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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

1まるく:2014/02/16(日) 22:26:33 ID:fZg91gZ20
前スレが980を超えそうなので先立てしておきます。
SSを投降する際全部投下できるか、次のスレが立っているかどうか確認するだろう?
誰だってそーする 俺だってそーする。

埋めきるまではPAD5ですかね?

90中学三年生:2014/04/01(火) 20:51:26 ID:pFhpxiF60
ついに・・・ついに辿り着いた・・・!ここがハーメルンに転載される作品を作っているところか!
ここもたまに覗くようにしよう···。

91まるく:2014/04/02(水) 22:59:03 ID:2SkcvpNc0
いらっしゃいませ!
HNみるところ、自分の作品に感想書いてもらった方でしょうか?
自分の他にもさまざま作品が置いてあります。どうぞ楽しんでってくださいね。

92ストーム11:2014/04/03(木) 13:12:13 ID:B8sRiYyI0
ROM専の俺も通りますよっと…
ハーメルン、@wiki、そしてどくたあの動画…結構色んな所に進出していますが、原点はやはりココ!
まあその割にココの知名度は低いけど…まあいいや、サァいくか。
自分は観てるだけですけど、皆さん、これからも頑張ってください。

では、自分は世界が一巡するまでROMります…

93中学三年生:2014/04/06(日) 19:15:48 ID:assIsFF20
ひいい···もう中三なのに宿題終わってない···内申がああぁ···!




まぁ東方のss漁ってたから終わってないだけなんですけど。それにしてもR18スレはもちろん、イジメスレ(みたいなもの)
あったとは···!

94まるく:2014/04/22(火) 21:48:15 ID:TiyGEoEo0
さて、月末のそれには早いですが、一作書ききりました。
前述べ通り、深紅の協奏曲の中盤はこれでおわ…あれ、これ終わりじゃなくて始まり…?あれ…?
もうわかんなくなりました。
とりあえずいえることは「短編の方に集中しよう」
投下します。

95まるく:2014/04/22(火) 21:50:21 ID:wwR12Xww0
 長い長い数分が経ち、改めて4人は顔を合わせる。
 泣き腫らした二人の顔はどこも赤く染まり、昂った感情の大きさを物語る。
 もっとも、それ以外に『人の前で泣いたこと』が大きいことは事実だが。

「……すみませんね、みなさん。あんなに、子供のように泣いてしまって……人前に立つ身なのに、これじゃあいけませんよね」
「……いや、早苗は悪くないよ、しょうがないよ。一番悪いのはなんだかんだ理由をつけて自己保身に走ろうとするはたてだ、そういうことにしよう」
「マジっすか」
「マジです」

 同性同士だからか、受け止める側だったからか。すぐにいつも通りに話し始めているはたてと諏訪子、そしてそれは早苗の落ちた気を上げようとも見える。
 だが、その空気もドッピオには少々心苦しい。
 状況がどうであれ、人前で、女性の胸を借りて泣き喚いたことによる恥が彼の心で暴れ出す。

「…………」

 できるなら、今すぐにでも逃げ出したい。
 先に聞いた話を改めて自分の中で反芻して納得しようとする時間ももちろん欲しい。
 しかし一番大きいのはその話の前まで敵対していた、少なくとも自分はそう思っていたはたての胸の中で泣いてしまったこと。
 まだ一人で泣いていた方が、自分の精神的にも楽だったんじゃないか。

「いやまあ、しかしはたても隅に置けないね! まさかこんな子どもを手籠めにするたぁね。利己的な輩が多いという天狗なのに、どういう風の吹き回しなのやら」
「ちょ、洩矢様、何も目の前でそういうの言わなくてもいいでしょうよ、ねぇ」
「……ふぁ、そういえばそこは気になりますね」

 そんな彼に追い討ちをかけるように諏訪子は話を持ち上げる。
 早苗もそれを聞いて少し明るい声を出す。まだくぐもった声だが、諏訪子の狙いは成功している。

「……やめてくれよ……」

 もっとも、それがドッピオにとっていいことではないことも確か。
 今一番触れられたくない点に早々に食らいつく彼女らに恨みがましい感情しか湧いてこない。
 はたてがどう思っているかは知らないが、どう思っていようが、その点にドッピオは触れられたくはない。

「そっちが先に聞かれたくないことを聞いたんだからそれくらいいいだろう? 恥は掻き捨て、世は情け」
「今この状態のどこに情けがあるのさ……」
「十分有情だよ、ドッピオとやら。女を泣かせた男なんだってことを覚えておきな? それに、君は気にならないのかい?」

 そう言われてしまえば、いいえと答えたら嘘になる。ドッピオ自身も、急な彼女の心変わりが気にならないわけではない。
 だが、それを何も直後に本人の前で聞かなくてもいいだろうに、この神様は笑顔で訪ねてくる。
 その姿は、昼下がりにゴシップを見て楽しむ姿。

「いつもはくだるかくだらないかの瀬戸際新聞くらいなのに、当の本人が記事に乗っちゃいそうなことしちゃってさー」
「いやまあ、洩矢様。そのー、ねぇ。聞きます?」

 対して、割合まんざらでもない様子のはたての姿。

96まるく:2014/04/22(火) 21:51:31 ID:wwR12Xww0
「なんていうか、私と似てたんですよね。八方塞がりなところに救いの手を求めている姿。……あの時はこんなに女々しくしていたつもりはなかったんですけど、きっとあいつからしてみたらこんな顔をしていたのか、なー、なんて」

 少々の恥ずかしさを顔にだし、目線を外して頬を掻く仕草。小さな仕草は彼女の癖なのかもしれない。
 はたての回答に対して合点のいった顔をする早苗と諏訪子。そして二人は、声に出さずとも先を促している。

「あー、それに、あいつは口が悪くても何だかんだでこっちの面倒を見たりしてるし。憧憬みたいなの、ちょっと持ってたのかも。もちろんこういう男の子好みだけど……もういいでしょ?」
「えー」
「えー」

 話を打ち切ろうとするはたてに対して、二人は口をとがらせる。

「中々のインパクトもあったので、もっと聞いてみたいですね。私のいない間にどこまで仲睦まじくなったのか」
「おかんか」
「おい、それは絶対に言いふらさないでくれよ」

 これ以上三人に喋らせていては何にもならない。
 けれど、この茶化しあいは自分の心を抑える要因にもなった。別の心が浮かび上がってきているが、それはもうどうでもいい。

「せっかくの天狗の恋バナなんだから、もっと聞いておきたいじゃないですかー。幻想郷ってそういうの全然ないんですよ? ちょっとみんな自分に生き急ぎすぎてるというか」
「別に、そういった話題なら人里とか行けばあるだろうし、山の鼻高天狗とかはいつも発情、年中女募集してるけど?」
「そんな愛の無い男女関係なんていりません!!!」
「おい」

 痛くなってくる頭を押さえながらドッピオはまた声をかける。
 これ以上彼女たちの好き勝手を許してしまえば、自分の知らぬところでおもちゃにされてしまうに違いないだろう。

「そういうのはもういいからさ……気になることが」
「よくありませんよ!! ドッピオさんさっき気になるって言ったじゃないですか!!」
「言ってない! ……じゃなくって、さっきの話で気になる点があるから、それを答えてくれないか」

 むっとした表情で話す早苗は、先の悲しみが大分薄れていることを窺える。
 悲しいことがあったとしても昔の話。そこにいつまでも捕らわれていてはいけない、と考えていることがわかる。
 だが、ドッピオはそうではない。

「今から11年前って言ってたよね、2001年が。……いや、そこじゃないな。今が127季、早苗たちは122季にここに来た、と」
「そーですよ?」
「……何歳だ? あの日記の内容から垣間見るに学生だったろうけど、ここに来てから5年でその成りだとしたら随分小さいころに来たことになる。……その割には漢字も使っていたし」

 そこまで自分で話し、自分で口走った内容に違和感を感じる。
 何故イタリアでしか過ごしていなかった自分が日本語を読める? 思い返してみれば、命蓮寺でも人里でも違和感なく読み取れていた。
 今口に出している言語も、気がついてみれば日本語だ。

「……」

 そこで押し黙った彼を、鋭く見つめる諏訪子。
 それに気づいたのは、この中にはいなかった。

「とにかく、5年の歳月にしては早苗は成長しなさすぎている、と感じるんだ。それはどうなってる? まさかそれで成長期は過ぎているだなんて言わないよな?」
「い、言いますねドッピオさん……!」

 先ほどまでとは違う、それはドッピオが表に出していた恥の感情。
 その感情が早苗の顔を赤くし、胸を隠すように腕を組む。……別にそこは指摘をしていないのだが。

「あー、それは幻想郷の癖というか。長く楽しむコツというか」
「そ。永く永く楽しむという、外でできないそれがここでは行える」

97まるく:2014/04/22(火) 21:52:29 ID:wwR12Xww0
 問の回答ははたてと諏訪子から出た。

「どういうことだい、それは」
「厳密に言うと違うが、分かりやすく言ってしまえばここでは歳は取りたいときに取るのさ。妖怪は当然ながら、人間も少なからずね」

 諏訪子が答えると、はたての腰をポンとたたく。
 はたてはわかっていたかのように手帳から一枚の写真を取り出す。
 そこには蝙蝠の羽が生えた少女と髪型以外は今とほとんど変わらない巫女の姿。赤く輝く満月を背景に、二人が激しく弾幕ごっこをしている写真。

「これ、紅霧異変の頃。今から9年くらい前かな?」
「……本当に?」

 さすがに10年近くも経っていると言われて今と変わらぬ姿を取っているとなれば、理解の前に納得がいかない。

「誰だって、楽しいことはずっと楽しみたいじゃない? 妖怪がそれを願い、人間もそれを享受すれば肉体の衰えは僅かに歪む。その結果、肉体も精神もそれ相応に維持されるのさ。
 もちろん、だからといって成長しないわけじゃない。遊んでばかりの子供の時代はいつか終わる、その終焉をどちらかが理解すれば、人間は自然と周りに追いつくようになる」

 諏訪子が指を立てて解説するが、ドッピオの表情は変わらず理解に苦しんでいることを窺える。

「まだ遊びたいという『想い』が、外の世界で忘れられた『想い』がここで実っているというわけ。私たちが外に居た頃から既に友と日が暮れるまで遊んでいられるという時代ではなかった。
 子供でも、大人でも、風習や因習、慣習といった要因でその想いは踏みにじられ忘れられていった。幻想郷は、そんな『想い』も受け入れる」

 そこまで話し、諏訪子はドッピオの胸をトン、と叩く。
 その言葉と行為で、何か忘れていた物を思い出したような、そんな風が吹きとおったような感覚が身体を走る。

「誰かに教わったわけでもなく、誰かから教えられたわけでもなく、ここの皆はおのずとそれを理解している。もはや、それが常識。
 幻想の壁とは常識の壁。全てが逆になるわけではないけれど、『あるはずの無い希望』位ならあるかもしれない。……こんなところかな?」

 はたてが諏訪子に続き、話を締めくくる。
 もちろんそれに完全に納得したわけではないが、自分が雲に乗って移動する、といった彼女らの言う『あるはずの無い希望』に触れている以上、そういったものだと受け止めるしかないこともわかっている。

「……いずれ大きくなるからいいんです」

 口をとがらせながら、早苗は呟いていた。

98まるく:2014/04/22(火) 21:53:37 ID:wwR12Xww0


「さて、ドッピオとやら。ここから麓まで降りるには大分時間がかかる。悪いがここは赤色しかない神社と違って色立つことは苦手でね、男を泊めるわけにはいかない。
 さっきの話が本当ならば天狗に送らせるのも不安だから私がその役を引き受けてあげよう」
「へっ? いやいやいや、洩矢様にそのようなこと。それに、んなことするわけないでしょうよ、この私が」
 
 諏訪子が急にドッピオの手を引き、下山を促そうとする。
 確かに山の麓で椛と会ったのが正午ごろ、そこからそれなりに時間は経っている。もしそのまま下山に時間を使えば日は落ちてしまうだろう。
 ……あの時椛にはああ言ったものの、確かに妖怪の腹の中と変わらないこの中、夜闇を動くには危険かもしれない。
 先の発言があった以上、はたても何をするか、分からなくなってくる。

「天狗って若い男の子を攫って自分のものにするって聞きましたよ」

 早苗がにこやかに、ドッピオに説明するかのように話す。多分に意を含んだその言葉。

「それに、はたてにはウチの早苗を自分の我欲の為に利用した罰を与える必要があるからね。狂王の試練場クリアするまで返さないよ」
「え、勘弁してくださいよそういうのー。それになんですその珍妙な名前の物は」
「諏訪子様それ好きですよね……何周してるかわからないくらいやりこんでますし。……まあ、ドッピオさん。言うとおりさすがに夜に一人で行くのは危険ですよ。……ちょっとお泊めになるのは、その」

 にぎわう外野をよそに、確かに早苗は彼の身を案じてはいるらしい。そして、霊夢と違い『そういったこと』に抵抗があるらしい。

「さあさ、時間は待ってくれないよ。行くなら急いだ方がいい。早苗ははたてを確保しておいてくれ。逃がさん、お前だけは」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ、まだ」

 そう言うと諏訪子は強引にドッピオの手を引き神社を出ようとする。
 傍から見れば幼子の我儘に手を取られ、強引に連れまわされているようにも見える。が、ドッピオとて勝手に決められては困る。

「本当に知りたいことはここでは言えない」

 抗議の声を上げようとしたとき、それを見越したかのように、小さな声で諏訪子が呟く。
 そこから感じた印象は先までの得体の知れない神のような存在でもなく、早苗の保護者としての彼女でもない。甘言で人を堕へ突き落とす悪魔の様な。
 その先を聞けば、もう戻れなくなってしまうような囁き。まだ、何も始まっていないというのに。

「…………」

 その言葉を聞いた時、ドッピオの中で何かがざわめく。
 自分の中で抗いたい行動なのに、その何かが足を止めずに動かしている。そんな、矛盾。

「洩矢様、そんなに無理にやらないで私に任せれば、っ、がっ」
「諏訪子様の言うとおりに! ……大丈夫ですよ、諏訪子様は取って喰ったりしないですって。たぶん」

 何か鈍い音と共に早苗の大きく送り出す声が辺りに響く。おそらく、それは最初のやり取りとは逆になっているのだろう。
 ドッピオは、それに振り向くこともせずに諏訪子に手を引かれるままに足を運んで行った。

99名無しさん:2014/04/22(火) 21:54:44 ID:wwR12Xww0

「……どういうこと?」

 諏訪子に手を引かれるがまま、石段を下りて進む。
 繋いだ手から伝わる温度が運動からかじわりじわりと温かくなっていくのを感じて。

「言葉通りの意味さ。さっきのはたての話、不完全だったろう? その空いたスキマは私が知っているということさ」

 石段を降り切ったあたりで諏訪子は答える。

「肝心な所はわからない……大妖は知っているかもしれない……奴はそんなことを言っていたはずだ。そしてそれは正しい。外の者が幻想郷をも喰らい尽くす様な力を持っているとするならば、幻想は何のためにある?
 妖怪は人に恐れられる存在でなければならない。すごく簡単に言ってしまえばそれが存在理由。それよりも恐ろしい力を持つ者が外に居るとわかってしまえばこちらの世界の存在理由が危ぶまれる。
 長らくその存在を知っていながらも、誰も詳しくは知らなかった。『それ』がここまで大きな力を持つと思っていなかった」

 手を大きく広げ、仰々しい口調と身振りで演説する。その姿は、先の変貌ぶりを強調させる、支配階級の頂点に立つ者の纏う雰囲気。
 ……それを察知した瞬間、ドッピオは諏訪子に向かって駆け出し距離を詰めていた。

「わかってるじゃあないか、少年」

 と、と諏訪子が後ろに下がるように跳ねるとそれと共に先ほどまでドッピオの居た場所に多数の木々が生えてくる。何かしてくる、その予感が働きいち早く駆けだしていたからこそ、ドッピオはそれを躱すことができた。
 もし自分の予感を信じずにおとなしく聞いていたなら木々に囲まれ身動きが取れなくなっていたか貫かれていただろう。
 僅かな距離を完全に無くそうと、その離れた距離をさらに詰める。彼女に、息つく暇を与えずに。
 そんな彼を嘲るかのように、後ろに下がった諏訪子はそのまま地面に倒れこむ。

「何!?」

 そのまま彼女は地面に潜り込んでいった。まるで、水面にそのまま飛び込んだかのように吸い込まれていった。
 想像を超えた出来事に一瞬、隙が生まれてしまう。

「「ゾッとしたみたいね」」

 背後から、右後方左後方の両方から諏訪子の声が聞こえる。
 それとほぼ同時に、背後から飛び掛かるように両腕を抱え込まれ、その勢いで地面に叩きつけられる。先ほどの諏訪子とは違い、地面に潜ることはない。そこは固い固い石畳のままだった。

「がふっ!」

 身体の前面に衝撃が走り、体内の空気が吐き出される。
 冷たい石畳に這うドッピオの眼前に、ずるずると、諏訪子は這い出てくる。沼から現れる蛇のように。
 全身を浮上させると、うつぶせになっているドッピオを見下ろしながら、

「『宝永四年の赤蛙』」

100名無しさん:2014/04/22(火) 21:55:48 ID:wwR12Xww0
 そう呟くと、両腕から押さえて拘束していた二人がドッピオを仰向けにするようにひっくり返す。
 二人の諏訪子は、赤い霊体の様にうっすらと色を帯び、実際に存在しないように揺らいでいる。
 三人の諏訪子は、くすくす、くすくすと静かな笑みを湛えていた。

「……何をする気だ? 憂さ晴らしのつもりか?」
「そんな! そんな頭の悪いことをしたいわけじゃないよ。もっとも、人によってはもっと頭の悪いことと言うかもしれないけどね」

 そう言うと、本体である諏訪子がドッピオの胸に顔をうずめる。

「んっ……すぅ、んはぁ……!! んんっ、はっ……!」

 彼の服の上から、激しく、それを貪りつくすかのように香りを味わい始める。
 聞こえる吐息から、熱くなり抑えきれない劣情をありありと感じられる。
 その姿からは、外側だけ同じで中身は全くの別人であるかのように、見た目は幼い子供にしか見えないが、本質はまるで別であることを嫌でも感じさせた。

「はぁ、ぁ、久しぶりだ、長らく味わっていなかったよ。この雄の香りと、どれだけ落としても拭いきれない、染み着いた血の香り。……興奮する」

 顔を上げた彼女は、顔を紅く上気させ、求める様な上ずった声で語りかける。
 薄く開いた目、唇から出る舌は上唇をなめずり、

「だが、まだ足りない」
「!? っ、がっ」

 変貌にあっけにとられていたドッピオの首にその小さな両の手を伸ばし、へし折るかのように力を入れる。

「ぐ、あっ……!! ぎ、ぁ……ぁ!!」
「絞められて、落ちる瞬間が最も気持ちいいんだ。……知らなかったでしょう? 少しずつでいいから、頭から抜けていく気力と共に最後の抵抗を示してみなさいな」

 ぎりぎりと、容赦など全くなく。
 その細腕にどれだけの力がこもっているのかと、もし当人でなければ何の感情も抱かず考えてしまうほどに。
 今、ドッピオの両腕は変わらず赤い霊体の様な諏訪子に押さえつけられ全く動かすことができない。
 それでも、このまま、こんなところで。

「ぎ、ん、ぐぅっ!!」

 動かない両腕の代わりに、見えない何かが諏訪子の手首を掴み、そのまま握りつぶすかのように力を加える。
 視覚として存在しないにも関わらず、確かにある何かは万力の様な力で細い腕を砕こうとする。

「出したね、『スタンド』を」

 そのまま両の腕を潰されることを受け入れるかのように、諏訪子は特に何もしなかった。ただ何もせず、ドッピオの首を絞め続けていた。

「ようやく出してくれたというべきかな。……存在しえない、認知の無い。そんな外の力、幻想郷をも揺るがすことのできる……こんなものじゃないはずだ。さあ、私に見せてみてよ」
「ぐ、そぉ……っ!! が……っ!!」
「確かに感じるんだよ、でも違う。『この身体なのに人を殺した事があるのは君じゃない』。それは確かなんだ!
 さあ!! もっと! もっと!! 私は見たいんだ、君の力を、味わいたいんだ、君の身体を!! 偽りの身体なんざ捨てて、私に感じ  てちょうだい!」

 一声ごとに、諏訪子の力が強まっていく。身体もどんどんと前にのめり、自らの体重全てがその両腕に掛るように、その苦しむ顔の全てを収めようとなる。
 対して、ドッピオは視界がぼやけ、徐々にスタンドの力も薄れていく。諏訪子の両の腕に刻む腕の痕も、それに合わせて薄くなっていく。
 そして、体の力も抜けていき、意識も薄れ、やがて閉じていく。

