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( ^ω^)ヴィップワースのようです
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タイトル変更しました(過去ログ元:( ^ω^)達は冒険者のようです)
http://jbbs.livedoor.jp/sports/37256/storage/1297974150.html
無駄に壮大っぽくてよく分からない内に消えていきそうな作品だよ!
最新話の投下の目処は立ったけど、0話(2)〜(5)手直しがまだまだ。
すいこー的ななにがしかが終わり次第順次投下しやす
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闇の中をジグザグに走りながら、手にした石斧で自分の首を狙いに来ている。
ゴブリンなどよりよほど素早い身のこなしだが、かといって彼を斬る訳にもいかない。
ζ°ゝ)「うがぁッ!」
(;^ω^)「くっ!」
飛び掛ってきたその手を、辛うじて払いのける。
そのまま上半身に纏ったぼろな布切れの胸倉を掴むと、多少乱暴に地面へと引き倒した。
ζ; ゝ)「あ……あうっ」
(#^ω^)「大人しく……するおッ!」
剣を傍らに投げ捨て、彼の腕ごと腹の上に乗りかかった。
子供の割りには大した腕力、それでも自分の体格には抗うべくもないが。
(#^ω^)「君自身がゴブリンにでも……なったつもりかお!?」
ζ#°ゝ)「フシィィイッ!」
瞳をじっと覗き込みながら、言い聞かせるようにして頬を何度も強く張る。
だが、その顔はますます憎しみに皺を刻んでいくばかりだ。
-
(;^ω^)(これじゃ……こんな状態じゃ……連れ帰っても)
歯をガチガチと強く噛み合わせ、威嚇しているのか。
獣と寸分違わぬ姿の彼、ロベルトの顔を覗き込みながら、ブーンは肩を落とす。
”もう一度人の世界に放り込んだとして、それがこの子の幸せになるのか?”
息子はもう帰ってこない、そう覚悟を決めていたフランクリン夫妻。
その彼らに今のこの子を差し出して、果たして本当に喜ばしい事なのだろうかと、己に問うた。
募る疑問は、依頼達成への最後の障害となって、降りかかっていた。
(;^ω^)「………」
傍に転がっていた長剣を拾い上げると、その柄に手を伸ばしてみた。
ここで彼を、殺すべきなのだろうか─────そんな考えが過ぎる。
まるで人が変わってしまったであろうこの子を、本当に解放してやるべきなのか。
それでも、ゴブリンに育てられた彼が、また元の普通の子供に戻れる日が来るとは限らない。
もっとも、こんな考えも当の本人にとってはただ身勝手な、周囲による傲慢でしかないが。
-
ζ#°ゝ)「ぎぃぃぃぃーッ!」
だが、あえて─────
ロベルトの上体を踏みつけながら、剣を手にその姿を見下ろす。
あいも変わらず拘束から逃れようと四肢を暴れさせるが、ブーンの持つ長剣を目にして、
若干その顔色が変わったようだった。
ζ;°ゝ)「………う、うぁあ?」
ゆっくりと振り上げられてゆく剣に、ロベルトの身が強張り、表情が曇ってゆくのが分かる。
やがて後頭部にまで高く剣を掲げると、その剣先をぴたりと止めた。
ブーンの無表情から何かを感じ取ったのか、ロベルトの表情もまた、完全に凍りつく。
( ω )「化け物ごっこは、もう終わりだお」
ζ;°ゝ)「あ、あぅ……い……あ」
────────そして、剣は唸りを上げて振り下ろされた。
──────────────────
────────────
──────
-
支援
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一瞬の火花を伴って、轟音が少年の耳を劈いた。
振り下ろされる瞬間に横を向いて目を瞑ったロベルトの、その眼前へとつき立てられた剣。
ζ;ゝ) 「……あ……ひぐっ」
彼の目には、本気の殺意を持って振り下ろされたものに見えただろう。
ブーンの剣は、確かに力強く突き立てられた───だが、それは頭一つ分方向を外れた、地面にだ。
それでも、年端もゆかぬ少年の下半身を、只ならぬ恐怖が湿らせていた。
静寂の中で堰を切ったようにして響き渡るのは、ロベルトの嗚咽。
それは、確かに彼がまだ人間である事。
恐怖を覚える人としての感情が残っている事を、証明してくれた。
たとえ人里に彼の身がうつされようとも、妖魔に育てられた彼だ。
受け入れられるどころか、周囲の人間達からは迫害されるかも知れない。
しかしそんな心配事も、彼の泣き顔を見た瞬間にどこかへと飛んでいってしまった。
この子供らしい元気な泣き声を聞いている内、きっとすぐに元の生活に溶け込める、そう感じたのだ。
それに─────たとえ周囲が白い目で見ようとも、この子の帰りを待ち望んでいる、両親が居る。
-
( ^ω^)「ロベルト……目を覚ますんだお」
泣き止まない少年の傍らにしゃがみ込み、その頭にぽんと手を置いて、言い聞かせる。
先ほどのように怒気を孕んだものとは対照的に、優しく、語りかけるように。
( ^ω^)「君は────”人”、なんだお?」
ζ;ゝ)「うぅ……うああぁぁぁぁぁんッ」
ぽんぽんと彼の頭の上で、手のひらを優しく上下させ続ける。
その作業は、やがて彼が泣き止み、大人しくブーンに手を引かれるようになるまで続けられた。
──────
────────────
──────────────────
彼の手を引き、洞窟の入り口を抜ける頃には、すっかり大人しくなっていた。
-
外はもうとっぷりと日が暮れ始めており、今からリュメに帰れば夜だろう。
今晩は一晩ゆっくりとリュメで休息し、明日の朝ヴィップに発とう。
そう思い、洞窟へと何気なく振り返ってみた。
(#℃_°#)「………」
すると、洞窟の入り口の真上に位置する岩場のはるか高みに、一匹のゴブリンの姿があった。
敵意を向けるつもりはないのか、立ち尽くすブーン達を、ただ黙って見下ろしている。
さっきの戦闘から逃げおおせた、生き残りのゴブリンであろう。
沈みゆく夕日を背に、しばらく見詰め合っていたブーンとゴブリンを尻目に、ロベルトが言葉を発した。
ζ・ゝ)「────ばい、ばい」
彼もまた、その視線に気づいていたのだ。
手を振りながら、人間流の別れの挨拶を岩場のゴブリンへと送った事に驚いた。
( ^ω^)(お前たちが心配しなくても、この子はきっと幸せに育つお)
心の中で、自分もそう告げておいた。
ロベルトに対しての、親や兄弟としての感情というもの。
それは自分が知らないだけで、彼らの間には宿っていたのだろうか。
-
それは自分が知らないだけで、彼らの間には宿っていたのだろうか。
(#℃_°#)「………っ」
口を動かし、何か呟いたようだが、それはここまでは聞こえてこなかった。
ゴブリンが自分達に背を向けて去っていったのを確認すると、自分もまた洞窟へ背を向ける。
依頼達成の報告をフランクリン夫妻へと届けるため、あざ道を帰路へと目指した────
ζ ゝ)「ばい、ばい」
─────
──────────
───────────────
────【リュメ】────
-
街に入り、人の姿が目に入ると、ロベルトは急にブーンの手を振り払って暴れようとする。
だが、この子の両親の元へ連れていくまでは、決してこの手を離すつもりはない。
手甲に噛り付かれたりもしたが、痛そうに口を開けて泣きそうな顔をするのは、まだまだ子供の証だ。
( ^ω^)「さ……着いたお?」
ζ・ゝ)「………?」
どこか、懐かしいと感じているのかも知れない。
ドアの向こうで灯された明かりに、吸い寄せられるようにフラフラと歩いてゆく。
そこを、自分がノックしてやった。
「………はい!」
ブーンだと思ったのだろう、ドアの向こうで慌しく、こちらへと駆けてくるフランクリン。
がちゃ、とドアが開けられた時の彼の表情は、この時のブーンの脳裏に深く刻み込まれた。
( '_/')「! ブーンさ───」
-
ζ・ゝ)「………あ」
(°_/°)「─────ん」
( ^ω^)「─────戻ったお、フランクリンさん。
約束通り、”ロベルト君を連れて”」
その後のフランクリンの歓喜の様子は、凄まじいものだった。
夜分にも関わらず、近隣にも轟くほどの大声で、けたたましく妻を呼びつける。
( ;_/;)「マ……マディィィィーッ!!マディッ!」
ノ|| '_')「何ですか、あなたそんなに………!?」
玄関口に立つ、少しばかり背丈の大きくなった愛息子の姿を目の当たりにした瞬間、
彼女もまた口を手で押さえて、溢れ出す言葉をどうにか抑えとめていたようだ。
言葉をかける間も挟ませず走り出すと、ロベルトの前に膝をつき、その身体を力強く抱きしめた。
ζ>_ゝ)「あうっ!」
ノ|| ;_;)「あぁ……ロベルトッ!私達の、ロベルトなのね!?」
最初、暴れだすかとも思って待機していたが、以外にも母親に抱きとめられ、
その身をだらりと投げ出し、されるがままになっている。
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多少苦しそうではあるが、その表情にも次第に変化が見て取れる。
( ;_/;)「……まさか、まさか生きていてくれただなんてッ!」
目頭を押さえて、そこからも大粒の涙が伝うフランクリン。
その、両親ともが号泣している状況に釣られてか、あるいは───
ζ;_ゝ)「あ”ぁぁぁぁッ」
ついにはロベルトも泣き出し始めた、リュメの夜空。
フランクリン親子の泣き声の三重奏が─────響き渡っていった。
( ^ω^)(良かった……本当に、良かったお)
寄り添う三人に踵を返し、邪魔者は消える事としよう。
今夜は2年越しの親子水入らずを、ゆっくりと楽しんで欲しいものだ。
冷たい夜風が、火照った頬を撫で付ける。
心地よい涼しに、はたと星空を見上げてみる。
( ^ω^)(どこへでも繋がってるんだおね……この、空は)
-
空で光り輝く星たちに、一抹の思いを馳せる。
柄にもなく詩的なフレーズが口から出てくるのは、依頼を無事達成した事に
舞い上がっている自分が、どこかにいるからだろうか。
( ^ω^)(ならブーンも、どこへでも行けるお………どこへでも)
