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【個】『烏兎ヶ池神社』【場】

1『星見町案内板』:2019/02/02(土) 00:04:12

             〜ご由緒〜

星見町の『鵺鳴川』沿いに存在する『パワースポット神社』。
インターネットで『S県 パワースポット』と検索してみれば、
まず『20番目』までには間違いなく表示される程度の知名度である。
ご利益は主に旅の安全、学業成就、病気平癒、安産祈願など。

境内池が『霊池』として名高い。神社名も池に由来する(池が先にあったのだ)
霊験の由緒は諸説あり『京で討たれた鵺の一部が、この池にも落ちたのだ』とか、
『転落し、水を飲んだ人間が御利益を得たのだ』といったものが比較的多く見られる。

現在は厳重に柵で囲っており、出入りが許されるのは社家をはじめ関係者のみ。
一般の参拝客に向けては、柵の前までのみを開放している。撮影などは自由。
専用のボトルに詰めての授与(300円)も行っているが、飲用の際は『煮沸』推奨。

社務所では他に御守りや、おみくじ、絵馬、御札、御朱印帳などを頒布しており、
特に『御守り』については半ばアクセサリーのようなデザインの物も多く、
神社(池)の名にちなみ『カラスとウサギ』を戯画化したストラップ型のものが人気。

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                 ミ三ミz、
        ┌──┐         ミ三ミz、                   【鵺鳴川】
        │    │          ┌─┐ ミ三ミz、                 ││
        │    │    ┌──┘┌┘    ミ三三三三三三三三三【T名高速】三三
        └┐┌┘┌─┘    ┌┘                《          ││
  ┌───┘└┐│      ┌┘                   》     ☆  ││
  └──┐    └┘  ┌─┘┌┐    十         《           ││  
        │        ┌┘┌─┘│                 》       ┌┘│
     ┌┘ 【H湖】 │★│┌─┘     【H城】  .///《////    │┌┘
      └─┐      │┌┘│         △       【商店街】      |│
━━━━┓└┐    └┘┌┘               ////《///.┏━━┿┿━━┓
        ┗┓└┐┌──┘    ┏━━━━━━━【星見駅】┛    ││    ┗
          ┗━┿┿━━━━━┛           .: : : :.》.: : :.   ┌┘│
             [_  _]                   【歓楽街】    │┌┘
───────┘└─────┐            .: : : :.》.: :.:   ││ #
                      └───┐◇      .《.      ││
                【遠州灘】            └───┐  .》       ││      ┌
                                └────┐││┌──┘
                                          └┘└┘
★:『天文台』
☆:『星見スカイモール』
◇:『アリーナ(倉庫街)』
△:『清月館』
十:『アポロン・クリニックモール』
#:『烏兎ヶ池神社』
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67夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/03/10(日) 00:27:21
>>66

鉄少年が知っている今泉という少女とは同学年だ。
タイプは異なるが、これも何かしらの縁かもしれない。
客観的に見れば、単なる偶然の可能性の方が大きいだろうが。

「さすがハナシがわかるな〜〜〜。
 こういうのはヒトリよりフタリのほうがタノシイし」

というワケで門の前まで来た。
そういえば、まだ実物を目で見たコトはなかったかもしれない。
灯台下暗しというヤツだろうか。

「ほうほう、くわしいですな。
 『レキシのセンセー』かな??」

朱塗りの門を興味深そうに見上げる。
それから、少年と同じように一礼して内側に入った。
キョロキョロと辺りを見回す。

「で――『センセー』、つぎはナニするんでしたっけ??」

「アッチ??コッチ??」

あちこちに視線を巡らせる。
その方向は、手水舎とは反対だった。
放っておいたら関係ない場所へ歩いていきそうだ。

68鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/10(日) 00:45:39
>>67

「…いや、そういうわけじゃあ」
「単に好きなんだ」「こういうのが」

歴史の先生か?と冗談混じりに問われて、若干笑いながらも首を振る。
確かに世間一般の高校生よりは、こういうのは詳しいかもしれない。
自分は世界史よりも、日本史の方に力を注ぐタイプだ。特に伝記物はかなり読んでいる。
だからか、こういうのも中学生くらいの頃によく調べていたなぁ───など思いを馳せていると。

「ま、待った待った」「次はこっち、『手水舎』だ」

目を離すと独りでに歩いていきそうな少女の前に立ち、4本の柱の上に屋根が付けられた建物をしっかりと指差す。
中に水盤と柄杓が備えられていた。二度目になるが、自分も見本を見せる意味で行おう。
一礼をして、柄杓を手に取って左手、右手、そして口をすすいで。
そのすすいだ左手をもう一度流し、最後に柄杓の持ち手を洗った。

「ハンカチは、あるか?」

もしなければ、自分の手拭いを貸そう。なるべく濡れてない部分を渡して。

69夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/03/10(日) 01:24:22
>>68

呼び止められた時、危うく別方向に歩きかけていた。
しかし、声をかけられたために途中で足を止める。
そして、指し示された方向に視線を向けた。

「――――おん??なんだ、ソッチだったかー」

後について手水舎へ向かう。
同じようにして手を洗い、口をすすいで柄杓を洗った。
もっとも、お手本と比べると少しぎこちない手つきではあったけど。

「そういえばセンタクしてたんだっけ。
 かしてくれるんなら、かしてもらおっかな!!」

その時は、ちょうどハンカチを持ってきてなかった。
なので手拭いを借りることにした。
濡れた手を拭き取ってから、少年に返す。

「サンキュー!!」

「さて!!いよいよ『メインディッシュ』がチカイな!!」

「そういえば、センセーはナニしにきたの??
 『じんじゃめぐり』がシュミとか??」

「わたしはアレだよアレ。
 キョーミがあったっていうか、『ボウケンのとちゅう』でたちよったってカンジ??」

「わたしは『アリス』だからね〜〜〜」

ブルーのレンズの奥の瞳を輝かせながら、そんなコトをのたまう。
確かに、『そういう格好』をしているのは事実だ。
ネイルやらサングラスやら、本来のソレにはない要素も多々あるが。

70鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/10(日) 01:41:59
>>69

「ど、どういたしまして」

目線を逸らしながらもハンカチを受け取り、折り畳む。自由な人だなぁと思った。
好奇心に満ちた子供のようだ。中学校一年生の三枝さんよりも、更に子供らしいかもしれない。
いや、この場合はあの少女の方が大人びてるのかもしれないが。

「そうだな、『メインディッシュ』」「言い得て妙だが」
「こうして神社を訪れる人は、大体何らかの『願い』を持って来る人が多い」
「つまり、これからが参拝者にとって一番重要とも言えるな」

参道を通り、賽銭箱の前へ。財布から五円玉を取り出し、賽銭箱の中へと入れる。

「オレは、まぁ…」「その大体の人と同じだよ。『祈りごと』」
「…『冒険の途中』、アリスってことは」「つまり、『不思議の国のアリス』?」「好きなのか?」

やはりというか、あの少女を意識したファッションだったか。
『不思議の国』を旅したあの少女のように、自分も冒険中ということなのだろうか。
やはり、以前は外国に住んでいたのか?それなら日本が『不思議の国』に見えても、おかしくはないかもしれない。

「そういえば」「名前、言ってなかったな」
「鉄 夕立(くろがね ゆうだち)」「清月学園の高等部二年生だ」
「キミは…一年生だろ?」「学校で恐らく、見たことが、ある」

71夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/03/10(日) 09:50:21
>>70

「あ、ソレソレ。『ゴエンがありますように』ってヤツだ!!」
 
「『アリス』もしってる!!」

少年と同じように五円玉を取り出し、賽銭箱に投げ入れる。
一方の耳に片手を当て、硬貨の落ちた音を聴いた。
うんうん、いいオトだ!!

「まぁね〜〜〜。『クロガネくん』とにたようなモンだな!!
 だって、スキなんでしょ??こういうのがさぁ――――」

        クルリッ

言いながら、その場でグルッと体を回転させて周囲を見渡す。
さりげなくタメ口だが、この様子だと改める気はなさそうだ。
回ったせいで少々ズレたサングラスを両手で直しながら、少年に向き直る。

「――――でも、チョットちがうな。
 わたしが『アリス』なのは、わたしが『アリス』だから。
 まぁでも、にたようなモンってコトにしとこう」

うんうんと軽く頷いて、一人で納得している。
その言葉から、自分自身を『アリス』と重ね合わせていることが窺える。
以前は外国に住んでいたという推測は、答えから遠くはなさそうだ。

「そう、ひとよんで『ユメミガサキアスミ』――
 コートーブの1ねんせいってコトになるね〜〜〜」

「『アリス』ってよんでもイイぞ!!
 『ユメミン』とか『アルカラ』ってよんでくれてもオッケーだ!!」

本名に続いて、複数の呼び方を次々に挙げていく。
どうやら『ニックネーム』のようなものらしい。
どの呼び方でも構わないだろうし、これ以外の呼び方でも問題ないだろう。

「ところで、クロガネくんの『オネガイ』ってなんなんですかね??
 あ、わかっちゃった〜〜〜。
 『ゴエンがありますように』だから、『イイヒトがみつかるように』ってコトだ!!」

「それなら、さっそくみつかったんじゃない??ホラ、ココに『イイヒト』が。
 ウンがよかったな。いま、『アリス』は『フリー』だ。
 うまいコトくどきおとして、キミのモノにするチャンスだぞ!!」

自分の顔を指差しながら、勝手なことをほざく。
冗談のような言い方なので、別に本気で言っているわけではないだろう。
しかし、放置すると後で『妙な噂』が一部で広まる可能性もなきにしもあらずだ。

72鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/10(日) 21:58:27
>>71

タメ口に関しては、気にならなかった。
礼節の形は人や文化それぞれだし、むしろ彼女の場合は、その雰囲気も相まって気が置けない空気を作り出すのが上手い。
動作や口調が一々面白く、見ていて飽きない。やはり直視はできないが。

>「――――でも、チョットちがうな。
> わたしが『アリス』なのは、わたしが『アリス』だから。
> まぁでも、にたようなモンってコトにしとこう」

「・・・・・なるほど」

詳しくは分からないが、彼女は『アリス』に憧れているのではなく、『アリス』そのものだという。
その言葉には、ただの憧れではない、何かしらの強い想いを感じた。だから、頷く。

>「そう、ひとよんで『ユメミガサキアスミ』――
> コートーブの1ねんせいってコトになるね〜〜〜」

>「『アリス』ってよんでもイイぞ!!
> 『ユメミン』とか『アルカラ』ってよんでくれてもオッケーだ!!」

「ふむ」「『アリス』が『アリス』なら、『アリス』でいいだろう」

しかし『アルカラ』は何なんだろう。一体どこから来たのか。
トルコの首都がそんな感じの名前だった気がするか、この場には全く関係がないだろう。
ちょっと気になってきたので、本人に聞いてみようかと考えたその時。

>「ところで、クロガネくんの『オネガイ』ってなんなんですかね??
> あ、わかっちゃった〜〜〜。
> 『ゴエンがありますように』だから、『イイヒトがみつかるように』ってコトだ!!」

>「それなら、さっそくみつかったんじゃない??ホラ、ココに『イイヒト』が。
> ウンがよかったな。いま、『アリス』は『フリー』だ。
> うまいコトくどきおとして、キミのモノにするチャンスだぞ!!」


「・・・・・・・・・・」

展開が早い。彼女は『アリス』だと言うが、『白うさぎ』もちょっぴり混ざってるんじゃあないかってくらいの。急ぎ足だ。
もちろん冗談だろう。むしろ冗談でなかったら、これからの彼女が心配になる。けれど。

「キミとは今日出会ったばかりだからな」
「もしこれからキミのことを深く知る機会があって、生涯を共にしたいと思ったなら。
 その時は、改めて結婚を前提に交際を申し込む」「その時もキミが『フリー』だったらな」

こういった事は、雑にはできない。それが自分の性分だ。
冗談なら、1人真面目に返した自分が恥ずかしい思いをするだけだ。それは気にならない。
…いや、だがこんな真面目に反応してしまうから一部の女性から『キモい』と言われてしまうのでは?
というかそもそも女性が苦手な自分にそんなチャンスが生涯訪れることがあるのか?
考えるほど気分が落ち込んでいきそうになる。深いため息をついた。

「…まぁでもアリスは感がいいな」「『復縁』だよ」
「オレは友人と仲直りがしたいんだ」


礼を二度、柏手を二度。そして両手を合わせ、そっと目を閉じて。両手を下ろしながら瞳を開き、深く礼をする。
そしてアリスの方へ体を向けながら手を前へ出して、同じことをするように促した。

73夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/03/11(月) 00:18:57
>>72

「――――…………」

一瞬の間、黙り込んだ。
その返し方は予想外だった。
聞いてるこっちが恥ずかしくなってくる。

「あ、そう――」

「えーと、まぁその――」

「そのときも『フリー』とはかぎらないけど!!
 『アリス』はコイおおきオンナだし!!
 いつもイロんな『フシギ』をおいかけてるからな!!」

やや言い淀みながら、そのように返した。
……視線を微妙に外しながら。
この『アリス』をテレさすとは、クロガネくんやるな!!