101名無しさん:2014/04/22(火) 21:56:34 ID:wwR12Xww0


 絶頂に達しようとしていた諏訪子が気が付いた時、そこには地面に手をついている自分の姿だった。
 そしてそれは自分の分身も同じ。押さえつけていた少年の姿はどこにも存在しなかった。
 次に気が付いたことは三つ。自分を覆うような影、それにより自分の背後に誰かが立っていること。
 もう一つは、その誰かが自分の首根をがっちりと掴んでいること。先まで自分がやっていたように。
 最後の一つは、ドッピオの首を折らんばかりに握っていた両腕、その腕を砕かんばかりに掴んでいたスタンドによる痕。それに合わせて砕けた自分の腕。

「……? がぶふっ、……」

 わからないまま、自らの腹部が何かに貫かれる様。
 大量の血と臓物が前面に飛び散り、ドッピオが倒れていた地面を汚す。
 貫かれた穴から飛び散るには足らず、衝撃で顔まで逆流してきた血が口や鼻から飛び出、垂れる。
 そこまでして、分身の視界に入り、ようやく共有している感覚が自分を攻撃してきた正体を知る。
 そこにいたのは、逞しい肉体、どこまでも深い闇を見てきた暗い瞳、それでも淵から立ち上がろうと、前に進もうとする覚悟の意志。

「……キングクリムゾン」

 今までの様なふらついた足取りではない。明確な意志を持って目的の為に歩く、そのための足。
 ディアボロは、そこに立っていた。

「……なん、て……いつか、ら……」

 わずかに残る体内の空気が、諏訪子の血でかすれた声から漏れる。
 そんな明らかな重傷状態でもディアボロは全く警戒を解かずに見つめる。
 それは当然。本体である身体が傷ついてもその分身は全く傷ついていないから。ディアボロからすれば、その分身たちからいつ次の攻撃が来てもおかしくはない状態。
 だが、諏訪子からすれば『当人が何もしていない状態』で『質量をもった何かで攻撃を行った』という状態。

「このまま殺してもよかったが……おそらく人間とは違いこの程度では死なないだろう。その点においては信用する。それより、聞いておきたいことがあるからな」

 掴んでいる諏訪子ごとスタンドを手近に戻し、左手は首、右手は背中。足で腰を踏みつけて、そのまま地面に押さえつける。
 立場は完全に逆転した。

「……確か、に。神殺しには及ばないけど、このままじゃあ抵抗すらも、ぼほっ、できない、ね……」
「……想像以上に元気そうだな。恐ろしいものだ」
「あは、口だけね。……答えるのも辛い。そういった意味での抵抗はもうしない。だから、あれを戻してもいいかな? 少しは力が戻って、話しやすくはなる」
「…………許可する」

 どうも、というと二つと分身が消え失せる。そして、その力は諏訪子に戻ったのだろう。僅かだが、押さえつけている諏訪子の体が力を増したように感じる。もっとも、傷は戻っておらず確かに抵抗しきる力まではないようだ。
 ディアボロは辺りを見回す。周囲は閑散としており人気は感じないが、同時に隠れる所も見当たらず尋問をするには不向きである。
 一連の流れをもし最初から見られていたのならば――もちろんそれはディアボロが良しとするわけではないが――まだ諏訪子から仕掛けてきたと言い訳はできるがここだけを見てしまえばどうにも弁解はできない。

「……安心しなよ。ここは妖怪の山と守矢神社との領域の空間地帯だ。本当に通りすがりがない限りは誰の目にも止まらない。私と一部の天狗以外は空間の存在を知らないし、ここで何があっても咎めない。悪巧みには便利でしょ?」

 その考えを察したのか、血に濡れた顔を歪めて諏訪子が話す。
 確かにはたても同じことを言っていた。一部の天狗が既に知った顔なのも、近隣にいることを知ったことも、それはいい都合である。

102名無しさん:2014/04/22(火) 21:57:49 ID:wwR12Xww0
「聞きたいことが多すぎる。何から聞けばいいか整理する必要があるが……まず聞こう。お前は私をどこまで知っていた?」

 少なくとも命蓮寺の者たちは知っているようには見えなかったし、知っていてそれを隠しているようにも見えなかった。白蓮以外は。

「お前は『スタンド』の事を知っているようだ。だが、どうやら名前だけらしい。……私がそれを持っていることを知っているなら、他には何を知っている?」
「……答える前に聞いておきたいけど、私も君の事で聞いてみたいことがある。それは、いっ、ぎゃああああ!?」
「答えてもいいなら答えてやるが、自分は相手の事を知らないのに、相手は自分を知っている事が私は嫌いなのでな。仕返しはこれだけだ。お互い仲良くしようじゃあないか」

 諏訪子の腹の傷を踏み躙りながら、ディアボロはそれを解答とした。
 自分に対しての冷酷な瞳、手段を選ばぬ残忍な心。

「……あっ、……いい、ね、ぇ……責められるのが趣味ってわけではないけど」
「……答えるのか、答えないのか、どちらだ?」
「ぐああっ!? 答える、答えるから、足どけてよぉ!」

 諏訪子の悲鳴が辺りに響く。……確かに、聞かれてしまうのはまずいことではある。
 まだ罰を与えなければ気は済まないが、それより用件を済ますことが先ではある。

「うぅ……、あぁ……。どこから話すかな」
「時間稼ぎなどを考えるなよ。解放するのが遅れて困るのは自分自身だからな」
「解放してくれる気なのは助かるけど……そうじゃないね。……ざっくりだけど、はたての話の続きから話そうか」

 躙る程、開くごとに口から血が垂れ、辺りを塗らす。

「幻想郷の中で、ほとんどスタンドを知っている者はいない。今までに能力を持ってきた者も少なくとも私は知らない。伝聞でもね。
 そんな中、先の事変だ。……それはおそらくスタンドによるものだと考えている。……だから、そのケースを呼び込んだんだ、ここにね」
「……続けろ」
「……続けろって言っても、私が知ってるのは大体それだけ。その呼び込まれたケースだって気づいたのは実際に会ってからさ。……私は外の世界の極悪人、とだけ聞いていた。
 だからあんなちんちくりんが来たときは全く気付かなかったけど、話や素振りを見てそれに気づいた。……まだ外見しか見てないが、良い男じゃあないか」

 いっぱいに首を回し、視線を片寄らせてなんとかその顔を見ようとしている。
 倒れた状態では見えていないのだが、分身から共有したその姿と、今僅かに見える逆光で見えないディアボロの表情は彼女に十分の好奇を感じさせている。

「スタンド、については確かに私はよくわかっていない。使用者の精神に依る像、それによる特殊な力。それがベースであり君がどんな能力を持っているかは知らない。……さっき見た感じだと、知り合いと同じような能力みたいだがね。
 過去、私たちがまだ外に居た時代、早苗の生まれる前にそれを示唆した老婆が早苗の父にその力と、それを使う何かの集団に誘っていたよ。あまりの不気味さから断っていたけどね」

 説明を聞きながら、過去を顧みる。
 スタンド能力を開花させる矢。早苗が生まれる前。示唆する老婆。それがどれだけ離れていたかはわからないが、一応符号は合致しなくはない。

「そこまで正直に話してくれることには感謝するぞ。……次の質問だ。私をここに呼び込んだ者は、どこにいる? ……おそらく、ヤクモユカリ、という人物だが……いや、妖怪か」

 今までいくらか話に上がってきた、八雲紫。博麗神社で聞いた時にはアリスより力のある者、程度の認識だったがはたての話ぶりから『知っていて当然』と思えるほどの者。
 また、先の事変について『全て知ってそう』と表現していた。おそらく、その事変に類する、対抗する力を持つ者の一端であるはず。

「それについては、上手い答えを持っていない。奴はどこにも存在しているようで、どこにも存在していない。神出鬼没の妖怪だ。探そうとして会える者でないが、会いたくないときには顔を出す。……そんな奴だ。ただ」
「ただ?」
「この空よりさらに上……冥界の中、白玉楼には奴の友人、西行寺幽々子がいる。同じ程度に喰えない奴だけど……紫に近づくのであればそいつに近づくのが一番、かなぁ」
「…………冥界、まであるのか……」

 さすがに様々な出来事が起き、やや感覚が麻痺してきていると思えるほどだが、さすがに死後の世界まであるということには驚かされる。
 もっとも、ディアボロにとってそこはたどり着くことすらできない世界だったのだが。

103名無しさん:2014/04/22(火) 21:59:35 ID:wwR12Xww0
「……最後の質問にしよう。私の能力は、その紫が解除したと考えてよいのか、それとも別の者が解除したのか」

 一番知りたいこと。
 それを感付かれたくないからという心が、この質問を最後まで持ってきた。
 自分を縛り続けていた鎮魂歌の力。死ねばまた再発するのか、という疑問もあるが、そもそも死に至ることがないまま時間が過ぎている。
 人間を越えた力だが、それを超える者がいくらでも存在するこの世界。……現に今足元で転がっているのも神の一柱であるという。その力を解除したものがいるのかどうか。

「……解除? 何のこと?」

 だが、その質問に対しては諏訪子は知らなそうな素振りを見せる。
 今まで素直に答えていた態度と同じく、素直に知らないといったような態度だ。

「隠すことは許可しない」
「いや、ほんとに知らない。何が君を縛っていたのか知らないけど……もし何か、それに境界を設けられそうなものなら奴はそれを弄れるだろうね。紫は境界を操る程度の能力を持つ。
 空と海といった、物理的な境界から現と夢、そう言った概念的境界まで。幻想郷を作り出した当人だ、何ができてもおかしくはない」
「……想像以上、だな……その、ヤクモユカリの事実は」

 舐めていた、正直に。心のどこかでは、自分の力を用いればどのような事態も予測し回避できる。故の自信があった。
 もしその話をそのまま受け入れるのであれば、自分は全くの勝ち目はない。また、今までに聞いた全てのおかしな事柄には納得できる。
 言うなれば、鎮魂歌の能力は生と死の境界を操り、あやふやのままにしておいた、といったところか。言葉の壁、とも言われるほどの言語の問題もその力を使えば簡単な設問だ。……サービスのつもりだろうか?
 だからといって、それに恐れて足を止めることはないのだが。

「……お前から聞くことは、以上だな。最後に」
「……?」
「私の事は誰にも言うな。私に関する、全ての事を。今以前に知っていたことも、不用意に広めるな……できるな?」

 できなければ、今ここで殺す。
 その意図は十全に詰めた。つもりだが、元よりこの状態で生きていられる存在だ。自分に、本当に彼女を死に至らしめることができるかはわからない。
 そして、本当は消せるのであれば消し去りたいが、その先を考えると少々骨が折れる。諏訪子はドッピオと離れ、そして帰ってこない。天狗は支配下に置いてあり、並の妖怪では天狗には適わないとと椛の談。
 諏訪子に従う早苗と、まだ見ていないが同格であろう神奈子という神。それらをドッピオの状態で敵に回すことはしておきたくはない。

104名無しさん:2014/04/22(火) 22:00:05 ID:wwR12Xww0

「……してもいいよ。だけど、それは約束。脅しているつもりなら今ここで必死の抵抗をしてあげるよ?」

 それを読めたか、諏訪子は顔を歪ませて答える。その歪みは、悦楽を含んだ、敵対の意志も感じ取れる。
 こう出てくることが、ディアボロにとっては好機だ。その先を促すように、口を開かず待つ。

「抱いてよ、君を私に感じさせてよ。久しぶりなんだ、私が満足できるような男が来たのは。……ねぇ、いいだろう? それとも、私の見た目じゃ君が満足できない?」

 提案した見返りは、予想は付いていた。……本当に要求してくるとは思わなかったが。
 確かに今まで男性で力のある者は少なかった。人里であった霖之助も線が細く、この女が喜ぶような人間ではないだろう。

「……悪いが、女に対してそのようなことはしないことにしている。痛い目を見たのでな」

 諏訪子に対して、外見だけであれば何の感情も抱かないが、精神や振る舞いはおそらく一流の娼婦に劣ることはないだろう。おそらく、欲求を全て叶え自らに陥らせるくらいはできると見える。
 だが、あの忌まわしき出来事が、その過去の過ちこそが全ての原因。あの娘さえ生まれていなければ。

「……子供の心配なんてしなくていいよ? もう年中安全日だ、気に入ったら作れる」
「そういう問題じゃない」
「……じゃあさ、せめて顔を見せてよ。誰にも言わない。君を、私の心に刻んでおきたい」

 これには、少しの間を置いてからスタンドによる拘束をやめる。そして、今までほとんど動かしていなかった自身の身体で、諏訪子の身体を仰向けにする。
 その顔は血にまみれてとても見れた顔じゃないが、それでも、喜びと悦びの表情をしているのがわかる。

「……ああ、理解した。さっきの違和感。何でさっき感じ取れなかったのか。……そっちの身体が本当の身体。だから、どこか見せかけの様な感じだったんだね。
 ……自らの為ならばいくらでも他人を使い捨てられる。いくらでも手に血を染めることができる。拭い去れなくなるほどの血の匂い……ふふふっ」

 実際に相手にしなくても、『自分に気を向けていてくれている』だけで舞い上がる女もいる。
 最後に見せた諏訪子の笑みも、それに近しい物だった。

「……行きなよ。私の事は放っておいてくれてもいい。むしろその方が互いに助かると思うよ。君が欲するであろうものは私は全て出したし、私は、まあ、満足ということにしておいてあげる、から」

 見れば、腹の傷は少しずつ蠢き小さくなってきている。それでも十分すぎる大穴は空いているが、やはり殺すには足りず、殺しきれるかはわからないといったところか。
 手持ちにすることができれば、まさに最高の駒になることだろう。

「……当然だが、そこではないな……」

 ここにいるとだんだん自分も違うものになっていく気がする、とディアボロは感じた。今までの現実から乖離しすぎたそれは、やはり感覚を鈍らせてきている。
 相手は神だ。自分は人だ。神を求めようとして地に落ちる逸話は、なんであったか。
 そんな逸話では苦労して手に入れた翼を、いともたやすく自分は扱えるようになっているが、それは違う。
 違うのだ。

「見抜け」

 そんな矛盾を持ちながら、その先を向く。それは、高い山よりさらに高い、彼方空、雲の上を目指していた。

105名無しさん:2014/04/22(火) 22:01:07 ID:wwR12Xww0
------------------
「ただいまー」
「お帰りなさい、諏訪子様……どうしたんですか、その服!」
「あーうー、転んだ?」
「なんで疑問形なんです!? もう……お着替えなさってください。私、繕いますから」
「助かるねぇ。はたては?」
「サイコロ何度も振って、今のうちに強いキャラ作らないと、って頑張ってますよ。ボーナスポイント13でた、ってさっき喜んでました」
「一発振りだ」
「あ、はい。伝えておきます」
「よろしく。……ごめん、私少し寝るよ。服は本殿の前に置いておくから」
「え、また寝るんです? ……まあ、諏訪子様がそういうなら」
「うん、お休み」

 あくまで普段通りに、あくまで普通に。
 元々欺くのは得意だから、早苗もそれには気づかなかった。

 本殿の中に入り、誰もいないことを確認してから。
 腹を抱え、うずくまる。額には小さく汗が浮かび始める。

「ぐぅ、うぅ……」

 身体を苛む猛烈な痛み。肉体だけではなく精神から削られる苦痛。
 あの時、嘘を言った。もし彼がそれを知ってしまえば最悪自分の手のひらだけで収まらないだろうから。
 スタンドは、神殺しの武器に十分になりうる。神といかなくても、精神を憑代とした妖怪たちを滅ぼす退魔と十分になりうるだろう。
 精神から成り立つ像。単純な力をどれだけ持っているかを試してみたが、これほどとは。

「うぐ、ぅ……へ、へへへ……」

 笑みがこぼれる。
 神遊び、巫女との弾幕ごっこも楽しい物だった。ごっことはいえ、誰も彼もその一瞬では自分の存在を賭けて戦っているのだ。
 でも、彼の力は違う。同じだが、それはごっこ遊びではない。真剣な、命のやり取りなのだ。互いに交わしたのは一撃、けれどその一つにどれほどの存在を賭けていたか。

「どうだ、八雲の……!! 私が一番だ、唾付けたのは私だ、女狐めぇ」

 スタンド能力がどれほどの脅威を持つか。それを調べるのは彼女の役目であり、主人のそれとは違い、純粋に危惧していた。
 が、その別諏訪子と同じような劣情をディアボロに抱いているのを隠していた。同じ考えを持つ者、互いに腹に一物抱えている者だ、何かを隠そうとしていることがわかるのだ。
 諏訪子がその細腕で大樹をちぎり取れる様な力を加えても、首を折るにも至らなかった。
 生半可な攻撃では傷つかぬこの身体をも、やすやすと貫いた。
 精神性を織り交ぜた、妖力や巫力といった力を交えては効果が薄い。また、相手にはそれを破る力がある。
 ……違う、精神そのものが像となっているのだ。それが無意識に肉体を守っている。物理的な力から外れている妖怪の力では、圧倒することができない。対等に至れる。
 試していないが、精神の像同士がぶつかり合えば、そのダメージは肉体に反映される。もっとも、砕けきったこの両腕、握られているという感覚は全くなかった。感じ取れもしなかった。

「……どうでもいいや、今は」

 そう言ったことを考えるのは今を担いたがる奴らだし、それは既に行っているだろう。
 確かに幻想郷の脅威になりうる、が彼がその器足るかはわからない。
 自分の胸に手をやる。痛みとは違う甘い感覚がぴりぴりと走る。身体を治すための鼓動とは違う、もっと別の感情が体幹を駆け巡るから、鼓動も早くなっているのがわかる。

 ―――久しぶりに、一人でしようかな。

 す、とわずかに夕日が差す本殿が暗くなる。諏訪子が周りと隔絶させ、一人の空間を作り、その中で横になる。
 時間が、また経った。

106まるく:2014/04/22(火) 22:12:45 ID:wwR12Xww0
最初だけタイトル入ったが以降は名無しになってしまった。しまった。ぐぬぬ。
というわけで投下は以上になります。
……これセーフですよね?直接描写ないし。
こんなケロちゃん知らない!って言われるかもしれませんが、自分はこのような印象しか抱いてません。
ディアボロはただ戦いに強いから、というわけではなく。裏があるから強い、女性はそんなのに惹かれてしまう。というの、大役は諏訪子様。
そう言ったところでの強さのかけらを表したかったのでこのようになりました。致してませんけど。

ディアボロはワンパンマンです。原作でもおおよそそうですし。
…企画、気合、入れて、行きます!

107中学三年生:2014/04/23(水) 18:27:27 ID:rVPoQY5M0
まるくさんお疲れ様です。









諏訪子···。まぁ強い男が誰一人いないしね・・・「しょうがないね。」

108塩の杭:2014/04/24(木) 19:45:51 ID:bd/qn7G60
お疲れ様です!

こんな諏訪子様みたことねえ…実際はこんな感じなのか…?

ボスの強さはただの強さでなく、裏をもった強さ…そういうのいいですよねぇ。

109中学三年生:2014/04/24(木) 20:32:32 ID:Zlmnfg6I0
パチュリー·ノーレッジ主演、「紫モヤシは動かない」絶賛放送中(もちろん嘘)!

110まるく:2014/04/25(金) 09:43:51 ID:jUT88zgg0
感想ありがとうございます。

中学三年生さん>
雲山「チラッ」
お前は雲か。

塩の杭さん>
組織を束ねている者として、DIOと似たような感じですが(ヴァレンタインはそもそも表向きに大統領なので無しとして)
部下にまったく姿を出していない状態で長として君臨するディアボロ、むっちゃ出しまくって長としてDIO。
威圧も主でしょうけど、姿を見せることでのカリスマ性を感じさせるのもあると思います。
ディアボロはそうはしませんでしたが、それがないとは思えません。ジョジョは主人公も悪訳もモテるのだ。

諏訪子はまあ、自分も薄い本でしかこんな諏訪子見てないので実際はこうではないと思われます。
けど邪神で蛇神ですし、蛇は男性を表すそれとみられるし……関係ないか。そういった、裏で男を手玉に取って遊んでそうなイメージはあります。
神奈子とかは堂々と侍らせそうですしー。もうなんかイメージとか今更感がgg

111どくたあ☆ちょこら〜た:2014/04/25(金) 17:34:02 ID:0Q/ihTk.0
まるくさん、投稿お疲れ様です。

はたての心変わり、スタンド使いの頑強さ、歳を取らない少女らへの考察、一挙に回収されましたね。
魔力的なパワーでブーストされた妖怪や神々の攻撃は、スタンド使いの精神力に阻まれる。山をも崩す剛力が、細首一本へし折ること叶わない。
吉影vsフラン戦を書いていた時期からずっと私が悩まされていた
「ジョジョキャラ側の耐久性を上げないとバトルが成立しない」
という問題を、まるくさんは見事に解決してしまわれました。目から鱗とはこの感覚なのだと言葉でなく心で理解した!ありがとう…それしか言う言葉が見つからない……
……この設定、是非とも私の物語に取り入れたい!…本気でそう思うくらい魅力的なアイデアです!

