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お芋さんから始まる小説スレ
1
:
名無し募集中。。。
:2015/11/09(月) 21:40:55
狼で立った
尾形「あかねちん、お芋さんもろてきたもさかい食べ」羽賀「でもはーちんは…」 [転載禁止]2ch.net
http://hello.2ch.net/test/read.cgi/morningcoffee/1447052738/
でネタを投稿してたら小説書きたくなりました
長くなりそうなので他のネタ投稿人に迷惑掛けそうなのでこちらでスレ立てさして頂きますので悪しからず
主に自分のレスを抽出し加筆修正再構成し書いていきます
舞台は戦後間もない頃の東京でアンリアル登場人物は主に娘。メンバーです
娘。以外の実在の人物や出来事を織り交ぜますが時代考証等はかなりいい加減になると思いますのでご容赦下さい
狼にスレを立てた人とネタ投稿した人に感謝の意を表し始まり始まり
注:すっげえスローペースな進行になると思います
2
:
名無し募集中。。。
:2015/11/09(月) 21:44:17
戦後間もない頃の東京…貧困に喘ぎながらも懸命に生きる少女達がいた
尾形「あかねちん、お芋さんもろてきたもさかい食べ」
羽賀「でもはーちんは…」
尾形「うちは食べたからええねん。はよせんと石田さんに見付かんで」
羽賀「うん…」
食べ終えたあかねちんが雨漏りというか駄々漏れする様な小屋とも物置ともつかない小汚い棲みかを物欲しそうに彷徨く
尾形「あかねちんそれスケート靴や!お芋さんちゃう!!」
羽賀「大丈夫眺めてるだけだから…」
3
:
第1話 靴磨きの少女
:2015/11/10(火) 18:53:49
翌朝妹のあかねちんを食べさせる為に駅前に靴磨きの仕事に向かうはーちん…
尾形「ウチは負けへんで!貧乏なんかに絶対負けへんで!!」
はーちんの靴磨きの評判は良く年末の寒い朝の通勤時間にも訪れる客は後を断たない
お馴染みさんの靴磨きをするはーちんの前で仁王立ちするだーいし
石田「随分と繁盛してるじゃねえか…」
尾形「だからなんなん?」
石田「あんまり舐めた口聞くなよ
『女衒のだーいし』と言えばこの辺じゃ泣く子も黙るちょっとした顔なんだぜ!」
石田を睨み付けるはーちん
尾形「そんなん知ったことかい!!邪魔やから消えたらんかい!」
はーちんの怒声でギャラリーが集まる
工藤「おい!あんまり駅前で騒ぎになるのは不味いよ!行こうぜ!」
石田「解った!おい尾形!また来るからな!」
去っていくだーいしとどぅ〜を見つめながら白いため息をつくはーちん
(ちっくしょう!大人達の通勤時間に靴磨きしてその後闇市の店番して1日中働いても食うのがやっとの稼ぎや
ましてやあかねちんと2人だとまともな食い物なんて食えへん…お芋さん食うのがやっとや
雨の降った日にゃ靴磨きのお客はんほとんどおらへんから目も当てられへん
でもどんなにええ銭になってもあんな奴のいいなりでパン助やってゴミの様に扱われるんはゴメンや!
ちぇっ…今の騒ぎで人が途切れてもうた
しょうがない店番に行くか)
靴磨きの道具を片付け闇市へと足を向けるはーちんであった
4
:
第2話 英会話が出来る娘。(前編)
:2015/11/11(水) 22:06:05
闇市の店番の仕事へと向かうはーちん
周りの店の人間に挨拶しながら自分の任された店に着き仕入れてきた品物を並べる雇い主の親父に話し掛ける
尾形「おやっさんもうちょい給料上げてくれへんか?」
親父「なんだと糞ガキ!ちょいとばかり客や周りの店番から人気があると思って調子こくなよ!
お前の代わりなんぞこの街には掃いて捨てる程いるんだからな!」
尾形「すんまへん…」
すごすごと仕事を始めるはーちん
親父「てめえ身の丈を考えてものを言え!
じゃあ後は任せたぞ!」
品物を並べ終え確認をして店を出る親父を見送るはーちん
(確かにおやっさんの言わはる通りや!ウチは客に人気あって売り上げがええ言うても代わりは一杯おる!
頭には来るけどいくら売り上げが良くても男の子の様な力仕事はせず店番だけの仕事なのに男の子と同じ給料くれる所は中々無いんや…
うるさい事ばかり言わはるけど闇市で店開く様なえげつない親父の中ではまだましや
極たまにやけど売り物にならへん食い物(半分腐ったモノ)くらはったりするし
他なら男の子より給料安くて当たり前やし身体目当てで女の子雇う奴もおる
我慢せなアカンよな…)
はーちんがそんな事を考えてる内に客が集まってきた
尾形「いらはい!いらはい!ええ品物揃ってまっせ〜♪」
気持ちを切り替えて集まってきた客をどんどん捌くはーちん
そんなはーちんをじっと見つめる少女がいた…
(中編へ続く)
5
:
名無し募集中。。。
:2015/11/12(木) 20:06:42
ノリ*´ー´リ
6
:
第3話 英会話が出来る娘。 (中編)
:2015/11/12(木) 20:52:27
尾形「毎度おおきに〜♪」
昼を大分過ぎて客のピークをが終わって一息付くはーちん
(そういえばさっきからずっとウチの事見てはる女の子がおるんやけどなんなんやろう…)
はーちんがまったりとしてる中突然叫び声がした
「MPが来たぞ!手入れだ!みんな逃げろ〜!!」
闇市一帯が騒然とし慌ただしい雰囲気となった
(くっそ〜とりあえずおやっさんに言われた通り高いモノだけ持って逃げるか…)
はーちんが頭陀袋に高価なモノを詰め込んでる内に運悪くMPは目の前に迫っていた…
(あっしもうた!!こりゃアカン!荷物放って逃げな…)
はーちんは目の前のMPから逃げ出そうとしたが逃げた方向にもMPがいた…
(最悪や…捕まってもうた
ここは定石通り荷物の事なんか考えんとすぐ逃げるべきやった!
いくらおやっさんが他の親父共よりマシや言うてもどうせ自分が捕まらへん為に雇われた店番なんやからウチが捕まっても助けてくれへんのに…)
MP「ペラペラぺ〜ラ」
(何言うてはるんか解らへん!あかねちんが待ってはるのにどうしたらええんや…)
そこへ先程はーちんを見つめていた少女がやって来て何事か責任者らしきMPに話し掛けている
すると程なくはーちんは解放された
(んっ…どういう事なんやろ?)
戸惑いながらも少女にお礼をしに行くはーちんであった
(後編へ続く)
7
:
名無し募集中。。。
:2015/11/13(金) 00:29:42
狼では雰囲気があるな、と思っていたらこちらにも来ていましたか
8
:
スレ立て者
:2015/11/13(金) 01:08:39
>>7
読んで頂きありがとうございます♪
なんかストーリー仕立てでやってみたいと思ったのでこっちに来ました
狼の方は他にもネタ投稿してる人いるから長くなると迷惑掛けると思ったので…
最初に書いた様にスローペースでの進行になると思いますが今後ともご贔屓の程お願い申し上げます!
向こうではたまにショートショートネタ投稿してます
9
:
第4話 英会話が出来る娘。 (後編)
:2015/11/13(金) 20:11:12
英語を巧みに操る少女にはーちんが声を掛ける
尾形「ありがとう♪助かったで!大した礼は出来へんけど名前聞かせてんか?」
野中「美希!野中美希!でもチェルって呼んで♪」
尾形「チェルありがとうさんやで!今なんか礼をしたいんやが…」
野中「いいの♪わたし達また出逢える気がするから…」
尾形「さよか…でもこの恩は必ず返すさかいウチに出来そうな事あったら言うてな♪」
野中「うん♪その内ね…」
尾形「申し遅れたけどウチの名前は…」
野中「尾形春水!通り名ははーちんでしょ♪わたしもはーちんって読んでいいかな?」
尾形「う、うん…そういえばチェル朝からウチの事見てはったよね?
もしかしてウチになんか用があるんか?」
野中「うん!あるんだけどそれはまたいつか…」
尾形「ならええけど…
それにしてもチェル英語上手いな!」
野中「わたしが小さい頃親の仕事の関係でアメリカに行ってて覚えて戦争が始まる前に戻ってきたの」
尾形「そうなんや!アメリカに仕事で行くなんて立派な親御さんなんやな♪」
野中「お父さんもお母さんも空襲で亡くなったけどね…」
尾形「ゴ、ゴメン…」
野中「いいの!別にはーちんが悪い訳じゃないし戦争で親を亡くしたのはわたしだけじゃないし…」
尾形「ウチの両親も大阪の空襲で…」
野中「戦争ってやだね…
あっ…わたしそろそろ仕事に出掛けなきゃ!」
尾形「こんな時間からか…気を付けてな!」
野中「じゃあまたね♪」
尾形「ほなまたな♪」
沈んでゆく夕陽へ向かって駆けていくチェルを見送るはーちんであった
10
:
第5話 道端で歌っていた娘。 (前編)
:2015/11/14(土) 21:04:58
長い1日が終わり帰途に着くはーちん!2人の我が家は屋根もぼろぼろで畳も無いあばら家だ
家に戻るとあかねちんがお芋さんを焼きながら待っていた
羽賀「はーちんお帰り♪」
尾形「ただいまあかねちん♪」
羽賀「お芋さんもうすぐ焼けるからちょっと待ってね」
尾形「うん!ありがとさんやで♪」
はーちんはあかねちんがお芋さんを焼いてる間に今日起きた事をあかねちんに話し始めた
女衒のだーいしの事、MPの手入れにあった事、チェルに助けてもらった事…
お芋さんが焼けて食べている間も話は続きあかねちんは黙って聞いていた
はーちんが話を終えるとあかねちんは思い詰めた様に口を開いた
羽賀「はーちん!やっぱりわたしも働くよ!はーちんばっかりにそんな危ない仕事させられないよ!」
尾形「アカン!それはアカン!危ないからこそあかねちんにはさせられへんのや!」
羽賀「でも…」
尾形「でももヘチマもあらへん!
