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バトルロワイアルぺティー

435ノア </b><font color=#FF0000>(CMFYrBvc)</font><b>:2004/09/10(金) 20:41 ID:igZ3kd.k

 ――別にオレはすごく不幸だったわけじゃない。むしろ、オレより不幸な奴なんて五万といる。
義理の両親も優しかったし、友達だっていたし、可愛い彼女だってできたし(あっ、のろけちゃった)、割と幸せだったぜ?

でも、このゲームが始まって、オレの中で何かが動いていた。まだガキだったころに、焦げた家族の顔を見たことを思い出した。

単純にああなるのは嫌だったし、死ぬのも嫌だったのかもしれない。最初は。


でも、人間がどんどん死んでいくのを見ているうちに、強迫観念が走った。
オレの家族を襲った殺人鬼のような奴らに、オレも殺されるのかと。

今度は殺されないように、オレが倒したかった。
まあ、そういうオレ自身が殺人鬼だったんだけどね。
そうだよ。結局はあいつと同じなんだと思うと、吐き気がした。

止めてほしかった。オレの歪んだ思考を、誰かに停止してほしかった――



大迫治巳(男子二番)は、茫然としたまま、千嶋和輝(男子九番)を見た。
「何バカなこと言ってんだよ」

治巳はほとんど閉ざされた思考で、かろうじて呟いた。「せっかく笹川ちゃんとイイ感じになれたってのに、そんな簡単に死んでいいのかよ」

死にたいわけがない。そうだろ?

和輝は手を離して、気まずそうに言った。「……実は、まだ加奈に言ってないんだよね」


――何?

思わず叫んだ。「何トロトロしてんだよ! 早く言えよ! このヘタレが!」治巳は座ったまま若干離れて、続けた。
「早く言え。ここまできたんだから。オレは邪魔しないから」
「……うん」
和輝は頷いて、加奈を見た。「加奈、ちょっと話がある」そう言って、手招きをした。

「治巳君、ちょっと待っててね」加奈はかすれた声で、静かに言った。



二人は、二十メートルほど北へ移動すると、立ち止まった。

和輝は深呼吸をした。

めちゃくちゃ緊張した。殺し合いゲームの最中だというのに、何だか呑気で、幸せな緊張感だった。

「加奈、わかってると思うけど、俺さ――」
「言わなくてもいいよ」加奈は薄ピンク色に染まった頬の筋肉を上げて、笑んだ。「好きだったよ。結構前から」弾んだ声で、言った。

心の中にずっとあった靄が晴れるように、加奈の顔が鮮明に見えてきた。


月は落下し、星は一面に輝いて、太陽は沈まない。
世界ががらりと変わったような、そんな衝撃と幸福感。やたらにハイになれそうだった。


和輝は言った。「でも、言わせて。俺も好きだよ」
「うん」加奈は笑みを浮かべたまま、頷いた。



―閑話休題―

「……和輝さ、私を生き残らせてあげようと思ってるでしょ」
「……うん。治巳はどうしても生きたがってるようには思えないし、俺も加奈が生き残れるなら――」
「みくびらないでよ」加奈は眉を上げた。

へ? 和輝は狼狽した。


「何で私だけ置いてくの! 一人だけ仲間はずれなんてやだよ!」
「でも――」
「私も逝くよ。一生分の幸せは使い果たしたから――」
加奈は横を向いていたが、和輝に向き直って笑った。「幸せなまま死ねるなら、それでいいじゃん!」

――加奈!

和輝は加奈をきつく抱きしめた。


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