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とある英雄譚のようです

1名無しさん:2018/04/22(日) 20:46:23 ID:G.gIoQVo0

荒野なのか、それとも峡谷なのか。吹き抜ける風に舞う砂塵に覆われた世界。
隆起と沈降の地形を適当に割り振ったかのような褐色の大地。
見渡す限り生命の痕跡が存在しないその地の、中心部。

まるで何者かによって線を引かれたかのように存在している半球の領域。
そこは周囲の澱みをものともせずに、緑豊かな環境が存在していた。
荒んだ太陽が照らすのは、小高い丘の上に伸びる、大きさも形も違う五つの影。
四種類の塊と、それらに囲まれている一つの屍。

骨だけになった腕が掴んでいるのは、身の丈ほどもある杖。
主を失ってなお溢れ続ける魔力は、丘を清浄な空間で包むために漂う。
命を司る蒼の魔力は屍から離れるごとに薄くなっていき、荒野の空気へと溶けていく。

魔力球の中に存在する最も大きな影は、腐り落ちた大樹の幹。
その両隣に突き刺さっているのは、錆びた剣と、その数倍はあろうかという巨大な牙。
向かいにはくすんだ色の十字架があり、それらは綺麗に四方向に配置されている。

人為的な痕跡を残すその場にはしかし、生命の存在は何一つ感じ得ない。
風の呼吸すら止まっているかのような、静かで荒れ果てた大地。

ジオラマのような世界で、突如として錆びた剣が音を立てて傾いた。
その音に引き寄せられるかのように、漂う魔力に流れが生まれ、
魔力によって遮られた空間を濃い霧で覆い隠す。

233名無しさん:2018/04/24(火) 17:07:58 ID:JZ..YL360

(゚ー゚*下リ  「でも、見たことの無い動きには……!」

七本の剣が順次射出された。
一直線にドクオへと迫り、魔術に弾かれる。

(゚ー゚*下リ  「ふふ……っ!」

急接近した彼女が二振りの剣を同時に振り下ろす。

('A`) 「フォールトっ!!」

形成した空間断裂に弾かれた天剣。
最初に飛来した七つは、粉々に砕けていながら未だ消えていなかった。

(゚ー゚*下リ  「刻みなさい! エスノストゥム!」

天剣の欠片はドクオを囲んで巨大な嵐を生み出す。
岩石すらも細切れにしてしまうほどの激しいうねり。
乱反射する光は内部からの衝撃で飛散した。

('A`) 「死んだかと思った……」

(゚ー゚*下リ  「おや、無傷ですか」

234名無しさん:2018/04/24(火) 17:09:01 ID:JZ..YL360

('A`) 「その威力が馬鹿高い剣の構成は魔力におるもの。
     だったら干渉することくらいはできる。
     命がけの状況に追い込まれればな」

(゚ー゚*下リ  「剣に対する支配力は当然私の方が上ですが、
        ほとんど魔力の塊になってしまえばそうではないということですね。
        勉強になります」

女性の背中に再生した七本の天剣は、
切っ先をドクオに向け宙に浮かぶ。

('A`) 「少し、打ち合うか」

ドクオもまた、魔力で創り出した剣を構える。
魔力量の少ない彼が編み出した、ナインツ・ヘイブンに対抗するための剣。
僅かな魔力を糧に、硬化と再生の魔術を半永久的に発動し続けるそれは、
陽炎のようにその姿を一定に留めずに揺らめく。

(゚ー゚*下リ  「不安定な状態ですが……そんなもので受けられるのですかっ!」

フォールの振り下ろしは、甲高い音で弾かれた。
一瞬の驚きを極限まで抑えた彼女は、そのまま二撃目へと繋げる。
ドクオは首を狙った剣先を受け止めた。

235名無しさん:2018/04/24(火) 17:09:49 ID:JZ..YL360

('A`) 「一秒前の俺よりも、今の方が強い。
     魔術の可能性は無限だからな」

(゚ー゚*下リ  「認識を改める必要がありそうですね」

何十合と斬撃を重ねる二人。
お互いに一歩も引かず、目と鼻の先の距離で鎬を削る。
時折飛び散る魔力の欠片が、大地に浅く無い爪痕を残す。

(;'A`) 「っち……」

(゚ー゚*下リ  「ふふふ……」

('A`) 「正直、その底なし沼みたいな魔力が羨ましいよ」

(゚ー゚*下リ  「たったそれだけの魔力で、これほどの魔術を運用しているのは素直に尊敬していますよ。
        それに、すぐさま新たな魔術を生み出せる知識と発想力。
        私は他の魔術師とあったことはありませんが、簡単なことではないでしょう」

('A`) 「はっ……良く喋る……」

(゚ー゚*下リ  「これで、終わりです……ナインツ・ヘイブン!」

236名無しさん:2018/04/24(火) 17:10:51 ID:JZ..YL360

重たい一撃をドクオが受けたのを確認し、距離をとる女性。
断絶と打ち合っていた七本の刃が女性の背に集まる。
手放した二刀と合わせて、後光の様に円形に浮いて配置された九つの剣。

「ローテイシオン」

高速で回転した魔力剣は、光輪となってフォールの背から放たれた。

('A`) 「がっ……」

ドクオが盾として生み出した断絶ごと、その胸を深々と切り裂いた。
人間がおよそ生きていられないほどの鮮血が飛び散り、ドクオは膝から崩れ落ちた。

(゚ー゚*下リ  「……やりすぎてしまいましたか」

('A`) 「痛ぇ……。とっさに再生魔術を自分にかけてなかったら、御陀仏だったな……」

(゚ー゚*下リ  「意識もあるのですか。全く、恐ろしい方ですね」

('A`) 「はは……褒められても嬉しくないな。だが、身体捌きは盗ませてもらった。
     少なくとも俺が相対した中で最高レベルの剣術だ」

(゚ー゚*下リ  「魔術師とは本当に恐ろしい。同じ人間ではないんでしょうね」

237名無しさん:2018/04/24(火) 17:11:27 ID:JZ..YL360

ナインツ・ヘイブンの内、八つをその身に仕舞った。
残った一つをドクオの傷口に向ける。

(゚ー゚*下リ  「リフドロップ」

('A`) 「魔力による強引な再生……普通の人間なら卒倒するぞ」

起き上がって座り込んだドクオ。
不健康そうな青白い顔はそのままに、身体中の傷は完全に治癒していた。

('A`) 「しかし、多彩な魔術を持ち合わせているんだな」

(゚ー゚*下リ  「ナインツ・ヘイブンの持ってる九つの魔術。
        私が使えるのはそれだけです」

('A`) 「それが名前の由来か」

(゚ー゚*下リ  「さぁ、どうでしょう。私が受け継いだ時にはもう、
        この剣に関する歴史などはほとんど失われていましたから」

('A`) 「輝龍クレシアが殺した九体の天使。
     その身体から抉り出した光の魔力をもとにした剣」

238名無しさん:2018/04/24(火) 17:14:21 ID:JZ..YL360

(゚ー゚*下リ  「それは本当の話なのですか?」

('A`) 「少なくとも、俺の知る限りは」

(゚ー゚*下リ  「なぜ龍が殺した天使が素材の武器を人間が扱っているのですか?」

('A`) 「文献上だと、輝龍クレシアは人間の男と恋に落ちた。
     そして二人の間に生まれたのがエール・スノウ。初代の天剣使いだ」

(゚ー゚*下リ  「エールという名前は聞いたことがありますね」

('A`) 「龍は種族としての強者。子を為して繁栄することはできない。
     その目に見えないルールを魔力で強引に破ったツケ。
     天使達は輝龍クレシアとその娘の命を奪うために現れた」

(゚ー゚*下リ  「それを返り討ちにしたのですね……。一体どこから現れたのでしょうか」

('A`) 「わからない。ただ、戦場は熾烈を極めたらしい
     環境が変わるほどに。そして再びの襲撃に備え、娘に天剣を残した」

(゚ー゚*下リ  「それが……ナインツ・ヘイブン」

('A`) 「九つの魔術は、それぞれの天使達が持っていた特有の魔術。
     天剣の使用者はそれらを自由に扱うことができる」

239名無しさん:2018/04/24(火) 17:15:18 ID:JZ..YL360

(゚ー゚*下リ  「ええ。ですが、逆に言うとそれらの九つの魔術しか使えません。
        魔力を持っていたところで、私はただの人間なので」

('A`) 「その動きは十分に人間を超えているがな」

(゚ー゚*下リ  「お褒め戴き光栄です。
        さて、そろそろ帰ります。あなたの目的は達成しましたよね」

('A`) 「待て。病気の件がまだだ」

(゚ー゚*下リ  「……私の病は人の身には過ぎたこの魔力が原因です。
        本来であれば娘が生まれてすぐに引き継ぐべきだった天剣。
        ですが、幼少時に膨大な魔力をその身に宿すことは、かなりの負担となるのです」

('A`) 「それが寿命を圧迫していると」

(゚ー゚*下リ  「私は娘にそのような思いをさせたくありませんでした。
        ですので、未だに天剣の使い手たる資格を有しているのです。
        彼女がもう少し育ってから、引継ぎを行います」

('A`) 「……嘘は言っていないんだな」

簡単な観測の魔術。
詠唱も無しに発動したそれは、瞬時にフォールの身体状況を調べる。
魔力の歪みが彼女の身体に対して与えている影響は、
想像以上に深刻なものだった。

240名無しさん:2018/04/24(火) 17:15:53 ID:JZ..YL360

(゚ー゚*下リ  「断りも無く調べるなんて、失礼な方ですね」

('A`) 「すまん……」

(゚ー゚*下リ  「分かってくださったみたいなので、結構です」

('A`) 「今から天剣を取り除けば、少しでも……」

(゚ー゚*下リ  「天剣の受け入れ先は一人しかいません。
        私が最も望まない答えです」

('A`) 「……」

(゚ー゚*下リ  「あなたに会うずっと前から決まっていたことです。そう気にしないでください。
        むしろ感謝しているのです。私の研いた技を、彼女に伝えることができるのですから」

('A`) 「わかった。数年後、必ず約束を果たそう」

(゚ー゚*下リ  「ありがとうございます。それでは、そろそろお城に戻りますね」

('A`) 「あぁ」

241名無しさん:2018/04/24(火) 17:16:32 ID:JZ..YL360

フォールは風にも劣らない速度で走り去った。
とても身体が悪くなっているとは思えない程に早く、
すぐにドクオの視界から消えた。

('A`) 「娘の名前も聞いておけばよかったな……。
     まぁいい。次は……っと」

地図に書き込まれたリストの内、半数以上は横線によって埋められていた。
残る強者のほとんどは、話し合いにも応じてくれそうにない者ばかり。
先行きの不安を溜息と共に飲み込んで、重たい腰を上げた。

