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それは連鎖する物語Season2 ♯2
1
:
数を持たない奇数頁
:2014/09/05(金) 21:07:09 ID:LUyN3zHI0
つまりリレー小説なのだ
524
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 22:09:31 ID:gAlJe0tc0
悲劇上等! 早く! 早く!
525
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 22:10:03 ID:vMcaXF1A0
惨劇の奇行死?(難聴)
526
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 22:10:31 ID:vMcaXF1A0
お、おお?
いいのか?このままいくよ?
527
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 22:11:08 ID:gAlJe0tc0
構わん
528
:
タタリ 1/3
:2015/04/16(木) 22:12:58 ID:NzkwlVZU0
空を絶望が覆い隠す。
地を絶望が埋め尽す。
飛翔する蒼銀の竜の群れが伏神山の周辺を周回している異常な光景を仰ぎ見て、劔は愕然と呟きを零した。
「ば、か、な……!?」
これだけの竜が同時多発的に発生する可能性もないとは言えないが、異常の一言に尽きる。そもそも竜とは人の欲望を糧に顕現するものだ。しかし空を覆い、地に伏せる竜の群れは統率がとれている。
何かに従う様な動きは、欲望に忠実な竜らしくない。
「これは、貴様の仕業か、竜よ!」
「呵々。よもやこの期に及んで出た疑問がそれか。耄碌でもしたか、伏神劔よ?」
竜の鱗や尾などが表面化しているものの、聡理の姿形をした人型の何かは、老人の様に嗄れた声で哄笑する。
「如何にも。……改めて考えると、こうしてお主と面と向き合って話すのは初めてよな。我が名はベイバロン。“崩れぬ群れ”のベイバロン」
「ベイバロン……!!」
右腕の悪路王を喚起し、黒刀を握る手に力を込める。同時、空から四体の竜が二人の間に割って入る様に舞い降りた。衝撃で地面が抉れ、亀裂が走る。
「邪魔だ、退け!」
「そう喚くでない。童(わっぱ)は気が短くて仕方ないわい」
劔の猛突を、ベイバロンを護る様に立ちふさがる四体の竜のうちの二体が身を乗り出して線上に躍り出る。黒刀一閃、右の蒼竜の右と、左の蒼竜の首を同時に刎ねる。
しかしそれまでだ。生き残った方の蒼竜は身を捻って丸太ほどの大きさもある尾を打ち付ける。辛うじて右腕の悪路王で攻撃を受け止める事ができたものの、両者には埋め難いほどの重量差がある。
十数メートルも一気に跳ね飛ばされた劔は地面に黒刀を突き立て、無理に着地する。ベイバロンとの距離が遠のいた。
悪路王の力を持ってすれば、蒼竜は敵ではない。とは言え決して楽に倒せる怪物という訳でもなく、全身全霊をかけた一撃でなければ両断する事もままならず鱗に弾かれる事だろう。
全力で攻撃する以上、それは後続の攻撃につなげる事のできないテレフォンパンチでしかない。故に、複数が同時に反撃してきた場合、対処がひと呼吸遅れてしまう。それは竜を相手取るには致命的な隙である。
先の攻防では、竜の尾の軌道上にたまたま右腕があった為に防御する事ができたが、その僥倖がいつまでも続くとは思えないし、ベイバロンの手札にはあと四十六の盾がいる。
最後に、もう一つ。劔には決着を急ぐ理由がある。
「悪路王を使い過ぎたな、伏神劔。そろそろそ奴を御すのも限界なのではないか?」
「……クソッ!」
竜を殺す為に宿した竜。劔は術式と、何より強靭な精神力で、本来ならば己が喰われる運命を捻じ曲げて悪路王の力を恣(ほしいまま)にしていた。慣れもあるが、慎重に使い続ければ数日は常に悪路王を顕現したままでいられる。
しかし、それはあくまでも慎重(スローペース)な運用を行った場合だ。全力で使用すればいずれ意識の隙を突かれベイバロンに殺されるか、悪路王に喰われるかのどちらかだ。そうでなければ蒼竜を殺す事が出来ない。
「ふむ。勝てぬとも負けぬなら、こうして睨み合う道を選ぶか。そうなれば戻ってきた盾一郎の援護や、露払衆による避難も完了すると。顔に似合わず賢しらな男よ。
では一つ、余興を行ってしんぜよう。のう、伏神劔や。お主は伏神という、否、四十七氏という基盤(システム)そのものを壊す為に、今回のクーデターを謀ったのだったな」
「……だからなんだ?」
「どれ、わしが手伝うてやろう」
「っ、馬鹿! やめろ!」
529
:
タタリ@目算ヘタで章数がズレた
:2015/04/16(木) 22:15:54 ID:NzkwlVZU0
ベイバロンの思惑を瞬時に理解した劔は大地を蹴って疾駆する。足の裏で爆薬が爆ぜたかと思う程に巨大な土柱を巻き上げ、ベイバロンを守護すべく前に出る蒼竜へ刃を滑らせる。
同時、空を翔けていた絶望の群れが二手に別れ、それぞれの目的地へと降下する。半数はベイバロンの元へはせ参じ、もう半数は麓の上伏町へ強襲する。
魔竜の咆哮(ドラゴン・ロアー)。大気を激しく揺さぶるそれは、もはや空気の振動ではなく衝撃波である。山林の木々を薙ぎ倒し、土砂をひっくり返し、麓の町並みを次々と倒壊させていく。
異変に気付いた町人たちは、空を見上げる。大勢の絶叫は山を駆け巡り、劔の耳朶を打つ。彼らは、この世の終わりが降り注ぐ光景を、どう受け止めたのだろうか。
「のう、伏神劔よ」
黒刀一閃。しかしそれは蒼竜の背鱗に阻まれる。山の中腹まで響き渡る、護るべき民草の恐怖が、劔の集中力を削いでいく。舌打ちし、今度は速度を重視した一瞬百撃。蒼竜の背鱗が次々と捲れあがり、旋風に吹かれた木の葉の如く飛んでいく。
そこへ、他の蒼竜が大きく顎を開き、劔へと牙を剥く。殺気を感知し、咄嗟に蒼竜の影へ飛び退る。魔竜の咆哮は蒼銀の閃光として、高エネルギー波を撃ち出した。
鱗を剥がれた蒼竜もろとも撃ち破る魔竜の焔波(ドラゴン・ブレス)の余波を受けた劔の体が木っ端の様に吹き飛ばされる。高エネルギーからなる衝撃波は体内で反響し、内臓や骨肉を破壊していく。
「ぐ、ぁぁああ!!」
しかし、それでも。劔は倒れない。否、倒れる事を許されない。何故なら彼は守護者であり、弱き者たちを護る為の剣として生を受け、命を帯びたのだから。
「この事態を理解しておるか? これは、今、お主が反旗を翻したからこそ、伏神の民が死に行くのだぞ」
だから──ベイバロンの言葉を受け、劔の体が動きを止めた。
「分かっておるのだろう? 伏神は内情はどうあれ、人間界政府と調和を図り、上伏の町を守ってきたのだ。貴様は伏神の暗部を崩すために、今日まで手管を用いて、伏神の基盤(システム)を破壊する為の準備を重ねてきた」
そう、上伏町は辺境に存在する。未だに他界の文明に浸らず、古来から変わらぬ生活を続けている田舎だ。にも関わらず他所の地との流通が盛んで、かつ人間界政府へのコネクションもあり、五界統合学院へ複数人も編入できるだけの権力を有しているのは、偏に伏神のネームバリューによるものだ。
伏神という重鎮が存在するからこそ上伏町が機能し、先の大戦を経てなお安寧を維持する事が出来ていた。
伏神を潰すという事は、それらの権利を放棄するに等しい。劔はなにも、五年間を己が鍛えるだけの自己満足的な使い方をしてきたのではない。伏神の名がなくとも、一定の文化水準を保つ為の根回しも並行して進めてきたのだ。
全ては決戦の日の為に。
「俺は、伏神が与えるまやかしの平和を終わらせ、真なる平和を掴み取る為に、ここにいる!」
「左様。伏神は所詮、かつての栄光に固執した欲望の具現にすぎん。だが、だからと言って、彼奴らは貴様の革命を望んでいたのやら?」
ギクリ、と。劔の肩が震える。
「貴様は大義を掲げ、正義を抱え、仁義を以て伏神が操るまやかしの平和とやらを壊そうとした。その陰で虐げられる魔界人を救う事もその一端であろう? ……おや、それでは辻褄が合わぬな」
「……黙れ」
「魔界人を受け入れたのはここ最近の事なのだろう? しかし、貴様は五年前のあの日から、伏神への革命を企てていた。現在ある平和を捨てさせる事を民に強要する、内密の革命家として」
「……黙れ!」
「確かに、今の平和は伏神の掌の上だ。それはまやかしに過ぎん。伏神の闇部を知る貴様にとっては事実であろう。だがわしから言わせれば、それを現実として平和を享受する民を慮る事をしなかった貴様も、伏神と同じく欲望の化身なのではないか?」
「だ・ま・れぇ!」
530
:
タタリ@目算ヘタで章数がズレた
:2015/04/16(木) 22:16:28 ID:NzkwlVZU0
深々と、次々と。ベイバロンの言葉は鋭利な魔剣と化して劔の深層へ抉り込んでいく。それらは致命傷として、決して癒えぬ傷を劔の内部に刻んでいく。
大義を。正義を。仁義を。
およそ思いつく限り、あらゆる装飾を用いて固く堅く閉ざした目的を、明け透けに剥がされた。心を穢される事に耐え切れない劔は、聡理と同じ身形をしたベイバロンへ、三度目の疾駆を試みる。
竜が止めに入るなら、もうそれで構わない。この身はとうに命を捨てた。たとえ刺し違えようとも、ベイバロンだけは息の根を止めてみせる、その一心で。
「嗚呼、そうじゃそうじゃ。一つ重要な事を言い忘れておった」
だが、劔の予想に反して、蒼竜たちは動かない。反応できぬ程の速度でもない。突進をブロックされると思っていたが、身じろぎ一つしない。
ベイバロンに何の思惑があるかは知らないが、その思考すら放棄する。もはや一秒たりとも余談は許されない。この下卑た悪竜は必ず殺す。
「うああああああああああああああ!!」
右腕に封じた悪路王に命ずる。全身全霊、最速最大の一撃を。聡理の姿を騙るこの竜を、一刀で斬り伏せる事を!!