全世界を滅ぼすような人間存在が発覚してしまえば幻想郷の滅亡に繋がる、だから紫が隠匿した。一部の大物はそれを知っていて黙っている、ディアボロはその観察サンプル、ということですね。

ドッピオはセッコの能力についてボスから聞いたり、実際に捕らえられたりしていたので、諏訪子の地中潜航にも対応できそうな。
以前仰っていた「ディアボロと組むなら小傘か諏訪子」、まさかここで回収されるとは。
祟り神vs帝王、圧巻の迫力。読んでいる最中は赤黒く染まった背景の中で、血涙流し舌舐めずりする諏訪子と陰に塗れたディアボロが欲望と殺意の焔を散らすイメージが焼き付いて、匂いまで感じ取れるほどでした。
エンヤ婆が早苗の父と接触した、というのは、今後本筋には絡んできますか?吉良親父もDIOの部下だったという裏設定が存在するので、結構夢が広がりますね。

金と恐怖でどんな相手をも屈服させられる、かつてその傲慢さがブチャラティの決定的な離反を引き起こしましたが、ディアボロもようやく弁えることを覚えたようですね。

初めての相手は女狐ではないッ! この諏訪子だッ!ーッ
荒れ狂う憎悪は劣情の裏返し、まったくこれだから乙女心はッ!

次回、ディアボロ白玉楼襲撃。【GER】の呪いがまだ効力を残しているならば、幽々子の『無敵の能力』にも対抗し得る。しかし、もし消滅しているのなら…
紫の『能力』が【GER】をも上回るのか、もしくは、【GER】は『対峙した相手の意思と能力をゼロにする』だけで、誰か他の者が『解除』しようとする意思と能力は無効果できない、ということか…どっちに転ぶかによって、大きく展開が左右される分かれ目ですね。
次回、そして短編、心待ちにしております!

112サイバー:2014/04/25(金) 19:00:58 ID:YmM.CV0o0
まるくさん、投稿お疲れです、

企画企画と言っていましたがサッパリやってませんねww(俺が言えることでは無いが)
さて・・・俺も明日には投稿しようかな・・・とか毎日思ってます、結局できないですけど
どうでもいいんですけどさっき自分ツイッター始めたんですよ、
さっぱりフォローしてくれる人がいないのって悲しいですね、まあどうでもいいんですけど

113まるく:2014/04/26(土) 00:11:36 ID:oFuj5qbE0
感想ありがとうございますん。

ちょこら〜たさん>
急いで回収しました。腰を落ち着けてこの辺り話せるのはここくらい…かも。
スタンド使いと幻想郷妖怪たちの戦いについての設定は適当に思いついたものなので、穴があっても許してくださいくらいの勢いでした。納得されていただいてるようで何より。
戦いになった以上ごっこ遊びでは絶対に済まないので、1部2部における人間を越えた相手に対抗できる力、としてこのように解釈しています。
あくまで対等まで引き上げるだけなので、当然萃香や勇儀の鬼パワーだったり吸血鬼姉妹の神話武器など喰らえばよくて重体くらいにはなるでしょう。ああは書きましたが、諏訪子は肉弾能力は低そうです。神話大戦で渡り合ってるからイメージだけで低いわけじゃないでしょうけど。
また、意外と妖怪以外の攻撃には弱いということにもなります。原作でもスタンドを介した遠隔攻撃(ピストルズなどスタンドが直接銃を使ったりするタイプ)は本体が喰らえば普通にダメージ負ってますし、スタンドで防御するシーンはあってもそれでスタンドがダメージを喰らっているシーンが確かなかったはずですし、きっと直接攻撃した方が効くことを知ってるんでしょう。
DIOが波紋対策に壁を吹っ飛ばし、その破片をジョセフはハミパで防ぎきれずに喰らう…くらいしかなかったかなーと、ハミパの防御能力が低すぎるだけかも知れませんけどね。本体叩けば早い。

ドッピオは確かに知ってますが、基本スタンドは類似した能力を持ちません(ラスボス勢に目を背け)
ので、「他に似た能力を持つ奴がいたのか」という驚きと、諏訪子のメインは後ろからの奇襲。また、急な展開にドッピオも予知を見れていない。
これらの点が対応を鈍らせてしまった理由ですね。特に、予知は『見る』というワンクッションがあるのがすごい弱点だと思います。コミックスの展開の都合か、ほとんど弱点らしく書かれてませんでしたが、メタリカがもっと攻勢強ければ見てる間に負けちゃうって。
しかし、よく自分の言ったこと覚えられてましたね。はい、諏訪子でした。そこまで読み込んでいただいて本当にありがたい…!これでも一番力を入れて書いたところです。

エンヤ婆のそれは、……どうしましょう;;
このまるく、伏線っぽいのを書いておいてそれが使えそうになったら回収するというとんでもない幼稚プレイで書いているので、本筋には、ちょっと、絡んでこないですかね…
そこで頷いたりしたif物とかなら十分に影響するでしょうけど、早苗パパもノーと言ってしまいそこで終わりです。エジプト外だからDIO以外が勧誘に回ってる、所までは考えましたがエンヤに任せるのきつくね…

あくまで仕事ですから、彼を監視するのは仕事ですから。悪いやつだから私も好きじゃないんです、悪党はこの世界に…
ああああああああのヘビカエル何してるんだああああああああ!!!!
的な。……乙女心?
傾国の美女とも謳われた九尾ですし、多少はね?

GERに対しての回答も、用意してあります。きっと、「あー、確かに」的な納得が得られると思いたい。
自分は紫の能力は最強万能と思ってますが、「こういうところで小回りが利かないのは面白いんじゃないか?」というようなところもいろいろ考えてます。幽々子も十分チートだけど、さて。
楽しみに待っててください。

サイバーさん>
明日には原稿…明日には原稿…残り5日…
同人作家さんが締切1週間前なのに原稿が白いことを自虐したのを見るたび、こういう気分なんだろうなと心が。
企画、やってるもん!ほんとだもん!
残り4日…職場に隕石でも落ちてこないかな。
ツイッター、フォローを増やすならやっぱり活動を増やすことが一番ですね。どこかに自分のプロフを乗せたり、有名どころの発言をRTしまくったり。
自分もやってますけど、フォロー自体はリアル友人とBOTくらいしかいませんしね。

114どくたあ☆ちょこら〜た:2014/04/26(土) 18:56:46 ID:B7rTLDdU0
なるほど、波紋と同じく人外への弱点攻撃、と。
スタンドで石を投げつける方が効果的な場合も多いですね。今月号でも石で殴りつけてダメージを与えていましたし。
『見る』隙が生じるという弱点は、(私事で申し訳ありませんが)前作中での慧音先生が輝之輔らに突かれてました。【エピタフ】の場合は髪に投影されるので隙は一瞬でしょうが。
ネタや伏線は拾い尽くすように読み込むことが作者様への敬意と感謝の表現と思っておりますので、今後もしつこいくらい読み込ませていただきます!

伏線ばら撒いて後からさあどうしようは私もよくやりますw もっと最悪な『後で伏線を追加する』という禁じ手までやりましたし、それができるのがネット媒体の長所、と自己弁護

紫は西行妖を手に負えなかったり、過去に本気で月に挑んで敗北したりしてるので、私の中では割と弱点のある力という解釈です。『小道』とか【遺体】のパワーに対してはどうしようもない、くらいには。あくまでも私の作中では、ですので、原作基準での強さ議論はやらかすつもりはないですが。

…き、企画、お身体にご無理の無いよう……(汗)

画像投稿場にまた懲りずに四コマを投下しましたので、よろしければどうぞ〜
今夜あたりにもう一本投下する予定です。

115名無しさん:2014/04/30(水) 19:07:31 ID:iiRLKzGk0
ディアボロとドッピオでは同じキングクリムゾンでもスタンド自体の性能はやっぱり違うのですか?
体全体と腕だけでは精密動作性は格段に違いそうですけど・・・

116まるく:2014/05/01(木) 12:32:28 ID:biTxNsAs0
えっと、それは自分の作品に対しての質問と取っていいですかね?書き込み時期的に。
自分の中では違う、というか…とにかくは違うとしています。
『スタンドは本人の精神力による』『戦う意志が強いほど強いスタンドになる』
大元にこの2つがあるとして、子供の精神であるドッピオは百戦錬磨のディアボロと比べて精神的に劣っているが故に性能は劣っているとしています。
単純に体全体と腕だけ、というのもあります。もともと貸してるだけでもありますしね。

ちょっと前の話の補足になりますが、ドッピオが諏訪子に締められているとき、まさしくその理論です。
ドッピオの状態では諏訪子の力に勝てずに力尽きかけますが、そのギリギリでディアボロと交代し、それを乗り越えようとする意志で思いっきり力を込め手を砕く→キンクリ!という流れでした。
精密動作性だけでなく、パワーも上昇してる、という考えですね。…もともと精密動作性は?でしたけど。

117名無しさん:2014/05/01(木) 17:26:16 ID:HRyUf.6A0
まるくさんへ
なるほど!わかりやすい説明ありがとうございます。質問の仕方が悪かったです。申し訳ありません。

118スルーしてくださって結構:2014/05/13(火) 17:46:30 ID:Gj/fxJm60
JOJO'S BIZARRE TOUHOU

Part1 ハクレイブラッドーHakurei Bloodー
Part2 幻想潮流ーGensou Tendencyー
Part3 スカーレットクルセイダース (英語題は解らない。内容は魔理沙vsレミリア。星繋がり。)
Part4 宮古芳香は倒れないー?ー
Part5 射名丸の風ーSyameimaru Windー
Part6 ?ー?ー
Part7 ?ー?ー





うわぁ···ナニコレ···書いてて恥ずかしくなった···それにしても7部と6部は難しい···

119中学三年生:2014/05/24(土) 16:42:28 ID:95rSisGc0
ちょこら~たさん···最新話(って言えばいいのか···)はいつ頃になりますか?

120まるく:2014/05/27(火) 21:49:30 ID:P/QX6RTw0
(sage進行で書かれてて今まで気づかなかった……)
こう、もうちょっとなんというか。作順に則ると考えやすいかもしれませんね、副題。
自分もあんまりそういったのはセンスないのでうまくは思いつきませんが。


というわけで投稿します。
今回はドッピオが出ないので番外編です。現在の時間軸から少し過去の話になります。
けれど、ドッピオはその後を見ています。そんなお話。

121BGM3 香霖堂:2014/05/27(火) 21:50:31 ID:P/QX6RTw0
 うっすらと、閉じた雨戸の僅かな隙間から日が差し込み、自分の手元を明るくする。
 同じ仕事を担当していたランプの勤務時間は、太陽が上がってきたことを指し示す光で終了の時間を告げた。
 手元の本と、自分の考察をまとめた紙が机の上に散乱している。用意していた墨入れも底が見えるほど使ってしまったようだ。
 少々時間をかけすぎてしまったかもしれない、と霖之助は一人ごちる。
 いくら魔理沙が代わりに行ってくれるとはいえ、あまり時間をかけすぎては彼女は怒るだろう。……ほとんど物で釣ったようなものだが。
 今から人里に向かえば、開店の準備の終わりくらいで到着できるだろう。魔理沙にもそのくらいに着けると説明したし、『それ位に終わるのであればなら乗ってやるぜ』と答えていた。元々遅めに着くかもしれないと思っていたので遅めの時間で話していたが、まあ結果は良好だ。
 だった。

「……それなのに、君はいつまでそれをやっているんだい」

 店の奥で書き物をしていた霖之助の近くで、薬箱の中身を整理する、一人の少女。
 外の世界で学生が使っているという、ブレザーと呼ばれる洋服を着ている少女は頭から生えているウサミミを揺らしながら返事を返す。

「あと10分から15分ってところかしら。……あなたの常備薬、型の古い物から期限切れまで……まるで小さな博物館みたいだわ。しっかりチェックしておかないと緊急時に何の役にも立たない」

 ぶつくさ言いながら少女―鈴仙・優曇華院・イナバ―は自分の荷物から出した薬と霖之助の薬箱の整理、入れ替えを行っている。

「そうは言うがね、何分妖怪とも人間とも半分同士だからあまり薬に頼らなくても大丈夫なんだ、だからそんなことしてもらわなくても――」
「でも、この常備薬点検も毎月もらっている料金の一環に入っているから。しっかりやらないとあなたの無駄になる」
「なるほど、言っていることは最もだ。確かにこちらが料金を支払ってサービスを受け取っているのだから。……だが、僕はもう出掛ける時間なんだが」

『あなたのもしもの時! 助けてくれる人はいますか? 永遠亭のまごころ巡回サービス! 薬の事から診察、回診、積めば料理や洗濯といった家事、あんなことやこんなことまでお手伝い!』
 そう書かれたいかにもいかがわしいチラシを配っていたのは今目の前にいるウサミミとはまた別のウサミミ少女。
 その時に居合わせた魔理沙が面白半分でそれに契約をしてしまった。『お試し期間で一月分は半額だ、お買い得だな』と、自分の身銭を切ることなく。
 契約を機に、確かに3日に1度のペースで鈴仙がこの店を訪ねるようになったが、店の戸を叩いて対応の声が聞こえると、

「生きてる」

 と、極めて事務的に、一言の確認をしたらさっさと行ってしまう、何とも冷たいものだった。
 いつもはそんな業務的なものであったが、今回に限って家の中まで入ってきて、勝手に薬箱の整理を始めていた。

「そう? でももうすぐ終わるから、もう少し待っててちょうだい。さすがに主のいない部屋でやるのはアレだし、鍵もかけられないし」
「君が残りをやるのを後日に回してくれればいいんじゃないか?」
「私のペースが狂ってしまうので」

 永遠亭のウサギたちも変わっているのが多いが彼女はその中でも常識的、だと聞いていたがそんなことはなかったようだ。
 職務に忠実なのはいいことなのだが、そこに相手の都合を合わせるということはしない。これはこれで営業には向いているのかもしれないが、今の霖之助には迷惑千万である。

「ごめんくださーい」

 表には営業中の看板を掛けていないにもかかわらず、来店の声が上がる。この声は聞き覚えがあり、その声の持ち主はまじめの一辺倒で聞かれることが多いはずなのだが。

「今は営業していないよ、僕はそろそろ出かけるんだ」

122BGM3 香霖堂:2014/05/27(火) 21:51:20 ID:P/QX6RTw0
 顔こそは入口の方に向けるが、一番言いたいのは前にいるウサミミに対してだ。とにかく、今は出ていってほしい。
 その思いが言葉の端に見える、冷たい口調で言葉を告げる。

「え? えーっと……、え、営業時間を知らない方が自分の都合のいい時間に来れるので……」

 その言葉に対して、戸惑いながらたどたどしく、どこかで聞き覚えのある答えを返す。
 その言葉を最初に使ったメイドはさもそれが当たり前だというように使っていたが、どうやら彼女は元々それはおかしいと思っているのだろう。だから、使用に抵抗が生じてしまう。
 はぁ、と霖之助は深くため息を吐く。鈴仙よりも遥かに扱いやすい彼女だが、結局目的の為なら意固地に付きまとうタイプでもある。さっさと欲しい物を手渡し帰ってもらうのが賢明だろう。

「……すぐに済む要件であるなら対応しよう。何だい、妖夢」

 店頭に顔を出し、言葉と同じく感情の揺れた表情をしている少女―魂魄妖夢―の相手をする。妖夢は、主人が顔を出したことにほっとして、近くの半霊をゆらゆらと揺らめかせながら話す。

「実は、今度白玉楼で懇談会があるから、それに見合うものを用意しろって幽々子様がおっしゃられたので、それっぽい物を探しているんです」
「なるほど、今度にしてくれ」

 非常に手間がかかりそうであったので、断ることにした。以前に来店した時の様に目的がはっきりしているなら良いが、今回の様な曖昧なものはとかく時間がかかる。
 それに、懇談会に見合うものなんて言われても、幽霊屋敷に似合うものが古道具店にあるはずがない。それこそ、人里の道具屋に行った方がいいだろう。そこでまた会うことになるだろうが。

「そんなあ! ダメなんです、すぐに用意しないとまた幽々子様に叱られてしまうんですよぅ!」
「それは君の事情であって、僕の事情とは擦り合わない、それだけの事。それに、別に何もここで探さなくてもいいだろう」
「でも、まだ人里の道具店は開いていないじゃないですか、すぐにって言われたからすぐに用意しなきゃいけないんです!」
「でもその懇談会? は今日やるのではないんだろう? それにあのお姫様が準備するんじゃなくて君が準備するんだから、少しくらい時間をかけても大丈夫なんじゃないか。それに、もてなすつもりならそんな急ごしらえをだすのがいいことなのかい?」
「うっ……うぅ〜」

 コロコロと表情を変えながら、はためく彼女は前と変わらず幼いままだった。前言撤回、まじめというよりは愚直だろう。

「妖夢じゃない、どうしたの?」
「鈴仙! どうしてこんなところに……まあいいや、助けてください、この人いじめる!」
「誤解を招く言い方はやめてくれ」

 呆れた声と感情を出しながら奥から鈴仙が顔を出す。

「君も用件は済んだか? 済んだなら何時までも居ないでさっさと僕を解放させてくれ。妖夢以上に急いでいるんだ」
「まだ終わってないけれど、なんか問題が起きてるみたいだから。保証期間中だし一応……」

 サービスの一環はどこまでなのか。チラシには特に書いていなかったが解釈は彼女に一任されているらしい。本当に必要としている人物には非常にありがたいサービスだろう。霖之助には完全に不必要だが。
 鈴仙は右手の親指と人差し指を伸ばして、その先に力を溜めている、明らかに武力行使の構えをしながら出てきている。もし妖夢がその得物よろしく本当の強盗であったのなら彼女は迷わず撃っていただろう。
 もちろんそんなことはなく、鈴仙も妖夢と確認すると手を下ろし力を解放する。

「……保証期間? また永遠亭は怪しいことをしているんですか?」
「構えるな、撃つと動くよ」
「どちらもここでやるなら出てってくれ、やらなくても出てってくれ」

 鈴仙の言葉に反応して自然と構える妖夢、それに合わせて再び臨戦態勢に入る鈴仙。そこに割って入り、ややも大きな声で二人を諌める霖之助。
 それは、全く進まない展開にいら立ちを隠せなくなってきている様。

「……そうね、あんまり遅れてもあれだし。妖夢も静かに見繕ってたら? 結局私の仕事の加減具合にしか左右されないし。お冠になっちゃう前に終わらせた方が得よ」
「君が言うか」
「……そうですね! というわけですいませんが見させてもらいますね。あ、今回はちゃんと小遣いもらってますから!」

 満面の笑みを浮かべながら、桜の花びらの刺繍の入ったがま口を取り出し大層自慢げに見せつける。
 その時点で、霖之助は全てを諦めた。

123BGM3 香霖堂:2014/05/27(火) 21:52:04 ID:P/QX6RTw0



「えーっと……これなんてどうだろう……」
「それは石仮面。曰く、人間をやめる程度の道具だ。被ってみてもなんともなかったが、少なくとも懇談会向けではないだろう」
「そ、そうですね。今にも動き出しそうで怖いし……これは?」
「見ての通り、矢だ。何となく気の入った装飾だが特に変わりはない物だよ。……本気で探す気はあるのかい」
「いまいち、よくわかってないんです。幽々子様の無茶ぶりはいつも頭を悩まさせられます……」

 店内を見回りながら、あれでもないこれでもないと妖夢は品物を見続ける。
 もはや二人を魔理沙や霊夢などの客ではない存在と捉え、そして同じように言っても自分が納得するまでこちらの言うことを聞かないようなタイプ。そう認識した霖之助は適当に解説を入れることにした。
 それでも、別にそこに関して手を抜くつもりはない。妖夢が見ているのはおおよそ霖之助も興味を持っていない物が多く置かれている所。久しぶりの商売らしく、買い取ってもらうのもいいかもしれないと考えていた。

「……あれ、これは?」
「……おや?」

 そう言って妖夢が取り上げたのは、さらしに包まれた細長い何か。
 もちろん霖之助はそれが何かを理解している。だが、彼は何故それがそこにあるのかがわからなかった。

「それは折れた刀の刃だ。真っ赤に赤錆びていて、とても刃物としての使い道はなかったんだが……用途がとても興味深くてね」
「刀、でしょう? 切る以外に何に使うんです?」
「その通りなんだが、能力で見たところ、どうやら『思いの物を切れる』らしい。……それがどういう意味なのかは分からないがね」

 そこまで説明すると、思案顔でそのさらしに包まれた刀を見やる。

「……しかし、あとで包丁にでも加工しようと錆取りだけして奥にしまっておいたはずなんだが……?」
「包丁にですって、もったいないですよそれは……みても、いいです?」

 刀剣と言われ、少し目を輝かせて妖夢はそれを見つめる。
 蒐集家の多い幻想郷だが、実際に武器として使っている者は数少ない。扱いに難しい、地味、可愛くないなどよく言われるが、そんな中でも使用する者の中、数少ない一人が妖夢である。
 美しい、という意味ではなくて実用的な用途を醸し出すその魅力を理解する、数少ない理解者だろう。

「ああ、構わないよ。ただし、素手で触らないでくれよ」
「そんくらいわかってますよぅ」

 そういった者であるなら、見せるのもやぶさかではない。物の価値は、理解している者同士でないと語り合えないからだ。
 はらりはらりと、少しずつ外の空気に触れさせる。それは楽しみにしていた包みを開くその瞬間に等しい。

