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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

219 ◆1En86u0G2k:2005/06/08(水) 15:50:16
その日は気温が高いくせに一日中曇りのすっきりしない空模様だった。
珍しく自分ひとりの取材があったので事務所に出向いた平井は、
インタビューを済ませた部屋でそのまま携帯を手にしていた。
メール相手は柳原。話題はこのあとのネタ合わせをどこでするか。
結局いつも使っているファミレスに落ち着き、よろしくと最後に送って携帯を閉じる。
「平井」
振り返るとそこにいつのまにか立っていた、長身の先輩。
平井はびっくりしたあ、と笑い、とっさに張った緊張の糸を切ってその男の方に向き直る。
「気配消して後ろ取るのやめてくださいよ」
「別に消してんちゃうわ。悪かったな影薄くて」
「いやいやいや、そういうつもりちゃいますけど」
けど。どないしはったんですか、そんな真面目な顔して。
できるだけ何気ないことのように振る舞ったから、相手もそれに乗って来たらしかった。
「いや別に。…なんや大変らしいって聞いたからな」
それが仕事やなんかの話でないことはすぐにわかった。非日常が日常になってしまったのはもうお互い様だ。
「そっちもなんや面倒やって話じゃないすか」
「ぇえ?や、面倒ちゅうか…、うん、まあ色々やな」
曖昧に答えて窓の外を見たので目線を追う。重たく垂れ込めた雲から今に雨が降ってきそうだった。
傘は持っていない。とりあえず自分が帰るまで持ちこたえてくれればいい。
「お前はなんで白に行こうと思ったん」
唐突に振られた問いに焦点を戻すと窓ガラス上で目線がかち合った。平井はうーん、と唸りながら鼻を擦る。
「なんで、て………やっぱりこんなんに振り回されるのは嫌やったし」
「うん」
「あと…あいつがなんや責任感に燃えてしまってですね」
『早よ止めなあかん!俺らにできることやっていこ!』
2人揃って手に入れた石。降り掛かるピンチを回避しているうちに知った黒と呼ばれる人々の策略。
甲高い声で宣言してそれから、こちらを真剣な眼差しで見つめてきた柳原。
あの時自らの石の能力が攻撃にも防御にも頼れないものだと知っていたはずなのに。
真実を絶対的に手に入れることが逆にひどい重荷になるということも予想できたはずなのに。
「だから僕もね、一緒にいてやらんと。危ないでしょ、」
笑う言葉のはしっこでもう一度自分も確認していた。
そう、守る為だ。


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