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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

123BGM3 香霖堂:2014/05/27(火) 21:52:04 ID:P/QX6RTw0



「えーっと……これなんてどうだろう……」
「それは石仮面。曰く、人間をやめる程度の道具だ。被ってみてもなんともなかったが、少なくとも懇談会向けではないだろう」
「そ、そうですね。今にも動き出しそうで怖いし……これは?」
「見ての通り、矢だ。何となく気の入った装飾だが特に変わりはない物だよ。……本気で探す気はあるのかい」
「いまいち、よくわかってないんです。幽々子様の無茶ぶりはいつも頭を悩まさせられます……」

 店内を見回りながら、あれでもないこれでもないと妖夢は品物を見続ける。
 もはや二人を魔理沙や霊夢などの客ではない存在と捉え、そして同じように言っても自分が納得するまでこちらの言うことを聞かないようなタイプ。そう認識した霖之助は適当に解説を入れることにした。
 それでも、別にそこに関して手を抜くつもりはない。妖夢が見ているのはおおよそ霖之助も興味を持っていない物が多く置かれている所。久しぶりの商売らしく、買い取ってもらうのもいいかもしれないと考えていた。

「……あれ、これは?」
「……おや?」

 そう言って妖夢が取り上げたのは、さらしに包まれた細長い何か。
 もちろん霖之助はそれが何かを理解している。だが、彼は何故それがそこにあるのかがわからなかった。

「それは折れた刀の刃だ。真っ赤に赤錆びていて、とても刃物としての使い道はなかったんだが……用途がとても興味深くてね」
「刀、でしょう? 切る以外に何に使うんです?」
「その通りなんだが、能力で見たところ、どうやら『思いの物を切れる』らしい。……それがどういう意味なのかは分からないがね」

 そこまで説明すると、思案顔でそのさらしに包まれた刀を見やる。

「……しかし、あとで包丁にでも加工しようと錆取りだけして奥にしまっておいたはずなんだが……?」
「包丁にですって、もったいないですよそれは……みても、いいです?」

 刀剣と言われ、少し目を輝かせて妖夢はそれを見つめる。
 蒐集家の多い幻想郷だが、実際に武器として使っている者は数少ない。扱いに難しい、地味、可愛くないなどよく言われるが、そんな中でも使用する者の中、数少ない一人が妖夢である。
 美しい、という意味ではなくて実用的な用途を醸し出すその魅力を理解する、数少ない理解者だろう。

「ああ、構わないよ。ただし、素手で触らないでくれよ」
「そんくらいわかってますよぅ」

 そういった者であるなら、見せるのもやぶさかではない。物の価値は、理解している者同士でないと語り合えないからだ。
 はらりはらりと、少しずつ外の空気に触れさせる。それは楽しみにしていた包みを開くその瞬間に等しい。

「……わぁ」

 解かれたその刀身は、まだわずかに汚れが残っているものの、元は美しい刀剣としてあったということを感じさせる気風があった。
 まるで、冷たい水で濡れているような、静かな輝きを秘めていた。

「元はかなりの業物ですね。楼観剣と比べれば全然ですが」
「やはりわかるものだね。けれど見ての通り、刀剣として使うにはもう無理だろう」

 確かに、中本から完全に折られていて、切っ先の側が残っている。つまり、振るうための柄が無いのだ。

「その部分が存在せず、それを新たに他の者が付け加えてしまえばそれはもはや元の製作者が意図して作ったものではない、別の存在と化してしまうだろう。
 一般的な人間の倫理と道具のそれに当てはめるのは滑稽だが、相手のそれとは違う身体を他人が勝手につけて弄っているのと等しいからな」
「うーん、そうですけど……包丁には惜しいような……?」


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