242名無しさん:2018/04/24(火) 17:18:04 ID:JZ..YL360

>3


(-_-) 「誰だ……?」

砂漠の真ん中で、男は待っていた。
目印にしていた枯れ木は、強い日光を遮って大きな影を落とす。
上空から数十歩の距離のところに着地して、声をかけた。

('A`) 「初めまして、か。ヒッキー・ドレイク」

ドクオの接近に気づいていた男は、声を聞いてからゆっくりと顔をあげる。

(-_-) 「あぁ、よく見れば落ちこぼれルグ家の生き残りじゃないか。
      どうだい、一族最後の魔術師になる気分は」

おちょくる様に短杖を振るって言葉を返す。
気にした風は無く、ドクオは続けた。

('A`) 「いいんだよ、ルグ家は俺で完成したんだから」

(-_-) 「随分と高い鼻だな」

('A`) 「お前こそ、随分と自惚れているようだな。
     御先祖様の努力の結晶を何もせずに受け取っただけのくせに」

243名無しさん:2018/04/24(火) 17:19:01 ID:JZ..YL360

ドクオの知っている限り、ヒッキー・ドレイクという男は自ら魔術を生み出したことは無い。
最大派閥のドレイク家で最も膨大な魔力を持つ彼は、
多くの有用な魔術を引き継いでいたからだ。
ルグ家のドクオとは違い、新たに魔術を生み出す必要がなかった。

(-_-) 「……魔術師にとって大事なのは魔力の量だ。
      お前にはそれが圧倒的に足りていない。そんなこともわからないのか?」

それ故、彼は自身の才覚に絶対の自信を持っていた。
魔力量の多い者こそが、最も強い魔術師であると。

('A`) 「分かっていないのはお前さ。魔力の量なんて大した問題じゃない。
     魔術は扱い方によってその性質を幾らでも変化させる」

(-_-) 「ムカつくやつだな。わざわざ俺を呼び出しておいて、したかったのはそんな説教か?
      それともレタリアを使うことができない八つ当たりか」

('A`) 「あーそれだ。レタリアの権利、俺にくれないか?」

突然の話を理解できずに、ヒッキーの思考は完全に停止した。
この時もしドクオが攻撃魔術を同時に唱えていたら、一撃で昏倒させていたかもしれない。

244名無しさん:2018/04/24(火) 17:19:34 ID:JZ..YL360


(-_-) 「は?」


間抜けな声を出して、漸く働きだした脳細胞で言葉の意味を再度吟味する。
結果、腹の底から湧き出てくる笑いをこらえることはできなかった。

(-_-) 「くっくくく……どうした? お前如きでもこの世界のために尽くそうという気があるのか。
      だが、お前では戦いを生き残ることは出来ないだろうよ」

('A`) 「本当に与えられてばかりで何も知らないんだな」

(-_-) 「なんだと?」

('A`) 「過去、終末の戦いを生き残った魔術師は一人もいない」

ドクオの杖から魔力が流れ出て、細い線を描く。
それは、人の名前を表す文字になった。
魔術師の中では必須科目でもある終焉に関する知識のうち、
誰もが暗唱できるほど覚えている名前。

245名無しさん:2018/04/24(火) 17:20:43 ID:JZ..YL360

それらは、かつて終焉を戦った魔術師達の名。

(-_-) 「そんなわけが」

('A`) 「ルグ家の役割を知らないのか」

(-_-) 「…………観測と、分析」

('A`) 「よく知っているじゃないか」

(-_-) 「だからどうした。俺が最初の一人になればいい」

('A`) 「お前には無理だ」

(-_-) 「言うのは勝手だが……喧嘩を売った代償は高くつくぞ」

ヒッキーが構えた短杖は膨大な魔力を纏う。

('A`) 「ったく、これだからプライドだけ高い奴は」

ドクオもまた長杖を構え、魔術を発動させていく。
距離を開けて並ぶ両者が杖に集めた魔力には、歴然とした差があった。
片や天変地異レベルの大魔術を発動できそうなほど大きく、
相対するもう一つは吹けば消えるほどに小さい。

246名無しさん:2018/04/24(火) 17:21:20 ID:JZ..YL360

(-_-) 「はっ……可哀想に。そんなちっぽけな魔力で何ができる」

('A`) 「よかったな。ここで俺にレタリアを奪われてしまえば、お前は寿命まで長生きできるぞ」

(#-_-) 「糞が! 押し潰されて死ね! ロックエンド!」

砂漠から持ち上がった大量の砂に魔力が浸透し、
巨大な二枚の壁となってドクオの左右に立ち上がる。
空にまで届くほどの高い壁は、形成された瞬間に中心に向かって動く。
瞬く間に蟻一匹の生存すら許さないほど完全に閉じた。

('A`) 「無駄が多いって言ってんだろ」

砂の一枚板の中心部に無傷で立っているドクオは、
ヒッキーの大魔術が発動される前から一歩も動いていない。
人間一人分の大きさだけが不自然に砕かれた砂の壁。

(-_-) 「何をした……」

('A`) 「分からないからお前は二流なんだよ」

その一言はヒッキーを怒らせるのに十分すぎた。
膨大な魔力が砂の中に染み込んでいき、魔術としての形を得る。

247名無しさん:2018/04/24(火) 17:21:49 ID:JZ..YL360

(-_-) 「サンドアクス」

砂で組み立てられた巨大な斧が三つ。
魔術によって圧縮された砂の重量は、同じ大きさの鉄塊すら凌ぐ。
それらが軽やかに舞い上がり、ドクオの身体目掛けて放たれた。

風切り音ですら大地を揺らすほど。
受ければ盾ごと引き裂かれるのは必然であった。

(#-_-) 「潰れろ! ゴミ!!」

('A`) 「……セパレイション」

ドクオの目前で斧は分解され、砂漠へと還った。

(-_-) 「なんで……だよ……」

('A`) 「お前、本当に何も知らないんだな」

(#-_-) 「糞がくそくそくそくそ!! もういい!
        俺の前から消し去ってやる!」

248名無しさん:2018/04/24(火) 17:22:20 ID:JZ..YL360

大気中に拡散した魔力の奔流がヒッキーの短杖へと流れ込み、
複雑な魔術を幾重にも組み上げていく。
同時発生した空間の歪みの中で加速し続ける魔術は、
光すらも飲み込む暗い穴となって砂漠そのものを吸い込んでいく。

('A`) 「馬鹿やろ……無茶しすぎだ……スライサ!」

ドクオの放った極薄の刃は、次元の歪みごと切り裂いて進む。
単調な風の魔術を何百回と重ねたそれは、
龍属の首すらも容易く削ぎ落すほどに鋭い。
ものの数秒でヒッキーの魔術の根幹に達し、それを破壊した。

(-_-) 「……」

('A`) 「レタリア、渡してもらえるか」

(-_-) 「ああ……」

自身の扱う最大威力の魔術すら容易に砕かれたヒッキーは、
呆けた表情で左腕の袖を捲った。
そこに記された印に右手の指をあて、魔力を込める。
指の動きに合わせて浮かび上がった印をドクオの腕に移した。

249名無しさん:2018/04/24(火) 17:23:04 ID:JZ..YL360

(-_-) 「……一つだけ教えてくれ」

('A`) 「なんだ?」

(-_-) 「お前は何をしたんだ」

('A`) 「無駄が多いと言ったろ。考えればすぐにわかることだ。
     確実に相手、もしくは自分に影響を及ぼす魔術にだけ魔力を込めればいい。
     俺という魔術師一人を殺すのにこの砂漠を丸ごと消す必要なんて皆無だろ?」

(-_-) 「そんなものは机上の空論だ!
      そうやって攻撃や防御にかける魔力を節約していれば、
      想定外の一撃ですぐにでも戦闘不能に追い込まれる」

('A`) 「想定外なんてないんだよ。どんな変化をしようが、即時に対応する。
     それが俺に許された唯一の戦い方だ」

(-_-) 「馬鹿げてる」

('A`) 「俺はそうは思わない。さて、目的は達成した。
     殺すつもりは無いが、お前はどうする」

(-_-) 「……レタリアを失った俺がすごすごと帰れると思ってるのか」

('A`) 「知らん」

(-_-) 「っち……。どこにでもさっさと消えな」

('A`) 「そうさせてもらうさ。そろそろ計画も次の段階だ」

(-_-) 「お前、何をするつもりだ」

('A`) 「何って……終わらせるんだよ。この胡散臭い戦いをな」

250名無しさん:2018/04/24(火) 17:23:35 ID:JZ..YL360



・・・・・・

251名無しさん:2018/04/24(火) 17:25:07 ID:JZ..YL360
読んでくださった方、有難うございました。
今日はここまでの予定です。
レスが励みになります。

あと二回くらいで終わると思いますので、それまでどうぞお付き合いください。

252名無しさん:2018/04/24(火) 17:40:35 ID:SDticvYA0
再開してたか乙乙

253名無しさん:2018/04/24(火) 19:56:40 ID:ysZ8awxc0
おつ

素直に面白い

254名無しさん:2018/04/24(火) 21:19:58 ID:jk1t.2Ac0
おつー

255名無しさん:2018/04/24(火) 21:39:45 ID:1qelsSZc0
おt

256名無しさん:2018/04/25(水) 19:19:34 ID:/7XdDRWs0
>>1の杖とか錆びた剣とかこういうことだったのか……
めっちゃ続き気になる

257名無しさん:2018/04/27(金) 17:44:12 ID:L0fb2YPY0
おもしろい
早く続きを

258名無しさん:2018/04/30(月) 14:54:01 ID:7X8WUdNc0

>1


約束の丘。

レタリアの魔術が導く戦いの場。
集まった英雄達は最大限の力を発揮できるように、
それぞれが最終調整をしていた。

('A`) 「五人か」

【+  】ゞ゚) 「そのようですね」

( ФωФ) 「不足はあるまい。最も少ないときで四人、多いときで八人であった。
         っと、来客だな」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「あら、どうやら私が一番最後のようですね」

決戦を翌日と定めた最後の日、その女性は現れた。
結界を破り、優雅な足取りで五人の元に。
長く美しい蒼色の髪と、戦闘には不向きな白いワンピース。
左右の腕に嵌めた腕輪は、女性の持つ強い魔力に反応して七色に輝いていた。

突然の訪問に膨れ上がる緊張感。
女性の正体にドクオが気付き、警戒を解くように軽く手を動かした。

('A`) 「いろいろと考えが合ってな。少し早めにレタリアを発動させてもらったんだ。
     あんたは……いや、見ればわかるな。アマザイの一族だろう?」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「星霜のフロストといいます。アマザイの一族から手助けに参りました」

259名無しさん:2018/04/30(月) 14:54:34 ID:7X8WUdNc0

川 ゚ -゚) 「ドクオ。アマザイとはなんだ」

('A`) 「過去の文献にもわりと残っている名前だ。天候を操る一族。
     どこに住んでいるのかわからないから、俺は最後まで見つけられなかったがな」

( ФωФ) 「前回のドロップ、そして私が初めて戦ったときにいたヘイル。
         どちらもかなりの実力者であったな」

( ・∀・) 「これで六人。あと一人か……」

('A`) 「発現したレタリアは七通。だけど必ずしも全員集まるとは限らない。
     恐らくこのメンバーで戦うことになるだろうな」

【+  】ゞ゚) 「十分すぎる戦力のように思えますが」

('A`) 「終焉のその先は何が出て来るか、まったく予想もつかない。
     各自万全の態勢を整えておいてくれ。フロストと言ったな。
     一つ説明しておくことがある」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「なんですか?」