「『ナカナオリ』??なんだなんだ、ケンカでもしたのか??
 それとも、ケンカするほどナカがイイってか??」

少年の参拝する様子を横目で見つつ、茶々を入れる。
その後で、自分も同じように手を合わせ、頭を下げた。
願った内容は――たくさんの『不思議』に出会えますように。

「――で、いつからケンカしてんの??」

「『ナカナオリ』のコツは、あいてのキモチになってかんがえるコトだな」

偉そうなことを言っているが、それを裏付けるほどの経験はなかった。
アドバイスとして役に立つものかどうかは怪しいところだ。
だからといって、冗談で適当なことを言ったというわけでもないが。

「むこうも『ナカナオリ』したいとおもってるかもね〜〜〜」

「キッカケがないと、なかなかムズカシイんだよなぁ」

74鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/11(月) 00:36:11
>>73

「えっ」

目を逸らすアリスに、何だそのリアクションは、と思わずツッコミそうになる。
真面目に返した事こそ恥ずかしいかもしれないが、内容自体は、特に変な所はなかったはずでは。
相手をより深く知って好きになれば、やがて交際を経て結婚となる。普通の恋路ではないのか。
…いや、変なのか?自分は『女性』との関わり合いが少ないだけに、その機微に疎い。
この言葉に嘘偽りは全くないが、あまり口にはしない方がいいのだろうか。

(うーむ…女心は難しいな)

無事に参拝を終えたアリスを見届けて、賽銭箱の前から離れた。

「…一月ほど前からだな」
「相手の気持ちを考えて、やったつもりだったんだが」「それがキッカケで怒らせてしまった」

>「むこうも『ナカナオリ』したいとおもってるかもね〜〜〜」

>「キッカケがないと、なかなかムズカシイんだよなぁ」

「そう思っていてくれたなら、いいな」「8年間もずっと友達だったから」

「ところでアリスは何を願ったんだ?」

75夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/03/11(月) 01:13:41
>>74

「ほうほう、イッカゲツか。だいたいソレくらいが『わかれみち』なんだよなぁ」

「あんまりながびいてくると、ケンカしてるジョータイがアタリマエになってきて、
 ヨリをもどすのがムズカシクなっていくからな〜〜〜」

「まぁ、やっぱり『ナカナオリ』はハヤめがイイよねってコト。ガンバレ!!」

詳しい事情は知らないし、自分も経験はそんなにない。
だけど、こういうのは早めの解決が大事だろうとは思っている。
ケンカしているのが常態化してくると、仲直りするのは難しくなっていく。

「あ、わたし??それはまぁ、ヒトツしかないでしょ」

「ステキなコイビトにめぐりあえますように――」

そう言って、おもむろにサングラスを外す。
黒目がちの大きな瞳が、社を見つめる。
かと思うと、悪戯っぽく笑ってサングラスを元通りに掛け直す。

「なんていうとおもった??
 たくさんの『フシギ』にであえますようにってコト。
 『アリス』はコイおおきオンナだから」

視力を得てから、様々な『不思議』に出会ってきた。
自らのスタンドを自覚して以降は、その機会は更に多くなった。
今後も、どんどん『未知』に出会っていきたいと心から思っている。

「クロガネくんも、なんかめずらしいモノとかみかけたら、おしえてよ。スグいくから。
 コウウンにも『アリス』のレンラクサキをゲットだ!!
 やったぜ、クロガネくん!!」

自分のスマホを取り出す。
連絡先を手に入れておこうという腹らしい。
『未知の不思議』へ繋がるアンテナは、多ければ多いほどいいのだ。

76鉄 夕立『シヴァルリー』:2019/03/11(月) 01:41:54
>>75

「そう…なのか」「喧嘩をあまりしたことがなくて、分からなかったが」
「確かに、長引けば長引くほど退き時が分からなくなる、か」
「・・・・・・・・・・・・・・・よし」

「ありがとう、アリス」

決めた。これから友人の家へと行って、もう一度謝罪をしてこよう。
道すがら、この少女が言ったように、相手の立場を考えて。真剣に、自分の感情を伝えてみよう。
自分の中で一番大切な友人だ。失いたくない。

>「ステキなコイビトにめぐりあえますように――」

ああ、実に年頃の少女らしい願いだ。それはそれで、とてもステキなものだが。
しかし先ほどの『イイヒト』発言と同じように、これも本気とは思えない。
少なくとも、これが一番の願いではないだろう。

>「なんていうとおもった??
> たくさんの『フシギ』にであえますようにってコト。
> 『アリス』はコイおおきオンナだから」

「少しずつ分かってきた。キミという子が、どんな人間なのかは」

目は合わせないままに、しかし肩をすくめてみせる。
色気より食い気、ならぬ色気より好奇心と言ったところか。本当に、面白い人だ。

「・・・・・珍しいもの、か」「『超能力者』とかでもいいのか?」
「もちろん、もしそんな人間がいれば、の話だが」

連絡先を交換しながら、思う。
『スタンド使い』のことを説明すべきだろうか。だが、彼女が一般人である限り。
あまり深入りはして欲しくないと思う。この性格だ、それこそ多少の危険も物ともせず踏み込みかねない。

「アリス。『不思議の国』の探索もいいが…元の世界には、いつでも帰られるようにな」
「特に、夜道や人気のないところはなるべく避けた方がいい」

彼女も高校生だ、余計なお世話だと思うが、それでも口に出さずにはいられない。
どんな人間でも犠牲になる可能性がある、それが『通り魔』というものだから。

77夢見ヶ崎明日美『ドクター・ブラインド』:2019/03/11(月) 02:09:29
>>76

「『チョーノーリョクシャ』??ナニそれキョーミあるゥ〜〜〜」

「もしいたらおしえてくれよな!!ゼッタイみにいくから!!」

たぶん冗談だろうと思っていた。
だから、こちらも冗談で返したつもりだった。
当然ながら、実際のところは分からない。

「ダイジョーブだ!!
 わたしは『アリス』だからな!!
 どんなセカイからだってブジにかえってこられるぞ!!」

          フフン

そういう表情は、どこか奇妙な自信に溢れていた。
それだけの顔ができるだけの『裏付け』があるからだ。
少なくとも普通の通り魔くらいなら、『ドクター』の力で軽くいなせる。

「まぁ、そのキモチはスナオにうけとっとくけど。
 もっといてもニモツになるワケじゃないしね〜〜〜」

スタンド使いの中には危険なヤツもいる。
たとえば、『エクリプス』の残党とか。
その存在を知っているからこそ、もしもの時のための警戒は怠っていない。

「――――さて、そんじゃまたクロガネくんにアンナイしてもらおっかな〜〜〜」

「あ、アッチのアレってなんだろうね??」

連絡先の交換を終えて、またキョロキョロし始めた。
境内の一角を指差し、そちらの方へ歩いていく。
ある日に起きた、本人達の知らない『超能力者』同士の小さな邂逅だった。

78鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/03/19(火) 00:52:03

「――――ふぅ」

         ザッ

              ザッ

夜の神社に、残っていた。
バイトの巫女達はこの時期この時間にはいない。
境内こそ閉め切ってはいないが、社務所は閉じている。

だから、一人で好きに歩き回れた。

          カサッ

「あーあー、もったいない」

思わず独り言が零れたのは、
拾ったボトルが『授与品』のそれだからだ。

落として帰ったのか、要らなくなって捨てたのか。
煮沸しろと説明したのにそのまま飲んで捨てたのか。
半分ほど中身が残ったボトルを手に、境内でたたずむ。

79宗像征爾『アヴィーチー』:2019/03/19(火) 22:09:09
>>78

境内に別の足音が聞こえ、一つの人影が現れた。
カーキ色の作業服を着て、革手袋を嵌めた中年の男だ。
鳥舟の姿に気付き、足を止めて一礼する。

「まだ開いているか?」

「閉まっていないようだから入って来たが」

歩いて近付きながら、そのように尋ねる。
何時だったか別の神社へ立ち寄った時に、『煙草屋の男』に出会った事があった。
烏兎ヶ池神社を訪れたのは、今が初めてだ。

80鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/03/19(火) 23:04:19
>>79

「はい、はい、開いてますよ。
 こんばんは、ようこそお参りです。
 あ。社務所は閉めちゃいましたんで、
 御守りの授与とかは出来ませんけど」

          ペコーッ

「ボクはまだ残ってますんで」

礼を返してから、顔が見える程度に歩み寄った。
金色の目も、夜の闇を照らす程明るくはない。

「今夜はご参拝ですか?」

「それとも、『神秘の池』の方で?」

「どちらにしても――――案内しますよ。
 暗いですから、ね。ここは町から遠いし」

川沿いの神社は、ネオンの彩りには縁遠い。
もちろん、見て回るのに必要なだけの灯はあるが。

81宗像征爾『アヴィーチー』:2019/03/19(火) 23:33:15
>>80

「神秘の池か――」

「その場所が有名だそうだな」

闇に浮かぶ金色の目を見やる。
珍しい色だと思ったが、指摘する事でも無い。

「夜に参拝するのは縁起が悪いという話を耳にした覚えがある」

「逆に昼間よりも神秘性が高まるというような話もあったか」

境内を軽く見渡して独り言のように呟く。
無論どちらが正しいかは知らないが。

「――では参拝させて貰いたい」

「どちらに転ぶか試してみる事にしよう」

82鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/03/20(水) 00:12:09
>>81

「ええ、有名です。霊験ってやつが、あるってね。
 でもまあ、そういうのは信じる心次第ですから。
 参拝する時間もね、夜の方が信じられるなら、
 こうして夜にするのが、きっといいんですよ」

         ニコニコ

「それじゃ、ご参拝ということで」

拾ったボトルをくず籠に捨てて、
鳥居の外へと歩き出した。
まだ冷たい夜風が、境内を歩く二人の背を押す。

「まっ、ですからね、信じる心があれば、
 手順は細かく考えなくてもいいんですけど。
 一応『おきまり』の手法でやったほうが、
 精神的にも『入りやすい』と思うんです」

「大きく分けて手順はみっつ。
 まず、鳥居の前で一礼をして。
 それから手水舎で、手や口をお清めして。
 それから最後に『二礼二拍手一礼』……と」

そう言いながら、鳥居に向けて頭を下げる。
そして宗像に顔を向けて……再び笑みを浮かべた。

「と、まあ、こういう感じでね。
 角度とかはそんなに気にしなくってもいいですよ」

83宗像征爾『アヴィーチー』:2019/03/20(水) 14:53:39
>>82

「行動を惜しむ人間が訪れた機会を活かせないのは珍しくない」

「願掛けを決意表明だと捉えれば気の持ち方次第という考えは理に適っている」

俺の中には信心と呼べるような物は無い。
だが、それを敢えて口には出さなかった。

「なるほど――分かった」

「形式があるなら従おう」

説明された通りに一礼し、手と口を清めた。
そして、最後の段階に入ろうとした直前に動きを止める。

「いや……」

「忘れていたな」

ある事を思い出した。
大した事では無いが、全く無視する訳にもいかない。

「祈願する内容を用意して来なかった」

「どうするか――」

その場に佇んで暫く考えを巡らせる。
やがて、不意に巫女の方を振り向いた。

「参考までに聴きたい」

「――仮に君が参拝する側だったとしたら何を願う?」

84鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/03/20(水) 22:49:08
>>83

「『プラシーボ効果』……って言うのは、
 流石に『罰当たり』の気はしますけど、
 『信じられる』とか『叶うにきまってる』とか、
 そういう気持ちが背中を押すものですからね」

あくまで、押すだけだ。
ゴールに運んで行ってはくれない。
押された結果として、倒れるかもしれない。

「――?」

「何も、忘れてませんでしたよ。
 凄く良いカンジの参拝―――ああ!」

        「それは、大変だ」

   ハハハ

小さく笑って、それから考えていたが、
自分に改めて向いた視線を感じて顔を上げた。

「まあ、そうですねえ」

「ボクは、この神社を知ってますからね。
 ここの『得意分野』の『旅の安全』か、
 もしくは『病気平癒』あたりですかねえ。
 べつに、特別病んでるわけじゃないですケド」

「そうじゃなかったら――――ええと、『健康長寿』とか」

          「何にしたって健康じゃなきゃ、ね」

巫女らしいというのか――――どこか模範解答的な願いだ。

85宗像征爾『アヴィーチー』:2019/03/20(水) 23:49:52
>>84

巫女の返事を聞いて軽く頷いた。
納得した事を示す動作だ。

「旅の安全――か」

「神社に得意な分野があるとは知らなかった」

模範的である事自体は良いとも悪いとも思わなかった。
ただ、恐らく悪くは無い答えなのだろう。

「お陰で参考になった」

「では、次の仕事の成功を祈願しておこう」

二礼二拍手一礼を行う間に、スタンド使いとしての仕事の成功を祈願する。
まだ新しい仕事は受けていないが、今後の為に今やっておく事にした。

「――参拝は済ませたが、帰る前に池を見ておきたい」

「まだ時間があれば案内して貰えると有り難い」

参拝を終えて再び巫女に視線を向ける。
黒い瞳には何処か虚無的な光があった。

86鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/03/21(木) 00:21:09
>>85

「神さまも、出来る事と出来ない事がありまして。
 うちでお祀りしてる神さまはその辺が、
 得意分野ってことらしいんです。
 ボクも直接会って聞いたわけじゃないですけど」

「ええ、是非祈っていってください」

         スゥーーー

             パンッ   パン

自身も祈願を行っておく。
手本という意味もあるし、
実際に健康を祈ってもいる。
それくらいカジュアルに願えばいいと思う。

「池、いいですよ。
 この時間だと見えづらいかもだけど、
 それでも『雰囲気』はあると思いますよ」

        「……」

言い終えてから、目が合った。
鳥舟の目は灯篭のように金色の光を揺らす。
だが、夜闇を照らさないのと同じで、虚無に差す光ではない。

「それじゃ、行きましょう。ちょっと林を歩くんで、
 足元はね、ちゃんと掃除とかしてますけど、
 頭に木の枝が当たったりすると危ないですから」

             ザッ  ザッ

        ・・・そして、池に向かって歩き出す。

87宗像征爾『アヴィーチー』:2019/03/21(木) 01:09:13
>>86

「神の世界にも分業制があるのか」

「専門家が分かっている方が祈願する側としても助かるかもしれないな」

「誰に頼むべきか分からなければ困る事もある」

巫女の祈願する姿を見届ける。
そして横に並ぶ形で歩き始めた。
目的地に向かう途中で言葉を続ける。

「俺は配管工事を専門に扱っている」

「水道管の修理なら出来るが怪我人を治療するのは無理だ」

「逆に言えば水漏れを直す為に病院に行く人間はいない」

歩きながら頭の付近に張り出していた枝を避ける。
参拝したとはいえ俺には本当の意味で祈願するような事は無い。
この神社に来たのも単に時間潰しの一つだった。

「神秘の池――だったな」

「そう呼ばれる理由には幾らか関心がある」

「どんな場所なのか確かめさせて貰おう」

88鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/03/21(木) 02:22:00
>>87

林道を抜け、視界に広がるのは夜空を映す水鏡。
池は――――大きな池だ。空気が澄んでいる。
何か『霊的』なものは、そこにあるのだろうか?

「ここが、『神秘の池』ですよ」

「謂れは、色々ありますけど――――
 それを確かめる術は、合法的にはないし、
 違法に確かめるのを許す気もないですから。
 底にほんとうに鵺が沈んでいるのか? とか。
 ここの池に落ちたら運気が上がるのか? とか、ね」

外縁部を囲む木の柵に、視線を向ける。

「その辺りも『信じる』かどうか、なわけです。
 あ、でも、生水のまま飲んじゃだめなのは、
 疑う余地なく、絶対なんですけどね。そこはね」

そして、おどけた調子でそう続けた。
それだけだ。他に確たるものなど、ここにはない。

神秘の池・・・その揺らぎが、宗像の瞳を映していた。

89宗像征爾『アヴィーチー』:2019/03/21(木) 03:31:29
>>88

神秘の池を前にして、ある種の雰囲気を感じた。
もっとも、それが霊的な物かどうかは定かでは無いが。

「飲用に適した上水道でない事は明らかだな」

「下水でも無いが」

暫く無言のまま池を眺めていた。
黒い瞳の中に、神秘の池が映り込んでいる。

「少なくとも景色の良い場所ではあるだろう」

「あるいは――神秘的と表現出来るかもしれない」

その時、水面が光ったように思えて目を細めた。
やがて、おもむろに空を見上げる。

「今夜は満月だったか」

「道理で明るい訳だ」

いつの間にか、月を隠していた雲が晴れている。
池が輝いたように見えたのは、月明かりが反射したに過ぎなかった。

「――だが悪くは無い」

「景色の良し悪しと力の有無は別問題だ」

元々、何かを期待して来ていた訳では無い。
実際に見る事が出来たのなら、それで十分だ。

「お陰で迷う事なく見て回る事が出来た」

「――案内に感謝する」

踵を返し、神秘の池に背を向ける。
そして、巫女に対して再び一礼した。

90鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/03/21(木) 22:00:19
>>89

「調整とか、してませんからね。
 成分そのまんま、神性もそのまんま。
 授与してる分も汲んだそのままなので、
 もし今後買う事あったら煮沸の方お忘れなく」

営業トークをかけつつ、
視線を池から宗像の方へと戻した。

「でも、『絶景』として楽しんでもらっても、
 ボクとしては全然オッケーなんですよね」

それからつられて、空を見上げた。
雲に隠れていた月が池を照らしたが、
その僅かに淀んだ水底は暗闇の中。

「『神秘』っていうのはなにも、
 『不思議な力』だけじゃあなくって、
 『雰囲気』でもいいんですから」

「――――ようこそお参りでした」

            ザッ

「またぜひ、お昼にもお参りくださいね」

踵を返した宗像の背にそう声を掛け、頭を下げた。
立ち去る参拝客を追う理由はない……そのまましばらく、池を眺めていた。

91鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/05/04(土) 01:33:19

春の陽気も少しずつ単に陽気になりつつある頃、
鳥舟学文は巫女姿で、『神秘の池』の周りを掃除する。

            カコッ

「ん……」

                 チャポッ・・・

(中身が入ったままじゃないか……もったいない。
 せっかく、ご利益ってやつだから買ったんだろうに)

拾ったボトルは――――『神秘の池の水』の『授与品』だ。
ほとんどどころか減っていないようにすら見える中身は、
これが『落とし物』か『忘れ物』だということを想像させる。

(どうしようかな。湖に戻すのは、さすがによろしくないよねえ)

それを片手に、周囲を見渡した。まだ持ち主が近くにいたりしないだろうか?

