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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6
173
:
深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 1―
:2014/07/04(金) 20:18:59 ID:IS/fltSA0
(止まれ……と言っても聞こえてはいないだろうが)
階段を上っていると、妙な感覚と共に声が聞こえる。
直接話しかけられているわけではなく、頭に響くような、感覚が声を感じ取る様な、そんな響き。
(ここより先は冥界の主、西行寺の屋敷。許可の無く侵入することは許されぬ。これは警告だ)
視線の先、はるか遠くにぼんやりと見える人影。
幼い少女のようだが、その右手は一言でいえば異様であった。
柄の無い刃をぐるぐると布で包んで無理矢理に持ち手を作り、さらにその持ち手を右手に縛り付けて固定している。これもまた、無理矢理に。
そのせいで本来の長さよりかなり短くなってしまっているが、それでも、二度と手放さないように、と過剰に思えるほどに。
「……何者だ?」
(もう一度だけ、だ。ここより先には進ません……聞こえていないだろうが)
少女の方から一つ一つと階段を下り、その姿を明確にしていく。
それは、まるで色の無い世界から出てきたような、輪郭の淡い姿。異様な右手の刃だけが色彩を保っていて、それだけが現実感を感じさせ、ちぐはぐな印象を与える。
その刃を見せつけるかのようにドッピオの方に向けて、斬りおとされるか退がるか、を選ばせてくる。
「……西行寺の屋敷であっていることは確かみたいだけど……いわゆる警備の人間かい、君は。後、聞こえてるよ」
(なに?)
ドッピオの言葉に一瞬少女は目を丸くする。
(そうか……くくく、ふっはははははは)
何がおかしいのか、左手で顔を隠すように、声を抑えるようにしているが感情と共にあふれてしまうのを止められないかのように。
その怪しい雰囲気から、何をしてくるかわからない相手に対してすぐに行動を取れるよう、雲から降りて警戒を強める。
一仕切に笑い終えると、鋭い切っ先とよく似た、人を切り殺すことに何のためらいもない目をドッピオに向ける。
幻想郷には合わない、弾幕ごっこで見る様な真剣さではない。ドッピオが生きていた世界でよく見た、頭の冷えた狂気の眼からの真剣さだった。
(まさかスタンド使いがおれの他にいるとはな! ならばその実力みせてもらおう!)
その頭に響く声と共に、刃を構えて戦いの意を示す。
「ちょっと待て! なんでそうなる!?」
(この先に行きたくば、このおれを倒してから、ということだ!! 強者との戦いこそ我が愉悦、軟弱な女の遊びなど性には合わん!)
「女じゃん!」
(これには事情があるが、今はそんなのどうでもいいだろう! さあどうする、闘るか、退くか!)
滾ったような眼差しで少女はドッピオを見据える。そして、闘い以外には認めないという意思を強く伝えている。
ドッピオは髪をかき上げ、エピタフの予知を映しながら。
「…………こんなことに無駄な時間を費やしたくはないんだけれど」
そう言いながら、階段を上り間を詰める。
スタンド使いという以上、何らかの像があるとは思うが今はそれが見えない。何か手の内にあるだろうが、そもそも自分が近距離型なので、いかにして近づけるか、が戦いの胆となる。
姿も異様だが、最も異質なのはあの刀。それの注視と、予知の確認。
(スタンドとは闘いの才能、精神の根本、本能! そしてそれを自由に操れるものが立ち会えば起こる事柄はただ一つ! お前はこの先には行けん、いつまでたってもな!!)
少女は宣言をすると、階段から飛び、上段からドッピオに斬りかかる。
相手は刃物、自分は肉体。拳で刃を受けては無傷では済まないだろう。防御行動は基本的に回避となる。
そして、最初の行動だけでも敏捷性はかなりのものだ。そのまま潜って逃げ切ることもできない、とみえる。
そこまで判断し、階段の外、卒塔婆の並ぶ整備のされていない地に逃げるように避ける。
いかにして虚を突いて近づき一撃を喰らわせられるか。そこが戦いの要。
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