「……わぁ」

 解かれたその刀身は、まだわずかに汚れが残っているものの、元は美しい刀剣としてあったということを感じさせる気風があった。
 まるで、冷たい水で濡れているような、静かな輝きを秘めていた。

「元はかなりの業物ですね。楼観剣と比べれば全然ですが」
「やはりわかるものだね。けれど見ての通り、刀剣として使うにはもう無理だろう」

 確かに、中本から完全に折られていて、切っ先の側が残っている。つまり、振るうための柄が無いのだ。

「その部分が存在せず、それを新たに他の者が付け加えてしまえばそれはもはや元の製作者が意図して作ったものではない、別の存在と化してしまうだろう。
 一般的な人間の倫理と道具のそれに当てはめるのは滑稽だが、相手のそれとは違う身体を他人が勝手につけて弄っているのと等しいからな」
「うーん、そうですけど……包丁には惜しいような……?」

124BGM3 香霖堂:2014/05/27(火) 21:52:46 ID:tPxg94h20
 そこまで話して、妖夢は急に辺りをきょろきょろ見回す。

「どうした?」
「今、誰かの声が聞こえたような……」

―――まさか、あの絶望の底から出られる時が来るとは……

「ほら、今確かに聞こえましたよ。誰か他にいるんです?」
「いいや、僕と君と奥のウサギだけだ」

 失礼ねー、と奥から声が飛んでくる。確かに、その3人だけだ。

「……まさか、幽霊!?」
「それは君だろう」
「私は幽霊じゃないです、半分だけです! そんな括りだと霖之助さんも妖怪になっちゃうじゃないですか」
「半分だけだよ」

―――ここは、どこか……わからない……

「また聞こえた! また聞こえた! どこだ、出てこい!」
「涙目になりながら言うものじゃないよ。それに幽霊が声を出せるはずないだろう」

―――まあいい、久しぶりの運動といくか

「……もしかして、ここから……?」

 そう言うと、妖夢は持っている折れた刃を見つめる。
 その姿は、何かに魅入られているかのような虚ろな瞳をしていた。

「……妖夢?」

 怪しげに思い、霖之助が立ち上がろうとする。

「シッッッ!!」

 それを、制する。いや、それどころではない。
 明確に霖之助に危害を加えようとした、正確な突きが妖夢から繰り出された。

「なっ……!?」

 何とか、後ろに体を反らしてそれを回避する。急に動いた体は重心を失い、そのまま後ろに倒れこんでしまう。

「久しぶりの外だ……お前には何の恨みもないが、おれの力試しのため、その命貰い受ける!!」

 折れた刃を突きつけながら、高らかに妖夢は宣言する。
 その瞳は先ほどまでの穏やかな幼い瞳と違い、相手を切ることにのみ快感を覚えている狂人の瞳をしていた。

「妖夢……? 一体、どういうことだ?」
「のんびり答えを待つ時間などお前には存在しないッ!」

 そう答えながら、その瞬刃を煌めかせる。狭い店内で、その短い刃は霖之助を捉えようと一つ、また一つと近づいていく。

「くっ!!」

 対峙する霖之助も、ただなすがまま避けているだけでない。回避しながらも対抗しうる得物の元へ近づいていく。
 再び彼を切り裂く一刃を、一振りの刃が受け止める。
 草薙の剣。外の世界の変革に共にあったと言われる剣。
 もちろん彼自身がそれを使い切れる力があると思っているわけではない。が、今対峙する刃を受け止めるに至る武器はこれしかない。
 金属と金属がぶつかり合い、火花を散らして辺りに音を響かせる。

「この刃を受け止めるか……だが、受け止めるに一杯と見た! 容易い相手だ、運動にすらならないな!」

 確かに、と霖之助は口の中でつぶやく。今の動きで息は上がり、肩で呼吸をしているようなものだ。

「しかし素晴らしいぞ、この肉体は! 幼いながら体術、技術……過去に肩を並べたものとは比べ物にならない! そしてッ!!」

 再び刃を霖之助に突きつける。霖之助もそれを受け、青眼に刀を構える。

125BGM3 香霖堂:2014/05/27(火) 21:53:50 ID:P/QX6RTw0
「お前の動きは今ので『憶えた』。絶対に」

「絶〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ対に! 負けん……!!」

 謎の振りをした時、店内に銃声が響く。それに気づいた妖夢が的確に刃を振るう。

「……どういうことだろ、これ。すごく妖夢らしいけど、だいぶ違う」
「お前もおれに斬られたいというのか」

 鈴仙の銃弾は全て斬り落とされていて、命中には至らない。
 その妖夢は、新しい相手に喜びの感情を出していた。

「その意気は良いぞ。この男は弱者とも見える。だが女、お前の攻撃には確かな殺意が込められていた! あの拳銃使いの様に! お前も戦いに身を置く者、相手に不足はない!」
「……ずいぶん正統派な剣士みたいになってる、んだけど……イメチェン、じゃないよね」
「気を付けてくれ、鈴仙……とてもじゃないが僕には抑えきれない。恐らく、妖夢は幽霊か何か、あの刀に宿る悪霊に操られているようだ」
「それは『視れば』わかる。あそこからは明らかに波長が違うもの。それに何より、ここであんな波長を示すのって、姫様とその相手くらい」

 少々矛盾はしているが、ごっこ上での明確な殺意は少女たちの遊びにはよくある話だった。
 だが、今の妖夢は違う。あの鬼の異変の時に廻り回った時もこれほどの殺気は出していなかったはず。

「下がってて。これもサービスの一つだから」

 この期に及んでサービスの一環というのも滑稽なものだが、それでも頼りにはなる一言だった。
 決して気を緩めず、少しずつに霖之助は足を下がらせる。

「見たところスタンドでの撃ち込みではないようだが……どこかに隠し持っているな? だが問題ない、今の弾丸は『憶えた』ぜ」
「そう? ならばこそ」

 鈴仙の瞳が赤く輝く。それと共に、頭痛が走るかのような音と、赤いヒビが入った様な店内がその瞳に、妖夢と霖之助の瞳にも映し出される。

「これは……!?」
「初見殺し。憶えられる前に終わらせてもらうッ!!」

 鈴仙が店内を走る。その像は、すでに二人には違うように見えてしまっている。彼女が右に走れば上に走るかのように。飛び離れれば近づいてくるかのように。
 その動きに翻弄され、困惑する妖夢に対し、八方から銃弾が撃ち込まれる。

「だが無駄だッ! その攻撃は『憶えた』と言ったろーがッ!!」

 その掛け声とともに、全ての銃弾が切り落とされる。位相によって僅かにずれたその攻撃すらも明確に。

「初見殺しだって。もっとも、あなたは私を認識していないけれど」

 その振るわれた後の刃を持った手を掴み、指だけで支えられているそれをはたきおとす。その見事な不意打ちは、持っていた本人にも気づかせないほど鮮やかだった。
 妖夢の手から刃が離れると共に、ぷつんと糸が切れたように張りつめた空気はなくなり、同時に妖夢はその場に倒れる。

「……鈴仙? 終わったのか?」
「まあ、一応。……もしあれも『憶えられた』のなら、私結構へこむかも」

 そう、鈴仙は何て事の無いように呟いた。

126BGM3 香霖堂:2014/05/27(火) 21:57:21 ID:P/QX6RTw0


 
 勝負こそ鈴仙の機略によって一瞬で終わったものの、その後は凄惨たるものだった。元々片づけられていない店内を少しでも暴れ回った中。
 辺りの物は散乱し、下敷きになったものは壊れてかけらが飛び散っている物も見られる。

「……さすがに、この状態を放っておくわけにはいかないかな」

 霖之助も目の前に倒れている妖夢ではなく、その散らばった区画を見て呟いた。

「え、この子は? 妖夢放っておくの?」

 割と大きめの目をさらに丸くし、さすがに非難するかのように鈴仙は答える。

「怪我人は医者に連れて行った方がいいだろうからな。もっとも、見たところ怪我はないと思うが」

 そこにはただ見捨てるわけではなく、専門外なので専門家に任せたいという心も見えたが、前者の放置も僅かに見える。
 ひどく呆れた顔をして、侮蔑の目で見られるが霖之助は気にしない。同じく、専門家として事態の解決をしたいだけなのだ。
 落とされた、折れた刀に近づき、触らないように注意しながら検分する。
 と言っても注視するくらいなのだが……それでも特に変わったものは見られないし、直前に妖夢が言っていた霊の言葉とやらも聞こえなかった。

「……触って調べてみたいところだが、おそらくそれが起動の合図になっているんだろうな。……箸か何かでつまめるだろうか」
「……んぅ……みゅ…………ひょあっ!?」

 ちょうど目が覚めた妖夢。不自然なほどに近い男性の顔に思わず驚き飛び退く。
 霖之助も、目が覚めたときにまだ何かあることを考え、剣を持ったままであったので、一応その構えをする。が、目が覚めた妖夢はあたふたするばかりで、特に何も起きなさそうであった。

「……何があったか覚えてはいるかい?」
「少しだけ、まあ。心を乗っ取られるなんて……さっさと斬ればよかったのに、未熟ですみません」

 自害でもするつもりか? と言いかけたか、さっきと同じく口の中に留めておいた。災いの元は無闇に出さない方が身のためだ。
 草薙の剣はもう不要になったかもしれないと思い近くに立てかけようとするが、それを妖夢が止める。

「すみませんが、また一悶着起こさせてください。……さっきの人、もう一度呼ばせてください」
「本気か? 君が冗談を言う人間ではないからそうではないと思いたいが」
「そうよ、それにもし何かあったら、あれが言ったことが本当なら私でも止められないかもしれないのよ? 通常弾だって、2回目には幻覚の中でも見切られていたし」

 二人がそれを止めようとすると、妖夢は手で二人を制し、その傍らに浮かんでいる霊体を自分の身に寄せた。
 妖夢の半霊は、すぐに妖夢と同じ姿を取る。違う点は、楼観剣と白楼剣を持っていない、の2点。
 形取ると、二人が制止する暇なく、半霊の方で刃を拾い上げた。

「…………ッ! ええ、大丈夫ッ! はい、それは、ダメですッ! ッ!!」

 半霊の方の妖夢も、現体の妖夢も共に、何かに耐えるように歯を食いしばりながら、何も聞こえぬ声に返事をする。
 概要こそはわからないものの、それの成功を見据えるしかなかった。
 二人はもしものため、霖之助は草薙の剣を構え、鈴仙は同じく手にいつでも発射できるように力を込めて。
 ……妖夢は目をつぶりながら、出てくる声は小さくなり、つぶやくような声になる。

「……そうです。おそらく、あなたの言う人物は存在しません。……はい、ありました。確かにそれは」

 そこまで言うと、二人の妖夢は何やら気の抜けたような表情となり、鈴仙と霖之助の方を向く。
 半霊の妖夢は恭しく頭を下げると、口をパクパクと動かす。

127BGM3 香霖堂:2014/05/27(火) 21:58:36 ID:P/QX6RTw0

「あ、ごめんなさい。そっちの身体は喋れないんです。私から説明します、アヌビスさん」
「何だって?」

 アヌビスと呼ばれた、半霊の妖夢は、現体のそれとは違い、鋭い目つきは変わらない。
 それが元々の彼? の性分なのか。口を開くと共に、追随して妖夢が説明を加える。

「刀に宿っている、えー、すたんど? 悪霊みたいな方で、刀を抜いた人に憑りついて操れる程度の……え、憑りついているわけじゃない? いいじゃないですか、それくらいは簡単に言わせてくれたって」
「な、なんか随分フレンドリーになってるわね。一応あなたは私たち殺そうとしていたのよ?」
「それはまあ、許してほしいし、納得いかないなら切らせてもらう、ですって。戦うのは好きみたいですよ?」
「君と思考回路はあんまり変わらないみたいだな」

 丁寧に頭を下げるアヌビス。確かに、攻撃性がなくなると紳士的な対応はできるみたいだ。

「しかし、何で今度は乗っ取られたりしないんだ? それに、あまりに急な変化だ、油断させているようにも見える」

 それでも、すぐには疑いが晴れるわけではない。霖之助が訝しげに見ると、アヌビスもそれは当然ともいえる表情を浮かべ口を開く。

「あー、はいはい。まず私の方から説明しますけど……見ての通り私には半人半霊なので、体が二つあるんです。主に使っているのは人間の方なので、そっちで持ってしまったからそっちの身体が使われてしまったんですが……
 半霊の方なら基本的には私の手足みたいなもの、身体の一部なのでそこだけなら使われても互いに干渉しあえます。相手が完全に制御できるわけではないので少し安心できます。でしょう?」
「確かに、僕ら半分の血筋とは違って半人半霊はそれそのものが種族、一つの精神と二つの身体で成されると以前聞いたが……」
「で、攻撃してこないのは、言ったとは思うが、って言ってますけど言ってました? とにかく長年使えなかった体の動かしをしたかったからですって。
 斬ることに抵抗がないのは私は良くないことだと思いますけど、真の目的意識があるなら続けるけど今はないからやめておく、ですって」
「……聞けば聞くほど、妖夢とあんまり変わらないわね、そのアヌビスさん」
「どこがですかっ!?」

 驚きの表情をする妖夢と、うんうんと合点が言ったようにうなずく霖之助。アヌビスも、それに合わせて苦笑している。
 戦いが終われば後腐れなし。その空気が、ここでも感じられるようになっていた。

128BGM3 香霖堂:2014/05/27(火) 21:59:22 ID:P/QX6RTw0



「……しまった、もうさすがに行かないと。予定の時間よりだいぶ遅れてしまっている……」
「え? ……ああ、私も次の巡回に間に合わなくなっちゃう! ここで薬の確認なんてやってられない!」 

 それほど時間が経っているわけではないが、二人ともに用事が詰まっている。その割には鈴仙はのんびりとしていたように見えるが。
 二人とも荷物をまとめると、二人の妖夢を連れて外に出ていく。

「わっ、私の用事! 私ここで刀拾うしかやってないです!」
「さすがにもう時間もない。その刀は僕には持て余すから差し上げよう。適当にお姫様への言い訳を考えておいた方がいい」

 そういって店の戸にカギをかけると、さっさと走って行ってしまう。
 鈴仙も鈴仙で、荷物をまとめると、

「彼……でいいのよね? についてまたあとでゆっくり聞きたいけど、私もちょっと外さなきゃいけないの。妖夢、アヌビスさん。いいかしら?」

 そう問いかける鈴仙に、妖夢は恐る恐る片割れを見つめる。
 その片割れは、少女の容貌に似つかぬ笑みを浮かべ、言葉は上げずとも、了承の意を示した。
 それを見ると、鈴仙も微笑みを返す。

「ありがとう。それじゃあね!」

 そう言うと、鈴仙もふわりと飛行し、森の外側へと向かう。どうやら紅魔館の方へ向かっていくようだ。

「……いったん、お屋敷に戻りましょうか。私はあなたを、わが主に紹介しなくてはなりません」

 そう言うと、アヌビスは渋い顔をし、難色を示す。

「大丈夫ですよ。幽々子様は寛大な方です。幽霊仲間として一緒に認めてくれますよ。……え、幽霊じゃない? だからぁ、そのすたんどっていうのがよくわからないんですってばぁ。
 アヌビス、じゃなくてアヌビス神が正しいって? でも、神様じゃないでしょう? ええ、いますよ。幻想郷には神様だって。あなたの所にもいたんです? 神様じゃないけど、それに近い吸血鬼……
 うーん、吸血鬼……いえ、確かに怖いんですけど……幻想郷にもいますけど、どこか間が抜けてるんですよね、あの人たち。いや、あなたの所の方を馬鹿にしたわけじゃなく! あー、転びますよ!」

 興奮したアヌビスは、人間の身体とは違う霊体の身体に慣れないのか、思うように動かずに体勢を崩す。
 それを支えながらも、妖夢は一旦の家路に着く。

「外の世界の事も、あなたの事もいろいろ聞いてみたいです。貴方にもいろいろ答えてあげます。ようこそ、幻想郷へ!」

129まるく:2014/05/27(火) 22:05:04 ID:P/QX6RTw0
以上になります。次回への布石編です。何綺麗に締めてるんだ感すごいですね。
あーだこーだは次回にアヌビス神本人に語ってもらいます。こう、たまの日常パーt
の後霖之助は、星のソナタで魔理沙がやっていた店番を引き継いで〜、という流れになりますね。

ナイルの河底に永久に沈むと思われていた刀は、やがて忘れられた地に流れ着く。
魂がどーのこーのとか、いろいろまた次回で俺理論展開で行く予定です。

130どくたあ☆ちょこら〜た:2014/05/28(水) 17:09:09 ID:Z202f/gQ0
まるくさん、投稿お疲れ様です。
【アヌビス神】が幻想入り。霖之助の能力でも『スタンド』であることは見抜けないんですね。
承太郎を苦戦させただけあって、やっぱりトンデモな強さですね。「今ので覚えた」が幻覚にまで通用するとは…!
戦闘が終われば後腐れ無し。人間じゃない【アヌビス神】には、幻想郷のルールが割と性に合っているのかも。
妖夢の体質を利用して【アヌビス神】を制御するとともに肉体を与えるのは巧いと思いました(小並感)
次回、ディアボロが白玉楼を来訪しますが、早速一悶着起きそうな流れ。ただでさえ周りが『敵(?)』だらけなのにジョジョ屈指の強スタンドまで敵に回ってしまったら、ディアボロの寿命がががが
次回も期待しております!

>最新話
こ、今月末には…(震え声)

131中学三年生:2014/05/28(水) 17:34:11 ID:UJqEybt20
↑待ってます

>>129まるくさん
じゃあ忘れ去られたカーズや、川の底に沈んだマジェントもあるいは···!?

132名無しさん:2014/05/28(水) 18:11:39 ID:MHwa1NUA0
もしディアボロがアヌビスを手に入れたら三重人格に・・・

133名無しさん:2014/05/28(水) 23:06:15 ID:3dizHQg60
スタンドの矢があるって事はそれをめぐりまたなにかありそうですね(笑)

134まるく:2014/05/28(水) 23:53:55 ID:I6OFuJ2g0
感想ありがとうございます!

>ちょこら〜たさん
霖之助の能力は道具の名前と用途がわかる程度、アヌビス神は刀に宿るスタンドであって道具の用途ではないので。霖之助も人間を見て何の能力を持っているのかわかるかと言ったらNOだろうと思って。
ちょっと無理があるかもしれませんが、道具のそれと、スタンドとしては別物として表現したい、ということですね。

アヌビス神の能力ならきっと弾幕シューティングは楽勝でしょう!一度見ればルナティックの弾幕だって余裕!
ポルナレフの剣針飛ばし、目潰し+死角からの跳弾を2回目で完璧に弾いたので、明らかに目で見えていなくても感覚で制圧してると取っています。よって、高度な目くらましすらも無効化できる!と考えた次第。
既に妖夢越えてるんですがこれは…ま、まあ承太郎たちとの経験もあったし…

もしDIOの命令がなければどの程度まで自分から動き出すのか、というのも想像の余地がありますが、やはり基本は忠義のイメージ。戦闘狂ではないので、戦う理由がなくなり馴染めると思いました。
元々500年も生きているので十分妖怪の類だと思います。小傘ちゃん、仲間だよ!

妖夢の種族を何か差異として使えないかなー、と思っていてこれが浮かびました。すごく動かしやすくなりますた!これでたくさん問題を起こせます!ディアボロの明日はどっちだ!

>中学三年生さん
カーズは宇宙だし、マジェントは別の平行世界だから来れないだろ!いい加減にしろ!
いや、宇宙人だって幻想郷にいるし…?
実際問題来てもおかしくはありませんが、出しても主人公を喰いかねない(物理的に)勢いなので今は出演はしないですかね。

>名無しさん132
アヌビス神は乗っ取った肉体の精神・技術を完全に使いこなす程度の能力があると考えています。
その時ドッピオかディアボロかに寄りますけど、表になっている身体の精神が乗っ取られてしまうだけで二重人格なだけ、なのかなー?どちらにしろ厄介な隣人ですがね!

>名無しさん133
起こすぜー超起こすぜー。
こんなこというとエターナるポイントが3倍くらいになりそうですが、完結後のif物語とかも頭の中にあります。
そこに使えそうな伏線、当然今の本編にも使いますが。そういうのも適宜ばらまいております。撒くだけ撒いて拾えるのだけ拾う悪いスタイル!


アヌビス神の強キャラ感を出すのに苦労したし、完全に出し切れているとは思えません。…それより普通に鈴仙がチートだと思ってますし。
とにかく、感想を元にこれからもがんばります!ありがとうございます!

135どくたあ☆ちょこら〜た:2014/05/29(木) 00:21:29 ID:9zGKTJO20
そういえば、ディアボロ&ドッピオは『一つの身体に二つの精神』で、妖夢とは真逆なんですね。
仮にドッピオが表の状態で【アヌビス神】に乗っ取られたとして、より優勢のディアボロがさらに【アヌビス神】を制圧、アバッキオ奇襲時のように半分ディアボロ状態で【キング・クリムゾン】も全身使え、【アヌビス神】も制御できるとしたら…
夢広がりますね!