92『ニュー・エクリプス』:2019/05/05(日) 21:38:25
>>91

 「ひょえ〜〜〜! 落としたー!」

 「アホ踊りをしてたからだ」

 「むっ! あれはアホ踊りじゃないっス!!
ニュー・エクリプス正式のエクリプス・ダンスなんっすからねっ!」

 「何処に落としたのか心当たりある?」

 「桜のある部分っぽかっかなー、踊ってたのは。
けど、気づいたら無くなってたよ〜」

 何やら正門となる方向から、騒がしい四人程の声が聞こえてた。
どうやら落とし物を探してるらしい・・・。

93須磨『ズーマ』:2019/05/05(日) 22:25:40
>>91(鳥舟)
「こんにちわー」

ダルメシアン柄の半袖パーカーに、ハーフパンツ。
ショルダーポーチを引っかけて現れた。背丈の低いくせ毛の小学生だ。

「――――あ、ああ!

 そーやって汲んでるんだぁー、それ!
 大変そー。蛇口とかくっつけないの?」

今さっきに『鳥舟』が拾った『水入りボトル』を、
直接『汲み取った』と解釈し、すっとんきょうな声を上げた。


>>92(ニュー・エクリプス)
「ん?」

神社の鳥居を潜る際、
『四人組』の騒がしい声が聞こえてきた。

「(落とし物っぽいなぁ〜〜〜ッッ

  戻っても見つからなかったら、
  一緒に探したげよぉーっと……)」

四人組を素通りして、『池』の方へと向かっていく。

94鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/05/05(日) 23:22:20
>>92(ニュー・エクリプス)

「――――――?」

正門と、境内からやや歩く池にはかなり距離があるとはいえ、
彼女らの『パワフルさ』ゆえか声は『何となく』聞こえてきた。

                 ・・・が。

>>93(須磨)

前にあった晩とさほど変わらない、左右非対称の髪の『巫女』が振り向く。

「こんにちは――――――ああ、須磨くんじゃないか。
 久しぶり、ってほどではなかったかな。参拝に来てくれたのかな? それとも、
 ボクと『櫻』……じゃないや、『二宮君』を共演させる目途が立ったのかな!」

           「なんてね」

池に来ている参拝客は、境内にいる方よりも優先して自分が対応すべきだと思った。
ましてや知り合いだし、ちょっと目を離すとヤバそうな子だ。
べつに、何か危ない事をした前科があるとかではないが・・・

「ああ、これはね、そうじゃないんだよ。
 汲む方法は『企業秘密』……企業じゃあ、ないけれど」

別に大した方法ではないが。
 
「前にちょっとだけ話したっけ、うちは水を授与……『売ってる』って話。
 これはその『売った水』で、多分ね、誰かの『落とし物』かポイ捨てだと、思うんだけど」
 
                 「一応聞くけど、須磨くんのじゃあないよねえ」

彼がわざわざ神秘の水を買いそうにも思えないし、落とし主ではないのははっきりしている。

>ニュー・エクリプス

逆に、池のほうから声がする事――――境内には人はいない事が分かる。
厳密には『巫女』は社務所にいるし、『参拝客』もわずかながらいるが、
声をかけてくる人はいない、という事だ。『池』までの道は、案内板もある。

95朝山『ザ・ハイヤー』:2019/05/05(日) 23:37:13
>>93-94

エッ子「うーん。境内に社務所、階段……あ、池も見に行ったような」

ムーさん「じゃあ私達はこの辺りを探すか」

城生「社務所で拾って貰ってるかも知れないね」

われらニュー・エクリプスの幹部の落とし物を探す任務っス!

ならば首領の私も幹部のお助けをするっス。まったく悪の首領も
気苦労が絶えないもんっス!!

と言うわけで、小走りで『池』まで向かうっス。大きな池っス

巫女さんに男の子がいたっス・・・んんっ!

「あー! それ、エッちゃんの落とし物っス!」

ビシー!! とボトルを指しつつ告げるっス。早速
ニュー・エクリプスの任務完遂っス! 流石は悪の首領っス。

「どうも拾ってくれて有難うっス!
それ、友達の落とし物っス!」

巫女さんに近づくっス。

96須磨『ズーマ』:2019/05/05(日) 23:51:40
>>94(鳥舟)
「ボクもそーいう『吉報』を持ってきたかったンだよなぁ。

 この間さぁ、『池の水』を抜こうとした、って話したら、
 ママにちょー怒られたんだ。……迷惑掛けちゃあいけませんって」

渋々、と事の顛末を説明する。
言動とは裏腹に、しゅんとした様子は全く見られない。
ショルダーポーチをガサゴソ漁り、綺麗に包まれた『瓶詰』を取り出す。

    「これ持って『謝り』に行くとか言い出したから、
     先回りしてきたんだ。ママ同伴なんて友達に見られたらハズいしー」

    「だから、それ捨てたのはボクじゃあないよ!
     給食に出た『抹茶牛乳』がエグくて、コッソリ掃除用具入れに隠したら、
     『大掃除』でボロッと出てきて以来、そーいうことはしないって決めてるんだって!」

バタバタと両手を振って、必死で無実をアピールする。
未開封のボトルが落ちてる理由も全く検討が付かないが、
『ポイ捨て』と耳にすれば、なんとなく悪いことだと察していた。

>>95(朝山)

>「あー! それ、エッちゃんの落とし物っス!」

    「あ、あぁ〜〜〜〜〜ッッ!!

     ポイ捨てしたヤツだぁぁ〜〜〜〜〜ッッ!!」

ボトルを指し示す姿に『カウンター』を決めるように、
『朝山』目掛けて指先を突き返す。

    「もぉぉ〜〜〜〜ッッ

     『池の水』を汚すなんて、良くないぜッ
     そーいうの、ぜってぇー『悪い』ことじゃん!」

『濡れ衣』でも着せられていたのか、
頬を膨らませながら、善人面して糾弾する。

97鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/05/06(月) 00:33:38
>>95(朝山)
>>96(須磨)

「――――――えらいねえ、須磨くん。
 疑うみたいな言い方をしちゃってごめんねえ。
 この前のことだってボクはもう気にしてないし、
 瓶詰ももらえるなら、なおさら気にしないからさ」

(まあ須磨くんも、そこまで気にしてないかもしれないけど)

もともと特に強く疑っていたわけでもないし、
思ったより無実を強調してくるので、
早めにそれを認めることにした鳥舟。

「ちなみにこれ、何の瓶――――」

と会話が『抹茶牛乳』などに差し掛かるより早く、
ちょうどその場に近づいてきた『朝山』のほうに振り向く。

「――――こんにちは、ようこそお参りです。
 えーと、エッちゃん……ああ、きみのお友達なんだね」

           スッ

「それで、その子――――」

その、『エッちゃん』本人に確認しないことには返しづらい。
高いものではないとはいえ……ここに来ているのかな、と聞こうとして。

「あっ、待って待って須磨くん、『落とし物』って言ってるからね。
 たしかに『池の水』を汚すのはよくないことなんだけど――――
 偶然落としちゃっただけなら、むしろ今頃見つからなくって困っているだろうし」

須磨が糾弾し始めてしまったので、間に入るようにしてなだめる。ペットボトルは手に持ったままだ。

98朝山『ザ・ハイヤー』:2019/05/06(月) 19:47:59
>>96

>『池の水』を汚すなんて、良くないぜッ
>そーいうの、ぜってぇー『悪い』ことじゃん!

「んのぉ!? おぉ!! その言葉通り、自分っ!
悪の組織の首領っス!! 初対面の人間にも知って貰えてるなんて
なかなか自分も有名になったもんっス!!」 ふんっス!!

何やら勘違いして受け取る、裏の顔は悪の秘密組織
そう、悪の首領モーニングマウンテン!!!

>>97

「こんちはっス! 自分朝山 佐生っス。清月の二年生っス!!
それはエッちゃん先輩と一緒に此処で貰ったんっス。踊ってる時にきっと
池にあやまって落ちちゃったんス。落としちゃって御免なさいっス
エッちゃん先輩やムーさん先輩に、のり先輩は社務所のほうにいるっス。
なんだったら今すぐ呼んでくるっス」

「それにしても綺麗な池っス。桜も満開だと何時もお花見し放題っス
此処で毎日過ごせるのってきっととっても楽しそうっス!」

なんだか綺麗な池を見てると体が無性に動かしたくなったス。

 ブゥン!

「楽しいので踊るっスーーーー!!!!」

『ザ・ハイヤー』で『再分配』しつつのエクリプス・ダンスだ!!

99須磨『ズーマ』:2019/05/06(月) 22:04:48
>>97(鳥舟)
>>98(朝山)
>「あっ、待って待って須磨くん、『落とし物』って言ってるからね。

    「うおッ  そーいうことなんだ!

     まさか『池の水』に『池の水』を落とすなんて、
     砂場にバーミキュライト撒くようなマネするなァァ〜〜〜ッッ」

『鳥舟』の仲立ちもあって誤解を解き、人差し指を引っ込める。
そのまま『ボトル』を返して、一件落着かと思いきや……。

>「んのぉ!? おぉ!! その言葉通り、自分っ! 悪の組織の首領っス!!

    「へ、へェェェ〜〜〜〜ッッ

     じゃあ、『池の水』も悪いことに使うの?
     ぜってェー、止めといた方がいいよぉー。

     こっちの巫女さんも水売って暮らしてるんだって。
     『水商売』って不安定だって、お兄ちゃんも言ってたしさぁ」

『悪の組織』と聞いて、思わず面食らって真顔になる。
今は踊ってるだけで悪いことはしてないが、
ポイ捨てで困ってる(>>19)と言ってたので、一応探ってみる。

     ククッ

        「ヨッ、ホッ!」
 
                  スッ

『Mステ』と小学校の『応援団』で磨いたダンステクで、
ギシギシバタバタとぎこちないダンスの振り付けで対抗する。

100鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/05/06(月) 23:17:31
>>98(朝山)
>>99(須磨)

「ん、ん、ん…………えーと、わざと落としたんじゃないんだよね。
 そう、そうだよね。悪の組織とはいえ、それならいいんだ。
 悪の組織……いや大丈夫、呼んでこなくっても、事情はわかったし」

        「…………悪の組織かあ〜」

ヒーローごっこ、という年にも見えない。
須磨に『今こういうの流行ってる?』と聞こうとしたが、
彼も面食らっているようだし、そうでもないのだろう。

(……『特撮』ファンなのかな。そういう雰囲気じゃないけど、
 この前そういうドラマがやっていたし、彼女も隠しているのかな)

自分で観たのは好きだった俳優が助演していた時くらいだが、
学生の頃に熱心なファンが同級生にいた、それは覚えている。

                 トリフネ マーヤ
「朝山さん、よろしくねえ。ボクは『鳥舟学文』って言うんだよ。
 呼び方はお任せするけど、気軽に呼んで、気楽に楽しんでいってね。
 ここでの時間が皆さんにとっても楽しいものなのは、ボクも望む所だからさ」

力の入った口調を『緊張』と誤解し、そのようなフォローを入れて。

「や、まあ、水だけ授……売ってるってわけじゃないけどね。
 お守りとか、破魔矢……わかる? あのお正月とかの矢ね。
 ああいう縁起のいいものも、社務所のほうで扱ってるんだよ。
 だから、『水商売』ってのはちょっと違ってくるんだけどね……」

須磨の『よろしくない』誤認をやんわりと訂正した。
ちょうど左右を振り向きながら話す感じで、なかなか疲れる。

「ああ。今時は学校で、ダンスが義務教育なんだっけ…………」

          「ノリノリすぎて池に落ちないようにねえ」

なので、踊る二人には突っ込まず……やや遠い目で眺めていた。
神楽をすることもあるが、さすがに対抗して披露するには理性が勝った。

「………………??」

「ん、いや、ちょっと待った。朝山さん『それ』はその、何をしてるんだい」

あるいは現実逃避だったのかもしれない――――『ザ・ハイヤー』を視認し、我に返る。

101朝山『ザ・ハイヤー』:2019/05/06(月) 23:40:51
>>99

 うーむ! この男子も中々のキレ味のあるダンスを持ってるっス!
もしかすれば何処ぞの別の悪の組織なのかも知れないし、正義の一団なのかも
知れないっス。 闘争心をムンムン沸かせつつ更に踊りを激しくするっスー!

「あっ! 池の水はシロボシ君(ムーさんの飼ってるペット ヨツアナカシパン)
の水槽に入れるっス。シロボシ君は海水でも湖の水でも泳げるスーパーな貝なんです。
もう少し成長したら、きっと空も飛べるかも知れないっス」

シロボシ君の成長には無限の可能性が詰まってるっス!

>>100

「それ? ・・・おー!! トリヤマさんはスタンド使いなんっスか!
ひゃっほーいっ! スタンド仲間なんっス!! ニュー・エクリプス・ダンスで
共にお祝いするっス!」 〜〜♫ ♪

喜びのエクリプス・ダンスを舞い踊るっス!!!

