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ミセ*゚ー゚)リ 怪異の由々しき問題集のようです
1
:
名も無きAAのようです
:2013/04/13(土) 20:57:11 ID:WM1TjCNg0
たとえば『人外』と聞いて人はどういうものを想像するのだろうか。
細かな辞書的あるいは専門的定義を抜きにするのなら『怪異』や『妖怪』や『魑魅魍魎』でも構わない。
だがにべどころか取り付く島すらなさそうな言い方である『化物』だけは私個人的には止めて欲しいものである。
兎にも角にも今から綴られる文章はそういった世の理を外れた……
いや存在している以上は物理法則ではなくとも何かしらの法則には基づいている。
基づいているのだが、そんなことは健全なる読者諸君には関知し得ないことであろうことである故指摘しないでおく。
だからつまりこれは――夜の理に生きる人以外の者々の物語。
より正しくは人と人以外のモノの関係によって引き起こされる問題を集めたもの、ということになる。
問題を集めた、問題集。
フィクションではなくノンフィクション。
フェイクではなくファクトな物語だ。
.
124
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:16:23 ID:otC/LjQw0
固い先端に、舌を這わせる。
ちろちろと鈴口の部分を口付けながら、私の唾液で濡れた肉茎を扱く。
あの、特徴的な匂いが、する。
淫靡で淫らな。
私の本性を――人間の雌としての情欲と人ならざる妖としての衝動を刺激する、いやらしい匂い。
( *-Д-)「……今日はごめんね、でぃちゃん」
(#// -/)「ん……っ!」
ご主人様が申し訳なさそうに頭を撫でた。
謝罪として髪を優しく無ぜ、そこに生えた猫の耳、その形をなぞるように指を動かす。
くすぐったいような、もっとやって欲しいような感覚。
そんな他愛もない親愛表現にも敏感になった身体は正直に反応し秘部を濡らす。
いやらしいのは他の誰でもなく……私だ。
肌蹴た制服、スカートが邪魔だという風に顕現している尻尾が揺れる。
125
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:17:05 ID:otC/LjQw0
(#// -/)「…………別にいいのです」
それだけ告げて顔を伏せた。
付き合って何年経ってもこういう姿を見られるのは恥ずかしい。
恥ずかしくて。
じくじくして。
……気持ち良かった。
身体中が熱くなって、頭がとろけて、もっと気持ち良く――壊して欲しくなる。
(#// -/)「んっ……ッ! んぅ……」
左手を下着の中に入れようとした時に視界が少し、動いた。
視界の端に映る姿見には私と彼が映る。
だらしなく口の端から涎を垂らしながら恋人の男性器を味わう少女。
目は虚ろ、快楽に溺れている淫らな姿。
その頭には人間ではありえぬ猫の耳があり下半身では猫の尻尾が嬉しそうにゆらゆら揺れている。
126
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:18:12 ID:otC/LjQw0
ブラウスのボタンはほとんど外れていて、豊満とは言えないながらもそれなりの大きさの胸は口から垂れた涎で濡れて。
スカートの中に入った左手は自らの生殖器を刺激している。
……単なる淫魔としての吸精の為ならば自身が快楽を得る必要は何処にもないというのに。
そうだ。
私は。
私はあの時、クラスメイトに見られて興奮し――悦んだのだ。
責められるはずがない。
こんな無様な姿を晒している私が。
雌が。
そして、私は今も。
鏡に映ったはしたない自分の姿を見、痺れるような刺激を感じている―――。
(#// -/)「ふぅん……。は、むッ――」
( * Д)「ふぁっ……!?」
首を伸ばし、露出した亀頭を上から咥え込んだ。
右手をついて、雁首を唇で刺激するようにしながら出し入れを繰り返す。
127
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:19:06 ID:otC/LjQw0
……可愛い声。
舌の付け根辺りまで押し込んで、出して。
それを何度も繰り返す。
息が詰まって、苦しくて、大粒の涙が零れた。
( * Д)「…………苦しいなら、無理にしなくていいよ……?」
(#// -/)「んっ……っぐ、ん……」
……優しい言葉。
でも、嫌だ。
私はもっと苦しく、気持ち良くなりたい。
自らのはしたない部分を刺激していた左手を出す。
そうしてから両手で彼の腰を掴んで、角度を調節した後――思い切り、くわえ込んだ。
一番奥……喉元まで、いくように。
128
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:20:10 ID:otC/LjQw0
( * Д)「う、くっ――だから、それやっちゃ駄目だって…………っ!!」
(#// -/)「ふっ、んっ! ふぐぅぅぅうッ! うぅっ……!」
静止の言葉も聞かずそのまま首を前後させる。
喉が膨らむ。
強烈な異物感と嘔吐感。
それは、どうしようもないくらい、私の好きな感覚で……。
腔内を犯される。
彼を感じる。
喉も、内蔵も身体の中を直接全部犯される。
ご主人様のモノに――なる。
129
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:21:05 ID:otC/LjQw0
ビクリ、と震えた。
彼の身体が、肉茎が、全部震えた。
( * Д)「うぁ…………!」
(#// -/)「んぐぅっ……!!」
射精が始まる。
押しこまれた男性器は私の食道を叩くように精液を吐き出し、胃を犯していく。
どくり、どくりと。
熱く粘る精子が。
私の内側を直接犯して。
飲み込まれて。
どくり、どくりどくりと―――。
( *-Д-)「……本当に、もう……」
(#// -/)「…………げほっ、こほっ。んっ……」
130
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:22:04 ID:otC/LjQw0
射精が終わって、二度三度咳を繰り返しながら精液を飲み込む私をご主人様が撫でた。
「危ないからしちゃ駄目って言ってるのに」とか、なんとか。
この人はいつまで経っても私の心配ばかりだ。自分でやっているんだから危ないはずがないだろうに。
いや危ないかもしれないけど、でも。
私はこういうのが……好きだから。
( * Д)「今日は大したことなかったし、一回分くらいでいいよね」
(#// -/)「…………」
( *-Д-)「んじゃ、俺はもう行くから……って、」
衣服を直そうとしたご主人様を掴んで引き止める。
不思議そうな顔をする彼に向けて。
私の精一杯の魅力を込めた、おねだりを。
(#// -/)「まだ全然……足りないのです」
131
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:23:13 ID:otC/LjQw0
こんなところで終わられたんじゃ、欲求不満もいいところだ――だから。
(#// -/)「今晩も…………よろしくお願いします」
だらしなく、はしたない姿ながら座礼をし懇願する。
いつも通りな行為の続き。
疼く心と火照る身体をどうにかしてくださいと、恥も見聞もなく私は乞う。
( *-Д-)「……ああ、もう」
仕方ないなあ、なんて言いながらもご主人様も乗り気ではあったようで、私を抱え上げてベッドに寝かせた。
いつの間にか力持ちになったなあと思い、しょっちゅうこんな調子なんだから仕方ないかとも思う。
続いて上ってきた彼に私は言った。
(#// -/)「……愛しています、ご主人様」
132
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:24:06 ID:otC/LjQw0
一度私にキスをした後でご主人様は囁いた。
( *-Д-)「ありがとう。俺も……好きだよ」
明日の家事当番は私だとか。
明日も学校だとか。
しかもまだ予習が少し残っているから早めに登校しないと、とか。
昨日あったこととか。
今日あったこととか。
過去の傷とか。
未来の咎とか。
この瞬間だけは。
だから、今だけは。
かつての彼女がそうであったように、私達も全てを忘れて。
傷を舐め合うように。
弱さを補い合うように。
愛し合うことにしようか―――。
133
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:25:14 ID:otC/LjQw0
【―― 0 ――】
「―――結局ね、名前も弱さも意味合いとしては同じなんだと思うよ」
窓辺に立つ会長は何処か遠くを見る目でそう言った。
一体何処を見ているんだろう。
会長は場所を知らないはずだから、まさかあの祠じゃないだろうし……。
「誰かと繋がる為の何か。それがなければ人間関係は不便なものになっちゃうんだろうね」
あるいは人外もかも、とまた笑う。
たった一人の生徒会――『一人生徒会』。
「……そう言えばさ、その神様の『諱(いみな)』や『真名』はどうなったの?」
ミセ*゚ー゚)リ「ふぇ? あぁ、はい……」
134
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:26:15 ID:otC/LjQw0
それはギコさんからのお願い、神に成ったという証明としての名――和魂としての九尾の狐の名として確かに決めたけれど、会長には話していないはずだ。
本筋にはあまり関係ないことだし……どちらかと言えば後日談になるから。
訝しむ私も知らぬ風な会長に、私は少し悩んでその名を言った。
ミセ*゚ー゚)リ「『水橋九重姫』にしました」
玉藻前の昔の名前である「藻女(みずくめ)」と、関係性が強くなるから危ないと言われたけれど私の苗字から一字。
私の好きな妖怪から一字取って。
水の橋と書いて“みはし”と読んで、そこに九つという数と都に関連した「九重」をつけて。
『水橋九重姫』。
新しく生まれた神様の名前。
可愛い名前だね、と会長は言った。
正直自分でもそう思う。
135
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:27:22 ID:otC/LjQw0
「まあ、神様だからあんまり気安く呼ばないようにね。名前自体に意味はないけど、それでも『諱』だから」
ミセ*゚ー゚)リ「それについては他の名前をつけることにしました」
彼女の神様としての名は『水橋九重姫』。
でも、呼ばれる為の名前。
誰かと繋がる為の呼び名は―――。
ミセ*^ー^)リ「――――私の恩人の名前から、ペニちゃん」
【――――そこまで。第二問、終わり】
136
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:28:44 ID:otC/LjQw0
「永らへば このうき世こそ 悲しけれ」
【歌意】
生き長らえたならば、このような儚く辛い無情の世は本当にもの悲しい気持ちになることだよ。
(遠回しに「こんな悲しい気持ちになるなら長生きなんてしない方が良い」という意味にも取れる)
【語法文法】
『永らへ』はハ行下二段活用の「ながらふ(永らふ・存ふ)」の未然形か終止形。
ここでは次に接続助詞『ば』が来ているので未然形。この『ば』は未然形か已然形にしか付かない。
未然形接続と已然形接続で意味が変わり、未然形に接続した場合は順接仮定条件「〜たらば、〜ならば」という風に訳す。
『この』は古文では「此の」。現代語では連体詞だが古文では代名詞の「此」に格助詞の「の」が加わったものである。
「このような」「あの」「それ以来(ずっと)」という風に訳せるが、ここでは現代と同じ感じで訳した。
次の『うき世』は掛詞で、「憂き世」と「浮き世」の二重に意味がある。「散ればこそ いとど桜は めでたけれ うき世に何か 久しかるべき」と同じ。
それに続く『こそ』は係り結びを作る係助詞。この場合は強意を表し、已然形で結ぶ。
『悲し』は形容詞シク活用の「かなし」の已然形。本来は終止形になるべき部分だが係り結びの法則により已然形に変化している。
「かなし」はこの場合「悲しく思う」だが「愛し」の場合は「愛おしい」「心が打たれる」ような意味になるので平仮名の場合は判別する必要がある。
【特記】
参考にした歌は「ながらへば またこの頃や しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき」という藤原清輔朝臣の一首。
及び、「月見れば 千々にものこそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど」。
ちなみにこの歌では『永らへば』という風に順接仮定条件を使っているので単純に「今まで生き長らえてきて私は悲しい」ということではない。
「ここまで生きた私は悲しい、そしてあなたも生き続けたならばきっとこの世を悲しく思うことだろう」のような自分以外の誰かを意識した歌である。
幾度となく傷付き、何度となく後悔するでしょう――それでもあなたは生き続けますか?