('A`) 「レタリアの内容は確認してるんだよな」

260名無しさん:2018/04/30(月) 14:55:14 ID:7X8WUdNc0

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「ええ」

('A`) 「俺たちは、終焉そのものを終わらせようと思う」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「終焉そのもの?」

('A`) 「五百年に一度という決まった周期で訪れる終焉。
     何者かの意思が関わっていることは明白だ。その何者かを殺すことが最終目標だ」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「……見当はついているのですか?」

('A`) 「恐らくその敵がいるであろう空間に接続するための魔術はある。
     どのような敵が現れるかわからないが……。
     もし望まないのであれば、終焉の敵を倒した後に離れてくれても構わない」

フロストは少しだけ考え、その手をドクオに向けて差し出した。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「私程度でよろしければ、お力添えをいたします」

そのか細い腕を握り返し、ドクオは頷いた。

('A`) 「未来の世代のために」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「ええ」

('A`) 「ちなみに、ここにいるほかのみんなも賛同してくれている。
     俺の調べた限り、過去の英雄たちをはるかに上回る戦力だ」

261名無しさん:2018/04/30(月) 14:55:45 ID:7X8WUdNc0

( ФωФ) 「今の説明で納得ができるのか」

怪訝そうに眉を顰めるロマネスク。
命を懸ける選択に対して、軽すぎる決断。
フロストはその問いに笑顔で答えた。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「私にとっては十分な説明でございました。
         まだ見ぬ未来をより良くする。今の私たちにできる精一杯のことでございましょう?」

( ФωФ) 「まぁいい。他の者も聞くべきことがあれば今のうちに聞いておけよ。
         明日になってからでは間に合わん」

【+  】ゞ゚) 「そうですねぇ、それなら一つ。聞いておきたいことがあるのですが」

('A`) 「なんだ?」

【+  】ゞ゚) 「お子さんの名前は決めたのですか?」

(;'A`) 「っ!? はぁっ?」

予想だにしない質問で思わず噴き出したドクオ。
冷静を装うことすらできていなかった。

262名無しさん:2018/04/30(月) 14:56:42 ID:7X8WUdNc0

( ФωФ) 「確かに、気になっていたことだな」

クールは我関せず、二つの棒きれで天剣をイメージしながら体を動かしていた。
助け舟を出すつもりは無いと気付いたドクオは溜息を一つ。

('A`) 「気づいていたのか」

【+  】ゞ゚) 「気づいてないと思っていましたか」

('A`) 「いや、魔力の痕跡でいずれバレるとは思ってたよ。
     まさか今日聞かれるとは思ってなかったけど」

( ФωФ) 「全く、前代未聞であるな。
         これから最終決戦に赴く二人が色恋沙汰の関係にあるなど」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「へぇー、そういう事ですか」

事情が呑み込めたフロストも茶化すように話に乗る。

( ФωФ) 「どちらが決めたんだ」

('A`) 「クールだ」

【+  】ゞ゚) 「それで、何という名前なのですか」

263名無しさん:2018/04/30(月) 14:57:06 ID:7X8WUdNc0







川 ゚ -゚) 「キュート」







それまで沈黙を保ってきたクールが口を開いた。
消え入りそうなほど小さいが、芯のはっきりとした声で。

264名無しさん:2018/04/30(月) 14:57:45 ID:7X8WUdNc0

【+  】ゞ゚) 「いい名前じゃないですか」

川 ゚ -゚) 「当たり前だ」

('A`) 「俺もそう思う。きっと君に似て可愛くなる」

川 ゚ -゚) 「お前に似て賢くなればいいがな」

( ・∀・) 「っち……緊張感のない」

【+  】ゞ゚) 「御二人とも、もう親バカ全力ですか」

( ФωФ) 「この戦いを生き残ることができてこそだ。
         激しい戦闘になると思うが、そこらへんは大丈夫なのだろう?」

('A`) 「時間停止の魔術と、空間防護の魔術の二重掛けだ。
     子供を危険に曝すわけにはいかないからな」

川 ゚ -゚) 「……最悪、私が死んだとしてもこの子は生まれることができる様にしている。
      二人で決めたことだ。万全を期しておこうとな」

( ・∀・) 「……そんなことには……させない。
        親がいない苦しみは……わかってるつもりだ」

265名無しさん:2018/04/30(月) 14:58:31 ID:7X8WUdNc0

('A`) 「ああ。……明日、か」

川 ゚ -゚) 「今更、怖気ついたわけでもないだろ」

('A`) 「これで世界が変わる。そう思えば、少しな」

( ФωФ) 「そう大きなことではない。失敗したところで、今まで通り戦う者が現れる」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「五百年に一度……。
         少なくとも今の私は生きてはいないでしょうから、想像すらできません」

川 ゚ -゚) 「だが、今よりも確実に良くなる。そう信じているからこそこの命を懸ける」

( ・∀・) 「そうだね」

('A`) 「遂に明日だ。みんな、覚悟を決めてくれ」

ドクオの発破にそれぞれが応え、会話は途切れた。
翌日に起こり得る全ての最悪を想定し、あらゆる対策を講じる六人の英雄。
陽が落ちて少したってから、彼らは眠りについた。

266名無しさん:2018/04/30(月) 14:59:23 ID:7X8WUdNc0

早朝、世代最強の英雄たちは空にあいた大穴を見上げていた。
それは、何の前触れもなく現れた異空間への扉。
強大で邪な魔力の氾濫に、正面から立ち向かう。

各々は互いに確認をせずに戦闘態勢をとった。

モララーが龍化を行い、龍技を発動した。
全身強化の支援術式を許容範囲の上限に設定し、敵を待つ。

クールは九つの天剣を全て展開し、魔力を纏わせた。
全てを貫く矛であり、あらゆるものを遮る盾となる剣の切っ先を天に向ける。

ドクオが腕を持ち上げただけで、あらゆる場所に魔術が現れた。
ただの一つですら世界を揺るがすほどに強力無比な攻撃魔術を、幾つも仕掛ける。

オサムの呪術は彼の全身を覆い、刺々しい黒色の鎧を作り出す。
二回りも大きくなった彼が構えたのは、赤黒い刃を持つ呪術の鎌。

ロマネスクは両手を広げ、周囲の精霊たちに呼び掛ける。
精霊術師である彼に応えるために、空気の、そして大地の精霊たちが集う。

フロストの一族だけが保有する魔術、アマザイに生み出された氷の彫像。
巨大な槍を構え、馬に跨った二体の騎士は彼女の両脇を護る。

267名無しさん:2018/04/30(月) 14:59:43 ID:7X8WUdNc0


遂に異空間より、禍を為す獣が産み落とされた。


.

268名無しさん:2018/04/30(月) 15:00:18 ID:7X8WUdNc0

>2


(メ'A`) 「……みんな、生きてるか」

川 ゚ -゚) 「何ら問題はない」

最初に応えたのは、ドクオの隣に立っていた女性。
長かった黒髪は首元で不揃いに切られており、両腕には大きな傷跡が消えずに残っている。
それでも、背にしたナインツ・ヘイブンは未だ強く光り輝く。

( ФωФ) 「久しぶりに死にかけたな」

ロマネスクは左腕の根元を抑えながら立ち上がった。
肩から先を失った傷口は、ゆっくりと再生している

( ・∀・) 「っててて……自爆かよ。勘弁してほしいよ、ほんと」

瓦礫の中から起き上がった巨大な龍。
周囲の大地が消滅するほどの衝撃の中心部に居たにもかかわらず、
ほぼ無傷のその身体は、龍属の特性を遺憾なく発揮していた。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「驚かされましたね」

【+  】ゞ゚) 「助かりました」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「いえいえ。不死のあなたには余計なお世話だったのかもしれませんが」

269名無しさん:2018/04/30(月) 15:01:08 ID:7X8WUdNc0

【+  】ゞ゚) 「死なないのにも限度がありますから」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「それはよかったです」

表面が波打つ半透明の球体の中に無傷で立っているオサムとフロスト。
防御行動のために消費した精神力が疲労となり、二人は肩で息をする。

('A`) 「これで、作戦の第一段階は終了だ」

( ФωФ) 「ここまでは今までと同じだ。そして、概ね予定通りでもある」

【+  】ゞ゚) 「さて、では……」

宝石の砕けてしまった指輪を替えながら、オサムは二つの呪術を発動させた。
一つは消費してしまった命を補充する不死の呪術。
オサムにとっては生命線となる最も重要なものである。

二つ目は呪術の発動に必要な呪力痕の作成。
彼が胸元から取り出した宝石を一つ砕くごとに、身体中の肌に余すところなく刻まれていく黒い斑紋。

魔力と異なり、発動の為に必要な呪力はすぐに引き出すことが難しい。
故にオサムはその身にあらかじめ呪力そのものを封じることで、
本来呪術師が苦手とする激しい戦闘にすら介入することができる。

270名無しさん:2018/04/30(月) 15:01:48 ID:7X8WUdNc0

【+  】ゞ゚) 「いつでもいいですよ」

川 ゚ -゚) 「ドクオ」

('A`) 「わかってるさ。まずはこの世界を護る魔法だ。
     これから起こる激しい戦いに耐えられるようにな。
     ゴッドブレス!」

杖から放出された透明な魔術は、遥か上空まで立ち昇ってドーム状に拡がっていく。
半径数百キロを覆う無色の防護膜。
威力という概念を減衰させる、ドクオの考え出した最高級の防御魔術。
同じ魔術で生み出した灰色ローブを自身も纏い、
懐から四つの供物を取り出した。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「何が出て来るでしょうね」

( ・∀・) 「フロストは何も準備しなくていいの?」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「ええ、私のアマザイはいつでもどこでもどんなことでも対応できますから」

フロストの周囲で弾ける冷気。
人間の掌よりも小さな塊が、龍属であるモララーにすら寒気を感じさせた。

( ・∀・) 「確かに、怖いね」

271名無しさん:2018/04/30(月) 15:02:36 ID:7X8WUdNc0

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「そういうあなたこそ龍技は利用しないので?」

( ・∀・) 「戦いが始まってからで十分間に合う」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「……そうですね」

('A`) 「お喋りは終わりだ」

ドクオの掲げた杖が、空に四つの魔術陣を描く。
少し遅れて噴き出した魔力が四つそれぞれに注がれて、空間転送魔術を起動する。
その穴から引き出されてきたのは、いずれも最高位の魔術素材。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「これは……凄い力ですね」

('A`) 「レタリアを発動させるまで遊んでいたわけじゃないんだ。
     どうやったら効率よく、かつ長いこと虚ろへとこの世界を繋げておくか。
     俺が考えていたのはそれだ」