ウチは今あかねちんだけが生き甲斐なんや!
身寄りもおらんとこないな世の中で生きてく中であかねちんだけが光なんや!」
羽賀「そう言ってくれるのはわたしも嬉しいけど…」
尾形「ウチは大阪おった時からこんなん馴れとる!危ない目にもぎょうさん遭うとるしどうすればええか心得とる!!
でもあかねちんは…なっ!解ってんか!」
羽賀「うん…」
尾形「ほなこの話は終わりや!
あっ!せや!ウチ手入れの後どさくさ紛れにリンゴパクっとったんや!
一緒に食べよ♪1人1つあるで!」
羽賀「凄いよはーちん!」
尾形「いや凄いんはチェルや!
チェルがおらんかったら厄介な事になっとったわ…
なんもお礼出来んかったからいつかチェルをこの家に招待したいんや!
こないなあばら家やけどお礼したいんや!」
羽賀「わたしもチェルちゃんに逢いたいな…紹介してね♪」
尾形「勿論や…さっリンゴさん食べよか!」
羽賀「うん♪」
リンゴにむしゃぶりつく2人…
(中編へ続く)
11
:
第6話 道端で歌っていた娘。 (中編)
:2015/11/15(日) 20:28:41
リンゴを食べ終えると満足感満載のあかねちんが歌うと言い出した
羽賀「赤いリンゴに〜口びるよせて〜だまってみている青い空〜♪
リンゴはなんにもいわないけれどリ〜ン〜ゴの気持ちは〜よくわかる〜♪」
尾形(あかねちんの唄にはいつも癒されるで…)
羽賀「はーちんも一緒に歌お!」
尾形羽賀「歌いましょうか〜リンゴの歌を〜二人で歌えばなおたのし〜♪
みんなで歌えばなおなおうれしリンゴの気持ちを〜伝えよか〜♪
リンゴ可愛いや〜可愛いやリンゴ〜♪」
他にも何曲か歌って一頻り歌い終わるとあかねちんは満足したのか眠りに着いた
畳も無いから土間にぼろぼろのゴザを敷いて小汚い鞄を枕にして粗末な穴だらけの布を毛布代わりだが天使の様な寝顔のあかねちんを見詰めるはーちん
(あかねちんの歌には不思議な魅力があるんや
ホンマやったら晩にこんなでかい声で歌なんか歌っとったら怒鳴りこまれて当たり前なんやけどどっからも文句が来ん…
ウチがあかねちんと出逢うたんもあかねちんの歌が切っ掛けやったな…)
12
:
第7話 道端で歌っていた娘。 (後編)
:2015/11/16(月) 20:21:42
【はーちんの回想】
ウチは大阪の空襲で両親亡くして同じ様な孤児達とつるんでかっぱらいやらかつあげやら一杯悪さしとった
ほんで戦争が終わって暫くして仲間に儲け話があるからと誘われてなけなしの銭払ろうて東京へ来たら騙されてもうた…
なんなやけくそになってもうて「もうなんもかんもどうでもええわ!死んだろか!」と思うて死に場所探してぶらついとった時にあかねちんが道端で歌っとたんや…『東京キッド』を
別にひばりより上手いとかいう訳や無いんやけどなんやよう解らんのやけど涙が止まらへんかった!
次の日もその次の日もその場所に行くとあかねちんは歌っとった
後で聞くとあかねちんはあちこちの道端で歌を歌ってそれを見た人に食べ物や小銭やらを貰うてなんとか食い繋いどったらしい
あかねちんに魅了されてなんとなしにその場所に通って何日かした時にヤー公が歌っているあかねちんにいちゃもん付けてきた
これはアカンと思って咄嗟に声が出た
「お巡りや!お巡りが来たで〜!!」
ヤー公は辺りを見回し一瞬怪訝に思いながらもその場を立ち去った
そしたらあかねちんがウチに声を掛けてきた…
「助けてくれてありがとう♪わたしあかねちん!あなたのお名前は?」
「ウチは尾形春水!はーちんでええよ♪」
「はーちん!お友達になろう♪」
笑顔で話掛けてきたあかねちんを見た時運命を感じたんや!ウチがあかねちんを守っていくんや!!って…
これからもどんな事があってもずっとあかねちんはウチが絶対守ってみせたる!と心に誓い眠りに着くはーちんであった…
13
:
第8話 令嬢な娘。 (前編)
:2015/11/17(火) 18:54:30
次の朝靴磨きの仕事を終え闇市の店番へと向かうはーちん
(おやっさん怒っとるかもな〜…
昨日手入れがあったんはもう知っとるやろうしリンゴはパクったけど後は全部MPに没収されてまったからな〜
下手したらクビや…いや恐らくクビやなどないしよ…)
いつもの場所に行くと親父がいつもの様に品物を並べていた
尾形「おやっさんおはようさんです!昨日は…」
親父「見張りの奴から成り行きは聞いてる!いいから早く品物並べるの手伝え!」
尾形「はい!(ついとる♪クビは無さそうや!)」
店を開ける支度を整え帰ろうとする親父に改めて高価な品物を持って逃げられなかった事を詫びるはーちん
親父「バカ野郎!てめえなんぞに始めから期待してねえよ!
詫びる気持ちがあるならもっと売り上げ良くする方法でも考えろ!
じゃあ後頼んだぞ!」
尾形「はい!お疲れさんです!」
親父を見送ると店の前に如何にもお嬢様然とした少女が立っていた
尾形「なんやあんた…こんな所に買い物来る様な奴でも無いやろ!退いてんか?」
譜久村「わたしは譜久村聖!フクちゃんって呼んで♪」
尾形「ウチはそんな事訊いとらん!邪魔やから退いてくれ言うとんのや!!」
譜久村「まぁそんな事言わずに…
わたくしはあなたに用があるからここに来たの!聞いてよ♪」
尾形「喧しわい!ウチはあんたみたいなどっかの令嬢みたいなの相手にしてる暇無いんや!早よう去ねや!」
譜久村「だからあなたに良い話を持って来たの!
絶対悪い様にはしないからお願いよ!わたしの話を聞いてって!」
尾形(この女『絶対悪い様にはしないから』言うたな!
ウチが大阪出る時もツレだった奴にそう言われて騙されたんや!
信用出来る訳あらへん!絶対口聞いたらん!)
はーちんは店の奥の方に引っ込んで頑として口を聞かない姿勢を見せた
14
:
第9話 令嬢な娘。 (中編)
:2015/11/18(水) 21:23:08
浪花娘。と令嬢娘。の冷戦は昼を過ぎても続く…
いつのまにか令嬢娘の傍らには髪の長いシジミ目の少女も立っていた
いつもならはーちんの客寄せの掛け声で店は賑わしいのだがそれもなく店の前を闇市にはおよそ似つかわしくないお嬢様が店の前に立ち尽くしているので客足は殆んど無い
尾形(あいつどないなつもりや…いつまでおんねん!
このままじゃ不味い!
この売り上げでおやっさんが店閉めに来たら今度こそおしまいや…)
やむを得ず店の奥からフクちゃんの方に向かうはーちん
尾形「なっもうええやろ?昼過ぎやで…
飯食いに帰らんのか?お父はんお母はんが心配しとるで」
譜久村「わたくしの事は心配なさらないで♪
そうだわ♪里穂ちゃんランチタイムしよ♪」
鞘師「うん今持ってくる!」
里穂ちゃんと呼ばれた髪の長い少女は少し離れた所に駐車した車へと向かいランチの入ったバスケットと水筒を持って戻ってきた
鞘師「はいフクちゃん!食べよ♪」
鞘師がバスケットを開けるとカツサンドやハムサンドやフルーツ等が入っていた
尾形(なんやこれ…パンになんや挟んどる…
見た事もない果物もあるで
なんて食べ物なんやろ)
物珍しそうに見る尾形にフクちゃんが声を掛ける
譜久村「良かったらあなたも如何?」
尾形「あんたに食い物恵んでもらう謂われは無い!
それにこんな所で飯食うなんて行儀が悪いな!
あんたお嬢様ぶっとるけど成金の娘か?」
鞘師「おどれフクちゃんにいちゃもん付けるのはワシが許さんけんのぅ!
舐めとるとささらもさら(滅茶苦茶)にしちゃるぞ!」
譜久村「里穂ちゃん止めて!わたくし達はお願いに来てるのよ!」
尾形(このシジミ目広島者か…恐ろしくドスが効いとる
正直ちょっとビビってもうた…)
譜久村「ねっお願いの件は置いといて一緒に食べましょ」
尾形「いらん言うとるやろ!そんな事よりあんたのお願いは聞く気は微塵も無いから早よう帰ってや!!」
はーちんのキツい態度に思わず殴り掛かろうとするりほりほを制するフクちゃん
譜久村「わたくしお願い聞いて貰える迄は帰りませんわ♪」
はーちんは諦めてまた店の奥に引っ込みお弁当のお芋さん(半分)を食べる
(後編へ続く)
15
:
第10話 令嬢な娘。 (後編)
:2015/11/20(金) 19:50:13
結局はーちんはフクちゃんを排除する手立ては無かった
ほぼ売り上げの無いまま夕暮れ時になりおやっさんがやって来た…
あり得ない商品の売れ残りっぷりを見て一瞬戸惑うおやっさん
そして少し間を置き鋭い怒声が鳴り響く
親父「おいはーちんてめえこの野郎こりゃどういう事だッ!!」
尾形「す、す、すんません…」
親父「すんませんじゃねぇよバカ野郎!どういう事だって聞いてんだ!この野郎!!」
はーちんはおやっさんの余りの迫力にビビりながらもフクちゃんを指差しながら…
尾形「あ、あ、あ、あい、アイツが…」
おやっさんはゆっくりとフクちゃんに歩み寄る
フクちゃんを守ろうとりほりほが前に出ようとするがそれを諌めおやっさんと向かい合うフクちゃん
親父「おいお嬢ちゃん随分と垢抜けた格好だけどなんの用だい?