137
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:30:30 ID:otC/LjQw0
プロットを再検討したところ十三話になり、「これ来年の四月までに終わらねーじゃん!!」と気付く。
そういうわけで一話二話はアニメ的に言えば初回一時間スペシャルです。
まあエロがテーマなのに一話で閲覧注意シーンがなかったので、これで良いかなーと思います。
色々な意味で勉強になる作品を目指しているのでオマケとして後日用語説明を投下します。
賢者タイムの冷静な頭で妖怪のお勉強をしましょう。
138
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:56:01 ID:fEumNbPI0
乙
139
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 02:57:00 ID:fEumNbPI0
乙
続き待ってる。
140
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 18:51:52 ID:SH.OwpcY0
テーマがエロ……だと……
141
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 20:56:17 ID:otC/LjQw0
第一問&第二問。
模範解答。
.
142
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 20:57:14 ID:otC/LjQw0
・《尾裂狐(オサキ)》
関東の一部の山林で俗信が行われている狐の憑き物。
管狐などと同じく、それに憑かれた人間は発熱、精神異常、大食、奇行などが現れるとされ、また管狐と同じく主を裕福にするとされる。
ただあくまで使い魔のように“使役する”印象が強い管狐と違い尾裂狐は所有者の意思が関係なく、そもそも人ではなく家に憑く存在と伝わっている。
家筋に憑いた尾裂狐は滅多に離れることがなく故にオサキ持ち同士で婚姻していたらしい。
語源には様々な説があるが、最も有名なものでは九尾の狐が殺生石に化けた後、その破片が上野国(群馬県)に飛来し尾裂狐になったという伝承。
九尾の狐の尾が別れて生まれたものであるから「尾裂き」と呼ばれるようになった、というような話がある。
ちなみに関東の中で唯一東京には尾裂狐の伝承が伝わっていない。
それは江戸には関東八州のキツネの親分である王子稲荷神社、「お稲荷様」である『御饌津神(みけつのかみ)』が住む場所があるため。
尾裂狐他、お稲荷様以外の妖狐は大晦日、王子稲荷の狐火の日(関東全域の狐の妖怪が官位を求めて参殿する行事)以外では東京に入って来れないからだ。
日本の狐の人外の多様さ及びその階級の多さを象徴する話の一つである。
143
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 20:58:37 ID:otC/LjQw0
・《妖狐》
狐の妖怪全般を指す語。
一般的に妖力が高くなればなるほど尾の数が増え、最終形である九本の尻尾を持つ妖狐を『九尾の狐』と呼ぶ。
ちなみに狐が妖狐になるまでに四百年、妖狐が九尾になるまでに四千年かかるという話もある。
妖狐は大きく二つ、善行を成す『善狐』と悪行を成す『悪狐』に分けられるとされ、尻尾が多くなるのは主に悪狐。
善狐は逆に尻尾が少なくなるという言い伝えもある。
それは神格を上げていくとたとえ狐であっても神に近づくとされていたため、高い神性を持つ妖狐はそもそも狐の姿をしている意味がないかららしい。
フィクションに出てくる多くの九尾の狐は『天狐』か『空狐』という中国神話の分類ならばかなり位の高い狐の妖怪である。
『周書』や『太平広記』と言った書物では九尾の狐は瑞獣や神獣と記されている。
最後の補足として、冗談みたいな話だがそもそも「キツネ」という言葉自体が妖狐が由来になっているという説もある。
『日本霊異記』にこんな話がある。ある男がある時美女に出会い、結ばれて子を成す。
だが実は彼女は獣の化けた姿で最終的には女は正体を知られたのでと山に帰ってしまう。
だが男は狐に向かい「汝、我を忘れたか。子まで成せし仲ではないか、来つ寝」とあくまで自らの女房であると主張する。
そういった経緯があり、以降その獣のことを「来つ寝」から『キツネ』と呼ぶようになった。
……みたいな、本当に冗談のような、あるいはエロゲみたいなハートフルストーリーも残っている。
144
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 20:59:22 ID:otC/LjQw0
・《白面金毛九尾の狐》
日本三大悪妖怪の一角にして、最強の妖狐とされる九尾の狐。
金色の体毛と陶磁のように白い肌、九本の尾、そして国を傾けるほどに美しい絶世の美貌を持つ。
説話、特に後年の能や浄瑠璃などでは中国ので悪女と名高い南天竺の華陽夫人、殷の妲己、周の褒ジと日本の玉藻前を同一とする見方が多い。
ただし妲己は人を焼き殺して笑い転げる美女で褒ジは笑わない美女なのでキャラが全く違う。
件の玉藻前は優しい美少女だったと伝わっている。
フィクションでは主に強力な妖力を持つ最後の敵として登場するが、一部では孤独を恐れて愛を求めた美女という考察も存在している。
彼女がどの程度の妖力を持っていたかについては平安時代、天皇側の八万の軍勢と互角以上に渡り合ったエピソードが最も分かりやすい。
最終的には将軍・三浦介義明、千葉介常胤、上総介広常と陰陽師・安部泰成等によって討伐されるが、以降も殺生石に姿を変え人々を苦しめ続けた。
「玉藻前」はあくまで御伽話の登場人物だが、モチーフとなったのは鳥羽上皇に寵愛された皇后美福門院(藤原得子)とされている。
名門出身ではない藤原得子が天皇に愛され、保元の乱を引き起こし、遂には武家政権樹立のキッカケを作ったことは当時の人々にとっては衝撃だったのだろう。
・《殺生石》
玉藻前が殺された後になったという溶岩石。能や浄瑠璃で有名。
曹洞宗の僧である玄翁和尚によって破壊されるまで瘴気を撒き散らし人を呪い、退治に訪れた者さえ殺し続けた。
破壊された後は日本各地に散らばったとされている。
実物は栃木県那須町の那須湯本温泉付近にあり、現在では観光地になっている。
当然瘴気などは出ておらず、人も動物も呪い殺されない。
ただ伝承の元となった硫化水素、亜硫酸ガスなどは絶えず噴出しているので深く吸い込むと当然死ぬ。
145
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 21:00:08 ID:otC/LjQw0
・《猫又》
おそらくは最も日本で有名な妖怪。猫が化けたものである『化け猫』との区別は曖昧。
文献上に初めて登場したのは鎌倉時代、かの有名な随筆『徒然草』や藤原定家による『明月記』に人を喰らう猫の化物の話が登場する。
「山に住み人より大きく獣を喰らう」など、それは猫ではなく虎ではないかと思ってしまうような記述も存在している。
猫又の特性や習性はかなり多岐に渡るので省略するが、人の血肉、精気や精液を食らうという点はどれも共通する。
猫又と言えば三味線だが、これは「三味線にされた同属を悼む歌を歌っている」らしい。
ちなみに遊女の格好をしていることが多いのは江戸時代に流行った『化猫遊女』というキャラクターの影響。
行灯の油を舐めるイメージは当時の猫の餌では油分を補給できなかったので魚油が用いられる行灯の油を舐めていたからだそう。
・《半妖》
サブカルチャーなどではお馴染み、人間と妖怪のハーフのこと。
が、そもそも『半妖』という言葉自体が近世に使われ出したものなので古典にはほとんど登場しない。
『半妖』という言葉を広まったのは高橋留美子の某作品が大きいとされる。
ただ人間と妖怪のハーフ自体は昔からかなり多く、雪女、妖狐や猫又などがよく産んでいる。
大抵の場合、強大な力を有している風に描かれる『半妖』だが、おそらくそれは白狐を親に持つ安倍晴明や竜神が親の金太郎の影響であろう。
146
:
名も無きAAのようです
:2013/04/19(金) 21:01:08 ID:otC/LjQw0
・《呪禁(じゅごん)》
呪術の一種。呪文や太刀・杖刀を用いて邪気や獣類を制圧して害を退けるものとされる。
道教に由来する術、つまり道術の一種でまた陰陽道にも取り入れられている。
中でも『持禁(じきん)』と呼ばれるものは対象の気を禁じることで怨鬼や鬼神の侵害を防ぎ、身体を固めることで災害を防止していたらしい。
律令制の時代には典薬寮(宮内における医療部署)に「呪禁博士」及び「呪禁師」という名の職種が設置されていた。
が、しかし早い時代にそれらは衰退していき、疫病を防ぐ役目は陰陽術士に引き継がれることになった。
呪禁をメインに据えた魔術体系を『呪禁道』と呼び、中でも札を用いた術式を『禁呪』と呼ぶ。
有名な術なので「地獄堂霊界通信」など妖怪や魔法をテーマにした作品でたまに登場する。
・《諱(いみな)》
人名の一要素、「字(あざな)」とは違う人の本名のこと。
ほぼ『真名』と同じ意味合いを持つものの、諱は死後にしか使われない。
漢字圏では実名敬避俗という風習があり、諱で人を呼ぶことによってその人の霊的存在を支配することができるとされていた。
皇族における避諱や死者への諡(おくりな)といった風習はここにルーツと持つ。
分かりやすいところで言えば「夏目友人帳」の『友人帳』とは妖怪達の名を奪ったもの=力を封じたもの。
また「千と千尋の神隠し」では名を取られた主人公が自分が何者であるかを忘れていく描写があるが、これも諱の風習が関係していると言えよう。
147
:
名も無きAAのようです
:2013/04/20(土) 10:05:35 ID:3divlm4Q0
興奮しない
気持ち悪いエロシーンだなぁ
148
:
名も無きAAのようです
:2013/04/20(土) 12:55:49 ID:AvBmDijE0
∧_∧ ハァハァ シコ ( ´Д`/"lヽ /´ ( ,人) シコ ( ) ゚ ゚| | < とか言いつつ、下はこんな事になってまつw \ \__, | ⊂llll \_つ ⊂llll ( ノ ノ | (__人_) \ | | \ ヽ
149
:
名も無きAAのようです
:2013/04/20(土) 18:28:38 ID:.8j5gbCg0
>>148
AV乙
150
:
名も無きAAのようです
:2013/04/20(土) 19:06:25 ID:rmqO2qGA0
マジ乙です
続きまっとる
151
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 09:34:56 ID:kGwIQ1V20
ふええ、先生の初めて読んだのにおもしろいよぉ……
152
:
名も無きAAのようです
:2013/04/21(日) 17:05:06 ID:DNFeP3IY0
乙乙
でぃちゃん変態だな、続き期待
153
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:40:52 ID:RqAuxQOc0
ミセ*゚ー゚)リ 怪異の由々しき問題集のようです
※この作品には性的な描写が(たまに)出てきます。
※この作品は『天使と悪魔と人間と、』他幾つかの作品と世界観を共有しています。
※この作品は推理小説っぽいですが、単なる娯楽作品です。
※この作品はフィクションです。実在の逸話を下敷きにした記述が存在しますが現実とは一切関係ありません。
.