「伏神聡理のことなのじゃが。あの小娘はなかなか強情でな、こうしてわしに体を乗っ取られていながら、まだここに生きておるぞ」
自分の頭をトントンと指で叩きながら、まるでかつての聡理の様に優しく微笑みつつ、そう囁いた。
ベイバロンの首が刎ねる刹那、音速にも匹敵しかねぬ勢いで迫る黒刃が、喉元を斬り開く直前でピタリと静止した。
「な、に?」
「大義の元にわしを殺すより、親愛なる妹の為に刃を止めるか。貴様の革命こそまやかしに過ぎぬわ、復讐の男よ!」
隙だらけな劔の胸に手を充てがい、ベイバロンは哄笑した。
531
:
タタリ@目算ヘタで章数がズレた
:2015/04/16(木) 22:17:43 ID:NzkwlVZU0
空から降り注ぐ絶望に、逃げ惑う民は叫ぶ。助けてくれ、死にたくない、どうして自分がこんな目に、と。
「落ち着いてください! 慌てず、しかし迅速に避難を!」
覆面こそ外しているが、黒装束の男たち露払衆は上伏の民を誘導しながら、幾人かは強襲する蒼竜の群れに刃を向けていた。
劔の下した命は「上伏の民に被害を出さず、露払衆全員が生き残ること」である。彼らの瞳には、決して揺るがぬ意志があった。どちらの条件も果たす事を信じて疑わぬ目をしている。
「来るぞ、供えろ!」
先陣を切って飛来する蒼竜が、全てを薙ぎ払う魔竜の咆哮を放つ。空からの衝撃波ではなく、至近からのそれは、人々を塵芥の如く吹き飛ばし、内部から破壊せしめようとする。
衝撃波が届く寸前で、露払衆の数名が札を前方に投げた。それらは中空で弾け、魔竜の咆哮とは逆位相の音波をぶつけて衝撃波を無効化する。
が、人間の叡智風情が古来より災厄とされてきた竜の脅威に勝る道理なし。咆哮は若干の衝撃緩和こそ果たしたものの、そんな物は焼け石に水だ。建造物を粉微塵に砕き、前方で間近に受けた露払衆らは内側から弾け飛び、血漿を撒き散らして死亡した。
その余波で避難が遅れていた上伏の住人もいくらかが吹き飛ばされ、超高速で瓦礫に打ち付けられていく。その体は有り得ぬ方向に捻じ曲がり、呻き声どころか指先一つも動く事はない。
それほどの災厄が、空から群生してやってくる。その数、二十弱。後続する蒼竜は上伏町を包囲する様に、避難しようとする民の頭上を翔けて追い抜き、巨大な脚で何人かを踏みつぶしながら着地した。
「くそ! 出合え出合え!」
逃げる事は不可能であると判断した露払衆が剣を抜き、脚、尾、翼、頭、あらゆる箇所に剣を突き立てようとする。しかし、劔の黒刀ならばともかく、普遍の刀剣では鱗の表面を削る事すら適わない。
長い首を伸ばした竜の顎が、露払衆の一人の胴体を喰らう。人間の作る刃物など比べようもない強靭な牙にとって、人間の体など脆弱な血袋でしかない。牙は肉も臓物も骨も裂き、砕き、貫いていく。
「外が駄目なら……内側なら……!」
だが、今まさに喰われようとしている露払衆は、死の瞬間まで使命を諦めてはいなかった。黒装束の内部に仕込んだ起爆用の呪符が眩く光る。
蒼竜の口の中で、露払衆の体が爆発した。血煙と臓物の雨を降らせる代償に、蒼竜の内側から強大な爆撃。それは蒼竜と言えどもその身を大きく仰け反らせ、地に倒す事に成功した。
蒼竜による包囲網の一端を突破した。後続の露払衆は甲高い笛の伝令で方方に散っていた仲間を呼びかけ、避難先を誘導しようした。
……少なくとも。彼は最期まで、そのつもりでいた。
濛々と立ち上る土煙と血煙の向こうから蒼竜の爪が空間を薙いだ。笛を吹き鳴らすべく大きく息を吸い込んでいた彼は、恐らく、蒼竜の爪が自らを三分割する事に死してなお気付かなかっただろう。それを僥倖、幸運であるとは言い難い事ではあるが。
「む、キズ……!?」
二人の露払衆に先導されていた住民の一人が、彼らの血漿をその身に浴びながら、しかし眼前に突き付けられた現実に愕然と膝を落とした。もはや逃げる気力も湧かない。
命を賭した捨て身の爆撃を咥内で受けた蒼竜はブルンと頭(かぶり)を振って、何事もなかったと言わんばかりに悠然と立ち上がった。ずしん、と後肢で大地を踏み締めるだけで、地震かとまごう程の振動が起こる。住民のほとんどは振動にバランスを崩し、その場に倒れ込むが、それは決して地震だけが原因ではないだろう。
死が、目の前にいた。抗えない結末を前に、彼らは茫然と、身じろぎ一つしない。まるでそれが、あるがままの自然の摂理であるかのように。
しかし、災厄とは得てしてそういうものである。矮小な人間の力だけで退けられるのならば、それは災厄などと称して恐れられる事はなかろう。
つい十数分間ほどの出来事ではあるが、今となっては聞き慣れた、耳にする者全てを竦み上がらせる幾度目かの魔竜の咆哮(ドラゴン・ロアー)。それを音と認識するより早く、その場にいた全ての住民の体が、内側から爆ぜた。
532
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 22:20:15 ID:NzkwlVZU0
加速するお兄ちゃんイジメの巻
533
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 22:22:03 ID:vMcaXF1A0
自分で読み返して「来るぞ、供えろ!」に大草原不可避
なにを供えると言うんだ、備えろよ
534
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 22:24:56 ID:gAlJe0tc0
首でしょ
535
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 22:25:41 ID:gAlJe0tc0
あ、タタリんおっつ
盛 り 上 が っ て ま い り ま し た
536
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 22:43:56 ID:vMcaXF1A0
本当は、ソウジが途中で駆けつけてお兄ちゃんを叱咤激励し、町の蒼竜退治に行ってもらうって展開にしたかった
ベイバロン周辺の竜はアギョー任せで「コイツは俺が止める」的な感じでソウジはベイバロンと一騎打ち
ってのを入れたかったが、お兄ちゃんイジメに興が乗ってしまい断念した
537
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 22:56:50 ID:O/SE3.t60
タタリ様お疲れ様にございます
やべえええええええええええ
こんなんもう勝てる気しない
538
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 22:58:32 ID:gAlJe0tc0
出した俺も忘れてたけど、そういえばソウジ君の影の中になにやら強そうなのがいるんだよな
539
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 23:10:06 ID:vMcaXF1A0
もし収拾がつかなそうならデウス・エクス・マキナとしてアドライグ召喚すればいいよ
こういう時の為に、一回だけピンチの時に駆けつけるって言わせたし
ウロボロスの時はアドライグの都合もあったしノーカンだと思ってる
540
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 23:14:55 ID:gAlJe0tc0
次どあにんだったか
541
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/16(木) 23:16:20 ID:vMcaXF1A0
あ、そだね、どあにんヨロ
アーイイ、上位存在に嬲られる人間イイ…
542
:
どあにん
:2015/04/16(木) 23:45:53 ID:v7cG4n0A0
タタリンおちゅん
やっべぇよ……これどうやって収集つけんだよ……こんなに大規模になるとは思わなかったよ……
じっちゃと真川さん街に向かわせて、あと誰か戦わせるかなぁ
543
:
どあにん
:2015/04/17(金) 00:07:18 ID:piprKrmo0
なるべく早めには書き上げるつもりだけど
GW祭りの提出期限が2週間に迫ってるんでもしかしたら遅れるかも すまぬ
544
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/17(金) 00:23:47 ID:uFxOjFck0
つか競作あるしな
545
:
どあにん
:2015/04/28(火) 10:47:56 ID:lTcSNltc0
今日中にGW祭り作品を完成させ、5月頭ぐらいまでに書き上げる
フフフ、中々ハードですな……
546
:
どあにん
:2015/04/30(木) 19:36:25 ID:nxEofK2g0
GW祭り作品提出したので今から書き始めます
最悪パスります
547
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/30(木) 20:59:52 ID:GM9VpxRI0
カラダニキヲツケテネ!
548
:
どあにん
:2015/05/12(火) 19:49:01 ID:K/KSfVY20
展開がおもいうかばねぇ……
書けても短い……もうゴールしちゃってもいいよね……?
549
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/12(火) 19:51:16 ID:aPH6IEkE0
どあにんがしたいようにしてええんやで
あとは俺が引き継ぐ
550
:
どあにん
:2015/05/12(火) 20:01:32 ID:K/KSfVY20
日付変わるまで抵抗してダメだったらブン投げる
551
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/12(火) 20:03:19 ID:aPH6IEkE0
おk、ウォーミングアップをしながら待っていよう
後続に控えてるKの人が大体何とかしてくれると思うから、気楽に行こうぜ(屑)
552
:
どあにん
:2015/05/13(水) 00:11:23 ID:bCJE4FA60
血、肉、骨……それら全てが道路を赤黒く染め上げる。
空で飛翔していた仔竜達が地へ舞い降り、その肉をクチャクチャと音を立てながら喰らい、湧き出る血を舌で器用に啜る。
その中で運良く、否……運悪く絶命を免れてしまい、もがき苦しんでいる民に襲いかかるのは更なる不運。
生きながらにしてその身を喰われる、想像を絶する苦痛を味わいながら命を落とす民。
災害と呼ぶも生温い、これが、竜。
既に露払衆の半数以上は、覆しようの無い絶望を前に戦意を失っていた。
ある者は戦意を失いつつも健気に立ち向かうものの、敵わず仔竜の腹の中へと消えた。
ある者は目の前の絶望から逃避するかのように、その白刃を己の心の臓へ突き立てた。
ある者は度重なる絶望と己の無力さを享受してしまい、正気を手放す事で恐怖を打ち捨てた。
そのような中でも戦意を失わず、二人で仔竜の群れを相手取る人物が二人。
白刃が閃くと仔竜達の首がボトリと地面に転がり、鮮血が噴水めいて噴き出すのを見届けた真川敦は、刃に付いた血を振るい払って、再び空を見る。
仔竜達が嘶いて大気が震える、魔竜の咆哮(ドラゴン・ロアー)が地へ向けて一斉に放たれる。
無味無臭無色無遠慮な殺意の衝撃波が束ねられて地で戦う二人に襲いかかる、しかし……それが到達する事は無い。
やや年齢を重ねた一人の女性が埃塗れの魔術書を開いた、およそ戦いには似つかわしく無い割烹着を来た稀口茶店のおばちゃん。
口を開いて呪文を詠唱、人の耳では感じ取れぬ音域と言語が光となって収束した刹那、空を覆い尽くしていた絶望が消え去り、一瞬だけだが美しく輝く月が姿を見せた。
「やんなっちゃうねぇ、一体何が起こっているんだい?」
「分かりません、ですが……」
刹那、真川が居る位置に衝撃波が襲ったので、真川は前転でそれを回避した。
「今は戦わなければ、護る為に」
「稀口は外交でソウちゃんの一族を支えて来た、戦いは専門じゃ無いんだけど……ねぇ!」
口を開いて呪文を詠唱、人の耳では感じ取れぬ音域と言語が光となって収束した刹那、空を覆い尽くしていた絶望が消え去り、一瞬だけだが美しく輝く月が姿を見せた。
真川の背筋に冷や汗が流れる、声を媒介とした超高音の衝撃波を発する今は失われし魔法形態、触れれば肉は当然血すら跡形も無く振動で分解され尽くされる。
そのような魔法を操る事が出来ながら戦いは専門では無い、伏神を影から支え続けた一族達は怪物揃いか。
だが、今は心強い味方。
真川の白刃が閃き、襲いかかってきた仔竜達の首がボトリと地面に転がった。
553
:
どあにん
:2015/05/13(水) 00:11:55 ID:bCJE4FA60
長い時間掛けたにもかかわらず全然ダメですまんな
賢者の書のオチだけはキッチリとやりきる
554
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/13(水) 00:19:40 ID:g.25Oqpk0
おお、乙ポニ
…え?希口のおば、ちゃん?え?ぇえ?
555
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/13(水) 00:23:17 ID:Ugu6HCv60
どあにん乙
よし、とりあえずソウジくんをお兄ちゃんと合流させよう
556
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/13(水) 00:53:48 ID:Ugu6HCv60
とりあえずプロットは出来た、遅くとも来週には投下する
しかし、書いてる人で割と強さに差が出そうだなこいつら
俺劔兄さんに屠殺されるだけの、ショッカー戦闘員めいたサンシタとしか思ってなかったのに
557
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/13(水) 07:14:52 ID:g.25Oqpk0
じいちゃん≧悪路にいちゃん>アギョー>>>ベイバロン≧仔竜>>>>>露払衆=ソウジ>>>一般人
このくらいだと思ってる
真川さん(真)はベイバロンと=で結んでいいかな、程度に
558
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/13(水) 20:17:04 ID:Ugu6HCv60
ちょっと読み返してみて、自分の中のお兄ちゃんのキャラが固まってきたな
死にたがりを克服して、曲りなりにも前に進み始めたソウジくんと違って
お兄ちゃんは聡里始め家族とかが死んだ頃のまんま、伏神を潰す事「しか」考えてない
夕霧とか露払衆とか、他の人間と関わる事によって、辛うじて人としての理性を保ててたけど(まあこれが今回仇になったわけだが)
お兄ちゃんも十分に狂ってるわ
その関わってきた他人も、志を同じくする同士とでも言うべき存在で、聡里が死んだ日を否応なしに思い出させる存在
エクリエルがソウジくんにとっての治療薬足り得たのは、それこそ無関係な他人だったからこそなのかもな、とちょっと思ったり
あれ、エクリエルちゃんヒロインじゃねえのこれ?
これ終わったらルカくんの話でも書こうと思ってたけど、エクリエルの話もありだな
559
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/13(水) 20:18:21 ID:Ugu6HCv60
あ、一時的な憎しみとか狂気とかを抱え続けてる、ってヤクザ天狗=サンだわこれ
560
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/13(水) 20:19:05 ID:3pZ8NW/A0
おっつおっつ。
時期的にそろそろ「ヒャッハー、国家資格試験の勉強だァ!」ってなるからパスする可能性が高い
561
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/13(水) 21:48:53 ID:9ddi1iAM0
乙
まさかの参戦者になんだか希望が見えてきたwww
562
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/13(水) 22:20:21 ID:g.25Oqpk0
個人的に、ドネルクラル単体の戦力が100としたら、ベイバロンは10くらいのイメージ
ただ仔竜も同等かちょい下くらいで、戦力9・5が無尽蔵に湧くとかそんな強さ
個人的な意見なので意味はないがな!
563
:
どあにん
:2015/05/13(水) 23:02:43 ID:bCJE4FA60
一線を引いたけど緊急時って事で一時復帰する超実力者って素敵やん?
564
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/13(水) 23:17:08 ID:izHtgYUU0
正直拳を握って立ち上がりました
565
:
西口
:2015/05/14(木) 11:42:08 ID:2Ke3LAk60
リアルでちょっと洒落にならない事態が発生したので、パスさせて頂いて宜しいでしょうか…?
566
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/14(木) 13:34:54 ID:2Ke3LAk60
一週間ちょっと手がつけらないだけだから、間が空いても良いんなら書くが
567
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/14(木) 16:13:26 ID:3IF8jDwQ0
一週間程度なら問題ないんでね?
俺とか1ヶ月はザラだし
568
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/20(水) 19:15:06 ID:I/xCJZ2Y0
書き始めるまでもう少し時間を頂きたいが
もし書き始めたrmここでチマチマ切ってこの編長引くのもアレだから、結末近くまで長めの書こうかと思ってる
なお予定は未定であり、ニンジャは存在しない
569
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/20(水) 20:12:43 ID:O2N/dxyQ0
ニンジャなら下水道でピザ食ってるよ
570
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/20(水) 20:49:35 ID:eWG.saqc0
それの音サルボボ いいえ、ニンジャが居ます
571
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/20(水) 20:51:34 ID:Z0lcGoVs0
へいへいレツゴーけんかーする〜
大切なもの〜protect Mybolls
572
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/20(水) 21:28:51 ID:PjZYZMIM0
いっそ結末までぶっこんでくれた方が俺としては助かる。もっと言えばパス受けても書き始めるのは来月のこの頃になる
というか勉強やら「俺のこの手が黒く染まっていく――」だったりで競作の感想も手がついてねぇ……どっかで時間作ってやらないと
573
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/20(水) 22:11:38 ID:I/xCJZ2Y0
その願いはかなえたいが、どうも速度が追いつかんのよ
オチまでは考えてあるから、終わらせられるっちゃ終わらせられるんだがね
ま、なんにせよ競作は遊びだからさ
リアルの用事を優先して当たり前なんだよ、気にしないで
574
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/21(木) 22:01:33 ID:awJIetQI0
とりあえず書くに当たって一つ相談がある
ソウジくんのオリジナル魔法は「七つの大罪」と「八つの枢要罪」のどっちを採用すべきだ
575
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/21(木) 22:08:15 ID:awJIetQI0
あとソウジくんに呪符ケースもたせて(てか持ってることにして)よか?