完結後の続きまで構想があるのですか!期待が一層膨らみます!

鈴仙は確かにチートっすね。臆病な性格という設定が無ければ寝首かくぐらいしか対処法が無い。『波紋』なんかも制圧できるのだとしたら…(ガクブル

136中学三年生:2014/05/29(木) 07:32:57 ID:vlPnO85Q0
>>134
あ···ごめんなさい、すっかり忘れてました···(´·_·`)

137名無しさん:2014/05/29(木) 19:45:53 ID:BbOMzRnM0
レミリア「お前は私を本気で怒らせた!」
    「お前には、死んだことを後悔する時間も、与えない!!」
霊夢「戦いの覚悟はできている!」
霖之助「僕は敬意を表する!」
レミリア「このチンピラが!俺をナメてんのか!!?」

138まるく:2014/05/30(金) 16:30:18 ID:HnG.567I0
>ちょこら〜たさん
そうなんですね。それなりに対比な感じとしてのケースです。身体が二つなんてあんまり聞きませんけどね。
しかしアヌビス神の精神支配はどこまでできるんでしょうかね。DIOには強すぎるからの忠誠、と作中にありますのでDIO並の精神力なら耐え切れるのではないか、と考えていますが。
声は手に取ったものにしか聞こえないみたいだし、博物館の倉庫から引っ張り出す時は手に持つでしょうし。…誰か下人に持たせて会話したというのもありますか。ううむ。
ディアボロ状態でアヌビス神も使える状態!まるでディアボロの大冒険状態!

鈴仙は某所では6ボスを押さえて強いキャラとみなされるくらいですからね。と言ってもそこは結構ぶっ飛びなのであんまり信用にはしていませんが。
あと自分も強いと思っていますがそれ完全にこいドキの影響もあります。あれはかっこよかった…汎用性に効く能力は総じて強いので、まともに対峙したくない相手ではあります。

>中学三年生さん
いや、謝られるほどでは。いわゆるネタ返しなので〜。

139名無しさん:2014/05/31(土) 00:15:17 ID:Eigc6OrA0
神のような吸血鬼その表現すごいいですベリッシモベネ!。
いや全く本当にDIOの影響は恐ろしいですね(笑)。DIO様やエンヤ婆は妖怪や神そのような存在を知ってたんですかね?承太郎が石仮面を調べるうちにレミリアや守矢神社にたどり着いてたらなんか胸熱ですね(笑)

140どくたあ☆ちょこら〜た:2014/05/31(土) 21:17:24 ID:ueFU1mxw0
【第二部】〜Saint Babel Run〜第六話、投下開始致します

141【第二部】〜Saint Babel Run〜第六話:2014/05/31(土) 21:18:20 ID:ueFU1mxw0
◎旧作キャラ解説
・里香…『東方封魔録』一面&Exボス。戦車技師であり、『ふらわ〜戦車』『イビルアイΣ』を駆る。

・小兎姫(ことひめ)…『東方夢時空』登場。人里の警官であるが、人格破綻者。


【第二部】〜Saint Babel Run〜
第六話 暗雲と雷鳴①


「ーーーーーーー止まれ!動くななのです!
そこから一歩でも動いてみなさいっ!
この『ふらわ〜戦車』の88ミリ砲弾が!
二キロ先の民家を木っ端微塵に消し飛ばす絶大な威力でっ!
貴女たちの身体をバラバラに引き裂くであります!」
「だ〜か〜ら〜〜っ!
さっきからずっと動いてないでしょ!何度も何度もしつこいのよ人間!」
「…まあまあまあまあまあまあ、待てチルノよォ。
向こうさんだって何も俺らに嫌がらせしたくて、こんな里の外で待ちぼうけさせてるわけじゃあねーんだ。
イロイロあんのさ、人間の『組織』ってヤツにゃあよォ……」
カッとなり怒鳴り返すチルノを、馬上のホル・ホースは眼光鋭く相手を注視しつつたしなめる。
二人は現在、人里の門の手前50メートル付近、バリケードがそこかしこに設置された検問にて、足止めを食っていた。

142【第二部】〜Saint Babel Run〜第六話:2014/05/31(土) 21:18:59 ID:ueFU1mxw0

事の発端は、こうだ。
vsミスティア戦の後、二人は『霧の湖』の住処に戻り、しばしの休息と状況の整理、情報収集を行っていた。
ミスティアの所属する【敵】は、規模も目的も未知数。
さらに【遺体】の存在を知っていたこと、刺客をミスティアとリグルの二段構えで放ち、こちらの様子を伺ったことを踏まえても、明らかに只事ではない。
【敵】に先を越される前に【遺体】の回収を急ぎ、あえて派手に動いておびき寄せ尻尾を掴む、その選択肢もあった。
しかし、元来の慎重(臆病とも言う)なホル・ホースの性質、【幻想郷】という未知のフィールド環境、数多の修羅場をくぐり抜けて来た経験が培った老獪さが、その『賭け』を拒んだ結果だった。
そんな時である。
チルノが高揚した面持ちで【紅魔館】の廃棄した新聞を持ち帰って来たのは。

“新たな【スタンド使い】現る ーーー二人組の『外来人』 その能力は『治療』と『修理』”ーーーーーー
興奮を抑えられない様子でチルノが突き付けた、大きく踊るその見出し。
その日のホル・ホースの方針が、決定された瞬間だった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「これは警告なのです!
その場を一歩も動くな、なのです!
さもなくば貴様らは、我が愛機『ふらわ〜戦車』の!
たとえ火の中水の中、森や山であろうともっ!
あらゆる地形を薙ぎ倒し踏破する、この無限軌道のシミと消えることになるでありますっ!」
「だあぁ〜〜っ!うっさいわねこのバカっ!
いったいどれだけ待たせるつもりなのよ
早くあたいたちを通しなさい!それか口にチャックなさい!」
というわけで、現在二人は自警団の入里許可が下りるまで、検問にて待機させられているのだ。
「チルノよォ、このくらいの待機時間なら、マダマダ全然マシだぜ。
俺が中東のとある国から出国しようとした時は、報道スパイの嫌疑で三日間軟禁されて取り調べを受けたモンだ。
最終的には処刑が決定したモンで、隙を突いて【皇帝(エンペラー)】で全滅させて無理矢理突破した…
アン時は流石に寿命が縮んだぜ…」
「はあ 三日間っ
そいつら絶対大バカでしょ!」
『仕事』の件もあり、待つことには慣れているホル・ホース。
実のところ、彼はこのような事態に陥ることを予測していたし、また、その対策も十分に用意してきていた。
退屈だと駄々をこねるチルノを紛らわせるため、巧みな話術と稀有な経験を活かし、彼のスリルに富んだ、少しだけフィクションを織り交ぜた思い出話を彼女に語って聞かせる、その予定だった。
チルノの住処の外、星空の下で焚き火を囲みながら、寝床に就くまでの刻を大妖精も交えて語らって過ごした夜は、これまでも幾度となくあったのだ。
彼の話す刺激的な物語は二人の冒険心をくすぐり、若き日の剽軽な出来事、息を呑む絶体絶命の修羅場をハッとするような機転で切り抜けるパズルめいた面白さで以って、飽きさせない面白さがあると自信たっぷりだったし、実際これまでもその通りだった。
彼の想定を超えていたのは、そこに頻繁に水を差す輩がいたことだ。
赤みがかった茶髪を二本のおさげにし、赤いマントを羽織った少女。
巨大な陰陽マークを象った戦車に乗り込み、意気揚々とこちらに主砲を向け、警告とは名ばかりの愛車自慢を繰り返している。
拡声器でがなり立てる彼女の『警告』は数十秒に一度の頻度で、チルノの神経を逆撫でするのだった。

143【第二部】〜Saint Babel Run〜第六話:2014/05/31(土) 21:19:38 ID:ueFU1mxw0
「(ーーーーーチルノにはああ言ったが…
『嫌がらせ』の意図も含んでやがるんだろーなァ…この『お喋り』にはよぉ…)」
それは恐らく、ホル・ホースとチルノ、二人が余計なヒソヒソ話で妙な考えを交わさせないため。
そして、この程度の挑発にも激昂しない、最低限の気の長さを持ち合わせているか確認するため。
「(ーーーーー今、『人里』は【幻想郷】最大の火薬庫だ…
『外来人』への不信、妖怪の連続殺人事件による人間と妖怪間の不和……
何よりも……、そんな状況にも関わらず隔離も許されねえ、力のバランスも全く釣り合っちゃいねェ…
一匹、たった一匹でもならず者妖怪が暴れたら、そんだけで退治屋が駆けつけるまで成す術もねェ……
イヤでも『牧場の羊』を想起させやがる、【幻想郷】の縮図じみた環境…!
不信が不信を呼ぶ悪循環も無理ねェよ、同じ人間同士ですらこんな状態なら即殺し合いだぜ…!)」
ホル・ホースの喉が鳴る。
脳裏にちらつく、『仕事』のため訪れた数々の紛争地での記憶。
乾燥、疫病、飢え、蝿、死体。
大人が子供を調教し、子供が子供を嬲り殺す、この世の地獄の特大パノラマ。
ヘマをやらかせば、自分自身がその火種になるやも知れぬという緊迫感。
それを押し切ってまでこの場に姿を晒しているのは、『二人組のスタンド使い』とやらが、里の面々に好意的に受け入れられている“らしい”、という新聞の記述に望みを託したからに他ならない。

と、その時である。
銃剣付きのライフルを握り、しかし銃口を空に向け引き金に指は掛けず、戦車の少女と共に二人をバリケードの後ろから遠巻きに監視していた自警団員らの間に、明らかにざわつきが拡がった。
「ッ…!
なあ、チルノ…いよいよ『責任者様』のお出ましだぜ。
事前に確認したこと、覚えてるな?」
「ーーーーー!
…分かってるわよ、【スタンド】のことは秘密。『弾幕』もホル・ホースが良いって言うまで撃たない…でしょ?」
「ああ…ゼッテェ破らねーよう、気ィ付けてくれよ。」
互いに顔は合わさず、呟くようにトーンを落とした声で、最後の確認を交わす。
二人の注視する先、整列した自警団員の列の奥。
『責任者様』が姿を現した。
「……!」
何より二人の目を引いたのは、『責任者様』の乗り物だった。
ふわふわと浮遊する雲に乗って移動する、足まで届く赤髪の、如何にも日本的な着物を纏った少女。
彼女は漂うようにのんびりと、二人のもとへと接近してくる。
「「ーーーーーーーーーーーーーーー」」
ゴクン、チルノの唾を呑む音が、隣のホル・ホースの耳に届いた。
無言で見守る二人の手前、少女は三メートルの所まで近付くと、動きを止めーーーーー

144【第二部】〜Saint Babel Run〜第六話:2014/05/31(土) 21:20:11 ID:ueFU1mxw0
「ハッロ〜〜〜♪」
いきなり陽気な笑顔で手を振り、朗らかにそう告げた。
「……
ーーーーー…あ〜…ゴホン、…こんにちは」
不意を突かれたが、挨拶は大事である。『古事記』にもそう書かれてあるらしい。
ややぎこちない滑り出しであったが、ホル・ホースも笑顔で応えた。
が、
「里香ちゃ〜ん!もしかして、もう『自己紹介タイム』って終わってたりするのかしら〜?」
少女は、既にホル・ホースを見ていなかった。
「…… 」
後方を振り返り、戦車の少女に呼び掛ける彼女の後ろ姿に、ホル・ホースはあっけに取られた表情を向ける。
「いっ、いえっ!交わした会話は最低限の『警告』のみであります!
それ以上の不用意な接触は規約違反なのです!」
戦車少女の返答に、雲少女は顔を綻ばせる。
「あら、まだだったの〜?
よかった〜!みんな自己紹介し終わって、私だけ後からなんて寂しいかな〜って心配してたのよ♪
え〜、ケホンケホン……
それじゃあさっそく!自己紹介タ〜イム♪」
咳払いの後、戦車少女からホル・ホース達に顔を向け、満面の笑みを浮かべると、
「里香、まずは貴女からっ♪」
彼女の視線は奇異の目を向ける二人を素通りして、そのままクルンと一回転し、戦車少女に向けて“ジャジャーン!”とばかりに両手を差し出した。
「えええ わ、私が先でありますかっ
こ、こういうのは上官が先と相場が決まって……」
「上官命令よ、じょ・う・か・ん・め・い・れ・い♪
イヤなら良いわよ、逮捕拘束のあと更迭してやるんだから♪
今までだって、河童の集落から部品の密輸してるの見逃してあげてるんだしーーーーー」
「わ〜わ〜わ〜っ ちょちょちょ、止めてくださいなのです
分かった!分かったでありますからっ!」
戦車少女は慌てて要求を呑み、ホル・ホースらに向き直る。
「…え〜、こほん…
自警団技術隊副長、里香(りか)なのです!
特技は戦車の扱いと『おばけ』の精製であります!」
咳払いの後、戦車少女ーー里香は、そう名乗った。
「はいは〜い♪次わたしわたし!」
雲少女が右手をブンブン振り注目を集め、
「私は小兎姫(ことひめ)、自警団機動隊長!
ねえ、貴方!貴方の地域では、“月には女の横顔が映る”って言うんでしょ?」
挨拶もそこそこに、雲少女ーー小兎姫は身を乗り出して目を輝かせ、いきなりそんな質問を飛ばして来た。
「ン、あ、ああ…?
確かに、ヨーロッパでは月の模様を女の横顔に例えたりするなァ…
日本では兎が薬だか餅だかをついてるっツー風に云われてるらしいが…」
調子を狂わされっぱなしのホル・ホースは、咄嗟に返事をするのだが、
「ちっが〜う!!違う違う違うのよぉっ♪」
小兎姫の顔が目と鼻の先に迫り、絶句した。
「ッ 」
フッーーーーー、と、何の予備動作も無く、気付いた時には彼女は身を乗り出して、彼の眼前に肉迫していた。
彼は油断などしていない。
十全に警戒を払っていたし、【マンハッタン・トランスファー】で常時遠方の自警団員一人一人の挙動に至るまで余さずチェックしていたのだ。
にも関わらず
まるで意識の隙間を縫うように
「(ーーーーー何モンだ……ッ…この嬢ちゃん…ッ )」
ホル・ホースの驚愕を他所に、小兎姫は目をキラキラと輝かせて、熱愛するアイドルグループにお熱な少女よろしく熱っぽく熱弁を振るう。

145【第二部】〜Saint Babel Run〜第六話:2014/05/31(土) 21:20:46 ID:ueFU1mxw0
「【月】にはね、兎がいるの!私知ってるのよ!
みんなすっごく可愛いの!
ほんとに可愛い兎がいっぱいっ!
薬を挽いたりお餅をついたり、とっても働き者さんなのよ!
【月】にも女はたくさん居たけど、そっちに目が行っちゃうなんてセンスが無粋!英語で言うとナンセンス!
女なんて地上にもたくさん居るじゃない!
兎は別!と〜〜〜〜っくべつなのっ!
【月】の兎は最っっ高よっ!
ねっ?貴方も分かるでしょ?」
ここにきて、チルノもホル・ホースも言葉でなく心で理解した。
“ーーーーーこの娘、手に負えない。負えっこない。ーーーーー”
現に、自警団員も里香も小兎姫の後方から“また始まったよ…”と言わんばかりのどんより曇った視線を投げ掛けている。
と、小兎姫の視線がホル・ホースの脚に降りた。
「ーーーーーあら、貴方…
『脚』、動かないの?」
「ッ 」
“何故分かった”、そう問い返そうとしたが、小兎姫は口を挟む暇も与えず、立て板に水を流すようにしゃべくった。
「人間の『筋肉』は信用できないわ。
皮膚が『風』にさらされる時、筋肉はストレスを感じて、微妙な伸縮を繰りかえす…
それは肉体ではコントロールできない動き。
特に、『骨』でささえられていない時…骨が地面の確かさを見失い、足腰が地面と乖離している時には、ね♪
でも、貴方の『脚』は違う!
鐙には乗せているけど、ただそれだけ。
踏み締めてない、全く『安心』していない、なのに1ミリも動かない!
だからきっと、貴方の『脚』は『死体』なのよ!」
全くの無遠慮、無礼、無配慮。
「〜〜〜〜っ
アンタはーーーーーッ!」
ホル・ホースの隣のチルノが、カッとなり喰いつく。
「チルノ、大丈夫だ…“気にするな”」
ホル・ホースが、手で制した。
「っーーーーー
…………へんっ!イ〜〜っだ!」
“気にしてねぇよ”ではなく、“気にするな”
その言葉で彼の心情を察したチルノは、辛うじて激昂を抑え込み、腹いせに小兎姫に向けて歯を剥いて威嚇した。
「ーーーーー嬢ちゃん、感心したぜ。とんでもなく鋭い観察眼だ…
流石、自警団機動隊長と言ったトコか…恐れ入ったよ
…ツーことは、俺らの『目的』が何かまで、とっくに察しはついてんだよなァ?」
穏やかな笑顔を小兎姫に向け、問う。
にっこりと笑って、小兎姫は答えた。
「里の『外来人ペア』に、『脚』を治してもらいに来たんでしょ?
この後遺症は、永琳でも治せないもの♪」
「やっぱお見通しだったか、話が早くて助かるぜ。」
にこやかに微笑を浮かべるホル・ホース。
「それじゃあ、あの二人の所に案内するわよ〜♪」
小兎姫はクルリと背を向けて、
「えーっと……貴方たち、名前は何だっけ?
ごめんなさいね、私、人の名前を覚えるの苦手なの♪」
顔だけ此方に戻し、全く悪びれない微笑みでそう問うた。
「……御心配無く、まだ、名乗ってねぇからな…俺たちはよォ……」
頭痛を覚えてきたホル・ホースはテンガロンハットの鍔を下ろし、疲労の溜息を押し殺す。
「あら、そうだったの♪
貴方たちの自己紹介、し終わってなかったのね!良かった〜♪」
二人は明らかに疲れの見える様子で、簡潔に名乗った。
「…ホル・ホース、見てのとおり『外来人』だ。」
「ーーーーチルノ、最強の妖精よ。」
里に入る前の時点でこれである。先が思いやられる展開だ。
「そう、よろしくねお二人さん♪」
二人の自己紹介に満足した小兎姫は、
「ーーーーーところで……
あなたの『あんよ』は、『天国』に行けたのかな?」
おもむろにホル・ホースの『脚』へと手を伸ばし、撫でた。
「「え?」」
ホル・ホース、チルノは、同時に疑問符をふんだんに散りばめた声を上げる。
唖然とする二人の前で、
「こほんこほん…、では、僭越ながら〜…
貴方の『あんよ』の“御冥福”を祈って〜……」
小兎姫は可愛いらしい咳払いの後、厳かに朗々と読み上げると、

ブワァッーーーーー!

両腕をクロスさせ、両足をグッと開き、跳躍するッ!
思わず“稲妻十字空烈刃(サンダークロススプリットアタック)”と叫びたくなるような、圧倒的なまでの攻守における完璧さッ!
目を見開く二人の眼前!空中に身を躍らせる小兎姫は両腕のクロスを強調させるように前のめりの体勢でーーーーー!
「『あ〜めんッッ 』」
両腕ででっかく“十字を切り”、小兎姫の叫びが里の近郊に木霊したーーーーー

146どくたあ☆ちょこら〜た:2014/05/31(土) 21:21:46 ID:ueFU1mxw0
投下終了です。
今回はリハビリも兼ねておりますので短めです。申し訳ございません。
決して今日買ったばかりの弾幕アマノジャクやりたいがためにキリの良いとこで切ったんじゃあないんです!信じて下さい何でもしますから!

147セレナード:2014/05/31(土) 21:27:49 ID:yRRH/aTQ0
……ん?今何でもすると……言ったな?

まあそんなことはおいといて……。

旧作は私には馴染みがないですが、ふらわ〜戦車、名前に反して凄いスペックですね。
そして最後のシーン……いったい何が起きる!?