川 ゚ -゚) 「全く、恐ろしいほどに勉強熱心な奴だ。
      自身のスキルアップだけに飽き足らず、そんなことまで考えていたのだからな。
      だが、それでこそ私が愛したドクオだ」

( ФωФ) 「最終決戦。それも、この世界の行く末を決めるものだ。
         よくもまぁ、それ程平常心でいられる。人間の図太さには感心すらするな。
         そこの龍も少しは見習えばいい」

272名無しさん:2018/04/30(月) 15:04:13 ID:7X8WUdNc0

(; ・∀・) 「っ! 余計なお世話だ」

鼻息荒く反論するモララー。
そんな彼の意思に反して、大地を掴んでいた四つ足は少しばかり震えていた。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「怖気づいたのですか?」

( ・∀・) 「何が出て来るのか全く予想できないんだ。みんな平然としている方がどうかしてる」

( ФωФ) 「五回も乗り越えれば心が鈍ってしまったというのもあるが……。
         災厄は五度も私を殺すことは叶わなんだ。
         今更、どんな敵がいたところで殺される気はしない。
         お前とてそうだろう。龍王」

( ・∀・) 「……そうだ、そうだ。……わかっている。
        龍属の歴史の中で最も強い龍王。誰も僕を殺せるはずがない」

少年はいつの間にか震えが止まっていることに気付いた。
老樹の言葉と、全身を巡るの魔力の力強さを感じながら、ドクオの魔術を見守る。

('A`) 「地獄の焔、黄泉の風、冥府の海、深淵の泥……」

言霊によって四つの魔術が発現した。
それぞれがお互いを喰らうかのように暴れる。
そのどれもが術者を殺してしまいかねない程の魔術でありながら、
ドクオは容易く完全なコントロール下に置く。

273名無しさん:2018/04/30(月) 15:04:55 ID:7X8WUdNc0

('A`) 「っ……」

ゆっくりと回転を始めた四つの魔術。
ロマネスクの前で実演してみせたものよりも数百倍は巨大な黒球。
四大元素は均等に混じり合い、反発を繰り返す。
高速回転することで押し潰され、円盤状へとその姿を変えた。

('A`) 「準備はいいな。もう引き戻せないぞ」

( ・∀・) 「任せてくれ。どんな巨大な敵が現れたって僕が立ち向かう」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「アマザイはどのような相手に対しても必殺の攻撃手段がございます。
         安心して任せてください」

川 ゚ -゚) 「天剣に切り裂けないものは無く、防げないものは無い。
      神の尖兵が有する地上最強の魔術だ」

【+  】ゞ゚) 「呪術の極致は戦わずに殺すことです。
         もしも大群が現れるようでしたら私が対応しましょう」

( ФωФ) 「万事問題無し。神と呼ばれた精霊使いの力、存分に振るおう」



('A`) 「開け、虚ろの扉。ミスティルティン!」

.

274名無しさん:2018/04/30(月) 15:07:19 ID:7X8WUdNc0

四大属性の最高魔術から生み出した扉の魔術は、
この世ならざる世界と繋がれた。
モララーがゆうに通れるほど拡がった暗き穴の底から溢れ出す混沌の魔力。
先程屠ったはずの神と同質でありながら、さらに濃く澱んでいる。

('A`) 「っ!」

穴の底にゆっくりと露わになった光。
それはあまりにも大きすぎる瞳。

(; ・∀・) 「でか……い……」

(<●>) 「「私の名前はオルフェウス。原初の純術師にしてこの世界の神である」」

問いかけは声ではなく魔力の波長として放たれた。
意識を揺さぶるかのような重たい言葉は、六人の胸の奥にまで届く。

(<●>) 「「一体、何用かね」」

( ФωФ) 「貴様がこの終焉の戦いを起こしていた原因だな?」

(<●>) 「「ほう、また生き残ったのか……。素晴らしい。
       だが、ただの宴程度でそう騒ぎ立てる事でも無かろう」」

川#゚ -゚) 「ふざけ

275名無しさん:2018/04/30(月) 15:07:40 ID:rt1Nb5fY0
ドクオとクーの子供だったか

276名無しさん:2018/04/30(月) 15:08:19 ID:7X8WUdNc0

川#゚ -゚) 「ふざけるな! あれが宴だと!」

(<●>) 「「無論」」

【+  】ゞ゚) 「あなたが何者かはわかりませんが、
         終焉を引き起こしているのなら対処させていただきます」

(<●>) 「「対処。対処とは。全く愚かなことだ」」

( ФωФ) 「ふむ、随分と上から目線だな」

(<●>) 「「憐れな。自らの小さな世界の中に閉じこもっていればいいものを」」

('A`) 「偉ぶっているところ悪いが、同じ足場に降りてきてもらおうか」

(<●>) 「「なに?」」

('A`) 「拡大しろ、虚ろの扉。神の座から奴を引きずり落とせ!」

ドクオの杖から複雑な魔術がミスティルティンに注ぎ込まれた。
暗黒の空間が夜空と見紛うほどに拡がる。
その中から地上に落ちてきたのは、この世界には存在し得ない化け物。

277名無しさん:2018/04/30(月) 15:09:05 ID:7X8WUdNc0

巨大な一つ目が縦に埋め込まれた濃紺の身体。
ブヨブヨとした表面から幾条もの触手が揺らめき、
殊更に太い四本を足として立っていた。

(<●>) 「「……この私を引き寄せるとは、余程世界と共に滅びたいようだな。
       神の姿を一目見たいという、
       矮小なる生物としての願いだけであれば赦してやったものを」」

('A`) 「生憎、遊び感覚で世界に干渉するような奴を神だと崇める趣味は無い」

(<●>) 「「それでこの私に負けるべくして戦いを挑むと。理解できんな。
       五百年後には貴様らもその周囲もほとんど生きてはいまい」」

( ・∀・) 「この世界の安寧の為に、不必要な神を殺しに来たんだ」

(<●>) 「「確かに、大口を叩くだけの実力はある。
       過去の戦いでも全員がほぼ無傷なのは見たことがない」」

( ФωФ) 「お前を殺す為だけに集められたんだ。当然だろう」

(<●>) 「「当然? おかしなことを言う」」

ただ無機質な音であった声に、初めて感情が込められた。
押し殺したかのような嘲笑が漏れる。

278名無しさん:2018/04/30(月) 15:10:09 ID:7X8WUdNc0

川 ゚ -゚) 「何がおかしい」

(<●>) 「「どうせ死ぬのだからな。おまえたちの過ちを教えてやろう。
       終焉を戦い抜くことが出来れば、世界は救われると」」

('A`) 「何も間違ってはいないだろう。少なくとも七回、三千五百年はこの世界が存続している」

(<●>) 「「では、その前は」」

('A`) 「俺の知る資料にある限りは……」

(<●>) 「「過去どれだけの戦いが行われてきたのか、知らぬのか。
       では教えてやろう。千と三十一回。終焉はこの世界に訪れている。
       果たしてそれだけの資料とやらがあるのか」」

(;'A`) 「まさか…………」

(<●>) 「「そうだ魔術師。この世界はすでに何度も滅びているのだよ」」

(#ФωФ) 「馬鹿な! 私が生まれる千年前がこの世界の始まりだったと? ありえない!」

(<●>) 「「いいやあり得る。この私が世界を再生させるときは、
       決まってある一定の文明水準にするからだ。
       でなければ、強者が育つのを待たねばならいだろう」」

279名無しさん:2018/04/30(月) 15:10:51 ID:7X8WUdNc0

【+  】ゞ゚) 「壊すために創っているということですか……」

(<●>) 「「壊す為ではない。たまたま英雄が不作だったときに壊れてしまうだけだ。
       そうやって進んでは戻る世界をただ観測をしているだけに過ぎない。
       私自身が干渉するときはいつも、世界を再生させるときだけだ。
       むしろ感謝してほしいものだな」」

川 ゚ -゚) 「お前の話はわかった。だから今すぐ死ね」

(<●>) 「「血気盛んなお嬢さんだ。だが激しい運動は胎内の子供に良くないのではないか」」

川;゚ -゚) 「ッ!?」

(<●>) 「「なぜ知っているという顔をしたな。当然だろう。私は神なのだから。
       お前たちが土足で踏み込んできた神の座から世界を見守ってきたのだ」」

( ・∀・) 「災厄をけしかけて見守って来ただと? そんな保護ならお断りだ」

(<●>) 「「話が逸れてしまったな。お前たちの過ちは一つ。
       その卑屈なる身にて、神に挑むという大罪を犯した。罪は贖われなければならない。
       この世界の命と共に」」

【+  】ゞ゚) 「神、神とうるさいですね。神というほどの力は持っていないでしょうに。
         少なくとも、今この場にいる私たちを一瞬で消滅させてしまうようなことは出来ないようですし」

280名無しさん:2018/04/30(月) 15:11:19 ID:7X8WUdNc0

(<●>) 「「そうか、言い忘れていたな」」

【+  】ゞ゚) 「なんでしょう?」

(<●>) 「「五百年に一度の終焉のシステムは当然私が作った」」

( ФωФ) 「だからなんだというのだ」

(<●>) 「「都合よく強者だけに呼びかける魔術が出来たのは、最初の一回目だ。
       それから世界が滅んでも、永遠と受け継がれている。なぜだかわかるか?」」

(;'A`) 「まさか……」

(<●>) 「「レタリアという魔術を生み出したのも当然、私だからだ」」

【+  】ゞ゚) 「な……っ……か……」

(<●>) 「「全く愚かな。不死とは神にのみ許された現象だ」」

オサムの胸を貫いた氷の槍。
傷口から広がった凍結魔術はその全身を覆いつくし、
彼の命であった呪術の宝玉は全て一瞬で砕かれた。
その瞳から力は失われ、だらしなく下がった両腕はピクリとも動かない。

281名無しさん:2018/04/30(月) 15:11:55 ID:7X8WUdNc0

(; ・∀・) 「なっ! 何を……っ」

それ以上言葉を続けることは叶わなかった。
大地に落ちた巨大な塊の持つ二つの光は、数秒と経たずに失われ、、
鋭利な刃で分断されたもう一つの塊は、
滝のように零れ出てきた血みどろの中に沈む。

(; ФωФ) 「オサム! モララー! っ貴様!! 穿て!」

命じられた大気の精霊が撃ちだした超高圧の空気弾。
一直線に女の身体を貫いた・

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「ふふっ……」

数十メートルも吹き飛ばされた女性は、何事もなかったかのように立ち上がった。
傷口から溢れ出てきたのは血液ではなく、透き通った水。

(<●>) 「「さて、どうする。これで残るは三人だ」」

(;'A`) 「くそっ……。問題は……無い。お前らを殺せばいいだけだ」

(<●>) 「「この期に及んでまだ諦めないのか。
       いいだろう。たまには直接遊んでやるのも悪くはない。
       我が名はオルフェウス。この世界の神なり」」

