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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】
1
:
名無しさん
:2004/11/27(土) 03:12
コソーリ書いてはみたものの、様々な理由により途中放棄された小説を投下するスレ。
ストーリーなどが矛盾してしまった・話が途切れ途切れで繋がらない・
気づけば文が危ない方向へ・もうとにかく続きが書けない…等。
捨ててしまうのはもったいない気がする。しかし本スレに投下するのはチョト気が引ける。
そんな人のためのスレッドです。
・もしかしたら続きを書くかも、修正してうpするかもという人はその旨を
・使いたい!または使えそう!なネタが捨ててあったら交渉してみよう。
・人によって嫌悪感を起こさせるようなものは前もって警告すること。
175
:
</b><font color=#FF0000>(4t9xw7Nw)</font><b>
:2005/03/28(月) 03:54:24
以上、はねる番外編でした。
>>ブレス様
ちなみにこの日博が秋山達と一度も話さなかった理由はどうとでも受け取れるので(本当にケンカしてたか、『黒』絡みで何かあったか)
そちらの展開に合わせる事も出来ると思います。
色々勝手に設定創っちゃってますが、何か問題があったら本スレ投下は見合わせますので。
176
:
ブレス </b><font color=#FF0000>(F5eVqJ9w)</font><b>
:2005/03/28(月) 08:10:56
>>172-175
はねる番外編拝見させていただきました。
こちらから話を繋げられそうな感じなので是非とも本スレ投下してください。
物凄く楽しませていただきました。
177
:
名無しさん
:2005/04/03(日) 23:49:23
『此方追跡者。ターゲットが建物に入って行った。この倉庫の規模を知りたい。
空からの情報を教えてくれ僕の天使―』
『此方天使。この建物は今は使われていない模様。天井が剥げ落ちてボロボロです。
屋根に降りて偵察を続けます。ストーカー、其方はどうで―』
『だからさ〜しずちゃん。俺はストーカーじゃなくって追跡者なんだってばー』
『だって山ちゃん自分でもストーカーだって認めてるやん』
『顔だけでしょ〜?見た目だけで人を判断しちゃいけないなぁ〜しずちゃん』
『あー…携帯の電源切れそう』
『え?嘘でしょ?ちょっと待ってよ、それじゃ尾行続けらんないじゃん』
『さっきあったコンビニで充電してくるわ』
『あとちょっとなのにもー!!待ってよしずちゃーん』
石の能力スレで出て南海キャンディーズの能力で何となく思いついた会話。
今日テレビ出てたので思いつきで適当に…
178
:
名無しさん
:2005/04/04(月) 03:04:06
>177
とても面白いです!二人の声が聞こえてきそうなリアルさw
この二人が出てくると、どんな状況でも笑いになりそうで良いですね。
ぜひ本スレでも南キャン登場に期待したいです。
179
:
</b><font color=#FF0000>(4t9xw7Nw)</font><b>
:2005/04/27(水) 01:19:30
書き始めたもののどうしても続きが書けずに放置してた南キャン話(結構暗め)一応書けてるとこまでここに投下してもいいかな、と呟いてみるテス(ry
180
:
名無しさん
:2005/04/27(水) 16:09:54
是非落として欲しいなと言ってみるテスト
181
:
名無しさん
:2005/04/27(水) 17:36:35
物凄く読みたいが石の能力スレにも
南キャン書いてるのがいるなと言ってみるテスト。
182
:
名無しさん
:2005/04/27(水) 18:02:19
>>181
>>179
をよく読め。「続きが書けずに〜」って言ってるだろ。
それに能力スレのヤシはM-1絡みの話を書くらしいから大丈夫だとオモ。
バトロワみたいに芸人によって書き手が決まってる訳でもないしな。
183
:
名無しさん
:2005/04/27(水) 21:46:57
見てみたいです!
184
:
名無しさん
:2005/04/30(土) 00:54:29
>179
ぜひぜひ!楽しみにしてます。
185
:
</b><font color=#FF0000>(4t9xw7Nw)</font><b>
:2005/05/03(火) 23:31:20
〈Snow&Dark〉
〜ふゆのはじまり〜
――あるひのことです。
あくまたちが、ひとつの かがみを つくりました。
うつくしいすがたは みにくく、わらいがおは なきがおに うつる、あべこべかがみ でした――
「――しずちゃん俺の事嫌いでしょ」
きっかけは、よく憶えていない。
相方が「もうすっかり冬だねぇ」とかそういう事を話していたのは憶えているのだけれど、上の空で相槌を打つだけだったせいで、どういう話の流れでそんな言葉が出たのかは思い出せなかった。
相方がどんな声音でその言葉を口にしたのかさえ、定かではない。
真面目な口調だったのか、半分ふざけていたのか、それとも苦笑混じりだったのか。
――だから。
「……まぁ好きでない事だけは確かやな」
「ひでぇ…嘘でもいいから『そんな事ない』とか言って欲しかったんだけどな」
悪目立ちする赤い眼鏡を外し、しかめっ面で右目を擦っている山里が、やけに大袈裟な口調で呟く。どうやら目に何かゴミが入ったらしい。
その言葉を華麗に無視しつつ、隣に座る相方をジロリと一瞥して山崎は溜め息をついた。
(ここまで落差があるとある意味怖いな……)
眼鏡を外した山里は、少々殺し屋じみた目をしている事を除けば案外普通の顔立ちだ。
普段彼がキモいだの何だのと言われる原因の五割以上はその眼鏡にある――ついでに言うと、残り五割の大半はその髪型が占めている――と、山崎は思っていた。
もう一度隣の相方の様子を窺ってみると、結局目のゴミは取れないままなのか、眼鏡は掛けたものの釈然としない顔だ。
ついでに壁に掛けてある時計で時刻を確認して、あと5分ぐらいでスタッフが呼びに来るだろうか、と予想する。
この街独特のせっかちさとは無縁の緩やかな空気が流れる中、首に巻いた赤いスカーフを何とはなしに触りながら、山崎はふと窓の外に視線を向けた。
強い風に吹かれ、葉を落としていく街路樹が見える。
――冬は、まだまだこれからだ。
186
:
</b><font color=#FF0000>(4t9xw7Nw)</font><b>
:2005/05/03(火) 23:37:52
>>179
の南キャン話、序章だけですがとりあえず投下。
一番最初の文、分かる人には思いっきりこのあとの展開のネタバレなんですが、とりあえず気付かない振りをしてくださいorz
とりあえず一区切り出来るところまでは書けてるので、少し手直して投下します。
187
:
名無しさん
:2005/05/05(木) 12:33:24
すごく面白いです!こういう南キャンもいいですね。
次回楽しみにしてます。
188
:
名無しさん
:2005/05/07(土) 10:53:01
その最初のとこ分かる人的には次どうなるか気になります。
・・・山ちゃんは氷の女王に誘k(ry
189
:
</b><font color=#FF0000>(4t9xw7Nw)</font><b>
:2005/05/20(金) 04:49:08
〜ふぶきのよかん〜
時間が流れるのは早いとよく言うけれど、ここ最近の自分の周りは特にそうだった気がする。
冬の始まりがつい先日のように思い出せるのに、もう寒さの一番厳しい時期だ。
木々はすっかり葉を落とし、枝を冷たい風に晒している。
年が明けて一月余り経ち、すっかり普段に戻った街並を、山崎は楽屋の窓からほんやりと眺めていた。
年末の一大イベントで上位に喰い込んで以来、大阪での仕事だけでなく東京での仕事も大幅に増えている。
それは勿論喜ばしい事なのだが、急に――仕事だけが原因ではなく――慌しくなった日々には大きな戸惑いを感じていた。
抗えない大きな流れに否応なく流されていく事に、柄もになく焦りと苛立ちが募っていく。
「…………」
楽屋には、先程から長い沈黙が訪れていた。
普段なら山里が――ほぼ一方的に――喋り掛けてきたりするのだが、今日は手元の雑誌に視線を落としたまま何も言わない。
最近不意に流れるようになった沈黙の時間。ほんの微かに感じる、違和感。
延々と沈黙が続く楽屋は余り居心地が良いとは言えないのだが、かといってこちらから沈黙を破るのも憚られた。
チラリと壁掛け時計を見てみると本番まではまだ時間がある。
何となくじっとしているのが辛くなった山崎は、零れ掛けた溜息を押し込めるようにわざと音を立てて椅子から立ち上がった。
そのまま部屋から出ようとして、無言のまま出て行くのは悪いと思い振り返る。
「……ちょぉ出掛けてくるわ」
「行ってらっしゃ〜い」
山里は振り返らず頭の横でひらひらと右手を振った。
どこか気障ったらしくも見えるその仕草は、いかにも彼らしい……と思えるのだが。
――刺さって抜けない棘のように、何かが引っ掛かっている――
190
:
</b><font color=#FF0000>(4t9xw7Nw)</font><b>
:2005/05/20(金) 04:53:07
――カツン。
厚めの靴底が、少し大きめの足音を立てる。
他の出演者たちはそれぞれ楽屋で寛いでいるのか、広い廊下には人通りがほとんどない。
のんびりとした足取りで数メートルほど歩いた山崎は、ふと立ち止まると押し込めていた深い溜息を零し、俯いた。
(……右を向いても左を向いても諍いだらけ、ってのがこんなに辛いとは思わんかったわ)
ここ最近芸人の間で繰り広げられている、異能の力を持つ石を巡る争い。
『白』や『黒』に大した興味はないのに、周りが放っておいてはくれない。
石を狙う『黒』の人間に襲われた事も何度かあるし、他の芸人が争っているところに遭遇した事もある。
興味がないからといって、どちらにも付かない今の自分達が宙ぶらりんのとても不安定な状態である事を
理解していないわけではないけれど――『白』や『黒』、そしてそもそもの原因である『石』に関する知識が
足りない状態でどちらに付くか決める事も、余りに危険な賭けとしか思えなかった。
いや、それは言い訳にすぎないのかもしれない。巻き込まれたくないから、自分たちのペースを乱されたくないから、
逃げているだけなのかもしれない。
――でも、もう少しだけ。もう少しだけでいい、このままで居る事を許して欲しい。
191
:
</b><font color=#FF0000>(4t9xw7Nw)</font><b>
:2005/05/20(金) 05:15:01
そう誰にともなく許しを請うたあと、ふと随分長い間立ち止まっていた事に気付いて、山崎は顔を上げた。
何かを振り払うようにゆるゆると頭を振って、再び歩き出す。
(……全快にはまだまだ程遠いな……)
今日は朝からそうなのだが、時折薄い靄が掛かったように思考力が鈍る。
気を抜くと、ぼんやりしてしまったり取り留めのない考えに浸ってしまう。
理性を失って暴走する程ではないが、限界まで石の力を使った副作用だ。
無意識に、首のスカーフ――正確に言うと、その内側にあるペンダントのチェーン――に触れ、その存在を確かめる。
この短い期間で、すっかり癖になってしまった仕草だ。
天使の翼を模したペンダントヘッドの中央には、赤味がかった褐色の石が填まっている。
嘘のような話だが、ファイアアゲートという名前の高価なものらしいこの石
――その時はまだ、流線型にカットされただけの加工前のものだった――は、偶然拾った財布を交番に届けた時、
偶然その交番に来ていた持ち主がその場でお礼にとくれたものだった。
遠慮したにも関わらず半ば強引に渡され、仕方なく受け取った石だったが……この石が自分に与えた力を思えば、
もしかしたらそれは必然と呼べるものだったのかもしれない。
(普通の宝石やった方が、まだ素直に喜べたかもしれんのにな……)
光を当てると水の波紋のような文様が浮かび虹色に煌く美しい石は、自分の心の中にあった、ちょっとした願望を
叶えてくれる能力を持っている。
だたそれだけなら、自分は得体の知れない力を気味悪がりつつも大いに喜んだだろう。
だが、望まぬ争いに巻き込まれた今は傍迷惑だという思いの方が強かった。
エレベーターホールに着きパネルの表示を見てみると、二機のエレベーターは二つとも一階に停まっている。
一瞬の逡巡のあと、山崎はエレベーターで降りる事を諦め階段の方へと向かう事にした。
このままエレベーターを待つより階段で目的の階まで降りた方が早いだろう、という判断もあったが、それ以上に、
軽い運動でもして少しでも苛立ちと頭に掛かる靄を晴らしたかった。
自分の中だけで抑え切る自信がないわけではないが、万が一相方に八つ当たりして本気で怪我でもさせてしまったら洒落にならない。
そう考えながら廊下から階段の踊り場に足を踏み入れ、一段目に足を踏み出そうとした、その瞬間。
192
:
</b><font color=#FF0000>(4t9xw7Nw)</font><b>
:2005/05/20(金) 05:16:11
――トン。
不意に背中に感じた、誰かの手の感触と軽い衝撃。
ぐらりと身体が前に傾いで、踏み出した足が空を切った。
「っ!」
慌てて手摺りを掴もうとしたが、間に合わない。
咄嗟に石の力を発動させた山崎は段に右手を突き、その腕を軸にくるりと一回転して着地した。
だが充分に勢いを殺し切れず前にのめり、そのまま最後の三段程を滑り落ちる。
小さく、鈍い音がした。
「いった……」
「だ、大丈夫ですか!?」
滑り落ちた所にちょうと通りかかったスタッフが、慌てて駆け寄ってくる。
一瞬ギクリとするが、一回転して着地した時点ではまだこのスタッフの姿は見えていなかったようだから、
石の力を使った場面はギリギリで目撃されていないだろう。
そこまで考えを廻らせると、まだ充分に回復していない状態で能力を使ったせいだろう、
ほんの少し気が抜けた途端頭にかかった靄が密度を増した。
滑り落ちた際に強打した右の膝を押さえながらも、心配そうな視線を向けてくるスタッフにとりあえず大丈夫だと答える。
深い靄が掛かったように更に思考が曖昧になる中、山崎はどこかで不穏な予感を感じ取っていた。
――やがて吹き荒れる、強い吹雪の予感を。
193
:
</b><font color=#FF0000>(4t9xw7Nw)</font><b>
:2005/05/20(金) 05:25:26
南海キャンディーズ編(一応)第1話投下です。
このあとに続く部分での致命的なミスに気付いて大幅に書き直した為すっかり遅れてしまいました……
そして細切れだったシーンを繋ぎ合わせてみると予想以上に長かったのでまだまだ終わりませんorz
194
:
</b><font color=#FF0000>(4t9xw7Nw)</font><b>
:2005/05/20(金) 05:51:04
あと、しずちゃんの能力は「(翼を出さず)運動能力強化のみでも発動可能」という設定にしてしまったのですが、番外編ですので大目にみていただけると……
195
:
名無しさん
:2005/05/20(金) 23:33:00
乙です!