576
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/21(木) 22:13:03 ID:n7FUnMUo0
良いんじゃね
577
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/21(木) 22:28:59 ID:qMzjvXRI0
俺は七つの大罪モチーフだと思ってた
ケースに関してはそれぐらい持ってると思ってた
578
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/21(木) 23:28:33 ID:awJIetQI0
おk、分かった
七つの大罪+呪符ケースありで行くわ
気長に待っててくれい
579
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/28(木) 20:17:33 ID:hOBUGXvw0
今回割と難産な気がするなあ
一週間かけて予定の四分の一程度しか書けてないわ、話全然進んでねえし
ただここで投げるとまた風呂敷広げちゃうから、少しでも纏めてから投下したい
やっぱり結構時間食っちゃいそうだわ、すまぬ
580
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/28(木) 20:23:45 ID:X9WQYUSU0
そろそろ俺が実家教習やら資格勉強でoh……になるから好きなだけ時間を使ってくれ
少なくとも6月の末位までは駄文書くどころじゃないかなぁ……相変わらず手が黒く染まってるし。いや、染まってるのは関係ないけど
581
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/29(金) 08:02:04 ID:VxlhSXMk0
むしろ一週間で四分の一できたなら、1ヶ月あれば完成するって事じゃないか
だいたい俺のターンで1ヶ月くらい待たせてるし、俺は一向に構わん
しかしこれ纏められるのか…?(主戦犯の発言)
582
:
数を持たない奇数頁
:2015/05/29(金) 22:08:10 ID:he2bekBM0
一応着地点は見えてるんだよね
ただ20kb書いて話がピクリとも動いてないというね
フフ…後三倍か…
ウィンガーディアム・レヴィオーサ…(重篤な精神汚染)
583
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/01(月) 21:08:05 ID:ZCejbQuk0
そういや戦争って何年前だっけ
584
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/01(月) 21:41:06 ID:99rSemTc0
特に決まってなかった気がする
五界云々をぶっこんだ本人としては半世紀ほど前に表面的な終戦で考えていた
少なくとも他界人間で本音はどうであれ表面上では手を取り合える程度には和解するのに半世紀はいるかなぁと
585
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/01(月) 21:42:44 ID:ZCejbQuk0
半世紀かあ
ちょっと具体的に決めることになりそうだが、いいだろうか
586
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/01(月) 21:45:54 ID:99rSemTc0
俺は別段構わんよ。
ぶっちゃけ学院設立の為の時間も加味して最低でも聡治が生まれる以前かなぁとは考えてるけどね
587
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/02(火) 06:58:18 ID:ic1lAvTw0
兄ちゃんと夕霧さんは経験者だと思ってた
いや、終戦宣言が半世紀前で、その後も紛争があったとすれば問題ないか
588
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/09(火) 00:01:32 ID:cc.RfC1.0
とりあえず40kbほど書けたら投下するよ…全然話進んでないけど…
もうゴールしてもいいよね…
589
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/14(日) 20:26:25 ID:frFkJAz20
とりあえず投下できるには出来るが、Kの人は試験終わりそうだろうか
出来れば終わってから渡したい(というか話進んでないから足掻きたい)
590
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/14(日) 21:48:46 ID:CpdJYs8A0
来週が試験だから今パスしても良いんですぜ?
書き始めは来週以降になるし、結局競作の感想文まだ書けてない上に内容が試験内容で上書きされたから読み直し必須、更にFEifが出るからなぁ……まぁ再来週くらい書き始めになると思う
591
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/14(日) 21:51:23 ID:frFkJAz20
おk、もうちょい粘る
FEifは俺も買うから、24日までには投下するマン
正直時間掛けすぎたと思ってる
592
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/21(日) 10:42:33 ID:U.yxSdRY0
とりあえずこれ以上書いても変な風になっちゃいそうだから、二日後には諦めて投下するわ
一ヶ月も掛けた挙句、話全然進んでねえってどういう事だ俺は。アホか
すまんKの人、大言壮語をはいてしまった。
593
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/21(日) 11:35:31 ID:fqM.xZo60
待ってるぜ、欲望のままに仕上げるがいいさ!
っていうかコレをどう収束するのか我が事ながら気になるわ
594
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/21(日) 18:12:23 ID:YHe0EaOU0
ヒャッハー、絶対に落ちたとも確実に受かったとも断言できない出来栄えで結果発表まで胃が痛くなったKが通るぜぇー!
具体的に言えば後一問当たれば合格だけど後全部が何とも言えん状態だぜぇー!
了解だぜ。凶作の感想仕上げやらFEifとかやりつつまったり進めるんだぜ
595
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/21(日) 20:53:39 ID:YHe0EaOU0
ヒャッハー、テキストに載ってなくて気になってた問題をggったら回答合ってたみたいで胃が痛くなくなったKが通るぜぇー!
596
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/22(月) 22:09:02 ID:AX7qxBNw0
水曜までには投下できるが、先に謝っておく
長くなりすぎた(現時点で50KB)
597
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:38:16 ID:ss5gHwv.0
投下するけどあれだ、説明不足な点が否めない
分かんないとことかあったら聞いてくれると助かる(人間の屑)
598
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:39:22 ID:ss5gHwv.0
ゾル、と、「それ」は生えてくる。
光を反射して青白く煌くそれは、鱗だ。竜の皮膚を覆いつくす、蒼い鱗。それが苗木の枝のようにゆっくりと、伏神劔の胸部から「生えて」いるのだ。
――先刻、口から吐き出した物体か!
放心から立直った劔は、即座にその事に気付くがもう遅い。うちで猛り狂う竜と、体内に打ち込まれた楔――崩れぬ群のベイバロンの「種子」の強制力が、彼の膝を強制的に折らせた。
「がっ、……ぐ、ああ……!」
獣染みた呻き声を上げて、劔は身を捩る。しかし、何も出来ない。ベイバロンの「種子」は謂わば即効性の毒であり、先刻の激しい運動でそれが回りきった状態となってしまった劔は、竜を押さえつけるので精一杯なのだ。
胸から顔を覗かせ、根を張って皮膚にへばり付き、肉を喰らってどんどんと皮下へ侵蝕していく鱗を、如何する事もできないのだ。
ベイバロンが、愛しい妹の面相を宿した竜が、呵々と笑う。
「露払衆が聞いて呆れるのう、伏神劔。己が軽挙を誹られて、怒り心頭に発してみれば、妹に似ているから、という理由でその斬撃を止めてしまう。半端、全くもって中途半端極まりない。昔の貴様は、もう少し芯のある男であったと思うが、何ゆえそこまで鈍った?」
――ああ、嫁か。
瞳に嘲笑の色を浮かべながら、吐き捨てる様に言う。顔を上げた劔の、満腔の憎しみが込められた眼光を涼しげな顔で受け流し、竜は笑声を交えながら、続ける。
「あの女、夕霧と言ったか? あれが貴様に、人としての心を残してしまった。しかし、奴は貴様から復讐心を抜き去るほどの存在足りえなかった。故に貴様は、過去を捨て去る事も、復讐を徹底する事も出来ず、そうまで中途半端になってしまった。……皮肉、よのう。復讐の為の同志が、結局は一番の足枷とは」
ベイバロンの口唇が、三日月の如く引き裂ける。劔は荒れ狂う竜の力を必死に押さえ込みながら、「黙れ」と声を絞り出す。だが、蚊の鳴く様なそれに他者を威圧する力はなく、徒にベイバロンの嘲弄を煽るのみであった。
鱗の「枝葉」は、既にびっしりと鱗に覆われており、それは徐々に背、首、腹を侵していく。その速度は、先ほどのそれに倍するほどの物であり、劔への圧力も、秒刻みに強まっていた。
ああ、もうすぐだ。
もうすぐで、こいつの心は折れる。
ベイバロンはこの上ない歓喜の念を覚えると共に、嗜虐心を募らせていく。この男が、「もう止めてくれ」と泣き叫ぶ姿は、どれほど滑稽なのだろう。想像するだけで涎が出そうだ。
見たい、見たい。どうしても。この半端者の泣き顔が。
頬を上気させ、喜悦に表情を歪めるベイバロンは、「竜」という常識の埒外たる絶対者は、しかし知らない。
己の抱いている感情が、戦場では等しく「油断」と呼ばれる類の物であるという事を。
「足枷なんかじゃないさ」
空間そのものを喰らい尽くしたかのような漆黒。それは馬上槍めいた円錐形を取り、空を裂いて飛来する。
微かに耳朶を打つその音に反応し、その槍へと視線を回らせたベイバロンは、咄嗟に防御しようと両腕を交差させ、掲げた。
しかし槍は、ベイバロンの腕に叩きつけられるその瞬間、まるで花が開いたかのように、その穂先を広げ、瞬く間に暗幕めいてベイバロンの周囲を覆った。暗幕は酷く狭い範囲で展開し、劔とベイバロンとの間に壁を作る。
「小賢しいッ!」
襲撃者の正体など、わざわざ確かめるまでもなく分かる。そして、その実力の程も。「元」神童の無能の分際で、この竜を止められると思うな。
魔力の篭った怒声。およそ少女の見た目には似つかわしくない、万象をなぎ払う魔竜の咆哮が、暗幕を一息に吹き散らした。間を置かず、ベイバロンは足下の地面が抉れるほどの力を込めて、吶喊。槍の射線上で、呆けたように突っ立っている襲撃者に、一瞬で肉薄した。
驚愕の表情のまま固まる、伏神聡治。それは己の必殺を、あえなく弾かれた事へのものなのか、「敵」と見定めた者の面立ちが、亡き妹と同一の物であったことに対する物なのか。
どちらにせよ、敵対者の接近に何の対応も出来ない木偶人形と、彼は化していた。
やはり、とベイバロンは笑う。
「芸が無いのだ。失せよ、無能」
そして勢いのまま、右拳を振りぬく。
聡治の、兄とは似ても似つかないほどの矮躯は、その一撃の下に無残に砕かれる――筈であった。
そこにいたのが、本当に伏神聡治であったのならば。
599
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:40:34 ID:ss5gHwv.0
ベイバロンの拳は、過たず聡治の腹部を貫通していた。だが、拳には感触も反動もなく、まるで霞を散らしたかのような虚しさだけが残った。
よもや、躱されたというのか。瞠目するベイバロン。彼女の視界は次の瞬間、膨大な炎に埋め尽くされた。
伏神聡治――いや、それを模した虚像から溢れ出した【憤怒】の炎が、実像の伏神聡治の内に滾る激情のまま、ベイバロンへと殺到したのだ。
それは、言うなれば炎の濁流だった。波頭の如く押し寄せ、刹那の間も置かずにベイバロンの周囲を覆うと、天をも焦がさんばかりに高く、高く立ち昇った。
「――がっ、ぎ、いいいいいいいいいい!!!」
突然の奇襲。そして、そこに込められた竜をも殺傷せんばかりの膨大な熱量。さしものベイバロンであろうと、絶叫を抑えきれない。
どこか少女の声音が残る、獣めいたそれを聞きながらも、伏神聡治は素知らぬ顔をしていた。能面のようになった表情からは、極限まで感情が削ぎ落とされている。
ただ一つ込められているものがあるとすれば、それは殺意だ。
『こいつだけは、何があっても鏖殺する』
決意をも超えた、「決定事項」とでもいうべき思念を湛えた、十代の少年が浮かべるべきではない表情を、彼は当然のように浮かべている。