そして彼の足は、今も背後で聞こえる泣き声に振り返る事も無く、再びヴィップへの帰路へと踏み出した。
──────
────────────
──────────────────
(; ω )「………ッ!!」
(; °ω°)「いっけね!!」
-
(; °ω°)「成功報酬!!」
(; °ω°)「もらってねぇおぉぉぉぉぉぉッ!!」
そして、すぐにばつの悪そうに引き返す事となった────
──────────────────
────────────
──────
それから、宿泊を促すフランクリンから成功報酬だけを受け取ると、泊めてもらう事は遠慮しておいた。
代わりに夫妻から、幾度もの感謝の言葉と、力強い握手を何度も交わし、この胸はそれだけで満足だ。
( ^ω^)「親子水入らずを、楽しんで欲しいお」
それだけ告げ、最後に泣き疲れて眠ったロベルトの寝顔を見て、安心して再び帰路へと発った。
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夜分にも関わらず、街を後にするブーンの姿が見えなくなるまで
手を振ってくれていた、フランクリン夫妻の姿が─────印象的であった。
そして、二日後。
────【交易都市ヴィップ 失われた楽園亭】────
(’e’)「───人の言葉を喋るゴブリン、ねぇ」
マスターは知っていたらしい。さすがは、様々な冒険者が集まる宿を切り盛りする店主だ。
ゴブリンの中にも様々な種類が居て、自分が相対したのは、数百匹に一匹の割合で
人間並みの知能を兼ね備えた、”ゴブリンシャーマン”というものらしい。
それならば、ロベルトを育てて仲間へ引き入れようとしていた行動にも、納得がいく。
( ^ω^)「いやぁ、もうびっくりしたお!ま、ブーンの敵じゃあなかったけどお、ね」
(’e’)「ま、所詮ゴブリンだしな」
-
(;^ω^)「いやいや、それが10匹ものゴブリンに囲まれて……聞くも苦労、
語るも苦労のドラマがそこにはあったんだお!」
(’e’)「おーおー、そりゃすごい。ま……俺の店の顔馴染みにゃあ、オーガ3匹に
囲まれて、剣一本で全部倒しちまった奴もいるみたいだけどな」
(;^ω^)「オーガって、あの……人鬼オーガかお!?そりゃ、バケモンだお?」
(’e’)「こないだ俺の店に来てた……あのジョルジュって奴知ってるだろ。あいつさ」
(;^ω^)「あの人……そんなに凄い剣士だったのかお」
(’e’)「ま……勝てない相手に喧嘩を売るのが、あいつの生き方だからな」
ヴィップに帰ってくるなり、世話になったマスターに冒険談を聞かせたくて、
いの一番にカウンター席へと座り込んだ。淡々とあしらわれるような返し方をされ続けているが、
時折、少しだけマスターも嬉しそうな笑みを浮かべてくれるのが、ありがたかった。
(’e’)「ま、そんな事よりも……」
( ^ω^)「?」
-
エールグラスを磨く手を止め、じっと顔を覗き込んできたマスター。
(’e’)「お前さん……こないだよりも、いい顔になったな」
(*^ω^)「止すお、マスター」
(’e’)「本心さ。一皮向けた、いい顔になったぜ?お前さん」
そう言って、背を向けたマスターは樽からエールをグラスへと注ぐ。
注ぎ終わったあと、再びブーンの方へと振り返ると、目の前へと置いた。
(’e’)「オゴリだ。こいつは俺からの、門出の祝いさ」
( ^ω^)「! ………ありがたく、頂きますだお!」
そのやりとりを見ていた一人の酔っ払いが、ブーンの首元へと手を回して、後ろから組み付いてきた。
まだ昼間だというのに赤ら顔で、何献酒を平らげたのか、吐く息は思わず顔を背けたくなるほどだ。
爪*'ー`)「よぉぉぉぉッ!奇跡の再会だなッ、友よぉぉぉぉッ!」
(;^ω^)「な……なッ」
(’e’)「うるせーぞ、フォックス!」
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爪*'ー`)「んぅぅ、おカタい事言いなさんなよぉマスターぁん」
(;^ω^)「……フォックス。楽園亭に、来てたのかお?」
(’e’)「ん?お前さん、こいつと知り合いか?」
(;^ω^)「ん、まぁ……知り合いには違いないけどお」
(’e’)「お前さんが出立してから、入れ違いでリュメに来たんだよ、こいつは。
店の客の迷惑も考えねぇで女は引っ掛けようとするし、酒は底なしだし、全くかなわんよ」
爪*'ー`)「んむむ………デレちゅわ〜ん!」
ζ(゚ー゚*;ζ「あの……フォックスさん……他のお客さんの迷惑になるんで……」
(’e’#)「てめぇッ!ウチの看板娘に手ぇ出しやがったら、叩き出すぞ!」
爪*'ー`)「……ちぇっ、分かったよ」
爪*'ー`)(今度あのハゲ親父に内緒でデートしようぜ、デレちゃん)
ζ(゚ー゚*;ζ「いや……あの……あはは」
(’e’#)「聞こえてんだぞ……」
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苦笑いで何を逃れた店娘は、客に呼ばれたのを良いきっかけに、卓へと駆けていった。
その後ろ姿に鼻の下を伸ばしていたフォックスが、またブーンのもとへと歩み寄る。
爪*'ー`)「依頼さ、達成したんだってな。おめでとさん」
( ^ω^)「大変だったけど、何とかこなせたお」
爪*'ー`)「……実はさ、冒険者になる!とは思ったけど、俺そういうのぜーんぜんわかんねぇんだわ」
( ^ω^)「ブーンも、昔見た手引き書を曖昧に覚えている程度だお?」
爪*'ー`)「注意力とか洞察力、あとは手先の器用さには自信があるんだけどさぁ」
爪*'ー`)「どうにも、俺みたいなタイプが一人で一匹狼気取るのは、ちっとキツイんだわ」
( ^ω^)「確かに……ブーンもゴブリン相手とは言え、一人っきりは辛かったお」
爪*'ー`)「そこで、だ……パーティー組まないか?この、俺とだ」
( ^ω^)「パーティー?」
爪*'ー`)「あぁ、損はさせねぇさ。ブーン&フォックス!あいつらがあの伝説の───!」
爪*'ー`)「……なーんつって言われるようになるかも、知んねーだろ?」
フォックスからの突然の申し出、頭に手を置いて、ブーンはじっくりと考えてみた。
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危険な旅は、人数が多いほうが良い。それも、信用できる人間ならなおさら有難い。
フォックスの人間性については、ここまでで数度しか会話を交わしていないが、
ある程度自分に近い感じを受け、受け入れやすい人柄だと思っていた。
依頼の報酬は減るが、背中を任せられる相棒が出来るのは、頼もしい事だった。
( ^ω^)(ずっと一人って訳にも行かないし、良い機会……かも知れないお)
爪*'ー`)「……どうだ?」
( ^ω^)「その申し出、喜んで引き受けるお」
爪*'ー`)「……よっしゃ!今日から俺とお前は仲間だ、ブーン!」
(’e’)「おーおー、こんな奴と組んじまっていいのか?」
( ^ω^)「ブーンの目に、狂いはない!……と信じたいお」
爪*'ー`)「まーまー、損はさせねぇってば。あ、改めて自己紹介しとくぜ」
爪*'ー`)「”グレイ=フォックス”、生まれはどこだか忘れちまった。
が、当分はヴィップを根城にする。楽園亭に骨を埋める覚悟だ、よろしくな」
(’e’)(おいおい……勘弁してくれ)
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( ^ω^)「”ブーン=フリオニール”、生まれはサルダの村だお。
まだまだ駆け出しだけど、こっちこそよろしくだお!」
無事依頼を達成したブーンの元へ現れた、フォックス。
偶然にも再会した二人は、旅を共にする事となった。
酒を酌み交わし始める二人の姿を見ながら、これまでよりも煩い店内になってしまった
失われた楽園亭のマスターは、頬杖をついて厄介そうにため息をついていた。
だがこの翌日、さらにこの店を騒がしくしてしまう来訪者が訪れる事を、マスターはまだ知らない。
─────
──────────
───────────────
(´・ω・`)「───見えてきたね、ヴィップが」
ξ;゚⊿゚)ξ「や、やっと……柔らかいベッドの上で寝られるんだわ……」
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( ^ω^)ヴィップワースのようです
第1話
「名のあるゴブリン」
─了─
-
乙
続き楽しみにしてます。
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ドラゴンマダー?
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>>350
ドラゴンのAAくれ。パーティー結成後、大きな依頼の話を一つ書き終えたら、
ジョルジュ、ダイオードらを中心とした番外編的なアレで書いてく予定す。
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>>351
/ l ヽ
/ | i /ヽ
/ | i / /、
/ |i /// ヽ
r~゛`=ー-._____ 、イ'''゛゛゛゛゜''''/'''';;;;;代 /
!  ̄`'-、`'=、. ゛`ナ´ / ' ' ';;;;;× /
!  ̄`' : ;.\フ´ ゛: , ! / ×
ゝ ーー-、冫'''''´ ̄`ヽ .メ、_____〟 / ハ
ヽ 二二/ ,.;;;´ ,.イ ” ! !
ヽ ./,;''';;' ./ x..--┤ }
ヽ i;; ;;´,. '´ ヽ / i .! <ニャ♪
ゝ!_,,;- ._.ィ´ ヾ i /
弋_.ィ´ ヽ | /
'`! ヽ | /
ヽ、 ゝ、_! ,.イ
癶 ゝ-.,_ _,,...・'´ }
{ ゝ /ミ;;“ ; ゛`''''''''''''´ ̄ |
ゞ ゝ /ミミミ |
ゞ≠ゝ /ミミェ |
ゞ≠ゝ /ミミ |
ゞ≠'´ゝ /ミミミミ 、 |
ゞ≠≠゛/ミミ = 1 ! !. |
ゞ ≠;{三ミェェ ! .i ! |
ゞキ≡ミェ ! {γ`1 !