「自分のは『ザ・ハイヤー』って言うんっス。トリヤマさんの
スタンドの名前はなんっスか?」

102須磨『ズーマ』:2019/05/07(火) 00:03:04
>>100(鳥舟)
>>101(朝山)

やや危険な『勘違い』は未然に修正されたようだ。

   ヨッ ホッ
                             ドタッ
    「あの『矢』かァァ〜〜〜ッッ」
                         タン 


『朝山』に張り合うようにステップを踏んでたが、
しばらくして『ザ・ハイヤー』を使用した、
奇怪なダンスについていけなくなったか、息を荒げてへたり込む。

「うォー、ダメだァー。

 やっぱり『BGM』がないと、
 リズムと合一しての表現がムズいぃ〜〜ッッ」

どっかから借りてきた言動と共に、地面へ腰を下ろす。
額の汗をパーカーの裾で拭いながら、『朝山』を上目遣いで見る。

    「ねェー、『シロボシ』君にも負けず劣らず、
     将来性のあるボクこと『須磨回造』にさぁー、
     その水を分けてくれたりしなぁーい?」

    「中居くんのように『貝になりたい』わけじゃあないけど、
     ボクだって、その『ヴィジョン』が見えるから、
     『スター』になれる可能性を秘めてると思うしー」

ほどけた靴紐を直しながら、『朝山』に『神秘の水』を要求する。

103鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/05/07(火) 00:51:59
>>101(朝山)
>>102(須磨)

「『ニュー・エクリプス』っていうのが、組織の名前なのかい?
 『新しい日蝕』……? 今の番組は、『星座』がモチーフなんだっけ」

やや勘違いしつつも、踊りにあいまいな笑みを浮かべて見守る。

「『ヴィルドジャルタ』」

「そういう名前『らしい』けど――――
 ま、あいにくボクは見たことがないんだよね。 
 照れ屋なのかなんなのか、とんと姿を見せないからさ」

「お祝いありがとう。――――ちなみにボクの名前は『トリフネ』らしいよ。
 べつに、『マーくん』とか『あやちゃん』みたいに、呼んでくれてもいいけどね」

そして朝山の勘違いにも、特に笑みを崩すことは無い。

「池の水を? うーん、それはどうなンだろうなァ。
 この池、あんまり『魚』とかが棲む感じじゃないから、
 すごい貝とはいえちょっとだけ心配な気はするかな。
 ボクは海洋学者じゃあないから『責任』は持てないけど」

が、他人の水棲ペットの水槽に池で汲んだ水を入れるのはいかがなものか――――
詳しいわけじゃあないが『貝』には『海水』のイメージがある鳥舟は首を小さく捻る。

「まあでも、朝山さんの水なんだから――――
 好きに使ってくれるのが、そりゃ、一番いいんだけどね。
 一応ちょっと心配だから、大丈夫なのか調べた方がいいかも、ってね。
 ああ須磨くんもさ! よかったら、社務所で『授かって』みたらどうかな」

        「自分で授かった……え、見えるの?」

須磨を窘めようとしたが、思わぬ言葉に目を丸くした。

「『ヴィジョン』が? ……おいおい、なんだかすごい偶然だね。一度に3人も揃うなんてさあ!」

                   「けっこう、珍しいものだと思ってたんだけどさ」

以前話したスタンド使いも、『見えないヤツのほうが多い』と体験を語っていた。これは偶然か?
それとも、何か――――『神秘』というものが、あるというのだろうか。鳥舟は目に見えない何かを、疑う。

104朝山『ザ・ハイヤー』:2019/05/07(火) 22:18:29
>>102

「んんっ? お水が欲しいのなら、巫女さんに頼むか
買うのが一番っス。この水はエッちゃん先輩のだから
私が勝手にあげるのは不味いっス」

>>103

「綺麗なお水なんっスけどねぇ。まぁシロボシ君の具合が良くなさそうなら
ムーさんが普段使ってる海水に戻すだけっスからね」

池を見てみるっス。きらきら輝いてるっス
あと池の水とか入れてみようって発案はエッちゃん先輩にムーさんっス。

>>ALL

「な」

「なんとーーーー!! 全員スタンド仲間なんっス!
吃驚仰天エクリプスダンスを踊るしかないっス〜〜!!」

スタンド仲間に巡り会えた驚きと衝撃を舞いにつぎ込むっスーーー!!

105須磨『ズーマ』:2019/05/07(火) 23:53:53
>>103(鳥舟)
>>104(朝山)
「ボクのクラスには『ズーマ』が見えるヤツいないから、
 『超絶レアキャラ』だと思うんだよねぇー」

『水』はすっかり諦めて、休ませた足で立ち上がった。

    「じゃあ巫女さん、これあげるー。
     バアちゃんの家に行った『お土産』だけど、
     ヨーグルトに入れると、むっちゃウマいよ!」

さっきの『瓶詰』を『鳥舟』に手渡す。
中身は綺麗に包装された『マスカットジャム』だ。

    「じゃあな、エプリッツ!
     あんまり悪いことするなよ!」

    「出店の『空クジ』をシュパッと暴くみたいに、
      ボクがやっつけてユーチューブに載せちゃうぞ!」

踊っている『朝山』に軽やかに忠告をすると、鳥居をくぐって去っていった。

106鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/05/08(水) 02:46:41
>>104(朝山)
>>105(須磨)

「そうか――――やっぱり、驚くくらいには珍しいんだね」

仰天する朝山に、レアさを語る須磨。
やはりただの『偶然』で3人集まったわけではないのだろう。
が、今の鳥舟にその謎を解き明かすきっかけはないし、
そもそも、すべての謎に解き明かせる答えがあるものでもない。

「へえ! いいものをくれてありがとうね。
 『ヨーグルト』は結構食べるからさ、
 ちゃんと底に残った一匙まで使い切るよ」

         ニッ

「それじゃあね、須磨くん。
 また何か、あったらおいで」

用事でも、話題でも、企画でも、何かあったらだ。
それから朝山に向き直る。

「踊り、得意なんだねえ」

「烏兎ヶ池は、確かに月が映るくらいにはきれいだけど、
 『純粋』って意味のきれいさとは、違うからね。
 見てみて。底がまるで見えないだろう? 濁ってるんだよ……」

                「さて、と」

       スッ

「ボクは、お掃除の続きをしてくるよ。
 もしお参りでわからない事があったら、気軽に声をかけてね」

                  「それじゃあ、また」

池の周りでいつまでもいるわけにはいかないし、
踊りをずっと眺めていると、時間が経つのが早すぎる。

特に朝山から呼び止めるようなことがなければ、境内のほうへ戻っていく・・・

107朝山『ザ・ハイヤー』:2019/05/08(水) 22:34:39
>>105

「それじゃあまたっス! 学校で宇宙統一部を開設してるから
良かったら入部してみるっス〜〜〜!!」

ちゃっかり入部を促しつつ、手を振ってばいばいっス!

>>106

「お仕事お疲れ様っス! とりふねさんも、また今度
一緒に私達と遊ぶっスー!」

 「よし」

「ボトル見つかったス〜〜〜〜!!!! たったったっ!!

輝く烏兎ヶ池を後にして、悪の首領はニュー・エクリプスの
仲間のもとへ戻っていった。

108嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/06(土) 00:39:13

 テク テク テク

境内を一人の少女が歩いている。
花柄のワンピースに花モチーフの髪留め。
ポニーテールに括った髪が歩く度に揺れている。

 モゾ

背中に背負ったリュックが微かに動いた――――ように見えた。

109鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/06(土) 00:53:01
>>108

            コツッ  コツッ

「――――ようこそお参りです」

左がやや長い後ろ髪を同じく風に揺らし、
金色の瞳を笑みに細めながら女が歩いてきた。

女というか――――『巫女』だ。

「お嬢さんおひとりですか?
 お参り? それとも、お散歩にきたのかな」

        スッ

「どっちでもさ、ゆっくりしていってね。
 大したおもてなしとかは、出来ないんだけど」

膝を曲げて視線を合わせ、その実、目の先には『リュック』があった。

(歩いた振動で揺れた、ってフウではなかったけど。
 『子供一人』っていうのも合わせて……ちょっと気になっちゃうな)

110嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/06(土) 01:19:46
>>109

「こんにちはー!」

やや大きな動作でお辞儀をする。
そして、『金色の瞳』に視線が移った。
物珍しそうな目で、しばし見つめる。

「あっ……」

「そのー」

「何でもないですっ」

それが良くないことだと思ったようで、慌てて視線を逸らす。
別の話題を探しているらしく、目線が泳いでいる。
その時、少女を宥めるようにリュックが揺れた。

「えっとー、ヨシエはお参りに来ましたー!」

「――でも、『一人』じゃないよー」

ニコッ

落ち着きを取り戻し、明るく笑った。

111鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/06(土) 01:56:46
>>110

「そう? もし何でもあったら、いつでも言ってね」

目を見られていると気付いても、そこに抵抗はない。
もの珍しい気持ちは分かるし、相手は子供だし。
そこは特にコンプレックスというわけでもないし。

「それで……ああ、そうだったんだねヨシエちゃん。
 お友達か保護者の方がいるのかな? なら安心だ。
 ま、君くらいの子が一人で遊びにくるには、
 ここはあんまり来やすい場所でもないもんねえ」

「迷子だったりしたらどうしようかって、ちょっと心配してたのさ」

階段はあるし、場所も町から外れている。
まあ、単に近所の子なのかもしれないが……

        スイッ

ともかく、膝を伸ばして一旦視線を上げた。
うろたえている少女を見つめ続けるのは、
なにかいかにも糾弾しているような空気がある……

「――今日、ちょっと暑いね。日陰の方で話そうか?」

      「というか、ボクが暑いからさ。
       あっちの影に入らせてもらおうね」

見当たらない『保護者』ないし友達は気になるところだ。
妙なリュックもあって、巫女ながら『オカルティック』な想像が巡る。

・・・視線はまたも動きを見せたリュックから、思わず離せなくなっている。

112嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/06(土) 02:24:01
>>111

『一人じゃない』と言っているものの、近くに友達や保護者らしき人は見当たらない。
しかし、ウソをついているような雰囲気もない。

「今日は、ちゃんと『お出かけしてくる』って言ってきましたー!」

「何かあったら『電話しなさい』ってー」

花柄のケースに入ったスマホを取り出す。
最新型の機種だ。
通知がないか確かめて、視線を巫女の女性に戻した。

「――はーい!」

片手を上げて、元気よく返事を返す。
そして、巫女と共に日陰に向かう。
歩きながら、頭を動かして境内を見回す。

 キョロキョロ

「お姉さんは、ここに住んでるんですかー?」

そもそも巫女というのがどんな人なのかを、よく知らなかった。
テレビか何かで見たことがある気はする。
ただ、あまり理解しているとは言えない。

・・・・・・・・・・・・

リュックは沈黙している。
今のところ動く気配はなかった。
しかし、確かに動いていたのは事実だ。

113鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/06(土) 10:28:41
>>112

「なるほどねぇ。それならやっぱり安心みたいだ。
 ということは、お友達と一緒に来てるのかな……」

家の人に挨拶をしてきた、のなら。

スマホを持っているのは"そんなに"驚かない。
もう少し大人びた小学生もたまにここに来るし、
家庭によっては子供にも買い与えているのだろう。
最新型なのは、鳥舟の知識では判別できなかったが。

   スタ
     スタ…

「ん、そうだよ。ここがお姉さんのおうちなんだ。
 ヨシエちゃんでいう『学校』みたいに毎日来て、
 お勉強の代わりに、『お仕事』する場所でもあるね」

      ニコ…

笑みを浮かべて、境内を見渡す。
烏兎ヶ池神社――間違いなく家であり、仕事場。
それにしてもやはりヨシエの連れは見当たらない。
彷徨った視線は、最終的にリュックへと戻って来た。

「あ、そう……名前を、言い忘れていたよね。
 ボクは『鳥舟 学文(とりふね まーや)』だから、
 鳥舟さんでも、学文ちゃんでも、マーくんでも良いよ」

「それで……ヨシエちゃんの『おうち』も、この辺りなのかな?」

軽い自己紹介を挟みつつ、何となしに尋ねた。
家が近く、スマホで連絡が出来るという事なら、
それをもって『一人じゃない』と言えるのかもしれない。

(…………って、いうのは無理な解釈かな)

一人で来るのはおかしな話ではないし、無理に『謎』を暴く気はないが、
思わせぶりに蠢き……沈黙する『リュック』をスルー出来るほど器用でもない。

114嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/06(土) 15:02:38
>>113

「『学文のお姉さん』のおうちなんだー」

「神社がおうちってオシャレだねー!」

 ニコッ

子どもらしい笑顔で、無邪気な感想を口にする。
思ったことをそのまま言ったという感じだ。
実際、あまり深くは考えていなさそうだった。

「――ヨシエのおうち?」

 フルフル

質問に対して、首を横に振る。

「えっとー、今日は『バス』で来たからー」

「ヨシエは一人でバスに乗れるんだよー」

少なくとも、歩いて来れる距離ではないらしい。
件のリュックは、相変わらず動いてはいない。

「あっ――」

「今日はねー、『友だち』と来たんだよー」

思い出したかのように、少し前の話題に返事を返す。
しかし、周囲にそれらしい人影はない。

「――ふうっ」

背負っていたリュックを背中から下ろし、そっと地面に置く。
リュックの口は完全に閉じられてはおらず、隙間が開いていた。

「『一休み』しようねー」

115鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/07(日) 00:04:22
>>114

「そうかな? まあ――――良い家だとは思ってるけどね。
 それにしてもバスかあ。偉いんだね、ヨシエちゃん。
 ボクが子供だった頃は一人じゃとっても乗れなかった」

           チラッ

「降車ボタンを押すのだけは、すごく好きだったんだけどね」

「……」

「それでなんだけどさ」

1人で来たのに、『友達』。
そしてなぜか『空気が入る』ようにされたリュック。
もし蠢いてなければ、『ロマンチスト』として、
ぬいぐるみか何かとして納得できる話なのだが。

「ヨシエちゃんの友達なんだけど。
 その。……その中にいるのかい?」

          「…………そのかばんの中に?」

どんな友達なのだろうか――――こうなると『沈黙』が逆に怖い。

116嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/07(日) 00:39:39
>>115

「――――そうだよー」

先程とは反対に、首を縦に振る。
そして、小さな手がリュックに伸びた。

「そうそう――」

「『学文のお姉さん』にも、きちんと挨拶しなきゃねー」

 ジジィィィーーーーッ

リュックの口が少しずつ開いていく。
その中には、『黒い塊』のような何かが入っていた。

      モゾ

「ねー、『ディーン』」

          ヒョコッ

ヨシエの呼びかけに応じて、毛の短いチワワが顔を出した。
毛の色は黒一色だ。

「ヨシエの友だちだよー」

両手で抱き抱えたチワワに、頬を寄せる。
チワワの首には『DEAN』と名が入った首輪があり、革紐の『リボンタイ』が結ばれていた。

 ジッ

黒い両目で、目の前にいる相手を見つめる。

117鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/07(日) 01:32:11
>>116

――――――――――――――目が合った。

「………………犬かァ〜〜〜っ」

「いや、それはそうだよね。
 犬用リュックってあるもんねえ。
 ボクは昔から犬は飼ってないから、
 それがそうなのかは知らないけどさ!」

可愛らしい『チワワ』とだ。

どうやら杞憂だった――――というか、
伝奇モノやサスペンスの読みすぎだった。

「『ディーン』、っていうのかな? 首輪を見た感じだとさ」

そうして現れた犬……『ディーン』を改めて見る。
見つめられている。犬の考えなんて分かるわけはない。

「わりと、おとなしい感じなんだねえ」

              「お利口そうなお友達だ。
               類は友を呼ぶ、っていうのかな」

118嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/07(日) 02:12:42
>>117

チワワは喜んで尻尾を振っている訳でも、吠えたり唸ったりしている訳でもなかった。
ただ黙ったまま、巫女の『金色の瞳』を見つめていた。
犬の目では『色』が判別出来ないため、それが『金色』である事は分からなかったが。

《…………》

見知らぬ相手に出会った時は、まず敵意や悪意がないかどうか確かめる事にしている。
これは何も人間に限った話じゃないが。
リュックの中から、二人の会話は聞こえていた。
それを聞く限りじゃあ、少なくとも今すぐの危険はないだろうと感じた。
だから、これは『念の為の用心』ってヤツだ。

 スッ

ヨシエが俺を地面に下ろした。
俺が抜けた分だけ軽くなったリュックを背負って、奥の方を見つめる。
俺も同じ方向に視線を向けた。
こういう場所に来た事は――――ないワケじゃない。
だが、ここに来たのは俺も初めてだ。