楽しかったです。続き気になります。
頑張ってください!!
196
:
眠り犬
◆1CYdcqmM8c
:2005/05/21(土) 11:34:02
乙です!
面白くて、一気に小説の中に入り込めました!
自分の話なんかが本編で良いのだろうかと思ってしまいます…。
続編、楽しみにしているので頑張って下さい!
197
:
眠り犬
◆1CYdcqmM8c
:2005/05/21(土) 11:35:46
あれ、なんかトリップが変だ…。
198
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/05/28(土) 03:22:03
〜ゆきぐもにおおわれたそら〜
楽屋のドアを開けると、相方は数十分前の自分のようにぼんやりした様子で窓の外を眺めているようだった。
どうやら雑誌を読み終わって時間を持て余しているらしい。
「ただいま」
「あ、しずちゃんおかえり〜」
出て行く時とは違い、山里は口元に笑みを浮かべて振り向いた。
(――あぁ、またや)
微かな違和感。ちくりと刺さる、小さな棘のような。
「随分長かったね〜。…何かあったの?」
無意識に、首元に手をやる。
「……ううん、何も」
先程の出来事を話そうかどうか一瞬迷ったあと、そう答えて楽屋に足を踏み入れた。なぜか、話しづらいと感じたのだ。
返答までに少し不自然な間が出来てしまったが、山里は大して気にも留めなかったらしい。
椅子に腰を下ろすと、山崎は隣に座る相方に気付かれないよう、こっそりと右膝に手を当てた。ズボンに隠れていて見えないが、
先程階段から滑り落ちた時に強打した膝には、湿布が貼られている。
足を引き摺ってしまう程の重傷ではないが、何しろ打撲傷というのは地味でありながらやたらと痛い。
だが今日の仕事はこれで終わりのはずだ。我慢出来ない程の怪我ではないのだから、泣き言ばかり言っていられない。
壁掛け時計を見てあと少しでスタッフが呼びに来る時間である事を確認し、山崎はそっと小さな溜息をついた。
199
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/05/28(土) 03:22:52
「どぉも〜南海キャンディーズで〜す!」
「………ばぁん」
いつもと変わらない、変わるはずのない時間。
だが――分厚い雪雲は、いつの間にか青い空を覆い尽くす。
「……あれ?」
収録が終わり、スタジオから出ようと扉の前までやってきた山崎は、我に返ったようにふと立ち止まった。
先程まで隣に居たはずの相方の姿が見えない。
慌てて振り返ってみると、数メートル先で何やらスタッフと話している山里の姿。
石の副作用でぼんやりしていたとはいえ、あれだけ存在感のある相方が離れていくのを見落とした事に
思わず苦笑しながら、話し込む二人の様子を目を凝らして見てみる。
「……あ」
山里と話しているスタッフの顔には、見覚えがあった。
間違いない、自分が階段から落ちた時に駆け寄ってきた、あのスタッフだ。
スタッフの話を聞いている山里の表情から話の内容に何となく想像がつき、山崎は顔を曇らせる。
「山ちゃん」
少し離れた相方の耳に届くよう少し大きな声で名前を呼ぶと、山里はこちらを振り返った。
見慣れた、やけに目立つ立ち姿。
だが――次の瞬間弾けるように心に浮かんだのは、あの微かな違和感だった。
深く深く刺さる、小さな棘。
「ごめんごめん、ちょっと話し込んじゃって」
話を打ち切って駆け寄ってきた山里が、不思議そうな視線を向けてくる。
「……どうかした?」
「何でもないよ……行こか」
ふとした瞬間に感じる微かな違和感が、日に日に回数を増やしていく。
――許されないのだろうか、もう少しこのままで居る事は。例え逃げだとしても、留まり続ける事は。
200
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/05/28(土) 03:23:28
「――あのさ、さっき収録のあとスタッフに聞いたんだけど」
そう、躊躇いがちに山里が切り出したのは、それぞれ私服に着替え帰り支度に取り掛かった時だった。
私服が舞台衣装とほとんど変わらない――流行の服を着ているところなど想像したくないが、この格好で街中を歩いているとそれはそれで変質者としか思えない――相方にいつも通り冷めた目線を一瞬向け、返事を返す。
「何?」
「……階段から突き落とされたってホント?」
先程あのスタッフと話し込んでいたのはその話だったのだろう、ある程度予想していた言葉ではあったが、一瞬返答に詰まる。
この違和感の正体は一体何なのだろう。
「……うん」
「大丈夫だったの? 怪我とかは?」
「ちょっと膝打っただけ。……大体、それなりの怪我してたらあんたが真っ先に気付くやろ?」
矢継ぎ早に浴びせられる質問に呆れたような溜息をついて答えると、一瞬の沈黙のあと、そっか、とポツリと呟く声がした。
「よかったぁ、大した事なくて。スタッフから話聞かされた時なんか、もう俺動揺しちゃってさ〜」
俯き、机の上に散らばった荷物を鞄に仕舞いながら言うその声音は、いつもと変わらない明るいものだ。
だが、前髪の影と眼鏡のレンズの反射に邪魔されて、その表情は読みにくい。
視線を戻し、靄の掛かった頭でここ最近感じる違和感の正体について考えを廻らせながら、机の上に転がったボールペンを取ろうと――伸ばしたその手が、凍り付いたように止まった。
(――――)
一瞬、頭が真っ白になる。
悲鳴になり損なった掠れた吐息が、無意識に口から零れ落ちた。
――すとん、と何かが落ちてきたかのように。……呆れる程簡単に、浮かんできた答え。
なぜか、思い浮かんだその答えが間違っている可能性は全く思い付かなかった。
暖房が充分効いているはずなのに、身体が足元からすっと冷えていくような気がする。
両手に余る程の鉛を呑まされたらこうなるんじゃないか、と理由もなく思う。
染み出す重い毒に、じわじわと蝕まれていくような。
「……山ちゃん」
――一度気付いてしまったら、もう目を逸らす事など出来ない。逸らしてはいけない、絶対に。
「ん、何?」
何気なくこちらを向いた山里と、真正面から視線がぶつかる。
いつもと同じ、胡散臭い程に陽気な笑顔。
突き刺さった小さな棘に、手が触れた気がした。
「――何であたしが『突き落とされた』って知っとるん?」
201
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/05/28(土) 03:32:49
投下してから「マズい!」と思った箇所が数箇所orz
色々な意味でマズい方向に向かいつつあるような気がする南キャン編ですが、予定ではあと2回で終わるはずです。
……だが予定は未て(ry
もうしばらくお付き合いください。
202
:
名無しさん
:2005/05/28(土) 16:03:34
乙です!
なんかすごく気になるところで終わってますね〜!!すごく面白いです。
サスペンスですね〜幽霊と過とは違う感じの恐怖でゾクゾクしました。
続きよろしくお願いします!
203
:
名無しさん
:2005/05/29(日) 02:47:32
乙です!二人のほのぼの口調がリアルなだけに、ストーリーの緊迫感が
際立ってて更にかっこいいですね。
次回も楽しみにしております!