282名無しさん:2018/04/30(月) 15:14:32 ID:7X8WUdNc0

>2


(<●>) 「「よく戦った」」


(;メA`) 「はっ……はっ……」

魔力で補強した身体で辛うじて立っているだけのドクオ。
未だ無傷の怪物がその一つ目で見下ろしていた。

(メA`) 「ロマネスク……クール……」

背後に仰向けに倒れたまま動かないロマネスク。
精霊術による加護を解かれ、人間としての姿を失っていた。

川;゚ -゚) 「ドクオ……私はまだ……戦える」

フロストの胸に突き立てたままの天剣を杖に寄りかかるクール。
全身の至る所に凍傷と裂傷が刻まれながらも、気丈に振る舞う。
彼女が誇っていたはずの比類なき魔力も、大半が失われていた。

戦場となった大地に過去の面影はない。
空すらも舞い上がった砂塵に埋め尽くされ、生きるものも存在しない世界。

283名無しさん:2018/04/30(月) 15:15:49 ID:7X8WUdNc0

(<●>) 「「守るもののない世界で、よくぞ戦った」」

ドクオが入念に用意していた世界を護るための魔術は、ものの十数分で完全に崩壊した。
彼自身が戦闘に専念しなければならず、
想定を上回るオルフェウスの力があったために維持が出来なかったのだ。。

(<●>) 「「我が称賛を受けたことを誇りに、眠れ」」

(メA`) 「いや、これで……二対一だろ」

ドクオの横に並び立つクール。
満身創痍でありながら、どちらの瞳からも希望は消えていなかった。

(<●>) 「「諦めずに戦う心は美徳ではない。
       お前たちを殺して、私は世界を作り変える」」

川 ゚ -゚) 「今この場でできないってことは、
      お前を殺して私たちのどちらか神の座にたどり着けばいいと解釈できるが?」

(<●>) 「「……少し話しすぎたか。冥途の土産にしろ。最も天国も地獄も存在しないがな」」

(メA`) 「クール、少し時間を稼いでくれ」

川 ゚ -゚) 「あぁ」

単身で化け物の足元に飛び込むクール。
九つの天剣が光り輝き、彼女を撃退しようと迫った触手を一蹴した。

284名無しさん:2018/04/30(月) 15:16:50 ID:7X8WUdNc0

(;メA`) 「頼む……急げ……」

掲げた長い杖に保存していた魔術を解き放つ。
最終決戦においてドクオが考えていた魔術は、ほとんどがオルフェウスには通用しなかった。
最後の一つは保険であり、この期に及んでも使うことを躊躇うほどの破格の性質を持つ。

オルフェウスの身体から生える触手は、それぞれが全く異なる属性の魔術を扱う。
天剣で臨機応変に対応するクールではあったが、その手数に押され始めていた。

川;゚ -゚) 「……っ! リバーサル! ローテイシオン!」

二つの光剣が反転の魔術によって触手を弾き、
二つが回転して光輪となり、オルフェウスの身体を削った。

(<●>) 「「天剣、捉えたり。さて、残るは七本」」

川;゚ -゚) 「なっ……!」

液体のようなその身体の中で、天剣は徐々にその魔力を吸い取られて動かなくなった。

川 ゚ -゚) 「くそっ……! だったら……! ホライズン!」

魔力の斬撃は、クールの目前にある全てを横一直線に切り裂いた。

285名無しさん:2018/04/30(月) 15:17:24 ID:7X8WUdNc0

(<●>) 「「見事だ……だが……足りぬな。今のおまえの魔力では私には届かない」」

重ねた触手は硬化し、盾となって阻む。
その八割ほどの質量を消滅させたところで、斬撃は露と消えた。

川;゚ -゚) 「ぐっ……っ……」

(<●>) 「「……なんだそれは?」」

瞳が驚きで見開く。
魔術師としては過去最少量の魔力で戦っていたはずのドクオの元に、
クールの全力すらも凌ぐほどの魔力が集積していた。
その奔流は、今もなお秒単位で増加していく。

(メA`) 「こいつは一度発動すれば俺でもコントロールできない。
     クール、後は任せたぞ」

川;゚ -゚) 「ドクオ!」

(メA`) 「キュートと世界を頼んだ」

(<●>) 「「貴様ぁぁ!!」」

巨大な眼球へと収束した魔力が、ドクオの胸に迫った。
音速を超える光線は、クールの天剣によって遮られた。

286名無しさん:2018/04/30(月) 15:18:21 ID:7X8WUdNc0

(メA`) 「消えろ。クィンタ・エッセンチア」

射線上に存在するすべての法則を飲み込みながら、オルフェウスに直撃した。
表面の防護障壁を蒸発させ、魔力で形成された触手を焼き切っていく。

魔力の束は拡大を続け、その巨体すらも完全に飲み込んだ。
それでも尚、ドクオは手を緩めることなく魔術を編み続ける。
消費されるよりも速く増加する魔力は、もはやドクオには制御しきれなかった。
魔力は彼の周囲で、大地や大気を刻むかのように荒々しく吹き荒れた。

(メA`) 「まだだ……まだ……!」

終わることの無い魔術砲は空間ごと削り取り、
その中心に存在していたオルフェウスの魔力は既に見えない。

川 ゚ -゚) 「ドクオ! もう充分だ!」

(メA`) 「クール……頼みがある」

川 ゚ -゚) 「っ!」

('A`) 「俺を……殺せ……」

川;゚ -゚) 「なんでっ!?」

287名無しさん:2018/04/30(月) 15:18:55 ID:7X8WUdNc0

(メA`) 「この魔術の核は俺だ。俺が死なない限り、終わることはない。
     止めなければ……お前を巻き込んでしまう」

川 ゚ -゚) 「っでも……!」

(メA`) 「お前まで死んだら本当に終わりだ。
     俺を殺した後は、神の座に向かえ。きっとそこには全てがある」

川 ゚ -゚) 「っ……! どうしようもないのか……」

(メA`) 「頼む」

さらに膨れ上がった魔力は、空に向かって伸び始めた。
目的の無い力の流れは、ドクオの開いた虚空の扉を端から侵食していく。

川 ゚ -゚) 「……わかった。必ずすべてを元に戻す。待っててくれ」

天剣の切っ先をドクオに向ける。
荒れ狂う魔力の渦の中心にいる魔術師に狙いを定め、剣を振り上げた瞬間。





(<●>) 「「これで終わりか」」





.

288名無しさん:2018/04/30(月) 15:19:31 ID:7X8WUdNc0

(メA`) 「がっ……!」

魔術砲を断ち切ったのは、クールの斬撃ではなかった。
ドクオの胸に深々と突き刺さった黒い棘。
魔術が途切れた瞬間から次々と飛来する攻撃を、クールは天剣で必死にさばく。

川;゚ -゚) 「なっ……」

ドクオにだけ放たれていた槍は、突如目標を分散させた。
胸と腕、そして足に攻撃を受けたクールは、ゆっくりと倒れこむ。
天剣は彼女からの魔力供給を断たれ、彼女の中へと還った。

(メA`) 「クール!!」

(<●>) 「「真に見事だ。私をここまで追い詰めるとは……」」

(メA`) 「てめぇ……」

半身を失ったオルフェウスであったが、その揺らぎ無い魔力は健在。

(<●>) 「「とどめを刺すまでも無い。おまえたちが死んだ後にゆっくりと世界を書き換えよう」」

(メA`) 「クール! しっかりしろ!」

289名無しさん:2018/04/30(月) 15:19:59 ID:7X8WUdNc0

自身も腹部を深紅に染めながら、倒れた女性を抱き起す。
殆ど開かない瞼を震わせながら、クールは血に汚れた腕でドクオの頬に触れた。

川 ゚ -゚) 「……あぁ……」

(メA`) 「くそっ……」

(<●>) 「「最期に一つだけ教えてやろう。
       神の座のシステム起動条件は、この世界の知的生命体の全滅だ。
       私は還り、おまえたちが死んだ瞬間に、再構成を始めるとしよう」」

(メA`) 「待て!」

(<●>) 「「もう二度と会うこともあるまい、弱き者どもよ」」

オルフェウスはドクオが開けたままにしていた虚ろの扉に消えた。
致命傷を受けたクールには、癒すための魔力も残っておらず、
彼女の深い傷を治すだけの知識はドクオには無かった。

(メA`) 「くそ……」

ドクオの手元で増幅し続けて暴走状態に陥った魔力は、もはや暴発寸前。
一刻の猶予も無い。

川 - ) 「ドクオ……キュートを……キュートだけでも……」

(メA`) 「っ!」

290名無しさん:2018/04/30(月) 15:20:28 ID:rt1Nb5fY0
バッグベアードみたいな見た目と解釈していいのかな

291名無しさん:2018/04/30(月) 15:21:19 ID:7X8WUdNc0

手の中で失われゆく命の重み。
彼女の最期の願いを叶えるためにだけに、ドクオが即座に考え出したのは禁断の魔術。
極限の集中状態から娘の最大限の幸せを願うために発動した術を、
膨大な魔力と共に杖に閉じ込めた。

(メA`) 「クール……」

苦しみに満ちた表情の亡骸を横たえ、幾つかの術を唱える。
周囲に漂っていた微かな魔力を利用して、小さな世界を作り出した。
荒涼とした大地の乾燥した空気と強い日差しを遮る薄い被膜と、
穏やかな緑が生い茂った大地を。

共に戦った仲間たちに墓標を捧げ、箱庭を完成させた。


ロマネスクには精霊の宿る樹を。


オサムには十字架を。


クールには剣を。


モララーには牙を。


四方へと配置し、墓標となる剣の横に愛した女性を埋めた。
何十年先に生まれるはずの娘に残した贈り物が込められた長杖を掴み、
渾身の力で暴走しつつある魔力を上空へと打ち出した。

292名無しさん:2018/04/30(月) 15:21:54 ID:7X8WUdNc0

大地を映したかのような赤黒い空の中心に魔力の塊が届いた時、
ドクオは自らの命を絶った。

支配から解放された魔力は音も無く爆発し、
無数の流星となって世界中に降り注いだ。

誰も見ることの無かった流星群は、数十年もの間夜通し輝き続けた。

293名無しさん:2018/04/30(月) 15:22:26 ID:7X8WUdNc0



・・・・・・

294名無しさん:2018/04/30(月) 15:23:46 ID:7X8WUdNc0
今日はここまでです。読んでくださった方は有難うございました。
GW中に、残りを投下させていただこうと思いますので、よろしくお願いします。

295名無しさん:2018/04/30(月) 15:25:24 ID:rt1Nb5fY0
おつおつ

296名無しさん:2018/04/30(月) 15:36:28 ID:BN6QjXKw0
おもしろいなあ


297名無しさん:2018/04/30(月) 20:10:54 ID:Xs/JBnW60
キュートは一体どうなるだろう…

298名無しさん:2018/04/30(月) 22:02:44 ID:NUKsZKYI0
アマザイはなんだったんだ

299名無しさん:2018/05/01(火) 10:40:12 ID:XrLy0sLg0
オサムとモララーに害を成したり体液が水だったりしてるからフロストはオルフェウスの人形だったんだろうな
ドクオもアマザイには会えてないから偽物が紛れ込んでも気付けないし
下手するとアマザイ族自体が元々神側の傀儡みたいなもので、終焉を盛り上げるサクラ+不測の事態への保険だった可能性すらある
元凶の討伐にすんなり同意したのも保険としての役割を果たすために残る必要があったから、と考えると納得しやすい