「『お参り』って、どこでしたらいいんですかー?『学文のお姉さん』!」

そういえば、ヨシエはそんな事を言っていた。
『お参り』ってヤツが何なのか――俺は詳しく知らない。
だがまぁ、興味はあるな。
人間社会の知識ってのは、チワワにとっても有益だ。
知っていればいるほど、それだけヨシエを守るのに役立つからだ。

「あっちかなー」

辺りを見渡してから、ヨシエは歩き出しかけた。
それを見た俺は、ヨシエの隣に立つ。

119嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/07(日) 02:35:05
>>118

「そうだよー。『ディーン』は『ディーン』だよー」

「ヨシエの一番大事な友だち!」

「ヨシエはねー、よくディーンとお話してるんだー」

寂しがりのヨシエは、誰かと会う度に、こうして色々と喋ってしまう。
それが直りそうにないのが、俺にとっては悩みのタネだ。
まぁ、これくらいなら幾らでも誤魔化しは利くだろう。

120鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/07(日) 13:40:28
>>118-119

しばらく見ていたが、どうにも目が合い続ける。

      スッ

…………なんとなくバツが悪い気がして、視線を上げた。
沈黙する犬を見ているのは特別に楽しいわけではない、というのもある。

「お話? そう……ふふ、それはステキな話だね。
 ボクも……飼ってたわけじゃあないけれど、
 鳥とかとお話してた時期は、あったかなあ。
 今はもう、言葉が通じる気がしないんだけどさ」

犬と話す、という言葉も特に不思議には思わない。
ペットでなく友達として扱う相当な愛犬家のようだし、
むしろ話す事はないほうが不思議だ。まして子供だし。

それに・・・この『ディーン』についてはどこか、
人間の言葉くらい分かってそうな『智慧』を感じたのだ。

「ちゃんと本格的にやるならキマリがあるんだけどね。
 そうすると境…神社の入り方からの話になっちゃうし、
 そこのところはまた今度来た時にでも教えてあげよう」

       ザッザッ

「こっちだよ、おいでヨシエちゃん。
 それから……『ディーン』もおいで」

烏兎ヶ池神社は"動物"に所縁があるため、
世情の大勢とは異なり犬を入れる事に問題はない。

勿論、きっちりと面倒を見てもらうのは前提だが、
ヨシエとディーンについては、特に問題もないだろう。
鳥舟は、手水舎(ちょうずや)にゆっくりと歩いてく。

「ここで手と、口を洗うんだよ。
 神さまっていうのはすごく、きれい好きだからね。
 きれいにしてないと、お願いを聞いてくれないとか。
 そういうお話もあるんだ……『穢れ』って言ってね」

そこまで言ってから、気付いた。

「……あっ、ディーンは…………ごめん。
 うち、まだ……動物用の水場って無くってさ。
 噂によると、あるところはあるらしいんだけどね」

       「ごめんね、今回はヨシエちゃんが、
        ディーンの分までお願いしてあげてね」

手水舎の柄杓を取り水をすくいつつ、詫びを入れておく。

動物は『穢れ』ている……という言説は根深いもので、
烏兎ヶ池神社についても『ペット同伴』こそ可能だが、
ペット用の水場や本堂への参拝を許可しているほどは、
先進的……革新的ではないし、動物熱心でもなかったのだ。

121嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/08(月) 00:18:38
>>120

「――はーい!」

いつものように、ヨシエは元気よく歩き出す。
俺は、それに歩調を合わせてついていく。
自慢の鼻を時折ひくつかせ、辺りの様子を観察する。

「ヨシエもキレイにしてるよー。帰ったら、ちゃんとうがいして手も洗ってるしー」

「神様のおうちも、ヨシエのおうちと一緒だねー」

そう言って、ヨシエは柄杓とか言われてるらしいヤツを取り上げる。
俺は――まぁ特にする事もなさそうだから、ヨシエの足元に座った。
日陰のせいか水場が近くにあるせいかは知らないが、ここも割に涼しい場所だ。
もちろん、『クーラーの効いた部屋』ほどじゃあないが。
こっちは電気に頼らないって利点があるから、一概には比べられないな。

「えっ」   
       「……うん」

ヨシエの顔には、二つの表情が入り混じっていた。
落胆した悲しげな顔と、それを隠そうとする顔だ。
ヨシエは、周りに心配を掛けてはいけないと考えている。
そのために、『物分りの良い子供』でいようとする。
ヨシエは確かにしっかりしている方だが、普通の子供の枠を越える程じゃない。

     クゥーン

その場に座ったまま、俺は小さく鳴き声を上げた。
ヨシエと、『もう一人の相手』に向かってだ。
俺としては、『気にするな』という意思を込めたつもりだった。

『神様』ってのは、口や手を洗わないと願いを聞いてくれないらしい。
しかし、俺には誰かに頼みたい願い事は特になかった。
つまり言い換えれば、今ここで体を洗う必要がない訳だ。

ああ、いや――――『願いはない』というのは間違いだ。
『ヨシエを守る事』が俺の願いだからな。
だが、それは俺が俺自身の力で果たすものであって、誰かに頼むような事じゃない。

122鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/08(月) 01:50:09
>>121

「……」

ヨシエの悲しげな顔には、反応しないように努めた。
ディーンの鳴き声には、何となく『慰め』を感じて、
想像以上の利口さに驚くが……口には出さない。

『神』なら何だって、どんな生き物のだって、
願いをかなえてくれたら良いのに――――そう思う。
だが、『神社のルール』は自分や父の為でもある。
それを『情』だけで曲げるわけには、いかない。

かといって気の利いた言葉も、それ以上思いつかない。
そういう『妥協』もやはり言葉にはせず、手水舎の手順を見せる。

「これで『清め』は出来たから――――
 あとはあっち。よく見る『お賽銭』を入れる所に行こう。
 あそこもまあ、ちょっとしたルールはあるんだけどね、
 そこんところを教えるのも、巫女であるボクの務めだから」

               ザッ ザッ

「ボクの後ろ……ついてきて、ヨシエちゃん。
 それとね、今度は『ディーン』も一緒に出来るよ!」

             「……ちょっと難しいかもしれないけど」

などと語りつつ、『参道』の真ん中を避け、端を歩いて『拝殿』へと向かう。
ヨシエにも同じ道を歩くよう、促す――ワケの説明は『神』の狭量を強調しそうで、やめておいた。

                       ・・・ヨシエは気にしないとしても、だ。

123嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/08(月) 02:16:21
>>122

「――――うん!」

 パァッ

『泣いた烏がもう笑う』という言葉があるだろう。
それを思い出してみてくれ。
今のヨシエの反応は、丁度そんな感じだったからだ。

  テク テク テク

         トテ トテ トテ

よく見ると、どうやら進む道は決まっているようだ。
ヨシエは、それに従って歩いてる。
逆らう理由もないので、俺も同様だ。

「ね、一緒にできるんだってー」

 ニコッ

ヨシエは嬉しそうだった。
俺としては、別に無理して一緒にやる必要はないと思っている。
人間は人間だし、犬は犬だ。
お互いの距離を縮める事は出来ても、生まれ持った性質までは変えられない。
だが、まぁヨシエが喜ぶのは良い事だ。

   チラッ

俺は、この『学文』という人間を軽く見上げる。
その視線は、先程までの観察するようなものとは少し違っていた。
学文がヨシエに気を遣っているらしいというのは、態度で何となく感じる。
そういう人間には、俺としても好感が持てた。
だから、学文を見上げる視線にも、それが自然と表れたんだろう。

124鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/08(月) 05:04:58
>>123

      ホッ

笑顔に安堵する。こういう子供らしい子供は、
あまり頻繁に触れ合う事もない……あまり慣れていない。

    ザッ…

拝殿、賽銭箱の前で立ち止まった。

(ディーンが『芸』を仕込まれてるかどうかかな。
 いや、この子はなんというか、賢い犬だ。
 ボクの見よう見まねで……出来るかもしれない)

「あっ、ヨシエちゃん。お金は持ってきてるかな?
 もちろんボクが貸してあげてもいいんだけどさ。
 なんていうのかな。自分のお金でお願いした方が、
 効果を『信じられる』って、ボクは思うんだよね」

罰当たりに言えばプラセボ効果、という奴だ。
他人の金で得た安心は、たとえ少額でも話が変わる。
ヨシエくらいの歳なら、それでも別にいいのだろうけど。

「もちろん、気持ちだけでも……十分だけどね。
 ここは神様にお願い事をするところだからさ、
 しっかり挨拶とお礼さえすれば、それはそれでちゃんと届くよ」

125嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/08(月) 13:17:34
>>124

「うん!ちゃんともらってきたよー」

「――ほら!」

ヨシエは、ほんの少しだけ得意げに『小銭入れ』を出して見せた。
バスに乗った時も、その中の金を出して使っていた――――と思う。
俺はリュックの中にいて、直接見た訳じゃないからな。

  チャリッ

「えっと――『百円』でいいのかなー?」

小銭入れを開いたヨシエは、その中から一枚のコインを摘み取った。
多分だが、『大人になったような気分』でも感じているのだろう。
ヨシエの表情から、それが察せられた。

(さて……何をするのか教えてもらうとするか)

ヨシエの隣で立ち止まり、俺は見慣れない『箱』を観察する。
とりあえず、ここで『金』が必要になるのは分かった。
後は、『どう使うのか』――――だ。

(せっかくだ。俺に出来そうな事なら助かるな)

126鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/09(火) 01:07:27
>>125

「うん! 偉いね、自分のおさいふまで持ってるんだ。
 ヨシエちゃんはすごく、しっかりしてるんだねえ」

百円玉に視線を向けて小さく頷き、笑みを作る。
その額については、特にコメントはない。
5円だと『ご縁』みたいな話もあったりはするが、
当人が理解しないまま『げん』を担ぐ事もあるまい。

「それじゃあその100円玉を御賽銭にしよっか。
 これ、この箱の中に入れてみてくれるかな?
 賽銭箱、って言うんだけどね。この隙間に入れてみてよ」

         スッ

「あっ、入れるときは投げたりしなくって良いからね!
 よくいるんだけどね、投げ入れる人もさ……
 本当のところをいうと、ソッ……と入れて欲しいかな」

賽銭箱が傷付くし、こぼれ落ちたりする可能性もある。
投げる意図も分からないではないが、勧めはしない。

「もし投げるにしても、なるべくこう、ていねいにね」

なお…………この『祈願』の手順には、諸説がある。

鈴を先に鳴らすべきとか、賽銭が先だとか、
紙幣と硬貨どっちかにもよるんじゃないかとか、
いや先に礼からだとか…………だが、ハッキリはしない。
神さまに答えを聞いたとして、返っては来るまい。

その上で、今回は『お賽銭』に乗り気なヨシエの気持ちを優先した。
『信仰』には『納得』が重要と考える鳥舟には、正しい判断と自信があった。

127嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/09(火) 01:33:37
>>126

「はーい!わかりましたー!」

教師に対してするように、ヨシエは手を上げて答える。
もちろん、その様子を俺が見た事はないが。
ヨシエの家のリビングには、『テレビ』っていう『色んな景色が映る機械』があるからな。

  テク テク テク

ヨシエは、背筋を伸ばして箱に近寄っていく。
緊張しているのかもしれないな。
何か言おうかとも思ったが、邪魔しちゃ悪いから止めておいた。

「――お願いしまーす……」

            ソッ
               ――――チャリンッ

ヨシエが箱の中にコインを落とすのを見て、ふと俺は『別の箱』の事を思い出していた。
よく街中にあって、金を入れると飲み物が出てくるヤツの事さ。
同じ『箱』なら、俺はそっちの方が好きだな。

128鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/09(火) 01:46:19
>>127

「その調子、その調子。いい『お賽銭』だったよ。
 そしたらね、次はその鈴を鳴らしてみて。
 これは、まあ、意味は色々あるんだけど……
 鳴らすと『神さま』が嬉しくなるって思うと良いよ」

それで、神さまが何かを叶えてくれるのか? 本当に?
……巫女として口に出す言葉には乗せない感情。

参拝の意味は信じている。
然し『神』への畏敬を口に出す時、
どうしてもそれが心の中でざわめく。

「ここをしっかり両手で持って……こう。
 大きく動かすんだよ、ガラン、ガラン、っとね。
 ……これ、お賽銭の前にやるんだって話しもあるけど、
 まあね、そこまで細かく気にしなくて良いと思うよ」

「『祈る』気持ちがほんとなら、どっちでもね」

本坪鈴に添えていた手を離して、一歩引いた。
ヨシエにやってみるように促しながら、
なんとなく視線は『ディーン』に向けている。

この犬は何を考えているのだろう――そう思った。
犬が何かを考えるのかは知らないが、ディーンは考えていそうだ。
ヨシエを、あるいは自分を、常にヒトを観察しているような、その所作。

       (…………『鳴き声』一つにも、意味がありそうな感じがする。
        ああ、鳴いてるな。では終わらないような……不思議な感じだ)

129嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/09(火) 02:11:46
>>128

「うん――――」

  ガラン ガラン

両腕を上げて『綱』を掴み、ヨシエが鈴を鳴らす。
その音が、俺の耳に大きく響いた。
しかし、不思議と耳障りだとは思わなかった。
それはヨシエが鳴らしたからか、それともここに住んでいる『神様』の仕業か?
俺には、どっちとも判断が出来なかった。

   スイッ

視線を感じて、俺はその方向に頭を向ける。
その先にいたのは『学文』だった。
勿論それは当然の事で、別に何の不思議もない。

《…………》

しかし、その視線には『何か』を感じた。
上手く説明出来ないが、強いて言うなら『疑問』――か?
それが『俺に対して』なのか、『神様に対して』なのかは分からないが。

「――――次はどうすればいいですかー?『学文のお姉さん』」

人間と犬は大昔から関わってきたらしいが、あくまでも別の動物だ。
心が通じる事もあるし、そうじゃない時もある。
人間同士や犬同士でも通じない事があるんだから、違う生き物なら尚更だろう。

130鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/09(火) 14:10:30
>>129

「…………」

『ディーン』をしばらく見ていたが、
ヨシエの声に気づいて振り向いた。

「ん、あーっと。次は――――こう、『二礼』」

           スッ
              スッ

「お辞儀を、二回するんだ。なんで二回なんだろうね?
 ボクもそこんところ、答えはよくわからない。
 けど『作法』が正しいと、祈る『心』を整えやすいと思う」

「それから――――『二拍』」

           パンッ   パン

「こう。掌と掌を二回、打ち合わせるんだ。
 あんまり大きな音は立てなくっていいよ、
 大きければ良い、ってものじゃあないし、
 手が痛くなっちゃったら、よくないからね。
 それから――――『神さま』に『お祈り』と『お願い』を」

       スッ

「それが終わったら、もう一回『一礼』。
 お願いします……っていう意味の、お辞儀。

        ――――これが、『二礼二拍一礼』だよ」

流れるように『参り』の所作を済ませ、ヨシエに視線で促す。
・・・自分自身は『お願い』はしていない。『祈る』ことはしたけれど。

131嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/09(火) 23:10:08
>>130

「えっと、二回お辞儀して…………」

                    「――――二回叩いて……」

一つ一つ確認しながら、ヨシエは手順をこなしていく。
その辺りは、さすがに学文のようにスムーズにはいかない。
だが、ちゃんと出来てる――――ように、俺には見える。

「『これからも、ディーンとずっと一緒にいられますように』」

「『ヨシエが大人になっても、ディーンには元気でいてほしいです』」

「『いい子にするので――神さま、お願いします』」

           スッ

そのような事を口にして、ヨシエは最後の一礼を終えた。
俺は、ヨシエが何を願うつもりでここに来たのかを知らなかった。
だから、今初めてそれを聞いた事になる訳だ。

《――――…………》

犬と人間では『時間の流れ方』が違う。
ヨシエが大人になる頃には俺の寿命は終わってるか、その一歩手前って所だろう。
どれだけ長生き出来たとしても、ヨシエより俺の方が『早い』のは避けられない。
俺は――ヨシエの願い事を聞かされた神様が、少々気の毒に感じた。
そして、神様とヨシエの間に立つ『学文』の事も。