204
:
◆0K1u7zVO5w
:2005/06/02(木) 17:35:35
現在本スレで職人さんが書かれている「笑い飯VS千鳥&ダイアン」話と、これまでに職人さんが書かれている麒麟話を読んで、触発されて書いてみました。が、時間軸の設定がよくわからないのと初ということで、こちらに投下させて頂きます。
笑い飯哲夫、番外編です。
205
:
◆0K1u7zVO5w
:2005/06/02(木) 17:39:57
※麒麟の二人が石の能力に目覚めて、笑い飯が黒ユニットにスカウトされた直後ぐらいの設定でおねがいします。
「おはようございます」
すれ違いざまに口の中で低く呟いて、川島は足早に去って行った。
声をかける間もなく、その背中を見送って、笑い飯の西田と哲夫は顔を見合わせた。
「何なんあいつ、今日暗ない?」
「いや、いつもあんなんやって」
「そうかぁ?」
「あれや。便秘ちゃうの?」
「便秘なん?」
「いや知らんけど」
関西某TV局の楽屋前の廊下で、早めに楽屋入りをすませた西田と哲夫は、何をするでもなく立ち話をしていた。
「川島といえば、何か言うとったなぁあの人ら。川島の本質がどーのこーのって」
「あー言うとった」
――おかしな石を拾ったことから、おかしな能力を身につけて、「黒」とかいう
おかしな集団に入ることになったのが、少し前のこと。
平凡や普通とはかけ離れた日常に、しかし思いのほか二人は馴染んでいた。
現実ばなれした能力も、いったん慣れてしまえば生まれたときから持っていたものの
ような気がしてくるから不思議だ。
現に哲夫は、自分の能力を日常生活において上手くコントロールするすべを学んでいた。
哲夫の能力は、物体を粒子状の原子レベルまで分解して、再構築できることだった。
原子。あらゆる物質を構成する、一番小さな単位。
空気の素。水の素。土の素。すべての素。
学生時代に化学などまともに勉強しなかった人間が、物体を原子単位で分解して、
更にそれを組み立てなおすことができる能力を身につけてしまうなんて、なんだか皮肉な話だ。
(原子とか言われても、いっこもわからんねんけどな)
だが、理屈はわからなくても、使い方がわかればそれでいい。
割れたコップも元どおり。
今川焼きをたい焼きに変身させることだってできる。
シャツに染みがついたら、いったんシャツごと分解して染みだけ分離して、
5秒でシミとりクリーニング。
ポテトサラダからキュウリだけ抜くことだって、一瞬でできてしまう。
何て便利な能力だろう。
もちろん、日常生活以外の場面でも充分に能力を生かすことができる。
というよりも、その「日常生活以外の場面」が、だんだん日常の一部になりつつあるのだ。
自分の能力を使って誰かから石を奪うのも、物騒でおよそ現実離れしたケンカをするのも、
哲夫にとっては割れたコップを元に戻すのと、同じ感覚でしかない。
おそらく西田も同じだろう。
むきになることなどないのだ、皆。
こんなのは日常のよくある風景の一部に過ぎないのだから。
哲夫がぼんやりとそんな事を考えていると、話題の主の片割れが来るのが見えた。
田村だ。
相変わらず玄米みたいに黒い顔色をしている。
206
:
◆0K1u7zVO5w
:2005/06/02(木) 17:44:17
「おはようございます」
「おはよお」
田村の様子は、どこかぎこちない。
こちらの目を見ようとせず、そわそわしていて、落ち着きがない。
本人は隠しているつもりでも、こちらに対して隠し事や猜疑心があるのが丸わかりだ。
(まぁこんな誰が敵か味方かわからんような状況やったら、人のこと疑うんも当然か)
哲夫は心の中で呟いた。
だが、疑うにしても田村のそれはあまりにもあからさまで、
その拙い様子がかえって憎む気になれない。
実際、田村という男に、猜疑心や隠し事という言葉は似つかわしくなかった。
実直、素直、単純、あほ。田村にはそういう言葉が似合う気がする。
「川島もう来とったで」
「あ、はい」
そそくさと楽屋に向かおうとする田村を見て、哲夫の心に、意地の悪い感情がわきあがってくる。
試してやろうか。
カマをかけておどかしてやろうか。
「たむらー、たむらー」
「はい?」
振り返った田村に、哲夫は手のひらを差し出した。
「落としもん」
哲夫の手のひらの中のものを見て、田村は全身を硬直させた。
開いた哲夫の手のひらの上には、白っぽい小さなかたまりが乗っていた。
小さなかたまり。白い、石のような。自分が持っている、あの石のような。
207
:
◆0K1u7zVO5w
:2005/06/02(木) 17:46:59
「えっ!うそや?!」
慌ててポケットをまさぐる田村を見て、哲夫は半ば呆れて心の中で呟いた。
ばればれや。こいつあほちゃう。
カマかけに見事に引っかかりおった。
敵も味方もわからんこの状況で、そんな正直なリアクションしてどうすんねん。
とぼけるとか、シラをきるとかいうことが出来んのかお前は。
西田を見ると、同じ事を思ったのだろう、憮然としたような、それでいてどこか
間の抜けた顔をしていた。
田村はしばらく胸ポケットをまさぐっていたが、そこに石の感触を認めたのだろう、
安堵の息をついて、それから、西田と哲夫の顔を交互に見比べた。
顔にはありありと戸惑いの色が浮かんでいる。
――石はちゃんと、ここにある。
じゃあ、哲夫さんが持ってんのは、いったい何や?
「これ、落としてんで」
哲夫はかまわず、手のひらの中のものを田村におしつけた。
田村がじっくりと目をこらしてそれを見る。
白っぽい水晶に見えたそれは、淡いミルク色をした楕円形の飴玉だった。
「えっ、何ですかこれ?」
「何ですかって、飴ちゃんやん」
「・・・・・・俺こんなん落としてませんよ?」
戸惑ったような声のトーンから、田村が哲夫の真意を計りかねている様子が伝わってくる。
ただの偶然?いたずらか?それとも何かのメッセージなのか?
何の?信用したい。この人らを疑いたくない。
これ以上仲間の芸人が傷つけたり、傷つけられたりするのを見たくない。
だけど、自分の相方が傷つけられるのは、もっと見たくない。
どうしたらいい?ふたりは敵か?味方か?黒か?白か?
「あ、そうなん? ええから取っときーや」
哲夫が半ば強引に飴玉を田村の手のひらににおしつける。
田村しばし、自分の手に収まった飴玉と、哲夫の顔を見比べていたが、
やがてひとつ礼をすると、楽屋のほうへ消えていった。
208
:
◆0K1u7zVO5w
:2005/06/02(木) 17:55:11
哲夫はしばらく田村の去った方を見るともなしに見ていたが、不意に
西田と目が合うと、二人は憮然として眉をしかめた。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
『わかりやすぅ!!』
狭い廊下に二人の声が響き渡る。
「あいっつわかりやすいわぁ〜〜〜〜」
「びっくりするなあのわかりやすさは」
「あいつ「黒」とか「白」のこと知らんのちゃう?何も知らなさそーな顔しとったで」
「川島の奴なんも言ってへんのちゃうん。最近あいつ一人で動いてるっぽいしなぁ」
「田村あほやしなぁ。事情説明しても、なぁ」
「まぁなぁ」
「大丈夫なんか麒麟」
「なぁ」
他人事のように話しながら、哲夫は「あの人ら」が言った事を思い出していた。
――川島の本質。川島を「黒」の陣営に引き込むための、布石、策略。そして、田村の存在。
川島の本質なんて知った事ではないが、川島に、やや内向的で自意識の強い面が
あることは知っている。
そういう川島が、田村と一緒にいることによって、救われている部分があることも。
「黒」の連中がもし川島を仲間にひきずりこもうとするなら、徹底的に彼のプライドと
コンプレックスを刺激するやり方をとるだろう。
そして、それを成功させるには、田村という存在は邪魔だとみなされるだろう。
「ややこし」
哲夫はぽつりと呟いた。
209
:
◆0K1u7zVO5w
:2005/06/02(木) 17:57:23
「何よ?」
西田が聞き返す。
「いや、ほんま かなんわぁ」
哲夫は口の中で小さく答えた。
黒も白も、川島も田村も知った事か。
こんなんケンカやん。ケンカやるんやったらケンカやったらええやん。
何をこそこそ動く必要がある。
何を怯える必要がある。
何を騒ぐ必要がある。
ただ、流れのままに日常を生きていく。
石を持つことも、黒の陣営に属することも、すべて日常の一部だ。
それだけの事なのに、皆何を大騒ぎしているのか。
黒に白。石。欠片。奪い合い。疑ぐり合い。物騒な。ただのケンカ。
むきになることなどないのだ、皆。こんなのは日常の風景の一部なのだから。
おわり。
210
:
◆0K1u7zVO5w
:2005/06/02(木) 20:26:47
sage忘れてました…。すいません。
211
:
名無しさん
:2005/06/02(木) 21:00:29
乙です!
すごく面白かったです。ってゆうか田村解りやすすぎ・・・(笑)
笑い飯の流れるような考え方好きです。
212
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/06/04(土) 02:48:33
〜ふきあれるふぶき〜
あの時――山崎が階段から落ちたところをただ一人目撃したスタッフは、山崎が誰かに背中を押されてバランスを崩したその瞬間は見ていない。
だから、彼女が「誰かに突き落とされた」事を知っているのは、本人と――
山崎の一言で、自分の犯した失態を悟ったのだろう。
山里の顔から、笑みが消えた。
なぜ気付かなかったのだろう。
今思い返してみれば、階段から突き落とされたあと、楽屋に戻ってきた時、相方の姿がやけに目立って――
周りから浮いているように見えはしなかっただろうか。
相方の能力も、その代償も、誰より理解していたはずなのに。
「動揺してる、ってのはあながち嘘でもないみたいやね? こんな単純なミス……」
次の瞬間頭に浮かんだ余りに場違いな言葉に、思わず苦笑が漏れそうになる。
だが、一度浮かんだ言葉は打ち消すより先に無意識に口から零れていた。
「……あんたらしく、ない」
本当に単純なミスだ。あのスタッフが言ったであろう言葉通り、「階段から落ちたんだって?」と問えば済む話だったのだから。
スタッフから「相方が階段から落ちた」と聞かされて一切心配しないのも疑われると思ったのだろうが――
思わず口を滑らせてしまったのは、相方を突き落とした事で少なからず動揺していたという事だろう。
「……俺らしくない、か……」
いつもより、ほんの少しトーンの低い声。
背筋を這い上がってきた悪寒に唆されるように、思わず一歩後退る。
「かもしんないね」
その口元には微かな苦笑が浮かんでいて、まるで感情が込もっていない無表情、というわけではない。
ただ――その表情の乏しさは、【黒い瞳のイタリア人】を自称する普段の彼から、余りに懸け離れているように思えた。
例え笑っている時でもその目が笑っていないように見える事には、慣れていたつもりだったのだが――今は、目の前に居るこの男が心底怖い。
213
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/06/04(土) 02:49:22
「………どうして」
その言葉を口にした瞬間、一瞬だけ山里の口元に浮かんだ笑みが深まったような気がした。
浮かびかけたのは苦笑か、それとも嘲笑だったのだろうか。
「……言っても多分分かんないと思うよ? ほら、俺嫌われちゃってるみたいだし」
少しおどけた口調。まるで笑い話だとでも言うように。
ふとその目に痛々しい程の諦念を見た気がして、思わず視線を逸らす。
「……答えになってないと思うんやけど」
「そうかな。でもさ、もうどうでもいいじゃない? 所詮言葉なんてその程度、って言ったら色んな人に失礼かもしんないけど。
どこまでいったって…伝わんない事の方が、多いような気がするんだよね」
少し芝居がかった言い回し。
悲愴さを漂わせていたわけでも、声を荒げたわけでもなかったけれど。
――もしかしたらそれは、悲鳴だったのかもしれない。
「だから、さ。自分の気持ちに正直に行動する事にしてみたんだ。馬鹿だと思うかもしんないけど」
「……あぁ」
ホンマに阿呆や、と続ける事は出来なかった。
次の瞬間、一気に間合いを詰め迷わず鳩尾を狙ってきた山里の拳を、山崎は咄嗟に左手で受け止め弾いた。
それを見るや否や素早く後ろに下がった山里は、右手を軽く振りながら小さく感嘆の溜息を漏らす。
「――まさか左手一本であっさり止められるとは思わなかったな……ホントに凄いね、しずちゃんは」
「……ドMのあんたと違って殴られるのは好きやないからな」
214
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/06/04(土) 02:50:25
普段より抑揚に乏しい山里の言葉にそう返しつつも、山崎にそれ程余裕があったわけではない。
咄嗟に拳を受け止めた左手は、衝撃に痺れている。
一般的な男女の力差を考えればそれ程不思議な事でもないのだが――誰かを殴る、という行為から余りに縁遠い相方を
見てきたせいだろうか、その拳は予想外に重く感じる。
「……何がおかしい?」
不意に笑みを深め俯いた相方に眉を顰め、山崎は思わず低い声で問い掛ける。
「いや……しずちゃんに殴られたり突き飛ばされたりした事なら山程あるけど、殴る側に回った事ってなかったよなぁと思って」
返ってきたのは、気が抜けるような台詞。だが、その目は相変わらず氷のように冷たく、山崎は喉に突っ掛かる言葉を無理矢理搾り出した。
「……気持ち悪い事、言わんといてくれる? ただでさえキモいんやから」
「ひっど、そっちから訊いたんじゃん」
緊張感のない会話に聞こえるが、その場に流れる空気は、気弱な人間なら泣いて逃げ出したくなるほどピンと張り詰めていた。
じわり、と背中に冷や汗が滲む。
「大体、グーで殴るのは卑怯やろ……『女の子はシャボン玉』、なんやで?」
「……シャボン玉浮いてんの見てるとさ、割りたくなんない?」
ネタ中の台詞を使って揶揄するような言葉を投げ掛けた山崎に、山里は目の笑わない笑みを向けたまま答える。
そして、次の瞬間――数メートル先でリノリウム張りの床を蹴る微かな音が聞こえたのと、
直ぐ目の前で振り被られた拳を認識したのが、ほぼ同時だった。
(っ!?)