治療と修理……一人は想像がつきましたが、もう一体は……波紋使い?
そして文章の一部に某忍者漫画ネタが。あの作品、なんか人気が上昇していますねぇ。

148塩の杭:2014/05/31(土) 22:44:20 ID:T25gU8KU0
ん?今…何でもすると申したか。

…開幕早々「動くななのです!」に萌えました。しかもアハトアハト、大好きだ!
旧作メンバーは神綺や魅魔様くらいしか見ませんから、少し新鮮な気持ちになりますね。

今回は短めながらいつものようにガッッツリ読んだ気がするのはやはりどくたあの才能か…

149Saiba066:2014/06/01(日) 10:08:08 ID:7x8Q7aEI0
最近ネタが切れて欠けてませんでした、
久しぶりに投稿です。ネタ切れのせいで短いです

150Saiba066:2014/06/01(日) 10:08:48 ID:7x8Q7aEI0
〜人里 寺子屋〜

吉良「さてと、全員集まった所で会議をしたいと思う」
吉良以外「…」
吉良「DIOとヴァレンタインは紅魔館へ戻れ」
吉良「ディエゴ、お前は守矢神社だな」
ディエゴ「え、ちょまってなんで俺があんな痴女どm」
吉良「当身」ビシッ
ディエゴ「…」キゼツ
吉良「さて、それじゃあつづけるぞ」
吉良「カーズは白玉楼だな」
カーズ「うむ」
プッチ「あ、ちょっといいか?」
吉良「何だ?プッチ」
プッチ「言い忘れていたが数日前に慧音にここで神の教えを教えてほしいとのこと、矢守とかの神ではふざけて話にならないらしく私が真面目そうだからとの事らしい」
吉良「そうか、じゃあプッチは人里に残れ」
吉良「ディアボロは・・・」
ディアボロ「俺は?」
吉良「旧都で勇儀と遊んでもらえ」
ボス「」

今日のボス「旧都に逝けってことがショックで死亡

151Saiba066:2014/06/01(日) 10:09:48 ID:7x8Q7aEI0
吉良「あとは…」
吉良「私だけか」
慧音「住む場所が無いなら別にここにいていいぞ」ガラッ
吉良「良いのか?迷惑になるだろう」
慧音「二人程度なら大丈夫だ。もしかしたら私ができない教科が吉良は出来るかもしれないし」
吉良「それじゃあ…お邪魔するかな」
吉良「じゃあみんな、これでいいか?」
一同「了解だ」
吉良「それでは…」
吉良「解 散 !」

そのあと〜皆は指定された場所に還っていくのであった…

152Saiba066:2014/06/01(日) 10:11:34 ID:7x8Q7aEI0
〜紅魔館〜

DIO「やっぱここ落ち着くな」
ヴァレンタイン「私にとっちゃ血なまぐさいだけだけどな」
レミリア「吸血鬼は血の臭いだと落ち着くんじゃない?」パタパタ
フラン「あたしは別にどっちでもいいけどね〜」グデー
咲夜「それではDIO様、血の紅茶はいかがですか?」
DIO「血の紅茶って紅茶じゃなくね?」
パチュリー「どうでも良いじゃないあと図書館で寝っころが無いでよ…」

〜白玉桜〜

カーズ「やはり剣裁きが遅いな」
妖夢「スイマセン…」
カーズ「だが打ち込みは良い」
妖夢「ほんとですか!?」
カーズ「刀を自分の肉体にするという感じに剣をふるうのだ」
妖夢「…刀を…肉体に…」
幽々子「やってるわね〜」トコトコ
カーズ「幽々子か…(美しい…)」
妖夢「あ、幽々子様」
幽々子「妖夢〜お腹すいた〜」ギュルルルル
妖夢「さっき食べたばっかりじゃないですか…」
幽々子「タコが食べたいわ〜タコ〜」
カーズ「…タコ」(腕がタコに)
妖夢「うわぁ!カーズさんそんなことまで出来るんですか!?」
カーズ「これでも究極生命体だ(キリッ」
 
〜守矢神社ァ〜

ディエゴ「WRYYYYYY!!!お前らいい加減にしろッ!」プッツン
神奈子「良いじゃないかいディエゴ〜さびしかったぜ?」スリスリ
ディエゴ「離れろ!離れろ!」ジタバタジタバタ
諏訪子「いいじゃん別にィ〜」スリスリ
ディエゴ「離れろロリババァ!」ゲシゲシ
早苗「(…神奈子さまってこんなキャラだっけ)

〜旧都ォ〜

勇儀「おらディアボロ酒もってこい!」
ディアボロ「何で私がこんな目に…」トボトボ

〜人里ォ〜
プッチ「男臭いのは嫌だな」
吉良「本当に臭かったな」
慧音「やっぱり二人だとやりやすいな」

そのあと彼らがあのとうなことをするとは幻想郷の全てが思いもつかなかった…

153Saiba066:2014/06/01(日) 10:13:11 ID:7x8Q7aEI0
ネタ切れで3レスしか描けませんでした。すんません。
つい最近まで幻想郷に取材言ってきてネタを取り込んできたのに…
…また投稿するのは遅くなると思います、スイマセン

154まるく:2014/06/03(火) 16:23:43 ID:rKYG9luM0
お二人方投稿お疲れ様です。
色々ありますからね。量じゃないですよ!

>ちょこら〜たさん
今なんでもするって言ったよね?
旧作のキャラでも、しっかり存在感が出てるのがいいですね。実機はもうほとんどないから十六夜ネットとかのそれでしか雰囲気掴めませんから。
里香の腐ってもEXボス感が。小兎姫はまあ一応警察というか…という変人ですからね。当時はそれが流行であったからもありますけど、ずいぶんトンデモなキャラが多かったなと、思います。
しかし警察特有の観察眼はしっかりあるようで。割合恐ろしい実力者みたいですからね。データ的にも。
描写されていなかったホルホースとチルノ、大妖精の仲も書かれていてよかったです。それ故に三人は絆が生まれて今二人が必死になっている、というのが改めて見えて。
スタンド使い…治療と修理。予告の方では治療っぽい仗助が出ていましたけど、相方の方がとんと。FF?それともまた別のキャラが出てくるのか。
次回ですね!アマノジャクにとらわれないように。

>Saiba066さん
久しぶりでも、小さく書いていくことが重要ですんで!忘れない程度に投稿すればよいと思いまうよ。。
各所に分かれてどうなるか。ゆっくりネタでも出しながら幻想郷ライフを。

155どくたあ☆ちょこら〜た:2014/06/04(水) 15:52:55 ID:LLik8pu.0
皆さん淫夢知り過ぎィ!

>セレナードさん
旧作はプレイできないのが普通ですからね。私も十六夜ネット頼りです(汗
『ふらわ〜戦車』のスペックに関しては適当ですw 明らかに魔法か何かの動力や原理を組み込んでますし、大丈夫大丈夫ヘーキヘーキ

しかし なにもおきなかった!(パルプンテ)
西洋の『十字を切る』風習を小兎姫なりにエキセントリック解釈した結果がこれだよ!

すいませェん…『治療』と『修理』両方とも仗助のことなんです
あとで訂正しておきます

「慈悲は無い」
アニメ化するらしいので、楽しみにしております!

>塩の杭さん
語尾特殊キャラは台詞を書くのにかなり苦労しますので、楽しんでもらえたなら嬉しいかぎりです!
「戦車兵の操るティーゲルのアハトアハトが敵戦車を撃破するのが好きだ!」
旧作キャラはあまり二次創作では登場しない分、稀少価値的にもワクワク感を増してくれるので好きです

たぶん長ったらしくて理屈っぽい文章が多くて疲れるからだと思いますけど(名推理)

>Saibaさん
ネタはあるけどモチベが湧かないならともかく、ネタが切れているのでしたら無理に書く必要は無いかと思いますよ。義務じゃあないんですからね。
果報は寝て待て、暫く待っていれば良いネタと巡り合えるチャンスがやって来る筈です!

>まるくさん
里香は唯一の人間のEXボスですからね!
旧作や能力詳細の無いキャラは、勝手に『〜程度の能力』を設定しております。実は小兎姫はこの話の中でも既に『程度の能力』を使いまくっているんですね。
小兎姫には非常に強力な重要キャラとして、今後も状況をガンガン掻き回してもらいますw
変人キャラの観察眼の精度は異常

そういえば殆ど描写していなかった…と、言われて初めて気付きました(焦
動機という一番重要な部分を疎かにするのはヤバい…今後は描写するよう意識します
セレナードさんにも申し上げましたが、『修理』も仗助のことです。もう一人のスタンド使いは億泰。
wikiに転載する時に『治療』と『加工』に修正致します。

156名無しさん:2014/06/18(水) 23:08:12 ID:q2xMfwyY0
東方荒木荘面白いです。「サイバー」って読むのでしょうか···?
これからも執筆頑張ってください。応援してます!

157セレナード:2014/06/19(木) 21:29:57 ID:qQ3hNGVE0
みなさん、長らくお待たせしました。
東方魔蓮記最新話、投稿を行います!

158セレナード:2014/06/19(木) 21:31:09 ID:qQ3hNGVE0
ディアボロはスカイダイビングのように、俯(うつぶ)せの体勢を取りながら落下し始めた。
スタープラチナもディアボロと同じ体勢だが、マミゾウを掴んでいる右手を放そうとはしていない。
そしてスタープラチナに掴まれているマミゾウは、ディアボロと反対の方向を向かされた状態でスタープラチナと一緒に落下させられている。
どうやら、このまま落下してマミゾウを地面に叩きつけるつもりのようだ。
抱きかかえるような感じで落ちていてはダメージをあまり与えられないせいか、スタープラチナも右手にマミゾウを掴みながらスカイダイビングの降下時のような感じで落ちている。

「……?」
落下の最中、突然右手から何かを掴む感触が無くなったことに気づいたディアボロは、スタープラチナにマミゾウを掴んでいるはずスタープラチナ自身の右手を確認させる。
……だがそこにマミゾウの姿はなかった。
「お主、儂をちと甘く見過ぎじゃ」
聞き覚えのある声を聞いて上を見上げると、いつの間にかマミゾウが浮遊した状態でディアボロを見下ろしている。
「なッ……!?」
自身もスタープラチナもマミゾウを見ていなかっただけに、ディアボロは驚きを禁じ得なかった。
だが事前にマミゾウの記憶を見ていたことが幸いして、すぐにディアボロは一つの憶測を建てることができた。
「(見ていなかった隙に変化したか!)」
何に変化したのかは見ていなかったためにわからない。
自身を掴んでいたスタープラチナの手をすり抜けたことから、何か細長い物に変化したのかもしれない。
ディアボロが驚いたのを見て、マミゾウは『してやったり』と言わんばかりの表情見せたが今はどうでもいい。
落下しているのが自分とスタンドだけになってしまっている以上、早急に落下に備えなければならない。
さらに、ディアボロはマミゾウが背後から弾幕を撃ってきたのをスタープラチナで視認した。
スタープラチナに背中を守らせると同時に氷柱を自分の真下に高く作り、接地している部分を地面ごと凍らせて固定させる。
そのまま自身をスタープラチナに掴ませながら少しずつ降りていき……。

バランスを崩さないようにして、何とか氷柱に着地することができた。
このまま柱から冷気が離れていくのをホルス神で抑えていれば、解けかけた氷柱で滑るなんて事態は避けられるだろう。
「……やれやれだ。考えが『甘かった』か」
一難を乗り越えたディアボロは、そう呟いた。
第4部の承太郎を再現した今の服装は、コートは袖以外は白。ズボンも白。帽子も巻きと帯、エッジの部分は金色で、それ以外は白。
帽子にはサイドクラウンに錨のようなアクセサリが3つと、四角形の中心に左手の型が隆起したような形のアクセサリが一つ。
ここから次の行動に移るには特に支障はないだろうが、空模様とは全然違う色が大部分を占める服装をしているために目立っている。
……隠れてコソコソ攻撃するつもりは本人にはないので目立つかどうかは関係ないのだが。

そして、彼女にとって有利な状況でありながら、マミゾウは弾幕を撃つのを止めて様子を伺っている。
それはまるで、ディアボロがこの状況をどう乗り越えるのか楽しみにしているように。

スタープラチナのおかげでマミゾウが何もしてこないのを理解しているディアボロは、地上に下りる為に服の後ろ端部分を形成している肉を操って氷柱にしっかりと巻きつけ、自身は転がって落下する。
そうすると、まきついている肉と服が繋がっているために落下せず途中で止まることになる。
そして氷柱に足をかけ、スタープラチナも使ってマミゾウの様子を伺う。
ロープ1本(実際はコートを構成していた肉だが)で降下、そして空中には弾幕を張れる存在……。
まるでどこかの映像作品やゲームに出てきそうなアクションシーンのようである。
スタープラチナに抱えさせて下りてもいいが、そうすると接近されたときにまともな対応手段が持てないし、接近されなくても弾幕への防御手段が一気に乏しくなる。

159東方魔蓮記第四十五話:2014/06/19(木) 21:33:37 ID:qQ3hNGVE0
おっと、名前を変えるのをしていなかった。
それでは、2行下から再開です。



ディアボロはその状態で地面の方に方向転換すると、氷柱を蹴る。
その衝撃によって彼の体は宙に浮き、もう一度重力に従って落下を開始する。
そして、肉塊の端が氷柱に巻きつけられていたことにより、弾幕を受けたことにより形が崩れつつある学生服型の肉塊は紐解かれるように形を崩していく。
背広から形は崩れていき、それでもなお彼は何度か氷柱を蹴りながら落下を続けていく。
時々弾幕をスタープラチナが防げず、衝撃がディアボロにも伝達するが、それには耐えるしかない。
マミゾウの方も彼に弾幕が届かないことに疑問を抱いたのか、弾幕を撃ったまま右側に移動してきた。
ディアボロもそれをスタープラチナの視界を通して視認し、スタープラチナをマミゾウから直線上の位置に移動させる。
現在、氷柱の半分ほどの大きさを駆け降り、同時に学生服もほとんどなくなりつつある。
解れていく肉を細くすれば学生服が無くなるより先に地上にたどりけるかもしれないが、彼の体重か弾幕で肉が切れる可能性も上がってくる。
だからといってこのままでは、氷柱を降り切るより先に学生服が無くなる。
だが、マミゾウが早々にスタープラチナの手をすり抜けて離れてしまったことによって手が空いたため、いざというときはキャッチさせることもできる。
弾幕が直撃するのは覚悟の上で、だが。
「逃げ続けては儂には勝てんぞ」
「生憎、飛び道具の打合いでは俺に勝ち目がないんでな」
マミゾウの発言を半ばどうでもいいように返しながら降下を続けるが、そろそろ糸の量が限界に近くなってきた。
このまま両袖の形が崩れてしまうと、肉体に纏わせた肉を使うか、ロープとして使えなくなるかのどちらかになる。
そこで、ディアボロがとった行動は……

スタープラチナの防御態勢を解いてディアボロを掴ませ、それと同時に弾幕を防げるように氷の壁を氷柱とつながる様に出現させる。
糸肉が氷壁に押し出されるが、その勢いでちぎれる心配は無用だ。
そして、この氷壁をだした彼の本当の目的は防御ではなく、マミゾウの視界からディアボロを消し去るのが目的だった。
例え大量の弾幕によって想定よりも早く氷の壁が壊されようが構わない。一瞬でも視界から消えれば、それで十分だ。

160東方魔蓮記第四十五話:2014/06/19(木) 21:35:24 ID:qQ3hNGVE0
……あれ、訂正したはずなのに直っていない。
『学生服』は『コート』に脳内変換していただけるとありがたいです。

スタープラチナを誘導して氷壁の陰に移動したことで、マミゾウの視界からディアボロの姿が消えた直後、時間が止まった。
この間は、時の流れに干渉できるもの以外は例え何をされようとも時が止まっていたことに気づくことはない。
それを利用し、時が止まっている間に自身をスタープラチナに地上まで下ろさせる。
その間に再び時が動き出し、それから間もなく氷の壁にヒビが入り、広がって氷の壁の全体を侵食して砕ける。
あくまでマミゾウの視界に入らなくなる程度の厚さしかないため、耐久性なんてまったく気にしていない。
氷の壁の向こうにディアボロがいないことに気づいたマミゾウは、ディアボロが降下するときに利用していた糸肉がいつの間にかかなり伸びていることに気づき、下の方を見る。
そして、いつの間にか相手が地上にいることに気づき、マミゾウも地上に下りる。
ディアボロの姿は糸肉を使い果たし、コートが無くなっていた状態だったが、それ以外に特に変化は見当たらない。
「……お主、ひょっとして儂らと同じ妖怪ではないのか?」
「違うな。俺は人間だ」
ディアボロの能力の多彩さに、とうとう『人間であるかどうか』すら疑われるようになってしまった。
今まではDISCを変えるところを相手が見ていたためにまだ人間として扱われていた(かもしれない)のだが、この戦いでは一度もDISCを変えていない。
だからこそ、複数の特殊な力を使っている彼を人間として見ることができなかったのだろう。
「そう言われても……」
マミゾウはそう言って氷柱を見る。
ホルス神の能力によってつくられた10mを超えている氷柱は、冷気を風に流されるままに散らしていく。
「あんなものや沢山の氷の槍を作り、コートを操って槍と一緒に飛んできたりロープ代わりにして下りる場面を見せられては到底信じられぬ」
そう言ってディアボロの方を再び向いたマミゾウは、疑惑の目を再びディアボロに向ける。
「それに、氷で弾幕を防いだと思ったら何時の間にかお主は地上にいるときた」
闘いを見ていた狸たちは何の反応もしない。ただマミゾウの話を聞いているだけである。
もしかすると、マミゾウは薄々何か感づいているのだろうか。
「………」
ディアボロはマミゾウの話を聞きながらエアロスミスのレーダーをチェックする。
このタイミングでも、反応の数に変化はない。
「氷を操り、コートを操り、自らの速さを操り、儂や自分を触れずに掴むことができながら、それらの能力に何一つ共通点を見出せぬ」

パチュリーの場合は『精霊魔法の系統』という共通点がある。
萃香の場合は『密と疎を操っている』という共通点がある。

マミゾウの推理は外れている。
彼の能力には、『特殊な道具(DISC)』を使用しているという共通点がある。
だが彼女との戦闘では一度もDISCを取り出しておらず、装備しているDISCの能力には何も共通点を思わせるようなところはなかった。
ただそれだけのことである。

161東方魔蓮記第四十五話:2014/06/19(木) 21:36:48 ID:qQ3hNGVE0
「まさに多芸。じゃが無芸ではない。己の能力を把握してうまく使いこなしておる」
そう言ってマミゾウは笑みを浮かべると
「そして、もしやとは思うが……儂が見ているその姿さえ本当の姿ではなかったりするのかのう」
ディアボロが姿を変えていることを言い当てて見せた。
「……何故そう思う?」
「あの『糸』じゃ」
マミゾウはディアボロの質問に答え、さらに話を続ける。
「外界の技術を用いても、『服の素材として』使われていながらお主の『体重を支えきれるほどの強度を持つ糸』など聞いたことはない」
「故にあの糸は、何かの能力で作られた糸の役割をしている全く別の何かではないのかと思ってのう」
「何かしらの術で強度を強めたとは考えないのか?」
マミゾウの考えを聞いたディアボロは、彼女に一つ質問をする。
「空を普通に飛べぬお主に、そのような術が使えるとは思えんのう。他の能力を使ってこないところからして、お主の能力はあの4つだけのようじゃな」

博麗の巫女である霊夢は自身の能力によって空を飛ぶが、巫女の力を有している。
普通の魔法使い(或は黒魔術師)と称される魔理沙は魔法によって空を飛び、魔法を使うことができる。
その他にも確認されているほぼ全ての人外の存在も、何かしらの方法で空を飛ぶことぐらい、簡単にできる。

だが彼はあの4つしか能力を使ってこない。他の能力を使った方が楽に乗り越えられるはずの状況でも、使ってくる様子も全くない。
故に、空を普通に飛ぶことがままならない彼が他に何かの術を使えるわけがないとマミゾウは考えたようだ。
「それにお主のコートは、袖の部分の色が異なっておった。ならばあのコートを形作っていた物は、色を変えられると見るのが自然じゃ」
「そのような物をもしもお主が全身に纏うことができたのなら、お主は姿形を変えることができる。というわけぞい」
「………」
ディアボロは何も言わなかった。
何のヒントも教えなかったのに、彼のとった行動から(可能性の一つとして挙げたとはいえ)マミゾウは彼が姿を変えていることを見抜いてしまったのである。
「よく頭が回るものだな。そこまでたどり着かれたら、いくら言い訳をしてもお前は追及をやめないだろう」

ディアボロがそう言った直後、彼を覆っていたイエローテンパランスが膨張し、真っ二つに裂ける。
突然目の前の男の体が破裂ことにマミゾウも周りの狸も驚いた。

「ならばもう、この肉塊の内に身を隠す必要もないな」
内側より本来の姿を見せたディアボロはそう言って、イエローテンパランスとホルス神の能力を解除する。
すると黄色い肉塊も、氷柱に結ばれていた糸の役割をしていた肉も、『そこにあった』という痕跡を残すことなく消えてしまった。
氷柱は急速に冷気を散らし、イエローテンパランスの肉と同じように消えてしまった。

「……まさかお主が正体だったとはのう。儂らのような変化をしていたのなら見抜けたやもしれぬが、何やらよくわからぬ物に覆い隠されて姿や声を変えていたとは、予想もつかぬわい」
どうやらマミゾウ自身もこの化け方は初めて見たらしく、驚いたかのような反応をしている。
……が、どうやら変わった化け方を目撃したことが面白かったのか、その反応に反して口元は笑みを浮かべている。

マミゾウを含む妖獣は、尻尾の大きさがそのまま妖力の大きさを示している。
故に、妖力の大きい妖獣が化けた場合、その『妖力の大きさのせいで』尻尾が隠せないことが多い。
そうするに妖力が大きい者は化けさせる規模が大きくなるために(妖力の大きさを示している箇所だからなのかもしれないが)尻尾が隠せないことがある。
ちなみにマミゾウの尻尾はそこらへんの狸よりは大きく、自身の手足よりは確実に太い。