ゞ、エ y'´⌒`、! v」__i. ヘ
ーLJ,__)ノ弋 孑 ゝ.,_)__)ク
゛'亠亠'
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「やれやれ、下界は随分と騒がしいね」
皮肉なほどに彼自身と似つかわしくない、雲間から燦燦と陽光が降り注ぐ昼下がり。
あと少しで雲が望めるのではないか、というほどの遥か上階の窓から身を乗り出し、
蟻のように塔を出入りする人々を頬杖をついて眺めながら、彼は一寸の呟きを声にした。
( ・∀・)
”モララー=マクベイン”
ここ賢者の塔の”高等魔術研究階層”に区分される上階層にて広大な研究室を割り当てられ、
多くの予算とゆとりのある魔術研究環境を与えられた、紛う事無き一人の天才だ。
ここ最近になって、この最高魔術研究機関、”賢者の塔”を騒がす、大きな出来事があった。
魔術研究生として優秀な成果を上げていた一人の魔術師に、”死霊術士”の嫌疑がかけられたのだ。
追走を逃れ賢者の塔から逃亡したのは、”ショボン=アーリータイムズ”
モララーの発言、また彼の研究室を虱潰しに探した術院生達の調べから、その事実が浮かんだ。
( ・∀・)「今頃、彼はどこの野山を這い回っていることやら」
確かに───そういう事になっている。
捻じ曲げられた事実を作り上げた張本人は、至って冷静極まりないが。
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今では魔術師ギルド直属の異端査問団と連動し、賢者の塔の術院生の多くが
各町々に手配書を届ける作業にあてがわれている次第だ。
直接自己に関係しない事件から研究の手を止められる院生達の口から、
嫌疑のかけられたショボンの名を出して不平不満を並べるのは、致し方ない事だろうが。
( ・∀・)「……おっと、忘れていた」
何を発言するのでも役者めいた彼の独り言も、その例に漏れる事がない。
死霊術使役の嫌疑で賢者の塔を追われる事となった彼と、その日最後に会ったのは自分という話だった。
ショボンと接触した時の様子を、アークメイジに対して釈明する為、
二人きりの面談が取り持たれていた、大事な日だったのだ。
( ・∀・)(全く面倒な事だ……お飾りの老骨なんぞを相手にするのは)
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この賢者の塔のみならず、魔術師ギルド全体としても実質的な最高権力者の地位にある者をさして、
彼にとっては”理想の成就”以外が、ただ面倒な作業でしかない。
表面を取り繕い、本当の自分はいつだって秘匿し続けてきた。
何事にも動じる事の無い氷の精神力は、きっと理想までの自分を、ずっと支え続けていく。
自信など、揺らいだ事すらない。
生れ落ちたその時から自分は多くの人々の頂に立つ───そんな存在となる。
その資格を、恐らくは持っていたのだろうと、近頃になって思うほどに。
( ・∀・)(さて───そろそろ、あのご老体の話し相手になってやりに行くとしようか)
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( ^ω^)ヴィップワースのようです
第2話
「栄枯と盛衰」
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( ▲)「───アークメイジは、ただいま庶務に勤しんでおりまして」
( ・∀・)「では、こちらで待たせて頂きます」
( ▲)「もう間もなくお見えになるかと思いますが……紅茶でも」
( ・∀・)「いえ、お気遣いだけで結構」
賢者の塔、最上階。そこが、アークメイジ”アラマキ=スカルティノフ”の庶務室を兼ねた一室だ。
広大なその部屋は、まるまる一階層が彼のためにあてがわれた場所だった。
大陸遠方の街までが一望出来る、天に最も近しい場所から臨む景色を見るため、
腰掛けていたソファから立ち上がり、窓辺へと歩を進める。
( ・∀・)(ふふ。やはり人間という生き物は、偉くなるにつれ高い場所を好むようだ)
( ▲)「素晴らしい眺めでしょう?私など、その為にアラマキ様の付き添い人を望んだ程で……」
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( ・∀・)「ええ、確かに素晴らしい景観です」
( ▲)「でしょう!この先大した成果を魔術界に残せなくても、この景色を望めるなら悔いはありませんよ」
( ・∀・)「ははっ。正直、あなたが羨ましいですよ」
「この男は高所の息苦しさに、脳が縮こまってでもいるのだろうか」と思う。
言葉を交わしながらも、常に目の前の対象から距離を置いて冷静に観察するのは癖だ。
所詮、この男も高みから他人を見下すような、目で見える程度の力を有難がっているに過ぎない。
崇高な理想の為、それに殉ずるために生きる───それこそがこの世に生れ落ちた使命ではないか。
自身を取り巻く環境に慢心して向上心を失った人間など、腐れた死体と何も変わらない。
中身の凝縮された”過程”こそが、自己をより高みへと引き上げてくれる。
本当にその道で殉ずる覚悟があるのならば、結果など見るまでもなく、知れた事だ。
( ▲)「あっ───と……お見えになられたようです」
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( ・∀・)「………」
そうこうしている内、執務室の扉からゆっくりと姿を現したのは、小さな背中を向けた老人。
黒いローブの所々を走る金色の線が、深く皺の刻まれた顔に威厳をたたえさせる。
/ ,' 3 「………ちと、待たせてしまったようじゃの」
( ・∀・)「いえ、そんな事はありません」
この男だ。
数々の結果を出し続け、大陸初となる魔法をも編み出してきた自分。
その自分の遥か高み、最上位の位に位置するのがこの、”アラマキ=スカルティノフ”
彼が相当の歳を重ねているという噂は、モララーの耳にも届いていた。
モララーが彼に対する自分の印象を言ってしまえば───”過去の遺物”としか断ずる事が出来ないが。
確かに魔術師の世界において、多大な功績をもたらしてきたという過去はあるだろう。
だが、老いた今となっては、所詮その輝かしい過去の上にあぐらをかいている、ただの老骨。
老獪さも持ち合わせてはいるだろうが、それがこの自分に指図できる立場にあるという事実は、
実際に顔を合わせる度に腹立たしさを禁じえない。
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/ ,' 3 「あぁ……おぬしが……」
( ・∀・)「モララー=マクベインです、アークメイジ殿」
多少礼儀を欠いても、この老人は何を言う事もない。
わざわざ最も丁寧な言葉選びをするのは疲れると思い、試しにそう言葉をかけた。
/ ,' 3 「貴重な時間を割いてすまぬが……話には聞いている事と思う。聞かせては、もらえんかね?」
( ・∀・)「ええ………彼の、ショボン=ストレートバーボンの事ですね」
/ ,' 3 「君に縋る程の才能もあり、熱心だった彼が身を堕とした経緯について───」
( ・∀・)「同志であった彼の事に関しては……私自身、全く持ってやりきれない気持ちです」
/ ,' 3 「……うむ」
( ・∀・)「ですからこそ……私の知っている限りの事でしたら、何なりと」
-
自らが企て、ショボンを手配人にまで仕立て上げたという事実は伏せたまま───
かくして、アラマキとモララーの対話が始まった。
自身の行いが明るみに出るのではないか、という質問が何度も真相の端を掠めるが、
顔色一つ変える事なく的確に、そして淡々と、納得のゆくだけの理由や推察を並べ始めるモララー。
かくしてその話し合いは、およそ一刻半もの長きに及んでいった────
────【交易都市 ヴィップ】────
今この街では、巷を騒がすとある一団の動きがあった。
-
このまま力尽きて寝るまで、半・ながら投下で書き進めちゃう
-
かつて、”イスト=シェラザール”が束ねていた聖ラウンジ教徒異端審問団。
非道な行いを繰り返し、聖ラウンジとは明らかに道を違えてしまった彼らは、
神の使徒としての権限を剥奪され、今では”旧ラウンジ教”を名乗り、分派して独立の旗を掲げていた。
─────”御堂聖騎士団”─────
その旧ラウンジ教が今や大きな後ろ盾として誇るのが、この武に長けた騎士の一団だ。
自らの信仰を奪われた彼らは、地下に潜った後、確実に力をつけていた。
自分達の信仰の前に仇なす存在を、殲滅するために。
信望者の絶対数こそ遥かに違えど、彼らの存在は聖ラウンジが誇るかの”円卓騎士団”といえども、
決して軽視は出来ない程に、この10年あまりで確実な力をつけていた。
その御堂騎聖士団が今日になってヴィップの街に到着したという知らせは、
領主以下、このヴィップに滞在する聖ラウンジ教徒全体にすぐに知れ渡る事となる。
( )(今日は………妙に外が騒がしいですね)
早朝の聖堂にて、礼拝を捧げていた一人の男。
彼だけは”その知らせを受ける”よりも前から、妙な胸騒ぎを覚えていた。
-
─────事の発端は、夕刻の今より半日ほど遡る────
”交易都市ヴィップ”立てかけられた街の入り口の看板の前で、3人の男女は笑みを浮かべていた。
ξ゚ー゚)ξ「ここが、ヴィップ……綺麗な景観ね」
(´・ω・`)「あぁ。僕も数える程しか訪れた事はないんだけれどね」
「住み暮らすのには、いい街さ」
そう言うと、ツンと聾唖の子供を先導するように、ショボンはまた歩き始める。
(ノoヽ)「あう〜?」
ツンの衣服の端をがっしと掴みながら、ぴっとりと彼女の傍にくっついて歩く。
山育ちの彼にとっては、小奇麗な衣服に身を包んで歩く沢山の人々の姿が、おかしな光景に映る事だろう。
ξ゚⊿゚)ξ「離れちゃ駄目よ?迷子になったら、お姉ちゃん置いてっちゃうんだからね」
(;ノoヽ)「いあ、いあっ」
道行く人々の姿を眺めて歩を止めていた彼の前に回りこんでツンがそう口の動きで告げると、
すぐにまたツンの傍へと駆け寄り、同じ歩調で歩き始めた。
(´・ω・`)「さて……これからどうするんだい?」
-
街のおよそ中心部、噴水が辺りを彩る場所にまでたどり着いた時、
辺りに置かれたベンチに腰を下ろしながら、ツンにそう投げかけた。
ξ゚⊿゚)ξ「私は、この子を教会まで送り届けます」
(´・ω・`)「聖ラウンジとは、彼のような子の身柄を、そう簡単に引き受けてくれるようなものなのかい?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええ、大丈夫……”全ての人は、等しく神の寵愛を受ける権利がある”から」
父の残してくれたその言葉の意味が、今なら本当の意味が理解出来た気がする。
また、良い言葉だとも────ショボンやこの子と出会った短い旅を通した事で、殊更に。