買い物に来たってんじゃねえだろ?」
譜久村「えぇ…ここにわたくしが欲しい品物はございませんわ!
そちらにいる尾形春水さん…はーちんにご用件がございますの」
親父「だからそのご用件とやらがなんだっての!舐めてんのか?」
思わず声を荒らげるおやっさん
譜久村「まぁそう興奮せずに落ち着きなさってご主人♪
あなたのご不満はお店の売り上げがいつもより少ない事ですね?
それでしたらわたくしがその分を補填してお支払いしますわ♪
それでよろしいかしら?」
少し考え込むおやっさん…
親父「まぁいいだろう…それで手を打ってやる」
尾形「それでしたらウチは明日も来てよろしいんでっしゃろか?」
親父「あぁ…いいだろう!だがはーちん!今日は水に流してやるが次はねぇぞ!
お前は売り上げがいいから雇われていて売り上げが少ねぇなら用無しって事を忘れるな!」
尾形「はい…」
フクちゃんが補填分の金をおやっさんに支払う
その間売れ残りの商品をおやっさんのトラックを積み込むはーちん
そこへ…
羽賀「ちょっと遅いから迎えに来たよはーちん♪」
16
:
第11話 迎えに来た娘。 (前編)
:2015/11/21(土) 21:24:53
はーちんの帰りがいつもより遅いので迎えに来たあかねちん
羽賀「おやっさんこんばんは♪」
親父「おう…」
不満そうにはーちんを見るおやっさん
それを察したはーちんが…
尾形「あかねちんダメやろ!日が暮れたらウチが一緒やないと外出たらアカンっていつも言うてるやろ!」
頷く親父
羽賀「え〜今暮れたばかりだよ…」
親父「屁理屈捏ねるな糞ガキ!」
羽賀「ごめんなさい…でももう来ちゃったし♪」
親父「おいはーちん!もう後はやっとくから早く帰れ!」
尾形「はい!すんませんおやっさんお先に失礼します!
さぁあかねちん早よう帰るで!」
あかねちんはフクちゃんとりほりほをじっと見てる
羽賀「はーちんこのお姉ちゃん達お知り合い?」
尾形「知らん知らん!そんな奴等知らんで!」
譜久村「こんばんは♪あなた羽賀朱音ちゃんでしょ?わたくし譜久村聖!フクちゃんでいいわよ♪」
羽賀「フクちゃんこんばんは♪あたしの事はあかねちんでいいよ♪」
フクちゃんに詰め寄るはーちん
尾形「おいあんたらウチらの名前知っとるみたいやけど何企んどるねんや?
あかねちん!知らん人間と話したらアカン言うてるやろ?
何されるか解らんから気を付けな…」
羽賀「でもはーちん…このお姉ちゃん達悪い人には見えないよ!」
尾形「そんな奴等程気を付けなアカンのや!」
譜久村「酷い言い様ね…」
尾形「酷い言い様されて当然の事しとんの自分解らんのか?
あんたらが今日したみたいに商売の邪魔して銭稼げんかったらウチらお芋さんすら食えへんのやで!」
譜久村「お芋が無いならスイートポテトを食べればいいじゃない♪」
尾形「お〜ま〜え〜は〜ア〜ホ〜か〜」
その時ちょうど通り掛かった横山ホットブラザースの横山アキラがはーちんの発言を聞きこのフレーズは使えると考えついたのがかの有名なノコギリを叩いて「おまえはアホか」とやるギャグである(適当)
羽賀「はーちんスイートポテトって何?」
尾形「あかねちんはそんな事知らなくていいねん!
毒や毒!毒入り危険食べたら死ぬで!!」
爆笑するおやっさん…
(後編へ続く)
17
:
第12話 迎えに来た娘。 (後編)
:2015/11/22(日) 16:28:01
おやっさんから日当を受け取り帰るはーちん&あかねちん
その後を着いて歩るくフクちゃん&りほりほ
尾形「おいお前ら着いてくんなや!」
譜久村「まだあなたとお話出来てませんわ!
お話を聞いて頂けない事には帰れませんわ♪」
尾形「ウチはあんたの話なんか聞く気あらへん言うとるやろ!
何遍も同じ事言わすなや!」
譜久村「わたくし理解出来ませんわ…
折角貴女方に良い話をお持ちしたとお伝えしてるのに話を聞こうともしないなんて」
尾形「赤の他人が持ってきた美味い話なんて信用出来へん!
ウチはもう騙されるのは沢山なんや…」
譜久村「お話聞くだけなら…」
尾形「それ騙す奴の常套句やで…
ウチ買い物するからちょっと黙ってくれへんか」
闇市内の馴染みの八百屋の親父に声を掛ける
尾形「おっちゃん儲かってまっか?」
八百屋「ボチボチでんな♪
おっ今日はあかねちんも一緒かい!」
羽賀「おじさんこんばんは♪」
尾形「いつもショボい買い物で悪いけどお芋さん頼んます!」
八百屋「はいよ♪今日はこれで店閉めるからオマケしとくよ!」
羽賀「わぁ〜やった〜♪はーちん今日は1人2本食べられるよ!」
尾形「おっちゃんありがとう♪ほなまた明日!」
闇市を出る面々…
譜久村「それがお芋さんですの?
わたくし元の形初めて見ました…」
呆れて返す言葉が見つからないはーちん
羽賀「お姉ちゃん達焼き芋食べた事無いの?」
譜久村「噂には聞きましたが見た事も食べた事もございませんわ!」
鞘師「ワシはあるよ」
羽賀「焼き芋美味しいよね!」
鞘師「うん…」
羽賀「あかねお芋さん焼くの上手なんだよ!
ねっはーちん!」
尾形「うんあかねちんの焼くお芋さんは美味いで」
羽賀「そうだ♪今日はオマケしてもらったからみんなで食べない?そうしようよ!」
譜久村「是非ご馳走になりたいわ♪」
尾形「あんた図々しいんとちゃうか?」
鞘師「フクちゃんそろそろ時間じゃけん…」
譜久村「あらわたくしとした事が…これから所用がございましてそろそろお暇しないと」
羽賀「え〜帰っちゃうの?せっかくあかねの焼いたお芋さんご馳走しようとしたのに…」
譜久村「次の機会に…」
羽賀「じゃ約束だよ♪」
譜久村「ええ約束しますわ!それではごきげんよう♪」
羽賀「またね〜♪」
あかねちんが喜ぶのは嬉しいが面倒な事になりそうだと複雑な気持ちになるはーちんであった
18
:
第13話 休日を迎える娘。
:2015/11/24(火) 20:32:30
フクちゃん闇市に来てから数日後はーちんが仕事を終えいつもの如く我が家であかねちんと2人でお芋さんを食べていると…
はーちんがおやっさんが仕入れの為に遠征するので明日は店番の仕事が休みだとあかねちんに伝えた
久しぶりにどっかに遊びに行こうとあかねちんが言い出した
尾形「そうしたいのは山々やねんけどウチら仕事休んでもお腹は休んでくれへんねん…
ウチらみたいなその日暮らししか出来へん人間はいつでも金稼がなどうもならん
飢え死にしたなかったら毎日働かなあかんねん…
だからいつもの駅前で靴磨き終わったら他の所も回ってみるんや
ほいたらもし今のおやっさんの店をクビになってもなんとかなるし…」
羽賀「うん…でもはーちんもたまには体休めないと…」
尾形「ウチは大阪の街で鍛えられとるさかい大丈夫や!
あかねちんには寂しい想いさせてごめんやで!
でもいつかウチも店持って一杯銭稼いだるねん!
ほいたらあかねちんに寂しい想いもさせんしなんでも好きな物食べさせたるし好きな所に行かせたるねん!
だから今は我慢してな…」
羽賀「でも1日休んだ位なら…」
尾形「今は明日食べるモノも無いん…」
羽賀「はーちんごめんなさい!
実ははーちんが仕事行ってる間にまた通りで歌って食べ物貰ったの」
あかねちんが部屋の隅からいくつかのお芋さんとキュウリと飴ちゃんを持ってきてはーちんに見せた…
羽賀「ねっ!だから明日の食べ物は大丈夫だよ♪」
するとはーちんはちょっと怒り出した
尾形「あかねちん通りで歌うんは止めて言うたやろ!
ヤー公やチンピラが絡んできたらどないすんねん!!」
羽賀「ご、ごめんなさい…」
尾形「あかねちんがそないな危ない真似してもしもの事があったらウチ…ウチ…」
はーちんは泣き出してしまった…
羽賀「ごめんはーちん!もう危ない事しないから」
あかねちんは泣いてるはーちんを優しく抱き締めた
尾形「なんかこないな事で泣いてしもうてゴメンな
あかねちん守っていく言うたんに…
よっしゃ折角あかねちんが食べ物貰ったんやから明日は気分転換にどっか行こか!」
羽賀「やった〜♪行こう!行こう!どっか行こう!」
明日を楽しみにしながら眠りにつくはーちん&あかねちんであった
19
:
第14話 動物園へ向かう娘。
:2015/11/25(水) 19:34:50
翌朝久しぶりにゆっくりとした朝を迎えたはーちん
あかねちんの寝顔を眺める
尾形(はぁ…あかねちんがおると心が癒される!こんな日がいつまでも続くとええなぁ♪
そろそろ起こしてどこ行くか決めなアカンな!)
尾形「あかねちん起きいや朝やで!」
あかねちんは眠そうに目を擦りながらゆっくりと起きた
羽賀「はーちんおはよう♪」
尾形「おはようさん♪さっそく何処に行くか決めよか?」
羽賀「そういえば昨日あかねが通りで歌ってる時に上野動物園が無料開放されているって聞いたの!
だから上野動物園にしようよ♪」
はーちんが少し俯きちょっと哀しそうな顔をした
尾形「気ぃ使わせてゴメンな…
ホンマやったらキネマやら演劇やら見たいやろにウチに甲斐性が無いばっかりに…
情けない想いさせてホンマにゴメンやで!」
羽賀「なんにも出来ないあかねの面倒見てくれてるはーちんが情けない訳無いでしょ!