まあ全部推測だけども

300名無しさん:2018/05/01(火) 13:45:50 ID:KCNiHLpM0
英雄たん

301名無しさん:2018/05/01(火) 22:32:05 ID:PjmzASkA0
アマザイは謎だな
過去にロマと共闘してる以外に情報が無い

302名無しさん:2018/05/03(木) 23:07:15 ID:f6Jc0GS60

o川*゚ー゚)o 「っ!!!」

崩れゆく大地に飲み込まれて宙を浮かぶ身体。
咄嗟に振るった長杖を伝わって発動した魔術は、
少女の身体を空中に固定した。

崩壊し続ける大地に対して、もう一度杖を振るう。
明確な意志と目的をもって。
少女の放った魔術によって空間は安定を取り戻し、再び静かな世界が訪れた。

o川*゚ー゚)o 「これが……私の力……」

ほぼ元通りになった閉ざされた箱庭。彼女は知っていた。
荒涼とした世界から遮られたその場所は、自身の為だけに作られた空間であることを。

o川*゚ー゚)o 「ロマネスクさん、オサムさん、モララーさん……パパ、ママ……」

枯れた樹も、煤けた十字架も、折れた剣も、砕けた牙も、力尽きた屍も。
彼女は知った。知ってしまった。墓の持つ意味と、墓が無い者の存在を。

o川* ー )o 「星霜フロスト……!」

忌むべきその名を口にして、心に刻む。

303名無しさん:2018/05/03(木) 23:08:48 ID:f6Jc0GS60
べきその名を口にして、心に刻む。

青色の長い髪から常に滴り落ちる水。
晴れの日でも乾くことの無い濡れた姿の女性。
記憶に刻み込まれた彼女は、いつも笑みを浮かべていた。

その裏切り者の姿形を、脳裏に焼き付けておく。

魔力を込め、長杖の底を地面に打ち付ける。
放射状の魔力が静謐な世界を震わす。

o川*゚ー゚)o 「パパ……ママ……」

全てを知った彼女は、杖を一際強く握った。

o川*゚ー゚)o 「私は……」

形見と呼ぶべき杖に込められた魔術。
それは、彼女に選択肢を与える。


未来と過去。


相反する二つの時間を一つにするために蓄積された膨大な魔力は、
不用意に放てば世界を破壊しかねない程。

304名無しさん:2018/05/03(木) 23:09:33 ID:f6Jc0GS60

o川*゚ー゚)o 「ごめんなさい……」

杖を伝わって届いた温かな願い。
彼女のために残されていたのは、誰も為しえたことが無いとされる時間魔術。
過去に戻るための魔術。

それは、少女を一人きりにさせてしまわぬようにと願った父親の心。
数百年を容易に遡ることができるだけの魔力と、
どのような時代でも生きていくことのできる知識の束。

杖を掴んだ瞬間に、少女は全てを手に入れた。

o川*゚ー゚)o 「分かってるよ。パパ、ママ。この魔術を使って、平和な時代に生きろってことだよね」

唇を真一文字に結び、力強く杖を握り締める。
ちかちかと零れだした魔力光は大きな流れとなって、あらかじめ設定された魔術を構成していく。

o川*゚ー゚)o 「でもね……私は……」

世界に一人だと知って、途方もない孤独感を味わった少女。
少女が求めたものは、多くの人間に囲まれた安穏とした生活ではなかった。

305名無しさん:2018/05/03(木) 23:10:39 ID:f6Jc0GS60

たった二人。
誰よりも自分を思ってくれていたはずの二人に、
会って、話をして、精一杯甘える事。

たとえ苦痛や危険にあふれていたとしても。
たとえごく限られた時間のみ許されるのだとしても。

少女にとっての最優先は、ドクオとクールの願いとは全く逆方向を向いていた。
少女の決心が揺るがぬものとなった時、煌めきを放つ魔術が少女の前に現れた。

それは道標。

少女が願う旅の目的地へと至るための唯一の手掛かり。
その光を手に取って、少女は魔力を込める。
時を超えるため、彼女に残された膨大な量の魔力を。

o川*゚ー゚)o 「お願い……私を……連れて行って!」

少女は目指す。
過去と現在の分岐点の中で自らが存在することのできる時間を。
父親からの贈り物である杖に込められた魔術は、少女の祈りに応じて時を歪めた。

306名無しさん:2018/05/03(木) 23:12:32 ID:f6Jc0GS60



( ФωФ) 「……誰だ」

約束の丘に集まった六人の英雄。
訪れた終末の敵を打ち倒し、息を整えていた時であった。

空間を引き裂いて現れたのは、ボロ布を被っただけの少女。

o川*゚ー゚)o 「……パパっ!」

('A`) 「っ!?」

突然に現れた来訪者に警戒するドクオ。
それを全く気にもせずに少女は胸元に飛び込んだ。

川 ゚ -゚) 「……」

その様子を無言で睨むクール。
ドクオの額を終末の獣と相対した時よりも嫌な汗が滴り落ちた。

(;'A`) 「いや、ちょっと待て、訳が分からない」

( ФωФ) 「敵か……殺すか?」

('A`) 「違うと……思う。この娘が現れた時空の歪みの魔術は覚えがる」

307名無しさん:2018/05/03(木) 23:13:07 ID:f6Jc0GS60

【+  】ゞ゚) 「となると……隠し子ですか」

( ・∀・) 「意外だな」

o川*゚ー゚)o 「パパ……」

('A`) (冷たい……クールの視線がこれまでにない位に……。
     誤解を解かなければ……)

o川*゚ー゚)o 「ママ……!」

少女はドクオの元を離れ、クールに駆け寄った。
混乱して動けない彼女の胸元に、その顔を埋める。

川 ゚ -゚) 「ん?」

o川*;ー;)o 「会いたかった……」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「ええっと……娘さん?」

川 ゚ -゚) 「いや……」

困惑するクール。
彼女の動揺を見たのは、ドクオですら初めてであった。

308名無しさん:2018/05/03(木) 23:13:47 ID:f6Jc0GS60

( ФωФ) 「……誰か説明できるか」

('A`) 「……憶測でいいのなら可能だが、彼女の口から語ってもらうのがいい」

泣き腫らした目を擦りながら、少女はようやくクールから離れた。

川 ゚ -゚) 「……その服もあれだな、ドクオ」

('A`) 「わかった」

空間魔術を用いて接続した先から適当なローブを見繕い、少女へと手渡した。
それを何も言わずに受け取り、袖を通す。
クールにそっくりな黒く長い髪が揺れる。

('A`) 「……君は、一体」

o川*゚ー゚)o 「驚かせてごめんなさい。いろいろ我慢するつもりだったんだけどな……。
        信じてもらうしかないんだけど、私は未来から来たの」

( ・∀・) 「未来……」

【+  】ゞ゚) 「俄かには信じられませんが」

o川*゚ー゚)o 「そうだよね……。証拠は何もないから」

309名無しさん:2018/05/03(木) 23:14:23 ID:f6Jc0GS60

( ФωФ) 「嘘を言っているようには見えないが、ドクオ。
         未来から過去を訪れることが果たして可能なのか」

('A`) 「……いろいろと難関はある。
     魔力は世界をひっくり返すほど必要だろうし、複雑な魔術式を発動しなきゃいけない。
     だが、不可能ではないと考えてる」

【+  】ゞ゚) 「ドクオさんがそうおっしゃるのなら、出来るとして話をしましょう。
         疑問は二つ。なぜ彼女が、今この時代に、です」

( ・∀・) 「ドクオとクールの娘だと言ってたけど……」

o川*゚ー゚)o 「そうですね、少しお話をしたほうが良いですか。
        ねぇ、フロストさん?」

貼りつけた様な笑みを浮かべる少女と、それに応える引きつった笑みのフロスト。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「……そ、そうでございますね」

o川*゚ー゚)o 「私が未来から来た方法はもうパパが気づいていると思う」

('A`) 「さっきまでキュート……が持っていた杖は、俺の杖と全くの同一のものだ。
    過去に移動するための魔術も恐らくは俺が組んだものだろうな。
    問題は移動に必要な魔力だが……」

310名無しさん:2018/05/03(木) 23:15:30 ID:f6Jc0GS60

彼女が現れた時、その手に持っていた杖は消滅した。
完全に跡形も無く。
ドクオは即座にそれが時間の歪みによる矛盾消滅だと理解した。
過去の時代に存在したものは未来から持ってくることは出来ないという厳然たる世界の理。

o川*゚ー゚)o 「それもパパが用意してくれてたんだよね」

('A`) 「キュートの魔力は使ってないのか?」

o川*゚ー゚)o 「うん」

('A`) 「……恐らく、未来の俺は増幅魔術を使ったんだろうな」

川 ゚ -゚) 「増幅魔術?」

('A`) 「今持っている魔力を糧に、さらに多くの魔力を生み出す魔術だ」

( ・∀・) 「そんなの無茶だ。だってそれが可能なら、世界の法則だって覆る」

( ФωФ) 「相応のリスクがある、ということだろう?」

('A`) 「俺が死ななければ魔力の増幅は止まることがない。
     皆も想像していただろうが……未来の世界では俺たちは全員死んだのだろう?」

311名無しさん:2018/05/03(木) 23:15:59 ID:f6Jc0GS60

o川* ー )o 「……うん。私が生まれたのは、世界が完全に滅んだ後。
        パパとママの魔術のおかげで、生まれてくることができた」

( ・∀・) 「正直信じられないな。でも、それなら君は知ってるんだよね。
        これから僕らが戦うべき相手を」

【+  】ゞ゚) 「弱点などが分かればいいのですが……」

o川*゚ー゚)o 「ごめんなさい。私の与えられた知識の中に、あいつを倒す方法は無かった。
        でも、彼女なら知ってるんじゃないかな?」

キュートに指差されたフロストはわずかに身動ぎをした。
全員からの視線を気まずそうに受ける。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「……予想外の出来事でしたね。これに対応しろという方が無理でしょう」

('A`) 「何を知っている」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「隠したところで無意味でしょうね。私が裏切り者だという事実も」

(; ・∀・) 「なっ!?」

(#ФωФ) 「どういうことだ」

312名無しさん:2018/05/03(木) 23:16:31 ID:f6Jc0GS60

【+  】ゞ゚) 「冗談を言っているようには見えませんが」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「私の一族は、抑止力でした。
         いつかあなたたちのような英雄が現れることを予期していた主様が用意し、
         レタリアの戦士として紛れ込ませてきました」