尋常なスピードの踏み込みではない。何かの力によって、人の枷を緩めた者にしか出せないような速さだ。
普段の反応速度では防ぐ事が出来ないと無意識的に察知し、ほんの僅かに残った石の力を、理性が吹き飛ぶ境界線ギリギリまで解放する。
そして、眼前に迫るその拳を防ごうと右手を上げた、その瞬間。
視界に映った【それ】を認識して、山崎の目が驚愕に見開かれた。
間近に見える、様々な感情がない交ぜになって混沌としたその瞳の――左目と違い黒目の輪郭がぼんやり滲んだように見える、その右目。
――不吉な黒い影に光彩を覆われた、闇色の瞳。
その右目に視線を奪われたのは、動きが止まったのは、コンマ一秒にも満たないほんの一瞬。
だが、その一瞬が決定的な隙となった。
そのあとの事を、山崎はよく覚えていない。
ただ――こめかみに、重い衝撃。
215
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/06/04(土) 02:55:40
なんか本人達のキャラからどんどん外れてってる気がorz
というわけで南キャン編の続きです。
関東在住なので関西の人程南キャンには詳しくないのですが、
続きが書けずに止まった部分(……とりあえず続きを書いてみようかな、とは思ってます。)
まであと一回、出来る限り頑張ります。
216
:
名無しさん
:2005/06/04(土) 21:03:37
乙です
すごい展開ですね〜・・・えー山ちゃんどうしたんですか・・・
めちゃめちゃ続き気になります。
頑張ってください!
217
:
名無しさん
:2005/06/05(日) 00:18:12
シャボン玉のくだり、まさに本人が言いそうなセリフで良いですね。
ものすごく楽しみにしてます!できれば完結編まで読ませて頂けると嬉しいです。
218
:
◆1En86u0G2k
:2005/06/08(水) 15:48:55
なんとなく思い付いたアメザリ平井さんの話を投下します。
展開とか色々無責任なので番外編ということでどうぞよろしくお願いします。
219
:
◆1En86u0G2k
:2005/06/08(水) 15:50:16
その日は気温が高いくせに一日中曇りのすっきりしない空模様だった。
珍しく自分ひとりの取材があったので事務所に出向いた平井は、
インタビューを済ませた部屋でそのまま携帯を手にしていた。
メール相手は柳原。話題はこのあとのネタ合わせをどこでするか。
結局いつも使っているファミレスに落ち着き、よろしくと最後に送って携帯を閉じる。
「平井」
振り返るとそこにいつのまにか立っていた、長身の先輩。
平井はびっくりしたあ、と笑い、とっさに張った緊張の糸を切ってその男の方に向き直る。
「気配消して後ろ取るのやめてくださいよ」
「別に消してんちゃうわ。悪かったな影薄くて」
「いやいやいや、そういうつもりちゃいますけど」
けど。どないしはったんですか、そんな真面目な顔して。
できるだけ何気ないことのように振る舞ったから、相手もそれに乗って来たらしかった。
「いや別に。…なんや大変らしいって聞いたからな」
それが仕事やなんかの話でないことはすぐにわかった。非日常が日常になってしまったのはもうお互い様だ。
「そっちもなんや面倒やって話じゃないすか」
「ぇえ?や、面倒ちゅうか…、うん、まあ色々やな」
曖昧に答えて窓の外を見たので目線を追う。重たく垂れ込めた雲から今に雨が降ってきそうだった。
傘は持っていない。とりあえず自分が帰るまで持ちこたえてくれればいい。
「お前はなんで白に行こうと思ったん」
唐突に振られた問いに焦点を戻すと窓ガラス上で目線がかち合った。平井はうーん、と唸りながら鼻を擦る。
「なんで、て………やっぱりこんなんに振り回されるのは嫌やったし」
「うん」
「あと…あいつがなんや責任感に燃えてしまってですね」
『早よ止めなあかん!俺らにできることやっていこ!』
2人揃って手に入れた石。降り掛かるピンチを回避しているうちに知った黒と呼ばれる人々の策略。
甲高い声で宣言してそれから、こちらを真剣な眼差しで見つめてきた柳原。
あの時自らの石の能力が攻撃にも防御にも頼れないものだと知っていたはずなのに。
真実を絶対的に手に入れることが逆にひどい重荷になるということも予想できたはずなのに。
「だから僕もね、一緒にいてやらんと。危ないでしょ、」
笑う言葉のはしっこでもう一度自分も確認していた。
そう、守る為だ。
220
:
◆1En86u0G2k
:2005/06/08(水) 15:52:23
「柳原は無茶しよるからなあ」
そう言って笑う声の方を向いた時、一瞬だけここにやってきた時のような表情が浮かんだのを見た。
「俺はよう知らんけどさ、今どんどん話がでっかくなっとるやろ。
やから自分の一番最初の目的とか目標とか、ちゃんと忘れんようにしといた方がええと思うねん」
普段は自分の内面や考えをめったに吐露しないはずのその人の言葉に、平井は珍しいこともあるもんやなあと思いながら黙って耳を傾けていた。
「…少なくとも俺はあいつを守りたいし、守らなあかんと思っとるし、それだけ考えるようにしてる」
ああ、と平井は頷いてその男を思い浮かべた。
年令はそう違わないが芸暦でいえば結構な先輩であり、それでいて生来の純粋さや素直さが最強のネタにもなっている彼。
そんな男を守っていくにはきっと苦労も多いのだろうと思い、小さく笑った。
笑い事ちゃうで、と顔をしかめられたが、あの人を全力で守れるのもきっと彼だけだろうと思った。
「人操れても物壊せても、結局みんなお笑い芸人やのにな」
彼がぽつりと呟いた言葉の裏には様々な感情が渦を巻いている気がしたが、その源はあえて聞かなかった。
どんな状況に陥っても漫画みたいな展開に巻き込まれても、本来の仕事の時だけは皆今までのように人を笑わせようとしているのがある種救いだった。
平井にしても彼にしても、そして白も黒も。
でもそれならなぜ争わなければならないのだろう?考えてみてもわからないので平井はまた外を眺めた。
今は目の前のものを見ているだけで精一杯だ。
降りてきた沈黙を破ったのは自分のものではない携帯が鳴らす無闇にあかるい電子音だった。
「もしもし…ああ、うん、わかった。え?そうなん?…ん、はい。今戻る」
「仕事ですか」
「うん、長引きそうやって話でなー、キツいねん」
うーん、と背伸びをした途端に見事にコキっと背中かどこかが鳴る音がしておかしかった。
お疲れ様ですーと間延びした挨拶で彼を見送る。自分もそろそろ相方のところへ行く時間だ。
まだ雨は降り出していないだろうか。確認するためにもう一度窓を見た平井の背中に声が投げられる。
「迷惑かけたらすまんな」
「…え、」
振り向いた時はもう黒髪も曖昧な表情もそこになく、代わりにドアがパタンと閉まる音。
髪の毛をがしがしと左手でかき混ぜて平井は苦笑した。
そういえば結局あの人思わせぶりに登場しといて大事な部分はなんも話さなかったなあ。
でもわかるけど。なんとなく。
数年の同居生活は伊達ではない。変わらない表情の下にあったものの推測はおそらく間違っていない。
ついに窓ガラスにぽつぽつ水滴が落ちはじめ、ますます暗くなった空を横目に平井はキャップを深く被る。
彼が簡単に乗るとは思えないが、きっとそうも言っていられない状況にあるのだろう。
どんどん複雑に面倒になっていく展開にため息をひとつこぼし、ドアを開ける。
「有野さんとやるんはしんどいなあ…」
周りには誰もいなかったからそのぼやきはすぐに消えてしまった。
221
:
◆1En86u0G2k
:2005/06/08(水) 15:57:06
以上になります。
アメザリは本編の流れ通り白に、よゐこは98(ikNix9Dk)さんのお話を参考にしています。
(大変遅レスになりますが98さんのよゐこ話が2人の雰囲気が伝わってきてすごく好きでした)
それではお騒がせしました。
222
:
名無しさん
:2005/06/08(水) 21:07:26
乙です。
すごくいい話です!二人のキャラが良くわかって楽しめました!
223
:
名無しさん
:2005/06/19(日) 22:28:04
〜しろいゆめ、つきささるいたみ〜
――ざぁぁぁぁぁ……
一面の、白。舞い散る、真っ白な欠片。強い、風。
白い欠片――雪が視界を埋め尽くしている。
寒さは感じない。美しい白銀に埋め尽くされた景色を、山崎はただぼんやりと眺めていた。
微かな風の音以外に何も聞こえない。綺麗だけれど、どこか恐怖すら感じる白。
ふと、一色に埋め尽くされていた視界に白以外の色が映った。
すぐ近くに見える、黒い――人影。
(!)
ほんの一瞬、吹雪の隙間に見えたその人影が誰なのかすぐに思い当たり、山崎は思わず声を上げた――いや、上げようとした。
(っ!?)
声が、出ない。影の方へ駆け寄ろうとしても、そこに自分の足があるという感覚がない。
ようやく、山崎はそこに自分の身体というものが存在しない事に気付いた。
視界を埋め尽くす吹雪が、僅かに勢いを弱める。
視界が少し晴れ、人影の正体がはっきりと見えるようになった。
悪目立ちする真っ赤なフレームの眼鏡、緩やかなカーブを描いてきっちり切り揃えられたマッシュルームカット、『イタリアの伊達男』をイメージしているらしい、過剰に洒落たその格好――間違いなく見慣れた相方の姿だ。
足首の辺りまで雪に埋もれているにも関わらず、彼の周りだけはまるで凪のようにピタリと風が止んでいるようだった。その証拠に、服の裾が少しも靡いていない。
そしてその視線が、意識だけしか存在していないはずの山崎の方へ、しっかりと向いた。
眩しいものでも見るように僅かに目を細め、口を開いて何かを言い掛けたあと――結局何も言わず山里は微かに苦笑を浮かべた。
全てを諦めた、痛い程に静かな笑み。
224
:
名無しさん
:2005/06/19(日) 22:28:39
『言っても多分分かんないと思うよ?』
ふと思い出したその言葉が、まるで託宣のように脳裏に響く。
再び、吹雪が強さを増した。全てが白に掻き消されていく。
待てと叫ぶ喉も、引き止める為に伸ばす腕も、駆け寄る足もない。
もう、叩き付けるように降る雪しか見えない。
――ざぁぁぁぁぁ……
こんな景色は知らない。見た事もない。
だから――
これは夢だ。
わるい、わるい、ゆめ――
225
:
名無しさん
:2005/06/19(日) 22:29:48
「!…いっ……」
目を開けた途端飛び込んできた白い床を夢の続きと錯覚し、慌てて起き上がろうとした山崎は、襲ってきた頭の痛みに思わず低く呻いた。
床に倒れたままこめかみを左手で押さえ、歯を食い縛る。
じっと痛みを遣り過ごしていると、少しづつ、先程までの記憶が蘇ってきた。どうやら頭を殴り付けられて気を失っていたらしい。
頭の芯まで響くような鈍い痛みに耐えながら何とか上体を起こすと、楽屋に相方の姿はなかった。荷物もなくなっているから、先に帰ったのだろう。
チラリと時計に目を向けると、気を失っていたのはほんの二・三分だったようだ。
背後の壁に背中を預けた山崎は、軽く舌打ちした。
まだ立ち上がる事は出来ない。座り込んだまま、じっと痛みが引くのを待つしかなかった。
石を巡る争いの中多くの芸人がそうしているように、彼らも何かと理由を付けてはマネージャーと離れて行動している。
あと数分程度ならここに座り込んでいても大丈夫だろう。
「……?」
ふと、手元に四つ折りされた紙切れが落ちているのに気付いて、拾い上げる。
綺麗に折り畳まれたそれは、掌程の大きさのメモだった。
(あ……)
開いてみると、黒いボールペンで書かれた、見慣れた字が並んでいる。
何を書こうか迷った様子が窺える小さな点のあと、たった一言。
『また明日』
そして、少し間を空けて小さな文字で書き足された言葉。
『P.S
明日の仕事が全部終わるまでに、心の準備ぐらいはしておいて。……殺されたくなかったらの話だけど。
手加減なんてしてあげないから』
何の乱れもなく、あくまでいつも通りに――殺意を告げる文字。
『ほら、俺嫌われちゃってるみたいだし』
不意に思い出したその言葉。
それに引き摺られるように、記憶の奥深くから、二ヶ月程前のあの日の場景が浮かび上がってくる。
『しずちゃん俺の事嫌いでしょ』
(――ぁんの阿呆!)