(´・ω・`)「ふむ……修道女としては素晴らしい返答だね」
ξ゚⊿゚)ξ「それにもし断られたら、そこは私の持ってるチカラで……ごにょごにょ」
(´・ω・`)「うん?」
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、いや、なんでも(親の威光とか、やっぱよくないかしら?)」
ふと目を離した隙に、子供はベンチから少し離れた位置にある手を模られた噴水へと
自分の身を投げ込み、身体をばちゃばちゃとさせていた。
-
(*ノoヽ)「うー!……あ〜!」
こちらにまで水飛沫が飛んでくる程、楽しそうにはしゃいでいる。
ξ゚⊿゚)ξ「こらっ!周りの人の迷惑になるでしょ!」
(*ノoヽ)「あうあうあー!」
目線を合わせる為に腰を曲げて彼の前に顔を突き出したツンの顔に、ばちゃっと水が掛けられた。
しばし沈黙し立ち尽くしていたツンだったが、それをきっかけに、すぐに彼の身を捕らえようと、
噴水の周りで追いかけっこが始められる事になる。
ξ#゚⊿゚)ξ「こらーっ!待ちなさい」
(*ノoヽ)「あっ、あっ、お〜?」
そんな光景が四半刻程の間も繰り広げられるのを、ショボンは見せられる事となった。
(´・ω・`)(全く人が良いと言うか、何というか……)
心の中の独り言は、もうじき手配書も出回るかも知れないというのに、
のんきにわざわざに多くの人目に晒される公共の場に居合わせる、自分に対しての事だ。
-
さらに四半刻ほどして、ツンの体力の限界と、子供の飽きは訪れた─────
───────
──────────────
───────────────────
子供を聖ラウンジ教会まで送り届ける道中で、今後の予定の打ち合わせと別れは済ませた。
ξ゚⊿゚)ξ「君のお父さんは、いつも君を見てる。辛い時でも、それを忘れないでいて頂戴」
(ノoヽ)「あ〜……う〜?」
ξ゚ー゚)ξ「お姉ちゃんとは、きっとまたいつか……どこかで会えるからね?」
旅の疲れが及ぼした眠気か、子供はよたよたと歩きながらも、
しかししっかりとツンの顔を見据えながら、首を縦に振っていた。
-
これから離れ離れになる事は彼にとっては寂しくなる事だろう。
だが、それでもこれから自立するためには、教会の手助けはかならず彼の力になってくれる。
眠そうに目を擦っている────要領よく話がまとまれば、無駄に泣かれずに済みそうだ。
(´・ω・`)「教会までは付き合うよ、その後僕は”失われた楽園亭”という安宿で一晩過ごす」
ξ゚⊿゚)ξ「宿……そういえば、私この街の事全然知らなかったわ……」
(´・ω・`)「おいおい、どこで寝るつもりだったんだい?君のような女性がもし外で寝転がっていたら、
さすがに治安のしっかりとしたヴィップでも、操の危機も訪れるというものだ」
ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっ、ショボンさんってば!」
(´・ω・`)「冗談さ───ま、その安宿っていうのも案外悪くない所でね、もし君の方で
今晩の宿が見つからないなら、そこへ案内するよ」
(´・ω・`)「互いの旅の前途を祝して、別れる前に乾杯とでも行こうじゃないか」
ξ゚⊿゚)ξ「まぁ……」
(´・ω・`)「あ、勘違いしないで欲しいんだけど、僕は君を酔わせてどうこうというつもりは一切ないから」
ξ;゚⊿゚)ξ「それはそれで失礼な話よね……」
-
(´・ω・`)「女性に興味が無いのさ」
ξ゚⊿゚)ξ「………あっ、なるほど………」
(´・ω・`)(ただでさえ研究が滞ってるのに、逃亡生活を余儀なくされている今は……ね)
ξ゚⊿゚)ξ(……私は、そういうのに偏見は持たない主義だわ)
互いに小さな誤解が生まれている事にも気づかないまま、一行は聖ラウンジ大聖堂にまで到着した。
入り口の門扉の前でその荘厳な建て構えを見上げ、聖教都市ラウンジのものに負けず劣らずの
その規模に、少し驚いた様子だった。
ショボンは腕を組んで、門扉の外に背中をもたれる。
ツンは子供の手を引き、そのショボンに一度だけ頷いて、合図を送った。
──────
────────────
──────────────────
-
聖堂の中で礼拝を行っていた聖ラウンジの騎士団と思しき数名に声をかけ、ツンは事情を説明した。
この時すでに子供は座席にその身を横たえて、眠りに落ちていたのは幸いだった。
ツン自身も少し物寂しさを感じる事になるが、辛い別れ方をするよりはましだ。
自分は巡礼の旅を続ける、一介の修道女であるという事を説明した上で、これまでの道中で
出会った子供の身柄を引き受けて欲しいという要望を、この教会の修道士達に打ち明けた。
その自分の行いに「見習いたいです!」などとお褒めの言葉を頂いた上で、すぐに彼らは
上の人間に掛け合って、快く彼の身柄を引き受ける事への了承をもらってきてくれた。
(* _ )Zzz
ξ゚ー)ξ(その明るさを失わないで……元気に暮らすんだぞ)
最後にその寝顔にエールを送ると、ショボンを外に待たせていた事を思い出し、足早に教会を去った。
─────
──────────
───────────────
-
「あ、これは副長!」
中庭のガラス越しにちらりとだけ先ほどの部下達のやりとりを見ていた男が、一人に声を掛ける。
( L )「今のは?」
「えぇ、実はですね……」
部下が、副長と呼んだ男に対して事のいきさつをひとしきり説明した。
頷いてその話を聞いていた男は、開け放されたままの扉から遠目に見えたツンの後ろ姿を
目で追いかけながら、何かを思い出そうとしていた。
「……という訳なんです。神に仕える者として、彼女の行動は実に見習いたいものです!」
( _L )「なるほど……実に素晴らしき、慈愛の精神をお持ちの方のようだ」
( _L )(はて………私の記憶が正しければ、あの女性は、確か─────)
───────────────
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─────
-
ツンがヴィップを訪れる事の理由であった、教会へ子供を託すという使命は終えられた。
気がつけば街を歩き回る内に陽はずいぶんと沈みつつあり、もう夕刻といった所だ。
(´・ω・`)「ばかに早かったね。どうやら、聖ラウンジもなかなか見所がある宗派じゃないか」
ξ゚⊿゚)ξエッヘン
自分自身が褒められたようで、少しだけ誇らしかった。
無い胸を突き出して、ツンは微妙にふんぞり返る。
それからは、出迎えたショボンの案内に連れ添われるまま、おおよそ街中とは
思えないほどの長距離を歩かされてようやく、今晩の宿へとたどり着いた。
──────”失われた楽園亭”
また随分と捻りもなく怪しげな店内を連想させる看板がかかっているが、まだ夕日も
沈みきる前から沢山の人間が続々と宿へ入っていく光景と、赤ら顔で出てくる人の多い光景に、
おんぼろな建て構えながらも繁盛しているであろう事を思わせる。
ツンは少し気後れしていた所だが、ショボンは場馴れた様子でその木扉を押し開けた。
-
────【交易都市ヴィップ 失われた楽園亭】――――─
ζ(゚ー゚*ζ「……いらっしゃいませ!」
店娘の元気な挨拶に出迎えられ、活気賑わう店内の卓をすり抜け、カウンターへと向かっていく。
その近くまで足を踏み入れると、懐かしげに声を駆けてきたのはエールグラスを磨いていたマスターだ。
ショボンは彼の傍まで歩み寄ると、宿が空いているか話を持ち駆けているようだった。
(’e’)「お……こいつぁまた、珍しい来客だな」
(´・ω・`)「いつぞやはお世話になりまして」
(’e’)「あぁ、覚えてる。ツケずにまともに銀貨を置いてってくれる、貴重な客だからな。
大好きな魔術がやらせてもらえなくて、父ちゃんと喧嘩して家出したぼっちゃんだろ?」
(´・ω・`)「そうそう、そうでしたね……ま、今はその時よりさらに悪化したようなものです」
(’e’)「そうかい……ま、部屋は用意してあるから安心しな───ちっとばかし、小うるさいのがいるがな」
マスターのその言葉に安堵する。
-
しかし、視線の方へ顔を向けてみると、そこにはどの料理を注文するかで揉めている
二人組みの冒険者らしき男達。ツンは既に、そちらへ白い目の視線を送っていた。
(#^ω^)「だ・か・ら!この店の一番は、絶対に、断固として、鳥腿肉の炒めなんだおッ!?」
そこには、集まる視線も憚らずに、これから注文するであろう料理の優劣をつけようと、
声を荒げて言い争いをしている見苦しい二人組みの姿があった。
爪#'ー`)「いーやッ!分かってないのはお前の方だぜブーン!なんたってこっちの料理は、
あのデレちゃんが作ってるんだ!あのハゲ親父の料理なんかより、一万倍食えるねッ!」
(#’e’)「(野郎………!)悪いな、こないだからこんな調子だ」
(;´・ω・`)(たはは……)
ξ;゚⊿゚)ξ(うわぁ………うざ)
──────
────────────
──────────────────
-
軽めの夕食を取りながら、ショボンとツンは一杯だけエールを酌み交わす事にした。
今は注文した料理が届くのを待つばかりだった。
ショボンがエールとは別に、先に注文しておいた紅茶を啜っている間、
何気なくさっきの小うるさい二人組みの席に目をやると、どうやらお互いの好きな料理を
注文する事で事なきを得たようだ。
( ^ω^)「そうだったのかお?そりゃ〜アレだ、災難だったおね」
爪'ー`)y-「笑いごっちゃないぜぇ……こちとら死ぬ目にあったんだ」
何気なく、楽しそうに談笑しているその二人を見ている内、ふとツンは思った。
ξ゚⊿゚)ξ(………ふぅん)
なんだか、楽しそうだ─────日ごろから命がけで冒険をしているのに、だからこそ、なのか。
ごつごつとした見た目や話している内容から、どうやら彼らが冒険者のようだと悟ったのだ。
ラウンジに居た自分がまだ幼い頃にも、よく旅の冒険者がどこからか話の種を持ってきては、
押し込められたような生活を送っていた自分に、旅の話の花を咲かせて楽しませてくれたものだ、と懐かしむ。
そんな自分の横顔に、ショボンの視線が当たっているのを感じ、振り向いた。
(´・ω・`)「彼らに、何か?」
-
ξ;゚⊿゚)ξ「あ、いや。冒険者っていうのも、外から見てると楽しそうな職業だな……てね」
(´・ω・`)「憧れる人種は多いさ……ただ、冒険は過酷だ」
ξ゚⊿゚)ξ「そう、よね……」
(´・ω・`)「ま……”困っている人々を探して助けたい”という事を理想とする君のような
女性には、彼らと結びついたら円滑な旅路を送れるとは思うけどね」
ξ゚⊿゚)ξ(なるほど)
(´・ω・`)「冒険者に、憧れがあるのかい?」
先ほどからちらちらと送っている視線に気づいたか、1つ離れた卓の二人が、こそこそと
何かを話始めた。小声で話しているのだろうが、ツンを見つめたまま顔を背けようとしない為、
会話の内容は端々から推測が出来る。
爪*'ー`)(おい……気づいたか?さっきからあの娘、ずっと俺の事見てるぜ!)