フロストは両手を振るい、氷の壁を立ち上げた。
英雄達と自分自身とを物理的に分断するために。

('A`) 「逃げる気か」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「どのみち、逃がしてはくれないでしょう。ただの時間稼ぎですよ」

( ・∀・) 「無駄な抵抗はやめろ」

龍化したモララーは、一撃で氷壁の半分ほどを破壊した。
分厚い塊が飛び散り、その先にフロストの姿が露になる。

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「あなた方を相手取って生き残れるとは思っていません。ですから……」

('A`) 「っ!」

(ノリ_゚_-゚ノリゝ 「一旦退かせていただきます」

313名無しさん:2018/05/03(木) 23:17:02 ID:f6Jc0GS60

ドクオの正面に立っていたフロストは、何の前触れもなく闇に飲み込まれた。
集められた英雄たちの誰もが反応できないほどの速度で。

( ・∀・) 「消えた……」

( ФωФ) 「放っておけ。どうせこれから向かう先にいる」

('A`) 「ロマネスクの言う通りだ。
    何が起きたのかは分からなかったが、何処に向かったのかは分かった。
    向こうへ一瞬で移動する手段を持っていることもな」

【+  】ゞ゚) 「それは、敵が少なくとも二人に増えたことと釣り合いの取れる事でしょうか」

('A`) 「向こう側にどれだけの敵がいるのかそもそもわかっていなかったんだ。
    今更一人増えたことで何も変わらない」

川 ゚ -゚) 「しかし、敵の間者が紛れ込んでいたとはな。
      正直予想だにしていなかった。キュート……のおかげだな」

( ФωФ) 「どうなっている。レタリアに呼び出された英雄ではなかったのか」

老齢の精霊術師はキュートを睨む。
静かな言葉はわずかに怒りを滲ませていた。
自分よりも遥か高齢の男に相対して、まったく怖気づかずにキュートは首を振るう。

314名無しさん:2018/05/03(木) 23:17:52 ID:f6Jc0GS60

o川*゚ー゚)o 「レタリアとは、そもそもそういうものだったみたい。
         終末を乗り越えるだけの英雄を集め、
         余計なことを行わない様に見張りを一人紛れ込ませる」

【+  】ゞ゚) 「ちょっと待ってください。
         となると、レタリアは私たちがこれから戦おうとする敵の魔術だということですか」

o川*゚ー゚)o 「そう」

川 ゚ -゚) 「……だったら、レタリアに集められた私たちが勝てる道理があるのか?」

数秒間の無言の後、キュートはようやく言葉をひねり出した。
先程までの強い視線から一転し、伏し目がちになりながら。

o川*゚ー゚)o 「ある……と思う」

( ・∀・) 「やけに自信なさげだね」

o川*゚ー゚)o 「正直に言うとわからないの。
        未来ではモララーさんとオサムさんはフロストの裏切りで殺された。
        ママが一騎打ちで倒すまでの間に、パパとロマネスクさんが敵と戦ってたの。
        でも、強すぎて……」

('A`) 「それで、どうなった」

315名無しさん:2018/05/03(木) 23:18:16 ID:f6Jc0GS60

o川*゚ー゚)o 「……」

('A`) 「キュート。未来の俺達……お前にとっては過去の俺達がどう戦い、どう負けたか。
    それを詳しく知ることが出来れば、その未来はきっと変えることができる」

o川*゚ー゚)o 「ロマネスクさんが先に殺されて、パパは魔術を使ったの。
        少しの魔力からより多くの魔力を生み出す魔術」

('A`) 「使うだろうな……俺は……」

o川*゚ー゚)o 「パパが発動した魔術砲が敵に直撃した。
        それでも倒せなくて、ママが殺された。それで敵は元の場所に帰って行った。
        パパは残された魔力で私が生まれて育つことができるための環境を作って……。
        それで……」

【+  】ゞ゚) 「しかし、赤子がひとりでに大人になるなどありえないことです。
        何をしたのですか?」

川 ゚ -゚) 「それは……」

('A`) 「いい、クール。俺が話す。クールの胎内にいるキュートには複雑な魔術を幾つもかけてある。
    そのうちの一つは、彼女の存在そのものを不確定にし、
    この世界に存在していないことにする魔術。
    これによって、クールがどのような攻撃を受けたところで、彼女は傷一つ負うことは無い」

( ФωФ) 「まさか、そのような魔術は聞いたことがない」

316名無しさん:2018/05/03(木) 23:18:42 ID:f6Jc0GS60

('A`) 「当然だ。最も優秀な魔術師である俺が考案し、
    誰よりも多くの魔力を持つクールだからこそ実行できた。
    そしてもう一つ。万が一クールが死んだとしても、
    数十年後に一人で生活できる年まで成長した姿で生まれさせる魔術」

( ・∀・) 「……信じられない」

【+  】ゞ゚) 「魔術というよりは、もはや奇跡ですね」

o川*゚ー゚)o 「奇跡……うん。きっとそうだと思う。
        私がここに来れたおかげで、未来はきっと変えられる」

('A`) 「……みんなに聞きたい。今のキュートの話を聞いて、まだそれでも戦うのか?」

ドクオの問いかけに即座に答えた者はいなかった。
少女が告げた敗北の未来は、英雄達の心を揺さぶるには十分すぎた。
最悪の結果はキュートのおかげで回避され、何も失うことの無い未来は彼らの手中にある。

あえて危険を冒すことによって得ることができる権利の価値。
五百年の平穏か、万年の繁栄か。

('A`) 「すぐには決められないだろう。明日の日の出までに決めてくれ。
    俺はテントで待つ」

317名無しさん:2018/05/03(木) 23:19:05 ID:f6Jc0GS60

( ・∀・) 「いや、その必要はない」

( ФωФ) 「成程、未来の我らが敗北を喫したことはわかった。
         だが、その事実を知る我らとは異なる」

【+  】ゞ゚) 「でしたら、ここで諦めて解散する意味は無いかと思います」

川 ゚ -゚) 「そういうことだ。ドクオ。私たちは決して負けない」

('A`) 「……どうしてこうも自意識過剰なんだか。心配をした俺が馬鹿みたいだ。
    いいだろう。明日の朝まで各自休んでくれ」

o川*゚ー゚)o 「えっと……私は……」

川 ゚ -゚) 「私のところに来ればいい。ドクオのすぐ隣になるが」

ドクオの言葉で解散した彼らは、それぞれの寝床へと戻っていった。

318名無しさん:2018/05/03(木) 23:20:03 ID:f6Jc0GS60




太陽が丘を照らし始めた頃、テントから出てきたドクオを迎えた五つの影。

白地に金色の刺繍が編み込まれた精霊術師のローブで頭まで覆い隠したロマネスク。
大気の精霊たちが彼の周囲で騒ぐ。

漆黒の衣装を身に纏い、服と同様に黒く巨大な棺を背負ったオサム。
全身の皮膚に刻まれた呪力の文様は、顔にまで達している。

急所を護る銀の鎧と、白のドレスで着飾ったクール。
美しくも戦いを意識した戦乙女の姿。

強さの象徴である強靭な肉体を持つ龍の姿をしたモララー。
全身から溢れ出す自信と力は大地を震わせる。

ドクオとは異なる長杖を持ち、魔術師の装束へと着替えていたキュート。
母親譲りの強大な魔力が陽炎のように立ち昇る。

('A`) 「さて、準備は整っているか」

( ФωФ) 「無論」

319名無しさん:2018/05/03(木) 23:20:43 ID:f6Jc0GS60

('A`) 「最後にもう一度だけ確認をしておく。
    俺たちの目標は、虚ろの先にいる敵を倒すことだ」

川 ゚ -゚) 「今更なことを」

('A`) 「だが大事なことだ。全てが終わった後に全員が無事だとは思わない。
    屍を踏み越えてでも達成しなければ、俺たちの世界に明日は来ない」

( ・∀・) 「未来を掴めってことか」

【+  】ゞ゚) 「単純なようで難しいことです。が、私たちであれば必ずできるでしょう」

('A`) 「キュート」

o川*゚ー゚)o 「なに、パパ」

('A`) 「いや、何でもない。全てが終わってから話すことにする」

出かけた言葉を胸に仕舞い、ドクオは高く杖を掲げた。
その先端から迸る魔力は、複雑な術式によって変換され、四元素の魔術として顕現する。

('A`) 「開け、虚ろの扉。ミスティルティン!」

反発しあう魔術が空間に穴を開け、世界を繋ぐ扉が開いた。
暗黒の渦へと飛び込んだ六人の英雄。
飛び込んだ先は現世とは真逆で、空に多くの星が輝く夜の世界が存在していた。

320名無しさん:2018/05/03(木) 23:21:36 ID:f6Jc0GS60

(<●>) 「「ようこそ、我が神の間に。愚かな者達よ」」

黒き汚泥を集めた塊のような巨体に張り付いた一つの瞳。
自らと向き合う英雄達を一人ずつ品定めする。

(<●>) 「「矮小なる者達よ。すぐに来た道を戻るがよい」」

('A`) 「そうはいかない。お前を殺すまでは」

(<●>) 「「たかだか未来を知った程度で随分と大きく出たものだ」」

川 ゚ -゚) 「お前はここで私たちに打ち倒される」

(<●>) 「「小娘よ。貴様が何者で、何を知っているかなど、私にはどうでもよい。
       ただ厳然たる事実として教えてやろう。
       たった数百年如きの時間で、
       お前達と私との間にある力の差を埋めることは叶わない」」

川 ゚ -゚) 「その自信、砕いてやりたくなってきたな」

クールが展開した光刃が周囲を明るく照らし出す。
端の見えない程広い空間には、悪意の歪みが浮かぶ。

321名無しさん:2018/05/03(木) 23:22:08 ID:f6Jc0GS60

( ・∀・) 「フロストの気配がないね」

( ФωФ) 「気をつけよ。奇襲を狙っているかもしれん」

(<●>) 「「フロスト……? それはこやつの事か?」」

【+  】ゞ゚) 「なっ……」

暗闇の中から首をもたげた巨大な腕が掴んでいたのは、事切れて動かない女性。
それはつい昨日まで英雄として紛れ込んでいたフロストに間違いなかった。

(<●>) 「「このような使い捨ての道具、役に立たなければ壊してしまうものだろう」」

( ФωФ) 「成程、貴様を倒す理由がまた一つ増えたな」

(<▲>) 「「ほう、まさか敵討ちでもあるまい」」

嬉の感情を滲み出して歪む瞳。
その中心の黒点を睨め付けながら吐き捨てた。

( ФωФ) 「気に入らぬ」

(<●>) 「「面白い。ならば全身全霊を込めて向かって来るがいい。
       容赦無く叩き潰して無に帰してやろう」」

322名無しさん:2018/05/03(木) 23:23:53 ID:f6Jc0GS60

( ・∀・) 「龍神の鎧」

即座に龍化し唱えたのは、全身強化の龍技。
全身の鱗に魔力を浸透させた気高き盾と、
刃と見紛うほどに鋭い両前足の大爪。

誰よりも早く、大地を蹴って低空を飛翔した。

(<●>) 「「身の程を知れ」」

大気中から生成された黒き槍。
初速から音を置き去りにしてモララーの眼前に迫った。

( ・∀・) 「っ!?」

【+  】ゞ゚) 「驚きました。まさか呪術を扱うとは」

槍は龍の瞳を貫くこと無く空中で制止し、砕けて散った。

(<●>) 「「ほう」」

【+  】ゞ゚) 「呪術に対抗できるのもまた呪術ですね。
         呪茨棘・八重」

323名無しさん:2018/05/03(木) 23:24:24 ID:f6Jc0GS60

(<●>) 「「呪術の発動速度をよくもこれほどまでに極めたものだ。
       だが、それでもまだ遅い」」

放たれた呪術の棘と、オルフェウスの間に存在した空気が突如として大きく震えた。
目に見えない壁が、オサムの術を防ぐ。
その間に距離を詰めたモララルドが叩き込んだ爪によって、硝子のように砕けた。