154
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:42:03 ID:RqAuxQOc0
第三問。
線引き問題編。
「カントールの楽園」
.
155
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:43:05 ID:RqAuxQOc0
今は斯く さみだるるのみ 藤葛
・
156
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:44:05 ID:RqAuxQOc0
【―― 0 ――】
「―――ラマヌジャンを知ってるかな? 知らない? ガロアさんは? D・D・パーマーは? 流石にメンデルは知ってるよね?」
最後に彼女は、唐突にそんなことを言った。
聞き覚えのない名前が多いが、メンデルを知っているか知っていないかと問われれば勿論知っている。
グレゴール・ヨハン・メンデルはエンドウマメの勾配実験を元に遺伝の法則を発見した司祭さんだ。
(#゚;;-゚)「……それが今回の件と何か関係があるのですか?」
「直接的な関係はないよ。思い出しただけ」
そう返して彼女はまた知ったように笑う。
かつてと同じく凄惨な笑みを浮かべることも多いものの、今はもう、こういうイタズラっぽい笑顔をすることの方が多い。
少しだけ変わった、けれど普通の少女のように。
『一人生徒会』と呼ばれる彼女。
この学校の生徒会長。
今の彼女は、かつての私が憧れた人がそうであったようにこの学校を守っている。
燃え盛る太陽のような輝きと激しさを携えて。
157
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:45:04 ID:RqAuxQOc0
彼女自身はどう思っているのか、少しだけ気になった。
「社会は正しい、科学は正しい、正義は正しい……。当たり前のように人間はそう主張するケド、それは本当にそうなのかな?」
その言葉で彼女の言わんとすることが分かった。
正しいこととそうでないことの境界線。
彼女は続ける。
「それはきっと逆なんだよ。そしてそのことを錯覚した瞬間から輝かしい『正しさ』は空虚で無様なものに成り果てる」
そうだ。
社会は正しいのではなく――正しさを求めているだけ。
科学は正しいのではなく――正しさを考えているだけ。
正義は正しいのではなく――正しさを信じているだけ。
それは、それだけのことなのに。
どうしてか人間は間違いと勘違いを繰り返す。
158
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:46:04 ID:RqAuxQOc0
ねえ、と彼女は問い掛ける。
「君は――正しいのかな?」
(# ;;-)「いいえ。私は正しくなんてありません、正しくなんてないのです」
「じゃあ君は、君達は――正しくありたいの?」
それは……どうだろうか。
私の一存では答えることができない問いだ。
けれど。
私の思いを、しいて言うならば―――。
(#゚;;-゚)「私は正しくないかもしれません。……ですが、正しくなくても良いので、誰かに優しく出来れば、助けてあげられれば良いと思います」
そっか、と彼女は笑った。
その笑みはあの凄惨な血塗れの哄笑ではなく慈しむような微笑みだった。
159
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:47:08 ID:RqAuxQOc0
【―― 2 ――】※閲覧注意
薄暗い部屋の中で自分の鼓動と彼の吐息が頭に響く。
もっとしっかり抱き着こうと腰を動かすと甘い刺激が感覚を蕩けさせていく。
馬鹿みたいに勃起して反り返った肉茎が私の一番奥深く、子宮口の部分を擦って快楽を与えてくる。
「あっ……ん、っ……! はぁ……ぁ、きもちい……」
不定期に、ゆっくりと、小刻みに。
女の子の一番奥深くて一番大事な部分を弄られて私は小さく喘ぐ。
耐えようとしても、喘ぎ声を出してしまう。
気分を盛り上がらせる為の演技とかではなく。
ただ単純に、気持ち良くて。
「ん、あ……あっ……! ひっ、ん……」
女子は皆ガンガン突かれるのが好きだと勘違いしている男子がいるけど、実際はそうじゃない。
少なくとも私はバックで責められる以外にも、こーゆー風に好きな男の子の上に跨って、抱き合って指を絡めて……じっくりと愉しむのも大好きだ。
160
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:48:08 ID:RqAuxQOc0
「あっ……ぁ、っん……。あぁ……っ……」
イクちょっと前くらいの快感がジワジワとずっと続いて。
身体の中で、男の子の大事な部分が脈動してて、その音が身体中に響いて。
触れ合った部分から熱が伝わって交換して。
そういう様々なことが気持ち良い。
騎乗位で腰振ってる時も思っちゃうけど、本当にずっとこうしてたいくらいに気持ち良い……!
「はぁぁ……んっ、ぁ……」
「……ミセリ」
「…………何?」
耳元で彼の声がする。
それと同時に彼がちょっと動く。
そんな些細な刺激の全部が気持ち良くて、また声が漏れる。
161
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:49:05 ID:RqAuxQOc0
「そろそろ出したい。あと胸触りたい」
「……んっ。さっき口でヌいてあげたしっ……。その後散々……ぁ、揉んでたじゃん……」
「あれは前戯だろうが」
「あんなに気持ち良さそうにしてた癖に? どろどろのやつ、びゅるびゅる口の中に出しちゃってさ」
ビクン、と私のお腹の中のモノが膨らんだ気がする。
彼は女の子が淫語言う様が大好きな変態だ。
……私も割と好きだけど。
「それとこれとは違うんだよ――ほらっ!」
「あ、ちょっと――ひっ、いあぁっ! やっ!もうっ! あっ、あっ、あぁぁ……っ!!」
言葉と同時に彼が腰を突き上げて、それだけで私は反論できなくなる。
卑猥な水音が響く。
下から子宮が突き上げられて、膣の気持ち良い部分が剃られて、お腹の中を掻き回されてグチャグチャにされる。
162
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:50:03 ID:RqAuxQOc0
快楽には相当な耐性のある私も予期せぬ攻撃に身体の力が全部抜けてしまう。
もう気持ち良ければなんでもいいと、そんなことを言ってしまいそうになる。
「あっ、あっ、もうっ……んっ! 駄目だってぇっ! ひぃ、ん……!」
「ああもう――お前エロ過ぎだし無理!!」
……こういう時、男の子はズルい。
我慢できなくなった彼が私の腰に手を回して持ち上げる。
身体の重みで肉茎が更に深くまで刺さり、子宮口が押し込まれる。
痺れるような暴力的な快感。
「あぁぁっ!! あっ、ぐうぅッ……!」
そのまま彼は私をベッドに横たえる。
対面座位から、正常位。
どちらもが一番好きな体位だ。
163
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:51:06 ID:RqAuxQOc0
「ミセリ……。くそ、こういう時のお前はホントに可愛いな……っ!」
「いつも可愛い、でしょ…………やっ! ん、あぁっ!」
そうして彼は大好きな私のおっぱいを撫で、揉み、舐め、噛み……。
ゆっくりと愉しみ、それによって私の身体はじんじんと熱を帯びていく。
味を、匂いを、触感を、私の声を。
全部を堪能している。
そうやって刺激が与えられる度に私は彼のモノを締め付けてしまって。
まるで精液が欲しいとおねだりしているようで……我ながら凄く、いやらしい。
一通り愉しみ終わった彼が、私の両乳首を指先でコリコリと刺激しつつ、訊いてくる。
「あっ、あっ、あぁっ……! それ好きなのッ、知ってる癖に……っ!ああッ!」
「知ってるからやってんだよ」
「もう……ばかぁ……っ」
多分今自分滅茶苦茶エロい顔してるだろうなーと思いつつ、快楽に身を委ねる。
164
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:52:09 ID:RqAuxQOc0
「……なあ」
「んっ、なに……?」
「中に出したい。久々だし、出したい」
出させても何も。
元々私はそのつもりだったんだけど……わざわざ訊いてくれたのなら何かおねだりでもしてみようかな。
いや、えっちぃ意味ではなくて。
「んー……んっ、じゃあね……。最近退屈だし、何か面白い話教えてくれたら、いいよ……?」
「面白い話? ……『絶対当たる占い師』の話とか?」
え?
ミセ*//-/)リ「『絶対当たる占い師』……?」
165
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:53:04 ID:RqAuxQOc0
【―― 3 ――】
というわけで、駅前にやって来た。
我ながら単純だと思うけど、このドキリワクワクマジカルフォースな心を誰が止めることができるだろうか、いやロマンチックが如く誰も止められない。
反語及び直喩表現。
ミセ*゚ー゚)リ「えっと……どういう人だって言ってたっけ。帽子被った白髭のお爺さんだっけ? 美味しいオムライスの店からちょっと行ったところだよね?」
このVIP州西部は別に都会ってわけじゃないけど、そこまで田舎というわけでもない。
学校の周りは教育的影響を考えたのか建物も控えめだが、そこから少し先、この駅前の繁華街まで足を伸ばせば十分賑やかだ。
VIP州中央(帝都)のような大都会も好きだけど私はこういう「そこそこ」な地方都市も好きだった。
まあ、ここが私の生まれ育った場所だから、という理由も大きいのだろうけど。
……何が言いたいかと言えば、占い師一人探すのは都心部じゃなくても十分大変だってことだ。
やれやれだぜ、"Give me a break"。
何かヒントはないものかと雑踏を見つめ立ち尽くす。
ミセ*-3-)リ「考えるよりに先に行動かなぁ。それっぽい白い髭のお爺さんに片っ端から声を掛けていくしかないか」
166
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:54:04 ID:RqAuxQOc0
無茶苦茶頭の悪い方法だが「大体は繁華街にいる」という噂が正しいなら夕方までには見つかるだろう。
明日は月曜だけど、午前中の出席日数には余裕があるから多少帰るのが遅くなっても別にいいし。
そう考えてふらふらと他人だらけの街を歩き出す。
ミセ*゚ー゚)リ「(露天はたまにあるけど、占いは見かけないなぁ。ブームが下火になったのかな?)」
女子の多くは占いが大好きだ。
けど、その女子達も最近は社会進出が進み、インテリな理系女子も増えてきたので占いなんて怪しげなものに興味のない子が増えたのかもしれない。
私はもう、そういった諸々のモノ――迷信や妖怪や魔法が実在すると知っているけれど。
でもやはり世に溢れるオカルトは大半が作り話や勘違いなんだろう。
幽霊も正体見たりなんとやら、というやつだ。
杯中の蛇影、疑心暗鬼、踏んだ蛙は茄子なのだ。
"One always proclaims the wolf bigger than himself"。
ミセ*^ー^)リ「〜〜♪」
鼻歌混じりで春は短し歩けよ乙女。
167
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:55:09 ID:RqAuxQOc0
選曲はSty●ipS。
歩みを進める。
服装は最近買ったばかりのキャミソールにお気に入りのローライズ、ポシェットには元カレに貰った名前入りのアクセサリー(割と高い)。
ガラスに移った自分の姿は読者モデル以上に決まってる。
今日も私はとても可愛い。
一歩一歩踏み出す度にポイントカットされたセミショートの髪が揺れる。
小振りなヒップに、容易く挟め手に乗るサイズの胸、均整の取れたラインが出る服を着ても全然問題のない体型。
明るい笑顔に軽やかな雰囲気。
全く、我ながら困ったほどの美少女だぜ。
そうしてナンパを軽く躱し、通りを右へと曲がる。
ミセ*^ー^)リ「(いや改めて考えると私ってアレだよね最強だよね、美少女だよねぇ。可愛いし胸大きいし頭は良いしセックス上手いし)」
心の中で自画自賛。
だが事実だ。
なのでなんら恥じるべき部分はない!