聡治は今、劔の傍らに、先ほどまでベイバロンが立っていた位置にいる。横目でチラリと、立ち昇る火柱を眺めていたが、数秒も要さずに興味を失ったらしく、蹲る劔の胸元、彼をいまだ侵蝕し続けている鱗へ、一枚の呪符を投じた。
七大罪【怠惰】。停滞と衰退を表すそれは、力が及ぶ限りならば、どんな術式であろうと、その進行を食い止め、衰えさせ、やがて完全に消し去る。
それは、竜の力にも有効であったらしい。鱗の侵蝕は瞬く間に止まり、やがてボロボロと剥がれ落ちていく。同時に劔に働いていた強制力も薄れていき、彼の顔に滲んでいた脂汗が、スゥと引いた。
そこでようやく劔は顔を上げ、突然の闖入者が己の実弟であると気付いた。浮かんだ表情は、戸惑いと気恥ずかしさ。そして驚愕と悲嘆である。
――こいつ、こんな表情をするようになってしまったのか。
立直ったと思っていた。自分と違って、前に歩き始めていると、勝手に思い込んでいた。考えてみれば、いや考えるまでもなく、そんな事ありえる筈もないというのに。
自分にとっても、聡里は可愛い、大切な妹だった。しかし自分は飽くまでも露払衆の頭目。外向きの用事が多く、あの子と顔を合わせる機会は、聡治に比べれば著しく少なかった。
思い入れが、違いすぎる。
これでも、相当に立直った方なのだろう。その心に生じた変質が、不可逆のものであったというだけの話だ。
「大丈夫、兄さん?」
劔に向けられる視線は、声音は、先日までの聡治と変わらない。
聡里の死がもたらした爪痕の生々しさを、愛しい弟の心の傷を見せ付けられているようで、見ていられなかった。
立てる? と差し出された手を取るでもなく、全身に力を込めて何とか立ち上がる。そして小声で呪文を詠唱。「我が意の元に頭を垂れよ」。拘束術式がその力を増して、荒れ狂う竜を無理矢理押さえつけた。
しかし、術式の反動を無表情の下受け流せる余裕は、今の彼にはなかった。全身の筋繊維が引き千切られるような激痛に、劔は酷く顔を歪め、口の端から血を流した。
しかし、もう膝はつかない。体を大きく仰け反らせながらも、悲鳴をかみ殺し、地面をを踏みしめて、反動に耐えた。
走りよろうとする聡治を手で制して、十数秒。やがて、ぜぇぜぇと荒い息を吐きつつも、両の足で立てる程度には回復し、劔は火柱と聡治との間で、視線を彷徨わせる。
ここを離れろ。生きていて良かった。強くなったな。不甲斐ない姿を見せた。
掛けるべき言葉が幾つか思い浮かぶが、どれもこれもが口から出る前に、喉元で霧消する。
「無事?」
だが、掛けられた、昨日と変わらぬ聡治の声音。それは過去の、平和だった頃の伏神家、上伏の町を想起させ、劔の口は知らぬ内に動いていた。
「……すまない」
きょとんとした表情を浮かべる聡治。だが劔は構わず続ける
600
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:41:32 ID:ss5gHwv.0
「俺が、俺が未熟だったから、愚かだったから、屋敷が、使用人たちが、上伏の街が1 砕かれている、焼かれている、人が、人が死んでいる! 身の程を知らなかった、周りを見ていなかった! そのせいで、そのせいで皆が……夕霧も……!」
纏まりのない、子供の泣き言の様な言葉だった。だからこそ、彼の心情が推し量れよう、と言う物だ。
すまない、すまないと、幾度も繰り返す劔。聡治は何も、声すら掛ける事も出来ず、その姿を黙って眺めていたが、ボウ、という空間を叩くような独特な音と共に、炎に吸い込まれ、吹き荒れていた風が止まった事を感じ、火柱のあった方角へと視線をやった。
翼だ。
吹き散らされた業火の只中に、巨大な一対の翼があった。灰褐色のそれはどういった構造をしているのか、互いに折り重なって完全な球体を形作り、「憤怒」の炎から彼女を守っていた。
伏神聡里の姿をした竜――ベイバロンの体を。
やがて翼はゆっくりと開き、ベイバロンの姿を外気に晒した。その頭部に張り付いているのは、聡治の今は亡き妹と同じ面相。しかしそこには、彼女ならば浮かべないであろう醜悪な笑みが浮かんでいる。
彼女の肩甲骨のあたりから広がる翼が、二度ほどはためくと、宙に浮いていたその体が徐々に下降し、ベイバロンは音もなく着地する。
「兄さん」
ベイバロンの復活に気付き、謝罪の言葉を一時止めていた劔が、唐突に掛けられた言葉に、一瞬だけ身を竦ませる。
劔の眼前。まるで劔を背後に庇い、ベイバロンに向かうような位置に立つ聡治は、振り返らずに言う。
「状況は、人伝に聞いただけだから、完全に分かってるわけじゃないけどさ。この惨状が兄さんの所為な訳ないじゃないか。だって町の人を殺してるのはこいつの子供なわけだし、それを指示してるのはこいつだ」
だから悪いのはこいつだよ、と聡治は断じる。子供の様な理屈だが、だからこそ正鵠を射ているとも言えるかもしれない。
聡里と同じ顔をした竜と向き合っても、彼の表情は変わらない。瞳は揺るがない。ただ真っ直ぐと、眼前の「敵」を見据えていた。
「詭弁ですね、『兄様』。この状況を引起したのは、間違いなく劔『兄様』の軽挙ですよ」
聡里の口調で、聡里の声音で、嘲るようにベイバロンは言う。
耳朶を打つその聞きなれた、そしてもう一度聞きたいと心から願った声は、呪術めいて劔の体を硬直させた。
しかし、聡治は瞳も逸らさない。徐に一歩、踏み出し、その距離を徐々に埋めていく。
「黙ってろ蜥蜴モドキ。お前の寝言になんざ欠片も興味ねえんだよ」
「手酷いお言葉ですね。貴方の所為で死んだ妹に掛ける言葉とは、とても思えません」
動じない。迷わない。
腰の両側に吊り下げた、二つの呪符ケース。その内右側のケースから、一枚の呪符を取り出す。
引き裂かれた呪符から、刻まれた呪文が蛇のようにのたうちながら、聡治の腕に流れ込む。それは流入中にも絶えず展開と発動を繰り返し、刻々とその紋様を変化させていった。
呪文は瞬く間に聡治の全身を覆いつくすと、僅かに光り、やがて何の痕跡も残さずに、消えた。
七大罪【傲慢】。
その効果は、彼の考案した七つの符術の中でも、指折りの単純さを誇る。
単純な、身体能力強化だ。
ベイバロンが翼を翻し、加速を開始する。それを視覚ではなく、肌で感じ取った聡治は動く。
今度は左のケースから取り出した符を二枚投擲し、ベイバロンの進路上に障壁を展開。漆黒のそれは竜の行く手に立ち塞がると共に、その視界を遮った。
ベイバロンはそれに怯む事も無く吶喊。伸ばした翼の先端を鞭めいて振るい、障壁を容易く砕く。だが、割れ砕けた障壁は霧散する事無く、空中に散らばり、陽光を遮って微かな陰に覆われた一帯を作り出した。
進路上には、誰もいない。聡治も、そして劔もだ。
「兄さん!」
中庭全体に、声が響く。散らばった障壁によって音を反響し、その出所を推察させない。
臭いがする。風を切る音がする。伏神聡治は、過たず儂に近付いてきている。そう確信するベイバロンを他所に、聡治はただ簡潔に言い切る。
「もし自分が悪いと今でも思ってるんなら、少しでも上伏の人達を助ける為に動けよな!」
601
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:42:07 ID:ss5gHwv.0
叫びながら、聡治は重力に身を任せる。目標は眼下。砕けた障壁の影に己の姿を潜り込ませ、逆光を背負う聡治は、上方からベイバロンの首筋を狙う。
重力に絡め取られ、矢めいて加速する聡治。突き出された右足が、今にもベイバロンの細首に叩き込まれんとしたその瞬間、ベイバロンはぐるりと旋回し、上空を、即ち聡治を仰ぎ見る。
両者の視線が、正面からぶつかり合う。そして両者は、互いに笑みを漏らした。
回転の勢いのまま、ベイバロンは蹴撃を放つ。聡治の長く、無防備に伸ばされた足は、しかしその致命的な攻撃に当たることはなかった。
接触の瞬間、聡治の姿が大きくぶれる。そしてそれは、やがて霞のように消え去って、後には虚空だけが残った。虚像だ、またしても。
生まれる、一瞬の静寂。
いや、それは正しく静寂とは言えない時間であったことを、ベイバロンの五感は十二分に承知していた。空間に散らばる障壁の破片が、一瞬だけ、軋むような音を立てたのだ。
ベイバロンの周囲に半球状に広がるそれらは、次の瞬間、爆発的な速度で収縮する。ベイバロンからすれば、それは幾千もの鏃が飛来してくるかのように思えただろう。
そこには、逃げ場など何処にもない。人間ならば、考える間もなく絶命した所だろう。
だが、ベイバロンは竜だ。条理を逸脱した存在だ。
ベイバロンは、再び咆哮を放つ。物理的な衝撃が周囲に拡散し、木の葉のように障壁の破片が吹き散らされる。一気に周囲が明るくなり、太陽を仰ぎ見る形となっていたベイバロンは、唐突に降り注いだ陽光に、一瞬だけ眼を細めた。
少しだけ狭まった視界は、同時に竜の六感をも鈍らせ、結果「その音」をを聞くまで、ベイバロンは聡治の接近に気付くことができなかった。
ジャリ、と靴が地面を踏みしめる音を聞くまでは。
前方、進行方向に視線を巡らせるベイバロン。眼と鼻の先と言えるほどの近くで、右腕を大きく振りかぶる伏神聡治の後方遠くで、伏神劔がうろたえた様子で立っている。
位置関係は、何も変わっていない。
奇襲のタイミングを、完全に読み間違えたのだ。
迎撃。いや、間に合わない。
咄嗟に顔の前で交差させた両腕に、人が出せるものとは思えない程の、尋常でない圧力がかかる。加速していた事が仇となった。その威力は、砲弾のそれと遜色ない物だったと言っていい。
翼が翻る。
静止。そして後方へと飛翔する。聡治の腕力によって「射出」される形となったベイバロンは、空中で旋回。慣性を無視するように停止する。
上空数メートルから聡治らを見下ろし、ベイバロンは未だに笑みを崩さない。
「暴力的な兄じゃのう。妹の顔を殴りつけるとは」
聡治は答えない。眉一つ動かさない。
代わりとばかりに、後方の兄を振り返ると、ニカリと、彼らしくない少年的な笑みを浮かべた。
「『俺を置いて逃げる』んじゃない。『俺に託して救助に向かう』んだ。ここは俺に任せて先に行け、ってな」
その言葉を聴いた劔は、何処か安心した様でいて、絶望した様にも見える複雑な表情を浮かべ、少しばかり逡巡すると、「すまない」と小さく呟いて踵を返し、伏神邸の正門へと向かっていった。
遠ざかっていくその背中を眺めながらも、空中のベイバロンは何もしない。ニヤニヤと浮かぶ笑みから考えるに、その方が面白いと考えているのだろう。
その態度も油断といえる態度ではあるが、流石にもう奇襲は喰わないだろう。注視されている事を、肌で感じられる。
――【傲慢】ではダメか。
既に効力が切れた肢体を軽く動かす。少しだが、疼痛があった。やはり反動が小さい。効力が薄かった証拠だ。
七大罪【傲慢】の効果は、単純な身体強化。そしてその強化率は【憤怒】と同様、聡治の意識と密接に関係していた。
602
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:42:46 ID:ss5gHwv.0
必要なのは、思い込みだ。
己が相手よりも強いという思い込み。出来るのならば、自分こそが最強だという思い込み。現実や結果を全て無視した、白痴の如き自尊心こそが、【傲慢】をごうごうと燃え盛らせる燃料たりうる。
七大罪の中では、言ってしまえば、聡治とは最も相性が悪いとさえ言える符だった。
実戦経験の少なさに起因する、戦術眼の未熟さこそあれど、聡治は基本的に現実主義者である。厳然たる危険を目の前に、なおも自分の力を信じられるほど、彼は幼くない。
今まで【傲慢】符を使った事は何度かあったが、それらは全て、勝算があった上での行動だった。全てここぞというタイミングで、勝てると確信した相手にのみ使用していた。
今回のように、勝てるか分からない――いや、確実に負けると理解できてしまう相手に使用したのは初めてだった。そういう意味では、先ほどの攻撃は実験的な意味合いもあったのだ。
結果は、まあ大体予想通りだった。
少しの間だけなら、ある程度の強化は出来る。結構な速度を持っていた竜を、カウンター気味に殴り飛ばしても、反作用によるダメージは全くと言って良いほど無い。
だが、やはり継続時間が短すぎる。ストックが100枚なり200枚なりあるなら話は別だが、戦闘中の連続使用は控えた方が良いだろう。
それ以前に、かの竜に対して打撃は鬼門だ。何せ、慣性の法則を無視した飛行を行う相手だ。どれだけ力を込めようと、打撃方向へと飛ばれたら為す術は無い。
一応、効果的な打撃方法も幾つか思いつきはするが、どれもが主戦術にするには奇襲的な要素が強く、即効性が低い。トラップの一つとして、記憶の片隅に留めておく程度にしておこう。
今のところの感想としては、ベイバロンは単体ではそれほど強くない、と感じる。何というか、戦闘経験が圧倒的に足りてないのだ。
簡単なフェイントに二度も引っかかる程度の練度に、己の勝利を戦闘中に確信し、慢心して隙を見せる間の抜け方。これで弱敵ならばよかったのだが、生憎と相手は竜だ。生存確率が少しばかり上昇したに過ぎない。
アレが気まぐれに振った手が掠りでもすれば、恐らくは大きな負傷を負う事になるだろう。【傲慢】を使っていればある程度は軽減できるだろうが、どれほどのダメージになるのか、さすがにそれを実験する勇気も、必要もない。
だというのに、向こうはこちらの切り札とさえ言える三つの符術――即ち【暴食】【傲慢】【憤怒】を以ってしても、見る限りでは傷一つ付けられていないと来た物だ。
全く、嫌になる。甚だしく不公平だ。聡治はため息を漏らさざるを得なかった。