( ・∀・) 「光に飲まれて消滅しろ」

大きく開いた口腔から撃ち出された魔力が、真っ直ぐにオルフェウスの身体に突き刺さった。

(<●>) 「「この程度で」」

('A`) 「どの程度だって?」

その声を、オルフェウスは背後に確認した。
同時に正面にいたはずの二人の姿が揺れていることに気付く。

( ФωФ) 「精霊の現身。これは幻覚ではない。現実だ」

ロマネスクの横に立っていたドクオとクールの姿は、
空気に滲んで消えていく。

324名無しさん:2018/05/03(木) 23:25:07 ID:f6Jc0GS60

川 ゚ -゚) 「ドクオ合わせろ」

('A`) 「言われるまでも無い」

川 ゚ -゚) 「地平の彼方まで断ち切れ! ホライゾン!」
('A`) 「光の魔術を牢獄にとざせ。インフ・スペクラム」

(<●>) 「「うつくしい……」」

クールの放った光の斬撃。
視界に映る全てのものを距離に関係なく切り離すナインツ・ヘイブン最長射程の光の斬撃。

同時にドクオが放った魔術は、かつて天剣の所有者と相対するために考え出したもの。
単純な防御力はほとんどないものの、光の魔術を反射する百枚の魔鏡。
斬撃の魔術が何往復もオルフェウスの全身を刻む。

細かくちぎられた欠片は煙となって空に消えた。
後に残ったのは、正方形の黒い箱。
そこに一つ目の化け物の姿は無い。

( ・∀・) 「潰してやる」

箱の上部に足をかけたモララーは、
前進に感じた寒気に従ってすぐに飛びずさった。

325名無しさん:2018/05/03(木) 23:25:36 ID:f6Jc0GS60

(;・∀・) 「ぐ……っ!」

跡形も無く消え去った足首から先。
大粒の血を流しながら大地に蹲った。

('A`) 「モララー」

( ・∀・) 「大丈夫だ!」

川 ゚ -゚) 「リフドロップ」

クールの魔術は、数秒で傷口を元通りにした。
龍が暗く澱んだ上空に向かって吼える。

川 ゚ -゚) 「なんだこれは」

天剣をも弾くほどの硬度を持ちながら、
強化された龍鱗すらも溶かす魔術を、脊髄反射のように発動させる物質。

('A`) 「見たことがない」

【+  】ゞ゚) 「どうですか、ロマネスクさん」

( ФωФ) 「……精霊よ」

326名無しさん:2018/05/03(木) 23:26:08 ID:f6Jc0GS60

優れた精霊術師は、ありとあらゆる精霊とコンタクトをとることができる。
この世に存在する全ての物質に宿るとされる精霊と対話することで未知を暴き、
言霊によって従わせることで力に変える。

翳した手の中で幾つかの光が明滅した。
異なる色を持つ複数の精霊術は、ロマネスクの掌から黒色の立方体へと向かう。

( ФωФ) 「ふむ……精霊が呼びかけに応えない。
         つまりこの立方体は、この世のものではないということだ」

【+  】ゞ゚) 「先程の奴の触手を凝縮したものでは?」

('A`) 「いや、もっと別のものだと思う。キュート」

o川*゚ー゚)o 「私にもわからないよ……。少なくともパパは知らなかったみたい」

川 ゚ -゚) 「硬そうだが、協力すれば壊せない程ではないだろう。
      恐らく、この中で最高の攻撃力を誇るのは私だ。力を貸してもらえるか」

o川*゚ー゚)o 「何が起きるかわからないから、気を付けて」

('A`) 「頼むぞ」

327名無しさん:2018/05/03(木) 23:27:02 ID:f6Jc0GS60

('A`) 「ルークス!」
o川*゚ー゚)o 「ルークス!」

ドクオとキュートが杖を振るい、二人で一つの魔術を編む。
完全に同期した二つの魔力がクールの剣へと注ぎ込まれていく。

川 ゚ -゚) 「集え、ナインツ・ヘイブン」

クールの背後に浮かんでいた九つの剣が、重なり一つの刃となる。
魔力で形成された切っ先を正面に向けて、大きく腕を引く。

( ФωФ) 「光の精霊よ」

ロマネスクの言霊に応え、精霊は中空に陣を描く。
強化の特性を持つ光の精霊陣が、クールと立方体との間に配置された。

【+  】ゞ゚) 「私達は見守るだけですかね」

( ・∀・) 「同時攻撃しなくていいのかな」

【+  】ゞ゚) 「私の場合は属性が真逆ですからね。邪魔になるだけでしょう」

( ・∀・) 「僕も見ているだけにしようかな。それに、もう充分じゃないか」

眩いほどの光をその手のうちに束ね、立方体に向けて一気に距離を詰める。
精霊陣の中心を貫くように振るうのは、全てを穿つ閃光の刃。

川 ゚ -゚) 「ペネトライト!」

328名無しさん:2018/05/03(木) 23:27:34 ID:f6Jc0GS60

空間を震わせるほどの一撃。
自慢の髪すら輝く光と化していたクールは、英雄達の視界から消えた。
甲高い金属音が虚ろの空間内に響く。

黒色立方体の真後ろにて分離した九つの剣。
その全てを翼のように拡げて振り返ったクール。
立方体の中心部には人間大の穴が開いていた。
箱は、黒い煙を立ち上げながら崩壊していく。

( ・∀・) 「貫通したみたいだけど……」

('A`) 「やけにあっさりと……いや、なんだあれは」

o川*゚ー゚)o 「パパっ!」

溶解しながら崩れ落ちる立方体。
その内側には、何一つ生命体の痕跡が存在しなかった。
即座に置かれた状況を理解したのは、僅か二人。

上空から降り注いだ脅威に対する防備は、あまりにも脆かった。

( <●><●>) 「よく防いだな」

329名無しさん:2018/05/03(木) 23:28:17 ID:f6Jc0GS60

人型に似た二息歩行の姿。
しかし、人間よりも二回り以上大きく、両手両足はまるで獣のよう。
背中には呪術で組まれた一対の黒い翼。

【+  】ゞ゚) 「っあ…はっ……はっ……」

('A`) 「オサムっ!?」

( ФωФ) 「人……間……?」

( <●><●>) 「正確には、半分がそうだ」

蒸発する大地は轟々と白煙を立ち上げ、英雄達の足場は陸の孤島となっていた。
半身が吹き飛んだオサムに駆け寄るキュート。
少女の回復魔術はしかし、呪われて死ぬことの無い身体を持つ呪術師には何ら影響を及ぼさない。

【+  】ゞ゚) 「お気遣いありがとうございます。ですが、心配は不要です」

体表に刻まれた呪いの一角を解き放ち、失った肉体を再形成する。
両の足で立ち上がり、宙に浮かぶ存在を睨む。

( <●><●>) 「まずは見事、と言っておこう」

330名無しさん:2018/05/03(木) 23:28:49 ID:f6Jc0GS60

('A`) 「クラッシカル」

砕けた大地に転がっていた人間大の岩が、ドクオの杖に導かれ一斉に飛び放たれた。
弾道は一直線に敵の懐へ。
直撃するかと思われた瞬間、何かにぶつかったかのようにあらぬ方向へと弾かれた。

( <●><●>) 「そう焦るな。……お前もだ」

( ФωФ) 「ぐぬっ」

男の背後に音もなく迫っていたロマネスクに視線すら向けることも無く、地面に叩き落とした。
土煙の中から無傷で立ち上がったものの、精霊術師は驚愕の表情を浮かべていた。

( ФωФ) 「まさか……」

有り得ない、と続けようとした言葉を飲み込む。
むしろ大いにあり得るのだと、ロマネスクは理解した。

( <●><●>) 「ほう、流石過去四回の災禍を生き延びただけのことはある。
         即座に私の正体に気付くとは」

( ・∀・) 「どういうことだ、ロマネスク」

( ФωФ) 「三術を全て扱うなんてことができるわけが……」

331名無しさん:2018/05/03(木) 23:29:20 ID:f6Jc0GS60

( <●><●>) 「私にはその才能があっただけの事。全ての術は私が生み出したのだ。
         故に讃えられた我が名は純術師オルフェウス」

('A`) 「成程、理解した。だが、得意分野の練度で負けるつもりは無い」

ドクオが構えた腕を中心にして、魔術陣が次々と現れていく。
一つが二つに別れ、それぞれがさらに精緻な魔術を編む。

('A`) 「消えろ」

全ての魔術陣が砕け、拡散した光がドクオの腕の先で舞う。
軽くふるわれた腕から放たれた魔術は、一直線にオルフェウスの胸元へと向かった。

( <●><●>) 「呪泥壁・四重」

大気中に存在するあらゆるものを消滅させた光は、
ガラスが割れる様に散り散りになった。

【+  】ゞ゚) 「呪術で……魔術を……」

( <●><●>) 「一人ずつではなく、全員でかかってきたらどうだ、とでも言いたいのだが。
         面倒事はあまり好きではないのでね」

オルフェウスが胸の前で両の手を打ち鳴らした。
拝むかのようなその姿に一瞬気を取られた英雄達は、
抵抗する間もなく暗がりの底へと飲み込まれた。

332名無しさん:2018/05/03(木) 23:31:23 ID:f6Jc0GS60




( ・∀・) 「ここは……?」

自身に翼のあることを思い出したモララーは落下途中に体勢を立て直した。
上空を仰ぎ見るが、落ちてきたはずの光は無く、
足元の暗闇は何処までも続いているように見えた。

【+  】ゞ゚) 「やれやれ、まさかあなたと一緒ですか」

(#・∀・) 「……降りろ」

モララルドの広い背中の上、オサムは胡坐をかいて座っていた。
そのトレードマークともいえる棺桶を腰の横に寝かせながら。

【+  】ゞ゚) 「そう冷たいことを言わないでください」

( ・∀・) 「それ以上喋ったらお前を先に殺す。
       背中から降りろ、でなければ殺す」

【+  】ゞ゚) 「……何が起こるのかわからないのです。
        あまり呪力を無駄にさせるものではありませんよ。ですが……。
        ……呪翼」


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