(* ^ω^)(違うお、フォックスの事じゃなくて、あの娘僕の事を見てるんだお……ふひひ)
一拍の間を空けて、先ほどのショボンの質問に、力強く言葉を返す事にした。
ショボンが少しばかり驚き、離れた卓の二人にもしっかり聞こえる程の大声で。
ξ#゚⊿゚)ξ「別に!?興味ないわよ、冒険者なんて!」
(; ω )爪;ー)y 「!」
-
支援
-
寝てたぜ、日付が変わる前を目標に2話を投下しきる予定
-
しっかりと聞こえた筈だ。
一人が手にしていた煙草を落とす程の動揺を見せた事に、ショボンは軽く含み笑いした。
(´・ω・`)「ま、一人旅は過酷だからね……そういう道もある、という事さ」
────そんな事を話していたある時、事態は急激に移り変わる事となる。
ティーカップに口をつけていたショボンの顔が突如強張り、引きつった表情を見せた。
ξ゚⊿゚)ξ「?」
何事かと入り口から入ってきた人影の方へと振り向くと、そこには多数の騎士の姿。
重そうな甲冑に身を包んだ、物々しい一団が無言で店内へどかどかと押し入って来たのだ。
騒然とする店内、事態を把握している者は居ない。
(;´・ω・`)(もう、足取りを掴まれてしまったというのか……!)
そう─────ショボン一人を除いては。
-
(=[::T::]=)「………」
ζ(>ー<*;ζ「きゃっ!」
(;’e’)「お、おい……」
店娘を押しのけた光景に、マスターが声をかけようとするも、聞き捨てられる。
やがて卓を見渡せる位置に4人が広がると、残る一人が依頼状を張る壁面に
一枚の似顔絵のような羊皮紙を、べたべたと張り出した。
(;´・ω・`)(……よりにもよって、こんな人の多い場所とはね……)
ξ゚⊿゚)ξ「………ッ!?」
その張り紙を目にした瞬間、思わず立ち上がってしまいそうになるのをこらえた。
そこに描かれていた寸分違わぬ精彩を誇る似顔絵の主は────今まさに対面している男。
そこには300spの懸賞金が掛けられたショボンの手配書が、騎士達の手によって張り出されたのだ。
ξ;゚⊿゚)ξ(あ………あれって)
-
即座にショボンの顔を覗き込み、反応をうかがった。
彼はゆっくりと、背面に立つ騎士たちに気取られぬ程度に首を左右に振るだけだった。
(;´・ω・`)(君は……関係ない。早く席を立って、ここを出るんだ)
ξ;゚⊿゚)ξ(ど、どういう事なの………!?)
自分の疑問にも応えず、ただ強く退席を促すショボンの視線に、問いは押し戻される。
やむを得ず、音を立てないほどゆっくりと席を立つと、少しその場を離れてカウンターに佇む
宿のマスターの近くにまで退避した。
耳打ちするような、マスターの声がかすかに聞こえる。
(’e’)(何やったんだ?……あいつ)
ξ;゚⊿゚)ξ(それが……私にも……)
(=[::T::]=)「この場に居る全員に言っておくッ!」
少しずつざわつきつつあった店内を再び静寂へと引き戻したのは、一人の騎士。
後ろで張り出している手配書の一枚を片手に、全員に見えるように掲げて言った。
(=[::T::]=)「この者の首には、300spの懸賞金が懸かった!」
(=[::T::]=)「もし捕らえるにまで至る情報があれば、我々に提供せよ。
内容如何によっては、それにも情報提供料を支払う!」
-
支援
-
(;´・ω・`)(まさか……その相手が自分の目の前に背を向けているとは思わないだろうな……)
まさしく、血が凍てつく程の緊張感が、今ショボンの身を駆け巡っているであろう事を察した。
山賊達の手から、自身の命の危険など顧みず救い出してくれたショボンに、懸賞金が掛けられている事実。
それでも、何かの間違いだろうという気持ちの方が大きかった。
ξ;゚⊿゚)ξ(違う……ショボンさんは、そんな悪い事をするような人じゃ……)
(’e’)(しかし、こりゃあ……まずいな)
そう、そうなのだ。
どうやら、マスターはツンと同じ、傍観に回っている側────
しかし、様々な人間が居るこの店内、客達の反応はどうか?
ショボンから遠く離れた席の人間ならば、まだ気づかないという事はあり得る。
しかし、先ほどの二人は、間違いなくショボンの顔と目が合っている。
( ^ω^)「………」
爪'ー`)y-「………」
だが、彼らもまた傍観する側に回っているのか、ショボンの存在に薄々気づきつつも、
騎士達にそれを進言するような様子は無い。ただ、黙ってこの危うい光景を見守っていた。
─────しかし、そんな人間達ばかりでもない。
-
おおう 支援
-
「おう!………そこに、いるんじゃねぇのか?」
ξ; ⊿)ξ「──────っ!」
誰かが彼の方を指差し、大声を上げた。
(;´・ω・`)(そう来る……だろうね)
(=[::T::]=)「…………?」
その男が指している、彼らに背を向けたままのショボンの顔を確認するべく、
騎士達は卓を横切ってその前にまで回りこんだいく。
観念した、といった様子で再びティーカップの端に口をつけていたショボンの顔を、そこで確認した。
(=[::T::]=)「案外近くに居たか………”ショボン=ストレートバーボン”だな?」
豪壮な鎧に身を包む5人の騎士は、たちまちショボンを取り囲んでゆく。
(´・ω・`)「……失礼ですが……」
ξ;゚⊿゚)ξ(この鎧の紋章は……確か………)
ツンの目に、ショボンの周りに立つ騎士達の鎧の所々に刻まれた、逆十字が映る。
聖ラウンジとは対照的に、逆さを向けて模られた十字紋章───その宗派に、覚えがあった。
(=[::T::]=)「”御堂聖騎士団”と名乗れば、理解が早いか?」
-
”旧ラウンジ聖教”が誇る、異端鎮圧集団────そう、”御堂聖騎士団”だった。
(´・ω・`)「なぜ───あなた方が、私を?」
(=[::T::]=)「貴様などに応える義理は無かろう?」
言って、場を取り仕切る騎士の一人が剣を抜き出し、ショボンの前にかざした。
いかに魔術を使えると言っても、武装した5人もの騎士に囲まれてしまえば、
そこから何が出来るという訳でもないだろう。
(´・ω・`)(魔術師ギルドから、相応の見返りを受けて───そんな所か?)
魔術師ギルド内の問題は、当然魔術師ギルド全体で手を打つとばかり思っていた。
だが、外面に見せる事の出来ない汚い部分も多分に秘めた組織内の誰かが、
武に長け、その上狂信的に異端を鎮圧する彼らに、協力を要請したのだろうか。
(=[::T::]=)「罪を認め、その身で贖うのだ。”死霊術士”、ショボン=ストレートバーボン」
(´・ω・`)「認める、認めざるを問わず、貴方達は私を裁くつもりなのでは?」
(=[::T::]=)「………口の利き方がなっちゃいないな、この墓荒らし風情が!」
襟首を引っつかんで立ち上がらせたショボンの頬を、騎士の一人の拳が打ち抜いた。
たまらず隣の卓にまで吹き飛び、その身が椅子にもたれた所を、すぐにまた乱暴に立たせられる。
ξ;゚⊿゚)ξ「ショボンさ────!」
(’e’)「(よせッ)」
-
”死霊術”────確か、どこの街でも定められた、禁術の種類一つだ。
死者の身を弄び、その肉体や魂までをも冒涜するという、極めてたちの悪い術式だ。
それをあのショボンという魔術師が実行したという────が、それはきっと何かの間違いだ。
殴られるショボンの姿を見て居ても立っても居られなくなったツンが飛び出そうとするが、
マスターにがっしりとその肩を掴まれ、制止を受ける。
見れば、騎士達に両腕を左右から押さえ込まれたショボンが、もう店の外にまで連れ去られようとしている。
その去り際に、一人がマスターの方へと向き直ると軽く敬礼を送る。
(=[::T::]=)「協力に、感謝する」
(’e’)「………」
一瞬だけツンに目が合ったショボンは、俯きがちに頷くと、力なくその口元に笑みを浮かべていた。
(;´・ω・`)「…………っ」
ξ;゚⊿゚)ξ(そんな………)
威圧感しか生み出さない、その有無を言わさぬ彼らの様子に、店内に居た誰もが一言も発せずにいた。
自分の背に実子であろう店娘を庇うマスターも、それは同じだった。
ζ(゚ー゚*;ζ「………」
だが、そんな状況に我慢がならない修道女が一人────この場に。
-
ξ;゚⊿゚)ξ「──────違うッ!」
力強く、何の迷いも無く。
ツンは去り行く御堂聖騎士団の一行の背中に向けて、叫んでいた。
(;´・ω・`)(バカッ……!)