しかし、まあ良い。ここまでは許容範囲内だ。もとより、竜を倒そうなどとは思っていない。
聡治は左手を撫ぜる。
少し前、生えてきたばかりの腕。この身に、人ならざる力が宿る証。しかし右掌に感じるぬくもりは、何の変哲もない己の体温のみであり、本当にこれが、「龍」の力によって生成された物なのか、疑問を抱かずにはいられなかった。
――お前の力が俺の力っていうのは、嘘だったのかよ、白龍。
恨むぞと呟くが、その口調はどこかおどけて聞こえた。
紛れもない危機を目の前に、聡治の心にはしかし、微塵の恐れもないのだ。
聡里を装う龍に対する、断固たる怒りと殺意を差し引いても、彼の精神状態はやや異常であった。
下手を打てば、死ぬ。最善手を組み上げても、命の保障になるわけではない。そんな事、百も承知である。「死にたがり」が再発したのかもしれない。能動的な自殺衝動が。
だが、それだけではない。聡治は確信している。
身の内より湧き出てくる高揚感。そして、仄かな緊張感。こんな心地の良い感情が、其の様な暗い情動であるわけが無い。
彼は、竜を倒せない。だから、竜を倒せる準備が整うまでの時間を稼ぐ。
彼は、死にたくない。だから、どれほど敵が強大であっても、決して諦めない。
彼は、もう誰にも死んでほしくない。だから、何があっても退くつもりはない。
俺に任せて先に行け。それは決して、適当に言った言葉ではない。彼は、この場を「任されている」。人々を救い、竜を屠る為の一刀だと、認められているのだ。
過大な役だとは思う。役者不足が過ぎるとも。だが、そこに介在する彼女の、クロガネの信頼が、そこからは窺い知れた。
竜を倒す為の準備。それが何なのかは分からないが、護衛対象を一時的とはいえ危険に晒すような方法だ。彼女の性格から考えて、その効果は折り紙付きとさえ言えるだろう。
この考えもまた、信頼ゆえのものだろう。
誰かを信じ、誰かに信じられる。そんな当たり前の行動が、彼の心の中に不思議な明りを点し、その恐怖を消し去る。我ながら何とも単純な脳味噌だと、聡治は苦笑した。
誰かを守る為の戦いか。悪くない。
603
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:43:00 ID:ss5gHwv.0
聡治は左のケースから、符を一掴み取り出し、無造作に空中にばら撒いた。木の葉めいて散らばるかに思えたそれが、風に漂ったのはほんの一瞬だった。
それは地面に対して垂直に、空中にて静止する。
「錬成符」や「障壁符」などという基本的な物から、二度も竜の目を欺いた、伏神固有の「虚飾符」など、その種類は多岐に渡っていた。
パチン、と指を鳴らすと、それに呼応して魔符群が、その姿を消した。聡治の動きに、思わず視線を回らせていたベイバロンも、その光景を目撃し、僅かに目を細めた。
さて、大盤振る舞いと行こう。どうせ元値はタダなのだ。
「一つ、良い事を教えてやるよ、竜」
地面を踏みしめて、一歩。見下ろす竜の眉間に、深い険が現れた。
「聡里が俺の事を『兄様』と呼んだ事は一度もない。あいつは『お兄様』と呼ぶ」
【傲慢】を一枚取り出し、ビリと破く。溢れ出し、流れ込む呪文に塗れながら、聡治は完全に表情の剥がれ落ちた顔のまま、言い放った。
「粗末な嘘だな、竜。――来い。どちらが無能か教えてやる」
「驕るなよ、出来損ないが。格の違いというものを、分からせてやらねばならぬようだ」
604
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:43:24 ID:ss5gHwv.0
走る。走る。走る。
地を踏みしめて、蹴り飛ばす。まるで空でも駆けるかのような軽やかさで、彼女は山道を走り抜ける。
伏神山は、伏神家にとってはまさに城砦とでもいうべき地であり、魔界人租界の周囲に設置されていた地雷原ほどではないにせよ、その術式的防備は厳重である。
しかし少女――クロガネ・DSはそれらのどれ一つにすら触れる事無く、まるで無人の野を行くが如くに走り抜ける。
まるで罠や監視魔符の位置が見えているかのように――いや、事実彼女の眼はそれらを捉えているのだ。人と同様の見た目と、血の通う肉を持ちながらも、やはり彼女は一般的な「人間」の垣根を大きく飛び越えた存在であるのだ。
でなくば、竜殺しなどやってはいられない。
その身に纏う、肩部が大きく露出した漆黒のドレス――ワンピース、と言った方が正しいだろう――は風に翻り、はためく。その裾を煩わしげに押さえながら、クロガネは大きく跳んだ。
足下の地面は、クレーターめいた大きく抉れ、彼女はその反動のまま、大きく飛び上がった。風が頬を撫で、一瞬だけ重力を振り切った見返りとばかりに、心地よい浮遊感が彼女の体を包んだ。
だが、それもすぐに終わりを迎える。
彼女の体は放物線を描き、やがて重力に絡め取れ、地に落ちていくだろう。しかもその眼前には、落差数十メートルにも及ぶ、巨大な崖がぽっかりと口を開けている。
もしもこのまま落下すれば、如何な彼女とて、無事では済まないだろう。他ならぬクロガネが、それを一番承知している。
しかし、彼女の表情は一切動かない。心にも、漣ほどのざわめきも起こらない。彼女は確信しているのだ。己の「生」を。
体を大きく開いて、風を受け止める。頭が上がり、クロガネは空中を泳いでいるかのような、人間的錯覚を覚えた。それを馬鹿馬鹿しいと思わず、大切な宝物のように心の奥底にしまいながら、少女は黒髪を靡かせ、呟く。
「『ヤタガラス』、転送シークエンス開始」
それは一瞬の出来事だった。
空間が揺らぐ。それは落下するクロガネの露出した肩に、ピッタリと寄り添うように追従し、その肩幅に沿うように横に広がっていく。
そしてクロガネの肩幅を大きく逸する長大な物となった。その全長、およそ五メートル。
座標特定。空間連結完了。彼女の体内で、音も無く幾十もの術式が走り、「それ」を人の世界に引きずり出す。
可装飛行ユニット「ヤタガラス」。
光を吸収する全き黒の翼が一対。それらの下部には、六つの円筒を一纏めにした様な鋼鉄の機材が、それぞれ一つずつ取り付けられている。もしその場に機界の文明に詳しい人物がいたならば、それが「斉射砲」と呼ばれる火器の発展形だと分かるだろう。
ユニットの最前方には、鴉の名前が示す様に、真紅色のアイカメラを輝かせる不吉な顔つきの鳥の顔の様なものがある。
胸部に該当する部位から、足めいた機材が二つ伸びている事を除けば、それはまさにカラスだった。
クロガネの肩を鷲掴みにする両足、即ち神経接続機《ナーブコネクター》は、既に彼女との同調を終えている。彼女は指を動かすかのような気安さで、ユニット後部の推進器や、各種スラスターを操る事ができる。
それを証明するかのように、推進器がボウと高熱を吐き出す。
ヤタガラスの長大な翼が、パラシュートめいて風を受け止め、得られた僅かな抗力によって、落下速度は緩くなったにせよ、クロガネはいまだ重力に捕らえられている。
しかし点火した推進器が、その落下軌道を捻じ曲げる。地面に対して垂直であったベクトルが、徐々に並行に。遂には完全に重力を振り切り、クロガネは足下の樹林を眺めるような体勢で、一路、上伏町を目指す。
605
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:43:36 ID:ss5gHwv.0
後背部の自由展開装甲が、液体めいて機体の表面を滑り、ユニット下部の露出したクロガネの周囲を覆い隠す。漆黒の闇の中、何処からとも無く伸びてきた、幾本もの姿勢固定用のアームが、その肢体を掴み、固定する。
同時にクロガネの視界も塞がれる、筈だったのだが、クロガネの視界には露出時と変わらない映像――いや、平時よりも遥かに高度に処理された映像が映し出されていた。
コネクターを通じて、ヤタガラスの電脳によって処理されたアイカメラの映像が、彼女の網膜には映し出されているのだ。それと同様に、外部の音声も、タイムラグ無しに彼女の耳朶を打っている。
まさに一匹の鴉となり、クロガネは空を切り裂くかのように飛翔する。
『アギョー・スタチューによる竜殺剣代理召喚の影響により、現在、全竜殺兵装、及び補助兵装の使用不可』
「承知しています。『カゴユミ』展開」
脳に直接送られてきた電脳の囁きに、クロガネは肉声で応じた。コネクタは思考をも読み取るため、本来ならば必要は無いのだが、これはクロガネの癖の様な物だ。
クロガネの意志に呼応して、両翼の斉射砲が起動する。収納されていた砲身が前方に伸び、微かな駆動音と共に回転を開始する。
その砲身の奥に、ボウと妖しく光る薄紫色の「何か」がある事には、余人が気付く事は無いだろう。
伏神山腹から上伏町まで、人間の足ならば二時間以上かかるが、天駆ける鴉の翼ならば三分と掛からない。
凄惨な光景が、程なくしてヤタガラスのアイカメラに捉えられる。
胸が悪くなるような光景だった。数十体にも及ぶ竜が、逃げ惑う人々をまるで羽虫でも潰すかのような気安さで、鏖殺している。
人界の伝統的風情を色濃く残す町並みは、見る影も無くなぎ倒され、人間由来の赤・白・桃色で悪趣味に染め上げられていた。
轟く魔竜の咆哮に混じって、人々の断末魔や怨嗟の声が聞こえてくる。咆哮が含有する魔術的効果は、ヤタガラスの周囲を覆う対術障壁によって阻まれ、クロガネの体には何の影響も及ぼさない。
だがクロガネの心は、大きく揺れる。まるで呪詛にでも掛けられたかのように。
クロガネは込み上げる嘔吐感めいたものを、大きく深呼吸する事によってどうにか飲み込み、ギンと眦を決して、叫ぶ。
「全天視界モード起動! 全リミッター解除! これより戦闘駆動を開始します!」
斉射砲が、威圧的にキュルキュルと廻る。
真紅のアイカメラが、町内全体に跋扈する竜たち全てを睥睨するかのように、禍々しくギラリと光る。
漆黒の凶鳥は雄雄しくギィと鳴き
――殺戮を開始する。
606
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:43:57 ID:ss5gHwv.0
吶喊。抜刀。納刀。その繰り返しだ。
だがその効果は凄まじく、彼の周囲には、夥しいほどの仔竜の死体が転がっていた。
「……ハァ、流石にこれ程の数ともなると、一苦労ですね」
真川敦は心底ウンザリした様に溜め息を吐きつつも、その歩を緩める事は無かった。走り回っていなければ、『また』死にかねない。
幾ら「彼女」がいるとはいえ、だ。
吶喊。抜刀。納刀。
霊質で形成された刃が、仔竜の体内で即座に実体となり、鱗の頑健さも何もかもを無視して、その巨大な首を寸断。敦は静止せずに駆け抜ける。
一瞬前まで彼がいた空間を、丸太のような仔竜の尾が、空間を切り裂くかのような音を立てて通過していった。
「いや、いや、流石真川のお坊ちゃん。あたしゃあ、もうそんなに走り回れないよ」
割烹着を身に付けた、この戦場において明らかに異質な存在。稀口のおばちゃんは朗らかに笑いながら、しかしその目線を仔竜たちからは逸らさない。
古びた魔術書と、詠い唱える呪文が、彼女の声そのものを矛、そして盾へと変じさせる。彼らを囲む様に展開する仔竜らが、ある群では木の葉のように吹き飛ばされ、またある群では、吐き出した必殺の咆哮をかき消され、怒り狂って暴れ回っている。
――貴方の場合、そんな事をする必要が無いだけでしょう。
真川は思わず苦笑しつつ、またも刃を閃かせる。首を失った仔竜の巨体を潜り抜けるように走り、束の間の置き盾とする。
その合間にも、耳にはワンワンと酷い音が響いてきていた。稀口女史にその魔術的作用を打ち消されてはいるものの、竜の絶叫はその音を完全に失ったわけではない。
音とは空気を伝わる波。即ち衝撃である。大幅に減じられつつも、やはり数十体分ともなると、それだけで武器となるほど大きかった。
その音圧は凄まじく、己の周囲に、音の結界とでも言うべき物も発生させているらしい稀口女史はともかく、もしまともな人間がこの場にいたならば、良くて昏倒・失神。悪ければショック死をしかねない程だった。
全く、霊体とは便利なものである。
だからこそ、この童話の竜の様な生物達は奇妙だった。物理的な存在ではないはずの敦の体を、一度ではあるが削ったのだ。
幸いというべきか、この場は霊質に富んでいる。傷は自動的に修復したが、やはりあまり気分のいいものではなかった。屍肉を喰らっているような気分になって、真川は大きく顔を顰めた。
故に彼は、もうこれ以上一撃たりとも喰らわない覚悟で、走り続けていた。疲れを感じない霊体であるからこそ、とれる方法だ。
一応、その作戦は今の所上手くいっている。霊体にも影響を与えると思しき魔竜の咆哮も、稀口女史という想定外の闖入者によって、無力化に成功した。
だが、一体いつまで持つだろうか。斬ろうが薙ぎ払おうが、巨翼を翻して飛来する仔竜たちは尽きる様子が無い。どころか、その密度は増す一方だ。倒した数より、襲い来る数の方が多いのだ。
ジリ貧だ。何とか打開策を見つけねば、いずれ破綻する事だろう。
進路を塞ぐように振るわれた仔竜たちの尾、前腕、牙を用いた飽和攻撃を、神速の居合いで以って無理矢理進路をこじ開ける事で、回避する。
身体の一部を抉られた竜の絶叫を背後に聞きながら、急制動・反転。
そして、一閃。
地面を踏みしめ、満腔の力を込められて放たれた斬撃は、居並ぶ仔竜らの首を、纏めて斬り飛ばすには十分な威力だった。延長していた刀身が一瞬で収縮し、鮮血がその軌跡を残酷に彩った。
見事な一撃だった。しかし、あまりにも見事過ぎた。
敦の疾走が、一瞬だが停滞する。その傍らには、猛り狂う仔竜がいた。振り上げられた前腕の先で、鋭い鉤爪がギラリと光る。
――不覚……!