山崎は思わず手にしていたメモをぐしゃりと握り潰し、握り締めた拳ごと壁に叩き付けた。
鈍い音がして手が痺れたが、知った事ではない。
「好きではない」と「嫌い」が場合によっては同義語ではないという事ぐらい、それなりに頭の回転が速い山里ならすぐに分かっていたはずなのに。
(――なんて偶然や……)
山里の右目に見えた黒い影。あの日、ゴミが入った右目を頻りに気にしていた彼の姿。
点のように散らばっていた事実が、繋がって一本の線になる。
いっそ笑い出したくなる程の偶然だ。あのゴミさえなかったら。
いや、あのゴミが――黒い欠片でさえ、なかったら。
226
:
名無しさん
:2005/06/19(日) 22:32:24
『……まぁ、好きでない事だけは確かやな』
けれど、最終的に引金を引いたのは間違いなく自分の一言なのだ。
もう一度壁を殴ろうと振り上げた手が、力なく下ろされた。
(阿呆なのはあたしも一緒、か……)
あの答えにはそれ程深い意味があったわけではなくて。
ちょっとした意地悪。ちょっとした悪い冗談。
本気で哀しませるつもりなんてなかった。傷付ける、つもりなんて。
ネタ中では【硝子のハート】を自称する事もあったけれど、山崎の知る相方はその言葉から受けるイメージよりはもっとずっと強かだったから。
だから、いつも通り冗談半分に返した。山里もいつものように笑って済ますだろうと、笑って済ましたのだと、疑いもしなかった。
「……いったぁ……」
無意識に、ぽつんと呟く。
痛い。どこが痛いのかはよく分からないのだけれど、痛かった。
打撲した膝か、殴られたこめかみか、壁に叩き付けた手なのか、それとも――傷付けられた心、なのか。
握り締めた手に、強く力を込める。
女の自分より女々しいだとか、笑っていても目が笑ってないような気がするだとか、案外腹黒いだとか、嫌いなところなら山程あるし、特別に仲が良いわけでもない。
ただ――のんびりと二人で過ごす待ち時間に居心地の良さを感じていたのも、確かで。
(いったいな、ホンマに……)
認めるもんか。絶対に認めてやるもんか。
――本当は……裏切られた事に泣きたくなる程信頼してた、なんて。
そう思っている時点でもう認めてしまっているのだと、気付いていたけれど。
(……帰ろう)
まだ鈍く痛む頭を押さえて、ゆっくりと立ち上がる。
部屋の暖房は充分に効いていたが、心は凍えそうに寒かった。
――ざぁぁぁぁぁ……
夢の中で聞いた風の音が、耳の奥に蘇る。
――春は、まだ遠い。
227
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/06/19(日) 22:35:36
しまった、トリップ付け忘れちゃいました……
というわけで、「続きが書けなくなった所まであと1話で終わります」と言いつつ終わりませんでした(ニガワラ
お詫びといってはなんですが、きちんと完結させる目処が立ったのでお知らせします。
もう少しお付き合いいただけたら幸いです。
228
:
名無しさん
:2005/06/20(月) 21:58:25
乙です!
すごく良かったです〜!ゴミが欠片とは・・・
続き、楽しみにしてます!
229
:
名無しさん
:2005/06/21(火) 03:05:42
乙です!先週Qさまの解散どっきりで絆の深さを改めて見せてくれた二人なだけに、
心のすれ違いが続く展開の切なさがリアルに感じられます。しずちゃん格好いいですね。
ぜひぜひ完結まで読みたいです!続きも楽しみにしております。
230
:
名無しさん
:2005/06/25(土) 00:44:19
〜ひびわれたこころ〜
真冬の風は、服を着込んでいても染み入ってくるような気がする程に、冷たい。
赤信号の交差点で足を止め、山里はその風の冷たさに微かに身震いした。
深夜に近い時間だが、山里と同じように信号待ちをしている人間は決して少なくはない。
俯き、レンズに触れないよう気を付けながら、右目をそっと掌で覆う。
完全に黒い欠片に覆われたわけではないにも関わらず、その右目はもう何も映さなくなっていた。
なぜあの場所に黒い欠片の断片が落ちていたか――恐らくは、以前あの楽屋を使った芸人の中に『黒』の人間が居たのだろう。
急激に侵食してくる影に気付いたのがほんの二週間程前の事だった事を考えれば、目に入った小さな欠片はすぐに人に影響を及ぼす程の力は持たず、
自分が抱いた小さな負の感情を養分としながら少しづつ力を蓄えていったのだろうか。
空に映える真っ白な翼はいつだって余りに綺麗で、強く。
届かないと、追い付けないと思い知らされた。
余りに眩しくて。遠すぎて。
目に巣食った黒い欠片のせいでそう思ってしまったのか、それともその暗い感情が欠片を育ててしまったのか、それは分からないけれど。
負の感情を充分に吸い込んだ欠片は一気に育ち、視界――そして心――を覆い尽くした。
――美しい姿は醜く、笑い顔は泣き顔に映る、あべこべ鏡。
ふと脳裏に浮かんだその言葉。一瞬考えて、それが【雪の女王】に出てくる悪魔の作った鏡の事だと思い出す。
目に悪魔の作った鏡の破片が刺さってしまった少年・カイと、そのせいで人が変わり雪の女王に連れ去られてしまったカイを追う、幼馴染の少女・ゲルダの物語。
小さい頃に見た、随分と懐かしい童話だ。
あの話の結末はどうだっただろう。確か、ハッピーエンドだったと思うのだが。
(……あんな威圧感のある【ゲルダ】に迎えに来てもらうのは流石に遠慮したいなぁ……)
そう無意識に考えを廻らせてからカイとゲルダに自分たちを重ねている事に気付き、我ながらくだらない事を考えているな、と山里は心の中で苦笑した。
ただ――くだらない事と承知で例えるならば、この欠片は悪魔の鏡の破片と雪の女王、その両方の役割を持っているのだろう。
自分の心を変え、冷たい闇に引き寄せる負の力。
231
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/06/25(土) 00:46:14
目を覆っていた右手を下ろすと、その指先を一瞬小さな闇色のオーラが包んだ。
今まで必死に抑え込んでいた力の奔流が、ほんの僅かに溢れ出る。
人を殺す事も容易に出来る、強力な破壊の力。
この黒い欠片というものの予想外の万能さには驚かされるが、その力を使いたくないと思う程度の良心はまだ残っている。
ただ、段々と自制が難しくなってきているのも事実だ。
もう隠し通すのも限界にきていた。その証拠に、今日は沸き上がる激情を完全に抑える事が出来ず、手加減なしで――しかも思い切り頭を狙って――殴り付けてしまったのだから。
気絶した彼女にとどめ止めを刺さなかったのが奇跡的にすら思える。
壊すのは、殺すのは、守る事よりも遥かに簡単だ。
――壊したい? それとも守りたい?
不意にそんな問いが脳裏に浮かんだが、一度目をきつく閉じて思考の外に追い出した。
考えたところで、まともな答えを出せそうにない。
何も気付くな、と思っていた。
早く気付いてくれ、とも。
壊したい、と。守りたい、と。
感情を持て余している聞き分けのない子供のようだと、心のどこかでは認めていて。
別のどこかでは、認める事を拒んでいる。
思わず口を滑らせたのも、山崎を気絶させながら止めを刺さなかったのも、まだ自分の心の中に迷いが残っているからだ。
思考は常に混沌と矛盾。あと少しで、境界線を踏み越えてしまいそうな。
そこを越えて衝動に身を任せてしまえばもう自分ではなくなると――そして、その方が余程楽だという事も――分かっていた。
一歩足を踏み出せば、あるいは一歩足を引けば、それで事足りる。
232
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/06/25(土) 00:47:56
今青になっている歩行者用の信号が、点滅し始めた。もう少しでこちら側の信号が青になるだろう。
顔を上げてそれを確認した山里は、ふっと溜息をつき軽く右の拳を握り締めた。
手加減なしで殴り付けたせいだろう、骨は折れていないようだが、拳は赤くなりズキズキと痛んでいる。
だが、今の自分にはその痛みさえどこか遠かった。
冷たさに麻痺した指先で何かに触れた時のように、今は自分自身の感情が酷く曖昧にしか感じられない。
そして――そんな冷え切った心の中で一番はっきりと感じられるのは、ドロドロとした負の感情だ。
怒り、嫉妬、憎しみ――殺意。
――だから、早く。……君を殺してしまう前に。
心の奥底で呟いた本音は余りにも小さく弱く、山里自身も気付かない。
明日には、もう手加減も出来なくなっているだろう。だから明日にはきっと、何かしらの決着が付く。
例え、その結果境界線を踏み越える事になるとしても。
自動車用の信号が黄色から赤に変わるのを目を細めて見ながら、山里はズボンのポケットから出ている携帯電話のストラップに、手を触れた。
元々は白いハウライトを青く染めて作られる、トルコ石を模した石。
余りに鮮やかすぎる、偽りの青。
街の明かりを反射して微かに輝くそれを、指でいらう。――祈るように。あるいは、何かを探すように。
そして、山里は微かに唇の端を上げた。微かだけれど、作り笑いではない自然な笑み。
大丈夫。大丈夫。
まだ笑える。――まだ、嗤える。
口元に浮かんでいた笑みが、無意識のうちに嘲るように歪んでいく。
信号が、青に変わった。止まっていた人の流れが、再び動き出す。
再び心の闇に呑まれていく彼の姿が、雑踏に紛れて消えていった。
雪が降る。音もなく、深々と降り積もる。
全てを掻き消すように、全てを凍て付かせるように。
誰かの心に――雪が、降る。
233
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/06/25(土) 01:06:37
すいません、またトリップ付け忘れ……orz
暗い話ですいません。書き始めたときに書いてたのはここまででした。
これから完結まで書く予定なので、もしよければ待っていただけたらと思います。
234
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/06/25(土) 01:09:07
追伸
本スレの方、ちょっと過疎化しちゃってますよね。
完結まで書いてから本スレ投下を考えてみます。
235
:
名無しさん
:2005/06/25(土) 16:37:43
乙です!決戦前夜の山ちゃんの今後が気になりますね。こんな南キャンも素敵ですよ〜
完結編も楽しみにしてます!
236
:
名無しさん
:2005/06/26(日) 01:18:09
乙です。
完結編があるんですね!楽しみです。
頑張ってください!
237
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/06/29(水) 21:31:31
こんばんは。下に三拍子についてちょろっと出ていましたが、
それとは別に自分なりに、そして本編とは全く別物で、気ままに書いてみました。
途中までです。続きはできていません。
238
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/06/29(水) 21:33:30
昔、川原で見つけた綺麗な石を持ち帰ろうとして、止められたことがあった。
理由を聞いたところ、「こういう所にある石というのには魂が込められているから、
不用意に持ち帰ることはできないのだ」との事。
私は子どもながらに、普通に「汚いから持って帰るな」とでもいえば良いのに、と思ったものだ。
しかし、今になってその意味を知った気がする。
例えそれが、川原でなく、
ある日突然自分の目の前にあったものだったと、しても。
【ある冬虫夏草の話】[Will you marry me?]