「ね、ディーンもできるんだよねー?」

自分の番を終えたヨシエは、至って明るい表情で俺と学文を交互に見た。
今のが手順の全てだとしたら、まぁ難しくはないな。
『ワン・フォー・ホープ』を使えば苦もない事だが、今はそうもいかない。
まぁ、それでも出来なくはないだろう。
そう思いながら俺はヨシエを見て、それから学文の顔を一瞥した。

132鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/09(火) 23:33:56
>>131

「―――――――――――― ・・・」

『都合のいい神さま』なんて、存在しない。
誰より神に尽くす父親がそうだったように、
運命はあくまで平等に、そして人の手は届かない。

(動物も人も死ぬ)

(『王様』も『殿様』も死ぬんだから、
 もし世界が不平等だとしても死ぬし、
 平等ならもちろん死ぬ。……そんなことさあ!
 わかってるんだけど……ああ、顔に出てなきゃ良いなァ)

当たり前の『現実』だ。
だが、神社は、巫女は『幻想』の域に半歩踏み入れている。
だから父親がそうだったように、神を否定は、しない。

「とっても素敵なお願い事、だね。
 それじゃあ……『ディーン』、出来るかな」

      「ボクの言葉が聞こえてるかは、
        ……まあ、わかんないけどさ」

   スッ

やや身をかがめて、こちらを見る『ディーン』に目を合わせた。
不思議な犬だ。でも、犬だ。『20年』先に、彼はきっといない。

だが・・・『願い』や『祈り』は、『記憶』――――『思い出』の一つとして残るだろう。

133嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/10(水) 00:17:23
>>132

 ワンッ

やってみるさ――そんな意を込めて、俺は学文に鳴いてみせた。
もっとも、俺の言い分が伝わってるかどうかは定かじゃないが。
まぁ、それはお互い様だろう。

「はいっ、ディーンの分だよー」

しゃがみ込んだヨシエが、俺の鼻先に百円玉を差し出した。
俺は、それを口に咥えて歩き出す。
向かう先は、正面に置いてある箱だ。

   ヒュッ
              ――――チャリンッ

俺は頭を振って、口に咥えた百円玉を箱の中に投げ入れる。
そっと入れるのが学文の要望ではあったが、あいにく俺には届かなかった。
なるべく丁寧に入れた筈だから、その辺は大目に見てくれ。

      スッ
           スッ

コインが落ちる軽い音を聞いてから、頭を二回下げる。
そして、綱を口に咥え――ようとした所で、少し迷った。
神様ってのはキレイ好きって話だし、直接口を使って良いものかどうか。

       ガラ ガラ

だから、俺は『後ろ足立ち』を披露する事にした。
上げた前足を使って器用に綱を揺らし、その先にある鈴を鳴らす。
ヨシエに比べて鳴り方が貧相になるのが玉にキズだが、まぁ仕方ない。

(――さて……)

「よいしょ――」

次に移ろうとした時、ヨシエが俺を抱え上げた。
確かに、この方が楽だろう。
俺は両手の代わりに前足を使って、『打ち合わせのような動作』をした。
さすがにヨシエや学文のように、『打ち合わせる』のは厳しいものがある。
これで勘弁してもらえると助かるな。

(俺には、『あんた』に頼みたい願い事はない)

(だから、これは『俺自身』に言う事だ)

(ヨシエを支えてやれ――『俺が生きてる限り』)

        スッ

最後に『一礼らしきもの』をして、俺の順番は終わった。
ヨシエは俺を下ろし、俺はヨシエを見上げた。
そして、学文の方を見つめた。
これで良かったのか?
そのような意味を込めて――だ。

134嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/10(水) 00:29:47
>>132

 ワンッ

やってみるさ――そんな意を込めて、俺は学文に鳴いてみせた。
もっとも、俺の言い分が伝わってるかどうかは定かじゃないが。
まぁ、それはお互い様だろう。

「はいっ、ディーンの分だよー」

しゃがみ込んだヨシエが、俺の鼻先に百円玉を差し出した。
俺は、それを口に咥えて歩き出す。
向かう先は、正面に置いてある箱だ。

   ヒュッ

俺は頭を振って、口に咥えた百円玉を箱の中に投げ入れる。
そっと入れるのが学文の要望ではあったが、あいにく俺には届かなかった。
なるべく丁寧に入れた筈だから、その辺は大目に見てくれ。

        ――――チャリンッ

コインが落ちる軽い音を聞いてから、次に移る。
綱を口に咥え――ようとした所で、少し迷った。
神様ってのはキレイ好きって話だし、直接口を使って良いものかどうか。

       ガラ ガラ

だから、俺は『後ろ足立ち』を披露する事にした。
上げた前足を使って器用に綱を揺らし、その先にある鈴を鳴らす。
ヨシエに比べて鳴り方が貧相になるのが玉にキズだが、まぁ仕方ない。

     スッ
        スッ

そして、頭を二度下げる。
次が少々難問だが――。

(――さて……)

「よいしょ――」

次に移ろうとした時、ヨシエが俺を抱え上げた。
確かに、この方が楽だろう。
俺は両手の代わりに前足を使って、『打ち合わせのような動作』をした。
さすがにヨシエや学文のように、『打ち合わせる』のは厳しいものがある。
これで勘弁してもらえると助かるな。

(俺には、『あんた』に頼みたい願い事はない)

(だから、これは『俺自身』に言う事だ)

(ヨシエを支えてやれ――『俺が生きてる限り』)

        スッ

最後に『一礼らしきもの』をして、俺の順番は終わった。
ヨシエは俺を下ろし、俺はヨシエを見上げた。
そして、学文の方を見つめた。
これで良かったのか?
そのような意味を込めて――だ。

135鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/10(水) 00:46:23
>>133

しんみりとしたムードに包まれていた鳥舟だが・・・

      ビクッ


「お、おお……思った以上に『出来てる』ね」

          「…………『名犬』って言葉を、 
           実在の犬に使う日が来るとは」

『ディーン』のあまりの『器用さ』に目を丸くし、うなずく。
利口な犬だとはもちろん再三わかっていたが、
物を投げる、頭をちゃんと二度下げる、『拍手』に似た動きをする。
それになにより、鈴を鳴らす時……あえて口ではなく手を使った事。
抱えられた姿勢なら、口のほうが犬としては楽な動作のはずなのに。

「それだけ、ヨシエちゃんとディーンの『信頼関係』があるってコトかな!」

・・・つまり『あえて』そうしたのだ。『思考』して、『適切な回答』を選び出した。

(『動物』が人間の指示を聞く事は、もちろんある。
 ボクの好きな『イルカショー』なんかまさにそれだ。
 ボールを投げたり、拍手をしたり、なんだってやる。
 今のディーンと違って、手助けすら無しでもやれる。
 ――――長い時間練習して、ご褒美も貰えるなら)

(この『ディーン』は違う……即興でボクの説明を理解して、まねした)

                (『普通の犬じゃない』んじゃないか……?)

鳥舟は『オカルトマニア』ではないが、『疑念』を忘れない人間だ。
単にめちゃくちゃ頭のいい犬というのもあり得るが、この世には『神秘』は、ある。

136嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/10(水) 01:24:28
>>135

「ね、ディーン――――」

「ディーンは何をお願いしたのー?」

話し掛けるヨシエの隣で、俺は学文の瞳の奥に、『さっきと同じ何か』を感じ取っていた。
つまり、『疑問』だ。
もし俺が人間だったとしたら、似たような感想を持ったかもしれない。

「じゃあー、帰ってから『お話』しようよー」

「――――ねっ?」

ヨシエは、先程と同じ内容を口に出した。
普通の人間なら、『子供の言う事』だと軽く流してしまうだろう。
初対面の時の学文が、そうであったように。

「あっ――」

(だが、今の『学文』は……)

彼女の瞳に映る『疑念』――それは俺の『謎』を解き明かしかねない。
直感というか本能というか、そういう原始的な部分が、俺自身に知らせてくるのだ。
逆に言えば、彼女は『何故そう思うのか』?

「そろそろ帰らなきゃー」

(まさか――――な…………)

『俺と同じ』、なのか?
学文を見上げながら、そんな考えが頭をよぎった。
『ルナ』の件もある。
可能性はゼロじゃあないが――。

「今日はお参りできてよかった!」

「ありがとうございましたー、『学文のお姉さん』!」

ヨシエがリュックを下ろし、俺も帰り支度を始める。
リュックの中に入る前に、チラリと学文に視線を送る。
その黒い瞳には、学文のそれと似た『疑問』の色が微かに見えた。

137鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/07/10(水) 04:14:24
>>136

「…………うん!」

「ボクの方こそ、ヨシエちゃんにお参りを教えられてよかったよ。
 それに――――『ディーン』にもね。
 犬にお参りの作法を教えた巫女は、全国でも初かもしれない」

        「すごく名誉だ。録画とかしておけばよかったなあ」

・・・帰り支度を始めた二人を見つめ、笑みを浮かべる。

爛々と輝く金色の瞳に、特別な意味はない。

(『お話』――――子供特有の言い回しだと思っていた。
 けれど、今考えれば『お話』は本当に出来る可能性がある。
 この世界には『不思議』を現実に出来る力があるんだから)

色が珍しいだけの、ただの視線――ただの『疑問』だ。
それはヨシエではなく、今は『ディーン』にも注がれていた。

(それがディーンのなのか、ヨシエちゃんのなのか、
 それとも単なるボクの自意識過剰ってやつなのかは、
 わからない――――ボク自身の力がいまだに鵺的なように、
 この『能力』というのは理屈だけで推論を立てられるものじゃあない)

「それじゃあ、帰り道には気を付けて。
 またいつでも来てね、ディーンと一緒でも、一人ででもね」

         (だけど)

         (――――あの二人、どちらかは『そう』なんじゃあないか?)

138嬉野好恵『一般人』&ディーン『ワン・フォー・ホープ』:2019/07/10(水) 05:27:44
>>137

「うんっ、また遊びにくるよー」

「学文のお姉さんにも会いたいから!」

結局の所、彼女が『俺と同じ』なのかどうかは分からない。
人間の世界で言う『神のみぞ知る』ってヤツさ。
そして、その『神』が何処の誰かを俺達は知らない訳だ。

「学文のお姉さんも気をつけてねー」

「――――さよならー」

  ペコッ

別れの挨拶と共に、ヨシエは頭を下げた。
『神様』ではなく、『学文』に。
俺もリュックの口から頭を出して、学文に『一礼』の真似事をする。

(『神様』か……)

(ひょっとすると、こいつの『謎』は『スタンド』より深いのかも――な)

説明はされたものの、『神様』が何なのか俺には今一つ掴みかねていた。
『実体』のようなものが感じられないから――かもしれない。
目で見えず、音も聞こえず、匂いもなく、触れられない。

「ヨシエのお願い、聞いてくれてるかなー」

     テク
         テク
             テク

俺にとって何よりも確かなもの――それはヨシエだ。
俺が傍にいる事がお前の幸せなら、俺はそうするさ。
今までもこれからも、命が続く限り。

「ディーンのお願いも聞いててもらえたらいいなぁ」

それを再認識させてくれたって意味じゃあ、俺も『神様』に感謝しよう。
それと――『学文』にも。
ヨシエの背中に背負われたリュックから頭だけを出して、俺は遠ざかる神社と巫女を見続けていた。

139斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/07/31(水) 21:23:23
偶にたわいもない、同じ事を考える。
神様は、僕を救ってくれるのか?
結論から言えば、NOだ。


額の汗を拭って、ペットボトルのお茶を一口、スカーフに包まれた喉を鳴らす
全然飲んだ気がしない、酷い蒸し暑さ、アスファルトの上よりはマシだけど。


 「あっついな……。」


汗が頬を伝って顎から滴り落ちる、まるでサウナに入っている気分。


此処に来たのは、両親の病気平癒の祈願の為だ
救わないと解っていて、それでも神様に縋らずにいられない
妙な話だとは、僕も思うけど。

奇跡は有った、『スタンド』という名前の奇跡は。

それでも神様は僕に、手を差し伸べないだろう
――いや、この世の誰にも差し伸べないに違いない。

そういう妙な確信だけは有る
何故かは知らない、自分の事は自分が一番解る、とか、僕なら鼻で笑う台詞だ。

神様に聞こえないように悪態をついて、木陰に座り込んだ
頬を風が撫でるのが、汗のお陰で感じられる。

周囲に誰もいないのを確認してから、少し休むことにした
寒いのよりはマシだとしても、暑いのも苦手だ……。

140鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/01(木) 22:46:26
>>139

誰もいない、猛暑の神社――――
唯一そこにいるのは斑鳩だけだったが、
それは『参拝客』に限っての話だった。

             ガララララ…

拝殿の戸が開き、中から女が姿を現す。
巫女装束に身を包んだ、『女』――――
顔立ちを見るに、少女と言っていい年頃だろうか。

「あっっっつ……あ」

        ペコ…

「ようこそお参りです。
 すいませんね、気が付かなくって」

「ご参拝ですか? 御祈祷? それとも、ご散歩?」

斑鳩から少し離れたところまで歩みより、声をかける。

「あの、もしかして、ご熱中症とかじゃないですよね?
 氷とか、冷たいのいります? 今日はちょっと、暑すぎますもんね」

涼やかな笑みだが、額から首筋へと垂れる汗は彼女も同じだった。

141斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/02(金) 21:37:02
>>140

夏の暑さは正常な判断すら鈍らせるようで
鼓膜から数秒遅れて鳥舟の声がようやく脳に届く

虚ろな視界に入ったのは金色の瞳、ボブの黒髪は左につれてゆっくりと長くなっている
巫女服を纏った女性が立っている、年は同じか、少し向こうが上か……やめとこう。
先に舌を回す時だ。

「マ……?」

(男……いや、女の子で、巫女さん?)
(男なわけがないよ、どうしてそう思ったんだ斑鳩?)
(それより、座ったまま相手するのは失礼だろ。)

思考が洪水のように流れては消えていく、舌が回らない
手を動かす事すら蝸牛の如く遅い、礼儀正しい女性に礼を失していいのか?いいわけがない。


――仕方ないのでペットボトルの中身を全部頭の上からぶちまけた。
温いシャワーがぶちまけられた気分、緑茶風味。


「おわぁ……ああ、大丈夫、大丈夫だよ、有難う。」


そう言いながら樹木に手をついて立ち上がる、あとでミネラルウォーターを買わないと
傍に立つ樹木は体重をかけてもびくともしない、なんて頼もしい奴なんだ。

……熱を吸い込む黒いジャケットなんざ馬鹿正直に着る必要は無いな、脱いでしまえ
脱いだジャケットの袖を腰に回して結ぶ、白いドレスシャツもこれで深呼吸できるだろう。


女性にしぶきがかかっていないかを確認して、一礼し、何とか舌を回し
髪をかきあげる、短髪なのでかきあげるほどはないが。



「『病気平癒』の……あー、『お守り』を買いに来たんだ、あるかな?」

(僕にも必要そうだしな。)

