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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

267263:2005/08/08(月) 19:43:34
「僕が近づいたら、逃げるかなぁ?」
つい何となく呼んでしまった鳥たちが羽ばたくたびに頬に風を感じながら、
(上着くらい脱いだらええのに)
妙なお節介を頭の中で焼いていた矢先の彼の言葉だった。
胸の前でボールを抱えた彼に何て言おうかと口を開きかけたそのとき、
わぁっ・・・と声にならない声をあげながら五、六人の子どもたちが楽しそうに公園へ入ってきた。
「あっ、俺のボール!」
子どもの一人がそう言うと、彼らはそれが合図だったかのように相方のまわりに集まっていく。
「あーごめんねー、ちょっと借りてた」
彼がにこやかにそう言うと、
「返せ」
子どもたちは嬉しそうに彼へ突進する。
「えーなんで、一緒に遊ぼうよ」
「やだ」
「えー?」
そのままじゃれ合いが始まった。それにしても、赤ん坊はさておき、彼は子ども受けが良い。
もしかすると、あの子らくらいの小学生が夢中になるモンスターなどと同じ匂いでもするのかもしれない。
それに、私が言うのも何だが、彼はなかなか長身である。
そのため今もボールの奪い合いの途中で一人を抱え上げ、擬似ダンクシュートをキメていた。
(あーあ、これ全員にやらなアカンで)
案の定その通りになって、彼は律儀に一人一人に同じ事を繰り返し、すっかり汗だくになっていた。
(上着・・・)
立ち上がろうとする前に、後ろの人の気配に気がついた。撮影が長引くと言っていたスタッフだった。
「準備出来たんですが・・・楽しそうですね」
「ああ、・・けっこう、早かったですね」
腕時計にちらりと目をやりながら振り向くと別のスタッフがカメラをまわしていて、思わず苦笑した。
「しずちゃん」
相方の呼ぶ声がして、ボールがこちらへ転がってきた。それを拾い上げて、足で軽く飛ばす。
彼はそれを受け止めて、手招きをした。走り出すと、いつのまにかまた集まってきていた鳥たちが再び、
飛び立った。


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