「へぇ、彼女できたんだ……」
と、唐突な高倉の一言。独り言のようにも聞こえるが、
「な、何でお前知ってるのっ?!」
久保をビビらせるには十分だったようだ。高倉は答えることもせず、手の中にある石に見入っていた。
「ああ! また俺の過去勝手に見ただろ?!」
「うん」
「『うん』って……、やめろよなぁっマジで」
「どうして」
「どうしてって、プライバシーの侵害だからだよ」
「大丈夫、なんか、調子悪いみたいだから……」
「へぇ……お前でもそんなことあるんだね」
「うん……」
「って、それで納得すると思ったのかぁ?!」
高倉は勢いよく掴みかかる久保をひらりとかわしつつも、石を凝視し続ける。器用な男だ。
「うーん……」
実際、高倉の石は調子が宜しくないようだった。いつもなら鮮明に見える映像が、今日はなんだか乱れている。音声も途切れ途切れ。
「諦めろ。見るなという天のお告げだ」
久保が無駄に殊勝な笑みを浮かべる。そんな彼に高倉は表情一つ変えずにこう尋ねる。
「久保には天のお告げが聞こえるんだ?」
「いや、聞こえないけど」
「嘘はよくないぞ?」
「お前なぁ……」
久保は何かを諦めた。
「久保、お前の石の調子はどうなんだ……って、お前は持ってなかったんだな」
「うん、まぁ、な」
「……ふーん」
高倉は再び手の中の石を凝視する。未だに調子が悪いようだった。その様子を見た久保が声を上げる。
「おまっ、俺が嘘付いてないかどうか過去をさかのぼろうとしてるな?!」
「すごいなぁ、分かるもんなんだね。でも大丈夫。やっぱり、調子悪いみたい」
「……」
久保は何かを諦めた。本日二度目。
「彼女、どんな人なの」
高倉のその質問に、久保の顔が緩む。
239
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/06/29(水) 21:34:10
「へへ、すっごく、かわいい」
「……世も末だな」
「なんだとぉ?」
「いや、深い意味は……」
「お前なぁ? 俺の彼女見たらほんっっっとに羨ましがるんだからなっ」
「じゃあ、見せてよ」
高倉は右手を差し出す。すると、久保は少し表情を曇らせた。
「別に良いけど……」
と言ったまま、続きを話し出そうとしない。高倉は怪訝に思った。
「どうした? いいよ、今すぐじゃなくても」
「実は……」
するとここで、久保は持参した大きなバックを振り返る。高倉もそれを追うように見る。
久保は言った。
「今日、来てるんだ」
「……え?」
久保は立ち上がるなり、バックの元へと行く。
「高倉、来いよ」
言われるがまま、高倉もバックの元へと行く。行こうとするのだが、
「久保、ごめん。なんか、それに近づきたくない」
そのバックはどこにでも売っているような、非常に大きい、ナイロン製のバック。
「……そっか」
久保はなぜか素直に納得し、その大きなバックに手を掛ける。
その場に少しずつ、静かに積もっていくまがまがしい雰囲気。
「……久保。彼女の名前、なんて言うんだ」
高倉は、勤めて自然にそう言った。
久保は、『それ』を取り出すのと同時に、答えてくれた。
「あやめ、って言うんだ。ね、あやめちゃん」
バックから出てきたあやめちゃん。その姿を見た高倉は思わず口を押さえた。
多分、それはファンの子から貰ったテディベアだったと、久保が言っていたのを高倉は覚えている。俺にそっくりだろう、と自慢していた。
「あやめちゃん、このテディベアが気に入ったらしくてさ、俺、おもわずあげちゃったよ」
そのテディベアの腹部から頭部を劇的に突き破るようにして、
『黄色い半透明の身体をした30センチぐらいの女』が、静かに『生えている』。
その姿はまるで、冬虫夏草。
屍骸を糧にすくすくと育った、冬虫夏草。
久保は本当に大事そうにあやめちゃんを抱えていた。高倉は問う。
「久保、それは、『何だ』?」
「……俺の彼女だよ」
高倉は、右手の石が冷えていくのを感じた。
「質問を変えよう。久保、『その石をどこで手に入れた』?」
久保の表情が豹変した。
「石なんかじゃない! あやめちゃんはあやめちゃんだ!!」
高倉には分かっていた。あやめちゃんが最近芸人たちの間に広まっている不思議な能力を持った「石」だということ。
そして、久保が持っているその石が、とてつもなく嫌な物だということも。
だからこそ、『あやめちゃんの持ち主である久保の過去を見ることが、拒絶されたのだ』ということも。
もっと早く気づくべきだったのだと、高倉は少しだけ後悔した。
「それにしても……」
高倉が、めずらしく感情を吐露する。
「なんなんだ、この急激な話の展開は」
非常に、イライラしているようだった。
240
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/06/29(水) 21:39:00
以上です。
○三拍子にした理由
一、高倉の雰囲気と能力。
二、久保の能力が決まっていない。
てだけの理由です。いまいち二人の性格や口調は把握していないので、
違和感を感じられたファンの皆様、ごめんなさい。
オンバトやはなまるマーケットの記憶を頼りに作っています。
ついでに、この話が続くかどうかは、謎です。
ここまで読んで下さった方、どうもありがとうございました。
241
:
名無しさん
:2005/06/30(木) 23:14:13
乙です!
あやめちゃん怖っ!っていうか久保さんよ・・・
お二人に違和感はなかったですよ〜性格口調に関してのみ(笑)
続きすごく気になります。出来れば書いていただきたいです〜
242
:
名無しさん
:2005/07/17(日) 23:54:49
そう遠くはない未来、ついに『白』と『黒』の全面戦争が始まった!!
設楽「『白』を潰せ。」
渡部「戦う時期が来たってことだろ?」
戦いの火蓋が切られてすぐに、隠された『黒』の力が明かされる!!
柴田「残念だったなぁ!!」
柳原「今まで封印してきた石が…復活してるっちゅうんか?」
悲痛な叫びも空しく、戦いは加速していく。
繰り返される戦いに、傷付き倒れていく仲間達…
田村「ふざけんなっ…!!こんな戦い…何になるっちゅうねん!!」
徳井「二匹の蛇がお互いの尻尾を飲み込んでるようなもんや。どちらかが滅びるまで、戦いは終わらん。」
裏切り、犠牲、憎しみの後に最後に生き残るのは誰だ!?
そして、残された彼らが見るものとは…?
小沢「俺の石の…宝石言葉を知っているか?」
そして、最強の石「ブラックダイアモンド」とは!?
劇場版「もしも芸人に不思議な力があったら」
coming soon!
暇だからやった。今は反省している。
…本当にごめんなさいorz
243
:
名無しさん
:2005/07/19(火) 09:38:31
笑いで言うところの「ムチャ振り」ってヤツだなwww
漏れは嫌いじゃないwwwwww(`∀´)
244
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/07/20(水) 22:47:46
〜ひとかけらのきぼうをしんじて〜
その夜の夢見は最悪だった。
よく覚えてはいないけれど、身体の芯から凍り付きそうな寒さだけがやけにはっきりと記憶に残っている。
――まるで、吹雪の中に放り込まれたような。
「――しずちゃん?」
一瞬の間のあと呼ばれた事に気付き、慌てて顔を上げる。
本日最初の仕事の、楽屋。悪夢しか見なかった眠りは疲れを癒してはくれず、どうやらいつの間にかぼんやりしていたらしい。
「……え、あ、何?」
顔を上げてからその言葉を発するまでの一瞬の間があったのは、自分を呼ぶその声が昨日までと違う響きを持っているような気がしたからた。
「もうそろそろお呼びが掛かると思うんだけど……何ボーっとしてんの?」
掠れ気味で少し高いその声は、すっかり聞き慣れたものなのだけれど――。
(――違う)
考えるより先に、そう思った。
呼ぶ声は一緒なのに、違う。声も、やけに凝った言葉の選び方も、人差し指で眼鏡を押し上げる些細な仕草さえ、変わらない――けれど、違うのだ。
昨夜の出来事があったせいでそう感じるのか、それとも、全てを知られた今となっては意味がないと山里の方が普段通り装う事を止めたのか。
恐らくは両方なのだろうが――山崎の知る相方がお世辞にも芝居が上手いとは言えない事を考えれば、認めたくはないが前者の割合の方が高い――、
度を越した違和感に鈍い頭痛さえ感じてくる。
「ごめん……ちょっと考え事してたわ」
ぎこちなく笑みを浮かべ、酷く冷たい相方の目を、真正面から見返す。
目を逸らしてはいけない。
今目を背けてしまったら、その事が自分達の間にあるものを本当に全て、壊してしまうと――ギターの弦が
ぶつんと切れるように呆気なく、何もかもを断ち切ってしまうのだと、それだけはなぜかはっきりと分かった。
無意識に、拳を握り締める。暖房が効いているはずの楽屋は、なぜか寒かった。
245
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/07/20(水) 22:48:56
――重苦しい灰色の雲が漂う空に、細く欠けた月が微かに輝いている。
人通りのない寂れた道を歩いていた山崎は、ふと立ち止まり夜空を見上げた。
今日の仕事はもう全て終わっており、普段ならあとは帰るだけだ――普段なら。
視線を星の見えない夜空から右手に持っていたメモに移し、再び歩き出す。
それからしばらく歩いたあと、十五階はありそうなテナントビルの前で立ち止まった山崎は、手元のメモと目の前のビル――正確には、玄関横に
取り付けられたビル名が刻まれたプレート――とを見比べ、ポツリと呟いた。
「……ここ、か……」
今日最後の仕事が終わったあと山里に渡された四つ折りのメモに書かれていたのは、ビルの名前と住所、そして時刻と『屋上で待ってる』の一言だけだった。
やはり綺麗とは言い難い、見慣れた字。命令されているようで気分が悪かったのだが、まさか逃げ出すわけにもいかないだろう。
(それにしても……方向音痴やったら間違いなく迷うな、この寂れ方やと)
テレビ局から比較的近く地名も聞き覚えはあるが、山崎はこの辺りまでやってくるのは初めてなのだ。誰かに聞かれるのを警戒したのかもしれないが、
例えば道に迷うとか、そういう事は考えなかったのだろうか。
「……ま、どうでもええか」
もし迷いでもして時間を過ぎても来なければ、携帯電話に連絡を入れて誘導するつもりだったのかもしれない――それはそれで
間抜けな光景だと思うが――と結論付けた山崎は、右手ごとメモをパーカーのポケットに突っ込んだ。
この時間、勿論玄関が開いているはずはないので、ビルの横に回り込む。
昨日の夜にでも下調べでもしておいたのだろうか。確かにこの様子なら派手に暴れても人に見つかる心配はないだろうが――。
(覚悟はしてたけど……屋上までこれで行け、と?)
どこか古めかしい外付けの非常階段を見て思わず溜息をつき、山崎は長い階段をゆっくりと上り始めた。
246
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/07/20(水) 22:50:52
街の雑多な音も遠くにしか聞こえない、静かな非常階段に、ただ足音だけが響いている。
両手をパーカーのポケットに突っ込んだまま黙々と階段を上り続けていた山崎は、十二階の踊り場までやってきたところで立ち止まった。
先程地上から見たときの目測が正しければあと少しで屋上に着くはずだが、長く続く階段をひたすら上っていると気が滅入ってくる。
石の力で飛んでしまえば楽なのだが、こんなところで無駄遣いするわけにもいかないのが辛い。
絞首台の十三階段を上るのもこんな気持ちなのだろうか、と一瞬考えて、とりあえず鉄扉に寄り掛かった山崎は思わず唇の端に苦笑を浮かべた。
――大人しく殺されてやるつもりなど、欠片程もない癖に。
少なくとも自分は、他人の為に死んでもいいと真顔で言えるような自己犠牲の塊ではない。
ただし、だからと言って絶対に死なないかと問われれば答える事は出来ないのだが――いや。本当のところ、状況は絶望的だった。
自由に飛び回れる屋外は昼間なら有利な場所なのだが、山崎の能力は発動中極端に夜目が利かなくなる為、夜は少々分が悪くなる。
しかも今日の空は雲が多く、月も半分以上欠け、黒い布に出来た裂け目のように細く頼りない。少しでも視界を良くしてくれるのは、遠くに見える街明かりのみだ。
それでも、自分はたった一人でこの場所に来た。正々堂々などという言葉は無視して浄化の力を持った誰かを呼んでしまえば楽に勝てると、呼ばなければ負ける――もっと
具体的に言えば殺される――かもしれないと、そう知りながら。
誰かを呼んでしまえば彼の意思を裏切る事になると、裏切りたくないと、そう思ったのだ。
弱々しく闇を照らす古びた蛍光灯に視線を向けながら、唇の端に浮かんだ苦笑を深める。
自分を殺そうとする相手に対して『裏切りたくない』などど思った事が酷く愚かで、滑稽で――それでいて、何より大切な事だとも思えた。
寄り掛かっていた鉄の扉から離れ、首元に手をやって服の上からペンダントを握り締める。仕事の合間の時間ひたすら回復――つまりは精神集中――に努めていたおかげで、
万全とは言い難いが昨日よりはかなりマシな状態になっていた。合わせて十分程度なら全力を出せるだろう。
気ぃ失う程度にシバいて浄化の力持った奴のところまで連れていく、という大雑把かつ穏やかでない努力目標を再確認し、山崎は再び階段を上り始めた。
(やっと着いたか……)
十五階の踊り場までやってきたところで、視界が開けた。
階段の先、左手には屋上のフェンスと扉が見えている。
足を止め、目を細めてその扉を数秒見つめると、山崎は一段一段踏み締めるようにゆっくりと再び階段を上り始めた。
あと、十段。
まだ石の力は解放していないが、鋭く研ぎ澄ませた神経はすぐ傍の冷たい気配を感じ取っている。
あと、五段。
それでも歩みは止めない。逃げ出す事も目を背ける事もしてはいけないと、痛い程分かっていた。
昨日の夜、痛々しい程の諦念を含んだ目に一瞬でも視線を逸らしてしまった事が、今は酷く腹立たしい。
あと、一段。
真っ直ぐ前を向いたまま最後の一段を上り切り、ゆっくりと左を向く。
屋上と非常階段を隔てている、金網の扉の向こう――街明かりと微かな月光に照らされ、見慣れたシルエットが見えた。
247
:
◆8Y4t9xw7Nw
:2005/07/20(水) 22:52:59
なんか石が全然出てこなくて申し訳ないんですが、今日はここまでです。
次回はちゃんとバトルに入れると思いますので……
本スレが余りに過疎化してるので、もしよければ投下したいのですが……意見をもらえたら嬉しいです。
248
:
名無しさん
:2005/07/20(水) 23:41:16
乙です!