血は繋がってなくても最高のお姉ちゃんだよ♪
お願いだからもうそんな事言わないで…
それにあかね動物園行くの初めてなの!
だから本当にキネマよりもお芝居よりも行きたいよ♪」
尾形「ゴメン解ったもう言わん!
実は…ウチも動物園初めてやで♪」
羽賀「楽しみだね!ワクワクする♪」
2人はお弁当にお芋さんを焼き飴ちゃん(サクマドロップ)と一緒に頭陀袋に入れ準備万端にした
尾形「よっしゃほな行こか?」
羽賀「うん早く行こう♪」
尾形「出発進行!」
羽賀「お〜〜♪」
20
:
第15話 モノマネをする娘。 (前編)
:2015/11/26(木) 21:56:32
はーちん&あかねちんの我が家から上野動物園迄は歩いて15分程の距離だ
あかねちん初めての動物園に少し興奮気味で早足になっていた
尾形「そないに慌てんでも動物達は逃げへんでw!」
羽賀「そうかな…でも急に具合が悪くなったり死んじゃったりとかあるかも…」
尾形「縁起でもない事言うたらアカン!大丈夫や!
動物達は人間よりよっぽど丈夫に出来とるさかいに簡単に死んだりせぇへん!
あんまり慌ててあかねちんが転んで具合悪うなったりしたらかなわんでぇ
だからほら!」
はーちんが手を差しだしあかねちんが握り手を繋いで歩いた
尾形「あかねちんはどの動物がお目当てや?」
羽賀「やっぱりインディラさんだよ♪」
尾形「ゾウさんか…ウチもどれ位でかいんか興味あるわ!
インディラが来てもう1年か…
戦争終わって5年も経っとるんやな…」
そんな他愛もない話をしていると動物園に着いた
無料開放しているとはいえ平日の午前中なので客は疎らだ
尾形「あかねちん何から見る?」
羽賀「ライオンから♪」
尾形「ゾウからやないんや!あかねちんは好きなモノは最後に残しとく性格やな♪」
2人は案内図に従いライオンの檻に向かう
羽賀「ライオン結構でっかいね…
こんなのに襲われたらひとたまりもないよね!!」
尾形「大丈夫や大丈夫で!鉄の檻に囲われてるんやから襲ってこん!
所詮獣や!人間様には敵わへんのや♪」
はーちん檻に近付きアカンベーやお尻ペンペンのポーズを取りライオンを挑発した
するとライオン君がマジギレしてはーちんに向かって突進し檻に激突
すざましい衝撃音と共にライオンの咆哮が園内に鳴り響く
はーちん完全にビビって悲鳴を上げその場でへたり込む…そして一言
尾形「なっ余裕やろ♪」
羽賀「はーちん『キャ〜〜!!』言うて腰抜かしてビックリしてますやん…」
尾形「ちょっとヘタな大阪弁使わんといて!」
園内放送「(ピンポンパンポ〜ン♪)お客様に申し上げます!
園内の動物に対する挑発行為はくれぐれもご遠慮下さい!
お客様の挑発行為によりお客様ご自身に被害があった場合一切保障いたしかねます!!」
思わず顔を見合せ爆笑する2人
尾形「次いってみよう♪」
偶然通り掛かったいかりや長介が2人の一連の流れを見ていてはーちんのこの「次いってみよう♪」というフレーズは使えると思い『全員集合』で使用したのはそれから数十年の後である(適当)
21
:
第16話 モノマネをする娘。 (中編)
:2015/12/02(水) 20:17:28
ライオンを見た後も2人は他の様々な動物を冷やかしながらながら楽しんで見た
そしていよいよメインのゾウのエリアに向かった
尾形「うわぁインディラでかいのぅ〜
まだ結構離れてるのにはっきり形が解るで♪」
羽賀「本当だ!凄い大きい!」
2人が近付いていくと柵の前でおかしな動きをしてる娘がいた…
思わずはーちんがあかねちんに小声で話し掛ける
尾形「柵の前に変な奴おるけど構ったらアカンで!
世の中にはどんな危ない奴がおるか解らんからな!
『君子危うきに近寄らず』っていうからな♪」
羽賀「大丈夫だよ!普通の女の子でしょ♪
『動物好きに悪い人はいない』って言うよ!」
尾形「『釣り好きに悪い奴はおらん』とはなんかで聞いた事あるけど…」
あかねちんが挙動不審な娘に近付いていく
尾形「おいあかねちん!」
心配になり後を追うはーちん…
羽賀「お姉ちゃん何してるの?」
鈴木「んっ?あんた誰?」
羽賀「あたしあかねちん!お姉ちゃんなんでおかしな動きしてるの?」
鈴木「おかしな動きとは失礼ね!形態模写の練習してるの!」
羽賀「形態模写!?お姉ちゃん芸人さんなの?」
鈴木「うん…一応ね!」
羽賀「うわぁ凄い!はーちんこのお姉ちゃん芸人さんだって!」
鈴木「あんた誰?」
尾形「ウチは尾形春水…お姉さんは?」
鈴木「鈴木香音!芸名はズッキ!
あんた達何してんの?」
尾形「ウチらここが無料開放してるから姉妹で遊びに来たんや」
鈴木「姉妹?あんた関西弁でそっちの子は訛ってないけど…」
尾形「そんなんあんたに関係無いやろ!」
鈴木「まぁいいわ…それよりあんた関西弁だけど大阪の人間?」
尾形「そうやけど何?」
鈴木「わたしの芸ちょっと見てくれる?」
尾形「えっ…」
ズッキははーちんの返事を待たずに自分の芸を始めた
動物のモノマネ、偉人のモノマネ、食べ物のモノマネ…
あかねちんは大喜びで爆笑していた
一通り芸を終えるとズッキは尋ねた
鈴木「わたしの芸はどうだった?」
羽賀「スッゴい面白かったよ♪」
鈴木「ありがとう♪大阪のお姉ちゃんは?」
尾形「あっ…あぁ…面白かったで」
鈴木「お世辞はいらない!つまらないでしょ!舞台でも全然受けないもん!
あんた大阪の人間でしょ!あっちはお笑いの本場って言うじゃん!なんかアドバイス頂戴よ!」
尾形「そないに言われてもウチ芸人でも評論家でもないんやで…」
22
:
第17話 モノマネをする娘。 (後編)
:2015/12/03(木) 21:01:47
鈴木「芸をやるのは素人でも観客の立場に素人も玄人もないでしょ!
ねぇ教えてよ!!あたし困ってんのよ!」
尾形「そないに言われても…」
鈴木「あたし切羽詰まってるの!
ケチな事言わずに教えてよ!!」
ズッキは興奮し始めはーちんに詰め寄り襟首を掴みだした
尾形「姉はん落ち着きなはれ!興奮し過ぎやで…」
はーちんから手を放すズッキ
鈴木「ゴメン…」
尾形「なんや解らんけど色々溜まってるもんがあるなら話聞くで♪
今日はウチら見ての通り暇人やから…
助言とか出来へんかもやけど話は聞ける!
なっあかねちん!」
羽賀「うん!お姉ちゃんお話聞かせて♪」
尾形「溜まってるもん吐き出すだけでも少しはすっきりするんちゃいますか?
」
鈴木「うん…じゃあお言葉に甘えて…」
ズッキは自分の身の上話を始めた…
愛知県の三河ら辺の生まれで親は農業をしていたが戦争で畑を放棄し名古屋に移住した
そこでズッキも働かなきゃと思い憧れていた芸人を目指し港座(現在の大須演芸場)で弟子入りした
始めは下働きや喜劇のちょい役だったが持ち前の明るさと珍しい女の子のコメディアンとしてそこそこ人気も出始めた
しかし戦争が終わった後仕事をしくじった親が食い詰めてやむを得ず上京
始めは金になる仕事を探そうかと思ったけど「香音が好きな事をやりなさい!」と言われてこっちでも一人前の芸人を目指して頑張っている
しかしモノマネと喋りがこっちでは余りウケないらしい
親も日雇いの様な仕事にしかありつけないし金銭的にも結構厳しく行き詰まっているとの事
尾形「姉はん焦り過ぎなんちゃうかな…
芸やっとる時もなんや笑顔が引きつっとる感じやし…」
鈴木「そうかな…でも実際余裕無いとダメなんだよな…」
羽賀「そんな時は歌おうよ♪」
鈴木「えっ…」
あかねちんはゾウのエリアから広い場所へ移動し突然歌い出した
あかねちんの歌に惹き付けられあっという間に人が集まってくる
鈴木「なんか凄いねあの子…」
尾形「あかねちんの歌には不思議な魅力がありますねん♪」
羽賀「ねぇはーちんもお姉ちゃんもこっちに来て一緒に歌おうよ♪」
はーちんとズッキもあかねちんと一緒に歌い始めた
後に聞くとズッキもこっちの師匠の指示で歌や踊りの稽古もしてるらしく歌も上手かった
何曲か歌うと見物人からおひねりが飛んできたりして園の係員に止められる迄3人は歌い続けた
23
:
第18話 街頭ラジオを聞く娘。 (前編)
:2015/12/04(金) 20:06:58
動物園を出るはーちん&あかねちん&ズッキ
羽賀「怒られちゃったね…」
尾形「まぁあんな所でシノギをする様な真似したらそら動物園も怒るはなw」
鈴木「でも係員も本気で怒ってる感じじゃなかったし立場上仕方なく注意しただけみたいだから気にしなくて大丈夫だよ♪
その証拠に出入り禁止もなくておひねりも没収されなかったじゃん!」
羽賀「なら良かった♪」
尾形「せや姉はん!おひねり山分けしまひょ!」
鈴木「いいよあたしは!見た所2人とも親いなくて生活結構厳しいんでしょ?」
尾形「でも…」
鈴木「あたしは一応親もいるし大丈夫♪
それに今日はちょっとすっきりさせて貰ったから
お金以上のモノを貰った気がする♪」
尾形「さいですか…ほなお言葉に甘えて」
鈴木「あたしそろそろ行かなきゃ!