瞠目し、来る一撃への心構えを整えかけた敦は、しかしその行為が無駄だったと理解する。
僅かな風が、彼の頬を撫でた。
607
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:44:10 ID:ss5gHwv.0
しかし目の前で起こった現象は、そんな生易しいものではない。衝撃波の壁とでも言うべき物が、仔竜の巨躯を傾かせたかと思うと、その足を地面から無理矢理引き剥がし、遂には弾き飛ばしてしまった。
稀口女史の魔術だ。敦は疾走を再開すると共に、視線を回らせた。その先では割烹着の女性も、敦に視線をやって、「まだまだ甘いな」とでも言わんばかりの、微笑を浮かべていた。
「すみません、助かりました!」
「気合入れな、坊ちゃん。あたしらがここで暴れてる限り、こいつらはこっちに寄ってきてくれるんだ。こんな大舞台で倒れたとあっちゃあ、男が廃るって物だよ!」
「それは、一大事ですねッ!」
飛び上がりながら、呪文を詠唱。大気が凝固して、空中に即席の足場を形作る。それを蹴り飛ばして、敦は再跳躍。十数メートルの高さまで飛び上がった彼の下方を、仔竜が地を揺らしながら駆け抜けていった。
仔竜は体当たりが失敗したと見るや、四足を踏ん張って急停止する。そしてそのまま踵を返し、再度攻撃を試みる。だがそれは、稀口女史の音の壁によって阻まれ、叶う事はなかった。仔竜群の一つに凄まじい勢いで叩きつけられ、嫌な音と共に翼が拉げる。
敦は空中で身を捻り、危なげなく着地する。舞い上がった砂埃の向こうでは、大量の仔竜達が、依然として彼らを包囲していた。だがどうした事か、猛り狂う咆哮は聞こえど、仔竜たちはその包囲を強めるでも緩めるでもなく、遠巻きに彼らを眺めているのみであった。
まるで、彼ら二人を恐れているかのように。
――いや。
「……鳥の鳴き声、かい?」
鳴り止まぬ仔竜たちの咆哮に混じり、聞こえてくるか細いそれを、稀口女史は聞き逃さない。キィと、甲高くも雄雄しいそれは、やがて大気を振るわせるほどの大音声へと変貌を遂げた。
その段になって、ようやく真川もその鳴き声に気付いた。
詠唱と、つま先で地面に描いた術式による簡易防壁を眼晦ましとして使用し、竜の突進をやり過ごす。飛来する瓦礫を避け、猛追する数多の竜の攻撃を掻い潜り、稀口女史の傍らに立つ。
共に、空を見上げる。
青い鱗を纏った仔竜達が行き交う、絶望に染まっていたはずの空に、今、高校と照る太陽が顔を覗かせていた。
そして、それが地上に降り注ぐのを遮る影が、一つ。
響き渡る鳥の鳴き声が、一際強くなる。心なしか、仔竜の咆哮が弱まっているように思えた。
仔竜たちは、確かに恐れを抱いていた。ただしそれは、真川らにではない。俄に開けた蒼穹を行き交う、漆黒の陰にだ。
あれは――
「鴉、か?」
およそ生物が出すべきではない速度で、縦横無尽に飛び回る陰。それは時折、晴天にあってなお冴え冴えと輝く針の様なものを撃ち出して、追いすがる仔竜を血霧と化していた。
体系化・効率化の波から逃れた「旧魔術」とでもいうべき力の担い手である稀口女史は、目端にその姿を一瞬捉えるのが精一杯であった。
が、真川は「生まれながらの災厄」とさえ謳われる存在が、大手を振って通学する五界統合学院に籍を置き、尚且つ学内の治安維持を担う風紀委員を、エクリエルに代わって統括・指揮する立場に身を置く男だ。
造作も無い事、とまでは言わないが、彼の知る限りのあらゆる術式で強化された視力は、見上げた空を乱舞するその凶鳥の姿を捉えていた。
真川のその言葉を聴き、稀口女史も得心がいった様に頷いた。
「鴉、鴉か。確かにそうだねえ。この鳴き声といい、ちょろっとしか見えないが、あの姿といい、確かに鴉だ。この蜥蜴もどきと敵対してるってことは、仲間――」
「――とは、限らないでしょう」
真川が言葉を引き継いで、続ける。その通りだよ、と言わんばかりに、稀口女史は頷いたが、数瞬の後、突如ニッとふてぶてしく笑った。
「鴉、か。今でこそ不吉の象徴みたいに言われちゃいるが、過去には神からの使いとも言われていたんだ。これが吉兆か、それとも凶兆か。賭けに乗ってみるつもりはあるかい、坊ちゃん?」
「――ここで引いたら、男が廃る。でしょう?」
知らず、眉間に刻まれていた皺が解れる。更なる不確定要素の出現に、引き締めざるを得なかった頬を、無理矢理持ち上げて、真川敦は何ともぎこちない笑みを浮かべた。
も少しハッタリを効かせられれば、合格点なんだがね。そう胸中で呟きながら、稀口女史は無言で、敦の答えを待った。
「ならば、是非も無し。賭けに勝って生き残り、これ以上誰も死なせない! そうすれば、大団円が待っているというものです!」
「よく吹いたよ坊ちゃん! さあ、大盤振る舞いと行こうかねぇ!」
陽光を反射する銀の閃きと、姿無き音の塊が乱れ飛ぶ。
仔竜の数体かが激怒の咆哮を喚き散らし、殺戮の坩堝と化したその場における、たった二人の獲物へと殺到した。
608
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:44:23 ID:XEYMRE4k0
死闘。疑う余地など一切無い、正真正銘の命の取り合い。それを眼下に眺めながらも、しかし鴉は――クロガネは機動を止めない。
様々な思いが湧き上がらんとする胸中に、あえて暗幕を引き、彼女は断固として、一個の殺戮機械として、絶望に染まっていた空を舞うのだ。
それこそが、最も彼らの助けとなる行為であり、その行為でしか、クロガネには彼らを助ける事などできない。
ならばそれを断固たる決意で、彼女の持つ全能を用いて行う事に、逡巡の余地などあろう筈もない。心配や再開を喜ぶ事は、後でも出来るのだ。
前方を塞ぐように現れた数対の仔竜を、最小の機動で躱す。標的の陰すら掴む事もできず、のろのろと振り返ろうとした一群は、グリンと一八〇℃回転した速射砲の蜂の巣めいた砲身が、鴨撃ちめいて容易くその巨体を穿ち砕いた。
血霧が淡く彩る空を駆けながら、クロガネは祈る。
――どうか、歌ってください。ミス柳瀬川。
「それが、この状況を打開する唯一の鍵なのです……!」
609
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:44:41 ID:ss5gHwv.0
涙すら出なかった。
ビチャリと湿った地面を踏みしめる音と、ヌチャリと血液その他諸々で出来た謎の液体が糸を引く音は、もはや一組のセットの様に、少女の耳朶を打っている。
下は見ない。自分がどれだけ死者を冒涜した行いをしているのか、それを直視するのが怖かったからだ。さりとて、視線を前方から逸らすわけにはいかないので、自覚はせざるを得なかった。
人の死には慣れている。「中身」が零れ落ちた状態の人の亡骸で、キャアキャアと驚けるような人生は、残念ながら送ってはいない。
だが同時に、それを踏みしめて平然としていられるような殺伐とした世界にも、彼女はいなかった。魔道に落ちかけたことは幾度もあれど、その都度、多くの人間が彼女を引っ張り、外道の道へと引き戻していたのだ。
――瀬戸さん。柏さん。
特に仲の良かった二人の名前が、喉下から出かかった。死人は皆仏であり、丁重に弔わねばならない。そう教えてくれた彼らは、この状況を見たらどう思うだろう。
――あるいはこの「中」に、彼女らは「いる」のだろうか。弔ってほしいと、そう願っているのだろうか。
そこは正に地獄だった。倒壊した家屋や建築物の上や下に、酷く悪趣味な色合いの、赤黒い液体・固体がベチャリと付着している。それが生き物のなれの果てである事、そして散らばる指や顔の半身などが目に付けば、押並べて人間由来の物であるという事には、容易に気付けるだろう。
元が何人であったのか。そんな予想すら寄せ付けぬほど、徹底的に砕かれ、潰されている。漏れ出た、あるいは搾り出された種々の体液は洪水のように溢れ、奇跡的に通行可能な程度には「綺麗」な道、つまり少女――祢々が走る道を隙間無く染めていた。
まさに屍山血河だ。そこが現実の世界であるなどとは、到底信じられそうにない程の、凄惨な光景。
眼を、耳を塞ぎたい。何もかも放り出して、平和な所に逃げ出したい。
如何な露払衆とて、祢々はまだ少女だ。そんな欲求が湧き上がってくるのは、当然と言えた。寧ろそんな物を抱えながら、なお足を止めていない方が、異常とさえ言える。
『ミス祢々、ストップ。二十秒後に上空を竜が通過します。良しと言うまで、近場の建築物の陰に潜り込んでください』
あまりにも唐突に、あまりにも平坦なトーンの声が、祢々の耳朶を打った。それが誰の声であるかを認識するより前に、彼女の体は動いている。
道の傍らに建って「いた」建物の陰、その健在の隙間に素早く体を滑り込ませる。折り重なった建材は運よく安定しており、長方形の機材を抱えた小柄な少女が一人入った程度では、崩落を起こす危険性はなさそうだった。
機材、要するにノート型のパソコンだ。彼女にはそれが何なのかは一切分かっていないが、聡治とその友人らしい黒い鎧に、出来る限り守り抜く様にと言いつけられている。
命が危なくなったら置いてでも逃げろ、と言われた気もしたが、恐らくは気のせいだろう、と祢々は断じた。
自分は死守しろと命ぜられた。自分は劔様の命令通り、聡治様を守る為に行動している。方法は迂遠ながら、これが最も聡治様の安全を守る事に繋がるのだ。
何も考えず、命令に従って己の身命を賭す。そうしている限りは、恐怖や悲しみを脇に除けておける。だからこそ、この任務に志願したのだ。
胸に抱えたパソコンをギュウと強く抱きしめて、祢々は危険が去るのを待った。すぐ近くから漂ってくる濃密な死臭を、認識の外に追い出そうとしながら。
ややあって、バサリと天空を切り裂くかのような音が響き、やがて遠ざかっていった。
『OKです。再び道なりに進んでください』
再び、耳元で声が響く。
つくづく、不思議な道具だなと、己の右耳に差し込まれた「無線機」だとかいう、黒い楕円形の機械に感心しながら、祢々は素早く路地に飛び降りて、どす黒く染め上げられた道を走り出す。
610
:
黒龍<致し方無いな、定命の者よ……
:黒龍<致し方無いな、定命の者よ……
黒龍<致し方無いな、定命の者よ……
611
:
一文抜けてたから張りなおし@西口
:2015/06/23(火) 21:46:03 ID:ss5gHwv.0
家々が薙ぎ払われ、開かれた空。遠方に見える羽蜥蜴――どうも竜というらしい――の群の中を飛び回る黒い影が、絶望に染まる空にポッポと赤い点を作り出していた。
鎧は、あれを味方だと言っていた。だから恐れる必要などないと。だがあの影は、この地獄を作り出したのであろう竜達を、鎧袖一触に蹴散らす存在だ。それを「味方だから」の一言で、安心して眺めている事など出来よう筈も無い。
彼女にしてみれば、どちらも十把一絡げのバケモノだ。見つからないように、目をつけられないように、縮こまるようにして、駆け抜ける。
やがて周囲を流れていた廃墟然とした町並みが、徐々にその様相を変じさせてきた。徹底的に、町内の端から端までを、畑でも耕すかのような丹念さで砕き潰していた、先程までの街区とは違い、そこは破壊の跡が疎というか、どうにも「雑」に思えてならなかった。
疑問を抱えつつも、祢々は歩度を緩めない。時折入る鎧からの指示に従い、先程のそれと比して、圧倒的に綺麗になった道路をタタタと駆け抜けていく。
玄関部を大きく抉られ、内装を曝け出す羽目となってしまった民家に飛び込んで、上空を回遊する暴威の視界から逃れようとジッとしていた祢々は、まるで雷にでも打たれかの様な唐突さで、はたと気付いた。
そうだ。この街区にはその成れの果ても含め、「人」がいないのだ。
祢々が身を伏せる和室には、木片と土、そして畳を張り替えたばかりらしく、芳しい藺草の匂いが立ち込めている。鉄の臭いは、しない。
ならば表の町並みについても、説明できようという物だ。人がいないからこそ、竜はこの区画を半ば放置するかのようにおざなりに破壊して、他方へと散っていたのだろう。
もしくは逃げ散る人々を追い立てた結果、そういう形になったのかもしれない。どちらにせよ、もしその仮説が事実だとすれば、一つの簡潔な事実が浮かび上がる。
あの竜たちは、人を殺す事「だけ」を目的としている。食らうのでもなく、破壊の余波に巻き込むのでもなく、殺害そのものを目的としている。何かに統率されているとは思えない無秩序さながら、その「指針」ともいうべき物は決して曲げていない。
ゾッと、怖気が奔った。
先程までの風景から、十分に推察できる事だったが、しかし改めてその事実を認識してしまうと、恐怖心が物理的な重量すら伴って襲い掛かって来るかに思えた。
見つかれば殺される。他の何を置いてでも、あの巨体は自分を殺す為「だけ」に爬行する。守ってくれる者はもう、いない。
恐怖が鎌首を擡げ、少女の心の中を塗り潰そうと暴れる。だが祢々は、誇りも名誉もないが、矜持だけは持ち合わせる「露払衆」が一振り、祢々切丸は強いてその衝動を飲み込んだ。己を律する術は心得ている。
しかし、本当の恐怖を前にしては、そんな物気休めにすらならなかった。
鎧の事務的な声が耳朶を打ち、祢々はこれ幸いとばかりに、路地へと躍り出る。一人ぼっちでジッとしているのが、この上なく恐ろしかった。敵だろうが味方だろうが、どうでもいい。自分以外の「人間」の傍にいたい。