うわ〜すごくいいです!続き気になります!
本スレ投下希望です。
249
:
名無しさん
:2005/07/21(木) 05:39:08
乙です!
カンニング編といい、8Yさんの作品は、登場人物の行動・考え方や細かい仕草等が
すごく本人たちのイメージを大切にしている感じがあって大好きです。
今回だと「人差し指で眼鏡を押し上げる仕草」の記述に"やるやる"と感心でしたw
本スレ投下もぜひお願いします。
250
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/07/27(水) 22:28:35
ども。
>>238-239
に三拍子の「ある冬虫夏草の話」という文を投下した物です。
完成したので、一応ここに置いときます。
死ネタというほどの死ネタでもないのですが、それが絡んでくるので、ご注意ください。
読んで頂ければ、幸いです。そこそこ、長いですよ。
251
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/07/27(水) 22:33:25
title 「ある冬虫夏草の話【Will you merry me?】」
>>238-239
の続き
****************
ストップ。
リヴァースアンドプレビュー。
不法投棄。久保はたまたまその現場を目撃することとなる。そんな13日前の午後。
曇天、それなのに明るい。不吉なことが起こりそうな、打って付けの天気。
久保は、誰もいなくなったのを確認した後、そっとゴミの山に近づいた。
普段、こんなシーンに遭遇することも無かったし、ゴミ自体に興味を持っているわけでもなかった。
それでも、近づいた。もしかすると久保は、
運命を信じたのかもしれない。ああ、それと、
諦めを。
まぁ、それはいい。
久保は、予定通りにゴミの中に運命の人を見つけた。それが、あやめちゃん。
あやめちゃんというのは、誰が決めたのかは分からない。
あやめちゃん自身がそう言ったのか、久保が勝手につけたのか、そんなことは知る由もない。
私は思う。きっとあやめちゃんという字は
「殺」か「危」と書くのだと。とりあえず嫌な感じ。それが、私が最初にあやめちゃんに抱いた印象。
プレイバック。
「……見えたか」
高倉はそう呟き、石の意思の意志でも変わったのかと、ややこしく解釈した。
そして再び久保とあやめちゃんを睨みつける。迫力満点。しかし久保がひるむ様子はなかった。あやめちゃんは論外。
久保にそっくりなテディベアが、あやめちゃんに食べられてしまった。
次は久保孝真が食われるのかしら、と、高倉はそこはかとなく思った。それに追加するように、
「それは不味い」
と、ぼやく。しかし、過去が見える力を持っただけの高倉に、あやめちゃん自体をどうにかする力は皆無だ。
――あの人なら何とかなるのか? だが、久保が聞く耳を持っているのか? それ以前に、あやめちゃんの耳は聞こえるのか。
あふれ出るように不毛な思考が働く。久保と高倉がお互いに睨み合ったまま、ただただ時間が過ぎる。高倉には、久保があやめちゃんを守らんとしていること以外には、何も分からなかった。
とりあえず、自分に何が出来るのか、高倉はそれを考えることに専念しようとする。
……ところが。
252
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/07/27(水) 22:34:36
「失礼します」
ノックの後に開かれる背後の扉。返事はせず、久保と高倉は開かれた扉を見る。
二人が知らない男が1人。比較的整った容姿だったが、誰なのかさっぱり見当がつかなかった。久保はとっさにあやめちゃんを隠すように抱く。
「どちら様で……」
スタッフではないことは明白だった。また、知り合いの芸人でないことから、高倉はそう尋ねた。
「名前ですか。そんなものはありませんよ」
知らない男はそう答えた。
「はぁ、『そんなものはありませんよ』さん、ですか。どこまでが苗字でどこからが名前なのでしょうか」
高倉はまじめにそう言った。いつもなら久保が突っ込むのだが、久保は何も言わず、知らない男を睨んでいた。
知らない男は言う。
「ぼく自身のことは放って置いてください。そんなことより、そちらの小太りの方。貴方が持っているものに、大変重要な用事があります」
知らない男の口調は非常に事務的だった。しかし、不穏な空気が漂っていることは、確かなのだ。
だから、久保も高倉も、警戒した。
「貴方の用件は分かりましたが、俺の相方が持っているソレ、非常に厄介な物なんですよね……。それに大変重要な用事があるということは……、貴方自体、厄介な物なんでしょうね」
知らない男は高倉を見据える。
「ぼく自身のことは放って置いてくださいといったでしょう」
「そう言う訳にも行きません。せめて身分を明かしてください」
「それはできませんね」
253
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/07/27(水) 22:35:48
即答だった。あまりにも断言的だったので、一瞬面食らったが、高倉は気を取り直す。
「それでは尋ねます。貴方は久保の石に何の用事があるんですか」
高倉は、もしかするとあやめちゃんのことを石といえば久保か知らない男が何かしら反論すると踏んだ。しかし、久保が何か言うことはなかった。今は知らない男に視線を合わせているので、久保のほうを見ることができない。久保も様子を伺っているのだろうか。
知らない男は、勤めて事務的口調で答えた。
「それは、ぼくのものです。ずっと探していました。そしてやっと今日、見つけることができたのです。お願いですから、『彼女』を、返してください」
後半は久保に行っていたような感じだった。しかし、一つ聞き捨てなら無いことがあった。
「……『彼女』?」
久保と高倉は、ほぼ同時に尋ね返す。
「そうです。『彼女』は私の恋人です」
高倉は再び苛立ちを感じた。久保と同じ事を、この知らない男まで言うのだ。高倉は言葉を選ぼうとした。しかし、
「あやめちゃんが何でお前の彼女なんだ?」
先に久保が口火を切った。
「あやめちゃん……? 『彼女』のことですか」
「そうだ」
「あやめちゃんではありません。『彼女』は」
ストップ。
一瞬だけ、見えた。
先ほどの不法投棄現場。そこにあやめちゃんを捨てていった男。
この、知らない男が、その男。
254
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/07/27(水) 22:36:51
しかし、久保の視点からでは男の顔が見えなかった。
それなのに今ははっきりと見える。……どういうことだ。
リヴァース。
『その視線は知らない男としっかりと合っている。目が合っているのだ』。
まさか……。そんなはずが……。
プレイバック。
「……」
高倉が我に返ったとき、話はもう先に進んでいて、久保が怒声をあげていた。
「勝手なこと言うなよ! お前っ、あやめちゃんをあんなところに一人にして、あんなところに捨てるなんて酷い目にあわせて! それでなにを今更っ!」
知らない男は反論する。
「やっぱり、ぼくは『彼女』がいないとダメなんです! お願いですから、返してください!!」
いつの間にか知らない男の口調が感情的になっていた。加熱する二人の問答に、高倉は一人、冷めている。
高倉は、あやめちゃんを見た。こころなしか、あやめちゃんからテディベアが剥がれていってるような気がする。
――もう、テディベアでは不十分なのか。あやめちゃん。
高倉は心の中でそう尋ねる。すると、……。
高倉の冷えていた石が、更に冷えていき、凍え、それが手から腕へ、そして全身へと広がっていく。
……。
比較的、早送りの映像だった。
音声は無い。ただ、流れて、なにがあったのかを教えてくれるだけといった感じだ。
知らない男が、楽しそうに笑っていた。そんな映像が、しばらく続いた。
しかしそのうち、知らない男の顔が怒りや嫉妬で醜くゆがんでいく。次第にそれだけになる。
理由は知らないが、それは私にも分かるほどの恐怖と悲しさを感じさせた。
そしてとうとう、『私』は、殺された。納得のいかないようで、納得の結果だった。
しかし、『私』は再び目を開ける。身体は、動かない。喋ることもできないが、知覚はできた。
知らない男が『私』を愛おしそうに、満足そうに愛でていた。そのとき 『私』はまだ、この男が好きなのだと思った。
『私』は知らない男の期待に答えようと、『成長』することにした。近くに植物があればそれに寄生し、それがダメになれば、近くのゴキブリに寄生する。
別に何でも良いと思い、リモコン、CD、食器、枕、色々な所に寄生した。
結果、全部ダメにしてしまった。『私』はまた怒られると思い、そしてまた殺されるのだろうと思った。
しかし、今度は違った。……捨てられたのだ。
これは、納得行くようで納得できない結果だった。
そして、今ここにいる。『私』を見つけてくれた、久保。でもやっぱり『私』には、知らない男しかいない。
知らない男もそう言ったように、『私』も彼じゃないと、ダメなのだ。
255
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/07/27(水) 22:38:56
……。
高倉は、久保に言う。
「久保、お前も分かっているんだろう。あやめちゃんが、誰を望んでいるのか」
「だめだ! あやめちゃんは、俺が、俺が守るんだ……。もう、辛い思いをさせたくないんだ」
はっきり言って高倉には、今の久保があやめちゃんの所為でこんなことを口走っているのか、それとも、本人が心から強くそう思っているからなのかは、分からない。
しかし、とにもかくにも、これ以上久保にあやめちゃんを持たせるわけにはいかない。
growing,growing/i am growing now/
高倉は、言った。
「久保、聞こえているんだろ? あやめちゃんの声が。俺なんかより、よっぽど」
久保は、震えている。
「だけど、だけど……」
「……久保、あの人にあやめちゃんを『帰そう』? お前が一番分かっているはずだ。 あやめちゃんが、なにを望んでいるのか」
久保の腕の中でほのかに光る、黄色い女。
着ていたテディベアでは足りないのか、それとももう飽きてしまったのか、大胆にも
彼女は久保の腕の中でそのきぐるみを、ゆっくりと脱ぎ始めている。
まるで、羽化するかのように。だけど、
所詮は冬虫夏草。高倉は知っている。
彼女にとって最高で最良の、本当の棲家が見つかったことを。
久保は知っている。彼女にとって最高で最良の、本当の住処が自分ではないことを。
久保は、本当に本当に名残惜しそうに、俯きながら知らない男に、あやめちゃんを、渡す。
知らない男は強奪するように、久保からあやめちゃんを受け取った。
決着は、一瞬でついた。
久保と高倉は、瞬きをせず、その一部始終を目に焼き付けた。
知らない男があやめちゃんを強く抱きしめた瞬間、あやめちゃんは急激に成長。驚いた知らない男が手を離す間もなく、あやめちゃんは知らない男の体の穴という穴から侵入。
聞くのに絶えない音が、部屋中に広がり、知らない男の断末魔も、それに混ざる。
そして、絶望的な時間が怒涛のように流れきった後、何事もなかったかのように、全てが元通りになる。
知らない男が、目の前に横たえてそれ以上動かなくなったこと以外には……。
それからしばらく経って。
芸人仲間が久保に声を掛ける。
「お前、そのドーゾーかなり気に入ってるみたいだな?」
久保は笑いながら答える。
「銅像じゃないよ」
「お前ヤラしーな? 女の裸のドーゾー毎日手入れしやがって」
「別にそんなんじゃないよ。それに、ドーゾーじゃないからね」
「なんだ? じゃあ、石像か?」
「近いね。ただの石像じゃないよ」
「ん?」
「生きてるんだ。彼女」
立派に成長した彼女は、久保の芸人仲間に、満足げに素敵過ぎる笑みを浮かべて見せた。
I just wanna do ya? yes,I am growing now...