夜の舞台があるから♪」
尾形「姉はんまたいつかどこかで!」
羽賀「お姉ちゃんまたね♪」
鈴木「またね〜♪」
去っていくズッキを見送る2人
羽賀「これからどうする?」
尾形「せやな…まだ昼過ぎか…
1日動物園で楽しむつもりやったからちょっと時間持て余すな」
羽賀「おひねりでなんか食べない?」
尾形「それはええな♪ほな駅前に行こか」
上野駅前に着くと街頭ラジオに思わず聞き入るはーちん&あかねちん
(美空ひばりの『悲しき口笛』が流れてくる)
「丘のホテルの 赤い灯も
胸のあかりも 消えるころ
みなと小雨が 降るように
ふしも悲しい 口笛が
」
尾形「やっぱりひばりはええのぅ…」
羽賀「わたし達もあんな風に歌えたらいいね♪」
尾形「アホ抜かさんといて!
ウチらみたいな孤児の姉妹は…」
思わず強い口調で咎めてしまったはーちんに泣き出すあかねちん
尾形「ゴメン!ゴメンやで!でもウチらみたいな孤児の姉妹はやっぱり…」
泣き止まないあかねちんを宥めるはーちんの前に如何にもお嬢様然とした少女が現れた
譜久村「本当にそうかしら?諦めたらそこで試合終了よ」
尾形「なんやまたあんたか…」
羽賀「あっフクちゃん!こんにちは!」
譜久村「あかねちんこんにちは♪
はーちんこんにちは♪」
尾形「ちょっと気安く『はーちん』って呼ばんといて!」
羽賀「あたしはあかねちんでいいよ♪」
尾形「こらあかねちん!こんな奴友達とちゃうんやで!」
羽賀「はーちんは友達じゃなくてもあかねはフクちゃんと友達だもん!」
尾形「敵わんなぁ…」
24
:
第19話 街頭ラジオを聞く娘。 (中編)
:2015/12/05(土) 20:26:31
ちょっとへそを曲げてしまったあかねちんがはーちんを無視してフクちゃんに話し掛ける
羽賀「フクちゃん何してるの?」
譜久村「ちょっと用があってお出掛けしてたのよ♪」
羽賀「あかね今日動物園行ったの♪動物さん一杯居て楽しかったよ!」
譜久村「そう良かったわね!」
羽賀「ゾウのインディラさんすっごく大きかったしモノマネする面白いお姉ちゃんもいたよ!」
尾形「せやな!インディラでっかかったよな♪」
あかねちんのご機嫌を取ろうと話に加わろうとするはーちんだがあかねちんはそっぽ向いてあからさまに無視をする
思わず悄気るはーちん…
譜久村「あかねちんそういう態度は良くないわよ!」
羽賀「でもはーちんがあかねに『あれはダメ!これもダメ!友達も作るな!』とか嫌な事言うんだもん!はーちんなんか大嫌い!」
尾形「いや…友達作るなとは言うてへん!
怪しい奴に…」
羽賀「おんなじ事だよ!あかねを縛り付けるの止めて!!」
ちょっと泣きそうな位悲しそうな顔をするはーちん
譜久村「でもあかねちん…それは全部あかねちんの事を想って言っている事なのよ
はーちんはあかねちんの事とても大切に思ってるから朝から晩迄働いて自分が辛い目危ない目にあってもあかねちんにはそんな目に遭わせない様に頑張っているのよ!
そこ迄してくれる人にそういう態度は絶対ダメよ!」
羽賀「う、うん…解った
はーちんごめんなさい!」尾形「あ、あぁええんやであかねちん…
譜久村はんありがとさんな♪」
譜久村「いいのよ♪」
羽賀「そうだ!フクちゃんこれからお時間ある?
良かったら一緒にごはん食べよ♪
あかね達さっき動物園でお歌歌っておひねり貰ったからお金あるよ!」
尾形「せや!良かったら一緒に行きまへんか?」
譜久村「是非ご一緒したいわ
でもわたくしの方もお話…いえお願いしたい事がございますからわたくしの行き付けのお店にしましょうよ♪
お代はわたくしが持ちますからそうしましょうよ!」
尾形「なんや!ウチらの様な人間が行く店には付き合えんって事かいな!
お嬢様の様な方には下々の食い物は口に合わへんって事かいな!」
譜久村「いえそういう事ではございませんの…」
羽賀「ちょっとはーちん!フクちゃんの事いじめないで(怒)!」
尾形「いやそないな事ではあらへんねん…」
羽賀「じゃあフクちゃんの行き付けのお店に行こうよ♪」
尾形「う、うん…」
25
:
第20話 街頭ラジオを聞く娘。 (後編)
:2015/12/06(日) 20:01:28
駅前から少し歩いた所にフクちゃんの行き付けの店はあった
洒落た煉瓦造りで洋風ないかにも高級店といった感じである
尾形(あ、あかん譜久村はんはともかくウチやあかねちんみたいな格好の者がこんな店入ってもええんやろうか…)
はーちんは緊張の面持ちだがあかねちんは満面の笑顔である
羽賀「フクちゃん凄いお店だね♪
あかねどんなお料理が出るか楽しみ!」
譜久村「とっても美味しいわよ!」
尾形「ちょい譜久村はん!あんたは問題無いやろけどウチらが入って問題無いんか?」
譜久村「大丈夫ですわ♪心配なさらないで!」
フクちゃんが店の中へと入っていくとあかねちんが続きはーちんも中へ…
ボーイ「いらっしゃいませ譜久村様!
あっちょっとそこの2人…」
はーちんとあかねちんの入店を止めようとするボーイ
譜久村「こちらのお二人はわたくしの大切なお友達なんですが何か問題でも?」
ボーイ「いえ…只今お席の方ご用意致します!」
譜久村「お願いします♪」
尾形(なんか痛快やわwウチらみたいなのは普通の飯屋でも摘まみ出されたりする事もあるのにこんな高級店に入れるなんて…
正直ちょっと嫌味やけど譜久村はんカッコええと思うで♪)
フクちゃんは気を利かせて2人にスプーンで済むオムライスビーフシチューにサラダとスープを頼んだ
料理が運ばれてくるとあかねちんはオムライスを選びはーちんはビーフシチューを選んだ
羽賀「フクちゃんこれすっごく美味しいよ♪玉子がトロトロで中のご飯も美味しい!色も綺麗だし!」
譜久村「そう!喜んで貰えてわたくしも嬉しいですわ♪」
尾形「あかねちん!こっちのビーフなんとかも美味しいで♪
こら凄いで!ウチが大阪いた時食べたもつ煮込みより美味いかもしれん!」
羽賀「あっズルい!あかねもビーフなんとか食べたい!」
尾形「アカンで!そんなん行儀悪いで!
なぁ譜久村はん」
譜久村「大丈夫ですわ!調理長もこれだけ喜んで食べて頂ければ嬉しいはずです♪」
フクちゃんはボーイを呼ぶと取り皿を用意させ2人はお互いの料理を食べた
羽賀「あかね幸せ…フクちゃんありがとう♪」
尾形「ウチもや…譜久村はんありがとうやで♪
さっき意地張らんで良かった!」
譜久村「どういたしまして♪」
尾形「せや!ほんで譜久村はんのお願いってなんでっか?」
譜久村「あらそうでした忘れてましたわ!こちらのお願いというのは…」
26
:
第21話 絡まれている娘。 (前編)
:2015/12/08(火) 20:12:28
譜久村「歌手になって頂きたいのです!」
尾形羽賀「はっ…?」
譜久村「聞こえませんでした?
わたくしあなた達に歌手に…」
尾形「聞こえてるで!」
羽賀「うん…」
譜久村「どうでしょう?」
尾形「どうもこうも無いがな…
ウチらみたいなもんに良くしてくれるし悪い奴には見えんから百歩譲って騙しているんとちゃうにしても無茶苦茶や!」
譜久村「そうかしら?あかねちんの歌に魅力ははーちんもご存知でしょ?」
尾形「そらせやけどそないに簡単にあかねちん歌手になれる程世の中は甘うないやろ!
生き馬の目を抜く世界の芸能界にあかねちんを行かせたないねん!」
譜久村「確かにあかねちん1人を歌手にするなら無理強いしませんけどはーちんもご一緒なら如何かしら?」
尾形「はっ?何言うてはるん?ウチは…」
譜久村「はーちん!あなた大阪にいらした時フィギュアスケートやってらしたでしょ?」
尾形「な、なんでそれをあんたが知っとるねん…」
譜久村「実はわたくしはーちんが滑っている姿を拝見した事ございますの♪」
大阪時代の自分をフクちゃんが知っていた事に動揺し黙り込むはーちん
あかねちんが心配そうにする
羽賀「はーちん大丈夫?」
答えないはーちんに少ししまったという表情になるフクちゃん
羽賀「フクちゃんわたし達今日は帰っていいかな?」
譜久村「も、勿論…」
羽賀「フクちゃん今日はありがとう♪ごちそうさまでした!」
譜久村「またね…」
帰る2人を見送るフクちゃん…
譜久村(大阪時代の事を言ったのは間違いだったかしら…はーちんの心を閉ざしてしまったかもしれない
でもなんとかしてあのお2人のお力も貸して頂かないと…)
店を出て帰り道の2人
羽賀「はーちん本当に大丈夫?」
尾形「あ、あぁ大丈夫やで…」
羽賀「やっぱりこっち来る時にお友達に騙された事が…」
尾形「それはもうそないに気にしてないねん!
ある意味ウチがあかねちんに出逢う切っ掛けを作ってくれた訳やし…」
その時路地裏で何か揉めている声が聞こえた…
チンピラA「おいこらシカトしてんじゃねえよ!」
チンピラB「調子こいてると輪姦すぞ!!」
2人が様子を見に行くと誰かがチンピラ共に絡まれているようだ…
尾形「あっ…チェルや!」
羽賀「あの子がチェルちゃんなの?」
尾形「せや!早よう助けたらな!!」
羽賀「はーちん相手が5人もいるからあの作戦使おうよ♪」
27
:
第22話 絡まれている娘。 (後編)
:2015/12/09(水) 22:17:07
チェルがチンピラ達に路地裏で絡まれている
もう陽は沈み辺りは暗い…
尾形「あの作戦って?」
羽賀「もう鈍感だなぁはーちんは!