無意識にもそう思ってしまった事を、誰が責められよう。どう取り繕おうと、祢々は所詮10に届く程度の童女に過ぎない。それに何のかんのと言えど、彼女の周りには常に、保護者とも言える大人達が何人もいた。真に孤独な時間というものを味わうのは、初めてだった。
自分は露払衆が一振り。常人とは隔絶した異端。その思い上がりとさえ言える強烈な自負が、少女の恐怖に対する嗅覚を鈍磨させる。胸の内をそれ一色に塗りつぶされかけながらも、それが恐怖だと認識する事すら出来ないという状態が、どれ程危険な事か。
四つ辻を曲がった先で、何処か歪な笑みの様な物を浮かべ、己を真正面から見据える正真正銘の化物――竜の視線を浴びた時、祢々はそれを嫌というほど理解した。
『――ミス祢々! コンピューターを捨てて逃げて下さい! 今すぐに!』
恐怖に押し潰され、思わず聞き流していた鎧の声に、漸く意識を向ける事が出来た。しかし、少女は動かない。
死への恐怖に、身が竦んでいた。
同年代の少女に比べて、祢々は確かに死というものに慣れ親しんでいるが、死への恐怖とは畢竟未知への恐怖だ。一度も死んだ事もない者が、それを真の意味で克服する事など、出来よう筈もない。
しかしその恐怖の中に一点、別の感情が入り混じっていた。
安堵だ。
612
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:46:24 ID:ss5gHwv.0
ああ、死ぬ事が出来る。命も何もかもを放り出した上での、逃避としての死ではなく、その遂行を最後まで目指した、名誉の殉死を遂げる事が出来る。そうはっきりと自覚したわけではないが、へたり込んだ祢々の表情は、何処か和らいでいた。
竜が、何とも緩慢な動作で口を開け、ゆっくりと近付いて来る。その様子が、明らかに人間的な悪意で彩られている事に、しかし祢々は気付けない。そんな余裕など無かった。
自分は噛み砕かれるのか、それとも道すがら視界に映った死体の様に、弾け飛ぶのだろうか。どちらにせよ、生き残れるなどとは露ほども思っていない。
ぺたんとへたり込み、眼を瞑る。末期を汚さぬように、パソコンを強く抱きしめる。これを守って死んだとあれば、きっと誰も自分をいらないとは言わない筈だ。
――ああ、でも。
聡治は、残念がりそうだ。
初めて会話した時には、いきなり怒鳴りつけられはしたが、その後も少ないながらに会話を交えて、彼が心根の優しい人間だと知った。もしかしたら、泣いてくれるかもしれない。
だけどやっぱり、心の何処かで残念がるだろう。祢々になど任せないで、素直に鎧を遣わせばよかった、と。
鎧を押しのけて自分でやると言っておきながら、殉死だの何だのと意味のない事を並べ立てて、結局は失敗したのでは、無能の誹りを受けても不思議ではない。
嫌だ。嫌だなあ。
何より聡治の、劔の弟の期待に答えられないのが、たまらなく嫌だった。
だが事ここに到って、出来る事などある訳もない。獣の様な臭いと、荒い鼻息が頬を撫でるのを感じる。
視界を埋め尽くす暗闇が晴れる事は、どうやら無さそうだった。
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:46:38 ID:ss5gHwv.0
「……これ、いつまで続くんだ」
「んー、ソナーの反応を見るに、あと数分で終わりそうなんだけど……」
「それ、たぶん百回は聞いた」
ジョエル、リョタ、フィルの三人組は、未だに横穴を彷徨い続けていた。
一体何キロメートル歩いたのだろう。体感的には、もう伏神山の山裾を何十週もしたと言われても、違和感のない程に時間が過ぎている。
しかし先頭を行くフィルの旋律魔法による測定では、横穴の全長はたかだか数百メートル程度であり、もう既に出口に到達していてもおかしくはないのだ。だが現実の彼らは、未だに闇の中を彷徨っているままであり、巧妙の一つすら見えはしなかった。
何か魔術的な偽装が施されているのは火を見るより明らかなのだが、その痕跡がどうにも読み取れないのだ。
考えられる可能性としては、ここが結界の内部であるという事くらいであろうか。それにしては、侵入する際に発生するある種の違和感の様なものを感じ取れなかったが。
どうにかここから抜けようと、先程から試行錯誤は繰り返してみた。
しかし然程の備えもない現状に置いては、打てる手にも限りがある。精々前方、もしくは後方に全力疾走したり、壁や床、天井に穴を掘れる程度だ。当然ながら効果がある訳もなく、結局こうして、彼らは漫然と歩いている。
通常ならば、絶望的な状況だ。汗で体がぐっしょりと湿り、気力も体力も魔力も底を尽き、もっと罵詈雑言を吐きながら、地面を這いずり回っていてもおかしくないと言えよう。
しかし何故だろうか。彼らは確かに少々ウンザリしてはいるものの、別段強硬に発したりする様子などは、まるで見て取れない。彼らの神経が図太い事を抜きにしても、これは少々異常である。
理由は二つ。一つは、何故か力が一切尽きない事が挙げられる。
何時間もここに滞在している上に、幾度か全力で疾走しているにも拘らず、一切の疲労感を彼らは感じていないのだ。体力の無いフィルですら、である。
そのフィルが、恐らくはこの三人組の中でも、最も強い違和感を抱いているだろう。この横穴に侵入した当初から、横穴の全長測定や、痕跡の探知などの為に、幾度も魔法を使っているにも拘らず、魔力の欠乏などに起因する疲労感などが、一切訪れないのである。
フィル自身はそれなりに優秀な魔術師であるが、流石に何の供えも無くそんな事を続ければ、下手をすれば倒れかねない。だのに、彼は今だ意気軒昂であった。
そして二つ目は、時間感覚が狂っているためである。
彼らは確かに、体感的には数時間横穴を彷徨っていると自覚している。しかしより精確に言うと、「気付けば」数時間経っていたのだ。
何も作業をせず、ただ歩いているだけでも、気付けば時間が大分過ぎてしまう。忘我状態と言うか、何も考えずに体を動かしている時間が、あまりにも多いのだ。
――その状態が、実はどんどんと長くなってきている事に、彼らは気付いていない。人を静かに食い殺す、無限回廊の腹中に収められてしまった事に。
「そういえばさあ、俺昨日夢見たんだよ」
列最後尾のフィルが、口を開く。
「マジか。相手は誰だ。朝霞様か?」
「どういやらしかったの? まさか素足で踏んで貰ったのかい……!」
「何で淫夢前提なんだお前ら。俺だって哲学的な夢くらいは見るぞ」
「ああ、人は何故おっぱいに惹かれるのか、とか」
「何言ってるんだ。おっぱいは女性についているから良いのであって、それ単体に惹かれることなんてほぼ無いだろう」
「だが岩肌がおっぱいで構成された断崖があったらどうする」
「しめやかにロッククライミングをするね」
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:46:52 ID:XEYMRE4k0
先頭のフィルも、後ろを向いて会話へと参加する。出口があるにせよ、どうせ暫くはたどり着けそうにも無いのだから、大丈夫だろうという判断だ。明りもあるし、探査用の旋律も絶えず投射し続けている。何か変化があれば、すぐに感じ取れるだろう、と。
それを軽率と誰が言えようか。彼らは所詮、学生なのだ。
ぽふん、と後頭部に柔らかい何かが当たるとともに、花の香の様に甘い匂いが、フィルの鼻腔を擽った。布の感触越しに伝わってくる仄かな温もりが、人の体温であると気付いたフィルは、彼の中ではそこそこの素早さで、前方へ跳んでいた。
「……うっわあああああああああ!!!」
「ヤメロー! ヤメロー! 俺にそっちの趣味はないぞ!」
必然、彼のすぐ後ろにいたリョタが、押し倒される形で地面に倒れこむ破目になり、ぎゃあぎゃあと喚きながら、二人して地面を転がった。
唯一無事だったジョエルは、呆然としていた。友人二人の無様な姿に、では無い。フィルがいたであろう空間、その後方に突如として出現した、人影にである。
ローブで全身をすっぽりと覆っているが、その着古した布の下から僅かに覗く柔らかな膨らみ、そして何より、フードの奥に見えるその面立ちは、あからさまに女性のものであった。
美女である。そして何よりも、彼らが様々な理由から敬愛して止まない、柳瀬川朝霞に似ていた。瓜二つ、とまではいかないが、少々あどけなさの残る彼女の顔が、年月を経て完成に到れば、こうなるであろうと容易に想像できる程だ。
しかし彼女の日に焼けた褐色の肌とは違い、女性の肌は新雪の様に透き通る純白である。
そしてどういう意味があるのか、その楚々とした面には、顔の半分を覆うほどの大きな刺青が施されていた。それは夜天の月の様に妖しく輝いて見え、女性の蠱惑的な魅力を引き出すと共に、どこか抜き身の刃めいた剣呑さが感じられた。
深い深い夜のような、紫色の眼光に正面から見据えられ、ジョエルは金縛りにあったような心地で、女性の顔を眺める事しか出来なかった。
「朝霞、様?」
「……『様』?」
我知らず呟いていた言葉が、功を奏したことに、ジョエルは気付かない。彼の口にした何反応して、どこか空虚な昏い輝きを宿していた瞳に、仄かに感情の光が灯った。
スッと、徐に女性が近寄ってくる。一瞬ビクリとしたジョエルだが、美女がこちらに寄って来るという状況は、酷く得がたい物だと漸く気付き、不動の姿勢で待ち構える。
「何というか、女の子につけるには些か不穏当な敬称に感じるのだけれど。……貴方達は、朝霞とはどういう関係なの? 友達か、それとも彼氏?」
「奴隷です!」
「下僕です!」
「卑しい豚でございます!」
いつの間にか起き上がっていたフィルとリョタも加わり、銘々勝手な事を――しかし似通った意味合いの言葉を――口にする。
女性は押し黙る。というか、呆気に取られているのだろう。暫くして、大きな溜め息と共に「何をやっているのかしら、あの子は」という呟きを漏らした。
その所作は何処か所帯じみた印象をジョエルらに与える。コイツは人妻属性があると見た。ジョエルの双眸が怪しく光った。
「あのう、お言葉を返すようですが、貴方は朝霞様とどういう関係なのでしょうか……?」
先程の失態を恥じるようにしつつ、おずおずとフィルが切り出す。
「柳瀬川夕霧。あの子の姉よ。……ここを抜けたら、貴方達の名前も教えてちょうだい。朝霞の僕くん達」
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:47:18 ID:ss5gHwv.0
光明と、洞窟の内観とは異なる風景を湛えた「出口」は、まるで冗談の様な唐突さで、彼らの眼前に現れた。
それはまるで直方形に切り取った空間に、別世界の光景を無理矢理合成したかのような不自然さであり、魔界の秘境にでも生息する珍妙な生物が、口を開けて待っているようであった。
何の躊躇いも無く飛び込んでいった夕霧が、向こう側からくいくいと手招きをしている。尻込みする他二名を押しのけて、リョタがズイと前に進み出た。
「ここは俺が先陣を切る。そしてラッキースケベを装ってあの胸に全力で飛び込んでやる」
眼を鋭く細め、見据える先は夕霧の胸元だ。声を潜めずによくもまあそんな事を言える物だ、と夕霧は半ば感心しつつも、無反応を貫いた。あまり関わりたくないのだ。
「馬鹿野郎……! そんな危険な事をお前にさせられるか! 女体の神秘で、全身の血液が食べるラー油になっちまうかもしれないだろうが。だから俺が行く! 俺があの山脈をクライミングしてやる!」
「お前こそ、女性の体温で眼球がゆで卵になるかもしれないぜ。だからここは俺に任せろって。な? 感触、匂いに質感や幸福度は、後で五・七・五で情感たっぷりに纏めて発表するから」
「都都逸という手は無いのか、リョタ」
「てめえフィル! 何余裕ぶっこいてんだ! コイツはあれだぞ、飽くまで故意ではありませんって面して、あの二つの大雪山を踏み荒らそうとしてやがんだぞ! 世が世なら市中引き回しの上に、皮むいてホクホクになるまで茹でて、刻んだ玉葱と挽肉と共にカラッと揚げられるような暴挙だぜこいつは!」
「ふう、つくづく君って奴は……。何故、そうまでして胸に拘るんだい? 君が朝霞様に惹かれるのは、何故なのか。それを己に問うといい」
「朝霞様……。朝霞様は、基本的に俺たちを毛虫を見るような眼で見て、言葉の中にナチュラルに罵倒の言葉を混ぜてくださって、三メートル以内に近付いたら殺すといわんばかりの威圧感を放っていて、でも雑談くらいには付き合ってくれて、高いアイスクリームを献上すると、ちょっと嬉しそうにする所が凄い尊い。可愛い。踏み躙られたい」
「其処だジョエル!」
ビシィ、と効果音が付きそうな勢いで、フィルは人差し指を突きつける。
勇んで「出口」に飛び込まんとしていたリョタも、興味深いとばかりに視線を回らせている。夕霧は本当に嫌そうな表情を浮かべながら、何事かを呟いている。
「君は朝霞様の何に踏まれたいんだ! 女性の何に、何処にぐりぐりと踏み躙られたいんだ!」
「そうか……! 俺は、俺は、女の子の足に蟲を潰すかのように踏まれたいんだ!」
咆哮を上げるジョエルを、腕を組んだフィルが満足げに眺めている。リョタが、してやられたと言わんばかりの表情を浮かべ、口元に手をあてた。
途端、彼らの首に長い長い紐が巻きついた。
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:47:30 ID:ss5gHwv.0
「出口」の向こうで、詠唱によって精製した紐を手に持った夕霧は、それらを荒々しく手繰り寄せる。リョタらは釣り上げられた回遊魚よろしく、次々と引きずり込まれ、地面――板張りの床に、背中を強かに打ち付けた。