あの天使みたいに蠱惑的な会長とかお淑やかなでぃちゃんとかとは違うかもしれないけど、私も可愛い。
うむ。
168
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:56:12 ID:RqAuxQOc0
……あと三十分くらいでさっさと切り上げて服でも見に行こうかな。
今でも十分可愛いけど私はようやく登り始めたばかりなのだ、この果てしなく遠い女坂を……!
一流の女子力を更に向上させるべくそう考え始めた、
―――まさに、その時だった。
「……オジョウサーン」
唐突に耳朶を叩いた声に振り返る。
引き戻された。
自画自賛が行き過ぎて乖離していた精神が街を行く私の身体に戻ってくる。
その人は、私の右斜め後ろに座っていた。
広い歩道の一角、市街並木を囲む煉瓦の上に腰掛けたその人は――茶のソフトフェルトハットを一瞬だけ持ち上げ、掲げた。
( ´W`)「そこの可愛らしいオジョウさん。占いなどに、キョウミはありませんか?」
169
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:57:09 ID:RqAuxQOc0
【―― 4 ――】
私は一瞬だけ驚きに動きを止める。
次いで、片足を斜め後ろの内側へと引き、もう片方の足の膝を軽く曲げて可愛らしく頭を下げた。
その仕草を見ると中折れ帽のお爺さんは含み笑いをする。
( ´W`)「カーテシー。教養のあるオジョウさんだネ」
年下である私が言うのもおかしいかもしれないが聡明そうな人だった。
チェックのウェストコートにユニークな英国紳士的な振る舞い。
脇にはパイプが置いてあり、それ等が某世界的な名探偵の姿を想起させたからかもしれない(尤もホームズが被ってるのは鹿撃ち帽だけど)。
……いやどちらかと言えば同じ知識人でもインディ・ジョーンズの方が近いのか。
その瞳に宿った好奇心という光は。
ミセ*゚ー゚)リ「(……整えられた白い髭が生えてる。ということは、この人が……?)」
あの『絶対当たる占い師』?
170
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:58:06 ID:RqAuxQOc0
( ´W`)「オジョウさん。占いは、お好きですカ?」
ミセ*^ー^)リ「勿論です」
少しアクセントに妙なところがある。
この国の人ではないのだろうか?
そんなお爺さんは、帽子を脱いで引っくり返すと私の前に差し出した。
( ´W`)「三分、ワンコイン。私の話が面白いとオモったら、占いがアタってると思ったら、三分毎に入れてくれると嬉しいネ」
ミセ*゚−゚)リ「『面白くない』『当たってない』と思ったら入れなくて良いんですか?」
私の挑発的な言葉にも動じず彼は返答する。
( ´W`)「……では最初の予言」
そしてお爺さんは宣言した。
「あなたは必ずこの中に硬貨を入れる」――と。
171
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 15:59:04 ID:RqAuxQOc0
……その自信にたじろぐ。
まさか魔法が?と知っているが故の動揺が心拍数を上昇させる。
「そんなことあるわけない」と私は切り捨てられない。
傍らに置かれた鞄の上にあった折りたたみ式の簡素な椅子を私に手渡し、座るように指示する。
そうして帽子を私との間の地面に起き、その隣に取り出した懐中時計を置く。
お爺さんは言う。
( ´W`)「さて……お時間は大丈夫ですカ? カクゴはよろしですか? ミセリさん」
ミセ;゚ー゚)リ「はい――って…………え?」
どうして――私の名前が?
( ´W`)「そうオドロかず。私にもワカルこと、分からないコトがあります。だから占いにキョウリョクして欲しいし……多少外れてもオオメに見て下さいネ?」
ミセ;゚ー゚)リ「は、はい……」
( ´W`)「ははは、キンチョウなさらず。普段のあなたは、周囲を気にし、場に合ったフルマイができる人でしょう?」
172
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:00:05 ID:RqAuxQOc0
続けて言う。
( ´W`)「あなたにはポジティヴな面がある。それはとてもコノマシイ」
ミセ;*-ー-)リ「まぁ、ちょっと明る過ぎるとも言われますけど……」
( ´W`)「そうかもしれませんネ。あなたの快活さは、多くの人にはないものですから」
……そんな感じでお爺さんは次々と私の特徴を当てていく。
三分間はあっという間だった。
最後に懐中時計を伺うと、お爺さんは訊く。
( ´W`)「……サテ。三分が経ちました。私のお話は、オカネを出すに値するものでしたカ?」
ミセ*-ー-)リ「予言通りになるのは悔しいけど――うん、十分に面白かった」
私は財布から硬貨を出し帽子の中へと入れた。
それは良かった。
と、お爺さんは柔和な笑みを浮かべた。
173
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:01:04 ID:RqAuxQOc0
そうしてから次の三分はどうしますか?と訊ねてくる。
答えは言うまでもない。
ミセ*^ー^)リ「じゃあ、あと何分か占って貰おうかな」
( ´W`)「……ワカリました。では次は、魔法の数式であなたの生まれたツキを当てましょう」
生まれた月? 誕生月のこと?
( ´W`)「あなたの生まれた月に、4をカケテ下さい」
ミセ*-3-)リ「えっと……かけた」
( ´W`)「そのスウジに9を足した後、25をかけて下さい。最後に生まれた日を足す。ワタシに見えない場所でならデンタクを使っても良いデショウ」
携帯で計算し、出てきた数字を伝えた。
結果は言うまでもない――お爺さんは見事、私の誕生日(何月の何日かに至るまで完璧に)を言い当てた。
そんな風に何分か過ごし、ファーストフード店で一番高いハンバーガーが一つ食べれるくらいのお金を使った後、そろそろお暇することにした。
立ち去る私が手を振るとお爺さんも帽子を軽く掲げて返す。
誰に今日のことを話そうかなと考えつつ、私はとても満足して帰路についたのだった。
174
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:02:04 ID:RqAuxQOc0
【―― 5 ――】
翌日、たまたま朝早く起きれたので、いつもより早い時間帯に登校すると自販機前で我が校の生徒会長に出会った。
太陽を想起させるような凄惨な美しさは今日も今日とて健在だ。
聞くと弓道部の朝練だったらしい、ご苦労なことだ。
ミセ*゚ー゚)リ「そう言えば会長、昨日面白いことがあったんですよ」
「んー? 遂に異世界に召喚されたの? それとも異世界から誰か来ちゃった?」
ミセ;*゚ -゚)リ「私はここにいますし何人もの問題児もハンバーガー売ってる魔王さまも銀髪のニャルラトホテプも誰も来てないですよ」
いや、最後は宇宙から来たんだったっけ。
「じゃあ面白いことって何なのかな?」
ミセ*^ー^)リ「それはですねー……」
175
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:03:04 ID:RqAuxQOc0
私の話す昨日の出来事を、会長は最初の内は興味深そうに耳を傾けていた。
しかしそれは「最初だけ」だった。
話し終わった時には、会長はあの全てを見透かしたような特徴的な笑みを浮かべていた。
嘲るようなのにこれ以上なく蠱惑的で。
何処か、愉しむような、慈しむような笑みを。
「…………結論だけ言うとね、ミセリちゃん」
と、会長は言う。
「ミセリちゃんの出会ったそのお爺さんは占い師じゃないし、超能力者でもない」
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
「しいて言うなら――科学者だよ」
科学者?
あのお爺さんが?
176
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:04:19 ID:RqAuxQOc0
「ホームズ知ってるなら分かると思うケド、とっても頭の良い人はある種の人達は、他人の外見や仕草から内面を読み取ることができるんだよ」
ミセ;*゚ -゚)リ「そりゃ分かりますけど……心理学とかは科学ですもんね」
「心理学が科学かどうかは一部では議論があるケド、結局ね、今回の場合はそんなに大層なことじゃないよ」
ミセ*゚ー゚)リ「でも『男の子にモテる』とかは見た目で読み取れるかもしれませんけど私の名前なんてどうやったって無理でしょ?」
「できるよ」
認識と観察は違うんだ、と会長は言って続けた。
「ミセリちゃんって可愛いポシェット持ってたよね?」
ミセ*^ー^)リ「持ってますよぉ。その日もアレでした」
「アレにさ、恋人から貰ったって言ってたアクセサリー付いてた気がするんだけど、それってまだ付いてる?」
………………あ。
そう言えば、そうだ。
177
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:05:11 ID:RqAuxQOc0
考えてみれば、あの時私は名前入りの装飾品を持っていたのだ。
それを見れば私の名前なんてすぐに分かる。
あの時、お爺さんはそれとなく私を観察して目聡く読み取っていたのだろう。
「眼鏡かけてる人って、たまにコンタクトにすると眼鏡取ろうとしちゃうことあるよね? それと同じなの」
自分にとって当たり前のこと過ぎて、意識しなくなっている。
心理学的な盲点。
ミセ*゚ー゚)リ「でもそれって『ミセリ』みたいな女の子の名前なら使えますけど、女の子にも男の子にも使える名前だと相手の名前かもしれないですよね?」
もしくは私に『ミセリ』という女の恋人がいる可能性だって考えられる。
「そうだね。でも今回の場合、一緒に刻まれてた文字で分かるでしょ。覚えてる?」
ミセ*゚ー゚)リ「勿論覚えてますよ私が貰ったものですから」
「名前以外に何が書いてあったっけ?」
178
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:06:05 ID:RqAuxQOc0
ミセ*^ー^)リ「『You're so cute that you made me forget my pickup line.』ですよ!」
英語を発音する為の口を作って、流暢に言った瞬間に気付いた。
書かれていた台詞は"You're so cute that you made me forget my pickup line"。
意味は「お前が可愛過ぎるから用意してた口説き文句飛んじゃったよ」。
……丸分かりである(私に送られたものであるということも、私の馬鹿さも)。
ミセ;* -)リ「うぼぁー、馬鹿か私はー……」
「星座象ったアクセサリーとかにも応用できるよ。普通、天秤座のネックレスしてる人は9月か10月生まれだ」
ミセ;*゚ー゚)リ「あっ!でも! でも誕生日当てるのは凄いですよね!?」
「凄いケド、それに至っては『魔法の数式』って言っちゃってるじゃん。自己申告通りに数式だよ」
初めに「誕生日の『月』の数字に4を掛ける」。
次に「その数字に9を足し」、更に「25を掛け」て、最後に「誕生日の『日』の数字を足す」。
これは占いでもなんでもなくただの数学的な法則によるものだと会長は説明する。
179
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:07:04 ID:RqAuxQOc0
「『10月10日』とかだと分かりやすいけど、4掛けて9足して25掛けた段階で生まれた月に225足した数になってるの」
……えーっと。
10(生まれた月)×4=40。
40+9=49。
49×25=1225。
本当だ。
先に225を引いた後に日を足せば分かりやすい――1000+10=1010、10月10日。
「もっと分かりやすいやつもあるよ。1〜9までで好きな数字を一つ選んでみて」
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ6」
「6を二倍して、10足して2で割った後に元の数を引いてみて。この場合は6で引くの」
ミセ;*゚ー゚)リ「えっと……5?」
「この数式だとどの数を選んでも最後は5になるよね。こういう数式にトランプとかコインとかを組み合わせると、それっぽいよね♪」
ミセ*-3-)リ「へぇ〜」
180
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:08:06 ID:RqAuxQOc0
数学者っていうのは凄いなぁ。
この場合だと、その後にやった「結婚すると幸せになれる年齢を当てる数式」っていうのも何か法則があるのだろう。
そうして会長は言った。
「言葉の選び方にもトリックがあるよね。例えば『周りを気にする』って言葉とか」
ミセ*゚ー゚)リ「『外見を気にして可愛くしてる』ってことじゃないんですか?」
「勿論そういう風に解釈もできるケド、『他人を恐れてオドオドしてる』って意味にも『ルールをちゃんと守り誠実に生きてる』って意味にも取れるよね?」
ミセ*-ー-)リ「あー……そう言えばそうですね」
観察で読み取ることに加え、上手い具合に話を運ばれてしまっていたのか。
「こういうのを『コールド・リーディング』って言ったりする。占い師だけじゃなく、社長さんとかカウンセラーとかも使う技術だね」
ミセ*-ー-)リ「頭の良い人もいるもんですねぇ」
トリックを明かされても怒る気にはなれない。
だって――魔法でこそなかったけれど、お爺さんの話が面白かったというのは紛れもない事実なのだから。
181
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:09:09 ID:RqAuxQOc0
【―― 6 ――】
さて。
私が本物の『占い』と遭遇することになったのは、会長からそんな種明かしがなされた――まさにその日だった。
世間一般に行われている占いがただのトリックだと分かったその日に本物の魔法に出逢うことになるなんて、ある意味ではとても皮肉だ。
皮肉で。
数奇で。
滑稽で。
そう、それが。
その『占い』に端を発する事件で出逢うことになったものが。
「魔法でありながら」――同時に「魔法ではないモノ」だったのだから尚更だった。
この世が一つの記された物語で、筆を持つものを神と呼ぶのなら。
それは、まるで。
神様が「世界にはまだまだ神秘が多いのだ」と高らかに笑っているようだった。
……なんてね。
.