(=[::T::]=)「────ん?」
振り向いた騎士の目の前にまで歩み出て、ツンがそれに詰め寄ってゆく。
無駄に彼女を巻き込みたくはなかったショボンの本意など、察してもくれなかった。
ξ゚⊿゚)ξ「……違います。その人は、そんな事をする様な人じゃない」
(=[::T::]=)「何事だ、娘?」
(;’e’)(あちゃあ……)
ツンの御堂の騎士への直訴が始まると、マスターは元より、
店中の客の視線が、その二人へ向けて集められた。
ξ゚⊿゚)ξ「死霊術だなんて恐ろしい事………何かの、間違いだと思います。」
(=[::T::]=)「ほぉ……?その理由を尋ねようか」
ξ゚⊿゚)ξ「その人は、山賊に襲われた私を、身を呈して救ってくれた────そして、
そこで見つけた身寄りの無い子をここまで送り届ける、護衛を買って出てくれたんです」
-
(;´・ω・`)(全く、物好きな修道女様だよ、君は────)
淡々と、ショボンとの出会いを、そして彼の潔白を騎士へと訴えるツンの姿に、
ショボンは両脇を掴まれたままに肩を落とし、がっくりとうなだれる他なかった。
駄目だ───駄目なのだ。
この連中に何を言っても、感情論などに心動かされるような者達などでは、決して無い。
ただ、起こった事実に対する行動を、自分達の信念のままに執行する───ただ、それだけの。
(=[::T::]=)(………もしや、報告にあった修道女というのは)
(=[::T::]=)「うむ、歳の頃も重なる」
さらに二人が、ツンの近くまで歩み寄って来た。
ツンが直訴を続けていた騎士に対し、何事かを耳打ちする。
ξ;゚⊿゚)ξ「!?」
そして気づけばツン自身の両腕も、騎士達によって左右から背へと押さえつけられていた。
-
(=[::T::]=)「ショボン=ストレートバーボンには、同行者が居るという情報があった」
ξ;゚⊿゚)ξ「────なッ」
そこまで言われて、ツンは事態にようやく気づいた。
ショボンと同じように、疑いをかけられているのだ───この自分にも。
(=[::T::]=)「娘、その僧服……よもや、神に仕える身であるお前が、この神を恐れぬ
所業をやってのける罪人に、加担していたのではあるまいな?」
ξ;゚⊿゚)ξ「違う……私も、ショボンさんも────!」
(=[::T::]=)「ま、詳しい話は我々の詰め所で聞かせてもらうとしよう………じっくりとな」
ξ;゚⊿゚)ξ(どうして………)
──────ツンは垣間見た。
一方的に力を顕示する人間の恐ろしさを。
そして、決して分かち合う事の出来ない人種もいるのだという、事実を。
もはやツンも、何を言う気力も削がれてしまい、肩を落として騎士達に引かれていくしか出来なかった。
──────
────────────
──────────────────
-
そんな光景を見ていた二人の冒険者は、互いの意思を確認しあっていた。
そう、難しい事ではない─────「助けるか、助けないか」
ただ、それだけの事だった。
( ^ω^)「………ブーンには、あの娘さんの言う事が間違ってるとは思えないお」
爪'ー`)y-「かも、な………だけどよ、相手は騎士団。どう頑張った所で、張り合える相手じゃない」
互いに、彼女が正しき事を言っているのだと理解していた。
民衆の事など考えないお上は、ただ自身が持つ力のままにそれを行使し、弱い立場の者を痛めつける。
それは、罪のあるなしに関わらず、いつの時代も権力者が行ってきた事なのだ。
( ^ω^)「決めたお」
爪'ー`)y-「へ?」
( ^ω^)「助けるお、あの二人」
爪;'ー`)y-「本気かよ……下手したら、俺達まで手配書もんだぜ?まだ一緒に冒険もしてねぇのに」
( ^ω^)「いいお、ブーン一人ででも」
そう言って、卓を立とうとする彼の背中を掴んで、また椅子へと座らせた。
すぐにでも飛び出してしまいそうだった、彼の静かに熱さをたたえた表情に向け、言い聞かせる。
-
爪;'ー`)y-「ブーン、よく聞け……あいつらが仮に無実だとしても、それを助けようとすれば
俺達までお尋ね者になっちまう。もう、この街に戻って来る事も出来ないんだぜ?」
( ^ω^)「……構わないお」
爪;'ー`)y-「はぁ……強情だな、お前さん」
やれやれ、とその顔を覗き込むと、フォックスはため息交じりの言葉を投げかける。
( ^ω^)「女の子一人助けられないようじゃ───男じゃないお」
爪'ー`)y-「………っ!」
どうやらブーンのその言葉に、フォックスには共感出来る部分があったようだ。
再び立ち上がろうとしたブーンの腕を即座に力強く掴む。
しつこく制止するフォックスに業を煮やし、ブーンは少し語気を荒げる。
(# ^ω^)「止めてくれるなお───フォック……!」
爪'ー`)y-「───いんや、もう止めないさ……けどな、こういう時は少し頭を使うのも悪くない」
( ^ω^)「………?」
そう言って、フォックスはブーンの耳元へと顔を寄せると、何事かを耳打ちした。
その意図する所を頭の中で思い浮かべながら、一頻りふんふんと頷き大方の内容を理解すると、
最後にお互いに顔を合わせ、手の中で親指を突き立てた。
-
支援
-
──────
────────────
──────────────────
騎士達に身を揺られるがまま、連れられてゆく。
ただ、自分の旅の目的は、旅先で出会った人々の力になってあげたい───素直な思いだった。
それが一体、何がどうしてこんな事になってしまったというのか。
そして、これから自分はどうなってしまうのか。
ξ;⊿ )ξ「はぁ………」
想像もつかない事を考え、そこで完全に意気消沈した。
もうすぐ、自分もショボンも宿の木扉をくぐらされ、詰め所へと連れて行かれるのだろう。
全員が自分達を見守る、沈黙に支配されたこの場所。
だが───その只中にあって、突然席を立つと口笛を吹きずさみながらこちらへと歩いてくる人影。
どこまで雰囲気を読めぬ男なのだろうと、ちらりとそちらへ目を向けてみた。
爪'ー`)「さ〜て……便所便所〜」
(=[::T::]=)「……………」
-
(=[::T::]=)「……………」
そう言いながら騎士達の脇をすり抜け、やがてツンの横を抜けようとする男。
その男の片足が、隣でツンの腕を掴んでいた騎士の足に絡まり、一人がつんのめった。
(=[::T::]=)「おわッ」
不恰好な体勢から、重そうな鎧を纏ったその一人は地面へと倒れこむ。
その様子に全員がすぐに振り返ると、白々しく騎士達に向けて言葉をかける、男。
爪'ー`)「あっ、悪いね〜。わざとじゃないんだ、わざとじゃ」
ξ゚⊿゚)ξ「………!」
そして、そこからまた─────ツンたちを取り巻く事柄は、急速な展開を見せる。
(# ^ω^)「─────ぉぉぉっとっとっとぉぉーッ!!」
(´・ω・`)「ッ!」
ショボンの両側を押さえている騎士達に向けて、突然立ち上がった男がそう叫びながら、
突然横合いから勢いよく現れると、彼らの元へ弾丸のように肩口から体当たっていった。
足を引っ掛けられて転倒していた一人の様子へと振り返っていたばかりに、
騎士達はその存在を視認するのが、完全に遅れてしまっていたようだ。
(=[::T::]=)「ぬぅぉおッ!?」
-
勢いよくぶちかまされた二人がもつれ合い、壁際まで吹き飛ぶ。
それを機に────ショボンとツンへの拘束は、一時的に緩んだのだ。
そこへ、ツンの後方に居た男が叫ぶ。
爪#'ー`)y-「……馬鹿野郎ッ!そんなんじゃあまりにもあざとすぎるじゃねぇかッ!」
それに言葉を返すように、体当たりをかました一人も叫んだ。
(# ^ω^)「立案に無茶がありすぎだお!こんなのちっとも頭使ってないし、
第一、どこも作戦なんて呼べる代物じゃねぇおッ!」
それは、先ほどツンが視線を投げかけていた、あの二人組の冒険者だった────
(=[::T::]=)「貴様ら………何のつもりかぁッ!!」
(;^ω^)「!」
即座に一人が剣を抜き、彼らに向けて怒号を発する。
一方、そんな自分は一体どうすればいいのか、気が動転して何も考えられない。
(;´・ω・`)「これは、一体……」
そんな自分達を導くかのように、ツンの後ろの男が叫び、次に取るべき道を示した。
爪#'ー`)y-「今の内に走れッ!………外だッ!」
-
ξ;゚⊿゚)ξ「………!?」
状況を飲み込めずまごまごしていたツンの手を、ショボンが強い力で握る。
(;´・ω・`)「事態が把握出来ないが……ひとまず、君は逃げるべきだ!」
まだ完全に体勢を立て直せていない騎士達の脇をすり抜けて、二人組の冒険者は
外へと走り出していた。ショボンに手を引かれるままに、ツン達も後へと続く───
「何をしている、追いかけろッ!!」
ξ;゚⊿゚)ξ(ど、どうしたらいいのよっ!)
背後に浴びせられた騎士達による怒号は、自分達へと向けられている。
ツンの小さな胸は、不安と緊張に押しつぶされそうになっていた。
「逃げ切れるだろうか」
第一、逃げたところで手配書の出回ってしまったショボンの罪が消える訳ではない。
それは恐らく、突然の助け舟を出してくれたこの冒険者達にも言える事だった。
自分は一体、どうなってしまうのだろうか。
そんな事を考えながら、二人組に先導させるまま、夕刻の暗い路地裏を駆けた─────
-
息を切らせながら、ショボンと冒険者達が言葉を交わす。
(;´・ω・`)「どうして、僕達を?」
(;^ω^)「理由はないおっ!ただ、そこの娘さんの言う事の方が───」
そう言って、3人の視線がちら、とツンの方へと向けられる。
しっかりと身体を休める間もなく走りづらい服装で、逃走を図っているツンの体力は、
もはや限界の限界に近づいている。彼らに視線を向ける程の余裕もないほどに。
爪;'ー`)「まっ……どう見たってあいつらの方が悪人じゃねーか、あの状況じゃ!」
(;´・ω・`)「全く……物好きだね、君たち全員!」
(;^ω^)「礼にはっ、はぁっ、及ばんおっ!」
爪;'ー`)y-「別に、礼を言われた訳じゃねぇよっ!」
ξ;⊿ )ξ(だ、駄目……死ぬわ……これっ)
4人の靴音のさらに後方からは、甲冑ががちゃがちゃと擦れ合う音が聞こえる。
先ほどより人数を増やして追走にあたっているのかも知れない。
目の前の景色が白み、自分の体力が底をついたのをツンが認識した時、
一番余裕のある顔で先頭ひた走っていた一人が、全員に聞こえるように叫んだ。
-
爪;'ー`)y-「………こっちだッ!」
路地の横を複数走っている、その中で一番細い一本を指さし、身を紛れ込ませる。
続けて、ふらついているツンの背中を押しながら、3人が潜り込んでゆく。
爪;'ー`)y-(息を……殺せ……!)