「冷たい水は、有れば……嬉しいな、うん、とても嬉しい。」

142鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/03(土) 00:53:08
>>141

左に行くにつれ、流れるように長く伸びた髪。
金色の目もあり、どこか『非日常』の気配漂う女性だった。
あるいは、それも熱にやられた認識の虚像かもしれないけど。

「わっ――――と、と。ワイルドですね。
 高校球児みたいだ――――って、
 高校野球に詳しいわけでも、ないんですけど」

頭から茶を被る斑鳩に、
ほとんど反射的に足を下げた。
おかげで水飛沫は少しもかかっていない。

「お守りは、ありますよ。
 『病気平癒』は特にね。
 授与は、あっち。社務所のほうで」

         スゥー

指でゆっくりと、その方向を指し示す。
まるで舞うように、と言うのは大げさだが、
斑鳩の見立て通り『礼』を感じる所作ではある。

        ザ…

「冷たい水と――――あとは、タオルも必要かな。
 今は貴方しか参拝客もいないみたいですし、
 巫女のほうもね、どうせボクしかいませんから。
 ゆっくりしていってもらっても、誰も文句言いませんよ」

「歩けますか? 背負っていける自信は、ないですけどもね」

木にもたれかかる動きに目を細めて、手を差し出す。
話しぶりも含めて、『熱中症』を疑っているのだった。それも、真剣にだ。

143斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/03(土) 13:50:51
>>142

 「どうも。
 ベースボールに興味が?ない?僕もそうではないけれど。」

差し伸べられた手と自分の手を見比べる
男女の違いと言うのは勿論あるが、僕の手は濡れてしまっている
結露したペットボトルを握ったからだ。

(――そこまで厚顔無恥にはなれないな)


 「失礼、お気遣いには感謝したい、でも僕の手は先程ので濡れてしまっている」


服も濡れている以上、拭いてもあまり変わらないだろう
お陰で頭はハッキリしたが、今はそれよりもお守りの方が大事だ。
差し伸べられた手をそっと押し戻す。

 「巫女さんの手を濡らすのは忍びない
 神様の機嫌を損ねるのも困る。」


自分の汗と肌を確認する、よし、乾燥はしておらず、肌も冷たくはない
熱射病か熱疲労まではいかないだろう、なった場合は病院のおでましだが。


 「……でも案内には喜んで従うよ、優しい人」
 「なあに、これでも歩くのは得意な方なんだ。」


僅かに傾きつつも、彼女の示した方に歩みを進めていく
彼女は社務所が確か…向こうだと言った筈だ。

(纏うタイプ……とはいえ、こういう時には便利だな、影の脚というのは。)

夏の日差しの中
それが聞こえる人間には、足音を多々鳴らしながら。

144鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/03(土) 21:49:34
>>143

「高校野球のシーズンだけは、
 テレビを付けるんですけどね。
 ルールも半分おぼつかないくらいで」

「ミーハーなものでして、ね」

    スッ

それから手を引っ込めて、小さくうなずいた。

「濡れてる位気にしませんよ。
 『神さま』だって、そう狭量でもない――――
 とはいえ、歩けるみたいなら、良かったです」

           スタッ スタッ

   「…………」

                    「……?」

そうして、伴うように社務所のほうへと歩き始める。
奇妙に重なる足音には疑問符を浮かべるが、口には出さない。

「それにしても、うちの神社を選んでくださってありがとうございます。
 評判は――――『インターネット』で? それとも、何かうわさでも?」

町の方にも神社はある。
烏兎ヶ池神社は『病気平癒』に強いとはいえ、選んでもらえた理由は気になった。

145斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/03(土) 22:37:20
>>144

我ながら嘘をつくのも得意になった
多少は冷めた思考で、彼女の言葉を反芻する


 「そうか、狭量ではないよな、神様なのだから。」


(なら、どうしてお前が罰を受けていないのだ?翔。
 行くべきなのはお前だった、貴方は連れて行く人を間違えた……。)

鳥舟へ微笑みながら、歩みは崩さず
社務所へと一歩一歩近づいて行く、妙に距離が遠くすら見える。

 「ああ、インターネット、それは思いつかなかった。
 うわさに頼る手も有った……んだな。」

我ながら何処か焦っていたのかもしれない
それが自分の生きる理由なら尚更だろう

その理由を問われて、話していい物か迷いが生まれた
彼女は関係が無い、無いが……答えたほうがいいだろう
何より巫女相手だ。


 「我ながら、貪欲なようだけどね」
 「実のところ、他のは『もう行ってきた』のさ。」

罰の悪そうに肩を竦め、ベルトポーチに手を伸ばしてジッパーを開く
中には、ポーチ一杯のお守りが、所狭しと詰まっていた。


 「歩き回って、近場のなら『全部集めた』」
 「ここで、最後なんだ。」

例え熱中症になりかけようが、その症状と危険性を理解していようが
『生きる理由』の前には障害にすらなりえない、この程度の症状なら少し休めば充分の筈だ。


 「――で、巫女さんは……ああっと。」

ふと思い至った、彼女の名前を知らないので問う事が出来ない
女性に先に名乗らせるのは失礼だと、僕のお祖父ちゃんも言っていた。

 「翔、斑鳩 翔(イカルガ ショウ) 鳥の名前の割には、空は飛べないのだけどね。」

 「お名前をお伺いしても?」

146鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/03(土) 23:45:11
>>145

「ええ、きっと――――ね」

息をするように、嘘をつける。

「ああ」

「それは――――」

だが、こればかりはほんの一瞬、顔に出てしまった。
無数のお守り。『神頼み』の結晶。

鳥舟学文は結局『神さま』に都合のいい夢を見られない。
誰よりも、『神さま』が報いてくれないことを見てきたから。

(そして、ボクの『ヴィルドジャルタ』も、
 どういうことが出来るのかは分からないけど、
 きっと神さまの代わりに成れるような力じゃあない)

       (――――都合のいい奇跡は、無い)

「『大トリ』を務める神社に選んでもらって、鼻が高いですよ」

降ってわいた『神託』も、その『詳細』は知れないままだが、
結局――――『願い』をかなえるようなものでは、ない。

それでも、否定できるはずはない。
信じられなくても、否定はできない。

「ボクは」

「ボクは、『鳥舟 学文(とりふね まあや)』です。
 ボクのほうは具体的に何の鳥ってわけじゃあないですけど、
 多少、『縁』ってヤツを感じますね。斑鳩さん、どうぞよろしく。
 呼び方は、苗字でも、マーヤさんとでも、マーくんとでも、アヤちゃんとでも」

            「それじゃ、お守りを選びましょっか」

『巫女』が『神秘』を否定するわけにはいかない。
民草がそれに心を預けることには、間違いなく価値があるのだから。

お守りの見本を、差し出す。伝統的なもの以外に、アクセサリー型の物もいくらかあった。

147斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/04(日) 00:38:57
>>146

鳥舟学文、その名前を脳に刻み込む
その度に僕のスタンド『ロスト・アイデンティティ』が僅かに震えた。

「それは光栄だな」
「では『鳥舟さん』と。」

縁が有るのは良い事だ、この出会いが幸運を引き寄せることを祈ろう。
それで両親が助かればなお良い。

鳥舟さんが持ってきた箱にはお守りが僕のポーチに負けず劣らず、多々乗せられている
時代や客層を反映したのか、最近ではアクセサリ型のも珍しくなくなった。

「やあ、色々ありますね、こっちはアクセサリ?」
「当然の事だけど、やっぱり僕より若かったり女の子とかも買って行くのかな」

迷うフリをしながら通常の紫色の物を手にとった
神秘と気品を表す色、これがいいだろう。
買えない値段でもない、有難い事だ。

「――ところで」

一瞬それを聞くか、聞くまいか迷った
少なくとも、それはその人の傷のように見えたし、人間生きていれば傷など幾らでも出来る。

そしてそれを他人が開くのは善ではない、と斑鳩は考えている。
彼女と友好を築いたのだし、初対面なのだからなおさら失礼な事だ。

「鳥舟さんの事なのですけど、『信仰』に疑いをお持ちですか?」

だが、言葉に出てしまった

それを問う斑鳩の表情は、逆光のせいか影になっていてよく見えず
その言葉には何処か氷のような冷ややかさがある物だった。

「巫女さんに何を、と言う話ですけど、むしろ神職には多いと聞きました。」

(一瞬、一瞬だが、彼女、鳥舟さん……『何か』が表情に出たな。)
(枝のささくれのような引っかかりだが、……我ながら恩を仇で返しているな。)

「『信じられないが故に信仰する』という人もいるとか……」
「どうなんです?」

8月というのは蝉の声がうるさい
逆に、それ以外の音は妙に静かだ。

148鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/04(日) 01:59:51
>>147

「ええ、今時『伝統』だけじゃあ、ね。
 パワースポットブームとかもありまして、
 お若い方にも参拝いただいてますから。
 そういう方にはやっぱり――――」
 
「『願いが叶いそうかどうか』よりも、
 『普段から持ち運びやすい』ものが好まれますね」

手を添えるように示すのは、ストラップ型のお守りだ。
戯画化された烏と兎、すなわち『金烏玉兎』――――
あるいは、『鵺』。

それはそこそこにして、紫色のお守りを『授与』した。

「――――?」

「ああ」

「それは――――『信仰』に疑問は、ありませんよ。
 本当にね。『信じる』ことは、心の支えになりますから。
 信じれば救われる――――そうとは言い切れはしませんけど、
 少なくとも『信仰している』間は、不安を遠ざける事が出来ます」

「ですので、『信仰する事』に疑いなんて、とても、とても」

疑うのは、『神秘』だ。
『信仰』は『人の手にある』……己の心にもある。だから、疑わない事も出来る。

「『何でも信じてる』わけじゃ、ないですけどね。ボクもやっぱり巫女とはいえ、人間なので」

149斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/04(日) 19:45:59
>>148

眼を閉じ、そして開く
声色には先程の冷気はもうない。

「流石、巫女さんだ」

(しかし、そうなると僕の勘違いか…?
お守りを見て顔が曇ったように見えたが、信仰ではない)

「不躾に変な質問をしました、お許しください。」

(違うな、お守り自体ではなく、お守りが起こす
結果の方か?『奇跡』だとか、或いは……
その過程の『神秘』か?)

(何にせよ、結果を焦るのは良くないな、ショウ。)

恥じ入り、眼を逸らした先に
兎の守りが目に入った、金鳥玉兎。

「……その兎の方も頂いても?」

「大陸の方だと、月の兎は餅ではなく、薬をついていると聞きました。」

追加した守りの分だけ余分に払い
兎を手にして眺めてみる、小ぶりだが、いいかもしれない。

「数があればいいと言う訳ではないでしょうが
少しでも、相性だとかなら……多い方がいい。」
「両親の為にも。」

150鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/05(月) 09:18:02
>>149

「ええ、『巫女』ですから、ね。
 ――――どうかお気になさらず。
 ボクとしても、疑問が晴れたなら、嬉しいですよ」

笑みを浮かべた。
これくらい、慣れた誤魔化しだ。

「ウサギですね! では、こちらを」

差し出すのは、兎を模したお守り。
と言うより、ほとんど『ストラップ』のものだ。
たしかに小振りだが、造りは本格的に思えた。
どの神社でも同じのを見かけるような既製品でなく、
ここの為に製造されているものなのだろう。おそらくは。

「…………」

両親。

(…………『病』について願う人は多い。
 病気は気から、って言葉もあるし、
 体の処置が十分なら、心の縋る先として……
 神様には、あってもらわなくちゃならない。
 神頼みで解決する話じゃあないとしたって、
 神に任せて救われる心も、あるはずなのだから)

(それでも)

都合のいい神はいない。
運命を捨てる神はいても、拾う神がいるとは限らない。

「仰る通り数が全ての世界ではないですけれどね、
 その方がいいと思うなら、そうしてみる――
 それが『信仰』を助けてくれると、思いますよ」

「『信じれば全てうまくいく』わけじゃあなくったって、
 『信じることで救われる』なにかは、あると思いますから」

神は、いると思う。だからこそ鳥舟は疑っている。
いないと断言出来れば、楽ではあるのだろうけど、残酷だ。

151斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/05(月) 20:35:06
>>150

 「信じることで救われる……か。」

(7年起き上がらない両親だ。今更お守りで変わるとは信じられない、けれど。)

結局のところ、こういう事だ

もし、神様が僕に救いの手を差し伸べたとしよう
あっさりと、悪い冗談のだったかのように、僕の両親が起き上がったとしよう

その時点で、僕の行動も、それに伴う『意志』も意味が無くなる
ポーチ一杯のお守りにも、此処での出会いも、僕と言う存在も。

神様は、僕の意志と行動に、価値を見出し続ける限り、手を差し伸べないだろう
……それを無意味にしないために。

(もっとも、この考えは神が存在して、何処かへと『向かい続ける意志』に価値を見出しているのが前提だが)


手の中で兎と鳥の守が、夏の日差しを浴びて黄金の色に輝く。


(たとえ苦しくとも、過去を振り返り、真実を見続ける事に意味があると、そう信じよう、信じられなくても。)
(それが僕にとっての『信仰』かもしれない。)

 「――成程。」

独り感心して頷くと、お守りをポーチに入れた、これで用事は完了……。

 「ッ……。」

急に視界が暗転し、戻る時には膝をついていた、とっさに『ロスト・アイデンティティ』自身が倒れまいと、
影の脚を伸ばして転倒だけは防いだのだろう。

鳥舟さんの言葉に関心して忘れかけていたが、だいぶ体がきついらしい。

「その……鳥舟さん、我ながら、情けないし恥ずかしいのですけど
お水とか、頂け……。」

……上手く舌が回らない、頭痛までしてきた、吐き気は無いが。

152鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/05(月) 22:10:46
>>151

「ええ、祈る心は、もしかしたら…………ね」

断言はできない。
それが巫女として理想形だとしても、
そこまでは踏み込めていなかった。

「……信仰の形は、結局、人それぞれです。
 『キマリ』に従って信仰する人もいますし、
 自分の中の『ジンクス』くらいの人もいる。
 毎日のように参拝に来る人もいますし、
 初詣だけ……気が乗った初詣だけ、という人も」

「いずれにしても、それの後押しを――」

      「あっ」

(しまった)

陽射しの下で持論を垂れていた鳥舟も、
膝をついた斑鳩に『それ』を思い出した。

「冷たいお水」 「ッを、持ってきますんでね!」

         たたたっ

「『日陰』入れます? 厳しいかな……!
 動けないなら無理しなくて良いんで、待ってて下さい」

         「2分も待たせませんからねッ」

そもそも彼が熱にやられていたのが話のきっかけだ。
歩けはしても体調が悪そうなのは明らかだった。
本業に気を取られすぎていたのを恥じつつ、水を取りに向かう。

     ………ミンミンミンミン

            ・・・斑鳩とお守り、鳴き始めた蝉だけが残される。

153斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/05(月) 23:25:05
>>152

駆けていく鳥舟の焦るような様子を見やり
何かしら言葉をかけようと口を開いたが、どうにも舌が回らない。

(我ながら、何とも間抜けでお粗末な……)

ペットボトルは空だ、ポーチの中身も今は役に立たないだろう
そうなると残っているのは一つだけだ、たった一つだけ。

(だが、これだけは何とか言えるだろう、僕の奇跡、僕の『スタンド』。)