あかねをはーちんが助けてくれた時のだよ!!」
尾形「あっ!あれか…でも通じるんかなぁ」
チンピラ達はチェルを囲んで手を掛け何処かに連れ去ろうとしてる
チンピラC「おらこっちこいやこのアマ!」
もう迷ってる時間は無い…
尾形「おい!兄ちゃん等お巡りやで!お巡りこっち来とるで〜!」
羽賀「お巡りさんこっちこっち〜!!」
チンピラ達は2人の声に動揺してチェルから離れ辺りを見回す
尾形「チェル今や!早よう逃げぇ〜」
チェルは上手く隙をついて走り出す
チンピラ達はチェルを追おうとするがはーちんとあかねちんが上手く警官を誘導する振りをして追い足を止め路地裏から3人で逃げ出す
そしてなんとか表通りに出て難を逃れた
尾形「よっしゃここ迄来れば大丈夫やろ♪
さすがにチンピラ共も人目のある表通りじゃなんも出来へん」
野中「はーちんありがとう♪助かったよ!」
尾形「ええんや!あんたにMPから助けられた時に比べりゃチンピラ位大した事無いやろ♪」
野中「でも助かったよ!そっちの子は誰?」
羽賀「わたしあかねちん!はーちんの妹!」
野中「あかねちんこんばんわ♪
わたしは野中美希!チェルって呼んで♪」
羽賀「うん!はーちんからお話聞いてるよ♪
はーちんを助けてくれてありがとう!」
野中「You're welcome♪」
尾形羽賀「???」
野中「どういたしまして♪って意味よ!」
羽賀「ゆ、ゆあうぇ、うぇる…」
尾形「あかねちん無理せんでええww」
羽賀「バカにしないでよ!あかねだって教えてもらえば英語位出来るもん(怒)!!
チェルちゃん教えてくれる?」
野中「勿論!」
羽賀「ありがとう!あっそうだ♪
はーちん!チェルちゃんわたし達のおうちに招待しようよ♪」
尾形「せやな…チェルこれから時間あるか?」
野中「チンピラに絡まれている時間がある位今日は暇よw♪」
尾形「さよかwwwほな良かったら我が家に来んか?」
野中「喜んで行くわ♪」
羽賀「やった〜♪みんなでお芋さん食べよ!」
尾形「さすがに友達招待して出すモノがお芋さんだけっちゅ〜のはな…
昼間のおひねりでなんか買おうや♪」
羽賀「はーちんそれ名案だよ!そうしよう!!」
野中「あんまり気を遣わなくていいよ…」
尾形「かまへん!かまへん!臨時収入やから♪」
28
:
第23話 お泊まりする娘。 (前編)
:2015/12/11(金) 02:51:47
3人は夕飯を買いに闇市へと向かいそこで闇汁(とにかく色々な具材をぶち込んだ汁物)と握り飯と焼き鳥を買った
羽賀「こんなにいっぱい食べ物があるなんてお大尽だね!」
尾形「ホンマやな!」
野中「前から思ってんだけど闇汁って大丈夫?
食べた事無いんだけど…」
尾形「安っすいのはヤバいもん入れとる事多いけど今日買ったんはちょっと高う付いたけど大丈夫やw♪
前にあの店手伝うておいちゃんに少し食べさして貰ろうたらめっちゃ美味かったで♪」
野中「それは楽しみね♪」
羽賀「あかねも食べた事無いから楽しみ♪」
3人はまるでパーティーでも開く様なウキウキな気分で我が家に着いた
尾形「さぁ着いたで♪ここがおんぼろやけどあったかい我が家や!」
野中「このご時世屋根と寝る所があれば立派よ♪」
羽賀「いやいやあったかくないし寧ろすきま風だらけで寒いし…
屋根だって壊れてるから雨風凌ぎ切れてないよ!」
尾形「あかねちんそれは言わない約束よ!」
羽賀「www」
尾形「お約束はこんくらいにして中入ってや♪」
野中「お邪魔しま〜す♪
手土産とか用意してないけどよかったらこれ…」
チェルはカバンの中からチョコを取り出した
羽賀「あっチヨコレイトだ!!
あかね最近全然食べてないや…チェルちゃんありがとう♪」
尾形「そう言えば最近あんまり進駐軍の奴等配ってへんなぁ…」
野中「米兵達女の人襲ったりカタギの人に無茶したりヤクザに物資横流ししたりで色々問題起こしてるから控えてるらしいよ」
あかねちんが畳も床板も無い部屋の真ん中の地面で火を起こしその中にお芋さんを入れた…
そして3人はその周りにござを敷き腰を下ろした…
羽賀「あかねお芋焼くの上手なんだよ♪
ねっはーちん!」
尾形「せやで!あかねちんの焼くお芋さんは日本一や♪」
野中「お芋さんは良いよね!
焼いても炊いても吹かしても揚げても何でもイケて冷めても大丈夫!
それとなんといっても腹持ちが良い!」
尾形「それな!」
羽賀「だけどお芋さん食べるとおなら出るよねw」
尾形「それがちょっとたまに傷や♪
ウチらレディやからおならプーは恥ずかしいねんなw」
野中「なんかこういうの楽しい…一家団欒って感じ!
家族とか友達って良いね!」
尾形「うんええもんやで!ホンマにええもんや…」
29
:
第24話 お泊まりする娘。 (中編)
:2015/12/13(日) 19:57:22
火の中のお芋さんを突っつくあかねちん…
羽賀「もう少しだね…」
尾形「ほな先に別のもんから食べよか
闇汁からいって主菜は肉料理の焼き鳥ちゃんで握り飯付き!
最後はデザートにお芋さんを食べる!
握り飯を闇汁の中に放り込んでもイケるで♪」
羽賀「やった〜♪」
野中「う、うん…」
尾形「どうしたんやチェル?
あっ…もしかして闇汁にビビッとるんか?」
野中「そ、そんな事無いよ!」
尾形「ほなお客様からどうぞ♪」
野中「う、うん!食べるよ…」
闇汁を恐る恐る食べるチェル…
野中「美味しい!!はーちんこれ本当に美味しい!!」
尾形「せやろ!あっこのおっちゃんの闇汁ホンマに美味しいねん♪
魚介が入って肉も入って野菜も入って具沢山で味付けも味噌と酒粕入れて最高やねん♪
ちょっと高いから滅多に食えんのやけど」
あかねちんもそれを聞いて矢も盾もたまらずと言った感じで闇汁を食べ始める
羽賀「美味しい!!それになんか体が温まる感じだよ!」
尾形「酒粕入っとるからな♪この時期にはピッタリやろ!」
羽賀「うん!最高だね♪」
尾形「良かったらウチの分も2人で食ってもええで♪ウチは食った事あるさかい!」
野中「さすがにそれは…」
羽賀「そうだよ!あかねももうそんな事真に受ける程子供じゃないもん!
はーちんもちゃんと食べなきゃ!」
尾形「せ、せやな…」
はーちんも闇汁を食べ始める
尾形「ホンマ美味いな…身体温まるわ♪」
3人は闇汁を食べ焼き鳥と握り飯も食べ終えるとあかねちんが焼き上がったデザートのお芋さんを火の中から取り出す
野中「そうだ!わたし良い事思い付いた!
ちょっとさっきのチョコ貸してくれる?」
あかねちんはチェルにチョコを渡すと砕いて皮を剥いたお芋さんに乗せる
するとチョコがお芋さんの上で溶けて中に染み込む
それをおもむろに食べるチェル
野中「ん〜Perfect♪」
尾形羽賀「…?」
野中「最高に美味しい!!2人共試してみなよ!」
羽賀「あかねやってみる♪(チョコontheお芋さんを試して食べるあかねちん)
美味しい!!これ美味しいよはーちん♪」
尾形「ホンマにホンマか?なんや汚ならしい色しとるで…
(はーちんもチョコontheお芋さんを食べる)
ホンマや…
なんやこの幸せを運ぶ食べ物は!?」
30
:
第25話 お泊まりする娘。 (後編)
:2015/12/16(水) 21:30:38
3人にとって久しぶりの豪華な食事を終えるとご機嫌なあかねちんが歌うと言い出した
途中からあかねちんがみんなで歌おうと言うのではーちんとチェルも加わり宴は活況を呈してくる
何曲か歌うと今日は疲れたのかいつもより早目に寝むりについた
尾形「あかねちん今日は1日中はしゃいどったからの…
もう眠ってもうた」
野中「良い子だね♪」
尾形「うん…ホンマええ子や…
今のウチにとって掛け替えのない大切な子や…」
野中「なんか2人を見てるとそういう気持ち解るな…
それにしてもあかねちんの歌凄く良いね♪
どっかで習ってたのかな?」
尾形「よく解らん…一回訊いた事あるんやけど答える嫌そうだったからそれ以上訊かなかった
そういえばチェルもかなり上手いやん♪」
野中「ありがとう♪はーちんも上手いよ!
わたし進駐軍の通訳をモグリでやってたりしてその縁で米軍のキャンプで歌わしてもらったりしてるからそこそこ自信はあるよ」
尾形「凄いやん!キャンプで歌わしてもらえるとかプロやんけ!!」
野中「いやキャンプで本物の歌手がくると恥ずかしくてプロとか言えないよ…」
尾形「いや…でもそれって凄いと思うで!
そもそも英語出来るんが凄いしキャンプに出入り出来るとか凄いやん♪」
野中「キャンプに出入り出来るのはついてるし色々得するよ!
この前はーちん助ける事出来たのもたまたまキャンプで知りあった人がその場に居たからだし…
でも凄いのは親がそういう仕事していてアメリカに住んでたからって事だよ
それに英語が出来てキャンプに出入りしてると厄介な事もあるの
夕方絡まれてたのもその為だしそういう事はしょっちゅうある」
尾形「英語が出来て稼いどるチェルを妬んで因縁吹っ掛けとったんかあいつら!