182
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:10:17 ID:RqAuxQOc0
【―― 7 ――】
チャイムが鳴って、一日の授業が終わる。
大きく伸びをすると気持ちが良い。
まだ今日が月曜日で、あと何日も学校に来て授業を受けなければならないことは憂鬱だけど、それでも一段落だ。
ミセ*>ー<)リ「くぅ〜……っと」
両手を伸ばしたまま少し背中を反らし、むっつりな男子の注目を軽く集めてから筆箱を鞄へと仕舞う。
現代文の教科書とノートはそのまま机の中にオンだ。
どうせ今日は宿題はないし、私は現文は得意中の得意なので予習をする必要もない。
それはもう、とてもとても得意だ。
畳語法。
私のファースト幼馴染は騒がしい教室からさっさと鞄を持って出て行ってしまう。
奴は放課後からティータイム、もとい軽音部の部室へとギターで遊びに行く。
さて私の方はどうしようか。
会員登録しているスポーツクラブに行って泳いだりジム友達と遊んだりするのも良いんだけど。
そんなことを考えつつ、私は隣を伺う。
183
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:11:13 ID:RqAuxQOc0
私の隣の席には一人の少女が座っている。
朝比奈でぃ。
女子にとって非常に重要と言える顔に大きな傷が残っているが、それでも彼女の清楚な可愛らしさは損なわれることはない。
また女子にとって大切な髪(女子に大事なものは多いのだ)は一纏めにされていて柔らかに揺れている。
全体的に清純な印象を与える彼女にもう心に決めた人がいて、しかもあーんなことやこーんなことをもうやっちゃってるのは信じられない。
いやある意味では無茶苦茶信じられる、私が男子なら普通に結婚したいくらい可愛い。
男子諸君は残念で仕方がないだろう。
……まあ、ほとんどの生徒はそのことを知らないけれど。
そして、彼女が何者であるのかも――皆は知らない。
(#゚;;-゚)
でぃちゃんはぎこちなくパカパカするケータイを見ていた。
スマートフォンじゃないのは激しい動きをして落としてしまうことを懸念してだろうか。
いやえろい意味じゃなくて。
段々と皆が教室を後にし、私は部活に行ったり帰路に着く友人達に手を振っている。
そんな中ででぃちゃんは帰る準備もせず、携帯の画面を睨んでいる。
184
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:12:11 ID:RqAuxQOc0
何があったのかを訊くついでに私は問い掛けた。
ミセ*^ー^)リ「ねぇ、でぃちゃん。放課後暇なら遊びに行かない? 面白い占い師を見つけたんだけど」
(;#゚;;-゚)「……申し訳ありません。お誘いは嬉しいのですが行けません、用事ができたのです」
ほら、やっぱりね。
"just as I expected"。
断られるのは予測通りなので更に訊く。
ミセ*゚ー゚)リ「何かあったの?」
(;# ;;-)「ええと……」
顔を俯かせ、口元に手を当てて暫し思案する。
言って良いものか考えているのか。
それとも、どう説明したものかと思っているのかな?
タップリ十秒ほど考えて、でぃちゃんは答えた。
185
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:13:09 ID:RqAuxQOc0
(#゚;;-゚)「お仕事です。あの人と」
あの人……?
お仕事ということから察するにギコさんのことかな?
私の前なんだから恥ずかしがらずに「ご主人様」って呼べば良いのに、かわいーなー。
茶化してやろうとも思ったけれど、明らかに急いでいるようなので自重する。
机の教科書を次々と仕舞っていく彼女に更に訊ねた。
ミセ*-3-)リ「そんなに急いでるってことは、もうすぐ何か出現するから今から戦いに行くってこと?」
深刻な内容(恐らく命懸け)と反比例するような軽い調子の言葉に、本当に痛切な感じででぃちゃんは返す。
(# ;;-)「そうだったらどれほど良かったことか……」
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
(#゚;;-゚)「ミセリさんの言葉に二つ訂正です。一つ目は『もう出現した後であること』」
そして二つ目は。
でぃちゃんは言った――「私は戦いに行かずにバックアップなのです」と。
186
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:14:03 ID:RqAuxQOc0
【―― 8 ――】
大家さんに連れられて踏み入れた屋敷内は「廃墟となった洋館」という文字から想像できる通りのおどろおどろしい空気が漂っていた。
十数年という歳月の為か、館は使われていた頃が想像できないほどに荒れ果て、不気味な雰囲気を有している。
そのことを手伝っているのは、微かに感じる瘴気。
(,,゚Д゚)「(大家さんは『気休め程度のお祓いをしてくれれば良い』って言ってたけど……)」
それは常人の感覚での話だ。
ここでは、ある程度の霊的感受性を持つ人間ならば恐らく気分が悪くなるだろう。
そして俺のような専門家ならば低濃度だが魔力が感じ取れる。
この場所が現場であることは間違いなく、大家さんが目撃したモノも勘違いではなかったということだ。
だから俺は専門家としてお祓いをするだけでは済ませてはいけない。
(,,-Д-)「(感じ的には妖気じゃない。だから妖怪変化や悪魔の類じゃない……ということは、人間だよね)」
一歩踏み出す度にギシギシと軋む廊下を残留した魔力を伝い進む。
場に残った魔力や思念を読み取ることのできる専門家は、それを踏まえて怪異のような『形のないモノ』に対処する。
187
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:15:05 ID:RqAuxQOc0
今回の場合は死者の霊だ。
人間であっても強い怨念や無念を抱いて死んだ者は鬼や化物へと変わるのだが、この人はそうではないらしい。
召喚の経緯上、当然と言えば当然だ。
そうして俺は応接間の壊れかけた扉を開け放つ。
ここが、この洋館の中でも最も濃く魔力の残る場所。
躊躇いなく足を踏み入れる。
(;, Д)「くぅっ――!」
身体そのものが感覚器になったかのような錯覚。
一歩踏み出す毎に身体が共振を始める。
残留した思念と魔力は全身に纏わり付き更には内部へと入り込んでいく。
心が塗り替えられるような、感覚。
鳥肌が立ち、冷や汗が背中を流れて行く。
視覚と聴覚が現世から乖離する。
何かのイメージが。
誰かの心が心に溶ける。
それらは「感じ取った」はずなのに「思い出す」かのように想起される。
188
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:16:17 ID:RqAuxQOc0
落ち着け。
落ち着け。
いつものことだと言い聞かせ、拡散するような自分を繋ぎ止め、集中し神経を研ぎ澄ます。
心の奥底から湧き上がるイメージに耳を澄ます。
そう、それは音楽だった。
――喩えるならば、それは天使の囁き。
――美しく甘く。
――幾重にも重なり合う音。
――空気を震わす共鳴する旋律。
何処かで似たような音を耳にしたことがあるような気がして、しかしそれが何かは全く分からない。
(;,-Д-)「(こんな感じの音を何処かで聞いた気がする……。何処だっけ……?)」
悩むことを一旦止め、頭に流れ込んでくるイメージを携帯に打ち込んでいく。
「音」「楽器」「和音」「人間」「共鳴」「綺麗な旋律」「異国の地」「ピアノ」「鉄の棒」。
フラッシュバックのように想起される曖昧な映像を書き記し、一通り書き終えると俺は彼女の元へと送った。
189
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:17:24 ID:RqAuxQOc0
【―― 9 ――】
歩き出したでぃちゃんに私も続く。
(#゚;;-゚)「ギコさんが神道系大学の学生ということはご存知ですか?」
ミセ*゚ -゚)リ「うーんと……うん、知ってる」
教室での雑談だったか、あの日の車の中だったかで聞いた気がする。
まぁ何処で聞いたかなんてどうでも良い。
そんなことはどちらでも良いことだ、"It dose't make any difference"。
(#゚;;-゚)「では一般に神主さんが足りていない――神社の数に比べて神主さんが少ないことはご存知でしょうか」
ミセ*゚ー゚)リ「そうなの?」
(#゚;;-゚)「はい。そうです、足りていないのです。なので参拝者が少ない神社は無人になることが多いのです」
ミセ*-3-)リ「ふ〜ん。神職だって言うのに世知辛いなぁ」
190
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:18:11 ID:RqAuxQOc0
何処かの腋巫女みたいに人の全然来ない神社に延々居続けることのできる神主さんは中々いないのだろう。
神職者と言えども霞を食べて生きていけるわけではないのだから。
(#゚;;-゚)「この西部にある神社の幾つかも無人なので近所の方がお祓いを頼みたい際に困ることが多いのです」
ミセ*゚ー゚)リ「つまり、そういう時にはギコさんが代わりにやってるってこと?」
(#゚;;-゚)「はい……今時御札を買いたいと思う方や神棚を設置しようと思う方は少数なので、あくまで急場凌ぎのお手伝いですが」
要するに神道系大学の学生として神社の手伝いをしているわけか。
いやギコさんが怪異のプロだっていうなら、提携とか業務の委託になるのかな?
