓の騎士の戦いについてこれず、あちこちダメになっている。
これでもキュートが強いのには変わりないが、ある程度はパフォーマンスが落ちるだろう。
それは良くないと思ったマーチャンが、ある提案をする。

「キュートさんの武器、マーチャンが見ていいですか?」
「?……君なら治せるというのか?」
「たぶん。」

マーチャンがそんなことを言うものだから、近くで見ていたハルはギョッとする。
そして慌てて止めに入るのだった。

「マーチャンなに余計なこと言ってるんだよ!
 すいません皆さん、この子の言うことは気にしないでください……」

ハルが必死にフォローをしたがもう遅い。
話の全てをオカールに聞かれてしまっていた。

「面白いじゃんか。ちょっとだけ待ってやるから修理してみな。
 ただし、キュートの時間を奪ってるってことは自覚しろよ?
『やっぱり無理でした』じゃ済まないことは分かってるよな?」
「……はい。」
「よし、よく言った。じゃあ案内してやるよ。
 もう使われていない『ベリーズ工房』にさ。」

166 ◆V9ncA8v9YI:2016/03/23(水) 08:40:34
マーサー王国きっての武器開発施設である『ベリーズ工房』にて、
マーチャンはキュート戦士団らの武器を修理することになった。
許された時間はたったの1時間。
期限内に完了しなかった場合、たとえ作業途中でもキュートは出発を開始することとなっている。
そうでなくてはベリーズらを取り逃がすかもしれないのだから、当然だろう。
そして、そうなった時はマーチャンがどんな罰を受けるのか想像するのも恐ろしい。
そのため、新人剣士を迎えに城へと戻るハルナンを除いた残りの帝国剣士らは、マーチャンを見守ることにした。
いざという時は身を挺して仲間を守る思いなのだ。

「それで、私たちKASTと番長たちが先にアリアケに向かうことになったワケか。」

馬を走らせながら、トモ・フェアリークォーツが喋っていた。
番長であるカナナン、リナプー、メイ、リカコと
KASTであるトモ、サユキ、カリン、アーリーの使命はいち早くアリアケに到着してベリーズを見つけ出すこと。
もちろん交戦となった場合は命を懸けなくてはならない。
恐ろしいが、やるしかないのだ。

「なんか変な感じだね、あの時の敵同士がこうして肩を並べて走ってるなんてさ。」

サユキは、数ヶ月前の選挙戦で直接対決したリナプーを横目で見ながらぽつりと呟く。
両陣営は当時、フク側とハルナン側に分かれて激しい戦いを繰り広げていたのだから、
今、同盟国として目的を共にするのは確かに奇妙な感じもする。
声をかけられたリナプーも、サユキを不思議そうな顔をして見ていた。

「最近のお猿さんは馬に乗れるんだ……!」
「いつか本当に潰すからな。」

元は敵だった者同士のやり取りがとても可笑しかったのか、
メンバーのうちの一人が声をあげて笑い出してしまった。

「んんんんんんんんんん^o^」
「「「「!?」」」」

奇怪な声が聞こえてきたので、KASTの4名はひどく驚いた。
突然の敵襲かもと思い、警戒して辺りを見回していく。

「い、いまの奇声は!?」
「あー、いや、なんでもないねん。」
「ぶひ。」
「黙ってなさい。」

167名無し募集中。。。:2016/03/23(水) 11:25:12
もしや…いまだセリフの無いあの子か?w

168名無し募集中。。。:2016/03/23(水) 23:04:48
石鹸がうんたらの子だっけ?


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