 「――『ロスト・アイデンティティ』。」


そう呟くように唇からその名前を零すと
四肢に『鎖』が巻き付きだし、斑鳩の全身を精神のヴィジョンが纏わりつく

(柱への射程距離……4、5m…制限時間2分…。)

鎖を握り込み掌の中に、鉄球を作り出すと
それを鎖で出来た投石紐のように回し、遠心力で柱まで投擲する。

空中で鉄球が分離しつつ、ボーラのように形を変え、柱に巻き付いたところで結合する。

(後は、このまま鎖を縮ませつつ……ゆっくりと、日陰に移動だな)
(立ち上がるのは無理では無いだろうが……動けないだろう。)

まあ、僕がどうなるだのは構う事では無い
重要なのは両親だけだ、その前に倒れたら片手落ちだが。

(彼女が戻る前に何とか……むう)

154鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/06(火) 01:34:57
>>153

            ジャラララララ ・・・

『ロスト・アイデンティティ』の『鎖』を巧みに使い、
日陰のほうへと移動する斑鳩だったが――――

「……」

              スス …

残り1mほどまで『縮め』終えた時、
斑鳩の体に差し掛かる影は、鳥舟の物。

日を背負う彼女の手にはペットボトル。
『2分』は多めの申告、だったのだろう。

「そうか――――『貴方も』そうだったんですね」

ぽつりと零した言葉。
感慨はない。驚きは、少し混じっていた。

「ああ、いや、今はそんなことより。
 これお水です、急ぎだったもので、
 飲みさしですけど……背に腹は代えられない」

        スッ

            「どうぞ、蓋は開けてますからね」

ともかく、ペットボトルを渡した。それなりに冷えてはいるようだった。

155斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/06(火) 23:18:00
>>154

ペットボトルを受け取る
冷えたプラスチックの容器が手に吸い付くように
受け取った腕の鎖が一挙一動に張り付く

 「どうも、有難く頂きます」
 「喉がカラカラだ。」

苦笑しつつも一息に半分ほどを喉を鳴らしながら飲み干すと
肺に水が入ったのか、咳込みながら息を整える、その度に金属音を鳴らしながら

 「まあ、名前の縁の如く奇遇だったと」
 「『スタンド使い』というのは本当に奇妙な縁のような物が有りますね。」

肩を竦め、礼を一つ
頭の痛みは消えていくが、足の方にはまだ力が少し入らない。


柱に巻き付いた鎖が、最初から巻かれていなかったかのように解けると
斑鳩の左手に巻き戻り、消え去る。


 「……ここで『やりあう』というのは」
 「勘弁願いたいな、戦うのは苦手だし、痛いのも御免ですから。」

 「何より、恩人相手だ。」

 「まあ、そのつもりなら既に攻撃しているでしょうけど、ね。」
 「一応聞くだけ聞きますよ、――あなたも『スタンド使い』?」

――氷のような瞳が鳥舟を見つめる。

156鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/06(火) 23:53:18
>>155

「普通のミネラルウォーターです。
 ご存知かは分かりませんけど、
 うちの霊水ではないので、ご容赦を」

煮沸が必要な……もとい神聖な水を、
普段から飲み物にしていることはない。
コンビニで買ってきた、奇跡の欠片もない安心な水だ。

         スッ…

「ボクはあまり、『詳しい』方じゃあないですから。
 縁については、なんとも……心当たりはありますけどね」

水を渡すと、少し距離を置いた。
自分の身の安全のため、もあるし、
斑鳩の心を乱さないため、でもあった。

「…………ええ、どうやらそうらしいです。
 もっとも、ボクの『ヴィルドジャルタ』は――
 ボク自身見たことがない、鵺的な存在でしてね。
 もしやり合いたくても出し方すら分からないので、
 つまり、その、一応……『警戒』は無用ですよ」

「現にそう、あなたの言うとおりで……
 何かするつもりなら……好機はとっくに逃してる」

やや早口気味に、要点を伝えた。
斑鳩の、暑さを忘れさせる氷のような視線。
そこにまさしく『警戒』を覚えたから、だ。

「『スタンド使い同士が合うと戦うものだ』……
 って話じゃないでしょう? ぜひ平和に行きましょう」

冷や汗を垂らす。

もっと狂った目をした人間は勿論見たこともあるが……
斑鳩の冷たさは『筋』のある冷たさで、それが恐ろしい。

157斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/07(水) 22:33:09
>>156

子供の頃から散々晒されたその視線に、ゆっくりと口を開く
不快でもなんでもない、ただよく知っているというだけ。

 「……その眼」
 「何度か見た事が有る。」

(距離を取り、目の前で冷や汗を垂らしつつも、『スタンド』を出さない
 ……恐らく事実か、少なくとも近距離型ではない。)

全身に巻き付かれた鎖が、斑鳩から解けるように溶けて消えていく
鎖が枯れた蔓のように、大気に解けて消えていった。


 「鳥舟さん、僕は貴女のスタンドについて詳しく知りたい。
 もしそれが、僕の両親を助けられるなら、僕は自分の全てを差し出して貴方に願うだけだ。」


(或いは、一体化して、もう見えている……という線も有るが)

瞼を下し、瞳を閉じる
脚にも、もう力は戻っている、立ち上がるとジーンズの土を払った。

 「けど、僕は貴女を怖がらせてしまうだけらしい、恩人相手をそうするのは忍びないし
 両親にも胸を張れない事だ。」

 「この眼が怖いなら、瞼を閉じたままで――もう、行かなくては。」

鳥舟の方に一礼すると、その位置が解っているように
迷いなく神社の出口へ歩いて行く。

 「……お水、有難う御座いました」
 「貴女にも幸運が有りますように。」

158鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/08/08(木) 00:59:20
>>157

「いいや、怖くなんかは……
 …………………………ない、
 そう、ないはずなんです……何も」

        「…………」

言葉を弄するのは苦手ではない方だが、
この状況で斑鳩に掛けるべきそれが思い当たらない。

「ボクの『ヴィルドジャルタ』は…………」

なぜなら自分は、『ヴィルドジャルタ』を知らない。
出来るとも、出来ないともこの場で答えられない。
それは問題だが、急務ではないと何処かで考えていた。

「…………今はまだ、何も、『分からない』。
 何が出来るのかも……キミの信仰を受け止められるのかも」

だが……違う。
自分のスタンド能力を知らないのは……『大問題』だ。

「もし、助けられるような力なら…………そのときは」

      「そのときは…………」

自分に出来ることと出来ないことを知らないままで、
否応無しに『他のスタンド使い』と遭遇し続ければ、
いま斑鳩に手を差し伸べられず、否定も出来ないような、
対処不能の問題が降ってくるのは火を見るより明らかだ。

それ以上、何の希望を投げかけて引き止めることも出来ない。
巫女としての役目は果たした。スタンド使いとしての役目は……

159斑鳩 翔 『ロスト・アイデンティティ』:2019/08/09(金) 06:39:44
>>158

背後の言葉が悩みに止まっても
斑鳩には彼女にかける言葉は無かった。

ただ、自分の信仰が鳥船と言う善き人に
苦悩や悩みを与えたことを見てこう考えていた

自分の願いと言うものは、どうあがいても
他人を巻き込んで不幸にするだけではないかと。

噛んだ唇から血の味が口内に広がる
彼女に何か言葉を投げて、貴女のせいではない
と言うべきだと言う考えもあった

同時に、自分の中に、何処か言葉にし難い
鳥船に対しての理不尽な憎悪がある事に気付いた時

それが彼女を傷つけてしまうだろうと気付いた時
後はこの場から逃げるように去るしか無いと思い至り

鳥船がこれ以上自分の事で悩む事が無いように
そう祈りながらこの場から立ち去った。

160美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/04(水) 22:02:49

   キキッ

一台のスクーターが駐車場に停まった。
乗っているのはラフな『アメカジファッション』の女。
首にワイヤレスヘッドホンを掛けている。

「こんな近くにも、割と有名な神社があったのね。
 私も、まだまだ勉強不足だったわ」

            スッ

シートから降りると、境内に向かって歩いていく。
辺りを見渡しているのは癖のようなものだ。
何か変わったものでもあれば、『トーク』のネタに出来るから。

「――ついでに何か願掛けでもしていこうかしら」

161鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/05(木) 00:06:39
>>160

辺りを見渡せば、神の社に相応の清らかさがあった。
雰囲気もだが……ゴミが落ちていない、という事だ。
もちろんそれは神の御力のお陰というわけではなく、
掃除をしている人間がいるからだった。『巫女』だ。

「ようこそ、お参りです」

         ペコ……

わずかに秋めくも熱を残す風。
額に汗を浮かべちりとりと箒を持った少女。
『体育会系』とも『接客業』ともどこか異なる、
緩やかな笑みを浮かべた挨拶で美作を出迎えた。
もちろん『芸能』の世界の、華やかさとも違う。

「…………」

         さっ…

               さっ…

・・・それ以上、特に干渉はしてこない。

周りを見渡しているとはいえ余裕のある美作の気風に、
案内の必要性は感じなかった、という事かもしれない。

162美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/05(木) 00:44:22
>>161

「――――どうも、こんにちは」

『ご精が出ますね』と言いかけたが、この場合は意味合いが少し違うだろう。
万が一、それが失礼に当たっては不味い。
だから、軽い会釈と挨拶のみに留めておいた。

    スタ スタ

参拝の手順については、大体分かっている――つもりだ。
もちろん、神社によって種類があるだろうから、完璧とは言わない。
少なくとも、常識的な範囲であれば理解している。

「さて、と――――」

まずは手と口を洗おう。
それから拝殿に足を向ける。
道の真ん中は神様の通り道だから避けるべきだという話を、どこかで聞いた覚えがあった。

「『この橋、渡るべからず』の反対って所ね」

         ガラガラ
                  チャリン

参道の端を歩き、拝殿に向き合う。
鈴を鳴らし、賽銭箱に『二十五円』を入れた。
『二重に御縁がありますように』ってね。
『三十五円』とか『四十五円』にするっていう考えもあるだろう。
でも、それだとちょっと欲張り過ぎるから。

「えっと…………」

少しばかり考える。
一応は知っているとはいえ、そう頻繁に神社を訪れる訳でもない。
頭の中から、作法に関する知識を引っ張り出す必要があった。

「二回お辞儀して二回手を打って――」

             パン パン

「それから最後に、もう一回お辞儀だったかしら?」

思い出しながら、流れるように一連の手順をこなしていく。
せっかくだから、『願い事』もしておいた。
番組の発展や自分自身の成長に繋がるような、『ユニークな出会い』がありますようにってね。

163鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/05(木) 02:20:30
>>162

参拝をしている間、巫女から助言などは無い。
よほどのマナー違反でもない限りだが、
参拝の作法にあえて口出しはしない――――
もちろん知りたければ教えるようにしているが。

「…………」

       さっ…

          さっ…

(想像以上にしっかりした『作法』をお知りみたいだ。
 とはいえ作法が『身についてる』ってわけじゃあなさそうだし、
 『覚えてる』んだ。何か、すごく大事なお願いがあるのかもしれない)

「――――ええ、今のも『正解』ですよ。
 一通りではないんですけどね、
 その手順なら、何処の神社でも『おかしくない』」

参拝によく来るものは『身についている』。
つまり、考えるそぶりなく流れるように行う。
有名な作法に合っていようが、なかろうが、だ。
その点、美作の『考えながら』『正しい』作法は鳥舟の目を引いた。

「っと、差し出がましい事を言ってしまいましたね。とても綺麗な所作だったので、つい」

話しかけてから、そのように付け加えた。
目を引いた理由には、その動作の洗練もあった――――あるいは、どこかでの見覚えも。

164美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/05(木) 02:51:38
>>163

「ええ、まぁその――――」

    クルッ

「どうも、ありがとう。
 『関係者』の方から言われるのは光栄ですね」

    ニコリ

拝殿から離れ、口元に微笑みを浮かべる。
声を掛けた巫女らしき女性とは、どこか質の違う笑みだ。
神社を神聖な場所とするなら、より『世俗的』な雰囲気がある。
だが、別に何か裏があるという訳でもない。
言い方を変えれば、どことなく『職業的な匂い』が漂っていると言えた。

           ザッ

「お仕事中で申し訳ありませんが、
 もし宜しかったら、この神社について教えて下さいませんか?」

「たとえば、『由来』や『ご利益』なんかを。
 後は、何か『変わったもの』があるとか…………」

              ザッ ザッ ザッ

言葉を投げ掛けながら、巫女の方へ歩み寄っていく。
もし彼女に何らかの『見覚え』があったとしても、美作には知る由もない。
どちらかというと、『声を聞いた事がある』という場合の方が、今は多かった。

165鳥舟 学文『ヴィルドジャルタ』:2019/09/05(木) 10:38:57
>>164

世俗でありながら大衆とは異なる笑みにこそ、
どことなく既視感を覚えたのは確かだったが……
鳥舟も、その朧げな幻像をあえて掘り下げはしない。
どこで見たことがあっても今は参拝者で、自分は巫女。

「いえいえ、それもまた巫女の勤めですよ。
 とはいっても、なにぶん若輩者でして、
 調べて出てくるような知識ばかりですけれど」

      フフ…

笑みを浮かべ、近付いてくる美作を言葉で迎える。

「由来は、ですね。境内にある『烏兎ヶ池』ですね。
 神社としての名前もここから来ているんですけど、
 いわれといいますか、創建の根拠もそこでしてね」

視線を向ける先は、未だ青々とした葉を付ける木々。
ちょっとした林のようになった空間の、その先に、
パワースポットを謳われる『池』がある……ことは、
美作も境内を見渡した時案内板で知ったかもしれない。

「ご利益の方の根拠は祀っている神さまですけど、
 ここに神社を建てたのは、池があったからでして。
 まあ、これは根拠のない話になりますけれど、
 色々と……伝承の残っている、『霊池』なんですよ」

そこまでほとんど一息に言い終えて、
鳥舟は、吐き出した分の息を吸い直した。

「池の前までは入れますので、ご興味があればぜひに」

そして、そこで言葉を止めて一旦話を切る。
利益の中身や、変わったものについては分けるようだ。
もっとも、池自体が変わったもの、と言えなくもないが。

166美作くるみ『プラン9・チャンネル7』:2019/09/05(木) 22:36:31
>>165

「『霊池』――――ですか。いわゆる『パワースポット』ってヤツですね。
 それは大いに興味がありますねえ」

『烏兎ヶ池』について書かれた案内板は、さっき見かけていた。
参拝を優先したので、軽く目を通しただけで熟読はしなかったが。
いずれにせよ、『話のタネ』にはなりそうだ。

「後学のためにも是非お目に掛かっておきたいですね。
 えっと…………そこまで案内して頂けますか?『巫女さん』」

迷うような場所でもないだろうから、一人で行っても構わない。
ただ、せっかくなら『関係者』の話も聞いておきたかった。
『ネタ』というのは、多ければ多いほど良いのだから。

「何ていうか、こんな事を言っちゃあ失礼かもしれませんけど…………。
 普段あんまり使わない言葉ですよね。『巫女さん』って」

       クスッ

非日常的な巫女姿の女性を見つめて、気さくな微笑みを浮かべる。
普段の日常生活の中で、『巫女』と会話する機会は多くないだろう。
これも、ついさっき願掛けしてきた『ユニークな出会い』の一つかもしれない。


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