まあ大体は分かった。
歩みを止めることもなくでぃちゃんは話を続ける。
私も何処に行くつもりかさっぱりだがとりあえず隣に並び歩く。
(#゚;;-゚)「私達が行なうお祓いは地鎮祭などではなく、ごく簡単なものです。『夜中に妙な物音がする』などに対してのお祓いなのです」
ミセ*^ー^)リ「そういうのって、たまにだけど気にする人もいるもんね」
(#゚;;-゚)「はい。ですが大抵の場合は杞憂です。多くが勘違いなのです」
191
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:19:10 ID:RqAuxQOc0
"One always proclaims the wolf bigger than himself"。
幽霊の正体見たり枯れ尾花。
(#゚;;-゚)「この周辺は霊的に安定しているので森の奥深くや山の中に行かなければ怪異は出て来ません。普通に暮らしていれば、まず遭わないのです」
考えてみれば、そうだ。
私はどうやら妖怪変化の類を視認することができるらしいけれど、神●ボイスの高校生みたいに妖に追いかけられて困ったことは一度もない。
「あれ?変だな?」と思うことはたまにはあったが、それは本当にごく稀で、それも無視できるレベルのものだった。
今までの人生の中で、はっきりとそういったものを――『怪異』を視たのはでぃちゃんとの出逢いを除けば、あの日だけだ。
それは私にとって当たり前のことだったけれど。
……もしかしたら、とても幸せなことだったのかもしれない。
ミセ*-ー-)リ「ここって平和なんだ。何か理由があるの?」
(#゚;;-゚)「人ならざるモノだって命は惜しいのです」
ミセ*゚ー゚)リ「え?」
(#゚;;-゚)「…………この話はまた今度にしましょう。今はギコさんの話です」
192
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:20:03 ID:RqAuxQOc0
それは良いんだけど――さっきからでぃちゃん、ちょっと変だ。
ミセ*゚ー゚)リ「ギコさんがお祓いをやってるってことは分かったんだけど、杞憂だって言うなら何をそんなに心配してるの?」
そう、でぃちゃんは心配している。
どころか、それを少し通り過ぎてちょっと怒っている感じなのだ。
奥床しい感じだけど、実は過保護な子なんだろうか。
いや「ラブラブ」なのかな?
ギコさんもギコさんで、でぃちゃんのことを心配しているっぽかったし。
私の疑問に、端的にでぃちゃんは答える。
(#゚;;-゚)「『普通に暮らしていれば怪異には遭わない』ということは――『異常な状況で怪異に遭遇することは大いに有り得る』ということなのです」
でぃちゃんは言った。
例えば前回の場合なら殺生石のように、基本的に人に害を及ぼす怪異が出現しにくい地域でも、強い依代があれば話は別なのだ。
『普通に暮らしていれば』大丈夫だとしても『異常な状況で』ならば。
そして、『異常な状況を作り出した』のならば、尚更だ。
193
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:21:08 ID:RqAuxQOc0
【―― 10 ――】
今回の依頼人はある地主さんだった。
結構なお金持ちで、方々に土地や物件を持っていて、事件が起こったのはその多くある内の一軒だった。
そこは十何年か前に持ち主が死に、売りに出されていた洋館だった。
前の住人は発狂して死んだとか噂されてるけど定かではない。
お金持ちな地主さんは数年前に購入したきりで、掃除や取り壊しもせず放置していた(地価の値上がりを見込んで買ってみただけらしい)。
一応バックグラウンドはこんな感じだ。
さて、本題。
昨日の夜、仕事場から車に乗って帰っていた地主さんは、その洋館の前を通った。
「改修して別荘にでもしようかな」と横目で伺いつつ考えていた時に気付いた。
―――廃墟となっているはずの屋敷の奥から、光が漏れていることに。
聞く人によっては怖い話だけど地主さんはそんな風には全く思わなかった。
土地を沢山管理していると、空き地などに勝手に車を停められていたり、子どもが遊んでいたりすることもしょっちゅうらしい。
だから今回も中学生か高校生が夜遊びの拠点にでもしているんだろうと考えてクラクションを鳴らした。
けどガキ共が慌てて飛び出して来るってことはない。
194
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:22:03 ID:RqAuxQOc0
夜分に何度も大きな音を出すのも近所迷惑だし、仕方がないから直接注意しに行くことにした。
……そう決めたは良いんだけど、長い間放置していた所為で裏口や勝手口が何処だったかすっかり忘れてしまっていた。
玄関はしっかりと施錠してあり入れない。
幸い自宅は近くだったので、地主さんは一旦家に帰ると屋敷の鍵を持って戻ってきた。
そうして誰に憚ることもなく玄関の扉を開けて奥に進み、そして最後に地主さんは度肝を抜かれることになる。
応接間の壊れかけた扉の向こうにあったのは、怪しげな道具と魔法陣、消されたばかりの蝋燭の匂いが残る儀式場だったのだから。
(#゚;;-゚)「現場から推測する限りではどうやら交霊会(降霊術)に使われていたようです。『オートマティスム』と呼ばれるものですね」
ミセ*゚ -゚)リ「何それ?」
(#゚;;-゚)「霊的存在とチャネリング――交信することにより、無意識に記述などを行なうことです。『自動筆記』などとも呼ばれています」
ミセ*^ー^)リ「ああ、コックリさんみたいなやつ」
霊を降ろして、質問に答えてもらう系の儀式か。
一部では愛好者も多いと聞いたことがある。
(#゚;;-゚)「日本においては、巫女が行なう言語を用いたものを『口寄せ』と呼びますが、これも降霊術の一種です」
195
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:23:23 ID:RqAuxQOc0
そんな儀式に自分の土地が使われていたと知ったら、気休めでもお祓いをしたくなるのもよく分かる。
この地域では滅多なことがなければ怪異が出没することはない。
しかし、人間の側が条件を整えた、『異常な状況で』ならば容易くそれらは姿を現す。
ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ今回は気のせいでも勘違いでも……ない?」
(#゚;;-゚)「そうです、その通りなのです」
……地主さんの話には更に続きがある。
蝋燭などの火の始末を確認し、一先ず今日は帰ろうと振り返った、その時。
後ろの廊下を――誰かが通り過ぎていった、
らしい。
オマケに水の入ったガラスを擦ったような妙な耳鳴り付きでだ。
何か良からぬことが起こったということは最早確定的に明らかである。
ミセ*-3-)リ「ふ〜ん……。で、ギコさんは現場に行って情報を集めて、でぃちゃんが学校で補佐なんだ」
(#゚;;-゚)「そういうことなのです」
196
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:24:11 ID:RqAuxQOc0
そして今、私達は図書館にやって来ていた。
淳校の図書館は中高併設であることと地域の人に開放されていることもあり、私大にあるような立派でお洒落な建物だ。
とは言っても、私はあまり来ないが。
伝承や逸話などの本を集めた巨大な本棚の間で、でぃちゃんは話を続ける。
周りに人はいないが内容が内容であり、また場所が場所なので二人共声を絞っている。
(#゚;;-゚)「ギコさんの使う『禁呪』という魔術は相手の名前を知っている場合に最大の効力を発揮します」
あの時、九尾の狐に使ったように。
相手の名前を知っていれば、最大の効力で相手そのものを『禁じ』ることができる。
……ううむ、何処かの神●ボイスの高校生を思い出す設定だ。
ミセ*-3-)リ「だから補佐のでぃちゃんがやるのは、」
(#゚;;-゚)「はい。現場の状況やギコさんが感じ取ったイメージを元に、『相手が何者であるのか』を推測することなのです」
ミセ*゚ー゚)リ「現場の状況は分かるけど……イメージって?」
(# ;;-)「……それが私が心配していることなのです……はぁ……」
197
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:25:04 ID:RqAuxQOc0
手に取っていた本を棚に戻し、溜息を吐く。
そんな仕草が外見に似合っていてとっても可愛い。
(#゚;;-゚)「先ほどチャネリングや口寄せの話をしましたが、そのように霊的な存在と交信できる人間を『霊媒』または『霊媒者』などと呼びます」
『霊媒』――霊的な、触媒。
(#゚;;-゚)「ハッキリと怪異が視えるミセリさんも霊的感受性や親和性は高いと思います」
ミセ*-ー-)リ「そうなの?」
(#゚;;-゚)「はい。……ですがギコさんのそれは、ミセリさんの持つ霊能力とは別種なのです。あるいは一つ上、のような」
ミセ*゚ -゚)リ「どういうこと?」
(#゚;;-゚)「ミセリさんが持つ能力は認知能力ですがギコさんが有しているのは共鳴能力なのです」
共鳴能力。
それは単に「視る」のではなく「感じ取る」能力。
その魔を取り込み、自分の内部から湧き上がるイメージを読み取る力だ。
198
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:26:29 ID:RqAuxQOc0
日常的に使う言葉で言えば『共感能力』となるのだろう。
私が単に、怪異という存在を視認するだけだとすれば、ギコさんは五感をフルに使い更に奥深くまで感じ取る。
あるいはそれは意識を保ったままの簡易な憑依。
……でぃちゃんが心配している理由が、分かった気がする。
古いニュータイプの例を引くまでもなく他者の思念や意思を飲み込み続けていて本人に負担がかからないわけがない。
人間は他人の心が分からない。
だが皮肉なことに、本当に他人の心が分かるようになった際に待っているのは自我の崩壊だ。
私達は他人の心が分からないからこそ生きていけるのだ。
(#゚;;-゚)「ミセリさん。あなたが怪異を視ないことができないように、ギコさんは生きているだけで周囲の魔力と共鳴を起こす」
ミセ*゚ -゚)リ「…………なら、それって『能力』じゃなく『体質』って呼ぶんじゃない?」
(# ;;-)「そうですね、そうなのです。でもあの人はそういう体質を生かして生きていくことに決めてしまった。だから私は心配なのです」
だから私は心配なのです、と。
もう一度でぃちゃんは言った。
私はどう返答すべきか迷い、結局当たり障りのないことを言った。
199
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:27:14 ID:RqAuxQOc0
ミセ*^ー^)リ「じゃあ、早く調べ終えて少しでも負担を軽くしてあげないとね」
はい、とでぃちゃんは答えた。
心なしか嬉しそうば声。
私は彼女の事情も心情も分からないけれど、どうやら、少しは気持ちを楽にしてあげられたらしい。
ミセ;*゚ -゚)リ「そうと決まれば私も手伝いたい……んだけど、今回って死者の霊が呼び出されてるんだよね?」
(#゚;;-゚)「はい、恐らくは」
ミセ*゚ー゚)リ「…………『どういう怪異か』じゃなくて『どの人か』を探し当てるのは常識的に考えて無理じゃない?」
そう。
そうなのだ。
話を聞く中で気になっていたけど、今回の件は前回と違い「相手がどういった怪異か」は既に判明している。
降霊術で呼び出されているわけだから十中八九死んだ人間の霊魂――『死霊』である。
もう既に問題を解決する為の必要最低限な情報は出揃っていて、ギコさんがやるべきなのは「その霊を探し出してお祓いしお帰り頂く」という一点。
それこそ神主さんよろしくだ。
200
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:28:22 ID:RqAuxQOc0
(# ;;-)「まず最初に訂正しておきます。『呼び出されたのがどの人であるか』は探しようはあります」
私の問いにでぃちゃんは視線を伏せ気味に答える。
(#゚;;-゚)「交霊会で呼び出された霊は『参加者の知り合い』か、『歴史上で有名な人物』かのどちらかです。見ず知らずの人を呼ぼうとは思わないのです」
ミセ*-3-)リ「う〜ん、それもそうかな?」
(#゚;;-゚)「そして今回の場合は単にお帰り頂くことが目的ではない。ギコさんの目的は、呼び出された霊に成仏して貰うことなのです」
ただ祓ってしまうのではなく。
少しでも満足してさせ――その後に帰ってもらう。
つまり。
(#゚;;-゚)「…………私は今、説得の材料を探しているのです」
私は口を噤んだ。
「それって単に相手が誰かを探すよりもよっぽど難しくて面倒じゃない?」と素直な感想を言ってしまいそうだったからだ。
やれやれ。
201
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:29:11 ID:RqAuxQOc0
これからすべきことを整理してみよう。
・交霊会で呼び出された霊が何処の誰なのかを探し出す
・その霊が遺恨なく帰れるような説得材料を探す
……いや。
いやいやいやいや……難しくない、これって?