でも、この話はもう終わり。
256
:
名無しさん
:2005/07/27(水) 22:47:39
乙。もの凄く乙。
石の戦いと言う設定を取り入れつつ、
さらにその先へ進んだSFホラー物だと思いました。
クオリティハンパねぇ!お疲れ様でした。
257
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/07/27(水) 22:48:18
本編終了
◆あやめちゃんの正体および石の能力説明
ライフジェム→黄みがかった人工ダイヤモンド。人の遺灰や遺骨から採取した炭素を基に作る。
能力→できる由来も相まってか、石そのものが意思を持つ
思い人に寄生し、生命を吸い取り成長する。菌類でいうなら冬虫夏草のような感じ。
以上です。いかがでしたでしょうか。
自分では、荒ーい感じがします。
もし読んで頂いたのなら、本当に何でもいいので、一言いただければ幸いです。
では、失礼いたします。
258
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/07/27(水) 22:51:51
>>256
早速感想ありがとうございます。楽しんでいただけましたか?
自分が書いた意図が伝わったみたいで、本当にとても嬉しいです。
259
:
名無しさん
:2005/07/30(土) 21:21:35
ぜひ本スレ投下キボン
260
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/07/30(土) 23:05:18
>>259
本スレ過疎気味ですね。
落下するとして、これはネタ的に大丈夫でしょうか
261
:
名無しさん
:2005/08/03(水) 17:52:32
三拍子編希望したものです。
すごくおもしろかったです!!!
ありがとうございました!!!
262
:
◆EI0jXP4Qlc
:2005/08/03(水) 18:18:50
>>261
喜んでいただけたようで、何よりです。
私自身すごく嬉しいですよ。よかったー。
263
:
名無しさん
:2005/08/08(月) 19:38:06
しずちゃんのもう一つの能力があまり表に出てないし、
山ちゃん視点は新鮮かもと
南海の番外みたいなのを書いてみたんですが、
・このままでは南海話が続きすぎる
・石がちょっとしか出てこない
・結局視点がしずちゃん中心
・なのに無駄に長い
という本スレにはとても書けない仕上がりにorz
でもせっかくなのでここに投下させて下さい。
264
:
263
:2005/08/08(月) 19:39:36
「あの、ホント、すいません・・・」
「・・・・・・。」
おなじみの舞台衣装に身をつつんで立ちつくす僕らって、すごくマヌケだと思う。
とあるローカル番組のロケでこの公園に来たまではよかった。
が、何かトラブルが起きたらしく、撮影は一時中断。
「あと、どのくらい・・・?」
「最低、一時間くらいは・・・」
しかも。
「時間潰しに、漫画喫茶とか」
相方に提案してみる。
「無いな」
そっけない。
「せめてコンビニ」
もう一度いってみるが、
「無いな」
やっぱりそうか。・・・いい感じに街から離れたこの場所に、そういった類のものは無いのだった。
はぁぁぁっ、とため息をつく。本当に、これから一時間以上どうやって過ごせばいいんだろう。
「あっちのベンチで待ってようか」
「ん」
少し沈んだ気分で、広い公園の中央に立つ樹の下に見つけたそれへ向かい、歩きだした。
265
:
263
:2005/08/08(月) 19:40:46
「そんなんどこから見つけて来たん」
ベンチに私が座っても相方はそうせずにどこかへ歩いていってしまい、
そしてしばらくしてボールを抱えて戻ってきたのだった。
よく見ると、彼の歩いて行った方向には、ひっそりと設置されたバスケットゴールがあった。
「砂場のとこでね、忘れ物かな。拾った」
そう簡単に答えると、彼はいい暇つぶしができたといわんばかりにボールをついてみせた。
ポンポンと音をたてて、それは軽く弾む。
バスケには適してなさそうなおもちゃのボールの黄色が、まっすぐゴールに吸い込まれていった。
266
:
263
:2005/08/08(月) 19:41:50
(よし)
心の中でガッツポーズ。きちんとゴールに入った。思い通り。
この胸がスカッとするような感覚が、学生時代から好きだった。
しかしそんな気分とは裏腹に、間抜けな音でボールはこの手に戻ってくる。
「・・・・・・。」
まぁ、無いよりマシだし、と気を取り直し、ふと相方のほうを見る。
彼女がスカーフ(正しくは、その下に隠れているペンダントの石)に触れると、赤い光が彼女を包む。
そして聞き慣れた口笛が高く長く響く。そのあとは、決まって鳥の羽音が聞こえてくるのだった。
――鳥を操る。空を飛ぶ以外に彼女が使うことができるもう一つの力。
(しずちゃんにピッタリだよなぁ)
ハトやスズメや、それから何かよく分からない鳥が、彼女の肩へ、頭へ、足元へ降り立つ。
そんな光景を耳で感じつつ、もう一度ボールをついて走り出した。
今度はゴールのふちに跳ね返り、外してしまう。残念。でも実をいうと、この感覚も嫌いではない。
「僕が近づいたら、逃げるかなぁ?」
ふいにそんな言葉が口をついて出た。
彼女が座っているベンチの向こうではスタッフが慌ただしく走り回っている。
もちろん今、彼女(と鳥たち)に近づいて見ようだなんて思いもしてないのだから、こんな質問に意味など無い。
なのに口に出したのは、向こうの騒がしさとこちらの静けさの落差が、嬉しくて堪らないからだろうか。
267
:
263
:2005/08/08(月) 19:43:34
「僕が近づいたら、逃げるかなぁ?」
つい何となく呼んでしまった鳥たちが羽ばたくたびに頬に風を感じながら、
(上着くらい脱いだらええのに)
妙なお節介を頭の中で焼いていた矢先の彼の言葉だった。
胸の前でボールを抱えた彼に何て言おうかと口を開きかけたそのとき、
わぁっ・・・と声にならない声をあげながら五、六人の子どもたちが楽しそうに公園へ入ってきた。
「あっ、俺のボール!」
子どもの一人がそう言うと、彼らはそれが合図だったかのように相方のまわりに集まっていく。
「あーごめんねー、ちょっと借りてた」
彼がにこやかにそう言うと、
「返せ」
子どもたちは嬉しそうに彼へ突進する。
「えーなんで、一緒に遊ぼうよ」
「やだ」
「えー?」
そのままじゃれ合いが始まった。それにしても、赤ん坊はさておき、彼は子ども受けが良い。
もしかすると、あの子らくらいの小学生が夢中になるモンスターなどと同じ匂いでもするのかもしれない。
それに、私が言うのも何だが、彼はなかなか長身である。
そのため今もボールの奪い合いの途中で一人を抱え上げ、擬似ダンクシュートをキメていた。
(あーあ、これ全員にやらなアカンで)
案の定その通りになって、彼は律儀に一人一人に同じ事を繰り返し、すっかり汗だくになっていた。
(上着・・・)
立ち上がろうとする前に、後ろの人の気配に気がついた。撮影が長引くと言っていたスタッフだった。
「準備出来たんですが・・・楽しそうですね」
「ああ、・・けっこう、早かったですね」
腕時計にちらりと目をやりながら振り向くと別のスタッフがカメラをまわしていて、思わず苦笑した。
「しずちゃん」
相方の呼ぶ声がして、ボールがこちらへ転がってきた。それを拾い上げて、足で軽く飛ばす。
彼はそれを受け止めて、手招きをした。走り出すと、いつのまにかまた集まってきていた鳥たちが再び、
飛び立った。
268
:
263
:2005/08/08(月) 19:54:30
終わりです。思ったより長くなかったですねorz
季節ははっきり決まってないですが、何となく時期とか時間とかは
最近?だと思います。生まれて初めて書いたんで、何がなんだか・・・orz
269
:
名無しさん
:2005/08/09(火) 00:18:59
乙です
ほんわかした雰囲気でいいですねv
270
:
名無しさん
:2005/08/09(火) 03:26:20
乙です!初めて書いたとは思えない素敵さです。
子供受けがいい山ちゃんに対するしずちゃんの評価にワロスw
271
:
名無しさん
:2005/08/09(火) 17:32:02
南海ほのぼのしてて素敵ですね。
山ちゃんモンスター系かw
272
:
263
:2005/08/11(木) 19:26:11
>>269
できるだけマターリ、を目指してたんでそう言ってもらえて嬉しいですv
>>270-271
そこに気付いてくれて㌧クスですw
実は南海話の書き手さんの連載が終わったらその後の話として
書きなおして本スレに投下したいと考えてたんですが、自分で
読み返してみると恥ずかしすぎて無理なことに気がつきorz
いつか上達したら実際に参加してみたいです。
感想ありがとうございました。
273
:
けふえーる
◆J5DaNPfmbA
:2005/08/11(木) 23:43:18
はじめまして。
けふえーると申します。
山里氏ほんわかな小説の後で申し訳ないのですが、わたくしめも駄文ながら投稿したい次第でありまして。
しかし添削スレッドに投稿する勇気が無いのと、ジャンルも外れていると思いますので、ここに投下致します。
しかしビビッてまだ胃がきりきり痛みます。コワイヨー
274
:
黒と白 -芳香-
◆J5DaNPfmbA
:2005/08/11(木) 23:46:19
まあやは言いました。
『 いいにおいがする』と。
そうするとかみをくくった女の人が、いいました。
『わたし、こう水つけてないよ』
『そうじゃないのです。』
まあやはそう言ったきり、なにも言いませんでした。
女の人が、まあやにききました。
『ねえ、この石はなあに』
そう女の人がきいたので、まあやはにんまりとして、とくい気にこういいました。
『つかいかたは すぐに、わかります』、と。
―――たどたどしい文字と、その文字に想像される年齢の割に大人びた文章。
そして端にちびた色鉛筆を力いっぱい握り締めて線を書かれた、
緑の地に黒い線が入った丸。
「…かわいいな。…小説、なのかな。」
この原稿用紙を飛んできた方向の家に、きれいな4つ折りにして、そっとポストに押した。
ブラックアンドホワイト フレグランス
「…あなたのお名前は、まあやっていうの?」
ずっと沈んでいたはずの文字が、突然脳裏に浮かんで、無意識のうちに口をついて出て、即座にはたと唇を両の掌で押さえたが、すでに言葉は出きった後だった。
「…ごめん。ちが…」
「そうですよ」
いとうが言葉を続けようとした時、子供がにんまりと唇の端々を吊り上げて笑って、妙に大人びた物言いで言った。
「よく分かりましたね」
吊り上げた唇から小さな笑い声が洩れて、ふふと嘲笑じみた声が聞こえた。
―――まあやが突然吊り上げた唇を下ろして黙り込んだ。
「…いいにおいがする。」
先ほどとは明らかに違う様子で、子供がごねるように言って、いとうのほうを見上げた。
「私、香水付けてないよ」
「…そうじゃないのです。」
きっとそういうことではないのです、と、言いたかったのであろうまあやは、言い終わった後に頬をぷくとふくらませた。
「…この石はなあに」
いとうがそういった瞬間、まあやは膨らませた頬の空気を抜いて、ふふんとまた得意気に笑った。
「使い方は、すぐに、わかります。」
―――――――――――――――――――
一旦ここで区切りを入れさせて頂きます。
どうもはじめまして。
とても緊張シテイマス。
たまにコピペシテ抜かしているところもあるので、抜けているところがあればご指摘よろしくお願いします。
あと、お分かりでしょうがいとうさんはいとうあさこさんの方です。
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