三人揃ってグワーッ、などと悲鳴を上げた後、見下ろしてくる夕霧の絶対零度の視線に背筋をゾクゾクといわせつつ、しかしリョタだけは、周囲に広がる風景に覚えがあった。
障子や木窓から降り注ぐ日光に、淡く照らされる室内。そこにデンと居座り、圧倒的な存在感をかもし出すのは、数百キロはありそうな神輿である。
金箔や種々の装飾を施された輿は、薄闇の中にあっても尚光り輝かんばかりの絢爛さであり、成人男性一人が乗り込めそうなほどの大きさがある。
リョタには見慣れた物だった。物心が付いたころから、年に一度の祭事の日には、これを担いだ成人男性や、それに付き従って山車や鉾を持った人々が街を練り歩くのを、何度も眼にしてきている。その行列についていった事とて何度もある。
スクっと立ち上がり、周囲を見渡してみる。和室かと思っていた室内は、どうやらそんな上等なものでもないらしい。
そこは古びた蔵だった。むき出しの石壁には所々皹が入り、漂う空気は何処かジメっと生臭い。床はそれなりに綺麗ではあるが、見上げてみれば、積もった埃によって梁が薄らと灰色がかっていた。
周囲には、神輿以外の祭具も同様に保管されていた。しかし神輿も含め、こんな所でちゃんと保管できているのかは甚だ疑問である。
「汚い所でしょう。でも、物は傷まないのよね、ここ」
こんな事をしても喜ばせるだけだと気付いた夕霧は、未だに地面に横たわるジョエル達を努めて無視し、リョタの隣に並び立つ。しかし彼の鼻の穴が、体臭を嗅ぎつくさんとばかりに開かれた事に気づき、間を置かず彼からも距離を取った。
「あの、ここって伏神の神社なんですか?」
「精確には、その神輿殿ですね」
ガラリと、引き戸が開け放たれ、外気が流入してくる。黴臭い匂いが一掃され、代わりに青々とした清風の香りが、彼らの肺を満たした。
引き戸の向こうには、リョタの見知った光景が、伏神山中腹の神社の境内があった。そしてその光景の半分以上を己の体で隠す存在にも、彼は当然見覚えがあった。
「ド、ドエロス師匠!」
「その呼び方、人前ではやめてくれませんかねえ。外聞が悪い」
鴉の羽根の様な、漆黒の長髪で陽光を照り返し、神主――いや、宮司である織守拓斗は苦笑した。夕霧は彼の横顔を、ゴミを見るような眼で眺めていた。
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:47:48 ID:ss5gHwv.0
黴臭い神輿殿から退去一行は、今は神社の敷地内に建てられた織守邸の居間に場所を移している。分家とはいえ伏神の聖地にその居を構えているだけあり、見事な枯山水を望める大きな中庭を擁した、立派な邸宅であった。
真夏の山中にありながら、心地よい涼しさに包まれた居間で茶を啜りながら、リョタ達は数時間にも及ぶ大冒険を、不純な動機と不適切なまでに卑猥な表現を織り交ぜつつ、何とも情感たっぷりに、織守と夕霧に語って聞かせていた。
「伝説のエロ本、ですか。何というか、それはまた随分と君らしい」
拓人は何とも楽しげに笑っているが、夕霧はと言えば、彼らと卓を囲む事すら嫌だと言わんばかりに、開け放たれた中庭側の障子戸に寄りかかりつつ、渋面を浮かべていた。
指貫と狩衣という、何とも時代錯誤な装いながらも、拓人のある種超然とした雰囲気はそこに違和感を差し挟ませない。眼鏡が光る涼やかな目元は、何とも理知的である。
彼が「ドエロス師匠」などという直球の罵倒に不快感を表さないのは、何もその温厚な気性が全てという訳ではない。全ては彼が、リョタ・マレグチに師匠と呼ばれて然るべき薫陶を授けたが故である。
その詳細な内容は今回は省くが、少なくともリョタの、延いては彼の友人二人の信頼を勝ち得る程度には、親密な関係であるという事は明記しておこう。
「しかし残念ながら、君達が手に入れた『賢者の書』は、その手の素晴らしい書籍ではないですよ。もしそうならば、あのような穴倉に保管なんてせずに、私が自宅の書庫で独占しています」
「なんて説得力なんだ……!」
「畜生! 女体と体液と豊富な語彙が飛び交うドエロイ本だと思ってたのに……!」
「オノマトペを巧に交えた軽妙洒脱な文章で紡ぎだされる、めくるめく肌色の世界があると思っていたのに……!」
「然るべき場所に訴えたら、私は貴方達から慰謝料を毟り取れると思うの」
眉間を押さえる夕霧とは裏腹に、拓人は実に楽しそうに、カラカラと笑う。リョタたちから受け取った『賢者の書』の表紙を撫ぜると、それが一体どういったものなのかを、簡単にだが説明し始める。
「まあ要するに、これは伏神の歴史書兼奥義書の様な物でしてね。彼の家が数千年の時間を掛けて築き上げた全てが、詰まっています。
持ち出しはもとより、閲覧も厳禁です。直系である聡治くんや劔……様はともかく、臣下の家であったマレグチくんでも、この事が本家の偉い人に露見すれば、まあ良くて記憶が、悪ければ存在を消されかねませんよ」
「――触手で!?」
「馬鹿野郎、スライム娘にだろ!」
「人間の処理を担当していた女の子が、何故か僕に一目ぼれ。そして始まる肉欲に塗れた学園ラブコメ。……ふふ、素敵だね」
「オーソドックスではありますが、女性だけで構成された暗殺者集団に、新たな遺伝子を取り込むために種馬として飼われるというのも、中々に心が躍りませんか?」
眼鏡のブリッジをくいと押し上げ、眼を細めた拓人の言葉が、三人の鼓膜を揺すぶった。
こいつ出来る、というジョエルとフィルの視線。衰えは無いようだと安堵するリョタの視線。そしてさっさと死ねばいいのにという夕霧の視線。その全てを笑って受け流しながら、拓人は話を続ける。
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:48:00 ID:ss5gHwv.0
「まあ、そろそろあんなザル警備の洞穴に置くのは止めるようにと、本家に言うつもりでしたし、丁度良かったと言えましょう。これは私が持ち出した事にします。君たちもこの件については早々に忘れるように。以上」
そこまで言い切ってから、ああそうだ、と思い出したように付け加える。
「今外は危険ですから、出ないように。邸内の部屋は自由に使っていいですから、一先ず、騒動が治まるまでゆっくりして行きなさい」
「え、危険って、何かあったんですか?」
「何でも、下水道に有毒ガスが充満してしまったらしく、それが地表に漏れ出てるんだそうです。住民達の避難は済んでいるのですが、ガスの除去にどうやら明日まで掛かるらしくって。ま、リョタくんも旅行気分を味わえると思って、一晩我慢していただければ」
その言葉に、ゴクリと唾を飲み込む三人。その横目でチラチラと、夕霧の顔を窺っている。その顔には、喜びの表情も浮かんでいるが、それ以上に恥らっているようにも見えた。
「え、えーと、泊れるのは嬉しいんですけど……」
「その、女の人と一つ屋根の下、っていうのはどうにも……」
「何ていうか、その、恥ずかしいです……」
「え……、今まで私に散々遠まわしなセクハラをしておいて?」
まるで年頃の少女の様にモジモジとする姿は、三馬鹿の称号に違わない醜態である。拓人は「若いですねえ」と笑った。
「心配せずとも、夕霧さんはここには宿泊しませんよ。こう見えましても彼女は、本家の頭首さまのご内儀ですからね。本宅の方へお戻りになりますよ」
「……そういう事よ。ここへは、賢者の書についての進言があると彼が言うから、夫の代理として来たの。まあその話し合いの最中に、貴方達が賢者の書を手にとってしまったから、私が取り返しにいく羽目になってしまったけど」
「つまり俺たちはナイスタイミングだった、と」
「バッドタイミングよ」
「まあそういう訳で、実はまだ話し合いの途中なんですよ。話の内容も、そこそこに重要な物になってしまいますから、出来れば君たちには席を外して頂きたいのです」
「そんな事言って、俺たちが何処かへ行った隙に、子供に言えないアレやコレをするつもりじゃないんですか!?」
「……これは独り言なのですが、予てより蒐集していた壷咲花蕾の官能小説群が、ようやく揃いましてね。現在は書庫に全巻収めてあります」
「こんなとこでダベってる暇はねえ! 行くぞ手前ら!」
「「応!」」
リョタの鶴の一声に、ジョエルとフィルが応え、バタバタと走り去っていった。その後姿にひらひらと、拓人は手を振っていた。
「いやあ、元気な子達ですねえ。将来が楽しみでなりませんよ」
「私は心配しか出来ないのだけれど。はぁ、全く朝霞ったら、どういう学園生活を送っているのかしら。全てが終わったら、姉として問い質さなくてはいけないわね」
ややあって、完全に人気がなくなると、夕霧は凭れ掛かっていた障子戸をピシャリと閉めた。
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:48:10 ID:ss5gHwv.0
「……まあ何にせよ、賢者の書を手に入れられたのは、幸運だったわね」
「そうですねえ。でなければ、自前の魔力で賄わざるを得ませんでしたよ」
先ほどまでリョタが座っていた座布団に、今度は夕霧が座った。自然と向かい合う形となった拓人の眼を、彼女はジィっと見つめる。
「本当に、この本が代わりになるの?」
「ええ。彼らに語ったことは本当ですからね。万を超える術式と、数百年を経て蓄えられた膨大な魔力。この本は謂わば、一個の巨大な神秘と言える物となっているのです。それこそ、この霊山と張るくらいの。司書の方々に露見すれば、禁書指定どころか焚書指定を受けて、荼毘に付されれかねない代物ですよ」
「まさに、霊山の術式を書き換えるには、打って付けという訳ね」
ズズズ、とすっかりと冷めてしまった緑茶を啜り、一息。拓人はやや間を置いた後、「ええ」と首肯する。
「仔竜を上伏町に解き放ったという事は、今日にでも儀式を始める腹積もりなのでしょう。上伏に打たれた結界の楔を、町民や配下の竜そのものの血で穢し、破壊する。そうする事で、既に結界の術式が書き換えられたこの伏神山は、丸裸となってしまいます。
そこを彼の竜――ベイバロンといいましたか? アレの力を持って位相差障壁を砕き、結界を流用した術式と、釣り餌で以って『竜骸』を引きずり出す。その釣り餌たりうるソウジくんは、今この場にいますからね。ベイバロン、いや伏神の亡霊どもには絶好のタイミングと言えます」
そして、我々にとっても。お茶請けにと用意した稀口の羊羹に舌鼓を打ちながらも、朗々と語る拓人の眼からは、笑みが消え失せていた。
「不愉快だ、実に。四拾七氏の八十年にわたる妄執が、実を結んでしまうなんて。ですから、台無しにしましょう。奴らの時間を全て無為に帰してしまいましょう。そしてついでに、貴方の大切な物も守ってしまいましょう。私が敷設した反転陣で竜骸を――『オロチの首級《クビ》』を、より深くにぶち込んでくれる」
そして、夕霧の顔を正面から見据えて、言う。
「何度も言いますが、竜に喰らわれた貴方の同胞の魂は、永久に失われる事となります。反転陣はこの賢者の書に彼女らの魂をくべて、起動するわけですからね。――覚悟は出来ていますか?」
「何度も同じ事を聞かないで。伏神の怨念に一泡吹かせられて、その上朝霞が生き残る。私達はそれ以上は望まないわ」
「劔はいいんですか? 一応旦那様でしょう」
「……あの人は、私が望まずとも生き延びてくれるわ。じゃなきゃ、私が好きになるはずないもの」
「惚気ますねえ。彼に聞かせてあげれば、きっと喜びますよ」
「煩いわね。早く話を続けなさい」
拓人は「結構」と、言葉を引き継ぎ、銀縁の眼鏡の奥で何処か陰気な笑みを浮かべた。
「それでは、茶番を終わらせるとしましょうか」
620
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 21:54:45 ID:ss5gHwv.0
以上、ちょっと長くなりすぎた
纏めると
ソウジくん:伏神邸でベイバロンと交戦中。クロガネの竜殺兵装の召喚が完了するまでの足止め。
クロガネ:本体は飛行ユニット「ヤタガラス」を装備して、上伏町の仔竜を駆逐中。
アギョー・スタチューが竜殺兵装を代理召喚し、ベイバロンへの奇襲の為に待機している。
真川&稀口女史:上伏町で竜と交戦中。
祢々:パソコンを朝霞に届ける為に上伏町へ。しかしその途中で竜に会い、絶体絶命。
三馬鹿:賢者の書を手に入れるが、それはエロ本ではなかった。現在は織守邸にてドエロイ本を観賞している。
夕霧&拓人:三馬鹿から賢者の書を受け取り、ベイバロンの「竜骸(オロチと呼ばれる竜の遺体)を取り込んで龍へと到る」という目的を利用しようと暗躍中
621
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 22:05:06 ID:KKcgzkS20
おっつおっつ。
とりあえず何事も読んでからだな。
622
:
数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 22:07:09 ID:4E4rImG20
頑張りすぎィ!
西口おつポニ
読むのはこれからだが
623
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数を持たない奇数頁
:2015/06/23(火) 22:58:10 ID:M9RaWHec0
まだ読んでないけどしゅごいいいいいいい
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