どうすりゃ良いのさ。
ド●クエで言えばⅦだ。
私達は本題に入る前段階でうろちょろしているに過ぎない(まあリメイク版は長いオープニングも短くなったらしいけど)。
(#゚;;-゚)「更に時間制限があるのです。今は霊魂は大人しい時間帯ですが、逢魔時――午後六時前後になれば本格的に動き出すでしょう」
ミセ*゚ー゚)リ「夜になればどっかに行っちゃうってこと?」
(#゚;;-゚)「そうです。今はギコさんが注意していますが、長引くと誰かに目撃されることもあるでしょう。……誰かに悪い影響を与えることも」
時計を伺う。
現在四時半。
202
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:30:13 ID:RqAuxQOc0
難問の上に時間がなさ過ぎる。
"ASAP(As soon as possble)"である。
早く呼び出された霊の正体を突き止め、説得材料を探さなければならない。
ミセ*゚ -゚)リ「ギコさんからのメールを見る限り……音楽に関係してる人、だよね?」
(#゚;;-゚)「はい。『多くの人が集まる様子を視た』らしいので、それもある程度は有名な方でしょう。今回の場合は『歴史上で有名な人物』なのです」
というか『参加者の知り合い』だとしても、交霊会をやってた連中が何処の誰かが分からない以上はどうしようもない。
(#゚;;-゚)「見当は付きますが。……きっと魔術に興味のある方々やニューエイジ系の思想を持つ方なのです」
ミセ*゚ -゚)リ「まぁ魔法とか神秘に興味がある人は分かるけど、もう一つの方は?」
(#゚;;-゚)「カウンターカルチャーの一つですね。アメリカの西海岸では勢力も強く根強く残っているそうなのです」
ミセ*゚ー゚)リ「新興宗教系?」
(#゚;;-゚)「そうなるのでしょうか? イメージとしてはもう少し広い感じがしますが……」
203
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:31:15 ID:RqAuxQOc0
でぃちゃんは小首を傾げた。
……どうやらそこまで詳しいわけではないらしい。
考えてみれば世界中に宗教はあるのだから、「どの宗教がどんな教義を持つのか全て把握していろ」という方が無理な話だ。
第一、私も自分の家が何なのか知らない(無宗教ではないと思うけど)。
『怪異の専門家』だっていうギコさんも世界中の怪異を知っているわけではないのだろう。
ミセ;*-ー-)リ「『音楽に関係した人』で『ある程度知名度がある』って……」
ヒントが少な過ぎる。
そして該当者が多過ぎる。
(#゚;;-゚)「ギコさんの視たイメージはヨーロッパ風の街並みだったそうです。ただあの人は海外の文化に詳しいわけではないので具体的にどの地域なのかは……」
ミセ*゚ー゚)リ「こう言っちゃなんだけど、歴史に名を残すような音楽家って大抵ヨーロッパの人だよね?」
(# ;;-)「……そうですね、その通りなのです」
…………ヒントになってなーい。
204
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:32:13 ID:RqAuxQOc0
ミセ*゚ー゚)リ「よし、なら違う方面からアプローチしてみよう。私もでぃちゃんも音楽に詳しいわけじゃない――だよね?」
(#゚;;-゚)「そうですね。詳しいとは言い難いのです」
ミセ*-ー-)リ「だから、この学校の音楽に詳しそうな人に訊いてみるのはどうかな?」
(#゚;;-゚)「その方が可能性は高そうですね。名案なのです」
私は鞄からノートを取り出すと白紙のページのあちこちに出てきたキーワードを書いていく。
言わば逆マインドマップである。
中央が空けてあるので、周囲に書かれた用語全てと関係する人物が真ん中に入れば良いってわけだ。
ミセ*^ー^)リ「これを物知りそうな人に見せて『真ん中に入る人名はなんですか?』って訊ねていこうよ」
(*゚;;-゚)「……凄いです」
やはりミセリさんは頭が良いですね、なんて言ってでぃちゃんは笑った。
いやぁ、それほどでもある。
自分で言うのもなんだが私は頭の良い方だ――そしてこのマンモス校には私より頭の良い人間がごまんといる。
きっと呼び出された幽霊が誰なのか分かるはずだ。
205
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:33:14 ID:RqAuxQOc0
一応。
本格的に動き出す前に気になっていたことを私は訊いておいた。
ミセ*゚ー゚)リ「ちなみになんだけどさ。これって名前が分からなかった場合や説得出来なかった場合――どうなるの?」
(#゚;;-゚)「……その場合、幽霊は私がお帰しします。力尽くで、です」
たとえギコさんに嫌われたとしても。
あの人が傷付けられる前に力技で消し去ります、と。
そんな風にでぃちゃんは言った。
私の脳裏に浮かぶのは彼女が橙色の魔力を纏い日本刀を大上段に振り上げるイメージ。
そういうバトル展開の方が少年マンガ的には受けそうだけど、生憎これは現実だ。
それに。
ミセ*^ー^)リ「……そっか。それは大変だね、幽霊もでぃちゃんも。だったら頑張らないと」
可愛い女の子が好きな人に嫌われて涙を流す姿なんて乙女で美少女好きな私としては見過ごせない。
ストレスよりロマンスだ、ラブラブな結末があるのなら――どう考えたってそっちの方が良いのだから。
206
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:34:18 ID:RqAuxQOc0
【―― 11 ――】
作戦の方向性は決まったが、今からの問題は誰に訊くかだ。
(#゚;;-゚)「ミセリさんの幼馴染さんは軽音楽部ではなかったですか?」
ミセ*-3-)リ「あー、アイツ等は駄目駄目。訊くだけ無駄だよ」
(;#゚;;-゚)「そうなのですか? なら、吹奏楽部の方はどうでしょうか?」
ミセ*゚ -゚)リ「うーん……詳しいのかな?」
私は吹奏楽部には一人二人しか知り合いはいない。
けど、例えば選択科目が同じなアリスちゃんは音楽は得意でも音楽史について詳しいって感じじゃなかった気がする。
……そうだ。
ミセ*゚ー゚)リ「会長に訊いてみれば良いんじゃない?」
(;#゚;;-゚)「会長さんですか?」
207
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:35:07 ID:RqAuxQOc0
所謂「かいちょーお願いします」ってやつ?
(#゚;;-゚)「あの会長さんは、それほどまでに幅広い知識を有しているのでしょうか?」
ミセ*-ー-)リ「淳校の一会長四委員長は箱●学園ほどじゃないけど、それぞれ凄い人らしいよ?」
風紀委員会委員長。
自治委員会委員長。
保健委員会委員長。
図書委員会委員長。
そして、生徒会執行部の『一人生徒会』。
……まぁ実際は風紀委員長・自治委員長・生徒会長のインパクトが強過ぎて残り二人の影が薄くなってるけど。
「超高校生級」という言葉があるが、その三人は「超人間級」というような、希●ヶ峰学園に在籍してても全くおかしくないような天才だ。
ミセ*-ー-)リ「その三人に訊ねて分からないことがあるとしたら……多分、この高校の誰も分からないと思うし」
勿論、教師陣も含めて、だ。
(#゚;;-゚)「そうなのですか……。なら最初はその三人に当たるということでよろしいでしょうか?」
ミセ*^ー^)リ「私の顔が効きそうなのは会長だけだし、会長からにしよっか」
208
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:36:03 ID:RqAuxQOc0
他の二人は……どうだろう。
どちらも「淳校の全生徒の顔と名前を覚えている」と言われているので、会いに行けば分かってもらえるとは思うが。
それは快く協力してくれることとイコールではない。
いや、協力はしてくれるだろうけど、あまり親しくない相手に頼るのは最後の手段にしたい。
(#゚;;-゚)「では、向かいましょう」
ミセ*^ー^)リ「会長の手を借りるとか……なんだかいきなり反則使う感じになっちゃって、ごめんね?」
あの人の二つ名の一つは『歩く校則』だが、私としては『歩く反則』の方がよっぽど相応しい気がする。
それくらいに会長はなんでも出来てしまう人だ。
(#゚;;-゚)「構いません。私は、謎解きがしたいわけではないのです」
と、でぃちゃんは言って、続けた。
(# ;;-)「私はただ……あの人がもう傷付かなければ、それで良いのです……」
209
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:37:07 ID:RqAuxQOc0
【―― 12 ――】
我が校の黒神●だかこと『一人生徒会』は、用事がない限りは淳校で最も空に近い場所――旧生徒会室にいる。
五階六階に相当するその一室は天使を想起させる魅力と天上を連想させる名前を持つ生徒会長には相応しい場所なのかもしれない。
なんて、そんなことを思った。
(#゚;;-゚)「ミセリさんは会長さんと親しいのですか?」
ミセ*^ー^)リ「まーねー。結構前だけど、駅前の美味しいオムライスのお店の近くで出逢って、友達になった感じ?」
(;#゚;;-゚)「……オムライスですか?」
ミセ*゚ー゚)リ「会長、好きらしいよ? オムライス」
雑談をしながら時計塔へと続く廊下を進む。
ふと前を見ると、こちらへと一人の少女が歩いてきている。
最近流行りの多人数のアイドルグループにいそうな普通に可愛い感じの子だ。
一重でシャープ気味な顔立ちに、纏めた部分だけを伸ばしたツインテールのような黒のツーサイドアップ。
彼女は、こちらに気付くと目礼をした。
210
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:38:07 ID:RqAuxQOc0
そうして向こうが道を譲ろうと脇に避け。
その時に、彼女が思い至ったように口を開いた。
リi、゚ー ゚イ`!「あー、生徒会長にご用ですか? だとしたら今は不在みたいですよ」
ミセ;*゚ー゚)リ「え?」
立ち止まり、その少女の方へ身体を向け訊く。
ミセ;*゚ー゚)リ「会長……いないの?」
リi、゚ー ゚イ`!「そうみたいです」
やべぇ。
早くも詰んでしまった。
楽をしてはならないという神様からのお叱りだろうか?