ホンマしょうもない奴等やのう…」
野中「でもいいの!あんな奴等怖くないし…
さてそろそろ帰るかな…」
尾形「チェルはヤサはあるんか?」
野中「今はちょっと世話になってる人の所で泊めてもらってる」
尾形「それやったら今日はウチ泊まっていかんか?
あかねちん起きて居なかったら寂しがるし良かったら泊まってや!
なんやったらいつまでも居ってかまへんで♪」
野中「いつまでもはちょっと気が引けるけど今日はお世話になるよた!ありがとう♪」
31
:
第26話 再び絡まれる娘。 (前編)
:2015/12/20(日) 13:25:45
夜が明けチェルが我が家に泊まってまだいる事を知るとあかねちんは喜びあれやこれやと話をした
しかし楽しい時間とは早く過ぎるものであっという間にチェルが出掛けなければいけない時間になった
羽賀「え〜チェルちゃんもっとゆっくりしていきなよ〜」
野中「あかねちんゴメンね…
わたしもちょっと色々用があるし仕事もあるから」
羽賀「いいじゃん!用は後回しにしてお仕事休んじゃいなよ♪」
尾形「こらこらあかねちん!
チェルを困らしたらアカンで」
野中「あかねちんまた近い内に遊びに来るから今日はゴメンね!」
羽賀「約束だよ♪絶対またあかねと遊んでね♪」
野中「うん約束する!じゃあまたね♪」
尾形「ほなウチもボチボチ仕事に出掛けるわ!」
羽賀「チェルちゃんまたね♪あかねちんもいってらっしゃい!」
はーちんとチェルが外に出るとあかねちんも見送り出て去っていく2人にいつまでも手を振っていた
尾形「あかねちんが我が儘言ってゴメンな!」
野中「別にいいよ!ちゃんと聞き分けてくれたんだから♪
1人でいる時間がちょっと寂しいんじゃないかな…」
尾形「せやな…ウチが仕事に出掛けてる間は1人やもんな!
こんなご時世やからあんまり外に出ん様に言うてあるからあかねちんも寂しいよな
学校でも通わせられたらええんやけどそれじゃ生活を成り立たせられへんし…
学校通わせるなら施設に入らな無理や
ウチみたいな性格やと施設は性によう合わんし
あかねちんの様な子は虐められるかもしれん…」
野中「まあ難しいよね…」
そんなこんなで取り留めの無い話をしていると駅前に着いた
尾形「あっ!あいつら昨日の…」
昨日チェルに絡んで来たチンピラ達が兄貴分らしき男を連れてこっちに向かってくる
チンピラA「兄貴コイツらです!
大阪弁のガキが靴磨きに駅前へ来るって情報は当たりでしたぜ♪」
兄貴分の男が2人に詰め寄って来る
兄貴「おいてめえら昨日は俺の舎弟に随分と舐めた真似してくれたそうじゃねえか!!」
尾形「だったらなんやねん!!」
チンピラA「なんだと!てめえらふざけた事抜かしてると承知しねえぞ!!」
尾形「ウチらみたいな小娘2人にヤクザもん連れてくる様なショボいチンピラがデカい口叩くなや!!」
兄貴「おい糞ガキあんまり調子乗るなよ!」
兄貴分の男は懐から拳銃を取り出しはーちんに突き付けた
32
:
第27話 再び絡まれる娘。 (後編)
:2015/12/20(日) 18:44:28
はーちんは突き付られた拳銃を掴み自分の額に向けて吠える
尾形「おい撃てるもんなら撃ってみいや!!!!」
はーちんのシャウトに駅前の大勢の人が反応し注目が集まる
思わぬはーちんの行動に明らかに動揺する兄貴分
チェルも結構危険な立場にいるがまるでこんな事は日常茶飯事とでもいった感じの冷めた表情だ
尾形「ほらどないしたん?
こないに仰山人が見てはる中で撃てるんなら早よ撃ってみい言うとるんや!!」
更に動揺する兄貴分…
舎弟共もどうしてよいか解らず完全に動きが固まっている
膠着し始めた場面で更にはーちんは吠える
尾形「おら撃ちたかったら早よ撃たんかい!!
ただウチらみたいなガキ撃ったら何十年ムショに放り込まれるか解らんで!
下手したら一生シャバには出てこれへんで!!
しょうもないチンピラ共に兄貴風吹かしとるサンピンヤクザのおどれにその覚悟が出来とるんか?
さぁこの始末どない付けんねん!!」
はーちんの追い込みに完全に余裕が無くなり脂汗をかく兄貴分の拳銃を持つ手が震え始めた
チェルの表情が少し曇る…
(ファッファーーッン!!)
駅前が緊迫した雰囲気に包まれた中で車のクラクションが鳴り響く
一堂の視線がそちらに向いた
商品の仕入れで遠征していたおやっさんのトラックだった
親父「おいはーちん!てめえ何こんな所で油売ってんだバカ野郎!!
店に遅刻したらぶっ飛ばすからな!!」
おやっさんの言葉に一瞬辺りの緊張した空気が緩和されトラックは走り去っていく
はーちんが掴んだ拳銃を放す
兄貴「て、てめえ次は絶対許さねえからな!覚えてろよ!!
おいお前ら行くぞ!!」
チンピラ共「へい!」
兄貴と愉快な仲間達は捨て台詞を放つと駅前から逃げていった
尾形「所詮サンピンはサンピン大した事無いな♪」
野中「はーちんやるじゃん♪」
尾形「チェルも全然ビビってなかったやん!」
野中「まぁわたしも米国にいた時から何度もこんな場面に遭遇したから…
向こうにいた時の終わりの方は日本人への差別酷かったし…」
尾形「ウチも大阪で酷い生活しとったからな相手が撃てる奴かそうじゃないかは解る!
あいつは撃てへん♪」
野中「でもさっきの終わりの方ちょっと追い込み過ぎだったよ!
あれ以上緊張感が続いてたらヤバかったよ!」
尾形「せ、せやな…」
野中「多分親父さん空気を察して声掛けてくれたからちゃんとお礼言っときな♪」
尾形「うん…」
33
:
第28話 女衒をしてる娘。
:2015/12/24(木) 21:00:42
朝の駅前…チェルと別れた後いつもの様にはーちんは靴磨きに精を出している
先程の騒ぎにも関わらず入れ替わり立ち替わり客が訪れる盛況ぶりである
客「ありがとう♪」
尾形「毎度おおきにまた来てや♪」
客!?「儲かってまっか?」
尾形「ぼちぼちでんな♪…ってあんたか!
ちょっと商売の邪魔やさかい退いてんか?」
“女衒のだーいし”こと石田のあゆみんが連れのくどぅーを伴っての登場である
今日もはーちんを少女売春婦としてスカウトしにきた…
石田「そう冷たくすんなよw!
悪い話じゃないと思うぜ!ちょっと我慢して男に身体を預けりゃいい銭になるんだ♪
一回ずつ割り前貰えるんだから今より楽な仕事でお前の働きによっちゃ何倍もの銭になる!
お前の妹ももっと良い生活が出来てお前にもっと遊んでもらえて喜ぶんじゃねえか?」
尾形「ウチは家族に顔向け出来ひん様な真似はせん!!絶対にや…
大体そないにええ話言うんなら自分でせえや♪」
工藤「なんだとコラッ!あんまり調子乗ってるとブッ飛ばすぞ!」
石田「まぁ待てよどぅー!ここは穏やかにいこうぜ!
顔向け出来ないって楽して銭稼ぐ事の何が悪いんだよ?」
尾形「『楽して』って「ポン(覚醒剤)打たなやってられへん」てパン助やっとる姉はん言うとるで!
そないな仕事のどこが楽なんや?
そのポンかてあんたんとこの親分が売っとるんやろ?
あんたんとこホンマに評判悪いで!!」
石田「て、てめえ…」
工藤「もういいよあゆみん!こいつやっちまおうぜ!!」
石田「そうだな…雇う雇わない以前にこいつムカつく!!」
「ちょっと待ちんさい!暴力は良くないんよ!」
だーいし&くどぅーがはーちんに襲い掛かろうと所を制止する声
工藤「あっ…」
石田「なんだよどぅーこいつ知り合いか…」
工藤「前に譜久村さん所で世話なった時に…」
尾形「あっ…そういえばこないだ譜久村はんと一緒におった人や…」
鞘師「はーちん久しぶりじゃのぅ♪
どぅーあんたはこんな所で何しとんじゃ?」
石田「こいつあの金持ちん所の人間か…
構わねぇ!いいからヤっちまおう」
工藤「あっ…」
だーいしがりほりほに殴り掛かるがあっさり取り押さえられる
尾形「あんた強いなぁ〜…」
鞘師「ええからここはわしに任せて今日はもう闇市のお店に行きんさい!」
尾形「おおきに♪」
はーちんは急いで靴磨きの道具を纏めるとその場を立ち去った
34
:
第29話 広島弁の娘。
:2015/12/25(金) 21:43:49
はーちんは闇市へと向かう途中考えていた…
尾形(おやっさんさっきなんで助けてくれはったんやろ?
闇市で店開く人間にとってあないなサンピンでも地回りのヤクザと反目する様な真似は不味いやろ…)
店に着くと先ずはおやっさんに礼を言った
尾形「おはようさんです!おやっさんさっきはありがとうございました!!」
親父「てめえ今日は荷物沢山あんの解ってんだろ!
少し早く来て手伝う位気が回らねぇのか役立たずが!
てめえの言葉じゃねえがこの始末どう付けるんだこの野郎!!」
店の前には荷物が山積みになっており全く片付いてない
尾形「は、はいすんまへん!すぐ片付けます!!」
はーちんは急いで荷物を片付けるのを手伝いいつもより店を開く時間が遅れたがなんとか開店に漕ぎ着けた
そして気になっていた事をおやっさんに訊いてみた
尾形「おやっさんさっきはなんでウチを助けてくれはったんですか?」
親父「はぁ〜?単なる気まぐれだバカ野郎!