それと比べると、ディアボロが今回用いた化け方は『肉体を覆って正体を隠し、覆ったものの性質を利用して姿と声を変える』というものだった。
そのような道具はどこの昔話でも語られたことはなく、マジックアイテムでそのようなものを作ろうにも、恐らく声を完全に別人のものにすることはできないだろう。
しかし、自身より小さい者や非生物には化けることはできず、他のものをばけさせることもできない。
そのうえ化けている最中に衝撃を受けると形が崩れたりすることがあるという少々難儀なものである。
が、この能力は攻防一体の性質を持つために戦闘にそのまま転用できるし、隠しきれない箇所はないために挙動不審な行動を取りさえしなければ怪しまれることはほぼない。

162東方魔蓮記第四十五話:2014/06/19(木) 21:38:40 ID:qQ3hNGVE0
「いずれ気づかせる必要はあったが、大したヒントも与えずに姿を変えていることに気づくとは思わなかったな」
若干呆れ顔でディアボロはそう言う。
周りの狸はちょっと警戒しているらしく、ディアボロからかなり距離を取っている。
「なんじゃ、あの時会ったその場で正体を見せておけばよかったものを」
「それもできたが、お前の実力をこの目で見ておきたくてな」
そう言ってディアボロはイエローテンパランスのDISCを額から出す。
それを見た狸たちは今まで見たこともない光景に驚き、さらに距離を取る。
「……何度見ても額からそれが出たり入ったりする光景は異様じゃのう。更に出入りの痕も見当たらぬから不思議じゃ」
「他の奴らはあまり気にしていないように見えるが、心の中ではそう思われていたりするかも知れないな……」
ディアボロはマミゾウとそう言葉を交わしながらイエローテンパランスのDISCをケースに入れる。
ディアボロからだいぶ距離を取っていた狸たちも、マミゾウとディアボロが親しげに会話しているのを見て少しずつマミゾウの元に戻ってくる。
「ところで、お主の用事はこれで済んだのかい?」
「まだ済んではいない。……むしろこれからが本題だ」
ディアボロの少々柔らか目になっていた表情が再び真剣になる。
「俺はこれからあの聖人の元に偵察に行く」
「ほう……」
ディアボロの発言に、マミゾウが反応する。
まだ『情報が揃っておらず』、『敵になる可能性が高い』存在の元へ、自ら偵察に行くと言い出したのだから。

「だが、一人では難しいだろう。何せ相手は『聖人』だ。どんな力を持つのかわからない」
「……だから、お前の助けを借りたい」
マミゾウはディアボロに呼びかける。
妖力が大きい故に正体の発覚の可能性は他より高いが、『経験』も『知識』も『技術』も、他の狸を超えているのは確実であるからだ。
「儂がぬえに呼ばれたのは、妖怪のピンチだから助けてほしいと言われたからじゃ」
マミゾウはそう言ってディアボロに笑みを見せる。
「故に、お主が聖人達について探るというのなら、手を貸してやらねばならぬ。そうしなければ、儂がここに来た意味がないわい」
彼女がこの幻想郷に来たのは、ぬえに助けを求められたから。
ぬえが助けを求めたのは、『聖人』が復活したから。
そしてぬえの知り合いであるとある人間が、自身に『聖人が本当に妖怪にピンチを齎(もたら)すのかどうか探りたいから助けを借りたい』と自分に頼みに来た。

化かすのは化け狸の得意技。ならば、その力を使ってその人間が聖人の考えを探る手助けをしてあげるのは道理である。
それが聖人たちの思想について知るチャンスにもなるし、懐く思想によっては妖怪のピンチを『杞憂だった』という形で救うことにもなりうるのだから。

163東方魔蓮記第四十五話:2014/06/19(木) 21:39:18 ID:qQ3hNGVE0
「……ありがとう。お前が力を貸してくれるなら、俺も安心できる」
ディアボロはたった一言、感謝の言葉を述べた。
聖人達のもとに一人で潜入するのは、彼にとっても多少の不安はあったのかも知れない。
「……ならば、聖人たちのもとに向かう前に準備をするとしよう。お前は何が必要だ?」
「儂なら、化けさせればすぐに用意できるから大丈夫ぞい」
マミゾウは自分の姿だけでなく、他の物体も変化させることができる。
これが彼女のみにできることなのか、それともある程度の力を得た化け狸なら誰でもできるのかどうかは分からない。
だが、彼女に何か足りないものがあれば葉っぱ一枚拾ってすぐに化けさせればいいだけのことだ。
……が、流石に何らかの術の力を持つ道具に化けさせるのは無理だと思われる。
最も、目撃者はおらず、彼女自身もそれについては何も言っていないため真相は不明である。
「そうか。俺は……」
彼の頭の中にふと頭に浮かんだのは漫画の方の『ジョジョの奇妙な冒険』。
いざという時にあるスタンドを使うことを考えたのだが
「大丈夫だ。DISCの忘れ物はない」
その能力が能力だけに、使うのはやめることにした。
そのスタンドとヘビーウェザーは、今の彼がその二つのスタンドの内の一つ『のみ』をコントロールするためだけに精神力を集中しても、制御しきれるかどうかわからないからだ。
片や発動すれば決して薄まることがない毒ガスのような危険な能力で、もう片方は他のスタンドと違って『無意識』の領域に秘められた憎悪の力故に、本来の持ち主でさえ制御不能だからである。


「そうか、では一休みしてから行くことにするかのう」
「ああ。いくらなんでも戦闘直後の状態のまま聖人のもとに向かうのは危ないだろうからな」
マミゾウの提案にディアボロは同意し、その言葉通りまずは一休みすることにする。
妖力を少しでも回復したいマミゾウ。走り回ったりした故に筋肉を疲弊させたディアボロ。
お互い、念を押して一休みしたほうがいいだろう。


これから彼らは、一休みの後に聖人たちのもとに向かう。
『聖人たちは妖怪の敵になるのか』、この一点を徹底的に探るために。

この一点が、妖怪たちが反逆を仕掛けるか否かを決めるのだから。

164セレナード:2014/06/19(木) 21:42:26 ID:qQ3hNGVE0
投稿完了。多少のミスを発見できなかったのは失敗でしたが、無事に投稿ができて良かったです。

そして最近、1話分を書くのに時間を掛けすぎると段々おかしくなって行っているような気が……。
早めに書くか、おかしくならないように気を付けないと。

165どくたあ☆ちょこら〜た:2014/06/20(金) 09:47:15 ID:/DNVQlgs0
セレナードさん、投稿お疲れ様です。
vsマミゾウ戦はお互い傷を負うことなく無事終了。いよいよvs神霊廟編突入ですね!
何やら意味深な思考ががが…
あの【最弱】スタンドの登場フラグ?
あれは組織の瓦解、信用の失墜には最適な能力ですからね。どういった使い方をするのか…

166まるく:2014/06/23(月) 20:05:12 ID:yjo1Zxdk0
投稿お疲れ様です!

テンパランスは普通に強いスタンドだけど本体&悪役だからで倒されたいい例ですからね。
バンジー肉紐、ストーンフリーを思わせる使い方。

制御できないスタンド、軽い説明と概要から…何でしょう?パープルヘイズかな?と思ったけどあれ速攻で薄まるし。
うーん、やっぱりちょこら〜たさんの言うとおり、2個目の最弱スタンドなんでしょうか。
それにして、無意識の力は恐ろしいですね。よく考えればその二つ似ている性質だな、と。
こいしちゃんいずサバイバー。

マミゾウさんのしっぽはヘタすれば自分の胴より太いから…まあ、強力な妖獣ですしね。
確かに、妖怪とかでは何かを被って姿を変える、というのは少ないのかも。
次の作品も楽しみに待っています。

167中学三年生:2014/06/28(土) 21:32:52 ID:BHG1lvaQ0
話の流れをブッた斬りますが、チョコラーたん、最新話投稿お疲れ様です。旧作キャラか···興味が沸いてきたッ。





様々なネタが詰まった第二部の予告編をもう一度読み返しましたが···素晴らしい!すごいぃい!!何てッ言ッたッてあの聖白蓮が彼の有名な戦争s大好き人間の演説を···!もう爆死ぃうモノですよコイシィァ!

168名無しさん:2014/06/29(日) 11:46:13 ID:3FuTZtGQ0
落ち着けぇええぇ!

169まるく:2014/07/04(金) 00:17:03 ID:IS/fltSA0
うへぇ、月末と思ってたら色々重なって過ぎる…
明日の夜…今日の夜?くらいに投下します。
という自分を追い込んでいくスタイル。きっと終わるって…。

170まるく:2014/07/04(金) 20:15:00 ID:IS/fltSA0
遅くなりました。
自作の投下とさせていただきます。

171深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 1―:2014/07/04(金) 20:17:05 ID:IS/fltSA0
「冥界……ですか」
『そうだ。冥界に赴き、その主である西行寺幽々子とコンタクトを取れ。死後の世界、というと良い物ではないが、あの尼僧の言う通りならば幻想郷ではそれほど境の無い物と認識してもよいだろう』
「……僕が知っている冥府と東洋の宗教で謳われる死後の世界は違いがありますが、そこは幻想郷特有の世界、とでもいうのでしょうか。地の底と一般に言われるところへ、今天を目指して向かっているのですから」
『それについてはこちらも未知の状態だ。お前がその場で感じ取り、理解するのだ』
「了解しました」
『お前の手元にも電話があったようで助かったぞ。危うく、私自らがその地へ赴く必要ができてしまう所だったからな』
「そうですね。命蓮寺でも借り物でしたし、今使っている物も借り物。こちらにトランシーバーの様な、……ちょっと、男性が持つには不自然ですが、器具を所持していますのでそれを渡せればボスにも手間を取らせずに伝達が行えるのですが……」
『文明が中途半端な発達を遂げた世界だ、現状に存在しない物を嘆いてもしょうがあるまい。良くも悪くもここは異世界だ、新たな世界に順応しなければ生きることはできない。これはどこでも同じだろう』
「その通りでした。失言をお許しください」
『構わん。では任せたぞ、私のドッピオよ』
「了解しました。……ボス、最後に一つ、僕の戯言を聞いていただけないでしょうか?」
『…………なんだ?』
「最初に電話した時には今にも死んでしまいそうな、消え去ってしまいそうな……脆い炎の様な印象でした。でも、今のボスからは以前と同じ、威厳と力強さを感じられます。何があったかは聞きません。ただ、安心しました。それだけです」
『…………そうか、そうだな。あの時はあまりに唐突な出来事でさすがの私でも動転していた、とでも考えておけ。あまりの展開には人間隙が生まれる。前の下っ端のカスどもにギリギリまで追い詰められたように、
 我がスタンドでも読み切れぬ運命に気が持たなかった……それを弱さとして、私は受け止めた。ドッピオ、私たちはまだ成長する必要がある。それをここで私は認識したのだ。……以上だ』

 幻想郷の空を、一人の少年が行く。
 ドッピオはボスとの『電話』を行いながら冥界へ、空の彼方まで飛んでいた。

「すまなかったね、長く電話を使ってしまって」
「あ、あー……はい」

 そう言って、ドッピオは大きく咲いた花を妖精の一人に返す。
 受け取った妖精は、何事もなかったかのように花を電話と言って返すドッピオに対して戸惑いを隠せない。
 無理もない。急に一人の少年が雲を操り近づいてきたかと思えば、

『とぅるるるるるるるるるるん、るるるん。……ボスからの電話だ、取らせてもらってもいいかな』

 と、かなりドスを効かせた声と、有無を言わせない恐ろしい表情で話しかけてきたからだ。あまりに怪しく、恐怖を覚えるその行動に、何も言わずに渡してしまうのは精神の幼い妖精では無理も無い行動だった。
 花を手渡された妖精と、その取り巻きの妖精。不気味さからさっさと逃げ出そうとしている姿に、

「あー、電話ついでにすまないけど……冥界? っていうのはこの先でいいんだよね?」

 そう、ドッピオは確認の質問を尋ねる。
 元々指示通りに雲は動くため、ドッピオの知らぬ土地でも幻想郷の中、地名が定められているのなら問題なく向かえるのだが、一人での知らぬ土地、先には案内人もいない。
 そんな状態で向かうのは心もとないため、つい出た質問だった。

「え? うん、お屋敷はこの先ですよ?」
「白玉楼はこの雲越えたら、おっきいおっきい門があるから、それを越えればすぐだよ」
「そう、ありがとう。何にもお礼はないけれど」

 答えも安心を得られる答えであり、問題はなさそうだった。
 あいさつを済ませると、雲もそれを理解したかのように速度を出し、冥界へと向かっていく。


「……変わった人だったねー」
「頭が春です?」

172深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 1―:2014/07/04(金) 20:17:59 ID:IS/fltSA0


 空を進み、高度を増すごとにだんだんと空気が冷え込んでくる。が、山を見下ろすほどの高所になっても酸素が薄くなることによる息苦しさは感じられない。
 良いことではあったが、途中でそのことを想像の外から置いていたことに対して後悔していただけあり、ドッピオは胸をなでおろす。
 生身でここまでの高さ、もはや下を見ても恐怖の感情は浮かんでこない。現実離れした所に存在しているという、どこか感慨深い感情が浮かび上がってくる。
 上を見ても下を見ても死の世界。そんな通路で身を守る物は預かり物のこの雲だけ。こんなもの、幻想と言わずになんというだろうか。

「……!! あれ、か……?」

 その中を進んでいくと、上も下も果ての無い、とてつもなく巨大な門が現れる。
 傍らにはいくつもの柱が浮かび、門自体にも大きな紋章が浮かんでいる。
 どこを基点として建造されているのか、それともこれほど巨大な物が浮かんでいるのか。その先を見せぬように、沿うように建っている壁らが、大地から見えないのはどういうことか――
 様々な疑問が入り組み浮かび上がるも、そのすべてを昇華させる、感動。
 それが、たどり着いての第一印象だった。

「……けれど、どうすればいいんだろう」

 勝手知ったるように、乗っている雲は進んでいくが、ドッピオ自身は先の通りここについては何も知らない。
 一見通れるようには思えない門を、どうするつもりなのか、どうすればいいのか。
 そう考えている間にも、ぐんぐんと門に近づいていく。

「…………、わ」

 少し身を乗り出せば紋様に手の届きそうになる距離まで近づいた時、石を投げ込まれた水面に浮かぶ波紋のように、紋様が揺れ動く。
 その投げ込まれた石のごとく、ドッピオの全てを飲み込む。
 一声上げる前に、身体が入り込むと、そこには最初から何もなかったかのように。荘厳な門だけが建っていた。

「わわあっ?!」

 その出来事に驚き、身を縮めて構えるが、そのころには辺りは一変していた。
 先ほどまでの雲海ではなく、目の前に広がるのは長い長い階段。門と同じく、その上は果ての見えない、洩矢神社の前にも長い階段が積まれていたが、その非ではなかった。
 そして、先ほどまでに感じていた空気の冷え込みとはまた違う、体の芯から身震いを無理やりに引き起こされるようなうすら寒さ。
 ドッピオには馴染みはない、死者を供養するための卒塔婆が階段の脇にいくつも、いくつも、いくつも立っておりその周りをうっすらと不定形の白い気体の様な物が漂っている。
 まるで、ここに踏み入れた彼を仲間に導こうかと値踏みをしているように。

「……っ、ここが、冥界、か」

 妖怪の山とは違う、人間の本質の恐怖を突き動かしているかのような恐怖感が感じられる。
 もし何もなしにここに来たのであれば今すぐにでも逃げ出したいと思えただろう。
 ボスの指令が無ければ。ボスの無事が聞けなかったのならば。ディアボロがここにはいないと知っているから。
 その事実があるからこそ、彼はその先へ踏み出すことができた。

「そのまま階段を上って、でいいんだよな……頼むよ」

 ドッピオの声と共に、雲は再び移動を開始する。ふわりふわり、冥界の奥へ向かって。

173深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 1―:2014/07/04(金) 20:18:59 ID:IS/fltSA0

(止まれ……と言っても聞こえてはいないだろうが)

 階段を上っていると、妙な感覚と共に声が聞こえる。
 直接話しかけられているわけではなく、頭に響くような、感覚が声を感じ取る様な、そんな響き。

(ここより先は冥界の主、西行寺の屋敷。許可の無く侵入することは許されぬ。これは警告だ)

 視線の先、はるか遠くにぼんやりと見える人影。
 幼い少女のようだが、その右手は一言でいえば異様であった。
 柄の無い刃をぐるぐると布で包んで無理矢理に持ち手を作り、さらにその持ち手を右手に縛り付けて固定している。これもまた、無理矢理に。
 そのせいで本来の長さよりかなり短くなってしまっているが、それでも、二度と手放さないように、と過剰に思えるほどに。

「……何者だ?」
(もう一度だけ、だ。ここより先には進ません……聞こえていないだろうが)

 少女の方から一つ一つと階段を下り、その姿を明確にしていく。
 それは、まるで色の無い世界から出てきたような、輪郭の淡い姿。異様な右手の刃だけが色彩を保っていて、それだけが現実感を感じさせ、ちぐはぐな印象を与える。
 その刃を見せつけるかのようにドッピオの方に向けて、斬りおとされるか退がるか、を選ばせてくる。

「……西行寺の屋敷であっていることは確かみたいだけど……いわゆる警備の人間かい、君は。後、聞こえてるよ」
(なに?)

 ドッピオの言葉に一瞬少女は目を丸くする。

(そうか……くくく、ふっはははははは)

 何がおかしいのか、左手で顔を隠すように、声を抑えるようにしているが感情と共にあふれてしまうのを止められないかのように。
 その怪しい雰囲気から、何をしてくるかわからない相手に対してすぐに行動を取れるよう、雲から降りて警戒を強める。
 一仕切に笑い終えると、鋭い切っ先とよく似た、人を切り殺すことに何のためらいもない目をドッピオに向ける。
 幻想郷には合わない、弾幕ごっこで見る様な真剣さではない。ドッピオが生きていた世界でよく見た、頭の冷えた狂気の眼からの真剣さだった。

(まさかスタンド使いがおれの他にいるとはな! ならばその実力みせてもらおう!)

 その頭に響く声と共に、刃を構えて戦いの意を示す。

「ちょっと待て! なんでそうなる!?」
(この先に行きたくば、このおれを倒してから、ということだ!! 強者との戦いこそ我が愉悦、軟弱な女の遊びなど性には合わん!)
「女じゃん!」
(これには事情があるが、今はそんなのどうでもいいだろう! さあどうする、闘るか、退くか!) 

 滾ったような眼差しで少女はドッピオを見据える。そして、闘い以外には認めないという意思を強く伝えている。
 ドッピオは髪をかき上げ、エピタフの予知を映しながら。

「…………こんなことに無駄な時間を費やしたくはないんだけれど」

 そう言いながら、階段を上り間を詰める。
 スタンド使いという以上、何らかの像があるとは思うが今はそれが見えない。何か手の内にあるだろうが、そもそも自分が近距離型なので、いかにして近づけるか、が戦いの胆となる。
 姿も異様だが、最も異質なのはあの刀。それの注視と、予知の確認。

(スタンドとは闘いの才能、精神の根本、本能! そしてそれを自由に操れるものが立ち会えば起こる事柄はただ一つ! お前はこの先には行けん、いつまでたってもな!!)

 少女は宣言をすると、階段から飛び、上段からドッピオに斬りかかる。
 相手は刃物、自分は肉体。拳で刃を受けては無傷では済まないだろう。防御行動は基本的に回避となる。
 そして、最初の行動だけでも敏捷性はかなりのものだ。そのまま潜って逃げ切ることもできない、とみえる。
 そこまで判断し、階段の外、卒塔婆の並ぶ整備のされていない地に逃げるように避ける。
 いかにして虚を突いて近づき一撃を喰らわせられるか。そこが戦いの要。

174深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 1―:2014/07/04(金) 20:19:32 ID:IS/fltSA0

(シャアーーッ!!)
「……くっ!」

 もちろん、少女は事を簡単には進ませない。その驚異の脚力でドッピオを追う。
 攻撃が届きそうになる度、周りの物を気にせずに刃を振るう。攻撃を回避する度、刃に触れた物は斬られ、地に転がり落ちる。
 ぞんざいに取り扱われ、闇雲に振るわれているその刃は、実によく研ぎ澄まされた一品だということを、知らしめるには十分であった。
 その攻撃を、予知で見ながら躱しつつ、反撃の機会を待ち続ける。予知を利用した、基本的な戦い方。
 だが内心で、ドッピオは焦りを感じていた。以前、はたてにも同じように戦ったが結局一撃も与えられなかった。スタンド使い、という利点は元が同じ人間だからこそ。同じ能力だからこそ対等に戦える。
 人間を越えた生物との……文字通り桁の越えた相手には太刀打ちできないのではないか、と。

「くそっ!!」

 だからといって、今の状態で自分に何ができよう。結局この土壇場で改善の案など浮かびはしない。
 リゾットの様に、ゆっくりと攻め立てる相手と違い、この少女は持ち前の体術を生かした、息をつかせぬ接近戦を仕掛けてくる。思考のための時間を作らせてはくれない。

(どうした、その程度か! 攻めねば何も掴むことはできんぞ!!)