(;^ω^)(ちょっ、ぜぇはぁぜぇはぁうるさいおッ!)
ξ;゚皿゚)ξ(はぁ……は────んんんーッ!?)
(;´・ω・`)(少しだけ辛抱してくれ、ツン)
外から失った酸素を取り込もうと、大きな息を吸って肩を上下させるツンの口を、
体格の良い冒険者は手の平で押さえ込んだ。
「いぎが、ぐるじいぃ」
そう懇願する言葉を発する事も出来ぬままにツンの口を塞ぐその手は、
暗い裏裏路の前に7〜8人の甲冑を纏った騎士が過ぎ去り、やがて、
彼らの足音が離れていくのを完全に見届けるまで、離される事がなかった。
ξ; 皿 )ξ「ふ………ふが」
(´・ω・`)「……どうやら、もういいんじゃないかな?」
ツンの顔色が薄紫色になりかけていたのをショボンが指摘し、その手はようやく離される。
-
ξ; ⊿ )ξ「────んぶはあぁぁぁぁっーッ!」
(;^ω^)「おっ、おっ……すまないお」
ξ#゚⊿゚)ξ「あんたね……死ぬ所だったわよ!こちとら!」
爪'ー`)「まぁまぁ、抑えなよ。まだ安心は出来ねぇぜ?」
勇める一人をきっと睨みつけながら、その次にツンは泣きそうな顔で肩を落とした。
ξ゚⊿゚)ξ「あ〜あ。なんで、こんな事になっちゃったかなぁ……」
(´・ω・`)「巻き込んでしまってすまないね……どれ、そこらに腰掛けて、少し話さないか?」
( ^ω^)「賛成だお」
爪'ー`)y-「どの道、多分都市外へ繋がる入り口は封鎖されてんだろうしな」
路地から覗き込んだ範囲に、先ほどの騎士団がいない事を確認すると、狭苦しい裏路地を
出て、ゴミなどが置かれていたその傍らへと一同は腰を下ろした。
─────
──────────
───────────────
-
─────それから、4人は様々な事をぽつりぽつりと語り合った。
(´・ω・`)「僕は、ショボン=アーリタイムズだ」
ショボンは、同僚の謀略に嵌められて、今このような現状を迎えているという事。
ξ゚⊿゚)ξ「ツン=デ=レインよ。ツンでいいわ」
ツンは、思い立ったが吉日と旅立って間もなくショボンと出会い、このように巻き込まれたという事。
爪'ー`)y-「お前さんがたも……ツイてねぇな」
( ^ω^)「でも───もう僕達にも他人事じゃないお」
二人の名前は、小太りっぽい方がブーン=フリオニール。
銀髪を結わえたきざな方がグレイ=フォックスというのだという。
ξ゚⊿゚)ξ「…………」
そう、確かにこの二人は楽観的で、能天気な適当人間に思える。
それでも、あの場に居合わせながら自分の言葉を信じて、こうして手助けしてくれたのだ。
その結果─────彼らも今は、追われる身となってしまっているかも知れない。
-
感謝を、述べるべきか。
それとも、謝罪するべきなのか。
ツンがそう思案にあぐねていた時、フォックスが何事かという勢いで、立ち上がる。
爪'ー`)y-「まじぃぜ……こりゃ」
太い一本道である路地の右手から、一定の歩調でこちらへと歩を進める、影の一団。
がちゃがちゃと擦り合う甲冑の音から、先ほどの御堂聖騎士団だという事が分かった。
(´・ω・`)「こちらからも……!」
慌てて逆の左手へと身体ごと視線を向けたショボンの前方からも、多数の甲冑が向かってくる。
左と右にそれぞれ10体ずつ────その数、合わせて騎士が20人はいるであろうか。
左右同時に挟まれ、もはや中央へと追い詰められていく自分達に、退路は絶たれていた。
(;^ω^)「逃げ場……無しかお」
やがて、左右共にあと数歩という距離にまで追い縋られると、路地の中央で二人ずつ背中合わせになる。
あとはもはや────次に甲冑の一団が何を仕掛けてくるのかを、ただ待つ事しか出来なかった。
-
wkwk
-
3人の耳の傍で、ショボンが一言小声で呟く。
(´・ω・`)(いざとなれば……僕が魔法で左側の人の壁を吹き飛ばす)
( ^ω^)(!?)
(´・ω・`)(だからその合間を縫って、君達3人は逃げるんだ────ツン、君だけでも)
ξ;゚⊿゚)ξ(そ、そんな無茶な……!)
ショボンが覚悟を決め、そんな話を全員に振った─────その折だった。
─────「貴様らか。話にあった異端者というのは」─────
低い声が、フォックスとブーンが見据える右手の騎士達の置くから路地に響いた。
騎士達が織り成す人の壁が十戒のようにぱっくりと二つに割れると、その中央から
勇ましい歩調で、しかしゆっくりと姿を現したのは、一段と堅牢な鎧に身を包む騎士だ。
───ブーンの一人と半分程はあるのではないかという、体躯。外見だけで、既に威圧される。
-
(=[::|::|::]=)「……聞いていたより、随分と数が増えているな」
(; °ω°)(で……でけぇおッ)
爪;'ー`)y-(おいおい……中身はオーガじゃねぇだろうな)
(=[::|::|::]=)「貴様らの身柄は貰い受ける……だが、その前に」
一目で分かる、これが御堂聖騎士団を束ねている人間だという事が。
彼はそこまで言いかけるとブーン達から視線を、外し、ツン達側────
路地の左手から現れた騎士達の方へと顔を向けて、言葉を投げかけた。
(=[::|::|::]=)「まずは───そちらの目的を、聞こう」
(´・ω・`)「……ッ!?」
ショボン達、左手の路地から迫っていた騎士達は────御堂聖騎士団では、ない?
意外過ぎる事実に、ショボンの脳裏に疑問符ばかりが浮かび上がる。
だとするならば、彼らは何者だというのか。
-
────「そちらにいらっしゃる女性の保護。及び、治安の維持です」────
左側の声の方から、また騎士らの壁が二つに分かたれる。
その奥から歩み出てきたのは、白銀色の甲冑に鎧を包み背には巨大な槍を携えた、一人の騎士だ。
( _L )「では、今度はこちらがあなた方の目的を聞きましょうか」
(‘_L’)「御堂───聖騎士団の方々?」
ξ゚⊿゚)ξ(ッ! ………この方は………)
やがてツンらの前にその面を表した時、彼女の表情は固まった。
自分は、この男性に一度話をしてもらった記憶が───確かに、ある。
聖教都市を離れた今では、随分と遠い昔の事のように感じるが、いつだったか。
それを思い出そうと記憶の底を探っている内、当人の方から声を掛けられた。
(‘_L’)「貴方達は、下がっていなさい」
ξ゚⊿゚)ξ「……あっ」
そう声をかけられた瞬間に思い出したのだが、ツンの身は騎士団と騎士団の直線状を離れ、
ブーン達の手によって肩を掴まれ、壁際へと押し寄せられていた。
-
(;^ω^)「何事だお……一体」
その様子を見届けてから、互いの”団長”と思しき二人の騎士は空いた中央へと歩み出てゆく。
まず先に口を開いたのは、”御堂”の側の男だった。
(=[::|::|::]=)「────”神槍”と、見受ける」
大人と子供程の体格差があるにも関わらず、白銀の騎士は一切物怖じする様子も無く、
あくまで平静な表情を崩さぬまま、それに言葉を返した。
(‘_L’)「はて、私は一度として………そんな大それた事を名乗ったつもりはありませんが」
後ろに控える”御堂”の騎士達の間で、何事かがざわめいていた。
(=[::T::]=)(おい……あいつ、フィレンクトだぞ!)
(=[::T::]=)(奴が、”神槍”の……)
騎士達の間で聞こえてくるその声に、ツンがぽつりと呟く。
ξ゚⊿゚)ξ「そうだ……思い出した。あの人」
(´・ω・`)「知り合い、なのかい?」
爪'ー`)y-「味方……ならいいけどな」
-
中央で互いに見つめ合う二人の騎士───そこからは自然と、ごくりと生唾を
飲み込んでしまう事に意識してしまう程の緊張感が、周囲へと発散されている。
(‘_L’)「……ですが、まぁ仰りたい事は分かります。いかにも、私はこの
”円卓騎士団”が団長”フィレンクト=エルメネジルド”」
(‘_L’)「先ほどから、あなた方がこの街で騒ぎを起こしているという噂が
舞い込んで来まして、この場に参った次第です」
(‘_L’)「ですので、詳しい事情をお聞かせ願えますでしょうか?───御堂騎士団のご一行」
────”円卓騎士団”、ヴィップに拠を構える、聖ラウンジの守り手。
他者へと振るわれる為の力を良しとせず、民達の安寧を守るためにのみ戦う、聖ラウンジの巨大な盾だ。
(=[::|::|::]=)「魔術師ギルドからの要請を受けた。死霊術を研究していたという
そこの異端者が、この街に修道女と共に紛れこんだようだとな」
(‘_L’)「そうでしたか───では、その役目はこちらでお引き受けしましょう」
-
フィレンクトを名乗る騎士はそれに即答するように答えるが、それは、わざわざ遠方から
このヴィップへと足を運びこの場に参じた”御堂”の騎士達を憤慨させるに相応しい内容だ。
(=[::T::]=)「何だと貴様ッ!我らをコケにするつもりかぁッ!」
(‘_L’)「そうは申しません。ですが、ここは我ら円卓騎士団が治める地。
私どもなりの流儀で、その異端者とやらも罰しましょう」
(=[::|::|::]=)「………拒否する、と言ったら?」
(‘_L’)「その時は、遺憾ながら─────」
(‘_L’)「─────この剛槍”クーゲル・シュライバー”にてお相手致します」
”円卓”と”御堂”との間で、沈黙の睨みあいが始まった。
まさに一触即発のその状況は、恐らくどちらかが先に武器を抜く動作でも見せれば、
すぐさま戦闘の混乱が始まる状況だろう。
豪壮な鎧の奥から、沈黙の重圧と共に鋭い眼光を向ける御堂の団長。
それを受けて涼しげな顔をしながらも、瞳の奥底では蒼い炎を揺らめかせる、円卓の団長。
その場の空気すら凍てつかせる程の張り詰めた闘気が、満ちてゆく────
-
今日はもう集中力の限界が来た。
二話はあとちょちょいで終わるので、また次の機会に
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乙!