そんな事はどうでもいいから俺様がわざわざ遠征して仕入れてきたモノきっちり売れよ!」
尾形「はい!」
はーちんはいつもより気合いを入れて売り込みの掛け声を上げた
尾形「いらはい!いらはい!ええ品物揃ってまっせ〜!!
そこを道行くお兄はんお姉はん&おとっつぁんおっかさん!!
寄ってってや〜〜ッ!!」
そして先程の駅前の3人はと言うと…
石田「おいこら痛てえからいい加減離せよ!」
鞘師「おっ悪いのぅ〜」
りほりほはだーいしを取り押さえていた手を離すとどぅーに近付く
どぅーは殴られるととでも思ったのか思わず飛び退く
鞘師「大丈夫じゃ♪なんもせんからちょっと話しようや!」
工藤「は、はい…」
鞘師「あんたなんでこげなしょうもない事しとるの?」
工藤「それが色々ありまして…」
鞘師「口濁さんともっと腹割って話そうや!
なんで居なくなったんじゃ?
わしもフクちゃんも心配しとったんじゃぞ!!」
工藤「それがその…」
鞘師「煮え切らやっちゃのぅ…はっきりせぇや!!
こんな駅前じゃ話難いか…
どっか話しやすい落ち着いた所行くかいのぅ♪」
石田「わたしは関係無いから帰らせてもらうよ!!」
鞘師「待ちんさい!あんたからも聞きたい事あるから一緒に行こうや♪」
石田「関係ねえって言ってんだろ!わたしは帰る!!」
鞘師「力付くで連行されるのと自分の足で着いてくるのどっちがええの?」
石田「…」
35
:
第30話 逃げ出してきた娘。 (前編)
:2016/01/06(水) 21:36:20
りほりほがだーいしとどぅーを両脇に従え腕を組み2人が逃げない様にしながら歩く
石田「おい!恥ずかしいから腕離してくれよ!
こんなのみっともねぇよ!!」
鞘師「離したらチャンス見付けて逃げるつもりじゃろ?
わしゃ喧嘩には自信あるけんど脚には自信が無いけんのぅw
それにみっともない言うたら少女売春の斡旋の方がみっともないじゃろ!」
石田「…」
3人は近場の喫茶店にはいると一番奥のテーブル席に座った
鞘師「なんでも好きな物頼みんさい!
わしが奢っちゃるけん遠慮せんでええんよ♪」
それぞれが好きな物を注文すると本題に入った
鞘師「なぁどぅー!なんで居なくなったんじゃ…
練習キツすぎたんか?」
工藤「そんな事無いです…」
鞘師「じゃあなんでじゃ?
なんでヤクザの片棒担ぐ様な真似しとるんじゃ?
親御さん悲しんどるじゃろ!」
工藤「蒸発しました…」
鞘師「えっ…」
工藤「生活苦しくなったからわたしだけ置いて逃げました!」
鞘師「酷い親じゃのぅ…
じゃけんいつも『なんか困った事があったら言いんさい!』ってフクちゃんも言っとったじゃろ!」
思わず興奮したどぅーが立ち上がりテーブルをドンっと叩いて言う
工藤「うちの親だって逃げたくて逃げたんじゃないんです!
そんな簡単に悪く言わないで下さい!!」
鞘師「す、すまん…」
工藤「そういう所ですよ…あんたらが一般庶民の辛さや苦しさを理解出来ずに正論言う所が嫌だったんですよ!!」
ウェイターが3人の注文した物を持って来たが思わず固まっている
鞘師「本当にすまんかった!
とりあえず一旦座って頼んだ物食おう!
なっ…」
どぅーが座ると3人は自分が注文した物を食べ始めた
食事を終えると鞘師は再び話を始めた
鞘師「どぅー!あんた戻ってくる気無いんか?
」
工藤「でも…」
鞘師「戻ってくるかどうかは別にしてもとにかく今の生活から足洗いんさい!
借金でもあるならちゃんと肩代わりしちゃるけん!
なんにしても今のままじゃいけんよ!」
工藤「そこまでしてもらっちゃ…」
鞘師「ええんよ!わしもフクちゃんも歌じゃダンスじゃ関係なくどぅーの事好きじゃけんそうさしちくれ!
わしらあんたの状況ちゃんと理解せんと無神経な事言うて傷付けたかもしれんけん頼むからそうさしちくれ!
きっとフクちゃんもそう思っちょるけん…」
36
:
第31話 逃げ出してきた娘。 (中編)
:2016/01/07(木) 20:46:03
りほりほの問いに食後のコーヒーをかき混ぜながら少し考え込むどぅー
やがてコーヒーを一口啜ると意を決した様に口を開いた
工藤「じゃああゆみんも仲間に入れてくれませんか?」
鞘師「えっ…」
石田「ちょ、ちょっとどぅーあんた…」
工藤「あゆみんも一緒にやっていいなら戻ります!」鞘師「どういう事じゃろか?」
ちょっと言ってる事がよく解らんと言わんばかりの表情でどぅーに説明を促すりほりほ
工藤「あゆみん今はこんなしょうもない事してますけどダンス凄く上手いんです♪
もしかしたら鞘師さんより上手いかもしれませんよw」
ちょっとイラッとした表情になるも説明を続けろと促すりほりほ
工藤「あゆみんはご両親が満州開拓団にいて満州に居たんです!
そこで…」
石田「おいどぅー!人の身の上話勝手に語り始めるじゃねえよ!!」
怒っただーいしがどぅーに掴み掛かるもりほりほに手首捻られテーブルに頭を押さえ付けられる
鞘師「いけんよお店で暴れたら迷惑じゃろ!
どぅーがあんたの話するのが気に入らんちゅうならあんたが直接わしに聞かせてくれんかね?」
石田「嫌なこった!」
鞘師「わし話聞かせてもらえんとあんたの頭に熱々のコーヒー溢してしまうかもしれん…」
りほりほはテーブルに押さえ付けただーいしの頭に目掛けコーヒーカップを傾け熱々のコーヒーを溢そうとする
石田「解った!解った!!話すから止めてくれ!!」
りほりほはだーいしを解放すると話をする様に促す
石田「どぅーが言った様にわたしは満州に居た!
そこでダンスを習った!
戦争が終わってちょっとしてから日本に戻ってきた!そんで今こうしてる!!それだけだよ…」
工藤「それだけじゃないでしょ…」
口を挟もうとするどぅーを制してりほりほが質問をする
鞘師「あんたご両親はどうしとるの?」
石田「満州に居た時殺された…」
鞘師「そうか…ほいじゃああんたどうやって戻ってこれたの?」
石田「そこまであんたに説明するつもりはない!!」
鞘師「アンタハダンスダレニナラッタノ?(中国語)」
石田「マンシュウノダンスホールノダンサーダ!(中国語)」
鞘師「マンシュウニイタノハウソジャナイミタイダナ…(中国語)」
石田「アタリマエダ!(中国語)」
怪訝そうな表情で2人を見詰めるどぅー
それに答える様に鞘師が日本語に戻り喋り出す
鞘師「わしは広島居た時親が中国人のコック雇っておってその人に中国語やら功夫やら習っちょった♪」
37
:
第32話 逃げ出してきた娘。
:2016/01/17(日) 15:32:43
工藤「どうですか鞘師さん!あゆみんも仲間にしてくれませんか?」
鞘師「いやフクちゃんの意見も聞きたいし、いくらどぅーのお勧め言うても先ず実際にダンスを見てみんとなんとも…」
石田「ちょっと待てよ!本人の意志シカトして話進めようとすんなよ!」
鞘師「おどれの意見なんぞ求めちょらん!!」
りほりほの一喝に不機嫌そうに沈黙するだーいし…
椅子に深く座り考え込むりほりほ
鞘師「フクちゃん家に行くか…そこでわしがだーいしのダンス見てからフクちゃんと相談する!それでええじゃろ?」
工藤「ええ解りました♪」
鞘師「ところでわしらがだーいしのダンスを見て仲間に入れられんとわしらが言うたらどぅーはどうするつもりじゃ?」
工藤「その心配はしてません!あゆみんのダンスを見て頂いたら鞘師さんも譜久村さんも気に入ってもらえると確信してます!」
鞘師「ほう〜えらい自信じゃのぅ〜
そいつはだーいしのダンスを見るのが楽しみじゃな♪」
勝手に話を進める2人が気に入らないのかぶつぶつと愚痴っているだーいし
そんなだーいしにりほりほが話し掛ける
鞘師「まぁそう機嫌悪くすんなや♪
こりゃあんたにとっても悪い話じゃないけん!
あんたじゃって好きで人拐いみたいな真似しとるんじゃなかろ?」
石田「人拐いだなんて…仕事紹介してるだけだ!」
鞘師「ほいでも好き好んでヤクザ者の使いっぱしりしとる訳じゃなかろ?」
石田「そりゃ…」
鞘師「なら着いてきんさい!
もし仲間に入れると決めたら…いやそうならなくてもヤクザ者と縁切れる様にしちゃるから!」
石田「でも一度絡んだヤクザとの縁を切るのは口で言う程簡単な事じゃないぜ…」
鞘師「そんなん解っちょる!
安心しんさい!必ず縁切らしちゃるけん!!」
石田「でも本当にあんたらの仲間と認めてもらえなくてもヤクザと縁切らしてくれるのか?」
工藤「あゆみん大丈夫だよ♪あんたのダンスは絶対気に入られる!わたしが保証する!」
石田「でも仲間にしないならメリット無いのに縁切らしてくれるのか?」
鞘師「市民団体じゃあるまいし『デモデモ』うるさいのぅ…
こんだけ推すんじゃからあんたどぅーのよっぽどお気に入りダチなんじゃろ!
それならわしのダチも同然じゃ!
ダチが困っとりゃ助けるのは当然じゃ!!
まだなんか言いたい事あるんか?」
石田「いや別に…」
鞘師「ほんじゃあ行くかいのぅ♪」
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