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【失敗】廃棄小説投下スレッド【放棄】

239 ◆EI0jXP4Qlc:2005/06/29(水) 21:34:10
 「へへ、すっごく、かわいい」
 「……世も末だな」
 「なんだとぉ?」
 「いや、深い意味は……」
 「お前なぁ? 俺の彼女見たらほんっっっとに羨ましがるんだからなっ」
 「じゃあ、見せてよ」
 高倉は右手を差し出す。すると、久保は少し表情を曇らせた。
 「別に良いけど……」
と言ったまま、続きを話し出そうとしない。高倉は怪訝に思った。
 「どうした? いいよ、今すぐじゃなくても」
 「実は……」
するとここで、久保は持参した大きなバックを振り返る。高倉もそれを追うように見る。
 久保は言った。
 「今日、来てるんだ」
 「……え?」
 久保は立ち上がるなり、バックの元へと行く。
 「高倉、来いよ」
 言われるがまま、高倉もバックの元へと行く。行こうとするのだが、
 「久保、ごめん。なんか、それに近づきたくない」
 そのバックはどこにでも売っているような、非常に大きい、ナイロン製のバック。
 「……そっか」
 久保はなぜか素直に納得し、その大きなバックに手を掛ける。
 その場に少しずつ、静かに積もっていくまがまがしい雰囲気。
 「……久保。彼女の名前、なんて言うんだ」
 高倉は、勤めて自然にそう言った。
 久保は、『それ』を取り出すのと同時に、答えてくれた。
 「あやめ、って言うんだ。ね、あやめちゃん」
 バックから出てきたあやめちゃん。その姿を見た高倉は思わず口を押さえた。

 多分、それはファンの子から貰ったテディベアだったと、久保が言っていたのを高倉は覚えている。俺にそっくりだろう、と自慢していた。
 「あやめちゃん、このテディベアが気に入ったらしくてさ、俺、おもわずあげちゃったよ」
 そのテディベアの腹部から頭部を劇的に突き破るようにして、
『黄色い半透明の身体をした30センチぐらいの女』が、静かに『生えている』。

 その姿はまるで、冬虫夏草。
 屍骸を糧にすくすくと育った、冬虫夏草。

 久保は本当に大事そうにあやめちゃんを抱えていた。高倉は問う。
 「久保、それは、『何だ』?」
 「……俺の彼女だよ」
 高倉は、右手の石が冷えていくのを感じた。
 「質問を変えよう。久保、『その石をどこで手に入れた』?」
 久保の表情が豹変した。
 「石なんかじゃない! あやめちゃんはあやめちゃんだ!!」
 高倉には分かっていた。あやめちゃんが最近芸人たちの間に広まっている不思議な能力を持った「石」だということ。
 そして、久保が持っているその石が、とてつもなく嫌な物だということも。
 だからこそ、『あやめちゃんの持ち主である久保の過去を見ることが、拒絶されたのだ』ということも。
 もっと早く気づくべきだったのだと、高倉は少しだけ後悔した。
 「それにしても……」
 高倉が、めずらしく感情を吐露する。
 「なんなんだ、この急激な話の展開は」
 非常に、イライラしているようだった。


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