ばんなそかな。
そんなわけはないけれど運が悪過ぎる。
211
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:39:16 ID:RqAuxQOc0
と、振り向き私がでぃちゃんと顔を見合わせた――その時だった。
リi、゚ー ゚イ`!「……あー、それってクイズですか?」
その女の子が私の持っているノートの一ページに気付いた。
興味があるの?と訊ねると「兄が好きなんです」とはにかむ感じで微笑んだ。
確かに連想クイズにも見えなくはない逆マインドマップが書かれた紙を彼女に渡す。
……私はゲーセンのQ●Aでも連想クイズは苦手だけど、ああいうのって分かる人には分かるらしいし。
ダメ元で意見を求めてみる。
ミセ*゚ー゚)リ「その答え、何か分かる?」
少女はなんてことはない風に笑って、言った。
リi、゚ー ゚イ`!「…………分かった、と思います。そのクイズ好きな兄が特に専門とする分野の方なので」
人物名ですよね?と少女は確認するように曖昧な笑みを浮かべる。
私は思わず思った(冗語法的表現)。
―――神様、グッジョブ。
212
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:40:16 ID:RqAuxQOc0
【―― 13 ――】
午後六時前後の日の入り間近から日没直後の一時のことを『逢魔時』と呼ぶ。
その黄昏時は怪しいモノ達が活発になる時間帯だという。
ギコさんは言った。
「『黄昏』って言葉はね、『たそかれ(誰そ彼)』から来たって説があるんだよ」と。
『誰そ彼』――「そこにいるのは誰ですか?」。
そんな風に訊ねてしまうくらいに薄暗く怪しい時間。
「そこにいるのが誰かは分からない、分からないんだけど誰かがいる――もしかするとそこにいる人は怪異なのかもね」。
なんて続けてギコさんは笑う。
「元々『黄昏』は『こうこん』と呼ぶ漢語の言葉です、無関係なのです」。
そう返してでぃちゃんは笑わなかった。
……この三つの単語、『逢魔時』『黄昏』『誰そ彼』がどれかからの派生ならば、どれが最初だったんだろう。
もし無関係なんだとしたら、それはなんて偶然だろう。
結局そこにいた人は誰だったんだろうか。
人間か、怪異か。
いやもしかすると――そこにいた人間がいつの間にか怪異に変わってしまったのかもしれない。
213
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:41:03 ID:RqAuxQOc0
私達は子どもの頃に「暗くなる前に戻って来なさい」と教わるけれど。
それは、あるいは。
人間と怪異と。
昼と夜と。
此方と其方。
境界線の上で子ども達が迷ってしまわないかと、昔の人が心配していた名残りなのかもしれない。
そう――私達は現代でも、線を引く度に迷ってばかりだ。
(,,-Д-)「……行き止まりだよ」
田舎道で、山道だった。
トンネルの出口、闇が途切れるその場所にギコさんは立っていた。
紅く黄色く染められる世界の中で。
闇と光の境界線を渡るようにして立っている。
不思議とそんな姿がよく似合う。
職業はともかくキャラ的には完全に光サイドだと思うのに、どうしてなんだろう?
214
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:42:22 ID:RqAuxQOc0
そして――相対するその人はトンネルの中で足を止めた。
( ゚¥゚)
電灯の類がない短いトンネル。
薄暗いその場所に、一人の男性が立っている。
ここから(ギコさんの後ろ)ではよく見えないけれど、なるほど確かに西洋っぽい服装だ。
それに「なるほど」なことがもう一つある。
その人の輪郭はぼんやりと揺らいでいて、その人の姿形は透けていたのだ。
幽霊。
死霊。
……彼はきっと、夜の世界の人間だ。
ミセ; ー)リ「っ……」
そんな風に私が思った瞬間――私の頭の中に小さくだが、奇妙な音が響き始めた。
215
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:43:21 ID:RqAuxQOc0
聞いたことのないような、でも何処かで聞いたことのあるような、奇妙な旋律。
その美しいのに何故か妖しい音は彼から伝わるイメージか。
どうやら私も認知だけではなく、多少は共感もできてしまうらしい。
ギコさんも音が聞こえるようで目を細める。
だけど、すぐに続けた。
(,,-Д-)「君の……あなたの名前は―――フランツ・アントン・メスメル。科学と魔術が線引きされていなかった時代に生きた、医者だ」
フランツ・アントン・メスメル。
独逸人。
医師。
そしてニューエイジのある書物で思想の重要性を説かれた人物の一人。
……聞き覚えのない人の方が多いだろう。
だけどクイズ好きじゃないとしても、ある分野を学んだ人ならば聞いたことがあるかもしれない。
きっと答えを教えてくれた女の子のお兄さんもそうだった。
だから彼女も知っていた。
216
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:44:25 ID:RqAuxQOc0
メスメルは動物磁気法という治療法を編み出し、次々と様々な病気の患者を診察し回復に導いたという。
その中で最も有名な逸話の一つは「盲目のピアニストを治療した」というものだ。
また彼は治療を行なう中で、グラス・ハーモニカを演奏していた。
それはガラスを擦り共鳴させることで音を出す楽器。
今私の中に響いている音楽や、ギコさんがあの儀式場で感じた旋律はそれによるものなのだろう。
グラス・ハーモニカが精神をおかしくする悪魔の道具だと法律で禁止された後もメスメルは演奏を止めなかったという――それほどまでに、大事な。
……しかし何人もの患者を治癒させた彼は、祖国を追放され、当時の科学アカデミーにも理解されないまま生涯を終えた。
( ¥)『――――』
彼が口を開く。
その言葉は肯定か否定か、分からない。
私は気付く。
ミセ;゚ー゚)リ「(そっか……! 向こうはドイツの人だから、こっちが何言ってるか分からないんだ!!)」
次いで気付くのが遅過ぎたことにも気付いた。
217
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名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:45:28 ID:RqAuxQOc0
たとえ相手が誰か分かったとしても、どれほど説得材料を揃えたとしても。
それは「言葉が通じる」「会話ができる」という前提があってこそ有益なものであり、この状況では全く意味を成さない。
でぃちゃんは気付いているのだろうか。
いやそれよりもギコさんだ。
対話を試みている本人が気付いてないはずがないんだけど……。
そして―――。
(,, Д)『……はじめまして。会えて光栄です』
―――次の瞬間には。
不思議なことが起こっていた。
会話ができていた。
( ゚¥゚)『分かるのか……私の言葉が?』
(,, Д)『なんとなくですが、一応は』
218
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:46:30 ID:RqAuxQOc0
ギコさんの言葉に相手が答える。
そんな当たり前なことが可能になっている。
しかも――周囲で聞いている私達にもその意味が分かるのだ。
( ゚¥゚)『ならばそこを退いてくれ。私は唯一の後悔を、無念を果たしに行く途中だ』
(,,-Д-)『できません』
それは頭の中に響く声で。
それは心に語りかける声だった。
直感的に理解する。
……これは、ギコさんの力なんだ。
『共鳴能力』とまで言われる霊的感受性を最大限にまで生かし、周囲の人間にまでイメージを伝播する――そんな能力。
だから。
(,,゚Д゚)『一つだけ言わせて下さい。あなたは間違ってなんかいなかった』
( ゚¥゚)『…………』
219
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:47:27 ID:RqAuxQOc0
きっとその人にも、多少のニュアンスの違いこそあれど伝わるはずだ。
(,,-Д-)『あなたの技術は魔法ではなかった。ひょっとすると、科学でさえなかったかもしれない』
だけど。
そうだったとしても。
(,,゚Д゚)『でも――あなたがいたことで、心理学は少し進歩した。解析不能な症状に苦しむ人達が沢山助かった』
そう。
そうなんだ。
彼の名前は心理学を学ぶ人間なら誰でも知っている。
ジャン・マルタン・シャルコーと並び、心理学における催眠療法の祖となった人物であると。
投薬でも手術でも治癒しない、悪魔祓いに頼るしかなかった数々の精神病が治せるようになったのだと。
だから。
(,,-Д-)『だから、あなたは間違ってなんかいなかった。……それだけは覚えていて欲しいんです』
220
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:48:09 ID:RqAuxQOc0
そう言ってギコさんは黙った。
彼も黙ったままだった。
やがて、世界が夜に染まり始めた頃――口を開く。
( -¥-)『…………そうか。なら、あの後悔は後悔のままで、良いのかもしれない』
そう一言呟いて。
彼は背を向ける。
最早こちらとの境界は闇に溶けなくなってしまったけれど、彼はここに来ようとはしなかった。
ただ背を向け。
歩き出し。
( ¥)『ありがとう。……世話をかけたな』
そうして闇の向こうへと――消えて行った。
221
:
名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:49:10 ID:RqAuxQOc0
【―― 14 ――】
後日談というか、本日のオチ。
あの後、でぃちゃんは後始末が残っていたギコさんと別れ一人で帰ったらしいが、帰る途中に会長と会って話したらしい。
今回の件の概要を聞いた会長はまた見透かしたような見通したような笑顔で知った風なことを語ったようだ。
そうそう、あの廊下であった女の子は自治委員会委員長の妹さんだった。
会長よりも物知りだという自治委員長なら、心理学の発展に多大な貢献をした医師のことを知っていてもおかしくはないだろう。
そして妹であるあの子が話に聞いていたとしても妙ではない。
そして――私の話。
ミセ*゚ー゚)リ「…………あれ?」
交霊会は占いの為に開かれるものだ。
なら現代の占い師である、あの心理学に詳しそうなお爺さんならどう思うのだろうと次の日に会いに行くと――そこにはもう、誰もいなかった。
ミセ*゚ー゚)リ「まさか、実はあの人も怪異でしたーってオチ?」
( ・∀・)「……よ!」
222
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名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:50:07 ID:RqAuxQOc0
そんな風に考える私に後ろから声がかかる。
振り向くと、そこにはあの紅い人。
いつだったかギコさんを手伝っていた悪っぽい感じのイケメンさん。
請負人、何でも屋である彼が立っていた。
時間も空いてしまったことなので先日あったことのさわり(御用ではない意味)を話すと、お兄さんはなんとも悔しそうな顔をする。
( -∀-)「うわー、マジかよ。俺も会いたかったのに……そんなに早く成仏しなくても良いのになー」
ミセ*^ー^)リ「お兄さんも心理学に興味があるんですか?」
( ・∀・)「興味があるも何も俺の大学時代の専攻って心理学」
なるほど、そういうことか。
ミセ*゚ー゚)リ「大先輩ってわけですねぇ」
( ・∀・)「そーだな。俺は催眠療法は使えねーけどさ。それでも、どんだけ凄い人かは知ってるさ。たとえピアニストを治すことはできなかったとしても」
ミセ;*゚−゚)リ「え?」
223
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名も無きAAのようです
:2013/05/25(土) 16:51:11 ID:RqAuxQOc0
あれ?
おかしいな?
盲目のピアニストなら治癒したんじゃ……?
( ・∀・)「『治癒した』んだっけ? 俺の知る限りじゃ『治療を試みたが精神を害したと訴えられた』って話なんだが」
ミセ;*゚ー゚)リ「え、そうなんですか?」
( -∀-)「そーだよー? ま、どっちにしろ裁判沙汰になったのは確かだよ。有名な話だし」
ミセ;*゚ー゚)リ「あれ……じゃあ、もしかして……」
( ・∀・)「どうかしたか?」
すみません、またいつか!と私は別れを告げて駆け出していた。
お兄さんの引き止める声を置き去りにして走り出す。
メスメルは盲目のピアニストを治療した。
治ったのかは分からない。
けれど、最終的には「精神を病んだ」と訴えられてしまった――なら。
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