緊迫した場面にwktkしてればクーゲルシュライバーてwwwwww
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期待していた以上におもろいです
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ブーンがゴブリン依頼達成する話でジーンときた
こりゃあおもしれえ続き期待
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前に一度読んだはずが0話からいっき読みしちまった。
おもしれぇ
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>>411-414
歓喜でほぼイキかけました。
2時くらいまでに書き終えられれば、残りを投下しちゃいたい予定は未定
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ほぼイキかけ懐かしいなw
避難所で一番wktkな作品なんだぜ
ξ゚⊿゚)ξかわいいかわいい
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冒険物大好きな俺としてはこれとドラクエが2トップ
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嬉しい事言ってくれるぜ!ロスタイムがあるから、2:30には残りを投下しまふ
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寝かさねえ気かこいつ
読みたいが明日を考えると寝ざるを得ない だが読みたい・・・!
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4人共の内臓を握られたような感覚が、いつ終わるとも知れない永遠の時のように感じられる。
爪;'ー`)y-「おいおい……こんな所で、騎士団同士のドンパチが始まっちまったら……!」
(´・ω・`)「あぁ、間違いなく僕らも巻き込まれるだろうね」
ξ;゚⊿゚)ξ「や………やめ──────」
苛まれる緊張感に耐えかね、ツンが思わず大声を上げてしまいそうになった時だった。
外まで出掛かった彼女の言葉をせき止め、それより遥かに大きな声でかき消した、一言。
「───────引き上げだ」
このまま勃発するであろう戦闘に備えて身構えていた4人は、その言葉に呆気に取られた。
(=[::|::|::]=)「実に………苦々しい事ではあるがな」
退いたのは、意外にも御堂聖騎士の団長と思しき男の方だった。
(‘_L’)「賢明なご判断に、痛み入る所存です」
無秩序に力ばかりを行使するものとばかり思っていた一団だが、どうやら
騎士を名乗る以上、最低限度の線引きというものを守る頭ぐらいはあるらしい。
-
(=[::T::]=)「……団長、何故です!この痴れ者共を前にして、何故退かねば───」
(=[::|::|::]=)「貴様ら小童に、意見する権限を与えたつもりはないわッ!!」
撤収の命を受けても尚、荒ぶる気持ちを抑え切れない様子の部下達を、一喝する。
不平不満を垂れる部下が鳴りを潜めたのを見計らって、御堂の団長は続けた。
(=[::|::|::]=)「よかろう……この場は引き下がってやる。だが、これより詰め所に戻った後、
そちらへ向けてショボン=ストレートバーボンの罪状について詳しい、使者を出す」
(‘_L’)「ええ。そちらの任を引き継ぐ以上……こちらも総力を挙げて彼を尋問致します」
円卓騎士団───彼らもまた、必ずしもこちらの味方という訳ではないのだ。
死霊術士の烙印が押されたショボンの罪状は、潔白を証明するだけの材料がなければ拭えない。
ξ;゚⊿゚)ξ(ショボン……さん)
その身を案じたツンの視線を、ショボンは振り払う。
(´・ω・`)(覚悟は、していた事さ)
(‘_L’)「ですが……その裁決は、あなた方の意図するものと必ずや合致するとは、限りません」
付け加えられたフィレンクトの言葉によって、多少は救われた思いであったが。
-
どうやらこれにて───御堂聖騎士団の脅威は過ぎ去ろうとしている。
まだ自分達の状況がどう転ぶかはっきりしてないにも関わらず、ブーンとフォックスが安堵を浮かべる。
爪;'ー`)y-「心臓に良くないね……これだから、お上は嫌なんだ」
( ^ω^)「でも、なんだか穏便に済みそうな雰囲気だおね?」
来た道を次々と戻ってゆく御堂聖騎士団らの背中を見送りながら安堵を浮かべる
二人の冒険者の傍で、ショボン一人だけはいつまでも難しい顔をしていた。
それも、当然と言えば当然だろう。
彼にとってみれば、自身を尋問する相手が、御堂聖騎士団から円卓騎士団へと入れ替わっただけなのだ。
(´・ω・`)「だが……ここで円卓騎士団が出張って来てくれたのは、実に幸運だった」
( ^ω^)「本当、助かったお」
(´・ω・`)「まぁ、それは君達にとっての話だけどね───確信は持てなかったけど、
彼らが現れた時からこうなるような気は、していたよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……どうして?」
(´・ω・`)「よそ者の彼らが”円卓”を敵に回すような事が起これば、陰惨な宗教戦争の引き金だ。
大多数を占める各地方の領主や貴族を敵に回してまで、彼らの一存だけで争いはしないさ」
爪'ー`)y-「下っ端はどうだかわからんね……けど、どうやら向こうの大将さんは理性があるってこった」
-
(;^ω^)「でもその団長さん、めっちゃ殺気立ってるみたいだけどお……」
ブーンの言う通り、部下達が全員撤収した後も御堂の団長だけは最後にその場に残った。
確かにその巨躯の周囲に漂う殺気は、完全に息を潜めていた訳ではないようだ。
円卓騎士団と共に居合わすフィレンクト=エルメネジルド。
その彼に背を向けながら、やがて最後の部下が目の前からいなくなるのを待ってから、口を開いた。
(=[::|::|::]=)「────噂に名高い貴様とは、一度やりあってみたいものだったが」
腰元に結ばれた剣の柄を掴んでから向けられた言葉に対し、フィレンクトもまた
背中に背負う槍を掴みながら、御堂聖騎士団の団長に向けて返礼した。
(‘_L’)「………こちらにもその理由があるのならば。その時は、存分に」
(=[::|::|::]=)「………ククッ、食えぬ男よな」
背中越しにフィレンクトの顔を覗き見ると、再び振り返る事は無かった。
重い甲冑をかち鳴らせながら、巨大な甲冑は、遠くへ見えていく。
(───隠せてはおらんぞ?……羊の皮を被ったその下の、けだものの臭いまでは───)
-
一人ごちるような呟きを最後に残し、そうして御堂聖騎士団ら全員が4人の前から去る。
代わりにその場に残るのは、円卓騎士団────ヴィップの地を守る、紛う事無き正規軍だ。
ひとまずは、脱する事が出来た窮地だが、問題はここからであろう。
過激な異端審問に定評のある旧ラウンジ聖教とは違い、聖ラウンジに拘束される事になるのだ。
彼らの裁定は誰に対しても平等なものだが、かといってそれが決して甘い物だという認識は、
決して持つべきではないだろう。
(‘_L’)「………さて」
背後から歩み出てこようとした部下達を手で制しながら、フィレンクトは4人の前に立つ。
その彼の前に一歩を踏み出したのは、今回の騒動の発端となった、ショボンだった。
(´・ω・`)「此度の騒動……貴方達”円卓騎士団”を駆り出すまでになってしまった事について、
まずは深くお詫びをさせて頂きます」
(‘_L’)「一応は罪人である貴方に詫びられる義理は、こちらにはありません」
そう言って、フィレンクトがツンの方へ顔を向けた。
その視線にはっとして、彼の顔を覗き上げられる位置にまでツンが走り寄る。
(‘_L’)「今回の目的は貴方と……もう一つ」
ξ*゚⊿゚)ξ「お久しぶりです!………色々、聞いて頂きたい事があります───フィレンクト様」
(;^ω^)「この人と………知り合いなのかお?」
-
巨大交易都市ヴィップが聖ラウンジ教の力を借りて編成された、一国の騎士団長。
薄汚れた修道服を纏ったツンが、そんな権威のある人間と面識がある事に、ブーンは驚いた。
(‘_L’)「この私めがしばらくお会い出来なかった間に……随分とご成長されましたね、ツン様」
爪'ー`)y-「……さま?おいおい、何者なんだよ、この娘」
そのフォックスが叩いた軽口にキッと強めた睨みを利かすと、
こほんと一度咳払いしてから、厳しい口調で言い放った。
(‘_L’)「口を慎みなさい……この方は、今は亡き聖都ラウンジの司教。
アルト=デ=レイン様のご息女にあらせられるお方ですよ?」
(;^ω^)「なッ……なんかよくわからんけど……お」
爪'ー`)y-「要するに、まぁ俺達と違って、大層に育ちの良いご身分だってぇ事さ」
(´・ω・`)(………なるほど。僕を救った彼女の”奇蹟の力”にも、頷けるよ)
(‘_L’)「こんなに煤けた顔をされて……随分とご無理をしたのですね」
そっと白く長い指先をツンの頬へと伸ばすと、フィレンクトはそっと彼女の
顔を汚していた土埃を、優しい手つきで拭い去る。
なされるがままのツンはというと、それに甘んじて頬を紅潮させていた。
ξ* ⊿ )ξ「あっ……あの……まずはお話を」
-
(# ^ω^)「ちょっ!何のつもりだお、あんた!」
(‘_L’)「………」
そのフィレンクトの手を横から振り払って身体を割って入れたブーン。
目の前でいちゃいちゃと下らない茶番を見せられた事に腹を立てた彼の目を、数秒見つめた後───
無造作に伸びたフィレンクトの手が、ブーンのほほを両側から押さえつけた。
( _L )「何の……つもり?」
(;#) °ω°(#)「むぉッ!?……むぐっ、むむむぅぅ」
(‘_L’)「それは……こちらの台詞です。それでは───逆に聞きましょう。
貴方達冒険者二人は、一体何故このような場所にいるのです?」
顎ごと口を押さえつけられ、物を喋る事も出来ない。
驚くべき事に、じたばたと暴れるブーンの足はそのまま地面を離れる。
片腕で、さほど身長も変わらぬブーンの身体を、ぎりぎりと吊り上げているのだ。
色白で、線の細い身体つき───ブーンは先ほどまでそう思っていたが、違った。
甲冑の端から覗く隆起した筋肉は、恐ろしく高密度に鍛え上げられた肉体。
恐らくその膂力は、ブーン自身のそれなど軽々と凌駕するだろうという程に。
爪;'ー`)y-(………こりゃ、もう下手な事言わない方がいいな)
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起きてて良かった公文式
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