 考えを重ねる度、余裕がなくなっていく。少女が斬り込むごとに刃を振るう速度と踏み込みが早く、強くなっていく。
 それはまるで、ドッピオの回避を『憶えられて』いるかのように。

「……ッ! しまっ」

 予知に目を向ける暇もなくなるほど、少女だけ早回しで再生されているかのように段々と早く、強く打ちこまれる。
 もはや下がりながらの回避は不可能となるほどに。

(捕らえたぞ! もはや下がること叶わぬ!)

 ドッピオは足を止めてその剣戟を受けざるを得ない状況となった。
 生身とは違い、スタンドの拳であればまだ刃を受けきれなくはないが、それでも受けるたびに細かな傷がドッピオの手に反映されていく。

(ウッシャアアアアーーーーーーーーッ!!!)

 少女の声とは合わぬ、獣じみた裂帛の気合いが感覚を通してドッピオに伝わる。
 それに合わせたように、凄まじい猛攻が彼を襲う。
 迫る刃を、あるいはその持ち手を幾度も弾く。その度に勢いを増して襲いかかる。弾く。襲いかかる。弾く。

「あっ、……」

 その猛攻に追いきれなくなった一撃を、時間が緩やかになり、その中を通るように肩口から胴まで振り下ろされる。
 それだけでは終わらず、返す刀で少女はドッピオの胸を正確に貫く。

「…………あ、ぇ、あれ」

 大量の血と味わったことの無い痛み。心の臓を貫く痛みとは違う冷たい感覚。
 それらが襲い来る、と思ったが何も起こらない。
 むしろ、身体には確かに通った感覚があったにもかかわらず、一切の怪我をしていなかった。
 へな、とその場にへたり込むドッピオ。それに対し、少女は姿勢を維持したまま。胸に突き刺された刃はそのままドッピオの体の中を通り、座り込んだときに肩口から離れる。刃とドッピオの身体には、一切の汚れはなった。

(……拍子抜けだな。全く持って。おれの障害にも経験にもならん)

 そう言って近場の木に目掛けて2,3と刃を振るう。一振りはそのまま木を切り裂いたが、二振り、三振りと振るった刃の軌道は木の中を通るが、驚くことに少しも切り口が作られていない。
 少女は興が失せたかのように、再び階段の方へと向かう。

「ちょ、ちょっと……」
(修練のための人斬りは主の許可はあるが、本気の殺しはない。それまでの事よ。最もお前の様な雑魚を殺したところで何にもならないが)

 振り返り、そう冷たく言い放つ。全く歯牙に掛けていないその態度。
 もし、その後ろ姿を見せつけたならそのまま後ろから攻撃してみれば一矢報いられるかもしれない。
 一瞬そんな考えがよぎるが、嫌に響く心臓の鼓動とあまりにも情けない自分の現状が足を震えさせて動かせなくさせる。
 予知を、見ることも躊躇われた。今の惨めな自分を映しているにすぎなさそうだから。

175深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 1―:2014/07/04(金) 20:20:13 ID:IS/fltSA0
「あーーー!!! アンったらこんなにめちゃめちゃにしてー!!」

 少女の視線の先に、今度はその少女に色を付けたような瓜二つの、もう一人の少女。
 こちらは見るからに幼そうな印象を与える。色の無い、アンと呼ばれた少女と違って柔らかい、人間味を感じる表情をしている。浮かべる表情が怒りでも、先ほどまでと比べれば。

「いくら何でもやりすぎよ、あとで綺麗にするの手伝ってよね」
(御意)

 妖夢はアンを叱りつける。その命も、アンは素直に返事をする。
 それは、小さくも主従の繋がりに見える。……見た雰囲気では、妖夢を主とは思えないが。

「お、おい……」
「……へ、ど、どなた様?」

 ドッピオが視界に入っていなかったのか、妖夢は驚いたように返事を返す。

(客人だ。西行寺幽々子に用件があるようだ)
「幽々子様に? 何の御用事でしょうか」
「いや、……その、君らは、一体……」

 色々言いたいことはあるが、二人を見比べ、指を指す。
 妖夢は一瞬自分の身体を見てどこか変な所がないかを見渡すが、合点がいったように笑顔を浮かべて答える。

「西行寺家の剣術指導兼庭師、魂魄妖夢です。こちらは私の一番弟子のアン。アヌビス神のアンです。もっとも、神様とは違うみたいですけど」
「違う、そこを聞きたいんじゃない」

 返答に対して、呆れた顔しか出なかった。

176まるく:2014/07/04(金) 20:33:57 ID:IS/fltSA0
以上になります。ね。
命名は幽々子です。

ちょっと言い訳。
アヌビス神は自分を引き上げてくれたこと、自分に体と生活を与えたことに感謝し、妖夢に忠誠を誓っています。
また、幻想郷が求める物と自分の求める物の違いを理解し、それに時間をあまりかけずに順応してます。幻想郷のなせる技ですね。
殺しをあっさり諦めるアヌビス神に違和感を持たれる方もいるかもしれませんが、手段として殺しを使っているだけではないかな、と自分は考えています。
DIOに対しては「強くて敵わないから忠誠を誓った」であり、そこからの目的が「承太郎を殺せ」です。本体の心を乗っ取りやすくするために『殺すことはなんてことはない』というのを教えるためにチャカの時に理由もなく殺したのだと。
妖夢は強くて敵わないから、ではありませんが。アヌビス神を一つの命として対等に見たのは同じ妖怪じみた彼女が初めてなのではないか。そこに云々かんぬん。
500年生きたスタンドですし、やっぱり妖怪だと思います。幻想郷で過ごすのがいいと思います。

177セレナード:2014/07/04(金) 23:19:23 ID:JCym4E0A0
投稿、お疲れ様でした

まるくさんの考えはまあ間違っていないでしょう。
刀にその身を宿したものが恩を返そうとするならば、それは自らを振るわせるものに手を貸すことでしょうから。
私の小説でも少し触れていますが、アヌビス神は幻想郷の者から見れば「刀に宿る精霊」か「自力で動けない刀の付喪神」みたいなものなんでしょうね。

それにしても「頭が春です?」と言われるとは……w
いやまあ、確かに彼のことを知らない者から見ればおかしい行動でしょうけどw

178どくたあ☆ちょこら〜た:2014/07/05(土) 12:11:52 ID:6/2u.OpQ0
すいませェん……感想を書き込もうとしたのですが、『NGワードが含まれます』と弾かれてしまいました(泣
失礼ですが、ハーメルンにて感想をメッセージでお送り致しましたので、御確認戴けると嬉しいです。
お手間をお掛けして申し訳ございません。

179saiba066:2014/07/05(土) 18:25:10 ID:QrkFH0cA0
>>156

あなたのおかげでやる気メーターカンストしましたよ

180まるく:2014/07/06(日) 23:18:55 ID:rFf9RwHo0
感想ありがとうございます!!

>セレナードさん
DIOへの忠誠も、恩義の返しなんですよね。相手が悪かった…
セレナードさんのSSにもそのようにも書いてあったので、少数派ではないなとは思っていました。やったね小傘ちゃん!以下略

ほとんど脅迫ですからね!春らしい乱暴に至らなくてよかったですね(何
頭の悪さは無邪気の印。聞こえてなくてよかったね。

>ちょこら〜たさん
ハーメルンの方にて返信いたしました。
感想ありがとうございまし!

>saiba066さん
やりましたね!

181名無しさん:2014/07/07(月) 07:35:06 ID:c9el4Yhs0
投稿乙です。


俺が前にしたレス誤字パネェ···。

182まるく:2014/07/31(木) 23:18:30 ID:tg1glbNE0
月末にちらりちらり。
深紅の協奏曲、投下させていただきますね。

183深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 2―:2014/07/31(木) 23:19:42 ID:tg1glbNE0

 白玉楼。冥界の中に位置する西行寺家の広い屋敷。
 それ以外には特に何があるというわけではない。ただ、広い広い空間に所狭しと墓標と樹木が立ち並ぶ。
 そんな中にある、一つだからこそ目を引くその屋敷と、それに沿うように並ぶ桜の木。
 時期が過ぎて花は散り、広々と緑の葉が冥界と呼ぶにはあまりにも眩しすぎる太陽の光を覆い隠す。
 明るすぎなければ、暗すぎず。そんな、爽やかな光が白玉楼の門を照らしていた。

「どうぞ」

 ぎ、と小さくきしむ音を立てて門扉が開く。
 妖夢の先導で、一応客人としてドッピオは屋敷に招かれた。
 彼の後ろには、先ほどまで斬り結んだアンが控えている。……そんな気はないようだが、抜き身の刃を持った者に後ろに立たれるのはあまりいい感じではない。
 それを見越しているのかいないのか、無表情のままについていく。

「私の後についてきてください」

 あの後、妖夢は合点がいったかのような態度を取ると、真っ直ぐに屋敷を案内した。
 彼女曰く、『主が懇談会を行う、あなたはきっとそれの来賓だろう』と話してくれた。
 すなわち、自分が来ることを知っていたということ。それについて妖夢に問うても『自分にはよくわからない』と返された。
 その時の困り顔からは、主が聡いのか従者が鈍いのかはわからなかったが、彼女の中での真相はそうであるらしい。
 結局、当の主に聞くしか解答は得られないようだった。

「……、おぉ……」

 通路の角を曲がって、思わずドッピオの口から嘆息が漏れる。
 曲がった先にある、開いた部屋のその先に見える中庭。日本、というものを表す様な美しい景色。
 流れが作られているかのように敷き詰められた玉砂利と、その中に植えられた力強さをも感じさせる美の表現、松。
 もっとこれを間近で見てみたい、という衝動に嫌でも駆られる引力があった。
 見とれて足が遅くなっているのを妖夢は感じ、振り返ると自慢げな表情を浮かべる。

「美しいでしょう? 外も中も、庭師である私が剪定してるんですよ」

 誇らしげに語る少女がもし人間であったのなら軽い気持ちで褒めることができるが、目の前の少女は立派な人外。
 それを語る技術と実行しうる腕が実際に備わっているのだろう。
 芸術家。
 そう、彼女を表してもいいかもしれない。

「素晴らしいね……僕らの国の庭園技術に負けず劣らずだ。君みたいな子がイタリアにいたなら、美術史に名を残せたかもしれない」
「えっへん。ですが、私の腕は幽々子様の物なので、残念ながら別国の為に振るうわけにはいきませんね。幽々子様が仰るなら別ですけど」
「慕っているんだね、主を」
「もちろんです」

 妖夢に素直な感想をぶつけるが、本人はその言葉を主へと飛ばす。
 彼女の忠誠の証が、そこからも感じ取れる。
 少し後ろに目を配るが、アンはそこに思うことはないのか、表情変わらず後ろについてくるだけだった。

184深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 2―:2014/07/31(木) 23:20:40 ID:tg1glbNE0

「ここですね。えーっと、和室の入り方とかって知ってます?」

 見た目他と変わらぬ部屋の前で、妖夢が足を止めて説明する。
 今まで通った、最初以外の全ての部屋は障子が閉まっており中の様子はわからなかった。
 ここも同じように閉まっているが、その薄い紙は中にいる誰かの影を映している。

「いや、初めてだしよくわからないけど……博麗神社と似たようだけど、あそこでは特に何も」
「霊夢……まあいいです。私の真似して入ってくださいね。そんなに気負わなくてもいいですけど」

 中からはぱちり、ぱちりと何か木と木が小さく打たれるような音が聞こえてくる。
 その戸の前で、妖夢は膝を着き、

「幽々子様、客人を連れてまいりました」

 先ほどまでと違い、硬く丁寧な語調で話す。
 中からは、「は〜い」と間延びした声が聞こえる。散った花びらが空を舞うような、ゆるくふわりとした声。
 それを聞くと、す、と障子を開き

「失礼します」

 中にいる者に一礼した後、ドッピオを率いて部屋の中に入る。

「よくいらっしゃいました。長い旅路でお疲れかしら?」

 部屋の中心で将棋盤へ、傍らの本を参考に駒を並べている。
 その途中にあったのだろう。その作業を続けたまま目線だけをこちらに向けてドッピオを労う。
 一見、妖夢のそれとは違い招いた客に対して無礼にも見えるその行為は彼女の持つ雰囲気がすべて打消し、上塗りしている。
 姿勢を崩さず、それでも迎えようとする意志を送り。彼女の持っている生来の気品がドッピオを迎えていた。

「ごめんなさいね。一度目を離すとどこまで置いたかわからなくなっちゃうから……すぐ終わるからそこで待っててね」
「幽々子様、そういうことは来る前までに終わらせておいてくださいよ……」
「そうしようと思ったのだけれども、字が細かくて……歳かしら〜」
「取らないでしょう」

 ぱちり、とまた小さく将棋盤から音が鳴る。
 上からの態度だが、それは従者である妖夢との彼女なりのコミュニケーションなのかもしれない。
 ぱち、と三度小さく音が鳴り、それが終わりの合図となって、主である亡霊―西行寺幽々子―はドッピオに体を向ける。

「『お久しぶり』ね。無事でここまで来られたことを歓迎します」

 三つ指をつけ、深々と頭を下げる。
 慣れたようなその動きは、しかし優雅さを持つ、もてなす心のあらわれであった。

「……何?」
「どういうことです、幽々子様?」

 しかし、裏腹につかれた言葉が頭に残る。
 冗談にしては上手ではない。頭を上げたその顔からは妖夢が知る自分を困らせる様な事を言って楽しむ顔ではない。

「妖夢、歓待の準備をしておいて。私はこの方とお話ししているから」
「……はいー。っ、て、男女二人を一つの間にしてはいけませんよ」
「あら、どうして? この方はお客人よ。主がもてなさないこと、失礼に当たらないとでも?」
「だって、間違いが起こるからって言われてますし」
「間違いって、なあに?」
「えーっと……クイズ?」
「おばか」

 その落差が、ドッピオにも理解できる。
 それほどに、彼女は何かを隠していることを伝えてきた。
 とぼけた返答をしている妖夢を、幽々子は窘めると、

「妖夢が心配だというのなら、アンを外に置いておけばいいじゃない。それでも納得がいかなくて?」

 と別案を上げる。

「うーん、多分それならきっと大丈夫です。アン、ドッピオさんや幽々子様が何か間違えたら教えてあげてね」
(……わかった)
「頼んだわよ! それでは、失礼させていただきます」

185深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 2―:2014/07/31(木) 23:21:12 ID:tg1glbNE0
 納得がいった表情で、二人は退室する。
 部屋の中から見た二人の姿は、濃い影はそのまま離れの方に向かい。薄い影は開いた障子から少し動き腰を下ろす。
 中には、幽々子とドッピオの二人のみ。

「ふふ、ごめんなさい。幾つになってもあの子はああいう子なの。真面目で、未熟で、実直で」
「…………まあ、それは感じ取れます。それより」
「あなた、将棋はできます? 最近頭を動かす機会が少なくて久しぶりに引っ張ってきたのだけれど……」

 そういいながら、盤の上に駒を並べる。この部屋に入った時から盤を中心に座布団が二つ、用意されていた。

「外国ではチェスの方が有名と聞いています。もし将棋を知らずそちらをご存じであればそれほど覚え辛いルールではありませんが」
「いや、さっきのは一体どういう」
「その答えを聞きたければ、まずはこちらの質問にお答えください。……判断材料として。今、あなたは多くの者に」

 その答えを聞く前に、ドッピオの身体が動く。
 幽々子の首元に掴み掛り、そのまま締め上げる様に彼女の身体を引き上げる。
 ドッピオより小さいその身体は容易く持ち上げられる。掴んだその手から布越しに感じる体温は生きている者とは思えぬほどに、冷たかった。

「なら先に答えてやろう、答えはNOだ。オレは今、幻想郷に来て感じた、気づいた謎の全てを知る、その者に出会っている。
 その答えは、ボスのことに繋がる謎だ……オレに知る権利はないが、その情報を吟味し、必要であれば断たなければならない!」

 対してドッピオにはこれまでにないほどの熱が手に宿る。
 本来知りえない、知ってはいけない謎。それに至る者は悉く消されてきた。
 今、常に彼を動かす忠義が、幽々子の首に手をかけようとしている。
 それに対して、怒りに満ちた彼の表情を見ても、それによって着崩れた着物とは違い少しも崩れぬ表情の幽々子。
 別段彼に対して暴挙に怒りを向けるわけでもなく、憐れみを出すわけでもなく。

「ならば、全てを話します。ですが、そのための道具として。過去を並べた盤に向かい合わなくてはなりません。私の言葉の続きを話しましょう。
 あなたは今、多くの者に計られているのです。あなたがどう至るのかを。……もし、今ここで私を殺すことができたのであれば、今のあなたなら再び永劫の鎮魂の中に身を任せるしかない」

 真っ直ぐな瞳で、ドッピオに話しかける。
 それは、彼の中にある『何か』に向かって語りかけているような、そんな話し方。

「……随分ともったいぶるじゃないか、あぁ? ところどころ、分かっているような口を。ここの奴らは皆そう話す、自分勝手に、相手を理解せずにッ!」
「いいえ、それは違います。全ては、理解をしているから。理解とは物事を知ること、相手を知ること。知ることは過程を理解すること。……皆があなたを知っているからこそ、あなたにはそう聞こえる」

 鼻と鼻が触れ合うほどの距離でも、幽々子は冷静にドッピオへ返す。
 如何に自分の気持ちを伝えても、それを諭すように、自らの域へ引き込むかのように受けられる。
 振り上げた感情の腕は、そのまま振り下ろされることなくやや乱暴に幽々子を手放すこととなる。

「きゃ」
「…………いいだろ、そこまで言うのなら。知ってることを洗いざらい話すのなら」
「ありがとう。この西行寺、平時に嘘を吐くことはあっても今ここに偽ることはしないことを約束するわ」

 崩れた着物を整え、聴く姿勢になったことに感謝の意を述べる。
 二人は対面し、それぞれに20の駒が並べられた盤を挟む。
 騒ぎの中、外の薄影は動かずに。流れを知っていたかのように。

186まるく:2014/07/31(木) 23:26:18 ID:tg1glbNE0
以上になります。…うーん、ちょっとスランプ的な。
将棋もチェスも、自分はルールは知ってるけど強くはないです、むずい。
幻想郷の住人はこういうの強そうですよね。参ります。関係ないけど、白黒をつけたがらない紫は囲碁が苦手、っていうのを見たことがあります。面白いなと。

愛=理解! 過程を信じることは結果を理解することに繋がる道です。そういいたいのです。
まだドッピオには、難しいのかもしれません。

187名無しさん:2014/08/01(金) 21:49:20 ID:uLsZ9RfQ0
まるくさん、投稿お疲れ様です。
遂に真相を握る幽々子との邂逅。相手の土俵に上がる前に暴力を翳すのはマフィアの常套手段ですが、やはり簡単には動じてくれませんね。「恫喝は格下相手にしか通用しない」と、某漫画でもCIA諜報員がマフィアの幹部に言い放っていましたし。
『時が流れ 輪廻の果て また出会えたら
過去を並べた 盤の前で 向かい合おうか』
石鹸屋の楽曲ナイト・オブ・マウントからの引用でしょうか?あの曲私も大好きです。こう、派閥に属する事、対立する事の哀しみみたいなものが表現されていて。
幽々子の脅し文句の真意が気になりますね。紫が時間系能力者と手を組んで【一巡】に対処したように、幽々子の能力を利用して【レクイエム】の呪いを制御していたり。
次回は幽々子との将棋対決?【エピタフ】を利用できるかが鍵ですね。
中高と囲碁将棋部部長だったので懐かしい気分です。弱過ぎて他の部員が三、四段とか取っている中一人だけ最後まで段位を取れなかったような名ばかり部長でしたが…

次回どのような展開が待っているのか、楽しみにしております!

188まるく:2014/08/02(土) 17:24:31 ID:0foclNJE0
感想ありがとうございます。

土俵に上がる前の暴力ですが、どちらかというとドッピオがキレているだけとも。必死です。
対して幽々子様は直接真相に関わっていたわけではなく、あくまで紫から聞いた程度。第三者だから彼の必死さも相手にしない余裕がある。狸だとも思います。
某漫画のCIA諜報員…どこの暴力教会なんだ…

ナイト・オブ・マウントは情景が浮かびやすく、音楽としても非常にかっこよくてお気に入りです。石鹸屋!
椛の曲(だと自分は認識しています)ですが、引用として使わせていただいてます。過去を並べた盤とか、ディアボロにとっては苦痛でしかない。

幽々子の脅し文句も、結局幻想郷の真意というか周りがどう思っているのかということ。
幽々子はどこまで行っても町人Aです。

将棋経験者さんもいるもんですね…将棋倒しなら得意ですy
ボードゲームは3手先読んだ程度じゃあ勝てないんだよ…だよぉ…


しかし、読んでいただき期待もしていただいてあれですが、やっぱり一晩おいて見返してみるとすこし文章の雑さがちらほら。
後日、訂正版を投下する予定です。すまぬ…すまぬ…

189セレナード:2014/08/07(木) 00:01:47 ID:dATmtreA0
ふむ……少々時間がかかりましたが、無事に最新話が完成しました。
それでは、投稿を開始します。


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